(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記堆積判定手段によって尿素が堆積していると判定された際に、運転者に対して警報を発する警告手段を更に備えることを特徴とする請求項1〜3のうち何れか一項に記載の内燃機関の排ガス浄化装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載の浄化装置では、尿素の堆積量の推定値を取得することはできるが、実測値ではないため、推定値が実際の堆積量と大きく異なる場合があり、尿素の堆積量の信頼性が低いという問題点があった。
【0007】
そこで、本発明は、このような問題を解決するものであって、尿素の堆積を精度良く検出可能な内燃機関の排ガス浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決する本発明に係る内燃機関の排ガス浄化装置は、
内燃機関の排ガス通路に設けられ、排ガスに含まれるNOxを還元する還元触媒と、
前記排ガス通路の前記還元触媒よりも上流の部分に尿素水を供給する尿素水供給手段と、
前記尿素水供給手段から前記排ガス通路に供給された尿素水に含まれる供給尿素量を算出する供給尿素量算出手段と、
前記還元触媒で浄化されたNOx量を算出するNOx量算出手段と、
前記NOx量算出手段により算出されたNOx量の浄化に必要な有効尿素量を算出する有効尿素量算出手段と、
前記排ガス通路の前記還元触媒よりも下流を流れる排ガスに含まれるアンモニア量の生成に必要な無効尿素量を算出する無効尿素量算出手段と、
前記供給尿素量算出手段により算出された供給尿素量、前記有効尿素量算出手段により算出された有効尿素量、及び前記無効尿素量算出手段により算出された無効尿素量に基づいて、前記排ガス通路への尿素の堆積を判定する堆積判定手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
上記内燃機関の排ガス浄化装置によれば、供給尿素量算出手段と、有効尿素量算出手段と、無効尿素量算出手段とを備えているため、それぞれ排ガス中に供給した尿素水に含まれる供給尿素量、NOxの浄化に必要な有効尿素量、及び還元触媒をスリップしたアンモニアの生成に必要な無効尿素量を算出することができる。
また、堆積判定手段にて、供給尿素量、有効尿素量及び無効尿素量に基づいて尿素の堆積の判定をすることで、精度良く尿素の堆積を検出することができる。これにより、尿素の堆積によって還元触媒に供給されるアンモニアの量が不足して排ガス浄化率が低下することを防止できる。また、尿素が堆積して排ガス通路が閉塞することを防止できる。
【0010】
また、前記堆積判定手段は、
前記供給尿素量算出手段により算出された供給尿素量から、前記有効尿素量算出手段により算出された有効尿素量及び前記無効尿素量算出手段により算出された無効尿素量を減算して堆積尿素量を算出し、
当該堆積尿素量の値が第1閾値以上の場合に、尿素が前記排ガス通路内に堆積していると判定することとしてもよい。
【0011】
このように、堆積判定手段は、供給尿素量から、有効尿素量及び無効尿素量を減算することで、排ガス通路内に堆積された堆積尿素量を精度良く算出することができる。
そして、堆積判定手段にて、堆積尿素量の値が第1閾値以上の場合に尿素が堆積していると判定するため、尿素の堆積を短時間で検出するこができる。
【0012】
また、前記堆積判定手段は、
前記堆積尿素量の値が所定回数以上連続して前記第1閾値以上となる場合に前記尿素が堆積していると判定することとしてもよい。
【0013】
堆積した尿素は昇華したり、新たに供給された尿素水に溶け込んで蒸発したりする。このため、堆積尿素量の値が所定回数以上連続して第1閾値以上となる場合に、尿素が堆積していると判定することで、尿素の堆積をより正確に判定することができる。
【0014】
また、前記無効尿素量算出手段は、
前記排ガス通路の前記還元触媒よりも下流を流れる排ガスに含まれるアンモニア量の生成に必要な尿素量を加水分解反応のモル比に応じて算出して前記無効尿素量とすることとしてもよい。
【0015】
このように、無効尿素量算出手段は、排ガス通路の還元触媒よりも下流を流れる排ガスに含まれるアンモニア量の生成に必要な尿素量を加水分解反応のモル比に応じて算出するため、正確な有効尿素量を短時間で算出することができる。
【0016】
また、前記NOx量算出手段は、前記内燃機関の直下流のNOx量から前記還元
触媒よりも下流のNOx量を減算して前記還元触媒で浄化されたNOx量を算出することとしてもよい。
【0017】
このように、NOx量算出手段は、内燃機関の直下流のNOx量から還元
触媒よりも下流のNOx量を減算して算出するため、浄化されたNOx量を正確に取得することができる。
【0018】
また、前記堆積判定手段によって尿素が堆積していると判定された際に、運転者に対して警報を発する警告手段を更に備えることとしてもよい。
【0019】
このように、警告手段を備えているため、運転者は尿素の堆積を直ちに検知することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、尿素の堆積を精度良く検出可能な内燃機関の排ガス浄化装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る内燃機関の排ガス浄化装置について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0023】
<排ガス浄化装置の構成>
図1は、本発明の実施形態に係る排ガス浄化装置が適用されたエンジンシステムの概略全体構成図である。また、
図2は、判定ユニットの各部にて算出される算出結果及びその出力先を示す図である。
図1及び
図2に示すように、ディーゼルエンジン(以下、エンジン1という)の排ガス浄化装置2は、前段酸化触媒4と、パティキュレートフィルタ(以下フィルタ6という)と、SCR(Selective Catalytic Reduction)触媒8と、後段酸化触媒10と、を備えている。
【0024】
エンジン1は、燃料の噴射時期及び噴射量がECU(Electronic
Control Unit)12によって電子制御されており、かかる噴射時期及び噴射量にて燃焼室5毎に設けられた燃料噴射弁3から、燃焼室5内に燃料が噴射される。
ECU12は、図示しない中央処理装置(CPU)、制御プログラムや制御マップ等を格納する記憶装置、走行距離カウンタ及びタイマカウンタ等を備えている。そして、ECU12は、エンジン1の運転条件や運転者の要求に応じてエンジン1の運転状態を制御する。
【0025】
エンジン1の各燃焼室5から排気が排出される排気ポート(図示せず)は、排気マニホールド9を介して排ガス通路16に接続されている。
排ガス通路16は、ターボチャージャ7のタービン7aを経由して排ガス浄化装置2に接続されている。また、タービン7aはコンプレッサ7bと機械的に連結されており、タービン7aが排ガス通路16内を流動する排気を受けてコンプレッサ7bを駆動する。
【0026】
排ガス浄化装置2は、排ガス通路16に設けられた筒状の上流側ケーシング14及び当該上流側ケーシング14よりも下流に設けられた筒状のSCR用ケーシング18を備えている。
【0027】
上流側ケーシング14内には、前段酸化触媒4が収容されると共に、この前段酸化触媒4よりも下流にはフィルタ6が収容されている。
フィルタ6は、排ガス中のPM(Paticulate Matter:粒子状物質)を捕集する。このフィルタ6はハニカム型のセラミック体からなり、上流側と下流側とを連通する通路が多数並設されると共に、この通路の上流側開口と下流側開口とが交互に閉鎖されており、エンジン1の排ガスが内部を流通することによって排ガス中のPMが捕集される。
【0028】
前段酸化触媒4は排ガス中のNO(一酸化窒素)を酸化させてNO
2(二酸化窒素)を生成する。このため、前段酸化触媒4の下流にフィルタ6を配置することにより、フィルタ6に捕集され堆積しているPMは、前段酸化触媒4から供給されたNO
2と反応して酸化し、これによってフィルタ6の連続再生が行われる。また、前段酸化触媒4で生成されたNO
2(二酸化窒素)は、NOxのNO
2比率を増大しNOxの浄化効率の向上に貢献している(最も浄化効率が高くなるNO
2比率は50%)。
【0029】
また、SCR用ケーシング18内には、NH
3(アンモニア)を還元剤として、排ガス中のNOxを選択還元して排ガスを浄化するSCR触媒8が収容されている。
そして、SCR用ケーシング18よりも下流の排ガス通路16には、後段酸化触媒10を収容するための筒状の下流側ケーシング38が設けられている。
【0030】
後段酸化触媒10は、SCR触媒8を通過したNH
3を排ガス中から除去する機能を有している。また、後段酸化触媒10は、フィルタ6の強制再生でPMが焼却される際に発生するCO(一酸化炭素)を酸化し、CO
2(二酸化炭素)として大気中に排出する機能も有している。
【0031】
また、排ガス浄化装置2は、SCR触媒8と後段酸化触媒10との間の排ガス通路16に設けられ、排ガス中に含まれるNOxの濃度を計測するNOxセンサ46と、SCR触媒8の直上流に設けられ、SCR触媒8に流入する排ガスの温度を検出する温度センサ28と、排ガス通路16のフィルタ6とSCR触媒8との間の部分に尿素水を噴射する噴射装置20と、を備えている。噴射装置20の噴射量及び噴射時期等は、ECU12に備えられている尿素水制御部22にて制御される。
【0032】
温度センサ28による計測結果は、温度センサ28から尿素水制御部22へ向けて出力される。尿素水制御部22は、温度センサ28による計測結果に基づいて、噴射装置20から尿素水を供給するか否かを決定する。
【0033】
噴射装置20は、排ガス通路16のフィルタ6とSCR触媒8との間の部分に設けられた尿素水インジェクタ24と、尿素水インジェクタ24に尿素水を供給する尿素水供給用ポンプ25と、尿素水供給用ポンプ25から供給される尿素水の流量を調整する制御弁21と、尿素水供給用ポンプ25から供給される尿素水の流量を計測する尿素水流量計23と、尿素水を貯留する尿素水タンク26と、を備えている。
【0034】
尿素水制御部22は、温度センサ28の計測結果に基づいて、排ガスの温度が尿素水を加水分解可能な温度以上か否かを判定する。そして、排ガスの温度が加水分解可能な温度以上であると判定した場合に、尿素水供給用ポンプ25を稼働させて尿素水を排ガス中に供給する。このとき、尿素水供給用ポンプ25から供給される尿素水量を制御弁21により制御することにより、NOxを還元するために必要な量の尿素水を供給する。この制御弁21は、尿素水制御部22により制御される。
そして、尿素水流量計23による計測結果は、尿素水流量計23から尿素水制御部22及び判定ユニット13へ向けて出力される。なお、本実施形態では、尿素水供給用ポンプ25から供給される尿素水の流量を計測する尿素水流量計23を設けた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、尿素水の供給量を計測可能なメータリングユニットを備えた尿素水供給用ポンプを用いてもよい。要は、尿素水供給用ポンプから供給される尿素水の流量を計測できる機能を備えていればよい。
【0035】
尿素水供給用ポンプ25から供給された尿素水は、ミキシングチャンバー29にて圧縮エアと混合され、供給管31を通過後、尿素水インジェクタ24からSCR触媒8よりも上流の排ガス通路16の部分に供給される。
使用すべき正規の尿素水の濃度は、予め定められており、本実施形態では、尿素の飽和状態である32.5%とした。以下、濃度32.5%を規定濃度という。なお、本実施形態では、規定濃度を32.5%としたが、この値に限定されるものではなく、32.5%未満としてもよいが、尿素水の消費量が増加するため、32.5%に近い値であることが望ましい。
【0036】
次に、尿素の堆積を判定する判定ユニット13について説明する。
判定ユニット13は、ECU12内に備えられている。そして、判定ユニット13は、NOx量算出部15と、有効尿素量算出部17とを備えている。
【0037】
NOxセンサ46による計測結果は、NOxセンサ46から判定ユニット13へ向けて出力される。判定ユニット13のNOx量算出部15は、NOxセンサ46により計測されたNOx濃度及びエンジン1から排出される排ガスに含まれる第1NOx量(後述する)に基づいて、SCR触媒8にて浄化された浄化NOx量を算出する。浄化NOx量を算出する算出方法について以下に説明する。
【0038】
まず、エンジン1から排出される単位時間当たりのNOx量として第1NOx量を決定する。エンジン1から排出されるNOx量は、エンジン1の回転速度や燃料噴射量、即ちエンジン1の運転状態から決定することができる。具体的には、エンジン1の運転状態とNOx量との関係を示すマップ等に基づいて第1NOx量を決定する。エンジン1の運転状態とNOx量との関係が示されたマップ等はECU12内の上記記憶装置に格納されている。
なお、本実施形態では、エンジン1の運転状態から第1NOx量を定める場合について説明したが、この方法に限定されるものではなく、例えば、タービン7aの直上流の排ガス通路16の部分にNOxセンサを設け、当該NOxセンサにより計測された計測値に、単位時間当たりの排ガス流量を乗算して、エンジン1から排出される単位時間当たりの第1NOx量を算出してもよい。
【0039】
また、NOx量算出部15は、NOxセンサ46により計測された計測値に、単位時間当たりの排ガス流量を乗算して、SCR触媒8を通過した排ガス中に含まれる単位時間当りの第2NOx量を算出する。
【0040】
第1NOx量及び第2NOx量をそれぞれ、予め設計等により決定された所定の走行距離(例えば、30km)にわたって積算する。車両の走行距離は、ECU12の上記走行距離カウンタにより計測される。第1NOx量及び第2NOx量を所定の走行距離にわたって積算することで、SCR触媒8に貯蔵されるNH
3量を無視することができる。以下の説明では、所定の走行距離にわたって積算された第1NOx量及び第2NOx量をそれぞれ第1NOx積算量及び第2NOx積算量という。
【0041】
次に、SCR触媒8にて浄化された所定の走行距離当たりの浄化NOx量を次式(1)より算出する。
浄化NOx量=第1NOx積算量−第2NOx積算量・・・式(1)
この浄化NOx量は、所定の走行距離毎に算出される。
【0042】
所定の走行距離毎に算出された浄化NOx量は、ECU12の上記記憶装置に格納される。また、記憶装置には、所定の走行距離を積算した総走行距離情報(例えば、30、60、90・・・(km))が格納されている。そして、総走行距離情報に対応する浄化NOx量(即ち所定の走行距離毎に算出された浄化NOx量)が、各総走行距離情報のそれぞれに紐付けられて記憶装置に格納される。なお、総走行距離情報は、SCR触媒8を再生又は交換する際にリセットされる。
【0043】
そして、算出された浄化NOx量は、NOx量算出部15から有効尿素量算出部17に向けて出力される。
【0044】
有効尿素量算出部17は、NOx量算出部15により算出された浄化NOx量に基づいて、当該浄化NOx量の浄化に必要な有効尿素量Anを算出する。具体的に1モルの尿素は、2モルのNOxと反応して浄化される(即ち、尿素1モルに対してNOxの2モルが1等量となる)ため、有効尿素量Anを次式(2)により算出する。なお、NOxはNO
2と仮定し分子量を46g/molとし、尿素の分子量を60g/molとした。
An=(浄化NOx量/(46×2))×60×β ・・・式(2)
ここで、Anは有効尿素量(g)であり、浄化NOx量は上記式(1)から算出される値(g)である。また、値46はNO
2の分子量(g)、値2はモル数、値60は尿素の分子量(g)である。そして、βは実験等から求められる係数である。係数βの値は予め決定されている。
【0045】
続いて、有効尿素量算出部17は、上記式(2)により算出された有効尿素量Anに基づいて、当該有効尿素量Anの発生に必要な規定濃度の必要尿素水量Unを次式(3)により算出する。
Un=An×(1/0.325) ・・・式(3)
ここで、Unは、必要尿素水量(g)であり、値0.325は、尿素水の規定濃度である。算出された有効尿素量An及び必要尿素水量Unは、有効尿素量算出部17からそれぞれ堆積判定部35(後述する)及び尿素水制御部22に向けて出力される。
【0046】
尿素水制御部22は、有効尿素量算出部17により算出された必要尿素水量に基づいて噴射装置20の尿素水供給用ポンプ25及び制御弁21を制御し、必要尿素水量の尿素水をフィルタ6とSCR触媒8との間の排ガス通路16内の排ガス中に供給する。
排ガス中に供給された尿素水は霧化し、排ガスの熱により加水分解してNH
3となってSCR触媒8に供給される。SCR触媒8は、NH
3と排ガス中のNOxとの脱硝反応を促進することにより、NOxを還元して無害なN
2とする。なお、このときNH
3がNOxと反応せずにSCR触媒8から流出した場合には、このNH
3が後段酸化触媒10によって排ガス中から除去される。
【0047】
ところで、尿素水タンク26内の尿素水の濃度が規定濃度よりも低い場合や尿素水と間違って水等が補充されている場合等、SCR触媒8のNOx浄化率が低下してしまう。NOx浄化率が低下するとアンモニアスリップが発生する。アンモニアスリップが発生すると脱硝反応に寄与しないNH
3がSCR触媒8を通過する。
【0048】
そこで、排ガス浄化装置2は、尿素水の濃度及びSCR触媒8を通過したNH
3の濃度を常時計測している。具体的に、排ガス浄化装置2は、尿素水タンク26に設けられ、尿素水の濃度を計測する尿素水濃度センサ11と、SCR触媒8と後段酸化触媒10との間の排ガス通路16に設けられ、排ガス中に含まれるNH
3の濃度を計測するNH
3センサ27と、を備えている。
尿素水濃度センサ11による計測値は常時、監視されており、尿素水の濃度が所定値よりも小さくなったら警告ランプ等により直ちに濃度低下を検知することができる。
そして、尿素水濃度センサ11による計測値は、尿素水濃度センサ11から後述する供給尿素量算出部19へ向けて出力される。
また、NH
3センサ27による計測値は、NH
3センサ27から後述する無効尿素量算出部30へ向けて出力される。
【0049】
次に、供給尿素量算出部19及び無効尿素量算出部30について説明する。
判定ユニット13は、供給尿素量算出部19と、無効尿素量算出部30とを更に備えている。
供給尿素量算出部19は、尿素水濃度センサ11及び尿素水流量計23によりそれぞれ計測された尿素水濃度及び尿素水量に基づいて排ガス通路16内に供給された尿素水に含まれる供給尿素量Qnを次式(4)により算出する。
Qn=Wu×Cu ・・・式(4)
ここで、Qnは供給尿素量(g)であり、Wuは排ガス通路16内に供給された尿素水量(g)であり、尿素水流量計23により計測された値である。また、Cuは尿素水濃度センサ11により計測された値(%/100)である。
算出された供給尿素量Qnは、供給尿素量算出部19から堆積判定部35に向けて出力される。
【0050】
また、無効尿素量算出部30は、NH
3センサ27により計測されたNH
3濃度に基づいてSCR触媒8を通過したアンモニアの生成に必要な無効尿素量Snを次式(5)により算出する。
Sn=(((NH
3濃度×Egas)/10
6)/22.4)×(1/2)×60 ・・・式(5)
ここで、Snは無効尿素量(g)である。また、NH
3濃度はNH
3センサ27により計測された値(ppm)であり、EgasはSCR触媒8と後段酸化触媒10との間の排ガス通路16を通過する排ガスの体積流量を標準状態(10℃、1atm)に換算した排ガス体積流量(L)である。排ガス体積流量は、所定の時間間隔で取得され、無効尿素量算出部30に格納される。また、値22.4は標準状態(10℃、1atm)における1モルの体積(L)、値2はモル数、値60は尿素の分子量(g)である。
算出された無効尿素量Snは、無効尿素量算出部30から堆積判定部35に向けて出力される。
【0051】
次に、堆積判定部35について説明する。
ECU12の判定ユニット13は、堆積判定部35を更に備えている。堆積判定部35は、無効尿素量算出部30により算出された無効尿素量Sn、供給尿素量算出部19により算出された供給尿素量Qn、及び有効尿素量算出部17により算出された有効尿素量Anに基づいて次式(6)にて、排ガス通路16等に堆積する尿素の堆積尿素量Duを算出する。
Du =Qn−An−Sn+γ ・・・式(6)
ここで、Duは堆積尿素量(g)である。また、Qnは供給尿素量算出部19より算出された供給尿素量(g)であり、Anは有効尿素量算出部17より算出された有効尿素量(g)であり、Snは無効尿素量算出部30により算出された無効尿素量(g)である。そして、γは実験等から求められる係数である。係数γの値は予め決定されている。
【0052】
堆積尿素量Duは、ECU12の記憶装置内の対応する総走行距離情報に紐付けられて記憶装置に格納される。
【0053】
次に、堆積判定部35は、算出された堆積尿素量Duに基づいて、総走行距離と堆積尿素量Duとの関係を示すマップを作成するとともに、堆積尿素量Duが第1閾値以下か否かを判定する。
【0054】
<尿素の堆積判定について>
図3は、総走行距離と堆積尿素量との関係を示すマップである。
図3に示すように、堆積判定部35は、ECU12の記憶装置に格納されている総走行距離情報、及び当該総走行距離情報に紐付けられた堆積尿素量Duに基づいてマップを作成する。
そして、堆積尿素量Duが第1閾値未満である場合、尿素は堆積していないとして、この判定結果を記憶装置に格納する。判定結果は、対応する総走行距離情報に紐付けられて格納される。また、運転席付近に設置された緑色の正常ランプ36を点灯させて、尿素は堆積していないことを表示する。なお、本実施形態では、堆積尿素量Duが第1閾値未満のときに正常ランプ36を点灯させる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、正常ランプ36を点灯させる等の対策を実施しなくても良い。なお、第1閾値は、設計等により決定される値である。
【0055】
一方、堆積尿素量Duが第1閾値以上である場合、尿素が堆積していると判定して、この判定結果を記憶装置の対応する総走行距離情報に紐付けて格納するとともに、第1閾値以上であると判定した判定回数Naをカウントする。例えば、堆積尿素量Duが第1閾値以上であると最初に判定された場合、判定回数Naは1となる。そして、所定距離を走行した後、再び堆積尿素量Duを算出したときに、新たな堆積尿素量Duが第1閾値以上であると判定された場合、判定回数Naは2となる。ただし、堆積尿素量Duが第1閾値以上であると判定されて、所定距離を走行した後、再び堆積尿素量Duを算出したときに、堆積尿素量Duが第1閾値未満であると判定された場合、判定回数Naはリセットされて0(ゼロ)となる。
そして、堆積判定部35は、判定回数Naが予め設定された所定回数Nth(例えば、4回)以上になったら、運転席付近に設置された警告ランプ37を点滅又は点灯させて、尿素が堆積していることを運転手に警告する。
【0056】
堆積した尿素を除去した後には、走行距離カウンタは車両の総走行距離を0(ゼロ)にリセットし、新たに総走行距離の計測を開始する。
【0057】
<尿素の堆積判定フローについて>
次に、上述した構成からなる排ガス浄化装置2を用いた尿素の堆積判定フローについて
図4を用いて説明する。
【0058】
図4に示すように、まず、第1閾値Dth及び連続して第1閾値Dth以上となった場合に警告ランプ37を点滅又は点灯させる所定回数Nthを設定する。また、判定回数Naを0(ゼロ)に設定する(ステップS2)。
【0059】
次に、第1NOx量及び第2NOx量の積算を開始するとともに、NH
3濃度及び尿素水濃度の計測を開始する(ステップS4)。
【0060】
第1NOx量及び第2NOx量は、NOx量算出部15に向けて出力され、当該NOx量算出部15に格納される。また、NH
3濃度は、無効尿素量算出部30に向けて出力され、当該無効尿素量算出部30に格納される。そして、尿素水濃度は、供給尿素量算出部19に向けて出力され、当該供給尿素量算出部19に格納される。
【0061】
次に、NOx量算出部15は、第1NOx量及び第2NOx量に基づいて、第1NOx積算量及び第2NOx積算量を算出する。続いて、算出した第1NOx積算量及び第2NOx積算量に基づいて、上記式(1)より浄化NOx量を算出する(ステップS6)。
そして、算出された浄化NOx量は、NOx量算出部15から有効尿素量算出部17に向けて出力される。
【0062】
有効尿素量算出部17は、NOx量算出部15により算出された浄化NOx量に基づいて上記(2)式より、当該浄化NOx量の浄化に必要な有効尿素量を算出する(ステップS8)。
そして、算出された有効尿素量は有効尿素量算出部17から堆積判定部35に向けて出力される。
【0063】
次に、ステップS4で計測されたNH
3濃度に基づいて上記式(5)より、無効尿素量を算出する(ステップS10)。
そして、算出された無効尿素量は無効尿素量算出部30から堆積判定部35に向けて出力される。
【0064】
次に、ステップS4で計測された尿素水濃度に基づいて上記式(4)より、供給尿素量を算出する(ステップS12)。
そして、算出された供給尿素量は供給尿素量算出部19から堆積判定部35に向けて出力される。
【0065】
堆積判定部35は、供給尿素量算出部19により算出された供給尿素量、無効尿素量算出部30により算出された無効尿素量、及び有効尿素量算出部17により算出された有効尿素量に基づいて上記式(6)より、堆積尿素量Duを算出する(ステップS14)。
続いて、堆積判定部35は、算出した堆積尿素量Duが第1閾値Dth以上か否かを判定する(ステップS16)。
堆積判定部35は、堆積尿素量Duが第1閾値Dth未満である場合、尿素は堆積していないと判定して、運転席付近に設置された正常ランプ36を点灯させる(ステップS18)。
続いて、堆積判定部35は、判定回数Naをリセットして0(ゼロ)とし(ステップS20)、再び、ステップS4を実施する。
【0066】
一方、堆積判定部35は、堆積尿素量Duが第1閾値以上である場合、判定回数Naをカウントする(ステップS22)。具体的には、スリップ率Rsが第1閾値以上であると判定された場合、判定回数Naに1が加算される。例えば、スリップ率Rsが第1閾値以上であると最初に判定された場合、判定回数Naは1となる。また、所定距離を走行した後、再びスリップ率Rsを算出したときに、新たなスリップ率Rsが第1閾値以上であると判定された場合、判定回数Naに1が加算されて2となる。
【0067】
次に、堆積判定部35は、判定回数Naが所定回数Nth以上か否かを判定する(ステップS24)。
堆積判定部35は、判定回数Naが所定回数Nth以上であると判定した場合、運転席付近に設置された警告ランプ37を点滅又は点灯させて、尿素が堆積していることを表示する(ステップS26)。
一方、堆積判定部35は、判定回数Naが所定回数Nth未満であると判定した場合、再び、ステップS4を実施する。
【0068】
なお、本実施形態では、有効尿素量を算出(ステップS8)して無効尿素量を算出(ステップS10)し、その後、供給尿素量を算出(ステップS12)する順番で実施する場合について説明したが、この順番に限定されるものではない。
【0069】
<排ガス浄化装置2による効果>
上述したように、本実施形態に係る排ガス浄化装置2によれば、NOx量算出部15と、有効尿素量算出部17とを備えているため、SCR触媒8で実際に還元されたNOx量の浄化に必要な有効尿素量を正確に算出することができる。
また、尿素水濃度センサ11を備えているため、尿素水の濃度を正確に検出することができる。そして、計測値を常時、監視することで、尿素水の濃度低下を直ちに検出することができる。さらに、尿素水濃度センサ11及び尿素水流量計23による計測値を用いて、供給尿素量算出部19により排ガス中に供給された供給尿素量を算出するので、排ガス通路16内に供給した尿素量を正確に算出することができる。
また、SCR触媒8と後段酸化触媒10との間に設けられたNH
3センサ11を備えているため、SCR触媒8をスリップしたアンモニアの濃度を正確に計測することができる。そして、NH
3センサ11による計測値を用いて無効尿素量算出部30によりスリップしたアンモニアの生成に必要な無効尿素量を算出することができる。このとき、無効尿素量算出部30は、加水分解反応のモル比に応じて無効尿素量を算出するため、正確な無効尿素量を算出することができる。
そして、堆積判定部35にて、供給尿素量から、有効尿素量及び無効尿素量を減算して排ガス通路16等に堆積した堆積尿素量を算出し、当該堆積尿素量の値が所定回数連続して第1閾値以上の場合に尿素が堆積していると判定することができる。これにより、尿素が堆積したことを直ちに検出することができるため、尿素の堆積によってNH
3量が不足して排ガス浄化率が低下したり、尿素が堆積して排ガス通路16が閉塞したりすることを防止できる。
【0070】
そして、NOx量算出部15は、エンジン1の直下流のNOx量からSCR触媒8の直下流のNOx量を減算して算出するため、正確なNOx量を取得することができる。
また、尿素が堆積していないこと示す正常ランプ36及び尿素の堆積を示す警告ランプ37を備えているため、運転者は、点検等の作業をすることなく、尿素の堆積を検出することができる。
【0071】
また、現在のOBDは、NOx値の絶対量に規制を設けており、NOx量が予め設定された値を超えたときに異常である旨を出力する。NOx値が異常となる原因は、SCR触媒8の劣化、尿素の異常(濃度低下、供給量不足等)、尿素の堆積等が考えられるが、OBD自体では異常の原因について特定することができない。そこで、本発明に係る排ガス浄化装置2を用いることで、尿素の堆積を検知することができる。
【0072】
なお、本実施形態では、総走行距離を計測して所定の走行距離毎(例えば、30km毎)に尿素利用比率を算出する場合について説明したが、走行距離に限定されるものではなく、総走行時間を計測して所定の時間毎(例えば、1時間毎)に尿素利用比率を積算してもよい。かかる場合には、総走行時間は、SCR触媒8を再生又は交換する際に0(ゼロ)にリセットし、新たに総走行時間の計測を開始する。