特許第5907211号(P5907211)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5907211ゴム組成物及びこれを用いるコンベヤベルト
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  • 特許5907211-ゴム組成物及びこれを用いるコンベヤベルト 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5907211
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】ゴム組成物及びこれを用いるコンベヤベルト
(51)【国際特許分類】
   C08L 7/00 20060101AFI20160412BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20160412BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20160412BHJP
   C08K 3/06 20060101ALI20160412BHJP
   B65G 15/32 20060101ALI20160412BHJP
【FI】
   C08L7/00
   C08L9/00
   C08K3/04
   C08K3/06
   B65G15/32
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-108115(P2014-108115)
(22)【出願日】2014年5月26日
(65)【公開番号】特開2015-224259(P2015-224259A)
(43)【公開日】2015年12月14日
【審査請求日】2015年5月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080159
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 望稔
(74)【代理人】
【識別番号】100090217
【弁理士】
【氏名又は名称】三和 晴子
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】笹熊 英博
(72)【発明者】
【氏名】末藤 亮太郎
(72)【発明者】
【氏名】侯 剛
(72)【発明者】
【氏名】宮島 純
【審査官】 山村 周平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−031248(JP,A)
【文献】 特開2014−218555(JP,A)
【文献】 特開2013−122018(JP,A)
【文献】 特開2003−128844(JP,A)
【文献】 特開2002−105248(JP,A)
【文献】 特開2006−183805(JP,A)
【文献】 特開2000−169630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/16
C08K 3/00−13/08
B65G 15/00−15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴムとブタジエンゴムとを含むジエン系ゴムと、カーボンブラック1と、カーボンブラック2とを含有し、
前記天然ゴムの量が前記ジエン系ゴム中の40〜90質量%であり、前記ブタジエンゴムの量が前記ジエン系ゴム中の60〜10質量%であり、
前記カーボンブラック1の窒素吸着比表面積が60〜100m2/gであり、前記カーボンブラック1のジブチルフタレート吸油量が120cm3/100g以下であり、
前記カーボンブラック2の窒素吸着比表面積が20〜40m2/gであり、前記カーボンブラック2のジブチルフタレート吸油量が70〜95cm3/100gであり、
前記カーボンブラック1と前記カーボンブラック2との合計量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対して、25〜50質量部であり、
前記カーボンブラック2の量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対して、15〜25質量部である、ゴム組成物。
【請求項2】
前記カーボンブラック1の量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対して、15〜30質量部である、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
更に硫黄を含有し、前記硫黄の量が前記天然ゴムの量の3質量%以下である、請求項1または2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
上面カバーゴム層に請求項1〜のいずれか1項に記載のゴム組成物を用いて製造するコンベヤベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゴム組成物及びこれを用いるコンベヤベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の省電力性を有するコンベヤベルトは、例えば、下面カバーゴムのエネルギーロスを低減することによって、乗り越え抵抗を削減する手法が用いられていた。
これまでに、省エネルギー性と耐久性とを両立させ得るコンベアベルト用ゴム組成物の提供等を目的として、
(A)ジエン系重合体100質量部、及び
(B)窒素吸着比表面積60〜100m2/g及びジブチルフタレート吸油量110ml/100g未満のカーボンブラック(b−1)と、窒素吸着比表面積60m2/g未満及びジブチルフタレート吸油量110ml/100g以上のカーボンブラック(b−2)とを含有するカーボンブラック25〜55質量部を含有するコンベアベルト用ゴム組成物が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−122018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、本発明者らは、従来のコンベヤベルト用ゴム組成物は、省電力性の効果が充分でないことを見出した。
また、コンベヤベルトの走行時には、乗り越え抵抗だけでなく、積載物によってコンベヤベルトがたわむ場合や、トラフ変曲時にも、エネルギーロスが生じている。このため、コンベヤベルトにおいて大きいボリュームを占める上面カバーゴムのエネルギーロスを低下させる必要があると本発明者らは考えた。
また、コンベヤベルトの上面カバーゴム層に使用されるゴム組成物の物性としては、高い破断特性、硬さ、引裂き強さのほか、プーリーによる曲げ変形量も大きいことから高い耐屈曲疲労性も要求される。
そこで、本発明は、優れた省電力性を維持しつつ(つまりエネルギーロスが低い)、ゴム物性(破断特性、硬さ、引裂き強さ。以下同様。)、耐屈曲疲労性に優れるゴム組成物、及びこれを用いるコンベヤベルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、
天然ゴムとブタジエンゴムとを含むジエン系ゴムと、カーボンブラック1と、カーボンブラック2とを含有し、
前記天然ゴムの量が前記ジエン系ゴム中の40〜90質量%であり、前記ブタジエンゴムの量が前記ジエン系ゴム中の60〜10質量%であり、
前記カーボンブラック1の窒素吸着比表面積が60〜100m2/gであり、前記カーボンブラック1のジブチルフタレート吸油量が120cm3/100g以下であり、
前記カーボンブラック2の窒素吸着比表面積が20〜40m2/gであり、前記カーボンブラック2のジブチルフタレート吸油量が70〜95cm3/100gであり、
前記カーボンブラック1と前記カーボンブラック2との合計量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対して、25〜50質量部である、ゴム組成物が、優れた省電力性を維持しつつ、ゴム物性、耐屈曲疲労性に優れることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明者らは以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
【0006】
[1] 天然ゴムとブタジエンゴムとを含むジエン系ゴムと、カーボンブラック1と、カーボンブラック2とを含有し、
前記天然ゴムの量が前記ジエン系ゴム中の40〜90質量%であり、前記ブタジエンゴムの量が前記ジエン系ゴム中の60〜10質量%であり、
前記カーボンブラック1の窒素吸着比表面積が60〜100m2/gであり、前記カーボンブラック1のジブチルフタレート吸油量が120cm3/100g以下であり、
前記カーボンブラック2の窒素吸着比表面積が20〜40m2/gであり、前記カーボンブラック2のジブチルフタレート吸油量が70〜95cm3/100gであり、
前記カーボンブラック1と前記カーボンブラック2との合計量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対して、25〜50質量部である、ゴム組成物。
[2] 前記カーボンブラック1の量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対して、15〜30質量部である、上記[1]に記載のゴム組成物。
[3] 前記カーボンブラック2の量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対して、15〜25質量部である、上記[1]又は[2]に記載のゴム組成物。
[4] 更に硫黄を含有し、前記硫黄の量が前記天然ゴムの量の3質量%以下である、上記[1]〜[3]のいずれか1項に記載のゴム組成物。
[5] 上面カバーゴム層に上記[1]〜[4]のいずれか1項に記載のゴム組成物を用いて製造するコンベヤベルト。
【発明の効果】
【0007】
本発明のゴム組成物によれば、優れた省電力性を維持しつつ、ゴム物性、耐屈曲疲労性に優れるコンベヤベルトを製造することができる。
本発明のコンベヤベルトは、優れた省電力性を維持しつつ、ゴム物性、耐屈曲疲労性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明のコンベヤベルトの好適な実施態様の一例を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明について以下詳細に説明する。
まず、本発明のゴム組成物について説明する。
本発明のゴム組成物は、
天然ゴムとブタジエンゴムとを含むジエン系ゴムと、カーボンブラック1と、カーボンブラック2とを含有し、
前記天然ゴムの量が前記ジエン系ゴム中の40〜90質量%であり、前記ブタジエンゴムの量が前記ジエン系ゴム中の60〜10質量%であり、
前記カーボンブラック1の窒素吸着比表面積が60〜100m2/gであり、前記カーボンブラック1のジブチルフタレート吸油量が120cm3/100g以下であり、
前記カーボンブラック2の窒素吸着比表面積が20〜40m2/gであり、前記カーボンブラック2のジブチルフタレート吸油量が70〜95cm3/100gであり、
前記カーボンブラック1と前記カーボンブラック2との合計量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対して、25〜50質量部である、ゴム組成物である。
【0010】
窒素吸着比表面積が小さいカーボンブラックは粒径が大きく、このようなカーボンブラックはゴムのエネルギーロスを低減させることができるが、その量が多すぎると破断特性のようなゴム物性や耐屈曲疲労性が低くなる。
このため、本発明においては、特定のジエン系ゴムとカーボンブラック2とを含有するゴム組成物に対してカーボンブラック1を使用することによって、優れた省電力性を維持しつつ、ゴム物性、耐屈曲疲労性を優れたものとすることができ、優れた省電力性と高いゴム物性、耐屈曲疲労性とをバランスさせることができると考えられる。
このような低エネルギーロス且つ高タフネスのゴム組成物を例えば、コンベヤベルトの上面カバーゴム層に用いることで、コンベヤベルトの走行時の消費電力を削減できるとともに、耐久性も向上しコンベヤベルトの寿命が延長できる。
なお上記メカニズムは本発明者らの推測であり、メカニズムが異なっても本発明の範囲内である。
【0011】
本明細書において、省電力性、ゴム物性、耐屈曲疲労性のうちの少なくとも1つにより優れることを本発明の効果により優れるということがある。
【0012】
本発明のゴム組成物に含有されるジエン系ゴムは、天然ゴムとブタジエンゴムとを含む。
ジエン系ゴムに含まれる天然ゴム(NR)は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。天然ゴムはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0013】
ジエン系ゴムに含まれるブタジエンゴム(BR)は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
ブタジエンゴムの重量平均分子量は、加硫後の破断強度、引裂き強さがより高くなり、耐摩耗性に優れるという観点から、40万以上であるのが好ましく、45万以上100万以下であるのがより好ましい。本発明において、ブタジエンゴムの重量平均分子量は、テトラヒドロフランを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により得られたポリスチレン換算値である。
ブタジエンゴムはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0014】
本発明において、天然ゴムの量は、ジエン系ゴム中の40〜90質量%であり、本発明の効果により優れ、特にゴム物性に優れるという観点から、ジエン系ゴム中の50〜85質量%であるのが好ましく、60〜80質量%であるのがより好ましい。
また、ブタジエンゴムの量は、ジエン系ゴム中の60〜10質量%であり、本発明の効果により優れ、特にゴム物性に優れるという観点から、ジエン系ゴム中の50〜15質量%であるのが好ましく、40〜20質量%であるのがより好ましい。
【0015】
ジエン系ゴムは天然ゴム、ブタジエンゴム以外のジエン系ゴムを更に含むことができる。天然ゴム、ブタジエンゴム以外のジエン系ゴムとしては、例えば、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)等が挙げられる。
【0016】
天然ゴム及びブタジエンゴムの合計量は、本発明の効果により優れ、省電力性に優れるという観点から、ジエン系ゴム中の80〜100質量%であるのが好ましい。
ジエン系ゴムは天然ゴム、ブタジエンゴム以外のジエン系ゴムを更に含む場合、天然ゴム、ブタジエンゴム以外のジエン系ゴムの量は、ジエン系ゴム(全体)中の20質量%以下とすることができる。
【0017】
カーボンブラック1について以下に説明する。本発明のゴム組成物に含有されるカーボンブラック1は、窒素吸着比表面積が60〜100m2/gであり、かつジブチルフタレート吸油量が120cm3/100g以下であるカーボンブラックであれば特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。具体的には例えば、HAFのカーボンブラックが挙げられる。
【0018】
カーボンブラック1の窒素吸着比表面積は、本発明の効果により優れ、特に省電力性、破断特性に優れるという観点から、65〜95m2/gであるのが好ましく、65〜90m2/gであるのがより好ましい。
【0019】
カーボンブラック1のジブチルフタレート吸油量は、本発明の効果により優れ、破断特性に優れるという観点から、80〜120cm3/100gであるのが好ましく、90〜115cm3/100gであるのがより好ましい。
本発明において、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K 6217−2:2001に準じて測定された。また、ジブチルフタレート吸油量は、JIS K 6217−4:2008に準じて測定された。
カーボンブラック1はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0020】
カーボンブラック1の量は、本発明の効果により優れ、特に省電力性、ゴム物性に優れるという観点から、ジエン系ゴム100質量部に対して、15〜30質量部であるのが好ましく、15〜25質量部であるのがより好ましい。
【0021】
カーボンブラック2について以下に説明する。本発明のゴム組成物に含有されるカーボンブラック2は、窒素吸着比表面積が20〜40m2/gであり、かつジブチルフタレート吸油量が70〜95cm3/100gであれば特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。具体的には例えば、GPFのカーボンブラックが挙げられる。
【0022】
カーボンブラック2の窒素吸着比表面積は、本発明の効果により優れ、特にゴム物性に優れるという観点から、20〜35m2/gであるのが好ましく、20〜30m2/gであるのがより好ましい。
【0023】
カーボンブラック2のジブチルフタレート吸油量は、本発明の効果により優れ、特にゴム物性に優れるという観点から、70〜90cm3/100gであるのが好ましく、75 〜90cm3/100gであるのがより好ましい。
カーボンブラック2はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0024】
カーボンブラック2の量は、本発明の効果により優れ、特に省電力性、ゴム物性に優れるという観点から、ジエン系ゴム100質量部に対して、15〜25質量部であるのが好ましく、20〜25質量部であるのがより好ましい。
【0025】
本発明において、カーボンブラック1とカーボンブラック2との合計量は、ジエン系ゴム100質量部に対して、25〜50質量部であり、本発明の効果により優れ、特に省電力性、ゴム物性に優れるという観点から、ジエン系ゴム100質量部に対して、30〜50質量部であるのが好ましく、30〜45質量部であるのがより好ましい。
【0026】
本発明のゴム組成物は更に硫黄を含有することができる。硫黄は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
硫黄の量は、本発明の効果により優れ、特に耐屈曲疲労性に優れるという観点から、天然ゴムの量の3質量%以下であるのが好ましく、1〜3質量%であるのがより好ましい。
【0027】
本発明のゴム組成物は、上述した各成分以外に、本発明の効果、目的を損わない範囲で、更に添加剤を含有することができる。添加剤としては、例えば、カーボンブラック1、2以外のカーボンブラック、白色充填材、シランカップリング剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、老化防止剤、加工助剤、アロマオイル、液状ポリマー、テルペン系樹脂、熱硬化性樹脂、硫黄以外の加硫剤、加硫助剤、加硫促進剤、加硫遅延剤が挙げられる。
【0028】
本発明のゴム組成物はその製造について特に制限されない。例えば、上述したジエン系ゴム、カーボンブラック1、カーボンブラック2、必要に応じて使用することができる添加剤(加硫系を除く。)を、バンバリーミキサー等で混練し、ついで、混練ロール機等で硫黄、硫黄以外の加硫剤、加硫助剤、加硫促進剤を混練することによって製造することができる。
また、加硫の条件は特に制限されない。例えば、140〜160℃の条件下において、加熱、加圧することによって加硫を行うことができる。
【0029】
本発明のゴム組成物は、例えば、コンベヤベルトの上面カバーゴム層、下面カバーゴム層 に用いることができる。
【0030】
本発明のコンベヤベルトについて以下に説明する。
本発明のコンベヤベルトは、上面カバーゴム層に本発明のゴム組成物を用いて製造するコンベヤベルトである。
本発明のコンベヤベルトは少なくとも上面カバーゴム層を有する。上面カバーゴム層は本発明のゴム組成物を用いて形成される。
上面カバーゴム層に本発明のゴム組成物を用いることによって、本発明のコンベヤベルトは、優れた省電力性を維持しつつ、ゴム物性、耐屈曲疲労性に優れる。
本発明のコンベヤベルトは上面カバーゴム層以外に、補強層、下面カバーゴム層を有することができる。
【0031】
以下、本発明のコンベヤベルトを添付の図面を用いて説明する。なお本発明のコンベヤベルトは添付の図面に制限されない。
【0032】
図1は、本発明のコンベヤベルトの好適な実施態様の一例を模式的に示した断面図である。
図1において、コンベヤベルト1は、上面カバーゴム層2、補強層3、下面カバーゴム層4を有し、この順で積層されている。上面カバーゴム層2の表面は運搬物搬送面5となる。
【0033】
本発明において、上面カバーゴム層が本発明のゴム組成物を用いて形成される。
ここで、上面カバーゴム層が図1に示すように2層以上の層を有する場合、当該2層以上の層のうち少なくとも1層又は全部の層を本発明のゴム組成物を用いて形成することができる。また、本発明の効果により優れ、省電力性に優れるという観点から、少なくとも最外層を本発明のゴム組成物を用いて形成するのが好ましい。
図1において、上面カバーゴム層2は、外層11および内層12を有する。外層11及び/又は内層12を本発明のゴム組成物を用いて形成することができ、少なくとも外層11を本発明のゴム組成物を用いて形成するのが好ましい。
外層11を本発明のゴム組成物を用いて形成する場合、内層12を補強層3および外層11を接着させるための層とすることができる。
【0034】
下面カバーゴム層に使用されるゴム組成物は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
下面カバーゴム層4は、外層16はおよび内層15を有する。
外層16と内層15は同じ又は異なるゴム組成物を用いて形成されていてもよい。
【0035】
補強層は特に限定されず、通常のコンベヤベルトに用いられるものを適宜選択して用いることができる。また、補強層の形状は特に限定されず、例えば図1に示すようにシート状であってもよく、ワイヤー状の補強線を並列に埋込むものであってもよい。
【0036】
本発明のコンベヤベルトの上面カバーゴム層の厚さは、3〜20mmであるのが好ましい。
下面カバーゴム層の厚さは、3〜20mmであるのが好ましく、5〜15mmであるのがより好ましい。
なお、上面カバーゴム層の厚さは、上面カバーゴム層が2層以上で構成されている場合は、これらの層の厚さの合計をいう。下面カバーゴム層の厚さも同様である。
【0037】
本発明のコンベヤベルトはその製造について特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
本発明のコンベヤベルトは、例えば、石灰石を搬送するために使用することができる。
【実施例】
【0038】
以下に実施例を挙げ、本発明について更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
[ゴム組成物の製造]
下記第1表に示す組成成分(質量部)を混合して、各ゴム組成物(未加硫ゴム組成物)を製造した。
【0039】
[評価]
上記のとおり製造された各未加硫ゴム組成物を以下のとおり加硫し、加硫後の各種物性を以下に示す方法で測定し評価した。結果を下記第1表に示す。また各評価結果の好ましい範囲を同表に示す。
<加硫ゴムシートの製造>
上記のとおり製造された各未加硫ゴム組成物をプレス成型機を用いて、148℃の条件下で加圧し30分間加硫して、2mm厚の加硫ゴムシートを製造した。
【0040】
<硬さ>
上記のとおり製造された加硫ゴムシートから試験片を作製し、JIS K6253−3:2012の「タイプAデュロメータ硬さ試験」に準じて、ショアA硬さを測定した。
ショアA硬さが57〜67である場合、コンベヤベルトの上面カバーゴム層として適切な硬さを有するものとして評価できる。
【0041】
<破断強度、破断伸び>
上記試験片を用い、JIS K6251−2010に準じて、引張速度500mm/分での引張試験を行い、破断強度(TB)[MPa]および破断伸び(EB)[%]を室温にて測定した。
破断強度が18.0MPa以上である場合、高い破断強度を有すると評価できる。
破断伸びが400%以上である場合、高い破断伸びを有すると評価できる。
【0042】
<引裂き強さ>
上記のとおり製造された加硫ゴムシートから、JIS K6252:2007に準じて、クレセント形の試験片を切り抜き、中央くぼみ部に主軸と直角方向に長さ1.0±0.2mmの切り込みを入れた。試験片つかみ具の移動速度500mm/分の条件下で引裂き試験を行い、引裂き強さ[kN/m]を室温にて測定した。
【0043】
<耐屈曲疲労性(クラック成長)>
JIS K6260:2010に準拠した屈曲き裂成長試験により、専用の金型を用いて、上記のとおり製造された各未加硫ゴム組成物を148℃の条件下で加硫した指定のゴムサンプル(縦15cm、横5cm、厚さ6.3mm)を作成した。室温下において、試験片に対し、ストロークを20mm、屈曲を毎分300±10回として合計40万回与え、その後試験片の生じたクラックの長さ[mm]を測定した。
【0044】
<tanδ(20℃)>
上記のとおり製造された加硫ゴムシートから、短冊状(長さ20mm×幅5mm×厚み2mm)に切り抜いた試験片を用い、東洋精機製作所製粘弾性スペクトロメータを用いてtanδ(20℃)を測定した。測定は、20℃の条件下で、当該試験片を10%伸張させ、振幅±2%の振動を振動数20Hzで与えて行った。
tanδ(20℃)が0.13以下である場合、省電力性に優れる。
【0045】
【表1】
【0046】
第1表に示されている各成分の詳細は以下のとおりである。なお、カーボンブラックのN2SA(窒素吸着比表面積)の単位はm2/gであり、カーボンブラックのDBP(ジブチルフタレート吸油量)の単位はcm3/100gである。
・NR:天然ゴムRSS#3
・BR:ブタジエンゴム、Nipol BR1220(重量平均分子量:46万、日本ゼオン社製)
・カーボンブラック ISAF:商品名、ショウブラックN220、キャボットジャパン社製
・カーボンブラック HAF:商品名、ショウブラックN330、キャボットジャパン社製。当該カーボンブラックはカーボンブラック1に該当する。
・カーボンブラック FEF:商品名、ダイアブラックE、三菱化学社製
・カーボンブラック GPF:商品名、ダイアブラックG、三菱化学社製。当該カーボンブラックはカーボンブラック2に該当する。
・カーボンブラック SRF:商品名、旭#50、旭カーボン社製
・硫黄:油処理硫黄、細井化学工業社製
・加硫促進剤:N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(ノクセラーNS、大内新興化学工業社製)
【0047】
第1表に示す結果から明らかなように、カーボンブラックの合計量が過剰である比較例1は、tanδ(20℃)が高く、破断伸びが小さかった。
カーボンブラック2とは異なるジブチルフタレート吸油量のカーボンブラックを含有する比較例2は、破断伸びが小さかった。
カーボンブラック1より窒素吸着比表面積が大きいカーボンブラックを含有する比較例3は、tanδ(20℃)が高かった。
カーボンブラック1より窒素吸着比表面積が小さいカーボンブラックを含有する比較例4は、耐屈曲疲労性試験中に試験片が切れてしまい、耐屈曲疲労性が劣った。
カーボンブラック2を含有しない比較例5は、硬さ、引裂き強さが低かった。
カーボンブラック1を含有しない比較例6は、引裂き強さが低く、耐屈曲疲労性が劣った。
カーボンブラック2よりジブチルフタレート吸油量が大きいカーボンブラックを含有する比較例7は、硬さが低く、tanδ(20℃)が高かった。
ブタジエンゴムの配合量が多い比較例8は、破断特性が劣った。
【0048】
これらに対して、実施例1〜6は、優れた省電力性を維持しつつ(つまりエネルギーロスが低い)、ゴム物性(破断特性、硬さ、引裂き強さ。)、耐屈曲疲労性に優れた。
実施例3は、引裂き強さがより高く、tanδ(20℃)がより低かった。
【符号の説明】
【0049】
1:コンベヤベルト
2:上面カバーゴム層
3:補強層
4:下面カバーゴム層
5:運搬物搬送面
11、16:外層
12、15:内層
図1