(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の巻線を直列に接続して構成される複数の相と、前記相の端部、又は、直列に接続された2つの前記巻線の間に位置して、外部と接続できる複数の外部接点と、を有するモータと、
それぞれ異なる前記外部接点を介して異なる巻数の前記巻線に接続された複数のインバータ回路と、
前記複数のインバータ回路に接続されたコンデンサと、
スイッチと、を備え、
複数の前記インバータ回路は少なくとも第1のインバータ回路、及び、前記第1のインバータ回路よりも少ない前記巻線に接続される第2のインバータ回路を有し、
前記スイッチは前記第1のインバータ回路又は前記第1のインバータ回路に接続された前記外部接点を前記コンデンサから切り離し可能に構成され、
前記モータの回転数が第1の設定値より小さいときは、前記第1のインバータ回路によって前記モータを駆動し、前記モータの回転数が前記第1の設定値以上のときは、前記第2のインバータ回路によって前記モータを駆動することを特徴とするモータ駆動装置。
前記インバータ回路に供給される直流電圧より低い誘起電圧が発生する前記外部接点の中で、前記直流電圧との電圧差が最も小さい前記誘起電圧が発生する前記外部接点に接続される前記インバータ回路によって、前記モータを駆動することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のモータ駆動装置。
前記インバータ回路に供給される直流電圧よりも高い誘起電圧が発生する前記外部接点へは直流電力を供給しないことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のモータ駆動装置。
【背景技術】
【0002】
永久磁石同期モータ(以下「モータ」という。)は、誘導モータに比べて高効率な特性を有するため、家電製品から産業機器あるいは電動車両分野へと適用範囲が広がっている。
【0003】
また、上記機器は、地球温暖化防止や省エネルギー化の動きに伴い、低中速域の高効率化が求められているとともに、機器の使用感を向上させるために高速域における駆動範囲の拡大も求められている。
【0004】
例えば、家電製品のエアコンの場合、省エネルギーの指標である通年エネルギー消費効率(以下「APF」という。)の向上、及び、高出力化の指標である外気温2℃での暖房能力(以下「低温暖房能力」という。)の向上の両立が要求される。
【0005】
また、電気自動車等の主機では、低速大トルク、高速小トルクの運転状態となり、この運転条件において全域での高効率化が要求される。
【0006】
モータ駆動装置による特に低中速域における高効率化の手段としては、磁石量及び巻線を増加させることによるモータの低速設計化があるが、モータを低速設計すると、高速域で発生する誘起電圧が増大するため、駆動可能領域が狭くなり、効率が大幅に低下することが懸念される。
【0007】
そこで、低速設計されたモータの高速駆動領域の拡大手段として、直流電圧を昇圧する方式が実用化されているが、直流電圧を昇圧するための回路が追加となり、回路規模の増加や昇圧回路等の損失の増加が課題となる。
【0008】
上記課題を解決する手段として、特許文献1や特許文献2の通り、機械的に発生する誘起電圧を低減する方式が提案されている。特許文献1はモータの巻線を機械式スイッチで切替える方式、特許文献2は永久磁石の着磁量を変更する方式である。
【0009】
しかし、上記方式は、機械的な変更が必要であり、一旦駆動中のモータを停止させて切替える必要があり、上記エアコンや電気自動車主機等連続運転が必要な機器への適用は困難である。
【0010】
そこで、上記課題を解決する一つの手段として、例えば、特許文献3〜5が提案されている。
【0011】
特許文献3は、モータの中性点をモータの外部に接続した半導体スイッチ群を用いて切替える方式であり、半導体スイッチ群を使用しているため、モータ駆動中にも切替えが可能である。
【0012】
特許文献4及び5は、モータ巻線には中性点を作らずに、2台のインバータ主回路をそれぞれの巻線に接続して、2台のインバータ主回路の駆動位相を調整することで、モータへの印加電圧を通常のインバータ駆動時より増加させることが可能となる。こちらの方式もモータを停止せずに駆動範囲が拡大できる。
【0013】
しかし、上記方式は、効率向上の観点が欠落している。特許文献3の場合、半導体スイッチ群を使用するため、半導体スイッチ群の損失が常に発生する。また、過渡時は半導体スイッチで切替えて定常時は機械式スイッチに切替える方式も考えられるが、回路規模の増大や機械式スイッチの信頼性の問題が発生する。また、半導体スイッチをSiC等の新素子で形成することも考えられるが、現段階では素子自体が高価であり、素子損失が無くなるわけではない。
【0014】
特許文献4及び5の場合、インバータ主回路を2台同時に駆動する必要があり、インバータ主回路損失が2倍となる。
【0015】
以上の通り、現状提案されている方式でも低中速域の高効率化と高速域の駆動範囲拡大は可能であるが、更なる高効率化や使用感の向上を進めるには不十分である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1から
図5を用いて第1の実施例を説明する。
【0021】
先ず
図1を用いて基本動作について説明する。
図1は本発明のモータ駆動装置の基本構成図である。
図1は、平滑コンデンサ3に接続されたインバータ回路1A(以下「インバータA」という。)とインバータ回路1B(以下「インバータB」という。)と、3相巻線構造の永久磁石同期モータ(以下「モータ」という。)2から構成されており、モータ2はそれぞれの巻線が直列接続され、直列接続された接続点が外部と接続できる構造となっており、この接続点にインバータA及びBが接続されている。
【0022】
具体的には、インバータAは3相の端部である接続点Aに接続されており、インバータBはモータ2の接続点Bに接続されている。ここで、モータ2が回転した時に発生する誘起電圧は接続点Aが接続点Bより高くなる構成である。言い換えると、接続点Aから見た巻数が接続点Bから見た巻数より多い巻線構成となっている。
【0023】
また、平滑コンデンサ3は、交流電源を整流する整流回路もしくは電池等から直流電力を供給されている。
【0024】
また、インバータの制御はPWM制御を用いた方式であり公知技術を使用する。言い換えると、インバータの制御に関して限定するものではない。
【0025】
以上の構成において、モータの動作状態に応じてインバータAもしくはインバータBのどちらか一方でモータ2を駆動する。
【0026】
具体的には、低速回転時はインバータAを用いて駆動する。モータ2が発生する誘起電圧が大きいのでモータ電流は少なくて済み、インバータ損失である導通損、スイッチング損、及び、モータ損失である銅損、鉄損が低減できる。
【0027】
一方、高速回転時はインバータBを用いて駆動する。高速回転時にインバータAを用いて駆動すると誘起電圧が増大し、弱め界磁制御等を用いて誘起電圧を打ち消しながら駆動する必要があり、インバータ損失及びモータ損失が増大する。よって、接続点Bに接続されたインバータBで駆動すれば、誘起電圧が半減するので、弱め界磁制御等を使用しなくても高速駆動が可能となりインバータ損失及びモータ損失の低減も図れる。
【0028】
次に
図2から
図5を用いてさらに詳細に説明する。
図2はインバータ回路を3台用いた場合の接続構成図である。モータ20は、各相の巻線の直列数を3つに分割した巻線構造としている。インバータ回路及びモータの基本構成及び動作は
図1と同様である。
【0029】
図3から
図5は、
図2の接続構成を用いた場合のモータ回転数に対する各特性を示している。
図3はモータの出力トルクが一定の場合における回転数に対するモータの電流、
図4はモータの電流が一定の場合における回転数に対するモータの出力トルク、
図5は回転数に対する誘起電圧である。
【0030】
図3は、モータの出力トルクが一定の場合における各インバータ(A、B、C)で駆動した時のモータ電流の特性を示している。インバータAは、モータ20の一番巻数が多い端子(以下「接続点A」という。)に接続されており、
図5に示す通り、回転数に対する誘起電圧が高いため、少ないモータ電流で同一トルクを発生できる。このため、インバータ損失及びモータ損失を大きく低減できる。しかし、回転数を増加させると、誘起電圧が高くなり回転数A1で直流電圧と等しい状態(以下「電圧飽和」という。)となる。よって、回転数A1より高い回転数では弱め界磁制御を用いて回転数を増加させる必要がある。
【0031】
弱め界磁制御はモータの電流位相を制御して無効電流を流して誘起電圧を打ち消す制御法であり、回転数A1以降はモータ電流が増大しインバータ損失及びモータ損失も急増して行く。
【0032】
インバータBは、モータ20の中間的な巻数となる端子(以下「接続点B」という。)に接続されており、回転数B1で電圧飽和となる。
【0033】
インバータCは、モータ20の一番巻数が少ない端子(以下「接続点C」という。)に接続されており、インバータAとは反対に、低速域ではインバータ損失及びモータ損失が大きいため、所定の出力トルクを発生させるためにより大きなモータ電流を流す必要がある。一方、高速域では発生する誘起電圧が小さいため電圧飽和になる回転数C1が高く、高速領域ではインバータ損失及びモータ損失低減が図れるため、モータ電流を一番小さくすることができる。
【0034】
よって、モータ駆動装置の効率を向上させるには、
図3に示す通り、低速域はインバータA、中速域はインバータB、高速域はインバータCと駆動するインバータ回路を切替えれば良いことが分る。
【0035】
具体的には、回転数A2までは、インバータAで駆動しインバータBに切替える。同様に、回転数B2でインバータBからインバータCに切替える。上記の通り、駆動するインバータを切替えることで、モータ電流としては常に最小値での駆動が可能となり、モータ駆動装置の低損失化(高効率化)が図れる。言い換えると、常にモータ電流が最小値となるインバータ回路を選択すればモータ駆動装置の高効率化を図ることができる。
【0036】
図4は、モータの電流が一定の場合における各インバータ回路で駆動した時の回転数に対するモータの出力トルクを示したものである。前述の通り、インバータAは誘起電圧が大きい接続点Aに接続されているので、同一のモータ電流では、一番出力トルクが高い。しかし、回転数が増加すると、
図5に示す通り、すぐに電圧が飽和してしまうので、回転数A1以降は弱め界磁制御で駆動する必要があり、出力トルクが急激に減少する。
【0037】
インバータBは、前述の通り、中間的な誘起電圧となる接続点Bに接続されており、インバータAとインバータCの中間的動作となる。
【0038】
インバータCは、誘起電圧が一番小さくなる接続点Cに接続されているので、同一モータ電流では、出力トルクは小さいが回転数C1まで弱め界磁制御を用いずに駆動することが可能である。
【0039】
よって、モータ駆動装置の駆動範囲を拡大させるには、
図4に示す通り、低速域はインバータA、中速域はインバータB、高速域はインバータCと駆動するインバータ回路を切替えれば良いことが分る。具体的には、回転数A2までは、インバータAで駆動しインバータBに切替える。同様に、回転数B2でインバータBからインバータCに切替える。駆動するインバータを切替えることで、高速域の駆動範囲を拡大可能となり、モータ駆動装置の駆動範囲の拡大が図れる。言い換えると、常にモータ出力トルクが最大となるインバータ回路を選択すればモータ駆動装置の駆動範囲の拡大を図ることができる。
【0040】
図4に示す出力トルク特性は、電動車両が要求するトルク特性そのものであり、特に電動車両の主機駆動装置への適用が期待できる。
【0041】
ここで、インバータ回路を切替える条件として、
図5に示す通り、直流電圧と誘起電圧の関係を用いても良い。
【0042】
つまり、電圧飽和しない条件は直流電圧と誘起電圧の関係で決定される。そこで、誘起電圧が直流電圧以下でかつ誘起電圧と直流電圧の差が一番小さくなる接続点に接続されているインバータ回路を選択すれば良い。
【0043】
なお、この場合、弱め界磁制御との関係もあるので、前述の通り、モータ電流による切替えの判定を併用することでも良い。
【0044】
また、誘起電圧はモータ定数を用いて制御器内部で計算可能である。
【0045】
以上の通り、
図3で駆動するインバータ回路をモータの運転状態であるモータの回転数やモータ電流、出力トルク等で切替えることでモータ駆動装置の高効率化が可能なこと、及び、
図4で駆動範囲の拡大が可能なことを述べたが、この動作は同時に実現できる内容である。
【0046】
言い換えると、インバータ回路をモータの回転数やモータ電流、出力トルク、誘起電圧等で切替えることで、モータ駆動装置の高効率化と駆動範囲の拡大が同時に達成できる。
【0047】
更に、
図1及び
図2に示す本構成では、駆動するインバータ回路は常に1台であるので、インバータ回路が発生する損失は1台分である。また、モータの巻線を切替えるための付属の半導体スイッチ回路等も不要であり、特許文献3、4、5に比べて高効率なシステムが実現できる。
【0048】
また、インバータ回路の切替えは、所定のタイミングで切替えることで対応可能である。切替えショック等もなく切替え可能である。
図13にシミュレーション結果を示す。説明は後述する。
【0049】
第1の実施例で本発明の基本的な考え方、効果及び動作にいて述べた。第2の実施例として、本発明を実際に製品等に適用した場合の具体的な適用例について述べる。
図3では、駆動するインバータ回路によってモータ電流値が異なることを示した。そこで、このような特性を考慮してインバータ回路に使用するスイッチング素子の特性を変更することも可能である。
【0050】
図6及び
図7を用いて第2の実施例を説明する。
図6及び
図7は、
図1と同様のモータ駆動装置の基本構成図であるが、インバータ回路10A、10B、100A、100Bのスイッチング素子が異なる。
【0051】
図6は、低速域を駆動するインバータAのスイッチング素子として、低電流で低導通損失特性に優れたスイッチング素子(例えばMOSFET)を適用し、高速域を駆動するインバータBのスイッチング素子として、高電流で低導通損失特性に優れたスイッチング素子(例えばIGBT)を適用した例である。
【0052】
図7は、インバータA、Bの上下アームの素子も異なる特性の素子で構成した例である。上アームのスイッチング素子として高電流で低導通損失特性に優れたスイッチング素子(例えばIGBT)を適用、下アームのスイッチング素子として低電流で低導通損失特性に優れたスイッチング素子(例えばSJ−MOSFET)を適用した例である。
【0053】
図7の実施例の場合、下アームに適用しているSJ−MOSFETは特に低電流時の導通損失が少ない素子であるので、低電流時は下アームのスイッチング動作が少なくなり、オンしている時間が長くなる下2相変調方式で駆動し、高電流時は上アームのスイッチング動作が少なくなり、オンしている時間が長くなる上2相変調方式で駆動すると、より低損失化が図れる。
【0054】
このように各インバータ回路の運転状態(電流、電圧、変調方式)にあったスイッチング素子を選定することで、更なるインバータ回路の損失低減が図れる。言い換えると、適用しているスイッチング素子の特性に合わせて、スイッチング動作を行わせることが有効である。
【0055】
ここで、
図6のインバータAとインバータBもしくは、
図7のインバータAとインバータBのスイッチング素子の耐圧や電流容量も異ならせることが可能である。つまり、例えば、
図3において、低速域を駆動するインバータAは、比較的電流が少なくて済むので、高速域を駆動するインバータBよりは、低電流容量の素子が使用可能である。
【0056】
本実施例では、
図6及び
図7に示した通り、使用素子の組合せを示したが、本実施例の素子の組合せに限定するものではなく、適用するシステムに応じた素子の組合せが可能である。
【0057】
第3の実施例として具体的な適用例について述べる。第2の実施例ではスイッチング素子の特性をそれぞれのインバータ回路で変えることを述べたが、第3の実施例ではスイッチング周波数を変更する例について述べる。
【0058】
図8及び
図9を用いて第3の実施例を説明する。
図8及び
図9とも横軸にモータの回転数、縦軸にインバータ回路のスイッチング周波数を示したものである。
【0059】
モータの鉄損を考えた場合、一般的にインバータ回路のスイッチング周波数を高く設定した方が鉄損を小さくできることが知られており、特に高速域ではその効果が顕著になる。これは、PWM制御時のスイッチング動作に起因するモータ電流のリップル成分の影響である。そのため、モータのインダクタンス成分が小さい状態でも影響が大きくなる。
【0060】
そこで、本実施例は、低中速域を駆動するインバータAのスイッチング周波数より高速域を駆動するインバータBのスイッチング周波数を高く設定することで、モータの鉄損の低減を図り、モータとインバータ回路の総合損失を最小にしようとすることを目的とした実施例である。
【0061】
モータ駆動装置の構成は前述の
図1、
図6、
図7等の回路構成でも適用可能であるが、本実施例の効果を最大限発揮するには、高速域を駆動するインバータBのスイッチング素子の特性としては、低スイッチング損失特性に優れた素子を選択することが重要である。将来的にはSiC素子などの新素子の適用も考えられる。
【0062】
図8は駆動するインバータ回路をインバータAからインバータBへ切替える時にスイッチング周波数も一緒に変更する動作、
図9はインバータBで駆動時にモータの回転数に応じてスイッチング周波数を変更する動作を記載している。
【0063】
このように高速域で駆動するインバータ回路のスイッチング周波数を高周波化することで駆動するモータの鉄損が低減でき、システム全体での効率改善へと繋がる。特にインバータBで駆動する場合、モータの巻数が少なくインダクタンス成分が小さくなるので、その効果は大きい。
【0064】
ここで、スイッチング周波数の変化は、
図8又は
図9の動作に限定するものではなく、適用するシステムに応じたスイッチング周波数の変更方法が考えられる。
【0065】
これまでの実施例では効率改善と駆動範囲の拡大についての適用例を述べた。しかし、前述の実施例では高速駆動時にモータの誘起電圧が増加して直流電圧以上になった場合の電力回生を防止する方法について述べていない。実施例4では電力回生の防止方法の例を示す。
【0066】
図10及び
図11に本実施例のモータ駆動装置の基本構成図を示す。高速域用インバータBで駆動時に動作を停止しているインバータAのモータ接続端子にはモータ2が発生する誘起電圧が印加される。平滑コンデンサ3の直流電圧が発生した誘起電圧以上であれば回生電流は流れず安定したモータ駆動が可能であるが、発生した誘起電圧が直流電圧以上になると、インバータ回路に内蔵されているフライホイールダイオードを介して回生電流が流れる。この現象が発生するとモータ駆動も不安定になる。
【0067】
そこで、
図10及び
図11に示す通り、電力回生を防止するスイッチ回路4A、4B、4Cを追加し、電力回生が起きる前に、インバータAもしくはモータ2の各相端子を電気的に切り離す回路構成とする。以上により、高速回転時の電力回生を防止でき安定した高速回転駆動が実現できる。
【0068】
ここで、スイッチ回路4A、4B、4Cはリレー等の機械式スイッチでも半導体素子スイッチでもどちらでも良い。機械式スイッチの場合は、電流が流れていない状態での切替えが必要であるが、発生する誘起電圧が直流電圧より低い状態で入り切りすれば問題なく使用できる。
【0069】
実施例4では、スイッチ回路4A、4B、4Cを用いて電力回生を防止する方法を述べたが、スイッチ回路を追加することはコストアップや信頼性の低下(特に機械式スイッチの場合)に繋がるのでなるべく避けたい。その解決策の一つの手段として、実施例5ではモータの巻数分割比を調整する方法について述べる。
【0070】
図12は低速駆動時の巻数を同じにして高速駆動時の外部接続点を出す接続点を変えた時の接続構成図である。(a)は巻数分割比率2:1(基準値)、(b)は巻数分割比率3:1、(c)は巻数分割比率4:1、(d)は巻数分割比率3:2に設定した接続構成図である。この接続構成図で駆動した時のシミュレーション結果を
図13に示す。
【0071】
図13は、横軸が時間軸であり、縦軸が上からモータ電流、モータ電流指令、回転数と回転数指令、インバータ切替信号を示している。永久磁石同期モータの起動方法として一般的に使用されている位置決めを行い、同期駆動をし、位置センサレスベクトル制御の起動シーケンスで起動され、回転数を高速回転まで加速している途中で駆動インバータを切替えているシミュレーション結果である。モータ制御法については本発明と直接関係が無いので説明は省略する。
【0072】
図13に示す通り、インバータAからインバータBへの切替えはスムーズに行われているが、その後モータ電流が増大しているのが分る。これが電力回生による不安定現象である。
【0073】
ここで、
図13のシミュレーション結果では、電力回生が発生後(モータ電流が急増後)に安定しているが、これはモータモデルを抵抗とリアクトルと電圧源でモデル化したモータモデルを使用したためであり、実際のモータ駆動では、過電流や脱調現象が発生しモータは停止する。
【0074】
図13において、基準である(a)のシミュレーション結果では、約6500rpmで電力回生が発生しモータ電流が急激に増大しているが、接続構成を(a)から(b)、(c)と変更すると、電力回生が発生する回転数が、約7600rpmから約8300rpmと高速側に移動することが確認できる。また、反対に、(d)のように巻数分割比率を設定すると、電力回生が発生する回転数が約5600rpmに下がることも確認できる。
【0075】
以上の通り、本手法では電力回生の発生自体を防止することはできないが、電力回生が発生する回転数を調整することが可能であり、電力回生が発生する回転数を、適用するシステムの要求する最大回転数以上に設定できれば、前述の実施例4のようなスイッチ回路を追加する必要が無くなり、低コスト化や信頼性向上が可能となる。
【0076】
本実施例では、電力回生が発生する回転数調整を目的として巻数分割比率を調整することを述べたが、本手法はこの限りではない。言い換えると、適用するシステムの要求に従って巻数分割比率を変えることも可能である。具体的には、高速駆動時の効率向上を考慮して、巻数分割比率を変えることも可能である。
【0077】
また、実際の適用システムでは、直流電圧の昇圧が可能なモータ駆動装置も多々あり、直流電圧の昇圧と本実施例の巻数分割比率調整を組合せることも可能である。
【0078】
次に、第6の実施例として、
図14から
図17を用いて直流電圧を昇圧できるモータ駆動装置を説明する。
図14及び
図15は本実施例のモータ駆動装置の基本構成図である。
【0079】
図14は、
図1に示した基本構成に、交流電源6を全波整流回路と倍電圧整流回路を切替えて直流電圧を変更する全波/倍電圧切替整流回路5を追加した構成である。また、全波/倍電圧整流回路の切替えを行うため、平滑コンデンサ30が直列接続構成に変更されている。
【0080】
ここで示す全波/倍電圧切替整流回路5は公知技術であるので詳細は述べないが、全波/倍電圧切替スイッチ5Bの入り切りで全波整流回路と倍電圧整流回路の切替えを行っている。具体的には、全波/倍電圧切替スイッチ5Bをオフすると全波整流回路となり、全波/倍電圧切替スイッチ5Bをオンすると倍電圧整流回路として動作する。このため、直流電圧は、ステップ的に変化する。
【0081】
図15は、
図1に示した基本構成に、直流電源7の直流電圧を昇圧チョッパ回路50で昇圧するコンバータ回路を追加した構成である。昇圧チョッパ回路50はスイッチング動作を用いて任意の直流電圧に昇圧が可能である。
【0082】
本実施例では、直流電源7に接続しているが、交流電源を整流して直流電源を得ても問題ない。また、昇圧チョッパ回路を用いて、交流電源の高調波電流抑制を行う構成としても全く問題ない。言い換えると、本実施例で示している直流電圧の昇圧手段に特定するものではない。
【0083】
図16及び
図17は、横軸にモータの回転数、縦軸に直流電圧とモータの発生する誘起電圧を示した本実施例の動作説明図である。直流電圧を実線、誘起電圧を破線で示す。
【0084】
図16は、
図14の回路構成を用いた場合の動作説明図である。低中速域は、これまでの実施例で説明した通りインバータAで駆動する。この時は、モータ回転数も低いので大きな直流電圧は必要ないため、全波整流回路で動作させる。
【0085】
回転数が増加してN1になると発生する誘起電圧と直流電圧が同じになる(電圧飽和)ため、高速域駆動用のインバータBに切替えて駆動をする。インバータBに切替えることで、インバータBにかかる誘起電圧は一旦減少する。その後回転数を増加して行くと誘起電圧が増加して直流電圧以上になるため、回転数N2で整流回路構成を倍電圧整流回路に切替える。整流回路構成を切替えることで、直流電圧が倍の大きさとなり、電圧飽和することなく高速駆動が可能となる。言い換えると、実施例5で述べたような電力回生が発生せず高速域まで安定したモータ駆動が可能となる。
【0086】
さらに、低速域では直流電圧を低く抑えることが可能であるので、インバータ回路のスイッチング損失やモータの鉄損が低減でき高効率駆動化が可能である。
【0087】
図17は、
図15の回路構成を用いた場合の動作説明図である。基本的な動作は
図16と同じである。異なるところは、回転数N2以降の直流電圧の上げ方である。
図15の回路構成では、昇圧チョッパ回路50を用いることにより直流電圧を任意の大きさに昇圧できるため、高速域の直流電圧を必要最小限に制御することで、昇圧チョッパ回路50の損失が低減できる。さらに、インバータ回路のスイッチング損失やモータの鉄損も低減可能である。
【0088】
本実施例では、電圧飽和時にすぐに大きくする方法で動作説明したが、
図3に示す通り、電圧飽和直後は弱め界磁制御で駆動した方がモータ電流を低減できる可能性もあるので、実際には弱め界磁制御と直流電圧の制御を併用して使用することが良いと考える。
【0089】
なお、本実施例では、直流電圧が制限値以上もしくは以下になった時に、昇圧比aを補正する内容について説明したが、更なる効率向上と高出力化の両立を図るためには、昇圧比の設定値自体も空調装置の負荷に応じて変更する必要がある。
【0090】
図18は一例として、セパレート型のインバータエアコンの外観図を示しており、室外機53と室内機52で構成されている。室外機53内には、モータと一体となった圧縮機や室外ファン及び圧縮機や室外ファンを駆動するモータ駆動装置が設置されている。
【0091】
以上の通り、複数の巻線を直列に接続して構成される複数の相と、前記相の端部、又は、直列に接続された2つの前記巻線の間に位置して外部と接続できる複数の外部接点と、を有するモータと、それぞれ異なる前記外部接点を介して異なる巻数の前記巻線に接続された複数のインバータ回路と、を備え、前記モータの運転状態に応じて選択された1つの前記インバータ回路によって前記モータを駆動する。
【0092】
また、前記モータの出力トルクが最大となる前記インバータ回路によって前記モータを駆動してもよい。
【0093】
また、前記モータに流れる電流が最小となる前記インバータ回路によって前記モータを駆動してもよい。
【0094】
また、前記インバータ回路に供給される直流電圧より低い誘起電圧が発生する前記外部接点の中で、前記直流電圧との電圧差が最も小さい前記誘起電圧が発生する前記外部接点に接続される前記インバータ回路によって、前記モータを駆動してもよい。
【0095】
また、複数の前記インバータ回路は少なくとも第1のインバータ回路、及び、前記第1のインバータ回路よりも少ない前記巻線に接続される第2のインバータ回路を有し、前記モータの回転数が設定値より小さいときは、前記第1のインバータ回路によって前記モータを駆動し、前記モータの回転数が前記設定値以上のときは、前記第2のインバータ回路によって前記モータを駆動してもよい。
【0096】
また、第1の巻線及び第2の巻線を直列に接続して構成される複数の相と、前記相の端部に位置して外部と接続できる第1の外部接点と、前記第1の巻線及び前記第2の巻線の間に位置して外部と接続できる第2の外部接点と、を有するモータと、前記第1の外部接点を介して前記第1の巻線及び前記第2の巻線に接続された第1のインバータ回路と、前記第2の外部接点を介して前記第1の巻線に接続された第2のインバータ回路と、を備え、前記モータの回転数が設定値より小さいときは、前記第1のインバータ回路によって前記モータを駆動し、前記モータの回転数が設定値以上のときは、前記第2のインバータ回路によって前記モータを駆動する。
【0097】
また、前記第1のインバータ回路の素子は低電流で低導通損失特性に優れた素子であり、前記第2のインバータ回路の素子は高電流で低導通損失特性に優れた素子である。
【0098】
また、前記第1のインバータ回路のスイッチング周波数より前記第2のインバータ回路のスイッチング周波数を
高く設定する。
【0099】
また、前記インバータ回路に供給される直流電圧よりも高い誘起電圧が発生する前記外部接点へは直流電力を供給しない。電気的に切り離すことにより、モータを高速で駆動するときに発生する誘起電圧による電力回生を防止することができる。
【0100】
また、前記モータの巻線分割比率を非等分にする。
【0101】
また、交流電力を設定した電圧の直流電力に変換して、複数の前記インバータ回路に直流電力を供給するコンバータ回路と、前記モータによって駆動される圧縮機と、を備えた冷凍空調装置において、前記圧縮機の運転状態に応じて選択された前記インバータ回路によって、前記モータを駆動する。
【0102】
また、直流電力を設定した電圧の直流電力に変換して、複数の前記インバータ回路に直流電力を供給するコンバータ回路と、前記モータによって駆動される電動車両と、を備えた電動車両において、前記電動車両の運転状態に応じて選択された前記インバータ回路によって、前記モータを駆動する。
【0103】
また、前記コンバータ回路は、前記モータの発生誘起電圧以上に前記直流電圧を可変する。直流電圧を昇圧することができ、高速駆動範囲の更なる拡大を図ることができる。