特許第5907821号(P5907821)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5907821
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】血栓除去装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/20 20060101AFI20160412BHJP
【FI】
   A61B17/36 350
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-142999(P2012-142999)
(22)【出願日】2012年6月26日
(65)【公開番号】特開2014-4219(P2014-4219A)
(43)【公開日】2014年1月16日
【審査請求日】2015年3月6日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(独立行政法人医薬基盤研究所 先駆的医薬品・医療機器研究発掘支援事業、産業技術力強化法第19条の適用を受けるもの)
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124291
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100110582
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 昌聰
(72)【発明者】
【氏名】玉置 善紀
(72)【発明者】
【氏名】加藤 義則
(72)【発明者】
【氏名】川嶋 利幸
【審査官】 八木 敬太
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−196608(JP,A)
【文献】 特公昭63−038654(JP,B2)
【文献】 特開平02−107939(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/20
A61B 1/00
A61M 25/00
G01M 11/00
G02B 6/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管内の血栓に光を照射して該血栓を除去する装置であって、
波長λの光を出力する光源と、
前記光源から出力された光を第1端に入力して導光し、その光を第2端から出力する光ファイバと、
前記光ファイバを内部に収納するカテーテルと、
前記カテーテルの先端部において前記カテーテルの内部空間を封止し、前記光ファイバの前記第2端のコア端面に対して離間して設けられ、前記光ファイバの前記第2端から出力された光を第1面から第2面へ透過させて該光を外部へ出力する窓部材と、
前記光源から出力された光が前記光ファイバおよび前記窓部材を経て外部へ出力されるまでの光路の何れかの箇所で生じた反射光の強度を検出する光検出器と、
を備え、
前記光ファイバの前記第2端の端面に前記波長λの光の反射を低減する反射低減膜が形成され、前記窓部材の前記第2面に血液が接しているときに前記波長λの光の反射を低減する反射低減膜が形成されており、
前記窓部材の前記第2面に血液が接しているときに前記窓部材の前記第1面および前記第2面それぞれで反射されて前記光検出器により検出される反射光の強度をIとし、前記窓部材の前記第2面に気体が接しているときに前記窓部材の前記第1面および前記第2面それぞれで反射されて前記光検出器により検出される反射光の強度をIとし、前記光ファイバが破断した場合に当該破断面で反射されて前記光検出器により検出される反射光の強度をIとしたときに、これらの強度I〜Iが互いに異なるように、前記窓部材の前記第1面における波長λでの反射率、および、前記窓部材の前記第2面に気体が接しているときの前記窓部材の前記第2面における波長λでの反射率が設定されている、
ことを特徴とする血栓除去装置。
【請求項2】
前記光ファイバの前記第2端においてコア端面が周縁部に対して窪んでおり、前記周縁部が前記窓部材の前記第1面に当接しており、前記光ファイバのコア端面と前記窓部材の前記第1面とが互いに離間している、ことを特徴とする請求項1に記載の血栓除去装置。
【請求項3】
前記窓部材の前記第1面において前記光ファイバのコア端面に対向する領域が周縁部に対して窪んでおり、前記光ファイバの前記第2端の端面が前記窓部材の前記周縁部に当接しており、前記光ファイバのコア端面と前記窓部材の前記第1面とが互いに離間している、ことを特徴とする請求項1に記載の血栓除去装置。
【請求項4】
前記光ファイバの前記第2端のクラッド端面と前記窓部材の前記第1面との間に環状部材が設けられて、前記光ファイバのコア端面と前記窓部材の前記第1面とが互いに離間している、ことを特徴とする請求項1に記載の血栓除去装置。
【請求項5】
前記光ファイバのコア端面と前記窓部材の前記第1面との間に透明部材が挿入されている、ことを特徴とする請求項1に記載の血栓除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管内の血栓に光を照射して該血栓を除去する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
不整脈などに因り心臓において発生した凝固血片が脳の主要血管に詰まると血流が阻害されて急性期脳梗塞栓症が発症する。治療の対象となる脳血管の血管径は最大径で3mm程度であり、治療デバイスについてはサイズ的な制限があることから、現状では血栓溶解剤投与以外による有効な治療手段が無いとされている。しかし、血栓溶解剤の投与は出血性合併症のリスクを高める可能性がある。
【0003】
これに対して、最近では、血管内の血栓にパルスレーザ光を照射して該血栓を除去する技術が、出血性合併症のリスクを回避し得るものとして期待されている。この光照射による治療に際しては、光ファイバによりレーザ光が伝送されて血栓に照射される。したがって、治療対象の血管の内径と比べて光ファイバは細くなければならない。光ファイバが細径になるにつれて血管走行中に光ファイバが破断する可能性が想定される。
【0004】
血管内の血栓に光を照射して該血栓を除去する血栓除去装置において、光ファイバの破断を検知することは適切な治療を行う上で重要である。特許文献1には、光ファイバの破断を検知する発明が開示されている。特許文献1に開示された発明は、光ファイバの出射端面に反射低減膜または反射増加膜を形成しておき、光ファイバの出射端面および光ファイバの破断面それぞれからの反射光の強度の相違に基づいて、光ファイバが破断しているか否かを検知することを意図している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭63−38654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者の知見によれば、特許文献1に開示されている光ファイバ破断検知技術は、血管内の血栓に光を照射して該血栓を除去する血栓除去装置に適用することはできない。その理由は以下のとおりである。
【0007】
光ファイバの出射端面に形成される反射低減膜または反射増加膜は、光ファイバの出射端面に接する血液の屈折率を前提として設計されて形成される。ところが、光ファイバの出射端面から出力された光が血液に照射されると気泡が発生し、その気泡により血栓が破壊される。血液および気泡それぞれの屈折率は互いに異なるので、光ファイバの出射端面に気泡が接しているとき、光ファイバの出射端面に形成された反射低減膜または反射増加膜は設計どおりの反射特性を有しなくなる。光ファイバの破断の有無だけでなく、光ファイバの出射端面に接する媒質が血液および気泡の何れであるかによっても、反射光の強度が変化する。このことから、光ファイバの破断の検知を高精度に行うことができない。
【0008】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、光ファイバの破断を高精度に検知することができる血栓除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の血栓除去装置は、血管内の血栓に光を照射して該血栓を除去する装置であって、(1) 波長λの光を出力する光源と、(2) 光源から出力された光を第1端に入力して導光し、その光を第2端から出力する光ファイバと、(3) 光ファイバを内部に収納するカテーテルと、(4) カテーテルの先端部においてカテーテルの内部空間を封止し、光ファイバの第2端のコア端面に対して離間して設けられ、光ファイバの第2端から出力された光を第1面から第2面へ透過させて該光を外部へ出力する窓部材と、(5) 光源から出力された光が光ファイバおよび窓部材を経て外部へ出力されるまでの光路の何れかの箇所で生じた反射光の強度を検出する光検出器と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の血栓除去装置は、光ファイバの第2端の端面に波長λの光の反射を低減する反射低減膜が形成され、窓部材の第2面に血液が接しているときに波長λの光の反射を低減する反射低減膜が形成されていることを特徴とする。さらに、本発明の血栓除去装置は、窓部材の第2面に血液が接しているときに窓部材の第1面および第2面それぞれで反射されて光検出器により検出される反射光の強度をIとし、窓部材の第2面に気体が接しているときに窓部材の第1面および第2面それぞれで反射されて光検出器により検出される反射光の強度をIとし、光ファイバが破断した場合に当該破断面で反射されて光検出器により検出される反射光の強度をIとしたときに、これらの強度I〜Iが互いに異なるように、窓部材の第1面における波長λでの反射率、および、窓部材の第2面に気体が接しているときの窓部材の第2面における波長λでの反射率が設定されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の血栓除去装置は、光ファイバの第2端においてコア端面が周縁部に対して窪んでおり、周縁部が窓部材の第1面に当接しており、光ファイバのコア端面と窓部材の第1面とが互いに離間しているのが好適である。窓部材の第1面において光ファイバのコア端面に対向する領域が周縁部に対して窪んでおり、光ファイバの第2端の端面が窓部材の周縁部に当接しており、光ファイバのコア端面と窓部材の第1面とが互いに離間しているのも好適である。光ファイバの第2端のクラッド端面と窓部材の第1面との間に環状部材が設けられて、光ファイバのコア端面と窓部材の第1面とが互いに離間しているのも好適である。また、光ファイバのコア端面と窓部材の第1面との間に透明部材が挿入されているのも好適である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光ファイバの破断を高精度に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態の血栓除去装置1の全体の概略構成を示す図である。
図2】本実施形態の血栓除去装置1のカテーテル先端部の要部構成を示す図である。
図3】本実施形態の血栓除去装置1の光路上の各位置での相対的光強度を纏めた図表である。
図4】本実施形態の血栓除去装置1のカテーテル先端部の第1構成例を示す図である。
図5】本実施形態の血栓除去装置1のカテーテル先端部の第2構成例を示す図である。
図6】本実施形態の血栓除去装置1のカテーテル先端部の第3構成例を示す図である。
図7】本実施形態の血栓除去装置1のカテーテル先端部の第4構成例を示す図である。
図8】本実施形態の血栓除去装置1のカテーテル先端部の第5構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
図1は、本実施形態の血栓除去装置1の全体の概略構成を示す図である。図2は、本実施形態の血栓除去装置1のカテーテル先端部の要部構成を示す図である。血栓除去装置1は、血管内の血栓に光を照射して該血栓を除去する装置である。血栓除去装置1は、光源11、偏光ビームスプリッタ12、λ/4板13、光検出器14、光ファイバ15、コネクタ16、光ファイバ17、カテーテル18および窓部材19を備える。
【0016】
光源11は、血液に照射したときに気泡を発生させ得る波長λの光を出力する。波長λは、血液における光吸収が大きい波長であるのが好適であり、例えば532nm付近または400nm付近である。光源11は、レーザ光源であるのが好適であり、また、パルスレーザ光源であるのが好適である。光源11は、直線偏光の光を出力する。偏光ビームスプリッタ12は、光源11から出力された直線偏光の光をλ/4板13へ透過させる。また、偏光ビームスプリッタ12は、λ/4板13から到達した光のうちS偏光の光を光検出器14へ出力する。
【0017】
λ/4板13は、偏光ビームスプリッタ12から到達した直線偏光の光を入力して、これを円偏光の光に変換して光ファイバ15へ出力する。また、λ/4板13は、光ファイバ15から到達した光を入力し、その光の互いに直交する第1方位および第2方位それぞれの偏光成分の間にλ/4の位相差を与えて、その光を偏光ビームスプリッタ12へ出力する。光検出器14は、偏光ビームスプリッタ12から到達した光の強度を検出する。光検出器14は、光源11から出力された光が光ファイバ15,17および窓部材19を経て外部へ出力されるまでの光路の何れかの箇所で生じた反射光の強度を検出することができる。光検出器14は、例えばフォトダイオードを含み、好適にはPiNフォトダイオードを含む。
【0018】
光ファイバ15と光ファイバ17とはコネクタ16により光学的に接続されている。光ファイバ15,17それぞれは、石英ガラスからなるコア21およびクラッド22を有し、マルチモード光ファイバであるのが好適である。光ファイバ15はλ/4板13とコネクタ16との間で光を導光する。光ファイバ17の第1端17aの端面はコネクタ16に光学的に接続されている。光ファイバ17の第2端17bの端面は窓部材19の第1面19aに対向している。光ファイバ17は第1端17aと第2端17bとの間で光を導光する。
【0019】
カテーテル18は、図2に示されるように、光ファイバ17を内部に収納するものであり、樹脂製のチューブである。窓部材19は、互いに平行な第1面19aおよび第2面19bを有し透明な平板形状のものである。窓部材19は、カテーテル18の先端部においてカテーテル18の内部空間を封止する。カテーテル18の内部空間は気体(例えば空気)で充填されている。窓部材19は、光ファイバ17の第2端17bのコア端面に対して離間して設けられている。窓部材19は、光ファイバ17の第2端17bから出力された光を第1面19aから第2面19bへ透過させて該光を外部へ出力する。透明部材19は例えばサファイアからなるのが好適である。
【0020】
なお、血栓除去装置1は、以上までに説明した各光学部品の間を光学的に結合または導光するための他の光学部品(例えば、レンズ、ミラー、光ファイバ等)を備えていてもよい。
【0021】
光ファイバ17の第2端17bの端面に、波長λの光の反射を低減する反射低減膜が形成されている。窓部材19の第2面19bに、血液が接しているときに波長λの光の反射を低減する反射低減膜が形成されている。
【0022】
窓部材19の第2面19bに血液が接しているときに、窓部材19の第1面19aおよび第2面19bそれぞれで反射されて光検出器14により検出される反射光の強度をIとする。窓部材19の第2面19bに気体が接しているときに、窓部材19の第1面19aおよび第2面19bそれぞれで反射されて光検出器14により検出される反射光の強度をIとする。また、光ファイバ17が破断した場合に当該破断面で反射されて光検出器14により検出される反射光の強度をIとする。そして、光源11から出力される光のパワーが一定であるとき、光検出器14により検出される反射光の強度I〜Iが有意に互いに異なるように、窓部材19の第1面19aにおける波長λでの反射率Ra、および、窓部材19の第2面19bに気体が接しているときの窓部材19の第2面19bにおける波長λでの反射率Rbが設定されている。
【0023】
反射率Ra,Rbの設定は、適切な屈折率を有する材料により窓部材19を構成することで実現することができる。また、反射率Ra,Rbの設定は、任意の透明な窓部材19の材料の屈折率に応じて適切な誘電体多層膜を形成することで実現することができる。
【0024】
光ファイバ17の第2端17bの端面に反射低減膜が形成されるとともに、窓部材19の第1面19aに適切な反射率Raが設定されるためには、光ファイバ17の第2端17bの端面と窓部材19の第1面19aとが互いに離間していることが必要である。さらに、光ファイバ17の第2端17bの端面と窓部材19の第1面19aとの間の媒質の屈折率をnとし、該媒質の厚さをdとしたとき、d=πλ/(2n)なる関係式が成り立つと、光ファイバ17と窓部材19との間で反射が無くなるので、この関係式が成立する条件を避けることが必要である。
【0025】
なお、以上までに説明した各光学部品の光入出射端面以外の端面には、波長λの光の反射を低減する反射低減膜が形成されているのが好適である。
【0026】
本実施形態の血栓除去装置1は、光ファイバ15,17が破断していない場合、以下のように動作する。光源11から出力された波長λの直線偏光の光は、偏光ビームスプリッタ12を経た後、λ/4板13により円偏光に変換される。λ/4板13から出力された円偏光の光は、光ファイバ15,17により導光され、光ファイバ17の第2端17bのコア端面から出力され、窓部材19の第1面19aから第2面19bへ透過して、外部へ出力される。
【0027】
窓部材19の第2面19bに血液が接しているとき、光検出器14が受光する光は、窓部材19の第1面19aでの反射光が支配的となる。この反射光は、光ファイバ17,15により導光され、λ/4板13により互いに直交する第1方位および第2方位それぞれの偏光成分の間にλ/4の位相差が与えられて、偏光ビームスプリッタ12に入力される。偏光ビームスプリッタ12に入力された反射光のうちS偏光の光は、光検出器14により受光されて強度Iが検出される。
【0028】
窓部材19の第2面19bに気体が接しているとき、光検出器14が受光する光は、窓部材19の第1面19aおよび第2面19bそれぞれでの反射光が支配的となる。この反射光は、光ファイバ17,15により導光され、λ/4板13により互いに直交する第1方位および第2方位それぞれの偏光成分の間にλ/4の位相差が与えられて、偏光ビームスプリッタ12に入力される。偏光ビームスプリッタ12に入力された反射光のうちS偏光の光は、光検出器14により受光されて強度Iが検出される。なお、一般に、窓部材19の第2面19bに気体が接している場合の光検出器14による受光強度Iは、窓部材19の第2面19bに血液が接している場合の光検出器14による受光強度Iより大きい。
【0029】
本実施形態の血栓除去装置1は、光ファイバ17が破断している場合、以下のように動作する。光源11から出力された波長λの直線偏光の光は、偏光ビームスプリッタ12を経た後、λ/4板13により円偏光に変換される。λ/4板13から出力された円偏光の光は、光ファイバ15により導光され、さらに、光ファイバ17により破断面まで導光される。その破断面で生じた反射光は、光ファイバ17,15により導光され、λ/4板13により互いに直交する第1方位および第2方位それぞれの偏光成分の間にλ/4の位相差が与えられて、偏光ビームスプリッタ12に入力される。偏光ビームスプリッタ12に入力された反射光のうちS偏光の光は、光検出器14により受光されて強度Iが検出される。
【0030】
光ファイバ17が破断している場合に光検出器14により検出される反射光強度Iは、光ファイバ17が破断していない場合に光検出器14により検出される反射光強度I,Iの何れとも相違しており、しかも、窓部材19の第2面19bに接している媒質が血液および気体の何れであるかに依らない。したがって、光検出器14により検出された光強度に基づいて、光ファイバの破断を高精度に検知することができ、更には、血管内の血栓の除去に際して適切な処置をすることができる。
【0031】
図3は、本実施形態の血栓除去装置1の光路上の各位置での相対的光強度を纏めた図表である。各反射低減膜の反射率を0.5%または1.0%とした。光源11から出力される光の強度を100とした。
【0032】
同図(a)は、光ファイバ15,17が破断しておらず窓部材19の第2面19bに血液が接している場合の各位置での相対的光強度を示す。同図(a)には、上から順に、偏光ビームスプリッタ(PBS)12を透過する光の強度、λ/4板13を透過する光の強度、光ファイバ15の入射端で反射される光の強度、コネクタ16で反射される光の強度、コネクタ16を透過する光の強度、光ファイバ17の入射端で反射される光の強度、窓部材19で反射される光の強度、窓部材19を透過する光の強度、および、光検出部14で受光される光の強度Iが示されている。
【0033】
同図(b)は、光ファイバ17が破断している場合の各位置での相対的光強度を示す。同図(b)には、上から順に、偏光ビームスプリッタ(PBS)12を透過する光の強度、λ/4板13を透過する光の強度、光ファイバ15の入射端で反射される光の強度、コネクタ16で反射される光の強度、コネクタ16を透過する光の強度、光ファイバ17の入射端で反射される光の強度、光ファイバ17の破断面で反射される光の強度、窓部材19を透過する光の強度、および、光検出部14で受光される光の強度Iが示されている。
【0034】
同図(a)と同図(b)とを対比して判るように、光ファイバ15,17が破断しておらず窓部材19の第2面19bに血液が接している場合と、光ファイバ17が破断している場合とでは、反射低減膜の反射率が0.5%であるときには光検出部14による受光強度の比は1.92であり、反射低減膜の反射率が1.0%であるときには光検出部14による受光強度の比は1.77である。このように、光検出器14により検出された光強度に基づいて、光ファイバの破断を高精度に検知することができる。
【0035】
次に、図4図8を用いて、本実施形態の血栓除去装置1のカテーテル先端部において、光ファイバ17の第2端17bのコア端面と窓部材19の第1面19aとの間に間隙を設けるための具体的構成例について説明する。
【0036】
図4は、本実施形態の血栓除去装置1のカテーテル先端部の第1構成例を示す図である。同図に示される第1構成例では、光ファイバ17が筒状部材31に挿入され、光ファイバ17のコア端面が筒状部材31に対して窪んでいる。そして、筒状部材31は、窓部材19の平坦な第1面19aに当接している。これにより、光ファイバ17のコア端面と窓部材19の第1面19aとは互いに離間している。
【0037】
図5は、本実施形態の血栓除去装置1のカテーテル先端部の第2構成例を示す図である。同図に示される第2構成例では、光ファイバ17のコア端面がクラッドに対して窪んでいる。そして、光ファイバ17のクラッドは、窓部材19の平坦な第1面19aに当接している。これにより、光ファイバ17のコア端面と窓部材19の第1面19aとは互いに離間している。
【0038】
図6は、本実施形態の血栓除去装置1のカテーテル先端部の第3構成例を示す図である。同図に示される第3構成例では、窓部材19の第1面19aにおいて光ファイバ17のコア端面に対向する領域が周縁部に対して窪んでいる。そして、光ファイバ17の第2端17bの平坦な端面は、窓部材19の周縁部に当接している。これにより、光ファイバ17のコア端面と窓部材19の第1面19aとは互いに離間している。
【0039】
図7は、本実施形態の血栓除去装置1のカテーテル先端部の第4構成例を示す図である。同図に示される第4構成例では、光ファイバ17の第2端17bのクラッド端面と窓部材19の第1面19aとの間に環状部材32が設けられている。これにより、光ファイバ17のコア端面と窓部材19の第1面19aとは互いに離間している。
【0040】
図8は、本実施形態の血栓除去装置1のカテーテル先端部の第5構成例を示す図である。同図に示される第5構成例では、光ファイバ17のコア端面と窓部材19の第1面19aとの間に透明部材33が挿入されている。この構成例の場合、光ファイバ17の端面と透明部材33との界面に反射低減膜が形成され、窓部材19の第1面19aと透明部材33との界面では所定の反射率となるように必要に応じて誘電体多層膜が形成される。
【0041】
これら何れの構成例においても、光ファイバ17の第2端17bの端面に対して窓部材19を離間して設け、光ファイバ17の第2端17bの端面に反射低減膜を形成するとともに、窓部材19の第1面19aを所定の反射率に設定する上で好適である。
【符号の説明】
【0042】
1…血栓除去装置、11…光源、12…偏光ビームスプリッタ、13…λ/4板、14…光検出器、15…光ファイバ、16…コネクタ、17…光ファイバ、18…カテーテル、19…窓部材、21…コア、22…クラッド、31…筒状部材、32…環状部材、33…透明部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8