(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
原燃料を水蒸気改質して燃料ガスを生成する改質器と、前記改質器で生成された燃料ガスを用いて発電する複数の燃料電池セルを有するセルスタックと、前記セルスタックからのオフガスを燃焼する燃焼部とを容器の内部に備え、
前記容器の内部から外部へ排出される排ガスが有する熱を用いて、前記燃料電池セルに供給する酸素、及び、前記改質器に供給する原燃料、及び、前記改質器に供給する水のうちの少なくとも何れか一つを加熱する加熱装置を、前記容器の内部の熱が伝達される前記容器の一つの外面に相対した状態で前記容器と一体に備え、
前記加熱装置では、前記排ガス、並びに、加熱対象としている前記酸素及び前記原燃料及び前記水のうちの少なくとも何れか一つが、前記一つの外面と相対する面に沿う方向に流れるように構成され、
前記加熱装置は、
前記改質器に供給する前記原燃料と前記改質器に供給する前記水とを前記排ガスの熱を用いて加熱するとともに混合することで、前記改質器に供給する前記原燃料と水蒸気との混合気体を生成する第1加熱器と、
前記改質器に供給する前記原燃料と前記改質器に供給する前記水との加熱に用いられた後の前記排ガスの熱を用いて前記燃料電池セルに供給する前記酸素を加熱する第2加熱器とを有し、
前記第1加熱器と前記第2加熱器とは、それらの間に伝熱量調整部材を挟んで隣接して配置され、
前記第1加熱器は、前記第2加熱器よりも前記容器に近い位置に配置される固体酸化物形燃料電池。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の固体酸化物形燃料電池では、上述したような筐体内部の多重構造による熱交換を行っているが、その熱交換が行われている部位は単に筐体の内部が板で仕切られた部位である。つまり、専用の熱交換器で熱交換を行うのではないため、排熱回収が充分に行われないという問題がある。
尚、筐体からの排ガスの出口に新たに専用の熱交換器を設け、その熱交換器で排ガスの熱を回収することも可能である。しかし、そのような専用の熱交換器を設けた場合、装置が大幅に大型化するという問題がある。更に、排ガスを筐体の外部に引き出して熱交換器へと導入するまでの配管部分での放熱が大きく、即ち、排ガスの熱が伝達された構成部材からの放熱が充分に抑制されておらず或いは他の構成部材への熱伝達が調整されていないので、排熱回収量が充分に得られないという問題もある。
【0006】
更に、特許文献1では、改質器での水蒸気改質に用いる水を蒸発させるための気化器の下方に、燃焼器やその燃焼器で燃焼されるアノード排ガスを排出する燃料電池セルを設けている。そのため、気化器によって大きな熱が奪われると、局所的に温度が低下したコールドスポットが発生してその近傍での燃料電池セルの性能低下や燃焼器での失火が発生する可能性がある。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、燃料電池セルや燃焼部の性能低下を抑制し、且つ、排熱回収性能を高めることができる固体酸化物形燃料電池を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る固体酸化物形燃料電池の特徴構成は、燃料を水蒸気改質して燃料ガスを生成する改質器と、前記改質器で生成された燃料ガスを用いて発電する複数の燃料電池セルを有するセルスタックと、前記セルスタックからのオフガスを燃焼する燃焼部とを容器の内部に備え、
前記容器の内部から外部へ排出される排ガスが有する熱を用いて、前記燃料電池セルに供給する酸素、及び、前記改質器に供給する原燃料、及び、前記改質器に供給する水のうちの少なくとも何れか一つを加熱する加熱装置を、前記容器の内部の熱が伝達される前記容器の一つの外面に相対した状態で前記容器と一体に備え、
前記加熱装置では、前記排ガス、並びに、加熱対象としている前記酸素及び前記原燃料及び前記水のうちの少なくとも何れか一つが、前記一つの外面と相対する面に沿う方向に流れるように構成され
、
前記加熱装置は、
前記改質器に供給する前記原燃料と前記改質器に供給する前記水とを前記排ガスの熱を用いて加熱するとともに混合することで、前記改質器に供給する前記原燃料と水蒸気との混合気体を生成する第1加熱器と、
前記改質器に供給する前記原燃料と前記改質器に供給する前記水との加熱に用いられた後の前記排ガスの熱を用いて前記燃料電池セルに供給する前記酸素を加熱する第2加熱器とを有し、
前記第1加熱器と前記第2加熱器とは、それらの間に伝熱量調整部材を挟んで隣接して配置され、
前記第1加熱器は、前記第2加熱器よりも前記容器に近い位置に配置される点にある。
【0009】
上記特徴構成によれば、改質器及びセルスタック及び燃焼部が設けられる容器からの排ガスが有する熱によって、酸素及び原燃料及び水のうちの少なくとも何れか一つを加熱する加熱装置が、容器の外部に設けられているので、即ち、加熱装置は容器の外部で熱消費を行うように構成されているので、容器の内部での温度低下を抑制できる。その結果、容器の内部において、燃料電池セルの性能低下や燃焼部での失火といった問題の発生を抑制できる。更に、加熱装置が容器と一体に備えられているので、容器の内部から外部へ排出される排ガスからの放熱を抑制して、排熱回収性能を高めることができる。
加えて、加熱装置が、容器の内部の熱が伝達される容器の一つの外面と相対した状態で容器と一体に設けられるので、容器の一つの外面を構成する部材から外部へ熱が放出されるとしても、その放出される熱は、ほとんど消散することなく、その一つの外面と相対する状態で容器と一体に設けられる加熱装置側へ伝達されるようになる。更に、加熱装置では、排ガス、並びに、加熱対象としている酸素及び原燃料及び水のうちの少なくとも何れか一つが、容器の一つの外面と相対する面に沿う方向に流れるように構成されているので、排ガス、並びに、加熱対象としている酸素及び原燃料及び水のうちの少なくとも何れか一つは、容器の一つの外面と相対する面に沿う方向に流れている間に、その容器の一つの外面と相対する面に与えられた熱を直接的又は間接的に充分に受けることができる。
従って、燃料電池セルや燃焼部の性能低下を抑制し、且つ、排熱回収性能を高めることができる固体酸化物形燃料電池を提供できる。
また、上記特徴構成によれば、改質器に供給する原燃料と水蒸気との混合気体が第1加熱器で生成された上で容器の内部に供給される。つまり、改質器に供給する原燃料と水とは容器の外部で第1加熱器によって加熱されて混合気体とされた上で容器の内部に導入されるので、容器の内部で水に気化熱が奪われることもない。その結果、容器の内部において原燃料と水との加熱のために奪われる熱を小さくできるので、容器の内部での温度低下を抑制できる。加えて、高温の排ガスは、先ず、第1加熱器において、改質器に供給する原燃料と水との加熱に用いられ、その後、相対的に温度が下がった排ガスが、第2加熱器において、燃料電池セルに供給する酸素の加熱に用いられる。つまり、高温の排ガスと、温度が下がった排ガスとを複数の用途に応じて供給することで、排ガスが有する熱の有効利用を図ることができる。以上のように、排ガスが、先ず相対的に高温の熱を必要とする第1加熱器において原燃料と水とを加熱するために利用され、その後、排ガスが保有する相対的に低温の熱を用いて第2加熱器において酸素が加熱されるので、排ガスが保有する熱を高温側から低温側へと段階的に回収して、熱の有効利用を図ることができる。
更に、第1加熱器と前記第2加熱器とを、それらの間に伝熱量調整部材を挟んで隣接して配置することで、第1加熱器を構成する部材から第2加熱器を構成する部材への熱伝達が調整或いは制限することができる。つまり、伝熱量調整部材として、第1加熱器を構成する部材から第2加熱器を構成する部材への熱伝達を制限するような構成を採用すれば、第1加熱器から第2加熱器への熱伝達を、主に排ガスを媒体とした熱伝達によって行うことができる。或いは、伝熱量調整部材として、第1加熱器を構成する部材から第2加熱器を構成する部材への熱伝達を促進するような構成を採用すれば、第1加熱器から第2加熱器への熱伝達を、排ガスを媒体とした熱伝達と、第1加熱器を構成する部材から第2加熱器を構成する部材への熱伝達とによって行うことができる。その結果、排ガスの供給を受ける第2加熱器において、第1加熱器から供給される排ガスの熱の有効利用を図ることができる。
また更に、上記特徴構成によれば、容器を構成する部材から放出される熱が、第1加熱器に対して優先的に伝達されるようにできる。
【0010】
本発明に係る固体酸化物形燃料電池の更に別の特徴構成は、前記加熱装置は、前記一つの外面の全体に相対した状態で設けられる点にある。
【0011】
上記特徴構成によれば、加熱装置が、容器の一つの外面の全体に相対した状態で設けられるので、容器の一つの外面から放出される熱の全体を加熱装置で受けることができる。
【0012】
本発明に係る固体酸化物形燃料電池の更に別の特徴構成は、前記容器と前記加熱装置とは、それらの間に伝熱量調整部材を挟んで隣接して配置される点にある。
【0013】
上記特徴構成によれば、伝熱量調整部材を設けることで、容器を構成する部材から加熱装置を構成する部材への熱伝達を調整或いは制限することができる。つまり、伝熱量調整部材として、容器を構成する部材から加熱装置を構成する部材への熱伝達を制限するような構成を採用すれば、容器から加熱装置への熱伝達を、主に排ガスを媒体とした熱伝達によって行うことができる。或いは、伝熱量調整部材として、容器を構成する部材から加熱装置を構成する部材への熱伝達を促進するような構成を採用すれば、容器から加熱装置への熱伝達を、排ガスを媒体とした熱伝達と、容器を構成する部材から加熱装置を構成する部材への熱伝達とによって行うことができる。その結果、加熱装置において、容器からの排熱の有効利用を図ることができる。
【0019】
本発明に係る固体酸化物形燃料電池の更に別の特徴構成は、前記第1加熱器は、前記排ガスが流れる第1流路と、前記改質器に供給する原燃料と前記改質器に供給する水とが流れる第2流路とを有し、
前記第1加熱器は平面視で矩形であり、前記第1流路は前記排ガスを矩形の長手方向に向けて直線状に流すように構成され、前記第2流路は前記改質器に供給する原燃料と前記改質器に供給する水とを矩形の短手方向に蛇行させながら長手方向に向けて流すように構成されている点にある。
【0020】
上記特徴構成によれば、第1加熱器において、排ガスは原燃料や水に比べて流量が大きいので、矩形の長手方向に向けて直線状に流すことにより排ガスの圧損を相対的に小さく抑えている。排ガスと、原燃料及び水との温度差は充分にあるため、原燃料及び水が蛇行しながら長手方向に向けて流れている間に充分に加熱される。
【0021】
本発明に係る固体酸化物形燃料電池の更に別の特徴構成は、前記第2加熱器は、前記排ガスが流れる第3流路と、前記燃料電池セルに供給する酸素が流れる第4流路とを有し、
前記第2加熱器は平面視で矩形であり、前記第3流路は前記排ガスを矩形の短手方向に蛇行させながら長手方向に向けて流すように構成され、前記第4流路は前記燃料電池セルに供給する酸素を矩形の短手方向に蛇行させながら長手方向に向けて流すように構成されている点にある。
【0022】
上記特徴構成によれば、排ガス及び酸素は共に矩形の短手方向に蛇行しながら長手方向に流れるので、偏流を防ぐことができ、有効な伝熱面積を大きくできる。つまり、排ガスと酸素との熱交換が充分に行われるようにできる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に図面を参照して本発明に係る固体酸化物形燃料電池について説明する。
図1は、固体酸化物形燃料電池FCの容器1及び加熱装置2の概略的な構成を示す図である。
図2は、固体酸化物形燃料電池FCの容器1に収容される機器の構成を示す斜視図である。
固体酸化物形燃料電池FCは、容器1の内部に、原燃料を水蒸気改質して燃料ガスを生成する改質器3と、改質器3で生成された燃料ガスを用いて発電する複数の燃料電池セル14を有するセルスタック(燃料電池部9)と、セルスタックからのオフガスを燃焼する燃焼部10とを備える。また、固体酸化物形燃料電池FCは、容器1の内部から外部へ排出される排ガスが有する熱を用いて、燃料電池セル14に供給する酸素(後述する「空気」)、及び、改質器3に供給する原燃料、及び、改質器3に供給する水のうちの少なくとも何れか一つを加熱する加熱装置2を、容器1の外部に、容器1と一体に備える。本実施形態では、外装ケース4が、容器1と加熱装置2とを収容している。
【0025】
〔容器〕
容器1は、4つの側壁1b及び上壁1c及び下壁1eで囲まれて構成される。容器1は、平面視で、即ち横断面が矩形である。各図において、この矩形の短手方向を「X」と表記し、それに直交する長手方向を「Y」と表記する。更に、容器1の内部は、X方向で対面する2つの側壁1bよりも内側でそのX方向に対面し且つ下壁1eよりも内側でそれら対面部分を連結するように設けられた内部隔壁1aで区画されている。尚、内部隔壁1aはY方向で対面する部位には設けられていない。つまり、容器1の内側では、X方向では内部隔壁1a同士が対面し、Y方向では側壁1b同士が対面している。更に、X方向で対面し且つ下壁1eよりも内側でそれら対面部分を連結している内部隔壁1a及びY方向で対面している側壁1bの内側には断熱材37を設けてあり、その断熱材37よりも更に内側には改質器3及び燃料電池部9及びガスマニホールド15を設けてある。また、内部隔壁1aよりも外側の、側壁1b及び下壁1eとの間の空間には、後述するように、容器1の内部からの排ガスが流れるようになっている。
【0026】
容器1の内部の上記断熱材37よりも内側に設けられる燃料電池部9は、改質器3で生成された燃料ガスが通流する燃料通流部(図示せず)と空気(即ち、酸素)が通流する空気通流部(図示せず)とを備えた複数の固体酸化物形の燃料電池セル14を電気的に直列接続した状態で備えたセルスタックにて構成されている。図示は省略するが、燃料電池セル14は、燃料極と空気極との間に固体電解質層を備えた固体酸化物形に構成される。各燃料電池セル14では、燃料通流部を燃料ガスが上向きに通流することで燃料極の全体に燃料ガスが供給され、空気通流部を上向きに空気が通流することで空気極の全体に空気が供給される。つまり、各燃料電池セル14は、燃料通流部における燃料ガスの排出口及び空気通流部における排出口が上向きになる姿勢で横方向に並ぶ状態で、容器1の内部に設置されている。
【0027】
加えて、改質器3から燃料ガス供給路11を通して供給される燃料ガスを受け入れるガスマニホールド15が設けられる。複数の燃料電池セル14は、ガスマニホールド15の上方側に上述のように並ぶ状態で配置され、ガスマニホールド15と複数の燃料電池セル14における燃料通流部の下端のガス導入口とが連通接続されている。そして、ガスマニホールド15に供給された燃料ガスが複数の燃料電池セル14夫々の燃料通流部に対して下端のガス導入口から供給されて、各燃料通流部を下方側から上方側に通流して発電反応に供される。発電反応に供された後の排燃料ガスは、上端の排出口から排出される。
【0028】
断熱材37よりも内側の空間には、後述する空気導入路8及び下方向誘導路1dを介して空気が供給される。複数の燃料電池セル14夫々における空気通流部の下端部近傍には、断熱材37よりも内側の空間と空気通流部の内部とを連通する空気供給孔(図示せず)が設けられている。複数の燃料電池セル14夫々の空気通流部には断熱材37よりも内側の空間の空気がこの空気供給孔を通して供給されて、各空気通流部を下方側から上方側に通流して発電反応に供される。発電反応に供された後の排空気は、上端の排出口から排出される。
【0029】
燃料電池部9の上方には、各燃料電池セル14の燃料通流部から排出される排燃料ガスと空気通流部から排出される排空気(即ち、酸素)とを燃焼させる燃焼空間(即ち、燃焼部10)が形成される。つまり、燃料電池部9により燃焼部10が実現される。加えて、改質器3が、燃焼部10として機能する燃料電池部9の上方の燃焼空間に隣接して設けられている。その結果、燃焼部10で発生する燃焼熱によって、改質器3が加熱される。改質器3には混合ガス供給路7を介して原燃料ガスと水蒸気との混合ガスが供給され、改質器3において原燃料ガスの水蒸気改質が行われる。図示は省略するが、改質器3の内部には改質触媒が充填されており、この改質触媒の触媒作用によって原燃料ガスが改質処理される。
【0030】
容器1の内部からの排ガスは、内部隔壁1aよりも外側の、側壁1b及び下壁1eとの間の空間を通って容器1の外部に排出される。本実施形態では、断熱材37よりも内側の空間で発生した排ガスが、内部隔壁1aと側壁1bとの間の空間を下方に向けて流れ、内部隔壁1aと下壁1eとの間の空間に至る。内部隔壁1aと下壁1eとの間には、排ガス中の一酸化炭素を除去するための燃焼触媒36が設けられており、排ガスはこの燃焼触媒36と接触した後で容器1の外部に排出されるように構成されている。
【0031】
〔加熱装置〕
図1に示すように、加熱装置2は、改質器3に供給する原燃料と改質器3に供給する水とを、容器1から排出される排ガスの熱を用いて加熱するとともに混合する第1加熱器2Aと、改質器3に供給する原燃料と改質器3に供給する水との加熱に用いられた後の排ガスの熱を用いて燃料電池セル14に供給する酸素(空気)を加熱する第2加熱器2Bとを有する。本実施形態では、第1加熱器2Aは、第2加熱器2Bよりも容器1に近い位置に配置され、容器1との間に伝熱量調整部材5を備える。本実施形態では、伝熱量調整部材5は、上述した下壁1eを兼ねる。
【0032】
本実施形態の加熱装置2は多層構造になっている。具体的には、第1加熱器2Aは、A層17A及びB層17Bの2層構造であり、第2加熱器2Bは、C層17C及びD層17D及びE層17E及びF層17F及びG層17Gの5層構造である。また、加熱装置2は、平面視で、即ち横断面が矩形に構成されている。特に本実施形態では、容器1の平面視での矩形形状と加熱装置2の平面視での矩形形状とはほぼ同一形状に形成してある。その結果、容器1及び加熱装置2は、加熱装置2を下方に配置して積み重ねられた状態で一体化されている。つまり、加熱装置2は、容器1の内部の熱が伝達される容器1の一つの外面である下壁1eに相対した状態で容器1と一体に設けられる。従って、容器1の下壁1eから外部へ熱が放出されるとしても、その放出される熱は、ほとんど消散することなく、その下壁1eと相対する状態で容器1と一体に設けられる加熱装置2側へ伝達されるようになる。特に、本実施形態の加熱装置2は、容器1の一つの外面である下壁1eの全体に相対した状態で設けられるので、容器1の下壁1eから放出される熱の全体を受けることができる。
【0033】
図3は、固体酸化物形燃料電池FCの加熱装置2の全体構成を説明する図である。
図4は、加熱装置2の全体構成を説明する分解斜視図である。
図5〜
図8は、加熱装置2の各層の構成を説明する図である。特に、
図5は加熱装置2のA層17Aの構成を説明する図であり、
図6は加熱装置2のB層17Bの構成を説明する図であり、
図7は加熱装置2のC層17Cの構成を説明する図であり、
図8は加熱装置2のD層17Dの構成を説明する図である。これらの図においても、
図1及び
図2と同様に、加熱装置2の矩形の短手方向を「X」と表記し、それに直交する長手方向を「Y」と表記する。このX方向及びY方向は、容器1の一つの外面である下壁1eと相対する面内にある。
【0034】
図3及び
図4に示すように、容器1からの排ガスは燃焼触媒36と接触した後で、下壁1eに設けられるスリット12を介して容器1の外部に排出される(即ち、第1加熱器2Aの内部に供給される)ように構成されている。第1加熱器2Aと第2加熱器2Bとは、それらの間に板状の伝熱量調整部材6を挟んで隣接して配置される。
【0035】
上述した伝熱量調整部材5、6を設けることで、伝熱量調整部材5、6を挟んだ一方側から他方側への熱伝達を調整或いは制限することができる。つまり、伝熱量調整部材5、6として、熱伝達を制限するような構成を採用すれば、容器1から加熱装置2への熱伝達及び第1加熱器2Aから第2加熱器2Bへの熱伝達を、主に排ガスを媒体とした熱伝達によって行うことができる。或いは、伝熱量調整部材5、6として、熱伝達を促進するような構成を採用すれば、容器1から加熱装置2への熱伝達及び第1加熱器2Aから第2加熱器2Bへの熱伝達を、排ガスを媒体とした熱伝達と、伝熱量調整部材5、6を介した熱伝達とによって行うことができる。
【0036】
例えば、伝熱量調整部材5、6によって容器1を構成する部材から加熱装置2を構成する部材への熱伝達を制限するような場合、断熱材料を板状又はシート状に形成した構成や、断熱シートを袋状に形成し、その袋状の断熱シートの内部に粒状の断熱材料を充填した構成や、直接の接触を極力排した空間層の構成や、真空断熱層の構成などを伝熱量調整部材5、6として採用できる。或いは、伝熱量調整部材5、6によって容器1を構成する部材から加熱装置2を構成する部材への熱伝達を促進するような場合、板状に構成した金属材料などを伝熱量調整部材5、6として採用できる。
【0037】
〔A層〕
図1及び
図3〜
図5に示すように、第1加熱器2AのA層17Aには、容器1から排出された排ガスが供給される。そして、排ガスは長手方向Yに沿って直線的に通流する。
図1、
図3及び
図4に示すA層17Aの上方に設けられる上述した容器1の下壁1eは、A層17Aにとっての蓋部材の役割を果たしている。加えて、この下壁1eは、容器1から加熱装置2への伝熱量を調整する伝熱量調整部材5としての役割も果たしている。A層17Aには、長手方向Yに沿って直線状に延びる谷部分と山部分とが短手方向Xに向かって交互に配列されることで波型に形成された波型プレート19が設けられている。つまり、排ガスは短手方向Xに向かって通流することがその波型部分によって制限される。
【0038】
具体的には、排ガスは、A層17Aの長手方向Yの一端部に対してA層17Aの上方から供給され、波型プレート19によって短手方向Xへの通流が制限された状態で長手方向Yの一端部から他端部まで直線的に通流する。そして、A層17Aを通流した排ガスは、A層17Aの他端部に設けられたスリット18及び後述するB層17Bに設けられたスリット25及び伝熱量調整部材6に設けられたスリット13を介して、第1加熱器2Aよりも下方に設けられる空間(排ガス溜20)に流入する。この排ガス溜20は、第2加熱器2Bの短手部分の側面に設けられている。このように、第1加熱器2AのA層17Aでは、波型プレート19によって、排ガスと波型プレート19との接触面積が大きくなることで、排ガスが保有する熱が波型プレート19に、即ち、A層17Aを構成する部材自体に伝達され易くなる。そして、A層17Aを構成する部材に伝達された熱は、A層17Aの下方に設けられるB層17Bに対して更に伝達される。
【0039】
〔B層〕
図1、
図3、
図4及び
図6に示すように、第1加熱器2AのB層17Bは、仕切り部材29によって第1空間Ba〜第4空間Bdまでの4つの空間に仕切られている。尚、図示を省略しているが、各空間Ba〜Bdにはセラミック球等が収容されている。このB層17Bでは、先ず、第1空間Baに対して、原燃料が原燃料供給管23及び原燃料通路24を介して供給され、及び、水が水供給管22を介して供給される。B層17BにはA層17Aを構成する部材が保有する熱が伝達されるので、B層17Bの第1空間Baに供給された原燃料と水とは加熱されて水は気化され、原燃料と水蒸気との混合ガスが生成される。B層17Bでは、上記セラミック球によって、B層17Bの内部における熱の伝達が均等に行われ、及び、各空間Ba〜Bd内での気体の流れが偏ることが防止され、及び、原燃料と水蒸気との混合が良好に行われるようになる。
【0040】
B層17Bでは、第1空間Ba〜第4空間Bdの夫々において、混合ガスは短手方向Xに向かって通流する。更に、第1空間Ba〜第4空間Bdは長手方向Yに沿って並んでおり、仕切り部材29によって形成された隙間を通って第1空間Baから第4空間Bdへと長手方向Yに向かって順に混合ガスが通流する。従って、B層17B全体で見ると、第1空間Baで生成された混合ガスは、第1空間Ba〜第4空間Bdの各空間において短手方向Xに蛇行しながら第1空間Baから第4空間Bdへと長手方向Yに流れ、A層17Aを構成する部材から伝達される熱によって加熱される。その後、第4空間Bdを出た混合ガスは、混合ガス供給路7を通って容器1の内部の改質器3へと供給される。このように気体の流れを折り返すように蛇行させることで、気体の混合が確実に行われる。
【0041】
〔C層〕
図1、
図3、
図4及び
図7に示すように、第2加熱器2BのC層17Cは、仕切り部材32によって第1空間Ca〜第5空間Ceまでの5つの空間に仕切られている。C層17Cでは、先ず、第2加熱器2Bの短手部分の側面に設けられた排ガス溜20から第1空間Caへ排ガスが流入する。排ガスは、第1空間Caから、第2空間Cb、第3空間Cc、第4空間Cd、第5空間Ceへと長手方向Yに向かって順に流れ、最終的に排ガス溜26に排出される。そして、排ガス溜26から排気管27を介して排気が行われる。各空間には、短手方向Xに沿って直線状に延びる谷部分と山部分とが長手方向Yに向かって交互に配列されることで波型に形成された波型プレート31a〜31eが設けられている。つまり、各空間において、排ガスは、長手方向Yに向かって通流することがその波型部分によって制限される。
【0042】
具体的には、排ガスは、一つの空間内では、波型プレート31a〜31eによって長手方向Yへの通流が制限された状態で短手方向Xへと流れる。その結果、排ガスは、各空間Ca〜Ceにおいて短手方向Xに流れながら、次に長手方向Yに隣接する空間に流入し、その空間内でも、波型プレート31a〜31eによって長手方向Yへの通流が制限された状態で短手方向Xへ流れる。つまり、C層17C全体で見ると、第1空間Caから第5空間Ceの各空間において短手方向Xに蛇行しながら第1空間Caから第5空間Ceへと長手方向Yに流れる。このように、第2加熱器2BのC層17Cでは、波型プレート31a〜31eによって、排ガスと波型プレート31a〜31eとの接触面積が大きくなることで、排ガスが保有する熱が波型プレート31a〜31eに、即ち、C層17Cを構成する部材自体に伝達され易くなる。そして、C層17Cを構成する部材に伝達された熱は、C層17Cの下方に設けられるD層17Dに対して更に伝達される。また、本実施形態では、第1加熱器2AのB層17BとこのC層17Cとの間には板状の伝熱量調整部材6が配置され、その結果、C層17Cの熱が上方のB層17Bにも伝達されている。
本実施形態では説明を省略するが、第2加熱器2BのE層17E及びG層17Gの構成もC層17Cと同様である。
【0043】
〔D層〕
図1、
図3及び
図8に示すように、第2加熱器2BのD層17Dは、仕切り部材35によって第1空間Da〜第5空間Deまでの5つの空間に仕切られている。第2加熱器2Bの長手部分の側面には、空気(即ち、酸素)の供給が行われる空気供給部28が設けられている。そして、空気供給部28から第1空間Daへ空気が流入する。D層17Dにおいて、空気は、第1空間Daから、第2空間Db、第3空間Dc、第4空間Dd、第5空間Deへと順に流れ、最終的に空気導入路8へと流出する。そして、空気導入路8を介して容器1の内部へ空気の供給が行われる。各空間には、短手方向Xに沿って直線状に延びる谷部分と山部分とが長手方向Yに向かって交互に配列されることで波型に形成された波型プレート34a〜34eが設けられている。つまり、空気は、長手方向Yに向かって通流することがその波型部分によって制限される。
【0044】
具体的には、空気は、一つの空間内では、波型プレート34a〜34eによって長手方向Yへの通流が制限された状態で短手方向Xへと流れる。その結果、空気は、各空間Da〜Deにおいて短手方向Xに流れながら、次に長手方向Yに隣接する空間に流入し、その空間内でも、波型プレート34a〜34eによって長手方向Yへの通流が制限された状態で短手方向Xへ流れる。つまり、D層17D全体で見ると、空気は、第1空間Daから第5空間Deの各空間において短手方向Xに蛇行しながら第1空間Daから第5空間Deへと長手方向Yに流れる。これらD層17Dを構成する部材には、上述したようにC層17Cから熱が伝達されている。その結果、第2加熱器2BのD層17Dでは、波型プレート34a〜34eによって、空気と波型プレート34a〜34eとの接触面積が大きくなることで、D層17Dを構成する部材が保有する熱が空気に伝達され易くなる。そして、このD層17Dで加熱された空気が空気導入路8を介して容器1の内部に導入され、燃料電池部9での発電反応及び燃焼部10での燃焼に利用される。つまり、空気導入路8は、本発明の酸素導入路に対応する。
本実施形態では説明を省略するが、第2加熱器2BのF層17Fの構成もD層17Dと同様である。
【0045】
図1に示すように、D層17Dで加熱された空気が通流する空気導入路8は、加熱装置2で加熱された空気(酸素)が容器1から熱の伝達を受けながら容器1の内部に導入されるように構成されている。具体的には、空気導入路8は、加熱装置2と外装ケース4との間の空間、及び、容器1と外装ケース4との間の空間に形成される。特に、容器1の最外郭を構成する側壁1b及び上壁1cには高温の排ガスの熱が伝達されているため、空気導入路8を通流する空気がその側壁1b及び上壁1cと接触することで、加熱装置2で加熱された後の空気が更に加熱されることになる。
【0046】
以上のように、第1加熱器2Aは、排ガスが流れる第1流路(A層17Aの内部空間)と、改質器3に供給する原燃料と改質器3に供給する水とが流れる第2流路(B層17Bの内部空間)とを有する。また、第1加熱器2Aは平面視で容器1と実質的に同形状の矩形であり、上記第1流路は排ガスを矩形の長手方向Yに向けて直線状に流すように構成され、上記第2流路は改質器3に供給する原燃料と改質器3に供給する水とを矩形の短手方向Xに蛇行させながら長手方向Yに向けて流すように構成されている。このように、第1加熱器2Aにおいて、排ガスは原燃料や水に比べて流量が大きいので、矩形の長手方向Yに向けて直線状に流すことにより排ガスの圧損を相対的に小さく抑えている。更に、
図5及び
図6にも示したように、第1加熱器2Aでは、高温側の排ガスの流れ方向と低温側の原燃料及び水の流れ方向とを逆方向にした対向流式を採用している。そのため、両者の熱交換を効率的に行うことができる。
【0047】
また、第2加熱器2Bは、排ガスが流れる第3流路(C層17C及びE層17E及びG層17Gの各層の内部空間)と、燃料電池セル14に供給する酸素(即ち、空気)が流れる第4流路(D層17D及びF層17Fの各層の内部空間)とを有する。また、第2加熱器2Bは平面視で容器1と実質的に同形状の矩形であり、上記第3流路は排ガスを矩形の短手方向Xに蛇行させながら長手方向Yに向けて流すように構成され、上記第4流路は燃料電池セル14に供給する酸素を矩形の短手方向Xに蛇行させながら長手方向Yに向けて流すように構成されている。このように、排ガス及び酸素は共に矩形の短手方向Xに蛇行しながら長手方向Yに流れるので、偏流を防ぐことができ、有効な伝熱面積を大きくできる。つまり、排ガスと酸素との熱交換が充分に行われるようにできる。更に、
図7及び
図8にも示したように、第2加熱器2Bでも、高温側の排ガスの流れ方向と低温側の酸素(空気)の流れ方向とを逆方向にした対向流式を採用している。そのため、両者の熱交換を効率的に行うことができる。
【0048】
更に、加熱装置2の各層では、排ガス、並びに、加熱対象としている酸素及び原燃料及び水が、容器1の一つの外面である下壁1eと相対する面に沿う方向(図示したX方向及びY方向)に流れるように構成されているので、排ガス、並びに、加熱対象としている酸素及び原燃料及び水は、容器1の下壁1eと相対する面に沿う方向に流れている間に、その容器1の下壁1eと相対する面に与えられた熱を直接的又は間接的に充分に受けることができる。
【0049】
<別実施形態>
<1>
上記実施形態において、加熱装置2が備える第1加熱器2A及び第2加熱器2Bの内部の構成について具体例を挙げて説明したが、第1加熱器2A及び第2加熱器2Bの内部の構成は例示したものに限定されず、適宜変更してもよい。
【0050】
<2>
上記実施形態において、容器1の内部への空気導入路8の構成について具体例を挙げて説明したが、空気導入路8の構成は例示したものに限定されず、適宜変更してもよい。同様に、空気導入路8を通流する空気と熱交換を行う相手方の容器1では、容器1の内部からの排ガスを、内部隔壁1aよりも外側の、側壁1b及び下壁1eとの間の空間に流すような内部構造例を説明したが、その容器1の内部構造についても適宜変更可能である。
【0051】
<3>
上記実施形態において、容器1の平面視での形状と加熱装置2の平面視での形状とはほぼ同一形状に形成してある例、即ち、加熱装置2が、容器1の一つの外面である下壁1eの全体に相対した状態で設けられる例を説明したが、容器1及び加熱装置2の平面視での形状を互い異ならせてもよい。例えば、加熱装置2の平面視での形状を、容器1の平面視での形状よりも大きく又は小さく構成してもよい。