【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するためのヒートポンプシステムは、
圧縮機を冷媒循環路に備え、前記圧縮機により冷媒を圧縮して凝縮器に送り当該凝縮器で熱を放出すると共に、前記凝縮器から冷媒を膨張弁、蒸発器に送り、前記蒸発器で受熱して、前記圧縮機に戻すヒートポンプサイクルを備え、
排熱を熱媒として回収して、前記冷媒循環路を流れる冷媒に与える排熱熱交換器を備えたヒートポンプシステムであって、その特徴構成は、
前記ヒートポンプサイクルにおいて、前記膨張弁と前記圧縮機との間に前記排熱熱交換器としての第1排熱熱交換器を備えると共に、前記圧縮機と前記凝縮器との間に前記排熱熱交換器としての第2排熱熱交換器を備え、
前記冷媒が、前記圧縮機、前記第2排熱熱交換器、前記凝縮器、前記膨張弁を順に通過した後に、前記蒸発器と前記第1排熱熱交換器とを直列又は並列に通過して前記圧縮機に戻
る構成で、
前記圧縮機を回転駆動する駆動力を発生すると共に排熱を発生する燃焼機関を備え、
前記燃焼機関により発生する排熱を回収した熱媒を循環する熱媒循環路を備え、
前記熱媒循環路は、前記熱媒を、前記燃焼機関に導いた後、前記第1排熱熱交換器と前記第2排熱熱交換器とに並列に導くように配設され、
前記熱媒循環路には、前記第1排熱熱交換器に導かれる熱媒の流量と前記第2排熱熱交換器に導かれる熱媒の流量との比を調整する流量調整弁が設けられている点にある。
【0011】
当該ヒートポンプシステムにあっては、燃焼機関から回収した排熱を、従来技術の如く、ヒートポンプサイクルにおいて、膨張弁と圧縮機との間における冷媒の蒸発・過熱のみに利用するのではなく、圧縮機と凝縮器との間の冷媒の蒸発・過熱にも利用する。
即ち、ヒートポンプサイクルにおいて、冷媒は、膨張弁と圧縮機との間において、蒸発器にて温熱を回収すると共に、第1排熱熱交換器により燃焼機関の排熱をも回収するので、このため、外気温度が低い場合であっても、蒸発器におけるデフロストの発生を抑制できる。また、蒸発温度それほど下げる必要がないことから、蒸発圧力もそれほど下げる必要がなくなるため、圧縮機における圧縮仕事を削減でき、運転効率を向上することができる。
更に、本発明のヒートポンプサイクルを循環する冷媒にあっては、圧縮機の出口(圧縮機と凝縮器との間)にて、第2排熱熱交換器により燃焼機関の排熱を回収して過熱可能に構成されている。このため、例えば、安定運転時の蒸発器の出口及び圧縮機の入口の冷媒の乾き度(クオリティ)を1未満とし、蒸発器及び圧縮機に導入される冷媒を気液混相状態とすることができる。これにより、蒸発器の出口及び圧縮機の入口の冷媒の乾き度を1以上とする場合に比べて、冷媒の循環量を増加させる効果も相まって、伝熱性能を高めることができると共に、圧縮機の吸い込み圧力を高めることができる。
結果、凝縮器に導入される冷媒の温度を充分に高くすることができ、その吹き出し温風温度を高めることができ、従来システムで得られる同じ温風温度を低い圧縮比で実現でき、運転効率を向上させることができる。
【0015】
上記特徴構成によれば、燃焼機関から送り出された高温の熱媒を、第1排熱熱交換器と第2排熱熱交換器との双方に、高温の熱媒を導くことができる。
【0017】
上記特徴構成によれば、第1排熱熱交換器に導かれる熱媒の流量と第2排熱熱交換器に導かれる熱媒の流量との比が調整可能であるので、例えば、第1排熱熱交換器に導く熱媒の流量は、ヒートポンプサイクルにおいて圧縮機の入口での冷媒を気液混相状態とできる程度とし、残りの熱媒を、第2排熱熱交換器に供給できる。
【0018】
本発明のヒートポンプシステムの更なる特徴構成は、前記圧縮機は、スクロール式圧縮機である点にある。
【0019】
上記特徴構成によれば、圧縮機をスクロール式圧縮機とすることで、気液混相状態の冷媒を良好に圧縮できる。
【0020】
本発明のヒートポンプシステムの運転方法の特徴構成は、
ヒートポンプシステムにおいて設定される定格負荷に対応した定格負荷運転において、前記圧縮機の入口における冷媒の状態を乾き度が1未満の気液混相状態とする気液混相モードで運転し、
前記定格負荷未満の負荷に対応した部分負荷運転において、前記圧縮機の入口における冷媒の状態を過熱状態とする過熱モードで運転可能とする点にある。
【0021】
上記特徴構成によれば、定格負荷運転においては、圧縮機の入口における冷媒状態を乾き度が1未満の気液混相状態とする気液混相モードとすることで、圧縮機の入口側の冷媒状態を気液混相状態として、冷媒循環量を増加させ、伝熱性能を高めることができる。また、冷媒を過熱状態にする必要が無いため、圧縮機への吸い込み圧力を高めることができる。しかし、本運転方式では冷凍機油への冷媒の溶解度が増加することによる油膜圧力の低下や液圧縮することによる、圧縮機耐久性のリスクが高まる可能性がある。
一方、定格負荷未満の負荷に対応した部分負荷運転においては、冷媒の凝縮圧力が低く、圧縮機の出口の温度も定格負荷運転時より低い(50〜60℃)状態のため、圧縮機の入口における冷媒状態を気液混相状態にせず、通常運転時の過熱度を確保した状態からでも排熱(85℃程度)で加熱する事が可能となり、圧縮機耐久性のリスクを高める事なく、かつシンプルな制御のままで暖房性能を向上する事が可能となる。
もちろん、部分負荷運転時でも定格負荷運転時と同様に気液混相状態から圧縮する場合には、更に暖房性能を向上させる事も可能である。
【0022】
本発明のヒートポンプシステムの運転方法の更なる特徴構成は、
前記部分負荷運転においては、前記過熱モードと前記気液混相モードとを、選択切替可能である点にある。
【0023】
更に、上記特徴構成によれば、部分負荷運転においては、過熱モードと気液混相モードとを選択切替に構成しているから、例えば、圧縮機における液圧縮のリスク回避を優先させたい場合には、過熱モードを実行し、運転効率を向上させたい場合には、気液混相モードを実行させることができ、状況に応じたモード選択により、運転の最適化を図ることができる。
上記目的を達成するためのヒートポンプシステムの運転方法は、
圧縮機を冷媒循環路に備え、前記圧縮機により冷媒を圧縮して凝縮器に送り当該凝縮器で熱を放出すると共に、前記凝縮器から冷媒を膨張弁、蒸発器に送り、前記蒸発器で受熱して、前記圧縮機に戻すヒートポンプサイクルを備え、
排熱を熱媒として回収して、前記冷媒循環路を流れる冷媒に与える排熱熱交換器を備えたヒートポンプシステムの運転方法であって、
前記ヒートポンプサイクルにおいて、前記膨張弁と前記圧縮機との間に前記排熱熱交換器としての第1排熱熱交換器を備えると共に、前記圧縮機と前記凝縮器との間に前記排熱熱交換器としての第2排熱熱交換器を備え、
前記冷媒が、前記圧縮機、前記第2排熱熱交換器、前記凝縮器、前記膨張弁を順に通過した後に、前記蒸発器と前記第1排熱熱交換器とを直列又は並列に通過して前記圧縮機に戻る構成で、
ヒートポンプシステムにおいて設定される定格負荷に対応した定格負荷運転において、前記圧縮機の入口における冷媒の状態を乾き度が1未満の気液混相状態とする気液混相モードで運転し、
前記定格負荷未満の負荷に対応した部分負荷運転において、前記圧縮機の入口における冷媒の状態を過熱状態とする過熱モードでも運転可能と
し、
前記部分負荷運転においては、前記過熱モードと前記気液混相モードとを、選択切替可能である点にある。
当該ヒートポンプシステムの運転方法にあっては、燃焼機関から回収した排熱を、従来技術の如く、ヒートポンプサイクルにおいて、膨張弁と圧縮機との間における冷媒の蒸発・過熱のみに利用するのではなく、圧縮機と凝縮器との間の冷媒の蒸発・過熱にも利用する。
即ち、ヒートポンプサイクルにおいて、冷媒は、膨張弁と圧縮機との間において、蒸発器にて温熱を回収すると共に、第1排熱熱交換器により燃焼機関の排熱をも回収するので、このため、外気温度が低い場合であっても、蒸発器におけるデフロストの発生を抑制できる。また、蒸発温度それほど下げる必要がないことから、蒸発圧力もそれほど下げる必要がなくなるため、圧縮機における圧縮仕事を削減でき、運転効率を向上することができる。
更に、本発明のヒートポンプサイクルを循環する冷媒にあっては、圧縮機の出口(圧縮機と凝縮器との間)にて、第2排熱熱交換器により燃焼機関の排熱を回収して過熱可能に構成されている。このため、例えば、安定運転時の蒸発器の出口及び圧縮機の入口の冷媒の乾き度(クオリティ)を1未満とし、蒸発器及び圧縮機に導入される冷媒を気液混相状態とすることができる。これにより、蒸発器の出口及び圧縮機の入口の冷媒の乾き度を1以上とする場合に比べて、冷媒の循環量を増加させる効果も相まって、伝熱性能を高めることができると共に、圧縮機の吸い込み圧力を高めることができる。
結果、凝縮器に導入される冷媒の温度を充分に高くすることができ、その吹き出し温風温度を高めることができ、従来システムで得られる同じ温風温度を低い圧縮比で実現でき、運転効率を向上させることができる。
更に、上記特徴構成によれば、定格負荷運転においては、圧縮機の入口における冷媒状態を乾き度が1未満の気液混相状態とする気液混相モードとすることで、圧縮機の入口側の冷媒状態を気液混相状態として、冷媒循環量を増加させ、伝熱性能を高めることができる。また、冷媒を過熱状態にする必要が無いため、圧縮機への吸い込み圧力を高めることができる。しかし、本運転方式では冷凍機油への冷媒の溶解度が増加することによる油膜圧力の低下や液圧縮することによる、圧縮機耐久性のリスクが高まる可能性がある。
一方、定格負荷未満の負荷に対応した部分負荷運転においては、冷媒の凝縮圧力が低く、圧縮機の出口の温度も定格負荷運転時より低い(50〜60℃)状態のため、圧縮機の入口における冷媒状態を気液混相状態にせず、通常運転時の過熱度を確保した状態からでも排熱(85℃程度)で加熱する事が可能となり、圧縮機耐久性のリスクを高める事なく、かつシンプルな制御のままで暖房性能を向上する事が可能となる。
もちろん、部分負荷運転時でも定格負荷運転時と同様に気液混相状態から圧縮する場合には、更に暖房性能を向上させる事も可能である。
更に、上記特徴構成によれば、部分負荷運転においては、過熱モードと気液混相モードとを選択切替に構成しているから、例えば、圧縮機における液圧縮のリスク回避を優先させたい場合には、過熱モードを実行し、運転効率を向上させたい場合には、気液混相モードを実行させることができ、状況に応じたモード選択により、運転の最適化を図ることができる。