特許第5907968号(P5907968)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5907968工作機械およびこの工作機械の駆動規制装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5907968
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】工作機械およびこの工作機械の駆動規制装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 5/58 20060101AFI20160412BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20160412BHJP
   B23Q 11/08 20060101ALI20160412BHJP
【FI】
   B23Q5/58 C
   B23Q5/58 F
   B23Q11/00 D
   B23Q11/08 Z
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-523955(P2013-523955)
(86)(22)【出願日】2012年7月10日
(86)【国際出願番号】JP2012067609
(87)【国際公開番号】WO2013008823
(87)【国際公開日】20130117
【審査請求日】2015年4月23日
(31)【優先権主張番号】特願2011-155561(P2011-155561)
(32)【優先日】2011年7月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズンホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000137856
【氏名又は名称】シチズンマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100165191
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 章
(74)【代理人】
【識別番号】100151459
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】松本 仁
【審査官】 山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−52056(JP,A)
【文献】 特開平8−137526(JP,A)
【文献】 特開平6−297291(JP,A)
【文献】 特許第3621421(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 5/58,11/00,11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータによって駆動される駆動体を覆うカバーに設けられた扉が開状態になったときに前記モータの駆動を停止する工作機械の駆動規制装置であって、
前記扉の開閉状態を検出する検出手段と、
前記モータの励磁状態と非励磁状態とを切り換える励磁操作手段と、
停止していた前記モータが所定の回転許容速度を超えて回転したとき、前記モータを停止させる速度規制手段と、
前記扉が開状態にあることを前記検出手段が検出したとき、前記モータが励磁状態にある場合には前記速度規制手段を動作させ、前記モータが非励磁状態にある場合には前記速度規制手段を動作させないよう、前記速度規制手段を制御する速度規制切替手段と、
を備えることを特徴とする工作機械の駆動規制装置。
【請求項2】
前記駆動体が、工作機械の主軸からなり、
前記主軸を回転駆動する主軸モータを制御する制御装置が、前記主軸を所定の回転角度位置に割り出して位置決め固定するC軸モードにある場合、前記励磁操作手段は、前記扉が開状態にあることを前記検出手段が検出したとき、前記主軸モータを励磁状態に維持する請求項1に記載の工作機械の駆動規制装置。
【請求項3】
前記制御装置が前記C軸モードにない場合、前記励磁操作手段は、前記扉が開状態にあることを前記検出手段が検出したとき、前記主軸モータを、励磁状態から非励磁状態へ切り換える請求項2に記載の工作機械の駆動規制装置。
【請求項4】
駆動体と、
前記駆動体を駆動するモータと、
前記駆動体を覆うカバーに設けられた扉と、
前記扉の開閉状態を検出する検出手段と、
前記扉が開状態にあることを前記検出手段が検出したとき、前記モータの駆動を停止する駆動規制装置と、を備える工作機械であって、
前記駆動規制装置は、
前記モータの励磁状態と非励磁状態とを切り換える励磁操作手段と、
停止していた前記モータが所定の回転許容速度を超えて回転したとき、前記モータを停止させる速度規制手段と、
前記扉が開状態にあることを前記検出手段が検出したとき、前記モータが励磁状態にある場合には前記速度規制手段を動作させ、前記モータが非励磁状態にある場合には前記速度規制手段を動作させないよう、前記速度規制手段を制御する速度規制切替手段と、
を備えることを特徴とする工作機械。
【請求項5】
前記駆動体が、工作機械の主軸からなり、
前記主軸を回転駆動する主軸モータを制御する制御装置が、前記主軸を所定の回転角度位置に割り出して位置決め固定するC軸モードにある場合、前記励磁操作手段は、前記扉が開状態にあることを前記検出手段が検出したとき、前記主軸モータを励磁状態に維持する請求項4に記載の工作機械。
【請求項6】
前記制御装置が前記C軸モードにない場合、前記励磁操作手段は、前記扉が開状態にあることを前記検出手段が検出したとき、前記主軸モータを、励磁状態から非励磁状態へ切り換える請求項5に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械およびこの工作機械の駆動規制装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に工作機械には、主軸や主軸台、刃物台等のモータによって回転駆動や移動駆動される駆動体が設けられている。通常、駆動体は扉が設けられたカバー内に収容され、該カバー内において主軸に把持されたワークの加工等が行われる。一方、扉は開閉自在に設けられており、この扉を開くことによって、カバー内で駆動体のメンテナンス等を行うことができる。
【0003】
このような工作機械において、メンテナンス中にモータが動作して駆動体の駆動が行われると、メンテナンス等の妨げになるだけでなく、安全性が確保できない場合がある。このため、扉の開閉状態を検出する検出手段と、モータの回転を規制するモータ規制手段とを備え、扉が開状態になったときにモータの回転を停止させる駆動規制装置が設けられた工作機械がある。
【0004】
上記モータ規制手段の例として、停止中のモータに誤動作等の不測の回転が発生した場合、所定の回転許容速度を越えると、制御装置側にエラーを発生させることによってモータを停止させる速度規制手段が知られている(例えば特許文献1参照)。回転許容速度は、作業者が予期しないモータの回転が発生しても容易に対応できる程度に極めて低速に設定される。速度規制手段の作動によって、扉が開いた際に、モータを停止させるだけでなく、誤ってモータの回転が発生してしまった場合であっても、極めて低速な回転許容速度しか回転が許容されないことからモータの不測の高速回転を防ぐことができる。
【0005】
一方、モータ規制手段として、扉が開状態になったときにモータへの電源の供給を遮断してモータを非励磁とすることによって、モータを停止させるとともに、モータの不測の回転を規制する励磁停止手段も知られている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−137526号公報(「0013」〜「0015」、図1
【特許文献2】特開昭51−67577号公報(1ページ目 右段 第4〜12行)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
モータ規制手段として上述の速度規制手段を適用する場合、例えば主軸モータへの励磁を停止し、主軸を手動で自由に回転させてメンテナンスを行う際、手動で主軸を回転させる程度で主軸モータの回転速度が上記回転許容速度を越えてしまうことがある。この場合、主軸モータの回転速度が上記回転許容速度を超えるたびに速度規制手段が応答してエラーが頻発し、メンテナンスの作業効率が低下するという問題があった。
【0008】
一方、モータ規制手段として上述の励磁停止手段を適用する場合、例えばDカット加工やポリゴン加工のように、主軸モータを励磁して主軸を所定の角度位置に割り出しているときに扉が開かれた場合、主軸モータの励磁が停止することにより主軸の自由回転が許容され、メンテナンス作業の際に誤って主軸の角度位置がずれてしまう場合がある等の問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
モータによって駆動される駆動体を覆うカバーに設けられた扉が開状態になったときに前記モータの駆動を停止する工作機械の駆動規制装置は、前記扉の開閉状態を検出する検出手段と、前記モータの励磁状態と非励磁状態とを切り換える励磁操作手段と、停止していた前記モータが所定の回転許容速度を超えて回転したとき、前記モータを停止させる速度規制手段と、前記扉が開状態にあることを前記検出手段が検出したとき、前記モータが励磁状態にある場合には前記速度規制手段を動作させ、前記モータが非励磁状態にある場合には前記速度規制手段を動作させないよう、前記速度規制手段を制御する速度規制切替手段と、を備える。
【0010】
また、駆動体は、工作機械の主軸からなってもよく、この場合は、前記主軸を回転駆動する主軸モータを制御する制御装置が、前記主軸を所定の回転角度位置に割り出して位置決め固定するC軸モードにある場合、前記励磁操作手段は、前記扉が開状態にあることを前記検出手段が検出したとき、前記主軸モータを励磁状態に維持する。
【0011】
また、駆動体が上記のように工作機械の主軸からなる場合は、前記制御装置がC軸モードにないとき、前記励磁操作手段は、前記扉が開状態にあることを前記検出手段が検出したとき、前記主軸モータを、励磁状態から非励磁状態へ切り換える。
【0012】
また、駆動体と、前記駆動体を駆動するモータと、前記駆動体を覆うカバーに設けられた扉と、前記扉の開閉状態を検出する検出手段と、前記扉が開状態にあることを前記検出手段が検出したとき、前記モータの駆動を停止する駆動規制装置と、を備える工作機械であって、前記駆動規制装置は、前記モータの励磁状態と非励磁状態とを切り換える励磁操作手段と、停止していた前記モータが所定の回転許容速度を超えて回転したとき、前記モータを停止させる速度規制手段と、前記扉が開状態にあることを前記検出手段が検出したとき、前記モータが励磁状態にある場合には前記速度規制手段を動作させ、前記モータが非励磁状態にある場合には前記速度規制手段を動作させないよう、前記速度規制手段を制御する速度規制切替手段と、を備える。
【0013】
また、駆動体は、工作機械の主軸からなってもよく、この場合は、前記主軸を回転駆動する主軸モータを制御する制御装置が、前記主軸を所定の回転角度位置に割り出して位置決め固定するC軸モードにある場合、前記励磁操作手段は、前記扉が開状態にあることを前記検出手段が検出したとき、前記主軸モータを励磁状態に維持する。
【0014】
また、駆動体が上記のように工作機械の主軸からなる場合は、前記制御装置がC軸モードにないとき、前記励磁操作手段は、前記扉が開状態にあることを前記検出手段が検出したとき、前記主軸モータを、励磁状態から非励磁状態へ切り換える。
【発明の効果】
【0015】
工作機械の駆動規制装置によれば、モータによって駆動される駆動体を覆うカバーに設けられた扉をメンテナンス作業等のために開状態にすると、前記モータの回転が停止するので、メンテナンス作業等の安全性を確保できる。前記扉が開状態にあるときに、前記モータに電源が供給され励磁状態にある場合は、前記速度規制手段を動作させるので、前記モータに不測の回転が発生しても前記モータは回転許容速度を超える回転は許容されない。したがって、例えば前記モータを励磁しての回転角度を維持したままメンテナンス作業等を行うような場合において、メンテナンス作業等に際し誤って前記モータの角度位置がずれる等の不都合が防止されるとともに、作業者が予期しないような前記モータの高速回転を防ぐことができ、メンテナンス作業の安全性が確保できるという効果がある。
【0016】
また前記扉が開状態になったとき、前記モータへの電源の供給が停止され非励磁状態にある場合は、前記速度規制手段を動作させないので、主軸や刃物台等の駆動体を手動で回転や移動させることができ、メンテナンス作業の内容に柔軟に対応でき、作業効率を向上させることができるという効果がある。
【0017】
例えば前記駆動体が工作機械の主軸からなる場合は、メンテナンス作業等のために前記扉が開状態になったとき、主軸モータの制御装置がC軸モードにあるときは前記励磁操作手段が前記主軸モータに対する励磁を継続的に行うことによって前記主軸モータの回転角度を維持するので、メンテナンス作業等に際し誤って前記主軸モータの角度位置がずれるようなことを防止することができ、メンテナンス作業終了後の工作機械の処理をスムースに再開することができる。またこの場合、前記速度規制手段を動作させるので、前記主軸モータに不測の回転が発生しても前記主軸モータは回転許容速度を超える高速回転は許容されないので、作業者が予期しないような前記主軸モータの高速回転を防ぐことができ、メンテナンス作業の安全性が確保できる。
【0018】
また、上記の通り駆動体が工作機械の主軸からなる場合は、メンテナンス作業等のために前記扉が開状態になったとき、前記主軸モータの制御装置がC軸モード以外にあるときは前記励磁操作手段が前記主軸モータに対する励磁を自動的に切断するので、前記主軸の不測の回転を防止することができ、この場合前記速度規制手段を動作させないので、前記主軸を自由に回転させることができることから、特に前記主軸を割り出し固定する必要がないメンテナンス作業を行う場合には有益である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】扉を閉じた状態の自動旋盤を示す正面図である。
図2】制御装置を示す要部ブロック図である。
図3】扉が開いた状態の自動旋盤を示す正面図である。
図4】モータ規制手段の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に示される自動旋盤は工作機械の一例であって、ベッド1上に、主軸2を回転駆動自在に支持する主軸台3と、主軸2の先端に把持されたワーク4を加工する加工工具6が設けられている。加工工具6は、ベッド1上に支持された刃物台7に装着されている。
【0021】
主軸台3は、主軸2の軸線方向(以降、「Z軸方向」と称する。)に移動自在に支持されている。刃物台7は、Z軸方向に左右方向で直交するX軸方向、Z軸方向に上下方向で直交するY軸方向に移動自在に支持されている。ベッド1上には、主軸2に対向して背面主軸8が配置されている。背面主軸8は、背面主軸台9に回転駆動自在に支持されている。背面主軸台9は、Z軸方向及びX軸方向に移動自在に支持されている。
【0022】
主軸台3、背面主軸台9、刃物台7は、各移動方向に対応する送りモータに結合されており、これら送りモータによって各々移動駆動される。主軸2及び背面主軸8は、各々に対して設けられた主軸モータによって回転駆動される。ベッド1上には各送りモータ及び主軸モータを回転制御する制御装置11が搭載されている。
【0023】
制御装置11には、図2に示されるように、加工プログラム12が予め記憶されている。制御装置11は、加工プログラム12に基づき、モータ制御手段13を介して送りモータや主軸モータを制御し、主軸2及び背面主軸8の回転、並びに主軸台3、刃物台7及び背面主軸台9の移動等を制御する。なお図2では、送りモータ14と主軸モータ16とを代表的に1つずつ記載している。
【0024】
本自動旋盤は、制御装置11による主軸2及び背面主軸8の回転制御、主軸台3、背面主軸台9及び刃物台7等の移動制御によって、主軸2や背面主軸8に把持されたワークの加工を行う。ワークの加工の例として、Dカット加工や、キー溝加工等、ワークの所定の角度位置に所定の加工を行うものや、ポリゴン加工等のように主軸2や背面主軸8の回転を制御(C軸制御)して加工を行うものがある。
【0025】
ワークの所定の角度位置に所定の加工を行う場合や、C軸制御で加工を行う場合等の際、制御装置11は、主軸2及び背面主軸8を所定の回転角度位置に割り出して位置決め固定するC軸モードを実行する。制御装置11は、C軸モードにある場合、主軸モータ16の回転軸を所定の回転角度に位置決めし、主軸モータ16を励磁してこの回転角度を維持して停止させることによって主軸2及び背面主軸8の回転角度位置を固定する。
【0026】
制御装置11は、実行している加工プログラム12の行(ブロック)の指令に従ってC軸モードの実行と、解除を行う。例えばDカット加工を行うために主軸2を所定の角度位置に割り出す指令が行われる際やポリゴン加工の際にC軸モードが実行され、単純な主軸2の回転指令や停止指令によってこのC軸モードが解除される。従って通常の外形切削等の指令の際にはC軸モードは実行されない。
【0027】
一方、主軸台3、背面主軸台9及び刃物台7については、制御装置11がこれらに対応する各送りモータ14を回転させることにより主軸台3、背面主軸台9及び刃物台7を所定の位置にそれぞれ移動させ、各送りモータ14を励磁して位置決め固定する。
【0028】
主軸2の先端、背面主軸8、背面主軸台9及び刃物台7等は、ベッド1上に設けられたカバー17内に収容されている。したがって主軸2側及び背面主軸8側での加工は、カバー17内で行われる。加工中の切削油や切削屑等の飛散はカバー17によって防止される。カバー17には、扉18が開閉自在に設けられている。
【0029】
図3に示されるように、扉18を開くことによって、作業者はカバー17内のメンテナンス作業等を容易に行うことができる。つまり扉18は、カバー17内の構造物に対する開閉自在なガードをなす。扉18の「開状態」とは、扉18が現実に開いた状態の他、例えば扉の開閉を規制するロック等の開閉規制手段が設けられている場合には、ロックの解除状態等、扉18の開閉状態に関係なく、扉18を開くことが許容された状態も含む意味を表す。
【0030】
制御装置11には、扉18の開閉状態に応じて送りモータ14及び主軸モータ16の回転を規制する駆動規制装置としてモータ規制手段19が設けられている。扉18が開状態になったときこのモータ規制手段19が動作することによって、扉18の開状態では主軸2及び背面主軸8の回転や、主軸台3、背面主軸台9及び刃物台7の移動が停止するので、作業者はメンテナンス作業等を安全かつ容易に行うことができる。
【0031】
モータ規制手段19は、図2に示されるように、扉18の開閉状態を検出する検出手段である検出スイッチ21と、各送りモータ14及び各主軸モータ16への電源の供給と供給停止とを切り換える電源操作スイッチ22と、各送りモータ14及び各主軸モータ16の回転速度を制限する速度規制手段23と、各送りモータ14及び各主軸モータ16の励磁状態に応じて各送りモータ14及び各主軸モータ16に対する速度規制手段23の動作を切り換える速度規制切換手段24とを備える。
【0032】
検出スイッチ21は、扉18の開状態でOFF信号を出力し、扉18の閉状態でON信号を出力するように構成される。
【0033】
電源操作スイッチ22は、モータへ電源が供給される状態である励磁状態とモータへの電源の供給が停止された状態である非励磁状態とを切換操作する励磁操作手段を構成する。電源操作スイッチ22は、各送りモータ14及び各主軸モータ16ごとに設けられる。電源操作スイッチ22のONにより電源が供給されるモータは励磁状態となり、OFFによって電源の供給が停止されるモータは非励磁状態となる。
【0034】
速度規制手段23は、停止中の所定のモータに回転が発生した場合、所定の回転許容速度を越えると回転したモータを停止させるように構成される。回転許容速度は、停止中のモータに作業者が予期しない回転が発生して、主軸2、背面主軸8、主軸台3、背面主軸台9及び刃物台7等の各送りモータ14及び各主軸モータ16によって駆動される駆動体が移動駆動や回転駆動されても、作業者が容易に対応できる程度に極めて低速な速度に設定される。
【0035】
速度規制切換手段24は、連係手段26によって電源操作スイッチ22と連係して動作するように構成される。速度規制切換手段24及び連係手段26は各送りモータ14及び各主軸モータ16ごとに設けられる。
【0036】
モータ規制手段19は、図4のフローチャートに示されるように、ステップS1において、検出スイッチ21から出力されるON信号またはOFF信号に基づいて、扉18の開閉をチェックする。扉18が開いている場合は、ステップS2に進む。
【0037】
次いでステップS2において、モータ規制手段19は、制御装置11により実行されている加工プログラムのブロックに規定にされた内容に従い、制御装置11がC軸モードにあるか否かをチェックする。ステップS2において制御装置11がC軸モードにあると判定された場合は、ステップS3に進む。一方、ステップS2において制御装置11がC軸モードにはないと判定された場合は、ステップS4に進む。
【0038】
ステップS3では、対応する主軸モータ16の電源操作スイッチ22がONされる。これにより、C軸モードに対応する主軸モータ16に電源が供給され、この主軸モータ16は励磁される。
【0039】
ステップS4では、主軸モータ16の電源操作スイッチ22がOFFされる。これにより、主軸モータ16への電源の供給が停止され、主軸モータ16は非励磁状態となる。
【0040】
ステップS3又はステップS4から、ステップS5に進む。ステップS5では、モータ規制手段19は、各電源操作スイッチ22のON、OFF状態に基づき、各送りモータ14及び各主軸モータ16それぞれについて、励磁状態にあるか非励磁状態にあるかをチェックする。ステップS5において励磁状態にあると判定されたモータに対しては、ステップS6の処理へ進み、ステップS5において非励磁状態にあると判定されたモータに対しては、ステップS8の処理へ進む。
【0041】
ステップS6では、ステップS5において励磁状態にあると判定されたモータに対して、モータ規制手段19は、速度規制手段23が動作するようにするため、速度規制切換手段24を速度規制手段23側に切り換える。その後、ステップS7に進む。
【0042】
ステップS7では、速度規制手段23は、モータ制御手段13に対し、当該モータを停止させる停止指令を出力させる。その後、リターンする。制御装置11がC軸モードにある場合、主軸2又は背面主軸8の少なくとも一方の主軸モータ16は、励磁されているため、主軸2又は背面主軸8の少なくとも一方に対して速度規制手段23が動作した状態となり、当該モータの励磁が継続したままの状態で少なくとも一方の主軸モータ16の回転が停止し、主軸2又は背面主軸8の少なくとも一方が、所定の回転角度を維持したまま停止する。
【0043】
一方、ステップS8では、ステップS5において非励磁状態にあると判定されたモータに対して、モータ規制手段19は、速度規制手段23が動作しないようにするため、速度規制切換手段24を速度規制手段23から切り離す側に切り換える。その後、リターンする。
【0044】
このように、検出スイッチ21が扉18の開状態を検出すると、モータ14および16は、停止する。
【0045】
上述のステップS5〜S8の各処理は、連係手段26が機能することにより実現される。連係手段26は、扉18が開状態にある場合に、励磁状態にあるモータに対しては速度規制手段23が動作するように、また非励磁状態にあるモータに対しては速度規制手段23が動作しないように、電源操作スイッチ22と速度規制切換手段24とを連係させている。
【0046】
連係手段26によって速度規制切換手段24は、各送りモータ14及び各主軸モータ16について、当該モータが励磁状態にある場合には速度規制手段23を動作させ、当該モータが非励磁状態にある場合には速度規制手段23の動作をさせないようにして、当該モータに対する速度規制手段23の動作を切り換える。
【0047】
なおステップS1において、扉18が閉状態の場合は、ステップS9に進む。ステップS9では、各モータへの電源供給を行い、その後、ステップS8に進む。このようにステップS1、S9及びS8の各処理を順に経ると、各送りモータ14及び各主軸モータ16は、速度規制手段23が動作することなく、モータ制御手段13によって加工プログラム12に基づいて制御される。
【0048】
上述したモータ規制手段19によって、例えば作業者がメンテナンス作業を行うにあたり扉18を開状態にすると、制御装置11がC軸モードで加工を実行している場合や作業者が電源操作スイッチ22をON操作して所定のモータの電源供給を継続した場合は、励磁されているモータについては、速度規制手段23が動作する状態で、励磁により所定の回転角度を維持したまま停止する。これにより、例えば主軸2や背面主軸8の割り出し状態や刃物台7、主軸台3及び背面主軸台9の所定の移動方向の位置決め固定状態が維持されることになり、メンテナンス作業時等により誤って主軸2及び背面主軸8の角度位置や、刃物台7、主軸台3及び背面主軸台9の移動位置がずれてしてしまうようなことを防ぐことができる。特に、C軸モードでの加工中は、扉18の開状態で、主軸2や背面主軸8の割り出しが継続されるので、作業者は従来のように位置ズレ防止を意識することなく、主軸2や背面主軸のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0049】
また、速度規制手段23は、モータの回転速度が回転許容速度を越えると、モータ制御手段13側にアラームを送り、回転許容速度を超えたモータの回転を停止させるように構成されている。したがって、扉18が開状態にある場合に励磁中のモータに誤動作等によって不測の回転が生じても、速度規制手段23の動作により当該モータは回転許容速度までの回転しか許容されず、回転許容速度を超えて回転する場合には当該モータは停止させるため、作業者が予期しない主軸2及び背面主軸8の高速回転や、刃物台7、主軸台3及び背面主軸台9等の高速移動が発生することはなく、作業の安全性は確保される。なお、扉18が閉状態にあるときには、モータは速度規制手段の規制速度より早く回っていることから、モータの停止を速度規制手段23を動作させることで実現してもよく、これによれば、従来のように停止命令を出すことなく扉18が閉状態にあるモータを停止させることが可能である。
【0050】
また、このような速度規制手段23の動作により、モータの回転許容速度を超えない範囲であれば、作業者が意図的に主軸2や背面主軸8を低速で回転駆動させたり、刃物台7、主軸台3及び背面主軸台9等を低速で移動させたりすることも可能となる。この場合、駆動体は、作業者が予期しないような高速回転や高速移動は生じないので、作業者はメンテナンス作業等を安全かつ容易に行うことができる。
【0051】
一方、扉18の開状態で、制御装置11がC軸モードで加工を実行していない場合や、作業者が電源操作スイッチ22によって、モータへの電源供給を切断した場合は、モータの励磁が切断され、各送りモータモータ14及び各主軸モータ16の回転が停止する。したがって、誤ってモータ制御手段13から励磁が切断されたモータに対して回転指令が出力されるようなことがあっても、当該モータにはそもそも電源が供給されておらず非励磁状態にあることから回転駆動されることはないので、メンテナンス作業の安全性は確保できる。そして、この場合、ステップS8の処理により速度規制手段23の動作が停止しているため、例えば手動で主軸2や背面主軸8を回転させた場合や刃物台7、主軸台3及び背面主軸台9等を移動させた場合であっても、速度規制手段23によるアラームが発生することはなく、作業者が主軸2や背面主軸8を自由回転させたり、刃物台7、主軸台3及び背面主軸台9等を自由に移動させたりしてメンテンス等を容易に行うことができ、メンテナンスの作業効率が向上する。
図1
図2
図3
図4