特許第5907791号(P5907791)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5907791翼形状の評価方法、この方法を実行するためのプログラム、この方法を実行する装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5907791
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】翼形状の評価方法、この方法を実行するためのプログラム、この方法を実行する装置
(51)【国際特許分類】
   F01D 5/14 20060101AFI20160412BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20160412BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20160412BHJP
【FI】
   F01D5/14
   G01M99/00 Z
   F01D25/00 V
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-97867(P2012-97867)
(22)【出願日】2012年4月23日
(65)【公開番号】特開2013-224636(P2013-224636A)
(43)【公開日】2013年10月31日
【審査請求日】2015年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(72)【発明者】
【氏名】福原 義也
(72)【発明者】
【氏名】濱名 寛幸
【審査官】 佐藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−032570(JP,A)
【文献】 特表2009−541767(JP,A)
【文献】 特開昭62−100603(JP,A)
【文献】 特開昭59−221606(JP,A)
【文献】 特開昭53−144368(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 5/14
F01D 25/00
G01B 21/20
G01B 7/28
G01M 99/00
DWPI(Thomson Innovation)
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造された翼の形状をコンピュータで評価する翼形状の評価プログラムにおいて、
前記コンピュータの入力装置により、前記翼の設計データを取得する設計データ取得ステップと、
前記設計データ取得ステップで取得された前記翼の前記設計データから、設計上の翼における翼弦中心線上の位置であって、所定の位置決定ルールに従って定めた複数の評価位置毎の翼厚を求め、複数の評価位置毎の該翼厚を前記コンピュータの記憶装置に記憶する設計翼厚算出ステップと、
前記コンピュータの入力装置により、前記翼の形状に関する実測データを取得する実測データ取得ステップと、
前記実測データ取得ステップで取得された前記翼の前記実測データから、該翼の翼弦中心線上の位置であって、前記位置決定ルールに従って定めた複数の評価位置毎の翼厚を求める実翼厚算出ステップと、
前記記憶装置に記憶されている前記設計上の翼における複数の評価位置毎の翼厚と、前記実翼厚算出ステップで求められた前記翼における複数の評価位置毎の翼厚とで、対応する評価位置毎での翼厚相互の偏差を求め、該偏差を用いて該翼形状を評価する評価ステップと、
前記評価ステップにおける評価結果を前記コンピュータの出力装置から出力させる出力ステップと、
を前記コンピュータに実行させ、
前記位置決定ルールに従って定められる複数の評価位置は、翼弦中心線上の位置であって、翼厚最大位置と、前縁側の予め定めた前縁基準位置と、該翼厚最大位置から該前縁基準位置までの間を予め定めた前側分割ルールに従って複数に分割したときの各分割位置と、後縁側の予め定めた後縁基準位置と、該翼厚最大位置から該後縁基準位置までの間を予め定めた後側分割ルールに従って複数に分割したときの各分割位置と、であり、
前記前側分割ルールは、前記翼厚最大位置から前記前縁基準位置までの間を予め定められた複数の数に等分割するルールであり、前記後側分割ルールは、前記翼厚最大位置から前記後縁基準位置までの間を予め定められた複数の数に等分割するルールである、
ことを特徴とする翼形状の評価プログラム。
【請求項2】
請求項1に記載の翼形状の評価プログラムにおいて、
前記評価ステップでは、複数の前記評価位置毎の翼厚の公差を取得し、いずれかの評価位置での前記偏差が当該評価位置の公差を超える場合に、前記翼における当該評価位置の翼厚が不適切である旨の評価を行う、
ことを特徴とする翼形状の評価プログラム。
【請求項3】
製造された翼の形状を評価する翼形状の評価方法において、
前記翼の設計データを取得する設計データ取得ステップと、
前記設計データ取得ステップで取得された前記翼の前記設計データから、設計上の翼における翼弦中心線上の位置であって、所定の位置決定ルールに従って定めた複数の評価位置毎の翼厚を求める設計翼厚算出ステップと、
前記翼の形状に関する実測データを取得する実測データ取得ステップと、
前記実測データ取得ステップで取得された前記翼の前記実測データから、該翼の翼弦中心線上の位置であって、前記位置決定ルールに従って定めた複数の評価位置毎の翼厚を求める実翼厚算出ステップと、
前記設計翼厚算出ステップで求められた前記設計上の翼における複数の評価位置毎の翼厚と、前記実翼厚算出ステップで求められた前記翼における複数の評価位置毎の翼厚とで、対応する評価位置毎での翼厚相互の偏差を求め、該偏差を用いて該翼の形状を評価する評価ステップと、
を実行し、
前記位置決定ルールに従って定められる複数の評価位置は、翼弦中心線上の位置であって、翼厚最大位置と、前縁側の予め定めた前縁基準位置と、該翼厚最大位置から該前縁基準位置までの間を予め定めた前側分割ルールに従って複数に分割したときの各分割位置と、後縁側の予め定めた後縁基準位置と、該翼厚最大位置から該後縁基準位置までの間を予め定めた後側分割ルールに従って複数に分割したときの各分割位置と、であり、
前記前側分割ルールは、前記翼厚最大位置から前記前縁基準位置までの間を予め定められた複数の数に等分割するルールであり、前記後側分割ルールは、前記翼厚最大位置から前記後縁基準位置までの間を予め定められた複数の数に等分割するルールである、
ことを特徴とする翼形状の評価方法。
【請求項4】
製造された翼の形状を評価する翼形状の評価装置において、
外部からデータを取得するデータ取得部と、
前記翼の形状に関するデータから、該翼における翼弦中心線上であって、所定の位置決定ルールに従って定めた複数の評価位置毎の翼厚を求める翼厚算出部と、
前記翼厚算出部で算出された複数の評価位置毎の翼厚が記憶される記憶部と、
複数の評価位置毎の翼厚に基づいて、前記翼の形状を評価する評価部と、
前記評価部における評価結果を出力する出力部と、
を備え、
前記翼厚算出部は、前記データ取得部が前記翼の設計データを取得すると、設計上の翼における翼弦中心線上の位置であって、前記所定のルールに従って定めた複数の評価位置毎の翼厚を求め、複数の該評価位置毎の翼厚を前記記憶部に記憶し、前記データ取得部が前記翼の形状に関する実測データを取得すると、該翼における翼弦中心線上の位置であって、前記所定のルールに従って定めた複数の評価位置毎の翼厚を求め、複数の該評価位置毎の翼厚を前記記憶部に記憶し、
前記評価部は、前記記憶部に記憶されている前記設計上の翼における複数の評価位置毎の翼厚と、前記翼における複数の評価位置毎の翼厚とで、対応する評価位置毎での翼厚相互の偏差を求め、該偏差を用いて該翼の形状を評価し、
前記位置決定ルールに従って定められる複数の評価位置は、翼弦中心線上の位置であって、翼厚最大位置と、前縁側の予め定めた前縁基準位置と、該翼厚最大位置から該前縁基準位置までの間を予め定めた前側分割ルールに従って複数に分割したときの各分割位置と、後縁側の予め定めた後縁基準位置と、該翼厚最大位置から該後縁基準位置までの間を予め定めた後側分割ルールに従って複数に分割したときの各分割位置と、であり、
前記前側分割ルールは、前記翼厚最大位置から前記前縁基準位置までの間を予め定められた複数の数に等分割するルールであり、前記後側分割ルールは、前記翼厚最大位置から前記後縁基準位置までの間を予め定められた複数の数に等分割するルールである、
ことを特徴とする翼形状の評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸流流体機械等の翼形状を評価する評価方法、この方法を実行するためのプログラム、この方法を実行する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
軸流流体機械等の翼に対しては、製造後にその各部の寸法が所定の寸法公差内に収まっているかの等の評価が行われる。翼形状の評価パラメータしては、各種パラメータがあるが、以下の特許文献1では、翼弦中心線上で翼の前縁から所定距離の位置での翼厚と、最大翼厚とを評価パラメータの一つとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−32570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
翼形状を評価する場合、翼振動や翼強度の観点から翼厚を評価パラメータとすること、特に、最大翼厚を評価パラメータの一つとすることは好ましいことである。しかしながら、特許文献1に記載の技術では、最大翼厚と、翼弦中心線上の位置であって、翼の前縁から所定距離の位置での翼厚との二箇所の翼厚のみを評価対象としており、翼振動や翼強度の観点から翼形状について十分に評価することができない、という問題点がある。
【0005】
そこで、例えば、翼弦中心線上の位置であって、翼の前縁から各種距離の位置毎での翼厚を評価対象にすることで、翼振動や翼強度の観点から翼形状について十分に評価することは可能である。しかしながら、このように評価対象とする翼厚の数量を単に増やすだけでは、翼形状の評価負荷が増大して効率的に評価することができない。
【0006】
そこで、本発明は、このような従来技術の問題点に着目し、翼振動や翼強度の観点から効率よく翼形状を評価することができる翼形状の評価方法、この方法を実行するためのプログラム、この方法を実行する装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するための発明に係る翼形状の評価プログラムは、
製造された翼の形状をコンピュータで評価する翼形状の評価プログラムにおいて、前記コンピュータの入力装置により、前記翼の設計データを取得する設計データ取得ステップと、前記設計データ取得ステップで取得された前記翼の前記設計データから、設計上の翼における翼弦中心線上の位置であって、所定の位置決定ルールに従って定めた複数の評価位置毎の翼厚を求め、複数の評価位置毎の該翼厚を前記コンピュータの記憶装置に記憶する設計翼厚算出ステップと、前記コンピュータの入力装置により、前記翼の形状に関する実測データを取得する実測データ取得ステップと、前記実測データ取得ステップで取得された前記翼の前記実測データから、該翼の翼弦中心線上の位置であって、前記位置決定ルールに従って定めた複数の評価位置毎の翼厚を求める実翼厚算出ステップと、前記記憶装置に記憶されている前記設計上の翼における複数の評価位置毎の翼厚と、前記実翼厚算出ステップで求められた前記翼における複数の評価位置毎の翼厚とで、対応する評価位置毎での翼厚相互の偏差を求め、該偏差を用いて該翼形状を評価する評価ステップと、前記評価ステップにおける評価結果を前記コンピュータの出力装置から出力させる出力ステップと、を前記コンピュータに実行させ、前記位置決定ルールに従って定められる複数の評価位置は、翼弦中心線上の位置であって、翼厚最大位置と、前縁側の予め定めた前縁基準位置と、該翼厚最大位置から該前縁基準位置までの間を予め定めた前側分割ルールに従って複数に分割したときの各分割位置と、後縁側の予め定めた後縁基準位置と、該翼厚最大位置から該後縁基準位置までの間を予め定めた後側分割ルールに従って複数に分割したときの各分割位置と、であり、前記前側分割ルールは、前記翼厚最大位置から前記前縁基準位置までの間を予め定められた複数の数に等分割するルールであり、前記後側分割ルールは、前記翼厚最大位置から前記後縁基準位置までの間を予め定められた複数の数に等分割するルールである、ことを特徴とする。
【0008】
当該評価プログラムでは、翼厚最大位置における翼厚の他に、翼弦中心線上の複数の評価位置での翼厚を評価対象にしているので、翼振動や翼強度の観点からの翼形状について十分な評価を行うことができる。
【0009】
また、当該評価プログラムでは、翼厚最大位置が前縁側に寄り、この翼の前縁から翼厚最大位置までの間の距離が短くなった場合、単位距離当たりの翼厚の変化量である翼厚変化率の大きい区間、つまり翼厚最大位置から前縁までの区間での評価位置の数が密になり、翼厚変化率の小さい区間、つまり翼厚最大位置から後縁までの区間での評価位置の数が粗になる。このため、当該評価プログラムでは、翼厚最大位置が前縁側に寄るような場合でも、翼厚分布を十分に把握できる上に、翼形状を効率的に評価することができる。
【0011】
また、前記翼形状の評価プログラムにおいて、前記評価ステップでは、複数の前記評価位置毎の翼厚の公差を取得し、いずれかの評価位置での前記偏差が当該評価位置の公差を超える場合に、前記翼における当該評価位置の翼厚が不適切である旨の評価を行ってもよい。
【0012】
上記問題点を解決するための発明に係る翼形状の評価方法は、
製造された翼の形状を評価する翼形状の評価方法において、前記翼の設計データを取得する設計データ取得ステップと、前記設計データ取得ステップで取得された前記翼の前記設計データから、設計上の翼における翼弦中心線上の位置であって、所定の位置決定ルールに従って定めた複数の評価位置毎の翼厚を求める設計翼厚算出ステップと、前記翼の形状に関する実測データを取得する実測データ取得ステップと、前記実測データ取得ステップで取得された前記翼の前記実測データから、該翼の翼弦中心線上の位置であって、前記位置決定ルールに従って定めた複数の評価位置毎の翼厚を求める実翼厚算出ステップと、前記設計翼厚算出ステップで求められた前記設計上の翼における複数の評価位置毎の翼厚と、前記実翼厚算出ステップで求められた前記翼における複数の評価位置毎の翼厚とで、対応する評価位置毎での翼厚相互の偏差を求め、該偏差を用いて該翼の形状を評価する評価ステップと、を実行し、前記位置決定ルールに従って定められる複数の評価位置は、翼弦中心線上の位置であって、翼厚最大位置と、前縁側の予め定めた前縁基準位置と、該翼厚最大位置から該前縁基準位置までの間を予め定めた前側分割ルールに従って複数に分割したときの各分割位置と、後縁側の予め定めた後縁基準位置と、該翼厚最大位置から該後縁基準位置までの間を予め定めた後側分割ルールに従って複数に分割したときの各分割位置と、であり、前記前側分割ルールは、前記翼厚最大位置から前記前縁基準位置までの間を予め定められた複数の数に等分割するルールであり、前記後側分割ルールは、前記翼厚最大位置から前記後縁基準位置までの間を予め定められた複数の数に等分割するルールである、ことを特徴とする。
【0013】
上記問題点を解決するための発明に係る翼形状の評価装置は、
製造された翼の形状を評価する翼形状の評価装置において、外部からデータを取得するデータ取得部と、前記翼の形状に関するデータから、該翼における翼弦中心線上であって、所定の位置決定ルールに従って定めた複数の評価位置毎の翼厚を求める翼厚算出部と、前記翼厚算出部で算出された複数の評価位置毎の翼厚が記憶される記憶部と、複数の評価位置毎の翼厚に基づいて、前記翼の形状を評価する評価部と、前記評価部における評価結果を出力する出力部と、を備え、前記翼厚算出部は、前記データ取得部が前記翼の設計データを取得すると、設計上の翼における翼弦中心線上の位置であって、前記所定のルールに従って定めた複数の評価位置毎の翼厚を求め、複数の該評価位置毎の翼厚を前記記憶部に記憶し、前記データ取得部が前記翼の形状に関する実測データを取得すると、該翼における翼弦中心線上の位置であって、前記所定のルールに従って定めた複数の評価位置毎の翼厚を求め、複数の該評価位置毎の翼厚を前記記憶部に記憶し、前記評価部は、前記記憶部に記憶されている前記設計上の翼における複数の評価位置毎の翼厚と、前記翼における複数の評価位置毎の翼厚とで、対応する評価位置毎での翼厚相互の偏差を求め、該偏差を用いて該翼の形状を評価し、前記位置決定ルールに従って定められる複数の評価位置は、翼弦中心線上の位置であって、翼厚最大位置と、前縁側の予め定めた前縁基準位置と、該翼厚最大位置から該前縁基準位置までの間を予め定めた前側分割ルールに従って複数に分割したときの各分割位置と、後縁側の予め定めた後縁基準位置と、該翼厚最大位置から該後縁基準位置までの間を予め定めた後側分割ルールに従って複数に分割したときの各分割位置と、であり、前記前側分割ルールは、前記翼厚最大位置から前記前縁基準位置までの間を予め定められた複数の数に等分割するルールであり、前記後側分割ルールは、前記翼厚最大位置から前記後縁基準位置までの間を予め定められた複数の数に等分割するルールである、ことを特徴とする。
【0014】
上記評価方法及び評価装置でも、翼厚最大位置における翼厚の他に、翼弦中心線上の複数の評価位置での翼厚を評価対象にしているので、翼振動や翼強度の観点からの翼形状について十分な評価を行うことができる。
【0015】
さらに、上記評価方法及び評価装置でも、翼厚最大位置が前縁側に寄り、この翼の前縁から翼厚最大位置までの間の距離が短くなった場合、単位距離当たりの翼厚の変化量である翼厚変化率の大きい区間、つまり翼厚最大位置から前縁までの区間での評価位置の数が密になり、翼厚変化率の小さい区間、つまり翼厚最大位置から後縁までの区間での評価位置の数が粗になる。このため、上記評価方法及び評価装置でも、翼厚最大位置が前縁側に寄るような場合でも、翼厚分布を十分に把握できる上に、翼形状を効率的に評価することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、翼振動や翼強度の観点からの翼形状について、効率的に十分な評価を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る一実施形態における評価装置の構成を示す説明図である。
図2】本発明に係る一実施形態における評価装置の動作を示すフローチャートである。
図3】翼の斜視図である。
図4】本発明に係る一実施形態における翼厚の評価位置を示す説明図である。
図5】本発明に係る一実施形態における設計翼での評価位置と実際に製造された翼での評価位置との関係を示す説明図である。
図6】本発明に係る一実施形態における個別評価テーブルのデータ構成を示す説明図である。
図7】本発明に係る一実施形態における統計評価テーブルのデータ構成を示す説明図である。
図8】本発明に係る一実施形態で、翼厚最大位置が前縁側に寄った場合における評価位置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
本実施形態の翼形状の評価装置10は、図1に示すように、三次元形状測定装置50により実際に測定された翼1の形状を評価するものである。
【0020】
この評価装置10は、コンピュータであり、各種演算を行うCPU20と、CPU20のワークエリア等になるメモリ13と、ハードディスクドライブ装置等の補助記憶装置30と、キーボードやマウス等の手入力装置(入力装置)11と、表示装置(出力装置)12と、手入力装置11及び表示装置12の入出力インタフェース14と、三次元形状測定装置50との間でデータの受送信を行うための装置インタフェース(入力装置)15と、ネットワークNを介して外部と通信するための通信インタフェース(入出力装置)16と、ディスク型記憶媒体Dに対してデータの記憶処理や再生処理を行う記憶・再生装置(入出力装置)17と、を備えている。
【0021】
補助記憶装置30には、三次元形状測定装置50により実際に測定された翼1の形状を評価するための評価プログラム38及びOS(Operating System)プログラム39が予め格納されている。これらのプログラム38,39は、例えば、記憶・再生装置17を介して、ディスク型記憶媒体Dから補助記憶装置30に取り込まれる。なお、これらのプログラム38,39は、通信インタフェース16を介して外部の装置から補助記憶装置30に取り込まれてもよい。
【0022】
補助記憶装置30には、さらに、評価プログラム38の実行過程で、各種データが格納される。具体的に、翼1の三次元設計データ31と、この翼1の三次元実測データ32とが格納される。さらに、補助記憶装置30には、評価プログラム38の実行過程で評価テーブル33a,33bが作成され、この評価テーブル33a,33bに、この翼1の評価結果等が格納される。
【0023】
CPU20は、機能的に、翼1の三次元設計データ31及び三次元実測データ32を取得するデータ取得部21と、三次元設計データ31及び三次元実測データ32のそれぞれから翼厚を算出する翼厚算出部22と、翼厚算出部22で算出された翼厚を用いて翼形状を評価する評価部23と、この評価部23による評価結果を表示装置12で表示させる出力部24と、を有している。
【0024】
なお、これらの各機能部21〜24は、いずれも、CPU20が補助記憶装置30に格納されている評価プログラム38を実行することで機能する。
【0025】
次に、以上で説明した評価装置10の動作について、図2に示すフローチャートに従って説明する。なお、以下では、多段式軸流流体機械の1段分の複数の動翼1の形状を評価するものとする。但し、本発明は、多段式軸流流体機械の動翼1に限定されるものではなく、多段式軸流流体機械の静翼、他の装置の動翼や他の装置の静翼を対象にしてもよい。
【0026】
評価装置10のデータ取得部21は、まず、多段式軸流流体機械のある段の動翼1の三次元設計データ31を取得し、これを補助記憶装置30に格納する(S1)。この三次元設計データ31は、例えば、入力装置としての記憶・再生装置17によりディスク型記憶媒体から取り込まれるか、入力装置としての通信インタフェース16により外部の装置から取り込まれる。データ取得部21は、記憶・再生装置17又は通信インタフェース16により取り込まれた三次元設計データ31を前述したように補助記憶装置30に格納する。
【0027】
翼厚算出部22は、補助記憶装置30に三次元設計データ31が格納されると、この三次元設計データ31が示す設計上の翼(以下、設計翼1dとする)の翼厚を算出し、この翼厚を評価テーブル33aに格納する(S2)。
【0028】
この場合、翼厚算出部22は、まず、図3に示すように、この設計翼1dで算出する翼厚の断面を定める。ここで、定める断面は、例えば、設計翼1dの翼端2からこの設計翼1dにおける翼長の15%分の距離の位置での断面3a、翼端2から翼長の50%分の距離の位置での断面3b、翼端2から翼長の85%分の距離の位置での断面3cである。つまり、翼厚算出部22は、3ヵ所の断面3a,3b,3cを定める。
【0029】
続いて、翼厚算出部22は、位置決定ルールに従って各断面中における複数の評価位置を定める。この位置決定ルールに従って定められる複数の評価位置は、図4に示すように、設計翼1dにおける翼弦中心線C上の位置であって、設計翼1dの翼厚最大位置L4と、設計翼1dの前縁4から翼弦中心線Cに沿って予め定めた距離(例えば、数ミリ)D1離れている前縁基準位置L1、設計翼1dの後縁5から翼弦中心線Cに沿って予め定めた距離(例えば、数ミリ)D2離れている後縁基準位置L8、前縁基準位置L1と翼厚最大位置L4との間D3を翼弦中心線Cに沿って3等分した際の各分割位置L2,L3、翼厚最大位置L4と後縁基準位置L8との間D4を翼弦中心線Cに沿って4等分した際の各分割位置L5〜L7である。
【0030】
ここで、翼厚算出部22は、対象とする断面中に多数の内接円を描き、これらの内接円のうちで、径が最大の内接円9の中心位置を翼厚最大位置L4とする。
【0031】
次に、翼厚算出部22は、各評価位置L1〜L8での翼弦中心線Cに対する法線方向における翼厚Tを三次元設計データ31から算出する。そして、翼厚算出部22は、前述したように、3ヵ所の断面3a,3b,3c毎の各評価位置L1〜L8での翼厚Tを評価テーブル33aに格納する。
【0032】
次に、データ取得部21が三次元形状測定装置50から多段式軸流流体機械の1段分の全ての動翼1に関する三次元実測データ32を取得し、全ての動翼1に関する三次元実測データ32を補助記憶装置30に格納する(S3)。
【0033】
補助記憶装置30に動翼1の三次元実測データ32が格納されると、翼厚算出部22は、複数の動翼1に関する三次元実測データ32のうち、1つの動翼1に関する三次元実測データ32を抽出する(S4)。
【0034】
続いて、翼厚算出部22は、この動翼1の各断面における各評価位置L1〜L8での翼厚Tを算出する(S5)。この場合、翼厚算出部22は、設計翼1dに対する翼厚Tを算出した際と同様、まず、翼1の翼端2から翼長の15%分の距離の位置での断面3a(図3に示す)、翼端2から翼長の50%分の距離の位置での断面3b、翼端2から翼長の85%分の距離の位置での断面3cを定める。次に、翼厚算出部22は、設計翼1dに対する翼厚Tを算出した際と同様、複数の断面3a,3b,3c毎に、前述の位置決定ルールに従って複数の評価位置L1〜L8を定める。そして、翼厚算出部22は、複数の断面毎3a,3b,3cに、各評価位置L1〜L8での翼厚Tを三次元実測データ32から算出し、複数の断面3a,3b,3c毎の各評価位置L1〜L8での翼厚Tを評価テーブル33aに格納する。
【0035】
ところで、設計翼1dの翼幅(前縁4から後縁5までの距離)に対して、実際に製造された翼1の翼幅には多少の偏差がある。このため、設計翼1dにおける翼弦中心線Cに沿った長さに対して、実際に製造された翼1における翼弦中心線Cに沿った長さにも偏差がある。よって、図5に示すように、設計翼1dにおける評価位置Ld1〜Ld8中で、翼厚最大位置Ld4から前縁側の各評価位置Ld1〜Ld3までの翼弦中心線Cに沿った距離、翼厚最大位置Ld4から後縁側の各評価位置Ld5〜Ld8までの翼弦中心線Cに沿った距離と、実際に製造された翼1における評価位置Lr1〜Lr8中で、翼厚最大位置Lr4から前縁側の各評価位置Lr1〜Lr3までの翼弦中心線Cに沿った距離、翼厚最大位置Lr4から後縁側の各評価位置Lr5〜Lr8までの翼弦中心線Cに沿った距離と、の間に偏差がある。すなわち、本実施形態では、設計翼1d及び実際に製造された翼1の双方に対して同一の位置決定ルールで評価位置Ld1〜Ld8,Lr1〜Lr8を定めているものの、設計翼1dにおける評価位置Ld1〜Ld8と実際に製造された翼1の評価位置Lr1〜Lr8とでは微妙に異なっている。なお、図5、及びこの図5を用いた以上の説明では、設計翼1dにおける評価位置Ld1〜Ld8と実際に製造された翼1における評価位置Lr1〜Lr8とを区別するために、評価位置の符号をLd、Lrとしているが、以下の説明では、設計翼1dと実際に製造された翼1で区別することなく、評価位置の符号をLとする。
【0036】
翼厚算出部22は、一つの動翼1に関する各断面における各評価位置L1〜L8での翼厚Tを算出し、これを評価テーブル33aに格納すると、全ての動翼1に関して翼厚Tの算出及びその格納が終了したか否かを判断する(S6)。翼厚算出部22は、全ての動翼1に関して翼厚Tの算出及びその格納が終了していないと判断すると、ステップ4に戻って、新たな動翼1の三次元実測データ32を補助記憶装置30から抽出する。また、翼厚算出部22は、動翼1に関して翼厚Tの算出及びその格納が終了したと判断すると、その旨を評価部23に通知する。
【0037】
評価部23は、この通知を受けると、設計翼1dの翼厚Tと実際に製造された翼1の翼厚Tとを比較して、この製造された翼1の形状を評価する(S7)。評価部23は、まず、複数の評価位置L1〜L8毎に個別評価を行った後(S7a)、ステップ3で取得した全ての翼1の評価位置L1〜L8毎の翼厚Tに関するデータを統計評価する(S7b)。
【0038】
評価部23は、個別評価を行う際(S7a)、評価テーブル33a,33b中の個別評価テーブル33aを用いる。この個別評価テーブル33aは、図6に示すように、複数の翼毎に存在する。各翼の個別評価テーブル33aは、翼識別子(例えば、「翼AKB01−01」「翼AKB01−02」)が格納される翼識別子領域34aと、この翼識別子で特定される翼の各断面の識別子(例えば、「断面1」「断面2」)が格納される断面識別子領域35aと、この断面識別子で特定される各断面毎の各評価位置L1〜L8における各種データが格納されるデータ領域36aとがある。データ領域36aには、各評価位置L1〜L8における実際の翼1の翼厚Tである実測翼厚Trが格納される実測翼厚領域37oと、各評価位置L1〜L8における設計翼1dの翼厚Tである設計翼厚Tdが格納される設計翼厚領域37pと、各評価位置L1〜L8における実測翼厚Trと設計翼厚Tdとの偏差が格納される偏差領域37qと、各評価位置L1〜L8における翼厚Tの+公差が格納される+公差領域37rと、各評価位置L1〜L8における翼厚Tの−公差が格納される−公差領域37sと、各評価位置L1〜L8での評価結果が格納される評価領域37tと、がある。
【0039】
翼識別子は、例えば、オペレータが当該評価装置10に三次元設計データ31を入力する前に、手入力装置11により入力される。データ取得部21は、この手入力装置11により入力された翼識別子を個別評価テーブル33aの翼識別子領域34aに格納する。なお、データ取得部21が複数の翼1毎の三次元実測データ32を取得する過程で、データ取得部21自らが翼識別子を順次定めて、これを翼識別子領域34aに格納するようにしてもよい。
【0040】
各評価位置L1〜L8での+公差及び−公差に関しても、例えば、オペレータが当該評価装置10に三次元設計データ31を入力する前に、手入力装置11により入力される。データ取得部21は、この手入力装置11により入力された各評価位置L1〜L8での+公差及び−公差をそれぞれ対応する評価位置L1〜L8における+公差領域37r、−公差領域37sに格納する。なお、ここでは、全ての評価位置L1〜L8での+公差及び−公差がいずれも0.20であるが、これは単なる例示にすぎず、例えば、評価位置L4(翼厚最大位置)における+公差及び−公差がこれよりも小さい値であってもよい。
【0041】
各評価位置L1〜L8での実測翼厚Trは、いずれも、翼厚算出部22が各評価位置L1〜L8での実測翼厚Trを算出した際に、この翼厚算出部22により、対応する評価位置L1〜L8における実測翼厚領域37oに格納される。また、各評価位置L1〜L8での設計翼厚Tdも、以上と同様、翼厚算出部22が各評価位置L1〜L8での設計翼厚Tdを算出した際に、この翼厚算出部22により、対応する評価位置L1〜L8における設計翼厚領域37pに格納される。
【0042】
評価部23は、この個別評価の際(S7a)、まず、評価位置L1〜L8毎に、実測翼厚領域37oに格納されている実測翼厚Trから設計翼厚領域37pに格納されている設計翼厚Tdを減算し、この減算結果である偏差を偏差領域37qに格納する。次に、評価部23は、設計翼厚Tdに対して実測翼厚Trの方が大きく、偏差が正の値を示す場合には、この偏差と+公差とを比較する。評価部23は、偏差の絶対値が+公差の絶対値より大きければ、「不良(図6中の○)」と評価して、その旨を評価領域37tに格納する。また、評価部23は、偏差の絶対値が+公差の絶対値以下であれば、「良(図6中の×)」と評価して、その旨を評価領域37tに格納する。また、逆に、設計翼厚Tdに対して実測翼厚Trの方が小さく、偏差が負の値を示す場合には、この偏差と−公差とを比較する。評価部23は、偏差の絶対値が−公差の絶対値より大きければ、「不良)」と評価して、その旨を評価領域37tに格納する。また、評価部23は、偏差の絶対値が−公差の絶対値以下であれば、「良」と評価して、その旨を評価領域37tに格納する。
【0043】
評価部23は、全翼1に関する全断面での全評価位置L1〜L8に関して、以上のように評価し、その旨を評価領域37tに格納すると、統計評価を行う(S7b)。
【0044】
評価部23は、この統計評価を行う際(S7b)、評価テーブル33a,33b中の統計評価テーブル33bを用いる。この統計評価テーブル33bは、図7に示すように、この統計評価テーブル33bで扱う動翼1の動翼段の識別子(例えば、「翼AKB01」)が格納される段識別子領域34bと、この段識別子で特定される動翼段を構成する動翼1の各評価位置L1〜L8における翼厚Tの+公差が格納される+公差領域36oと、この動翼1の各評価位置L1〜L8における翼厚Tの−公差が格納される−公差領域36pと、動翼段を構成する全動翼1を対象とする各評価位置L1〜L8での工程能力指数Cp,Cpkが格納されるCp値領域36q、Cpk値領域36rと、動翼段を構成する全動翼1を対象とする各評価位置L1〜L8での偏差の平均値が格納される偏差平均値領域36sと、がある。
【0045】
ここで、この統計評価テーブル33bで扱うデータは、評価位置L1〜L8のうちの前縁基準位置L1についてのデータと、翼厚最大位置L4についてのデータと、後縁基準位置L8についてのデータと、と、その他の評価位置L2,3,5,6,7についてのまとめたデータである。
【0046】
また、この統計評価テーブル33bで扱う工程能力指数は、ここでは詳細な説明を省略するが、その物の規格に対する製造された物のバラツキσの比率のことである。この工程能力指数には、規格幅の中央値と製造されたものの値の中央値(平均値)とが一致していることを前提にした工程能力指数Cpと、規格幅の中央値と製造されたものの値の中央値(平均値)とのズレを加味した工程能力指数Cpkとがある。本実施形態では、この両方の工程能力指数Cp,Cpkを扱う。なお、製造された物のバラツキσは、製造された複数の物の標準偏差である。
【0047】
この統計評価テーブル33bの段識別子領域34bに格納される段識別子は、例えば、オペレータが当該評価装置10に三次元設計データ31を入力する前に、手入力装置11により、前述した翼識別子と共に入力される。データ取得部21は、この手入力装置11により入力された段識別子を統計評価テーブル33bの段識別子領域34bに格納する。なお、この段識別子に関しては、例えば、データ取得部21が特定の動翼段の動翼1に関する三次元設計データ31を取得する過程で、データ取得部21自らが段識別子を定めて、これを段識別子領域34bに格納するようにしてもよい。
【0048】
各評価位置L1〜L8での+公差及び−公差は、個別評価テーブル33aの各公差領域37r,37sに格納される公差と同じものである。よって、この公差は、この個別評価テーブル33aの各公差領域37r,37sに対応する公差が格納されるタイミングで、データ取得部21により、統計評価テーブル33bの各公差領域36o,36pにも格納される。
【0049】
評価部23は、この統計評価の際(S7b)、まず、個別評価テーブル33aから評価位置L1〜L8毎の全ての偏差を取得する。そして、評価位置L1〜L8毎の全ての偏差の平均値を求め、評価位置L1〜L8毎の偏差平均値を統計評価テーブル33bの偏差平均値領域36sに格納する。次に、評価部23は、評価位置L1〜L8毎の全ての偏差に関する標準偏差σを求め、この標準偏差σと予め定められている規格値等を用いて、評価位置L1〜L8毎の工程能力指数Cp,Cpkを求める。そして、評価部23は、評価位置L1〜L8毎の工程能力指数Cp,Cpkを統計評価テーブル33bのCp値領域36q、Cpk値領域36rに格納する。
【0050】
統計評価テーブル33b中の全ての領域にデータが格納されると、出力部24は、個別評価テーブル33aのデータ及び統計評価テーブル33bのデータを表示装置12に表示させる(S8)。
【0051】
以上で、評価装置10による翼1の評価処理が終了する。
【0052】
この評価装置10のオペレータは、表示装置12に表示された個別評価テーブル33aのデータを見て、いずれかの評価位置での評価結果が「不良」である翼を確認する。そして、例えば、この翼の個別評価テーブル33aのデータをネットワークを介して製造元に送信する。製造元では、印刷されたデータを見て、この翼で「不良」と評価された評価位置周りを修正する、又は、この翼を廃棄する。
【0053】
また、オペレータは、表示装置12に表示された統計評価テーブル33bのデータを見て、統計的な面から翼1をどの程度の精度で製造しているか把握する。そして、このデータもネットワークを介して製造元に送信し、製造元での製造管理に反映させる。
【0054】
以上のように、本実施形態では、翼1のある断面において、翼厚最大位置L4における翼厚(最大翼厚)Tの他に、翼弦中心線C上の複数の評価位置L1〜L8での翼厚Tを評価対象にしているので、翼振動や翼強度の観点からの翼形状について十分な評価を行うことができる。すなわち、本実施形態では、翼厚最大位置L4を含む複数の評価位置L1〜L8での全ての翼厚Tに関して、個別評価テーブル33a中の評価領域37tに「良」が格納されていれば、この翼1は翼振動及び翼強度に関して仕様を満たすと判断することができる。
【0055】
ところで、翼厚最大位置L4は、翼1の種類等によっては前縁4側に著しく寄る場合もあれば、後縁5側に寄る場合もある。図8に示すように、翼厚最大位置L4が前縁4側に寄った場合、この翼1の前縁4から翼厚最大位置L4までの間の距離が短くなり、この間での単位距離に対する翼厚の変化量(以下、翼厚変化率)は、翼厚最大位置L4が後縁5側によっている場合よりも大きくなる。
【0056】
ここで、複数の評価位置を設定する際、翼1の前縁4から翼弦中心線Cに沿った方向での翼長さに対する各割合の距離分の位置をそれぞれ評価位置とすると仮定する。具体的に、例えば、本実施形態と同様に、翼1の前縁4から後縁5までの間に8つの評価位置La1〜La8を設定するとして、翼弦中心線Cに沿った方向での翼長さに対する1.25割の距離分の位置を第1評価位置La1とし、前縁4から同翼長さの2.5割の距離分の位置を第2評価位置La2とし、前縁4から同翼長さの3.75割の距離分の位置を第3評価位置La3〜L8とし、以下、同様に、第4〜第8評価位置La4〜La8を定めたとする。
【0057】
この場合、前述したように、翼厚最大位置L4が前縁4側に寄り、この翼1の前縁4から翼厚最大位置L4までの間の距離が短くなった場合では、翼厚変化率が大きい区間での評価位置は、評価位置La1,La2の2箇所しかなく、翼厚変化率の大きい区間での翼厚分布を十分に把握できない。このため、この場合、翼振動や翼強度の観点からの翼形状について十分な評価を行うことができない。そこで、翼1の前縁4から後縁5までの間に以上の場合の倍の16の評価位置を設定すると、翼厚の変化率の大きい区間での翼厚分布を把握できるようになる。しかしながら、この場合、評価位置が多くなり、翼形状を効率的に評価することができない。
【0058】
一方、本実施形態では、図8に示すように、翼厚最大位置L4が前縁4側に寄り、この翼1の前縁4から翼厚最大位置L4までの間の距離が短くなった場合でも、翼厚変化率の大きい区間である翼厚最大位置L4から前縁4までの間に評価位置L1〜L3が3箇所あることになるので、この翼厚の変化率の大きい区間での翼厚分布を十分に把握できる。しかも、本実施形態では、翼厚の変化率の大きい区間では評価位置が密になり、翼厚の変化率の小さい区間では評価位置が粗になるので、翼1の前縁4から後縁5までの間の評価位置を多くしなくても、翼厚分布を十分に把握できる上に、翼形状を効率的に評価することができる。
【0059】
また、本実施形態では、複数の翼1の各翼厚を統計処理して、その結果を統計評価として表示装置12に表示させているので、統計的な面から翼1をどの程度の精度で製造しているか容易に把握することができる。
【0060】
なお、以上の実施形態では、翼1の前縁4から翼弦中心線Cに沿って予め定めた距離(例えば、数ミリ)離れている位置を前縁基準位置L1とし、翼1の後縁5から翼弦中心線Cに沿って予め定めた距離(例えば、数ミリ)離れている位置を後縁基準位置L8としている。しかしながら、翼1の前縁4から翼弦中心線Cに沿った方向での翼長さに対する数%の距離分の位置を前縁基準位置とし、翼1の後縁5から同翼長さの数%の距離分の位置を後縁基準位置としてもよい。
【0061】
また、以上の実施形態では、翼厚最大位置L4から前縁基準位置L1までの間を分割する前側分割ルールがこの間を3等分するというルールである。しかしながら、前側分割ルールは、例えば、翼厚最大位置L4から遠い分割域の幅が翼厚最大位置L4に近い分割域の幅よりも狭くなるように、翼厚最大位置L4から前縁基準位置L1までの間を3分割するルールであってもよい。同様に、翼厚最大位置L4から後縁基準位置L8までの間を分割する後側分割ルールは、翼厚最大位置L4から遠い分割域の幅が翼厚最大位置L4に近い分割域の幅よりも狭くなるように、翼厚最大位置L4から後縁基準位置L8までの間を4分割するルールであってもよい。
【0062】
また、ここでは、翼厚最大位置L4から前縁基準位置L1までの間を3分割し、翼厚最大位置L4から後縁基準位置L8までの間を4分割する例を示しているが、この分割数は単なる例示にすぎず、これより多くいてもよいし、少なくしてもよい。
【0063】
また、本実施形態では、多段式軸流流体機械の1段分の全ての動翼1に関する三次元実測データ32を取得してから各翼1の翼形状を評価しているが、さらに、全段の全ての動翼1に関する三次元実測データ32を取得してから各動翼1の翼形状を評価してもよいし、一の動翼1のみの三次元実測データ32を取得した段階で、直ちに、この動翼1の翼形状を評価してもよい。
【符号の説明】
【0064】
1:翼、1d:設計翼、10:評価装置、11:手入力装置(入力装置)、12:表示装置(出力装置)、13:メモリ、14:入出力インタフェース、15:装置インタフェース(入出力装置)、16:通信インタフェース(入出力装置)、17:記憶・再生装置(入出力装置)、20:CPU、21:データ取得部、22:翼厚算出部、23:評価部、24:出力部、30:補助記憶装置、31:三次元設計データ、32:三次元実測データ、33a:個別評価テーブル、33b:統計評価テーブル、38:評価プログラム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8