特許第5907788号(P5907788)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5907788情報処理装置、情報処理方法、プログラムおよび基板製造システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5907788
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、プログラムおよび基板製造システム
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/10 20060101AFI20160412BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20160412BHJP
   G06F 17/50 20060101ALI20160412BHJP
【FI】
   H05K3/10 D
   B05C5/00 101
   G06F17/50 666P
【請求項の数】22
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-90437(P2012-90437)
(22)【出願日】2012年4月11日
(65)【公開番号】特開2013-219283(P2013-219283A)
(43)【公開日】2013年10月24日
【審査請求日】2015年3月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】390015587
【氏名又は名称】株式会社図研
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 康之
【審査官】 早川 学
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/126457(WO,A1)
【文献】 特開2010−033571(JP,A)
【文献】 特開2005−085877(JP,A)
【文献】 特開2010−135499(JP,A)
【文献】 特開2007−152167(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/10
B05C 5/00
G06F 17/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性液滴によって基板に描画を行う描画装置によって該基板に形成される導電性パターンの形状を計算する情報処理装置であって、
前記描画装置によって形成される導電性パターンに要求される最小ライン幅および最小ライン間スペースの少なくとも一方に基づいて前記描画装置が描画を行う際に要求される解像度を決定する解像度決定部と、
前記解像度に応じた導電性パターンのデータによって示されている導電性液滴を打つべき各位置に前記描画装置による導電性パターンの描画条件によって定まる径を有するドットを配置した画像データを生成する画像データ生成部と、
を備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記解像度決定部は、前記最小ライン幅および前記最小ライン間スペースの少なくとも一方に基づいて前記描画装置が描画を行う際に要求される最低解像度を決定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
ベクトル形式で記述された導電性パターンのデータを前記解像度に応じたラスター形式のデータに変換する変換部を更に備え、
前記画像データ生成部は、前記変換部によって生成されたラスター形式のデータに基づいて導電性液滴を打つべき各位置に前記描画条件によって定まる径を有するドットを配置したラスター形式の画像データを生成する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記変換部は、ベクトル形式で記述された導電性パターンのデータを前記解像度に応じたラスター形式のデータに変換する際に、ラスター形式のデータにおける導電性パターンの幅が基準幅を満たすように変換を行う、
ことを特徴とする請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記変換部は、ベクトル形式で記述された導電性パターンのデータを前記描画装置が描画を行う際の解像度に応じたラスター形式のデータに変換する際に、導電性液滴を打つべき位置を間引くことを特徴とする請求項3又は4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記変換部は、複数の間引きルールの中から間引きに使用すべき間引きルールをユーザに選択させる機能を有する、
ことを特徴とする請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記変換部は、変換前において同一形状を有する導電性パターンについては、間引き後のパターンが同一になるように間引きを行う、
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記変換部は、各導電性パターンを構成する画素の個数をカウントし、該個数が同一の導電性パターンをグループ化し、各グループの導電性パターン同士で形状が同一であるかどうかを判断する、
ことを請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
設計上の導電性パターンの境界と前記画像データ生成部によって生成された画像データで表現された導電性パターンの境界とのずれ量が許容量を満たさない場合に、前記許容量を満たすように前記画像データの元となる前記導電性パターンのデータを修正する修正部を更に備える、
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項10】
設計上の導電性パターンの境界と前記画像データ生成部によって生成された画像データで表現された導電性パターンの境界とのずれ量が許容量を満たさない場合に、前記許容量を満たすように前記画像データの元となる前記導電性パターンのデータを修正する修正部を更に備え、
前記画像データの元となる前記導電性パターンのデータは、前記変換部によって変換されたラスター形式のデータである、
ことを特徴とする請求項3乃至8のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記修正部は、前記ずれ量が前記許容量を満たさない場合に、前記許容量を満たすように前記画像データの元となる前記導電性パターンのデータにおける画素を削除する、
ことを特徴とする請求項10に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記画像データ生成部によって生成された画像データで表現された導電性パターンに対してデザインルールチェックを施すDRC部を更に備える、
ことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記画像データ生成部によって生成された画像データで表現された導電性パターンがデザインルールを満たさない場合に、前記デザインルールを満たすように前記画像データの元となる前記導電性パターンのデータを修正し、これにより前記描画装置に提供すべきデータを生成する修正部を更に備える、
ことを特徴とする請求項12に記載の情報処理装置。
【請求項14】
前記デザインルールは、ライン間距離を含み、
前記修正部は、前記画像データ生成部によって生成された画像データで表現された導電性パターンが前記ライン間距離を満たさない場合に、前記ライン間距離を満たすように前記画像データの元となる前記導電性パターンのデータを修正する、
ことを特徴とする請求項13に記載の情報処理装置。
【請求項15】
前記デザインルールは、ライン幅を含み、
前記修正部は、前記画像データ生成部によって生成された画像データで表現された導電性パターンが前記ライン幅を満たさない場合に、前記ライン幅を満たすように前記画像データの元となる前記導電性パターンのデータを修正する、
ことを特徴とする請求項13又は14に記載の情報処理装置。
【請求項16】
前記画像データ生成部によって生成された前記画像データに基づいて表示装置に導電性パターンの画像を表示させる表示制御部を更に備える、
ことを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項17】
前記表示制御部は、前記画像データ生成部によって生成された前記画像データで表現された導電性パターンと重ねて設計上の導電性パターンを前記表示装置に表示させる、
ことを特徴とする請求項16に記載の情報処理装置。
【請求項18】
前記表示制御部は、前記画像データ生成部によって生成された画像データで表現された導電性パターンと設計上の導電性パターンとの相違を示す評価値を前記表示装置に表示させる、
ことを特徴とする請求項17に記載の情報処理装置。
【請求項19】
前記表示制御部は、前記画像データ生成部によって生成された画像データで表現された導電性パターンおよび設計上の導電性パターンに重ねられたグリッドを前記表示装置に表示させる、
ことを特徴とする請求項17又は18に記載の情報処理装置。
【請求項20】
請求項1乃至19のいずれか1項に記載の情報処理装置と、
前記情報処理装置によって生成されるデータに基づいて基板に導電性パターンを描画する描画装置と、
を備えることを特徴とする基板製造システム。
【請求項21】
導電性液滴によって基板に描画を行う描画装置によって該基板に形成される導電性パターンの形状をコンピュータが計算する情報処理方法であって、
前記描画装置によって形成される導電性パターンに要求される最小ライン幅および最小ライン間スペースの少なくとも一方に基づいて前記描画装置が描画を行う際に要求される解像度を前記コンピュータが決定する解像度決定工程と、
前記解像度に応じた導電性パターンのデータによって示されている導電性液滴を打つべき各位置に前記描画装置による導電性パターンの描画条件によって定まる径を有するドットを配置した画像データを前記コンピュータが生成する画像データ生成工程を含む、
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項22】
コンピュータを請求項1乃至19のいずれか1項に記載の情報処理装置として動作させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性液滴によって基板に描画を行う描画装置によって該基板に形成される導電性パターンの形状を計算する情報処理装置および情報処理方法、コンピュータを該情報処理装置として動作させるためのプログラム、ならびに基板製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板やパッケージ基板などのような配線基板を製造するための方法としては、リソグラフィー技術を用いる方法が主流である。しかし、リソグラフィー技術を用いる方法は、導電層の形成工程、レジストの塗布工程、露光工程、現像工程、エッチング工程、レジストパターンの剥離工程などが必要であるので、製造に要する時間やコストの点で不利である。
【0003】
特許文献1には、インクジェット法によって配線パターンを形成する装置が開示されている。この装置は、インクジェット法により液体材料を吐出して基板の表面にパターンを形成するものであり、より正確に表現するならば、導電性液滴によって基板に導電性パターンを描画する描画装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−255007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
導電性液滴によって描画を行う描画装置を使って基板に導電性パターンを形成する場合、現在のところ、CADツールを使って設計された導電性パターンのベクトル形式のデータをラスター形式の描画データに変換し、この描画データに従って描画装置を動作させている。
【0006】
しかしながら、ラスター形式のデータで表現されている導電性パターンの形状は、元のベクトル形式のデータで表現されている導電性パターンの形状に対して完全に等しくはないし、導電性液滴によって実際に基板に描画される導電性パターンの形状もまたラスター形式のデータで表現されている導電性パターンの形状とは異なる。そこで、現在のところ、実際に基板に描画された導電性パターンを評価し、これに基づいて描画装置における描画条件や基板の表面処理条件を変更したり、描画データを変更したりしながら適正な導電性パターンを得るための調整がなされている。したがって、調整が完了するまでに相当な時間と費用を要することになる。
【0007】
本発明は、上記の課題認識に基づいてなされたものであり、描画装置に与えるためのデータを効率的に生成するために有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の側面は、導電性液滴によって基板に描画を行う描画装置によって該基板に形成される導電性パターンの形状を計算する情報処理装置に係り、前記情報処理装置は、導電性パターンのデータによって示されている導電性液滴を打つべき各位置に前記描画装置による導電性パターンの描画条件によって定まる径を有するドットを配置した画像データを生成する画像データ生成部を備える。
【0009】
本発明の第2の側面は、基板製造システムに係り、該基板製造システムは、第1の側面に係る情報処理装置と、前記情報処理装置によって生成されるデータに基づいて基板に導電性パターンを描画する描画装置とを備える。
【0010】
本発明の第3の側面は、導電性液滴によって基板に描画を行う描画装置によって該基板に形成される導電性パターンの形状を計算する情報処理方法に係り、前記情報処理方法は、導電性パターンのデータによって示されている導電性液滴を打つべき各位置に前記描画装置による導電性パターンの描画条件によって定まる径を有するドットを配置した画像データを生成する画像データ生成工程を含む。
【0011】
本発明の第4の側面は、プログラムを対象とするものであり、該プログラムは、コンピュータを、導電性液滴によって基板に描画を行う描画装置によって該基板に形成される導電性パターンの形状を計算する情報処理装置に係り、前記情報処理装置は、導電性パターンのデータによって示されている導電性液滴を打つべき各位置に前記描画装置による導電性パターンの描画条件によって定まる径を有するドットを配置した画像データを生成する画像データ生成部を備える情報処理装置として動作させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、描画装置に与えるためのデータを効率的に生成するために有利な技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の好適な実施形態の基板製造システムの構成を概略的に示す図。
図2】画像データ生成部が生成する画像データを例示する図。
図3】画像データ生成部による画像データの生成を例示する図。
図4】解像度決定部の動作を例示する図。
図5】解像度決定部の動作を例示する図。
図6】変換部の動作を例示する図。
図7】変換部の動作を例示する図。
図8】変換部の動作を例示する図。
図9】修正部の動作を例示する図。
図10】DRC部および修正部の動作を例示する図。
図11】表示制御部の動作を例示する図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明する。
【0015】
図1には、本発明の好適な実施形態の基板製造システムの構成が概略的に示されている。基板製造システムは、情報処理装置200と描画装置300とを備えている。描画装置300は、導電性液滴によって基板に描画を行うことによって該基板上に導電性パターンを形成する。描画装置300としては、例えば、特許文献1に記載されたような装置を用いることができる。
【0016】
情報処理装置200は、描画装置300における描画動作を制御するための描画データを生成しそれを描画装置300に提供する。描画装置300は、該描画データに従って基板(例えば樹脂基板)に導電性液滴を使って導電性パターンを描画する。情報処理装置200は、例えば、1又は複数のコンピュータによって構成されうる。複数のコンピュータは、典型的には、LANなどのネットワークによって接続されうる。
【0017】
情報処理装置200は、描画データ生成ツール100を含む。描画データ生成ツール100は、典型的には、コンピュータ読み取り可能なプログラムをコンピュータにインストールすることによって構成される。該プログラムは、媒体に格納して、又は、ネットワーク経由でコンピュータに提供されうる。描画データ生成ツール100は、描画装置300によって基板に形成される導電性パターンの形状を計算する。描画データ生成ツール100は、画像データ生成部102を含みうる。描画データ生成ツール100はまた、表示制御部104、変換部106、解像度決定部108、DRC(デザインルールチェック)部110および修正部112の少なくとも1つを含みうる。ここで、画像データ生成部102は画像データ生成工程を実施し、表示制御部104は表示制御工程を実施し、変換部106は変換工程を実施し、解像度決定部108は解像度決定工程を実施し、DRC部110はDRC工程を実施し、修正部112は修正工程を実施するように構成される。
【0018】
情報処理装置200は、CADツール120を含んでもよい。CADツール120は、典型的には、コンピュータ読み取り可能なプログラムをコンピュータにインストールすることによって構成される。該プログラムは、媒体に格納して、又は、ネットワーク経由でコンピュータに提供されうる。CADツール120は、例えば、配線基板を設計するための設計ツールを含みうる。該設計ツールによって生成された設計データは、基板上に形成されるべき導電性パターンを表現するデータを含みうる。該設計データは、描画データ生成ツール100に提供されうる。該設計データは、典型的には、ベクトル形式で導電性パターンを記述したデータでありうるが、ラスター形式で導電性パターンを記述したデータであってもよいし、両者が混在したデータであってもよいし、他の形式のデータであってもよい。
【0019】
情報処理装置200は、更に表示装置130および入力装置140を含みうる。表示装置130および入力装置(例えば、マウスやパッドなどのポインティングデバイス、キーボード)140は、ユーザインターフェースを構成する。表示装置130および入力装置140は、特定のデバイスに限定されるものではなく、種々のデバイスで構成されうる。
【0020】
画像データ生成部102は、導電性パターンのデータによって示されている導電性液滴を打つべき各位置(ドット形成位置)に描画装置300による導電性パターンの描画条件によって定まる径を有するドットを配置した画像データを生成する。ここで、導電性パターンのデータは、CADツール120によって生成された設計データでありうる。あるいは、導電性パターンのデータは、CADツール120によって生成された設計データを変換部106によって変換したデータでありうる。あるいは、導電性パターンのデータは、このような設計データを修正部112によって処理したデータでありうる。画像データ生成部102が生成する画像データは、典型的には、ベクトル形式のデータであるが、ラスター形式のデータであってもよいし、他の形式のデータであってもよい。表示制御部104は、画像データ生成部102によって生成された画像データに基づいて表示装置130に導電性パターンを表示させる。最終的に決定された導電性パターンのデータは、描画データとして描画装置300に提供される。なお、表示装置130に提供される画像データは、描画装置300によって形成されうる導電性パターンの形状を表現したデータであるのに対して、描画装置300に提供される描画データは、描画装置300による描画動作を制御するためのデータ(典型的には、ラスター形式のデータ)である。
【0021】
変換部106は、ベクトル形式で記述された導電性パターンのデータを処理すべき場合に、当該データを描画装置300が描画を行う際の解像度に応じたラスター形式のデータに変換する。ベクトル形式で記述された導電性パターンのデータは、CADツール120によって生成され不図示のメモリに格納され、描画データ生成ツール100によって読み出されうる。画像データ生成部102は、変換部106によって生成されたラスター形式のデータに基づいて、導電性液滴を打つべき各位置(ドット形成位置)に描画装置300による導電性パターンの描画条件によって定まる径を有するドットを配置したラスター形式の画像データを生成しうる。画像データ生成部102はまた、当該ラスター形式の画像データをベクトル形式の画像データに変換して表示制御部104に提供するように構成されうる。
【0022】
以下、図2図11を参照しながら、より具体的な実施形態を説明する。まず、図2を参照しながら画像データ生成部102が生成する画像データを例示的に説明する。ここでは、一例として、CADツール120によって生成されるデータがベクトル形式で記述された導電性パターンのデータであるものとする。図2(a)には、CADツール120によって生成される設計データ10が模式的に示されている。設計データ10は、ベクトル形式で記述された導電性パターン12のデータを含む。
【0023】
図2(b)には、設計データ10を変換部106によってラスター形式に変換した描画データ20が模式的に示されている。描画データ20は、描画装置300が描画を行う際の解像度を有する描画データである。描画データ20は、ラスター形式で記述された導電性パターン22のデータを含む。
【0024】
図2(c)には、画像データ生成部102が描画データ20に基づいて生成した画像データ30が模式的に示されている。前述のように、画像データ生成部102は、描画データ20によって示されている導電性液滴を打つべき各位置(ドット形成位置)に描画装置300による導電性パターンの描画条件によって定まる径を有するドットを配置した画像データ30を生成する。
【0025】
ラスター形式で記述された導電性パターン22と、それを処理して得られた導電性パターン32とは形状が異なる。導電性パターン32は、描画装置300のよる描画条件であるドットの径が考慮されたものであり、描画装置300によって実際に形成される導電性パターン32に忠実なものである。表示制御部104は、画像データ30に基づいて導電性パターン32の画像を表示装置130に表示させる。ユーザは、表示装置130に表示された導電性パターン32の画像を確認することによって、描画装置300によって実際に形成される導電性パターンをより正確に認識することができる。これにより、実際に描画装置300を使って導電性パターンを基板上に形成する前に不具合を発見することができる。
【0026】
更には、後述するように、導電性パターン32を含む画像データ30に基づいてDRC部110によってデザインルールチェックを行ったり、その結果に基づいて修正部112によって画像データ30の元となる導電性パターン22の描画データ20を修正し修正後の描画データを描画装置300に提供したりすることができる。
【0027】
図3を参照しながら画像データ生成部102による画像データの生成について例示的に説明する。図3(a)には、導電性パターンを含む描画データが模式的に示されている。描画データは、画素PIXの二次元配列において導電性パターンの形状を定義している。導電性パターンは、導電性液滴を打つべき各位置(ドット形成位置)Pの集合体で構成される。ここで、導電性液滴を打つべき位置は、典型的には、画素PIXの位置、より詳しくは画素PIXの中心位置で与えられうる。当該位置に導電性液滴を打つ(付着させる)ことによって形成されるドットDの径は、描画装置300の仕様によって定まるものである。描画装置300が導電性パターンを形成する際の描画条件は、形成されるドットDの径を含む。典型的には、描画装置300は、ドットの径を複数種類の中から選択可能に構成されうる。
【0028】
画像データ生成部102は、導電性液滴を打つべき各位置(ドット形成位置)Pに、図3(a)に模式的に示されるように、描画条件によって定まる径を有するドットDを配置し、図3(b)に模式的に示されるように、各ドットDの中を塗りつぶすことによって画像データを生成する。
【0029】
ところで、描画装置300が描画を行う際の解像度は、描画装置300の仕様に応じてユーザによって任意に設定されてもよいが、解像度決定部108によって決定されてもよい。解像度決定部108は、ユーザからの指示に依存することなく解像度を決定するように構成されてもよいし、ユーザに対して解像度の決定に有用な情報を提供し、これに対するユーザからの応答に応じて解像度を決定してもよい。
【0030】
図4図5を参照しながら解像度決定部108の動作を例示的に説明する。図4(a)は、ベクトル形式の設計データ(導電性パターンのデータ)を高解像度でラスター形式の描画データに変換した例、図4(b)は、同じ設計データを低解像度でラスター形式の描画データに変換した例を示している。各正方形は画素を示している。
【0031】
図4(a)に例示されるような高解像度では、複数のライン幅LWが相互に等しく、複数のライン間スペースLSが相互に等しい。一方で、図4(b)に例示されるような低解像度(即ち、解像度が十分でない場合)では、複数のライン幅LWが相互に等しいものの、複数のライン間スペースLSが互いに異なっている。また、図4(b)には示されていないが、複数のライン幅LWが相互に異なる場合もある。
【0032】
図5(a)は、ベクトル形式の設計データを高解像度でラスター形式の描画データに変換した例、図5(b)は、同じ設計データを低解像度でラスター形式の描画データに変換した例を示している。各正方形は画素を示している。DPは設計データにおける導電性パターンを示し、RPは描画データにおける導電性パターンを示している。図5(b)に示す低解像度(即ち、解像度が十分でない場合)では、導電性パターン同士がショートを起こしている。
【0033】
解像度決定部108は、描画装置300によって形成される導電性パターンに要求される最小ライン幅および最小ライン間スペースの少なくとも一方に基づいて描画装置300が描画を行う際に要求される解像度を決定する。この解像度は、描画装置300に設定される解像度であり、描画装置300に提供される描画データの解像度であり、また、変換部106が生成する描画データの解像度である。ここで、解像度決定部108は、描画装置300によって形成される導電性パターンに要求される最小ライン幅および最小ライン間スペースの少なくとも一方に基づいて描画装置300が描画を行う際に要求される最低解像度を決定してもよい。該最低解像度を示す情報は、表示制御部104によって表示装置130に表示されてもよい。ユーザは、当該最低解像度に基づいて任意に解像度を決定することができる。
【0034】
解像度決定部108は、最小ライン幅および最小ライン間スペースの少なくとも一方に基づいて、それを満たすために十分な解像度を決定する。単純な例では、最小ライン幅および最小ライン間スペースに対して解像度を対応付けたテーブルを準備しておき、該テーブルを参照することによって解像度を決定することができる。
【0035】
次に、図6を参照しながら変換部106の動作を説明する。図6(a)、図6(b)において、DPは設計データにおける導電性パターンを示し、正方形の集合体で構成されたRPは、描画データにおける導電性パターンを示している。図6(a)において、符号61で示された部分は、断線不良を発生しうる。そこで、変換部106は、ベクトル形式で記述された導電性パターンDPのデータを描画装置300が描画を行う際の解像度に応じたラスター形式のデータに変換する際に、ラスター形式のデータにおける導電性パターンRPの幅が基準幅を満たすように変換を行う。より具体的には、変換部106は、図6(b)に例示されるように、断線不良が発生しうる部分61に対して、導電性パターンを構成する画素65を補う。
【0036】
次に、図7図8を参照しながら変換部106がベクトル形式の導電性パターンのデータ(設計データ)をラスター形式の導電性パターンのデータ(描画データ)による変換の際に間引きについて説明する。図7(a)には、間引きを行うことなく生成されたラスター形式の導電性パターンのデータ(描画データ)が模式的に示されている。図7(b)には、間引きを行いながら生成されたラスター形式の導電性パターンのデータ(描画データ)が模式的に示されている。図7(b)に示す例では、導電性液滴を打つべき位置(画素)P1、P2のうちP2が間引かれている。なお、図7(b)において、ハッチングが付された正方形で示された位置(画素)がP1であり、ハッチングが付されていない正方形で示された位置(画素)がP2である。Dは、導電性液滴によってドットが形成される領域を示している。変換部106は、複数の間引きルールの中から間引きに使用すべき間引きルールをユーザに選択させる機能を有する。この機能は、表示装置130および入力装置140で構成されるユーザインターフェースを介してユーザに提供される。
【0037】
図8(a)、図8(b)には、間引きがなされた導電性パターンPAT1、PAT2、PAT3が例示されている。ここで、PAT2およびPAT3は同一のパターンであり、PAT1はこれらとは異なるパターンである。図8(a)に示されるように、PAT2とPAT3とは、同一の形状を有するにも拘わらず、間引き後においてドットを形成すべき位置は相互に異なる。この場合、基板に実際に形成される導電性パターンの形状が相互に異なってしまう。
【0038】
そこで、変換部106は、図8(b)に例示されているように、変換前において同一形状を有する導電性パターン(PAT2、PAT3)については、間引き後のパターンが同一になるように間引きを行うことが好ましい。ここで、変換部106は、各導電性パターンを構成する画素の個数をカウントし、該個数が同一の導電性パターンをグループ化し、各グループの導電性パターン同士で形状が同一でるかどうかを判断するように構成されうる。例えば、PAT1を構成する画素の個数は3、PAT2を構成する画素の個数は5、PAT3を構成する画素の個数は5である。そこで、例えば、PAT1を第1グループ、PAT2およびPAT3を第2グループにグループ化することができる。第2グループには、複数の導電性パターンPAT1、PAT2が属するので、変換部106は、PAT1とPAT2とで形状が同一であるかどうかを判断する。形状が同一であるかどうかは、回転対象性や線対称性も考慮してなされることが好ましい。即ち、回転対象または線対称なパターン同士も同一の形状を有するものと判断することが好ましい。
【0039】
なお、図8(b)に示す例では、図8(a)における導電性パターンPAT3に対する間引きと同様の間引きを導電性パターンPAT2に対して施しているが、図8(a)における導電性パターンPAT2に対する間引きと同様の間引きを導電性パターンPAT3に対して施してもよい。また、間引きルールは、ここで挙げている例に限定されるものではなく、任意に定めうる。
【0040】
図9を参照しながら修正部112の動作を説明する。DPは設計データにおける導電性パターンを示し、D1およびD2は、導電性液滴で形成されうるドットを示している。修正部112は、設計データ上の導電性パターン(設計データにおける導電性パターン)DPの境界91と画像データ生成部102によって生成された画像データで表現された導電性パターン(即ち、ドットD1、D2の集合体)の境界とのずれ量が許容量90を満たさない場合に、該許容量を満たすように該画像データの元となる導電性パターンのデータ(描画データ)を修正する。具体的には、ドットD1は、その境界が許容量90を満たしていないので、修正部112は、ドットD1が取り除かれるように、当該画像データの元となる導電性パターンのデータ(描画データ)を修正する(つまり、ドットD1に対応する画素を導電性パターンの構成画素群から削除する)。
【0041】
修正部112は、DRC部110とともに設けられてもよい。図10を参照しながらDRC部110および修正部112の動作を説明する。図10(a)には、設計データにおける導電性パターンDP1、DP2が例示的に示されている。設計データにおける導電性パターンDP1、DP2は、デザインルールを満たしている(ここでは、ライン間距離D1がデザインルールを満たしている)
図10(b)には、画像データ生成部102によって生成された画像データにおける導電性パターンRP1、RP2が例示的に示されている。ここで、前述のように、変換部106により、導電性パターンDP1、DP2を表現するベクトル形式の設計データがラスター形式の描画データに変換される。そして、画像データ生成部102により、該描画データによって示されている導電性液滴を打つべき各位置(ドット形成位置)に、描画装置300による導電性パターンの描画条件によって定まる径を有するドットを配置した画像データが生成される。画像データにおける導電性パターンRP1、RP2は、描画装置300によって実際に形成されうる導電性パターンを推測したものである。
【0042】
図10(b)において、導電性パターンRP1、RP2は、デザインルールを満たしていない(ここでは、ライン間距離D2がデザインルールを満たしていない)。DRC部110は、画像データ生成部102によって生成された画像データに基づいてDRCを実行する。そのDRCの結果は、表示制御部104によって表示装置130に表示されうる。この表示に基づいてユーザの介在によって描画データが修正されうる。あるいは、修正部112は、図10(c)に示されるように、デザインルールを満たさない原因となっているドットが取り除かれるように、画像データの元となる導電性パターンのデータ、即ち描画データを修正してもよい。図10(c)において、導電性パターンRP1、RP2は、デザインルールを満たしている(ここでは、ライン間距離D3がデザインルールを満たしている)。以上の例は、ライン間距離D1がデザインルールを満たしていない場合の例であるが、これは一例である。例えば、ライン幅がデザインルールを満たしていない場合にも、DRC部110によって、それを判定することができる。この場合、修正部112は、ライン幅が狭くなるように、画像データの元となる導電性パターンのデータ、即ち描画データを修正しうる。
【0043】
なお、オプションとして、DRC部110は、変換部106から提供されるラスター形式の描画データに対してDRCを実行してもよい。
【0044】
図11を参照しながら表示制御部104の動作を説明する。図11(a)、図11(b)には、それぞれ表示制御部104によって表示装置130に表示されるウインドウWが例示されている。Dは導電性液滴によって形成されうるドット、DPは設計データにおける導電性パターンを示している。図11(a)の例と図11(b)の例とでは、描画装置300によって形成されうるドットDの大きさが相互に異なる。表示制御部104は、図11(a)、図11(b)に例示されるように、画像データ生成部102によって生成された画像データで表現された導電性パターン(図11(a)、図11(b)の例ではドットDの集合)と重ねて設計上の導電性パターンDPを表示装置130に表示させる機能を有しうる。ユーザは、表示装置130に表示される画像に基づいて、描画装置300によって形成されうる導電性パターンと設計上の導電性パターンとの相違を確認することができる。
【0045】
表示制御部104は、更に、画像データ生成部102によって生成された画像データで表現された導電性パターン(図11(a)、図11(b)の例ではドットDの集合)と設計上の導電性パターンDPとの相違を示す評価値92を表示装置130に表示させる機能を有してもよい。表示制御部104は、更に、画像データ生成部102によって生成された画像データで表現された導電性パターンおよび設計上の導電性パターンDPに重ねられたグリッドGを表示装置130に表示させてもよい。前述の評価値92は、画像データ生成部102によって生成された画像データで表現された導電性パターンと設計上の導電性パターンDPとの相違部分の面積を、グリッドGを構成する最小用要素(微小正方形)の個数で評価した値でありうる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11