特許第5907316号(P5907316)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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5907316永久膜用感光性組成物、レジスト材料、塗膜、及び永久膜用感光性組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5907316
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】永久膜用感光性組成物、レジスト材料、塗膜、及び永久膜用感光性組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/023 20060101AFI20160412BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20160412BHJP
【FI】
   G03F7/023 511
   G03F7/004 501
【請求項の数】8
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2015-543618(P2015-543618)
(86)(22)【出願日】2015年5月19日
(86)【国際出願番号】JP2015064265
【審査請求日】2015年9月2日
(31)【優先権主張番号】特願2014-121532(P2014-121532)
(32)【優先日】2014年6月12日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(72)【発明者】
【氏名】今田 知之
(72)【発明者】
【氏名】木本 誠二
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 勇介
【審査官】 倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−130947(JP,A)
【文献】 特開2003−201324(JP,A)
【文献】 特開2010−248435(JP,A)
【文献】 特開2007−031527(JP,A)
【文献】 特開2006−154403(JP,A)
【文献】 特許第5613851(JP,B2)
【文献】 特開2015−052770(JP,A)
【文献】 特開2009−227926(JP,A)
【文献】 特開2005−023210(JP,A)
【文献】 特開2000−292919(JP,A)
【文献】 特開2008−050513(JP,A)
【文献】 米国特許第05939511(US,A)
【文献】 米国特許第04551409(US,A)
【文献】 特開2008−274250(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004−7/18,
C08G 8/04−8/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】
[式(1)中、Rは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、又はハロゲン原子を表し、複数存在するRは、互いに同一でもよく異なっていてもよく、Rは水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表し、pは1又は2を表し、qは4又は5を表す。但し、pとqの和は6である。]
で表される構造部位(I)を繰り返し単位として有しており、下記一般式(2)
【化2】
[式(2)中、R、p、及びqは、前記式(1)と同じである。]
で表されるヒドロキシナフタレン類(A)の含有量が樹脂固形分換算で2質量%以下であるヒドロキシナフタレンノボラック樹脂を80質量%以上含有する樹脂成分と、前記ヒドロキシナフタレンノボラック樹脂100質量部に対して0.1〜50質量部の硬化剤とを含有することを特徴とする、永久膜用感光性組成物。
【請求項2】
前記ヒドロキシナフタレンノボラック樹脂100質量部に対して、0.1〜30質量部の前記硬化剤を含有する、請求項1に記載の永久膜用感光性組成物。
【請求項3】
前記Rが水素原子である、請求項1又は2に記載の永久膜用感光性組成物。
【請求項4】
さらに、感光剤を含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の永久膜用感光性組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の感光性組成物からなるレジスト材料。
【請求項6】
請求項4に記載の感光性組成物からなる塗膜。
【請求項7】
永久膜である、請求項6に記載の塗膜。
【請求項8】
下記一般式(2)で表されるヒドロキシナフタレン類(A)と下記一般式(3)で表されるアルデヒド類(B)とを必須とする反応原料を、水と有機溶剤との混合溶剤中、酸触媒条件下で反応させて得られ、下記一般式(2)で表されるヒドロキシナフタレン類(A)の含有量が樹脂固形分換算で2質量%以下であるヒドロキシナフタレンノボラック樹脂を80質量%以上含有する樹脂成分と、前記ヒドロキシナフタレンノボラック樹脂100質量部に対して0.1〜50質量部の硬化剤とを配合させる永久膜用感光性組成物の製造方法であって、前記ヒドロキシナフタレン類(A)とアルデヒド類(B)とのモル比[(A)/(B)]が0.5〜1.5の範囲であり、混合溶媒における水の使用割合が前記ヒドロキシナフタレン類(A)100質量部に対し30〜300質量部の範囲であり、前記有機溶剤がプロパノール、ブタノール、オクタノール、エチレングリコール、グリセリン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートからなる群から選ばれる1種類以上の有機溶剤である、永久膜用感光性組成物の製造方法。
【化4】
[式(2)中、Rは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、又はハロゲン原子を表し、複数存在するRは、互いに同一でもよく異なっていてもよく、pは1又は2を表し、qは4又は5を表す。但し、pとqの和は6である。式(3)中、Rは水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光感度及び解像度が高く、耐熱性及び耐吸湿性にも優れ、高温環境下においても汚染が生じ難い永久膜の形成材料とし用いられる感光性組成物、レジスト材料、その塗膜に関する。
【背景技術】
【0002】
フェノール性水酸基含有化合物は、接着剤、成形材料、塗料、フォトレジスト材料、エポキシ樹脂原料、エポキシ樹脂用硬化剤等に用いられている他、硬化物における耐熱性や耐湿性などに優れることから、フェノール性水酸基含有化合物自体を主剤とする硬化性樹脂組成物として、或いは、エポキシ樹脂等の硬化剤として、半導体封止材やプリント配線板用絶縁材料等の電気・電子分野で幅広く用いられている。
【0003】
また、フォトレジスト材料等の感光性組成物からなる塗膜は、概念的に永久膜と総称される部材としても用いられる。永久膜は、主にIC、LSI等の半導体デバイスや薄型ディスプレイ等の表示装置において、製品を構成する部品上や部品間に形成された感光性組成物からなる塗膜であり、製品完成後にも残存しているものである。
【0004】
永久膜に用いられるレジスト材料として、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーを使用したネガ型レジスト材料が広く用いられており、硬度や耐熱性を改善するため、光硬化型ポリマー溶液中にシリカや顔料等を分散させる方法が一般的である。しかし、近年の表示素子の微細化と薄型化による表示部と光源の接近により、従来の(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーからなるネガ型レジスト材料では、細線化と耐熱性を両立するのが困難になっている。この問題の解決を図るために、例えば特許文献1には、永久膜の材料として、アルカリ可溶性樹脂と架橋性ポリビニルエーテル化合物との反応生成物、光酸発生剤、及びエポキシ樹脂を含む化学増幅型ポジ型感光性熱硬化性樹脂組成物が提案されている。また、特許文献2には、フェノール性水酸基又はカルボキシル基を有するアルカリ可溶性樹脂と、キノンジアジド基を有する化合物と、架橋剤とを含有するポジ型感光性接着剤組成物を永久膜の材料とすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−181976号公報
【特許文献2】特開2009−244663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1や2に記載の感光性組成物からなる永久膜では、部材の間に空隙がある製品では、空気中に存在する水分による吸湿や、空隙が存在することによる部材側と空隙側の熱時膨張差により、ひずみが生じる場合がある。
また、これらの感光性組成物に含有される樹脂成分は、未反応のモノマー成分の混入量が多い。このため、高温環境下では、永久膜及びその周辺の部材に、永久膜から昇華したモノマー成分が付着して汚染されてしまうという問題がある。
【0007】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、光感度、解像度、耐熱性、及び耐吸湿性に優れており、かつ高温環境下において汚染が生じ難く、永久膜の材料として好適な感光性組成物、レジスト材料、及びその塗膜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ヒドロキシナフタレン類をアルデヒド類に対してモル比で0.5〜1.5の範囲となるように、特定の有機溶媒と特定量の水とを含有する系内で、酸触媒下に反応させることにより得られたヒドロキシナフタレンノボラック樹脂は、光感度、解像度、耐熱性、及び耐吸湿性に優れており、かつ、未反応のヒドロキシナフタレン類の残留量が極めて少ないため、高温環境下において汚染が生じ難く、永久膜材料として好適であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)
【0010】
【化1】
【0011】
[式(1)中、Rは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、又はハロゲン原子を表し、複数存在するRは、互いに同一でもよく異なっていてもよく、
は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表し、
pは1又は2を表し、qは4又は5を表す。但し、pとqの和は6である。]
で表される構造部位(I)を繰り返し単位として有しており、下記一般式(2)
【0012】
【化2】
【0013】
[式(2)中、R、p、及びqは、前記式(1)と同じである。]
で表されるヒドロキシナフタレン類(A)の含有量が樹脂固形分換算で2質量%以下であるヒドロキシナフタレンノボラック樹脂を含有し、硬化剤を含有していない、又は前記ヒドロキシナフタレンノボラック樹脂100質量部に対して、50質量部以下の硬化剤を含有することを特徴とする、永久膜用感光性組成物に関する。
【0014】
本発明は更に、前記永久膜用感光性組成物からなるレジスト材料、及び前記永久膜用感光性組成物からなる塗膜に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る永久膜用感光性組成物は、ヒドロキシナフタレン類とアルデヒド類から得られたヒドロキシナフタレンノボラック樹脂を含有するため、光感度、解像度、耐熱性、及び耐吸湿性に優れている。加えて、ヒドロキシナフタレン類の混入量が非常に少ないため、高温環境下であっても、塗膜からヒドロキシナフタレン類が昇華するおそれが小さく、周辺領域の汚染が生じ難い。このため、本発明に係る永久膜用感光性組成物により、耐熱性、耐吸湿性、及び耐汚染性に優れた永久膜を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】合成例1で得られたノボラック樹脂(1)のGPCチャートである。
図2】合成例2で得られたノボラック樹脂(2)のGPCチャートである。
図3】合成例3で得られたノボラック樹脂(3)のGPCチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る永久膜用感光性組成物は、下記一般式(1)で表される構造部位(I)を繰り返し単位として有するヒドロキシナフタレンノボラック樹脂(「本発明に係るヒドロキシナフタレンノボラック樹脂」ということがある。)を含有している。ヒドロキシナフタレンノボラック樹脂構造を主骨格とすることにより、従来困難であった光感度、解像度及びアルカリ現像性と、耐熱性及び耐吸湿性とを兼備するレジスト塗膜を形成することが可能な感光性組成物が得られる。
【0018】
【化3】
【0019】
一般式(1)中、pは1又は2を表し、qは4又は5を表す。但し、pとqの和は6である。すなわち、pが1の場合にはqは5であり、pが2の場合にはqは4である。
【0020】
一般式(1)で表される構造部位(I)中、ナフチレン骨格上のフェノール性水酸基の置換位置は任意である。中でも、解像度と耐熱性とに優れる樹脂となることから、pが1の場合にはフェノール性水酸基の置換位置が1位であることが好ましく、pが2の場合にはフェノール性水酸基の置換位置が2,7位であることが好ましい。
【0021】
一般式(1)中、Rは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、又はハロゲン原子を表す。また、一般式(1)にRは4又は5個存在するが、これらの複数のRは、互いに同一でもよく、異なっていてもよい。
【0022】
一般式(1)中のRがアルキル基の場合、当該アルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよく、環状構造を有する基であってもよいが、直鎖状の基であることが好ましい。本発明においては、Rがアルキル基の場合、Rは、炭素原子数1〜12のアルキル基が好ましく、炭素原子数1〜8のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1〜6のアルキル基がさらに好ましい。具体的には、当該アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソアミル基、ヘキシル基、シクロへキシル基、ヘプチル基、シクロへキシルメチル基、オクチル基、シクロへキシルエチル基、ノニル基、デシル基、アダマンチル基、ウンデシル基、アダマンチルメチル基、ドデシル基、アダマンチルエチル基等が挙げられ、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソアミル基、ヘキシル基、シクロへキシル基が好ましい。
【0023】
一般式(1)中のRがアルコキシ基の場合、当該アルコキシ基中のアルキル基部分は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよく、環状構造を有する基であってもよいが、直鎖状の基であることが好ましい。本発明においては、Rがアルコキシ基の場合、Rは、炭素原子数1〜12のアルコキシ基が好ましく、炭素原子数1〜8のアルコキシ基がより好ましく、炭素原子数1〜6のアルコキシ基がさらに好ましい。具体的には、当該アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、イソアミルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロへキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基等が挙げられ、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、へキシルオキシ基、シクロへキシルオキシ基が好ましい。
【0024】
一般式(1)中のRが置換基を有していてもよいアリール基の場合、当該アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、インデニル基、ビフェニル基等が挙げられる。また、当該アリール基中の水素原子は、置換基により置換されていてもよく、当該置換基としては、水酸基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基等が挙げられる。当該アリール基が有する置換基の数は、特に制限されないが、好ましくは1〜3個であり、より好ましくは1又は2個である。また、1のアリール基が複数の置換基を有する場合、それぞれの置換基は、互いに同一でもよく、異なっていてもよい。具体的には、置換基を有していてもよいアリール基としては、例えば、フェニル基、ヒドロキシフェニル基、ジヒドロキシフェニル基、ヒドロキシアルコキシフェニル基、アルコキシフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ヒドロキシナフチル基、ジヒドロキシナフチル基等が挙げられ、フェニル基が好ましい。
【0025】
一般式(1)中のRが置換基を有していてもよいアラルキル基の場合、当該アラルキル基中のアリール基部分としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、インデニル基、ビフェニル基等が挙げられ、フェニル基が好ましい。また、当該アラルキル基中のアルキル基部分は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよく、環状構造を有する基であってもよいが、直鎖状の基であることが好ましく、炭素原子数1〜6のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基がさらに好ましい。当該アラルキル基中のアリール基中の水素原子は、置換基により置換されていてもよく、当該置換基の種類や数としては、前記アリール基が有していてもよい置換基として挙げられたものと同様のものが挙げられる。具体的には、置換基を有していてもよいアラルキル基としては、フェニルメチル基、ヒドロキシフェニルメチル基、ジヒドロキシフェニルメチル基、トリルメチル基、キシリルメチル基、ナフチルメチル基、ヒドロキシナフチルメチル基、ジヒドロキシナフチルメチル基、フェニルエチル基、ヒドロキシフェニルエチル基、ジヒドロキシフェニルエチル基、トリルエチル基、キシリルエチル基、ナフチルエチル基、ヒドロキシナフチルエチル基、ジヒドロキシナフチルエチル基等が挙げられ、フェニルメチル基、ヒドロキシフェニルメチル基、ジヒドロキシフェニルメチル基が好ましい。
【0026】
一般式(1)中のRがハロゲン原子の場合、当該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が挙げられる。
【0027】
一般式(1)で表される構造部位(I)としては、Rが水素原子、アルキル基、又はアルコキシ基であることが好ましく、耐熱性と耐吸水性とに優れる樹脂となることから全てのRが水素原子又はアルキル基であることがより好ましく、全てのRが水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソアミル基、ヘキシル基、又はシクロへキシル基であることがさらに好ましく、全てのRが水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、又はt−ブチル基であることがよりさらに好ましく、全てのRが水素原子であることが特に好ましい。
【0028】
一般式(1)中、Rは水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。
【0029】
一般式(1)中のRが置換基を有していてもよいアルキル基の場合、当該アルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよく、環状構造を有する基であってもよいが、直鎖状の基であることが好ましい。本発明においては、Rがアルキル基の場合、Rは、炭素原子数1〜12のアルキル基が好ましく、炭素原子数1〜8のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1〜6のアルキル基がさらに好ましい。
【0030】
一般式(1)中のRがアルキル基の場合、当該アルキル基中の水素原子は、置換基によって置換されていてもよい。当該置換基としては、水酸基、炭素数1〜6のアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリール基、ハロゲン原子等が挙げられる。炭素数1〜6のアルコキシ基及びアリール基としては、それぞれ、Rが取り得るアルコキシ基及びアリール基と同様のものが挙げられる。置換され得る水素原子の数は、特に制限されるものではないが、好ましくは1〜3個であり、より好ましくは1又は2個である。また、1のアルキル基が複数の置換基を有する場合、それぞれの置換基は、互いに同一でもよく、異なっていてもよい。Rのアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソアミル基、ヘキシル基、シクロへキシル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、フルオロメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、メトキシプロピル基、フェニルメチル基、ヒドロキシフェニルメチル基、ジヒドロキシフェニルメチル基、トリルメチル基、キシリルメチル基、ナフチルメチル基、ヒドロキシナフチルメチル基、ジヒドロキシナフチルメチル基、フェニルエチル基、ヒドロキシフェニルエチル基、ジヒドロキシフェニルエチル基、トリルエチル基、キシリルエチル基、ナフチルエチル基、ヒドロキシナフチルエチル基、ジヒドロキシナフチルエチル基が挙げられ、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソアミル基、ヘキシル基、シクロへキシル基が好ましい。
【0031】
一般式(1)中のRが置換基を有していてもよいアリール基の場合、当該アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、インデニル基、ビフェニル基等が挙げられる。また、当該アリール基中の水素原子は、置換基によって置換されていてもよい。当該置換基としては、水酸基、炭素数1〜6のアルコキシ基、アリール基、ハロゲン原子等が挙げられる。炭素数1〜6のアルコキシ基及びアリール基としては、それぞれ、Rが取り得るアルコキシ基及びアリール基と同様のものが挙げられる。置換され得る水素原子の数は、特に制限されるものではないが、好ましくは1〜3個であり、より好ましくは1又は2個である。また、1のアリール基が複数の置換基を有する場合、それぞれの置換基は、互いに同一でもよく、異なっていてもよい。Rの置換基を有していてもよいアリール基としては、具体的には、フェニル基、ヒドロキシフェニル基、ジヒドロキシフェニル基、ヒドロキシアルコキシフェニル基、アルコキシフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ヒドロキシナフチル基、ジヒドロキシナフチル基、ブロムフェニル基等が挙げられる。
【0032】
一般式(1)で表される構造部位(I)としては、ドライエッチング耐性及び耐熱分解性の高いヒドロキシナフタレンノボラック樹脂が得られること、及び感度と解像度の高い感光性組成物となることから、Rは置換基を有していてもよいアリール基であることが好ましく、ヒドロキシフェニル基、ジヒドロキシフェニル基、ヒドロキシアルコキシフェニル基、ヒドロキシナフチル基、ジヒドロキシナフチル基等の水酸基含有アリール基であることがより好ましい。
【0033】
一般式(1)で表される構造部位(I)としては、全てのRが水素原子、アルキル基、又はアルコキシ基であり、Rが水素原子又は置換基を有していてもよいアリール基であるものが好ましく、全てのRが水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソアミル基、ヘキシル基、又はシクロへキシル基であり、Rが水素原子、又は水酸基含有アリール基であるものがより好ましく、全てのRが水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、又はt−ブチル基であり、Rが水素原子、ヒドロキシフェニル基、ジヒドロキシフェニル基、ヒドロキシアルコキシフェニル基、ヒドロキシナフチル基、又はジヒドロキシナフチル基であるものがさらに好ましい。
【0034】
本発明に係るヒドロキシナフタレンノボラック樹脂は、下記一般式(2)で表されるヒドロキシナフタレン類(A)と下記一般式(3)で表されるアルデヒド類(B)とを反応させて得られる。一般式(2)中、R、p、及びqは、前記一般式(1)と同じであり、一般式(3)中、Rは、前記式(1)と同じである。
【0035】
【化4】
【0036】
本発明に係るヒドロキシナフタレンノボラック樹脂は、ヒドロキシナフタレン類(A)の含有量が樹脂固形分換算で2質量%以下である。未反応のヒドロキシナフタレン類(A)は、樹脂成分よりも昇華しやすく、このため、ヒドロキシナフタレン類(A)の混入量が多い樹脂から形成された塗膜等の薄膜では、高温環境下では、塗膜から昇華したヒドロキシナフタレン類(A)が塗膜表面やその周辺の部材表面で凝固し、汚染されてしまう。これに対して、本発明に係るヒドロキシナフタレンノボラック樹脂を主成分とする感光性組成物の塗膜は、未反応のヒドロキシナフタレン類(A)の混入量が少ないため、高温環境下においても昇華するヒドロキシナフタレン類(A)がほとんどなく、塗膜表面やその周囲の汚染が生じ難い。本発明に係るヒドロキシナフタレンノボラック樹脂のヒドロキシナフタレン類(A)の含有量は、樹脂固形分換算で1.5質量%以下が好ましく、1.2質量%以下がより好ましい。
【0037】
なお、本発明に係るヒドロキシナフタレンノボラック樹脂中のヒドロキシナフタレン類(A)の含有量は、ガスクロマトグラフィー(GC)分析により求めることができる。具体的には、原料として用いた各ヒドロキシナフタレン類について、濃度既知の標品を用いて作成された検量線に基づき、GCピークの面積%から含有量を算出する。
【0038】
本発明に係るヒドロキシナフタレンノボラック樹脂の重量平均分子量(Mw)は、解像度が高く、耐熱性及び耐吸湿性にも優れる樹脂となることから1,000〜8,000の範囲であることが好ましい。また、多分散度(Mw/Mn)の値は、解像度が高く、耐熱性及び耐吸湿性にも優れる樹脂となることから1.2〜2.3の範囲であることが好ましい。
【0039】
本発明に係るヒドロキシナフタレンノボラック樹脂の重量平均分子量(Mw)及び多分散度(Mw/Mn)は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフ分析)により測定される値である。なお、GPCの測定条件は、後記実施例に記載の通りである。
【0040】
本発明に係るヒドロキシナフタレンノボラック樹脂は、例えば、前記一般式(2)で表されるヒドロキシナフタレン類(A)と前記一般式(3)で表されるアルデヒド類(B)とを、疎水性の有機溶剤と水との混合溶媒中、酸触媒条件下で反応させて得られる。
【0041】
ヒドロキシナフタレン類(A)としては、前記一般式(2)で表されるものであれば特に限定されるものではないが、中でも、1−ナフトール、2−ナフトール、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、及びこれらの芳香核に、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン原子が1つ乃至複数置換した化合物が挙げられ、1−ナフトール、2−ナフトール、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレンが好ましく、2,7−ジヒドロキシナフタレンが特に好ましい。なお、原料として用いるヒドロキシナフタレン類(A)は、1種類の化合物であってもよく、2種類以上の化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
本発明に係るヒドロキシナフタレンノボラック樹脂の製造においては、本発明の効果を損なわない範囲で、ヒドロキシナフタレン類(A)以外の芳香族性水酸基を有する化合物を併用することもできる。芳香族性水酸基を有する化合物としては、例えば、フェノール類等が挙げられる。当該フェノール類としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、ブチルフェノール、フェニルフェノール等が挙げられる。ヒドロキシナフタレン類(A)以外の芳香族性水酸基を有する化合物を併用する場合、その使用量としては、ヒドロキシナフタレン類(A)100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましい。
【0043】
アルデヒド類(B)としては、前記一般式(3)で表されるものであれば特に限定されるものではないが、中でも、ホルムアルデヒド(HCOH);アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ペンチルアルデヒド、へキシルアルデヒド等のアルキルアルデヒド;サリチルアルデヒド、3−ヒドロキシベンズアルデヒド、4−ヒドロキシベンズアルデヒド、2−ヒドロキシ−4−メチルベンズアルデヒド、2,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド、3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド等のヒドロキシベンズアルデヒド;2−ヒドロキシ−3−メトキシベンズアルデヒド、3−ヒドロキシ−4−メトキシベンズアルデヒド、4−ヒドロキシ−3−メトキシベンズアルデヒド、3−エトキシ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド、4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシベンズアルデヒド等のヒドロキシ基とアルコキシ基の両方を有するベンズアルデヒド;メトキシベンズアルデヒド、エトキシベンズアルデヒド等のアルコキシベンズアルデヒド;1−ヒドロキシ−2−ナフトアルデヒド、2−ヒドロキシ−1−ナフトアルデヒド、6−ヒドロキシ−2−ナフトアルデヒド等のヒドロキシナフトアルデヒド;ブロムベンズアルデヒド等のハロゲン化ベンズアルデヒド等が好ましく、ホルムアルデヒド、4−ヒドロキシ−3−メトキシベンズアルデヒド、3−エトキシ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド、3−ヒドロキシベンズアルデヒド、4−ヒドロキシベンズアルデヒド、又は2,4−ジヒドロキシベンズアルデヒドがより好ましく、ホルムアルデヒド、サリチルアルデヒド、3−ヒドロキシベンズアルデヒド、又は4−ヒドロキシベンズアルデヒドがさらに好ましい。なお、原料として用いるアルデヒド類(B)は、1種類の化合物であってもよく、2種類以上の化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
原料として用いるアルデヒド類(B)がホルムアルデヒドの場合、原料として、ホルムアルデヒドの水溶液(ホルマリン)、パラホルムアルデヒド、トリオキサンも好ましく用いられる。
【0045】
ヒドロキシナフタレンノボラック樹脂が効率的に生成することから、ヒドロキシナフタレン類(A)とアルデヒド類(B)との反応割合は、両者のモル比〔(A)/(B)〕が0.5〜1.5の範囲となる条件で行うことが好ましい。ヒドロキシナフタレン類(A)とアルデヒド類(B)の反応割合を前記範囲内とすることにより、得られたヒドロキシナフタレンノボラック樹脂内に残留する未反応のヒドロキシナフタレン類(A)量を低減させることができる。
【0046】
ヒドロキシナフタレン類(A)とアルデヒド類(B)との反応は、水と有機溶剤との混合溶媒中で行われる。反応に用いる有機溶剤としては、プロパノール、ブタノール、オクタノール、エチレングリコール、グリセリン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類等が挙げられる。反応に用いる有機溶剤は、1種類のみからなってもよく、2種類以上の混合溶剤であってもよい。中でも、ブタノール、オクタノール、メチルエチルケトン、及びメチルイソブチルケトンからなる群より選択される1種以上を用いることが好ましく、水層と有機層の分離性からメチルイソブチルケトンを用いることがより好ましい。
【0047】
反応に用いる混合溶媒における有機溶媒の使用割合としては、ヒドロキシナフタレン類(A)100質量部に対して有機溶媒50〜500質量部が、反応速度が十分早く効率良くヒドロキシナフタレンノボラック樹脂が得られること、ヒドロキシナフタレンノボラック樹脂の製造後の蒸留による溶剤除去の時間が比較的短時間ですむこと等の理由から好ましく、100〜500質量部がより好ましい。
【0048】
反応に用いる混合溶媒における水の使用割合としては、ヒドロキシナフタレン類(A)100質量部に対し、30〜300質量部の水を用いる。多量の水を反応系内に存在させることにより、分子量の大きさに関わりなく低分子量体、残モノマー(ヒドロキシナフタレン類(A))の残存量が少ないヒドロキシナフタレンノボラック樹脂が得られる。反応系内の水の量としては、ヒドロキシナフタレン類(A)100質量部に対して35〜250質量部がより好ましい。
【0049】
反応に用いる酸触媒としては、硫酸、塩酸、硝酸、臭化水素酸、過塩素酸、リン酸等の無機酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等のスルホン酸、シュウ酸、コハク酸、マロン酸、モノクロ酢酸、ジクロル酢酸等の有機酸、三フッ化ホウ素、無水塩化アルミニウム、塩化亜鉛等のルイス酸等が挙げられる。中でも、強酸性を示し、ヒドロキシナフタレン類(A)とアルデヒド類(B)との反応を高活性で促進することから、p−トルエンスルホン酸が好ましい。これら酸触媒の使用量は、反応原料の総質量に対し0.1〜25質量%の範囲で用いることが好ましい。
【0050】
ヒドロキシナフタレン類(A)とアルデヒド類(B)とを反応させる際の温度条件は、反応効率が高いことから、50〜120℃の範囲であることが好ましい。特に、2,7−ジヒドロキシナフタレンとホルムアルデヒドを反応させる場合には、60〜90℃で反応させることが好ましい。
【0051】
ヒドロキシナフタレン類(A)とアルデヒド類(B)との反応は、例えば、以下のようにして行うことができる。まず、温度計、冷却管、分留管、攪拌器を取り付けたフラスコに、ヒドロキシナフタレン類(A)、有機溶剤、アルデヒド類(B)及び水を仕込む。ヒドロキシナフタレン類(A)、有機溶剤、アルデヒド類(B)及び水を仕込んだ後、攪拌する。攪拌しながら酸触媒を添加する。酸触媒の使用量は、通常ヒドロキシナフタレン類(A)100質量部に対して0.01〜5質量部である。それ以上用いても構わないが、中和工程に大量のアルカリと、それに余分な時間を有することになるので、適宜決定すればよい。
【0052】
反応系にヒドロキシナフタレン類(A)、アルデヒド類(B)、有機溶剤及び水を仕込むことにより、ヒドロキシナフタレン類(A)が有機溶媒相中に溶解乃至分散し、かつ、アルデヒド類(B)が水相中に溶解乃至分散する。反応系中の有機溶媒相と水層とは攪拌しても「均一」に混ざり合う(溶解)ものではなく、「不均一」の状態となっている。二つの層が「不均一」の状態を形成していればよく、有機層の一部が水層と「均一」に混ざっていてもよく、水層の一部が有機層と「均一」に混ざっていてもよい。なお、ヒドロキシナフタレン類(A)の一部が水中に溶解乃至分散していてもよく、アルデヒド類(B)の一部が有機溶媒中に溶解乃至分散していてもよい。
【0053】
次いで、反応系に酸触媒を添加した後、反応系を昇温する。反応温度まで昇温した後、攪拌下、ヒドロキシナフタレン類(A)とアルデヒド類(B)とを反応させる。反応時間は、通常0.5〜10時間である。反応終了後、反応系を分液ロートに移し、水層を有機層から分離除去する。その後、有機層を洗浄液が中性を示すまで洗浄する。洗浄後、有機層を加熱・減圧下に放置し、有機層から有機溶剤を除去することにより未反応モノマー(ヒドロキシナフタレン類(A))の残存量が少ないヒドロキシナフタレンノボラック樹脂を得ることができる。
【0054】
本発明に係る永久膜用感光性組成物は、本発明に係るヒドロキシナフタレンノボラック樹脂を必須の成分とし、硬化剤を含有していなくてもよく、必要に応じて硬化剤を含有してもよい。
【0055】
本発明において用いられる前記硬化剤としては、例えば、メチロール基、アルコキシメチル基、アシロキシメチル基から選ばれる少なくとも一つの基で置換されたメラミン化合物、グアナミン化合物、グリコールウリル化合物、ウレア化合物、レゾール樹脂、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、アジド化合物、アルケニルエーテル基等の二重結合を含む化合物、酸無水物、オキサゾリン化合物等が挙げられる。
【0056】
前記メラミン化合物としては、例えば、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサメチロールメラミンの1〜6個のメチロール基がメトキシメチル化した化合物、ヘキサメトキシエチルメラミン、ヘキサアシロキシメチルメラミン、ヘキサメチロールメラミンのメチロール基の1〜6個がアシロキシメチル化した化合物等が挙げられる。
【0057】
前記グアナミン化合物としては、例えば、テトラメチロールグアナミン、テトラメトキシメチルグアナミン、テトラメトキシメチルベンゾグアナミン、テトラメチロールグアナミンの1〜4個のメチロール基がメトキシメチル化した化合物、テトラメトキシエチルグアナミン、テトラアシロキシグアナミン、テトラメチロールグアナミンの1〜4個のメチロール基がアシロキシメチル化した化合物等が挙げられる。
【0058】
前記グリコールウリル化合物としては、例えば、1,3,4,6−テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6−テトラキス(ブトキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6−テトラキス(ヒドロキシメチル)グリコールウリル等が挙げられる。
【0059】
前記ウレア化合物としては、例えば、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)尿素、1,1,3,3−テトラキス(ブトキシメチル)尿素及び1,1,3,3−テトラキス(メトキシメチル)尿素等が挙げられる。
【0060】
前記レゾール樹脂としては、例えば、フェノール、クレゾールやキシレノール等のアルキルフェノール、フェニルフェノール、レゾルシノール、ビフェニル、ビスフェノールAやビスフェノールF等のビスフェノール、ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のフェノール性水酸基含有化合物と、アルデヒド化合物とをアルカリ性触媒条件下で反応させて得られる重合体が挙げられる。
【0061】
前記エポキシ化合物としては、例えば、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリメチロールメタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリエチロールエタントリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0062】
前記イソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。
【0063】
前記アジド化合物としては、例えば、1,1’−ビフェニル−4,4’−ビスアジド、4,4’−メチリデンビスアジド、4,4’−オキシビスアジド等が挙げられる。
【0064】
前記アルケニルエーテル基等の二重結合を含む化合物としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,2−プロパンジオールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、テトラメチレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ソルビトールテトラビニルエーテル、ソルビトールペンタビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等が挙げられる。
【0065】
前記酸無水物としては、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’−(イソプロピリデン)ジフタル酸無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物等の芳香族酸無水物;無水テトラヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸、無水エンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水ドデセニルコハク酸、無水トリアルキルテトラヒドロフタル酸等の脂環式カルボン酸無水物等が挙げられる。
【0066】
これらの中でも、硬化性に優れ、永久膜用途に用いた場合のドライエッチング耐性及び耐熱分解性に優れる組成物となることから、グリコールウリル化合物、ウレア化合物、レゾール樹脂が好ましく、グリコールウリル化合物が特に好ましい。
【0067】
本発明に係る永久膜用感光性組成物が前記硬化剤を含有する場合には、当該硬化剤の配合量は、前記本発明に係るヒドロキシナフタレンノボラック樹脂による優れたアルカリ現像性と感度を維持するために、前記本発明に係るヒドロキシナフタレンノボラック樹脂100質量部に対し、50質量部以下である。本発明に係る永久膜用感光性組成物の前記硬化剤の配合量は、硬化性、耐熱性、及びアルカリ現像性に優れる組成物となることから、前記本発明に係るヒドロキシナフタレンノボラック樹脂100質量部に対し、0.1〜50質量部となる割合であることが好ましく、さらに感度にも優れる組成物となることから、0.1〜30質量部となる割合であることがさらに好ましく、0.5〜20質量部となる割合であることがよりさらに好ましい。
【0068】
本発明に係る永久膜用感光性組成物は、本発明に係るヒドロキシナフタレンノボラック樹脂に加えて、感光剤を含有していることが好ましい。当該感光剤としては、例えば、キノンジアジド基を有する化合物が挙げられる。キノンジアジド基を有する化合物の具体例としては、例えば、芳香族(ポリ)ヒドロキシ化合物と、ナフトキノン−1,2−ジアジド−5−スルホン酸、ナフトキノン−1,2−ジアジド−4−スルホン酸、オルトアントラキノンジアジドスルホン酸等のキノンジアジド基を有するスルホン酸との完全エステル化合物、部分エステル化合物、アミド化物又は部分アミド化物などが挙げられる。
【0069】
ここで用いる前記芳香族(ポリ)ヒドロキシ化合物は、例えば、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,6−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシ−2’−メチルベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3’,4,4’,6−ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3,4,4’−ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3,4,5−ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,3’,4,4’,5’,6−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、2,3,3’,4,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン等のポリヒドロキシベンゾフェノン化合物;
【0070】
ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)プロパン、2−(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)−2−(2’,3’,4’−トリヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’−{1−[4−〔2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル〕フェニル]エチリデン}ビスフェノール,3,3’−ジメチル−{1−[4−〔2−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル〕フェニル]エチリデン}ビスフェノール等のビス[(ポリ)ヒドロキシフェニル]アルカン化合物;
【0071】
トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3、5−ジメチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン等のトリス(ヒドロキシフェニル)メタン化合物又はそのメチル置換体;
【0072】
ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)−3−ヒドロキシフェニルメタン,ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン,ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン,ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン,ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−3−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3−シクロヘキシル−2−ヒドロキシフェニル)−3−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−3−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3−シクロヘキシル−2−ヒドロキシフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3−シクロヘキシル−2−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタンなどの、ビス(シクロヘキシルヒドロキシフェニル)(ヒドロキシフェニル)メタン化合物又はそのメチル置換体等が挙げられる。これらの感光剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0073】
本発明に係る永久膜用感光性組成物における感光剤の配合量は、光感度に優れる組成物となることから、本発明に係るヒドロキシナフタレンノボラック樹脂100質量部に対し、5〜50質量部となる割合であることが好ましい。
【0074】
本発明に係る永久膜用感光性組成物は、樹脂成分として、本発明に係るヒドロキシナフタレンノボラック樹脂以外に、その他の樹脂を併用しても良い。その他の樹脂としては、アルカリ現像液に可溶なもの、或いは、酸発生剤等の添加剤と組み合わせて用いることによりアルカリ現像液へ溶解するものであれば、何れのものも用いることができる。
【0075】
前記その他の樹脂を用いる場合、本発明に係るヒドロキシナフタレンノボラック樹脂とその他の樹脂との配合割合は、所望の用途により任意に調整することができる。中でも、本発明が奏する光感度、解像度及びアルカリ現像性が高く、かつ、耐熱性及び耐吸湿性にも優れる効果が十分に発現することから、本発明に係るヒドロキシナフタレンノボラック樹脂とその他の樹脂との合計に対し、本発明に係るヒドロキシナフタレンノボラック樹脂を60質量%以上用いることが好ましく、80質量%以上用いることがより好ましい。
【0076】
本発明に係る永久膜用感光性組成物は、レジスト用途に用いた場合の製膜性やパターンの密着性の向上、現像欠陥を低減するなどの目的で界面活性剤を含有していてもよい。ここで用いる界面活性剤は、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル化合物、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル化合物、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル化合物、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテ−ト、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル化合物等のノニオン系界面活性剤;フルオロ脂肪族基を有する重合性単量体と[ポリ(オキシアルキレン)](メタ)アクリレートとの共重合体など分子構造中にフッ素原子を有するフッ素系界面活性剤;分子構造中にシリコーン構造部位を有するシリコーン系界面活性剤等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの界面活性剤の配合量は、本発明に係る永久膜用感光性組成物中の樹脂固形分100質量部に対し0.001〜2質量部の範囲で用いることが好ましい。
【0077】
本発明に係る永久膜用感光性組成物は、さらに、充填材を含有していてもよい。充填材により、塗膜の硬度や耐熱性を向上させることができる。本発明に係る永久膜用感光性組成物が含有する充填材としては、有機充填材であってもよいが、無機充填材が好ましい。無機充填材としては、例えば、シリカ、マイカ、タルク、クレー、ベントナイト、モンモリロナイト、カオリナイト、ワラストナイト、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、アルミナ、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、酸化亜鉛、ガラス繊維等が挙げられる。中でも、熱膨張率を低くすることができるため、シリカを用いることが好ましい。
【0078】
本発明に係る永久膜用感光性組成物は、本発明に係るヒドロキシナフタレンノボラック樹脂の他、必要に応じて、その他の樹脂、感光剤、光酸発生剤、有機塩基化合物、界面活性剤、充填材、染料、顔料、架橋剤、溶解促進剤など各種の添加剤を、有機溶剤に溶解又は分散させたものであることが好ましい。有機溶剤に溶解等させたものを基板等に塗布することにより、塗膜を形成することができる。光酸発生剤や有機塩基化合物は、使用する樹脂の種類等を考慮して、レジスト材料の添加剤として汎用されているものの中から適宜選択して用いることができる。
【0079】
当該有機溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のジアルキレングリコールジアルキルエーテル;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のアルキレングリコールアルキルエーテルアセテート;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン等のケトン化合物;ジオキサン等の環式エーテル;2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、オキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、蟻酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のエステル化合物が挙げられる、これらはそれぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0080】
本発明に係る永久膜用感光性組成物は、上記各成分を配合し、攪拌機等を用いて混合することにより調製できる。また、感光性組成物が充填材や顔料を含有する場合には、ディゾルバー、ホモジナイザー、3本ロールミル等の分散装置を用いて分散或いは混合して調整することができる。
【0081】
本発明に係る永久膜用感光性組成物は、レジスト材料として用いてもよい。本発明に係る永久膜用感光性組成物は、有機溶剤に溶解・分散させた状態のものをそのままレジスト溶液として用いてもよく、有機溶剤に溶解・分散させた状態のものをフィルム状に塗布して脱溶剤させたものをレジストフィルムとして用いてもよい。レジストフィルムとして用いる際の支持フィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルムが挙げられ、単層フィルムでも複数の積層フィルムでもよい。また、該支持フィルムの表面はコロナ処理されたものや剥離剤が塗布されたものでもよい。
【0082】
本発明に係る永久膜用感光性組成物を用いたフォトリソグラフィーの方法は、例えば、有機溶剤に溶解・分散させた永久膜用感光性組成物を、シリコン基板フォトリソグラフィーを行う対象物上に塗布し、60〜150℃の温度条件でプリベークする。このときの塗布方法は、スピンコート、ロールコート、フローコート、ディップコート、スプレーコート、ドクターブレードコート等の何れの方法でもよい。次にレジストパターンの作成であるが、当該永久膜用感光性組成物がポジ型の場合には、目的とするレジストパターンを所定のマスクを通じて露光し、露光した箇所をアルカリ現像液にて溶解することにより、レジストパターンを形成する。本発明に係る永久膜用感光性組成物は、光感度が高いため、解像度に優れるレジストパターンの形成が可能となる。
【0083】
本発明に係る永久膜用感光性組成物を塗布してなる薄膜(塗膜)は、必要に応じてレジストパターンを形成した後、最終製品にも残存する永久膜として好適である。永久膜の具体例としては、半導体デバイス関係ではソルダーレジスト、パッケージ材、アンダーフィル材、回路素子等のパッケージ接着層や集積回路素子と回路基板の接着層、LCD、OELDに代表される薄型ディスプレイ関係では薄膜トランジスタ保護膜、液晶カラーフィルター保護膜、ブラックマトリックス、スペーサーなどが挙げられる。特に、本発明に係る永久膜用感光性組成物からなる永久膜は、耐熱性や耐吸湿性に優れている上に、放出されるヒドロキシナフタレン類(A)が非常に少なく、汚染性が少ないという非常に優れた利点を有する。このため、特に、永久膜を本発明に係る永久膜用感光性組成物から形成することにより、表示材料において重要な汚染による画質劣化を最小限に低減することが可能になる。すなわち、本発明に係る永久膜用感光性組成物は、画質劣化の少ない高感度、高耐熱、吸湿信頼性を兼備した永久膜用ポジ型レジスト材料となる。
【実施例】
【0084】
以下、実施例等を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれらの実施例等に限定されるものではない。以下において、「部」及び「%」は特に断わりのない限り質量基準である。
【0085】
<樹脂のGPC測定>
樹脂組成物の分子量分布は、GPCにより、ポリスチレン標準法において、以下の測定条件にて測定した。
【0086】
(GPCの測定条件)
測定装置:東ソー株式会社製「HLC−8220 GPC」、
カラム:昭和電工株式会社製「Shodex KF802」(8.0mmφ×300mm)+昭和電工株式会社製「Shodex KF802」(8.0mmφ×300mm)+昭和電工株式会社製「Shodex KF803」(8.0mmφ×300mm)+昭和電工株式会社製「Shodex KF804」(8.0mmφ×300mm)
検出器:RI、
測定条件:カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン(THF)
流速 1.0mL/分
試料:樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(5μL)、
標準試料:分子量が既知の単分散ポリスチレンを用いた。
(単分散ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
東ソー株式会社製「F−288」
東ソー株式会社製「F−550」
【0087】
<残留モノマー量の測定>
樹脂中の残留モノマー量(未反応のヒドロキシナフタレン類の量)は、GC分析により、下記の測定条件により求めた。原料として用いた各ヒドロキシナフタレン類について、濃度既知の標品を用いて検量線を作成した後、当該検量線に基づいて、試料のGCピークの面積%から各ヒドロキシナフタレン類の含有量をそれぞれ算出した。
【0088】
(GCの測定条件)
装置:島津製作所製 GC−14B、
カラム:キャピラリーカラムDB−1(25mmφ×60m)、
カラム温度:90℃で1分保持後、10℃/分で280℃まで昇温し、6分間保持
試料気化室温度:250℃、
検出器:FID、280℃、
キャリアガス:ヘリウム、
流速:1.4mL/分、
試料注入量:0.5μL、
【0089】
[合成例1]
温度計、冷却管、撹拌器を取り付けた1L容4つ口フラスコに、1−ナフトール144g(1.0モル)、メチルイソブチルケトン400g、水96g及び92%パラホルムアルデヒド27.7g(0.85モル)を仕込んだ。続いて、当該4つ口フラスコに、攪拌しながら、50%濃度に調整したパラトルエンスルホン酸の水溶液4.8gを添加した。反応系内の水の量は、1−ナフトール100質量部に対し、69.9質量部であった。その後、系内の溶液を攪拌しながら80℃に昇温し、2時間反応させた。反応中、有機層と水層は完全に相溶した「均一」とはなっておらず、「不均一」であった。反応終了後、系内の溶液を分液ロートに移し、水層を有機層から分離除去した。次いで、洗浄水が中性を示すまで水洗後、有機層から溶媒を加熱減圧下に除去し、ノボラック樹脂(1)147gを得た。ノボラック樹脂(1)について、GPC及びGCを行ったところ、数平均分子量(Mn)=1312、重量平均分子量(Mw)=2251、多分散度(Mw/Mn)=1.716、残留モノマー量=0.57質量%であった。ノボラック樹脂(1)のGPCチャートを図1に示す。
【0092】
[合成例
温度計、冷却管、撹拌器を取り付けた1L容4つ口フラスコに、1−ナフトール144g(1.0モル)、o−クレゾール2.2g(0.02モル)、メタノール400g、水96g及び92%パラホルムアルデヒド27.7g(0.85モル)を仕込んだ。続いて、当該4つ口フラスコに、攪拌しながら50%濃度に調整したパラトルエンスルホン酸の水溶液4.8gを添加した。反応系内の水の量は1−ナフトール100質量部に対し、69.9質量部である。その後、系内の溶液を攪拌しながら60℃に昇温し、2時間反応させた。反応中、有機層と水層は完全に相溶した「均一」であった。反応終了後、メチルイソブチルケトン400gを加え、系内の溶液を分液ロートに移し、水層を有機層から分離除去した。次いで、洗浄水が中性を示すまで水洗後、有機層から溶媒を加熱減圧下に除去し、ノボラック樹脂()149g得た。ノボラック樹脂()について、GPC及びGCを行ったところ、数平均分子量(Mn)=955、重量平均分子量(Mw)=1427、多分散度(Mw/Mn)=1.495、残留モノマー量=2.52質量%であった。ノボラック樹脂()のGPCチャートを図に示す。
【0093】
[合成例
攪拌機、温度計を備えた2L容4つ口フラスコに、m−クレゾール648g(6モル)、p−クレゾール432g(4モル)、シュウ酸2.5g(0.2モル)、42%ホルムアルデヒド492gを仕込み、100℃まで昇温、反応させた。系内の溶液を常圧で200℃まで脱水、蒸留した後、230℃、6時間減圧蒸留を行い、ノボラック樹脂()736gを得た。ノボラック樹脂()について、GPC及びGCを行ったところ、数平均分子量(Mn)=1450、重量平均分子量(Mw)=10.316、多分散度(Mw/Mn)=7.116、残留モノマー量=0.12質量%であった。ノボラック樹脂()のGPCチャートを図に示す。
【0094】
[実施例、比較例1〜2]
合成例1〜で合成したノボラック樹脂(1)〜()について、表1に示すように、樹脂成分と感光剤(東洋合成工業製、P−200)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を16/4/80(質量部)で混合して溶解させた後、0.2μmメンブランフィルターを用いて濾過し、感光性組成物(ポジ型レジスト組成物)とした。
得られた各ポジ型感光性組成物について、アルカリ現像性、感度、解像度、耐熱性、吸水性及び汚染性を評価した。評価方法は下記の通りとした。
【0095】
<アルカリ現像性評価>
感光性組成物を、5インチシリコンウェハー上に約1μmの厚さになるようにスピンコーターで塗布し、110℃のホットプレート上で60秒間乾燥させた。得られたウェハーを、現像液(2.38%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液)に60秒間浸漬させた後、110℃のホットプレート上で60秒間乾燥させた。当該感光性組成物の塗膜の膜厚を、現像液浸漬前後で測定し、その差分を60で除した値をアルカリ現像性(ADR(Å/s))とした。露光させる場合は、ghi線ランプ(ウシオ電機社製、マルチライト)で十分に露光される100mJ/cm照射した後、140℃、60秒間の条件でPEB(Post Exposure Bake)を施したウェハーを用いてADR測定を実施した。
【0096】
<感度評価>
感光性組成物を約1μmの厚さで塗布して乾燥せしめたウェハー上に、ラインアンドスペースが1:1の1〜10μmレジストパターン対応のマスクを密着させた後、ghi線ランプで3μmを忠実に再現することのできる露光量(Eop露光量)を求めた。
【0097】
<解像度評価>
感光性組成物を塗布して乾燥したシリコンウェハー上にフォトマスクを乗せ、ghi線ランプ(ウシオ電機社製、マルチライト)で100mJ/cm照射し感光せしめた。照射後の塗膜を、ADR測定と同様にして現像し乾燥させた。現像後のウェハー上のレジストパターンのパターン状態を、キーエンス社製レーザーマイクロスコープ(VK−8500)を用いて評価した。評価は、L/S=5μmで解像できているものを「○」、L/S=5μmで解像できていないものを「×」とした。
【0098】
<耐熱性評価>
感光性組成物を5インチシリコンウェハー上に約1μmの厚さになるようにスピンコーターで塗布し、110℃のホットプレート上で60秒間乾燥させた。得られたウェハーより樹脂分をかきとり、Tgを測定した。Tgの測定は、示差走査熱量計((株)TAインスツルメント製、示差走査熱量計(DSC)Q100)を用いて、窒素雰囲気下、温度範囲:−100〜200℃、昇温温度:10℃/分の条件で走査を行い、測定結果をガラス転移温度(Tg)とした。
【0099】
<吸水性評価>
感光性組成物を5インチシリコンウェハー上に約1μmの厚さになるようにスピンコーターで塗布し、110℃のホットプレート上で60秒間乾燥させた。得られたウェハーを85℃、湿度85%で24時間吸湿させ、重量変化により吸水率を算出した。
【0100】
<汚染性評価>
感光性組成物を5インチシリコンウェハー上に約1μmの厚さになるようにスピンコーターで塗布し、110℃のホットプレート上で60秒間乾燥させた。得られたウェハーを1cm×1cmに切ったもの5片を10mL容の透明バイアル瓶に密封し、評価用サンプルとした。各評価用サンプルを防爆オーブン内で121℃、24時間加熱した後、室温に冷却し、バイアル瓶ガラス面への昇華成分付着による曇りを目視で観測した。目視により曇りがなかったものを「○」、曇りが有ったものを「×」とした。
【0101】
【表1】
【0102】
この結果、本発明に係るヒドロキシナフタレンノボラック樹脂であるノボラック樹脂(1)を含有する感光性組成物からなる塗膜(実施例)は、露光後のADRが1000Å/s以上と良好であり、感度と解像度も高く、吸湿性も低く、Tgが200℃以上と充分に高く耐熱性も良好であった。さらに、汚染性も低かった。これに対して、残留モノマー量が樹脂固形分換算で2.52質量%もあったノボラック樹脂()を含有する感光性組成物からなる塗膜(比較例1)では、吸湿性がやや低いものの、露光後のADR、感度、及び解像度は実施例と同程度に良好であったが、防汚性が悪かった。一方で、クレゾールノボラック樹脂構造を主骨格とするノボラック樹脂()を含有する感光性組成物からなる塗膜(比較例2)では、残留モノマー量が0.12質量%と低いために汚染性は良好であったが、ADR、感度、吸湿性、及び耐熱性のいずれもが実施例よりも悪かった。
【0103】
[実施例2〜4、比較例3〜5]
合成例1〜で合成したノボラック樹脂(1)〜()について、表2及び3に示すように、樹脂成分と、感光剤(東洋合成工業製、P−200)、グリコールウリル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を表2及び3に記載の割合(質量部)で混合して溶解させた後、0.2μmメンブランフィルターを用いて濾過し、感光性組成物(ポジ型レジスト組成物)とした。
得られた各ポジ型感光性組成物について、アルカリ現像性、感度、解像度、耐熱性、吸水性及び汚染性を評価した。アルカリ現像性、感度、解像度、及び吸水性の評価方法は、実施例1と同様にして行い、耐熱性及び汚染性については下記の通り評価した。
【0104】
<耐熱性評価>
感光性組成物を5インチシリコンウェハー上に約1μmの厚さになるようにスピンコーターで塗布し、乾燥させた後、230℃のホットプレート上で60秒間加熱することにより硬化させた。得られたウェハーより樹脂分をかきとり、Tgを測定した。Tgの測定は、示差走査熱量計((株)TAインスツルメント製、示差走査熱量計(DSC)Q100)を用いて、窒素雰囲気下、温度範囲:−100〜200℃、昇温温度:10℃/分の条件で走査を行い、測定結果をガラス転移温度(Tg)とした。
【0105】
<汚染性評価>
感光性組成物を5インチシリコンウェハー上に約1μmの厚さになるようにスピンコーターで塗布し、乾燥させた後、230℃のホットプレート上で60秒間加熱することにより硬化させた。得られたウェハーを1cm×1cmに切ったもの5片を10mL容の透明バイアル瓶に密封し、評価用サンプルとした。各評価用サンプルを防爆オーブン内で121℃で24時間加熱した後、室温に冷却し、バイアル瓶ガラス面への昇華成分付着による曇りを目視で観測した。目視により曇りがなかったものを「○」、曇りが有ったものを「×」とした。
【0106】
【表2】
【0107】
【表3】
【0108】
硬化剤であるグリコールウリルのヒドロキシナフタレンノボラック樹脂100質量部に対する含有量が、約6質量部である実施例、約30質量部である実施例、約50質量部である実施例、及び約60質量部である比較例5の結果から、硬化剤を配合することにより、耐熱性が顕著に向上することが確認された。一方で、硬化剤の配合量が増加するに従い、露光後のADR値が低下し、吸湿率が増加した。特に、比較例5では、露光後のADR値は、一気に低下して180となり、吸湿率も1.8に増加していた。つまり、比較例5は、現像性に問題が発生し、永久膜用の感光性材料としては適さなかった。
これらの結果から、本発明に係るヒドロキシナフタレンノボラック樹脂100質量部に対し、0.1〜50質量部となるように硬化剤を含有させることにより、優れた耐吸湿性、アルカリ現像性の機能を備えつつ、耐熱性に特に優れており、永久膜としての利用に好適な感光性組成物が得られることが明らかである。特に、本発明に係るヒドロキシナフタレンノボラック樹脂100質量部に対し、0.1〜30質量部となるように硬化剤を含有させることにより、アルカリ現像性の機能と優れた耐熱性を備えつつ、高い感度を有する永久膜用感光性組成物が得られる(実施例2、3参照。)。
【0109】
これらの結果から、本発明に係るヒドロキシナフタレンノボラック樹脂100質量部に対し、0.1〜50質量部となるように硬化剤を含有させることにより、優れた耐吸湿性、アルカリ現像性の機能を備えつつ、耐熱性に特に優れており、永久膜としての利用に好適な感光性組成物が得られることが明らかである。特に、本発明に係るヒドロキシナフタレンノボラック樹脂100質量部に対し、0.1〜30質量部となるように硬化剤を含有させることにより、アルカリ現像性の機能と優れた耐熱性を備えつつ、高い感度を有する永久膜用感光性組成物が得られる(実施例4、7参照。)。
【要約】
本発明は、光感度、解像度、耐熱性、及び耐吸湿性に優れており、かつ高温環境下において汚染が生じ難い、永久膜の材料として好適な感光性組成物等を提供することを目的として、一般式(1)で表される構造部位(I)を繰り返し単位として有しており、一般式(2)で表されるヒドロキシナフタレン類(A)の含有量が樹脂固形分換算で2質量%以下であるヒドロキシナフタレンノボラック樹脂を含有し、硬化剤を含有していない、又は前記樹脂100質量部に対して50質量部以下の硬化剤を含有する永久膜用感光性組成物を提供する[式中、Rは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、又はハロゲン原子を表し、複数存在するRは互いに同一でも異なっていてもよく、Rは水素原子、アルキル基、又はアリール基を表し、pは1又は2を、qは4又は5を表す。但し、pとqの和は6である。]。
図1
図2
図3