特許第5907785号(P5907785)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5907785
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】エンジンマウント
(51)【国際特許分類】
   F16F 13/10 20060101AFI20160412BHJP
   B60K 5/12 20060101ALI20160412BHJP
【FI】
   F16F13/10 L
   B60K5/12 F
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-88175(P2012-88175)
(22)【出願日】2012年4月9日
(65)【公開番号】特開2013-217438(P2013-217438A)
(43)【公開日】2013年10月24日
【審査請求日】2015年1月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】堀田 和希
(72)【発明者】
【氏名】吉井 教明
【審査官】 塚原 一久
(56)【参考文献】
【文献】 実開平04−109242(JP,U)
【文献】 特開平09−242821(JP,A)
【文献】 特開2010−230066(JP,A)
【文献】 実開平01−116235(JP,U)
【文献】 実開昭55−104135(JP,U)
【文献】 特開2010−270784(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 13/00−13/30
F16F 15/00−15/36
F16F 1/00−1/54
B60K 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワーユニット側に取り付けられる第1の取付部材と車両ボデー側に取り付けられる第2の取付部材が本体ゴム弾性体で連結されてなるエンジンマウントにおいて、
前記第1の取付部材の前記パワーユニット側への装着部に対して、該第1の取付部材よりも熱伝導率が低い断熱部材が、固着手段により固着されて一体化されており、該断熱部材が該第1の取付部材における該パワーユニット側に位置せしめられて該パワーユニットに対して直接に重ね合わされて取り付けられる取付面が構成されていると共に、該第1の取付部材において該断熱部材が固着されていない表面が前記本体ゴム弾性体に対して直接に接着されていることを特徴とするエンジンマウント。
【請求項2】
前記断熱部材がステンレス鋼により形成されている請求項1に記載のエンジンマウント。
【請求項3】
前記第1の取付部材が中実ロッド形状を有しており、該第1の取付部材の軸方向一方の端部が前記本体ゴム弾性体に埋設状態で固着されている一方、該第1の取付部材の軸方向他方の端部には軸直方向に突出して広がるフランジ状部が形成されており、該フランジ状部によって前記装着部が構成されている請求項1又は2に記載のエンジンマウント。
【請求項4】
前記第1の取付部材には、前記フランジ状部の上面に開口する収容凹所が形成されている一方、該収容凹所に対して前記断熱部材が収容されており、該断熱部材の外周縁部が該第1の取付部材に包囲されると共に、該断熱部材の上面が該フランジ状部の上面よりも上方に突出した状態で、該断熱部材が該フランジ状部に前記固着手段により固着されている請求項3に記載のエンジンマウント。
【請求項5】
前記断熱部材の外周縁部に外方に突出する係止部が形成されている一方、前記収容凹所を画成する周壁部が該係止部に向かって屈曲されてかしめ固定されており、該係止部と該係止部に対してかしめ固定された該周壁部によって前記固着手段が構成されている請求項4に記載のエンジンマウント。
【請求項6】
前記断熱部材の外周縁部に外方に突出する係止部が形成されており、前記収容凹所を画成する周壁部が該係止部に沿って該断熱部材の外周縁部を包囲するように鋳造されており、該係止部と該係止部の周囲に鋳造された該周壁部によって、前記固着手段が構成されている請求項4に記載のエンジンマウント。
【請求項7】
前記断熱部材の周縁部が前記収容凹所を画成する周壁部に対して圧入固定されており、該断熱部材と該周壁部の圧接によって、前記固着手段が構成されている請求項4に記載のエンジンマウント。
【請求項8】
前記断熱部材が前記フランジ状部の上面を全体に亘って覆蓋するように固着されている請求項3に記載のエンジンマウント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のパワーユニットと車両ボデーとの間に介装されて、パワーユニットを車両ボデーに対して防振支持するエンジンマウントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車のパワーユニットと車両ボデーの間には、複数個のエンジンマウントが介装されており、それらによって、パワーユニットが車両ボデーに対して防振支持されている。このようなエンジンマウントは、一般に、パワーユニット側に取り付けられる第1の取付部材と車両ボデー側に取り付けられる第2の取付部材が、それらの間に介在されて加硫接着等により固着された本体ゴム弾性体により連結された構造とされている。そして、振動源であるパワーユニットからの荷重を本体ゴム弾性体で支承することにより防振特性を発揮するようになっている。
【0003】
ところで、エンジンマウントは、使用環境が高温であると共にパワーユニットからの分担荷重を担持する必要があることから、高度な耐熱性や剛性が求められる。それ故、エンジンマウントの第1の取付部材や第2の取付部材は、アルミニウム合金や鉄鋼等の金属材で形成されることが一般的である。しかしながら、このような金属材は熱伝導率が比較的高いことから、従来構造のエンジンマウントにおいては、パワーユニット側に取り付けられる第1の取付部材からパワーユニットの高熱が本体ゴム弾性体に伝わり易く、第1の取付部材からの伝熱による本体ゴム弾性体の劣化が避けられず、エンジンマウントの耐久性が損なわれる原因となっていた。
【0004】
かかる問題に対処するため、特開平9−242821号公報(特許文献1)には、第1の取付部材自体を熱伝導率が比較的低い金属板により構成することや、第1の取付部材のパワーユニット側のブラケットに対する当接面に複数の溝を形成して、第1の取付金具とブラケットとの当接面間に空隙を設けることで、ブラケットから第1の取付金具への熱伝導を減少させる構成が提案されている。
【0005】
ところが、熱伝導率が比較的低いステンレス鋼等の金属材は鉄鋼等に比して高価であることから、第1の取付部材全体をそのような金属材で構成することは、製造コストの上昇を招き好ましくない。また、第1の取付金具とブラケットとの当接面間に空隙を設けるために複数の溝を形成すると、第1の取付金具自体の部材強度の低下が懸念され、エンジンマウントに求められる支持剛性が確保できないおそれもあり、有効な対策とは言い難かった。
【0006】
なお、特開2000−88029号公報(特許文献2)には、第1の取付部材とパワーユニット側のブラケットとの間に、別体の断熱板を介在させて取り付ける構造が提案されている。しかしながら、このような断熱板は別体であるが故に、車両への組付工程において第1の取付部材から外れやすく、取扱いが面倒となる。また、別体の断熱板の組付位置が作業者によってばらつき易く、各エンジンマウントにおいて断熱性能やブラケットに対する固定力を一定に管理することが難しくなるという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−242821号公報
【特許文献2】特開2000−88029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、部材強度と車両への組付安定性を確保しつつ、第1の取付部材からの伝熱を低減して本体ゴム弾性体の劣化を軽減することができる、新規な構造のエンジンマウントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
【0010】
本発明の第一の態様は、パワーユニット側に取り付けられる第1の取付部材と車両ボデー側に取り付けられる第2の取付部材が本体ゴム弾性体で連結されてなるエンジンマウントにおいて、前記第1の取付部材の前記パワーユニット側への装着部に対して、該第1の取付部材よりも熱伝導率が低い断熱部材が、固着手段により固着されて一体化されており、該断熱部材が該第1の取付部材における該パワーユニット側に位置せしめられて該パワーユニットに対して直接に重ね合わされて取り付けられる取付面が構成されていると共に、該第1の取付部材において該断熱部材が固着されていない表面が前記本体ゴム弾性体に対して直接に接着されていることを、特徴とする。
【0011】
本発明によれば、パワーユニット側のブラケット等と第1の取付部材が、断熱部材を介して固定される。これにより、パワーユニットから第1の取付部材への伝熱を低減して、第1の取付部材から本体ゴム弾性体への伝熱を低減することが出来る。その結果、本体ゴム弾性体の熱劣化を低減することが出来て、エンジンマウントの耐久性を向上することが出来る。
【0012】
特に、第1の取付部材の全体を断熱部材で形成するのではなく、パワーユニット側のブラケット等の熱源と直接に当接する部分のみを断熱部材で構成することが可能であり、製造コストの上昇を抑えつつ、エンジンマウントの耐久性を向上することが出来る。しかも、第1の取付部材に対して、断熱部材が固着手段により固着されて一体化されている。従って、第1の取付部材の部材強度を安定して確保することが出来、パワーユニットへの固定状態を安定的に維持することが出来る。また、固着手段で断熱部材が第1の取付部材に一体化されていることから、エンジンマウントをパワーユニット側のブラケットや車両ボデーに固定するに際して、断熱部材が第1の取付部材から脱落するおそれも少なく、エンジンマウントの車両への組み付け作業を容易にすることが出来る。その結果、組付作業時のばらつきに起因する断熱性能やパワーユニット側のブラケット等への固定力のばらつきの問題を解消して、容易且つ安定して車両への組み付けを行うことが出来る。
【0013】
なお、断熱部材としては、第1の取付部材の熱伝導率よりも低い熱伝導率を有するものであれば各種の部材が採用可能であるが、強度を確保するために、好適には金属材料が用いられる。また、固着手段としては、例えば、第1の取付部材を鋳造する際に、成形型内に断熱部材をセットして第1の取付部材の溶融金属を流し込むことで第1の取付部材に固着したり、第1の取付部材と断熱部材の一方を他方にかしめ固定したり、断熱部材を第1の取付部材に圧入して固定する等、任意の手段が採用され得る。
【0014】
本発明の第二の態様は、前記第一の態様に記載のものにおいて、前記断熱部材がステンレス鋼により形成されているものである。
【0015】
ステンレス鋼は、第1の取付部材として一般に用いられているアルミニウムや鉄に比して、熱伝導率が低いことから、第1の取付部材への熱伝達を有利に軽減することが出来る。また、加工も容易に行なうことが出来る。
【0016】
本発明の第三の態様は、前記第一又は第二の態様に記載のものにおいて、前記第1の取付部材が中実ロッド形状を有しており、該第1の取付部材の軸方向一方の端部が前記本体ゴム弾性体に埋設状態で固着されている一方、該第1の取付部材の軸方向他方の端部には軸直方向に突出して広がるフランジ状部が形成されており、該フランジ状部によって前記装着部が構成されているものである。
【0017】
本態様によれば、第1の取付部材において、パワーユニット側への装着部を、本体ゴム弾性体から最も離隔した軸方向の端部に位置したことから、第1の取付部材を介した、パワーユニットから本体ゴム弾性体への伝熱を有利に低減することが出来る。更に、第1の取付部材の軸直方向に広がる平坦な領域であるフランジ状部に断熱部材を固着できることから、断熱部材を装着部により安定的に固着することが出来る。
【0018】
本発明の第四の態様は、前記第三の態様に記載のものにおいて、前記第1の取付部材には、前記フランジ状部の上面に開口する収容凹所が形成されている一方、該収容凹所に対して前記断熱部材が収容されており、該断熱部材の外周縁部が該第1の取付部材に包囲されると共に、該断熱部材の上面が該フランジ状部の上面よりも上方に突出した状態で、該断熱部材が該フランジ状部に前記固着手段により固着されているものである。
【0019】
本態様によれば、断熱部材が収容凹所への収容状態で第1の取付部材に固着されることから、第1の取付部材への固着状態をより安定的に確保することが出来る。また、断熱部材の外周縁部が第1の取付部材で包囲されていることから、第1の取付部材の放熱性を利用して、断熱部材に蓄積された熱を、フランジ状部における大気への露出面から放熱することも出来る。
【0020】
さらに、断熱部材の上面がフランジ状部の上面よりも上方に位置されていることから、パワーユニット側のブラケット等を断熱部材の上面に当接させることにより、第1の取付部材とブラケット等との間に空隙を設けることが出来る。これにより、ブラケット等から第1の取付部材への直接の伝熱を防止することが出来て、本体ゴム弾性体の熱劣化を一層確実に低減することが出来る。特に、第1の取付部材に溝等を設けること無しに、パワーユニット側のブラケット等とフランジ状部との間に空隙を設けることが可能であることから、第1の取付部材の部材剛性や支持強度の低下を伴うことなく、パワーユニット側からの伝熱を軽減することが出来る。
【0021】
本発明の第五の態様は、前記第四の態様に記載のものにおいて、前記断熱部材の外周縁部に外方に突出する係止部が形成されている一方、前記収容凹所を画成する周壁部が該係止部に向かって屈曲されてかしめ固定されており、該係止部と該係止部に対してかしめ固定された該周壁部によって前記固着手段が構成されているものである。
【0022】
本態様においては、断熱部材が第1の取付部材の装着部にかしめ固定で固着される。従って、比較的簡易な方法で、断熱部材を確実且つ容易に固着することが出来る。
【0023】
本発明の第六の態様は、前記第四の態様に記載のものにおいて、前記断熱部材の外周縁部に外方に突出する係止部が形成されており、前記収容凹所を画成する周壁部が該係止部に沿って該断熱部材の外周縁部を包囲するように鋳造されており、該係止部と該係止部の周囲に鋳造された該周壁部によって、前記固着手段が構成されているものである。
【0024】
本態様においては、第1の取付部材が、断熱部材をインサート品として鋳造される。これにより、第1の取付部材において、断熱部材を包囲する周壁部を、断熱部材に対して全周に亘って容易に密着させることが出来、断熱部材の第1の取付部材の装着部への固着を、確実且つ容易に行なうことが出来ると共に、強固で安定的な固着状態を得ることが出来る。
【0025】
本発明の第七の態様は、前記第四の態様に記載のものにおいて、前記断熱部材の周縁部が前記収容凹所を画成する周壁部に対して圧入固定されており、該断熱部材と該周壁部の圧接によって、前記固着手段が構成されているものである。
【0026】
本態様においては、断熱部材の周縁部と周壁部との圧接によって固着手段が実現されている。これにより、簡易な構成で、断熱部材を第1の取付部材に一層容易且つ速やかに固着することが出来る。
【0027】
本発明の第八の態様は、前記第三の態様に記載のものにおいて、前記断熱部材が前記フランジ状部の上面を全体に亘って覆蓋するように固着されているものである。
【0028】
本態様によれば、第1の取付部材におけるフランジ状部の上面の全面が断熱部材で覆われていることから、パワーユニット側のブラケット等とフランジ状部との対向面間の全体に断熱部材を介在させることが出来る。従って、パワーユニット側から第1の取付部材への伝熱をより効果的に軽減することが出来て、本体ゴム弾性体の熱劣化を一層確実に低減することが出来る。
【発明の効果】
【0029】
本発明においては、第1の取付部材のパワーユニット側への装着部に、第1の取付部材よりも熱伝導率の低い断熱部材を、固着手段によって固着して一体化した。これにより、パワーユニットから第1の取付部材への伝熱を軽減して、第1の取付部材から本体ゴム弾性体への伝熱を軽減することが出来る。その結果、本体ゴム弾性体の熱劣化を低減してエンジンマウントの耐久性を向上することが出来る。更に、固着手段を用いて断熱部材を第1の取付部材に一体化したことから、第1の取付部材の部材強度と、車両への組付安定性を確保することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の第一の実施形態としてのエンジンマウントの、車両への組み付け状態を示す断面図。
図2】本発明の第二の実施形態としてのエンジンマウントの断面図。
図3】本発明の第三の実施形態としてのエンジンマウントの断面図。
図4】本発明の第四の実施形態としてのエンジンマウントの断面図。
図5】本発明の第五の実施形態としてのエンジンマウントの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0032】
図1には、本発明の第一の実施形態としてのエンジンマウント10が示されている。エンジンマウント10は、第1の取付部材12と第2の取付部材14が本体ゴム弾性体16によって連結された構造を有している。そして、第1の取付部材12がパワーユニット側に設けられたブラケット18に取り付けられると共に、第2の取付部材14が図示しない車両ボデーに取り付けられることにより、パワーユニットが車両ボデーによって防振支持されるようになっている。なお、以下の説明において、軸方向および上下方向とは、原則として、図1中の上下方向を言う。
【0033】
より詳細には、第1の取付部材12は、例えばアルミニウムや鉄などの金属材から形成された高剛性の部材であって、本実施形態においては、アルミニウムから形成されている。第1の取付部材12は、中実で上下方向に延びる略円形のロッド形状を有している。第1の取付部材12の中心軸上には、内周面にねじ山が刻設されたボルト孔20が形成されており、ボルト孔20が第1の取付部材12の上面22に開口されている。更に、第1の取付部材12の上端部には、全周に亘って軸直方向に突出して広がるフランジ状部24が一体形成されている。
【0034】
フランジ状部24には、略一定断面をもって第1の取付部材12の中心軸周りで、全周に亘って延びる収容凹所26が形成されている。収容凹所26は、第1の取付部材12の上面22に開口する一定の略矩形断面をもって、第1の取付部材12の全周に亘って連続して形成されており、上面22に開口する円形の凹溝形状とされている。
【0035】
収容凹所26には、断熱部材28が収容されている。断熱部材28は、第1の取付部材12よりも熱伝導率の低い材料から形成されており、好適には、部材強度を確保するために金属材から形成される。本実施形態においては、第1の取付部材12がアルミニウム(熱伝導率:236W/mk)で形成されていることから、断熱部材28は、アルミニウムよりも熱伝導率の小さな、例えばオーステナイト系ステンレス鋼(SUS304。熱伝導率:16W/mk)等から形成されている。
【0036】
断熱部材28は、所定の厚さ寸法(図1中、上下方向寸法):tを有すると共に、中心軸上に中央孔30が貫設された略円環形状とされている。断熱部材28は、一定の略矩形断面形状をもって周方向に連続して形成されており、その外周縁部32の下端縁部には、径方向(図1中、左右方向)外方に突出する係止部34が全周に亘って連続して形成されている。このような断熱部材28は、鋳造や削り出しで形成しても良いし、或いは、長尺の円筒形状から所定厚さ寸法:tで切り出した後に、外周縁部32の上端縁部を叩き加工や切削加工等して縮径することで係止部34を形成する等しても良い。
【0037】
なお、断熱部材28の厚さ寸法:tは、第1の取付部材12の部材強度を損なうことなく、後述する断熱効果を有効に発揮するために、好適には、5mm〜20mm、より好ましくは、7mm〜18mmの範囲内に設定される。断熱部材28の厚さ寸法:tを5mm以上に設定することによって、後述するブラケット18と第1の取付部材12との間に所定の厚さ寸法をもって介在して、ブラケット18から第1の取付部材12への熱伝導を有効に軽減することが出来る。また、断熱部材28の厚さ寸法:tを20mmを超えて厚肉にしても、断熱効果の向上に乏しいことから、断熱部材28の厚さ寸法:tを20mm以下に抑えることによって、有効な断熱効果を確保しつつ、断熱部材28の材料費の削減を図ることが出来る。それと共に、断熱部材28が大型化することで第1の取付部材12が相対的に小さくなることを回避して、第1の取付部材12の部材強度を確保することが出来る。
【0038】
このような断熱部材28は、第1の取付部材12の収容凹所26に収容された状態で、第1の取付部材12に固着されている。本実施形態においては、断熱部材28をインサート品として第1の取付部材12が鋳造されることにより、断熱部材28がフランジ状部24に埋設された状態で、第1の取付部材12が形成されるようになっている。即ち、予め別途に形成した断熱部材28を第1の取付部材12の鋳型にセットして、第1の取付部材12の溶融金属を流し込んで第1の取付部材12を鋳造する。これにより、断熱部材28が第1の取付部材12のフランジ状部24に固着されて、第1の取付部材12に一体化されている。
【0039】
第1の取付部材12の溶融金属が鋳型に流し込まれた際に、断熱部材28の外周縁部32に溶融金属が回り込まされて、収容凹所26の外側を画成する周壁部36が鋳造される。これにより、周壁部36は、断熱部材28の係止部34に沿って、外周縁部32を全周に亘って包囲するように鋳造されている。そして、周壁部36の上端縁部が、係止部34の上方に回り込むように径方向内方に突出されて、係止部34と上下方向で係合されている。これにより、断熱部材28が上方への抜け出し不能に第1の取付部材12に固着されている。このように、係止部34と周壁部36によって、断熱部材28を第1の取付部材12に固着する固着手段が構成されている。
【0040】
断熱部材28は、第1の取付部材12に埋設されることにより、第1の取付部材12の内部に部分的に入り込まされており、第1の取付部材12と断熱部材28が、上下方向で互いに入り込んで相互に固着されている。第1の取付部材12への固着状態で、断熱部材28は、第1の取付部材12と同一中心軸上に配設されており、ボルト孔20が、断熱部材28の中央孔30を通じて上方に開口されている。特に本実施形態においては、第1の取付部材12の中央部分が中央孔30内に入り込まされて、上面22が中央孔30内に位置されており、ボルト孔20の開口端縁部37が、中央孔30内に位置されている。また、断熱部材28の上面38は、フランジ状部24の上面となる第1の取付部材12の上面22よりも上方に突出して、上面22よりも僅かに上方に位置されている。
【0041】
一方、第2の取付部材14は、薄肉大径の略円筒形状を有する高剛性の部材であって、軸方向中間部分に段差部40が設けられており、段差部40を挟んで上側が大径筒部42とされていると共に、段差部40を挟んで下側が小径筒部44とされている。
【0042】
このような構造とされた第1の取付部材12と第2の取付部材14は、同一中心軸上に配設されて、第1の取付部材12が第2の取付部材14の上方に配置される。そして、第1の取付部材12と第2の取付部材14は、本体ゴム弾性体16によって弾性的に連結されている。
【0043】
本体ゴム弾性体16は、厚肉大径の略円錐台形状を有しており、小径側(上側)の端部が第1の取付部材12に加硫接着されていると共に、大径側(下側)の端部の外周面が第2の取付部材14の内周面に重ね合わされて加硫接着されている。なお、本体ゴム弾性体16は、第1の取付部材12におけるフランジ状部24よりも下側の外周面に接着されており、これにより、第1の取付部材12は、軸方向下側の端部が本体ゴム弾性体16に埋設状態で固着されていると共に、フランジ状部24の外側部分に位置する周壁部36は、本体ゴム弾性体16の外部に位置して大気中に露呈されている。このようにして、本体ゴム弾性体16が、第1の取付部材12と第2の取付部材14を備えた一体加硫成形品として形成されている。
【0044】
本体ゴム弾性体16の下端部には、逆向きの略すり鉢状を呈する大径凹所46が形成されて、本体ゴム弾性体16の下面に開口されている。更に、本体ゴム弾性体16における大径凹所46の外周側からは、シールゴム層48が一体形成されて下方に向かって延び出されており、第2の取付部材14の小径筒部44の内周面に重ね合わされて加硫接着されている。
【0045】
また、第2の取付部材14には、可撓性膜50が取り付けられている。可撓性膜50は、薄肉大径の略円板形状とされたゴム弾性体であって、軸方向に充分な弛みを有している。また、可撓性膜50の外周面は、環状の固定部材52に重ね合わされて加硫接着されている。そして、固定部材52が第2の取付部材14の小径筒部44の下端部に挿入された後、第2の取付部材14に対して八方絞り等の縮径加工が施されることにより、可撓性膜50が第2の取付部材14に取り付けられている。
【0046】
このように可撓性膜50が第2の取付部材14に取り付けられることにより、第2の取付部材14の上側開口部が本体ゴム弾性体16によって閉塞されていると共に、第2の取付部材14の下側開口部が可撓性膜50によって閉塞されている。これにより、本体ゴム弾性体16と可撓性膜50の軸方向対向面間には、外部から隔てられた流体封入領域54が形成されており、非圧縮性流体が封入されている。なお、流体封入領域54に封入される非圧縮性流体は、特に限定されるものではないが、水やアルキレングリコール,ポリアルキレングリコール,シリコーン油、或いはそれらの混合液等が好適に採用される。特に、後述する流体の流動作用に基づく防振効果を有効に得るためには、0.1Pa・s以下の低粘性流体が望ましい。
【0047】
また、流体封入領域54には、仕切部材56が配設されている。仕切部材56は、厚肉大径の略円板形状を有しており、例えば、金属材や繊維補強された硬質の合成樹脂材等で形成されている。仕切部材56の外周部分58は、中央部分よりも厚肉とされて、周方向に全周に亘って延びる大径の円環状とされている。外周部分58には、外周面に開口して2周弱の長さで延びる周溝60が形成されている。
【0048】
このような仕切部材56は、流体封入領域54に収容されて、第2の取付部材14によって支持されている。より詳細には、仕切部材56は、第2の取付部材14の小径筒部44に挿入されて、外周部分58が本体ゴム弾性体16の下端面に重ね合わされて位置決めされた後、八方絞り等の縮径加工によって固定部材52と共に第2の取付部材14に対して固定される。これにより、仕切部材56は、第2の取付部材14によって外周部分を支持されて、流体封入領域54内で軸直方向に広がるように配設される。
【0049】
仕切部材56が配設されることによって、流体封入領域54が、仕切部材56を挟んで上下に二分されている。これにより、仕切部材56を挟んだ上側には、壁部の一部が本体ゴム弾性体16で構成されて、振動入力時に内圧変動が及ぼされる受圧室62が形成されていると共に、仕切部材56を挟んだ下側には、壁部の一部が可撓性膜50で構成されて、容積変化が容易に許容される平衡室64が形成されている。なお、これら受圧室62および平衡室64には、流体封入領域54に封入された非圧縮性流体が封入されている。
【0050】
また、仕切部材56の外周面は、シールゴム層48を介して第2の取付部材14の内周面に重ね合わされている。これにより、周溝60の外周開口部が第2の取付部材14によって流体密に閉塞されて、周方向に延びるトンネル状の流路が形成されている。このトンネル状の流路の一方の端部が、仕切部材56に形成された連通孔66を通じて受圧室62に連通せしめられていると共に、他方の端部が、仕切部材56に形成された図示しない連通孔を通じて平衡室64に連通せしめられている。これにより、周溝60を利用して、受圧室62と平衡室64を相互に連通するオリフィス通路68が形成されている。なお、受圧室62に開口された連通孔66は、仕切部材56から上方に向かって突出された連通突出部70に形成されて、オリフィス通路68の内周側に向かって開口されている。
【0051】
このような構造とされたエンジンマウント10は、鉄やアルミニウム等の金属材や合成樹脂材から形成されて、パワーユニット側に設けられたブラケット18が、第1の取付部材12のフランジ状部24に重ね合わされると共に、ブラケット18に貫設されたボルト挿通孔72に挿通された固定ボルト74がボルト孔20に螺着されることにより、第1の取付部材12がパワーユニット側に取り付けられる。このように、本実施形態においては、フランジ状部24が第1の取付部材12におけるパワーユニット側への装着部とされている。それと共に、第2の取付部材14が図示しないブラケットを介して図示しない車両ボデー側に取り付けられる。これにより、パワーユニットがエンジンマウント10を介して車両ボデーに防振支持されるようになっている。
【0052】
かかるエンジンマウント10の装着状態において、第1の取付部材12と第2の取付部材14の間で上下方向に振動が入力されると、本体ゴム弾性体16の弾性変形により、受圧室62に内圧変動が生ぜしめられる。そして、受圧室62と平衡室64の相対的な圧力差に基づいて、オリフィス通路68を通じての流体流動が生ぜしめられることにより、かかる流動作用に基づいて、目的とする防振効果が発揮されるようになっている。
【0053】
そして、本実施形態においては、パワーユニット側のブラケット18が、断熱部材28の上面38に重ね合わされた状態で第1の取付部材12に固定されており、ブラケット18が、断熱部材28を介して第1の取付部材12に固定されている。これにより、パワーユニット等を熱源とするブラケット18の熱が第1の取付部材12に伝達されることを軽減することが出来て、第1の取付部材12に固着された本体ゴム弾性体16への伝熱を軽減することが出来る。その結果、本体ゴム弾性体16の熱劣化を低減して、エンジンマウント10の耐久性を向上することが出来る。
【0054】
特に、断熱部材28の上面38が、第1の取付部材12におけるフランジ状部24の上面22よりも上方に位置されていることから、ブラケット18は断熱部材28にのみ接触されており、第1の取付部材12に対して、隙間76を隔てた非接触状態とされている。これにより、ブラケット18から第1の取付部材12への伝熱をより効果的に低減することが出来る。なお、ブラケット18から第1の取付部材12への熱伝達経路としては、固定ボルト74を通じた経路も考えられるが、固定ボルト74に形成されたねじとボルト孔20に形成されたねじとの接触面積は実際には十分に小さいことから、固定ボルト74からの伝熱は十分に小さい。また、第1の取付部材12の全体を断熱材で形成するのではなく、ブラケット18が当接する部分のみに断熱部材28を用いたことによって、製造コストの増加を抑えつつ、エンジンマウント10の耐久性を向上することが出来る。
【0055】
さらに、第1の取付部材12において、本体ゴム弾性体16から最も離隔して位置するフランジ状部24にブラケット18が装着されることから、ブラケット18を本体ゴム弾性体16から可及的に遠位に位置させて、ブラケット18から本体ゴム弾性体16への伝熱をより有利に低減することができる。また、フランジ状部24の周壁部36が、大気中に露呈されている。これにより、断熱部材28よりも放熱性の高い周壁部36の表面積を用いて大気中に放熱することも出来て、本体ゴム弾性体16への伝熱をより軽減することも出来る。そして、軸直方向に広がるフランジ状部24に断熱部材28を配設することによって、断熱部材28の配設スペースを有利に確保することも出来る。
【0056】
また、断熱部材28を埋め込んで第1の取付部材12を鋳造することで、断熱部材28の係止部34を係止する周壁部36を鋳造して固着手段を構成したことにより、周壁部36を断熱部材28の外面に密着状態で形成することが出来、断熱部材28を第1の取付部材12に強固に固着することが出来る。そして、断熱部材28が第1の取付部材12に強固に固着されて第1の取付部材12と一体化されていることから、エンジンマウント10を車両に組み付けるに際して、断熱部材28が第1の取付部材12から脱落するおそれも少なく、パワーユニットの支持強度も安定的に確保することが出来る。特に、第一の取付金具12が断熱部材28の中央孔30内に入り込まされて、ボルト孔20の開口端縁部37が隙間76を確保しつつ可及的にブラケット18に接近されていることから、ブラケット18の固定力をより安定的に確保することが出来る。更に、固定ボルト74が断熱部材28の中央孔30を通じて第一の取付金具12に螺合されており、断熱部材28に対して非固定であることから、車両走行時の振動等によってブラケット18が上方に変位された場合でも、断熱部材28に上方への引張力が及ぼされることが無く、断熱部材28の第1の取付部材12への固着状態を安定的に維持することが出来る。
【0057】
次に、図2に、本発明の第二の実施形態としてのエンジンマウント80を示す。なお、以下に記載の各実施形態は、第1の取付部材および断熱部材の具体的形状と、これらを相互に固着する固着手段の具体的態様が異なるのみであり、その他の構成については前記第一の実施形態と同一の構成が採用可能であることから、以下の説明において、前記第一の実施形態と実質的に同一の構造とされた部材乃至は部位については、図中に同一の符号を付すことにより、説明を省略する。
【0058】
すなわち、本実施形態における断熱部材82は、前記第一の実施形態と略同様の円環形状を有しており、その下端部には、軸直方向外方に突出する係止部34が形成されている。一方、第1の取付部材84におけるフランジ状部24には、円形状をもって上方に開口する収容凹所86が形成されており、該収容凹所86の外側が、周壁部36で画成されている。そして、収容凹所86内に断熱部材82が収容されて、周壁部36の上端部が係止部34側に屈曲されてかしめられることにより、周壁部36の上端部が係止部34に対して上側で係合されて、断熱部材82が第1の取付部材12にかしめ固定されて一体化される。このように、本実施形態においては、係止部34と周壁部36によって、固着手段が構成されている。
【0059】
なお、周壁部36の上端部が係止部34側に屈曲されることにより、断熱部材82の上面38は、周壁部36の上端縁部で形成されたフランジ状部24の上面22よりも僅かに上方に突出位置されている。また、本実施形態においては、ボルト孔20が収容凹所86の底面88上に開口されており、ボルト孔20の開口端縁部37が断熱部材82の下方に位置されているが、例えば、前記第一の実施形態のように、収容凹所86を断熱部材82に対応する円環状の凹溝とすることによって、第1の取付部材12を中央孔30内に入り込ませて、ボルト孔20の開口端縁部37を中央孔30内に位置させても良い。
【0060】
このようなエンジンマウント80も、前記第一の実施形態と同様に、第1の取付部材84にパワーユニット側のブラケット18(図1参照)が取り付けられると共に、第2の取付部材14が車両ボデーに取り付けられる。そして、本実施形態においては、断熱部材82を第1の取付部材12に固着する固着手段としてかしめ構造を採用したことから、簡易な方法で、断熱部材82を第1の取付部材12に対して容易且つ速やかに固着することが出来る。
【0061】
次に、図3に、本発明の第三の実施形態としてのエンジンマウント90を示す。本実施形態においては、第1の取付部材92のフランジ状部24に形成された収容凹所94が、上方に開口して第1の取付部材92の中心軸周りに円環形状に延びる凹溝とされており、一定の矩形断面形状をもって全周に亘って連続して形成されている。そして、収容凹所94の外側が、フランジ状部24の外側に形成された周壁部36で画成されている。一方、断熱部材96は、一定の矩形断面形状をもって全周に亘って連続する円環形状とされている。
【0062】
そして、断熱部材96が収容凹所94に圧入されて、断熱部材96の外周縁部32が周壁部36に圧接されることにより、断熱部材96が第1の取付部材12に固着されて第1の取付部材12と一体化されている。なお、本実施形態においても、収容凹所94への圧入固定状態で、断熱部材96の上面38が、フランジ状部24の上面22よりも僅かに上方に位置されている。また、フランジ状部24の上面22が断熱部材96の中央孔30内に位置されて、ボルト孔20の開口端縁部37が中央孔30内に位置されている。
【0063】
本実施形態においては、断熱部材96を収容凹所94に圧入して、収容凹所94の周壁部36に圧接させることにより、固着手段が構成されている。このようにすれば、断熱部材96を簡易な構成をもって第1の取付部材12により容易且つ速やかに固着することが出来る。そして、本実施形態においても、パワーユニット側のブラケット18は固定ボルト74(図1参照)によって第1の取付部材12にのみ固定されて、断熱部材96には固定されていないことから、ブラケット18が上方に変位した場合でも、断熱部材96に上方への引抜力が作用することが回避されており、断熱部材96を簡易な構成で第1の取付部材12に固着しつつ、固着状態を安定的に維持することが出来る。
【0064】
また、図4に、本発明の第四の実施形態としてのエンジンマウント100を示す。本実施形態の第1の取付部材102には、上方に開口すると共に、第1の取付部材102の中心軸上に延びる圧入孔104が形成されている。なお、第1の取付部材102の上面22は、全体に亘って平坦面とされている。一方、断熱部材106は、軸直方向に広がる円板形状の円板部108と、円板部108の中心軸上に突出する円柱形状のロッド状部110が一体形成された構造とされている。円板部108は、第1の取付部材102のフランジ状部24と等しい外径寸法を有する円板形状とされている。また、ロッド状部110の中心軸上にはボルト孔112が形成されており、円板部108の上面114上に開口されている。
【0065】
そして、断熱部材106のロッド状部110が、第1の取付部材102の圧入孔104に圧入されることにより、断熱部材106が、第1の取付部材102に固着されている。このように、本実施形態においては、第1の取付部材102の圧入孔104と、断熱部材106のロッド状部110を含んで、固着手段が構成されている。第1の取付部材102への固着状態において、断熱部材106の円板部108が、第1の取付部材102におけるフランジ状部24の上面22に重ね合わされて、上面22を全体に亘って覆蓋している。また、断熱部材106のボルト孔112が、第1の取付部材102の中心軸上に位置されている。
【0066】
このような構造とされたエンジンマウント100は、前記第一の実施形態と略同様に、パワーユニット側のブラケット18(図1参照)が、断熱部材106の円板部108に重ね合わされると共に、ブラケット18のボルト挿通孔72に挿通された固定ボルト74が、断熱部材106のボルト孔112に螺着されることで、ブラケット18が断熱部材106を介して第1の取付部材102に固定される。これにより、ブラケット18と第1の取付部材102の間に、断熱部材106の円板部108が介在されて、ブラケット18から第1の取付部材102への伝熱を軽減出来るようになっている。そして、本実施形態においては、第1の取付部材102の上面22の全体が断熱部材106の円板部108で覆蓋されていることから、ブラケット18と断熱部材102との接触面積をより大きく確保することが出来ると共に、ブラケット18と第1の取付部材102との対向面間の全体に断熱部材102を介在させることが出来て、より優れた断熱効果を得ることが出来る。また、ブラケット18と断熱部材106との接触面積を大きく確保出来ることから、ブラケット18を第1の取付部材12により安定的に固定することが出来る。更に、ブラケット18を固定する固定ボルト74が、断熱部材102に形成されたボルト孔112に螺着されることから、固定ボルト74を通じての第1の取付部材12への伝熱もより効果的に低減することが出来る。
【0067】
次に、図5に、本発明の第五の実施形態としてのエンジンマウント120を示す。本実施形態における第1の取付部材122は、フランジ状部24の上面22が、全体に亘って平坦面とされている。一方、断熱部材124は、第1の取付部材122のフランジ状部24よりも僅かに大きな外径寸法を有する略円環板形状とされている。断熱部材124の外周縁部には、下方に突出するかしめ片126が一体形成されている。なお、かしめ片126は、断熱部材124の全周に亘って連続して形成されていても良いし、周方向で断続的に形成されていても良い。
【0068】
そして、断熱部材124が第1の取付部材122の上面22に重ね合わされて、かしめ片126がフランジ状部24の外側から内側に向けて屈曲されてかしめられている。これにより、断熱部材124が第1の取付部材122に固着されて一体化されている。このように、本実施形態においては、かしめ片126とこれが係合されるフランジ状部24を含んで、固着手段が構成されている。第1の取付部材122への固着状態において、断熱部材124は、第1の取付部材122の上面22の全体に亘って重ね合わされている。
【0069】
このような構造とされたエンジンマウント120においても、ブラケット18と断熱部材124との接触面積を大きく確保出来ると共に、ブラケット18と第1の取付部材122の間の全体に亘って断熱部材124が介在されることから、より優れた断熱性を得ることが出来る。そして、断熱部材124のかしめ片126をフランジ状部24にかしめ固定するという簡易な構造で、断熱部材124を第1の取付部材122に容易に固着することが出来る。特に、フランジ状部24を巧く用いることにより、簡易な構造でかしめ片126をかしめ固定することが可能とされている。本実施形態から明らかなように、固着手段として、断熱部材124側を第1の取付部材122にかしめ固定して固着することも可能である。
【0070】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、断熱部材を第1の取付部材に固着する固着手段の具体的態様が、前記各実施形態に記載の態様に限定されないことは勿論である。具体的には、前記第一の実施形態のように、断熱部材を埋め込んで第1の取付部材を鋳造する際には、断熱部材の外周縁部に凹部を設けて、かかる凹部に第1の取付部材の溶融金属を入り込ませて係止することにより、断熱部材を第1の取付部材に固着する等しても良い。
【0071】
また、断熱部材および第1の取付部材の具体的形状も、前記各実施形態に記載の形状に限定されるものではない。例えば、前記各実施形態における断熱部材は、周方向に連続する円環形状や円板形状を有していたが、断熱部材を、周方向で断続的に設ける等しても良い。
【0072】
更にまた、本発明は、各種のエンジンマウントに広く適用することが可能であり、例えば、特開2009−243511号公報等に記載のような、受圧室と平衡室の間に可動板を微小変位可能に配設して液圧吸収機構を構成したものや、特開2009−52591号公報等に記載のような、複数のオリフィス通路を電磁式や負圧式のアクチュエータで切換可能としたもの等に適用することも可能であるし、流体封入式のエンジンマウントのみならず、特開2007−255530号公報等に記載のような、非圧縮性流体の封入領域を有さないエンジンマウントに適用することも可能である。
【符号の説明】
【0073】
10,80,90,100,120:エンジンマウント、12,84,92,102,122:第1の取付部材、14:第2の取付部材、16:本体ゴム弾性体、18:ブラケット、22:上面(第1の取付部材)、24:フランジ状部、26,86,94:収容凹所、28,82,96,106,124:断熱部材、32:外周縁部、34:係止部(固着手段)、36:周壁部(固着手段)、38:上面(断熱部材)、74:固定ボルト、76:隙間、104:圧入孔(固着手段)、110:ロッド状部(固着手段)、126:かしめ片(固着手段)
図1
図2
図3
図4
図5