特許第5907921号(P5907921)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5907921
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】暖房システム
(51)【国際特許分類】
   F24D 7/00 20060101AFI20160412BHJP
   F24D 3/18 20060101ALI20160412BHJP
   F24H 1/00 20060101ALI20160412BHJP
【FI】
   F24D7/00 F
   F24D3/18
   F24H1/00 611S
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-67650(P2013-67650)
(22)【出願日】2013年3月27日
(65)【公開番号】特開2014-190638(P2014-190638A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2015年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 宏明
(72)【発明者】
【氏名】足立 郁朗
(72)【発明者】
【氏名】近廻 聡
(72)【発明者】
【氏名】小川 純一
【審査官】 黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−29635(JP,A)
【文献】 特開2012−100395(JP,A)
【文献】 特開2012−163238(JP,A)
【文献】 特開2014−119181(JP,A)
【文献】 特開2014−163641(JP,A)
【文献】 特開2005−287210(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24D 7/00
F24D 3/00 − 3/18
F24H 1/00
F24H 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光発電装置及び商用電力供給ラインと電気負荷とに接続され、前記太陽光発電装置の発電量が前記電気負荷の消費電力を上回るときは、余剰な前記太陽光発電装置の発電電力を売電し、前記太陽光発電装置の発電量が前記電気負荷の消費電力を下回るときには、不足する電力を買電するパワーコンディショナーからの供給電力を使用する暖房システムであって、
熱媒体が封入された熱媒回路と、
前記熱媒回路内の熱媒体を循環させる熱媒循環部と、
前記熱媒回路の途中に接続されて、熱媒体からの放熱により暖房を行う暖房端末と、
前記パワーコンディショナーからの供給電力により作動する電気負荷であって、前記熱媒回路の途中に接続されて、前記熱媒回路を流通する熱媒体を加熱するヒートポンプと、
前記熱媒回路の途中に接続されて、前記熱媒回路を流通する熱媒体をバーナの燃焼熱により加熱する燃焼熱源機と、
前記暖房端末の暖房運転を実行する暖房実行日における日の出時刻及び日の入時刻を、予め認識する日出没時刻認識部と、
前記暖房実行日の日の出時刻から日の入り時刻までの間に設定された日中時間帯における前記暖房端末の暖房運転を、所定の燃焼暖房優先条件が成立しているときには、前記燃焼熱源機による加熱によって行う暖房制御部と
を備えたことを特徴とする暖房システム。
【請求項2】
請求項1に記載の暖房システムにおいて、
前記売電の価格と前記バーナの燃料価格に関する情報を取得するコスト情報取得部と、
前記暖房端末の暖房運転を、前記ヒートポンプによる加熱により行って、所定加熱量を得るための消費電力であるヒートポンプ電力指標値を算出し、該ヒートポンプ電力指標値分の電力を売電したときの収益金であるヒートポンプ売電指標値を算出するヒートポンプ売電指標値算出部と、
前記暖房端末の暖房運転を、前記燃焼熱源機による加熱により行って前記所定加熱量を得るためのコストである燃焼暖房コスト指標値を算出する燃焼暖房コスト指標値算出部とを備え、
前記燃焼暖房優先条件として、前記ヒートポンプ売電指標値が前記燃焼暖房コスト指標値を上回ることが設定されていることを特徴とする暖房システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された暖房システムにおいて、
前記パワーコンディショナーから出力される電力により充電されると共に、前記パワーコンディショナーを介して前記電気負荷に電力を供給する蓄電部と、
前記日中時間帯よりも前記商用電力の買電コストが低い時間帯に、前記商用電力供給ラインから供給される商用電力により前記蓄電部を充電する充電制御部とを備え、
前記暖房制御部は、前記暖房実行日の前記日中時間帯における前記太陽光発電装置の発電電力が所定レベル以下であるときに、前記蓄電部からの出力電力により、前記ヒートポンプを作動させて前記暖房端末による暖房運転を行なうことを特徴とする暖房システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電による電力と商用電力とが入力されるパワーコンディショナーから供給される電力を使用して、暖房端末に供給する熱媒体を加熱する暖房システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、床暖房パネルに循環供給する温水を加熱するヒートポンプを、太陽光発電により生成される電力を使用して作動させる暖房システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載された暖房システムにおいては、太陽光発電により生成された電力でヒートポンプを作動させることにより、暖房運転に要するコストの低減を図っている。また、太陽光電力が得られない夜間等においては、商用電力によりヒートポンプを作動させて、暖房運転を行なうようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−10198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
太陽光発電装置が備えられた家屋においては、太陽光発電装置による発電電力が家屋の総消費電力を上回っているときに、上回った余剰電力を電力業者に売電することができる。そして、売電単価が商用電力の買電単価よりも高い場合には、使用者としては、太陽光発電装置が発電を行っているときには、家屋の消費電力を抑えて売電する電力量を増やしたいと考える。
【0006】
また、太陽光発電装置が備えられた家屋が所在する地域において、日中の電力不足が生じているときに、使用者が、家屋の消費電力を抑えて売電する電力量を増やすことにより、地域の電力不足の解消に貢献したいと考える場合もある。
【0007】
本発明はかかる背景に鑑みてなされたものであり、日中の暖房運転に要する電力を低減して、太陽光発電装置による発電電力の売電量を増加することができる暖房システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するためになされたものであり、
太陽光発電装置及び商用電力供給ラインと電気負荷とに接続され、前記太陽光発電装置の発電量が前記電気負荷の消費電力を上回るときは、余剰な前記太陽光発電装置の発電電力を売電し、前記太陽光発電装置の発電量が前記電気負荷の消費電力を下回るときには、不足する電力を買電するパワーコンディショナーからの供給電力を使用する暖房システムであって、
熱媒体が封入された熱媒回路と、
前記熱媒回路内の熱媒体を循環させる熱媒循環部と、
前記熱媒回路の途中に接続されて、熱媒体からの放熱により暖房を行う暖房端末と、
前記パワーコンディショナーからの供給電力により作動する電気負荷であって、前記熱媒回路の途中に接続されて、前記熱媒回路を流通する熱媒体を加熱するヒートポンプと、
前記熱媒回路の途中に接続されて、前記熱媒回路を流通する熱媒体をバーナの燃焼熱により加熱する燃焼熱源機と、
前記暖房端末の暖房運転を実行する暖房実行日における日の出時刻及び日の入時刻を、予め認識する日出没時刻認識部と、
前記暖房実行日の日の出時刻から日の入り時刻までの間に設定された日中時間帯における前記暖房端末の暖房運転を、所定の燃焼暖房優先条件が成立しているときには、前記燃焼熱源機による加熱によって行う暖房制御部とを備えたことを特徴とする。
【0009】
かかる本発明によれば、前記熱媒回路に封入された熱媒体を加熱するための構成として、前記ヒートポンプの他に前記燃焼熱源機が備えられている。そして、前記暖房制御部は、前記燃焼暖房優先条件が成立しているときには、前記燃焼熱源機による加熱によって、前記日中時間帯での前記暖房端末の暖房運転を行なう。このように、前記日中時間帯での前記暖房端末の暖房運転を、前記燃焼熱源機による加熱により行うことによって、暖房運転時の前記ヒートポンプの作動を停止することができる。これにより、前記太陽光発電装置の発電電力が前記ヒートポンプにより消費されることが回避されるため、前記太陽光発電装置の発電電力の売電量を増加させることができる。
【0010】
また、本発明において、
前記売電の価格と前記バーナの燃料価格に関する情報を取得するコスト情報取得部と、
前記暖房端末の暖房運転を、前記ヒートポンプによる加熱により行って、所定加熱量を得るための消費電力であるヒートポンプ電力指標値を算出し、該ヒートポンプ電力指標値分の電力を売電したときの収益金であるヒートポンプ売電指標値を算出するヒートポンプ売電指標値算出部と、
前記暖房端末の暖房運転を、前記燃焼熱源機による加熱により行って前記所定加熱量を得るためのコストである燃焼暖房コスト指標値を算出する燃焼暖房コスト指標値算出部とを備え、
前記燃焼暖房優先条件として、前記ヒートポンプ売電指標値が前記燃焼暖房コスト指標値を上回ることが設定されていることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、前記ヒートポンプ売電指標値算出部により、前記暖房端末の暖房運転を前記ヒートポンプによる加熱により行って、所定加熱量を得るための消費電力である前記ヒートポンプ電力指標値が算出される。そして、前記ヒートポンプ売電指標値算出部により、前記ヒートポンプ暖房指標値分の電力を売電したときの収益金である暖房売電指標値が算出される。また、前記燃焼暖房指標値算出部により、前記暖房端末の暖房運転を前記燃焼熱源機による加熱により前記暖房端末の暖房運転を行なう場合のコストである前記燃焼暖房コスト指標値が算出される。
【0012】
そして、前記暖房制御部は、前記暖房実行日の前記日中時間帯における前記暖房端末の暖房運転を、前記ヒートポンプ売電指標値が前記燃焼暖房コスト指標値を上回る場合には、前記燃焼熱源機による加熱によって行う。これにより、前記暖房実行日の日中時間帯において前記暖房端末の暖房運転を行なう場合に、前記ヒートポンプ売電指標値と前記燃焼暖房コスト指標値の差に応じた収益金が得られるため、前記暖房端末の暖房運転のコストを低減して、前記太陽光発電装置による発電電力の売電量を増加することができる。
【0013】
また、本発明において、
前記パワーコンディショナーから出力される電力により充電されると共に、前記パワーコンディショナーを介して前記電気負荷に電力を供給する蓄電部と、
前記日中時間帯よりも前記商用電力の買電コストが低い時間帯に、前記商用電力供給ラインから供給される商用電力により前記蓄電部を充電する充電制御部とを備え、
前記暖房制御部は、前記日中時間帯における前記太陽光発電装置の発電電力が所定レベル以下であるときに、前記蓄電部からの出力電力により、前記ヒートポンプを作動させて前記暖房端末による暖房運転を行なうことが好ましい。
【0014】
この構成によれば、前記商用電力の買電コストが低い時間帯に前記蓄電部を充電しておくことができる。そして、雨天等により前記太陽光発電装置の発電電力が低下して、売電量が少ない状況となっているときに、前記蓄電部からの電力を用いて買電量を減少することにより、前記暖房端末の暖房運転のコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】貯湯式給湯装置の構成図。
図2】日付と日の出時刻及び日の入り時刻との対応マップの説明図。
図3】暖房運転モードの設定処理のフローチャート。
図4】日中時間帯と深夜電力時間帯の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態について、図1図4を参照して説明する。図1を参照して、本実施形態の暖房システム1は、ヒートポンプユニット50、熱源ユニット80、床暖房機200(本発明の暖房端末に相当する)、温風暖房機210(本発明の暖房端末に相当する)、及び暖房システム1の全体的な作動を制御するコントローラ180を備えて構成されている。
【0017】
暖房システム1は、配電盤153を介して、家電製品170等の他の電気負荷と共にパワーコンディショナー151と接続されており、パワーコンディショナー151からの供給電力を使用して作動する。
【0018】
パワーコンディショナー151は、太陽光発電装置150に接続されると共に、電力メータ152を介して商用電力供給ライン160に接続されている。パワーコンディショナー151は、太陽光発電装置150から出力される直流電力を、商用電力と同じ仕様の交流電力(例えば、単相3線式交流100V/200V)に変換して、暖房システム1及び家電製品170等の電気負荷に供給する。
【0019】
パワーコンディショナー151は、電力メータ152と接続され、太陽光発電装置150による発電量が、電気負荷の総消費電力を上回る場合に、余剰電力を商用電力供給ライン160に供給する売電を行う。また、パワーコンディショナー151は、太陽光発電装置150による発電量が、電気負荷の総消費電力を下回る場合には、不足電力を商用電力供給ライン160から受給する買電を行う。
【0020】
なお、ここでの売電・買電とは、必ずしも金銭的な収支のみを意味するものではなく、パワーコンディショナー151から商用電力供給ライン160側に電力を供給することを売電と称している。また、商用電力供給ライン160からパワーコンディショナー151側に電力を供給することを買電と称している。
【0021】
パワーコンディショナー151からコントローラ180には、太陽光発電装置150の発電電力PVの測定データが出力される。また、電力メータ152からコントローラ180には、商用電力供給ライン160からパワーコンディショナー151への電力供給量Cd(負のときは売電状態を示し、正のときは買電状態を示す)の測定データが出力される。
【0022】
また、パワーコンディショナー151には蓄電池155(本発明の蓄電部に相当する)が接続されている。パワーコンディショナー151は、日中に比べて電気料金が安くなる深夜時間帯に、商用電力により蓄電池155を充電しておき、日中に蓄電池155の放電電力を商用電力と同じ仕様の交流電力に変換して暖房システム1及び家電製品170等の電気負荷に供給する。
【0023】
なお、このように、パワーコンディショナー151が深夜時間帯に蓄電池155を充電する構成は、本発明の充電制御部に相当する。蓄電池155の放電電力を電気負荷に供給することによって、日中、太陽光発電装置150により生成される電力のうち、電気負荷により消費される電力を低減することができるため、売電量を増やすことができる。
【0024】
なお、図1では、暖房システム1のコントローラとして一つのコントローラ180を示したが、熱源ユニット80のコントローラと、ヒートポンプユニット50のコントローラを個別に備え、各コントローラ間の通信によって、暖房システム1の全体的な作動を制御する構成としてもよい。
【0025】
熱源ユニット80は、湯水(本発明の熱媒体に相当する)が封入された暖房循環路40(本発明の熱媒回路に相当する)の途中に接続された暖房熱交換器77と、暖房熱交換器77を加熱する暖房バーナ76とを有する燃焼熱源機75を備えている。暖房バーナ76には、図示しないガス供給管から燃料ガスが供給されると共に、図示しない燃焼ファンにより燃焼用空気が供給される。
【0026】
コントローラ180は、暖房バーナ76に供給する燃焼ガスと燃焼用空気の流量を調節して、暖房バーナ76の燃焼量を制御する。暖房バーナ76の燃焼熱によって、暖房熱交換器77を流通する温水が加熱される。暖房循環路40は、床暖房機200及び温風暖房機210と接続されて温水による熱を供給する。
【0027】
暖房循環路40には、シスターン110と、暖房循環ポンプ111(本発明の熱媒循環部に相当する)とが設けられており、暖房循環路40は、暖房循環ポンプ111と暖房熱交換器77の間の箇所で、低温暖房路112と高温暖房路130に分岐している。
【0028】
高温暖房路130には温風暖房機210が接続され、低温暖房路112には床暖房機200が接続されている。高温暖房路130と低温暖房路112は、温風暖房機210及び床暖房機200の下流側で合流している。また、高温暖房路130と温風暖房機210の接続部と暖房熱交換器77の間の箇所で高温暖房路130から分岐してシスターン110に連通する暖房バイパス路113が設けられており、暖房バイパス路113には、暖房バイパスと113の開度を変更する暖房バイパス弁114が設けられている。
【0029】
暖房循環路40の暖房循環ポンプ111の出口付近には、暖房循環ポンプ111から送出される温水の温度を検出する戻り温水温度センサ115が設けられている。また、暖房循環路40の暖房熱交換器77の出口付近には、暖房熱交換器77から送出される温水の温度を検出する往き温水温度センサ116が設けられている。
【0030】
低温暖房路112は、熱動弁120を介して床暖房機200に接続されており、熱動弁120の開閉によって、低温暖房路112から床暖房機200への温水の供給と停止が切換えられる。また、高温暖房路130から温風暖房機210への温水の供給と停止は、温風暖房機210に備えられた熱動弁211の開閉により行われる。床暖房機200と温風暖房機210は、暖房循環路40を流通する温水の放熱により暖房を行う。
【0031】
床暖房機200を操作するための床暖房リモコン201には、床暖房機200が設置された室内の温度を検出する室温センサ202が接続されている。床暖房リモコン201とコントローラ180は通信可能に接続され、床暖房リモコン201により設定された目標暖房温度のデータと、室温センサ202による検出温度のデータがコントローラ180に送信される。
【0032】
さらに、暖房循環路40には、暖房循環路40からヒートポンプユニット50に戻る温水の温度を検出する暖房ヒートポンプ戻り温度センサ45と、ヒートポンプユニット50により加熱されて暖房循環路40に出湯される温水の温度を検出する暖房ヒートポンプ往き温度センサ46と、ヒートポンプユニット50をバイパスするヒートポンプバイパス路42の下流側での暖房循環路40との接続箇所の直下流部に設けられて、暖房循環路40からの温水とヒートポンプバイパス路42からの温水とが混合された温水の温度を検出する暖房混合温度センサ47とが設けられている。また、暖房循環路40側に流通する温水とヒートポンプバイパス路42側に流通する湯水の割合を調節するための暖房側混合弁48が設けられている。
【0033】
熱源ユニット80に備えられた各センサの検出信号は、コントローラ180に入力される。また、コントローラ180から出力される制御信号によって、燃焼熱源機75、暖房循環ポンプ111、暖房バイパス弁114、熱動弁120、及び暖房側混合弁48の作動が制御される。
【0034】
次に、ヒートポンプユニット50は、暖房循環路40内を流通する温水を加熱するためのものである。ヒートポンプユニット50は、ヒートポンプ循環路52により接続された蒸発器53、圧縮機54、ヒートポンプ熱交換器55(凝縮機)、及び膨張弁56により構成されたヒートポンプ51を有している。
【0035】
蒸発器53は、ファン60の回転により供給される空気とヒートポンプ循環路52内を流通する熱媒体(ハイドロフルオロカーボン(HFC)等の代替フロン、二酸化炭素等)との間で熱交換を行う。圧縮機54は、蒸発器53から吐出された熱媒体を圧縮して高圧・高温とし、ヒートポンプ熱交換器55に送出する。膨張弁56は、圧縮機54で加圧された熱媒体の圧力を開放する。
【0036】
除霜弁61は膨張弁56をバイパスして設けられており、圧縮機54から送出される熱媒体により蒸発器53を除霜する。ヒートポンプ循環路52の膨張弁56の上流側及び下流側、圧縮機54の上流側及び下流側には、ヒートポンプ循環路52内を流通する熱媒体の温度を検出する熱媒体温度センサ62,63,64,65が、それぞれ設けられている。また、蒸発器53には、蒸発器53に吸入される空気の温度を検出する周囲温度センサ67が設けられている。
【0037】
ヒートポンプ熱交換器55は暖房循環路40と接続され、圧縮機54により高圧・高温とされた熱媒体と、暖房循環路40内を流通する温水との熱交換により、暖房循環路40内を流通する温水を加熱する。
【0038】
ヒートポンプユニット50に設けられた各センサの検出信号は、コントローラ180に入力される。また、コントローラ180から出力される制御信号によって、圧縮機54、タンク循環ポンプ66、ファン60、及びヒートポンプ混合弁59の作動が制御される。
【0039】
次に、コントローラ180は、図示しないCPU、メモリ、各種インターフェース回路等により構成された電子回路ユニットであり、メモリに保持された暖房システム1の制御用プログラムをCPUで実行することによって、日出没時刻認識部181、コスト情報取得部182、ヒートポンプ売電指標値算出部183、燃焼暖房コスト指標値算出部184、及び暖房制御部185として機能する。また、コントローラ180は、後述する対応マップ187のデータを保持したメモリ186と、計時部188を備えている。
【0040】
コントローラ180は、通信ケーブルによりリモコン140と接続されている。リモコン140は、暖房システム1の運転状況や運転条件の設定等を表示するための表示器141と、各種スイッチが設けられたスイッチ部142とを備えている。暖房システム1の使用者は、リモコン140のスイッチ部142を操作することによって、床暖房機200の暖房運転と温風暖房機210の暖房運転の開始と停止の指示等を行う。
【0041】
計時部188は、図示しない発振器から出力される基準パルス信号を計数することによって、現在の日付と時刻を算出する。なお、計時部188をリモコン140に設けて、リモコン140との通信により、現在の日付と時刻のデータをコントローラ180側で受信するようにしてもよい。
【0042】
日出没時刻認識部181は、計時部188により算出された現在の日付を、対応マップ187に適用して、床暖房機200による暖房運転を行なう日(暖房実行日)の日の出時刻SRT及び日の入時刻SSTを取得する。
【0043】
対応マップ187は、図2(a)に示したように、日付と日の出時刻SRT及び日の入時刻SSTとを対応付けたマップとなっている。ここで、対応マップ187は、日本全国の平均的な日の出時刻及び日の入時刻の過去のデータに基づいて作成されたものである。
【0044】
なお、リモコン140やコントローラ180に設けたDIPスイッチ等により、暖房システム1の設置場所(設置地域)を入力できるようにし、対応マップ187により得られた日の出時刻SRT及び日の入時刻SSTを、暖房システム1の設置場所に応じて補正するようにしてもよい。
【0045】
また、対応マップ187を、日付単位ではなく、図2(b)に示したように月単位で日の出時刻SRT及び日の入時刻SSTを対応付けたものとしてもよい。この場合、日出没時刻認識部181は、暖房実行日の日付が属する月に対応した日の出時刻SRT及び日の入時刻SSTを、対応マップ187から取得する。
【0046】
また、メモリ186には、以下の表1,表2に示したデータが保持されている。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
表1は、燃料ガスの種類(LP,13A)毎の単位体積あたりのガス発熱量(kcal/m3)及び単位体積あたりのガス単価(円/m3,燃料価格)と、燃焼熱源機75の暖房効率(%)の例を示したものである。表2は、燃料ガスの種類(LP,13A)毎に設定された売電単価(円/kWh)と、買電単価(円/kWh)及びヒートポンプ51の暖房効率(%)の例を示したものである。
【0050】
ヒートポンプ売電指標値算出部183は、ヒートポンプ51を作動させて床暖房機200による暖房運転を行なう場合に、1kWh(本発明の所定加熱量に相当する)の加熱量を得るために必要な電力であるヒートポンプ電力指標値HPcsを、以下の式(1)により算出する。なお、所定加熱量を1kWh以外の量に設定してもよい。
【0051】
HPcs=1/1.93=0.52(1/kWh) ・・・・・(1)
但し、HPcs:ヒートポンプ電力指標値(ヒートポンプ51を作動させて1kWhの発熱を得るために必要な電力)、1.93:ヒートポンプ51の暖房効率(%)。
【0052】
そして、ヒートポンプ売電指標値算出部183は、以下の式(2)(燃料ガスとしてLPを使用する場合)又は式(3)(燃料ガスとして13Aを使用する場合)により、ヒートポンプ電力指標値HPcs分の電力の売電量であるヒートポンプ売電指標値HPspを算出する。
【0053】
HPsp=HPcs×30=0.52×30=15.6(円) ・・・・・(2)
但し、HPsp:ヒートポンプ売電指標値、HPcs:ヒートポンプ電力指標値、30(kWh/円):使用される燃料ガスがLPである場合の売電単価。
【0054】
HPsp=HPcs×42=0.52×42=21.8(円) ・・・・・(3)
但し、HPsp:ヒートポンプ売電指標値、HPcs:ヒートポンプ電力指標値、42(kWh/円):使用される燃料ガスが13Aである場合の売電単価。
【0055】
また、燃焼暖房コスト指標値算出部184は、燃焼熱源機75を作動させて床暖房機200による暖房運転を実行する場合に、1kWh分の加熱量を得るために必要な燃料ガスの料金である燃焼暖房コスト指標値Gcを、以下の式(4)(燃料ガスとしてLPガスを使用する場合)、又は式(5)(燃料ガスとして13Aを使用する場合)により算出する。
【0056】
Gc=1/24200×860×500×0.573=31.0(円)
・・・・・(4)
但し、Gc:燃焼暖房コスト指標値、24200:単位体積あたりのLPの発熱量(kcal/m3)、860:kcalからWへの換算係数、0.573:ヒートポンプ51の暖房効率。
【0057】
Gc=1/10700×860×150/0.573=21(円)
・・・・・(5)
但し、Gc:燃焼暖房コスト指標値、10700:単位体積あたりの燃料ガスの発熱量(kcal/m3)、860:kcalからWへの換算係数、0.573:ヒートポンプ51の暖房効率。
【0058】
暖房制御部185は、床暖房機200の単独運転を行なうときは、戻り温水温度センサ115の検出温度が低温目標温度(例えば45℃)となるように、ヒートポンプ51と燃焼熱源機75による加熱量を制御する。また、暖房制御部185は、温風暖房機210の単独運転、又は温風暖房機210と床暖房機200の同時運転を行なうときには、往き温水温度センサ116の検出温度が高温目標温度(例えば70℃)となるように、ヒートポンプ51と燃焼熱源機75による加熱量を制御する。
【0059】
次に、図3に示したフローチャートに従って、床暖房機200による暖房コストを低減するために、日中時間帯WDTにおける床暖房機200による暖房運転を、ヒートポンプ51を優先的に使用するヒートポンプ優先モードと、燃焼熱源機75を優先的に使用する燃焼熱源機優先モードのいずれで行うかを決定する処理について説明する。
【0060】
図3のSTEP1〜STEP2は、日出没時刻認識部181による処理である。日出没時刻認識部181は、STEP1で、計時部188により算出される暖房実行日の日付を取得する。なお、STEP1の処理は、暖房実行日の日の出時刻よりも前(暖房実行日の前日等)に行われる。
【0061】
STEP2で、日出没時刻認識部181は、暖房実行日の日付を上述した図2(a)の対応マップに適用して、暖房実行日の日の出時刻SRTと日の入時刻SSTを認識し、暖房実行日において太陽光発電装置150による発電電力によるヒートポンプ51の作動が可能であると想定される時間帯(日中時間帯)WDTを設定する。日中時間帯WDTは、暖房実行日の日の出時刻SRTから日の入時刻SSTまでの範囲内の時間帯に設定される。
【0062】
次のSTEP3〜STEP4は、コスト情報取得部182による処理である。コスト情報取得部182は、STEP3で、メモリ186に保持された燃料ガスの種類(本実施形態では、LP又は13A)のデータを読み出して、燃焼熱源機75で使用される燃料ガスの種類を認識する。
【0063】
また、続くSTEP4で、コスト情報取得部182は、メモリ186に保持されたガス単価(STEP3で認識された種類の燃料ガスの単価)、及び売電単価のデータを読み出して、ガス単価(燃料価格)と売電単価を認識する。
【0064】
続くSTEP5〜STEP6はヒートポンプ売電指標値算出部183による処理である。ヒートポンプ売電指標値算出部183は、STEP5で、上記式(1)によりヒートポンプ電力指標値HPcsを算出する。また、STEP6で、ヒートポンプ売電指標値算出部183は、上記式(2)又は式(3)により、ヒートポンプ売電指標値HPspを算出する。
【0065】
続くSTEP7は燃焼暖房コスト指標値算出部184による処理である。燃焼暖房コスト指標値算出部184は、上記式(4)又は式(5)により、燃焼暖房コスト指標値Gcを算出する。
【0066】
次のSTEP8〜STEP9及びSTEP8から分岐したSTEP20は、暖房制御部185による処理である。STEP8で、暖房制御部185は、ヒートポンプ売電指標値HPspが燃焼暖房コスト指標値Gcよりも小さいか否かを判断する。なお、ヒートポンプ売電指標値HPspが燃焼暖房コスト指標値Gcより大きいことは、本発明の燃焼暖房優先条件に相当する。ヒートポンプ売電指標値HPspが燃焼暖房コスト指標値Gcより大きいときは、本発明の燃焼暖房優先条件の成立に相当する。
【0067】
そして、ヒートポンプ売電指標値HPspが燃焼暖房コスト指標値Gcよりも大きいときはSTEP20に分岐し、暖房制御部185は、燃焼熱源機優先モードに設定してSTEP10に進み、処理を終了する。一方、ヒートポンプ売電指標値HPspが燃焼暖房コスト指標値Gc以下であるときにはSTEP9に進む。そして、暖房制御部185は、ヒートポンプ優先モードに設定してSTEP10に進む。
【0068】
本実施形態においては、上記式(2)〜式(5)により、燃料ガスとしてLPを使用するときは、燃焼暖房コスト指標値Gc(31.0円)がヒートポンプ売電指標値HPsp(15.6円)以上になるので、STEP9に進んでヒートポンプ優先モードに設定される。また、燃料ガスとして13Aが使用されるときには、燃焼暖房コスト指標値Gc(21円)がヒートポンプ売電指標値HPsp(21.8円)よりも小さくなるので、STEP20に進んで燃焼熱源機優先モードに設定される。
【0069】
ヒートポンプ優先モードに設定されたときは、暖房制御部185は、ヒートポンプ51を作動させて床暖房機200による暖房を行ない、ヒートポンプ51による加熱が不十分であるときには、燃焼熱源機75を併用して不足する加熱量を補う。
【0070】
また、燃焼熱源機優先モードに設定されたときには、暖房制御部185は、燃焼熱源機75を作動させて床暖房機200による暖房を行なう。燃焼熱源機75を作動させて床暖房機200による暖房運転を行なうことにより、ヒートポンプ51による電力消費分だけ、太陽光発電装置150による発電電力の売電量を増やすことができる。そして、売電による収益金と燃焼熱源機の燃料費との差額分の利益を得ることができ、これにより、床暖房機200の暖房運転を行なうときのコストを下げることができる。
【0071】
暖房制御部185は、暖房実行日が雨天になった場合等に、太陽光発電装置150による発電電力が少なく、太陽光発電装置150による発電電力ではヒートポンプ51を作動させることができない場合には、蓄電池155からの放電電力を使用してヒートポンプ51を作動させる。
【0072】
蓄電池155は、上述したように日中よりも買電単価が低くなる深夜電力を使用して充電されるので、日中時間帯におけるヒートポンプ51の作動に伴う電力コストを下げることができる。
【0073】
次に、図4は、縦軸を太陽光発電装置150の発電電力(PV)に設定し、横軸を0〜24時の時間(t)に設定したものであり、日の出時刻SRTから日の入時刻SSTまでの時間帯を日中時間帯WDTに設定した例を示している。
【0074】
図4のMSTからMEDまで(例えば23時から翌日の7時まで)が深夜電力時間帯に設定されている。深夜電力時間帯における買電単価(例えば9円/kWh、蓄電効率が90%のときは充電用の買電単価は10円/kWhとなる)は、それ以外の時間帯における買電単価(例えば23円/kWh)よりも安価である。
【0075】
そこで、深夜電力時間帯に蓄電池155を充電しておき、雨天等により日中時間帯WDTにおける太陽光発電装置150の発電電力が所定レベル以下であるときに、蓄電池155からの出力電力によりヒートポンプ51を作動させることで、暖房コストを低減することができる。
【0076】
また、太陽光発電装置150による発電が期待できない日中時間帯以外においては、暖房制御部185は、ヒートポンプ51を燃焼熱源機75よりも優先的に作動させて、床暖房機200の暖房運転を実行する。
【0077】
なお、本実施形態では、本発明の蓄電部として蓄電池155を示したが、蓄電部としてコンデンサ等の他の種類の蓄電部を用いてもよい。また、蓄電部を備えていない場合にも、本発明の効果を得ることができる。
【0078】
また、本実施形態では、本発明の燃焼熱源機としてガスを燃料とする暖房バーナ76を備えた燃焼熱源機75を示したが、石油バーナ等の他の燃料を使用するバーナを備えた燃焼熱源機を用いてもよい。
【0079】
また、本実施形態では、図3のSTEP8において、燃焼暖房コスト指標値Gcがヒートポンプ売電指標値HPspよりも低いときに「燃焼暖房優先モード」に設定するようにしたが、リモコン140の操作により、使用者が強制的に「燃焼暖房優先モード」に設定することができるようにしてもよい。この場合には、例えば、暖房システム1が設置された家屋が所在する地域において、日中の電力不足が生じているときに、使用者がリモコン140を操作して「燃焼暖房優先モード」に設定することにより、太陽光発電装置150の発電電力の売電量を増加させて地域の電力不足の解消に貢献することができる。
【0080】
また、本実施形態では、日中時間帯における床暖房機200の暖房運転を、燃焼熱源機優先モードとヒートポンプ優先モードを選択して行ったが、温風暖房機210についても、同様の選択を行うことで暖房コストを低減することができる。
【0081】
また、日出没時刻認識部181は、メモリ186に保持された対応マップ187のデータに基づいて、制御対象日における日の出時刻SRT及び日の入時刻SSTを認識したが、コントローラ180に通信機能を備えて、図示しない情報サーバーとの通信により受信したデータにより、制御対象日における日の出時刻SRT及び日の入時刻SSTを認識してもよい。
【符号の説明】
【0082】
1…暖房システム、40…温水循環路、50…ヒートポンプユニット、51…ヒートポンプ、75…燃焼熱源機、80…熱源ユニット、111…暖房循環ポンプ、140…リもkン、150…太陽光発電装置、151…パワーコンディショナー、155…蓄電池、180…コントローラ、181…日出没時刻認識部、182…コスト情報取得部、183…ヒートポンプ売電指標値算出部、184…燃焼暖房指標値算出部、185…暖房制御部、186…メモリ、200…床暖房機、210…温風暖房機。
図1
図2
図3
図4