特許第5907077号(P5907077)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5907077
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月20日
(54)【発明の名称】二環式化合物およびその医薬用途
(51)【国際特許分類】
   C07D 335/04 20060101AFI20160407BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20160407BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20160407BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20160407BHJP
   A61P 27/12 20060101ALI20160407BHJP
   A61P 27/10 20060101ALI20160407BHJP
   A61K 31/559 20060101ALI20160407BHJP
【FI】
   C07D335/04CSP
   A61P43/00 111
   A61P27/02
   A61P27/06
   A61P27/12
   A61P27/10
   A61K31/559
【請求項の数】10
【全頁数】49
(21)【出願番号】特願2012-554849(P2012-554849)
(86)(22)【出願日】2012年1月26日
(86)【国際出願番号】JP2012051718
(87)【国際公開番号】WO2012102355
(87)【国際公開日】20120802
【審査請求日】2014年12月10日
(31)【優先権主張番号】特願2011-14776(P2011-14776)
(32)【優先日】2011年1月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000185983
【氏名又は名称】小野薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100166028
【弁理士】
【氏名又は名称】北谷 賢次
(72)【発明者】
【氏名】丸山 透
(72)【発明者】
【氏名】神戸 透
(72)【発明者】
【氏名】山根 晋作
(72)【発明者】
【氏名】中山 仁志
【審査官】 三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第04490537(US,A)
【文献】 特開昭55−073678(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D327/00−347/00
A61K 31/33− 33/44
A61P 1/00− 43/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】
(式中、Zは(1)−(CH2m−、(2)−CH2−O−、または(3)−CH2−S−を表し、Yは(1)−O−、(2)−S−、または(3)−CH2−を表し、R1は(1)水素原子、または(2)C1〜6アルキル基を表し、環Aは(1)ハロゲン原子、(2)CF3、(3)OCF3、(4)C1〜4アルコキシ基、(5)C1〜4アルキル基、(6)水酸基、および(7)ニトリル基からなる群から選択される1〜5個の置換基で置換されていてもよい、ベンゼン環を表し、mは1〜2の整数を表し、
【化2】
は、一重結合または二重結合を表し、
【化3】
は、α配置を表し、
【化4】
は、β配置を表し、
【化5】
は、α配置、β配置またはそれらの任意の混合物を表す。)で示される化合物、その塩、またはその溶媒和物。
【請求項2】
Zが−(CH2m−(すべての記号は請求項1記載と同じ意味を表す。)である請求項1記載の化合物。
【請求項3】
Yが−O−である請求項1または2記載の化合物。
【請求項4】
一般式(I)で示される化合物が、
(1)メチル 4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−フェノキシ−1−ブテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタノアート、
(2)メチル 4−{(2R,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−フェノキシ−1−ブテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタノアート、
(3)4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−フェノキシ−1−ブテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸、
(4)4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3S)−3−ヒドロキシ−5−フェニル−1−ペンテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸、
(5)4−{(2R,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−フェノキシ−1−ブテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸、
(6)4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−5−[(1E,3R)−4−(4−フルオロフェノキシ)−3−ヒドロキシ−1−ブテン−1−イル]−6−ヒドロキシオクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸、
(7)4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−5−[(1E,3R)−4−(3−クロロフェノキシ)−3−ヒドロキシ−1−ブテン−1−イル]−6−ヒドロキシオクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸、
(8)4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−(3−メチルフェノキシ)−1−ブテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸、
(9)4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−5−[(1E,3R)−4−(2−フルオロフェノキシ)−3−ヒドロキシ−1−ブテン−1−イル]−6−ヒドロキシオクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸、
(10)4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−5−[(1E,3R)−4−(3−フルオロフェノキシ)−3−ヒドロキシ−1−ブテン−1−イル]−6−ヒドロキシオクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸、
(11)4−[(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−{(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェノキシ]−1−ブテン−1−イル}オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル]ブタン酸、
(12)4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−(2−メトキシフェノキシ)−1−ブテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸、
(13)4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−(3−メトキシフェノキシ)−1−ブテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸、
(14)4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−(4−メトキシフェノキシ)−1−ブテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸、
(15)4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−(2−メチルフェノキシ)−1−ブテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸、
(16)4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−(4−メチルフェノキシ)−1−ブテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸、
(17)4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−5−[(1E,3R)−4−(4−クロロフェノキシ)−3−ヒドロキシ−1−ブテン−1−イル]−6−ヒドロキシオクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸、
(18)4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−5−[(1E,3R)−4−(2−クロロフェノキシ)−3−ヒドロキシ−1−ブテン−1−イル]−6−ヒドロキシオクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸、
(19)4−[(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−{(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−[2−(トリフルオロメチル)フェノキシ]−1−ブテン−1−イル}オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル]ブタン酸、
(20)4−[(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−{(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−[4−(トリフルオロメチル)フェノキシ]−1−ブテン−1−イル}オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル]ブタン酸、
(21)4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(3R)−3−ヒドロキシ−4−フェノキシブチル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸、
(22)2−プロパニル 4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(3R)−3−ヒドロキシ−4−フェノキシブチル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタノアート、
(23)2−プロパニル 4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−フェノキシ−1−ブテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタノアート、
(24)2−プロパニル 4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−5−[(1E,3R)−4−(3−クロロフェノキシ)−3−ヒドロキシ−1−ブテン−1−イル]−6−ヒドロキシオクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタノアート、
(25)2−プロパニル 4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−(3−メチルフェノキシ)−1−ブテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタノアート、
(26)2−プロパニル 4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−5−[(1E,3R)−4−(3−フルオロフェノキシ)−3−ヒドロキシ−1−ブテン−1−イル]−6−ヒドロキシオクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタノアート、
(27)2−プロパニル 4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−5−[(1E,3R)−4−(4−フルオロフェノキシ)−3−ヒドロキシ−1−ブテン−1−イル]−6−ヒドロキシオクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタノアート、
(28)2−プロパニル 4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−(3−メトキシフェノキシ)−1−ブテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタノアート、
(29)2−プロパニル 4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−(2−メトキシフェノキシ)−1−ブテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタノアート、および
(30)2−プロパニル 4−[(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−{(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェノキシ]−1−ブテン−1−イル}オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル]ブタノアートからなる群から選択される化合物である請求項1記載の化合物。
【請求項5】
請求項1記載の一般式(I)で示される化合物、その塩、またはその溶媒和物を含有してなる医薬組成物。
【請求項6】
請求項1記載の一般式(I)で示される化合物、その塩、またはその溶媒和物が、FPアゴニストである請求項5記載の医薬組成物。
【請求項7】
眼疾患の予防および/または治療剤である請求項5記載の医薬組成物。
【請求項8】
眼疾患が、緑内障、高眼圧症、黄斑浮腫、黄斑変性、網膜および視神経張力上昇、近視、遠視、乱視、ドライアイ、網膜剥離、白内障、外傷または炎症による眼圧上昇、薬剤による眼圧上昇、または術後の眼圧上昇である請求項7記載の医薬組成物。
【請求項9】
一般式(II)
【化6】
(式中、Xは−S−を表し、環A1は、(1)ハロゲン原子、(2)CF3、(3)OCF3、(4)C1〜4アルコキシ基、(5)C1〜4アルキル基、(6)水酸基、および(7)ニトリル基からなる群から選択される1〜5個の置換基で置換されていてもよいC3〜10の炭素環、または(1)ハロゲン原子、(2)CF3、(3)OCF3、(4)C1〜4アルコキシ基、(5)C1〜4アルキル基、(6)水酸基、および(7)ニトリル基からなる群から選択される1〜5個の置換基で置換されていてもよい3〜10員の複素環を表し、R2、R3、R4およびR5はそれぞれ独立して、(1)水素原子、(2)C1〜4アルキル基、(3)ハロゲン原子または(4)水酸基を表し、その他の記号は請求項1記載と同じ意味を表す。)で示される化合物、その塩、またはその溶媒和物を含有してなる眼疾患の予防および/または治療剤。
【請求項10】
眼疾患の予防および/または治療のために使用される請求項1記載の一般式(I)で示される化合物、その塩、またはその溶媒和物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般式(I)
【化1】
(式中、すべての記号は後記と同じ意味を表す。)で示される化合物、その塩またはその溶媒和物、またはそのプロドラッグ(以下、本発明化合物と略記することがある。)に関する。
【背景技術】
【0002】
緑内障とは、一時的または永久的な視野欠損、視力低下を起こす視機能障害を特徴とする眼疾患である。眼房水の循環障害により眼房水が蓄積し、持続的に眼圧が上昇するため、視神経が圧迫されることに起因する。緑内障の治療は、眼圧を下げることが有効であり、眼圧を下げるために、例えば薬物治療(点眼薬、内服薬、点滴治療)、レーザー治療、手術治療が施される。
【0003】
これまで、生理活性物質であるプロスタグランジン(PG)類のうち、眼圧を低下させるものとして、PGF類やPGI類が知られている。これらの誘導体を用いて緑内障や高眼圧症の治療薬としての開発が進められてきており、実際に市販されている薬物(例えば、ラタノプロスト等)もある。しかしながら、既存の緑内障治療薬では単独での眼圧下降作用が不十分なこともあり、緑内障治療の現場においては、より強い眼圧下降作用を求めて、高濃度の投与あるいは作用機序の異なる薬物の併用療法が行われているため、副作用の発現が懸念されている。そのため、より強力な眼圧下降作用を有し、かつ安全性の高い薬物が求められている。
【0004】
ところで、本発明化合物の先行技術として、以下のPG誘導体が挙げられる。
【0005】
二環式の母骨格を有するPG誘導体としては、例えば、一般式(a)
【化2】
(式中、環A
【化3】
(式中
【化4】
はα−配置、β−配置またはそれらの混合物を表わす。)等を、環Bは、
【化5】
(式中、raは0、1または2を表わす。)等を、Yはエチレン基、ビニレン基またはエチニレン基を、Zは−(CHma−(式中、maは3、4または5を表わす。)等を、R1aは−COOR8a(式中、R8aは水素原子またはC1−12アルキル基等を表わす。)等を、R2aは水素原子等を、R3aは単結合またはC1−5アルキレン基等を、R4aはC1−8アルコキシ基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、C1−8アルキル基で置換されていてもよいフェノキシ基等を、R5aは水素原子等を表わす。)で示される化合物はPGI類縁体として開示されており、避妊または月経調整に有用であることが記載されている(特許文献1参照)。
【0006】
また、一般式(b)
【化6】
(式中、Lは−(CHdb−(式中、dbは1から5を表す。)等を、Q2bはO等を、R1bは−COOR19b(式中、R19bはC1−12アルキル基または水素原子等を表す。)等を、環R22b
【化7】
(式中、R4bは水素原子等を表す。)等を、R25b
【化8】
(式中、R5bおよびR6bは水素原子等を、Zは−O−等を、TはC1−4アルキル基、フッ素、塩素、トリフルオロメチル、または−OR7b−(式中、R7bはC1−4アルキルを表す。)を、sbは0、1、2または3を、X
【化9】
を表す(基の定義は一部抜粋した。)。)で示される化合物(特許文献2参照)が知られている。
【0007】
さらに、一般式(c)
【化10】
(式中、Rは(a)遊離カルボキシ基またはエステル化されたカルボキシ基等より選択され、Z1cは水素またはハロゲンであり、pcは0または1〜7の整数であり、qcは1または2であり、R1cは水素、ヒドロキシ等であり、Yは−CH−CH−、
【化11】
(式中、Z2cは水素またはハロゲンである。)等より選択され、R2cおよびR5cのうちの一方は水素、C1−6アルキル等であり、そして他方はヒドロキシ等であり、R3cおよびR4cの各々は同じであるかまたは異なっていてそれらは水素、C1−6アルキル、フッ素であり、n1cおよびn2cの各々は同じであるかまたは異なっていて0または1〜6の整数であり、Xは−O−、−S−および−(CHmc−(式中、mcは0または1である)からなる群より選択され、R6cは水素、C1−4アルキル、置換されていないかまたはハロゲン、C1−6アルキル等からなる群より選択される1個またはそれ以上の置換基により置換されているアリール等からなる群より選択される。)で示される化合物が知られている(特許文献3参照)。
【0008】
ところで、PG受容体のうち、IP受容体へのアゴニスト活性は、充血や房水タンパク質上昇を起こすことが報告されており、眼に対する刺激を誘発するおそれが懸念されている(非特許文献1および2参照)。そのため、PGI2誘導体である特許文献1、2および3に記載されている化合物は、IP受容体のアゴニスト活性を有することから、眼の刺激性等を誘発するおそれがある。
【0009】
また、EP2およびEP4受容体へのアゴニスト活性は、眼の炎症性反応に関与することが知られている(非特許文献3参照)。
【0010】
本発明化合物は、IP受容体、EP2およびEP4受容体に対するアゴニスト活性が低く、かつFP受容体に対する選択的なアゴニスト活性を有する化合物であるが、いずれの先行技術にもそのような特徴(選択性)に関する記載も示唆もない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第4,367,237号
【特許文献2】米国特許第4,490,548号
【特許文献3】特開昭53−84959号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】インベスティゲイティブ・オフサロマロジー・アンド・ビジュアル・サイエンス(Investigative Ophthalmology & Visual Science)、第28巻、470−476ページ、1987年
【非特許文献2】インベスティゲイティブ・オフサロマロジー・アンド・ビジュアル・サイエンス(Investigative Ophthalmology & Visual Science)、第23巻、383−392ページ、1982年
【非特許文献3】オキュラー・イムノロジー・アンド・インフラメーション(Ocular immunology and inflammation)、第14巻、第3号、157−163ページ、2006年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
強力な眼圧下降作用を有し、かつ眼に対する副作用の懸念のない化合物が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、前記課題を解決するため、PG受容体サブタイプの選択性を向上させた化合物、すなわち、IP受容体、EP2およびEP4受容体に対するアゴニスト活性が低く、かつFP受容体に対する選択的なアゴニスト活性を有する化合物を見出すべく鋭意検討した結果、本発明を完成した。
【0015】
すなわち、本発明は、
[1]一般式(I)
【化12】
(式中、Zは(1)−(CH−、(2)−CH−O−、または(3)−CH−S−を表し、Yは(1)−O−、(2)−S−、または(3)−CH−を表し、Rは(1)水素原子、または(2)C1〜6アルキル基を表し、環Aは(1)ハロゲン原子、(2)CF、(3)OCF、(4)C1〜4アルコキシ基、(5)C1〜4アルキル基、(6)水酸基、および(7)ニトリル基からなる群から選択される1〜5個の置換基で置換されていてもよい、ベンゼン環を表し、mは1〜2の整数を表し、
【化13】
は、一重結合または二重結合を表し、
【化14】
は、α配置を表し、
【化15】
は、β配置を表し、
【化16】
は、α配置、β配置またはそれらの任意の混合物を表す。)で示される化合物、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグ、
[2]Zが−(CH−(すべての記号は前記[1]記載と同じ意味を表す。)である前記[1]記載の化合物、
[3]Yが−O−である前記[1]または[2]記載の化合物、
[4]一般式(I)で示される化合物が、
(1)メチル 4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−フェノキシ−1−ブテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタノアート、
(2)メチル 4−{(2R,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−フェノキシ−1−ブテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタノアート、
(3)4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−フェノキシ−1−ブテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸、
(4)4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3S)−3−ヒドロキシ−5−フェニル−1−ペンテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸、
(5)4−{(2R,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−フェノキシ−1−ブテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸、
(6)4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−5−[(1E,3R)−4−(4−フルオロフェノキシ)−3−ヒドロキシ−1−ブテン−1−イル]−6−ヒドロキシオクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸、
(7)4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−5−[(1E,3R)−4−(3−クロロフェノキシ)−3−ヒドロキシ−1−ブテン−1−イル]−6−ヒドロキシオクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸、
(8)4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−(3−メチルフェノキシ)−1−ブテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸、
(9)4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−5−[(1E,3R)−4−(2−フルオロフェノキシ)−3−ヒドロキシ−1−ブテン−1−イル]−6−ヒドロキシオクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸、
(10)4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−5−[(1E,3R)−4−(3−フルオロフェノキシ)−3−ヒドロキシ−1−ブテン−1−イル]−6−ヒドロキシオクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸、
(11)4−[(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−{(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェノキシ]−1−ブテン−1−イル}オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル]ブタン酸、
(12)4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−(2−メトキシフェノキシ)−1−ブテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸、
(13)4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−(3−メトキシフェノキシ)−1−ブテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸、
(14)4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−(4−メトキシフェノキシ)−1−ブテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸、
(15)4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−(2−メチルフェノキシ)−1−ブテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸、
(16)4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−(4−メチルフェノキシ)−1−ブテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸、
(17)4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−5−[(1E,3R)−4−(4−クロロフェノキシ)−3−ヒドロキシ−1−ブテン−1−イル]−6−ヒドロキシオクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸、
(18)4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−5−[(1E,3R)−4−(2−クロロフェノキシ)−3−ヒドロキシ−1−ブテン−1−イル]−6−ヒドロキシオクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸、
(19)4−[(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−{(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−[2−(トリフルオロメチル)フェノキシ]−1−ブテン−1−イル}オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル]ブタン酸、
(20)4−[(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−{(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−[4−(トリフルオロメチル)フェノキシ]−1−ブテン−1−イル}オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル]ブタン酸、
(21)4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(3R)−3−ヒドロキシ−4−フェノキシブチル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸、
(22)2−プロパニル 4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(3R)−3−ヒドロキシ−4−フェノキシブチル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタノアート、
(23)2−プロパニル 4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−フェノキシ−1−ブテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタノアート、
(24)2−プロパニル 4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−5−[(1E,3R)−4−(3−クロロフェノキシ)−3−ヒドロキシ−1−ブテン−1−イル]−6−ヒドロキシオクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタノアート、
(25)2−プロパニル 4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−(3−メチルフェノキシ)−1−ブテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタノアート、
(26)2−プロパニル 4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−5−[(1E,3R)−4−(3−フルオロフェノキシ)−3−ヒドロキシ−1−ブテン−1−イル]−6−ヒドロキシオクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタノアート、
(27)2−プロパニル 4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−5−[(1E,3R)−4−(4−フルオロフェノキシ)−3−ヒドロキシ−1−ブテン−1−イル]−6−ヒドロキシオクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタノアート、
(28)2−プロパニル 4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−(3−メトキシフェノキシ)−1−ブテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタノアート、
(29)2−プロパニル 4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−(2−メトキシフェノキシ)−1−ブテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタノアート、および
(30)2−プロパニル 4−[(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−{(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェノキシ]−1−ブテン−1−イル}オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル]ブタノアートからなる群から選択される化合物である前記[1]記載の化合物、
[5]前記[1]記載の一般式(I)で示される化合物、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグを含有してなる医薬組成物、
[6]前記[1]記載の一般式(I)で示される化合物、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグが、FPアゴニストである前記[5]記載の医薬組成物、
[7]眼疾患の予防および/または治療剤である前記[5]記載の医薬組成物、
[8]眼疾患が、緑内障、高眼圧症、黄斑浮腫、黄斑変性、網膜および視神経張力上昇、近視、遠視、乱視、ドライアイ、網膜剥離、白内障、外傷または炎症による眼圧上昇、薬剤による眼圧上昇、または術後の眼圧上昇である前記[7]記載の医薬組成物、
[9]一般式(II)
【化17】
(式中、Xは(1)−O−または(2)−S−を表し、環Aは、(1)ハロゲン原子、(2)CF、(3)OCF、(4)C1〜4アルコキシ基、(5)C1〜4アルキル基、(6)水酸基、および(7)ニトリル基からなる群から選択される1〜5個の置換基で置換されていてもよいC3〜10の炭素環、または(1)ハロゲン原子、(2)CF、(3)OCF、(4)C1〜4アルコキシ基、(5)C1〜4アルキル基、(6)水酸基、および(7)ニトリル基からなる群から選択される1〜5個の置換基で置換されていてもよい3〜10員の複素環を表し、R、R、RおよびRはそれぞれ独立して、(1)水素原子、(2)C1〜4アルキル基、(3)ハロゲン原子または(4)水酸基を表し、その他の記号は前記[1]記載と同じ意味を表す。)で示される化合物、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグを含有してなる眼疾患の予防および/または治療剤、
[10]前記[1]記載の一般式(I)で示される化合物、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグの有効量を哺乳動物に投与することを特徴とする、眼疾患の予防および/または治療方法、および
[11]眼疾患の予防および/または治療のために使用される前記[1]記載の一般式(I)で示される化合物、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグ等に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明化合物は、強い眼圧下降作用を有し、眼刺激性(充血、角膜混濁等)、房水タンパク質上昇等の眼に対する副作用のない緑内障治療剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明化合物および比較化合物の点眼後のDraize評点に基づく眼刺激性の推移を表すグラフである。
図2】本発明化合物および比較化合物の点眼後の房水中のタンパク質濃度推移を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
本発明において、C1〜6アルキル基とは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、tert−ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル等の直鎖状または分岐鎖状のC1〜6アルキル基を意味する。
【0020】
本発明において、C1〜4アルキル基とは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル等の直鎖状または分岐鎖状のC1〜4アルキル基を意味する。
【0021】
本発明において、C1〜4アルコキシ基とは、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブチルオキシ、tert−ブトキシ等の直鎖状または分岐鎖状のC1〜4アルコキシ基を意味する。
【0022】
本発明において、ハロゲン原子とは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素を意味する。
【0023】
本発明において、C3〜10の炭素環とは、C3〜10の単環もしくは二環式炭素環、またはその一部もしくは全部が飽和されていてもよい炭素環を意味し、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエン、シクロオクタジエン、ベンゼン、ペンタレン、パーヒドロペンタレン、アズレン、パーヒドロアズレン、インデン、パーヒドロインデン、インダン、パーヒドロインダン、ナフタレン、ジヒドロナフタレン、テトラヒドロナフタレン、パーヒドロナフタレン等が挙げられる。
【0024】
本発明において、C3〜7の炭素環とは、C3〜7の単環式炭素環、またはその一部もしくは全部が飽和されていてもよい炭素環を意味し、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエン、ベンゼン等が挙げられる。
【0025】
本発明において、3〜10員の複素環とは、酸素原子、窒素原子および硫黄原子から選択される1〜5個のヘテロ原子を含む、一部もしくは全部飽和されていてもよい3〜10員の単環または二環式複素環を意味し、例えば、ピロール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、アゼピン、ジアゼピン、フラン、ピラン、オキセピン、チオフェン、チオピラン、チエピン、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、フラザン、オキサジアゾール、オキサジン、オキサジアジン、オキサゼピン、オキサジアゼピン、チアジアゾール、チアジン、チアジアジン、チアゼピン、チアジアゼピン、アジリジン、アゼチジン、ピロリン、ピロリジン、イミダゾリン、イミダゾリジン、トリアゾリン、トリアゾリジン、テトラゾリン、テトラゾリジン、ピラゾリン、ピラゾリジン、ジヒドロピリジン、テトラヒドロピリジン、ピペリジン、ジヒドロピラジン、テトラヒドロピラジン、ピペラジン、ジヒドロピリミジン、テトラヒドロピリミジン、パーヒドロピリミジン、ジヒドロピリダジン、テトラヒドロピリダジン、パーヒドロピリダジン、ジヒドロアゼピン、テトラヒドロアゼピン、パーヒドロアゼピン、ジヒドロジアゼピン、テトラヒドロジアゼピン、パーヒドロジアゼピン、オキシラン、オキセタン、ジヒドロフラン、テトラヒドロフラン、ジヒドロピラン、テトラヒドロピラン、ジヒドロオキセピン、テトラヒドロオキセピン、パーヒドロオキセピン、チイラン、チエタン、ジヒドロチオフェン、テトラヒドロチオフェン、ジヒドロチオピラン、テトラヒドロチオピラン、ジヒドロチエピン、テトラヒドロチエピン、パーヒドロチエピン、ジヒドロオキサゾール、テトラヒドロオキサゾール(オキサゾリジン)、ジヒドロイソオキサゾール、テトラヒドロイソオキサゾール(イソオキサゾリジン)、ジヒドロチアゾール、テトラヒドロチアゾール(チアゾリジン)、ジヒドロイソチアゾール、テトラヒドロイソチアゾール(イソチアゾリジン)、ジヒドロフラザン、テトラヒドロフラザン、ジヒドロオキサジアゾール、テトラヒドロオキサジアゾール(オキサジアゾリジン)、ジヒドロオキサジン、テトラヒドロオキサジン、ジヒドロオキサジアジン、テトラヒドロオキサジアジン、ジヒドロオキサゼピン、テトラヒドロオキサゼピン、パーヒドロオキサゼピン、ジヒドロオキサジアゼピン、テトラヒドロオキサジアゼピン、パーヒドロオキサジアゼピン、ジヒドロチアジアゾール、テトラヒドロチアジアゾール(チアジアゾリジン)、ジヒドロチアジン、テトラヒドロチアジン、ジヒドロチアジアジン、テトラヒドロチアジアジン、ジヒドロチアゼピン、テトラヒドロチアゼピン、パーヒドロチアゼピン、ジヒドロチアジアゼピン、テトラヒドロチアジアゼピン、パーヒドロチアジアゼピン、モルホリン、チオモルホリン、オキサチアン、ジオキソラン、ジオキサン、ジチオラン、ジチアン、インドール、イソインドール、インドリジン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、ジチアナフタレン、インダゾール、キノリン、イソキノリン、キノリジン、プリン、フタラジン、プテリジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、ピロロピリジン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、クロメン、インドリン、イソインドリン、ジヒドロベンゾフラン、パーヒドロベンゾフラン、ジヒドロイソベンゾフラン、パーヒドロイソベンゾフラン、ジヒドロベンゾチオフェン、パーヒドロベンゾチオフェン、ジヒドロイソベンゾチオフェン、パーヒドロイソベンゾチオフェン、ジヒドロインダゾール、パーヒドロインダゾール、ジヒドロキノリン、テトラヒドロキノリン、パーヒドロキノリン、ジヒドロイソキノリン、テトラヒドロイソキノリン、パーヒドロイソキノリン、ジヒドロフタラジン、テトラヒドロフタラジン、パーヒドロフタラジン、ジヒドロナフチリジン、テトラヒドロナフチリジン、パーヒドロナフチリジン、ジヒドロキノキサリン、テトラヒドロキノキサリン、パーヒドロキノキサリン、ジヒドロキナゾリン、テトラヒドロキナゾリン、パーヒドロキナゾリン、テトラヒドロピロロピリジン、ジヒドロシンノリン、テトラヒドロシンノリン、パーヒドロシンノリン、ベンゾオキサチアン、ジヒドロベンゾオキサジン、ジヒドロベンゾチアジン、ピラジノモルホリン、ジヒドロベンゾオキサゾール、パーヒドロベンゾオキサゾール、ジヒドロベンゾチアゾール、パーヒドロベンゾチアゾール、ジヒドロベンゾイミダゾール、パーヒドロベンゾイミダゾールが挙げられる。
【0026】
本発明において、Zにおける硫黄原子は、酸化されてもよい硫黄原子を包含する。酸化されてもよい硫黄原子としては、S、SOまたはSOを意味する。
【0027】
本発明において、Rとしては、メチル、エチル、プロピル、またはイソプロピルが好ましい。
【0028】
本発明において、Zとしては、−(CH−が好ましい。
【0029】
本発明において、Yとしては、−O−が好ましい。
【0030】
本発明において、Xとしては、−S−が好ましい。
【0031】
本発明において、環Aで示されるベンゼン環の置換基としては、C1〜4アルキル基、C1〜4アルコキシ基、CFまたはハロゲン原子が好ましく、無置換も好ましい。
【0032】
本発明において、mとしては、2が好ましい。
【0033】
本発明において、α鎖とは、各一般式中、6員環に結合する側鎖を意味し、ω鎖とは5員環に結合する側鎖を意味する。
【0034】
本発明において、一般式(I)で示される化合物のうち、一般式(I−1)
【化18】
(式中、すべての記号は前記と同じ意味を表す。)で示される化合物が好ましい。
【0035】
本発明において、一般式(I−1)で示される化合物としては、例えば、
(1)メチル 4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−フェノキシ−1−ブテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタノアート(化合物14)、
(2)メチル 4−{(2R,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−フェノキシ−1−ブテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタノアート(化合物14(3))、
(3)4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−フェノキシ−1−ブテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸(化合物15)、
(4)4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3S)−3−ヒドロキシ−5−フェニル−1−ペンテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸(化合物15(2))、
(5)4−{(2R,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−フェノキシ−1−ブテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸(化合物15(3))、
(6)4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−5−[(1E,3R)−4−(4−フルオロフェノキシ)−3−ヒドロキシ−1−ブテン−1−イル]−6−ヒドロキシオクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸(化合物15(4))、
(7)4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−5−[(1E,3R)−4−(3−クロロフェノキシ)−3−ヒドロキシ−1−ブテン−1−イル]−6−ヒドロキシオクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸(化合物15(5))、
(8)4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−(3−メチルフェノキシ)−1−ブテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸(化合物15(6))、
(9)4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−5−[(1E,3R)−4−(2−フルオロフェノキシ)−3−ヒドロキシ−1−ブテン−1−イル]−6−ヒドロキシオクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸(化合物15(7))、
(10)4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−5−[(1E,3R)−4−(3−フルオロフェノキシ)−3−ヒドロキシ−1−ブテン−1−イル]−6−ヒドロキシオクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸(化合物15(8))、
(11)4−[(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−{(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェノキシ]−1−ブテン−1−イル}オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル]ブタン酸(化合物15(9))、
(12)4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−(2−メトキシフェノキシ)−1−ブテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸(化合物15(10))、
(13)4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−(3−メトキシフェノキシ)−1−ブテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸(化合物15(11))、
(14)4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−(4−メトキシフェノキシ)−1−ブテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸(化合物15(12))、
(15)4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−(2−メチルフェノキシ)−1−ブテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸(化合物15(13))、
(16)4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−(4−メチルフェノキシ)−1−ブテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸(化合物15(14))、
(17)4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−5−[(1E,3R)−4−(4−クロロフェノキシ)−3−ヒドロキシ−1−ブテン−1−イル]−6−ヒドロキシオクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸(化合物15(15))、
(18)4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−5−[(1E,3R)−4−(2−クロロフェノキシ)−3−ヒドロキシ−1−ブテン−1−イル]−6−ヒドロキシオクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸(化合物15(16))、
(19)4−[(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−{(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−[2−(トリフルオロメチル)フェノキシ]−1−ブテン−1−イル}オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル]ブタン酸(化合物15(17))、
(20)4−[(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−{(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−[4−(トリフルオロメチル)フェノキシ]−1−ブテン−1−イル}オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル]ブタン酸(化合物15(18))、
(21)4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(3R)−3−ヒドロキシ−4−フェノキシブチル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸(化合物15(20))、
(22)2−プロパニル 4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(3R)−3−ヒドロキシ−4−フェノキシブチル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタノアート(化合物16)、
(23)2−プロパニル 4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−フェノキシ−1−ブテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタノアート(化合物16(1))、
(24)2−プロパニル 4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−5−[(1E,3R)−4−(3−クロロフェノキシ)−3−ヒドロキシ−1−ブテン−1−イル]−6−ヒドロキシオクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタノアート(化合物16(2))、
(25)2−プロパニル 4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−(3−メチルフェノキシ)−1−ブテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタノアート(化合物16(3))、
(26)2−プロパニル 4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−5−[(1E,3R)−4−(3−フルオロフェノキシ)−3−ヒドロキシ−1−ブテン−1−イル]−6−ヒドロキシオクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタノアート(化合物16(4))、
(27)2−プロパニル 4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−5−[(1E,3R)−4−(4−フルオロフェノキシ)−3−ヒドロキシ−1−ブテン−1−イル]−6−ヒドロキシオクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタノアート(化合物16(5))、
(28)2−プロパニル 4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−(3−メトキシフェノキシ)−1−ブテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタノアート(化合物16(6))、
(29)2−プロパニル 4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−(2−メトキシフェノキシ)−1−ブテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタノアート(化合物16(7))、または
(30)2−プロパニル 4−[(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−{(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェノキシ]−1−ブテン−1−イル}オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル]ブタノアート(化合物16(9))等が好ましい。
【0036】
より好ましくは、(1)メチル 4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−フェノキシ−1−ブテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタノアート(化合物14)、(2)4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−フェノキシ−1−ブテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸(化合物15)、または(3)2−プロパニル 4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−フェノキシ−1−ブテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタノアート(化合物16(1))が挙げられる。
【0037】
[異性体]
本発明においては、特に指示しない限り異性体はこれをすべて包含する。例えば、アルキル基には直鎖のものおよび分枝鎖のものが含まれる。さらに、さらに、二重結合、環、縮合環における異性体(E体、Z体、シス体、トランス体)、不斉炭素の存在等による異性体(R、S体、α、β配置、エナンチオマー、ジアステレオマー)、旋光性を有する光学活性体(D、L、d、l体)、クロマトグラフ分離による極性体(高極性体、低極性体)、平衡化合物、回転異性体、これらの任意の割合の混合物、ラセミ混合物は、すべて本発明に含まれる。また、本発明においては、互変異性体による異性体をもすべて包含する。
【0038】
また、本発明における光学活性な化合物は、100%純粋なものだけでなく、50%未満のその他の光学異性体が含まれていてもよい。
【0039】
本発明においては、特に断わらない限り、当業者にとって明らかなように記号
【化19】
は紙面の向こう側(すなわちα配置)に結合していることを表し、
【化20】
は紙面の手前側(すなわちβ配置)に結合していることを表し、
【化21】
はα配置、β配置またはそれらの混合物であることを表し、
【化22】
は、α配置とβ配置の混合物であることを表す。
【0040】
一般式(I)で示される化合物は、公知の方法で相当する塩に変換される。塩は、水溶性のものが好ましい。適当な塩としては、アルカリ金属(カリウム、ナトリウム等)の塩、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム等)の塩、アンモニウム塩、薬学的に許容される有機アミン(テトラメチルアンモニウム、トリエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、シクロペンチルアミン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、ピペリジン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、リジン、アルギニン、N−メチル−D−グルカミン等)の塩、酸付加物塩(無機酸塩(塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩等)、有機酸塩(酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、イセチオン酸塩、グルクロン酸塩、グルコン酸塩等)等が挙げられる。
【0041】
一般式(I)で示される化合物およびその塩は、溶媒和物に変換することもできる。溶媒和物は低毒性かつ水溶性であることが好ましい。適当な溶媒和物としては、例えば、水、アルコール系の溶媒(例えば、エタノール等)との溶媒和物が挙げられる。
【0042】
また、一般式(I)で示される化合物のプロドラッグは、生体内において酵素や胃酸等による反応により、一般式(I)で示される化合物に変換する化合物をいう。一般式(I)で示される化合物のプロドラッグとしては、一般式(I)で示される化合物が水酸基を有する場合、該水酸基がアシル化、アルキル化、リン酸化、ホウ酸化された化合物(例えば、本発明化合物の水酸基がアセチル化、パルミトイル化、プロパノイル化、ピバロイル化、サクシニル化、フマリル化、アラニル化、ジメチルアミノメチルカルボニル化された化合物等);一般式(I)で示される化合物のカルボキシル基がエステル化、アミド化された化合物(例、一般式(I)で示される化合物のカルボキシル基がエチルエステル化、イソプロピルエステル化、フェニルエステル化、カルボキシメチルエステル化、ジメチルアミノメチルエステル化、ピバロイルオキシメチルエステル化、エトキシカルボニルオキシエチルエステル化、フタリジルエステル化、(5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル)メチルエステル化、シクロヘキシルオキシカルボニルエチルエステル化、メチルアミド化された化合物など);等が挙げられる。これらの化合物は公知の方法によって製造することができる。また、一般式(I)で示される化合物のプロドラッグは水和物および非水和物のいずれであってもよい。また、一般式(I)で示される化合物のプロドラッグは、廣川書店1990年刊「医薬品の開発」第7巻「分子設計」163〜198頁に記載されているような、生理的条件で一般式(I)で示される化合物に変化するものであってもよい。さらに、一般式(I)で示される化合物は同位元素(例えば、H、H、11C、13C、14C、13N、15N、15O、17O、18O、35S、18F、36Cl、123I、125I等)等で標識されていてもよい。
【0043】
特に、一般式(I)で示される化合物を点眼投与する際に、一般式(I)で示される化合物の好ましいプロドラッグとしては、一般式(I)で示される化合物の有するカルボキシル基が、メチルエステル化、エチルエステル化、プロピルエステル化、イソプロピルエステル化、ブチルエステル化、イソブチルエステル化、sec−ブチルエステル化、tert−ブチルエステル化、ペンチルエステル化、イソペンチルエステル化、ネオペンチルエステル化、シクロペンチルエステル化、ヘキシルエステル化、シクロヘキシルエステル化、トリフルオロエチルエステル化、フェニルエステル化、カルボキシメチルエステル化、ジメチルアミノメチルエステル化、ピバロイルオキシメチルエステル化、エトキシカルボニルオキシエチルエステル化、フタリジルエステル化、(5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル)メチルエステル化、シクロヘキシルオキシカルボニルエチルエステル化、メチルアミド化された化合物等が挙げられる。
【0044】
[本発明化合物の製造方法]
本発明化合物は、公知の方法、例えば、Comprehensive Organic Transformations : A Guide to Functional Group Preparations, 2nd Edition (Richard C. Larock, John Wiley & Sons Inc, 1999)に記載された方法、または実施例に示す方法等を適宜改良し、組み合わせて用いることで製造することができる。例えば、一般式(II)中のXが−S−の化合物は米国特許第4,367,237号、一般式(II)中のXが−O−の化合物は米国特許第4,490,537号に記載された方法を用いて製造することができる。
【0045】
また、一般式(I)で示される化合物は、以下の方法にて製造することができる。
【0046】
一般式(I)で示される化合物のうち、
【化23】
が二重結合を表わす化合物、すなわち一般式(I−a)
【化24】
(式中、すべての記号は前記と同じ意味を表す。)で示される化合物は、以下の反応工程式1によって製造することができる。
【0047】
【化25】
(式中、R101はC1−6アルキル基を表わし、Tは水酸基の保護基(例えば、2−テトラヒドロピラニル(THP)基等)を表わす。環Aは環Aと同じ意味を表わすが、環Aが置換基を有する場合、保護が必要な場合には保護されているものとする。その他の記号は前記と同じ意味を表わす。)
【0048】
反応工程式1中、反応1は公知であり、例えば、一般式(III)で示される化合物と、一般式(IV)で示される化合物を用いて、有機溶媒(例えば、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジオキサン、アセトニトリル、エタノール等)中、または水中、もしくはその混合液中で、塩基(水素化ナトリウム、カリウム tert−ブトキシド、炭酸カリウム、三級アミン+塩化リチウム等)の存在下、−20〜70℃の温度で反応させることによって行なわれる。
【0049】
反応工程式1中、反応2は公知であり、反応1で得られた一般式(V)で示される化合物を、有機溶媒(テトラヒドロフラン、メタノール、ジメトキシエタン、トルエン、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、ジオキサン等)中、塩化セリウムの存在下または非存在下、還元剤(水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素亜鉛等)を用いて、−20〜50℃の温度で行なわれる。一方の立体のみを選択的に得たい場合は、不斉還元剤(クロロジイソピノカンフェニルボラン等)、または不斉補助剤と還元剤の組み合わせ((R)−2−メチル−CBS−オキサザボロリジンと水素化ホウ素・テトラヒドロフラン錯体、(S)−(−)−ビナフトールと水素化アルミニウムリチウム等)を用いて、−100〜50℃の温度で行なわれる。
【0050】
反応工程式1中、保護基の脱保護反応は公知であり、以下の方法で行うことができる。例えば、(1)アルカリ加水分解による脱保護反応、(2)酸性条件下における脱保護反応、(3)加水素分解による脱保護反応、(4)シリル基の脱保護反応、(5)金属を用いる脱保護反応、(6)金属錯体を用いる脱保護反応等が挙げられる。
【0051】
これらの方法を具体的に説明すると、
(1)アルカリ加水分解による脱保護反応は、例えば有機溶媒(例えば、メタノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン等)中、アルカリ金属の水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等)、アルカリ土類金属の水酸化物(例えば、水酸化バリウム、水酸化カルシウム等)または炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)あるいはその水溶液もしくはこれらの混合物を用いて、0〜40℃で行なわれる。
【0052】
(2)酸条件下での脱保護反応は、例えば有機溶媒(例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、ジオキサン、酢酸エチル、メタノール、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン、アニソール等)中、有機酸(例えば、酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、p−トシル酸等)、または無機酸(例えば、塩酸、硫酸等)もしくはこれらの混合物(例えば、臭化水素/酢酸等)中、2,2,2−トリフルオロエタノールの存在下または非存在下、0〜100℃で行なわれる。
【0053】
(3)加水素分解による脱保護反応は、例えば溶媒(例えば、エーテル系(例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエチルエーテル等)、アルコール系(例えば、メタノール、エタノール等)、ベンゼン系(例えば、ベンゼン、トルエン等)、ケトン系(例えば、アセトン、メチルエチルケトン等)、ニトリル系(例えば、アセトニトリル等)、アミド系(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド等)、水、酢酸エチル、酢酸またはそれらの2以上の混合溶媒等)中、触媒(例えば、パラジウム−炭素、パラジウム黒、水酸化パラジウム−炭素、酸化白金、ラネーニッケル等)の存在下、常圧または加圧下の水素雰囲気下またはギ酸アンモニウム存在下、0〜200℃で行なわれる。
【0054】
(4)シリル基の脱保護反応は、例えば水と混和しうる有機溶媒(例えば、テトラヒドロフラン、アセトニトリル等)中、テトラブチルアンモニウムフルオライドを用いて、0〜40℃で行なわれる。また、例えば、有機酸(例えば、酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、p−トシル酸等)、または無機酸(例えば、塩酸、硫酸等)もしくはこれらの混合物(例えば、臭化水素/酢酸等)中、−10〜100℃で行なわれる。
【0055】
(5)金属を用いる脱保護反応は、例えば酸性溶媒(例えば、酢酸、pH4.2〜7.2の緩衝液またはそれらの溶液とテトラヒドロフラン等の有機溶媒との混合液)中、粉末亜鉛の存在下、必要であれば超音波をかけながら、0〜40℃で行なわれる。
【0056】
(6)金属錯体を用いる脱保護反応は、例えば有機溶媒(例えば、ジクロロメタン、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、アセトニトリル、ジオキサン、エタノール等)、水またはそれらの混合溶媒中、トラップ試薬(例えば、水素化トリブチルスズ、トリエチルシラン、ジメドン、モルホリン、ジエチルアミン、ピロリジン等)、有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、2−エチルヘキサン酸等)および/または有機酸塩(例えば、2−エチルヘキサン酸ナトリウム、2−エチルヘキサン酸カリウム等)の存在下、ホスフィン系試薬(例えば、トリフェニルホスフィン等)の存在下または非存在下、金属錯体(例えば、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)、二塩化ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)、塩化トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)等)を用いて、0−40℃で行なわれる。
【0057】
また、上記以外にも、例えばT. W. Greene, Protective Groups in Organic Synthesis, Wiley, New York, 1999に記載された方法によって、脱保護反応を行なうことができる。
【0058】
水酸基の保護基としては、例えばメチル基、トリチル基、メトキシメチル(MOM)基、1−エトキシエチル(EE)基、メトキシエトキシメチル(MEM)基、2−テトラヒドロピラニル(THP)基、トリメチルシリル(TMS)基、トリエチルシリル(TES)基、t−ブチルジメチルシリル(TBDMS)基、t−ブチルジフェニルシリル(TBDPS)基、アセチル(Ac)基、ピバロイル基、ベンゾイル基、ベンジル(Bn)基、p−メトキシベンジル基、アリルオキシカルボニル(Alloc)基、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル(Troc)基等が挙げられる。
【0059】
アミノ基の保護基としては、例えばベンジルオキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル(Alloc)基、1−メチル−1−(4−ビフェニル)エトキシカルボニル(Bpoc)基、トリフルオロアセチル基、9−フルオレニルメトキシカルボニル基、ベンジル(Bn)基、p−メトキシベンジル基、ベンジルオキシメチル(BOM)基、2−(トリメチルシリル)エトキシメチル(SEM)基等が挙げられる。
【0060】
水酸基の保護基としては、上記した以外にも容易にかつ選択的に脱離できる基であれば特に限定されない。例えば、T. W. Greene, Protective Groups in Organic Synthesis, Wiley, New York, 1999に記載されたものが用いられる。
【0061】
一般式(III)で示される化合物は、以下の反応工程式2によって製造することができる。
【化26】
(式中、Tは水酸基の保護基(例えば、tert−ブチルジメチルシリル(TBDMSまたはTBS)基等)を、Phはフェニル基を、Acはアセチル基を、Msはメシル基を表わし、その他の記号は前記と同じ意味を表わす。)
【0062】
反応工程式2中、一般式(VIII)で示される化合物は、一般式(VII)で示される化合物を、保護反応に付すことによって製造することができる。例えば、有機溶媒(例えば、DMF等)中、塩基(例えば、イミダゾール等)を用いて、シラン化合物(例えば、塩化トリメチルシラン(TESCl)、塩化tert−ブチルジメチルシラン(TBSCl)、塩化tert−ブチルジフェニルシラン(TBDPSCl)等)を用いて、−100〜50℃の温度で行なわれる。
【0063】
反応工程式2中、一般式(IX)で示される化合物は、一般式(VIII)で示される化合物を還元反応に付すことによって製造することができる。例えば、有機溶媒(例えば、トルエン、エタノール、テトラヒドロフラン、ヘキサン等)中、還元剤(例えば、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL)、水素化アルミニウムリチウム等)を用いて、−78〜80℃で行われる。
【0064】
反応工程式2中、反応3は公知であり、一般式(IX)で示される化合物を用いて、例えば、有機溶媒(例えば、無水テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、トルエン等)中、塩基(例えば、リチウムジイソプロピルアミド、ブチルリチウム、カリウムt−ブトキシド、水素化ナトリウム等)の存在下、一般式(X)で示されるWittig試薬を用いて、−78〜50℃の温度で反応させることにより行なわれる。
【0065】
反応工程式2中、一般式(XII)で示される化合物は、一般式(XI)で示される化合物をエステル化反応に付すことによって製造することができる。エステル化反応としては例えば、
(1)ハロゲン化アルキルを用いる方法
(2)酸ハライドを用いる方法、
(3)混合酸無水物を用いる方法、
(4)縮合剤を用いる方法
等が挙げられる。
【0066】
一例としてハロゲン化アルキルを用いる方法を具体的に説明すると、例えば、カルボン酸を有機溶媒(例えば、アセトニトリル、アセトン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、クロロホルム、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等)中、炭酸塩(例えば、炭酸セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)、有機塩基(例えば、ジメチルホルムアミド、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等)またはアルカリ金属の水素化物(水素化ナトリウム等)存在下、ハロゲン化アルキルと0〜150℃で反応させることによって行われる。
【0067】
反応工程式2中、一般式(XIII)で示される化合物は、一般式(XII)で示される化合物を光延反応に付すことによって製造することができる。光延反応は公知であり、例えば、アルコールを有機溶媒(ジクロロメタン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ベンゼン、トルエン等)中、アゾ化合物(アゾジカルボン酸ジエチル(DEAD)、アゾジカルボン酸ジイソプロピル、1,1’−(アゾジカルボニル)ジピペリジン、1,1’−アゾビス(N,N−ジメチルホルムアミド)等)およびホスフィン化合物(トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリメチルホスフィン、ポリマーサポートトリフェニルホスフィン等)の存在下、カルボン酸(蟻酸、酢酸、安息香酸等)と0〜60℃で反応させることにより行なわれる。
【0068】
反応工程式2中、反応4は公知であり、一般式(XIII)で示される化合物を用いて、例えば、有機溶媒(メタノール、エタノール、アセトニトリル、N、N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン等)中、または水中、もしくはその混合液中で、塩基(水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等)存在下または非存在下、ヨウ素化試薬(ヨウ素、ヨウ化カリウム、N−ヨードスクシンイミド(NIS)等)を用いて、−30〜100℃の温度で反応させることにより行なわれる。
【0069】
反応工程式2中、一般式(XV)で示される化合物は、一般式(XIV)で示される化合物を前記と同様に還元反応に付すことにより製造することができる。
【0070】
反応工程式2中、反応5は公知であり、一般式(XV)で示される化合物を用いて、例えば、一般式(XVI)で示されるアルコール中、酸(塩酸、p−トルエンスルホン酸、ヨードトリメチルシラン等)、または塩基(ナトリウムメチラート、炭酸カリウム、トリエチルアミン等)を用いて、0〜100℃の温度で反応させることにより行なわれる。
【0071】
反応工程式2中、反応6は公知であり、一般式(XVIII)で示される化合物を用いて、例えば、有機溶媒(メタノール、エタノール、アセトニトリル、N、N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン等)中、または水中、もしくはその混合液中で、塩基(ナトリウムメチラート、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等)存在下または非存在下、水硫化ナトリウムn水和物、チオ酢酸、チオ酢酸カリウム等を用いて、0〜100℃の温度で反応させることにより行なわれる。
【0072】
反応工程式2中、一般式(XX)で示される化合物は、一般式(XIX)で示される化合物を前記と同様に脱保護反応に付すことにより製造することができる。
【0073】
反応工程式2中、一般式(III)で示される化合物は、一般式(XX)で示される化合物を酸化反応に付すことによって製造することができる。酸化反応としては例えば、
(1)DMSO酸化(例えばスワン酸化(Swern oxidation))を用いる方法、
(2)デス−マーチン試薬(Dess-Martin Reagent)を用いる方法,
(3)TEMPO試薬を用いる方法
等が挙げられる。
【0074】
一例としてDMSO酸化を用いる方法を具体的に説明すると、例えば、有機溶媒(例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、酢酸エチル等)中、活性化剤(例えば、オキザリルクロライド、無水酢酸、ピリジン−三酸化硫黄錯体等)、および酸化剤(例えば、ジメチルスルホキシド等)の存在下、アルコール化合物を反応させ、さらに三級アミン(例えば、トリエチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルピペリジン、ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エン等)と−78〜40℃で反応させることにより行なわれる。
【0075】
本明細書中の各反応において、出発原料として用いた化合物、一般式(IV)または一般式(VII)は公知であるか、あるいは公知の方法により容易に製造することができる。
【0076】
本明細書中の各反応において、加熱を伴う反応は、当業者にとって明らかなように、水浴、油浴、砂浴またはマイクロウェーブを用いて行なうことができる。
【0077】
本明細書中の各反応において、適宜、高分子ポリマー(例えば、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリプロピレン、ポリエチレングリコール等)に担持させた固相担持試薬を用いてもよい。
【0078】
本明細書中の各反応において、反応生成物は通常の精製手段、例えば、常圧下または減圧下における蒸留、シリカゲルまたはケイ酸マグネシウムを用いた高速液体クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、イオン交換樹脂、スカベンジャー樹脂あるいはカラムクロマトグラフィーまたは洗浄、再結晶などの方法により精製することができる。精製は反応ごとに行なってもよいし、いくつかの反応終了後に行なってもよい。
【0079】
[毒性]
本発明化合物の毒性は十分に低いものであり、例えば、眼刺激性(充血、角膜混濁等)、房水タンパク質上昇等がほとんどなく、医薬品として安全に使用することができる。
【0080】
[医薬品への適用]
本発明化合物および一般式(II)
【化27】
(式中、すべての記号は前記と同じ意味を表す。)で示される化合物、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグは、選択的なFPアゴニスト活性を有するため、その眼圧下降作用に基づき、眼疾患、例えば、緑内障(急性閉塞隅角緑内障、慢性閉塞隅角緑内障、続発性閉塞隅角緑内障、原発性開放隅角緑内障、続発性開放隅角緑内障、先天性緑内障、正常眼圧緑内障、房水産生過多緑内障等)、高眼圧症、黄斑浮腫、黄斑変性、網膜および視神経張力上昇、近視、遠視、乱視、ドライアイ、網膜剥離、白内障、外傷または炎症等による眼圧上昇、ステロイドまたはホルモン剤等の薬物による眼圧上昇、術後の眼圧上昇等の予防および/または治療剤として有用である。
【0081】
また、本発明化合物および一般式(II)で示される化合物はFPアゴニスト活性を有することから、陣痛誘発剤、陣痛促進剤、分娩促進剤、月経困難症治療剤、骨粗鬆症治療剤、日焼け誘導剤、白髪防止剤、発毛促進剤、睫毛伸長剤、メニエール病治療剤、内耳疾患治療剤等としても有用である。
【0082】
本発明化合物は、
1)その化合物の予防および/または治療効果の補完および/または増強、
2)その化合物の動態・吸収改善、投与量の低減、および/または
3)その化合物の副作用の軽減のために他の薬物と組み合わせて、併用薬として投与してもよい。
【0083】
本発明化合物と他の薬物の併用薬は、1つの製剤中に両成分を配合した配合剤の形態で投与してもよく、また別々の製剤にして投与する形態をとってもよい。この別々の製剤にして投与する場合には、同時投与および時間差による投与が含まれる。また、時間差による投与は、本発明化合物を先に投与し、他の薬物を後に投与してもよいし、他の薬物を先に投与し、本発明化合物を後に投与してもよい。それぞれの投与方法は同じでも異なっていてもよい。
【0084】
上記併用薬により、予防および/または治療効果を奏する疾患は特に限定されず、本発明化合物の予防および/または治療効果を補完および/または増強する疾患であればよい。
【0085】
本発明化合物の緑内障に対する予防および/または治療効果の補完および/または増強のための他の薬物としては、例えば、交感神経作動薬(αアゴニスト:例えば、塩酸アプラクロニジン等、βアゴニスト:例えば、塩酸ジピベフリン等)、副交感神経作動薬(例えば、塩酸ピロカルピン、カルバコール、デメカリウム、エコチオフェートまたは臭化ジスチグミン等)、交感神経抑制薬(αブロッカー:例えば、塩酸ブナゾシン等、βブロッカー:例えば、マレイン酸チモロール、塩酸ベフノロール、塩酸カルテオロール、または塩酸ベタキソロール等、αβブロッカー:例えば、塩酸レボブノロール、ニプラジロール等)、プロスタグランジン系薬物(例えば、イソプロピルウノプロストン、ラタノプロスト、ビマトプロスト、トラヴォプロスト、タフルプロスト、EP2アゴニスト、EP4アゴニストまたはDPアゴニスト等)、炭酸脱水酵素阻害薬(例えば、アセタゾラミド、ジクロフェナミド、メタゾラミド、塩酸ドルゾラミド、またはブリンゾラミド等)、高張浸透圧薬(例えば、グリセリン、グリセリンおよび果糖の配合製剤、イソソルビド、またはD−マンニトール等)、ROCK(Rhoキナーゼ)阻害薬(例えば、Y−27632等)、NMDA拮抗薬等が挙げられる。
【0086】
また、本発明化合物と組み合わせる緑内障治療薬としては、現在までに見出されているものだけでなく今後見出されるものも含まれる。
【0087】
本発明化合物は、通常、全身的または局所的に、経口または非経口の形で投与される。経口剤としては、例えば、内服用液剤(例えば、エリキシル剤、シロップ剤、薬剤的に許容される水剤、懸濁剤、乳剤)、内服用固形剤(例えば、錠剤(舌下錠、口腔内崩壊錠を含む)、丸剤、カプセル剤(ハードカプセル、ソフトカプセル、ゼラチンカプセル、マイクロカプセルを含む)、散剤、顆粒剤、トローチ剤)等が挙げられる。非経口剤としては、例えば、液剤(例えば、注射剤(皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤、点滴剤等)、点眼剤(例えば、水性点眼剤(水性点眼液、水性懸濁点眼液、粘性点眼液、可溶化点眼液等)、非水性点眼剤(非水性点眼液、非水性懸濁点眼液等))等)、外用剤(例えば、軟膏(眼軟膏等))、点耳剤等が挙げられる。これらの製剤は、速放性製剤、徐放性製剤などの放出制御剤であってもよい。これらの製剤は公知の方法、例えば、日本薬局方に記載の方法等により製造することができる。
【0088】
経口剤としての内服用液剤は、例えば、有効成分を一般的に用いられる希釈剤(例えば、精製水、エタノールまたはそれらの混液等)に溶解、懸濁または乳化されることにより製造される。さらにこの液剤は、湿潤剤、懸濁化剤、乳化剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、保存剤、緩衝剤等を含有していてもよい。
【0089】
経口剤としての内服用固形剤は、例えば、有効成分を賦形剤(例えば、ラクトース、マンニトール、グルコース、微結晶セルロース、デンプン等)、結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等)、崩壊剤(例えば、繊維素グリコール酸カルシウム等)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム等)、安定剤、溶解補助剤(グルタミン酸、アスパラギン酸等)等と混合し、常法に従って製剤化される。また、必要によりコーティング剤(例えば、白糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等)で被覆していてもよいし、また2以上の層で被覆していてもよい。
【0090】
非経口剤としての外用剤は公知の方法または通常使用されている処方により製造される。例えば、軟膏剤は有効成分を基剤に研和、または溶融させて製造される。軟膏基剤は公知あるいは通常使用されているものから選ばれる。例えば、高級脂肪酸または高級脂肪酸エステル(例えば、アジピン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、アジピン酸エステル、ミリスチン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、オレイン酸エステル等)、ロウ類(例えば、ミツロウ、鯨ロウ、セレシン等)、界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル等)、高級アルコール(例えば、セタノール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール等)、シリコン油(例えば、ジメチルポリシロキサン等)、炭化水素類(例えば、親水ワセリン、白色ワセリン、精製ラノリン、流動パラフィン等)、グリコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、マクロゴール等)、植物油(例えば、ヒマシ油、オリーブ油、ごま油、テレピン油等)、動物油(例えば、ミンク油、卵黄油、スクワラン、スクワレン等)、水、吸収促進剤、かぶれ防止剤から選ばれるもの単独または2種以上を混合して用いられる。さらに、保湿剤、保存剤、安定化剤、抗酸化剤、着香剤等を含んでいてもよい。
【0091】
非経口剤としての注射剤には溶液、懸濁液、乳濁液および用時溶剤に溶解または懸濁して用いる固形の注射剤を包含される。注射剤は、例えば有効成分を溶剤に溶解、懸濁または乳化させて用いられる。溶剤として、例えば注射用蒸留水、生理食塩水、植物油、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エタノールのようなアルコール類等およびそれらの組み合わせが用いられる。さらにこの注射剤は、安定剤、溶解補助剤(例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸、ポリソルベート80(登録商標)等)、懸濁化剤、乳化剤、無痛化剤、緩衝剤、保存剤等を含んでいてもよい。これらは最終工程において滅菌するか無菌操作法によって製造される。また無菌の固形剤、例えば凍結乾燥品を製造し、その使用前に無菌化または無菌の注射用蒸留水または他の溶剤に溶解して使用することもできる。
【0092】
本発明化合物の好ましい投与剤型としては、点眼剤、眼軟膏、錠剤等が挙げられるが、より好ましくは点眼剤または眼軟膏である。これらは汎用されている技術を用いて製剤化することができる。例えば、点眼剤であれば、添加物として、等張化剤、緩衝剤、pH調節剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤、保存剤等を適宜配合することができる。また、pH調節剤、増粘剤、分散剤などを添加し、薬物を懸濁化させることによって、安定な点眼剤を得ることもできる。
【0093】
等張化剤としては、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、塩化ナトリウム、塩化カリウム、ソルビトール、マンニトール等を挙げることができる。
【0094】
緩衝剤としては、例えば、リン酸、リン酸塩、クエン酸、酢酸、ε-アミノカプロン酸等を挙げることができる。
【0095】
pH調節剤としては、例えば、塩酸、クエン酸、リン酸、酢酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ホウ酸、ホウ砂、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等を挙げることができる。
【0096】
可溶化剤としては、例えば、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、マクロゴール4000等を挙げることができる。
【0097】
増粘剤、分散剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース系高分子、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等を、また、安定化剤としては、例えば、エデト酸、エデト酸ナトリウム等を挙げることができる。
【0098】
保存剤(防腐剤)としては、例えば、汎用のソルビン酸、ソルビン酸カリウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、クロロブタノール等が挙げられ、これらの保存剤を組み合わせて使用することもできる。
【0099】
本発明の有効成分を含有する点眼剤は、pHを4.0〜8.5に設定することが望ましく、また、浸透圧比を1.0付近に設定することが望ましい。
【0100】
本発明の有効成分の投与量は症状、年令、剤型等によって適宜選択できるが、経口剤であれば、好ましくは1〜100mg、より好ましくは5〜30mgを1日1〜数回(例えば、1〜3回)投与すればよい。点眼剤であれば好ましくは0.000001〜5%(w/v)、より好ましくは0.00001〜0.05%(w/v)の濃度のものを1回量1〜数滴を1日1〜数回(例えば、1〜8回)点眼すればよい。また、眼軟膏であれば好ましくは0.000001〜5%(w/w)、より好ましくは0.00001〜0.05%(w/w)の濃度のものを1日1〜数回(例えば、1〜4回)塗布すればよい。
【0101】
もちろん前記したように、投与量は、種々の条件によって変動するので、上記投与量より少ない量で十分な場合もあるし、また範囲を越えて必要な場合もある。
【実施例】
【0102】
以下、実施例によって本発明を詳述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0103】
クロマトグラフィーによる分離の箇所およびTLCに示されているカッコ内の溶媒は、使用した溶出溶媒または展開溶媒を示し、割合は体積比を表わす。
【0104】
NMRデータは特に記載しない限り、H−NMRのデータである。
【0105】
NMRの箇所に示されているカッコ内は測定に使用した溶媒を示す。
【0106】
本明細書中に用いた化合物名は、一般的にIUPACの規則に準じて命名を行なうコンピュータプログラム、ACD/Name(登録商標)またはACD/Nameバッチ(登録商標)を用いるか、または、IUPAC命名法に準じて命名したものである。例えば、
【化28】
で示される化合物は、メチル 4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−フェノキシ−1−ブテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタノアートと命名された。
【0107】
実施例1:(3aR,4S,5R,6aS)−4−({[ジメチル(2−メチル−2−プロパニル)シリル]オキシ}メチル)−5−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)ヘキサヒドロ−2H−シクロペンタ[b]フラン−2−オン(化合物1)
(3aR,4S,5R,6aS)−4−(ヒドロキシメチル)−5−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)ヘキサヒドロ−2H−シクロペンタ[b]フラン−2−オン(CAS登録番号:69222-61-3)(47.5g)とイミダゾール(16.3g)の無水N,N−ジメチルホルムアミド(125mL)溶液に、冷水浴中でt−ブチルジメチルシリルクロリド(30.5g)の無水N,N−ジメチルホルムアミド(82.5mL)溶液を滴下して加えた。室温に昇温して2時間撹拌した後、反応混合物にエタノール(1.25mL)を加えてさらに1時間撹拌した。反応混合物を冷水(500mL)に注ぎ、ヘキサン(200mL)と酢酸エチル(100mL)を加えて撹拌した。二層を分離し、有機層を1M塩酸(100mL)、水(100mL×2 回)、飽和重曹水(100mL)および飽和食塩水(100mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮して、以下の物性値を有する標題化合物(68.4g)を得た。
TLC : Rf 0.75(酢酸エチル:ヘキサン=1:4);
NMR (CDCl3) : δ 5.05-4.9 (m, 1H), 4.7-4.6 (m, 1H), 4.25-4.0 (m, 1H), 4.0-3.75 (m, 1H), 3.56 (t, J=7Hz, 2H), 3.6-3.4 (m, 1H), 2.9-2.0 (m, 6H), 1.9-1.4 (m, 6H), 0.89 (s, 9H), 0.04 (s, 6H)。
【0108】
実施例2:(3aR,4S,5R,6aS)−4−({[ジメチル(2−メチル−2−プロパニル)シリル]オキシ}メチル)−5−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)ヘキサヒドロ−2H−シクロペンタ[b]フラン−2−オール(化合物2)
化合物1(68.4g)の無水トルエン(315mL)溶液を、ドライアイス−メタノール浴で−60℃付近に冷却したのち、ジイソブチルアルミニウムヒドリド/トルエン溶液(0.99M、209mL)を33分間かけて滴下した。2時間撹拌した後、反応混合物にメタノール(3.2mL)を−65℃で3分間かけて滴下して反応を停止した。反応液を0℃付近まで昇温した後、攪拌しながら水(18.5mL+18mL)を2回に分けて滴下した。ここに無水硫酸ナトリウム(7.4g)を加えて室温で1時間撹拌し、セライト(商品名)でろ過した。ろ別した固体をテトラヒドロフラン(160mL)で洗浄し、濃縮して、以下の物性値を有する標題化合物(70.7g)を得た。
TLC : Rf 0.60(酢酸エチル:ヘキサン=1:1);
NMR (CDCl3) : δ 5.7-5.35 (m, 1H), 5.3-5.0 (br), 4.8-4.55 (m, 2H), 4.3-3.75 (m, 2H), 3.7-3.3 (m, 2H), 2.7-1.4 (m, 12H), 0.89 (s, 9H), 0.04 (s, 6H)。
【0109】
実施例3:メチル (5Z)−7−[(1R,2S,3R,5S)−2−({[ジメチル(2−メチル−2−プロパニル)シリル]オキシ}メチル)−5−ヒドロキシ−3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)シクロペンチル]−5−ヘプテノアート(化合物3)
(4−カルボキシブチル)トリフェニルホスホニウム ブロミド(180.3g)の無水テトラヒドロフラン(1370mL)懸濁液に、水浴上で撹拌しながらカリウムt−ブトキシド(91.4g)を6分間かけて加えた。3時間撹拌したのち、反応混合物に化合物2(70.7g)の無水テトラヒドロフラン(130mL)溶液を5分間かけて滴下した。さらに室温で1時間撹拌したのち反応混合物を氷水(4.2L)に注ぎ、10%シュウ酸2水和物水溶液(約195mL)を加えてpH5〜6に調整した。反応混合物をヘキサン(500mL)と酢酸エチル(500mL)の混合液で抽出(1L×3回)し、有機層を合わせて飽和食塩水(500mL)で洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮して得られた粗生成物(161.1g)をアセトン(260mL)に溶解した。この溶液に炭酸カリウム(34.0g)およびヨウ化メチル(20mL)を加え、室温で14時間撹拌し、さらに1時間還流した。室温に放冷後、不溶固体を濾去し、ろ液を約1/2まで減圧濃縮した。この溶液に水(750mL)を加え、ヘキサン(250mL)と酢酸エチル(250mL)の混合液で抽出した。抽出液を飽和食塩水(500mL)で洗浄し、洗浄水と水層を合わせて酢酸エチル(200mL)で再度抽出した。有機層を合わせて無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:1→1:1)で精製して、以下の物性値を有する標題化合物(79.6g)を得た。
TLC : Rf 0.76(酢酸エチル:ヘキサン=1:1);
NMR (CDCl3) : δ 5.6-5.3(m, 2H), 4.7-4.65 (m, 1H), 4.25-4.2 (m, 1H), 4.15-4.05 (m, 1H), 3.95-3.3 (m, 7H), 2.4-1.4 (m, 19H), 0.90 (s, 9H), 0.05 (s, 6H)。
【0110】
実施例4:メチル (5Z)−7−[(1R,2S,3R,5R)−5−アセトキシ−2−({[ジメチル(2−メチル−2−プロパニル)シリル]オキシ}メチル)−3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)シクロペンチル]−5−ヘプテノアート(化合物4)
化合物3(79.6g)およびトリフェニルホスフィン(57.6g)の無水テトラヒドロフラン(482mL)溶液を、ドライアイス−メタノール浴で−40℃付近に冷却した。この溶液に酢酸(12.6mL)を加えたのち、40%アゾジカルボン酸ジエチル/トルエン溶液(100mL)を15 分間かけて滴下した。室温で4.5時間撹拌したのち、反応混合物を水(1600mL)に注ぎ、ヘキサン(550mL)と酢酸エチル(550mL)の混合溶液を加えて撹拌した。二層を分離した後、有機層を水(540mL)および飽和食塩水(540mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1)で精製して、以下の物性値を有する標題化合物(69.7g)を得た。
TLC : Rf 0.70(酢酸エチル:ヘキサン=1:4);
NMR (CDCl3) : δ 7.4-7.1 (m, 4H), 6.0-5.8 (m, 1H), 5.78 (dd, J = 16, 6Hz, 1H), 5.53 (dd, J = 16, 8Hz, 1H), 5.4-5.25 (m, 2H), 4.7-4.6 (m, 4H), 4.5-4.4 (m, 3H), 4.0-3.85 (m, 1H), 3.42 (s, 3H), 3.0-2.8 (m, 2H), 2.72 (dd, J = 19, 10Hz, 1H), 2.65-2.5 (m, 6H), 2.4-2.1 (m, 4H), 2.0-1.6 (m, 5H)。
【0111】
実施例5:
(6R)−6−{2−[(1R,2S,3R,5R)−2−({[ジメチル(2−メチル−2−プロパニル)シリル]オキシ}メチル)−5−ヒドロキシ−3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)シクロペンチル]−1−ヨードエチル}テトラヒドロ−2H−ピラン−2−オン(高極性化合物:化合物5a)
(6S)−6−{2−[(1R,2S,3R,5R)−2−({[ジメチル(2−メチル−2−プロパニル)シリル]オキシ}メチル)−5−ヒドロキシ−3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)シクロペンチル]−1−ヨードエチル}テトラヒドロ−2H−ピラン−2−オン(低極性化合物:化合物5b)
化合物4(34.9g)のテトラヒドロフラン(140mL)溶液に、2M水酸化ナトリウム水溶液(140mL)を加えて室温で18時間、50℃で3時間撹拌した。氷−メタノール浴にて−4℃に冷却してから、反応混合物に2M塩酸(111mL)を12分間かけて2℃以下を保ちながら滴下した(pH5〜6)。冷却浴を氷浴に変更し、反応混合物に炭酸水素ナトリウム(28.5g)およびヨウ素(17.5g)を加えて撹拌した。2時間後にヨウ素(34.2g)を加え、さらに2.5時間撹拌した後、5%チオ硫酸ナトリウム水溶液(1380mL)を加えた。ヨウ素の色が大部分消失したところで酢酸エチル(600mL)を加えて撹拌し、二層を分離した。有機層を水(150mL)および飽和食塩水(150mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1→5:6)で精製し、以下の物性値を有する標題化合物(低極性化合物8.0g;高極性化合物20.8g)をそれぞれ得た。
【0112】
高極性化合物(化合物5a)
TLC : Rf 0.45(酢酸エチル:ヘキサン=1:1);
NMR (CDCl3) : δ 4.65-4.5 (m, 2H), 4.25-3.6 (m, 5H), 3.55-3.45 (m, 1H), 2.7-2.2 (m, 3H), 2.2-1.5 (m, 16H), 0.95 (s, 9H), 0.12 and 0.11 (each are s, 3H)。
【0113】
低極性化合物(化合物5b)
TLC : Rf 0.50(酢酸エチル:ヘキサン=1:1);
NMR (CDCl3) : δ 4.65-4.55 (m, 1H), 4.4-3.6 (m, 6H), 3.55-3.45 (m, 1H), 2.7-2.25 (m, 3H), 2.1-1.5 (m, 16H), 0.93 (s, 9H), 0.12 and 0.10 (each are s, 3H)。
【0114】
実施例6:(6R)−6−{2−[(1R,2S,3R,5R)−2−({[ジメチル(2−メチル−2−プロパニル)シリル]オキシ}メチル)−5−ヒドロキシ−3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)シクロペンチル]エチル}テトラヒドロ−2H−ピラン−2−オン(化合物6)
化合物5a(41.8g)の無水ベンゼン(195mL)溶液に、水素化トリn−ブチルスズ(18.5mL)およびアゾビス(イソブチロニトリル)(198mg)を加えて3時間加熱還流した。放冷後、反応混合物を濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:1→1:1→2:3)で精製して、以下の物性値を有する標題化合物(29.9g)を得た。
TLC : Rf 0.50(酢酸エチル:ヘキサン=2:1);
NMR (CDCl3) : δ 4.65-4.5 (m, 1H), 4.3-3.8 (m, 4H), 3.7-3.4 (m, 3H), 2.65-2.35 (m, 2H), 2.0-1.4 (m, 17H), 0.90 (s, 9H), 0.10 and 0.09 (each are s, 3H)。
【0115】
実施例7:メチル (5R)−7−[(1R,2S,3R,5R)−2−({[ジメチル(2−メチル−2−プロパニル)シリル]オキシ}メチル)−5−ヒドロキシ−3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)シクロペンチル]−5−ヒドロキシヘプタノアート(化合物7)
化合物6(33.2g)の無水メタノール(306mL)溶液に、トリエチルアミン(25.5mL)を加えて5時間加熱還流した。放冷後、反応混合物を濃縮した。得られた残渣をトルエン共沸(2回)して、以下の物性値を有する標題化合物(38.0g)を得た。
TLC : Rf 0.62(酢酸エチル:ジクロロメタン=2:1);
NMR (CDCl3) : δ 4.65-4.5 (m, 1H), 4.3-4.1 (m, 1H), 4.0-3.8 (m, 3H), 3.7-3.4 (m, 4H), 3.67 (s, 3H), 2.35 (t, J = 7Hz, 2H), 2.0-1.4 (m, 18H), 0.90 (s, 9H), 0.09 and 0.08 (each are s, 3H)。
【0116】
実施例8:メチル (5R)−7−[(1R,2S,3R,5R)−2−({[ジメチル(2−メチル−2−プロパニル)シリル]オキシ}メチル)−5−[(メチルスルホニル)オキシ]−3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)シクロペンチル]−5−[(メチルスルホニル)オキシ]ヘプタノアート(化合物8)
化合物7(38.0g)およびトリエチルアミン(44mL)の無水ジクロロメタン(323mL)溶液をドライアイス−メタノール浴で−60℃付近に冷却し、メシルクロリド(15mL)を約20分間かけて滴下した。氷浴に換えて2時間撹拌した後、反応混合物を冷水(600mL)に加え、ヘキサン(600mL)と酢酸エチル(600mL)の混合溶液で抽出した。有機層を1M塩酸(290mL)および飽和食塩水(300mL×3 回)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮して、以下の物性値を有する標題化合物(44.7g)を得た。
TLC : Rf 0.82(酢酸エチル:ジクロロメタン=2:1)。
【0117】
実施例9:メチル 4−[(2S,4aR,5S,6R,7aS)−5−({[ジメチル(2−メチル−2−プロパニル)シリル]オキシ}メチル)−6−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル]ブタノアート(化合物9)
70%水硫化ナトリウムn水和物(14.9g)をメタノール(123mL)に加え、室温で15分間撹拌して大部分を溶解させた。ここに炭酸水素ナトリウム(15.9g)、および化合物8(44.7g)のメタノール(200mL)溶液を加えて、室温で20分、50℃で10時間撹拌し、さらに室温で約4時間撹拌した。その後60℃まで昇温し、4時間撹拌したのち室温まで冷却した。反応混合物を冷水(1200mL)に加え、ヘキサン(600mL)と酢酸エチル(600mL)の混合溶液で抽出した。有機層を水(300mL)および飽和食塩水(300mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=20:1)で精製して、以下の物性値を有する標題化合物(13.7g)を得た。
TLC : Rf 0.60(酢酸エチル:ヘキサン=1:4);
NMR (CDCl3) : δ 4.65-4.6 (m, 1H), 4.0-3.8 (m, 2H), 3.68 (s, 3H), 3.65-3.4 (m, 3H), 3.1-2.9 (m, 1H), 2.85-2.7 (m, 1H), 2.4-2.2 (m, 3H), 2.1-1.4 (m, 16H), 0.87 (s, 9H), 0.04 (s, 6H)。
【0118】
実施例10:メチル 4−[(2S,4aR,5S,6R,7aS)−5−(ヒドロキシメチル)−6−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル]ブタノアート(化合物10)
化合物9(7.3g)のテトラヒドロフラン(74mL)溶液に、1Mテトラブチルアンモニウムフルオリド/テトラヒドロフラン溶液(27mL)を加えて3時間撹拌した。反応液を酢酸エチル(380mL)で希釈し、水(740mL)および飽和食塩水(380mL)で洗浄した。さらに水層を酢酸エチル(100mL)で抽出した。有機層を合わせて無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=2:1)で精製した。得られた化合物を再度シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:酢酸エチル=4:1→酢酸エチル)で精製して、以下の物性値を有する標題化合物(3.24g)を得た。
TLC : Rf 0.28(酢酸エチル:ヘキサン=1:1);
NMR (CDCl3) : δ 1.23 - 2.19 (m, 17 H), 2.24 - 2.40 (m, 3 H), 2.69 - 2.82 (m, 1 H), 2.92 - 3.02 (m, 1 H), 3.44 - 3.73 (m, 6 H), 3.82 - 4.07 (m, 2 H), 4.55 - 4.74 (m, 1 H)。
【0119】
実施例11:メチル 4−[(2S,4aR,5R,6R,7aS)−5−ホルミル−6−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル]ブタノアート(化合物11)
化合物10(200mg)を酢酸エチル(1.7mL)とジメチルスルホキシド(0.84mL)に溶解し、ジイソプロピルエチルアミン(0.39mL)を加えて氷浴中で冷却した。三酸化硫黄−ピリジン(256mg)を加えて10分間攪拌した後、水に注ぎ酢酸エチルで抽出した。有機層を水および飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮して、以下の物性値を有する標題化合物(200mg)を得た。
TLC : Rf 0.51(酢酸エチル:ヘキサン=1:1)。
【0120】
実施例12:メチル 4−[(2S,4aR,5R,6R,7aS)−5−[(1E)−3−オキソ−4−フェノキシ−1−ブテン−1−イル]−6−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル]ブタノアート(化合物12)
ジメチル (2−オキソ−3−フェノキシプロピル)ホスホナート(194mg)の無水テトラヒドロフラン(2.7mL)溶液に、氷浴中で水素化ナトリウム(24.8mg)を加えて室温で1.5時間撹拌した。ここに化合物11(200mg)の無水テトラヒドロフラン(2mL)溶液を滴下し、室温で4.5時間反応させた。酢酸を少量加えてから反応液を酢酸エチルで希釈した。この溶液を水および飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮して、以下の物性値を有する標題化合物(250mg)を得た。
TLC : Rf 0.61(酢酸エチル:ヘキサン=1:1)。
【0121】
実施例13:メチル 4−[(2S,4aR,5R,6R,7aS)−5−[(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−フェノキシ−1−ブテン−1−イル]−6−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル]ブタノアート(化合物13)
化合物12(250mg)と(R)−2−メチル−CBS−オキサザボロリジン(1Mトルエン溶液,0.135mL)を無水テトラヒドロフラン(1mL)に溶解し、1Mボラン−テトラヒドロフラン錯体(0.323mL)を室温で加えた。10分間攪拌した後にメタノールを加えて数分間攪拌した。この反応液を酢酸エチルで希釈した。この溶液を、1M塩酸、水および飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮して、以下の物性値を有する標題化合物(220mg)を得た。
TLC : Rf 0.47(酢酸エチル:ヘキサン=1:1)。
【0122】
実施例14:メチル 4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−フェノキシ−1−ブテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタノアート(化合物14)
【化29】
化合物13(220mg)をメタノール(1.1mL)に溶解し、室温でp−トルエンスルホン酸一水和物(20mg)を加えて2時間攪拌した。反応液を減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=2:1→1:1→酢酸エチル)で精製することで、以下の物性値を有する標題化合物(82mg)を得た。
TLC : Rf 0.62(酢酸エチル);
NMR (CDCl3) : δ 1.35 - 1.96 (m, 11 H), 2.09 - 2.17 (m, 1 H), 2.28 - 2.47 (m, 3 H), 2.65 - 2.79 (m, 1 H), 3.27 - 3.36 (m, 1 H), 3.67 (s, 3 H), 3.82 - 3.94 (m, 1 H), 3.94 - 4.19 (m, 3 H), 4.48 - 4.60 (m, 1 H), 5.66 (dd, J=15.37, 5.67 Hz, 1 H), 5.78 (dd, J=15.37, 8.42 Hz, 1 H), 6.85 - 7.04 (m, 3 H), 7.20 - 7.38 (m, 2 H)。
【0123】
実施例14(1)〜実施例14(3)
実施例6において化合物5aを用いるか、その代わりに化合物5bを用いて、実施例12においてジメチル [2−オキソ−3−(フェニルオキシ)プロピル]ホスホナートを用いるか、その代わりにジメチル (2−オキソ−4−フェニルブチル)ホスホナートを用いて、実施例6→実施例7→実施例8→実施例9→実施例10→実施例11→実施例12→実施例13→実施例14と同様の操作を行い、以下の化合物を得た。
【0124】
実施例14(1):メチル 4−{(2R,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3S)−3−ヒドロキシ−5−フェニル−1−ペンテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタノアート(化合物14(1))
TLC : Rf 0.20 (ヘキサン:酢酸エチル=1:1);
NMR (CDCl3) : δ 1.39 - 1.99 (m, 13 H), 2.25 - 2.50 (m, 4 H), 2.60 - 2.79 (m, 3 H), 2.85 - 3.01 (m, 1 H), 3.33 - 3.44 (m, 1 H), 3.66 (s, 3 H), 3.93 - 4.05 (m, 1 H), 4.07 - 4.18 (m, 1 H), 5.51 (dd, J=15.37, 8.42 Hz, 1 H), 5.63 (dd, J=15.37, 6.40 Hz, 1 H), 7.11 - 7.33 (m, 5 H)。
【0125】
実施例14(2):メチル 4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3S)−3−ヒドロキシ−5−フェニル−1−ペンテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタノアート(化合物14(2))
TLC : Rf 0.19 (ヘキサン:酢酸エチル=1:1);
NMR (CDCl3) : δ 1.33 - 2.10 (m, 14 H), 2.27 - 2.47 (m, 3 H), 2.59 - 2.78 (m, 4 H), 3.22 - 3.38 (m, 1 H), 3.67 (s, 3 H), 3.88 - 4.01 (m, 1 H), 4.05 - 4.19 (m, 1 H), 5.46 - 5.70 (m, 2 H), 7.08 - 7.34 (m, 5 H)。
【0126】
実施例14(3):メチル 4−{(2R,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−フェノキシ−1−ブテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタノアート(化合物14(3))
TLC : Rf 0.61 (酢酸エチル);
NMR (CDCl3) : δ 1.37 - 1.94 (m, 11 H), 2.23 - 2.50 (m, 4 H), 2.62 - 2.76 (m, 1 H), 2.90 - 3.04 (m, 1 H), 3.36 - 3.44 (m, 1 H), 3.67 (s, 3 H), 3.82 - 3.94 (m, 1 H), 3.95 - 4.07 (m, 2 H), 4.48 - 4.60 (m, 1 H), 5.61 - 5.82 (m, 2 H), 6.87 - 7.01 (m, 3 H), 7.22 - 7.34 (m, 2 H)。
【0127】
実施例15:4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−フェノキシ−1−ブテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸(化合物15)
【化30】
化合物14(6.9mg)をメタノール(0.4mL)に溶解し、室温で2M水酸化ナトリウム水溶液(0.1mL)を加えて終夜攪拌した。反応液に希塩酸を加えてから酢酸エチルで2回抽出した。有機層を合わせて飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=100:1→10:1)で精製することで、以下の物性値を有する標題化合物(4.8mg)を得た。
TLC : Rf 0.41(クロロホルム:メタノール=9:1);
NMR (CDCl3) : δ 1.36 - 2.12 (m, 12 H), 2.31 - 2.46 (m, 3 H), 2.65 - 2.79 (m, 2 H), 3.27 - 3.37 (m, 1 H), 3.84 - 3.95 (m, 1 H), 3.96 - 4.06 (m, 2 H), 4.49 - 4.59 (m, 1 H), 5.67 (dd, J=15.92, 5.67 Hz, 1 H), 5.79 (dd, J=15.92, 7.87 Hz, 1 H), 6.88 - 7.03 (m, 3 H), 7.23 - 7.36 (m, 2 H)。
【0128】
実施例15(1)〜実施例15(20)
化合物14の代わりに化合物14(1)〜(3)または相当するエステル体を用いて、実施例15と同様の操作を行い、以下の化合物を得た。
【0129】
実施例15(1):4−{(2R,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3S)−3−ヒドロキシ−5−フェニル−1−ペンテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸(化合物15(1))
TLC : Rf 0.25 (クロロホルム:メタノール=9:1);
NMR (CDCl3) : δ 1.42 - 2.01 (m, 13 H), 2.27 - 2.54 (m, 4 H), 2.62 - 2.81 (m, 3 H), 2.87 - 3.03 (m, 1 H), 3.34 - 3.43 (m, 1 H), 3.94 - 4.05 (m, 1 H), 4.06 - 4.19 (m, 1 H), 5.52 (dd, J=15.37, 8.42 Hz, 1 H), 5.64 (dd, J=15.37, 6.40 Hz, 1 H), 7.08 - 7.38 (m, 5 H)。
【0130】
実施例15(2):4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3S)−3−ヒドロキシ−5−フェニル−1−ペンテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸(化合物15(2))
TLC : Rf 0.25 (クロロホルム:メタノール=9:1);
NMR (CDCl3) : δ 1.28 - 2.14 (m, 14 H), 2.31 - 2.48 (m, 3 H), 2.62 - 2.81 (m, 4 H), 3.25 - 3.38 (m, 1 H), 3.91 - 4.03 (m, 1 H), 4.07 - 4.19 (m, 1 H), 5.47 - 5.72 (m, 2 H), 7.12 - 7.37 (m, 5 H)。
【0131】
実施例15(3):4−{(2R,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−フェノキシ−1−ブテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸(化合物15(3))
TLC : Rf 0.34 (酢酸エチル);
NMR (CDCl3) : δ 1.40 - 1.66 (m, 7 H), 1.67 - 1.94 (m, 6 H), 2.29 - 2.49 (m, 3 H), 2.63 - 2.77 (m, 1 H), 2.90 - 3.05 (m, 1 H), 3.35 - 3.44 (m, 1 H), 3.85 - 3.94 (m, 1 H), 3.95 - 4.07 (m, 2 H), 4.49 - 4.59 (m, 1 H), 5.62 - 5.71 (m, 1 H), 5.71 - 5.80 (m, 1 H), 6.86 - 7.01 (m, 3 H), 7.22 - 7.34 (m, 2 H)。
【0132】
実施例15(4):4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−5−[(1E,3R)−4−(4−フルオロフェノキシ)−3−ヒドロキシ−1−ブテン−1−イル]−6−ヒドロキシオクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸(化合物15(4))
TLC : Rf 0.37 (ジクロロメタン:メタノール=10:1);
NMR (CDCl3) : δ 1.18 - 1.93 (m, 11 H), 1.95 - 2.13 (m, 1 H), 2.24 - 2.54 (m, 3 H), 2.62 - 2.81 (m, 2 H), 3.19 - 3.44 (m, 1 H), 3.78 - 3.91 (m, 1 H), 3.91 - 4.04 (m, 2 H), 4.45 - 4.58 (m, 1 H), 5.58 - 5.70 (m, 1 H), 5.70 - 5.87 (m, 1 H), 6.76 - 6.91 (m, 2 H), 6.91 - 7.04 (m, 2 H)。
【0133】
実施例15(5):4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−5−[(1E,3R)−4−(3−クロロフェノキシ)−3−ヒドロキシ−1−ブテン−1−イル]−6−ヒドロキシオクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸(化合物15(5))
TLC : Rf 0.37 (ジクロロメタン:メタノール=10:1);
NMR (CDCl3) : δ 1.15 - 1.93 (m, 11 H), 1.96 - 2.17 (m, 1 H), 2.31 - 2.51 (m, 3 H), 2.66 - 2.82 (m, 2 H), 3.23 - 3.37 (m, 1 H), 3.79 - 4.08 (m, 3 H), 4.47 - 4.61 (m, 1 H), 5.59 - 5.71 (m, 1 H), 5.72 - 5.84 (m, 1 H), 6.74 - 6.86 (m, 1 H), 6.87 - 7.01 (m, 2 H), 7.19 (t, J=8.05 Hz, 1 H)。
【0134】
実施例15(6):4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−(3−メチルフェノキシ)−1−ブテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸(化合物15(6))
TLC : Rf 0.42 (ジクロロメタン:メタノール=10:1);
NMR (CDCl3) : δ 1.12 - 2.16 (m, 10 H), 2.28 - 2.49 (m, 6 H), 2.64 - 2.82 (m, 2 H), 3.25 - 3.36 (m, 1 H), 3.86 (dd, J=9.33, 7.87 Hz, 3 H), 3.92 - 4.05 (m, 2 H), 4.43 - 4.61 (m, 1 H), 5.52 - 5.72 (m, 1 H), 5.72 - 5.86 (m, 1 H), 6.61 - 6.85 (m, 3 H), 7.17 (t, J=7.78 Hz, 1 H)。
【0135】
実施例15(7):4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−5−[(1E,3R)−4−(2−フルオロフェノキシ)−3−ヒドロキシ−1−ブテン−1−イル]−6−ヒドロキシオクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸(化合物15(7))
TLC : Rf 0.36 (ジクロロメタン:メタノール=10:1);
NMR (CDCl3) : δ 1.13 - 1.93 (m, 11 H), 1.96 - 2.14 (m, 1 H), 2.27 - 2.49 (m, 3 H), 2.60 - 2.81 (m, 2 H), 3.31 (q, J=5.67 Hz, 1 H), 3.80 - 4.18 (m, 3 H), 4.43 - 4.66 (m, 1 H), 5.58 - 5.72 (m, 1 H), 5.72 - 5.95 (m, 1 H), 6.75 - 7.20 (m, 4 H)。
【0136】
実施例15(8):4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−5−[(1E,3R)−4−(3−フルオロフェノキシ)−3−ヒドロキシ−1−ブテン−1−イル]−6−ヒドロキシオクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸(化合物15(8))
TLC : Rf 0.36 (ジクロロメタン:メタノール=10:1);
NMR (CDCl3) : δ 1.17 - 2.11 (m, 12 H), 2.24 - 2.55 (m, 3 H), 2.59 - 2.82 (m, 2 H), 3.31 (q, J=5.61 Hz, 1 H), 3.73 - 4.11 (m, 3 H), 4.46 - 4.60 (m, 1 H), 5.59 - 5.86 (m, 2 H), 6.52 - 6.85 (m, 3 H), 7.08 - 7.33 (m, 1 H)。
【0137】
実施例15(9):4−[(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−{(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェノキシ]−1−ブテン−1−イル}オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル]ブタン酸(化合物15(9))
TLC : Rf 0.46 (ジクロロメタン:メタノール=10:1);
NMR (CDCl3) : δ 1.04 - 2.18 (m, 12 H), 2.23 - 2.51 (m, 3 H), 2.59 - 2.81 (m, 2 H), 3.24 - 3.41 (m, 1 H), 3.86 - 4.14 (m, 3 H), 4.41 - 4.72 (m, 1 H), 5.56 - 5.73 (m, 1 H), 5.74 - 5.92 (m, 1 H), 6.99 - 7.19 (m, 2 H), 7.20 - 7.32 (m, 1 H), 7.40 (t, J=8.05 Hz, 1 H)。
【0138】
実施例15(10):4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−(2−メトキシフェノキシ)−1−ブテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸(化合物15(10))
TLC : Rf 0.46 (ジクロロメタン:メタノール=10:1);
NMR (CDCl3) : δ 1.15 - 2.23 (m, 12 H), 2.29 - 2.49 (m, 3 H), 2.59 - 2.78 (m, 2 H), 3.21 - 3.40 (m, 1 H), 3.80 - 4.21 (m, 6 H), 4.44 - 4.61 (m, 1 H), 5.54 - 5.68 (m, 1 H), 5.68 - 5.85 (m, 1 H), 6.84 - 7.02 (m, 4 H)。
【0139】
実施例15(11):4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−(3−メトキシフェノキシ)−1−ブテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸(化合物15(11))
TLC : Rf 0.46 (ジクロロメタン:メタノール=10:1);
NMR (CDCl3) : δ 1.03 - 2.16 (m, 12 H), 2.24 - 2.49 (m, 3 H), 2.59 - 2.92 (m, 2 H), 3.30 (q, J=5.73 Hz, 1 H), 3.79 (s, 3 H), 3.83 - 3.91 (m, 1 H), 3.93 - 4.09 (m, 2 H), 4.44 - 4.66 (m, 1 H), 5.54 - 5.93 (m, 2 H), 6.29 - 6.59 (m, 3 H), 7.18 (t, J=8.14 Hz, 1 H)。
【0140】
実施例15(12):4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−(4−メトキシフェノキシ)−1−ブテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸(化合物15(12))
TLC : Rf 0.36 (ジクロロメタン:メタノール=9:1);
NMR (CDCl3) : δ 1.10 - 1.94 (m, 11 H), 1.95 - 2.12 (m, 1 H), 2.28 - 2.53 (m, 3 H), 2.62 - 2.81 (m, 2 H), 3.24 - 3.36 (m, 1 H), 3.77 (s, 3 H), 3.78 - 3.86 (m, 1 H), 3.89 - 4.15 (m, 2 H), 4.37 - 4.61 (m, 1 H), 5.46 - 5.70 (m, 1 H), 5.70 - 5.93 (m, 1 H), 6.57 - 6.96 (m, 4 H)。
【0141】
実施例15(13):4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−(2−メチルフェノキシ)−1−ブテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸(化合物15(13))
TLC : Rf 0.32 (ジクロロメタン:メタノール=9:1);
NMR (CDCl3) : δ 1.16 - 2.16 (m, 12 H), 2.24 (s, 3 H), 2.31 - 2.51 (m, 3 H), 2.60 - 2.83 (m, 2 H), 3.32 (q, J=5.55 Hz, 1 H), 3.85 - 3.95 (m, 1 H), 3.97 - 4.10 (m, 2 H), 4.49 - 4.63 (m, 1 H), 5.60 - 5.92 (m, 2 H), 6.76 - 6.99 (m, 2 H), 7.10 - 7.21 (m, 2 H)。
【0142】
実施例15(14):4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−(4−メチルフェノキシ)−1−ブテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸(化合物15(14))
TLC : Rf 0.34 (ジクロロメタン:メタノール=9:1);
NMR (CDCl3) : δ 1.29 - 1.91 (m, 11 H), 1.94 - 2.11 (m, 1 H), 2.29 (s, 3 H), 2.32 - 2.47 (m, 3 H), 2.62 - 2.84 (m, 2 H), 3.23 - 3.35 (m, 1 H), 3.64 - 3.89 (m, 1 H), 3.90 - 4.11 (m, 2 H), 4.38 - 4.60 (m, 1 H), 5.53 - 5.70 (m, 1 H), 5.71 - 5.86 (m, 1 H), 6.80 (d, J=8.05 Hz, 2 H), 7.07 (d, J=8.05 Hz, 2 H)。
【0143】
実施例15(15):4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−5−[(1E,3R)−4−(4−クロロフェノキシ)−3−ヒドロキシ−1−ブテン−1−イル]−6−ヒドロキシオクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸(化合物15(15))
TLC : Rf 0.36 (ジクロロメタン:メタノール=9:1);
NMR (CDCl3) : δ 1.04 - 2.14 (m, 12 H), 2.29 - 2.56 (m, 3 H), 2.61 - 2.78 (m, 2 H), 3.19 - 3.44 (m, 1 H), 3.75 - 3.91 (m, 1 H), 3.91 - 4.11 (m, 2 H), 4.42 - 4.60 (m, 1 H), 5.57 - 5.70 (m, 1 H), 5.72 - 5.89 (m, 1 H), 6.81 - 6.88 (m, 2 H), 7.14 - 7.27 (m, 2 H)。
【0144】
実施例15(16):4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−5−[(1E,3R)−4−(2−クロロフェノキシ)−3−ヒドロキシ−1−ブテン−1−イル]−6−ヒドロキシオクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸(化合物15(16))
TLC : Rf 0.48 (ジクロロメタン:メタノール=9:1);
NMR (CDCl3) : δ 1.14 - 1.92 (m, 11 H), 1.93 - 2.15 (m, 1 H), 2.31 - 2.49 (m, 3 H), 2.63 - 2.79 (m, 2 H), 3.30 (q, J=5.61 Hz, 1 H), 3.82 - 4.20 (m, 3 H), 4.50 - 4.63 (m, 1 H), 5.56 - 5.70 (m, 1 H), 5.72 - 5.84 (m, 1 H), 6.82 - 6.99 (m, 2 H), 7.17 - 7.24 (m, 1 H), 7.35 (dd, J=8.14, 1.19 Hz, 1 H)。
【0145】
実施例15(17):4−[(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−{(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−[2−(トリフルオロメチル)フェノキシ]−1−ブテン−1−イル}オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル]ブタン酸(化合物15(17))
TLC : Rf 0.48 (ジクロロメタン:メタノール=9:1);
NMR (CDCl3) : δ 1.18 - 1.94 (m, 11 H), 1.94 - 2.17 (m, 1 H), 2.30 - 2.47 (m, 3 H), 2.64 - 2.83 (m, 2 H), 3.24 - 3.37 (m, 1 H), 3.85 - 4.16 (m, 3 H), 4.48 - 4.59 (m, 1 H), 5.54 - 5.72 (m, 1 H), 5.73 - 5.88 (m, 1 H), 6.88 - 7.09 (m, 2 H), 7.48 (t, J=7.96 Hz, 1 H), 7.56 (d, J=7.68 Hz, 1 H)。
【0146】
実施例15(18):4−[(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−{(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−[4−(トリフルオロメチル)フェノキシ]−1−ブテン−1−イル}オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル]ブタン酸(化合物15(18))
TLC : Rf 0.48 (ジクロロメタン:メタノール=9:1);
NMR (CDCl3) : δ 1.20 - 1.94 (m, 11 H), 1.95 - 2.19 (m, 1 H), 2.28 - 2.50 (m, 3 H), 2.62 - 2.83 (m, 2 H), 3.16 - 3.43 (m, 1 H), 3.80 - 4.13 (m, 3 H), 4.44 - 4.63 (m, 1 H), 5.59 - 5.71 (m, 1 H), 5.72 - 5.91 (m, 1 H), 6.97 (d, J=8.60 Hz, 2 H), 7.54 (d, J=8.60 Hz, 2 H)。
【0147】
実施例15(19):4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−(フェニルチオ)−1−ブテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸(化合物15(19))
TLC : Rf 0.48 (ジクロロメタン:メタノール=9:1);
NMR (CDCl3) : δ 1.13 - 1.94 (m, 11 H), 1.93 - 2.13 (m, 1 H), 2.27 - 2.48 (m, 3 H), 2.57 - 2.80 (m, 2 H), 2.90 - 3.07 (m, 1 H), 3.08 - 3.23 (m, 1 H), 3.27 (q, J=5.43 Hz, 1 H), 3.85 - 3.99 (m, 1 H), 4.10 - 4.27 (m, 1 H), 5.31 - 5.74 (m, 2 H), 7.02 - 7.51 (m, 5 H)。
【0148】
実施例15(20):4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(3R)−3−ヒドロキシ−4−フェノキシブチル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸(化合物15(20))
TLC : Rf 0.48 (ジクロロメタン:メタノール=9:1);
NMR (CDCl3) : δ 1.34 - 2.15 (m, 17 H), 2.21 - 2.34 (m, 1 H), 2.39 (t, J=6.95 Hz, 2 H), 2.64 - 2.84 (m, 1 H), 3.12 - 3.31 (m, 1 H), 3.69 - 4.25 (m, 4 H), 6.79 - 7.10 (m, 3 H), 7.21 - 7.45 (m, 2 H)。
【0149】
実施例16:2−プロパニル 4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(3R)−3−ヒドロキシ−4−フェノキシブチル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタノアート(化合物16)
【化31】
【0150】
アルゴン雰囲気下、化合物15(20)(42.8mg)のジメチルホルムアミド(0.4mL)溶液に、炭酸セシウム(68mg)およびヨウ化イソプロピル(0.016mL)を加え、50℃にて90分間撹拌した。室温に冷却してから、酢酸エチルを加え水で2回、飽和食塩水で1回洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=7:3→1:1)で精製し、以下の物性値を有する標題化合物(34 mg)を得た。
TLC : Rf 0.57 (ヘキサン:酢酸エチル=1:2)
NMR (CDCl3) : δ 1.23 (d, J=6.22 Hz, 6 H), 1.36 - 2.11 (m, 15 H), 2.14 - 2.53 (m, 5 H), 2.65 - 2.81 (m, 1 H), 3.19 (q, J=6.10 Hz, 1 H), 3.65 - 4.34 (m, 4 H), 5.00 (tt, J=6.27 Hz, 1 H), 6.65 - 7.06 (m, 3 H), 7.21 - 7.40 (m, 2 H)。
【0151】
実施例16(1)〜実施例16(9)
化合物15(20)の代わりに相当するカルボン酸を用いて、実施例16と同様の操作を行い、以下の化合物を得た。
【0152】
実施例16(1):2−プロパニル 4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−フェノキシ−1−ブテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタノアート(化合物16(1))
TLC : Rf 0.41 (ヘキサン:酢酸エチル=1:2);
NMR (CDCl3) : δ 1.23 (d, J=6.22 Hz, 6 H), 1.33 - 1.92 (m, 9 H), 1.95 - 2.21 (m, 2 H), 2.24 - 2.33 (m, 2 H), 2.33 - 2.43 (m, 1 H), 2.45 (d, J=3.48 Hz, 1 H), 2.63 - 2.84 (m, 2 H), 3.26 - 3.38 (m, 1 H), 3.82 - 3.95 (m, 1 H), 3.95 - 4.07 (m, 2 H), 4.46 - 4.65 (m, 1 H), 4.93 - 5.07 (m, 1 H), 5.57 - 5.71 (m, 1 H), 5.71 - 5.85 (m, 1 H), 6.82 - 7.03 (m, 3 H), 7.21 - 7.34 (m, 2 H)。
【0153】
実施例16(2):2−プロパニル 4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−5−[(1E,3R)−4−(3−クロロフェノキシ)−3−ヒドロキシ−1−ブテン−1−イル]−6−ヒドロキシオクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタノアート(化合物16(2))
TLC : Rf 0.40 (ヘキサン:酢酸エチル=1:2);
NMR (CDCl3) : δ 1.22 (d, J=6.22 Hz, 6 H), 1.35 - 1.89 (m, 9 H), 1.90 - 2.14 (m, 1 H), 2.19 - 2.58 (m, 4 H), 2.61 - 2.84 (m, 3 H), 3.18 - 3.34 (m, 1 H), 3.83 - 3.92 (m, 1 H), 3.92 - 4.05 (m, 2 H), 4.43 - 4.64 (m, 1 H), 4.91 - 5.09 (m, J=6.27, 6.27, 6.27, 6.27 Hz, 1 H), 5.59 - 5.69 (m, 1 H), 5.70 - 5.82 (m, 1 H), 6.80 (ddd, J=8.37, 2.42, 0.91 Hz, 1 H), 6.88 - 7.02 (m, 2 H), 7.19 (t, J=8.05 Hz, 1 H)。
【0154】
実施例16(3):2−プロパニル 4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−(3−メチルフェノキシ)−1−ブテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタノアート(化合物16(3))
TLC : Rf 0.43 (ヘキサン:酢酸エチル=1:2);
NMR (CDCl3) : δ 1.23 (d, J=6.22 Hz, 6 H), 1.34 - 2.11 (m, 10 H), 2.20 - 2.49 (m, 7 H), 2.53 - 2.81 (m, 3 H), 3.22 - 3.41 (m, 1 H), 3.77 - 3.94 (m, 1 H), 3.91 - 4.08 (m, 2 H), 4.31 - 4.61 (m, 1 H), 4.82 - 5.09 (m, 1 H), 5.49 - 5.70 (m, 1 H), 5.71 - 5.95 (m, 1 H), 6.49 - 6.87 (m, 3 H), 7.16 (t, J=7.78 Hz, 1 H)。
【0155】
実施例16(4):2−プロパニル 4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−5−[(1E,3R)−4−(3−フルオロフェノキシ)−3−ヒドロキシ−1−ブテン−1−イル]−6−ヒドロキシオクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタノアート(化合物16(4))
TLC : Rf 0.33 (ヘキサン:酢酸エチル=1:2);
NMR (CDCl3) : δ 1.23 (d, J=6.22 Hz, 6 H), 1.33 - 1.95 (m, 9 H), 1.96 - 2.08 (m, 1 H), 2.21 - 2.46 (m, 4 H), 2.49 - 2.57 (m, 1 H), 2.65 - 2.85 (m, 2 H), 3.23 - 3.42 (m, 1 H), 3.78 - 3.93 (m, 1 H), 3.93 - 4.08 (m, 2 H), 4.42 - 4.67 (m, 1 H), 4.85 - 5.15 (m, 1 H), 5.47 - 5.71 (m, 1 H), 5.73 - 6.03 (m, 1 H), 6.49 - 6.95 (m, 3 H), 7.03 - 7.27 (m, 1 H)。
【0156】
実施例16(5):2−プロパニル 4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−5−[(1E,3R)−4−(4−フルオロフェノキシ)−3−ヒドロキシ−1−ブテン−1−イル]−6−ヒドロキシオクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタノアート(化合物16(5))
TLC : Rf 0.41 (ヘキサン:酢酸エチル=1:2);
NMR (CDCl3) : δ 1.23 (d, J=6.22 Hz, 6 H), 1.34 - 1.94 (m, 9 H), 1.97 - 2.11 (m, 1 H), 2.20 - 2.47 (m, 4 H), 2.55 - 2.86 (m, 3 H), 3.32 (q, J=5.85 Hz, 1 H), 3.74 - 4.05 (m, 3 H), 4.47 - 4.57 (m, 1 H), 4.90 - 5.15 (m, 1 H), 5.52 - 5.71 (m, 1 H), 5.71 - 5.88 (m, 1 H), 6.81 - 6.91 (m, 2 H), 6.93 - 7.06 (m, 2 H)。
【0157】
実施例16(6):2−プロパニル 4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−(3−メトキシフェノキシ)−1−ブテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタノアート(化合物16(6))
TLC : Rf 0.32 (ヘキサン:酢酸エチル=1:1);
NMR (CDCl3) : δ 1.23 (d, J=6.22 Hz, 6 H), 1.35 - 1.91 (m, 9 H), 1.93 - 2.09 (m, 1 H), 2.18 - 2.55 (m, 4 H), 2.57 - 2.82 (m, 3 H), 3.22 - 3.36 (m, 1 H), 3.78 (s, 3 H), 3.82 - 3.90 (m, 1 H), 3.92 - 4.07 (m, 2 H), 4.45 - 4.55 (m, 1 H), 4.88 - 5.08 (m, 1 H), 5.59 - 5.69 (m, 1 H), 5.70 - 5.82 (m, 1 H), 6.29 - 6.58 (m, 3 H), 7.17 (t, J=8.14 Hz, 1 H)。
【0158】
実施例16(7):2−プロパニル 4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−(2−メトキシフェノキシ)−1−ブテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタノアート(化合物16(7))
TLC : Rf 0.26 (ヘキサン:酢酸エチル=1:1);
NMR (CDCl3) : δ 1.23 (d, J=6.40 Hz, 6 H), 1.34 - 1.91 (m, 9 H), 1.93 - 2.09 (m, 1 H), 2.21 - 2.51 (m, 4 H), 2.62 - 2.77 (m, 2 H), 3.16 - 3.42 (m, 2 H), 3.90 (dd, 5 H), 4.06 (dd, J=9.88, 3.11 Hz, 1 H), 4.44 - 4.58 (m, 1 H), 4.92 - 5.08 (m, 1 H), 5.49 - 5.67 (m, 1 H), 5.68 - 5.88 (m, 1 H), 6.79 - 7.11 (m, 4 H)。
【0159】
実施例16(8):2−プロパニル 4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−(フェニルチオ)−1−ブテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタノアート(化合物16(8))
TLC : Rf 0.46 (ヘキサン:酢酸エチル=1:3);
NMR (CDCl3) : δ 1.23 (d, J=6.40 Hz, 6 H), 1.32 - 1.89 (m, 9 H), 1.93 - 2.09 (m, 1 H), 2.17 - 2.45 (m, 3 H), 2.49 - 2.79 (m, 3 H), 2.79 - 3.05 (m, 2 H), 3.09 - 3.18 (m, 1 H), 3.22 - 3.35 (m, 1 H), 3.83 - 4.04 (m, 1 H), 4.11 - 4.25 (m, 1 H), 4.87 - 5.15 (m, 1 H), 5.49 - 5.68 (m, 2 H), 7.16 - 7.26 (m, 1 H), 7.28 - 7.33 (m, 2 H), 7.35 - 7.48 (m, 2 H)。
【0160】
実施例16(9):2−プロパニル 4−[(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−{(1E,3R)−3−ヒドロキシ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェノキシ]−1−ブテン−1−イル}オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル]ブタノアート(化合物16(9))
TLC : Rf 0.54 (ヘキサン:酢酸エチル=1:2);
NMR (CDCl3) : δ 1.23 (d, J=6.22 Hz, 6 H), 1.38 - 1.91 (m, 9 H), 1.95 - 2.11 (m, 1 H), 2.20 - 2.48 (m, 4 H), 2.50 - 2.59 (m, 1 H), 2.62 - 2.83 (m, 2 H), 3.25 - 3.39 (m, 1 H), 3.85 - 4.14 (m, 3 H), 4.48 - 4.64 (m, 1 H), 4.91 - 5.08 (m, J=6.27, 6.27, 6.27, 6.27 Hz, 1 H), 5.61 - 5.72 (m, 1 H), 5.74 - 5.87 (m, 1 H), 6.97 - 7.17 (m, 2 H), 7.18 - 7.29 (m, 1 H), 7.39 (t, J=8.05 Hz, 1 H)。
【0161】
[薬理実験例]
(1)インビトロ(in vitro)試験
【0162】
(1−1)各種マウスプロスタノイド受容体に対するアゴニスト活性の測定
各種マウスプロスタノイド受容体をそれぞれ強制発現させたCHO細胞(それぞれFP−CHO、EP2−CHO、EP4−CHOおよびIP−CHO)を用いて、FPについては細胞内カルシウム濃度、IP、EP2およびEP4については細胞内サイクリックAMP(以下、cAMPと略記する。)産生量を指標に、各種プロスタノイド受容体に対する被験化合物のアゴニスト活性を検討した。
【0163】
<化合物処理>
被験化合物および対照物質(PGE、PGF2αおよびイロプロスト)は、ジメチルスルホキシド(DMSO)にて溶解し、10mmol/L溶液を調製した。調製した10mmol/L溶液は、使用時に10mmol/L溶液を解凍し、DMSOを用いて段階希釈を行い、測定用緩衝溶液もしくは測定用緩衝溶液2にて希釈して実験に供した。
【0164】
<細胞培養>
各種マウスプロスタノイド受容体強制発現細胞は、非働化(56℃、30分)した9.8vol% 透析FBS(dialysed-FBS)(Invitrogen社)およびペニシリン−ストレプトマイシン−グルタミン(penicillin-streptomycin-glutamine)(GIBCO-BRL社)を含むα−MEM培地(Sigma社)(FP−CHO、EP2−CHOおよびEP4−CHO培養用)、もしくは非働化(56℃、30分)した9.8vol% dialysed-FBS(Invitrogen社)およびペニシリン−ストレプトマイシン−グルタミン(penicillin-streptomycin-glutamine)(Invitrogen社)を含む核酸含有α−MEM(Sigma社)(IP−CHO培養用)を用いて、5%CO存在下、37℃で静置培養した。継代培養は以下の方法で行なった。
【0165】
培地を除去し、Ca2+およびMg2+を含まないリン酸緩衝生理食塩水で1回洗浄した。適量のトリプシン−EDTA(Invtrogen社)を加え、37℃で約3分間インキュベーションし、細胞を剥離後、トリプシン−EDTAの10倍容量の培地を加え酵素反応を停止させた。遠心管に細胞を回収し120g、3分間室温で遠心分離した後、上清を除去した。細胞を適量の培地に懸濁し、培養フラスコに播種した。
【0166】
(1−2)FPアゴニスト活性測定(細胞内カルシウム濃度測定)
FP−CHOは、継代培養と同様の方法にて細胞を剥離および懸濁し、測定の2日前に、96穴UVプレートに、1ウェルあたり1.0×10個の細胞数となるよう播種し、5%CO存在下、37℃で静置培養した。測定日に、96穴UVプレートの各ウェルから培地を除去した後、各ウェルをCa2+およびMg2+を含まないリン酸緩衝生理食塩水で1回洗浄した。各ウェルに5μmol/L fura 2−AM(DOJINDO社)、2.5mmol/L プロベネシド(Sigma社)、20μmol/L インドメタシン(Sigma社)および10mmol/L HEPES(Invitrogen社)を含む培地を100μL加え、COインキュベーター内で約60分間インキュベーションした。インキュベーション終了後、培地を除去し、測定用緩衝溶液(0.1w/v% ウシ血清アルブミン、2μmol/L インドメタシン、2.5mmol/L プロベネシドおよび20mmol/L HEPES(Invitrogen社)を含有したハンクス液(Hank’s balanced salt solution)(Invitrogen社))にて2回洗浄した。各ウェルに測定用緩衝溶液を120μL添加し、室温暗所で30分静置し安定化させ、実験に供した。
【0167】
96穴UVプレートを蛍光分光光度計(FDSS−3000、浜松ホトニクス社)にセットし、細胞内カルシウム濃度の測定をした。種々の濃度のアゴニストを含む測定用緩衝溶液を30μL添加し、反応させた。細胞内カルシウム濃度測定は、細胞に340nm、380nmの励起光を交互に照射し、500nmの蛍光強度を測定し、2波長励起の蛍光強度比を求めることで行った。
【0168】
(1−3)EP2、EP4およびIPアゴニスト活性測定(cAMP濃度の測定)
EP2−CHO、EP4−CHOおよびIP−CHOは、測定日に、培地を除去し、2mmol/L EDTAを含有するCa2+およびMg2+を含まないリン酸緩衝生理食塩水で1回洗浄した。適量の2mmol/L EDTAを含有するCa2+およびMg2+を含まないリン酸緩衝生理食塩水を加え、室温で約5分間インキュベーションし、細胞を剥離後、遠心管に細胞を回収し550g、3分間室温で遠心分離した後、上清を除去した。適量の測定用緩衝溶液1(1.0w/v% ウシ血清アルブミン(Sigma社)および2μmol/L ジクロフェナク(Sigma社)を含有したMEM培地(Invitrogen社))にて懸濁し、500g、3分間室温で遠心分離し、上清を除去した。測定用緩衝溶液2(1.0w/v% ウシ血清アルブミン(Sigma社)、2μmol/L ジクロフェナク(Sigma社)および1mmol/L 3−イソブチル−1−メチルキサンチンを含有したMEM培地(Invitrogen社))にて懸濁し、96穴1/2エリアプレートに1ウェル当たり5.0×10個の細胞数となるように25μLずつ分注した。種々の濃度のアゴニストを含む測定用緩衝溶液2を25μL添加し、室温で30分間反応させた。cAMP濃度の測定は、cAMP HTRF HiRangeキット(CIS bio International社)を用いて行った。キット説明書のTwo step protocolに従い、ライシス緩衝液(Lysis Buffer)にて希釈したcAMP−D2およびクリプターゼ(Cryptase)を25μLずつ添加し、1時間室温にてインキュベーションした。1時間のインキュベーション後に、Analyst GT(Molecular Device社)を用いて337nmにて励起した時の620nmおよび665nmにおける時間分解蛍光を測定し、その比(TRF ratio)を求めることで、検量線よりcAMP濃度を算出した。
【0169】
<結果>
以上の方法から得られた測定値を用いて、本発明化合物のマウスFP、マウスEP2、マウスEP4およびマウスIP受容体に対するアゴニスト活性の指標としてEC50値を算出した。
【0170】
例えば、実施例15記載の化合物、および比較化合物として下記の構造式
【化32】
で示される特許文献2記載の実施例12の化合物(以下、比較化合物Aと略記することがある。)、および下記の構造式
【化33】
で示される特許文献1記載の実施例1(F)記載の化合物の光学活性体(2S体)かつカルボン酸体である、4−{(2S,4aR,5R,6R,7aS)−6−ヒドロキシ−5−[(1E,3S)−3−ヒドロキシ−1−オクテン−1−イル]オクタヒドロシクロペンタ[b]チオピラン−2−イル}ブタン酸(以下、比較化合物Bと略記することがある。)の結果を表1に示す。
【表1】
【0171】
以上の結果から、比較化合物AはFP受容体に対するアゴニスト活性を有するだけでなく、IP受容体に対するアゴニスト活性をも有しており、さらに比較化合物BはFP受容体に対するアゴニスト活性に加えて、EP2、EP4およびIP受容体に対するアゴニスト活性をも有している。これらに対して、本発明化合物は、EP2、EP4およびIP受容体に対するアゴニスト活性が低く、かつFP受容体に対する選択的なアゴニスト活性を有することがわかった。
【0172】
(2)インビボ(in vivo)試験
インビボ(in vivo)試験においては、当業者には容易に理解できることではあるが、いずれの被験化合物についても、活性本体であるカルボン酸は角膜透過性が悪いことから、エチルエステル体、イソプロピルエステル体等のエステル体に変換した化合物を点眼投与することによって、活性本体の薬理作用を評価した。なお、本願化合物群において、エステル体は、下記で薬理作用を確認する実験動物(ウサギ、イヌ等)において、点眼投与した後、房水中におけるカルボン酸の薬物濃度を測定することによって、当該エステル体が速やかに相当するカルボン酸に変換されることを確認した。
【0173】
(2−1)眼圧下降作用
予め十分に馴化を行った雄性イヌ(TOYO Beagle)に、基剤(クエン酸緩衝液pH6.5、0.5%ポリソルベート80、1%プロピレングリコール、0.01%塩化ベンザルコニウム含)で0.003%(w/v)に調製した実施例16(1)の化合物を、それぞれ片眼に30μL点眼した。対眼は無処置とした。陽性対照化合物として、公知化合物であるラタノプロストを用いた。
【0174】
その後、眼科用表面麻酔剤(ベノキシール点眼液0.4%、参天製薬株式会社)を点眼して局所麻酔し、各被験化合物の点眼前および点眼2、4、6、8、24時間後の眼圧を測定した。眼圧は空圧式平式眼圧計(Model 30 Classic、ライカート社)を用いて測定した。眼圧下降率(%)は、以下の式により算出した。
【数1】
各ポイントでの測定値のうち、最大作用を示した結果を表2に示す。実施例16(1)の化合物を点眼投与したイヌの眼圧は、陽性対照化合物であるラタノプロストと比較して強い眼圧下降作用を示した。
【表2】
【0175】
(2−2)眼刺激性および房水タンパク質濃度評価
雄性ウサギ(NewZealandWhite、2.0〜3.0kg)に、基剤(クエン酸緩衝液pH6.5、0.5%ポリソルベート80、1%プロピレングリコール、0.01%塩化ベンザルコニウム含)で0.1%(w/v)に調製した実施例16(1)の化合物を、それぞれ片眼に30μL点眼した。その後、点眼0、1、2、4、6および8時間後の前房中の眼房水を採取し、房水中のタンパク質濃度を測定した。比較化合物として、上記した特許文献2記載の実施例12の化合物のメチルエステル体(すなわち、特許文献2記載の実施例10の化合物)(以下、比較化合物Cと略記することがある。)、および上記した比較化合物Bのメチルエステル体(すなわち、特許文献1記載の実施例1(F)の化合物の光学活性体(2S体))(以下、比較化合物Dと略記することがある。)を用いた。
【0176】
眼一般状態の観察は、点眼0、1、2、4、6および8時間後に行い、角膜、虹彩および結膜の肉眼的所見を公知のドレーズ(Draize)法の判定基準に従い観察した。得られた各項目の評価点の合計点(=A×B×5+A×5+(A+B+C)×2)をDraize評点として評価した。Draize評点の分類基準は、「生物学的安全性試験の基本的な考え方に関する参考資料について、平成15年3月19日付け事務連絡医療機器審査No.36、医薬品医療機器総合機構」を参照に作成した。分類基準は、Draize評点0以上5以下を無刺激物、5より大きく15以下を軽度刺激物、15より大きく30以下を刺激物、30より大きく60以下を中等度刺激物、60より大きく80以下を中〜強度刺激物、80より大きく110以下を強度刺激物とした。
【0177】
いずれの被験化合物についても、1000μg/mLの用量を投与し、各活性本体の作用を評価した。
【0178】
結果を以下の図1および図2に示す。比較化合物Cおよび比較化合物Dは、そのIP受容体に対するアゴニスト活性、またはIP、EP2およびEP4アゴニスト活性に基づき、Draize評点の最大値からいずれも軽度刺激物と分類された。さらに、両化合物とも房水中タンパク質濃度も上昇させることから、眼に対する副作用を誘発することがわかった。それに対して、本発明化合物である実施例16(1)の化合物は、Draize評点では無刺激物であり、かつ房水中タンパク質濃度を上昇させる作用もないことがわかった。
【0179】
以上より、本発明化合物は、EP2、EP4およびIP受容体に対するアゴニスト活性が低く、かつFP受容体に対する選択的なアゴニスト活性を有することから、EP2、EP4およびIP受容体アゴニスト活性に基づく充血等の眼刺激性および房水タンパク質上昇等の眼に対する副作用を回避できることが示唆された。
【0180】
(2−3)覚醒下サルにおける眼圧下降作用
覚醒下の雄性サル(カニクイザル)の左眼に、被験物質を上記と同様の基剤を用いて調製した溶液と、右眼には対照として基剤のみの溶液をそれぞれ30μL点眼投与した。投与後の眼圧を経時的に投与開始から24時間後まで測定した。眼圧測定の際には、カニクイザルをモンキーチェアーに保定後、眼科用表面麻酔剤(ベノキシール点眼液0.4%、参天製薬株式会社)を点眼投与して麻酔した。開瞼器(株式会社はんだや)を装着後、空圧圧平式眼圧計(モデル30クラシック、ライカート社)を用いて、両眼の眼圧を測定した(各群5〜8例)。対照眼と被験物質を投与した眼との眼圧値の差を、以下の式を用いて眼圧下降率として算出し、測定中の最大眼圧下降率と24時間後の眼圧下降率を用いて、眼圧下降作用の持続性を評価した。被験物質の投与用量は、比較化合物Cは10μg/mL、および実施例16(1)は30μg/mLとした。
【数2】
【0181】
結果を以下の表3に示す。比較化合物Cは最大眼圧下降率が不十分であることに加え、24時間後にはその下降率は10%未満に低下し、眼圧下降作用を十分に維持できないことがわかった。それに対して、本発明化合物はいずれも、最大眼圧下降率も高く、24時間後でも約20%以上の眼圧下降率を維持できる化合物であり、強力かつ持続的な眼圧下降作用を有することがわかった。
【表3】
以上より、本発明化合物は、EP2、EP4およびIP受容体に対するアゴニスト活性が低く、かつFP受容体に対する選択的なアゴニスト活性を有することから、強い眼圧下降作用を持続的に有することだけでなく、EP2、EP4およびIP受容体アゴニスト活性に基づく充血等の眼刺激性および房水タンパク質上昇等の眼に対する副作用を回避できることが示唆された。
【0182】
[製剤例]
製剤例1
本発明に用いられる代表的な製剤例を以下に示す。
1.点眼剤
以下の処方の点眼剤を汎用される方法を用いて調製した。
【0183】
滅菌精製水にグリセリン(2.5g)およびポリソルベート80(500mg)を加えた後、実施例16(1)の化合物(1mg)を加え溶解し、滅菌精製水で全量100mLとし、メンブランフィルターで滅菌濾過した後、所定の容器に充填し、下記処方の点眼液を得た。
【0184】
上記と同様にして、実施例16(1)の化合物を100mL中に0.1mgおよび0.5mg含有する点眼剤等を調製することができる。また、実施例16(1)の化合物に代えて、他の本発明化合物を用いることができる。
【0185】
2.眼軟膏
以下の処方の眼軟膏を汎用される方法を用いて調製した。
【0186】
流動パラフィンと白色ワセリンをあらかじめ加熱滅菌した。実施例16(1)の化合物(1mg)を流動パラフィン(10g)と十分研和後、白色ワセリンを加えて全量100gとし、十分練り合わせ、眼軟膏を得た。
【産業上の利用可能性】
【0187】
本発明化合物は、強い眼圧下降作用を有し、さらに眼刺激性(充血、角膜混濁等)、房水タンパク質上昇等の眼の副作用がないことから、優れた緑内障等の予防および/または治療剤として有用である。
図1
図2