(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用した実施形態の一例について説明する。なお、本発明の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本発明の範疇に含まれることは言うまでもない。また、以降の図における各部材のサイズや比率は、説明の便宜上のものであり、実際のものとは必ずしも一致しない。また、以降の実施形態及び実施例において、同一の要素部材には同一符号を付し、適宜その説明を省略する。また、下記の実施形態は、互いに好適に組み合わせられる。
【0014】
[第1実施形態]
図1を用いて、第1実施形態に係る混合撹拌装置の構成について説明する。図に示されるように、混合撹拌装置100は、第1収容容器1と、第2収容容器2と、反応場3と、制御装置4とを備えている。混合撹拌装置100は、複数の若しくは単一の流体を効率よくミキシングする装置である。ここで、「流体」とは、液体等の流動性のある媒体をいう。
【0015】
第1収容容器1は、流体を収容する容量を有する。また、第1収容容器1は、その容量を変える、チャージポンプを接続する、陰圧タンクに接続する、若しくは陽圧タンクに接続する等の手段によって、流体を収容する内部領域の圧力を変化させる圧力制御機構を有している。例えば、陽圧と常圧、陽圧と陰圧、常圧と陰圧等を切り替えることにより、流体を収容する内部領域の圧力を変化させる制御機構を有している。圧力制御機構は、陽圧の程度の差を利用するものでも、陰圧の程度の差を利用するものでもよい。
【0016】
第2収容容器2は、流体を収容する容量を有する。また、第2収容容器2は、その容量を変える、チャージポンプを接続する、陰圧タンクに接続する、若しくは陽圧タンクに接続する等の手段によって、混合流体を収容する内部領域の圧力を変化させ圧力制御機構を有している。例えば、陽圧と常圧、陽圧と陰圧、常圧と陰圧等を切り替えることにより、流体を収容する内部領域の圧力を変化させる制御機構を有している。圧力制御機構は、陽圧の程度の差を利用するものでも、陰圧の程度の差を利用するものでもよい。第1収容容器1及び第2収容容器2には、流体を注入するための手段(例えば、電磁弁、三方活栓)によって外部から流体を注入可能なようになっている。
【0017】
第1収容容器1と第2収容容器2のそれぞれは、例えば、円筒体のシリンジと、当該シリンジ内において摺動可能に収納されるプランジャより構成される注射器型の容器と、当該プランジャを移動させる駆動機構により構成される。なお、第1収容容器1と第2収容容器2とは、同じ構成を有するものであってもよく、異なる構成を有するものであってもよい。また、第1収容容器1と第2収容容器2の圧力制御手段は異なるものであってもよい。
【0018】
反応場3は、第1収容容器1、第2収容容器2の間に配設され、これらに接続されている。換言すると、第1収容容器1と第2収容容器2は、反応場3を介して連通している。反応場3は、混合流体のミキシングの促進や、合成反応の加速化を提供する場である。反応場3は、例えば、マイクロリアクターやマイクロミキサー等を含むマイクロ流路、混合針、及び細い硬質チューブ、混合ミキサー等が挙げられる。反応場3においても、圧力制御機構を有していてもよい。
【0019】
制御装置4は、第1収容容器1と第2収容容器2のそれぞれにおける内部圧力を制御する装置である。より具体的には、制御装置4は、第1収容容器1と第2収容容器2の圧力を制御する制御機構を有している。第1収容容器1と第2収容容器2の圧力の状態を交互に制御したり、反応場3と第1収容容器1、又は反応場3と第2収容容器2の圧力の状態を交互に制御したり、若しくは第1収容容器1、第2収容容器2、反応場3の圧力の状態を制御したりできる。制御装置4は、例えば、コントローラ等のコンピュータにより構成される。
【0020】
続いて、第1実施形態に係る混合撹拌装置の動作の一例について説明する。
まず、第1収容容器1中に第1流体を収容する。第1収容容器1に第1流体を注入する方法は、特に限定されないが、例えば、第1収容容器1と反応場3の間に三方活栓(不図示)を配置し、三方活栓と第1収容容器1間を開通することにより、三方活栓を介して第1収容容器1に流体を注入することができる。
【0021】
次に、制御装置4は、第2収容容器2を減圧して陰圧にするように、第2収容容器2を制御する。すると、第1収容容器1中の第1流体は、反応場3を介して第2収容容器に吸引力によって移動する。このとき、第2収容容器2の内部は、陰圧状態からほぼ常圧状態に遷移している。この方法により、第1収容容器1に注入した第1流体の全量を第2収容容器2に確実に移動させることができる。
【0022】
次いで、第2収容容器に第2流体を注入する。第2収容容器2に第2流体を注入する方法は特に限定されないが、例えば、三方活栓(不図示)により外部と第2収容容器2間を開通することにより、三方活栓を介して第2収容容器に第2流体を注入することができる。この工程により、第1流体と第2流体が第2収容容器2内において混合される(混合された流体を以下「混合流体」と称する)。
【0023】
次に、制御装置4は、第1収容容器1を減圧して陰圧になるように、第1収容容器1を制御する。すると、第2収容容器2中の混合流体は、反応場3に吸引されて移動する。反応場3に吸引された混合流体は、反応場3において効率的にミキシングされる。また、第1流体と第2流体の混合により反応を進行させる場合には、反応が促進される。混合流体は、第1収容容器1に少しずつ吸引され、やがて全量が第1収容容器1に収容される。このとき、第1収容容器1の内部は、陰圧状態からほぼ常圧状態に遷移している。この工程により、第2収容容器2に注入した第1流体、及び第2流体の全量を確実に移動させることができる。
【0024】
このような制御を繰り返すと、混合流体は、第1収容容器1と第2収容容器2間で移動する。その結果、反応場3を複数回に亘って通過することになり、その度に高効率に第1流体と第2流体とをミキシングさせることができる。第1流体中の物質と第2流体中の物質を合成する場合には、合成反応を加速化させることができる。
【0025】
混合撹拌装置100は、専ら単一の流体の混合撹拌のために利用してもよいし、単一の流体に、合成するための原料を投入して反応場を強制的に移動させることにより合成を促進させる目的で利用してもよい。また、複数の流体を専ら混合撹拌するために利用してもよい。さらに、合成するための原料を複数の流体に分けて混合し、反応を促進する目的で利用してもよい。また、上記例においては、第1収容容器と第2収容容器のみを用いる例を説明したが、複数の収容容器を用いて3以上の流体を混合撹拌してもよい。また、上記例においては、第1流体と第2流体をそれぞれ1回で注入する例を述べたが、複数回に分けて任意の順番に注入してもよい。
【0026】
また、上記例においては、反応場3を介して第1収容容器1と第2収容容器2間を交互に流体を移動させて混合撹拌する例を挙げたが、反応場3と第1収容容器1間を交互に移動させたり、反応場3と第2収容容器2間を移動させたりする態様としてもよい。また、反応場3を複数設ける構成としてもよい。さらに、混合流体を複数に分けて、第1収容容器1と反応場3間、第2収容容器2と反応場3間とで少量ずつ混合撹拌した後に全ての流体を混合するようにしてもよい。
【0027】
第1実施形態によれば、圧力変化を利用することにより反応場3を強制的に通過させることができるので、流体同士を高効率でミキシングすることができる。また、陽圧を用いずに常圧・陰圧を利用する場合には、仮に第1収容容器1と第2収容容器2間の配管に破損や脱落が生じたとしても、そこから外部空気が吸い込まれるだけであり、陽圧を利用する方式と比較して混合流体が配管の外側に流出しにくい。従って、安全性が高いというメリットがある。
【0028】
さらに、陰圧を利用する場合、流体中に溶存している気体の脱泡を促進することができる。これにより、特に、流体内の粒子が酸化するのを防止でき、粒子同士の接触効率を高める効果がある。さらに、陰圧を利用する方式によれば、陽圧を利用する場合に比して、各部材の機械的強度が低くてもよく、例えば、洗浄工程等を省略し、異物の混入を防ぐのに有効なディスポーザブル用のシリンジ等を利用しやすいというメリットもある。同様の理由から、汎用的なシリンジ等を用いることが可能なので、小ロット生産から大量生産まで設計変更しやすいというメリットがある。例えば、スケールが比較的小さい用途においては、プラスチック性の細胞培養の目的等で使用される安価なディスポーザブルのマイクロ流路を用いることができる。
【0029】
また、制御装置4によって、第1収容容器1と第2収容容器2とを管理できるので、無人操作や連続処理も可能であるというメリットがある。また、圧力変化により流体の全量を淀みなく移動させることができるので、第1収容容器1、第2収容容器2に注入できる限りにおいて、任意のスケールで好適に流体を混合撹拌できるという優れた点がある。
【0030】
なお、上記においては、第1収容容器1と第2収容容器2の2つの容器を用いて制御を行う方法を説明したが、3つ以上の収容容器を用いて混合撹拌を行うこともできる。即ち、それぞれの容器において、反応場3を介して切り替えにより移動可能にすることができる。また、全ての収容容器間において反応場3を介することは必須ではなく、反応場3を介さないで容器間を移動する構成が含まれていてもよい。また、第1収容容器1、第2収容容器2、反応場3の少なくともいずれかに、加熱手段、冷却手段、超音波照射手段、衝撃波照射手段、振動手段、交流磁場照射手段、低周波・高周波照射手段、電気分解手段、イオン発生手段、マイクロ波照射手段、ラジオ波照射手段、放射能照射手段、可視光線照射手段、赤外線・近赤外線照射手段、紫外線照射手段等を具備していてもよい。また、陰圧、又は常圧に代えて、陽圧により圧力制御を行ってもよい。
【0031】
[第2実施形態]
図2を用いて、第2実施形態に係る混合撹拌装置の構成について説明する。混合撹拌装置100は、第1収容容器101と、第2収容容器102と、反応場であるマイクロ流路103と、図示しない制御装置を主な構成として備えている。
【0032】
第1収容容器101は、注射器型の容積可変体10を電動ステージ11に固定して構成されている。容積可変体10は、円筒状のシリンジ15と、シリンジ15の円筒内部において摺動可能に嵌入されるプランジャ16を有する。容積可変体10において、シリンジ15の円筒内壁と、プランジャ16の先端面において区画される空間の容積は、プランジャ16をシリンジ15に対して移動させることにより変化させることができる。
【0033】
シリンジ15は、電動ステージ11の非可動面にシリンジサポート12、13を介して固定されている。プランジャ16は、電動ステージ11によりプランジャ16の摺動方向に移動可能なプランジャサポート14により支えられている。プランジャサポート14の構成については後に詳述するが、プランジャ16の後端部よりも幅狭であり、かつプランジャ16の本体部の外径よりも幅広の切り欠き部を有する。プランジャサポート14は、この切り欠き部において、プランジャ16の本体部を摺動可能に保持している。従って、プランジャサポート14がシリンジ15から離れる方向に移動すると、プランジャ16の後端部と接触して、同方向にプランジャ16を移動せしめる。他方、プランジャサポート14がシリンジ15に近づく方向に移動するときは、プランジャ16はシリンジ15の方向に力が働いていない状態において移動せず、そのままの位置を維持する。
【0034】
電動ステージ11は、制御装置(不図示)により制御される。電動ステージ11は、制御装置から出力される制御信号に応じて、プランジャサポート14の位置を移動させ、所定の位置に停止させることができる。
【0035】
第2収容容器102は、第1収容容器101と同じ構成を有し、注射器型の容積可変体20を電動ステージ21に固定して構成されている。容積可変体20は、円筒状のシリンジ25と、シリンジ25の円筒内部において摺動可能に嵌入されるプランジャ26を有する。シリンジ25は、電動ステージ21の非可動面にシリンジサポート22、23を介して固定されている。プランジャ26は、電動ステージ21によりプランジャ26の摺動方向に移動可能なプランジャサポート24により支えられている。
【0036】
マイクロ流路103は、流体のミキシングを促進させる役割を担う。流体同士の接触により合成反応を行う場合には、反応を進行させる反応場として機能する。マイクロ流路103は、例えば、ガラス、セラミックス等の基板に、幅1μm〜10,000μmのマイクロチャネル(微細流路)を形成した小型化学反応器、ガラスや石英などのセラミックス、銅やステンレス、ハステロイなどの金属、又はテフロン(登録商標)やポリイミドなどのプラスチックのキャピラリ(内径1μm〜10,000μm)を用いて形成した小型化学反応器等である。その反応器に流体を流して、その流体に化学反応等を生じさせる。例えば、2つの流体を流し、マイクロミキサー内で初めて接触させれば、短時間に均一な混合がなされて化学反応を生じさせることができる。流体は目的に応じて連続流体でもよいし、2種以上の流体が互いにセグメント化した流体でもよい。
【0037】
マイクロ流路103は、第1収容容器101と第2収容容器102のそれぞれと、流体が出入り可能に配管等を介して接続されている。第1収容容器101とマイクロ流路103とを接続する配管には、三方活栓104が設けられている。三方活栓104は、3方向に流体の出入口を有し、所望の2つの出入口だけを開通できる手動弁である。三方活栓104において、第1の出入口は第1収容容器101に接続され、第2の出入口はマイクロ流路103に接続されている。また、三方活栓104の第3の出入口は、流体を流入する流入口として使用される。三方活栓104の開通方向の切り換えは、制御装置による制御可能な駆動機構により実行してもよく、手動により実行してもよい。
【0038】
続いて、第2実施形態に係る混合撹拌装置の動作の一例について説明する。なお、下記の説明において、プランジャサポート14、24の移動は、図示しない制御装置による制御によって電動ステージが駆動することによって実現している。
【0039】
図3Aに示されるように、三方活栓104を第1収容容器101と流入口を開通させた状態において、プランジャサポート14を後方に移動させて、第1収容容器101のプランジャ16を後方に最大吸引位置まで移動させる。これにより、第1流体51は第1収容容器101に収容される。その後、三方活栓104を切り替えて第1収容容器101とマイクロ流路103を開通させた状態にする。他方、第2収容容器102のプランジャサポート24は、最大排出位置にある。即ち、プランジャ26の先端面はシリンジ25の最深面に接触しており、第2収容容器102の容積可変体20の内部に流体を収容する空間がない状態となっている。
【0040】
次に、
図3Bに示されるように、第2収容容器102のプランジャサポート24を後方に最大吸引位置まで急速移動させる。プランジャサポート24を最大吸引位置方向に移動させるに従って、容積可変体20内部の圧力は低下していき、最大吸引位置まで移動したときは真空に近い陰圧状態となる。他方、第1収容容器101のプランジャサポート14は、最大吸引位置のままで固定されている。第1の容器101と第2の容器102とは、マイクロ流路103を介して接続されているが、マイクロ流路103内の流路径は微細であるため、流体は十分に吸引されない状態にある。
【0041】
続いて、
図3Cに示すように、第1収容容器101のプランジャサポート14を最大排出位置まで移動させる。そうすると、第1収容容器101に全量が収容された第1流体51は、第2収容容器102の陰圧により吸引されてマイクロ流路103内に引き込まれ、さらには、第2収容容器102の容器可変体20内に噴射され、収容される。流体51が第2収容容器102に移動するに従って、第1収容容器101のプランジャ16は、前方、即ち最大排出位置方向に移動していく。
【0042】
このようにして第1収容容器101から、マイクロ流路103内の狭い空間を強制的に通過した第1流体51がミキシングされる。このとき、第1流体51に対しては、陰圧がかかるので、脱泡反応が生じる。
【0043】
第1収容容器101から第2収容容器102に第1流体51の移動が進むと、
図3Dに示されるように、その全量が第2収容容器102に移動する。第1収容容器101のプランジャ16の先端面はシリンジ15の最深面に接触しており、第1収容容器101の容積可変体10の内部に第1流体51を収容する空間がない。
【0044】
次に、三方活栓104をマイクロ流路103と流入口を開通させて、第2流体(不図示)を陰圧によってマイクロ流路103を介して第2収容容器102に注入する。これにより、第2収容容器102内において第1流体51と第2流体が混合した混合流体50となる。
【0045】
その後、第1収容容器101とマイクロ流路103を開通させた状態にする。次いで、
図3Eに示されるように、第1収容容器101のプランジャサポート14を後方に最大吸引位置まで急速移動させる。プランジャサポート14を最大吸引位置方向に移動させるに従って、容積可変体10内部の圧力は低下していき、最大吸引位置まで移動したときは真空に近い陰圧状態となる。他方、第2収容容器102のプランジャサポート24は、最大吸引位置のままで固定されている。第1の容器101と第2の容器102とは、マイクロ流路103を介して接続されているが、マイクロ流路103内の流路径は微細であるため、混合流体50は十分に吸引されない状態にある。
【0046】
続いて、
図3Fに示されるように、第2収容容器102のプランジャサポート24を最大排出位置まで移動させる。そうすると、第2収容容器102に全量が収容された混合流体は、第1収容容器101の陰圧により吸引されてマイクロ流路103内に引き込まれ、さらには、第1収容容器101の容器可変体10内に噴射され、収容される。混合流体が第1収容容器101に移動するに従って、第2収容容器102のプランジャ26は、前方、即ち最大排出位置方向に移動していく。
【0047】
このようにして第2収容容器102から、マイクロ流路103内の狭い空間であるマイクロチャネルを強制的に通過した混合流体は、ミキシングされ、反応が飛躍的に進む。このとき、混合流体に対しては、陰圧がかかるので、脱泡反応が生じる。
【0048】
第2収容容器102から第1収容容器101への混合流体50の移動が進むと、
図3Gに示されるように、その全量が第1収容容器101に移動する。第2収容容器102のプランジャ26の先端面はシリンジ25の最深面に接触しており、第2収容容器102の容積可変体20の内部に混合流体を収容する空間がない。
【0049】
さらに、混合流体50は、必要に応じて、第1収容容器101と第2収容容器102間の混合流体の移動を所望の回数、繰り返す。このような制御を繰り返すと、混合流体50は、第1収容容器101と第2収容容器102間で移動し、マイクロ流路103を複数回に亘って通過することになり、その度にミキシングが促進される。その結果、高効率に流体をミキシングできる。また、合成反応に適用している場合には、合成効率を高めることができる。
【0050】
続いて、第2実施形態に係る混合撹拌装置の製造方法について説明する。
図4Aは電動ステージ11の側面図、
図4Bは電動ステージ11の上面図である。図に示されるように、電動ステージ11は、2枚の端面部材111、112の間を2枚のガイド部材113、114により連結固定されている。ガイド部材113、114は、それぞれ電動ステージ11の上面から側面に直角に屈曲したL字型の断面構造を有する。これらの部材111〜114によって囲まれる空間内にモータ等の駆動部材やプランジャサポート14の底面部材141が収容される。底面部材141は、例えば、矩形板状の外形状を有している。
図4Bに示されるように、ガイド部材113、114は、一定の間隔の間隙115を空けて配置されている。そして、間隙115の間からは、ネジ穴が設けられた、底面部材141の中央部が露出している。
【0051】
図5Aの側面図に示されるように、ガイド部材113、114の上面に、中間部材142が設けられている。中間部材142は、間隙115よりも幅広の矩形板状の外形状を有している。
図5Bの上面図に示されるように、中間部材142は中央部において底面部材141と2つのネジにより一定間隔をあけて固定されている。底面部材141と中間部材142の間隔は、ガイド部材113、114の上面部の厚さよりも広い。このため、互いに連結された底面部材141と中間部材142は、ガイド部材113、114の長手方向に亘って端面部材111、112間で摺動可能である。
【0052】
図6Aの側面図に示されるように、ガイド板116が端面部材111、112の上面にネジにより固定される。端面部材111、112は、ガイド部材113、114よりも中間部材142の厚さ以上の長さ分だけ高いため、中間部材142の移動は妨げられない。
図6Bの上面図に示されるように、ガイド板116は、長手方向に亘って2本の切り欠き部1161、1162を有する。中間部材142の、切り欠き部1161、1162のそれぞれから露出する領域に孔1421、1422が設けられている。
【0053】
図7Aに示されるように、プランジャ保持部材143が中間部材142の上面に垂直に固定される。プランジャ保持部材143は、
図7Bに示されるように、U字上に切り欠いたプランジャ保持部1431と、中間部材142に設けられた孔1421、1422に対してそれぞれ挿入されるピン1432、1433を備えている。
図7Cに示されるように、中間部材142には、孔1163〜1170が設けられている。
【0054】
図8Aに示されるように、シリンジサポート121、122、131、132がガイド板116の上面に垂直に固定される。シリンジサポート131、132は、
図8Bに示されるように、U字上に切り欠いたシリンジ保持部1311、1321と、中間部材142に設けられた孔1163、1165、1164、1166に対してそれぞれ挿入されるピン1312、1322、1313、1323を備えている。また、シリンジサポート121、122は、
図8Cに示されるように、U字上に切り欠いたシリンジ保持部1211、1221と、中間部材142に設けられた孔1165、1167、1166、1168に対してそれぞれ挿入されるピン1212、1222、1213、1223を備えている。また、
図8Dに示されるように、シリンジサポート121、122は、いずれもガイド116に取り付けた状態において、その上面に、孔1214、1215、1224、1225を有している。
【0055】
図9Bに示されるように、容積可変体10は、シリンジ15と、プランジャ16を有する。シリンジ15は、シリンジ本体部151と、シリンジ本体部151の後端部に設けられたフランジ152と、シリンジ本体部151の先端部に設けられたノズル部153を備えている。また、プランジャ16は、プランジャ本体部161と、プランジャ本体部161の後端部に設けられた幅広のフランジ162を備えている。
【0056】
図10Aに示されるように、容積可変体10は、電動ステージ11に固定される。より具体的には、まず、シリンジ15は、シリンジ本体部151の下側面がシリンジサポート121、122のシリンジ保持部1211、1221(
図8C参照)に接し、かつ、フランジ152がシリンジサポート131とシリンジサポート132の間に挟持されるようにして載置される。また、
図10Aに示されるように、プランジャ16が最大吸引位置にあるときは、プランジャ保持部材143の後面と、フランジ162の前面とが接する。
【0057】
図11Aに示されるように、シリンジカバー123、124のそれぞれは、シリンジ15を挟持するように、電動ステージ11に強固に固定されたシリンジサポート121、122とネジ止めされる。
【0058】
第2実施形態に係る混合撹拌装置によれば、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、第2実施形態係る混合撹拌装置によれば、シリンジを利用しているので、装置構成が簡便であるというメリットがある。また、ディスポーザブル用途などにも適用しやすい。さらに、汎用的なシリンジを用いることで小ロット生産から、大量生産まで設計変更しやすいというメリットがある。また、また、マイクロ流路103は一般的に構造上、陽圧に対する耐圧性が陰圧に対する耐圧性よりも低いことから、陰圧を用いる方式を採用することにより、マイクロ流路103の破損を効果的に防止することができ、より安価なマイクロ流路103を用いることができる。なお、上記例においては、プランジャ16、26を最大吸引位置と最大排出位置とを移動させる例を述べたが、注入された流体量等に応じて、適宜、吸引位置を調整することができる。また、第2実施形態においては、常圧と陰圧の間で圧力制御する例を述べたが、陽圧を適用することも可能である。
【0059】
[第3実施形態]
図12A〜
図12Eを用いて、第3実施形態に係る混合撹拌装置の構成について説明する。混合撹拌装置300は、第1収容容器301、第2収容容器302、スタティックミキサー303、第1チャージポンプ304、撹拌手段305、マイクロミキサー306、第2チャージポンプ307、図示しない制御装置を主な構成として備えている。
【0060】
第1収容容器301は、撹拌手段305を具備し、第2収容容器302、混合ミキサー303、マイクロミキサー306に接続可能な構成となっている。具体的には、第1収容容器301内に収容された流体は、切り替え手段により、第2収容容器302、混合ミキサー303、マイクロミキサー306に移動可能なようになっている。マイクロミキサー306と第1収容容器301の間には、第2チャージポンプ307が配設されている。
【0061】
第2収容容器302は、注射器型の容積可変体310を不図示の電動ステージに固定して構成されている。容積可変体310は、円筒状のシリンジ315と、シリンジ315の円筒内部において摺動可能に嵌入されるプランジャ316を有する。容積可変体310において、シリンジ315の円筒内壁と、プランジャ316の先端面において区画される空間の容積は、プランジャ316をシリンジ315に対して移動させることにより変化させることができる。容積可変体310は、不図示のプランジャサポート、電動ステージ等を備え、第2実施形態と同様の機構によりシリンジ315の容積を可変に制御できるようになっている。
【0062】
混合ミキサー303は、流体のミキシングを促進させる役割を担う。流体同士の接触により合成反応を行う場合には、反応を進行させる反応場として機能する。混合ミキサー303は、例えば、ノリタケ社製のスタティックミキサーが好適な例として挙げられる。例えば、第1収容容器301と第2収容容器302とから、2つの異なる流体を混合ミキサー303に流し、混合ミキサー303内で初めて接触させれば、短時間に均一な混合がなされて化学反応を生じさせることができる。流体は目的に応じて連続流体でもよいし、2種以上の流体が互いにセグメント化した流体でもよい。
【0063】
マイクロミキサー306は、第1チャージポンプ304を介して混合ミキサー303と接続されている。また、第2チャージポンプ307を介してマイクロミキサー306と第1収容容器301が接続されている。マイクロミキサー306は、出口A,入口B,出口Cを有する。
【0064】
続いて、第3実施形態に係る混合撹拌装置の動作の一例について説明する。まず、
図12Aに示すように、第1収容容器301内において、捕捉性化合物の分散液を撹拌手段305により撹拌する。この状態で、被覆性磁性ナノ粒子の分散液を滴下し、さらに混合撹拌する。なお、捕捉性化合物の分散液とは、例えば、セシウムを捕捉可能なプルシアンブルー分散液である。また、被覆性磁性ナノ粒子の分散液は、酸化鉄ナノ粒子の分散液である。
【0065】
次いで、
図12Bに示すように、第1収容容器301の混合液体350を、ピストン315を陰圧にすることにより強制的に第2収容容器302に移送する。その後、
図12Cに示すように、第2収容容器302の混合流体350をピストン315の円筒内部において摺動可能に嵌入されるプランジャ316によって強制的に混合ミキサー303に移送する。
【0066】
続いて、混合ミキサー303の混合流体350を第1チューブポンプ304によりマイクロミキサー306の入口Bに圧入する(
図12C参照)。これにより、マイクロミキサー306の出口Cから排出された混合流体350が、第1収容容器301に溜まり始める(
図12D参照)。
【0067】
第1収容容器301の混合流体350は、第1チューブポンプ304を介して、マイクロミキサー306の入口Aに圧入する。これにより、マイクロミキサー306の入口A及び入口Bに圧入された混合流体350がミキシングされ、出口Cから排出される。これらの操作を続けると、第1収容容器301は満タンになり、第2収容容器302は空になる(
図12E参照)。この一連の操作を1回〜複数回繰り返すことにより捕捉性化合物と被覆性磁性ナノ粒子の複合粒子である除染用磁性複合粒子を得る。
【0068】
第3実施形態に係る混合撹拌装置によれば、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。第3実施形態に係る方法によれば、捕捉性化合物の分散液を撹拌しながら、被覆性磁性ナノ粒子の分散液を滴下して混合させる方法に比してより高効率に合成できるというメリットを有する。特に、合成スケールが大きい場合において威力を発揮する。
【0069】
なお、マイクロミキサー306や混合ミキサー303、収容容器の数は、適宜増やすことが可能である。マイクロミキサー306等を増やすことにより、小規模生産の条件を大きく変更することなく容易に大量生産を行うことが可能となる。例えば、MCP Standard(ISMATEC社製)のポンプと、1台のポンプで24本のチューブポンプを駆動して送液できる24チャンネルのポンプヘッドとを組み合わることにより、12個のマイクロミキサーを同時に使用してもよい。この場合、処理速度は12倍になる。なお、第1収容容器301を第2収容容器302のような容積可変体とすることも可能である。また、第3実施形態においては、圧入する工程を用いる例を説明したが、陰圧、及び常圧のみによって流体を混合撹拌するようにしてもよい。
【0070】
[実施例]次に、本発明を具体的な実施例により、使用例を説明するが、本発明は、以下の使用例に限定されるものではない。
【0071】
(実施例1)
[被覆性磁性ナノ粒子]まず、7.95gの塩化第一鉄(II)・四水和物を8mLの純水に溶解した。次いで、21.62gの塩化第二鉄(III)・六水和物を8mLの純水に溶解した。そして、これらを混合し、総量が50mLになるように純水を加えた。次いで、この水溶液を撹拌しながら、アンモニア水(25%)を加え、酸化鉄ナノ粒子の磁性スラリーを得た。続いて、温度調節器、電気コンロなどを用いて90℃まで加温し、アンモニアを蒸発させた。その後、室温に放置し、自然冷却した。次いで、遠心分離(9000G)によって磁性スラリーを沈殿させ、上澄みを除去した。なお、遠心分離に代えて、ネオジム磁石(0.5テスラ)により磁性スラリーを沈殿させてもよい。その後、100mLの純水を加えて、浴槽型超音波破砕装置にて沈殿した磁性スラリーを再分散させた。そして、沈殿・再分散の操作を繰り返し行うことにより、磁性スラリーを純水で洗浄した。
【0072】
次いで、50mL容量のチューブを用意し、上記磁性ナノ粒子(酸化鉄ナノ粒子)の磁性スラリー1.4gを、1/9濃度のアンモニア水(アンモニア水4mL、蒸留水32mL)に分散させた。その後、4mlのPDDA溶液(20%(重量%)水溶液)を加えた後、よく撹拌し浴槽型超音波破砕装置で分散させた。この混合液の転倒・混和を2時間繰り返した。そして、バケット遠心機を用いて3000Gで10分間、遠心分離した。次いで、上澄みを取り除いて純水20mLを加え、完全に分散後、25mLの蒸留水を添加して混合した。その後、超遠心機で18,000G,15分遠心分離を行い、上清を除去した。次いで、蒸留水20mLを加えて、完全に分散後、25mLの蒸留水を添加して混合した。そして、超遠心機を用いて19,000Gで30分間、遠心分離し、上澄みを除去した。その後、総量が14mLとなるように蒸留水を加えて完全に分散させた後にアルゴンガス置換を行った。
【0073】
[捕捉性化合物の分散液]蒸留水45mLに塩化第二鉄水溶液(2.43モル/L)3mLを添加して混合した。次いで、フェロシアン化カリウム・3水和物の水溶液(0.5モル/L)12mLを添加して混合し、プルシアンブルー分散液を得た。これを19000Gで30分間遠心分離し、上澄みを取り除き、真空ポンプで一晩吸引し、完全に乾燥させた。これらの工程により、2.19gの捕捉性化合物であるプルシアンブルー(フェロシアン化鉄)を得た。得られた捕捉性化合物の分散液のpHは5.48であり、pH調整後のゼータ電位は以下のとおりであった。
pH4.0:−24.77mV、pH5.0:−25.07mV、pH6.0:−27.93mV
【0074】
まず、第1収容容器101には、上記捕捉性化合物の分散液40mLを予め吸引しておき、第2収容容器102は、空の状態とした。また、被覆性磁性ナノ粒子の分散液注入用の第3シリンジ(不図示)には、上記被覆性磁性ナノ粒子10mLを予め吸引しておいた。
【0075】
次いで、第2収容容器102のフランジ24を引き、第1収容容器101から、工程b1の捕捉性化合物の分散液の半分量(20mL)を吸引した。その後、三方活栓104を操作して、第2収容容器102と第3シリンジ間を開通し、被覆性磁性ナノ粒子の分散液2mLを第3シリンジから第2収容容器102に陰圧により吸引することにより移した(工程A)。
【0076】
続いて、三方活栓104を操作し、第1収容容器101のフランジ14を、制御装置を用いて急速に最大限引くことにより、第2収容容器102の混合液22mL(工程a1の被覆性磁性ナノ粒子2mL+工程b1の補足性化合物の分散液の半分量(20mL))をマイクロリアクター(ibidi社製 マイクロスライド6フロースルー)103の狭い空間を通し、第1収容容器101に全量を移動させた(
図3A参照)。その後、混合液の全量を第1収容容器101と第2収容容器102間、及びこれらの間に配置されたマイクロ流路103を移動させた。続いて、残りの被覆性磁性ナノ粒子の分散液、捕捉性化合物の分散液をそれぞれ第3シリンジ、第4シリンジから注入し、ミキシングを行った。これらの工程を経て、除染用磁性複合粒子G4を得た。
【0077】
(実施例2) マイクロ流路103の代わりに、狭い開口面積を持つ混合針を用いた以外は、実施例1と同様にして除染用磁性複合粒子を得た。
【0078】
(実施例3) マイクロ流路103の代わりに、細い硬質チューブを用いた以外は、実施例1と同様にして除染用磁性複合粒子を得た。
【0079】
(実施例4)
図12A〜
図12Eに示す混合撹拌装置300を用いて除染用磁性複合粒子を合成した。まず、第1収容第1収容容器301内において、上記の実施例1と同様の方法で得た捕捉性化合物の分散液40mLを撹拌手段305により撹拌し、これに上記実施例1で得た被覆性磁性ナノ粒子2mLを加えて撹拌・混合した(
図12A参照)。次いで、第1収容容器301の内容物を、強制的に第2収容容器302に移送した(
図12B参照)。その後、第2収容容器302の内容物をプランジャ316によって強制的に混合ミキサー303(スタティックミキサー ノリタケ社製)に移送した(
図12C参照)。
【0080】
混合ミキサー303の内容物は、第1チャージポンプ304を介してマイクロミキサー306の入口Bに圧入した。これにより、マイクロミキサー306の出口Cから排出された液体が、第1収容容器301に溜まり始める(
図12D参照)。次いで、第1収容容器301の内容物を、第2チューブポンプ307によりマイクロミキサー306の入り口Aに圧入した。これにより、マイクロミキサー306の入り口A及び入り口Bに圧入された液体がミキシングされ、出口Cから排出された。これらの操作を続けると、第1収容容器301は満タンになり、第2収容容器302は空になった(
図12E参照)。この一連の操作を5回繰り返した(工程a1の被覆性磁性ナノ粒子は、2mL×5回使用した)。これらの工程を経て酸化鉄ナノ粒子・PDDA被覆層・フェロシアン化鉄の多層構造を有する除染用磁性複合粒子を得た。得られた除染用磁性複合粒子の分散液pHは5.57であり、pH調整後のゼータ電位は以下のとおりであった。
pH4.0:−24.91mV、pH5.0:−26.34mV、pH6.0:−28.85mV