特許第5907967号(P5907967)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ブラッシュゲート・オサケユキテュアの特許一覧

<>
  • 特許5907967-歯磨きモニタリング装置 図000021
  • 特許5907967-歯磨きモニタリング装置 図000022
  • 特許5907967-歯磨きモニタリング装置 図000023
  • 特許5907967-歯磨きモニタリング装置 図000024
  • 特許5907967-歯磨きモニタリング装置 図000025
  • 特許5907967-歯磨きモニタリング装置 図000026
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5907967
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】歯磨きモニタリング装置
(51)【国際特許分類】
   A61C 17/22 20060101AFI20160412BHJP
【FI】
   A61C17/22 B
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-523649(P2013-523649)
(86)(22)【出願日】2011年8月5日
(65)【公表番号】特表2013-536018(P2013-536018A)
(43)【公表日】2013年9月19日
(86)【国際出願番号】FI2011050690
(87)【国際公開番号】WO2012020165
(87)【国際公開日】20120216
【審査請求日】2014年7月15日
(31)【優先権主張番号】20105846
(32)【優先日】2010年8月11日
(33)【優先権主張国】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】510308908
【氏名又は名称】ブラッシュゲート・オサケユキテュア
【氏名又は名称原語表記】BRUSHGATE OY
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118625
【弁理士】
【氏名又は名称】大畠 康
(74)【代理人】
【識別番号】100144200
【弁理士】
【氏名又は名称】奥西 祐之
(72)【発明者】
【氏名】ウルフ・メリヘイネ
(72)【発明者】
【氏名】オッシ・カウッピネン
(72)【発明者】
【氏名】テイヨ・ヴィルヤネン
(72)【発明者】
【氏名】ユハ−ペッカ・プールネン
【審査官】 村山 睦
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0291422(US,A1)
【文献】 特表2008−543418(JP,A)
【文献】 特開2009−240760(JP,A)
【文献】 米国特許第06536068(US,B1)
【文献】 特表2008−544362(JP,A)
【文献】 特開2008−107108(JP,A)
【文献】 特開2009−291316(JP,A)
【文献】 特開2009−285416(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯磨き中に歯ブラシ(17)と使用するための歯磨きモニタリング装置(18)であって、
ユーザー入力を得るための入力装置(21)と、
歯磨き中に信号を生成するための加速度センサ(25)と、
加速度センサ(25)からの信号を受信して処理するシグナルコンディショナ(23)と、
各歯領域(L−U)の各所定の歯表面(2、6、10)の少なくとも1つの歯表面特定参照値を保持するためのメモリ(26)と、
歯領域のブラッシング中の各歯表面(2、6、10)特定カウンタによって記録されたブラッシングサイクル数を、前記メモリ(26)に保持された対応する歯表面(2、6、10)特定参照値と比較する、コンパレータ(24)と、
出力装置(27)と、を備えており、
シグナルコンディショナ(23)は、前記歯ブラシ(17)及びモニタリング装置(18)が複数の所定の歯表面(1−12)を備える既定の又はユーザーの示された歯領域(R−U、L−U、R−D、L−D)のブラッシングに使用されている間、ブラシヘッドの長手方向(Y)において、前記歯ブラシのブラシヘッド(19)の特定の加速度に基づいてブラッシングサイクルを識別し、
前記シグナルコンディショナ(23)は、識別されたブラッシングサイクルに応じて、ブラッシングサイクルの間、地球重力場におけるモニタリング装置(18)の傾きに基づいて、識別されたブラッシングサイクルで磨かれた所定の歯表面(1−12)を識別し、対応する歯表面特定カウンタ(26)で、識別された歯表面(1−12)の識別されたブラッシングサイクルを記録するようになっており、
問題になっている歯領域(L−U)のブラッシングの間に、各歯表面(2、6、10)特定カウンタによって記録されたブラッシングサイクル数が、問題になっている歯領域(L−U)の対応参照値と、所定の精度で対応していることを、コンパレータ(24)が示すと、出力装置(27)は、問題になっている歯領域(L−U)のブラッシングが認められたということを示すようになっており、
前記ブラシヘッド(19)の前記長手方向をY軸(Y)とし、
前記ブラシヘッドの毛(20)の方向をX軸(X)とし、
X軸は、Y軸と比較して垂直に配向しており、
Z軸(Z)は、X軸及びY軸と比較して垂直に配向しており、
前記シグナルコンディショナ(23)は、加速度センサ(25)からの前記信号を強力なローパスフィルタ処理し、
前記シグナルコンディショナ(23)は、強力にローパスフィルタ処理された信号によって示される、X及びZ方向において測定された加速度に基づいて、地球重力場におけるモニタリング装置の傾きを決定し、
前記シグナルコンディショナ(23)は、ハイパスフィルタ処理された信号によって示されるY−加速度としてブラッシングサイクルを識別するために、加速度センサからの前記信号をハイパスフィルタ処理するようになっている、ことを特徴とするモニタリング装置。
【請求項2】
前記モニタリング装置(18)は、さらに、前記既定の又はユーザーの示された歯領域(L−U)のブラッシングの間、問題になっている歯領域のブラッシングの継続時間を測定するタイマ(28)を備えており、
前記メモリ(26)は、さらに、各歯領域(R−U、L−U、R−D、L−D)の継続時間参照値を保持しており、
前記コンパレータ(24)は、さらに、歯領域(L−U)のブラッシングの間、前記タイマ(28)によって測定される継続時間を、前記メモリ(26)に保持された対応継続時間参照値と比較するようになっており、
歯領域(L−U)のブラッシングの間、前記タイマによって測定された継続時間がまた、前記対応継続時間参照値と、既定の精度で対応している場合のみ、前記出力装置(27)は、問題になっている歯領域(L−U)のブラッシングが認められたということを示すようになっている、請求項1記載のモニタリング装置。
【請求項3】
前記モニタリング装置(18)は、前記入力装置(21)でティーチングモードに入る既定のユーザー入力に応答するようになっており、ブラッシングの間のシグナルコンディショナ(23)は、次の歯磨き中の比較において、前記コンパレータ(24)による使用のための前記メモリ(26)における、歯領域の前記歯表面特定参照値を少なくとも保存している、請求項1又は2に記載のモニタリング装置。
【請求項4】
前記モニタリング装置(18)は、キャリブレーションモードに入るように構成されており、
シグナルコンディショナ(23)は、加速センサ(25)からのローパスフィルタ処理された信号の最大値及び最小値を以下のように設定している、請求項1〜3のいずれか1つに記載のモニタリング装置。

は、0gにキャリブレートされ、
は、1gにキャリブレートされ、
は、0gにキャリブレートされ、
は、1gにキャリブレートされ、
は、0gにキャリブレートされ、
は、1gにキャリブレートされ、
ここで、gは地球の重力である。
【請求項5】
反対方向の2つの加速度が、既定の時間枠内で識別される場合に限り、シグナルコンディショナ(23)は、ブラッシングサイクルとして長手方向(Y)のブラシヘッド(19)の加速度を識別するように構成されている、請求項1〜4のいずれか1つに記載のモニタリング装置。
【請求項6】
前記シグナルコンディショナ(23)は、
のタイプの少なくとも1つのフィルタを備えており、y(t)は時間ステップtにおける出力であり、x(t)は時間ステップtにおける入力であり、kはフィルタ係数である、請求項1〜5のいずれか1つに記載のモニタリング装置。
【請求項7】
前記シグナルコンディショナ(23)は、z(t)=x(t)-y(t)のタイプの少なくとも1つのフィルタを備えており、z(t)は時間ステップtにおける出力であり、x(t)は時間ステップtにおける入力であり、y(t)はローパスフィルタ処理された信号である、請求項1〜6のいずれか1つに記載のモニタリング装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つのフィルタは、デジタルフィルタである、請求項6又は7に記載のモニタリング装置。
【請求項9】
モニタリング装置(18)は、ローパスフィルタ処理された加速度ベクトルの合計
に基づいて自動キャリブレーションするように構成されており、axlp、aylp及びazlpは、それぞれ直交する方向x、y及びzのローパスフィルタ処理された加速度成分である、請求項1〜8のいずれか1つに記載のモニタリング装置。
【請求項10】
前記インターフェースを介して前記入力装置(21)からユーザー入力を得るため、及び/又は、前記インターフェースを介して前記出力装置(27)に前記比較の結果の情報を伝送するために、前記モニタリング装置(18)は、無線又は有線データ伝送インターフェース(22)を備えている、請求項1〜9のいずれか1つに記載のモニタリング装置。
【請求項11】
前記出力装置(27)は、LED、ディスプレイ、サウンドジェネレータ又はスピーチジェネレータの少なくとも1つを含んでいる、請求項1〜10のいずれか1つに記載のモニタリング装置。
【請求項12】
モニタリング装置は、累積歯磨きサイクルの数をカウントし、歯磨きサイクルのブラシ特定プリセット参照数に達すると、出力装置(27)に歯ブラシの寿命の終了を示すように構成されている、請求項1〜11のいずれか1つに記載のモニタリング装置。
【請求項13】
モニタリング装置は、現在のブラシ加速度スペクトル分布をブラシ特定プリセット参照分布と比較し、出力装置(27)に前記比較に基づいた歯ブラシの寿命の終了を示すように構成されている、請求項1〜11のいずれか1つに記載のモニタリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラッシングについてユーザーのフィードバックを与えるために、歯ブラシの使用をモニタリングするための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまで、ブラッシング結果についてユーザーにフィードバックを与えるモニタリング装置を備えた既知の歯ブラシが存在している。このような装置は、例えば、歯磨き中に測定データを得るために、加速度センサ、タイマ、および圧力センサを採用してもよい。
【0003】
しかし、ブラッシング結果を決定する、言い換えれば、ユーザーがどれくらい歯磨きに成功したかということは、難しい課題であるということが分かってきた。さらに、使用される装置のコストは合理的な範囲内に維持されている必要がある。
【0004】
既知のモニタリング装置の精度及び装置コストについて、改良がまだ行われることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、歯磨きの結果を決定するための改良されたモニタリング装置を提供することである。この目的は、独立請求項1に係るモニタリング装置で達成される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このモニタリング装置は、ブラッシングサイクル中に、地球の重力に比べて、歯ブラシの傾きに基づいて、歯領域内でブラッシングされている歯表面を識別する可能性を利用している。歯表面特定記録でブラッシングサイクル数を記録することによって、歯領域内の各歯表面のブラッシングサイクル数について、情報が得られる。記録されたブラッシングサイクル数は、どれくらい歯磨きに成功したかを評価するために、歯表面特定参照値と比較される。その結果は、確実に歯磨きをモニタするための、費用対効果の高い、省スペース及び省エネルギーの解決法を提供するモニタリング装置である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態における歯領域を示す図である。
図2】出力装置の実施形態を示す図である。
図3】モニタリング装置を備える歯ブラシの実施形態を示す図である。
図4】座標系を示す図面である。
図5】モニタリング装置の実施形態を示すブロック図である。
図6】モニタリング装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明は、一例として、添付図面を参照して、より詳細に記載される。
【0009】
図1は、一実施形態における歯領域を示しており、図2は、出力装置27の実施形態を示している。
【0010】
図1の実施形態において、歯は、例として、4つの歯領域R−U、L−U、R−D及びL−Dに分けられている。歯領域は、この場合四分の一で、左上のL−U、左下のL−D、右上のR−U及び右下のR−Dに識別される。多くの場合、これら4つの領域の1つ(又はそれ以上)が完全に十分に磨かれていないことを示すことによって、十分なフィードバックが、歯ブラシのユーザーに与えられる。
【0011】
実施形態において、4つの歯領域R−U、L−U、R−D及びL−Dは、それぞれ、ブラッシングが必要な3つの所定の歯表面を備えている。図1において、各領域は、したがって、外面1から4まで、内面5から8まで、及び咬合面9から12を備えている。
【0012】
以下の例において、既定の順序で4つの歯領域R−U、L−U、R−D及びL−Dを磨くことによって、又は、その代わりに、どの領域が現在磨かれているかをモニタリング装置に示すことによって、ユーザーは歯を磨く。モニタリング装置は、その結果として、磨かれている歯領域を知ることとなる。しかし、ユーザーは、特定の歯領域をブラッシングしている間、内側、外側及び咬合面の間を数回切り替えることによっても、任意の好ましい順序で1つの歯領域R−U、L−U、R−D及びL−D内の歯表面1,5,9;2,6,10;3,7,11;又は4,8,12を磨く。
【0013】
モニタリング装置で利用される出力装置は、任意の便利な方法で、ユーザーにブラッシング結果を示すようになっており、ユーザーが歯領域R−U、L−U、R−D又はL−Dのブラッシングが認められたかどうか判断できるようにしている。そのような出力装置は、少なくとも以下の1つ、すなわちLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)、音又は音楽を生成するためのサウンドジェネレータ、及びスピーチジェネレータ、を含んでいる。出力装置は、歯ブラシと一緒に移動するモジュール内に物理的に位置している、又はその代わりに、そのようなモジュールは、ユーザーに対してブラッシング結果を示す外部出力装置に、データを伝送する有線又は無線のデータ伝送インターフェースを含んでいる。
【0014】
図2の例において、例として、出力装置27は、図1に示された各歯領域の13〜16の1つのセクタで、LED又はLCDディスプレイを含むと想定される。ブラッシング後、図2の出力装置において、セクタ13が赤色に点灯している場合、ユーザーは、例えば、図1の領域R−Uがより完全なブラッシングを必要としていることを理解する。同様に、ブラッシング後、図2の出力装置において、他のセクタ14が赤色に点灯している場合、ユーザーは、例えば、図1の領域L−Uがより完全なブラッシングを必要としていることを理解する。認められたブラッシングは、他の色、例えば、緑色のような色を点灯することによって示される。あるいは、ユーザーにフィードバックを提供するために、インジケータを点灯する他の色や方法、例えば、点滅に対して定常モードの光、点灯するのに対して点灯しない、のようなものが利用される。
【0015】
LEDが出力装置27において使用される場合、出力装置は、各歯領域に対して一対のLEDを含んでいる。このような場合、LEDの各対は、4分の1の領域の成功のブラッシングを示す第1の色のLEDと、4分の1の領域の不成功のブラッシングを示す第2の色のLEDとを含んでいる。
【0016】
図3は、モニタリング装置18を備える歯ブラシ17の実施形態を示しており、図4は、このような歯ブラシのブラシヘッド19の座標系XYZを示している。
【0017】
図3の実施形態において、モニタリング装置18は、手動歯ブラシ17のシャフトに埋め込まれた、必要な電子部品や電池を含む分離されたモジュールとして作成された。このように、ブラシヘッド19の毛20は、ブラシヘッド19と共に動き、モニタリング装置18は、ブラシヘッド各動きで動く。しかし、これは、モニタリング装置が歯ブラシにどのように配置されるかの一例に過ぎない。あるいは、モニタリング装置は、歯ブラシのシャフトの延長又は何か別の方法で歯ブラシに接続されても良い。自分自身のブラシヘッドを持つ異なる人が、同じ歯ブラシ17ハンドルを使用するのを可能とするために、ブラシヘッド19は、歯ブラシ17のハンドルから取り外し可能でも良い。
【0018】
図3において、モニタリング装置は、例えば、プッシュボタンのような入力装置21と図2に示されるような出力装置27とを備えている。しかし、入力装置は、図3に示されていない分離された装置に位置しており、この場合において、モニタリング装置は、分離された入力装置から信号を受けるための有線又は無線のデータ伝送インターフェース22を含んでもよい。
【0019】
明確化のために、図4において、X軸の方向は、一般的にブラシの毛20の方向と同じであり、Y軸の方向は、X軸に対して直交しており、一般的にブラシヘッド19の長手方向と同じであり、図示の例のとおり歯ブラシ17のチューブ状本体の中心線の方向であり、Z軸は一般的にブラシヘッドから横向きに向かっており、X軸及びY軸に対して90°の角度を形成している。しかし、軸の正確な方向は、モニタリング装置にとって重要ではなく、それらは、以下の例を理解できるようにするためだけに規定されている、と認められるべきである。
【0020】
図5は、モニタリング装置18の例を示すブロック図である。モニタリング装置は、図3のように歯ブラシに組み込まれており、あるいは歯ブラシに取り付けられた分離された部品で構成されている。分離された部品として、モニタリング装置は、第1の歯ブラシから取り外され、他の歯ブラシに取り付けられる。このような場合、モニタリング装置は交換可能な歯ブラシハンドルの一部でもよい。
【0021】
この例では、モニタリング装置は、モニタリング装置18の動作を制御するシグナルコンディショナ23を備えている。シグナルコンディショナ23とコンパレータ24とは、回路、コンピュータプログラム、又はコンピュータプログラムと回路との組み合わせで実行されてもよい。最後の2例において、コンピュータ上で実行されているプロセッサは、ソフトウェアの制御下で、シグナルコンディショナ23及び/又はコンパレータ24のタスクを実行する。コンピュータは、例えば、ベースデバイス又は汎用コンピュータに組み込まれたスタンドアローンプロセッサでもよい。したがって、シグナルコンディショナ及びコンパレータは、物理的に1つの部分からなるかもしれない。
【0022】
シグナルコンディショナ23は、例えば、1以上のデジタルフィルタで、ローパス及びハイパスフィルタリングを行う。フィルタの少なくとも1つは、
のタイプであり、ここで、y(t)は時間ステップtにおける出力であり、x(t)は時間ステップtにおける入力であり、kはフィルタ係数である。フィルタの少なくとも1つはまた、
のタイプであり、ここで、z(t)は時間ステップtにおける出力であり、x(t)は時間ステップtにおける入力であり、y(t)はローパスフィルタ処理された信号である。
【0023】
加速度センサ25は、歯磨きパターンを測定するために装置に結合されている。3軸加速度センサ25は、歯ブラシ及び歯ブラシに取り付けられたモニタリング装置が、地球の重力と比べた使用中に保持されている角度のような、歯ブラシの傾きを使用中に検出するのに利用される。別の例において、3軸加速度センサ25は、歯磨き周期及び/又は非周期動作を測定する。加速度センサは、例えば、VTIテクノロジーズOy、私書箱27、FI−01621、Vantaa、フィンランドから入手可能なCMA3000でもよい。3軸加速度センサの出力は、以下のように表される。
【0024】
【数1】
【0025】
ここで、出力測定ベクトル(ameasured、3つの構成)は、ブラッシングモニタリング装置のローカル座標系において、物体の加速度(a)、重力ベクトル(g)及び誤差項(aε)すべての和に対応している。
【0026】
式(1)から、加速度センサは、傾き(速度aにおける変化が知られているとき)及び加速度(ブラシフレームにおける重力加速度が知られているとき)の両方を測定するのに使用される。歯ブラシの動作又は位置を追跡するために、追加のコストの増加及び場所をとるセンサ部品が必要なく、したがって、モニタリング装置は唯一のセンサとして3軸加速度センサ25を含んでいる。加速度センサのみを使用する装置の一つの利点は、装置を製造するコストが低減されることである。他の利点は、他の変位、方向又は位置センサなしで加速度センサを使用することが空間を節約するということである。いくつかの他のアプローチと比較して、第3の利点は、消費電力が極めて少ないということである。
【0027】
モニタリング装置18で実行される測定において、加速度は、傾き又は角度測定を妨げるノイズと考えられる。歯磨きの間、加速度センサ25は、コンパレータ24にデータとして記録又は供給される歯磨きパターンを測定する。コンパレータ24はまた、メモリ26から歯磨き参照データ、言い換えれば参照値を受け取る。メモリ26は、パターン参照データを保持するため、加速度センサ25及び/又はシグナルコンディショナ23と結合された記録装置である。シグナルコンディショナ23は、関連するブラッシングパターンデータ及びパラメータを得るために、加速度データにおいて、ロー及びハイパスフィルタリング機能、及び、レベルトリガー機能を行うようになっている。
【0028】
例えば、メモリ26に保存された歯磨きパターン参照データ又は参照値は、歯ブラシの使用が終わると、歯ブラシの通常、日常使用で生成されたデータと比較される。歯磨きパターン参照データの一例において、歯磨きパターン参照データはまた、各歯領域をブラッシングするのに使用される時間(例えば、秒)、歯領域毎のブラッシングサイクルの数、及びブラッシングの順番(ある位置から別の位置への移動)を示す。使用中の歯磨きパターンデータと歯磨きパターン参照データ又は参照値との比較は、出力装置27によって、ユーザーにフィードバックを与えるのに使用される。モニタリング装置18は、例えば、中断、ベースへの戻り、又はスイッチによって決定されるように、ブラッシングが完了した後、既定の時間その結果を示すことによって、LED、複数のLED、又はディスプレイを使用して、ブラッシングの結果について、自動的にユーザーに知らせるよう構成される。
【0029】
視覚的な表示器の代わりに、出力装置27は、音を生成する表示器、例えば歯磨き後既定のビープ音を生成するブザー又は指示を生成するスピーチジェネレータでできていてもよい。このようなブザー又はスピーチジェネレータは、成功又は不成功のブラッシングを示すのに使用される。このような方法で、ユーザーは、ブラッシングについて即時のフィードバックを提供される。
【0030】
いくつかの実施形態において、図5のモニタリング装置は、特定歯領域におけるブラッシングの継続時間を測定するためにタイマ28を含んでいる。これにより、ユーザーが歯領域を十分長く磨いたかどうか、参照継続時間を示す参照値との比較が可能となる。
【0031】
図5のモニタリング装置18はまた、出力装置27及び/又は分離されたブラッシングデータ記憶ユニットが位置する遠隔装置に、比較の結果を転送するためのインターフェース22を含んでもよい。その結果、ユーザーは、シグナルコンディショナ及びコンパレータに関連して局所的に位置する出力装置によって、または、遠隔設置され、又は、ローカル及びリモート出力装置を介した、出力装置によって、フィードバックが得られる。
【0032】
遠隔装置への有線インターフェースの場合、インターフェース22は、遠隔装置との伝達に、モニタリング装置18によって使用される電気接点を含んでもよい。あるいは、無線インターフェースの場合、インターフェース22は、遠隔装置への無線伝送路を介して、測定結果を伝送するための無線送信機を含んでいる。
【0033】
モニタリング装置はまた、例えば、モード(例えば、ティーチング、ブラッシング、メモリスクローリング)を選択する、又はイベントの開始又は停止を示す、例えば、ユーザーが入力するためのプッシュボタンのような、ユーザーの入力を受ける入力装置21を含んでいる。このような入力は、モニタリング装置18をティーチングモードに設定するのに使用され、ユーザー自身の好ましいブラッシングパターンデータを収集するのに使用される。第1のモードは、連続的であり、測定された歯磨きパターンを含んで、データが参照値として連続的に保存されていることを意味している、又は、データを選択的に保存するのに使用される。選択的なデータは、例えば、適切なブラッシングを確実にするために、歯科衛生士、歯科医師又は親の監視の下で使用される。入力装置21の作動後、加速度センサ25は、歯磨きパターンデータ(例えば、歯ブラシの傾きに関するデータ)を測定し、シグナルコンディショナ23に転送するように構成されており、歯ブラシの使用の間、次の使用のために、それを処理しそしてそれをメモリ26内に保存するようになっている。
【0034】
加速度センサ25は、モニタリング装置18が第2のモードにあるとき、参照データとの比較のために歯磨きパターンを測定するようになっている。ティーチングモードは、ユーザーが、参照値としてメモリ26内に個人の歯磨きパターン参照データを保存することを可能としている。例えば、入力装置21を押した後、ユーザーは、十分に好きなだけ、彼又は彼女の歯を磨くのに歯ブラシを使用する。入力装置21の第2の作動は、第1のモードを終了させる。結果は、使用中この特定のユーザーが歯ブラシを持つ角度を示す歯磨きパターン参照データが、好ましい歯磨きパターン参照データ又は参照値として、メモリ26内に保存されるということである。さらに、参照データはまた、使用される時間、ブラッシングサイクルの数、及びブラッシングの順番(ある位置から別の位置への移動)を示す。この個人の歯磨きパターン参照データは、この特定のユーザーが今後日常使用に彼又は彼女の歯をどれくらい十分に磨くかの分析に使用される。したがって、第1のモードは、ユーザーが歯を磨く間の個人の行動(例えば、歯ブラシ又はユーザーの頭が個々の角度で保持される)を考慮することを可能とする。
【0035】
上記で、一例として、モニタリング装置18がティーチングモードに設定され、歯ブラシが使用されると、モニタリング装置は、メモリ内において歯磨きパターン参照データを生成し、保存する。しかし、これに代わるものは、モニタリング装置が日常の歯磨きに利用されている間、参照データ又は参照値として、その後の使用のために、所定の歯磨きパターン参照データが外部装置において生成され、モニタリング装置18のメモリ26にコピーされるということである。
【0036】
歯磨きモニタリング装置18が日常の使用で使用されている場合、モニタリング装置18のメモリ26内に保持される参照データとの比較がなされる。追加の参照データは、最初の参照データと置換又は集約されて記録される。このような歯磨きパターンは、記録装置において歯磨きパターン参照データとして個別に又は集められて保存される。例えば、ユーザーは、特定のブラッシングセッションで、参照データとして記録装置に、生成された歯磨きパターンを保存する。あるいは、ユーザーは、そのような参照データを、累積歯磨きパターン参照データに追加する。
【0037】
個々の歯磨きパターン参照データは、複数の人間に対して、モニタリング装置18のメモリ26に保存される。一例として、ティーチングモードの間歯ブラシを使用した人間の識別子は、歯磨きパターン参照データと共にメモリ内に保存されている。一例として、この識別子は、各個人のユーザーのために1つの取り外し可能なブラシヘッドを有する装置において個々のブラシヘッド19に関連づけられている。これは、何人かが同じ歯ブラシ又は実際同じ歯ブラシのハンドル(自分自身の個人の取り付け可能なブラシ部分、例えばブラシヘッド)を使用する場合、有利である。このような場合、モニタリング装置18は、メモリ26から、歯ブラシの使用の間生成されるデータと最も良く合う歯磨きパターン参照データを選択することによって、自動的に、歯ブラシを使用する人間を識別することができる。あるいは、歯ブラシは、ユーザーが彼又は彼女の識別子を入力できるインターフェースを含んでいる、又は、モニタリング装置18が、メモリ26から正しい歯磨きパターン参照データを選択できるように、識別子がブラシヘッドインターフェースにコード化されている。入力装置21は、このようなインターフェースとして使用される。
【0038】
モニタリング装置18は、ローパスフィルタ処理された加速度ベクトルの合計
に基づいて自動キャリブレーションするように構成されており、axlp、aylp及びazlpは、ブラシの座標系のそれぞれ直交する方向x、y及びzのローパスフィルタ処理された加速度成分である。
【0039】
モニタリング装置18のすべての部分は、互いにカプセル化される、及び/又は、電気又は手動歯ブラシの本体に統合又は取り付けられてもよい。あるいは、無線送信機は、他の部分、例えば、電気歯ブラシの充電器、クレードル又はベースから分離されて配置されてもよい。このような例において、インターフェースは、充電器の送信機への有線接続を介して又は誘導によって又は短距離無線通信を介して、比較の結果を転送するために、歯ブラシ内に、充電器内の対応する端子に接続される接触端子を含んでいる。そして、充電器の無線送信機は、遠隔装置への無線接続を介して、さらにこの比較結果を送信する。
【0040】
図6は、モニタリング装置の動作を示すフローチャートである。
【0041】
ステップ30において、ユーザーは、既定の歯領域又はユーザーによって示された歯領域を磨くことを開始する。選択肢は、例えば、歯領域は常に同じ順序で磨かれる、各新しい歯領域のモニタリング装置が、どの領域が磨かれるべきか出力装置27によって示す、又は、入力装置21を使用することによって、ユーザーが、磨かれる歯領域R−U、L−U、R−D又はL−Dを示す、である。いずれにしても、モニタリング装置18は、磨かれる歯領域を知っており、この例では、領域L−Uと仮定する。
【0042】
タイマは、すべての実施形態において必要ではないが、この例では、タイマ28は、歯領域を磨いている継続時間、例えば、ユーザーが問題になっている領域を磨くのに何秒費やしているのか、を測定するのに使用される。タイマが使用される場合、選択肢は3つのタイマを使用することであり、1つは歯領域の各表面のためのものである。その結果、ステップ31において、タイマ28は起動され開始され、歯表面特定カウンタが起動される(例えばゼロに設定される)。以下の説明では、例として、3つの歯表面特定カウンタが設けられ、1つが外歯表面2に、1つが内歯表面6に、1つが咬合面10に設けられる。
【0043】
ステップ32において、加速度センサ25は、シグナルコンディショナ23が受信し処理する信号を生成する。シグナルコンディショナ23は、ノイズ及び加速度危険を取り除くために、信号(ax、ay、az)をローパスフィルタ処理する。さらに、加速度信号は、強力にローパスフィルタ処理され、加速度を有さず地球の重力及び加速度センサオフセット及び利得誤差のみ有する信号が与えられる。この信号の最大値及び最小値は、以下のように3軸X、Y及びZ(1g=9.8m/s2=地球重力場における重力加速度)の自動キャリブレーションセンサパラメータに使用される。
【0044】
は、0gにキャリブレートされ、
は、1gにキャリブレートされ、
は、0gにキャリブレートされ、
は、1gにキャリブレートされ、
は、0gにキャリブレートされ、
は、1gにキャリブレートされている。
【0045】
さて、ブラッシングの間、強力にローパスフィルタ処理された信号のX及びZ成分は、地球重力場におけるブラシの傾きを与える。そして、Y加速度は、元のもの
から強力にローパスフィルタ処理された信号を減算することによって、ハイパスフィルタ処理される。この信号のしきい値レベルが設定されている。既定の制限時間内に、正のしきい値が横切られ、負のしきい値も同様である場合、ブラッシングサイクルは、ステップ32で識別される。この例では、特定の加速度、2つのレベルの横切り、言い換えれば、特定の時間枠内の反対方向2つのY加速度が、ブラッシングサイクルを示す。この段階で、現在の強力にローパスフィルタ処理されたX及びY成分が分析されているところで、ステップ33は入力される。これらの成分は、歯表面2、6又は10が識別されたブラッシングサイクルで磨かれたことを決定するために、ステップ33で使用される。モニタリング装置のメモリは、歯領域L−U(及びすべての他の歯領域もまた)の各歯表面2、6及び10の一対のサンプルX及びZを保持している。したがって、磨かれた歯表面は、一対のサンプルX及びZが、現在の強力にローパスフィルタ処理されたX及びZ成分に最も良く合うものであると決定される。識別された歯表面の歯表面特定カウンタは、例えば、カウンタを1で増加させることによって、ステップ34において、識別された歯表面2、6又は10のブラッシングサイクルを記録するのに使用される。物理的に、歯表面特定カウンタは、メモリ26において、既定のメモリ位置として実行される。
【0046】
ステップ35において、チェックは、同じ歯領域L−Uのブラッシングが継続しているかどうか、モニタリング装置が、歯領域のブラッシングが終了すべきであること(例えば、歯領域L−Uのブラッシングが認められると出力ディスプレイに示すことによって)をユーザーに信号を送っているかどうか、又は、ユーザーが、歯領域のブラッシングが終了したことを示すために、入力装置21を使用したかどうか、を決定するのに行われる。
【0047】
最終的に、現在の歯領域のブラッシングが終了したことは、ステップ35で決定され、ステップ36が開始される。ステップ36において、コンパレータ24は、各歯表面特定カウンタで記録されたブラッシングサイクル数を、メモリ26内の対応参照値と比較する。さらに、すべての実施形態において必要ではないが、この例において、タイマ28は、メモリ26内の対応参照値で歯領域L−Uのブラッシングの継続時間を決定するのにチェックされる。すべての歯表面特定カウンタは、十分な精度で参照値に対応しているブラッシングサイクル数を記録しており、この例において、ブラッシング継続時間はまた、十分な精度で、メモリ26内の参照値に対応しており、歯領域L−Uのブラッシングが認められるということが、ステップ37において、出力装置27によって示される。そうでなければ、歯領域L−Uのブラッシングが認められないということが、ステップ37において、出力装置27によって示される。
【0048】
ブラッシング結果を認めるために、比較において要求される十分な精度が、実行に依存している。別のものとして、全ての歯表面特定カウンタが、問題になっている歯表面の参照値の少なくとも60〜80%であるブラッシングサイクル数を記録している場合、同様に、タイマによって測定されるブラッシングの継続時間(使用される場合)が対応参照値の少なくとも60〜80%である場合、問題になっている歯領域のブラッシングは認められることができる。
【0049】
最後に、ステップ38において、歯領域がまだブラッシングを必要としているかどうかが決定される。しない場合、処理は終了する。そうでなければ、次の歯領域のために、ステップ30から38が繰り返される。
【0050】
前述した特徴に加えて、モニタリング装置はまた、歯ブラシが摩滅し、その結果、寿命に達すると、ユーザーにそれを示すために、出力装置27を利用する。このようにして、ユーザーは、いつ新しい歯ブラシ又は歯ブラシのヘッドを購入するか知らされる。そのような情報を得る別の選択肢は、モニタリング装置が累計歯磨きサイクル数をカウントするように、そして、歯ブラシの寿命が、歯磨きサイクルのブラシ特定プリセット参照数に達すると、出力装置27に示すように構成されるということである。同じモニタリング装置が、他の歯ブラシ又は歯ブラシヘッドに使用されることができる実施形態の場合、ユーザーは、この場合には、歯ブラシや歯ブラシヘッドが新しくなると、累積歯磨きサイクルのカウントをリセットする機会が与えられる。
【0051】
あるいは、モニタリング装置は、現在のブラッシング加速度スペクトル分布をブラシ特定プリセット参照分布と比較するように構成され、出力装置27で、前記比較に基づいて歯ブラシの寿命を示すように構成されてもよい。
【0052】
上記の説明及び添付図面は、単に本発明を例示するためのものに過ぎないことが理解される。本発明は、本発明の範囲から逸脱することなく、変形及び変更することができることは、当業者には明らかであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6