(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5907766
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】発光デバイスおよび発光デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
H05B 33/26 20060101AFI20160412BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20160412BHJP
H05B 33/06 20060101ALI20160412BHJP
H05B 33/12 20060101ALI20160412BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20160412BHJP
【FI】
H05B33/26 Z
H05B33/14 A
H05B33/06
H05B33/12 B
H05B33/10
【請求項の数】14
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-57742(P2012-57742)
(22)【出願日】2012年3月14日
(65)【公開番号】特開2013-191454(P2013-191454A)
(43)【公開日】2013年9月26日
【審査請求日】2015年1月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】松田 国治
(72)【発明者】
【氏名】山岸 英雄
【審査官】
濱野 隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−050468(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/155306(WO,A1)
【文献】
特開2003−288994(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0230664(US,A1)
【文献】
特開2010−045048(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0176385(US,A1)
【文献】
欧州特許出願公開第02629347(EP,A1)
【文献】
国際公開第2011/108921(WO,A1)
【文献】
国際公開第2010/005301(WO,A1)
【文献】
実開昭63−083798(JP,U)
【文献】
実開昭63−144677(JP,U)
【文献】
実開昭62−123690(JP,U)
【文献】
実開昭62−116497(JP,U)
【文献】
実開昭62−116496(JP,U)
【文献】
特開2003−017245(JP,A)
【文献】
特開2002−082627(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/26
H01L 51/50
H05B 33/06
H05B 33/10
H05B 33/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極層および第2電極層と、
前記第1電極層と前記第2電極層との間に配置されている発光層と、
第1方向に延伸して配置されており、前記第1方向の電気抵抗が前記第1電極層より低く、前記第1方向に沿って前記第1電極層と電気的に接続されている第1電気接続部を有し、外部からの駆動電圧をそれぞれに独立して印加可能な複数の第1電極と、
前記第1方向とは異なる第2方向に延伸して前記複数の第1電極と平面視でみて交差して配置されており、前記第2方向の電気抵抗が前記第2電極層より低く、前記第2方向に沿って前記第2電極層と電気的に接続されている第2電気接続部を有し、外部から駆動電圧をそれぞれに独立して印加可能な複数の第2電極と
を含む発光デバイス。
【請求項2】
前記複数の第1電極のそれぞれは、前記第1電極層上に帯状に配列されており、
前記発光層は、前記第1電極層上および前記複数の第1電極上に堆積されている請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項3】
前記第2電極層上に配置されており、前記第2方向に沿って複数の貫通部が形成されている絶縁層をさらに備え、
前記複数の第2電極のそれぞれは、前記絶縁層の前記複数の貫通部のそれぞれを覆って、前記絶縁層上に帯状に配列されており、前記複数の貫通部を介して前記第2電極層と電気的に接続されている請求項1または2に記載の発光デバイス。
【請求項4】
前記絶縁層上の前記複数の第2電極は、前記第2電極層より厚い請求項3に記載の発光デバイス。
【請求項5】
前記複数の第2電極のそれぞれは、前記第2電極層上に帯状に配列されている請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項6】
前記第2電極層上および前記複数の第2電極上に配置されており、前記第1方向に沿って複数の貫通部が形成されている絶縁層をさらに備え、
前記第2電極層および前記発光層は、前記複数の貫通部にそれぞれ対応する位置に、内面に絶縁層が形成されている複数の貫通部を有し、
前記複数の第1電極のそれぞれは、前記絶縁層、前記第2電極層、および前記発光層の前記複数の貫通部のそれぞれを覆って、前記絶縁層上に帯状に配列されており、前記複数の貫通部を介して前記第1電極層と電気的に接続されている請求項5に記載の発光デバイス。
【請求項7】
前記複数の第2電極は、前記第2電極層より厚い請求項5または6に記載の発光デバイス。
【請求項8】
前記第2電極層と前記複数の第2電極とは同一材料で形成されている請求項1から7のいずれか一項に記載の発光デバイス。
【請求項9】
前記第1電極層は、透明導電膜である請求項1から8のいずれか一項に記載の発光デバイス。
【請求項10】
前記複数の第1電極のうちの一の第1電極と前記複数の第2電極のうちの一の第2電極とに駆動電圧が印加された場合に、前記一の第1電極と前記一の第2電極とが平面視でみて交差している領域を中心とする発光領域が、前記一の第1電極と前記一の第2電極に隣接している他の第2電極とが平面視でみて交差している領域、または前記一の第1電極に隣接している他の第1電極と前記一の第2電極とが平面視でみて交差している領域に重なるように、前記複数の第1電極の配置間隔および前記複数の第2電極の配置間隔が定められている請求項1から9のいずれか一項に記載の発光デバイス。
【請求項11】
第1電極層を形成する工程と、
前記第1電極層上に、外部からの駆動電圧をそれぞれに独立して印加可能な前記第1方向に延伸する帯状の複数の第1電極を形成する工程と、
前記第1電極層および前記複数の第1電極の上方に発光層を形成する工程と、
前記発光層の上方に第2電極層を形成する工程と、
前記第2電極層上に、前記第1方向とは異なる第2方向に沿って複数の貫通部が形成されている絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層上に、前記絶縁層の前記複数の貫通部のそれぞれを覆い、前記複数の貫通部を介して前記第2電極層と電気的に接続され、外部から駆動電圧をそれぞれに独立して印加可能な前記第2方向に延伸する帯状の複数の第2電極を形成する工程と
を含む発光デバイスの製造方法。
【請求項12】
第1電極層を形成する工程と、
前記第1電極層の上方に発光層を形成する工程と、
前記発光層の上方に第2電極層を形成する工程と、
前記第2電極層上に、外部から駆動電圧をそれぞれに独立して印加可能な第2方向に延伸する帯状の複数の第2電極を形成する工程と、
前記第2電極層上および前記複数の第2電極上に絶縁層を形成する工程と、
前記複数の第2電極に重ならない領域に、前記第1方向とは異なる第2方向に沿って、前記絶縁層、前記第2電極層、および前記発光層を貫通する複数の貫通部を形成する工程と、
前記絶縁層上に、前記複数の貫通部をそれぞれ覆い、前記複数の貫通部を介して前記第1電極層と電気的に接続され、外部から駆動電圧をそれぞれに独立して印加可能な前記第1方向に延伸する帯状の複数の第1電極を形成する工程と
を含む発光デバイスの製造方法。
【請求項13】
前記複数の第1電極は、前記第1方向の電気抵抗が前記第1電極層より低い請求項11または12に記載の発光デバイスの製造方法。
【請求項14】
前記複数の第2電極は、前記第2方向の電気抵抗が前記第2電極層より低い請求項11から13のいずれか一項に記載の発光デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光デバイスおよび発光デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子を用いた照明装置およびバックライトなどの発光デバイスにおいて、輝度むらを低減すべく、補助電極を設けることが知られている(例えば、引用文献1、引用文献2および引用文献3参照)。
特許文献1 特開2004−14128号公報
特許文献2 特開2008−10244号公報
特許文献3 特開2007−80770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、有機EL素子などのエレクトロルミネセンス素子を用いた発光デバイスの市場の拡大を図るべく、発光デバイスの新たな用途の開発が要求されている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様に係る発光デバイスは、第1電極層および第2電極層と、第1電極層と第2電極層との間に配置されている発光層と、第1方向に延伸して配置されており、第1方向の電気抵抗が第1電極層より低く、第1方向に沿って第1電極層と電気的に接続されている第1電気接続部を有し、外部からの駆動電圧をそれぞれに独立して
印加可能な複数の第1電極と、第1方向とは異なる第2方向に延伸して複数の第1電極と交差して配置されており、第2方向の電気抵抗が第2電極層より低く、第2方向に沿って第2電極層と電気的に接続されている第2電気接続部を有し、外部から駆動電圧をそれぞれに独立して
印加可能な複数の第2電極とを含む。
【0005】
上記発光デバイスにおいて、複数の第1電極のそれぞれは、第1電極層上に帯状に配列されており、発光層は、第1電極層上および複数の第1電極上に堆積されていてもよい。
【0006】
上記発光デバイスは、第2電極層上に配置されており、第2方向に沿って複数の貫通部が形成されている絶縁層をさらに備え、複数の第2電極のそれぞれは、絶縁層の複数の貫通部のそれぞれを覆って、絶縁層上に帯状に配列されており、複数の貫通部を介して第2電極層と電気的に接続されていてもよい。上記発光デバイスにおいて、絶縁層上の複数の第2電極は、第2電極層より厚くてもよい。
【0007】
上記発光デバイスにおいて、複数の第2電極のそれぞれは、第2電極層上に帯状に配列されていてもよい。上記発光デバイスは、第2電極層上および複数の第2電極上に配置されており、第1方向に沿って複数の貫通部が形成されている絶縁層をさらに備え、第2電極層および発光層は、複数の貫通部にそれぞれ対応する位置に、内面に絶縁層が形成されている複数の貫通部を有し、複数の第1電極のそれぞれは、絶縁層、第2電極層、および発光層の複数の貫通部のそれぞれを覆って、絶縁層上に帯状に配列されており、複数の貫通部を介して第1電極層と電気的に接続されていてもよい。
【0008】
上記発光デバイスにおいて、複数の第2電極は、第2電極層より厚くてもよい。第2電極層と複数の第2電極とは同一材料で形成されていてもよい。第1電極層は、透明導電膜でもよい。
【0009】
上記発光デバイスにおいて、複数の第1電極のうちの一の第1電極と複数の第2電極のうちの一の第2電極とに駆動電圧が
印加された場合に、一の第1電極と一の第2電極とが交差している領域を中心とする発光領域が、一の第1電極と一の第2電極に隣接している他の第2電極とが交差している領域、または一の第1電極に隣接している他の第1電極と一の第2電極とが交差している領域に重なるように、複数の第1電極の配置間隔および複数の第2電極の配置間隔が定められてもよい。
【0010】
本発明の一態様に係る発光デバイスの製造方法は、第1電極層を形成する工程と、第1電極層上に、第1方向に延伸する帯状の複数の第1電極を形成する工程と、第1電極層および複数の第1電極の上方に発光層を形成する工程と、発光層の上方に第2電極層を形成する工程と、第2電極層上に、第1方向とは異なる第2方向に沿って複数の貫通部が形成されている絶縁層を形成する工程と、絶縁層上に、絶縁層の複数の貫通部のそれぞれを覆い、複数の貫通部を介して第2電極層と電気的に接続される、第2方向に延伸する帯状の複数の第2電極を形成する工程とを含む。
【0011】
本発明の一態様に係る発光デバイスの製造方法は、第1電極層を形成する工程と、第1電極層の上方に発光層を形成する工程と、発光層の上方に第2電極層を形成する工程と、第2電極層上に、第2方向に延伸する帯状の複数の第2電極を形成する工程と、第2電極層上および複数の第2電極上に絶縁層を形成する工程と、複数の第2電極に重ならない領域に、第1方向とは異なる第2方向に沿って、絶縁層、第2電極層、および発光層を貫通する複数の貫通部を形成する工程と、絶縁層上に、複数の貫通部をそれぞれ覆い、複数の貫通部を介して第1電極層と電気的に接続される、第1方向に延伸する帯状の複数の第1電極を形成する工程とを含む。
【0012】
上記発光デバイスの製造方法において、複数の第1電極は、第1方向の電気抵抗が第1電極層より低くてもよい。複数の第2電極は、第2方向の電気抵抗が第2電極層より低くてもよい。
【0013】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1の実施形態に係る発光デバイスの陰極側から見た図である。
【
図3】第1電極および第2電極の間隔について説明するための図である。
【
図4A】第1の実施形態に係る発光デバイスの製造方法の説明図である。
【
図4B】第1の実施形態に係る発光デバイスの製造方法の説明図である。
【
図4C】第1の実施形態に係る発光デバイスの製造方法の説明図である。
【
図4D】第1の実施形態に係る発光デバイスの製造方法の説明図である。
【
図4E】第1の実施形態に係る発光デバイスの製造方法の説明図である。
【
図4F】第1の実施形態に係る発光デバイスの製造方法の説明図である。
【
図5】第2の実施形態に係る発光デバイスの陰極側から見た図である。
【
図7A】第2の実施形態に係る発光デバイスの製造方法の説明図である。
【
図7B】第2の実施形態に係る発光デバイスの製造方法の説明図である。
【
図7C】第2の実施形態に係る発光デバイスの製造方法の説明図である。
【
図7D】第2の実施形態に係る発光デバイスの製造方法の説明図である。
【
図7E】第2の実施形態に係る発光デバイスの製造方法の説明図である。
【
図7F】第2の実施形態に係る発光デバイスの製造方法の説明図である。
【
図7G】第2の実施形態に係る発光デバイスの製造方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0016】
図1は、第1の実施形態に係る発光デバイス100の陰極側から見た図を示す。
図2Aは、
図1に示すA−A断面図を示す。
図2Bは、
図1に示すB−B断面図を示す。
図2Cは、
図1に示すC−C断面図を示す。
図2Dは、
図1に示すD−D断面図を示す。
【0017】
第1の実施形態に係る発光デバイス100は、基板10、第1電極層20、発光層30、第2電極層40、絶縁層50、複数の第1電極60および複数の第2電極70を備える。発光デバイス100は、いわゆるボトムエミッション型の有機EL発光デバイスである。なお、発光デバイス100は、いわゆるトップエミッション型の有機EL発光デバイス、または両面光取出し型の有機EL発光デバイスでもよい。
【0018】
第1の実施形態に係る発光デバイス100によれば、複数の第1電極60と第1電極層20とが電気的に接続され、複数の第2電極70と第2電極層40とが電気的に接続されている。よって、複数の第1電極60のうちの一の第1電極60と、複数の第2電極70のうちの一の第2電極70とにそれぞれ駆動電圧を印加した場合、駆動電圧に伴う電流が第1電極層20および第2電極層40まで流れる。これにより、発光層30は、一の第1電極60と一の第2電極70とが交差している交差領域に加えてその交差領域の周縁領域まで発光する。そして、交差領域から遠くなるほど駆動電圧に伴う電流は流れにくくなるので、交差領域を1つの画素と捉えた場合、画素の周縁部が交差領域から遠くなるに従って暗くなるように光る。よって、一の第1電極60と一の第2電極70とに駆動電圧を印加した場合、発光デバイス100は、周囲がぼやけて光る画素を表現できる。
【0019】
例えば、いわゆるパッシブマトリックス方式により、発光させる交差領域を順次切り替えながら発光層30を発光させ、光の演出を行う場合、交差領域のそれぞれの面積が大きいと、発光する交差領域の角部が目立ち、光による滑らかな波やゆらぎの表現を十分に実現できない。これに対して発光デバイス100によれば、交差領域の周縁部を交差領域から遠くになるほど暗くなるように光らせることができる。したがって、たとえ交差領域のそれぞれの面積が大きくても、発光する交差領域の角部が目立たない。よって、発光デバイス100は、観察者に違和感を与えることなく、光による波やゆらぎなどを表現できる。
【0020】
基板10は、ガラスまたは高分子フィルムなどの光透過性を有する板材を用いることができる。第1電極層20は、陽極であり、透明導電膜でもよい。第1電極層20は、光透過性導電性材料により構成されてもよい。ここで、「光透過性」とは、光を透過する性質を有することを意味する。光透過性導電性材料は、可視光域(350nm〜780nm)における光の透過率が概ね50%を超える性質を有し、かつ表面抵抗値が10
7Ω以下の材料のことをいう。具体的には、光透過性導電性材料として、インジウムドープの酸化錫(ITO)、インジウムドープの酸化亜鉛(IZO)、酸化錫、酸化亜鉛などを用いることができる。表面抵抗の低さの観点からは、インジウムドープの酸化錫を用いて第1電極層20を構成することが好ましい。第1電極層20は、例えば、スパッタ法、蒸着法、パルスレーザー堆積法などにより基板10上にITO薄膜を形成することにより形成される。
【0021】
発光層30は、第1電極層20と第2電極層40との間に配置されている。発光層30は、第1電極層20上および複数の第1電極60上に堆積されている。発光層30は、一般の有機EL素子において陽極と陰極とに狭持された部分を示し、電子注入層、電子輸送層、有機層、正孔注入層、および正孔輸送層などを有する。発光層30は、有機化合物のほかに、薄膜のアルカリ金属または無機材料を用いて構成されてもよい。
【0022】
第2電極層40は、陰極であり、発光層30の上方に配置されている。第2電極層40は、例えば、AlまたはAgなどの導電性材料を用いて、蒸着法、スパッタ法などの方法により発光層30上に形成される。基板10側から光を取り出すボトムエミッション型の有機EL発光デバイスの場合、第2電極層40は光透過性である必要はない。一方、トップエミッション型または両面取出し型の有機EL発行デバイスの場合、第2電極層40は、光透過性導電材料により構成される。この場合、第2電極層40は、第1電極層20で用いられる材料と同一の材料により構成されてもよい。なお、本実施形態においては、第2電極層40は、発光層30上に配置されている。しかし、発光デバイス100の製造工程において、吸湿によって発光層30を構成する各層が劣化するのを抑制する観点から、発光層30の最表面(第2電極層40との界面)に第2電極層40とは別に、バッファ層として導電性の他の層を形成してもよい。
【0023】
複数の第1電極60は、第1方向Xに延伸して配置されており、第1方向Xの電気抵抗が第1電極層より低い。複数の第1電極60は、第1方向Xに沿って第1電極層20と電気的に接続されている第1電気接続部62を有し、外部からの駆動電圧をそれぞれに独立して
印加できる。複数の第1電極60のそれぞれは、第1電極層20上に帯状に配列されている。複数の第1電極60は、それぞれ個別の取出電極に接続され、それぞれの取出電極を介してそれぞれ個別に駆動電圧が印加される。
【0024】
複数の第2電極70は、第1方向Xとは異なる第2方向Yに延伸して複数の第1電極60と交差して配置されている。複数の第2電極70は、第2電極層40より厚くてもよい。複数の第2電極70は、第2方向Yの電気抵抗が第2電極層より低く、第2方向Yに沿って第2電極層40と電気的に接続されている第2電気接続部72を有し、外部から駆動電圧をそれぞれに独立して
印加できる。複数の第2電極70は、それぞれ個別の取り出し電極に接続され、それぞれの取出電極を介してそれぞれ個別に駆動電圧が印加される。
【0025】
複数の第1電極60および複数の第2電極70は、第2電極層40と同一の導電性材料で構成されてもよい。また、複数の第2電極70は、第2電極層40よりも表面抵抗が低い導電性材料で構成されてもよい。
【0026】
絶縁層50は、第2電極層40上に配置されており、第2方向Yに沿って複数の貫通部52が形成されている。複数の第2電極70のそれぞれは、絶縁層50の複数の貫通部52のそれぞれを覆って、絶縁層50上に帯状に配列されており、複数の貫通部52を介して第2電極層40と電気的に接続されている。絶縁層50は、有機化合物により構成してもよい。レーザースクライブ法により複数の貫通部52を形成する場合には、用いられるレーザーの波長(例えば、532nmまたは355nm)に合せて、可視光波長域に吸収を有する有機化合物であることが好ましい。絶縁層50は、低分子有機化合物、高分子有機化合物などがあり、低分子有機化合物の場合は蒸着法、高分子有機化合物の場合は印刷等で形成できる。絶縁層50の具体例としては、例えば、[トリス(8−ハイドロキシキノリナート)]アルミニウム(III)(以下、Alq
3と略す)、Perylene、4,4'−ビス[N−(2−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(以下、α−NPDと略す)、4,4'-ビス(N−カルバゾリル)ビフェニル(以下、CBPと略す)、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)カルシウム(以下、Ca(DPM)
2と略す)、などが例示される。中でも絶縁抵抗の高さの観点から、Alq
3、Perylene、α−NPD、CBP、Ca(DPM)
2を少なくとも1つ含有することが好ましい。
【0027】
以上のように構成された発光デバイス100によれば、複数の第1電極60および複数の第2電極70にそれぞれ個別に駆動電圧を印加することで、駆動電圧が印加された一の第1電極60および一の第2電極70が交差している交差領域に加えてその交差領域の周縁領域まで発光層30を発光させることができる。複数の第1電極60および複数の第2電極70に対して順次個別に駆動電圧を印加させることで、観察者に違和感を与えることなく、光による波やゆらぎなどを表現できる。
【0028】
図3は、複数の第1電極60の間隔w1および複数の第2電極70の間隔w2について説明するための図である。隣接する交差領域を順次発光させることで、光による波やゆらぎなどを表現する場合、駆動電圧が印加された第1電極60と第2電極70とが交差する交差領域に隣接する交差領域まで発光させることで、観察者にさらに違和感を与えることなく、より滑らかな光の演出を実現できる。
【0029】
そこで、複数の第1電極60−1,60−2,および60−3のうちの一の第1電極60−1と複数の第2電極70−1,70−2,および70−3のうちの一の第2電極70−3とに駆動電圧が
印加された場合に、一の第1電極60−1と一の第2電極70−1とが交差している交差領域201を中心とする発光領域210が、一の第1電極60−1と一の第2電極に隣接している他の第2電極70−2とが交差している交差領域202、または一の第1電極60−1に隣接している他の第1電極60−3と一の第2電極70−1とが交差している交差領域203に重なるように、複数の第1電極60の配置間隔w1および複数の第2電極の配置間隔w2が定められてもよい。
【0030】
より具体的には、第1電極層20を、面積抵抗20Ω/□(Ω/sq)のITO薄膜で構成し、第1電極60を面積抵抗0.1Ω/□(Ω/sq)のAgで構成する場合、配置間隔w1は、12mm以下であることが好ましい。また、第2電極層40を、面積抵抗0.5Ω/□(Ω/sq)のAl薄膜で構成し、第2電極70を面積抵抗0.05Ω/□(Ω/sq)のAgで構成する場合、配置間隔w2は、150mm以下であることが好ましい。
【0032】
まず、ITO薄膜が形成された基板10の発光面側からレーザーを照射し、ITO薄膜の一部を除去し、溝31を形成する。これにより、基板10上に第1電極層20、および第2電極層40の取出電極22を形成する(
図4A)。なお、第2電極層40の取出電極22は形成しなくてもよい。
【0033】
続いて、例えばマスク蒸着などでAgまたはAlを堆積させることで、第1電極層20上に第1方向Xに延伸する帯状の複数の第1電極60を形成する(
図4B)。さらに、第1電極層20および複数の第1電極60の上方にマスク蒸着などにより発光層30を形成し(
図4C)、発光層30の上方に第2電極層40を形成する(
図4D)。加えて、第2電極層40上に、第1方向Xとは異なる、第1方向Xに垂直な第2方向Yに沿って複数の貫通部52が形成されている絶縁層50を形成する(
図4E)。絶縁層50は、マスク蒸着により形成してもよい。そして、絶縁層50上に、絶縁層50の複数の貫通部52のそれぞれを覆い、複数の貫通部52を介して第2電極層40と電気的に接続される、第2方向Yに延伸する帯状の複数の第2電極70を形成する(
図4F)。複数の第2電極70は、マスク蒸着により形成してもよい。
【0034】
以上の工程により、第1電極層20に電気的に接続された複数の第1電極60および第2電極層40に電気的に接続された複数の第2電極70を備えた発光デバイス100を製造することができる。
【0035】
図5は、第2の実施形態に係る発光デバイス100の陰極側から見た図を示す。
図6Aは、
図5に示すA−A断面図を示す。
図6Bは、
図5に示すB−B断面図を示す。
図6Cは、
図5に示すC−C断面図を示す。
【0036】
第2の実施形態に係る発光デバイス100は、複数の第1電極60および複数の第2電極70の構成が第1の実施形態に係る発光デバイス100と異なる。
【0037】
第1電極層20は、基板10上に配置されており、発光層30は、第1電極層20の上方に配置されている。さらに、第2電極層40は、発光層30の上方に配置されている。そして、複数の第2電極70のそれぞれは、第2方向Yに沿って第2電極層40上に帯状に配列されている。複数の第2電極70は、第2電極層より厚くてもよい。
【0038】
絶縁層50は、第2電極層40上および複数の第2電極70上に配置されている。絶縁層50は、第1方向Xに沿って複数の貫通部52が形成されている。第2電極層40および発光層30は、複数の貫通部52にそれぞれ対応する位置に、内面に絶縁層が形成されている複数の貫通部54を有する。
【0039】
複数の第1電極60のそれぞれは、絶縁層50、第2電極層40、および発光層30の複数の貫通部52および54のそれぞれを覆って、絶縁層50上に帯状に第1方向Xに沿って配列されており、複数の貫通部52および54を介して第1電極層20と電気的に接続されている。
【0040】
以上のように構成された発光デバイス100によれば、複数の第1電極60および複数の第2電極70にそれぞれ個別に駆動電圧を印加することで、駆動電圧が印加された一の第1電極60および一の第2電極70が交差している交差領域に加えてその交差領域の周縁領域まで発光層30を発光させることができる。複数の第1電極60および複数の第2電極70に対して順次個別に駆動電圧を印加させることで、観察者に違和感を与えることなく、光による波やゆらぎなどを表現できる。
【0042】
まず、ITO薄膜が形成された基板10の発光面側からレーザーを照射し、ITO薄膜の一部を除去し、溝31を形成する。これにより、基板10上に第1電極層20、および第2電極層40の取出電極22を形成する(
図7A)。第1電極層20の上方にマスク蒸着などにより発光層30を形成し(
図7B)、発光層30の上方に第2電極層40を形成する(
図7C)。次いで、第2電極層40上に、マスク蒸着などにより第2方向Yに延伸する帯状の複数の第2電極を形成する(
図7D)。さらに、マスク蒸着などにより第2電極層40上および複数の第2電極70上に絶縁層50を形成する(
図7E)。加えて、複数の第2電極70に重ならない領域に、第1方向Xとは異なる、第1方向Xに垂直な第2方向Yに沿って、絶縁層50、第2電極層40、および発光層30を貫通する複数の貫通部52および54を形成する(
図7F)。複数の貫通部52および54は、基板10の発光面側からレーザーを照射し、絶縁層50、第2電極層40、および発光層30の一部を除去することで、形成されてもよい。そして、絶縁層50上に、複数の貫通部52および54をそれぞれ覆い、かつ複数の貫通部52および54を介して第1電極層20と電気的に接続される、第1方向Xに延伸する帯状の複数の第1電極60を形成する(
図7G)。
【0043】
以上の工程により、絶縁層50、第2電極層40、および発光層30を貫通する複数の貫通部52および54を介して第1電極層20と電気的に接続される複数の第1電極60が絶縁層50上に形成された発光デバイス100を製造できる。
【0044】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0045】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0046】
10 基板
20 第1電極層
30 発光層
40 電極層
50 絶縁層
52 貫通部
60 第1電極
70 第2電極
100 発光デバイス