特許第5907740号(P5907740)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5907740
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】消音装置及びこれを備える回転機械
(51)【国際特許分類】
   F01D 25/30 20060101AFI20160412BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20160412BHJP
   F02C 7/24 20060101ALI20160412BHJP
【FI】
   F01D25/30 D
   F02C7/00 B
   F02C7/24 C
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-16761(P2012-16761)
(22)【出願日】2012年1月30日
(65)【公開番号】特開2013-155663(P2013-155663A)
(43)【公開日】2013年8月15日
【審査請求日】2014年11月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(72)【発明者】
【氏名】加藤 永護
(72)【発明者】
【氏名】青田 豊誠
(72)【発明者】
【氏名】森田 英之
【審査官】 橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−163685(JP,A)
【文献】 実開昭61−181225(JP,U)
【文献】 実開平03−073274(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D13/00−15/12
23/00−25/36
F02C1/00−9/58
F23R3/00−7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流れるダクト内に該流体流路の方向に直交して設けられ四方枠状に組まれた枠部材と、該枠部材に外縁部が固定されるとともに略矩形状の板部材に複数の孔部が形成された消音多孔板とを備える消音装置であって、
前記孔部は、一の方向に沿って互いに間隔を有して一列状に複数配設されるとともに該一列状をなす複数の前記孔部を前記一の方向と直交する方向に複数列配設され、隣接する列同士における前記孔部の位置は前記一の方向に位置をずらして千鳥状に配設されており、
前記消音多孔板における少なくとも対向する二辺側における一列状をなす外縁孔部列の前記孔部の配設間隔は、該外縁孔部列の内側の列の前記孔部の配設間隔よりも大きく設定されている部分を有することを特徴とする消音装置。
【請求項2】
請求項1に記載の消音装置において、
前記一の方向は前記板部材のうちの一の辺の方向と同一とされ、
前記外縁孔部列は、その略中央部における前記孔部の配設間隔の方が、その端部における前記孔部の配設間隔よりも大きく設定されていることを特徴とする消音装置。
【請求項3】
請求項1に記載の消音装置において、
前記一の方向は前記板部材の一の辺の方向と同一とされ、
前記外縁孔部列の前記孔部の配設間隔は、該外縁孔部列の内側の列の前記孔部の配設間隔の2倍であることを特徴とする消音装置。
【請求項4】
請求項1に記載の消音装置において、
前記一の方向は、前記板部材の一の辺の方向から傾斜して設けられることにより、前記外縁孔部列の前記孔部の配設間隔は、該外縁孔部列の内側の前記一の方向に沿う列の前記孔部の配設間隔よりも大きく設定されていることを特徴とする消音装置。
【請求項5】
請求項4に記載の消音装置において、
前記一の方向は、前記板部材の一の辺の方向よりも15°傾斜して設けられていることを特徴とする消音装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の消音装置を備えることを特徴とする回転機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消音装置及びこれを備える回転機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ガスタービンにおいては、排気ダクトから排ガスが600℃以上の高温状態とされるとともに30m/秒の流速で導出され、この際にガスタービン出口で騒音が発生するという問題点があった。
【0003】
そこで、従来より、ガスタービンのダクト内に、排ガス流路に沿って消音効果のあるサイレンサパネルを複数配置したスプリッタ形のサイレンサを設けることで、排ガスの流出時の騒音を防止する技術が採用されている(下記特許文献1参照)。
【0004】
また、格子状に組まれた枠組と、該枠組の表面に複数設けられ孔部を千鳥状に穿設した略矩形の板状部材の多孔板からなるサイレンサとを備え、該サイレンサを排ガスの流路と直交する方向に配設した消音に関する技術も知られている。このようなサイレンサでは、排ガスの流路を該サイレンサが遮るとともに、該排ガスが孔部を通過する際の圧力損失により消音効果が得られ、騒音を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3631998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の多孔板からなるサイレンサにあっては、多孔板が密に配される側の外縁部における辺方向中央では振動応力が高くなり、該多孔板の強度が下がるという問題点がある。
【0007】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、消音多孔板の振動応力を低減することができるとともに、該消音多孔板を支持する枠部材の強度を向上させることができる消音装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係る消音装置は、流体が流れるダクト内に該流体流路の方向に直交して設けられ四方枠状に組まれた枠部材と、該枠部材に外縁部が固定されるとともに略矩形状の板部材に複数の孔部が形成された消音多孔板とを備える消音装置であって、前記孔部は、一の方向に沿って互いに所定の間隔を有して一列状に複数配設されるとともに該一列状をなす複数の前記孔部を前記一の方向と直交する方向に複数列配設され、隣接する列同士における前記孔部の位置は前記一の方向に位置をずらして千鳥状に配設されており、前記消音多孔板における少なくとも対向する二辺側における一列状をなす外縁孔部列の前記所定の間隔は、該外縁孔部列の内側の列の所定の間隔よりも大きく設定されている部分を有することを特徴とする。
【0009】
このような消音装置では、消音多孔板における振動応力が集中する外縁孔部列の孔部の配置間隔は該外縁孔部列の内側の列の孔部の配置間隔よりも大きくなるため、外縁孔部列における振動応力を低減することができる。
また、上述の通り外縁孔部列における振動応力は低減されるため、該外縁孔部列の近傍の枠部材の振動を抑えることができる。これにより、消音装置の後方における流体の乱流を抑えることができるため、消音多孔板を支持する枠部材の強度を向上させることができる。
【0010】
また、本発明に係る消音装置は、前記一の方向は前記板部材のうちの一の辺の方向と同一とされ、前記外縁孔部列は、その略中央部における前記孔部の配設間隔の方が、その端部における前記孔部の配設間隔よりも大きく設定されていることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、外縁孔部列の略中央部における孔部の配置間隔は確実に大きくなるため、外縁孔部列における振動応力を低減することができる。
【0012】
また、本発明に係る消音装置は、前記一の方向は前記板部材の一の辺の方向と同一とされ、前記外縁孔部列の前記孔部の配設間隔は、該外縁孔部列の内側の列の前記孔部の配設間隔の2倍であってもよい。
【0013】
この構成によれば、外縁孔部列の孔部の配置間隔は該外縁孔部列の内側に列の孔部の配置間隔よりも2倍と確実に大きくなるため、外縁孔部列における振動応力を低減することができる。
【0014】
また、本発明に係る消音装置は、前記一の方向は、前記板部材の一の辺の方向から傾斜して設けられることにより、前記外縁孔部列の前記孔部の配設間隔は、該外縁孔部列の内側の前記一の方向に沿う列の前記孔部の配設間隔よりも大きく設定されていてもよい。
【0015】
この構成によれば、外縁孔部列の孔部の配置間隔は該外縁孔部列の内側に列の孔部の配置間隔よりも確実に大きくなるため、外縁孔部列における振動応力を低減することができる。
【0016】
また、本発明に係る消音装置は、前記一の方向は、前記板部材の一の辺の方向よりも15°傾斜して設けられていてもよい。
【0017】
この構成によれば、外縁孔部列の孔部の配置間隔が確実に大きくなるため、外縁孔部列における振動応力を低減することができる。
【0018】
また、本発明に係る回転機械は、上記のうちのいずれか一に記載の消音装置を備えていることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、上記のうちのいずれか一に記載の消音装置を備えるため、消音多孔板の振動応力を低減することができるとともに、該消音多孔板を支持する枠組部材の強度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る消音装置によれば、消音多孔板における振動応力が集中する外縁孔部列の孔部の配置間隔は該外縁孔部列の内側の列の孔部の配置間隔よりも大きく設定されているため、消音多孔板の外縁孔部列における振動応力を低減することができるとともに、該消音多孔板を支持する枠部材の強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第一実施形態に係る回転機械の概略構成図である。
図2】本発明の第一実施形態に係る消音装置の要部の斜視図である。
図3】本発明の第一実施形態に係る消音装置の拡大斜視図である。
図4】本発明の第一実施形態に係る消音装置の平面図である。
図5】本発明の第二実施形態に係る消音装置の平面図である。
図6】本発明の第三実施形態に係る消音装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第一実施形態)
以下、図面を参照し、本発明の第一実施形態に係る回転機械について説明する。
図1は、本発明の第一実施形態にかかるガスタービン3(回転機械)を備えるプラント2の概略構成図である。
図1に示すように、プラント2は、空気を圧縮する圧縮機4と、該圧縮機4で圧縮された空気を燃焼する燃焼器5と、燃焼器5で生じた燃焼ガスで稼動するガスタービン3とを備えている。また、圧縮機4には発電機6が連結されている。また、ガスタービン3で生じた排ガスG(流体)は、ダクト7内に設けられた本実施形態に係る消音装置1を通過して、上下方向に延在する煙突8より放出される。
【0023】
図2に示すように、消音装置1は、排ガスGが流れるダクト7内に、該排ガスG流路Zの方向と直交して設けられた枠部材11と、消音多孔板21とを備えている。
【0024】
図3に示すように、枠部材11は、複数の横枠12及び複数の縦枠13により四方枠状に組まれている。
横枠12は、断面視して上向きU字状であって水平方向に延在する部材であり、上下方向に間隔を有して複数配設されている。また、図2に示すように、本実施形態では、上下方向に間隔を有して10本配設されている。
縦枠13は、上下に配設された各横枠12の間を架設するように上下方向に延在する部材であり、水平方向に間隔を有して複数配設されている。また、図3に示すように、縦枠13は前後一対の部材で有り、該一対で消音多孔板21を挟持している。また、図2に示すように、本実施形態では、水平方向に間隔を有して10本配設されている。
【0025】
図4に示すように、消音多孔板21は、略矩形状の板部材22に複数の孔部23が形成されたものであり、その四辺21A,21B,21C,21Dが枠部材11に固定されている。本実施形態では、例えば厚さ9mmのステンレス板で構成され、例えば溶接等により枠部材11に固定されている。
また、消音多孔板21は、下辺21Aを上向きコの字状の横枠12内に配設し、右辺21B、左辺21Cを前後方向から縦枠13で挟持して、上辺21Dを横枠12の下部に当接固定されている。
孔部23は、上下方向(一の方向)に沿って互いに間隔を有して一列状に配設されている。また、孔部23の配設される上下方向は、板部材22の右辺21B及び左辺21Cの方向と同一とされている。また、該一列状をなす孔部23は水平方向(一の方向と直交する方向)に複数列配設されている。また、隣接する列同士における孔部23の位置は上下方向に位置をずらして千鳥状に配設されている。
また、対向する右辺21B側と左辺21C側における一列状をなす外縁孔部列26X,26Yの孔部23の配設間隔は、端部では第一配設間隔25Aで、略中央部では第一配設間隔25Aよりも大きい第二配設間隔25Bでそれぞれ設定されている。また、外縁孔部列26X,26Yの内側の列の孔部23の配設間隔は、第一配設間隔25Aで設定されている。このようにして本実施形態では、外縁孔部列26X,26Yの略中央部の孔部23の第二間隔25Bは、該外縁孔部列26X,26Yの内側の列の孔部23の第一間隔25Aよりも大きく設定されている。
【0026】
このように構成された消音装置1では、消音多孔板21における振動応力が集中する外縁孔部列26X,26Yの略中央部の孔部23の第二間隔25Bは、該外縁孔部列26X,26Yの内側に列の孔部23の第一配設間隔25Aよりも大きくなるため、外縁孔部列26X,26Yにおける振動応力を低減することができる。
【0027】
また、上述の通り外縁孔部列26X,26Yにおける振動応力は低減されるため、該外縁孔部列26X,26Yの近傍の枠部材11の振動を抑えることができる。これにより、消音装置1の後方における流体の乱流を抑えることができるため、消音多孔板21を支持する枠部材11の強度を向上させることができる。
【0028】
(第二実施形態)
以下、本発明の第二実施形態に係る消音装置201について、図5を用いて説明する。
この実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と共通の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0029】
第一実施形態に係る消音装置1では、外縁孔部列26X,26Yの略中央部と端部とで孔部23の配設間隔が異ならせることで、外縁孔部列26X,26Yの略中央部の孔部23の配設間隔が該外縁孔部列26X,26Yの内側の列の孔部23の配設間隔よりも大きく設定されている。一方、本実施形態にかかる消音装置201では、外縁孔部列226X,226Yの孔部23の配設間隔を一定として、外縁孔部列226X,226Yの孔部23の配設間隔が該外縁孔部列226X,226Yの内側の列の孔部23の配設間隔よりも大きく設定されている。
【0030】
すなわち、本実施形態では、外縁孔部列226X,226Yの孔部23の第三配設間隔である225Aは、該外縁孔部列226X,226Yの内側の列の孔部23の第四配設間隔225Bよりも大きく設定されている。本実施形態では、第三配設間隔225Aは、第四配設間隔225Bの2倍とされている。
なお、上記数字は一例であり、適宜設定可能である。
【0031】
このように構成された消音装置201では、外縁孔部列226X,226Yの孔部23の第三配設間隔225Aは該外縁孔部列226X,226Yの内側に列の孔部23の第四配設間隔225Bよりも確実に2倍とされているため、外縁孔部列226X,226Yにおける振動応力を低減することができる。
【0032】
(第三実施形態)
以下、本発明の第三実施形態に係る消音装置301について、図6を用いて説明する。
この実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と共通の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0033】
第一実施形態に係る消音装置1では、孔部23の配設される上下方向は、板部材22の右辺21B(または左辺21C)の方向と同一とされている。一方、本実施形態にかかる消音装置301では、孔部23の配設される方向は、板部材322の右辺321B及び左辺321Cの方向から傾斜して設けられている。
【0034】
すなわち、本実施形態では、孔部23が所定の間隔を有して配設される方向(図6に示すP方向)は、板部材322の右辺321B(または左辺321C)の方向(図6に示すQ方向)よりも15°傾斜して設けられている。これにより、外縁孔部列326X,326Yの孔部23の第五配設間隔325Aは、外縁孔部列226X,326Yの内側の列の孔部23の第六配設間隔325Bよりも大きく設定されている。
なお、上記数字は一例であり、適宜設定可能である。
【0035】
このように構成された消音装置301では、外縁孔部列326X,326Yの孔部23の第五配設間隔325Aは該外縁孔部列326X,326Yの内側に列の孔部23の第六配設間隔325Bよりも確実に大きくなるため、外縁孔部列326X,326Yにおける振動応力を低減することができる。
【0036】
なお、上述した実施の形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0037】
1,201,301…消音装置
3…ガスタービン
7…ダクト
11…枠部材
21…消音多孔板
22…板部材
23…孔部
26X…外縁孔部列
26Y…外縁孔部列
図1
図2
図3
図4
図5
図6