(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
自立起動可能な発電装置は、蓄電池を搭載しているので、比較的高価なものとなる。よって、上記のような非常用発電システムにおいて、比較的大きな特定電力負荷の消費電力を賄うために、複数の発電装置を設置する場合には、設備コストが嵩むといった問題があった。
そこで、発電装置とは別に蓄電池を設けることで、この蓄電池の蓄電電力により全ての発電装置を起動させることが考えられるが、停電時において全ての発電装置を起動するために比較的大きな電力が必要となるために、この場合でも比較的大容量で高価な蓄電池を設ける必要があった。
また、複数の発電装置を設置して同時に作動させる場合には、複数の発電装置の発電出力を特定電力負荷の消費電力の変動に対して適切に追従させるために、各発電装置の発電出力を適切に制御することが求められる。
【0007】
本発明は、かかる点に着目してなされたものであり、その目的は、停電時に複数の発電装置の発電電力を一部の特定電力負荷のみに供給して当該特定電力負荷への電力供給を継続させる非常用発電システムにおいて、設備コストをできるだけ抑制しながら、複数の発電装置の発電出力を特定電力負荷の消費電力の変動に対して適切に追従させるように各発電装置の発電出力を制御し得る技術を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するための本発明に係る非常用発電システムは、
基準電圧及び基準周波数の発電電力を電力負荷に供給可能な複数の発電装置と、
商用電力系統からの受電が停止する停電を検出する停電検出手段と、
前記停電検出手段により停電が検出された停電時に、前記電力負荷のうち特定電力負荷を除く一般電力負荷を前記複数の発電装置から解列させて、前記複数の発電装置の発電電力を前記特定電力負荷のみに供給する状態とする停電時解列手段と、
前記停電検出手段により停電が検出された停電時に、前記複数の発電装置を起動させる停電時起動処理を実行した上で、前記複数の発電装置の発電出力を制御する停電時発電出力制御を実行して、当該複数の発電装置の発電電力を前記特定電力負荷に供給する発電出力制御手段を備えた非常用発電システムであって、
その第1特徴構成は、
前記複数の発電装置として、自立起動可能な第1発電装置と、外部から供給された電力を利用して起動可能な第2発電装置とを備え、
前記発電出力制御手段が、前記停電時起動処理において、前記第1発電装置を自立起動させた後に当該第1発電装置の発電電力を利用して前記第2発電装置を起動させ、前記停電時起動処理を実行した上で、前記停電時発電出力制御において、前記第1発電装置の実際の発電出力が所定の設定発電出力となるように前記第2発電装置の発電出力を制御する点にある。
【0009】
上記第1特徴構成によれば、複数の発電装置のうち、一部の上記第1発電装置は、蓄電池等が搭載されて自立起動可能に構成される比較的高価な第1発電装置を採用するが、他の上記第2発電装置は、蓄電池等を搭載する必要が無く第1発電装置の発電電力を利用して起動可能に構成される比較的安価な第2発電装置を採用するので、複数の発電装置の全てを自立起動可能な発電装置とする場合と比較して、設備コストをできるだけ抑制することができる。
更に、このような第1発電装置と第2発電装置とを採用した場合においても、上記発電出力制御手段による停電時起動処理において、上記第1発電装置を自立起動させた後に、その第1発電装置の発電電力を利用して上記第2発電装置を起動させることで、複数の発電装置の全てを適切に起動させることができる。
そして、上記発電出力制御手段により、上記停電時起動処理を実行した上で、上記停電時発電出力制御を実行することで、第2発電装置を第1発電装置に連系させる形態で、上記第1発電装置の実際の発電出力が所定の設定発電出力が維持されると共に、第2発電装置の発電出力が、特定電力負荷の消費電力から第1発電装置の設定発電出力を差し引いた分を補う形態で制御される。よって、複数の発電装置の発電出力が、特定電力負荷の消費電力の変動に対して適切に追従することになる。
従って、本発明により、設備コストをできるだけ抑制しながら、複数の発電装置の発電出力を特定電力負荷の消費電力の変動に対して適切に追従させるように各発電装置の発電出力を制御し得る非常用発電システムを実現することができる。
【0010】
本発明に係る非常用発電システムの第2特徴構成は、上記第1特徴構成に加えて、
前記第2発電装置を複数備え、
前記発電出力制御手段が、前記停電時起動処理において、前記第1発電装置を自立起動させた後に前記第2発電装置の複数を順次起動させる点にある。
【0011】
上記第2特徴構成によれば、第1発電装置の発電電力で起動する第2発電装置を複数備える場合には、上記発電出力制御手段による停電時起動処理において、第1発電装置を自立起動させた後にこれら複数の第2発電装置を順次起動させることで、第1発電装置に対して投入される第2発電装置の起動用の電力負荷が瞬間的に過大となることを回避することができ、例えば、第1発電装置の駆動用エンジンの過負荷によるストール等を防止することができる。
【0012】
本発明に係る非常用発電システムの第3特徴構成は、上記第1乃至第2特徴構成の何れかに加えて、
前記第1発電装置が、出力電圧を前記基準電圧に維持するように発電出力を調整する発電電圧制御を実行するように構成され、
前記発電出力制御手段が、前記停電時発電出力制御において、前記第1発電装置の設定発電出力を当該第1発電装置の定格発電出力よりも小さい所定の設定部分発電出力に設定する点にある。
【0013】
上記第3特徴構成によれば、第1発電装置が出力電圧を前記基準電圧に維持するように発電出力を調整する発電電圧制御を実行するように構成されているので、上記発電出力制御手段による停電時発電出力制御を実行するにあたり、特定電力負荷の遮断等に伴って当該特定電力負荷の消費電力が急激に変動した場合には、第2発電装置の発電出力の変化に先立って、第1発電装置が基準電圧を維持するべく消費電力の変動に合わせて発電出力を変化させることになる。
一方、特定電力負荷の消費電力が緩やかに変動した場合には、第1発電装置が基準電圧を維持するべく発電出力を変化させようとするのと同時に、第2発電装置が当該第1発電装置の実際の発電出力を所定の設定発電出力に維持しようして、結果、第2発電装置がその消費電力の変動に合わせて発電出力を変化させることになる。即ち、このような停電時発電出力制御を実行することにより、第1発電装置及び第2発電装置の発電出力が、消費電力の変動に対して適切に追従することになる。
【0014】
また、上記停電時発電出力制御において、第1発電装置の設定発電出力を定格発電出力に設定するのではなく50%程度の部分発電出力に設定するので、消費電力が比較的小さい期間でも、第1発電装置の実際の発電出力の増加を適切に抑制して、連系発電装置の発電出力を適切な範囲に維持することができる。更に、第1発電装置の実際の発電出力は常に部分発電出力以上に維持されることになって、当該第1発電装置の実際の発電出力において低下側の調整幅が常に確保されていることになるので、特定電力負荷の遮断に伴う急激且つ大幅な消費電力の低下が発生した場合でも、第1発電装置の実際の発電出力を急激且つ大幅に低下させることができ、結果、複数の発電装置の発電出力を特定電力負荷の消費電力の変動に対して適切に追従させることができる。
【0015】
更に、特定電力負荷の消費電力が第1発電装置の部分発電出力に達するまでの比較的消費電力が少ない期間、及び、第2発電装置の発電出力が当該第2発電装置の定格発電出力に達しているときの比較的消費電力が多い期間は、第2発電装置の発電出力が0又は定格発電出力に固定されることから、第1発電装置の発電出力が発電電圧制御により調整されることになる。
尚、第2発電装置の発電出力が0となる期間でも、第2発電装置の起動は完了しており、特定電力負荷から解列状態とされて発電を停止したアイドリング状態となっている。
【0016】
本発明に係る非常用発電システムの第4特徴構成は、上記第1乃至第3特徴構成の何れかに加えて、
前記第1発電装置の前記設定発電出力に対する実際の発電出力の差に応じた発電出力差信号を出力する差信号出力手段を備え、
前記発電出力制御手段が、前記停電時発電出力制御において、前記差信号出力手段から出力された発電出力差信号が一定になるように前記第2発電装置の発電出力を制御する点にある。
【0017】
上記第4特徴構成によれば、上記発電出力差信号が、上記第1発電装置の設定発電出力に対する実際の発電出力の差に応じた信号となることから、上記発電出力制御手段による停電時発電出力制御において、その発電出力差信号から第1発電装置の設定発電出力に対する実際の発電出力の過不足を認識し、その過不足分が無くなるように、第2発電装置の発電出力を決定し制御することができる。
【0018】
本発明に係る非常用発電システムの第5特徴構成は、上記第4特徴構成に加えて、
前記発電出力差信号を設定下限値以上に制限するリミッタを備えた点にある。
【0019】
上記第5特徴構成によれば、上記発電出力制御手段に入力される発電出力差信号は、例えば急激且つ大幅な消費電力の低下を伴う負荷遮断が発生して第1発電装置の実際の発電出力が急激且つ大幅に低下されて発電出力差信号が大幅に低下する場合でも、その発電出力差信号は上記リミッタにより常に設定下限値以上に制限されることになる。よって、上記発電出力制御手段による停電時発電出力制御において、入力される発電出力差信号が、第2発電装置の発電出力の制御可能範囲を下回って逸脱することを回避し、第2発電装置の発電停止等を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る非常用発電システムの実施形態について図面に基づいて説明する。
図1に示す非常用発電システムは、商用電力系統1から受電した受電電力を消費する電力負荷Aを有する事業所などの施設に設けられて、当該商用電力系統1からの受電が停止する停電が発生したときに、電力負荷Aのうちの特定電力負荷8に発電装置Bで発電した発電電力を供給するシステムとして構成されている。
尚、商用電力系統1から受電した受電電力は、電力線2に供給され、当該電力線2に接続された特定電力負荷8を除く一般電力負荷4に供給される。また、電力線2に供給された受電電力は後述する切替器5を介して電力線6に供給され、当該電力線6に接続された特定電力負荷8に供給される。
【0022】
かかる非常用発電システムには、下記に説明する複数の発電装置Bが設けられている。
上記複数の発電装置Bは、商用電力系統1の受電電力と同じ基準電圧(例えば200V)及び基準周波数(例えば60Hz)の発電電力を電力負荷Aに供給可能なものとして構成されている。更に、本実施形態の非常用発電システムでは、これら複数の発電装置Bとして、自立起動可能な第1発電装置としての自立発電装置20と、外部から供給された電力を利用して起動可能な第2発電装置としての連系発電装置30とが設けられている。
【0023】
尚、本実施形態の非常用発電システムでは、特定電力負荷8の最大電力消費量等に合わせて、発電装置Bの台数が決定されている。
具体的に、2台の自立発電装置20と、複数の連系発電装置30としての4台の連系発電装置30とを、夫々並設している。
尚、各発電装置Bの台数は適宜変更可能である。
【0024】
上記発電装置Bは、同期発電機21,31をエンジン22,32で駆動する形態で発電を行う一般的な発電装置として構成されており、同期発電機21,31の発電電力を基準電圧及び基準周波数に変換する電力変換部25,35と、エンジン22,32の回転数を所望の設定回転数に設定する形態でエンジン22,32の出力を制御する制御部26,36とが設けられている。
また、電力変換部25,35は、同期発電機21,31の出力端の交流電圧を直流電圧に変換するコンバータ25b,35bと、コンバータ25b,35bから出力される直流電圧を交流電圧に変換して出力するインバータ25a,35aとを備える。尚、コンバータ25b,35b、インバータ25a,35aは、何れも双方向に電圧変換可能な構成とする。
更に、自立発電装置20の制御部26は、電力変換部25から出力される出力電圧が基準電圧に維持されるように発電出力を調整する発電電圧制御を実行するものとして構成されている。
【0025】
エンジン22,32には、制御部26,36からの指令によりエンジン22,32を起動させるためのセルモータ23,33が付設されている。
そして、自立発電装置20は、外部からの電力供給が無い状態でも、内蔵するバッテリー28に予め蓄えた電力をセルモータ23に供給して当該セルモータ23を作動させる形態で自立起動可能に構成されている。尚、このバッテリー28には、図示は省略するが、電力出力側から取り込んだ電力を予め蓄電するように構成されている。
一方、連系発電装置30は、電力変換部35の直流線から直流電力を取り込む電源回路34が設けられており、当該電源回路34で取り込んだ電力をセルモータ33に供給して当該セルモータ33を作動させる形態で起動可能に構成されている。
【0026】
非常用発電システムには、更に、商用電力系統1から電力線2が受電する受電電力を計測する電力計測器12の計測結果を参照することで、商用電力系統1からの受電が停止する停電を検出する停電検出手段Eに加え、この停電検出手段Eにより停電が検出された停電時に、一般電力負荷4を複数の発電装置Bから解列させて、複数の発電装置Bの発電電力を特定電力負荷8のみに供給する状態とする停電時解列手段Dが設けられている。
更に、この停電検出手段Eにより停電が検出された停電時に、複数の発電装置Bを起動させる停電時起動処理を実行した上で、複数の発電装置Bの発電出力を制御して、当該複数の発電装置Bの発電電力を特定電力負荷8に供給する発電出力制御手段Cを備える。尚、これら停電検出手段E、停電時解列手段D、発電出力制御手段Cは、コンピュータ等からなる制御装置50が所定のプログラムを実行することにより機能するものとして構成されている。
【0027】
この停電時解列手段Dは、下記に説明する切替器5の状態を切り替えることで、一般電力負荷4を複数の発電装置Bから解列させる。
この切替器5は、商用電力系統1及び一般電力負荷4が接続された電力線2と、特定電力負荷8が接続された電力線6との間に設けられている。具体的に、この切替器5は、トランスファ接点式(電圧ON/OFFで切り替わる)のスイッチで構成されており、この切替器5に対して、商用電力系統1及び一般電力負荷4が接続された電力線2が常開接点5aに接続され、自立発電装置20の電力出力側が常開接点5a及び常閉接点5bに接続され、特定電力負荷8が接続された電力線6が共通接点5cに接続されている。一方、連系発電装置30の電力出力側は、特定電力負荷8が接続された電力線6に接続されている。
即ち、この切替器5をON状態(共通接点5cを常開接点5aに接続する状態)とすることで、商用電力系統1と電力線2と電力線6とが接続されると共に、複数の発電装置Bの電力出力側がこれら電力線2,6に接続されるので、商用電力系統1から受電した受電電力と複数の発電装置20,30が発電した発電電力とを、全ての電力負荷Aに供給することができるようになる。
一方、この切替器5をOFF状態(共通接点5cを常閉接点5bに接続する状態)とすることで、電力線6に対する複数の発電装置Bの電力出力側の接続が維持されたまま、電力線6に対して電力線2が解列されるので、複数の発電装置20,30が発電した発電電力を特定電力負荷8のみに供給することができるようになる。
よって、上記停電時解列手段Dは、この停電検出手段Eにより停電が検出された停電時に、上記切替器5をON状態からOFF状態に切り替えることで、一般電力負荷4を複数の発電装置Bから解列させて、複数の発電装置Bの発電電力を特定電力負荷8のみに供給する状態とすることができる。
【0028】
特定電力負荷8が接続されている電力線6の切替器5の共通接点5c側には、当該電力線6が受電する受電電力を計測する電力計測器13が設けられている。尚、上記停電時解列手段Dにより、停電時に、上記切替器5がOFF状態とされ、電力線6が接続された共通接点5cが自立発電装置20の電力出力側が接続された常閉接点5bに接続されれば、上記電力計測器13は、自立発電装置20から電力線6に供給される電力、即ち自立発電装置20全体の実際の発電出力P2を計測し、当該発電出力に応じた信号を出力することになる。
電力線2の受電電力を計測する電力計測器12、並びに、停電時における自立発電装置20の発電出力を計測する電力計測器13は、インバータのフルスケールである0〜160kWの範囲内の受電電力に応じて4mA〜20mAの範囲内のアナログ信号S1,S2を出力するように構成されている。
具体的に、電力計測器12が出力するアナログ信号S1、及び、電力計測器13が出力するアナログ信号S2は、下記の式(1)及び(2)で求められる大きさとなるように設定されている。
【0029】
S1=4(mA)+0.1(mA/kW)×P1・・・(1)
S2=4(mA)+0.1(mA/kW)×P2・・・(2)
P1:正常時での商用電力系統1からの受電電力(kW)
P2:停電時での自立発電装置20全体の実際の発電出力(kW)
【0030】
また、停電時における自立発電装置20全体の実際の発電出力P2を計測する電力計測器13が出力するアナログ信号S2は、減算器15に入力され、アナログ信号発生器14が出力する所定のアナログ信号S3が減算される。
また、このアナログ信号発生器14は、発電出力制御手段Cから自立発電装置20全体の設定発電出力P2aが入力され、当該設定発電出力P2aに応じた4mA〜20mAの範囲内のアナログ信号S3を出力するように構成されている。
即ち、この減算器15から出力されるアナログ信号S4は、自立発電装置20全体の設定発電出力P2aに対する実際の発電出力P2の差に応じた値をとるようになり、実際の発電出力P2が設定発電出力P2aに一致する場合には、一定の値をとるようになる。
即ち、この減算器15は、自立発電装置20全体の設定発電出力P2aに対する実際の発電出力P2の差に応じたアナログ信号S4を発電出力差信号として出力する差信号出力手段Fとして機能することになる。
具体的に、このアナログ信号発生器14が出力するアナログ信号S3、及び減算器15から出力されるアナログ信号S4の大きさは、下記の式(3)及び(4)で求められる大きさとなる。
【0031】
S3=4(mA)+0.1(mA/kW)×(P2a−1.6(kW))・・・(3)
S4=S2−(S3−4(mA))
=4.16(mA)+0.1(mA/kW)×(P2−P2a)・・・(4)
P2a:自立発電装置20全体の設定発電出力(kW)
【0032】
電力計測器12が出力する電力線2の受電電力に応じた値をとるアナログ信号S1と、減算器15が出力する自立発電装置20全体の設定発電出力P2aに対する実際の発電出力P2の差に応じた値をとるアナログ信号S4とは、切替器16により択一的に切り替えられて、連系発電装置30に入力される。
具体的に、この切替器16は、トランスファ接点式(電圧ON/OFFで切り替わる)のスイッチで構成されている。この切替器16において、常開接点16aにはアナログ信号S1が入力され、一方、常閉接点16bにはアナログ信号S4が入力され、更に、共通接点16cから出力されたアナログ信号S1,S2の何れか一方が連系発電装置30の制御部36に入力される。
【0033】
また、切替器16は、停電検出手段Eにより停電が検出された停電時に、発電出力制御手段CによりON状態からOFF状態に切り替えられる。
即ち、商用電力系統1からの受電が正常に行われている正常時には、切替器16がON状態(共通接点16cを常開接点16aに接続する状態)とされて、電力線2の受電電力に応じた値をとるアナログ信号S1が連系発電装置30の制御部36に入力され、一方、商用電力系統1からの受電が停止する停電時には、切替器16がOFF状態(共通接点16cを常閉接点16bに接続する状態)とされて、自立発電装置20全体の設定発電出力P2aに対する実際の発電出力P2の差に応じた値をとるアナログ信号S4が連系発電装置30の制御部36に入力されることになる。
【0034】
そして、連系発電装置30の制御部36は、入力されるアナログ信号S1,S4が一定値の4.16mAに維持されるように、エンジン32の回転数を設定することにより、連系発電装置30の発電出力が制御される。
よって、正常時には、電力計測器12が出力するアナログ信号S1が一定値の4.16mAに維持され、言い換えれば電力線2の受電電力がこの一定値に対応する1.6kWに維持されるように、連系発電装置30全体の発電出力P3が制御されることになる。
一方、停電時には、減算器15が出力するアナログ信号S4が一定値の4.16mAに維持され、言い換えれば自立発電装置20全体の実際の発電出力P2が設定発電出力P2aに一致して維持されるように、連系発電装置30全体の発電出力P3が制御されることになる。
このように、上記発電出力制御手段Cが、停電時において、アナログ信号発生器14に対して、自立発電装置20全体の設定発電出力P2aを入力することで、自立発電装置20全体の実際の発電出力P2が所定の設定発電出力P2aとなるように連系発電装置30全体の発電出力P3を制御することを、停電時発電出力制御と呼ぶ。
尚、この自立発電装置20全体の設定発電出力P2aは、自立発電装置20の定格発電出力よりも小さい所定の部分発電出力に設定されて、自立発電装置20の発電出力の上下調整幅が確保されている。
【0035】
また、このような停電時発電出力制御では、停電時において、例えば急激且つ大幅な消費電力Qの低下を伴う負荷遮断が発生して自立発電装置20全体の実際の発電出力P2が急激且つ大幅に低下された場合、自立発電装置20全体の設定発電出力P2aに対する実際の発電出力P2の差が急激且つ大幅に低下することで、減算器15が出力するアナログ信号S4が設定下限値である4mAを下回って低下することがある。そして、このアナログ信号S4をそのまま連系発電装置30の制御部36に入力すると、当該制御部36は、特定電力負荷8が全て解列したと誤認識し、結果、エンジン32の異常停止を招くことが懸念される。
【0036】
更に、切替器16の共通接点16c側には、連系発電装置30の制御部36に入力されるアナログ信号S1,S4を設定下限値(例えば4mA)以上に制限するリミッタ17が設けられている。即ち、このリミッタ17により、連系発電装置30の制御部36に入力されるアナログ信号S1,S4は、常に設定下限値以上に維持される。
よって、停電時において、減算器15が出力するアナログ信号S4が設定下限値を下回って低下した場合でも、このリミッタ17によって、連系発電装置30の制御部36に入力されるアナログ信号S4'は、設定下限値に維持されることになるので、制御部36は、その入力された4mAのアナログ信号S4'を一定値の4.16mAに維持する程度に、エンジン32の回転数を比較的小規模に低下させて発電出力の低下幅を制限することになるので、当該エンジン32の異常停止を回避することができる。
尚、このように、急激且つ大幅な消費電力Qの低下が発生して、自立発電装置20全体の実際の発電出力P2を急激且つ大幅に低下させたときに、連系発電装置30全体の発電出力P3の低下を制限した場合には、連系発電装置30から電力線6を介して自立発電装置20に向けて電流が逆流することが懸念される。そこで、自立発電装置20の発電電力の出力側には、かかる電流の逆流を防止する保護装置29が設けられている。
【0037】
以下、停電検出手段Eにより停電が検出された停電時に各手段により実行される処理フローの詳細について、
図2に示すグラフ図も参照して説明する。
尚、
図2に示すグラフ図には、停電時における特定電力負荷8の消費電力Qの推移に合わせて出力される自立発電装置20及び連系発電装置30の夫々の発電出力の推移が示されている。
【0038】
先ず、
図2の時間t0に示すタイミングで停電検出手段Eにより停電が検出されると、停電時解列手段Dにより、切替器5がON状態からOFF状態に切り替えられて、一般電力負荷4が複数の発電装置Bから解列された状態となる。
その後、発電出力制御手段Cにより、
図2の時間t0〜時間t1に示すように各発電装置Bに対して電力負荷が投入されていない無負荷の状態で、複数の発電装置Bを起動させる停電時起動処理が実行される。
この停電時起動処理では、先ず、自立発電装置20を自立起動させた後に、その自立発電装置20の発電電力を、電力線6を介して連系発電装置30に供給することで、当該自立発電装置20の発電電力を利用して連系発電装置30を起動させる。
更に、この停電時起動処理において、連系発電装置30を起動させるにあたり、4台の連系発電装置30を同時に起動させるのでは無く、その4台の連系発電装置30を順次起動させることで、自立発電装置20に対して投入される連系発電装置30の起動用の電力負荷が瞬間的に過大となることが回避されている。
【0039】
発電出力制御手段Cは、停電時において、上記停電時起動処理を実行して複数の発電装置Bを起動させた上で、停電時発電出力制御を実行する。
この停電時発電出力制御では、上述したように、アナログ信号発生器14に対して、自立発電装置20の夫々において定格発電出力(例えば70kW)の約50%に相当する部分発電出力(例えば33kW)に設定された設定発電出力P2aを入力することで、連系発電装置30の制御部36により、自立発電装置20全体の実際の発電出力P2が所定の設定発電出力P2aとなるように、連系発電装置30全体の発電出力P3が制御される。
【0040】
尚、発電装置Bに投入される特定電力負荷8の消費電力Qが、自立発電装置20全体の設定発電出力P2a(33kW)に達するまでの期間は、
図2の時間t1〜時間t2の期間に示すように、連系発電装置30は、特定電力負荷8から解列された状態となって発電を停止したアイドリング状態となり、自立発電装置20のみで特定電力負荷8の消費電力Qを賄う。即ち、自立発電装置20において、制御部26は、出力電圧を上記基準電圧に維持する形態でエンジン22の出力を制御することで、自立発電装置20全体の実際の発電出力P2が特定電力負荷8の消費電力Qに一致する。
【0041】
次に、特定電力負荷8の消費電力Qが、上記部分発電出力(33kW)を超えた場合には、自立発電装置20全体の設定発電出力P2aを部分発電出力に設定した状態で上記停電時発電出力制御が実行される。
すると、
図2の時間t2〜時間t3の期間に示すように、自立発電装置20全体の実際の発電出力P2は設定発電出力P2aに維持され、連系発電装置30全体の発電出力P3が、特定電力負荷8の消費電力Qから自立発電装置20全体の設定発電出力P2aを差し引いた分を補う形態で制御されることになる。
【0042】
更に、
図2の時間t3以降の期間に示すように、複数の連系発電装置30全体の発電出力P3が当該複数の連系発電装置30全体の定格発電出力P3a(140kW)に到達している期間は、連系発電装置30全体の発電出力P3が定格発電出力P3aを超えて増加することができないことから、自立発電装置20の制御部26が出力電圧を上記基準電圧に維持するように発電出力P2を調整するように働き、自立発電装置20全体の実際の発電出力P2が、特定電力負荷8の消費電力Qから連系発電装置30全体の定格発電出力P3aを差し引いた分を補う形態で制御されることになる。
尚、
図2の時間t4に示すように、負荷遮断等により特定電力負荷8の消費電力Qが急激且つ大幅に低下した場合にも、自立発電装置20の制御部26が出力電圧を上記基準電圧に維持するように発電出力P2を急激且つ大幅に低下させることになる。
【0043】
また、特定電力負荷8の消費電力Qが、連系発電装置30全体の発電出力P3を定格発電出力P3a以下に抑えられる状態まで低下した場合には、上述した時間t2〜時間t3の期間と同様、自立発電装置20全体の実際の発電出力P2が設定発電出力P2aに維持され、連系発電装置30全体の発電出力P3が、特定電力負荷8の消費電力Qから自立発電装置20の設定発電出力p2aを差し引いた分を補う形態で制御されることになる。
尚、本実施形態において、受電電力の範囲(0〜160kW)、電力計測器13やアナログ信号発生器14が出力するアナログ信号Sの範囲(4mA〜20mA)、連系発電装置30におけるエンジン32の回転数設定のために入力されるアナログ信号S1,S4の目標値(4.16mA)などとして挙げた各種数値については、本願発明を限定するものではなく、適宜実施状況に応じて設定可能な数値である。