(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(b)の画像の切り出しを、マブタを閉じた状態の睫毛の解析を行う方の目の目元の白黒画像に基づいて、目頭部分と目尻部分との間の横幅を横寸法とし、目頭部分および目尻部分のうちの上方に位置する方と最長の睫毛の最先端部との間の縦幅を縦寸法とする方形の画像部分を解析用の画像として切り出すことによって行う、請求項1に記載の睫毛の解析方法。
マブタを閉じた状態の右目および左目を含む目元部分を写真撮影して得られる白黒化した白黒画像、白黒画像から切り出した右目および/または左目の画像、切り出した右目および/または左目の画像に基づくヒストグラム、切り出した右目および/または左目の画像に基づいて作製した補正画像、補正画像に基づく2値化画像、補正画像に基づくヒストグラム、補正画像における睫毛上をラインスキャンして得られる時系列信号、当該時系列信号のフーリエ変換グラフ、各時点について得られた睫毛の長さ、量、太さ、本数、異なる時点で得られた睫毛の長さ、量、太さ、本数の対比結果のうちの1つ以上を、数値および/または画像によってモニター上に表示する請求項1〜4のいずれか1項に記載の睫毛の解析方法。
コンピュータに各人ごとのホルダーを設け、マブタを閉じた状態での目元の写真画像、当該写真画像を白黒化した白黒画像、請求項1〜5のいずれか1項の解析方法を実施して得られる各種データおよび解析結果を、当該ホルダーに各人ごとに保存して再利用可能にする請求項1〜5のいずれか1項に記載の睫毛の解析方法。
前記(b)の画像の切り出し手段が、マブタを閉じた状態の睫毛の解析を行う方の目の目元の白黒画像に基づいて、目頭部分と目尻部分との間の横幅を横寸法とし、目頭部分および目尻部分のうちの上方に位置する方と最長の睫毛の最先端部との間の縦幅を縦寸法とする方形の画像部分を解析用の画像として切り出す手段である、請求項7に記載の睫毛の解析装置。
マブタを閉じた状態の右目および左目を含む目元部分を写真撮影して得られる白黒化した白黒画像、白黒画像から切り出した右目および/または左目の画像、切り出した右目および/または左目の画像に基づくヒストグラム、切り出した右目および/または左目の画像に基づいて作製した補正画像、補正画像に基づく2値化画像、補正画像に基づくヒストグラム、補正画像における睫毛上をラインスキャンして得られる時系列信号、当該時系列信号のフーリエ変換グラフ、各時点について得られた睫毛の長さ、量、太さ、本数の値、それぞれの時点における睫毛の長さ、量、太さ、本数の対比結果のうちの1つ以上を、数値および/または画像によってモニター上に表示する手段を有する請求項7または8に記載の睫毛の解析装置。
マブタを閉じた状態の右目および左目を含む目元部分を写真撮影して得られる白黒化した白黒画像、白黒画像から切り出した右目および/または左目の画像、切り出した右目および/または左目の画像に基づくヒストグラム、切り出した右目および/または左目の画像に基づいて作製した補正画像、補正画像に基づく2値化画像、補正画像に基づくヒストグラム、補正画像における睫毛上をラインスキャンして得られる時系列信号、当該時系列信号のフーリエ変換グラフ、各時点について得られた睫毛の長さ、量、太さ、本数の値、それぞれの時点における睫毛の長さ、量、太さ、本数の対比結果のうちの1つ以上を、各人ごとに整理して保存するための手段を有する請求項7〜9のいずれか1項に記載の睫毛の解析装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、マスカラ、睫毛用トリートメント、睫毛美容液、各種サプリメント、飲食物などによる睫毛に対する育毛効果の有無や大小、睫毛の装飾性の向上効果などを、客観的に評価することのできる方法および装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成すべく、本発明者は種々検討を重ね、以下の睫毛解析方法および解析装置を開発した。
すなわち、本発明は、
(1) 睫毛の解析方法であって、
(a)マブタを閉じた状態の右目および左目を含む目元の写真画像を、当該写真画像が白黒画像である場合にはそのままで、また当該写真画像がカラー画像である場合には白黒画像に変換してコンピュータに取り込み、
(b)前記の白黒画像から、睫毛の解析を行う方の目について、目頭部分、目尻部分および睫毛部分の全体を含み且つ眉毛部分を含まない画像を切り出し;
(c)前記(b)で切り出した画像に基づく明暗(輝度信号)によるヒストグラムが横軸方向に最も暗い値から最も明るい値に分布して広がるように、前記(b)で切り出した画像の明暗を補正して補正画像とし;
(d)前記(c)の補正画像に基づいて、2値化画像を作製し;
(e)前記(c)の補正画像に基づいて、明暗(輝度信号)によるヒストグラムを作製し;
(f)補正画像における睫毛上を、目頭側から目尻側へとまたは目尻側から目頭側へとラインスキャンして、横軸を時間および縦軸を明暗(輝度)とする時系列信号として出力し;
(g)前記(f)で出力された時系列信号をフーリエ変換し;
(h)前記(c)で得られた補正画像に基づいて、最長の睫毛の長さを測定し;
(i)前記(d)の2値化画像のデータおよび/または前記(e)のヒストグラムから、睫毛の量を求め;
(j)上記(g)で算出されたフーリエ変換の結果から、睫毛の太さおよび/または睫毛の本数を求める;
ことを特徴とする睫毛の解析方法である。
【0008】
そして、本発明は、
(2) 前記(b)の画像の切り出しを、マブタを閉じた状態の睫毛の解析を行う方の目の目元の白黒画像に基づいて、目頭部分と目尻部分との間の横幅を横寸法とし、目頭部分および目尻部分のうちの上方に位置する方と最長の睫毛の最先端部との間の縦幅を縦寸法とする方形の画像部分を解析用の画像として切り出すことによって行う、前記(1)の睫毛の解析方法である。
【0009】
さらに、本発明は、
(3) 同一人について、所定の時点T
1に撮影したマブタを閉じた状態の右目および左目を含む目元の写真画像に基づいて前記(a)〜(j)の一連の操作を行って睫毛の長さ、量、太さ、本数を求め、さらに前記時点T
1とは別の時点T
2に撮影したマブタを閉じた状態の右目および左目を含む目元の写真画像に基づいて前記(a)〜(j)の一連の操作を行って睫毛の長さ、量、太さ、本数を求め、時点T
1と時点T
2とで睫毛の長さ、量、太さ、本数を対比する、前記(1)または(2)の睫毛の解析方法である。
【0010】
そして、本発明は、
(4) 時点T
1について得られた睫毛の長さ、量、太さ、本数と、時点
2について得られた睫毛の長さ、量、太さ、本数を対比するに当たり、時点T
1に撮影した目元の白黒画像に基づいて右目の目頭と左目の目頭の距離D
1を測定し、時点T
2に撮影した目元の白黒画像に基づいて右目の目頭と左目の目頭の距離D
2を測定し、
(α) 距離D
1と距離D
2の比(D
1/D
2)を用いて、時点T
2について得られた睫毛の長さ、量、太さ、本数を補正し、当該補正後の時点T
2における睫毛の長さ、量、太さ、本数の値を、時点T
1における睫毛の長さ、量、太さ、本数の値と対比するか;または、
(β) )距離D
2と距離の比(D
2/D
1)を用いて、時点T
1について得られた睫毛の長さ、量、太さ、本数を補正し、当該補正後の時点T
1における睫毛の長さ、量、太さ、本数の値を、時点T
2における睫毛の長さ、量、太さ、本数の値と対比する;
前記(3)の睫毛の解析方法である。
【0011】
また、本発明は、
(5) マブタを閉じた状態の右目および左目を含む目元部分を写真撮影して得られる白黒化した白黒画像、白黒画像から切り出した右目および/または左目の画像、切り出した右目および/または左目の画像に基づくヒストグラム、切り出した右目および/または左目の画像に基づいて作製した補正画像、補正画像に基づく2値化画像、補正画像に基づくヒストグラム、補正画像における睫毛上をラインスキャンして得られる時系列信号、当該時系列信号のフーリエ変換グラフ、各時点について得られた睫毛の長さ、量、太さ、本数、異なる時点で得られた睫毛の長さ、量、太さ、本数の対比結果のうちの1つ以上を、数値および/または画像によってモニター上に表示する
前記(1)〜(4)のいずれかの睫毛の解析方法;および、
(6) コンピュータに各人ごとのホルダーを設け、マブタを閉じた状態での目元の写真画像、当該写真画像を白黒化した白黒画像、請求項1〜5のいずれか1項の解析方法を実施して得られる各種データおよび解析結果を、当該ホルダーに各人ごとに保存して再利用可能にする前記(1)〜(5)のいずれかの睫毛の解析方法;
である。
【0012】
さらに、本発明は、
(7) 睫毛の解析装置であって、
(a)マブタを閉じた状態の右目および左目の目元の写真画像を、当該写真画像が白黒画像である場合にはそのままで、また当該写真画像がカラー画像である場合には白黒画像に変換してコンピュータに取り込む手段;
(b)前記の白黒画像から、睫毛の解析を行う方の目について、目頭部分、目尻部分および睫毛部分の全体を含み且つ眉毛部分を含まない画像を切り出す手段;
(c)前記(b)で切り出した画像に基づく明暗(輝度信号)によるヒストグラムが横軸方向に最も暗い値から最も明るい値に分布して広がるように、前記(b)で切り出した画像の明暗を補正して補正画像を作製する手段;
(d)前記(c)の補正画像に基づいて、2値化画像を作製する手段;
(e)前記(c)の補正画像に基づいて、明暗(輝度信号)によるヒストグラムを作製する手段;
(f)補正画像における睫毛上を、目頭側から目尻側へとまたは目尻側から目頭側へとラインスキャンして、横軸を時間および縦軸を明暗(輝度)とする時系列信号として出力する手段;
(g)前記(f)で出力された時系列信号をフーリエ変換する手段;
(h)前記(c)で得られた補正画像に基づいて、最長の睫毛の長さを測定する手段;
(i)前記(d)の2値化画像のデータおよび/または前記(e)のヒストグラムから、睫毛の量を求める手段;および、
(j)上記(g)で算出されたフーリエ変換の結果から、睫毛の太さおよび/または本数を求める手段;
を有することを特徴とする睫毛の解析装置である。
【0013】
また、本発明は、
(8) 前記(b)の画像の切り出し手段が、マブタを閉じた状態の睫毛の解析を行う方の目の目元の白黒画像に基づいて、目頭部分と目尻部分との間の横幅を横寸法とし、目頭部分および目尻部分のうちの上方に位置する方と最長の睫毛の最先端部との間の縦幅を縦寸法とする方形の画像部分を解析用の画像として切り出す手段である、前記(7)の睫毛の解析装置である。
【0014】
(9) マブタを閉じた状態の右目および左目を含む目元部分を写真撮影して得られる白黒化した白黒画像、白黒画像から切り出した右目および/または左目の画像、切り出した右目および/または左目の画像に基づくヒストグラム、切り出した右目および/または左目の画像に基づいて作製した補正画像、補正画像に基づく2値化画像、補正画像に基づくヒストグラム、補正画像における睫毛上をラインスキャンして得られる時系列信号、当該時系列信号のフーリエ変換グラフ、各時点について得られた睫毛の長さ、量、太さ、本数の値、それぞれの時点における睫毛の長さ、量、太さ、本数の対比結果のうちの1つ以上を、数値および/または画像によってモニター上に表示する手段を有する前記(7)または(8)の睫毛の解析装置である。
【0015】
そして、本発明は、
(10) マブタを閉じた状態の右目および左目を含む目元部分を写真撮影して得られる白黒化した白黒画像、白黒画像から切り出した右目および/または左目の画像、切り出した右目および/または左目の画像に基づくヒストグラム、切り出した右目および/または左目の画像に基づいて作製した補正画像、補正画像に基づく2値化画像、補正画像に基づくヒストグラム、補正画像における睫毛上をラインスキャンして得られる時系列信号、当該時系列信号のフーリエ変換グラフ、各時点について得られた睫毛の長さ、量、太さ、本数の値、それぞれの時点における睫毛の長さ、量、太さ、本数の対比結果のうちの1つ以上を、各人ごとに整理して保存するための手段を有する前記(7)〜(9)のいずれかの睫毛の解析装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の睫毛の解析方法および解析装置を用いることによって、目元を撮影した写真に基づいて、睫毛の長さ、太さ、濃さなどを客観的に評価することができる。
特に、本発明の睫毛の解析方法および解析装置を用いて、同一人の睫毛を、マスカラ、睫毛用トリートメント、サプリメントなどの使用前と使用後の複数の異なる時点のそれぞれについて解析してその解析結果を比較することによって、同一人における睫毛の成長状態、衰退状態、健康状態、マスカラなどによる睫毛の装飾効果などを客観的に、経時的に解析して、評価、比較することができる。
また、本発明の睫毛の解析方法および解析装置を用いて、複数の人の睫毛を解析し、その解析結果を、例えば、年齢別や性別に分類することで、年齢による睫毛の長さや状態の異同、性別による睫毛の長さや状態の異同などを客観的に分析することができる。
さらに、本発明の睫毛の解析方法および装置を用いることで、睫毛用の育毛剤、マスカラ、睫毛用トリートメント、睫毛美容液、飲食物、サプリメントなどによる睫毛の育毛促進作用の有無や強弱、睫毛への影響などを客観的且つ簡単に評価することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明について図を参照して詳細に説明する。
操作(a)において、マブタを閉じた状態の右目および左目の目元の写真画像を、当該写真画像が白黒画像である場合にはそのままで、また当該写真画像がカラー画像である場合には白黒画像に変換してコンピュータに取り込む(
図1の《i》)。
マブタを閉じた状態の右目および左目の目元の写真画像は、印画紙に焼き付けられた写真画像であってもよいし、またはデジタルカメラ、携帯電話、スマートフォンなどで撮影されたデジタル画像であってもいずれでもよい。
目元の写真画像を白黒画像にしてコンピュータに取り込むに当たっては、取り込む白黒画像の画素数を統一しておくことが、解析の標準化、操作性などの点から好ましい。
例えば、目元の白黒画像の画素数が640×480ピクセルよりも大きい場合には、当該白黒画像を640×480ピクセルに縮小してサイズを低減してコンピュータに取り込み、一方目元の白黒画像の画素数が640×480ピクセルよりも小さい場合には、当該白黒画像を640×480ピクセルに拡大してサイズを低減してコンピュータに取り込むようにする。
白黒画像をコンピュータに取り込む際の画素数の低減または増加(取り込み画像がの縮小または拡大)は、公知の画像縮小ソフト、画像の縮小機能を有するスキャナーなどを用いて行うことができる。
コンピュータに取り込んだ目元の白黒画像は、以下の(b)〜(j)の操作で得られる各種画像、データ、解析結果などと共に、コンピュータに各人ごとのホルダーを設けて当該ホルダーに保存することが好ましい。
【0019】
次いで、操作(b)において、コンピュータに取り込んだ、
図1の《i》のようなマブタを閉じた状態の目元の白黒画像から、睫毛の解析を行う方の目について、目頭部分、目尻部分および睫毛部分の全体を含み且つ眉毛部分を含まない画像を切り出す(
図1の《ii》)。
画像の切り出しは、右目および左目のうちの一方の目元についてのみ行ってもよいし(右目の睫毛および左目の睫毛のうちの一方についてのみ解析を行う場合)、または右目の目元と左目の目元の両方について行ってもよい(右目の睫毛と左目の睫毛の両方について解析を行う場合)。右目の目元と左目の目元の両方について解析用の画像の切り出す場合は、右目の目元についての画像と左目の目元についての画像をそれぞれ別々に切り出して、右目の切り出し画像と左目の切り出し画像とで区別がつくようにしておく。
【0020】
切り出した画像は、睫毛の解析を行う方の目の目頭部分、目尻部分および睫毛全体を含み且つ眉毛部分を含まない画像であればいずれでもよいが、睫毛の解析を的確に行うことができ、解析結果を標準化しやすく、しかも数学的手法が有効であることから、画像の切り出しを、マブタを閉じた状態の睫毛の解析を行う方の目の目元の白黒画像に基づいて、
図1の《ii》に示すように、目頭部分と目尻部分との間の横幅(水平距離)を横寸法とし、目頭部分および目尻部分のうちの上方に位置する方[
図1の《ii》では目尻部分](なお垂れ目では目頭部分が上方に位置することもある)と最も長い睫毛の最先端部との間の縦幅(垂直距離)を縦寸法とする方形の画像部分を解析用の画像として切り出すことが好ましい。
白黒画像からの解析を行うための画像の切り出しは、コンピュータに取り込まれた写真画像から画像の切り出しの行うことのできる従来から知られている各種ソフトを用いて行うことができる。
【0021】
上記で切り出した画像《ii》では、睫毛部分と、睫毛以外の部分(皮膚や目元の陰になった部分など)との違い(明暗の差)が明確に映し出されていないことが多く、そのため切り出した画像《ii》をそのまま用いて2値化画像およびヒストグラムを作製した場合に、
図1の《iii》の2値化画像および
図1の《iv》のヒストグラムのように、睫毛に基づく鮮明な2値化画像およびヒストグラムが作製されないことがある。
そのため、操作(c)において、前記の操作(b)で切り出した画像《ii》に基づく明暗(輝度信号)によるヒストグラムが、横軸方向に最も暗い値から最も明るい値に全体に分布して広がるように、前記の操作(b)で切り出した画像《ii》の明暗を補正して
図1の《v》に示すような補正画像にする。
【0022】
そして、操作(d)において、前記の操作(c)で得られた補正画像《v》に基づいて、
図1の《vi》に示すような2値化画像を作製する。
2値化画像の作製に当たっては、睫毛部分が黒く表示され且つ睫毛以外の部分は白く表示されるように適切な閾値(しきい値)を定めて2値化を行う。
2値化画像を作製するための閾値は、解析用の画像における睫毛部分とそれ以外の部分とをできるだけ忠実に再現しながら、睫毛部分に基づく部分が黒色で表され、睫毛以外の部分が白色で表示されるようにするために、解析用の画像の鮮明度、明度などに応じて設定することが必要である。
2値化画像の作製は、可変閾値法などを採用して行うことができる。その際に、閾値の設定は、3×3部分平均法などによって行うことができる。
【0023】
また、操作(e)において、前記の操作(c)で得られた補正画像《v》に基づいて、
図1の《vii》に示すような横軸方向に最も暗い値から最も明るい値に全体に分布して広がるヒストグラムを作製する。
補正画像に基づく明暗(輝度信号)によるヒストグラムは、白黒画像の解像度、明るさ、メークの仕方などに依存するが、明暗(輝度信号)によるヒストグラムをグラフの横軸全体に広げるアルゴリズムで解析用の画像の明るさやコントラストなどを調整してヒストグラムを作製する。それによって、白黒画像から切り出した画像の解像度、明るさ、メークの仕方などによる影響を低減させて、睫毛の解析をより正確に行うことができるようになる。
図1の《vii》に例示するヒストグラムにおいて、横軸に沿って向かって左側のフラットな部分が睫毛に由来し、向かって右側の山になっている部分が睫毛以外の部分(睫毛よりも明るい皮膚などの部分)に由来する。補正画像に基づく
図1の《vii》に示すヒストグラムにおいて、向かって左側のフラットな部分の面積が大きく且つ向かって右側の山になっている部分の面積が小さいほど、睫毛の長さ、本数および/または太さなどに基づく、睫毛全体の量が多いことを示す。
ヒストグラムの作製は、従来から知られているヒストグラム作製用ソフトなどを用いて行うことができる。
【0024】
また、操作(f)において、補正画像における睫毛上を、目頭側から目尻側へとまたは目尻側から目頭側へとラインスキャンして、横軸を時間および縦軸を明暗(輝度)とする時系列信号として出力する(
図1の《viii》)。
ラインスキャンする位置としては、睫毛間の密着や睫毛同士の重なりがないか又は少なくて、1本1本の睫毛が互いに離れていて、しかも全部の睫毛またはそれに近い数の睫毛をスキャンできる位置を選択する。スキャンする位置は睫毛の生え方などによっても異なり得るが、一般的には、一番長い睫毛の根元から当該一番長い睫毛の長さの3分の1またはその近辺の位置[
図1の《v》において直線s−sの位置]でスキャンするとよい。
このラインスキャン操作において、ラインスキャンのセンサーは、睫毛を横切りながら走行しているときに、睫毛のない箇所を走行しているときには信号を出力しないかまたは振幅の小さな信号を出力し、睫毛上を走行しているときには睫毛の太さに応じて所定の振幅の信号を出力し、睫毛が太いほど振幅が大きくなる。かかる点から、睫毛の
図1の《viii》に示す時系列信号において、縦軸方向の振幅は睫毛の太さに対応し、振幅が大きいほどその走行位置にあった睫毛の太さが大きいことを示す。
この操作は、従来から知られているラインセンサーをコンピュータに装備して行うことができる。
【0025】
前記の操作(f)によって出力された時系列信号を、操作(g)においてフーリエ変換して
図1の《ix》のグラフを得る。
フーリエ変換により得られる
図1の《ix》のグラフにおいて、横軸は、前記の操作(f)で出力された時系列信号における周波数(睫毛の太さ、睫毛のない箇所の間隔に関係)であって、最初がゼロで右にゆくほど値が大きくなり、縦軸はそれぞれの周波数ごとの頻度(個数)を示す。
前記の操作(f)で出力された時系列信号のフーリエ変換は、従来から知られているフーリエ変換ソフトを用いて行うことができる。
【0026】
複数の試料に基づいて検証した結果、フーリエ変換により得られる
図1の《ix》に示すグラフにおいて、矢印1で示す最も高いピークが睫毛の本数に相関すること、矢印1で示す最も高いピークを含むピーク群とは別のピーク群に属する、矢印1で示す最も高いピークの向かって右側に位置する矢印2で示す2番目に高いピークが睫毛の平均的な太さに関係すること、矢印1で示す最も高いピークの向かって左側に位置するピーク群は睫毛のない部分(睫毛と睫毛の間の空間部分)に由来するピークであることが判明した。
矢印1で示す最も高いピークの数値が大きいほど睫毛の本数が多いことを示し、矢印2で示す2番目に高いピークの横軸の数値(周波数)の逆数が大きいほど睫毛の平均太さが太いことを示す。
【0027】
また、操作(h)において、前記の操作(c)で得られた補正画像に基づいて、最も長い睫毛の長さを測定する。
ここで、前記した操作(d)、(e)、(f)および(h)の順序は特に制限されず、任意の順序で行うことができる。
【0028】
操作(i)において睫毛の量を求める。
睫毛の量は、前記の操作(d)で得られた
図1の《vi》に示す2値化画像(目頭と目尻との間の横方向の長さを横幅とし、目尻と最も長い睫毛の先端との間の縦方向の長さを長さ寸法とする方形の部分での2値化画像)において、0の点(皮膚に由来する白いドット)と1の点(睫毛に由来する黒いドット)の合計(2値化画像全体の総ドット数)に対する1の点の合計(睫毛に由来する黒いドットの合計数)の割合として求めることができる。
また、睫毛の量は、前記の操作(f)で得られる
図1の《vii》に示すヒストグラムにおいて、向かって左側の平坦な部分およびそれに連なる右側の山形部分の全部の面積に対する向かって左側の平坦な部分の面積の割合として求めることができる。
【0029】
また、操作(j)において、前記の操作(g)の操作で算出されたフーリエ変換の結果(グラフ)から、睫毛の太さを求める。
フーリエ変換により得られる
図1の《ix》に示すグラフにおいて、矢印1で示す最も高いピークを含むピーク群とは別のピーク群に属する、矢印1で示す最も高いピークの向かって右側に位置する矢印2で示す2番目に高いピークが睫毛の平均的な太さに関係する。
矢印2で示す2番目に高いピークの横軸の数値(周波数)をFrとすると、睫毛の太さの平均値は、当該周波数Frの逆数である「1/Fr」として求めることができる。
【0030】
本発明では、上記した一連の操作(a)〜(j)からなる睫毛の解析を、各人に対して1回だけ行ってもよいし、または各人に対して2つ以上の異なる時点で、2回または3回以上行ってもよい。
本発明の睫毛の解析方法を各人に対して1回だけ行う場合は、各人ごとに得られた上記の解析結果から、特定の人の睫毛が、別の特定の人の睫毛に比べて、長いのか、本数が多いか、太いか、睫毛全体の量が多いかなどを判定することができ、また解析を行った複数人の平均値に比べて、睫毛が長いのか、睫毛の量が多いか、睫毛が太いか、睫毛全体の量が多いかなどを判定することができる。
【0031】
また、本発明の睫毛解析方法を、各人に対して2つ以上の異なった時点で、2回または3回以上行った場合には、当該解析を行った特定の人において、例えば、マスカラ、睫毛用トリートメント、睫毛美容液、サプリメント、特定の飲食物などを使用または飲食する前と使用または飲食した後とで睫毛の長さ、量、太さ、本数などがどのように変化したかを調査することができ、また特定のマスカラ、睫毛用トリートメント、睫毛美容液、サプリメント、飲食物などが、睫毛の成長作用を有するか否か、睫毛の成長作用が大きいか又は小さいか、睫毛の装飾効果が大きいか又は小さいかなどを調査することができる。
本発明の睫毛の解析方法および解析装置を用いて睫毛の解析を行うに当たっては、睫毛の長さ、量、太さおよび本数の全てを解析するのに限定されず、例えば、睫毛の長さ、量、太さおよび本数のうちの1つだけを解析してもよいし、2つだけを解析してもよいし、または3つだけを解析してもよい。
【0032】
具体的には、例えば、同一人について、マブタを閉じた状態の右目および左目を含む目元部分を所定の時点T
1(例えば、マスカラ、睫毛用トリートメント、睫毛美容液、サプリメントなどの使用前)に写真撮影して得られる白黒化した写真画像に基づいて、右目および左目のうちの同じ方の目について、前記(a)〜(j)の一連の操作を行って時点T
1における睫毛の長さ、量、太さ、本数を求め、更に当該時点T
1とは別の時点T
2(例えば、マスカラ、睫毛用トリートメント、睫毛美容液、サプリメントなどの使用後)に写真撮影して得られる白黒化した写真画像に基づいて、右目および左目のうちの同じ方の目について、前記(a)〜(j)の一連の操作を行って時点T
2における睫毛の長さ、量、太さ、本数を求め、時点T
1について得られた睫毛の長さ、量、太さ、本数と、時点T
2について得られた睫毛の長さ、量、太さ、本数とを対比する。
その際に、時点T
1における目元の写真撮影と、時点T
2における目元の写真撮影とで、被写体とカメラとの距離を全く同じにすることは通常困難であり、また時点T
1と時点T
2とで同じ倍率で撮影が行われているとは限らないため、時点T
1における目元の写真と時点T
2における目元の写真とで、目頭と目尻との間の距離が異なっていることが多い。
そのため、時点T
1における睫毛の長さ、量、太さ、本数と、時点T
2における睫毛の長さ、量、太さ、本数とを対比するに当たっては、時点T
1および時点T
2のいずれか一方を基準とし、もう一方を当該基準に合わせて補正してから両者を比較する必要がある。
【0033】
補正の方法としては、右目の目頭と左目の目頭との間の距離(長さ)は、ある程度時間が経っても変わらないか又は変化が小さいので、時点T
1に撮影した目元の白黒画像に基づいて右目の目頭と左目の目頭の距離D
1を測定し、さらに時点T
2に撮影した目元の白黒画像に基づいて右目の目頭と左目の目頭の距離D
2を測定し、
(α) 距離D
1と距離D
2の比(D
1/D
2)を用いて、時点T
2について得られた睫毛の長さ、量、太さ、本数を補正し、当該補正後の時点T
2における睫毛の長さ、量、太さ、本数の値を、時点T
1における睫毛の長さ、量、太さ、本数の値と対比するか;または、
(β) 距離D
2と距離D
1の比(D
2/D
1)を用いて、時点T
1について得られた睫毛の長さ、量、太さ、本数を補正し、当該補正後の時点T
1における睫毛の長さ、量、太さ、本数の値を、時点T
2における睫毛の長さ、量、太さ、本数の値と対比する;
ことによって、時点T
1における睫毛の長さ、量、太さ、本数と、時点T
2における睫毛の長さ、量、太さ、本数とを適正に対比することができる。
また、別の方法としては、右目および左目を含む目元の白黒に変換した写真画像(白黒画像)から、上記の操作(b)において、睫毛の解析を行う方の目について、目頭部分、目尻部分および睫毛部分の全体を含み且つ眉毛部分を含まない画像を切り出す際に、時点T
1で切り出した画像と、時点T
2で切り出した画像とで、目頭と目尻の長さが同じになるように補正を行い(横方向の画素数が同じになるように補正を行い)、当該補正後の画像に基づいて、前記の操作(c)〜(j)を行って、時点T
1における睫毛の長さ、量、太さ、本数と、時点T
2における睫毛の長さ、量、太さ、本数とを対比するようにしてもよい。
【0034】
上記では、T
1とT
2の2つの時点に解析を行う場合について説明したが、2つの時点での解析に限定されるものではなく、3つ以上の時点で上記と同じように解析を行ってもよく、その場合には、最初の時点での解析結果と2番目の時点での解析結果の対比だけでなく、最初の時点での解析結果と、第3番目の時点、第4番目の時点、それ以降の時点での解析結果を対比することができ、さらに第2番目の時点での解析結果と第3番目の時点での解析結果の対比というように、種々の対比を行うことができる。
【0035】
マブタを閉じた状態の右目および左目を含む目元部分を写真撮影して得られる白黒化した白黒画像、白黒画像から切り出した右目および/または左目の画像、切り出した右目および/または左目の画像に基づくヒストグラム、切り出した右目および/または左目の画像に基づいて作製した補正画像、補正画像に基づく2値化画像、補正画像に基づくヒストグラム、補正画像における睫毛上をラインスキャンして得られる時系列信号、当該時系列信号のフーリエ変換グラフ、各時点について得られた睫毛の長さ、量、太さ、本数、異なる時点で得られた睫毛の長さ、量、太さ、本数の対比結果、のうちの1つ以上を、数値および/または画像によってモニター上に表示することが好ましい。
特に、所定の時点とそれとは別の時点での上記した種々の画像やグラフ、数値などを同一画面上に並べて表示するようにすると、所定の時点(例えば、マスカラ、睫毛用トリートメント、睫毛美容液、サプリメント、特定の飲食物などの使用前または飲食前)と、それとは別の時点(例えば、マスカラ、睫毛用トリートメント、睫毛美容液、サプリメント、特定の飲食物の使用後または飲食前)とで、睫毛の長さ、太さ、本数、全体的な量などがどのように変化したかを、目視により簡単に確認することができる。
同一人について3つ以上の時点で睫毛の解析を行う場合も同様である。
また、その際に、解析を行った人の氏名、生年月日、解析日などもモニター上に同時に表示するようにしてもよい
【0036】
本発明の睫毛の解析方法および解析装置を用いて睫毛の解析を行うに当たっては、コンピュータに各人ごとのホルダーを設け、マブタを閉じた状態での目元の写真画像、当該写真画像から得られる白黒画像、当該白黒画像から切り出した画像、当該画像に基づく補正画像、上記した操作(d)〜(j)の操作を実施して得られる各種データなどを、当該ホルダーに各人ごとに整理し保存して再利用可能にしておくことが望ましい。
【0037】
上記した本発明の睫毛の解析方法は、
(a)マブタを閉じた状態の右目および左目の目元の写真画像を、当該写真画像が白黒画像である場合にはそのままで、また当該写真画像がカラー画像である場合には白黒画像に変換してコンピュータに取り込む手段;
(b)前記の白黒画像から、睫毛の解析を行う方の目について、目頭部分、目尻部分および睫毛部分の全体を含み且つ眉毛部分を含まない画像を切り出す手段;
(c)前記(b)で切り出した画像に基づく明暗(輝度信号)によるヒストグラムが横軸方向に最も暗い値から最も明るい値に分布して広がるように、前記(b)で切り出した画像の明暗を補正して補正画像を作製する手段;
(d)前記(c)の補正画像に基づいて、2値化画像を作製する手段;
(e)前記(c)の補正画像に基づいて、明暗(輝度信号)によるヒストグラムを作製する手段;
(f)補正画像における睫毛上を、目頭側から目尻側へとまたは目尻側から目頭側へとラインスキャンして、横軸を時間および縦軸を明暗(輝度)とする時系列信号として出力する手段;
(g)前記(f)で出力された時系列信号をフーリエ変換する手段;
(h)前記(c)で得られた補正画像に基づいて、最長の睫毛の長さを測定する手段;
(i)前記(d)の2値化画像のデータおよび/または前記(e)のヒストグラムから、睫毛の量を求める手段;および、
(j)上記(g)で算出されたフーリエ変換の結果から、睫毛の太さを求める手段;
を有する本発明の睫毛の解析装置によって実施することができる。
【0038】
本発明の睫毛の解析装置は、前記(b)の画像の切り出し手段として、「マブタを閉じた状態の睫毛の解析を行う方の目の目元の白黒画像に基づいて、目頭部分と目尻部分との間の横幅を横寸法とし、目頭部分および目尻部分のうちの上方に位置する方と最長の睫毛の最先端部との間の縦幅を縦寸法とする方形の画像部分を解析用の画像として切り出す手段」を有していることが望ましい。
【0039】
また、本発明の睫毛の解析装置は、前記(a)〜(j)の手段を用いて得られる、マブタを閉じた状態の右目および左目を含む目元部分を写真撮影して得られる白黒化した白黒画像、白黒画像から切り出した右目および/または左目の画像、切り出した右目および/または左目の画像に基づくヒストグラム、切り出した右目および/または左目の画像に基づいて作製した補正画像、補正画像に基づく2値化画像、補正画像に基づくヒストグラム、補正画像における睫毛上をラインスキャンして得られる時系列信号、当該時系列信号のフーリエ変換グラフ、各時点について得られた睫毛の長さ、量、太さ、本数の値、それぞれの時点における睫毛の長さ、量、太さの対比結果のうちの1つ以上を、数値および/または画像によってモニター上に表示する手段を有することが望ましい。
【0040】
本発明の睫毛の解析装置は、マブタを閉じた状態の右目および左目を含む目元部分を写真撮影して得られる白黒化した白黒画像、白黒画像から切り出した右目および/または左目の画像、切り出した右目および/または左目の画像に基づくヒストグラム、切り出した右目および/または左目の画像に基づいて作製した補正画像、補正画像に基づく2値化画像、補正画像に基づくヒストグラム、補正画像における睫毛上をラインスキャンして得られる時系列信号、当該時系列信号のフーリエ変換グラフ、各時点について得られた睫毛の長さ、量、太さ、本数の値、それぞれの時点における睫毛の長さ、量、太さの対比結果のうちの1つ以上を、各人ごとに整理して保存するための手段を有することが望ましい。
【実施例】
【0041】
以下に実施例によって本発明について具体的に説明するが、本発明は実施例により何ら限定されない。
【0042】
《実施例1》
(1)(i) 女性Aのマスカラを塗る前のマブタを閉じた状態の右目および左目の目元の写真画像を、白黒画像(640×480ピクセル)に変換してコンピュータに取り込んだ(
図2の《1−i》)[操作(a)]。
(ii)
図2の《1−i》に示す目元の白黒画像に基づいて、左目の目頭と右目の目頭との間の距離(D
1)を測定した。
(iii)
図2の《1−i》に示す目元の白黒画像から、左目について、目頭部分と目尻部分との間の横幅(水平距離)を横寸法とし、目尻部分と最も長い睫毛の最先端部との間の縦幅(垂直距離)を縦寸法とする方形の画像部分を切り出し、切り出した当該画像に基づく明暗(輝度信号)によるヒストグラムが横軸方向に最も暗い値から最も明るい値に分布して広がるように切り出した画像の明暗を補正して
図2の《1−ii》に示す補正画像を作製した[操作(b)および(c)]。
(iv)
図2の《1−ii》の補正画像に基づいて、睫毛部分に基づく黒色部と睫毛以外の部分に基づく白色部とが忠実に再現されるように閾値を定めて、
図2の《1−iii》に示す2値化画像を作製した[操作(d)]。
(v)
図2の《1−ii》に示す補正画像に基づいて、
図2の《1−iv》に示すヒストグラムを作製した[操作(e)]。
(vi)
図2の《1−ii》に示す補正画像において、最も長い睫毛の根本から当該睫毛の長さの3分の1の位置上[
図2の《1−ii》において直線s−sの位置]を、目頭側から目尻側へとラインスキャンして、横軸を時間および縦軸を明暗(輝度)とする
図2の《1−v》に示す時系列信号を出力させた[操作(f)]。
(vii) 前記(vi)で出力された時系列信号をフーリエ変換して、
図2の《1−vi》に示すグラフを得た[操作(g)]。
(viii)
図2の《1−ii》に示す補正画像に基づいて、最長の睫毛の長さ(L
1)を測定した。
【0043】
(2)(i) 上記と同じ女性Aのマスカラを塗った後のマブタを閉じた状態の右目および左目の目元の写真画像を、白黒画像(640×480ピクセル)に変換してコンピュータに取り込んだ(
図2の《2−i》)[操作(a)]。
(ii)
図2の《2−i》に示す目元の白黒画像に基づいて、左目の目頭と右目の目頭との間の距離(D
2)を測定した。
(iii)
図2の《2−i》に示す目元の白黒画像から、左目について、目頭部分と目尻部分との間の横幅(水平距離)を横寸法とし、目尻部分と最も長い睫毛の最先端部との間の縦幅(垂直距離)を縦寸法とする方形の画像部分を切り出し、切り出した当該画像に基づく明暗(輝度信号)によるヒストグラムが横軸方向に最も暗い値から最も明るい値に分布して広がるように切り出した画像の明暗を補正して
図2の《2−ii》に示す補正画像を作製した[操作(b)および(c)]。
(iv)
図2の《2−ii》の補正画像に基づいて、睫毛部分に基づく黒色部と睫毛以外の部分に基づく白色部とが忠実に再現されるように閾値を定めて、
図2の《2−iii》に示す2値化画像を作製した[操作(d)]。
(v)
図2の《2−ii》に示す補正画像に基づいて、
図2の《2−iv》に示すヒストグラムを作製した[操作(e)]。
(vi)
図2の《2−ii》に示す補正画像において、最も長い睫毛の根本から当該睫毛の長さの3分の1の位置上[
図2の《2−ii》において直線s−sの位置]を、目頭側から目尻側へとラインスキャンして、横軸を時間および縦軸を明暗(輝度)とする
図2の《2−v》に示す時系列信号を出力させた[操作(f)]。
(vii) 前記(vi)で出力された時系列信号をフーリエ変換して、
図2の《2−vi》に示すグラフを得た[操作(g)]。
(viii)
図2の《2−ii》に示す補正画像に基づいて、最長の睫毛の長さ(L
2)を測定した。
【0044】
(3)マスカラを塗る前と塗った後での最長の睫毛の長さの対比:
(i)
図2の《1−i》のマスカラを塗る前の目元の写真(白黒画像)と、
図2の《2−i》のマスカラを塗った後の目元の写真(白黒画像)が同じ距離から同じ倍率で撮影されているとは限らないため、塗る前と塗った後の写真が同じ距離から同じ倍率で撮影されたものとするための規格化を行う必要がある。
マスカラを塗る前を目元の画像基準にすると、塗る前の最も長い睫毛の長さL
1はそのままで、マスカラを塗った後の最も長い睫毛の長さの規格化後の長さ(L
2c)は、下記の数式(1−1)から求められる。
L
2c=L
2×(D
1/D
2) (1−1)
[式中、L
2cはマスカラを塗った後の最も長い睫毛の長さ補正を行った後の長さ(mm)、L
2は
図2の《v》で示される補正画像に基づく長さ補正を行う前の長さ(mm)、D
1は
図2の《1−i》の目元の白黒画像に基づく左目の目頭と右目の目頭との間の距離(mm)、D
2は
図2の《2−i》の目元の白黒画像に基づく左目の目頭と右目の目頭との間の距離(mm)を示す。]
(ii) 上記した数式(1−1)から求められるマスカラを塗った後の長さ補正を行った後の最長の睫毛の長さ(L
2c)と、マスカラを塗る前の最長の睫毛の長さ(L
1)から、マスカラを塗る前と塗った後の最長の睫毛の長さの相対比(L
re)を、下記の数式(1−2)により求めることができる。
L
re(%)=(L
2c/L
1)×100 (1−2)
図2に示されている女性Aについて上記の数式(1−1)および(1−2)により、マスカラを塗る前と塗った後の最長の睫毛の長さの相対比(L
re)を求めたところ123%であった。
【0045】
(4)マスカラを塗る前と塗った後での最長の睫毛の量の対比:
(i) マスカラを塗る前の
図2の《1−ii》の補正画像において、マブタの中央部分の睫毛の根本を通る水平線と最も長い睫毛の先端を通る水平線との間の距離をH
1とし、目頭を通る垂直線と目尻を通る垂直線との間の距離をW
1とすると、aとbとcとdで包囲される方形部分の面積S
1は下記の数式(2−1)から求められ、またマスカラを塗った後の
図2の《2−ii》の補正画像において、マブタの中央部分の睫毛の根本を通る水平線と最も長い睫毛の先端を通る水平線との間の距離をH
2とし、目頭を通る垂直線と目尻を通る垂直線との間の距離をW
2とすると、aとbとcとdで包囲される方形部分の面積S
1は下記の数式(2−1)から求められの面積S
2は、下記の数式(2−2)で求められる。
S
1=H
1×W
1 (2−1)
S
2=H
2×W
2 (2−2)
【0046】
(ii)
図2の《1−i》のマスカラを塗る前の目元の写真(白黒画像)と、
図2の《2−i》のマスカラを塗った後の目元の写真(白黒画像)が同じ距離から同じ倍率で撮影されているとは限らないため、塗る前と塗った後の写真が同じ距離から同じ倍率で撮影されたものとするための規格化を行う必要がある。
マスカラを塗る前を目元の画像基準にすると、塗る前の
図2の《1−ii》の補正画像においてaとbとcとdで包囲される方形部分の面積S
1はそのままで、マスカラを塗った後の
図2の《2−ii》の補正画像においてaとbとcとdで包囲される方形部分の面積S
2の規格化後のaとbとcとdで包囲される方形部分の面積S
2cは、下記の数式(2−3)から求められる。
S
2c=S
2×(D
1/D
2)
2 (2−3)
[式中、D
1は
図2の《1−i》の目元の白黒画像に基づく左目の目頭と右目の目頭との間の距離(mm)、D
2は
図2の《2−i》の目元の白黒画像に基づく左目の目頭と右目の目頭との間の距離(mm)を示す。]
【0047】
(iii) そこで、マスカラを塗った後については、
図2の《2−ii》の補正画像におけるaとbとcとdで包囲される方形部分の面積S
2を睫毛の量を算出するための面積として採用せずに、上記の式(2−3)で得られる面積値S
2cを基準とし、下記の数式(2−4)にしたがって、当該面積値S
2cを
図2の《2−ii》の補正画像における目頭と目尻との間の距離(W
2)で割って得られる高さ寸法(H
2c)を求め、下記の数式(2−5)により求められる当該高さ寸法(H
2c)とW
2との積の面積(
図2の《2−ii》の補正画像におけるaとeとfとdで包囲される方形部分の面積)を睫毛の量を算出するための面積とする。
H
2c=S
2c÷W
2 (2−4)
S
2c=H
2c×W
2 (2−5)
【0048】
(iv) マスカラを塗る前の睫毛の量は、
図2の《1−ii》の補正画像に基づいて作製した
図2の《1−iii》の2値化画像において、aとbとcとdで包囲される方形部分の面積S
1の部分について、0の点(皮膚に由来する白いドット)と1の点(睫毛に由来する黒いドット)の合計(2値化画像全体の総ドット数)に対する1の点の合計(睫毛に由来する黒いドットの合計数)の割合(R
1)を求める。
マスカラを塗った後の睫毛の量は、
図2の《2−ii》の補正画像に基づいて作製した
図2の《2−iii》の2値化画像において、aとeとfとdで包囲される方形部分の面積S
2cの部分について、0の点(皮膚に由来する白いドット)と1の点(睫毛に由来する黒いドット)の合計(2値化画像全体の総ドット数)に対する1の点の合計(睫毛に由来する黒いドットの合計数)の割合(R
2)を求める。
これにより求められたマスカラを塗った後の睫毛の量(R
2)と、マスカラを塗る前の睫毛の量(R
1)から、マスカラを塗る前と塗った後の睫毛の量の相対比(R
re)を、下記の数式(2−6)から求めることができる。
R
re(%)=(R
2/R
1)×100 (2−6)
【0049】
(5)マスカラを塗る前と塗った後での睫毛の平均太さの対比:
(i) フーリエ変換により得られる
図2の《1−vi》に示すグラフにおいて、矢印1で示す最も高いピークを含むピーク群とは別のピーク群に属する、矢印1で示す最も高いピークの向かって右側に位置する矢印2で示す2番目に高いピークの横軸の数値(周波数)Fr
1から当該周波数Fr
1の逆数である「1/Fr
1」を、マスカラを塗る前の睫毛の平均太さ(Th
1)として求める。
また、フーリエ変換により得られる
図2の《2−vi》に示すグラフにおいて、矢印1で示す最も高いピークを含むピーク群とは別のピーク群に属する、矢印1で示す最も高いピークの向かって右側に位置する矢印2で示す2番目に高いピークの横軸の数値(周波数)Fr
2から当該周波数F
12の逆数である「1/Fr
2」を、マスカラを塗った後の睫毛の平均太さ(Th
2)として求める。
(ii) これにより求められたマスカラを塗った後の睫毛の平均太さ(Th
2)と、マスカラを塗る前の睫毛の平均太さ(Th
1)から、マスカラを塗る前と塗った後の睫毛の平均太さの相対比(Th
re)を、下記の数式(3−1)から求めることができる。
Th
re(%)=(Th
2/Th
1)×100 (3−1)
【0050】
(6) この実施例1では、マスカラを塗る前および塗った後の両方について、目元の白黒画像から切り出した画像、補正画像、2値化画像、ヒストグラム、時系列信号、時系列信号をフーリエ変換したグラフを、
図2に示すように、1つのモニターに並列させて表示して、目視により、マスカラを塗る前と塗った後の違いが簡単に対比できるようにした。
また、その際に、モニターの同じ画面上に、マスカラを塗る前の目元の白黒画像およびマスカラを塗った後の目元の白黒画像の両方を表示してもよいし、前記2つの白黒画像の一方を入れ替え可能に表示してもよいし、さらにマスカラの塗布前と塗布後における睫毛の長さの相対比、睫毛の量の相対比、睫毛の太さの相対比の1つまたは2つ以上を、数値および/またはグラフなどによってモニター上に表示するようにすることもできる。
(7) また、実施例1では、対比が明確になるように、マスカラを塗る前と塗った後について具体的に説明したが、それに限定されず、例えば睫毛の育毛効果があるとされている睫毛用のトリートメント、睫毛美容液、サプリメント、飲食物などについて、それらを使用または飲食する前の時点と、それらを所定の期間にわたって継続して使用または飲食した後の時点に、本発明の睫毛の解析方法および解析装置を用いて睫毛の解析を行うことで、当該睫毛用のトリートメント、睫毛美容液、サプリメント、飲食物などによる睫毛の育毛効果の有無、育毛効果の大小などを客観的に評価することができる。