【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、本発明によれば、請求項1に記載の特徴を有する多成分繊維
の製造方法によって解決される。
【0007】
請求項1で述べている方法は、複数の容器が同一の軸を中心にして回転させられ、
第2の容器は第1の容器の外周を包囲しており、第1の容器のノズル流出路は第2の容器のノズル流出路の内部に同心配置で延びており、第1の繊維原材料は第1のノズル流出路を通って第1の容器から放出され、第2の繊維原材料は第2のノズル流出路を通って第2の容器から放出され
ることで、第1の繊維原材料と第2の繊維原材料とが芯・外皮包囲繊維(Core−Shell繊維)を形成するように合成されることを特徴としている。
【0008】
本願明細書に述べる方法によって製造される多成分繊維は相互に捩られていることが多い。その際、少なくとも2本の多成分繊維は、2本の紐のように、互いに巻きつけられている。こうした効果は特に回転紡糸法の場合に生ずる。これにより、当該多成分繊維が回転紡糸法によって製造されたか否かを判別することができる。
【0009】
本発明にとって第1に重要なことは、温度感受性を有する繊維原材料から回転紡糸法によって多成分繊維の製造が可能であることを、認識したことである。この種の繊維原材料は、溶融液を使用する従来の紡糸法においては、それらの原材料が損なわれないようにして加工することは不可能である。また、熱可塑性加工不能な繊維原材料も紡糸溶液から紡糸することはできないことが、具体的に判明された。さらに、本発明による方法によれば、ほとんどの場合に溶融不能であるまたは高い温度感受性を有する生分解性物質および生体高分子から多成分繊維または不織布を紡糸することが可能であることも明らかとなった。これは、本発明により、2つの容器が同一の軸を中心にして回転させられることによって実現される。これにより、向心力によって放出された繊維原材料を問題なく合成して多成分繊維とすることが可能になる。回転速度を適切に選択することにより、繊維原材料の容器内滞留時間を適切に選択し、当該繊維原材料がごく短時間しか熱に曝露されず、したがって、温度損傷をなんら蒙らないようにすることができる。その限りで、熱感受性を有する繊維原材料が損なわれることなく加工処理される多成分繊維を作り出すことができる。
【0010】
上記多成分繊維は生体適合性成分を有しおよび/または人体または動物体内において生分解性を示す。上記多成分繊維は人体または動物体内で生分解可能である。これによって、上記多成分繊維は創傷を保護する保護絆として使用可能であり、人体または動物体の組織と問題なく癒合しまたは当該組織によって分解される。
【0011】
上記多成分繊維の少なくとも1つの成分は医薬品を含むまたは医薬品から製造することができる。これによって、ヒトまたは動物に繊維の形で医薬を適用することができる。創傷を保護する当て物を、医薬が組み込まれた繊維からなる不織布から製造することも可能である。さらにその他の適用分野として考えられるのは、美容、再生医学および移植材料の分野である。
【0012】
少なくとも1つの成分は少なくとも50℃の温度にて少なくとも2分間の加熱後に構造が破壊される物質を有することができる。この場合、当該物質の特異効果の減少も構造の破壊として理解される。この種の物質は医薬品として、特に、抗生物質、酵素、増殖因子または鎮痛剤として構成することができる。
【0013】
少なくとも1つの成分は抗生物質を含むことができる。抗生物質により、バクテリアまたは病原体の成長を抑止することが可能である。
少なくとも1つの成分は酵素を含むことができる。酵素によって、代謝過程を制御することが可能である。
少なくとも1つの成分は増殖因子を含むことができる。増殖因子により、細胞増殖に影響を及ぼすことが可能である。
少なくとも1つの成分は鎮痛剤を含むことができる。これによって、上記多成分繊維は創傷を保護する当て物として使用されることで、創傷痛を鎮めることができる。
【0014】
冒頭に述べた課題は請求項
3に記載の特徴を有する
回転紡糸装置によっても解決される。
このことの進歩性に関する繰り返しを避けるためここでは記載しないが、これについては上記多成分繊維
の製造方法の当該発明としての説明を流用することができる。
【0015】
本発明の繊維原材料は互いに補い合って多成分繊維を形成するように合成されることができる。その際、まだ柔らかい繊維原材料は、それぞれの当該ノズル流出路から放出された後、物質接合によって互いに内的に結合することができる。当該ノズル流出路は種々異なった構造の多成分繊維が生ずるように集成配置される。それゆえ、二成分繊維とくに芯・外皮包囲繊維または並行密着繊維つまりいわゆる「Core−Shell繊維」ないし「Side−by−Side繊維」を製造することができる。
【0016】
本発明の第1の容器はインナロータに、上記第2の容器はアウタロータに対応させられ、その際、上記第2の容器は上記第1の容器の外周を包囲し、上記第1の容器のノズル流出路は上記第2の容器のノズル流出路の内部に同心配置で延びている。こうした方法によって、芯・外皮包囲繊維つまりいわゆる「Core−Shell繊維」として形成された多成分繊維を製造することができる。
【0019】
ここで述べられている本発明の方法により、作用物質が充填された芯・外皮包囲繊維いわゆる「Drug−Release繊維(薬剤放出繊維)」を製造することができる。外皮はヒドロゲル化する材料とくにゼラチン、PVA等からなっていてよいであろう。それゆえ、作用物質は芯・外皮包囲繊維から拡散することができる。芯・外皮包囲繊維は創傷治癒促進性または抗菌性を有する芯たとえば医療用蜂蜜、パンテノール、キトサン等を有することができる。吸水性創傷保護絆用に、ゲル化しない芯とゲル化する外皮とからなる芯・外皮包囲繊維を製造することもできる。また、ゲル化材料と非ゲル化材料とからなる「Side−by−Side繊維」を製造することも可能である。
【0020】
中空繊維を製造するために、芯・外皮包囲繊維の芯を洗浄除去またはその他の方途で除去可能とすることができる。芯はたとえば温度処理によって取り除くことができる。芯を除去することによって、中空繊維の表面積は増大する。アクセス可能な繊維表面積の増大によって、繊維質の創傷保護絆の表面活性は高められる。
【0021】
ここで述べられている本発明の方法により、芯・外皮包囲繊維の芯用に、紡糸不能または極度に紡糸困難な繊維原材料を紡糸することもできる。特に、作用物質またはタンパク質を含有する水溶液を紡糸することが可能である。
【0022】
ここで述べられている本発明の方法により、相互に反応する2種の繊維原材料を紡糸することもできる。この場合具体的には、ポリマーをその架橋剤と共に紡糸することが可能である。これによって、紡糸プロセスと架橋反応とを1つの工程で実施することができる。
【0023】
ここで述べられている本発明の方法においては、以下に挙げるポリマーならびに該ポリマーの混合物の紡糸溶液、分散液、乳濁液または溶融液を使用することができる。
【0024】
合成生分解性ポリマーたとえばポリアクチド、ポリアクチド−コ−グリコリド共重合体たとえばResomer RG 502 H、ポリアクチド−ブロック−ポリエチレンオキシドたとえばResomer RGP d 5055、ポリカプロラクトン、ポリカプロラクトン−ブロック−ポリエチレンオキシド、ポリ無水物たとえばポリフェプロサン、ポリオルトエステル、ポリホスホエステルたとえばポリラクトフェート、合成生分解性ポリマーないし医療に使用されるポリマーたとえばポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルクロリド、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ−2−ヒドロキシエチルメタクリレート、生体高分子たとえばタンパク質およびペプチド、多糖類、脂質、核酸および特にゼラチン、コラーゲン、アルギン酸塩、セルロース、エラスチン、デンプン、キチン、キトサン、ヒアルロン酸、デキストラン、シェラック、ポリマー−作用物質−結合体つまり生分解性または生体適合性ポリマーと結合した作用物質または添加剤、および上記ポリマー類の共重合体。
【0025】
紡糸溶液には添加剤または作用物質を混入することができる。
その際、酵素、抗微生物剤、ビタミン、抗酸化剤、抗感染薬、抗生物質、抗ウィルス作用物質、「抗拒絶剤」、鎮痛剤、複合鎮痛剤、抗炎症薬、炎症予防剤、創傷治癒促進剤、ホルモン、ステロイド、テストステロン、エストラジオール、ペプチドおよび/またはペプチド配列、固定化された癒着促進性ペプチド配列たとえば細胞外基質タンパク質のペプチド配列およびペプチド断片、特に、1以上のアミノ酸配列RGD−、LDV−、GFOGER−、IKVAV−、SVVYGLR−、COMP−、ADAM−、POEM−、YIGSR−、GVKGDKGNPGWPGAP−、シクロ−DfKRG−、KRSR−を含むペプチド、単離されたおよび/または遺伝的に形成されたタンパク質、多糖類、糖タンパク質、リポ蛋白質、アミノ酸、特に増殖因子系TGFとくにTGF−β)、FGF、PDGF、EGF、GMCSF、VEGF、IGF、HGF、IL−1B、IL8およびNG、RNA、siRNA、mRNAおよび/またはDNA由来の増殖因子、抗がん剤たとえばパクリタキセル、ドキソルビシン、1,3−ビス−2−クロロエチル−1−ニトロソウレアBCNU、カンプトテシン、生細胞、鎮静剤、ニコチン、ニトログリセリン、クロニジン、フェンタニル、スコポラミン、ラパマイシン、シロリムス、硫酸ゲンタマイシン、ゲンタマイシンクロベフェート、アミノスルホン酸、スルホンアミドペプチド、D−アミノ酸系のペプチド類似分子、フラノン誘導体、デキサメタゾン、β−リン酸三カルシウムおよび/またはヒドロキシアパタイト、とりわけ特にヒドロキシアパタイト・ナノ粒子がそれぞれ0.000001〜70%の濃度にて使用可能である。
【0026】
ここで述べられている本発明の方法により、紡糸可能な繊維原材料たとえば生体高分子とりわけタンパク質、多糖類、およびポリマーは紡糸水溶液または有機溶媒中に広い濃度幅で存在する。
【0027】
上記方法を繊維原材料溶融液たとえばポリマーとりわけポリカプロラクトンおよび多糖類とりわけサッカロースの溶融液で実施することも可能である。
【0028】
異なった紡糸溶液を混合することもできる。特に、第1の紡糸溶液つまりポリビニルピロリドンおよびポリビニルアルコールからなる溶液と、第2の紡糸溶液つまりゼラチンおよびアルギン酸ナトリウムからなる溶液とを混合することが可能である。
分散液および乳濁液を紡糸溶液として使用することも可能である。
【0029】
ここで述べられている本発明の方法により、それ自体としては紡糸不能な繊維原材料も繊維の芯として紡糸することができる。特に、溶解された作用物質を含んだ水溶液を紡糸することができる。
【0030】
ここで述べられている本発明の方法によって製造された多成分繊維は後処理たとえば架橋反応に付することができる。これらの多成分繊維は圧縮固着法によって不織布に加工することもできる。
上記説明中に挙げた繊維原材料は紡糸溶液として形成可能である。
【0031】
さて、本発明による技術を好適な方法で実施するとともに、さらなる技術の展開のためのさまざまな可能性が存在する。この点については、一方では、従属請求項の記載を、他方では、本発明による方法ならびに本発明による多成分繊維に関する下記の実施形態での説明が参照される。
【0032】
以下、好ましい実施例の説明に加えて、本発明による技術思想の一般に好ましい実施態様ならびにその発展態様も説明する。