特許第5907466号(P5907466)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5907466
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】極小ギャップの発電機または電動機
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/08 20060101AFI20160412BHJP
   H02K 7/12 20060101ALI20160412BHJP
   H02K 21/14 20060101ALI20160412BHJP
   H02K 21/24 20060101ALI20160412BHJP
   H02K 15/02 20060101ALI20160412BHJP
【FI】
   H02K1/08
   H02K7/12 A
   H02K21/14 M
   H02K21/24 M
   H02K15/02 D
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-242282(P2014-242282)
(22)【出願日】2014年11月12日
【審査請求日】2014年12月10日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514110347
【氏名又は名称】加来 良幸
(72)【発明者】
【氏名】加来 良幸
【審査官】 安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−264826(JP,A)
【文献】 実開昭62−188973(JP,U)
【文献】 特開昭62−053158(JP,A)
【文献】 特開2007−318962(JP,A)
【文献】 特開2005−226602(JP,A)
【文献】 特開2005−168190(JP,A)
【文献】 特開2002−021687(JP,A)
【文献】 米国特許第00597418(US,A)
【文献】 米国特許第02625674(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/08
H02K 7/12
H02K 15/02
H02K 21/14
H02K 21/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁気を利用するラジアルギャップ形又はアキシャルギャップ形の発電機又は電動機であって、回転子の一部分若しくは全体又は固定子の一部分若しくは全体からなり、回転子と固定子の間のギャップの間隔を狭める方向及び広げる方向に移動可能な移動可能部分を有し、回転子と固定子の間のギャップには潤滑剤からなる薄い膜が形成され、前記移動可能部分は弾性体によりギャップの間隔を狭める方向に付勢されるとともに前記薄い膜の厚さはギャップの間隔として維持されることを特徴とする発電機または電動機。
【請求項2】
電磁気を利用するラジアルギャップ形又はアキシャルギャップ形の発電機又は電動機であって、回転子の一部分若しくは全体又は固定子の一部分若しくは全体からなり、回転子と固定子の間のギャップの間隔を狭める方向及び広げる方向に移動可能な移動可能部分を有し、回転子又は固定子には前記ギャップに吐出する開口部を持つ潤滑剤の経路が形成され、前記開口部から潤滑剤を吐出するように強制的に前記経路へ潤滑剤を送り込む機構とが備えられ、回転子と固定子の間のギャップには前記潤滑剤からなる薄い膜が形成され、前記移動可能部分は弾性体によりギャップの間隔を狭める方向に付勢されるとともに前記薄い膜の厚さはギャップの間隔として維持されることを特徴とする発電機または電動機。
【請求項3】
電磁気を利用するラジアルギャップ形又はアキシャルギャップ形の発電機又は電動機であって、回転子の一部分若しくは全体又は固定子の一部分若しくは全体からなり、回転子と固定子の間のギャップの間隔を狭める方向及び広げる方向に移動可能な移動可能部分と、ストッパーとを有し、前記移動可能部分は弾性体によりギャップの間隔を狭める方向に付勢されるとともに前記ストッパーと接触して移動が制限されることでギャップの間隔が維持され、さらに前記移動可能部分のギャップの間隔を広げる方向への移動は、前記ストッパーにより制限されないことを特徴とする発電機または電動機。
【請求項4】
ストッパーを任意の位置に固定し、移動可能な回転子または固定子をギャップの間隔を狭める方向に付勢して、ストッパーと突き合わせ接触させることで任意のギャップを設定した後、回転子または固定子のギャップ増減方向への移動可能部分を固定し、ギャップの間隔を維持するようにした請求項3の発電機または電動機の製造方法。
【請求項5】
移動可能な回転子の一部分若しくは全体又は固定子の一部分若しくは全体を、ギャップの間隔を増減する方向へ移動を行う機構が備えられ、対向するギャップの間隔を自由に増減することが出来る請求項1から3のいずれかに記載の発電機または電動機。
【請求項6】
移動可能な回転子の一部分若しくは全体又は固定子の一部分若しくは全体を、回転子の軸方向へ移動を行う機構が備えられ、対向するギャップの面積を自由に増減することが出来る請求項1から3のいずれかに記載の発電機または電動機。
【請求項7】
請求項1から3、5から6のいずれかに記載の発電機または電動機を備える工業製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁気を利用した回転電機の回転子と固定子の間のギャップの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術では、回転子と固定子の間のギャップの間隔を機械的な構造により保持する発電機または電動機においてはギャップの間隔を狭くするほど性能が向上することは解っているが、加工精度の問題がありあまり狭く出来なかった。加工精度の向上を図るものでは例えば特許文献1が開示されている。
【0003】
また、電動機では逆起電力が発生するので高回転時の効率の向上を図るには界磁を弱めて逆起電力を低減することが必要とされ、永久磁石を利用する電動機においてはさまざまな方法が提案されている。その方法としてギャップの間隔を広げるものでは、例えば特許文献2、特許文献3、特許文献4等が、回転子と固定子の相対位置を回転子の軸方向へずらしてギャップの対向する面積を減らすものでは、例えば特許文献5、特許文献6等が開示されている。
【0004】
しかし、上記の例では電動機の極小のギャップか高回転時の弱め界磁をそれぞれ単独で実現しようとしているのみである。発電機や多くの種類の電動機の場合は極小のギャップが常に望ましいし、永久磁石を用いた電動機の場合に幅広い回転域において効率の向上をはかる為には極小のギャップと高回転時の弱め界磁の二つを同時に実現することが望ましい。まとめると、以下の3つを実現することが本発明の目的であり従来技術との差異である。
1.極小のギャップを実現した発電機あるいは電動機。
2.ギャップの広さまたはギャップの対向する面積を可変することが出来て、低・中回転 時の極小のギャップと高回転時の弱め界磁を同時に実現した永久磁石式電動機。
3.高い加工精度を必要とせず、極小のギャップでも回転子の組み付けが容易であり、ま た可能なかぎり簡便な機構で実現すること。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】 特開 2008−92705号 公報
【特許文献2】 特開 平11−332195号 公報
【特許文献3】 特開 2005−168190号 公報
【特許文献4】 特開 2009−225656号 公報
【特許文献5】 特開 2006−136126号 公報
【特許文献6】 特開 2008−125235号 公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、極小ギャップの発電機および電動機、さらにギャップの広さまたはギャップの対向する面積が可変で低回転時でも高回転時でも効率の高い永久磁石式の電動機を高い加工精度に頼らず簡便に製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、まず回転子の一部分または全体あるいは固定子の一部分または全体がギャップの間隔を狭める方向または広げる方向に移動可能であり、狭める方向へ移動した場合には両者が接触しギャップの間隔をゼロとすることが可能となるような機械的な構造とする事が基本となる。
【0008】
そのうえで、高い加工精度に頼らず回転子と固定子の直接の接触を防ぎ極小のギャップを実現する3つの方法から説明する。
【0009】
第1の方法は、弾性体(バネ)等の手段により上記の移動可能な回転子あるいは固定子をギャップを狭める方向に移動するように付勢する。(広げる方向に付勢し運転時に狭める方向に移動させる場合もある)そして回転子と固定子の直接の接触を避ける為にギャップ部分に潤滑剤(オイル等)を使用して薄い膜を形成する。回転子と固定子の間に潤滑剤にて薄い膜を形成するようにすることで、この潤滑剤が極小のギャップになり同時に摩擦抵抗を減ずる。回転子と固定子の鉄心を構成する素材は金属であり、金属同士の摩擦による抵抗の低減や発熱の低減に潤滑剤(オイル等)を使用する事は内燃機関(ガソリンエンジン等)では普通に見ることが出来る。
【0010】
第2の方法は、第一の方法に加えてギャップに設けた開口部から外部ポンプ等を用いて潤滑剤を強制的に送り込む。これにより潤滑を確実にすることが出来、また潤滑剤を巡らせることにより各部の冷却効果を得ることが出来る。極小のギャップに潤滑剤が存在する為のせん断抵抗の問題は潤滑剤を強制的に送り込むことにより低減される。
【0011】
第3の方法は、回転子あるいは固定子がギャップを狭める方向に移動する時に極小のギャップを残して停止するようにストッパーを設ける。これは製造時やメンテナンス時にストッパーを調整することで実現する。具体的にはギャップを狭める方向に移動するよう付勢(付勢力A)された回転子あるいは固定子とそれとは逆方向に弱い力で付勢(付勢力B)された移動及び固定可能なストッパーを用いる。付勢の力の関係はA>Bである。必要なギャップ長の部材(例えば0.1mmのギャップを設定する場合、その厚みのフィルム等)を製造時に回転子と固定子の間に挟みこみ、その状態でストッパーをネジやボルトとナットあるいは接着剤等の適当な手段で固定する。ストッパーを固定終了したら回転子あるいは固定子を移動しフィルム等を除去してふたたび回転子あるいは固定子を元の位置に戻すことにより任意のギャップを実現することが出来る。ストッパーの付勢手段は完成後に必要なければ除去しても残してもよい。ストッパーの付勢手段は絶対必要な要件ではなく、例えば製造時に手を使用して付勢してもかまわない。要は製造時に一時的にでも付勢出来ればよいのである。上記のようにストッパーを用いることで潤滑剤を使用せずに極小ギャップを実現できるが、各部の冷却や熱膨張による接触等を考慮し潤滑剤を使用してもよい。また、ギャップ間隔の可変が必要ない用途の場合、その後に回転子または固定子の移動可能部分を固定し、ギャップの間隔を維持するようにすれば固定子の磁気回路の抵抗低減や堅牢な構造とすることが出来る。
【0012】
以上の3つの方法により高い加工精度に頼らないで容易に極小ギャップを実現でき、多くの形式の発電機または電動機において効率の向上を図ることが出来る。
【0013】
さらに永久磁石を使用する電動機については低・中回転の場合は上記の方法により極小のギャップを実現し効率の向上を図ることに加え、高回転の場合は以下の方法で永久磁石の界磁を弱めることにより効率を向上する事が出来る。
【0014】
(方法例1)ギャップ部分に設けられた吐出口より高圧の潤滑剤を吐出することにより移動可能な回転子と固定子に付勢された力とは逆方向の力を発生させ、ギャップを広く保持する。つまり回転子あるいは固定子がギャップを狭くする方向に付勢されている場合、潤滑剤を送り込む圧力を弱めにすれば極小のギャップが保持され、潤滑剤の圧力を高くすればギャップを広く保持することが可能となる。この場合、ギャップに設ける潤滑剤の吐出口は高圧の潤滑剤を吐出できるようにする為に大きく設定する必要がある。
【0015】
(方法例2)移動可能な回転子あるいは固定子に圧力室を設け、潤滑剤の圧力を受けて付勢された力とは逆方向の力を発生させる機構を採用することによりギャップを広げる力を強くまた確実にすることが出来る。つまり移動可能な回転子あるいは固定子が潤滑剤の圧力を受けてピストンのように移動するようにする。この場合、ギャップに設ける潤滑剤の吐出口は極小のギャップを実現し摩擦を低減できる程度の小さめに設定する。この小さめの吐出口から吐出可能な量以上の高圧の潤滑剤の圧力が加わった場合、圧力室に力がかかり鉄心がギャップを広げる方向に移動する。よって潤滑剤の圧力によりギャップの広さを可変できる。
【0016】
(方法例3)移動可能な鉄心部分および継鉄部分に滑車機構を設け、そこに渡したベルトやワイヤー(スチール、アラミド繊維等)とそのベルトやワイヤーを巻上げる機構を設ける。ベルトを巻上げることにより、移動可能な鉄心部分がギャップを広げる方向へ移動する。よってベルトを巻上げる力を調整する事によりギャップの広さを可変できる。なお、滑車機構には回転輪を使用することが望ましいがたんなる剛体の部材でも実施可能である。
【0017】
上記の例1〜3はラジアルギャップ型で歯(ティース)部がたくさんあり移動部分の多い固定子の場合の、ギャップの間隔を増減して弱め界磁を行う実施例である。2極や4極の直流モータの固定子の場合や、アキシャルギャップ型の回転子または固定子の全体を移動する場合など移動部分が少ない場合にはアクチュエータを用いる等移動させる際の手段はなにを用いてもよい。
【0018】
また、ラジアルギャップ型の場合はアクチュエータ等を用いて回転子あるいは固定子を回転子の軸方向へ移動させて対向するギャップの面積を増減することでも弱め界磁を行うことが出来るので、既に説明した極小ギャップの実現方法と併用することで、低回転から高回転まで幅広い回転域で効率の向上を図ることが出来る。
【発明の効果】
【0019】
上述したように、ギャップを増減する方向へ移動可能な回転子あるいは固定子とギャップに薄い膜を形成する潤滑剤や調整可能なストッパーにより高い加工精度を必要とせず回転子を固定子に組み付ける際も難しくなく、容易に極小のギャップが実現でき多くの形式の発電機と電動機において効率の向上が図れる。さらに移動可能な回転子あるいは固定子と潤滑剤の圧力を調整するという方法やベルトを巻上げる方法、アクチュエータ等によりギャップの間隔を増減したり、ギャップの対向する面積を増減することで、比較的簡便に極小のギャップと高回転時の弱め界磁を同時に実現することが出来る。この場合特に永久磁石を利用する電動機の場合、低回転から高回転まで広い範囲で効率の向上を図ることが出来る。また潤滑剤を強制的に送り込む実施例の場合、固定子や回転子に潤滑剤が巡ることにより冷却効果を得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】ラジアルギャップインナーローター型の固定子の一部分(歯部)を移動する構造にした概念断面模式図(巻き線や永久磁石は図示せず)
図2図1の一部分を拡大した説明図
図3】ラジアルギャップインナーローター型の固定子の一部分(歯部)をギャップを広げる方向へ移動した状態の概念断面模式図(巻き線や永久磁石は図示せず)
図4】永久磁石式直流モータの固定子の一部分を移動する構造にした概念断面模式図(巻き線は図示せず)
図5】永久磁石式直流モータの固定子の一部分を移動する構造にした概念断面模式図(巻き線は図示せず)
図6】ラジアルギャップアウターローター型の固定子の一部分(歯部)を移動する構造にした概念断面模式図、一部分を拡大した説明図、固定子の一部分をギャップを広げる方向へ移動した状態の概念断面模式図(巻き線は図示せず)
図7】アキシャルギャップ型の回転子を移動する構造にした概念断面模式図(永久磁石は図示せず)
図8】ラジアルギャップインナーローター型の固定子全体を回転子の軸方向へ移動する構造にし弱め界磁を行う概念断面模式図(永久磁石は図示せず)
図9】オイルを使用した極小ギャップの実現方法(方法1)
図10】オイル及びオイルの経路と吐出口を設けた極小ギャップの実現方法(方法2)
図11】ストッパーを使用した極小ギャップの実現方法(方法3)
図12】ストッパーを使用した極小ギャップ実現方法(工程1)
図13】ストッパーを使用した極小ギャップ実現方法(工程2)
図14】ストッパーを使用した極小ギャップ実現方法(工程3)
図15】ストッパーを使用した極小ギャップ実現方法の移動部分を固定した例
図16】ギャップの間隔を可変する方法例1(オイルの圧力が低い状態)
図17】ギャップの間隔を可変する方法例1(オイルの圧力が高い状態)
図18】ギャップの間隔を可変する方法例2(オイルの圧力が低い状態)
図19】ギャップの間隔を可変する方法例2(オイルの圧力が高い状態)
図20】ギャップの間隔を可変する方法例3(ベルトを巻上げていない状態)
図21】ギャップの間隔を可変する方法例3(拡大説明図)
図22】ギャップの間隔を可変する方法例3(ベルトを巻上げた状態)
図23】積層鋼板によるオイル吐出口及び圧力室を設けた移動可能ステータ部分の作成例
図24】積層鋼板によるオイル吐出口及び圧力室を設けた移動可能ステータ部分の作成例
図25】積層鋼板によるオイル吐出口及び圧力室を設けた移動可能ステータ部分の斜視図
図26】斜視図および図27の断面図の方向説明
図27】積層鋼板によるオイル吐出口及び圧力室を設けた移動可能ステータ部分の断面図
図28】永久磁石式直流モータで極小ギャップのみ実現し、ギャップの間隔の可変を省いた場合の実施例断面模式図(巻き線やブラシ、整流子は図示せず)
図29】永久磁石式直流モータのストッパーを使用した極小ギャップの実現方法(工程1)
図30】永久磁石式直流モータのストッパーを使用した極小ギャップの実現方法(工程2)
図31】永久磁石式直流モータのストッパーを使用した極小ギャップの実現方法(工程3)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図に基ずいて説明する。なお、主にラジアルギャップインナーロータ型モータで固定子の一部分を移動可能な構造にした例を中心に説明するが、極小のギャップや弱め界磁の実現の方法はラジアルギャップアウターローター型で固定子の一部分を移動可能な構造にした場合やアキシャルギャップで回転子あるいは固定子の全体を移動可能な構造にした場合でも、あるいは発電機においても同様に有効であり実施が可能な物である。
【0022】
図1から図8は、回転子の一部分または全体あるいは固定子の一部分または全体を移動するという概念を示した模式図である。
【0023】
図1図2図3はラジアルギャップインナーローター型の固定子の一部分を移動する構造にした実施例の概念断面模式図である。(鉄心と継鉄のみ表記し巻き線や永久磁石は省略)
【0024】
図において、1はギャップの間隔を増減する方向へ移動可能なステータの一部分である。2は上記をつなぎ磁路を形成する為の継鉄である。3はロータであり、発電機や電動機の形式によって異なるが積層鋼板による電機子の場合や永久磁石が内蔵された物、かご型の場合や軟鉄の場合等、様々である。また図のような真円形状では無く、ステッピングモータ用など歯部が形成される場合もある。
【0025】
図4図5は永久磁石式直流モータの固定子の一部分を移動する構造にした実施例の概念断面模式図である。(鉄心と継鉄と永久磁石のみ表記し巻き線や整流子やブラシは省略)
【0026】
図において、1はギャップの間隔を増減する方向へ移動可能なステータの一部分である。2は上記をつなぎ磁路を形成する為の継鉄である。3は積層鋼板で作られたロータである。4は永久磁石である。
【0027】
図6は永久磁石式アウターロータ型の固定子の一部分を移動する構造にした実施例の概念断面模式図である。(鉄心と継鉄と永久磁石のみ表記し巻き線は省略)
【0028】
図において、1はギャップの間隔を増減する方向へ移動可能なステータの一部分である。2は上記をつなぎ磁路を形成する為の継鉄である。3はロータである。4は永久磁石である。
【0029】
図7はアキシャルギャップ型モータの回転子を移動する構造にした実施例の概念断面模式図である。(鉄心と継鉄のみ表記し巻き線や永久磁石は省略)
【0030】
図において、1はステータである。2は上記をつなぎ磁路を形成する為の継鉄である。3はギャップの間隔を増減する方向へ移動可能なロータである。5はバネである。
【0031】
図8はラジアルギャップ型モータの固定子を回転子の軸方向へ移動し弱め界磁を行うようにした実施例の概念断面模式図である。(鉄心のみ表記し巻き線や永久磁石は省略)
【0032】
図において、1は回転子の軸方向へ移動可能なステータであり回転子と固定子のギャップの対向する面積を可変することが出来る。3はロータである。
【0033】
図9から図27はラジアルギャップインナーロータ型の固定子の一部分を移動可能な構造にした場合を例に極小ギャップの実現の方法と弱め界磁の実現の方法を説明している。
【0034】
図9は潤滑剤(オイル等)を使用した極小ギャップの実現方法例1である。図において、1の移動可能な固定子の歯(ティース)部分を5の付勢手段(バネ等)でギャップを狭める方向へ付勢しており、11の潤滑剤を使用して回転子と固定子の直接の接触を防ぐものである。
【0035】
図10は上記の実現方法例1に加えて潤滑剤の吐出口および経路を設けた極小ギャップの実現方法例2である。図において、1の移動可能な固定子の歯(ティース)部分を5の付勢手段(バネ等)でギャップを狭める方向へ付勢しており、外部ポンプ等を用いて12の経路より潤滑剤を圧送することにより回転子と固定子の直接の接触を防ぐものである。
【0036】
図11はストッパーを使用した極小ギャップの実現方法例3である。図において、1の移動可能な固定子の歯(ティース)部分を5の付勢手段(バネ等)でギャップを狭める方向へ付勢しており、13のストッパーによりその移動を制限することにより回転子と固定子の直接の接触を防ぐものである。
【0037】
図12はストッパーを使用した極小ギャップの実現方法の工程1である。まず、回転子と固定子の間に14のギャップの間隔を設定する部材を挟み込みバネ等によりAおよびBの付勢力を加えた状態で13のストッパーをボルトとナット、ねじ、あるいは接着剤等の適当な手段で固定する。なお、付勢の力関係はA>Bである。
【0038】
図13はストッパーを使用した極小ギャップの実現方法の工程2である。ストッパーの固定が終了したら1の固定子の歯(ティース)部分を移動し14の部材を取り除く。
【0039】
図14はストッパーを使用した極小ギャップの実現方法の工程3である。部材を取り除いた後、1の固定子の歯(ティース)部分を元に戻すことにより任意のギャップを実現する事が出来る。
【0040】
図15はストッパーを使用した極小ギャップの実現方法でギャップの間隔の可変が不要な場合の例である。図14の工程が終了した段階で、15の固定手段(ボルトとナット、ねじ、接着剤等)により歯(ティース)部分と継鉄部分を連結固定する。付勢手段は取り除いても残してもよい。
【0041】
図16はギャップの間隔を可変する方法例1であり低・中回転時の場合である。固定子の歯(ティース)部分を移動する構造にし、潤滑剤(オイル等)の経路12とギャップに吐出口を設けている。外部ポンプから潤滑剤が圧送されているが回転子と固定子の摩擦を防ぐ程度の圧力が低い状態の為、極小のギャップを維持している。
【0042】
図17は上記方法例1の高回転時の場合である。高回転時はギャップへ吐出する潤滑剤の圧力を大きくして移動可能な歯(ティース)部分をギャップを広げる方向へ移動させ、効率の向上を図る。この場合、ギャップに設ける潤滑剤の吐出口は高圧の潤滑剤を吐出できるようにする為に大きく設定されている。
【0043】
図18はギャップの間隔を可変する方法例2であり低・中回転時の場合である。固定子の歯(ティース)部分を移動する構造にし、ギャップに潤滑剤(オイル等)の吐出口を設け、かつ21の圧力室を設けている。外部ポンプから潤滑剤が圧送されているが回転子と固定子の摩擦を防ぐ程度の圧力が低い状態の為、極小のギャップを維持している。
【0044】
図19は上記方法例2の高回転時の場合である。ギャップに設ける潤滑剤の吐出口は極小のギャップを実現し摩擦を低減できる程度の小さめに設定されている。高回転時は潤滑剤の圧力をこの小さめの吐出口から吐出可能な量以上の高圧で加えることにより圧力室に歯(ティース)部分を移動する力を発生させギャップを広げることにより効率の向上を図る。
【0045】
図20はギャップの間隔を可変する方法例3であり低・中回転時の場合である。30のベルトの巻上げ機構が設けられているが作動しておらず、ベルトを巻上げていない状態であり極小のギャップを維持している。
【0046】
図21は上記の図18の部分拡大説明図である。図外のベルトの巻上げ機構30で31のスチールやアラミド繊維等で作られたベルトやワイヤー等の索状物を巻上げることにより32の滑車機構を作動させ、移動可能な歯(ティース)部分をギャップを広げる方向に移動させる力を発生させる。
【0047】
図22は上記方法例3の高回転時の場合である。30のベルトの巻上げ機構が作動しており、ベルトを巻上げている状態である。歯(ティース)部分を移動する力を発生させギャップを広げることにより効率の向上を図る。説明図ではベルトの巻上げ機構を一つのみ図示したが、複数設けてもよい。
【0048】
なお図20、21、22において極小ギャップの実現方法を図示していないが、潤滑剤(オイル等)を使用する方法、ストッパーを使用する方法のどちらでも実施可能である。
【0049】
図23、24は積層鋼板によるオイル吐出口および圧力室を設けた移動可能な固定子の歯(ティース)部分の作成例である。積層鋼板の間に潤滑剤の経路を設ける為に、積層鋼板は密着するよう接着等をすることが望ましい。
【0050】
図25、26は上記の斜視図であり、図27はa−a’の断面図である。なお図23図27はあくまで実施の一例であり積層鋼板の形や枚数を特定するものではない。
【0051】
図28はコストの低い永久磁石式直流モータで極小ギャップのみ実現し、ギャップの可変を省いた場合の実施例断面模式図である。1はギャップを増減する方向へ移動可能な継鉄であり、4の永久磁石をささえている。2は筐体(ハウジング)かつ磁路を形成する継鉄である。3は回転子である。13はストッパーである。(巻き線やブラシ、整流子は省略)
【0052】
図29は工程1である。まずギャップの間隔を設定する部材14を回転子と固定子の間に挟み込んだ状態で製造時にのみ使用する付勢力AおよびBを加える(付勢の力はA>Bである)。次にその状態でストッパーを接着剤等の適当な手段で固定する(Xの部分)。
【0053】
図30は工程2である。ストッパーを固定終了したら、永久磁石を移動し14の部材を取り除く。
【0054】
図31は工程3である。その後、再び製造時にのみ使用する付勢力Aを加え、移動部分を接着剤等の適当な物で固定(Yの部分)することにより簡単な方法で極小ギャップを実現できる。
【0055】
なお、工程3の接着等をせずにアクチュエータ等を使用しギャップの間隔を可変するようにすれば、極小のギャップと高回転時の弱め界磁を同時に実現でき、幅広い回転域において効率を向上する事が出来る。
【0056】
図を使用し3つの極小ギャップの実現方法、およびギャップの間隔を可変するかギャップの対向する面積を可変する弱め界磁を極小ギャップと同時に実現する方法を主に電動機にて説明したが、特に極小ギャップの実現はさまざまな種類の電動機にも有効なだけでなく、発電機においても効率の向上が期待出来る。本発明は機械エネルギーと電気エネルギーの間の変換の効率を高め、社会全体の省エネルギーおよび二酸化炭素排出の削減に貢献するものである。
【符号の説明】
【0057】
1 ステータ鉄心(ギャップの間隔を増減する方向へ移動可能)
2 ステータ継鉄(固定)
3 ロータ
4 永久磁石
5 弾性体(バネ等)
11 潤滑剤(オイル等)
12 潤滑剤(オイル等)の経路
13 ストッパー
14 ギャップ間隔を設定する為の部材
15 移動可能部分を固定する手段(ボルトとナット、ねじ、接着剤等)
21 圧力室
30 ベルト巻上げ機構
31 ベルト(スチール、アラミド繊維等)
32 滑車機構
A 付勢力(弾性体等による物、又は製造時の一時的な物)
B 付勢力(弾性体等による物、又は製造時の一時的な物)
X ストッパーの固定部分(接着等)
Y ステータの固定部分(接着等)
【要約】      (修正有)
【課題】高い加工精度を必要とせず、極小のギャップでも回転子の組み付けが容易であり、また可能なかぎり簡便な機構で実現すること。
【解決手段】回転子3あるいは固定子をギャップの間隔を狭める方向または広げる方向へ移動可能な構造とし、ギャップを狭めるように付勢したうえで潤滑剤や調整可能なストッパーを使用して両者の直接の接触を防ぎ極小のギャップを実現する。永久磁石を使用する電動機の高回転時は回転子または固定子をギャップの間隔を広げるか対向する面積を減らすように移動する機構を設け界磁を弱める。
【選択図】図1
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