特許第5907467号(P5907467)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5907467
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】X線システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20160412BHJP
   A61B 6/08 20060101ALI20160412BHJP
【FI】
   A61B6/00 390C
   A61B6/08 310
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-527139(P2014-527139)
(86)(22)【出願日】2012年8月10日
(65)【公表番号】特表2014-524331(P2014-524331A)
(43)【公表日】2014年9月22日
(86)【国際出願番号】US2012000344
(87)【国際公開番号】WO2013028219
(87)【国際公開日】20130228
【審査請求日】2015年6月23日
(31)【優先権主張番号】61/526,726
(32)【優先日】2011年8月24日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/588,274
(32)【優先日】2012年1月19日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512159720
【氏名又は名称】ダビドフ,アルバート
【氏名又は名称原語表記】DAVYDOV,Albert
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ダビドフ,アルバート
(72)【発明者】
【氏名】ウソフ,ピーター
【審査官】 原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0157230(US,A1)
【文献】 特開2005−218867(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/118478(WO,A1)
【文献】 特開平06−217973(JP,A)
【文献】 特開2011−004869(JP,A)
【文献】 特開2004−313790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00−6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を出すX線ソース、
X線を受けてX線映像を生成するX線感光体、
前記X線ソースと前記X線感光体の間に位置した患者に固定され、前記患者の角度方向を感知する角度方向センサと前記患者と前記X線感光体の間の距離を測定する距離センサを備えた患者衛星、
前記X線ソースに固定されたX線ソース衛星であって、前記X線ソースと前記X線感光体の間の距離を測定する第2距離センサを備えたX線ソース衛星、および
前記X線ソース、前記X線感光体、前記患者衛星および前記X線ソース衛星と連結し、X線感光体からX線映像を受けるサーバ、を含み
前記距離センサと前記第2距離センサは超音波センサであり、
前記角度方向センサは、前記X線ソースと前記X線感光体に対して、X線映像の角度方向の歪曲をなくすように、前記患者を位置させる信号を作業者に出力することを特徴とする、X線システム。
【請求項2】
前記患者衛星は、前記患者のX線露出度を測定するX線センサをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のX線システム。
【請求項3】
前記距離センサと前記第2距離センサの測定値が前記サーバに送信され、前記サーバは、前記X線感光体から受けたX線映像の実際の倍率を計算して倍率誤差を調整することを特徴とする、請求項に記載のX線システム。
【請求項4】
前記実際の倍率MはM=T/(T−S)式によって計算され、ここで、Tは前記第2距離センサで測定した前記X線ソースと前記X線感光体の間の距離であり、Sは前記距離センサで測定した前記患者と前記X線感光体の間の距離であることを特徴とする、請求項に記載のX線システム。
【請求項5】
前記サーバは前記X線映像をディスプレイするDICOMビューアを含み、ディスプレイされる前記X線映像には角度方向の歪曲がなく、前記実際の倍率Mを利用して倍率歪曲が修正されることを特徴とする、請求項に記載のX線システム。
【請求項6】
前記作業者に出力される前記信号は視覚信号であることを特徴とする、請求項1に記載のX線システム。
【請求項7】
前記作業者に出力される前記信号は聴覚信号であることを特徴とする、請求項1に記載のX線システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はX線映像取得分野に関し、より詳しくは、X線技術を利用して人間の脊椎の映像を取得する分野に関する。
【背景技術】
【0002】
患者の脊椎変形は各種疾病をもたらす。このような疾病の予後を知るためには、患者の脊椎の映像を取得し、このような映像を肉眼で検査し、患者の診療記録を検討するなどの標準処置を数年間に渡って行うようになる。一般的に脊椎変形は、先天的、自動車事故、墜落、喧嘩などによる深刻な外傷によって生じる。AMA(American Medical Association)のガイドによれば、日常的な脊椎評価を行うときには非正常的に運動する脊椎区間別に評価しなければならず、このような評価範囲と定量化プロトコルに関するデータを公開している。残念なことに、今までは技術的な困難とX線処理過程中の歪曲により、このような映像を定量的に分析した例が殆どない。したがって医師は、立証のない証拠と自身の経験に基づいて診断をしたり定量化したりするしかなかった。脊椎のような人間の解剖学的構造を現す映像を撮影するために、数百年間に渡ってX線を使用してきた。しかし、既存のシステムは、X線映像で定量的な報告書を生成するため、正確なX線を生成するのに多くの問題点があった。例えば、多くの人間を処理するのに多くの時間がかかる上に誤差も多く生じ、定量的な報告書が極めて不正確であった。
【0003】
本発明者の先行出願である米国特許出願12/881、411では、患者の脊椎の一部分のX線映像をキャプチャするX線システムを紹介しており、患者の身体に付着して寸法が知られたL型標的がX線映像に含まれる。X線映像内に標的映像が共に入り、この標的を測定してX線映像を分析することによって医師が患者の診断を行うことをサポートする定量データを生成し、このような分析は自動あるいは半自動で行われる。
【0004】
このシステムは従来に比べると大きく進歩したものの、依然としていくつかの問題を抱えている。例えば、GEで生産された新しいX線システムのみに適用が可能であり、既存のシステムには適用することができず、生成されたエネルギーの強度変化を引き起こすシステム発生器の規模と関連する誤差や不確実性のために、生成された映像で標的を見ることができないなどの信頼性に欠けている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、X線を出すX線ソース、X線を受けてX線映像を生成するX線感光体、及びX線ソースと連結したサーバを有するX線システムを提供する。
【0006】
X線ソースとX線感光体の間に位置した患者に患者衛星が固定され、患者衛星は患者の角度方向を感知する角度方向センサと距離センサを備える。角度方向センサはX線方向に対する患者の角度方向を感知し、この角度方向は90度に近いことが好ましい。角度方向センサは映像の角度方向の歪曲をなくす位置としてX線ソースとX線感光体に対して患者を位置させる信号を作業者に出力する。距離センサは、倍率調整のために患者とX線感光体の間の距離を測定する。X線センサは、人間の身体に蓄積しているX線量を定量化して書類化するのに利用され、このような書類は放射線定量化報告書に含まれ、このセンサはX線発生器の放射線量の監視にも使用される。本発明者の観察と様々なX線装備の試験によれば、発生器ごとにX線放射線量が異なることはもちろん、同じ発生器であったとしても、X線ヘッドの温度や、電気部やX線装置の寿命のような多様な要因により、同じX線過程でも様々な出力を出すということが明らかになった。ニューヨーク市に登録された様々なX線装置に関する試験によれば、冷間X線ヘッドが備えられた装備は、X線を放出した後よりもさらに少ない放射線量を放出する。X線は透過性があり、その効果が潜伏されながら蓄積されるため、公衆健康に極めて危険となる恐れがある。また、同じ製造社の同じモデルの装備の発生器を同じ種類で露出してもX線放射線量が異なることがある。本発明では、患者と管理者の安全と分析、さらには放射線量調節のために記録を格納することを目的とし、X線センサがX線処理過程中のすべての蓄積放射線量を記録する。
【0007】
本発明はX線映像取得方法も提供する。この方法は、X線を出すX線ソースを提供する段階と、X線を受けてX線映像を生成するX線感光体を提供する段階を含む。この方法は、X線ソースとX線感光体の間に位置した患者に、のセンサと、X線強度を測定するX線センサと、倍率調整用距離センサを備えた患者衛星を固定する段階、角度方向センサを利用して患者の角度方向を感知し、X線映像の角度方向の歪曲をなくす位置としてX線ソースとX線感光体に対して患者を位置させる信号を作業者に出力する段階をさらに含む。距離センサは、患者とX線感光体の間、X線ソースとX線感光体の間の距離を測定する。正確な距離が分かれば、簡単な数学的計算によって倍率を計算することができる。本発明によれば、X線ソースとX線感光体と患者衛星にマイクロプロセッサとブルートゥースによってサーバが連結し、X線映像はパーシング(parsing)という過程によってX線感光体からサーバに送信される。
【0008】
上述した特徴はあくまでも例示に過ぎず、本発明の範囲を制限するものではないことを理解しなければならない。
【0009】
以下、添付の図面を参照しながら本発明を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】患者の正面にセンサを配置した本発明の一例を示している概略図である。
図2】患者の側面にセンサを配置した本発明の一例を示している概略図である。
図3】本発明のX線システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
脊椎は、一連の脊椎骨と脊椎骨の間に配置されている連結組職とで構成されている。人間の脊髓は多様に曲がった姿勢をとり、4部分、すなわち頸部、胸部、腰推部、及び腰推−仙骨部に区分される。各部分の脊椎骨は形状と大きさがそれぞれ異なり、さらには同じ部分でも形状と大きさが異なる。
【0012】
脊椎ラインに直角あるいは斜めに急に衝撃が加えられて損傷したり、先天的な欠陷があったり、いずれかの疾患があったりすれば、脊椎骨が変形したり脊椎骨の一部分が骨折して不便や痛みが生じ、腰を曲げたり動いたりするのに困難をもたらすようになる。また、隣接する脊椎骨の間で(捩れではなく)長さ方向の外傷力が加えられても脊椎骨の内部通路が噛み合わなくなり、ここを通過する脊髓が傷ついたり、さらには切断することもあるため、患者に深刻な健康問題を引き起こし、身体の一部分を動かなくなったり感覚を失うこともある。
【0013】
本発明者の米国特許出願12/881、411に紹介されているように、多様な脊椎骨の大きさと互いに対する相対的な位置は普通X−線映像を利用して判断することができ、この情報は患者の状態を評価する手段として利用される。
【0014】
具体的に、脊椎骨の形状と位置はX−線映像によって知ることができる。映像でそれぞれの脊椎骨が確認されて装置で処理されれば、装置に設置されたソフトウェアを利用して脊椎の全体や一部分を数学的に分析し、このような分析を利用して患者を診断する。このような分析における今までの問題点は、それぞれの脊椎骨が患者の大きさに特定され、撮影した映像においても、X−線ソース、患者とX−線映像フィルムの相対的位置による倍率/配向上の歪曲を引き起こし、これによって他の脊椎骨に対する正確な形状と大きさと位置を正確に決めることが困難であった。脊椎骨の形状と方向と大きさを決めるとき、若干の誤差があっても病気の診断と治療と予後に誤りが生じる恐れがある。
【0015】
脊椎骨の形状と大きさと位置の正確な感知における他の問題は、脊椎骨と全体脊椎の実際の形状が極めて異なり、人間によっても、年齢、性別、脊椎骨と脊椎自体内の傷や異常の有無に応じて変わることがあるという点である。
【0016】
他の問題は、DX分析機のような既存のシステムは、倍率や配向による歪曲問題を解決することができなという点である。作業者がX−線ソースとフィルムの間隔をあらかじめ決めたとしても、X線ソースとフィルムに対する患者の位置を特定することはできない。患者がX線ソースに近いほどフィルムの映像が実際よりも大きくなり、フィルムに近いほど映像は実際の大きさに近くなる。また、患者が完全に真っ直ぐに立っていられずにX線ソース方向に正確に直角方向に対向することができなければ、X線映像の配向(角度方向)歪曲が生じるようになり、これは脊椎骨が三軸空間に対して再配置されるときに三軸脊椎骨の陰影の二軸構造が変わるためである。このような欠陥により、DX分析機では正確な測定値を求めることができない。
【0017】
米国特許出願12/881、411は、患者をX線ソースに対して正確に位置させるデジタルコンパスを紹介している。実験によれば、デジタルコンパスのみを使用してX−X軸に直角であるY−Y軸に身体を正確に一致させることは容易であったが、倍率歪曲を補正するのに使用される鉛板(lead plate)の映像が常に正確に現れなかった。このような鉛板の映像はX線機械の強度に相当部分が左右されることが明かになり、このような強度は、機械に応じてはもちろん、正常な使用中に発生器に影響を与える因子のために機械内でも大きく変わる。
【0018】
このような問題をなくすために、本発明は、X線装備で作用するX線を取得する新しいシステムを提案する。本発明のシステムは、X線映像を取得する途中に三次元歪曲を制御するセンサを利用し、X線映像を取得する途中に登録されたすべての角度方向歪曲を調節する。X線を取得する途中に登録された情報は、ブルートゥース回路基板や他の適した無線連結によってサーバに送信される。
【0019】
図1〜2に示すように、本発明のシステムは、患者1にX線を放出するX線ソース2を有する。X線は患者を透過して感光体に入り、感光体は原本映像を生成するのに使用される。市上には多くの種類の感光体が存在するが、本実施形態ではX線センサレイ3を使用する。このようなセンサレイはGEで販売するものがあるが、異なるものを使用してもよい
このシステムには、二対の無線センサ、1次センサセットと2次センサセットがある。図1〜2はこのようなセンサの配置を示している。1次センサセットは、メインボード機器6、正面撮影のためにX線検査時の肌透過有効放射線量を測定する正面放射線センサモジュール4、X線センサレイ3との距離(S)を測定する距離センサモジュール5、及び側面撮影のために肌透過有効放射線量を測定する側面放射線センサモジュール8を含む。距離センサモジュール5はケーブルによって正面放射線センサモジュール4と連結し、このセンサモジュール4はケーブルによってメインボード機器6と連結する。1次センサセットと(デジタルコンパスを含んだ)角度方向センサはすべて患者衛星10と連結する。患者衛星10は後述するように、ローカルサーバと通信するためのブルートゥーストランシーバを有する。
【0020】
2次センサセットは、メインボード機器(図示せず)と第2距離センサモジュール7を有し、第2距離センサモジュールは、X線ソース2とX線センサレイ3の間の距離(T)を測定する。メインボード機器と第2距離センサモジュール7は、X線ソース衛星12として一つのハウジング内にあることが好ましい。
【0021】
X線ソース衛星12と患者衛星10は、ブルートゥースのような無線通信によってローカルサーバ20と通信する(図3を参照)。X線センサレイ3によって収集された原本映像もローカルサーバに送られる。
【0022】
患者衛星は、1「x1」、100g未満の小型軽量であることが好ましい。必要によっては、上述した要素を二つ以上のケース内に配置してもよい。衛星は撮影する部分に近く、患者の身体に付着する。
【0023】
一例として、ボタンが付いたシングルECG電極型パッドを患者の肌に付着した後、ボタンを使用してECG電極に衛星を結合する。
【0024】
このシステムは次のように動作する。先ず、患者の衛星をX線装置のX線チューブに向かって補正し、三番目軸線に沿って0度に配置し、三番目軸の干渉を受けずに純粋な側面X線撮影をする。このような補正角度方向はシステムに格納される。患者は患者衛星を受け、この衛星をボタンを使用してECG電極に付着する。続いて、X線ソースとセンサレイの間に患者が位置する。
【0025】
角度方向センサが決めた位置に患者が移動し、三軸角度方向センサを利用する特定X線映像に適合するように患者の角度方向を調整して純粋側面映像を取得する。患者の角度方向位置は角度方向センサが監視する。このセンサは技術者に適合する位置を知らせる。一例として、技術者が患者を特定角度方向に向かうように光や音によって知らせることができる。したがって、角度方向を三次元で規定することができる。
【0026】
患者が正確に位置すれば、X線ソースが作動してX線の生成を開始する。X線は患者と患者衛星を透過してX線センサレイに到着する。患者衛星のX線センサがX線を感知すれば、角度方向センサと超音波センサのデータが格納され、ローカルサーバにメッセージが送信されてX線センサを連結し、X線映像を感知する。
【0027】
ローカルサーバ20と連結したDICOMビューア22で映像を分析する。DICOMビューアは、受信したX線映像を補正してディスプレイすれば、放射線技師がこの映像に適切なマーキングを行う。このような映像マーキングはローカルサーバに格納され、マーキングの座標は遠隔地に送信されて定量化され、X線センサによって登録された特定X線強度によって報告書(好ましくは、PDFフォーマット)が作成される。
【0028】
ローカルサーバ20が受けたX線映像は数回に渡って修正が加えられる。先ず、X線ソースと患者とX線センサレイの間の距離を考慮した倍率修正が行われる。倍率誤差を修正するため、X線映像を取得するたびに倍率値を計算する。倍率値MはM=T/(T−S)式によって計算され、ここで、Tは第2距離センサモジュール7によって測定したX線ソースとセンサレイの間の距離であり、Sは距離センサモジュール5によって測定した患者とセンサレイの間の距離である。倍率値が分かれば、それぞれの映像を調整することができる。
【0029】
その他の修正は、X線映像内の多くのビジュアル要素の角度方向差を考慮したものである。
【0030】
最後に、X線露出に対する修正が必要となる場合がある。同じX線装置によるX線露出であっても、X線の温度に応じて偏差が生じることが明かになった。X線システムの出力を監視すれば、X線装置の性能を監視し続け、患者に対する不必要なX線露出を避けることができる。X線の強度が不適切であれば、映像を調節して報告書に表示する。
図1
図2
図3