【文献】
Biochemical and Biophysical Research Communications,2004年,Vol.324,No.2,p518−528
【文献】
Cellular & Molecular Immunology,2004年,Vol.1,No.1,p43−49
【文献】
Cellular & Molecular Immunology,2005年,Vol.2,No.2,p92−100
【文献】
Journal of Biological Chemistry,1995年,Vol.270,No.36,p20915−20921
【文献】
Trends in Immunology,2010年 8月 4日,[online],doi:10.1016/j.it.2010.06.004.,Retrieved from the internet:,URL,http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1471490610000906
【文献】
Acta Crystallographica. Section F, Structural Biology and Crystallization Communications,2008年,Vol.64,No.4,p266−269
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ウイルス性肝炎は、A、B、C、D、E型肝炎ウイルスによる肝臓の炎症性疾患である。肝炎ウイルスはいずれも、急性肝炎(acute hepatitis)を引き起こし得るが、B、C、D型肝炎ウイルスは、慢性肝炎(chronic hepatitis)を引き起こす可能性があり、慢性肝炎は肝硬変、肝不全及び肝臓癌の原因になる。
【0003】
米国を例にとると、ウイルス性肝炎の患者は毎年約50〜60万人増加し、その内、A型肝炎ウイルスによる急性疾患であるA型肝炎の患者は15万人である。また、B型肝炎の患者は20〜30万人増加する。B型肝炎の患者の約6〜10%が慢性B型肝炎になる。慢性B型肝炎の患者は、肝硬変、肝不全及び肝臓癌になりやすい。慢性B型肝炎の患者は世界中で2〜3億人と推測され、米国では120 万人と推測されている。B型肝炎は、B型肝炎ウイルスによるものである。また、(以前、非A非B型肝炎と呼ばれていた)C型肝炎の患者は毎年約15万人増加する。急性C型肝炎の約50〜70%は慢性C型肝炎になる。慢性C型肝炎は、肝硬変、肝不全及び肝臓癌になりやすい。米国では、慢性C型肝炎の患者は約350 万人と推測されている。B、C型肝炎の患者は、慢性肝炎になる可能性がある。慢性肝炎の状態では、ウイルスは長時間に亘って肝臓に生存して複製しながら、肝臓の慢性炎症を引き起こすことで、肝硬変、肝不全及び肝臓癌を発生させ悪化させる。
【0004】
中国を例にとると、ウイルス性肝炎の患者は毎年約50〜60万人増加し、その内、A型肝炎の患者は15万人である。
【0005】
ウイルス性肝炎の診断の基本は、ウイルス抗体、ウイルスの遺伝物質、タンパク質、抗原の存在の有無を検出することである。肝臓の炎症による肝臓組織の損傷の重要なバイオマーカー(biomarker)は、血液における各種の酵素及びアミノ基転移酵素の活性の増加を示し、例えば、アスパラギン酸アミノ基転移酵素(AST 又はSGOT)、アラニントランスアミナーゼ(ALT 又はSGPT)がある。
【0006】
急性肝炎及び慢性肝炎では、治療方法が異なる。急性ウイルス性肝炎(A型肝炎)の治療は、まず、患者の吐き気、嘔吐及び腹痛の症状を軽減させることである。現在、A型肝炎に対する臨床での特効薬がまだなく、治療の重点は、患者に十分な栄養を与えて肝臓の永久的な損傷を避けることである。急性肝炎の患者に、発症から2週間以内であれば免疫グロブリンを使用することができる。慢性B型肝炎の患者の治療には、主にインターフェロン(インターフェロンα−2b又はインターフェロンA)やポリエチレングリコール−インターフェロンα−2a(Pegasys)及び抗ウイルス薬、例えばテルビブジン(Tyzeka)、エンテカビル(Baraclude)、ラミブジン(Epivir−HBV)、アデフォビル(Hepsera)が使用される。慢性C型肝炎の患者の治療には、主に抗ウイルス薬及びインターフェロン、又はインターフェロンの複合処方が使用され、例えば、ポリエチレングリコール−インターフェロンα−2a及びポリエチレングリコール−インターフェロンα−2bを組み合わせて抗ウイルス薬のリバビリンが使用される。現在、ウイルスによる肝臓損傷自体に対して有効な治療薬がまだない。
【0007】
インターロイキン−22(Interleukin−22、IL−22)は、T細胞によって分泌される糖タンパク質であり、インターロイキン−10に誘導されるT細胞因子(IL−10−related T cell−derived inducible factor、IL−TIF)とも呼ばれる。インターロイキン−22のmRNAは、マウスのIL−9で刺激されたT細胞株及び肥満細胞株(mast cells)とコンカナバリンAで刺激された脾臓細胞とで発現されるとまず証明された。インターロイキン−22のmRNAは、主に外周で自己分離したT細胞で発現され、抗CD−3の抗体又はConAの刺激によるものである。インターロイキン−22のmRNAは、刺激されたNK細胞でも発現される。活性化したT細胞は、主にCD4+、特にCD28経路を経由したTh1細胞である。
【0008】
インターロイキン−22の前駆体は、179 個のアミノ酸残基(成熟ペプチドは146 個のアミノ酸残基)からなるものであり、ドゥモーティエール(Dumoutier)等が初めてマウス及びヒトのインターロイキン−22遺伝子をクローンしたことを報告している(ドゥモーティエール(Dumoutier)等著,JI,2000年,164 ,p.1814−1819)。また、ドゥモーティエール(Dumoutier)がIL−22の特許(米国特許第6359117号明細書及び米国特許第6274710 号明細書)を取得している。ガーネイ(Gurney)もIL−22のヒト膵臓の病変の治療における応用の特許(米国特許第6551799 号明細書)を取得している。
【0009】
インターロイキン−22は、主に胸腺、大脳、活性化したT細胞及び肥満細胞、レクチンで刺激された脾臓細胞(Duroutier JI 2002)、インターロイキン−2/インターロイキン−12で刺激されたNK細胞(Wolk,K JI 2002)、並びにLPS で刺激された複数の器官及び組織で発現されるものであり(ドゥモーティエール(Dumoutier)著,論文PNAS)、腸管、肝臓、胃、腎臓、肺、心臓、脾臓のいずれでもIL−22の発現の増加が検出される。
【0010】
IL−22は、IL−22RI受容体及びIL−10R2受容体と結合することで生物学的機能を果たす。IL−22R1はIL−22に特異的な受容体であり、皮膚、腎臓、消化系(膵臓、小腸、肝臓、大腸、結腸)及び呼吸系(肺、気管支)で発現される。公開された研究によると、インターロイキン−22は免疫調節剤である。
【0011】
特許出願されているインターロイキン−22の医薬用途に関して、血清トリグリセリドの低下、及び肥満に対するIL−22の医療用途が報告されている(国際公開第2006/073508号パンフレット、中華人民共和国特許出願公開第200510023103.0号明細書参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しがしながら現在、インターロイキン−22がウイルス性肝炎の治療に関して積極的な作用を及ぼし得ることが未だ見出されていない。
【0014】
本発明の目的は、有効なウイルス性肝炎の治療薬及びその用途、すなわち、インターロイキン−22(Interleukin−22)の哺乳動物のウイルス性肝炎(Viral hepatitis)の治療における用途である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第一の様態は、ウイルス性肝炎の治療薬を製造するためのヒトインターロイキン−22又はその二量体の用途を提供する。
【0016】
別の好適な例では、前記ウイルス性肝炎は、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎及びE型肝炎を含む。
【0017】
別の好適な例では、前記ヒトインターロイキン−22の二量体は、式Iで表されるヒトインターロイキン−22の二量体であり、
M1−L−M2 式I
ここで、
M1は、ヒトインターロイキン−22の第一の単量体であり、
M2は、ヒトインターロイキン−22の第二の単量体であり、
L は、前記第一の単量体及び第二の単量体の間に位置し、前記第一の単量体を第二の単量体に連結するリンカーである
前記ヒトインターロイキン−22の二量体は、インターロイキン−22の生物活性を保持しており、前記ヒトインターロイキン−22の二量体の血清半減期は前記第一の単量体又は第二の単量体の血清半減期の2倍以上である。
【0018】
別の好適な例では、前記リンカーL は、
(i ) 3〜50個のアミノ酸からなる短鎖ペプチドと、
(ii) 式IIで表されるポリペプチドと
−Z−Y−Z− 式II
ここで、
Y は、担体タンパク質であり、
Z は、無いか、又は1〜30個のアミノ酸の短鎖ペプチドであり、
「−」は、化学結合又は共役結合である
からなる群から選ばれる。
【0019】
別の好適な例では、前記第一の単量体及び第二の単量体は同一である。
【0020】
別の好適な例では、前記第一の単量体及び第二の単量体は異なる。
【0021】
別の好適な例では、前記生物活性は、
(a ) 肝臓の炎症及び肝細胞の壊死を減少させ、肝炎ウイルスによる肝細胞の損傷に保護作用を及ぼすこと、及び
(b ) 肝炎ウイルスによるALT /AST の増加を抑制すること
を含む。
【0022】
別の好適な例では、前記担体タンパク質は、二つのIgG のFc断片間でジスルフィド結合によって連結されている。別の好適な例では、前記ジスルフィド結合の数は2〜4個である。
【0023】
別の好適な例では、前記担体タンパク質は、アルブミン、又はヒトIgG のFc断片である。
【0024】
別の好適な例では、前記「−」はペプチド結合である。
【0025】
別の好適な例では、前記IL−22の二量体の血清半減期は、前記第一の単量体及び/又は第二の単量体の血清半減期の3倍以上、5倍以上、又は10倍以上である。
【0026】
別の好適な例では、前記二量体は、アミノ酸配列が配列番号2〜5で示されている単量体から構成されている二量体である。
【0027】
本発明の第二の様態は、構造が式Iで表されるヒトインターロイキン−22の二量体であって、
M1−L−M2 式I
ここで、
M1は、ヒトインターロイキン−22の第一の単量体であり、
M2は、ヒトインターロイキン−22の第二の単量体であり、
L は、前記第一の単量体及び第二の単量体の間に位置し、前記第一の単量体を第二の単量体に連結するリンカーである
インターロイキン−22の生物活性を保持しており、
前記ヒトインターロイキン−22の二量体の血清半減期は前記第一の単量体又は第二の単量体の血清半減期の2倍以上であるヒトインターロイキン−22の二量体を提供する。
【0028】
本発明の第三の様態は、薬学的に許容される担体及び式Iで表されるヒトインターロイキン−22の二量体を含み、
M1−L−M2 式I
ここで、
M1は、ヒトインターロイキン−22の第一の単量体であり、
M2は、ヒトインターロイキン−22の第二の単量体であり、
L は、前記第一の単量体及び第二の単量体の間に位置し、前記第一の単量体を第二の単量体に連結するリンカーである
前記ヒトインターロイキン−22の二量体は、インターロイキン−22の生物活性を保持しており、前記ヒトインターロイキン−22の二量体の血清半減期は前記第一の単量体又は第二の単量体の血清半減期の2倍以上である、ウイルス性肝炎を治療するために用いられる薬物組成物を提供する。
【0029】
別の好適な例では、前記二量体は、アミノ酸配列が配列番号3又は5で示されている単量体から構成されている二量体である。
【0030】
別の好適な例では、コロニー刺激因子の前記IL−22の二量体は、
(a ) IL−22−Fc複合体をコードするDNA 配列を含む発現ベクターで哺乳類細胞を形質転換するステップ、
(b ) 前記哺乳類細胞を培養するステップ、及び
(c ) 前記IL−22の二量体を分離して精製するステップ、
により製造される。
【0031】
言うまでもなく、本発明の範囲内において、本発明の上述した夫々の技術的特徴及び以下に具体的に述べる夫々の技術的特徴(例えば実施例)を互いに組み合わせて、新しい又は好ましい技術方案を構成できることが理解される。紙数に限りがあるため、ここで逐一説明しない。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明者は、幅広く綿密に研究したところ、意外なことに、インターロイキン−22がウイルスに誘導される肝炎に対して顕著な治療効果を示すことを初めて見出した。IL−22は、肝臓の機能を有効的に保護し、ウイルスによる血液ALT /AST の増加を著しく減少させることができる。また、IL−22単量体と比較すると、本発明のIL−22二量体は、体内における半減期を延ばし、薬物の動態学を改善し、注射頻度を減少することができ、特に体内における生物活性を著しく向上させることで、ウイルス性肝炎をより有効に治療することができる。これに基づき、本発明を完成させた。
【0034】
用語
用語「アミノ酸配列が略同一」とは、配列が同一であるか、又は一又は複数のアミノ酸の変化(欠失、増加、置換)による違いがあるが、この変化が生物活性をほとんど減少させず、すなわち、IL−22が標的細胞の受容体と結合することで生物学的機能を果たすことができる。「略同一」という要求を満たすインターロイキン−22は、グリコシル化された(即ち、天然由来か又は真核生物の発現系由来の)ものでもグリコシル化されていない(即ち、原核生物の発現系由来か又は化学合成された)ものでも、いずれも本発明に含まれる。
【0035】
用語「治療」とは、治療対象の疾患、症状、疾患の素質(predisposition)を治癒し、緩和し、改善し、軽減するために、治療すべき対象に本発明のインターロイキン−22を投与することである。
【0036】
用語「治療対象」とは、マウス、人や他の哺乳動物のことである。
【0037】
用語「治療有効量」とは、治療対象の体内で治療の目的が実現できるインターロイキン−22の量のことである。前記「治療有効量」は、インターロイキン−22の投与経路、使用する薬物の助剤及び他の薬物との併用の状況によって異なることが当業者に理解されるべきである。
【0038】
インターロイキン−22及びその製造
本発明で用いられている「インターロイキン−22」又は「IL−22」はタンパク質であり、該タンパク質は、(a )ドゥモーティエール(Dumoutier)等が米国特許第359117 号明細書に記載したヒト/マウスインターロイキン−22と略同一のアミノ酸配列、及び(b )天然のインターロイキン−22と同一の生物活性を有する。本発明のインターロイキン−22は、ヒトインターロイキン−22、組換えヒトインターロイキン−22、マウスインターロイキン−22及び/又は組換えマウスインターロイキン−22を含むが、これらに限定されない。
【0039】
また、「インターロイキン−22」は、PEG化IL−22及び共役修飾したIL−22タンパク質も含む。例えば、IL−22が高分子化され、半減期が延びるように、分子量5,000 〜100,000 の各種の活性化されたポリエチレングリコール(PEG )で修飾され得る。具体的な操作に関しては、グリーンワルド(Greenwald)等著,「生物有機化学及び医化学レター(Bioorg. Med. Chem. Lett.)」,1994年,4刊,p.2465、カリチェッティ(Caliceti)等著,「アイエル ファルマーコ(IL Farmaco)」,1993年,48,919、ザリスキー(Zalipsky)及びリー(Lee )著,「ポリエチレングリコール化学:生物技術と生物医学の応用」,ジェイ.エム.ハリス(J.M. Harris)編,プレナム出版(Plenum Press),ニューヨーク(N. Y. ),1992年を参照とする。好ましくは、マルチアーム型活性化PEG (中華人民共和国特許出願公開第ZL02101672.0号明細書、国際公開第9932139 号パンフレット、国際出願第PCT /US95/0755号、国際出願第PCT /US94/13013 号、米国特許第4640835 号明細書、米国特許第4496689 号明細書、米国特許第4301144 号明細書、米国特許第4670417 号明細書、米国特許第4791192 号明細書、米国特許第4179337 号明細書)を使用する。
【0040】
本発明のインターロイキン−22は、遺伝子組み換え技術でクローンして発現させたものを使用することができる。発現の宿主細胞は、原核細胞、酵母細胞又は高等真核生物細胞を含む。適用する原核宿主細胞は、G
+又はG
-菌、例えば大腸菌E. coli.、K12 MM294(ATCC 31,446)、X1776(ATCC 31,537)、W3110(ATCC 27,325)及びK5 772(ATCC 53,635)などの通常の手段で得られるE. coli.菌株を含むが、これらに限定されない。他の使用可能な原核細胞は、エルウイニア(Erwinia)、クレブシエラ(Klebsiella)、プロテウス(Proteus)、サルモネラ(Salmonella)、例えばネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、セラチア属(Serratia)、例えば霊菌(Serratia marcescans)、赤痢菌属(Shigella)、枯草菌(B. subtilis)、バチルス・リチェニホルミス(B. licheniformis)、シュードモナス属(Pseudomonas)、例えば緑膿菌(P. aeruginosa)、ストレプトミセス(Streptomyces)を含むが、これらに限定されない。E. coli. W3110は、組換えDNA製品の発酵宿主として使用されることが多いため、好ましい。
【0041】
原核細胞に加えて、真核細胞、例えば糸状菌(filamentous fungi)又は酵母菌(yeast)なども同様に本発明のインターロイキン−22の発現又はクローンに適用できる。出芽酵母(Saccharomyces)は、通常の低等真核宿主微生物であり、他の宿主には、例えば、分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)(ビーチ(Beach )及びナース(Nurse )著,ネイチャー(Nature),1981年,290 巻,p.140 、欧州特許出願公開第139383 号明細書)、クルイウェロマイセス菌(Kluyveromyces hosts)(米国特許第4943529 号明細書、フリー(Flee)等著,「バイオテクノロジー(Bio/Technology)」,1991年,9,p.968 −975 、例えばクルイウェロマイセスラクティス(K. lactis )(MW98−8C,CBS683,CBS4574;ルーベンコート(Louvencourt)等著,「ジャーナル・オブ・バクテリオロジー(J. Bacteriol. )」,1983年,154(2),p.737 −742 、クルイウェロマイセスフラギリス(K. fragilis)(ATCC 12,424 )、クルイウェロマイセスワルティ(K. waltii )(ATCC 56,500)、クルイウェロマイセスドロソフィララム(K. drosophilarum)(ATCC 36,906,ヴァン デン ベルグ(Van den Berg)等著,「バイオテクノロジー(Bio/Technology)」,1990年,8,p.135 、クルイウェロマイセスサーモトレランス(K. thermotolerans)、クルイウェロマイセスマーキアナス(K. marxianus)、ヤロウィア(yarrowia)(欧州特許出願公開第402226号明細書)、ピキア・パストリス(Pichia Pastoris)(欧州特許出願公開第183070号明細書、スリークリシャーナ(Sreekrishna)等著,「ジャーナル・オブ・ベーシック・ミクロバイオロジー(J. Basic Microbiol. )」,1988年,28巻,p.265 −278 、カンジダ菌(Candida)、トリコデルマリーシア(Trichoderma reesia)(欧州特許出願公開第244234号明細書)、アカパンカビ(Neurospora crassa)(ケース(Case)等著,「米国科学アカデミー紀要(Proc. Natl. Acad. Sci. USA)」,1979年,76巻,p.5259−5263、シワニオマイセス(schwanniomyces)、例えばシワニオマイセスオクシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis)(欧州特許出願公開第394538号明細書)、糸状菌(filamentous fungi)、例えばアカパンカビ(Neurospora)、アオカビ菌(Penicillium)、Tolypocladium(国際公開第91/00357 号パンフレット)、アスペルギルス菌(Aspergillus)、例えばアスペルギルス・ニデュランス(A. nidulans)(バランス(Balance)等著,「バイオケミカル・アンド・バイオフィジカル・リサーチ・コミュニケーション(Biochem. Biophys. Res. Commum.)」,1983年,112 ,p.284 −289 、チルバーム(Tilburm)等著,「遺伝子(Gene)」,1983年,26,p.205 −221 、エルトン(Yelton)等著,「米国科学アカデミー紀要(Proc. Natl. Acad. Sci. USA)」,1984年,81巻,p.1470−1474やクロカビ(A. niger)(ケリー(Kelly )及びハインス(Hynes )著,「EMBOジャーナル(EMBO J. )」,1985年,4巻,p.475−479 がある。メチロトローフ酵母(Methylotropic yeasts)は、同様に本発明のインターロイキン−22の発現に用いられ、各種のメタノールで生長できる酵母菌、例えば、ハンセヌラ菌(Hansenula)、カンジダ菌(Candida)、クロエケラ菌(kloeckera)、ピチア菌(Pichia)、出芽酵母(Saccharomyces)、トルロプシス菌(Torulopsis)、ロドトルラ菌(Rhodotorula)を含むが、これらに限定されない。メチロトローフ酵母類に属する典型的な菌種に関しては、シー.アンソニー(C. Anthony)著,「ザ・バイオケミストリー・オブ・メチロトローフ(The Biochemistry of Methylotrophs)」,1982年,p.269 を参照とする。
【0042】
グリコシル化された本発明のインターロイキン−22の発現に用いられる宿主細胞は、多細胞有機体由来のものである。無脊椎動物細胞の例として、昆虫細胞、例えばショウジョウバエS2(Drosophila S2)やSpodoptera Sf9、植物細胞を含む。適用する哺乳動物の宿主細胞の例として、チャイニーズハムスターの卵巣細胞(CHO )、COS 細胞を含む。特に、SV40で形質転換されたサル腎臓CV1細胞株(COS−7,ATCC CRL 1651)、ヒト胚胎腎臓細胞株293 (グラハム(Graham)等著,「ジャーナル・オブ・ジェネラル・バイオロジー(J. Gen Virol. )」,1977年,36巻,p.59、CHO /−DHFR(ウラーブ(Urlaub)及びチェイシン(Chasin)著,「米国科学アカデミー紀要(Proc. Natl. Acad. Sci. USA)」,1980年,77巻,p.4216、マウス睾丸栄養細胞(TM4 ,マザー(Mather)著,「バイオロジー・オブ・リプロダクション(Biol. Reprod. )」,1980年,23,p.243 −251 、ヒト肺細胞(WI38,ATCC CCL 75)、ヒト肝臓細胞(Hep G2,HB 8065)、マウス乳癌細胞(MMT 060562,ATCC CCL5 1)である。適切な宿主細胞の選択は、当業者に周知である。
【0043】
上述した宿主細胞は、インターロイキン−22の発現ベクター又はクローンベクターでトランスフェクトされるか又は形質転換された後、従来の栄養培地(nutrient media)で培養することができ、前記栄養培地は修飾後プロモーター(promoter)、選択性形質転換体(selecting transformant)の誘導又はインターロイキン−22をコードする遺伝子配列の増幅に適する。培地、温度、pHのような培養条件の選択は、当業者に周知である。細胞培養の繁殖力を最大化する一般的な原則、方案及び操作技術は、「哺乳類細胞のバイオデクノロジー:実践的方法(Mammalian Cell Biotechnology: a Practical Approach)」,エム.バトラー(M. Butler)編,IRL 出版(IRL Press),1991年、及びサムブルーク(Sambrook)等著,「スープラ(supra )」を参照する。
【0044】
真核細胞のトランスフェクション及び原核細胞の形質転換の方法、例えばCaCl
2 法、リン酸カルシウム沈殿法、リポフェクション法又はエレクトロポレーション法は、当業者に周知である。当業者は、使用する宿主細胞に応じて標準的な形質転換技術を選択することができるが、例えば、CaCl
2 法(サムブルーク(Sambrook)等著,「スープラ(supra )」)又はエレクトロポレーション法は通常、原核細胞に用いられ、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)の感染は主に一部の植物細胞の形質転換に用いられ(ショー(Shaw)等著,「遺伝子(Gene)」,1983年,23:315 及び国際公開第89/05859 号パンフレット)、細胞壁のない哺乳動物細胞にリン酸カルシウム沈殿法が使用でき(グラハム(Graham)及びヴァン ダー エービー(van der Eb)著,「ウィルス学(Virology)」,1978年,52,p.456 −457 、哺乳動物の宿主細胞のトランスフェクションに関しては、米国特許第4399216 号明細書に全面的に記載されている。酵母細胞の形質転換に関しては、ヴァン ソリンゲン(Van Solingen)等著,「ジャーナル・オブ・バクテリオロジー(J. Bact.)」,1977年,130 巻,p.946 、及びシャオ(Hsiao)等著,「米国科学アカデミー紀要(Proc. Natl. Acad. Sci. USA)」,1979年,76巻,p.3829を参照とする。他のDNA を細胞に導入する方法として、例えば核酸微量注射、エレクトロポレーション、完全細菌細胞の原形質体融合(bacterial protoplast fusion with intact cells)、又はポリカチオン法(polycations)があり、例えば1,5 −ジメチル−1,5 −ジアザウンデカメチレンポリメトブロミド(polybrene)、ポリオルニチン(polyornithine)などはいずれも本発明に使用され得る。各種の哺乳類細胞の形質転換技術に関する記載は、キーウィン(Keown)等著,「酵素学における方法(Methods in Enzymology)」,1990年,185 ,p.527 −537 及びマンスール(Mansour)等著,「ネイチャー(Nature)」,1988年,336 巻,p.348 −352 を参照とする。
【0045】
本発明のインターロイキン−22をコードするヌクレオチド配列(即ちcDNA又はゲノムDNA )を、複製可能なベクター(replicable vector)に挿入して遺伝子のクローン(DNA 増幅)又は発現を行うことができる。各種のベクター、例えばプラスミド、コスミド(cosmid、パッケージ型プラスミド)、ウイルス顆粒やファージなどはいずれも通常の手段で得られる。本分野の公知技術によって、本発明のインターロイキン−22をコードするヌクレオチド配列を通常の手順で複製可能なベクターにおける適切な制限エンドヌクレアーゼの部位に挿入することができる。一つの複製可能なベクターは通常、一つ又は複数のシグナル配列(signal sequence)、一つの複製起点(origin of replication)、一つ又は複数のマーカー遺伝子(marker gene)、一つのエンハンサー要素(enhancer element)、一つのプロモーター(promoter)、及び一つの転写終結配列(transcription termination sequence)を含むが、これらに限定されない。当業者は、本分野の標準的なライゲーション技術(ligation techniques)で一つ又は複数の上述した要素を含む適切な複製可能なベクターを構築することができる。
【0046】
本発明のインターロイキン−22は、遺伝子組換えで直接発現できるだけでなく、異種のポリペプチド及び融合ポリペプチドを形成する様態でも製造され得るが、後者は、成熟タンパク質又はポリペプチドのN末端のシグナル配列でもよいし、成熟タンパク質又はポリペプチドのN末端の特異的切断部位を有する他のポリペプチド断片でもよい。通常の場合、このシグナル配列は、上述した複製可能なベクターの一部、又は複製可能なベクターに挿入される本発明のインターロイキン−22をコードするヌクレオチド配列の一部でもよい。前記シグナル配列は、原核シグナル配列、例えばアルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、lpp 、又は熱安定性エンテロトキシンIIリーダー配列でもよい。酵母分泌系(yeast secretion)では、前記シグナル配列は、酵母インベルターゼのリーダー配列(yeast invertase leader)、α因子のリーダー配列(出芽酵母やクルイウェロマイセス菌のα因子リーダー配列を含む。米国特許第5010182 号明細書参照)、又は酸性ホスファターゼ、C. albicansのグルコースアミラーゼのリーダー配列(欧州特許出願公開第362179号明細書)でもよい。哺乳動物の発現系では、哺乳動物のシグナル配列はそのまま目的のタンパク質の分泌に使用することができ、このような配列は、相同又は類似の種の哺乳動物の分泌タンパク質由来のシグナル配列及びウイルス分泌リーダー配列を含む。
【0047】
発現ベクター及びクローンベクターはいずれも、ベクターが一又は複数の相応の宿主細胞で複製することができるようなヌクレオチド配列を含む。各種の細菌、酵母又はウイルスの宿主細胞に相応のヌクレオチド配列は、当業者に周知である。例えば、プラスミドpBR322の複製起点は多くのG−細菌に適用でき、2.mu. プラスミドの複製起点は酵母細胞に適用でき、各種のウイルスの複製起点(SV40、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、VSV 又はBPV )は哺乳類細胞内におけるクローンベクターに適用できる。
【0048】
発現ベクター及びクローンベクターは通常、選択遺伝子を含んでおり、「選択マーカー」とも呼ばれる。典型的な選択遺伝子のコードによるタンパク質は、(a ) 一部の抗生物質又は毒素、例えばアンピシリン、ネオマイシン、メトトレキサート、テトラサイクリンなどに耐性を有し、(b ) 栄養要求性欠陥(auxotrophic deficiencies)を補うことができ、(c ) 複合型培地が提供できない重要な栄養物質、例えば桿菌である宿主細胞に必要なD−アラニンラセマーゼを補充するコード遺伝子である。
【0049】
哺乳動物の宿主細胞に適する選択遺伝子は、本発明のインターロイキン−22のコード遺伝子を受けられる宿主細胞と区別できる能力を有しており、例えばDHFR又はチミジンキナーゼがある。適用できる野生型DHFRを選択遺伝子とする宿主細胞は、DHFR活性のないCHO 細胞株であり、該細胞株の製造及び繁殖方法に関しては、ウラーブ(Urlaub)等著,「米国科学アカデミー紀要(Proc. Natl. Acad. Sci. USA)」,1980年,77巻,p.4216を参照とする。酵母細胞に適する選択遺伝子は、酵母プラスミドYrp7で発現されるtrpl遺伝子である(スティンクコーム(Stinchcomb)等著,「ネイチャー(Nature)」,1979年,282 巻,p.39 、キングスマン(Kingsman)等著,「遺伝子(Gene)」,1979年,7:141 、シェーパー(Tschemper)等著,「遺伝子(Gene)」,1980年,10:157。trpl遺伝子は、トリプトファンで生長できない酵母菌の突然変異株、例えばATCC No.44047又はPEP4−1(ジョーンズ(Jones)著,「遺伝学(Genetics)」,1977年,85:12 のスクリーニングに使用され得る。
【0050】
発現ベクター及びクローンベクターは通常、mRNAの合成を導くように、人工的な操作で本発明のインターロイキン−22をコードするヌクレオチド配列に連結できる一つのプロモーターを有する。各種の宿主細胞に相応のプロモーターは当業者に公知である。原核宿主細胞に適するプロモーターは、β−ラクタマーゼ及びラクトースのプロモーター系(チャン(Chang)等著,「ネイチャー(Nature)」,1978年,275 巻,p.615 、ゴーデル(Goeddel)等著,「ネイチャー(Nature)」,1979年,281 巻,p.544 )、アルカリホスファターゼ、トリプトファン(trp )のプロモーター系(ゴーデル(Goeddel)著,「核酸の研究(Nucleic Acids Res.)」,1980年,8:4057、欧州特許出願公開第36776 号明細書)、ハイブリッドプロモーター、例えばtac プロモーター(デボール(deBoer)等著,「米国科学アカデミー紀要(Proc. Natl. Acad. Sci. USA)」,1983年,80巻,p.21−25)を含む。細菌の宿主細胞のプロモーターは同様に、人工的な操作で本発明のインターロイキン−22をコードするヌクレオチド配列に連結できるシャイン−ダルガノ(Shine −Dalgarno)(S.D.)配列を有する。
【0051】
酵母の宿主細胞に適するプロモーター配列は、3−ホスホグリセリン酸キナーゼのプロモーター(ハイツマン(Hitzeman)等著,「ザ・ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J. Biol. Chem.)」,1980年,255:2073)又はエノラーゼ、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース−6−リン酸イソメラーゼ、3−リン酸グリセリン酸ムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、グルコースリン酸イソメラーゼやグルコキナーゼのような他の解糖系酵素のプロモーター(ヘス(Hess)等著,「アドバンス・イン・エンザイム・レグレーション(J. Adv. Enzvme Reg. )」,1968年,7:149 、オーランド(Holland)著,「生化学(Biochemistry)」,1978年,17:4900 )を含む。
【0052】
一部の誘導可能な酵母プロモーターは、生長の状況に応じてより良好に転写を調節でき、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソシトクロムC、酸性ホスファターゼ、窒素代謝に関する分解酵素、メタロチオネイン、グリセルアルデヒド−3−リン酸、マルトース及びガラクトースの代謝酵素などのプロモーターを含む。酵母発現系に適するベクター及びプロモーターに関する詳細は欧州特許出願公開第73657 号明細書を参照とする。
【0053】
プロモーターは、哺乳動物の宿主細胞内で複製可能なベクターにおける本発明のインターロイキン−22をコードする遺伝子配列の転写を制御することができる。前記プロモーターは、ポリオーマウイルス、アビポックスウイルス(英国特許出願公開第2211504 号明細書)、アデノウイルス、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス、又はサル空胞ウイルス(SV40)などのウイルスゲノム由来のプロモーター、異種の哺乳動物由来のプロモーター、例えば、アクチンのプロモーター又は免疫グロブリンのプロモーター、及び熱ショックタンパク質のプロモーターを含み、これらのプロモーターが宿主細胞発現系と合うことが前提である。
【0054】
複製可能なベクターにエンハンサーを挿入することで、本発明のインターロイキン−22をコードする遺伝子配列の高等真核生物の発現系における転写を向上させることができる。エンハンサーは、DNA 分子のシスエレメントであり、通常10〜300bp であり、プロモーターに作用することによってDNA 分子の転写を向上させる。現在、哺乳動物の遺伝子(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α−フェトプロテイン、インスリン)由来のエンハンサー配列が多く知られている。真核ウイルス細胞のエンハンサー由来のものが多く使用されるが、例えば複製起点の下流(late side)に位置するSV40エンハンサー(100 〜270 bp)、サイトメガロウイルスの初期プロモーターのエンハンサー、複製起点の下流に位置するポリオーマウイルスのエンハンサー、アデノウイルスのエンハンサーがある。エンハンサーは、切断されて複製ベクターに位置する本発明のインターロイキン−22をコードするヌクレオチド配列の5’末端又は3’末端、好ましくはプロモーターの5’末端に挿入される。
【0055】
真核宿主細胞(酵母細胞、真菌細胞、昆虫細胞、植物細胞、動物細胞、人類細胞、又は他の多細胞有機体由来の有核細胞)における発現ベクターは、同様に転写終結及び安定化mRNAに必要なヌクレオチド配列を含有する。このような配列は通常、真核又はウイルスのDNA か又はcDNAの非翻訳領域の5’末端から取られるものであるが、3’末端から取られるものもある。前記「非翻訳領域」に含まれるヌクレオチド断片は、転写によって本発明のインターロイキン−22のmRNAの非翻訳領域のポリアデニル化断片が形成される。
【0056】
他の組換え脊椎動物培養系で本発明のインターロイキン−22の合成に用いられる方法、ベクター及び宿主細胞に関しては、ゲシング(Gething)等著,「ネイチャー(Nature)」,1981年,293 巻,p.620 −625 、マンテイ(Mantei)等著,「ネイチャー(Nature)」,1979年,281 巻,p.40−46、欧州特許出願公開第117060号明細書、及び欧州特許出願公開第117058号明細書を参照とする。
【0057】
IL−22二量体
本発明のIL−22二量体の構造は、式Iで表される。代表的な構造は、
図1〜
図3に示されている。ここで、担体タンパク質は、ヒトIgG (1,2,3,4 )のFc断片、又はヒトアルブミン(albumin )を含むが、これらに限定されない。
【0058】
IL−22は、担体タンパク質のC−末端にも、担体タンパク質のN−末端にも位置してもよい。
【0059】
本明細書で用いられている用語「連結ぺプチド」(linker)とは、IL−22単量体同士の間で連結作用を有する短鎖ペプチドである。連結ぺプチドの長さは、特に限定されない。連結ぺプチドの長さは通常、5〜50個のアミノ酸である。通常、IL−22単量体同士の間で形成される正確な折り畳み及び配座に影響しないか、又は著しく影響しない。連結ぺプチドの例として、以下のものを含むが、これらに限定されない。
【0060】
前記連結ぺプチドは、以下のアミノ酸配列から選ばれることが好ましい。
(a ) 疎水性アミノ酸Gly 及びPro から構成される3〜16個のアミノ酸配列、例えば、Gly −Pro −Gly −Pro −Gly −Pro 。
(b ) 多重クローニング部位でコードされるアミノ酸配列。該配列は、通常5〜20個、好ましくは10〜20個のアミノ酸である。
(c ) IL−22単量体以外のタンパク質由来のアミノ酸配列、例えばIgG 又はアルブミン由来のアミノ酸配列。
(d ) (a )、(b )及び(c )の組合せで形成されるアミノ酸配列。
【0061】
好ましい連結ぺプチドは、GSGGGSGGGGSGGGGS(配列番号1における147 −162 個目)及びASTKGP(配列番号3における147 −152 個目)を含む。
【0062】
また、融合タンパク質のN末端又はC末端に、IL−22単量体の活性に影響しない他のアミノ酸配列を更に付加してもよい。これらの付加されるアミノ酸配列は、発現(例えばシグナルペプチド)、精製(例えば6×His 配列)、出芽酵母のα−因子のシグナルペプチドの切断部位(Glu −Lys −Arg )、又は融合タンパク質の活性の促進に有利であることが好ましい。
【0063】
二量体の製造方法
本発明のIL−22二量体又は融合タンパク質をコードするDNA 配列は、全て人工合成としてもよい。PCR 増幅又は合成の方法でIL−22の第一の単量体及び/又はIL−22の第二の単量体のコードDNA 配列を得た後、これらを連結し、本発明の融合タンパク質をコードするDNA 配列を形成してもよい。
【0064】
宿主細胞の発現量を向上させるべく、遺伝子の転写及び翻訳に不利の配列がなくなるように、IL−22二量体のコード配列を改変し、例えば宿主細胞のコドンバイアスを利用してもよい。本発明では、酵母細胞又は哺乳動物細胞のコドンバイアスを利用し、コンピュータDNA ソフトでIL−22二量体遺伝子を検出し、イントロンの切断部位、転写終止配列を含む遺伝子における転写及び翻訳に不利な配列を除去してもよい。
【0065】
本発明の新規な融合タンパク質をコードするDNA 配列を得た後、DNA 配列を適切な発現ベクターに導入し、適切な宿主細胞に更に導入する。最後に、形質転換された宿主細胞を培養し、分離し、精製して本発明の新規な融合タンパク質を得る。
【0066】
本明細書に用いられている用語「ベクター」は、プラスミド、コスミド、発現ベクター、クローンベクター、ウイルスベクターなどを含む。
【0067】
本発明では、本分野で公知の各種のベクター、例えば市販のベクター担体が用いられる。例えば、市販のベクターを使用して、本発明の新規な融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を処理できるように発現調節配列に連結することで、タンパク質発現ベクターを形成することができる。
【0068】
本明細書に用いられている「処理できるように連結する」とは、直鎖DNA 配列のある部分が同一の直鎖DNA 配列の他の部分の活性に影響を及ぼすことができることである。例えば、シグナルペプチドDNA を前駆体として発現させてポリペプチドの分泌に関与させると、シグナルペプチド(分泌リーダー配列)DNA が、処理できるようにポリペプチドDNA に連結することができる。プロモーター調節配列の転写の場合、処理できるようにコード配列に連結する。リボソーム結合部位が翻訳可能な位置に置かれる場合、処理できるようにコード配列に連結する。通常「処理できるように連結する」とは、互いに近く、分泌リーダー配列にとって読み枠で隣接することである。
【0069】
本発明では、用語「宿主細胞」は、原核細胞及び真核細胞を含む。常用の原核宿主細胞の例として、大腸菌、枯草菌などが含まれる。常用の真核宿主細胞として、酵母細胞、昆虫細胞や哺乳動物細胞などが含まれる。前記宿主細胞として、真核細胞が好ましく、哺乳動物細胞がより好ましい。
【0070】
形質転換された宿主細胞を得た後、本発明の融合タンパク質の発現に適する条件でこの細胞を培養することによって、融合タンパク質を発現させることができる。その後、発現された融合タンパク質を分離する。
【0071】
薬物組成物及び使用方法
本発明のIL−22二量体は、より強い受容体活性化配列をもたらし、且つ優れた血清半減期を有するため、本発明のIL−22二量体、及び本発明のIL−22二量体を主活性成分とする薬物組成物はウイルス性肝炎の治療に有用である。前記ウイルス性肝炎は、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎及びE型肝炎を含む。
【0072】
本発明の薬物組成物は、安全有効量の範囲内で本発明のIL−22二量体と薬学的に許容される賦形剤又は担体を含む。ここで、「安全有効量」とは、化合物の量が病状の顕著な改善に十分であり、重度な副作用が生じないことを意味する。通常、薬物組成物は、0.001 〜1000mgのIL−22又はその二量体/製剤、好ましくは0.05〜300 mgのIL−22又はその二量体/製剤、より好ましくは0.5 〜200 mgのIL−22又はその二量体/製剤を含む。
【0073】
本発明の化合物及びその薬学的に許容される塩は、各種の製剤とすることができるが、本発明には、安全有効量の範囲内にある本発明のIL−22又はその二量体若しくはその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される賦形剤又は担体とが含まれる。ここで、「安全有効量」とは、化合物の量が病状の顕著な改善に十分であり、重度な副作用が生じないことを意味する。化合物の安全有効量は、治療対象の年齢、病状、治療段階などの具体的な状況に応じて確定される。
【0074】
「薬学的に許容される賦形剤又は担体」とは、ヒトに適用でき、且つ十分な純度及び十分に低い毒性を有する必要がある一種又は複数種の相溶性固体又は液体フィラー又はゲル物質を意味する。ここで、「相溶性」とは、組成物における各成分が本発明の化合物と配合することができ、また成分同士で配合することができ、化合物の効果を著しく低下させないことを意味する。薬学的に許容される賦形剤又は担体の一部の例として、セルロース及びその誘導体(例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースナトリウム、セルロースアセテートなど)、ゼラチン、タルク、固体潤滑剤(例えばステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム)、硫酸カルシウム、植物油(例えば大豆油、ゴマ油、落花生油、オリーブオイルなど)、多価アルコール(例えばプロピレングリコール、グリセリン、マンニトール、ソルビトールなど)、乳化剤(例えばツイン(登録商標))、湿潤剤(例えばドデシル硫酸ナトリウム)、着色剤、調味剤、安定剤、酸化防止剤、防腐剤、発熱性物質除去蒸留水などがある。
【0075】
本発明のIL−22又はその二量体を使用する場合、経口、直腸、胃腸外(静脈内、筋肉内又は皮下)、局部で投与することができる。
【0076】
経口投与に用いられる固体剤形は、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤及び顆粒剤を含む。これらの固体剤形では、活性化合物は通常、少なくとも一種の不活性賦形剤(又は担体)、例えばクエン酸ナトリウム又はリン酸二カルシウムと混合されるか、又は、(a )フィラー又は相溶剤、例えばでん粉、乳糖、ショ糖、グルコース、マンニトールやケイ酸、(b )バインダー、例えばヒドロメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ショ糖やアラビアゴム、(c )保湿剤、例えばグリセリン、(d )崩壊剤、例えば寒天、炭酸カルシウム、馬鈴薯澱粉やタピオカ澱粉、アルギン酸、複合ケイ酸塩や炭酸ナトリウム、(e )溶液遅延剤、例えばパラフィン、(f )吸収促進剤、例えばアンモニウム化合物、(g )湿潤剤、例えばセタノール、グリセリンモノステアレート、(h )吸着剤、例えばカオリン、(i )潤滑剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ドデシル硫酸ナトリウム、若しくはこれらの混合物のような成分と混合される。カプセル剤、錠剤及び丸剤では、剤形に緩衝剤が含まれてもよい。
【0077】
固体剤形、例えば錠剤、ピル、カプセル剤、丸剤や顆粒剤は、コーディングやシェル剤、例えば、ケーシング及び他の本分野で公知の材料から製造され得る。不透明剤を含んでもよく、且つこのような組成物では、活性物又は化合物は遅延の様態で消化管のある部分で放出されてもよい。使用できる埋込成分の実例として、重合物質やワックス系物質が挙げられる。必要な場合、活性化合部も上述した賦形剤のうちの一種又は複数種とマイクロカプセルの様態に形成されてもよい。
【0078】
経口投与に用いられる液体剤形は、薬学的に許容される乳液、溶液、懸濁液、シロップ又はチンキ剤を含む。活性化合物に加えて、液体剤形は、本分野で通常使用される不活性希釈剤、例えば水又は他の溶媒、相溶剤及び乳化剤、例えばエタノール、イソプロパノール、炭酸エチル、酢酸エチル、プロピレングリコール、1,3 −ブタンジオール、ジメチルホルムアミド及び油、特に、綿実油、落花生油、コーン油、オリーブ油、ヒマシ油やゴマ油又はこれらの物質の混合物などを含んでもよい。
【0079】
これらの不活性希釈剤に加えて、組成物は助剤、例えば湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、甘味料、矯味剤や香料を含んでもよい。
【0080】
活性化合物に加えて、懸濁液は、懸濁剤、例えばエトキシ化イソオクタデカノール、ポリオキシエチレンソルビトールやソルビタンエステル、微晶質セルロース、メトキシアルミニウムや寒天又はこれらの物質の混合物などを含んでもよい。
【0081】
胃腸外注射用組成物は、生理的に許容される無菌の水含有溶液又は無水溶液、分散液、懸濁液や乳液、及び再溶解して無菌の注射可能な溶液又は分散液にするための無菌粉末を含む。適切な水含有担体又は非水性担体、希釈剤、溶媒又は賦形剤は、水、エタノール、多価アルコール及びその適切な混合物を含む。
【0082】
局部投与のための本発明のIL−22又はその二量体の剤形は、軟膏剤、散剤、湿布剤、噴霧剤や吸入剤を含む。活性成分は、無菌条件下で生理的に許容される担体、防腐剤及び緩衝剤、又は必要に応じて使用される促進剤と混合される。
【0083】
本発明のIL−22又はその二量体を単独で投与してもよいし、又は他の薬学的に許容される化合物と併用して投与してもよい。
【0084】
本発明のインターロイキン−22又はその二量体を含むマイクロカプセルは、本発明のインターロイキン−22の徐放投与に使用することができる。組換えタンパク質のマイクロカプセル徐放投与技術は、組換えヒト成長ホルモン(rhGH)、組換えヒトインターフェロン(rhIFN )、インターロイキン−2及びMNrgp120への応用に成功した(ジョンソン(Johnson)等著,「ネイチャー・メディシン(Nat. Med. )」,1996年,2,p.795 −799 、ヤスダ(Yasuda)著,「バイオメディカル・セラピー(Biomed. Ther)」,1993年,27,p.1221−1223、国際公開第97/03692 号パンフレット、国際公開第96/40072 号パンフレット、国際公開第96/07399 号パンフレット、米国特許第5654010 号明細書)。
【0085】
本発明のインターロイキン−22又はその二量体の徐放性製剤は、優れた生物兼用性及び幅広い生分解性を有する乳酸グリコール酸重合体(PLGA)の製造に使用され得る。PLGAの分解物、乳酸及びグリコール酸は、人体に素早く排出される。この重合体の分解能力は、分子量及び組成に応じて数ヶ月から数年に延びることがある(ルイス(Lewis )著,「ラクチド/グリコリド重合体からの生物活性剤の制御放出(Controlled release of bioactive agents from lactide/glycolide polymer)」、エム.チェイシン(M. Chasin)及びアール.レンジャー(R. Langer)編,「薬物送達システムとしての生体分解性重合体(Biodegradable Polymers as Drug Delivery Systems)」,マーセル・デッカー社(Marcel Dekker),ニューヨーク,1990年,p.1 −41)。
【0086】
本発明の薬物組成物の投与量及び濃度の範囲は、実際の使用状況に応じて変わる。実際の要求に応じて適切な投与量及び投与様態を選択することは当業者に周知である。異なる種、例えばヒト及びマウスにおける薬物の投与量の範囲の調整に関しては、ヤコビ(Yacobi)等著,「トキシコキネティクス及び新薬開発(Toxicokinetics and New Drug Development)」,ペルガモン出版(Pergamon Press),ニューヨーク,1989年内のモルデンテ.ジェイ(Mordenti. J.)及びチャペル.ダブリュ(Chappell, W.)著,「トキシコキネティクスにおける異種間尺度の利用(The use of interspecies scaling in toxicokinetics)」p.42−96を参照とする。
【0087】
薬物組成物を使用する場合、安全有効量の本発明のIL−22又は二量体を、治療を必要とする哺乳動物(例えばヒト)に使用し、用量は薬学上効果があるとされている投与量であり、体重60kgのヒトの場合、毎回の投与量は通常0.01〜300 mgであり、好ましくは0.5 〜100 mgである。言うまでもなく、具体的な投与量では、投与の様態、患者の健康状況などの要素を更に考慮すべきであり、全て優れた医者の技能の範囲内である。
【0088】
本発明の主な利点は以下の通りである。
1.インターロイキン−22又はその二量体は、動物モデルで有効にウイルス性肝炎を治療できることが実証された。
2.IL−22二量体の体内半減期が長くなり、薬物の動態学を改善し、注射頻度を減少させ、体内の生物活性を著しく向上させることができる。
3.IL−22の同一のモル濃度でIL−22単量体と比較すると、IL−22二量体はより強い体内STAT3 活性化シグナルを有するため、治療効果を向上させた。
【0089】
以下、具体的な実施例によって本発明を更に説明する。これらの実施例は本発明を説明するためにだけに用いられ、本発明の範囲を制限するものではないと理解すべきである。以下の実施例で具体的な条件が示されていない実験方法は通常、例えばサムブルーク(Sambrook)等著、「モレキュラー・クローニング:研究室マニュアル」,ニューヨーク,コールド・スプリング・ハーバー研究所出版社,1989年に記載されている条件などの通常の条件に従うか、又は製造業者が推薦する条件に従う。
【0090】
実施例1
通常の方法で製造して精製し、構造が
図1〜
図3に示されているIL−22二量体を得た(配列は配列番号1で示されているか、又は単量体配列は配列番号2〜5で示されている)。
【0091】
実施例2
IL−22二量体の体内半減期
ラットにIL−22二量体(配列が配列番号2で示されている二つのIL−22単量体から構成されている二量体)を一回100 μg /kgで皮膚下注射した。薬物動態学のパラメータを以下の表1に示している(n=6)。IL−22単量体では、ラットにおける半減期が約1.3 時間である。
【0093】
実施例3
IL−22又はその二量体のマウス肝臓pSTAT3への影響
雄及び雌は同一の数であり、体重が20〜22グラムである正常ICR マウス52匹を使い、13群に分けた。各群4匹であった。投与前1群の動物を殺処分し、肝臓組織を取って液体窒素で保存し、肝臓のリン酸化STAT3 (pSTAT3)の基礎レベルを測定した。6群の動物に組換えIL−22を一回40μg /kgの投与量で皮膚下注射した。別の6群の動物に同一モル量の組換えIL−22二量体(配列が配列番号4で示されている二つのIL−22−Fc単量体から構成されている二量体であり、1モルの二量体におけるIL−22は2モルで計算する)を一回100 μg /kgの投与量で皮膚下注射した。注射後、2、4、8、24、48及び72時間で肝臓組織を夫々取り、液体窒素で保存し、更に肝臓組織のホモジネート液を調製してタンパク質の含有量を測定し、ELISA 法(STAT3[pY705] phosphor ELISA Kit、Invitrogen社製)でpSTAT3レベルを検出した。
【0094】
その結果、
図4に示されているように、正常マウスにIL−22(40μg /kg)を注射した場合、肝臓のリン酸化STAT3 レベルを著しく高めることができ、最大値が約2時間後に現れ、8時間後に正常レベルに戻った。正常マウスに同一モル数のIL−22のIL−22二量体を100 μg /kg注射した場合、肝臓のリン酸化STAT3 レベルを著しく高めることができ、最大値が約24時間後に現れ、48時間後にまだ高いレベルにあり、72時間後に略正常レベルに戻った。
【0095】
上述した結果から、IL−22及びIL−22二量体はいずれもシグナル伝達及び転写活性化因子3(STAT3 )を活性化する生物活性を有することが示された。
【0096】
同一モル数のIL−22分子投与量で、IL−22二量体の生物活性がIL−22単量体の生物活性より著しく優れていることを注目すべきである。
【0097】
実施例4
IL−22又はその二量体のウイルスに誘導されたマウス肝炎の治療における作用
6〜8週齢の雄C57 /BLマウス50匹を準備し、各群10匹であるように分けた。4群のマウスに夫々MHV −A59 ウイルスを2×10
4pfu/匹で腹腔注射した。MHV −A59 ウイルスの製造及びウイルスの滴定方法に関しては、チン.ジェイ(Chin. J )著,「臨床薬理学及び治療学(Clin Pharmacol Ther )」,2005年,10(11),1253を参照とする。ウイルスの注射2時間後、治療群に夫々組換えヒトIL−22を投与量100 μg /kgで毎日1回皮膚下注射した。又は、ペグ化された(Pegylated)ヒトIL−22を100 μg /kgで1日おきに1回注射した。又は、組換えヒトIL−22二量体(IL−22−IgG −Fc融合タンパク質)(配列が配列番号2で示されている二つのIL−22−Fc単量体から構成されている二量体であり、1モルの二量体におけるIL−22は2モルで計算する)を100 μg /kgで1日おきに1回注射した。組換えヒトIL−22群に5回注射し、ペグ化された(Pegylated)ヒトIL−22及び組換えヒトIL−22二量体治療群に3回夫々注射した。陰性対照群1は正常C57 /BL雌マウスであり、陰性対照群2はMHV −A59 ウイルスに感染されたマウスであり、溶媒担体(0.5 %マウス血清、PBS 、pH7.0 )を注射した。ウイルス注射前に、各群から夫々マウスを2匹取り、眼窩から100 μL 採血し、ALT レベル及びAST レベルを測定し、基礎値とした。各群を夫々MHV −A59 ウイルスに感染された後3日目及び5日目で採血してALT レベル及びAST レベルを測定した。5日目に、2%ペントバルビタールで動物を麻酔し、肝臓を分離し、4%ホルムアルデヒドで固定し、病理切片を取り、HE染色した。
【0098】
その結果、
図5〜
図7に示されているように、組換えヒトIL−22単量体(IL−22又はPEG 化IL−22)及びIL−22二量体を毎日注射する場合、肝炎ウイルスによるALT /AST の増加率を抑制し、肝臓の炎症及び肝臓細胞の壊死を減少させ、肝炎ウイルスによる肝臓細胞の損傷に保護作用を及ぼすことができる。
【0099】
同一モル数のIL−22分子の投与量と換算すると、薬物効果の比較結果は、IL−22二量体>PEG化IL−22>IL−22であったことに注目すべきである。つまり、IL−22二量体を注射したマウスの場合、ウイルス性肝炎の治療効果がIL−22単量体を注射した動物群だけでなく、半減期が長いPEG 化IL−22単量体を注射した動物群よりも遥かに優れていた。そのため、IL−22二量体の治療効果は、IL−22単量体及びPEG 化IL−22の治療効果よりも著しく優れていた。IL−22単量体又はPEG 化IL−22とIL−22二量体とのタンパク質分子量の比は約1:5であるので、IL−22二量体は、IL−22分子モル投与量がIL−22又はPEG 化IL−22よりも低い場合、より顕著な治療効果を示す。
【0100】
実施例5
IL−22−Fc複合体からなるIL−22二量体
a.IL−22二量体発現細胞株の構築
全遺伝子合成のIL−22−Fc複合体のcDNA配列(配列番号6又は配列番号7で示されており、特に、配列番号6は配列番号2で示されている単量体をコードし、配列番号7は配列番号3で示されている単量体をコードする)を使用して、ヒトIL−22単量体の遺伝子をIgG2のFc遺伝子断片と連結させ、5’末端にEcoRI 部位を導入した。その後、哺乳類細胞の発現に必要なエレメント、例えばKozak 配列及びシグナルペプチド配列を使用して、3’末端にXbaI部位を導入し、市販のpUC19 プラスミドにクローンし、pIL −22−Fcと名付け、E. coli TG1 を形質転換した。
pIL −22−FcをEcoRI 及びXbaIで切断し、約1300bpのIL−22−Fc断片を回収し、EcoRI 及びXbaIで切断したpcDNA3(Invitrogen社)発現プラスミドと連結し、発現プラスミドpEX −IL−22−Fcを構築した。発現プラスミドpEX −IL−22−Fcを用いて直鎖化でCHO 細胞をトランスフェクトし、IL−22二量体を発現させ、ELISA 法で発現量を検出し、タンパク質の産量の高い細胞株を選択し、細胞ライブラリーを調製した。
【0101】
b.IL−22二量体の分離及び精製
組換えCHO 細胞を通常の方法で培養することにより、組換えタンパク質を発現させた。培養終了後、(IL−22複合体、IL−22二量体、IL−22多量体及び代謝物を含む)細胞上清を収集した後、ろ過して多段ゲルクロマトグラフィで精製し、例えば、rProtein A Sepharose FF (GE Healthcare社,cat#17−1279−04)で捕集し、20〜50mMのクエン酸緩衝液、0.1 〜2MのNaCl及びpH3.5 〜3.8 の緩衝液で溶離し、90%を上回る純度のIL−22二量体を得た後、PPA 複合媒体のゲルクロマトグラフィ(PALL Life Sciences社 Cat#:k364−01)にかけ、20〜50mMのNaAc/HAC 、pH3.0 〜5.0 の緩衝液で溶離し、溶離液を低pHでウイルス不活性とし、Nano20膜でウイルス除去ろ過などを行い、最終的にIL−22二量体を得た。
【0102】
分離して精製したIL−22二量体の純度は、(逆相HPLC分析によると)95%を超えていた。電気泳動から、(配列番号2で示されている二つの単量体から構成されている)精製後のIL−22二量体の分子量が(還元型SDS −PAGE分析によると)52±10KDであり、予測値と一致することが示された。紫外吸収スペクトルは280 nmであった。IL−22二量体は、体外でColo205 細胞を刺激してIL−10(ED50が10〜1000ng/mL)を得ることができた。
【0103】
実施例6
IL−22二量体
の体内における薬物動態学
体重が3〜5キログラムであり健康である成年アカゲザルを雄及び雌は半分ずつ8匹準備し、体重に応じてランダムに2群に分け、2群は夫々IL−22二量体30μg /kg投与群及び100 μg /kg投与群であり、4匹/群であり、雄及び雌は半分ずつであった。(配列番号2で示されている二つの単量体から構成されている)相応の投与量のIL−22二量体を夫々0.2 ml/kgの投与体積で一回皮膚下注射(投与)し、投与前、及び投与後0.5 、1、2、4、8、16、24、48、72、96、120 、144 、160 時間で下肢伏在静脈から0.6 ml採血し、室温で30分置いた後、血清を分離し、ELISA キット(Biolegend社,Cat#434507)で血清中のIL−22二量体濃度を検出し、検出結果に対してノンコンパートメントモデルで薬物動態学のパラメータを分析した。結果を以下の表2に示している。IL−22
の体内における半減期(t1/2z)は約2時間である。
【0105】
実施例7
IL−22二量体及びIL−22の体外活性分析
Colo205 細胞をRPMI1640 10%FBS培地で培養し、細胞が対数期に生長した時点で上清を捨て、PBS を入れて残った培地を洗浄し、0.25%Trypsin −EDTAを2〜5mL入れて消化し、培地を入れて均一にし、1500rpm で5分遠心し、細胞を収集した後、基礎培地で5.0 ×10
5 Cell/mlの細胞懸濁液とし、96穴プレートに夫々100 μL /穴添加し、37℃で5%CO
2 インキュベータで一夜培養した。次の日に、CO
2 インキュベータ内の96穴プレートを取り出し、4℃で5分間800 rpmで遠心し、各穴から細胞上清液を90μL 取り出し、0.1 %BSA /RPMI1640を90μL 補充し、(配列番号2で示されている二つの単量体から構成されている)IL−22二量体を最終濃度が1.4 、4.1 、12.3、37.0、111.1 、333.3 、1000、3000ng/mLになるように入れ、IL−22を最終濃度が0.01、0.04、0.12、0.37、1.1 、3.3 、10、30ng/mLになるように入れ、37℃で5%CO
2 インキュベータで20時間培養し、細胞上清液を収集し、IL−
10 ELISA キット(R&D社,Cat#S1000B)でOD値を測定した。その結果、図
8に示されているように、IL−22二量体の半数効果濃度(ED50)の値が229 ng/mL(2675pM)であり、IL−22のED50が0.54ng/mL(32.4pM)であった。
【0106】
以上の結果から、体外実験ではIL−22の活性がIL−22二量体の活性よりも僅かに優れていたが、IL−22二量体の体内における薬物動態学のパラメータ及び有効活性はIL−22よりも遥かに優れていたため、IL−22二量体の生物活性の評価に体内実験モデルが適切であることが示された。
【0107】
各文献が夫々単独に引用されるように、本発明に係る全ての文献を本出願で参考として引用する。また、本発明の上記の内容を読み終えた後、本分野の技術者が本発明を各種の変形や調整を行うことができるが、このような等価の様態のものは本発明の請求の範囲に含まれることを理解すべきである。