(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1の車載無線通信装置1は、アンテナモジュール100とECU200とを備えており、車車間通信および路車間通信を行う機能と、携帯電話通信を行う機能を備えている。また、GNSSの航法衛星からの電波を受信する機能も備える。なお、以下では、車車間(Vehicle to Vehicle)通信および路車間(Vehicle to Infrastructure)通信を総称してV2X通信という。
【0014】
(アンテナモジュール100の構成)
まず、アンテナモジュール100の構成を説明する。アンテナモジュール100は、2つのV2X用アンテナ110A、110Bを備える。V2X通信の周波数帯は、本実施形態では5.9GHz帯とし、V2X用アンテナ110A、110Bは、その周波数帯を受信できる電気長となっている。なお、V2X通信の周波数帯として700MHz帯を用いることもできる。
【0015】
V2X用アンテナ110A、110Bはそれぞれ同軸ケーブル10、20に接続されている。これら2つのV2X用アンテナ110A、110Bのうち、V2X用アンテナ110Aは受信にのみ用いられる。他方のV2X用アンテナ110Bは、受信および送信の両方に用いられる。
【0016】
これら2つのV2X用アンテナ110A、110Bの他に、アンテナモジュール100は、航法衛星からの電波を受信するGNSS用アンテナ120、ローノイズアンプ130、携帯電話用アンテナ140を備える。携帯電話通信で使用する周波数帯はV2X通信で使用する周波数帯である5.9GHz帯よりも低く、たとえば、700〜900MHz帯、1.8GHz帯、2.1GHz帯である。携帯電話用アンテナ140は、携帯電話通信で使用する複数の周波数帯のいずれかに適合する電気長となっている。
【0017】
GNSS用アンテナ120はローノイズアンプ130に接続され、そのローノイズアンプ130は同軸ケーブル30に接続されている。携帯電話用アンテナ140は同軸ケーブル40に接続されている。
【0018】
(ECU200の構成)
ECU200は、演算部210、ベースバンドチップ220、RFチップ230、切り替え回路240、GNSS受信部250、セキュリティアクセスモジュール(SAM)260、携帯電話通信チップ270、切り替え回路280、電源部290を備える。
【0019】
演算部210は、CPU211、メモリ212、インターフェース(I/F)213を備える。演算部210は、車内LAN300と接続されており、車両内の他の装置との間で車内LAN300を介して信号の送受信を行う。また、演算部210は、ベースバンドチップ220、携帯電話通信チップ270などのECU200の内部の他の回路とも相互に通信可能に接続されている。演算部210は、車内LAN300を介して取得できる情報や、ECU200の内部の他の回路から取得できる情報を用いて、干渉判定部210A、干渉抑制処理部210B(
図3参照)としての機能を実行する。
【0020】
ベースバンドチップ220は、ベースバンド処理部221、CPU222、メモリ223、I/F224を備える。I/F224を介してベースバンドチップ220は、演算部210やRFチップ230と相互に通信を行う。
【0021】
ベースバンド処理部221は、変調するための信号を生成し、また、受信信号を処理し、受信信号から変調前の元のデータを取り出す。CPU222は、上記ベースバンド処理部221を制御して、ベースバンド処理部221に、変調するための信号を生成させ、また、受信信号から元のデータを取り出させる。また、送信タイミングの制御も行う。また、受信信号強度の検出や、受信エラー率の算出も行う。メモリ223には、受信信号から取り出したデータなど一時的に記憶される。
【0022】
RFチップ230は、2つの受信部231、232と一つの送信部233を備える。受信部231は、同軸ケーブル10と接続されており、この同軸ケーブル10を介してアンテナ110Aが受信した信号が入力される。受信部231は、入力される信号をろ波、増幅してベースバンドチップ220へ送る。
【0023】
もう一つの受信部232も、機能は上述の受信部231と同じである。この受信部232は、切り替え回路240、同軸ケーブル20を介してアンテナ110Bと接続される。また、送信部233も切り替え回路240と接続されている。
【0024】
切り替え回路240は、受信部232と同軸ケーブル20とが接続された状態と、送信部233と同軸ケーブル20とが接続された状態とを切り替える。切り替え回路240はベースバンドチップ220からの信号により接続位置が切り替えられる。なお、本実施形態では、ベースバンドチップ220、RFチップ230は、IEEE802.11pの通信規格により車車間通信および路車間通信を行なう仕様となっている。
【0025】
GNSS受信部250は、同軸ケーブル30を介してGNSS用アンテナ120と接続されており、GNSS用アンテナ120から供給される信号をろ波、増幅、復調して受信データを演算部210へ供給する。SAM260は、車車間通信または路車間通信により送受信する信号を暗号化、復号化する。
【0026】
携帯電話通信チップ270は、ベースバンド処理部271、CPU272、メモリ273、I/F274、受信部275、送信部276を備える。I/F274を介して携帯電話通信チップ270は演算部210と相互に通信を行う。
【0027】
ベースバンド処理部271は、変調するための信号を生成し、また、受信信号を処理して変調前の元のデータを取り出す。CPU272は、ベースバンド処理部271など、携帯電話通信チップ270の内部の他の要素を制御する。メモリ273には、ベースバンド処理部271が受信信号から取り出したデータなどが一時的に記憶される。
【0028】
受信部275は、切り替え回路280および同軸ケーブル40を介して携帯電話用アンテナ140と接続されており、携帯電話用アンテナ140が受信した信号が入力される。受信部275は、入力される信号をろ波、増幅してベースバンド処理部271へ送る。
【0029】
送信部276は、ベースバンド処理部271が生成した信号を変調、増幅する。送信部276の増幅率は可変である。この送信部276も切り替え回路280および同軸ケーブル40を介して携帯電話用アンテナ140と接続されており、送信部276で変調、増幅した信号は、携帯電話用アンテナ140から電波として送信される。この送信部276の送信電力および使用チャンネルは可変になっており、それら送信電力、使用チャンネルはCPU272が出す制御信号により制御可能となっている。
【0030】
切り替え回路280は、受信部275と同軸ケーブル40とが接続された状態と、送信部276と同軸ケーブル40とが接続された状態とを切り替える。切り替え回路280の接続状態の切り替えは、携帯電話通信チップ270からの信号により行われる。
【0031】
電源部290は、このECU200の内部の種々の構成部品に電力を供給するとともに、アンテナモジュール100の構成部品にも電力を供給する。
【0032】
以上、説明した構成のうち、ベースバンドチップ220、RFチップ230、切り替え回路240、V2X用アンテナ110A、110B、同軸ケーブル10、20がV2X通信部2(請求項の第一の無線通信部)を構成する。また、携帯電話通信チップ270、切り替え回路280、携帯電話用アンテナ140、同軸ケーブル40が携帯電話通信部3を構成する。また、携帯電話通信部3は請求項の第二の無線通信部に相当する。
【0033】
(アンテナモジュール100の搭載状態)
図2にアンテナモジュール100の搭載状態を示している。この図はV2X用アンテナ110A、110Bと、携帯電話用アンテナ140の位置関係を示すための図であり、その他の構成の一部は省略している。
【0034】
アンテナモジュール100のハウジング8は、外観デザイン上の理由により、車両前方から車両後方にかけて流線形を有する形状(いわゆるシャークフィン形状)に形成されている。
【0035】
地板4は、略長方形をなす平面形状であり金属板により構成される。アンテナモジュール100が車両ルーフ7のルーフ面7aに搭載された状態では、地板4は車両ルーフ7のルーフ面7aに沿う。地板4の上面部である地板面4aには樹脂からなる平面形状の基板5が略垂直に立設されている。
【0036】
基板5の一方側の面5aにはアンテナグランド6が導体パターン(導体膜)により形成されている。なお、アンテナグランド6と地板4とを電気的に接続する図示しない接続部も導体パターンにより形成されている。本実施形態におけるアンテナグランド6の形状は矩形状である。
【0037】
アンテナグランド6の上端部6aにV2X用アンテナ110Aが接続されている。V2X用アンテナ110Aは、垂直偏波を送受信する直線形状のモノポール型である。V2X用アンテナ110Aは、その基端部から先端部に向かうにしたがってアンテナグランド6から略垂直方向に離れるように配置されている。アンテナ110の長さ(エレメント長)は、電気的に「1/4」波長であり、例えば5.9GHz帯の電波の波長に対して「1/4」を乗じ、更に基板5の材質の比誘電率による波長短縮率を乗じた長さである。また、V2X用アンテナ110Aの基端部にはV2X用アンテナ110Aに電力を供給する給電点9が設けられている。
【0038】
アンテナグランド6の下端部6bには、V2X用アンテナ110Bが接続されている。V2X用アンテナ110Bも、垂直偏波を送受信する直線形状のモノポール型である。V2X用アンテナ110Bは、その基端部から先端部に向かうにしたがってアンテナグランド6から略垂直方向に離れるように配置されている。V2X用アンテナ110Bの長さ(エレメント長)も、電気的に「1/4」波長である。V2X用アンテナ110Bの基端部にはそのV2X用アンテナ110Bに電力を供給する給電点12が設けられている。
【0039】
これらV2X用アンテナ110A、110Bは、アンテナグランド6の中心部6cから車両前後方向にずれている。アンテナグランド6の車両前後方向の長さは、例えば5.9GHz帯の電波の波長に対して「1/4」を乗じ、更に基板5の材質の比誘電率による波長短縮率を乗じた長さよりも長いことが望ましい。また、給電点9および12同士の間隔は、空間ダイバーシティとしてのアンテナ110Aおよび110B同士の相関を抑制するように、例えば5.9GHz帯の電波の波長に対して「1/2」を乗じ、更に基板5の材質の比誘電率による波長短縮率を乗じた長さよりも広いことが望ましい。
【0040】
携帯電話用アンテナ140も、ハウジング8の内部に設けられている。携帯電話通信の使用周波数がV2X通信よりも低いことから、携帯電話用アンテナ140はV2X用アンテナ110A、110Bよりも長い。そのため、本実施形態では、ハウジング8により形成される空間において最も上下方向に長い、ハウジング8の内部において最も車両後方部分に携帯電話用アンテナ140が配置されている。携帯電話用アンテナ140の向きも、本実施形態では、V2X用アンテナ110A、110Bと同様、鉛直方向である。
【0041】
(ECU200の演算部210の機能)
ECU200の演算部210は
図3に示すように、干渉判定部210Aと干渉抑制処理部210Bとしての機能を実行する。なお、
図3に示す各部210A、210Bは、本実施形態に特徴的な機能のみを示しており、演算部210は、
図3に示す機能のほかにも種々の機能を実行する。
【0042】
干渉判定部210Aは、携帯電話通信部3が電波を送信しているときのV2X通信部2の受信状態に基づいて、V2X通信部2が受信した電波が、携帯電話通信部3が送信した電波により干渉されている被干渉状態であるかを逐次判定する。
【0043】
干渉抑制処理部210Bは、干渉判定部210Aが被干渉状態であると判定したことに基づいて、V2X通信部2が受信する電波が、携帯電話通信部3が送信する電波により干渉されにくくなる干渉抑制処理を行う。これらの機能は
図4以降のフローチャートを用いて説明する。
【0044】
(第1実施形態の干渉判定部210Aの処理)
第1実施形態の干渉判定部210Aは
図4に示す処理を一定周期で実行する。
図4に示すように、まず、ステップS1で、携帯電話通信チップ270から携帯電話通信部3の通信状態を取得する。ここで取得する通信状態は、携帯電話通信部3が送信中であるか否かを示す情報を含んでいる。
【0045】
ステップS3では、V2X通信部2のベースバンドチップ220から、路車間通信、車車間通信の受信信号強度を取得する。なお、路車間通信の受信信号強度と、車車間通信の受信信号強度とを別々に取得してもよいし、これらを区別していない受信信号強度を取得してもよい。
【0046】
ステップS4では、V2X通信部2のベースバンドチップ220から、路車間通信、車車間通信の受信エラー率を取得する。受信エラー率も、路車間通信と車車間通信を区別して取得してもよいし、区別していない受信エラー率を取得してもよい。
【0047】
ステップS5では、携帯電話通信部3が送信中であるかどうかを、ステップS1で取得した通信状態に基づいて判断する。送信中であれば、ステップS6に進み、そのときの受信信号強度と受信エラー率を、携帯電話通信部3が送信していないときのエラーデータ(以下、電話部非送信時エラーデータ)として、メモリ212へ蓄積する。
【0048】
ステップS5の判断がYES、すなわち、携帯電話通信部3が送信中である場合にはステップS7へ進む。ステップS7では、ステップS3で取得した受信信号強度とステップS4で取得した受信エラー率を、メモリ212に蓄積されている電話部非送信時エラーデータと比較する。そして、電話部非送信時エラーデータと比較して、受信信号強度に対する受信エラー率が高い場合には、携帯電話通信部3からの被干渉ありとする。具体的には、たとえば、電話部非送信時エラーデータから、ステップS3で取得した受信信号強度における受信エラー率を参照する。その参照した受信エラー率と、ステップS4で取得した受信エラー率とを比較し、ステップS4で取得した受信エラー率の方が所定値以上高い場合に被干渉ありとする。
【0049】
ステップS8では、ステップS7で被干渉ありとしたかどうかを判断し、YESであればステップS9に進んで被干渉ありと判定する。NOであればステップS10に進んで被干渉なしと判定する。
【0050】
(第1実施形態の干渉抑制処理部210Bの処理)
第1実施形態の干渉抑制処理部210Bは
図5に示す処理を一定周期で実行する。
図5に示すように、まず、ステップS21で干渉判定情報を取得する。この干渉判定情報とは、
図4のステップS9またはS10の判断結果である。
【0051】
ステップS23ではステップS21で取得した干渉判定情報に基づいて、被干渉があるか否かを判断する。被干渉なしの場合(S23:NO)には何もせずに処理を終了する。
【0052】
被干渉ありの場合にはステップS27へ進む。
【0053】
ステップS27では、携帯電話通信部3の送信電力を下げる処理を行う。具体的には、携帯電話通信チップ270へ送信電力を下げる指示を出力する。この指示を携帯電話通信チップ270のCPU272が取得すると、CPU272は送信部276の増幅率を低下させることで送信電力を低下させる。
【0054】
送信電力を低下させる程度は、たとえば、予め設定された一定値あるいは一定比率である。また、ステップS6において比較した、電話部非送信時エラーデータから参照した受信エラー率と取得した受信エラー率との差に応じて低下させる値あるいは比率を決定してもよい。
【0055】
(第1実施形態の効果)
以上、説明した第1実施形態では、干渉判定部210A(
図3、
図4)を備え、V2X通信部2が受信した電波が、携帯電話通信部3が送信した電波により干渉されている被干渉状態であるかどうか否かを判定する。そして、干渉抑制処理部210B(
図3、
図5)は、干渉判定部210Aが被干渉ありと判定したことに基づいて、干渉抑制処理として、携帯電話通信部3の送信電力をそれまでよりも低下させる処理を行う。携帯電話通信部3の送信電力がそれまでよりも低くなることにより、V2X通信部2が受信する電波が、携帯電話通信部3が送信する電波により干渉されることが抑制される。
【0056】
しかも、携帯電話通信部3が電波を送信している場合に必ず干渉抑制処理を行うのではなく、携帯電話通信部3が電波を送信していても、被干渉ありと判定しなければ、携帯電話通信部3の送信電力を低下させる処理は行わない。よって、携帯電話通信部3の通信が制限される場合が少なくなる。
【0057】
(第2実施形態)
次に第2実施形態を説明する。なお、この第2実施形態以下の説明において、それまでに使用した符号と同一番号の符号を有する要素は、特に言及する場合を除き、それ以前の実施形態における同一符号の要素と同一である。また、構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分については先に説明した実施形態を適用することができる。
【0058】
第2実施形態では、干渉抑制処理部210Bが、
図5の処理に代えて
図6の処理を実行する。その他は第1実施形態と同じである。
【0059】
図6では、
図5と同様にステップS21、S23を実行する。ステップS23で被干渉ありと判定した場合にはステップS24を実行する。ステップS24では、携帯電話の基地局に対して通信チャネルの変更要求を送出することを、携帯電話通信チップ270へ指示する。
【0060】
(第2実施形態の効果)
このように、第2実施形態では、干渉抑制処理部210B(
図3、
図6)は、干渉判定部210Aが被干渉ありと判定したことに基づいて、干渉抑制処理として、携帯電話通信部3の通信チャネルを変更させる処理を行う。
【0061】
干渉は、高調波など特定の周波数関係で発生することがある。従って、第2実施形態のように、被干渉ありと判定した場合に、携帯電話通信部3の通信チャネルを変更することで、被干渉が回避できることがある。そして、通信チャネルの変更により被干渉を回避するので、携帯電話通信部3の通信が制限される場合が少なくなる。
【0062】
(第3実施形態)
第3実施形態では、干渉抑制処理部210Bが、
図5、6の処理に代えて
図7の処理を実行する。その他は第1、2実施形態と同じである。
【0063】
図7では、ステップS1で携帯電話通信部3の通信状態を取得した後、ステップS2において、路車間通信、車車間通信の受信信号を検出したか否かを判断する。路車間通信、車車間通信の受信信号は、それら路車間通信、車車間通信を区別する必要はなく、いずれかの受信信号が検出できていればよい。
【0064】
ステップS2の判断がYESである場合には、ステップS3〜S10を実行する。これらは
図4で説明したものと同じ処理である。
【0065】
ステップS2の判断がNOである場合には、受信信号のエラー率に基づいた処理であるステップS3〜S10を実行することができない。そこで、受信信号の検出ができない理由が携帯電話通信部3からの干渉が大きいためであるか否かを判定するために、ステップS11以下を実行する。
【0066】
ステップS11では、使用チャネルがビジー状態であることを検出したか否かを判断する。ビジー状態であるか否かは、受信電力が受信電力のしきい値以上か否かにより判断する。ビジー状態を検出していなければ(S11:NO)、何もせずに
図7の処理を終了する。一方、ステップS11がYESの場合にはステップS12へ進む。
【0067】
ステップS12では、携帯電話通信部3が送信中であるか否かを、ステップS1で取得した通信状態に基づいて判断する。送信中でない場合(S12:NO)、ビジー状態である原因が、携帯電話通信部3の送信電波による干渉ではないため、何もせずに
図7の処理を終了する。送信中であれば(S12:YES)、ステップS13へ進む。ステップS13では、被干渉によるチャネルビジーありと判定する。
【0068】
第3実施形態の干渉抑制処理部210Bは
図8に示す処理を実行する。
図8では、ステップS21で干渉判定情報を取得した後、ステップS22において、被干渉によるチャネルビジーありか否かを判断する。
【0069】
被干渉によるチャネルビジーがない場合(S22:NO)には、ステップS23へ進む。ステップS23およびステップS27は
図5と同じである。被干渉によるチャネルビジーがある場合(S22:YES)にはステップS29へ進む。
【0070】
ステップS29では、路車間通信、車車間通信のチャネルビジー判定のしきい値を上げる処理を行う。ビジー状態であるか否かの判定においては、受信電力がしきい値以上であれば、ビジー状態であると判定する。したがって、ビジー状態であるか否かを判定するしきい値を上げることで、ビジー状態であると判定されにくくなる。しきい値を上げる程度は、たとえば、被干渉によるチャネルビジーと判定されなくなる最低限の値、または、その値に一定の余裕値を加えた値とする。また、予め設定された一定値でもよい。
【0071】
(第3実施形態の効果)
この第3実施形態では、被干渉によるチャネルビジーがあるか否かを判断している(S2、S11〜S13)。そして、被干渉によるチャネルビジーがあると判断した場合には、路車間通信、車車間通信のチャネルビジー判定のしきい値を上げる(S29)。これにより、ビジー状態であると判定されにくくなる。
【0072】
被干渉によるチャネルビジー状態であると判定されている状態では、受信すべきパケット信号は受信していない状態でも、受信電力がしきい値を超えている。よって、仮に受信すべきパケット信号を受信したとしても、ビジー状態との判定が継続されるだけであるため、パケットの受信タイミングが分からない。
【0073】
しかし、第3実施形態のように、チャネルビジー判定のしきい値を上げると、受信すべきパケットを受信した期間のみ、受信電力がしきい値を越えるようになる。これにより、受信信号の受信タイミングを検出できるので、受信信号を正しく検出できる可能性が高くなる。
【0074】
(第4実施形態)
第4実施形態は、干渉抑制処理部210Bが
図9の処理を実行する。その他は第3実施形態と同じである。
図9は、ステップS24が追加されている点が
図8と相違する。
【0075】
図9では、ステップS23で被干渉ありと判断した場合ステップS24を実行する。ステップS24では、携帯電話通信部3で優先通信中か否かを判断する。優先通信とは、警察機関への緊急通報、消防機関への緊急通報、事故時に自動的に行われる緊急通報などである。優先通信中か否かは、たとえば、優先通信と判断する予め登録された電話番号に通信中か否かで判断する。
【0076】
優先通信中でなければ(S24:NO)、ステップS27を実行して、携帯電話通信部3の送信電力を下げる。しかし、優先通信中である場合には、優先通信を優先させるために、ステップS27を実行しない。
【0077】
(第4実施形態の効果)
この第4実施形態によれば、被干渉ありと判断した場合(S23:YES)であって、携帯電話通信部3が優先通信中でない場合(S24:NO)には、携帯電話通信部3の送信電力を下げる。これにより、V2X通信部2が受信する電波が、携帯電話通信部3が送信する電波により干渉されることが抑制される。
【0078】
加えて、被干渉ありと判断した場合(S23:YES)であっても、携帯電話通信部3が優先通信中であれば(S24:YES)、携帯電話通信部3の送信電力を低下させない。よって、車車間通信や路車間通信よりも優先的に行うべきである携帯電話通信部3の優先通信が中断されてしまうことも抑制できる。
【0079】
(第5実施形態)
第5実施形態は、干渉抑制処理部210Bが
図10の処理を実行する。その他は第3、4実施形態と同じである。
図10は、ステップS25が追加されている点が
図9と相違する。
【0080】
図10では、ステップS24で、携帯電話通信部3が優先通信中でないと判断した場合(S24:NO)、ステップS25を実行する。ステップS25では、この車載無線通信装置1を搭載した車両が停車中であるか否かを判断する。停車中か否かは、車内LAN300を介して取得する車速やシフト位置の情報から判断する。
【0081】
停車中でなければ(S25:NO)、ステップS27を実行して、携帯電話通信部3の送信電力を下げる。しかし、停車中であれば(S25:YES)、V2X通信を優先させる必要性が高くないことから、ステップS27を実行しない。
【0082】
(第5実施形態の効果)
この第5施形態によれば、被干渉ありと判断した場合(S23:YES)であって、携帯電話通信部3が優先通信中でなく(S24:NO)、車両停車中でない場合(S25:NO)には、携帯電話通信部3の送信電力を下げる。これにより、V2X通信部2が受信する電波が、携帯電話通信部3が送信する電波により干渉されることが抑制される。
【0083】
加えて、被干渉ありと判断した場合(S23:YES)であっても、車両停車中であれば(S25:YES)、携帯電話通信部3の送信電力を低下させない。よって、車両停車中という、V2X通信を優先させる必要性が高くないときにまで、携帯電話通信部3の送信電力を低下させてしまうことも防止できる。
【0084】
(第6実施形態)
第6実施形態の車載無線通信装置1Aを
図11に示す。車載無線通信装置1Aは携帯電話通信部3Aの構成が、
図1に示した携帯電話通信部3と相違する。
【0085】
より詳しくは、携帯電話通信部3Aは、車載無線通信装置1が備えていた1本の携帯電話用アンテナ140に加えて、もう1本の携帯電話用アンテナ150を備える。
【0086】
そして、その携帯電話用アンテナ150に対応する同軸ケーブル50、切り替え回路285を備え、また、携帯電話通信チップ270Aは、一組の受信部275、送信部276に加えて、もう一組の受信部277、送信部278を備える。第6実施形態の携帯電話通信部3Aは、2本の携帯電話用アンテナ140、150およびそれらにそれぞれ対応した受信部275、277、送信部276、278を用いて、MIMO(Multiple Input Multiple Output)通信を行う。
【0087】
携帯電話用アンテナ150は、
図12に示すアンテナモジュール100Aに収容されている。このアンテナモジュール100Aは車両ルーフ7の前端部分に設置されている。これに対して、2本のV2X用アンテナ110A、110Bや、他方の携帯電話用アンテナ140を収容しているアンテナモジュール100は、車両ルーフ7の後端部分に設置されている。よって、2本の携帯電話用アンテナ140、150は、V2X用アンテナ110との距離が互いに異なっており、アンテナモジュール100Aに収容されている携帯電話用アンテナ150は、他方の携帯電話用アンテナ140よりもV2X用アンテナ110から遠くなっている。
【0088】
第6実施形態でも、干渉判定部210Aはこれまでの実施例と同じ、
図4あるいは
図7の処理を実行する。干渉抑制処理部210Bは
図13に示す処理を実行する。
【0089】
図13では、
図5と同様にステップS21、S23を実行する。ステップS23で被干渉ありと判断した場合にはステップS28を実行する。ステップS28では、2本の携帯電話用アンテナ140、150のうち、V2X用アンテナ110から遠い側である携帯電話用アンテナ150のみを使用することに決定する。
【0090】
(第6実施形態の効果)
このように、第6実施形態では、干渉抑制処理として、2本の携帯電話用アンテナ140、150のうち、V2X用アンテナ110から遠い側である携帯電話用アンテナ150のみを使用する変更を行う。干渉は、アンテナの距離が近いほど生じやすい。そのため、第6実施形態のように、V2X用アンテナ110から遠い側の携帯電話用アンテナ150のみを使用することで、被干渉を回避あるいは軽減できる。
【0091】
(第7実施形態)
第7実施形態は、干渉抑制処理部210Bが
図14の処理を実行する。その他は第6実施形態と同じである。
図14は、
図10に類似しており、ステップS26、S28が追加されている点が
図10と相違する。
【0092】
図14では、ステップS25で、車両停車中でないと判断した場合(S25:NO)、ステップS26を実行する。ステップS26では、携帯電話通信部3が大量データのアップロード中であるか否かを判断する。大量データのアップロード中か否かは、携帯電話通信チップ270Aから、アップロード中の総データ量を取得し、取得した総データ量が予め設定した閾値以上か否かで判断する。
【0093】
大量データのアップロード中でなければ(S26:NO)、ステップS28を実行し、V2X用アンテナ110から遠い側である携帯電話用アンテナ150のみを使用することに決定する。しかし、大量データのアップロード中であれば(S26:YES)、使用するアンテナを1本に制限することはせず、代わりに、ステップS27を実行して携帯電話通信部3の送信電力を下げる。すなわち、2本の携帯電話用アンテナ140、150の使用を継続しつつ、2本の携帯電話用アンテナ140、150から送信する電力を両方とも低下させる。
【0094】
(第7実施形態の効果)
この第7施形態によれば、被干渉ありと判断し(S23:YES)、車両停車中でなく(S25:NO)、携帯電話通信部3が大量データのアップロード中でない(S26:NO)場合には、V2X用アンテナ110から遠い側である携帯電話用アンテナ150のみを使用する。これにより被干渉を回避あるいは軽減する。
【0095】
また、携帯電話通信部3が大量データのアップロード中であれば(S26:YES)、携帯電話通信部3の送信電力を低下させることで、被干渉を抑制する。
【0096】
これにより、大量データのアップロード中にスループットが低下することを抑制でき、かつ、その大量データアップロード中も、送信電力を低下させることで、被干渉も抑制できる。
【0097】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、次の実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0098】
(変形例1)
たとえば、第2実施形態では、携帯電話通信部3の通信チャネルを変更していたが、これに代えて、あるいは、これに加えて、V2X通信部2の通信チャネルを変更してもよい。
【0099】
(変形例2、3)
図10、14において、ステップS24を省略し、ステップS23がYESである場合にステップS25を実行してもよい(変形例2)。また、
図14において、ステップS24、S25を省略し、ステップS23がYESである場合にステップS26を実行してもよい(変形例3)。
【0100】
(変形例4)
前述の実施形態では、第一の無線通信部がV2X通信部であり、第二の無線通信部が携帯電話通信部であった。しかし、第一の無線通信部はV2X通信部に限られず、また、第二の無線通信部は携帯電話通信部に限られない。第一の無線通信部、第二の無線通信部は、互いに異なる種類の無線通信であれば、どのような無線通信でもよい。よって、無線通信装置は車載用である必要もなく、たとえば、携帯型の無線通信装置でもよい。
【0101】
(変形例5)
前述の実施形態では、V2X通信部2は、車車間通信および路車間通信を両方行っていたが、車車間通信および路車間通信のいずれか一方のみを行ってもよい。