特許第5907568号(P5907568)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5907568多成分繊維を合成するための方法、同方法を実施するための装置、及び多成分繊維
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5907568
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】多成分繊維を合成するための方法、同方法を実施するための装置、及び多成分繊維
(51)【国際特許分類】
   D01F 8/04 20060101AFI20160412BHJP
   D01D 5/08 20060101ALI20160412BHJP
   D01D 5/34 20060101ALI20160412BHJP
   D01F 1/10 20060101ALI20160412BHJP
【FI】
   D01F8/04 ZZBP
   D01D5/08 F
   D01D5/34
   D01F1/10
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-500350(P2013-500350)
(86)(22)【出願日】2011年1月18日
(65)【公表番号】特表2013-524025(P2013-524025A)
(43)【公表日】2013年6月17日
(86)【国際出願番号】EP2011000177
(87)【国際公開番号】WO2011116848
(87)【国際公開日】20110929
【審査請求日】2012年9月25日
(31)【優先権主張番号】102010012845.7
(32)【優先日】2010年3月25日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510057615
【氏名又は名称】カール・フロイデンベルク・カー・ゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120352
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100126930
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 隆司
(72)【発明者】
【氏名】シュミッツ,ヴィープケ
(72)【発明者】
【氏名】グラファーレント,ディルク
(72)【発明者】
【氏名】ライベル,デニス
【審査官】 平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭44−000902(JP,B1)
【文献】 米国特許第03358322(US,A)
【文献】 特表2007−516360(JP,A)
【文献】 特表2000−505511(JP,A)
【文献】 特開平08−170216(JP,A)
【文献】 欧州特許第00801040(EP,B1)
【文献】 国際公開第2009/036958(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/015709(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F1/00〜 9/04
D04H1/00〜18/04
D01D1/00〜13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の繊維原材料(1)は第1の容器(2)に満たされ、第2の繊維原材料(3)は第2の容器(4)に満たされて、双方の容器(2、4)は回転させられ、前記第1の繊維原材料(1)は前記第1の容器(2)から放出され、前記第2の繊維原材料(3)は前記第2の容器(4)から放出されて、前記双方の繊維原材料(1、3)は前記容器(2、4)から放出された後に合成される方法であって、
前記容器(2、4)は同一の軸(A)を中心にして回転させられ、前記第2の容器(4)は前記第1の容器(2)の外周を包囲しており、前記第1の容器(2)のノズル流出路(5)は前記第2の容器(4)のノズル流出路(6)の内部に同心配置で延びており、
前記第1の繊維原材料(1)は前記第1の容器(2)のノズル流出路(5)を通って前記第1の容器(2)から放出され、前記第2の繊維原材料(3)は前記第2の容器(4)のノズル流出路(6)を通って前記第2の容器(4)から放出されることで、前記第1の繊維原材料(1)と前記第2の繊維原材料(3)とが芯・外皮包囲繊維(Core−Shell繊維)を形成するように合成されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記繊維原材料(1、3)は互いに補い合って多成分繊維を形成するように合成されることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法を実施するための装置であって、同一の軸(A)を中心にして回転可能な2つの容器(2、4)を含み、その際、第1の容器(2)には第1のノズル流出路()が配され、第2の容器(4)には第2のノズル流出路()が配されて、
前記第2の容器(4)は前記第1の容器(2)の外周を包囲し、前記第1の容器(2)のノズル流出路(5)は前記第2の容器(4)のノズル流出路(6)の内部に同心配置で延びていることを特徴とする回転紡糸装置
【請求項4】
前記第1の容器(2)はインナロータ(7)に、前記第2の容器(4)は前記インナロータ(7)の外周を包囲するアウタロータ(8)に、それぞれ対応していることを特徴とする請求項3に記載の回転紡糸装置
【請求項5】
請求項1または2に記された方法及び請求項3または4に記された回転紡糸装置の少なくともいずれかを用いて製造された多成分繊維。
【請求項6】
生体適合性成分を有するか、または人体または動物体内において生分解性を有するか、あるいはそれら両方を有することを特徴とする請求項に記載の多成分繊維。
【請求項7】
少なくとも1つの成分は医薬品を含むか、または医薬品から製造されていることを特徴とする請求項5または6に記載の多成分繊維。
【請求項8】
少なくとも1つの成分は少なくとも50℃の温度にて少なくとも2分間の加熱後に構造が破壊される物質を有することを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の多成分繊維。
【請求項9】
少なくとも1つの成分は抗生物質を含むことを特徴とする請求項5〜8のいずれか1項に記載の多成分繊維。
【請求項10】
少なくとも1つの成分は酵素を含むことを特徴とする請求項5〜9のいずれか1項に記載の多成分繊維。
【請求項11】
少なくとも1つの成分は増殖因子を含むことを特徴とする請求項5〜10のいずれか1項に記載の多成分繊維。
【請求項12】
少なくとも1つの成分は鎮痛剤を含むことを特徴とする請求項5〜11のいずれか1項に記載の多成分繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一体となって繊維体を形成する第1の成分と第2の成分とを含み、前記第1の成分は第1の繊維原材料からなり、前記第2の成分は第2の繊維原材料からなる多成分繊維に関する。本発明はさらに、第1の繊維原材料は第1の容器に満たされ、第2の繊維原材料は第2の容器に満たされて、双方の容器は回転させられ、前記第1の繊維原材料は前記第1の容器から放出され、前記第2の繊維原材料は前記第2の容器から放出されて、前記双方の繊維原材料は前記容器から放出された後に合成される方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術から、従来の紡糸法によって溶融液から中空繊維、二成分繊維または多成分繊維を作製、製造することが知られている。
このような技術を背景として、欧州特許公開公報第801039号から、回転容器によって二成分繊維を製造するための方法が知られている。この方法において、第1の溶融鉱物性繊維原材料は第1の回転容器からノズルを経て放出される。放出されたこの第1の鉱物性繊維原材料上に、外部から、第2の溶融鉱物性繊維原材料が放出されるが、これは後者が第1の回転容器の外周壁上に射出されることによって行われる。第1の容器は第2の容器から離間配置されており、双方の容器は互いに独立に回転可能である。
【0003】
公知の方法において、高温を使用してのみ、つまり、溶融液の作製によってのみ多成分繊維を製造することができないという短所がある。この場合、熱感受性を有する繊維原材料を、当該原材料を損なうことなく、二成分繊維に加工することはできないとの点が短所である。とりわけ、医薬品、殺カビ剤、殺菌剤および類似の熱感受性を有する材料は上記の方法で加工することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許公開公報第801039号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明の目的は、熱感受性を有する繊維原材料が損なわれることなく加工処理される多成分繊維を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、本発明によれば、請求項1に記載の特徴を有する多成分繊維の製造方法によって解決される。
【0007】
請求項1で述べている方法は、複数の容器が同一の軸を中心にして回転させられ、第2の容器は第1の容器の外周を包囲しており、第1の容器のノズル流出路は第2の容器のノズル流出路の内部に同心配置で延びており、第1の繊維原材料は第1のノズル流出路を通って第1の容器から放出され、第2の繊維原材料は第2のノズル流出路を通って第2の容器から放出されることで、第1の繊維原材料と第2の繊維原材料とが芯・外皮包囲繊維(Core−Shell繊維)を形成するように合成されることを特徴としている。
【0008】
本願明細書に述べる方法によって製造される多成分繊維は相互に捩られていることが多い。その際、少なくとも2本の多成分繊維は、2本の紐のように、互いに巻きつけられている。こうした効果は特に回転紡糸法の場合に生ずる。これにより、当該多成分繊維が回転紡糸法によって製造されたか否かを判別することができる。
【0009】
本発明にとって第1に重要なことは、温度感受性を有する繊維原材料から回転紡糸法によって多成分繊維の製造が可能であることを、認識したことである。この種の繊維原材料は、溶融液を使用する従来の紡糸法においては、それらの原材料が損なわれないようにして加工することは不可能である。また、熱可塑性加工不能な繊維原材料も紡糸溶液から紡糸することはできないことが、具体的に判明された。さらに、本発明による方法によれば、ほとんどの場合に溶融不能であるまたは高い温度感受性を有する生分解性物質および生体高分子から多成分繊維または不織布を紡糸することが可能であることも明らかとなった。これは、本発明により、2つの容器が同一の軸を中心にして回転させられることによって実現される。これにより、向心力によって放出された繊維原材料を問題なく合成して多成分繊維とすることが可能になる。回転速度を適切に選択することにより、繊維原材料の容器内滞留時間を適切に選択し、当該繊維原材料がごく短時間しか熱に曝露されず、したがって、温度損傷をなんら蒙らないようにすることができる。その限りで、熱感受性を有する繊維原材料が損なわれることなく加工処理される多成分繊維を作り出すことができる。
【0010】
上記多成分繊維は生体適合性成分を有しおよび/または人体または動物体内において生分解性を示す。上記多成分繊維は人体または動物体内で生分解可能である。これによって、上記多成分繊維は創傷を保護する保護絆として使用可能であり、人体または動物体の組織と問題なく癒合しまたは当該組織によって分解される。
【0011】
上記多成分繊維の少なくとも1つの成分は医薬品を含むまたは医薬品から製造することができる。これによって、ヒトまたは動物に繊維の形で医薬を適用することができる。創傷を保護する当て物を、医薬が組み込まれた繊維からなる不織布から製造することも可能である。さらにその他の適用分野として考えられるのは、美容、再生医学および移植材料の分野である。
【0012】
少なくとも1つの成分は少なくとも50℃の温度にて少なくとも2分間の加熱後に構造が破壊される物質を有することができる。この場合、当該物質の特異効果の減少も構造の破壊として理解される。この種の物質は医薬品として、特に、抗生物質、酵素、増殖因子または鎮痛剤として構成することができる。
【0013】
少なくとも1つの成分は抗生物質を含むことができる。抗生物質により、バクテリアまたは病原体の成長を抑止することが可能である。
少なくとも1つの成分は酵素を含むことができる。酵素によって、代謝過程を制御することが可能である。
少なくとも1つの成分は増殖因子を含むことができる。増殖因子により、細胞増殖に影響を及ぼすことが可能である。
少なくとも1つの成分は鎮痛剤を含むことができる。これによって、上記多成分繊維は創傷を保護する当て物として使用されることで、創傷痛を鎮めることができる。
【0014】
冒頭に述べた課題は請求項に記載の特徴を有する回転紡糸装置によっても解決される。
このことの進歩性に関する繰り返しを避けるためここでは記載しないが、これについては上記多成分繊維の製造方法の当該発明としての説明を流用することができる。
【0015】
本発明の繊維原材料は互いに補い合って多成分繊維を形成するように合成されることができる。その際、まだ柔らかい繊維原材料は、それぞれの当該ノズル流出路から放出された後、物質接合によって互いに内的に結合することができる。当該ノズル流出路は種々異なった構造の多成分繊維が生ずるように集成配置される。それゆえ、二成分繊維とくに芯・外皮包囲繊維または並行密着繊維つまりいわゆる「Core−Shell繊維」ないし「Side−by−Side繊維」を製造することができる。
【0016】
本発明の第1の容器はインナロータに、上記第2の容器はアウタロータに対応させられ、その際、上記第2の容器は上記第1の容器の外周を包囲し、上記第1の容器のノズル流出路は上記第2の容器のノズル流出路の内部に同心配置で延びている。こうした方法によって、芯・外皮包囲繊維つまりいわゆる「Core−Shell繊維」として形成された多成分繊維を製造することができる。
【0019】
ここで述べられている本発明の方法により、作用物質が充填された芯・外皮包囲繊維いわゆる「Drug−Release繊維(薬剤放出繊維)」を製造することができる。外皮はヒドロゲル化する材料とくにゼラチン、PVA等からなっていてよいであろう。それゆえ、作用物質は芯・外皮包囲繊維から拡散することができる。芯・外皮包囲繊維は創傷治癒促進性または抗菌性を有する芯たとえば医療用蜂蜜、パンテノール、キトサン等を有することができる。吸水性創傷保護絆用に、ゲル化しない芯とゲル化する外皮とからなる芯・外皮包囲繊維を製造することもできる。また、ゲル化材料と非ゲル化材料とからなる「Side−by−Side繊維」を製造することも可能である。
【0020】
中空繊維を製造するために、芯・外皮包囲繊維の芯を洗浄除去またはその他の方途で除去可能とすることができる。芯はたとえば温度処理によって取り除くことができる。芯を除去することによって、中空繊維の表面積は増大する。アクセス可能な繊維表面積の増大によって、繊維質の創傷保護絆の表面活性は高められる。
【0021】
ここで述べられている本発明の方法により、芯・外皮包囲繊維の芯用に、紡糸不能または極度に紡糸困難な繊維原材料を紡糸することもできる。特に、作用物質またはタンパク質を含有する水溶液を紡糸することが可能である。
【0022】
ここで述べられている本発明の方法により、相互に反応する2種の繊維原材料を紡糸することもできる。この場合具体的には、ポリマーをその架橋剤と共に紡糸することが可能である。これによって、紡糸プロセスと架橋反応とを1つの工程で実施することができる。
【0023】
ここで述べられている本発明の方法においては、以下に挙げるポリマーならびに該ポリマーの混合物の紡糸溶液、分散液、乳濁液または溶融液を使用することができる。
【0024】
合成生分解性ポリマーたとえばポリアクチド、ポリアクチド−コ−グリコリド共重合体たとえばResomer RG 502 H、ポリアクチド−ブロック−ポリエチレンオキシドたとえばResomer RGP d 5055、ポリカプロラクトン、ポリカプロラクトン−ブロック−ポリエチレンオキシド、ポリ無水物たとえばポリフェプロサン、ポリオルトエステル、ポリホスホエステルたとえばポリラクトフェート、合成生分解性ポリマーないし医療に使用されるポリマーたとえばポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルクロリド、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ−2−ヒドロキシエチルメタクリレート、生体高分子たとえばタンパク質およびペプチド、多糖類、脂質、核酸および特にゼラチン、コラーゲン、アルギン酸塩、セルロース、エラスチン、デンプン、キチン、キトサン、ヒアルロン酸、デキストラン、シェラック、ポリマー−作用物質−結合体つまり生分解性または生体適合性ポリマーと結合した作用物質または添加剤、および上記ポリマー類の共重合体。
【0025】
紡糸溶液には添加剤または作用物質を混入することができる。
その際、酵素、抗微生物剤、ビタミン、抗酸化剤、抗感染薬、抗生物質、抗ウィルス作用物質、「抗拒絶剤」、鎮痛剤、複合鎮痛剤、抗炎症薬、炎症予防剤、創傷治癒促進剤、ホルモン、ステロイド、テストステロン、エストラジオール、ペプチドおよび/またはペプチド配列、固定化された癒着促進性ペプチド配列たとえば細胞外基質タンパク質のペプチド配列およびペプチド断片、特に、1以上のアミノ酸配列RGD−、LDV−、GFOGER−、IKVAV−、SVVYGLR−、COMP−、ADAM−、POEM−、YIGSR−、GVKGDKGNPGWPGAP−、シクロ−DfKRG−、KRSR−を含むペプチド、単離されたおよび/または遺伝的に形成されたタンパク質、多糖類、糖タンパク質、リポ蛋白質、アミノ酸、特に増殖因子系TGFとくにTGF−β)、FGF、PDGF、EGF、GMCSF、VEGF、IGF、HGF、IL−1B、IL8およびNG、RNA、siRNA、mRNAおよび/またはDNA由来の増殖因子、抗がん剤たとえばパクリタキセル、ドキソルビシン、1,3−ビス−2−クロロエチル−1−ニトロソウレアBCNU、カンプトテシン、生細胞、鎮静剤、ニコチン、ニトログリセリン、クロニジン、フェンタニル、スコポラミン、ラパマイシン、シロリムス、硫酸ゲンタマイシン、ゲンタマイシンクロベフェート、アミノスルホン酸、スルホンアミドペプチド、D−アミノ酸系のペプチド類似分子、フラノン誘導体、デキサメタゾン、β−リン酸三カルシウムおよび/またはヒドロキシアパタイト、とりわけ特にヒドロキシアパタイト・ナノ粒子がそれぞれ0.000001〜70%の濃度にて使用可能である。
【0026】
ここで述べられている本発明の方法により、紡糸可能な繊維原材料たとえば生体高分子とりわけタンパク質、多糖類、およびポリマーは紡糸水溶液または有機溶媒中に広い濃度幅で存在する。
【0027】
上記方法を繊維原材料溶融液たとえばポリマーとりわけポリカプロラクトンおよび多糖類とりわけサッカロースの溶融液で実施することも可能である。
【0028】
異なった紡糸溶液を混合することもできる。特に、第1の紡糸溶液つまりポリビニルピロリドンおよびポリビニルアルコールからなる溶液と、第2の紡糸溶液つまりゼラチンおよびアルギン酸ナトリウムからなる溶液とを混合することが可能である。
分散液および乳濁液を紡糸溶液として使用することも可能である。
【0029】
ここで述べられている本発明の方法により、それ自体としては紡糸不能な繊維原材料も繊維の芯として紡糸することができる。特に、溶解された作用物質を含んだ水溶液を紡糸することができる。
【0030】
ここで述べられている本発明の方法によって製造された多成分繊維は後処理たとえば架橋反応に付することができる。これらの多成分繊維は圧縮固着法によって不織布に加工することもできる。
上記説明中に挙げた繊維原材料は紡糸溶液として形成可能である。
【0031】
さて、本発明による技術を好適な方法で実施するとともに、さらなる技術の展開のためのさまざまな可能性が存在する。この点については、一方では、従属請求項の記載を、他方では、本発明による方法ならびに本発明による多成分繊維に関する下記の実施形態での説明が参照される。
【0032】
以下、好ましい実施例の説明に加えて、本発明による技術思想の一般に好ましい実施態様ならびにその発展態様も説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】インナロータとアウタロータとを有する装置の横断面図である。
図2】インナロータとアウタロータとを有する装置の側方断面図である。
図3図1および図2に示した装置のノズル流出路出口面の平面図である。
図4】上方ロータ部と下方ロータ部とを有する装置の側方断面図である。
図5図4に示した装置のノズル流出路出口面の平面図である。
図6】芯・外皮包囲繊維および並行密着繊維を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、第1の繊維原材料1が第1の容器2に満たされ、第2の繊維原材料3が第2の容器4に満たされて、双方の容器2、4が回転させられ、第1の繊維原材料1は第1の容器2から放出され、第2の繊維原材料3は第2の容器4から放出されて、双方の繊維原材料1、3は容器2、4から放出された後に合成される方法を実施するための装置を示している。
【0035】
容器2、4は同一の軸Aを中心にして回転させられ、その際、第1の繊維原材料1は第1のノズル流出路5を通って第1の容器1から放出され、第2の繊維原材料3は第2のノズル流出路6を通って第2の容器から放出される。双方の繊維原材料1、3は、互いに補い合って1本の多成分繊維を形成するように合成される。
【0036】
第1の容器2はインナロータ7に、第2の容器4はアウタロータ8にそれぞれ対応しており、その際、第2の容器4は第1の容器2の外周を包囲し、第1の容器2のノズル流出路5は第2の容器4のノズル流出路6の内部に同心配置で延びている。インナロータ7とアウタロータ8とは同心配置されている。ノズル流出路5、6はそれぞれ繊維原材料1、3が流出する出口孔を有している。
【0037】
図2は上述した方法を実施するための装置の側方断面図を示しており、該装置において第1の容器2は第2の容器4内に完全に収容されて、該容器によって同心包囲されている。
【0038】
図3は、芯・外皮包囲繊維を製造可能な、図1および2に示した同心配置されたノズル流出路5、6の出口孔の平面図を示している。
【0039】
図4は本願明細書に述べる方法を実施するための装置の側方断面図を示しており、該装置において、第1の容器2は下方ロータ部9に対応し、第2の容器4は上方ロータ部10に対応し、第1の容器2の半円形の断面を有するノズル流出路9aは第2の容器4の半円形の断面を有するノズル流出路10aに密着している。
ノズル流出路9a、10aはそれぞれ繊維原材料1、3が流出する出口孔を有している。
【0040】
図5は、半円形の断面を有し、互いに平坦面で密着しているノズル流出路9a、10aの出口孔の平面図を示している。この形状のノズル流出路は並行密着繊維つまり「Side−by−Side繊維」の製造に使用される。
【0041】
図6において、左側の図は芯・外皮包囲繊維として形成された多成分繊維を示しており、右側の図は並行密着繊維として形成された多成分繊維を示している。
図6は、一体となって1本の繊維体11を形成するそれぞれ第1の成分と第2の成分とを含み、第1の成分は第1の繊維原材料1からなり、第2の成分は第2の繊維原材料3からなる2種類の多成分繊維を示している。これらの多成分繊維は回転紡糸法により製造されている。
【0042】
以下に述べる実施例には、上述した装置によって多成分繊維またはフリースが如何にして製造されるかが説明されている。
この際、上記の繊維原材料1、3は紡糸溶液として形成されている。
【0043】
〔実施例1〕
芯・外皮包囲繊維として形成される二成分繊維の製造:
芯・外皮包囲繊維からなる不織布は図1に示した装置を用い、回転紡糸法により以下のようにして製造される。
紡糸溶液1として20%ゼラチン溶液が製造される。GELITA AGのAタイプのゼラチンPIGSKINが使用される。このゼラチンは水と混合される。このゼラチン溶液はその後、膨潤させるために、約1時間静置される。続いて、溶解され、その後約2時間60℃の温度に保たれる。
紡糸溶液3として40%ポリビニルピロリドン水溶液が製造される。ポリビニルピロリドン(MG約40000g/mol)は水に攪拌混入され、70℃にて水浴中で溶解される。
【0044】
紡糸溶液1はチューブポンプによってインナロータ7の容器2内に移送され、紡糸溶液3は同時に、さらに別のチューブポンプによってアウタロータ8の容器4内に移送される。
容器2、4は約80℃の温度を有し、共通の軸Aを中心にして、回転数4500回転/分にて回転する。インナロータ7はアウタロータ8の内部に位置している。インナロータ7からは、直径0.5mmのノズル流出路5が突き出している。これらのノズル流出路はそれぞれアウタロータ8から延びる直径1.0mmのノズル流出路6内に合流し、該ノズルと共に、芯・外皮区域を有する二成分繊維あるいはまた中空繊維を製造するための紡糸ノズルを形成する。
繊維原材料1、3は向心力によって圧されてノズル流出路5、6を通過し、吸引装置によってドラフトされる二成分繊維に紡糸される。吸引装置は容器2、4の下方に位置している。
ポリマーがこの方法によって分解されることはなかったことの証明はクロマトグラフィーによって行うことができる。
【0045】
〔実施例2〕
紡糸不能の芯を有する芯・外皮包囲繊維として形成される二成分繊維の製造:
芯・外皮区域を有する二成分繊維からなる不織布は図1に示した装置を用い、回転紡糸法により以下のようにして製造される。
紡糸溶液1として5%ゼラチン溶液が使用される。GELITA AGのAタイプのゼラチンPIGSKINが使用される。このゼラチンは水と混合される。このゼラチン溶液はその後、膨潤させるために、約1時間静置される。続いて、溶解され、その後約2時間60℃の温度に保たれる。
紡糸溶液3として、濃度0.1mg/Lのアセチルサリチル酸と1重量%のポリエチレンオキシド(MG約900000g/mol)とからなる作用物質水溶液が使用される。アセチルサリチル酸は水に溶解される。
紡糸溶液1はチューブポンプによってインナロータ7の容器2内に移送され、紡糸溶液3はさらに別のチューブポンプによってアウタロータ8の容器4内に移送される。
容器2、4は約60℃の温度を有し、回転数4500回転/分にて回転する。
インナロータ7はアウタロータ8の内部に位置している。インナロータ7からは、直径0.5mmのノズル流出路5が突き出している。これらのノズル流出路はそれぞれアウタロータ8から延びる直径1.0mmのノズル流出路6内に合流し、該ノズルと共に、芯・外皮区域を有する二成分繊維あるいは中空繊維を製造するための紡糸ノズルを形成する。
繊維原材料1、3は向心力によって圧されノズル流出路5、6を通過し、吸引装置によってドラフトされる二成分繊維に紡糸される。吸引装置は容器2、4の下方に位置している。
【0046】
〔実施例3〕
並行密着繊維として形成される二成分繊維つまり並行密着区域を有する二成分繊維の製造:
並行密着区域を有する二成分繊維からなる不織布は図4に示した装置を用い、回転紡糸法により以下のようにして製造される。
ニルピロリドン(MG約40000g/mol)は水に攪拌混入され、70℃にて水浴中で溶解される。
紡糸溶液1を製造するために、40%ゼラチン溶液が製造される。GELITA AGのAタイプのゼラチンPIGSKINが使用される。このゼラチンは水と混合される。このゼラチン溶液はその後、膨潤させるために、約1時間静置される。続いて、溶解され、その後約2時間60℃の温度に保たれる。
【0047】
紡糸溶液3はチューブポンプによって上方ロータ部10の容器4内に移送され、紡糸溶液1はさらに別のチューブポンプによって下方ロータ部9の容器2内に移送される。
容器2、4は約80℃の温度を有し、回転数4500回転/分にて回転する。
ロータ9、10は上方容器4と下方容器2とに区分されている。下方容器2と上方容器4とのそれぞれ直径0.3mmのノズル流出路9a、10aはロータ9、10の外壁部において互いに面一をなして整列し、一体となって、並行密着区域を有する二成分繊維を製造するための紡糸ノズルを形成する。これは図4および5に示されている。
繊維原材料1、3は向心力によって圧されてノズル流出路9a、10aを通過し、吸引装置によってドラフトされる二成分繊維に紡糸される。吸引装置は容器2、4の下方に位置している。
紡糸溶液1、3はそれらの粘性につき、これらの紡糸溶液がそれぞれノズル流出路5、6、9a、10aから放出された後、繊維体を形成するのに十分な強度を示すよう調整されている。ノズル流出路5、6、9a、10aから放出された後、紡糸溶液1、3は冷えて、強度に圧縮固着および/または架橋される。
【0048】
本発明による技術思想のさらにその他の好適な実施態様および発展態様については、一方では、本願明細書記載の説明の一般的な部分が、他方では、本願明細書添付の特許請求の範囲が参照される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6