【実施例】
【0022】
次に、参考例、実施例及び試験例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。
元素分析は、PerkinElmer 2400Zにて測定した。
粉末X線は、Rigaku RINT2200Ultimalllにて測定した。
示差熱分析/熱質量測定(TG/DTA)は、Rigaku Thermo plus EvoTG8120にて測定した。
赤外線吸収スペクトルは、IRAffinity−1(島津製作所)にて測定した。
単結晶X線構造解析は、R−AXIS RAPID II (Rigaku)にて測定した。
旋光度は、RUDOLPH RESERCH ANALYTICAL (Systems Engineering)にて測定した。
以下の参考例および実施例において、高速液体クロマトグラフィーマススペクトル(LCMS)は以下の条件により測定した。
測定機械:Agilent社 Agilent2900及びAgilent6150
カラム:Waters社 Acquity CSH C18 1.7μm 2.1x50mm
溶媒:A液;0.1%ギ酸含有水、B液;0.1%ギ酸含有アセトニトリル
グラジエント:0分(A液/B液=80/20)、1.2〜1.4分(A液/B液=1/99)
流速:0.8mL/min、検出法:UV 254nm
イオン化法:エレクトロンスプレー法(ESI:Electron Spray Ionization)
参考例及び実施例中、室温とは25℃付近を示す。
【0023】
参考例1 エチル 3−[5−メチル−2−(2H−1,2,3−トリアゾール−2−イル)ベンゾイル]−1,3−オキサジナン−2−カルボキシラート (化合物(B))の製造
【0024】
【化2】
【0025】
窒素気流下、グリオキシル酸エチルを47%含有したトルエン溶液(320.69g)に、クロロホルム(1290mL)を加え、攪拌した。この混合物に、モレキュラーシーブ4A(シグマアルドリッチ社製、289g)を加えた後、10℃まで冷却した。この冷却した混合物に、16℃以下に保ちながら3−アミノ−1−プロパノール(110.89g)とクロロホルム(160mL)の混合液を20分かけて滴下した。この混合物を25℃まで昇温し23時間攪拌した。この混合物を、珪藻土を用いてろ過した後、珪藻土をクロロホルム(160mL)で洗浄した。得られたろ液を−7℃まで冷却した。このアミン溶液を次の反応に供した。
窒素気流下、5−メチル−2−(2H−1,2,3−トリアゾール−2−イル)安息香酸(345.00g)にクロロホルム(6210mL)を注ぎ入れ、24℃付近で攪拌した。この混合物に、同温度を保ちながらオキサリルクロリド(258.61g)とクロロホルム(173mL)の混合液を滴下し、14時間攪拌した。この混合物を0℃まで冷却し、トリエチルアミン(429.80g)とクロロホルム(700mL)の混合液を0℃以下に保ちながら滴下した。この混合物に、7℃以下を保ちながら上記アミン溶液を滴下した後、5℃まで昇温し30分攪拌した。この混合物に21℃以下を保ちながら水(1750mL)を加えた。有機層と水層を分離し、有機層に水(1750mL)を加えた。分離した有機層にNH型シリカゲル(富士シリシア化学社製、690g)を加えて攪拌した。この懸濁液を珪藻土を用いてろ過した後、クロロホルム(700mL)で珪藻土上のシリカゲルを洗浄した。珪藻土上のシリカゲルを別容器に移し、そこにクロロホルム(1400mL)を入れて攪拌した。この懸濁液を珪藻土でろ過し、クロロホルム(400mL)で珪藻土上のシリカゲルを洗浄した。得られたろ液を混合し、減圧濃縮した。得られた残渣(626.9g)にエタノール(900mL)を加え、24℃付近で攪拌することで結晶化させた後、5℃まで冷却した。結晶をろ取した後、冷却したエタノール(200mL)で洗浄した。窒素気流下25℃付近で吸引乾燥した。得られた固体を50℃で減圧下乾燥し、無色固体の化合物(B)(471.86g)を得た。
MS (ESI pos.) m/z : 345 [M+H]+
【0026】
参考例2 [2−(ヒドロキシメチル)−1,3−オキサジナン−3−イル][5−メチル−2−(2H−1,2,3−トリアゾール−2−イル)フェニル]メタノン (化合物(C))の製造
【0027】
【化3】
【0028】
窒素気流下、化合物(B)(445.00g)に0.01M NaOHのメタノール溶液(1600mL)を加え、20℃付近で攪拌した。この混合物に、27℃以下を保ちながら、NaBH
4(97.8g)を0.01M NaOH メタノール溶液(1000mL)に溶かした混合溶液を滴下した。この混合物を25℃付近で20時間攪拌した後、20℃付近において、塩化アンモニウム(133.5g)を加え、さらにNa
2SO
4の10水和物(80.2g)を加えた。この混合物をろ過し、酢酸エチル(400mL)で洗い流した。ろ液に水(200mL)を加え、減圧濃縮した。残渣に水(300mL)、クロロホルム(1100mL)を加え攪拌した。析出した固体をろ別し、得られたろ液を分液し、有機層と水層に分離した。得られた水層にクロロホルム(300mL)を加え同様に分液操作した。得られた有機層を混合し、Na
2SO
4(100g)を用いて乾燥した後、乾燥剤をろ別し減圧濃縮した。残渣にシリカゲル(関東化学社製 シリカゲル60 N(球状、中性) 63−210μm、450g)を加え、減圧濃縮した。得られた残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(Biotage社製SNAPCartridge KP−Silを使用し、ヘキサン/酢酸エチル/アセトン=50:50:0→0:100:0→0:0:100溶液にて溶出)で精製し、得られた溶出液を減圧濃縮した。残渣にアセトン(200mL)を加えた後、減圧濃縮し、無色非晶質として化合物(C)(449g)を得た。
MS (ESI pos.) m/z : 303 [M+H]+
【0029】
参考例3 (−)−[2−(ヒドロキシメチル)−1,3−オキサジナン−3−イル][5−メチル−2−(2H−1,2,3−トリアゾール−2−イル)フェニル]メタノン (化合物((−)−D))の製造
【0030】
【化4】
【0031】
窒素気流下、化合物(C)(200.50g)、酢酸ビニルモノマー(1604mL)、メチルt―ブチルエーテル(6416mL)の混合物に、ブタ膵臓由来リパーゼ(商品名 Lipase from porcine pancreas Type II、SIGMA社製、401.00g)を加えて25℃付近で21時間撹拌した。不溶物はKCフロック(日本製紙ケミカル社製、100g)を使用してろ別し、酢酸エチル(2005mL)で洗い流した後、ろ液を減圧濃縮した。残渣にシリカゲル(関東化学社製 シリカゲル60 N(球状、中性) 63−210μm、300g)を加え、減圧濃縮した。得られた残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(Grace社Reveleris Silica Flash Cartridgeを使用し、ヘキサン/酢酸エチル/アセトン=50:50:0→0:100:0→0:0:100溶液にて溶出)で精製した。先に溶出した溶液を減圧濃縮し、褐色固体として酢酸{3−[5−メチル−2−(2H−1,2,3−トリアゾール−2−イル)ベンゾイル]−1,3−オキサジナン−2−イル}メチル(132.96g)を得た。後に溶出した溶液を減圧濃縮し、残渣にアセトンを加え減圧濃縮することにより、化合物((−)−D)とアセトン混合物である褐色油状物質(161.69g)を得た。この褐色油状物質には、
1H NMRの解析結果から、化合物((−)−D)(96.83g、>99.5%ee)であった。
MS (ESI pos.) m/z : 303 [M+H]+
[α]
D20 = −40.60 (c = 1.01, CHCl
3)
【0032】
参考例4 (−)−[2−(クロロメチル)−1,3−オキサジナン−3−イル][5−メチル−2−(2H−1,2,3−トリアゾール−2−イル)フェニル]メタノン (化合物((−)−E))の製造
【0033】
【化5】
【0034】
窒素気流下、化合物((−)−D)(200.00g)にクロロホルム(1800mL)を加え、攪拌しながら3℃まで冷却した。この混合物に、同温度でトリエチルアミン(100.55g)とクロロホルム(100mL)の混合液を加えた。この混合物に、19℃以下を保ちながら、メシルクロリド(91.63g)とクロロホルム(100mL)の混合液を滴下した。反応混合物を23℃まで昇温し、5時間攪拌した。この混合物に水(1L)を加え、有機層と水層を分離した。水層をクロロホルム(500mL)で抽出した後、合わせた有機層をNa
2SO
4(200g)にて乾燥した。乾燥剤をろ別した後、乾燥剤をクロロホルム(500mL)で洗浄した。得られた溶液を減圧濃縮し、残渣にジイソプロピルエーテル(IPE、500mL)及び酢酸エチル(50mL)を加え12時間攪拌した。析出した固体をろ取し、IPE(400mL)で洗浄した。得られた固体を40℃で減圧下乾燥し、無色固体として化合物((−)−E)(193g)を得た。
MS (ESI pos.) m/z : 321 [M+H]+
[α]
D20 = −41.36 (c = 1.00, CHCl
3)
【0035】
参考例5 (−)−(2−{[3−(5−フルオロピリジン−2−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]メチル}−1,3−オキサジナン−3−イル)[5−メチル−2−(2H−1,2,3−トリアゾール−2−イル)フェニル]メタノン (化合物(A))の製造
【0036】
【化6】
【0037】
窒素気流下、t−BuONa(80.45g)にDMSO(730mL)を加え、28℃で攪拌した。この混合物に、別途調製した5−フルオロ−2−(1H−ピラゾール−3−イル)ピリジン(124.58g)のDMSO(730mL)溶液を滴下した後、82℃まで加熱させ1時間攪拌した。この混合物に、別途調製した化合物((−)−E)(244.00g)のDMSO(980mL)溶液を滴下した後、30分間攪拌した。この時、溶液の温度は87℃まで上昇した。反応混合物を35℃まで冷却し、酢酸エチル(4880mL)を加えた。反応混合物に水(2440mL)を加え、有機層と水層を分離した。水層を酢酸エチル(2400mL)で抽出し、合わせた有機層に水(3600mL)を加えた。有機層と水層を分離した後、有機層を15% NaCl水溶液(3600mL)で洗浄した後、有機層を減圧濃縮した。残渣にエタノール(2000mL)を加え、1℃まで冷却しながら攪拌した。析出した固体をろ取した後、冷却したエタノール(480mL)で洗浄した。得られた固体を窒素気流下、25℃付近で吸引乾燥した。その後40℃で減圧乾燥することにより、無色固体として化合物(A)(183.14g)を得た。本発明の化合物(A)の絶対立体配置は、化合物(A)の1塩酸塩の単結晶X線構造解析により(S)体であることを決定した。
MS (ESI pos.) m/z : 448 [M+H]+
【0038】
実施例1 (−)−(2−{[3−(5−フルオロピリジン−2−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]メチル}−1,3−オキサジナン−3−イル)[5−メチル−2−(2H−1,2,3−トリアゾール−2−イル)フェニル]メタノン(化合物(A))の無水物の製造
参考例5の方法で得られた化合物(A)(389.00g)にエタノール(7500mL)を加え、60℃まで加熱しながら1時間攪拌し、固体を溶解した。この溶液を攪拌しながら3時間かけて2℃まで冷却した。析出した固体をろ取した後、冷却したエタノール(790mL)で洗浄した。得られた結晶を窒素気流下、25℃付近で吸引乾燥した。その後40℃で20時間、減圧乾燥することで、化合物(A)の無水物の結晶(356.46g)を得た。
MS (ESI pos.) m/z : 448 [M+H]+
[α]
D20 = −32.34 (c = 1.00, CHCl
3)
【0039】
実施例2 (−)−(2−{[3−(5−フルオロピリジン−2−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]メチル}−1,3−オキサジナン−3−イル)[5−メチル−2−(2H−1,2,3−トリアゾール−2−イル)フェニル]メタノン(化合物(A))の水和物の製造
実施例1の方法で得られた化合物(A)(250g)をエタノール(5L)に加え、61℃まで加熱攪拌しながら溶解させた後、熱時ろ過した。得られたろ液を、20〜30℃に保った水(15L)に攪拌しながら滴下した後、5℃まで冷した。析出した固体をろ取し、得られた結晶を25℃付近で吸引乾燥した。その後40℃で5時間、減圧乾燥することで、無色結晶(235.47g)を得た。この結晶の粉末X線を測定したところ、化合物(A)の水和物の結晶であった。
【0040】
実施例3 (−)−(2−{[3−(5−フルオロピリジン−2−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]メチル}−1,3−オキサジナン−3−イル)[5−メチル−2−(2H−1,2,3−トリアゾール−2−イル)フェニル]メタノン(化合物(A))の水和物の製造
化合物(A)の無水物(10.01g)にメタノール(60.0g)を加え、65℃まで加熱しながら1時間攪拌し、固体を溶解した。この溶液にメタノール(10.0g)、水(9.0g)を加えたのち、実施例2の方法で得られた化合物(A)の水和物の種晶を加え、9時間かけて0℃まで冷却した。析出した固体をろ取した後、水(57.7g)で洗浄した。得られた結晶を50℃で4時間、減圧乾燥することで、化合物(A)の水和物の結晶(9.05g)を得た。化合物(A)の水和物の結晶は、単結晶X線構造解析により、1/4水和物であることを決定した。
MS (ESI pos.) m/z : 448 [M+H]+
[α]
D20 = −32.21 (c = 1.01, CHCl
3)
【0041】
実施例4
実施例1の方法で得られた化合物(A)の無水物の結晶の粉末X線回折パターンをリガク製の粉末X線回折装置(Ultima III)を用い、Cu―Kα線をX線源として測定した。2θ=8.1度、13.4度,15.6度及び21.6度付近にピークが認められた。
融点をリガク製の示差熱天秤(Thermo plus EVO TG8120)及び同等の装置を用い、大気下にて、室温から約250℃まで10℃/分の昇温速度で測定した。その結果、129〜134℃に融解に由来する吸熱ピークが認められた。
赤外スペクトルを島津製作所製のフーリエ変換赤外分光光度計(IRAffinity−1)を用い、全反射法(ATR法)にて積算回数20回、分解能:4cm
−1の条件で測定した。1626cm
−1、1497cm
−1、1227cm
−1、1080cm
−1、818cm
−1及び785cm
−1付近にピークが認められた。
【0042】
実施例5
実施例3の方法で得られた化合物(A)の水和物の結晶の粉末X線回折パターンをリガク製の粉末X線回折装置(Ultima III)を用い、Cu―Kα線をX線源として測定した。2θ=11.1度、12.5度,20.3度及び24.2度付近にピークが認められた。
融点をリガク製の示差熱天秤(Thermo plus EVO TG8120)及び同等の装置を用い、大気下にて、室温から約250℃まで10℃/分の昇温速度で測定した。その結果、124〜129℃に融解に由来する吸熱ピークがあること、熱質量測定にて124〜129℃で0.5〜1.5%の重量減少があることが認められた。
赤外スペクトルを島津製作所製のフーリエ変換赤外分光光度計(IRAffinity−1)を用い、全反射法(ATR法)にて積算回数20回、分解能:4cm
−1の条件で測定した。1627cm
−1、1504cm
−1、1226cm
−1、1076cm
−1、822cm
−1及び783cm
−1付近にピークが認められた。
【0043】
試験例 (オレキシン拮抗活性の測定)
試験化合物のヒトオレキシン1型受容体(hOX1R)、オレキシン2型受容体(hOX2R)に対する拮抗活性は文献(Toshikatsu Okumura et al.,Biochemical and Biophysical Research Communications 280,976−981,2001)に記載された方法を改変して行った。hOX1R、hOX2Rを強制発現させたChinese hamster ovary(CHO)細胞を96wellのBlack clear bottomプレート(Nunc)の各ウェルに24,000個となるように播種し、0.1mM MEM非必須アミノ酸、0.5mg/ml G418、10% 牛胎児血清を含むHam’s F−12培地(以上インビトロジェン)で、37℃、5% CO
2の条件下で16時間培養した。培地を除去後、0.5μM Fluo−3AM エステル(同仁)を含むアッセイ用緩衝液(25mM HEPES(同仁)、Hanks’ balanced salt solution(インビトロジェン)、0.1% 牛血清アルブミン、2.5mM プロベネシド、200μg/ml Amaranth(以上Sigma−Aldrich)、pH7.4)を100μL添加し60分間、37℃、5% CO
2にインキュベートした。Fluo−3AM エステルを含むアッセイ用緩衝液を除去したのち、試験化合物は10mMとなるようにジメチルスルホキシドで溶解してアッセイ用緩衝液で希釈後、150μLを添加し、30分間インキュベートした。
リガンドであるヒトオレキシン−Aの2アミノ酸を置換したペプチド(Pyr−Pro−Leu−Pro−Asp−Ala−Cys−Arg−Gln−Lys−Thr−Ala−Ser−Cys−Arg−Leu−Tyr−Glu−Leu−Leu−His−Gly−Ala−Gly−Asn−His−Ala−Ala−Gly−Ile−Leu−Thr−Leu−NH2;ペプチド研究所)はhOX1Rに対しては終濃度500pM、hOX2Rに対しては1nMとなるようにアッセイ用緩衝液で希釈し、このリガンド溶液50μLを添加して反応を開始した。反応はFunctional Drug Screening System(FDSS;浜松ホトニクス社製)を用いて各wellの蛍光値を1秒毎に3分間測定し、最大蛍光値を細胞内Ca
2+濃度の指標として拮抗活性を求めた。試験化合物の拮抗活性は希釈緩衝液のみを添加したウェルの蛍光値を100%、リガンドおよび化合物を含まない緩衝液を添加したウェルの蛍光値を0%として算出し、種々の濃度の試験化合物を添加した際の蛍光値から、50%阻害濃度(IC
50値)を求めた。
本発明の化合物(A)の、ヒトオレキシン1型受容体に対する拮抗活性はIC
50=0.7nM、オレキシン2型受容体に対する拮抗活性はIC
50=1.2nMであった。