(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施形態>
以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る様々な実施の形態を説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る生体情報測定装置1の斜視図である。生体情報測定装置1は、寝具Mに横臥する2名の被験者(第1の被験者HA、及び、第2の被験者HB)の各々の生体情報を測定する装置である。
生体情報測定装置1は、
図1に示すように、寝具Mの下側に配置されて2名の被験者の身体の動きを検出する体動検出部10、体動検出部10の検出結果に基づいて第1の2名の被験者の各々の生体情報を算出する制御ボックス30、及び、体動検出部10から出力される各種信号を制御ボックス30に伝達するための配線200を備える。
【0017】
図2は、寝具M及び体動検出部10を、寝具Mの上側(すなわち、寝具Mが有する面のうち被験者が横臥する面に垂直な方向)から見たときの平面図である。なお、以下では、寝具Mの上側から体動検出部10または寝具Mを見ることを、単に「平面視する」と表現する場合がある。
寝具Mは、
図2に示すように、第1の被験者HAが横臥するための第1寝具領域ARm1、及び、第2の被験者HBが横臥するための第2寝具領域ARm2を備える。すなわち、平面視して寝具Mを左右に二分する直線を中心線Midとしたとき、第1寝具領域ARm1と、第2寝具領域ARm2とは、中心線Midを挟んで互いに反対側に位置する。
体動検出部10は、平面視したときに第1寝具領域ARm1と重なる第1領域AR1、平面視したときに第2寝具領域ARm2と重なる第2領域AR2、及び、第1領域AR1と第2領域AR2との間の第3領域AR3に区分される。
【0018】
図3は、生体情報測定装置1の構成を示すブロック図である。
図3に示すように、体動検出部10は、流体室C1と信号生成部D1とを有する圧力検出部P1(第1の圧力検出部)、流体室C2と信号生成部D2とを有する圧力検出部P2(第2の圧力検出部)、流体室C3と信号生成部D3とを有する圧力検出部P3(第3の圧力検出部)、及び、流体室C4と信号生成部D4とを有する圧力検出部P4(第4の圧力検出部)を備える。
以下では、圧力検出部P1〜P4を圧力検出部Pと総称し、流体室C1〜C4を流体室Cと総称し、信号生成部D1〜D4を信号生成部Dと総称する場合がある。
【0019】
流体室Cは、水、空気等の非圧縮性の流体が内封された内部空間を有するマットレスであり、弾性材料により袋状に形成される。
信号生成部Dは、流体室Cの内部空間の圧力の変化を、センサ(例えば、コンデンサマイクロホン)を用いて検出し、検出結果に応じた大きさを示す出力信号Fを出力する。より具体的には、信号生成部D1は、流体室C1の内部の圧力変化の大きさを示す出力信号F1(第1出力信号)を出力し、信号生成部D2は、流体室C2の内部の圧力変化の大きさを示す出力信号F2(第2出力信号)を出力し、信号生成部D3は、流体室C3の内部の圧力変化の大きさを示す出力信号F3(第3出力信号)を出力し、信号生成部D4は、流体室C4の内部の圧力変化の大きさを示す出力信号F4(第4出力信号)を出力する。
なお、本実施形態では、信号生成部Dは、流体室Cの内部の圧力の変化を検出するが、流体室Cの内部の圧力を検出するものであってもよい。
また、本実施形態では、出力信号Fはアナログの信号であるが、デジタルの信号でもよい。この場合、信号生成部D(信号生成部D1〜D4の各々)は、AD変換回路を備えるものであればよい。
【0020】
一方、制御ボックス30は、
図3に示すように、体動検出部10から出力される出力信号F1〜F4に基づいて2名の被験者の各々の生体情報を算出する演算処理部20、電源オン/オフの操作及び測定開始/終了の操作等を行なう操作部31、及び、生体情報の測定結果及び各種ガイダンス等の表示を行なう表示部32を備える。また、図示は省略するが、制御ボックス30は、生体情報測定装置1に電力を供給する電源と、体動検出部10からの出力結果及び演算処理部20の算出結果等を記憶する記憶部と、を備える。
演算処理部20は、体動情報分離部21と信号抽出部22とを備える。この演算処理部20は、図示省略された制御ボックス30のCPU(central processing unit)がコンピュータプログラムを実行し、CPUがそのコンピュータプログラムに従って機能することにより実現される機能ブロックである。
【0021】
体動情報分離部21は、AD変換回路を備え、アナログの出力信号F1〜F4に基づいて、第1の被験者HAの身体の動きを表すデジタルの第1生体情報FA、及び、第2の被験者HBの身体の動きを表すデジタルの第2生体情報FBを算出する。
ここで、「被験者の身体の動き」には、被験者の姿勢の変化等の体動の他、被験者の呼吸及び脈拍も含まれる。なお、第1生体情報FA及び第2生体情報FBの具体的な算出方法については、後述する。
【0022】
信号抽出部22は、所定の帯域を通過させるフィルタを含んで構成される。信号抽出部22は、第1生体情報FAから、第1の被験者HAの脈拍を表す第1脈拍信号、第1の被験者HAの呼吸を表す第1呼吸信号、及び、第1の被験者HAの体動を表す第1体動信号を抽出する。また、信号抽出部22は、第2生体情報FBから、第2の被験者HBの脈拍を表す第2脈拍信号、第2の被験者HBの呼吸を表す第2呼吸信号、及び、第2の被験者HBの体動を表す第2体動信号を抽出する。なお、第1脈拍信号、第1呼吸信号、及び、第1体動信号を生体信号IAと総称する場合がある。また、第2脈拍信号、第2呼吸信号、及び、第2体動信号を生体信号IBと総称する場合がある。
【0023】
図4は、体動検出部10の平面図である。
図4に示すように、流体室C1〜C4は、平面視したときに、互いに重ならないように設けられる。具体的には、流体室C1は、第1領域AR1に設けられ、流体室C2は、第2領域AR2に設けられ、流体室C3は、第1領域AR1、第2領域AR2、及び、第3領域AR3のうち、流体室C1または流体室C2が設けられる領域以外の領域に設けられ、流体室C4は、第1領域AR1、第2領域AR2、及び、第3領域AR3のうち、流体室C1、流体室C2、または、流体室C3が設けられる領域以外の領域に設けられる。
なお、本実施形態では、平面視したときに、流体室C1の設けられる領域の面積と、流体室C2の設けられる領域の面積とは等しく、流体室C3の設けられる領域の面積と、流体室C4の設けられる領域の面積とは等しい。
以下では、第1領域AR1うち、流体室C3の設けられる領域を小領域ARp1(第1小領域)と称し、流体室C4の設けられる領域を小領域ARp2(第2小領域)と称する。また、第2領域AR2のうち、流体室C3の設けられる領域を小領域ARp3(第3小領域)と称し、流体室C4の設けられる領域を小領域ARp4(第4小領域)と称する。
【0024】
被験者の身体の動きに伴い生じる振動は、寝具Mを介して体動検出部10に伝播し、流体室Cの内部の圧力を変化させる。
図5は、寝具M及び体動検出部10を、
図2におけるZ−Z´線で破断した部分断面図である。
図5に示すように、流体室C1の内部の圧力は、主として、流体室C1の直上の第1寝具領域ARm1に横臥する第1の被験者HAの身体の動きにより生じる振動VAに基づいて変化する。
但し、第1の被験者HA及び第2の被験者HBは1つの寝具M上に横臥しているため、第2の被験者HBの身体の動きにより生じる振動は、寝具Mを介して流体室C1に伝播する。よって、流体室C1の内部の圧力は、振動VAのみならず、第2の被験者HBの身体の動きにより生じる振動VBによっても変化する。例えば、寝具Mの剛性が高い場合には、第2の被験者HBの身体の動きが流体室C1の内部の圧力に及ぼす影響も大きく、また、第2の被験者HBと流体室C1との距離が短い場合には、第2の被験者HBの身体の動きが流体室C1の内部の圧力に及ぼす影響も大きい。
同様に、流体室C2〜C4の内部の圧力は、第1の被験者HA及び第2の被験者HBの双方の身体の動きに基づいて変化する。すなわち、出力信号F1〜F4の各々の示す大きさは、2名の被験者の双方の身体の動きに基づいて変化する。よって、出力信号F1〜F4のうちの1つの出力信号Fから、2名の被験者のうち一方の被験者の身体の動きを検出することはできない。
そこで、本実施形態では、複数の出力信号Fを用いて、2名の被験者の各々の身体の動き(第1生体情報FA、及び、第2生体情報FB)を算出する。
以下では、出力信号F1〜F4から、第1の被験者HAの身体の動きを表す第1生体情報FA、及び、第2の被験者HBの身体の動きを表す第2生体情報FBを算出する方法について詳述する。
【0025】
寝具M上に第1の被験者HAのみが(第1寝具領域ARm1に)横臥している場合の、時刻tにおける出力信号F1の大きさを表す関数をA(t)とする。また、寝具M上に第2の被験者HBのみが(第2寝具領域ARm2に)横臥している場合の、時刻tにおける出力信号F2の大きさを表す関数をB(t)とする。
このとき、寝具M上に第1の被験者HA及び第2の被験者HBが横臥している場合の、時刻tにおける出力信号F1の大きさを表す関数F1(t)は、関数A(t)及び関数B(t)を用いて以下の式(1)で表され、時刻tにおける出力信号F2の大きさを表す関数F2(t)は、以下の式(2)で表される。
F1(t) = A(t)+k1×B(t) ……(1)
F2(t) = B(t)+k2×A(t) ……(2)
すなわち、出力信号F1は、第1の被験者HAの身体の動きを表す成分「A(t)」、及び、第2の被験者HBの身体の動きを表す成分「k1×B(t)」を有する。同様に、出力信号F2は、第1の被験者HAの身体の動きを表す成分「k2×A(t)」、及び、第2の被験者HBの身体の動きを表す成分「B(t)」を有する。
なお、式(1)に現れる係数k1は0<k1<1を満たす実数であり、式(2)に現れる係数k2は0<k2<1を満たす実数である。
【0026】
また、寝具M上に第1の被験者HA及び第2の被験者HBが横臥している場合の、時刻tにおける出力信号F3の大きさを表す関数F3(t)は、以下の式(3)で表され、時刻tにおける出力信号F4の大きさを表す関数F4(t)は、以下の式(4)で表される。
F3(t) = k3×A(t)+k4×B(t) ……(3)
F4(t) = k5×A(t)+k6×B(t) ……(4)
すなわち、出力信号F3は、第1の被験者HAの身体の動きを表す成分「k3×A(t)」、及び、第2の被験者HBの身体の動きを表す成分「k4×B(t)」を有する。同様に、出力信号F4は、第1の被験者HAの身体の動きを表す成分「k5×A(t)」、及び、第2の被験者HBの身体の動きを表す成分「k6×B(t)」を有する。
ここで、係数k3は0<k3<1を満たす実数であり、係数k4は0<k4<1を満たす実数であり、係数k5は0<k5<1を満たす実数であり、係数k6は0<k6<1を満たす実数である。具体的には、平面視したときの流体室C3の設けられる領域の面積をS3とし、小領域ARp1の面積をSp1とし、
小領域ARp3の面積をSp3とすると、係数k3は、面積S3に対する面積Sp1の割合に基づいて定められる値であり、係数k4は、面積S3に対する面積Sp3の割合に基づいて定められる値である。また、平面視したときの流体室C4の設けられる領域の面積をS4とし、
小領域ARp2の面積をSp2とし、小領域ARp4の面積をSp4とすると、係数k5は、面積S4に対する面積Sp2の割合に基づいて定められる値であり、係数k6は、面積S4に対する面積Sp4の割合に基づいて定められる値である。すなわち、係数k3と係数k4との間には、以下の式(5)に示す関係が成立し、係数k5と係数k6との間には、以下の式(6)に示す関係が成立する。
k3:k4 = Sp1:Sp3 ……(5)
k5:k6 = Sp2:Sp4 ……(6)
なお、本実施形態では、面積Sp1と面積Sp4とは等しく、面積Sp2と面積Sp3とは等しい。また、本実施形態では、面積Sp1と面積Sp2との和は、平面視したときの流体室C1の面積よりも小さく、面積Sp3と面積Sp4との和は、平面視したときの流体室C2の面積よりも小さい。
【0027】
体動情報分離部21は、出力信号F1及び出力信号F3に基づいて第1生体情報FAを生成する。具体的には、時刻tにおける第1生体情報FAの値を表す関数をFA(t)としたとき、関数FA(t)は、以下の式(7)を満たす。
FA(t) = F1(t)−F3(t)
= {1−k3}×A(t)+{k1−k4}×B(t)
= A(t)+{−k3}×A(t)
+{k1−k4}×B(t) ……(7)
第1生体情報FAは、第1の被験者HAの身体の動きを表す成分「{1−k3}×A(t)」、及び、第2の被験者HBの身体の動きを表す成分「{k1−k4}×B(t)」を有する。
ここで、係数k3及び係数k4は、式(7)に示す関数FA(t)における関数B(t)の項「{k1−k4}×B(t)」の大きさが小さくなるように、適宜定められる。すなわち、流体室C3(小領域ARp1及び小領域ARp3)は、第1生体情報FAにおいて第2の被験者HBの身体の動きを表す成分の占める割合が小さくなるように設けられる。
【0028】
なお、式(7)において、「k1−k4」が「0」となるように、係数k4(面積Sp3)を定めると、関数FA(t)における関数B(t)の項の大きさを「0」とすることができる。
しかし、平面視したときに流体室C1と第2寝具領域ARm2とが重ならないのに対して、流体室C3と第2寝具領域ARm2とは重なるため、流体室C1の圧力変化において第2の被験者HBの身体の動きが寄与する割合を示す値である係数k1は、流体室C3の圧力変化において第2の被験者HBの身体の動きが寄与する割合を示す値である係数k4よりも小さな値となる。よって、「k1−k4」を0にすることはできない。
そこで、本実施形態では、係数k3及び係数k4が、以下の式(8)に示す条件を満たすように、面積Sp1及び面積Sp3を定めることで、関数FA(t)における関数B(t)の項の大きさを小さくする。
{−k3} > {k1−k4} ……(8)
式(8)は、以下の式(9)に変形される。
k4 > k1+k3 ……(9)
すなわち、本実施形態では、式(9)に示す条件が満たされるように、小領域ARp1の面積Sp1及び小領域ARp3の面積Sp3を定める。より具体的には、
図4に示すように、面積Sp3が、面積Sp1よりも大きくなるように、流体室C3を配置する。これにより、関数FA(t)における関数B(t)の項の大きさを小さくすることができ、関数A(t)で表される第1の被験者HAの身体の動きを抽出することができる。
【0029】
同様に、体動情報分離部21は、出力信号F2及び出力信号F4に基づいて第2生体情報FBを生成する。具体的には、時刻tにおける第2生体情報FBの値を表す関数をFB(t)としたとき、関数FB(t)は、以下の式(10)を満たす。
FB(t) = F2(t)−F4(t)
= {1−k6}×B(t)+{k2−k5}×A(t)
= B(t)+{−k6}×B(t)
+{k2−k5}×A(t) ……(10)
第2生体情報FBは、第1の被験者HAの身体の動きを表す成分「{k2−k5}×A(t)」、及び、第2の被験者HBの身体の動きを表す成分「{1−k6}×B(t)」を有する。
ここで、係数k5及び係数k6は、式(10)において関数A(t)の項「{k2−k5}×A(t)」の大きさが小さくなるように、適宜定められる。すなわち、流体室C4(小領域ARp2及び小領域ARp4)は、第2生体情報FBにおいて第1の被験者HAの身体の動きを表す成分の占める割合が小さくなるように設けられる。
【0030】
本実施形態では、係数k5及び係数k6が、以下の式(11)に示す条件を満たすように、面積Sp2及び面積Sp4を定めことで、関数FB(t)における関数A(t)の項の大きさを小さくする。
{−k6} > {k2−k5} ……(11)
式(11)は、以下の式(12)に変形される。
k5 > k2+k6 ……(12)
すなわち、本実施形態では、式(12)の条件が満たされるように、小領域ARp2の面積Sp2及び小領域ARp4の面積Sp4を定める。より具体的には、
図4に示すように、面積Sp2が、面積Sp4よりも大きくなるように、流体室C4を配置する。これにより、関数FB(t)において関数A(t)の項の大きさを小さくすることができ、関数B(t)で示される第2の被験者HBの身体の動きを抽出することができる。
【0031】
以上に示したように、本実施形態に係る生体情報測定装置1では、流体室C3(小領域ARp1及び小領域ARp3)が、第1生体情報FAにおける第2の被験者HBの身体の動きを表す成分の占める割合が小さくなるように設けられ、流体室C4(小領域ARp2及び小領域ARp4)が、第2生体情報FBにおける第1の被験者HAの身体の動きを表す成分の占める割合が小さくなるように設けられる。すなわち、第1生体情報FAは、第1の被験者HAの身体の動きを表すものと看做すことができ、第2生体情報FBは、第2の被験者HBの身体の動きを表すものと看做すことができる。これにより、本実施形態に係る生体情報測定装置1は、同一の寝具M上に横臥する第1の被験者HA及び第2の被験者HBの各々の身体の動きを同時に測定することができる。
【0032】
ここで、
図6に示す体動検出部10aを備える生体情報測定装置(以下、対比例1に係る生体情報測定装置と称する)により、第1生体情報FA及び第2生体情報FBを生成する場合を検討する。体動検出部10aは、圧力検出部P3及び圧力検出部P4を具備せずに、圧力検出部P1及び圧力検出部P2のみを具備する。
対比例1に係る生体情報測定装置が備える体動情報分離部は、まず、流体室C1の圧力変化に対して第2の被験者HBの身体の動きが寄与する割合を示す値である係数k1を算出する。そして、対比例1に係る生体情報測定装置が備える体動情報分離部は、圧力検出部P2が出力する出力信号F2の示す値に係数k1を積算した値を、圧力検出部P1が出力する出力信号F1の示す値から減算することで、第1生体情報FAを生成する。また、対比例1に係る生体情報測定装置が備える体動情報分離部は、流体室C2の圧力変化に対して第1の被験者HAの身体の動きが寄与する割合を示す値である係数k2を算出したうえで、出力信号F1の示す値に係数k2を積算した値を出力信号F2の示す値から減算することで、第2生体情報FBを生成する。
これに対して、本実施形態に係る、出力信号F1の示す値から出力信号F3の示す値を減算するという簡易な計算によって、第1生体情報FAを生成するとともに、出力信号F2の示す値から出力信号F4の示す値を減算するという簡易な計算によって、第2生体情報FBを生成する。すなわち、本実施形態に係る生体情報測定装置1は、圧力検出部P3及び圧力検出部P4を備えることにより、簡易な計算により第1生体情報FA及び第2生体情報FBを生成することができ、体動情報分離部21の処理負荷を軽減することが可能となる。
【0033】
また、本実施形態に係る生体情報測定装置1は、
図4に示すように、4つの圧力検出部P1〜P4を備える。そして、小領域ARp3の面積Sp3が小領域ARp1の面積Sp1に比べて大きくなるように圧力検出部P3の流体室C3を設けることで、関数FA(t)における関数B(t)の項の大きさを小さくすることができる。また、小領域ARp2の面積Sp2が小領域ARp4の面積Sp4に比べて大きくなるように圧力検出部P4の流体室C4を設けることで、関数FB(t)における関数A(t)の項の大きさを小さくすることができる。
【0034】
ここで、
図7に示す体動検出部10bを備える生体情報測定装置(以下、対比例2に係る生体情報測定装置と称する)により、第1生体情報FAb及び第2生体情報FBbを生成する場合を検討する。
図7に示す体動検出部10bは、圧力検出部P3及び圧力検出部P4の代わりに、圧力検出部P5を備える点を除き、
図4に示す体動検出部10と同様に構成される。圧力検出部P5は、流体室C5と、流体室C5の内部の圧力変化を検知する信号生成部D5とを備える。また、流体室C5のうち、平面視して第1領域AR1と重なる領域を小領域ARp5と称し、平面視して第2領域AR2と重なる領域を小領域ARp6と称する。圧力検出部P5は出力信号F5を出力する。時刻tにおける出力信号F5の大きさを表す関数F5(t)は、以下の式(13)で表される。なお、以下の式(13)に現れる係数k7及び係数k8は「0」よりも大きな実数である。
F5(t)= k7×A(t)+k8×B(t) ……(13)
また、対比例2に係る生体情報測定装置が備える体動情報分離部は、出力信号F1及び出力信号F5に基づいて第1生体情報FAbを生成し、出力信号F2及び出力信号F5に基づいて第2生体情報FBbを生成する。時刻tにおける第1生体情報FAbの値を表す関数FAb(t)は、以下の式(14)で表され、時刻tにおける第2生体情報FBbの値を表す関数FBb(t)は、以下の式(15)で表される。
FAb(t) = F1(t)−F5(t)
= {1−k7}×A(t)
+{k1−k8}×B(t) ……(14)
FBb(t) = F2(t)−F5(t)
= {1−k8}×B(t)
+{k2−k7}×A(t) ……(15)
【0035】
関数FAb(t)において関数B(t)の項の大きさを小さくするためには、以下の式(16)を満たす必要がある。また、関数FBb(t)において関数A(t)の項の大きさを小さくするためには、以下の式(17)を満たす必要がある。
k8 > k7 ……(16)
k7 > k8 ……(17)
しかし、式(16)及び式(17)を同時に満たすことはできないため、係数k7及び係数k8は、以下の式(18)を満たすような値に定められる。すなわち、体動検出部10bにおいて、小領域ARp5及び小領域ARp6が等しい面積となるように、流体室C5が設けられる。
k7 = k8 ……(18)
【0036】
図8乃至
図11は、実施形態に係る生体情報測定装置1と、対比例2に係る生体情報測定装置とを比較するために行ったシミュレーションの前提及び結果を表すグラフである。当該シミュレーションは、関数A(t)及び関数B(t)が前提条件として与えられた場合に、実施形態に係る生体情報測定装置1が生成する第1生体情報FAの値を表す関数FA(t)と、対比例2に係る生体情報測定装置が生成する第1生体情報FAbの値を表す関数FAb(t)とのいずれが、関数A(t)に近い形状を有するかについて、比較する。
【0037】
図8は、本シミュレーションの前提条件である関数A(t)を表すグラフであり、縦軸は関数A(t)の大きさを、横軸は時間tを表す。上述のとおり、関数A(t)とは、寝具M上に第1の被験者HAのみが横臥している場合の、出力信号F1の大きさを表す関数である。
なお、このシミュレーションは、被験者の身体の動きが、脈拍及び呼吸のみの場合を想定する。すなわち、関数A(t)は、第1の被験者HAの呼吸に起因する流体室C1の圧力変化を示す波形、及び、第1の被験者HAの脈拍に起因する流体室C1の圧力変化を示す波形を、重畳させた波形を表す。
また、図において、関数A(t)の表す波形の上側ピーク及び下側ピークに対して、「○」印を付している。呼吸を表す波形は、脈拍を表す波形に比べて振幅が大きいため、「○」印を付した部分は、第1の被験者HAの呼吸を表す波形のピークと看做すことができる。すなわち、第1の被験者HAの呼吸を表す波形は、4つの上側ピークと4つの下側ピークを有しており、時刻t=0から時刻t=15に至るまでの期間において第1の被験者HAが4回の呼吸を行ったことを表している。
図9は、関数B(t)を表すグラフであり、縦軸は関数B(t)の大きさを、横軸は時間tを表す。なお、関数B(t)とは、寝具M上に第2の被験者HBのみが横臥している場合の、出力信号F2の大きさを表す関数である。この図に示すように、第2の被験者HBの呼吸を表す波形は、3個の上側ピークと2個の下側ピークとを有している。
【0038】
図10は、本実施形態に係る生体情報測定装置1が算出する第1生体情報FAの示す値の経時的な変化を表す波形、すなわち、関数FA(t)を表すグラフである。なお、本シミュレーションでは、関数FA(t)の算出にあたり、係数k1を「0.1」に、係数k3を「0.2」に、係数k4を「0.6」にそれぞれ設定した。
図10に示すように、関数FA(t)の表す波形は、4個の上側ピークと4個の下側ピークとを有する。すなわち、
図10に示す波形のピークの個数と、
図8に示す波形のピークの個数とは一致する。従って、関数FA(t)により、第1の被験者HAが時刻t=0から時刻t=15に至るまでの期間において行った呼吸の回数を検知することができる。
図11は、対比例2に係る生体情報測定装置が算出する第1生体情報FAbの大きさの値な変化を表す波形、すなわち、関数FAb(t)を表すグラフである。なお、本シミュレーションでは、関数FAb(t)の算出にあたり、係数k1を「0.1」に、係数k7を「0.6」に、係数k8を「0.6」にそれぞれ設定した。
図11に示すように、関数FAb(t)の表す波形は、2個の上側ピークと、3個の下側ピークとを有する。すなわち、
図11に示す波形のピークの個数と、
図8に示す波形のピークの個数とは一致しない。従って、関数FAb(t)より、第1の被験者HAが時刻t=0から時刻t=15に至るまでの期間において行った呼吸の回数を検知することはできない。
【0039】
このように、対比例2に係る生体情報測定装置は、体動検出部10bが3つの圧力検出部P1、P2、P5しか備えないため、第1の被験者HAの身体の動きと、第2の被験者HBの身体の動きを正確に分離することができないのに対して、本実施形態に係る生体情報測定装置1は、体動検出部10が4つの圧力検出部P1〜P4を備え、上述した式(9)及び式(12)に示す条件を満たすように流体室C3及び流体室C4が設けられるため、第1の被験者HAの身体の動きと、第2の被験者HBの身体の動きとを分離することができる。すなわち、本実施形態に係る生体情報測定装置1は、同一の寝具M上に横臥する第1の被験者HA及び第2の被験者HBの各々の身体の動きを同時に測定することができる。
【0040】
<変形例>
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、例えば次に述べるような各種の変形が可能である。また、次に述べる変形の態様は、任意に選択された一または複数を、適宜に組み合わせることもできる。
【0041】
<変形例1>
上述した実施形態に係る信号抽出部22は、2名の被験者の各々の脈拍信号、呼吸信号、及び、体動信号を生成するが、脈拍信号、呼吸信号、及び、体動信号のうち少なくとも1つを生成するものであってもよい。
【0042】
<変形例2>
上述した実施形態及び変形例では、体動検出部10と制御ボックス30とは別体として形成されるが、一体として形成されるものであってもよい。この場合、制御ボックス30は体動検出部10とともに寝具Mの下に配置されてもよい。
【0043】
<変形例3>
上述した実施形態及び変形例では、制御ボックス30は、演算処理部20、操作部31、及び、表示部32を備えたが、少なくとも、演算処理部20を備えるものであればよい。
【0044】
<変形例4>
上述した実施形態及び変形例では、演算処理部20は、体動情報分離部21と、信号抽出部22とを備えたが、少なくとも、体動情報分離部21を備えるものであればよい。この場合、生体情報測定装置1は、第1生体情報FA及び第2生体情報FBを出力する。
【0045】
<変形例5>
上述した実施形態及び変形例に係る体動検出部10は、
図4に示すように、第3領域AR3のほぼ全域に流体室C3または流体室C4が設けられたが、第3領域AR3の一部の領域のみに流体室C3または流体室C4が設けられるものであってもよい。
図12は、変形例5に係る体動検出部10cを示す平面図である。体動検出部10cは、圧力検出部P3及び圧力検出部P4の代わりに、流体室C3cを有する圧力検出部P3c及び流体室C4cを有する圧力検出部P4cを備える点を除き、
図4に示す体動検出部10と同様に構成される。
図12に示すように、流体室C3c及び流体室C4cは、第3領域AR3の一部の領域に設けられる。変形例5に係る体動検出部10cは、実施形態に係る体動検出部10と同様に、小領域ARp3の面積Sp3が小領域ARp1の面積Sp1よりも大きく、小領域ARp2の面積Sp2が小領域ARp4の面積Sp4よりも大きいため、第1の被験者HA及び第2の被験者HBの各々の身体の動きを同時に測定することができる。
【0046】
いずれにしても、流体室C3は、小領域ARp1及び小領域ARp3が、式(9)に示す条件を満たすように(すなわち、平面視したときの小領域ARp3の面積Sp3が小領域ARp1の面積Sp1よりも大きくなるように)設けられれば、どのような形状であってもよく、流体室C4は、小領域ARp2及び小領域ARp4が、式(12)に示す条件を満たすように(すなわち、平面視したときの小領域ARp2の面積Sp2が小領域ARp4の面積Sp4よりも大きくなるように)設けられれば、どのような形状であってもよい。
また、流体室C1〜C4は、平面視したときに互いに重なる部分を有していても構わない。
【0047】
<変形例6>
上述した実施形態及び変形例では、流体室C3(流体室C3c)は、小領域ARp1及び小領域ARp3が、式(9)に示す条件を満たすように設けられ、流体室C4(流体室C4c)は、小領域ARp2及び小領域ARp4が、式(12)に示す条件を満たすように設けられたが、本発明はこのような形態に限定されるものではなく、流体室C3(流体室C3c)は、式(7)に示す関数FA(t)における関数B(t)の項「{k1−k4}×B(t)」の大きさが小さくなるように設けられればよく、流体室C4(流体室C4c)は、式(10)に示す関数FB(t)における関数A(t)の項「{k2−k5}×A(t)」の大きさが小さくなるように設けられればよい。
例えば、以下の条件を満たす係数k3及び係数k4が得られるように、流体室C3及び流体室C4を配置してもよい。
【0048】
関数F1(t)において、関数A(t)に付与される係数「1」の大きさと、関数B(t)に付与される係数「k1」の大きさとの比率を表す値α1を、以下の式(19)のように定め、関数FA(t)において、関数A(t)に付与される係数「1−k3」の大きさと、関数B(t)に付与される係数「k1−k4」の大きさとの比率を表す値α2を、以下の式(20)のように定める。このとき、値α1及び値α2が以下の式(21)に示す条件を満たせば、関数FA(t)の大きさに対する関数B(t)の項の大きさの占める割合を、関数F1(t)の大きさにおける関数B(t)の項の大きさの占める割合に比べて小さくすることができる。
α1 = k1 ……(19)
α2 = |k1−k4|/|1−k3| ……(20)
α1 > α2 ……(21)
式(21)は、以下の式(22)に変形される。
k4 < {2−k3}×k1 ……(22)
すなわち、式(22)を満たすように流体室C3を配置することで、第1の被験者HAの身体の動きを正確に表す第1生体情報FAを生成することが可能となる。
【0049】
同様に、関数F2(t)において、関数B(t)に付与される係数「1」の大きさと、関数A(t)に付与される係数「k2」の大きさとの比率を表す値β1を、以下の式(23)のように定め、関数FB(t)において、関数B(t)に付与される係数「1−k6」の大きさと、関数A(t)に付与される係数「k2−k5」の大きさとの比率を表す値β2を、以下の式(24)のように定める。このとき、値β1及び値β2が以下の式(25)に示す条件を満たせば、関数FB(t)の大きさに対する関数A(t)の項の大きさの占める割合を、関数F2(t)の大きさに対する関数A(t)の項の大きさの占める割合に比べて、小さくすることができる。
β1 = k2 ……(23)
β2 = |k2−k5|/|1−k6| ……(24)
β1 > β2 ……(25)
式(25)は、以下の式(22)に変形される。
k5 < {2−k6}×k2 ……(26)
すなわち、式(26)を満たすように流体室C4を配置することで、第2の被験者HBの身体の動きを正確に表す第2生体情報FBを生成することが可能となる。