(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
微粒子状のケイ酸カルシウム水和物の水性懸濁液が、水溶性カルシウム化合物と、水溶性ケイ酸塩化合物との反応によって得られたものであり、ここで前記水溶性カルシウム化合物と、前記水溶性ケイ酸塩化合物との反応を、水溶液の存在下で行い、当該水溶液が、水溶性の、水硬性結合剤用の流動化剤として適したコームポリマーを含有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケイ酸カルシウム水和物と、ヒドロゲルを形成可能な少なくとも1種の水膨潤性ポリマーとを含有する固体組成物に関し、さらに、当該組成物の製造方法、当該組成物の、硬化促進剤としての使用、及びセメント製造における粉砕助剤としての使用に関する。本発明はまた、前記組成物を含有する建材混合物に関する。
【0002】
セメント建材混合物用の粉末状硬化促進剤であって、固体状態に基づき、基本的に乾燥モルタル混合物での使用に適したものは、従来技術から公知である。このような促進剤の例は、硝酸カルシウム、ギ酸カルシウム、塩化カルシウム、及び炭酸リチウムである。塩化物又は硝酸塩を含有する促進剤の欠点は、例えば鉄筋コンクリートの腐食耐性に対する否定的な作用である。国の基準に基づき、使用制限がある。硬化させる建材表面での風化は、特にカルシウム塩(例えばギ酸カルシウム)を用いる場合、同様に問題となる。
【0003】
多くの適用では、硬化をさらに大幅に促進させること、及びそのセメント系(例えばモルタル又はコンクリート)における比較的高い初期強度を得ることに対する必要性が存在する。しかしながら前述の促進剤タイプ、及びその他の市販の促進剤によっては、当業者はこの目的を達成できず、また市販の促進剤ではもちろん、最終強度の不所望の損失が観察され、特に供給量が比較的多い場合はそうである。つまり、多くの適用では、より高い初期強度を達成することに対して大きな需要が存在し、このことは現在、従来技術で公知の促進剤からは可能にならない。
【0004】
ケイ酸カルシウム水和物(C−S−H)の懸濁液は最近、効率の高い促進剤としてセメント含有建材混合物、例えばコンクリートで使用される。この懸濁液により、明らかに初期強度(6時間)を、市販の促進剤に比べて高くできる。ここで最終強度(28日間)の減少は、実質的に観察されない。相応する懸濁液は、WO 2010026155 A1に記載されている。ただし、実用的な理由から、結合剤として基本的にセメントを含有する乾燥モルタル混合物を、ケイ酸カルシウム水和物(C−S−H)の水含有懸濁液で作製することは不可能である。と言うのも水含分によって、少なくとも部分的に事前に結合剤が水和してしまい、これは受け入れられないからである。
【0005】
セメント含有乾燥モルタル混合物の専門分野においては、非乾燥モルタル適用(例えばコンクリート)と同様に、適切な高い効果を有する促進剤に対する強い需要があり、これによってまた乾燥モルタル系において明らかな初期強度の向上が、好ましくは最終強度(28日後の強度)の損失なく、可能になる。
【0006】
よって本発明の課題は、従来技術の上記欠点を克服する促進剤を提供することである。当該促進剤は特に、初期硬度の効果的な上昇を可能にするべきであり、これは乾燥モルタル混合物において同時に、水敏感性の結合剤、若しくは水により水硬結合する結合剤(例えばセメント)との良好な相容性を有する。特に好ましくは、初期硬度の効果的な上昇時に、建材混合物の最終強度が否定的に損なわれないという課題が設定される。
【0007】
本発明の課題は、ケイ酸カルシウム水和物と、ヒドロゲルを形成可能な少なくとも1種の水膨潤性ポリマーとを含有する固体組成物によって、さらに前記固体組成物の製造方法によって解決され、当該製造方法では、以下の工程が実施される:
a)ケイ酸カルシウム水和物の水性懸濁液を、ヒドロゲルを形成可能な少なくとも1種の水膨潤性ポリマーと接触させる工程、
b)工程a)からの生成物を、140℃未満の温度、好ましくは100℃未満の温度、特に好ましくは80℃未満の温度、最も好ましくは15〜80℃の温度で乾燥させる工程。
【0008】
前記課題はまた、前記組成物を、セメント、スラグ砂、フライアッシュ、ケイ酸塩粉塵、メタカオリン、天然ポゾラン、焼成オイルシェール、及び/又はカルシウム−アルミン酸塩−セメントを含有する建材混合物、又はセメント及び硫酸カルシウムベースの結合材を含有する建材中で硬化促進剤として用いることによって解決される。特に好ましいのは、結合剤として基本的にセメントを含有する建材混合物である。前記課題は同様に、本発明による組成物をセメント製造の際に粉砕助剤として用いることによって解決される。前記課題はまた、本発明による組成物と、セメント、スラグ砂、フライアッシュ、ケイ酸塩粉塵、メタカオリン、天然ポゾラン、焼成オイルシェール、及び/又はカルシウム−アルミン酸塩−セメントを含有する建材混合物、又は本発明による組成物、セメント、及び硫酸カルシウムベースの結合材を含有する建材混合物によって解決される。
【0009】
本発明による組成物は、固体状態で存在する。この組成物は好ましくは粉末状で、好ましくはセメント含有結合剤系用の結合促進剤及び硬化促進剤として適している。本発明による固体組成物中における水含分は好ましくは、15質量%未満、特に好ましくは10質量%未満である。
【0010】
本発明による固体組成物は好ましくは、促進剤組成物である。この組成物は無機成分と有機成分を含有する。無機成分は変性された微細分散状のケイ酸カルシウム水和物(C−S−H)とみなすことができ、これは外部由来イオン、例えばマグネシウム、アルミニウム、又は硫酸イオンを含有することができる。
【0011】
ケイ酸カルシウム水和物(さらなる加工のための原料として)はまず、水性懸濁液の形で、好ましくはコームポリマーの流動化剤の存在下で製造することができ、それは例えばWO 2010/026155 A1に記載されている。この懸濁液は好ましくは、WO 2010/026155 A1の請求項1〜14又は15〜38に記載の方法によって製造できる。この際に好ましくは、水溶性カルシウム化合物と、水溶性ケイ酸塩化合物との反応が起こり、ここで水溶性カルシウム化合物と、水溶性ケイ酸塩化合物との反応は、水溶液の存在下で行われ、当該水溶液は、水硬性結合剤用の流動化剤として適したコームポリマーを含有するものである。
【0012】
ここでは通常、ケイ酸カルシウム水和物(C−S−H)を微分散形態で含有する懸濁液が得られる。懸濁液の固体含分は好ましくは、5〜35質量%、特に好ましくは10〜30質量%、特に好ましくは15〜25質量%である。
【0013】
無機成分のケイ酸カルシウム水和物(C−S−H)はたいていの場合、その組成に関して、以下の組成式によって記載される:
a:CaO、SiO
2、b:Al
2O
3、c:H
2O、d:X
2O、e:WO、
Xは、アルカリ金属であり、
Wは、アルカリ土類金属であり、Wは好ましくは、カルシウムとは異なるアルカリ土類金属であり、
0.1≦a≦2、好ましくは0.66≦a≦1.8であり、
0≦b≦1、好ましくは0≦b≦0.1であり、
1≦c≦6、好ましくは1≦c≦6.0であり、
0≦d≦1、好ましくは0≦d≦0.4であり、
0≦e≦2、好ましくは0≦e≦0.1である。
【0014】
特に好ましくは、上記組成式において、a、b、及びeについて好ましい範囲が満たされるようにモル比を選択する(0.66≦a≦1.8;0≦b≦0.1;0≦e≦0.1)。
【0015】
好適にはケイ酸カルシウム水和物は、本発明による組成物中でフォシャジャイト、ヒレブランダイト、クソノトライト(Xonotlit)、ネコイット(Nekoit)、クリノトバモライト、9Åトバモライト、リバーシデリット:Riversiderit、11Åトバモライト、14Åトバモライト(プロムビエライト:Plombierit)、ジェニット(Jenitt)、メタジェニット(Metajenitt)、カルシウムコンドロダイト、アフィライト、α−C
2SH、デライト(Dellait)、ジャフェイト(Jaffeit)、ローゼンハーナイト(Rosenhahnit)、キラライト、及び/又はスオルナイトの形で存在し、特に好ましくはクソノトライト、9Åトバモライト(リバーシデリット)、11Åトバモライト、14Åトバモライト(プロムビエライト)、ジェニット、メタジェニット、アフィライト、及び/又はジャフェイトとして存在する。カルシウムのケイ素に対するモル比の値は好ましくは、ケイ酸カルシウム水和物中で0.6〜2、特に好ましくは1.0〜1.8である。カルシウムの水に対するモル比の値は、ケイ酸カルシウム水和物中で好適には0.6〜6、特に好適には0.6〜2、とりわけ0.8〜2である。
【0016】
好ましくはケイ酸カルシウム水和物(C−S−H)の粒径は、本発明による固体組成物中で1,000nm未満、特に好ましくは500nm未満、とりわけ好ましくは200nm未満である(Malvern社のZetaSizer Nanoを用いた光散乱により測定)。
【0017】
組成物の有機成分は、ヒドロゲルを形成可能な少なくとも1種の水膨潤性ポリマーである。ヒドロゲルとは、水を含有するが、水に不溶性のポリマーと定義され、その分子は化学的に、例えば共有結合若しくはイオン結合によって、又は物理的に、例えばポリマー鎖の接続(Verschlaufen)によって連結されて、三次元網目構造になっている。ここで、三次元網目構造を形成するためには共有結合による連結が好ましい。組み込まれた親水性ポリマー成分により、ヒドロゲルは水中で膨潤してかなり体積が増加するが、その物質的な結合が失われることはない。この際にヒドロゲルは、かなりの量の水を吸収する。本発明において、ヒドロゲルを形成可能な水膨潤性ポリマーとは、ヒドロゲルの乾燥した前段階である。ヒドロゲルを形成可能な水膨潤性ポリマーはまた、超吸収体とも呼ばれる。この超吸収体は水と接触の際に、自身の質量の最大数倍の水を吸収することができる。ヒドロゲルを形成可能な、本発明による水膨潤性ポリマーの吸収能力の特定は、衛生用品工業のために開発された基準であるedana 441.2-02に従って行うが、以下のように基準を修正する。試験時には、0.9%のNaCl水溶液の代わりに、1%のギ酸カルシウム水溶液を用いる。「ティーバック試験」とも言われるこの手法は、規定量(約200mg)の超吸収性ポリマーを、ティーバック内に密閉し、30分間、1%のギ酸カルシウム水溶液に浸す。続いて、ティーバックを5分間にわたって滴を切り、これを計量する。超吸収ポリマーの無いティーバックを、対照値(Blindwet)として一緒に試験する。吸収能力を計算するためには、以下の式を用いる:
吸収能力=(最終的な測定量−対照値−初期測定量)/初期測定量(g/g)
【0018】
好ましくはedana 441.2-02の基準に従って、ギ酸カルシウムの1%水溶液を用いて試験した、ヒドロゲルを形成可能な本発明による水膨潤性ポリマーの吸収能力は、5g/g超、特に好ましくは15g/g超であり、とりわけ好ましくは20g/g超である。
【0019】
ヒドロゲルを形成可能な水膨潤性ポリマーは好ましくは、架橋された親水性ポリマーである。ヒドロゲルを形成可能な本発明による水膨潤性ポリマーの例はとりわけ、α)アニオン性の架橋された高分子電解質、β)カチオン性の架橋された高分子電解質、γ)両性の架橋された高分子電解質、及び/又はδ)非イオン性の架橋されたポリマー、好ましくはラジカル重合から得られる非イオン性の架橋されたポリマーである。ヒドロゲルを形成可能な水膨潤性ポリマーについて、前述の1種以上の代替物を用いることができる。これらの代替物については、さらに好ましい実施態様において、さらに詳細に説明する。
【0020】
高分子電解質の群のうち、特にα)アニオン性の架橋された高分子電解質とγ)両性の架橋された高分子電解質の群のうち、より好ましくないのは、架橋されたポリカルボキシレートがベースの水膨潤性ポリマー、特に純粋なポリカルボキシレートベース、又はポリカルボキシレート割合が非常に高いポリマーベースのものである。と言うのもその水吸収性は、強イオン性溶液中では(例えば建材混合物中がたいていの場合そうである)、比較的弱いからである。このようなポリマーは例えば、衛生用品工業で使用することができる。
【0021】
本発明においては、塩濃度が高くても、特にセメント水性系において通常そうであるようにカルシウムイオン濃度が高くても、高い水吸収能力を有する超吸収体を用いることが有利である。つまり好ましいのは、ヒドロゲルを形成可能なイオン性の水膨潤性ポリマー、特にα)アニオン性の架橋された高分子電解質、β)カチオン性の架橋された高分子電解質、及び/又はγ)両性の高分子電解質である。
【0022】
また、δ)非イオン性の架橋されたコポリマーであって、水吸収性が低いものを使用することもできるが、ただしこれは、塩の輸送についてほとんど影響をもたらさない。
【0023】
ヒドロゲルを形成可能な水膨潤性のポリマーは、微粒子状のケイ酸カルシウム水和物(C−S−H)の水性懸濁液と接触する際に、ケイ酸カルシウム水和物を三次元網目構造中に受け入れてよい。このようにして生成するヒドロゲルを乾燥させる際に多分、三次元ポリマー網目構造がケイ酸カルシウム水和物の微粒子を取り囲み、これにより他のケイ酸カルシウム水和物粒子に対して一定のシールドが形成される。これにより微粒子の凝集は、乾燥時にほとんど防止できる。乾燥工程時に安定化される、本発明による水膨潤性ポリマーの効果は、先に述べた事実関係に基づくと考えられる。安定剤を用いないか、又は本発明によらない物質を添加した微粒子状ケイ酸カルシウム水和物(C−S−H)の乾燥試験(比較のため)によっては、有効な促進剤はほとんど得られない。このことはケイ酸カルシウム水和物(C−S−H)粒子が、本発明による安定化剤の不在下では、凝集してしまうことに起因する。ヒドロゲルを形成可能な水膨潤性ポリマーを用いることによって初めて、水性懸濁液中で充分に安定な、微粒子状ケイ酸カルシウム水和物粒子を乾燥時であっても安定化させることが可能になったのであり、これにより前記粒子を固体状態で、(促進剤としての)実質的な効果が損われること無く移行できる。
【0024】
ケイ酸カルシウム水和物と、ヒドロゲルを形成可能な少なくとも1種の水膨潤性ポリマーとを含有する固体組成物は好ましくは、前記ケイ酸カルシウム水和物が、水による(ポルトランド)セメントの水和反応に由来しない。
【0025】
ケイ酸カルシウム水和物と、ヒドロゲルを形成可能な少なくとも1種の水膨潤性ポリマーとを含有する固体組成物は好ましくは、前記固体組成物が、(ポルトランド)セメントを含有しない。ケイ酸カルシウム水和物と、ヒドロゲルを形成可能な少なくとも1種の水膨潤性ポリマーとを含有する固体組成物は特に好ましくは、前記固体組成物が、水と接触している(ポルトランド)セメントを含有しない。水と接触している(ポルトランド)セメントとは、ここではまた(ポルトランド)セメントと、水との半乾燥混合物(inzwischen getrocknete Mischungen)であるとも理解されるべきであり、当該混合物は、好ましくは水含分を僅かに含有できる。
【0026】
水膨潤性ポリマーの好ましい実施態様は従属請求項に挙げられており、以下で詳細に説明する。
【0027】
本発明の好ましい実施態様では、ヒドロゲルを形成可能な水膨潤性ポリマーの、ケイ酸カルシウム水和物に対する質量比は、1:10〜3:1、特に好ましくは1:5〜2:1である。水膨潤性ポリマーを、前述の質量比に相応するよりも少なく用いると、乾燥時における水膨潤性ポリマーの安定化作用は弱くなり、かつ固体状態での組成物の促進剤としての作用は薄れる。安定剤の量をさらに多くしても、促進剤の作用についてさらに実質的な改善は得られず、組成物の経済性はもはやほとんど得られない。
【0028】
好ましい組成物は、ヒドロゲルを形成可能な水膨潤性ポリマーが、以下のものから成る群から選択されているものである:
α)アニオン性の架橋された高分子電解質
β)カチオン性の架橋された高分子電解質
γ)両性の架橋された高分子電解質、及び/又は
δ)非イオン性の架橋されたポリマー、好ましくはラジカル重合により得られる非イオン性の架橋されたポリマー。
【0029】
ここで「架橋された」という用語は好ましくは、各水膨潤性ポリマー内に架橋基が少なくとも1つ存在することを意味し、当該ポリマーは、前記架橋基とは異なる少なくとも2つのポリマー成分の間の結合連結作用、好ましくは共有結合による結合連結作用をもたらすものである。架橋基によるポリマー成分間の結合連結は好ましくは、結合連結に好ましくは1つの分岐が存在するように構成されている。「架橋された」という用語は特に好ましくは、各水膨潤性ポリマー内に1つより多くの架橋基が存在していることを意味し、当該ポリマーは、前記架橋基とは異なるポリマー成分の間の複数の結合連結作用、好ましくは共有結合による結合連結作用をもたらすものである。
【0030】
とりわけ好ましいのは、多価エチレン性不飽和ビニル基を有するモノマーから誘導される架橋性構造単位である。このような構造単位は例えば、ラジカル重合可能な、エチレン性不飽和ビニル基のみを有するモノマーと一緒にラジカル(共)重合で反応させて、各水膨潤性ポリマーにすることができる。
【0031】
α)アニオン性の架橋された高分子電解質の変法には、アニオン基として好ましくはスルホネート、スルフェート、ホスフェート、及び/又はホスファイトを含有するポリマーが含まれる。スルホネートが、アニオン基として特に好ましい。カルボキシレート基の割合が非常に高いポリマーは、あまり好ましくない。カルボキシレートは、強イオンを含有する、特にカルシウムを含有する水性系には、著しい水吸収性も、また超吸収剤としての作用ももたらさないため、あまり好ましくない。カルボキシレート基の割合は、全アニオン基の全量に対して、好ましくは40mol%未満である。
【0032】
β)カチオン性の架橋された高分子電解質の変法には、カチオン基として好ましくは第四級アンモニウム塩を含有するポリマーが含まれる。
【0033】
γ)両性の架橋された高分子電解質の変法には、アニオン基(好ましくは先にα)で挙げたアニオン基)もカチオン基(好ましくは先にβ)で挙げたカチオン基)も含有するポリマーが含まれる。アニオン基の数の、カチオン基の数に対する比は、好ましくは95:5〜5:95、特に好ましくは80:20〜20:80である。
【0034】
好ましくは、α)アニオン性の架橋された高分子電解質、β)カチオン性の架橋された高分子電解質、及びγ)ラジカル重合から得られる両性の架橋された高分子電解質が得られる。
【0035】
δ)非イオン性の架橋されたポリマーの変法には、非イオン性ポリマーが含まれる。これらのポリマーは好ましくは、電荷が無いにも拘わらず充分な水吸収性を達成するために、親水性である。好ましくは、非イオン性の架橋されたポリマーは、ラジカル重合から得られる。
【0036】
α)アニオン性の架橋された高分子電解質、β)カチオン性の架橋された高分子電解質、γ)両性の架橋された高分子電解質、又はδ)非イオン性の架橋されたポリマーが、ラジカル重合から得られるものであれば、三次元網目構造へと架橋させる作用を有するモノマーを用いるのが好ましい。好適には架橋性モノマーは、多価エチレン性不飽和ビニル基を有し、これはラジカル重合に適したものである。架橋性モノマーの詳細な説明は、本発明のさらなる好ましい実施態様の説明で行う。
【0037】
好ましくは、アニオン性、カチオン性、両性の架橋された高分子電解質も、また非イオン性の架橋されたポリマーも、相応して荷電されたモノマー又は非荷電性モノマーをラジカル重合することによって生成される。ここでアニオン性及びカチオン性の変法は、相応して荷電されたモノマーの場合のみに用いられ、両性の高分子電解質の場合には、アニオン性モノマーもカチオン性モノマーも用いられる。非イオン性の架橋されたポリマーの場合、非荷電性のモノマーを用いる。ただし、非イオン性、つまり中性のモノマーが、3つの変法α)、β)、及びγ)全ての場合において、排除されることはない。
【0038】
変法α)のポリマーは好ましくは、アニオン性モノマーから、特に好ましくはスルホネートから誘導される構造単位を有する。好ましくは変法α)のポリマーは、アニオン性モノマーから、好ましくはスルホネートから誘導される構造単位を、全モノマーの合計に対して、5〜99.99mol%の量、特に好ましくは20〜80mol%の量で含有する。
【0039】
好ましくは変法β)のポリマーは、カチオン性モノマーから誘導される構造単位を、全モノマーの合計に対して、5〜99.99mol%の量、特に好ましくは20〜80mol%の量で含有する。
【0040】
γ)両性の架橋された高分子電解質の場合、アニオン性とカチオン性モノマーから誘導される構造単位の合計が好ましくは、全モノマーの合計に対して、5mol%超、特に好ましくは20mol%超である。アニオン性モノマーから誘導される構造単位の、カチオン性モノマーから誘導される単位に対する比は、好適には95:5〜5:95、特に好適には80:20〜20:80である。
【0041】
本発明による水膨潤性ポリマーの製造は、ラジカル重合によって、それ自体公知の方法で各構造単位を形成するモノマーを連結させることにより、行うことができる。酸として存在する全てのモノマーは、遊離酸又はその塩の形で重合させることができる。さらに酸の中和は、相応する塩基の添加によって、また共重合によって行うことができ、重合の前又は後に部分中和することも、同様に可能である。モノマー又はコポリマーの中和は例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、及び/又はアンモニアといった塩基によって行うことができる。同様に適切な塩基は、第一級第二級、若しくは第三級の、それぞれ分枝状若しくは非分枝状のアルキル基を有する、C
1〜C
20アルキルアミン、C
1〜C
20アルカノールアミン、C
5〜C
8シクロアルキルアミン、及び/又はC
6〜C
14アリールアミンである。1種以上の塩基を使用することができる。アルカリ金属水酸化物及び/又はアンモニアによる中和が好ましく、特に好ましいのは、水酸化ナトリウムである。無機又は有機の塩基は、それぞれの酸によって比較的良好な水溶性塩が形成されるように選択するべきである。
【0042】
モノマーの共重合は好ましくは、ラジカル性のバルク重合、溶液重合、ゲル重合、エマルション重合、分散液重合、又は懸濁液重合によって行う。本発明による生成物は親水性の水膨潤性コポリマーであるため、水相における重合、転相エマルションにおける重合、又は逆相懸濁液における重合が好ましい。特に好ましくい実施態様では、反応をゲル重合として、又は逆相懸濁液として、有機溶剤中で行う。
【0043】
超吸収性ポリマーの製造は、特に好ましい実施態様では、断熱重合として行い、またレドックス開始剤系で、また光開始剤で開始することができる。さらに、両方の開始選択肢の組み合わせが可能である。レドックス開始剤系は、少なくとも2つの成分、すなわち、有機若しくは無機の酸化剤と、有機若しくは無機のレドックス剤とから成る。ここではしばしば、過酸化物単位を有する化合物が使用され、例えば無機過酸化物、例えばアルカリ金属硫酸塩と過硫酸アンモニウム、アルカリ金属過リン酸塩と、過リン酸アンモニウム、過酸化水素、過酸化水素塩(過酸化ナトリウム、過酸化バリウム)、又は有機過酸化物、例えばベンゾイルペルオキシド、ブチルヒドロペルオキシド、又は過酸、例えば過酢酸である。しかしながらこれらに加えてまた、他の酸化剤を使用することができ、それは例えば過マンガン酸カリウム、過塩酸ナトリウム、及び過塩酸カリウム、ジクロム酸カリウムなどである。レドックス剤としては、硫黄含有化合物、例えば亜硫酸塩、チオスルフェート、スルフィン酸、有機チオール(例えばエチルメルカプタン、2−ヒドロキシエタンチオール、2−メルカプトエチルアンモニウムクロリド、チオグリコール酸)などが使用できる。加えて、アスコルビン酸、及び価数の小さい金属塩[銅(I);マンガン(II):鉄(II)]も使用できる。リン化合物も使用でき、それは例えば次亜リン酸ナトリウムである。
【0044】
光重合の場合、光開始剤に分解作用をもたらす紫外線で開始させる。光開始剤としては例えば、ベンゾイン、及びベンゾイン誘導体、例えばベンゾインエーテル、ベンジル、及びベンジル誘導体、例えばベンジルケタール、アリールジアゾニウム塩、アゾ開始剤、例えば2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ヒドロクロリド、及び/又はアセトフェノン誘導体を使用することができる。
【0045】
レドックス開始剤系における酸化性成分と還元性成分の質量割合は、好ましくはそれぞれ0.00005〜0.5質量%の範囲、特に好ましくはそれぞれ0.001〜0.1質量%の範囲である。光開始剤については、この範囲は好ましくは0.001〜0.1質量%、特に好ましくは0.002〜0.05質量%である。ここで酸化性成分と還元性成分、及び光開始剤について記載した質量%はそれぞれ、共重合に使用するモノマーの質量に対するものである。
【0046】
共重合は好ましくは、水溶液中、好ましくは濃縮水溶液中で、非連続的に重合槽内で(バッチ法)、又は連続的にUS-A-4857610に記載された「エンドレスバンド」法で行う。別の可能性としては、連続的若しくは非連続的に稼働させる混練反応器内における重合がある。この方法は通常、−20℃から20℃の温度で、好ましくは−10℃〜10℃の温度で開始させ、大気圧でさらなる熱供給をせずに行い、ここでは重合熱によって、モノマー含分に依存して50〜150℃の最大最終温度が得られる。共重合終了後には通常、ゲルとして存在する重合体を微粉砕する。この微粉砕されたゲルを、実験室レベルで行う場合には、空気循環式乾燥機内で70〜180℃、好ましくは80〜150℃で乾燥させる。工業的なレベルでは、この乾燥を連続方式で、同じ温度範囲で、例えばベルト式乾燥機で、又は流動床乾燥機で行うことができる。
【0047】
さらなる好ましい実施態様においては、共重合を水性モノマー相の逆相懸濁重合として、有機溶剤中で行う。ここで好ましくは、水中に溶解させ、任意で中和したモノマー混合物を、水性モノマー相が不溶性又は難溶性の有機溶剤の存在下で重合させる。好適には「油中水型乳化剤(W/O乳化剤)」、及び/又は低分子若しくは高分子化合物がベースの保護コロイドの存在下で作業し、モノマーに対して0.05〜5質量%、好ましくは0.1〜3質量%の割合で使用する。W/O乳化剤と保護コロイドは、安定剤とも呼ばれる。逆相懸濁重合技術で安定剤として公知の通常の化合物、例えばヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロースブチレート混合エーテル、エチレンと酢酸ビニルとのコポリマー、スチレンとアクリル酸ブチルとのコポリマー、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、又はポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、及びプロピレンオキシド及び/又はエチレンオキシドのブロックコポリマーが使用できる。
【0048】
有機溶剤としては例えば、直鎖脂肪族炭化水素、例えばn−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、分枝鎖状の脂肪族炭化水素(イソパラフィン)、脂環式炭化水素、例えばシクロヘキサンとデカリン、並びに芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエン、及びキシレンが使用できる。さらに、アルコール、ケトン、カルボン酸エステル、ニトロ化合物、ハロゲン含有炭化水素、エーテル、及び他の多くの有機溶媒が適している。好ましいのは、水と共沸混合物を形成する有機溶剤であり、特に好ましいのは、共沸時にできるだけ水含分が高いものである。
【0049】
水膨潤性ポリマーはまず、膨潤形態で微細に分布された水の液滴として有機懸濁液媒体中で生じ、好適には水の除去によって固体の球形粒子として有機懸濁剤中で単離される。懸濁剤の分離、及び乾燥後に、粉末状の固体が残る。逆相懸濁重合の公知の利点は、重合条件のバリエーションにより、粉末の粒径分布を制御できること、よって粒径分布を調整するためのさらなる方法工程(粉砕工程)がたいていは回避できることである。
【0050】
本発明の好ましい実施態様は、以下のように特徴付けられる組成物であって、アニオン性の架橋された高分子電解質α)中に、一般式(I)のスルホン酸基含有構造単位が、好ましくは5〜99.99mol%、特に好適には20〜80mol%含まれているものである:
【化1】
式中、
R
1は、同一か又は異なり、水素及び/又はメチル基を表し、
R
2、R
3、R
4はそれぞれ、同一か又は異なり、それぞれ相互に独立して、水素、炭素数1〜6の分枝状又は非分枝状の脂肪族炭化水素基、及び/又は炭素数6〜14の芳香族炭化水素基を表し、
Mは、同一か又は異なり、水素、1価又は2価の金属カチオン及び/又はアンモニウムイオンを表し、
aは、同一か又は異なり、1/2かつ/又は1を表す。二価金属イオンの場合、aは1/2の値を取る。
【0051】
一般式(I)に相応するスルホン酸基含有構造単位は好ましくは、1種以上のモノマー種、すなわち2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミドブタンスルホン酸、及び/又は2−アクリルアミド−2,4,4−トリメチルペンタンスルホン酸の共重合に由来するか、又は上記酸の各塩に由来する。特に好ましいのは、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸と、その塩化合物である。ここで酸の塩化合物に属するカチオンは、それぞれ一価又は二価の金属イオンとして存在することができ、例えば好適にはナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、又はマグネシウムイオンとして、又はアンモニア、第一級、第二級、若しくは第三級のC
1〜C
20アルキルアミン、C
1〜C
20アルカノールアミン、C
5〜C
8シクロアルキルアミン、及びC
6〜C
14アリールアミンから誘導されるアンモニウムイオンとして存在できる。アルキル基はそれぞれ、分枝状であっても、非分枝状であってもよい。相応するアミンの例は、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、フェニルアミン、またジフェニルアミンである。好ましいカチオンは、アルカリ金属イオン、及び/又はアンモニウムイオンであり、特に好ましいのは、ナトリウムイオンである。
【0052】
さらなるアニオン性モノマー成分としては、α)アニオン性の架橋された高分子電解質中で、またγ)両性の架橋された高分子電解質中でも、さらにエチレン性不飽和の水溶性カルボン酸及び/又は無水カルボン酸を、重合の際に使用することができ、水膨潤性ポリマー中の全モノマーの総モル数に対して、好適には40mol%未満の量、特に好適には25mol%未満の量で用いる。エチレン性不飽和カルボン酸とは、例えばアクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、α−クロロアクリル酸、α−シアノアクリル酸、β−メタクリル酸(クロトン酸)、α−フェニルアクリル酸、β−アクリルオキシプロピオン酸、ソルビン酸、α−クロロソルビン酸、2’−メチルイソクロトン酸、ケイ皮酸、p−クロロケイ皮酸、β−ステアリルアクリル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサクロン酸、グルタコン酸、アコニット酸、マレイン酸、フマル酸、及び/又はトリカルボキシエチレンであり得る。無水カルボン酸としては、無水マレイン酸が使用できる。上述のさらなるアニオン性モノマー成分はまた、γ)両性の架橋された高分子電解質中にアニオン性成分として含まれていてよく、水膨潤性ポリマー中の全モノマーの総モル数に対して、好ましくは40mol%未満の量、特に好適には25mol%未満の量で含まれていてよい。
【0053】
本発明の好ましい実施態様は、以下のように特徴付けられる組成物であって、カチオン性の架橋された高分子電解質β)中に、カチオン性の第四級窒素原子を有する一般式(II)の構造単位が、好ましくは5〜99.99mol%、特に好適には20〜80mol%含まれているものである:
【化2】
式中、
R
1は、同一か又は異なり、水素及び/又はメチル基を表し、
R
7、R
8、R
9、R
10はそれぞれ、同一か又は異なり、それぞれ相互に独立して、水素、炭素数1〜20の分枝状又は非分枝状の脂肪族炭化水素基、炭素数5〜8の脂環式炭化水素基、及び/又は炭素数6〜14のアリール基を表し、
mは、同一か又は異なり、1〜6の整数を表し、
Xは、同一か又は異なり、酸素及び/又はN−R
10を表し、
Y
-aは、同一か又は異なり、ハロゲン化物イオン、C
1〜C
4アルキル硫酸イオン、C
1〜C
4アルキルスルホン酸イオン、及び/又は硫酸イオンを表し、
aは、同一か又は異なり、1/2及び/又は1を表す。二価の荷電性イオン、例えば硫酸イオンの場合、aは1/2の値を取る。
【0054】
カチオン性の水膨潤性高分子電解質において、一般式(III)に相応する四級化された窒素原子を有する構造単位は好適には、[2−(アクリロイルオキシ)−エチル]−トリメチルアンモニウム塩、[2−(メタクリロイルオキシ)−エチル]−トリメチルアンモニウム塩、[3−(アクリロイルアミノ)−プロピル]−トリメチルアンモニウム塩、及び/又は[3−(メタアクリロイルアミノ)プロピル]−トリメチルアンモニウム塩という群から選択される1種以上のモノマー種の重合に由来する。
【0055】
好ましいのは、γ)両性の架橋された高分子電解質中に、一般式(I)のスルホン酸基含有構造単位と、カチオン性の四級化された窒素原子を有する一般式(II)の構造単位とが含まれていることによって特徴付けられる組成物である。構造式(I)及び(II)とは、既に先に記載したものである。式(I)に記載のアニオン性モノマーは、好適には5〜95mol%の量で、式(II)に記載のカチオン性モノマーは好適には5〜95mol%の量で、γ)両性の架橋された高分子電解質中に含まれている。カチオン性ポリマーとアニオン性ポリマーとの合計は、好適には5mol%〜99.99mol%、特に好適には20mol%〜80mol%である。mol%での上記記載はそれぞれ、ラジカル重合によって得られる全構造単位の合計に対するものであり、換言すれば、各ポリマー中の全モノマーの合計に対するものである。
【0056】
好ましいのは、以下のように特徴付けられる組成物であって、一般式(III)の(メタ)アクリルアミド基含有構造単位を、それぞれラジカル重合によって得られる全構造単位の総数に対して、好ましくは30〜94mol%の量で、特に好ましくは40〜80mol%の量で、α)アニオン性の架橋された高分子電解質中、β)カチオン性の架橋された高分子電解質中、及び/又はγ)両性の架橋された高分子電解質中に、含有するものである:
【化3】
式中、
R
1は、前述と同じ意味を表し、
R
5及びR
6はそれぞれ同じか又は異なり、それぞれ相互に独立して、水素、炭素数1〜20の分枝状又は非分枝状の脂肪族炭化水素基、炭素数5〜8の脂環式炭化水素基、及び/又は炭素数6〜14のアリール基を表す。
【0057】
構造単位(III)は例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−ベンジルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミド、及び/又はN−三級ブチルアクリルアミドという1種以上のモノマー種の共重合に由来する。好ましいのは、メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、及びメタクリルアミドであり、特に好ましいのは、アクリルアミドである。アニオン性の、カチオン性の、及び両性の、架橋された高分子電解質中には、式(III)の(メタ)アクリルアミド基含有構造単位が、それぞれラジカル重合により得られる全構造単位の総数に対して、好ましくは30〜94mol%、特に好ましくは40〜80mol%、極めて好ましくは50〜70mol%、含有されている。
【0058】
さらなる好ましい実施態様において、δ)ヒドロゲルを形成可能な非イオン性の架橋されたポリマーは、一般式(III)の(メタ)アクリルアミド基含有構造単位を有する。式(III)は、先に説明した通りである。構造単位(III)は好ましくは、同様に先に挙げたアクリルアミド基含有モノマー種、1種以上の共重合に由来する。ここでも好ましいのは、(メタ)アクリルアミド、及びN,N−ジメチル(メタ)アクリアミドであり、特に好ましいのは、アクリルアミドである。式(III)に記載の構造単位は好ましくは、それぞれラジカル重合により得られる全構造単位の総数に対して、50〜99.99mol%の量で含有されている。
【0059】
好ましい実施態様において本発明は、以下の変法:
α)アニオン性の架橋された高分子電解質
β)カチオン性の架橋された高分子電解質
γ)両性の架橋された高分子電解質、及び/又は
δ)非イオン性の架橋された高分子電解質
の組成物に関し、その特徴は、ヒドロゲルを形成可能な水膨潤性ポリマーが、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和ビニル基のみを有するモノマーから誘導される構造単位と、多価エチレン性不飽和ビニル基を有するモノマーから誘導される架橋性構造単位とを有することであり、ここで好ましくは、多価エチレン性不飽和ビニル基を有するモノマーから誘導される構造単位の割合は、全モノマーの合計に対して0.01〜10mol%、特に好ましくは0.1〜5mol%である。
【0060】
三次元網目構造へのポリマーの架橋は好ましくは、変法α)、β)、γ)、及びδ)においてラジカル重合の間に、多価エチレン性不飽和ビニル基を有するモノマーから誘導される架橋性構造単位を重合導入することによって行うことができる。各水膨潤性ポリマーα)、β)、γ)、又はδ)において、多価エチレン性不飽和ビニル基を有するモノマーから誘導される構造単位の割合は好ましくは、各水膨潤性ポリマーにおける全モノマーの合計に対して0.01〜10mol%、特に好ましくは0.1〜5mol%である。多価エチレン性不飽和ビニル基の効果は、前記ビニル基が、架橋又はポリマー鎖の橋かけによって網目構造の形成させることに基づく。架橋性モノマー無しでは、公知の直鎖状ポリマーが得られるであろう。
【0061】
多価エチレン性不飽和ビニル基を有するモノマー(架橋モノマー)から誘導される構造単位は例えば、(メタ)アクリレート基、ビニルエーテル基、アリル基、及び/又は(メタ)アクリルアミド基を少なくとも2つ有する。
【0062】
加水分解しやすい架橋剤と、加水分解安定性の架橋剤とは区別される。加水分解安定性架橋剤とは、網目構造中に組み込まれてpH値とは無関係に、特に好ましくは7超の高いpH値でも、好ましくは9超でも、その架橋作用を保つ架橋剤と理解されるべきである。つまり、好ましくは多価エチレン性不飽和ビニル基を有する架橋モノマーのラジカル重合によって導入される網目構造の連結点は、膨潤媒体のpH値が変わることによって開くことはない。膨潤媒体とは、水を含有する建築化学的な混合物と理解されるべきであり、この混合物に、本発明による組成物が結合促進という目的のため、また初期硬度の上昇のために導入される。これはたいてい、セメント含分に基づき、強アルカリ性である。加水分解安定性の架橋剤の例は、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、及び1分子あたり1個超のマレインイミド基を有するモノマー、例えばヘキサメチレンビスマレインイミド;1分子あたり1個超のビニルエーテル基を有するモノマー、例えばエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、及び/又はシクロヘキサンジオールジビニルエーテル、例えばシクロヘキサン−1,4−ジオールジビニルエーテルである。アリル基を1個超有するアリルアミノ化合物又はアリルアンモニウム化合物、例えばトリアリルアミン及び/又はテトラアリルアンモニウム塩もまた、使用できる。加水分解安定性の架橋剤にはまた、アリルエーテル、例えばテトラアリルオキシエタン、及びペンタエリトリットトリアリルエーテルが含まれる。
【0063】
いくつかの適用では、特に自立式の系、例えばタイル接着剤の場合には、加水分解安定性の架橋剤を利用することが有利である。と言うのも加水分解安定性の架橋剤は、乾燥モルタル又はタイル接着剤と水との混合時に超吸収剤として作用するからである。 水の一部は建材から抽出され、有利には別の添加剤、例えば分散粉末及びセルロースエーテルの添加量を減らすことができる。この効果は、DE 10 2007 027470 A1に記載されている。これとは逆に、加水分解安定性の架橋剤は、網目構造に組み込まれて、pH値が変わることによって、特にpH値が上昇することによって、その架橋作用を失い得る。もちろん、加水分解安定性の架橋剤と、加水分解しやすい架橋剤とを組み合わせることもできる。
【0064】
好ましい組成物は、ラジカル重合によって得られる水膨潤性ポリマーにおいて、全モノマーの総モル数に対して、40mol%未満、特に好ましくは25mol%未満、カルボン酸モノマー、好ましくはモノカルボン酸モノマーが含まれていることを特徴とする。カルボン酸モノマーは、そのアニオン特性に基づき、特にα)アニオン性の架橋された高分子電解質、及び/又はγ)両性の架橋された高分子電解質に、重合導入することができる。
【0065】
好ましくはラジカル重合により得られる水膨潤性ポリマー中では、重合のためにさらなるモノマーを使用することができ、それは例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、ビニルピリジン、イソプレノール、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、又はアルコキシレートであり、好ましくは上記エチレン性不飽和アルコールのエトキシレート、(メタ)アクリル酸と、アルキルポリアルキレングリコール(好ましくはメチルポリエチレングリコール(M−PEG))とのエステル、スチレン、酢酸ビニル、及び/又はヒドロキシ基含有(メタ)アクリ酸エステル、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、及び/又はヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートである。好ましくは、トリスチリルフェノール−ポリエチレングリコール−1100−メタアクリレート、ベヘニルポリエチレングリコール−1100−メタクリレート、ステアリルポリエチレングリコール−1100−メタクリレート、トリスチリルフェノール−ポリエチレングリコール−1100−アクリレート、トリスチリルフェノール−ポリエチレングリコール−1100−モノビニルエーテル、ベヘニルポリエチレングリコール−1100−モノビニルエーテル、ステアリルポリエチレングリコール−1100−モノビニルエーテル、トリスチリルフェノール−ポリエチレングリコール−1100−ビニルオキシ−ブチルエーテル、ベヘニルポリエチレングリコール−1100−ビニルオキシブチルエーテル、トリスチリルフェノール−ポリエチレングリコール−ブロック−プロピレングリコールアリルエーテル、ベヘニルポリエチレングリコール−ブロック−プロピレングリコールアリルエーテル、ステアリルポリエチレングリコール−ブロック−プロピレングリコールアリルエーテル、アリルポリエチレングリコール−(350〜2000)、メチルポリエチレングリコール−(350〜2000)−モノビニルエーテル、ポリエチレングリコール−(500〜5000)−ビニルオキシ−ブチルエーテル、ポリエチレングリコール−ブロック−プロピレングリコール−(500〜5000)−ビニルオキシ−ブチルエーテル、及びメチルポリエチレングリコール−ブロック−プロピレングリコールアリルエーテルが含まれていてよい。
【0066】
好ましいのは、先の段落で挙げた非イオン性モノマーの共重合から誘導される構造単位であり、水膨潤性ポリマー中の全モノマーの総モル数に対して1〜30mol%の量、特に好ましくは2〜15mol%の量で含まれている。
【0067】
加水分解しやすい架橋性構造単位は好ましくは、pH値9〜14において水性環境で加水分解するモノマーから誘導される。セメント含有結合剤系と水との混合の際には通常、非常に高いpH値が生じる。この高いpH値によって例えば、エステル結合の加水分解につながる。加水分解しやすい架橋剤は以下のものであり得る:多価(メタ)アクリル官能性モノマー、例えば1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、エトキシ化されたビスフェノールA−ジアクリレート、エトキシ化されたビスフェノールA−ジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ジペンタエリトリットペンタアクリレート、ペンタエリトリットテトラアクリレート、ペンタエリトリットトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、シクロペンタジエンジアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌラトトリアクリレート、及び/又はトリス(2−ヒドロキシ)[エチル]イソシアヌラトトリメタクリレート;相応するカルボン酸とのビニルエステル基又はアリルエステル基を1個超有するモノマー、例えばポリカルボン酸のジビニルエステル、ポリオリカルボン酸のジアリルエステル、トリアリルテレフタレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、トリビニルトリメリテート、ジビニルアジペート、及び/又はジアリルスクシネートである。加水分解しやすい架橋剤としてはまた、エチレン性不飽和ジカルボン酸及び/又は無水ジカルボン酸と、ポリオール、好ましくはトリオールとの反応生成物を用いることもできる。この反応は好ましくは、トリオール中で開始させる。好ましくはこの反応は、不飽和ジカルボン酸の、トリオールに対するモル比が、1:1超、特に好ましくは2:1超、とりわけ3:1超で行う。ジカルボン酸として特に好ましくは、マレイン酸又はフマル酸、及び/又はこれらの無水物を使用する。トリオール成分としては例えば、ブタン−1,2,4−トリオール、n−ペンタン−1,2,5−トリオール、n−ペンタン−1,3,5−トリオール、n−ヘキサン−1,2,6−トリオール、n−ヘキサン−1,2,5−トリオール、及び/又はn−ヘキサン−1,3,6−トリオールが使用できる。ラジカル重合に適したエチレン性不飽和ビニル基を複数有する相応するエステル化合物は、国際出願PCT/EP2010/059847に、オリゴマー成分又はポリマー成分Cとして記載されている。これらの化合物は加水分解しやすい架橋剤として適しており、PCT/EP2010/059847における成分Cについての開示を、この箇所で指摘によって組み込む。
【0068】
アクリレートとアルコールとのエステルは、高いpH値では比較的加水分解に対して敏感なエステルの例である。塩基性媒体(とりわけ9超の高いpH値)中でのその比較的高い加水分解速度に基づき特に好ましいのは、アクリレートと多価ヒドロキシ官能性アルコールとのエステルである。特に好ましい加水分解しやすい架橋剤の例は、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エトキシ化されたビスフェノールAジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジペンタエリトリットペンタアクリレート、ペンタエリトリットテトラアクリレート、ペンタエリトリットトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、シクロペンタジエンジアクリレート、及び/又はトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌラトトリアクリレートである。
【0069】
加水分解によって、架橋、ひいては三次元のポリマー構造が相殺され、また水性建材混合物中、特にセメント系におけるレオロジーに対する影響を、僅かなままにできる。特に、水膨潤性ポリマーの水抽出効果による粘稠効果は、多くの場合不所望であり得る。また、加水分解条件に基づく三次元網目構造の分解に基づき、セメント含有水性建材混合物中への導入時に、促進剤として作用するケイ酸カルシウム水和物粒子の迅速かつ効率的な放出を保証することができる。加水分解しやすい水膨潤性ポリマー(超吸収剤)の合成において、比較的多くの量の連鎖停止剤(連鎖制御剤)を用いることが、架橋剤の加水分解後の適用においてセメント含有水性建材混合物中で比較的低分子のポリマー又はポリマー部分を得るためには特に有利である。これらの低分子ポリマーは、レオロジーに対して影響が小さく、特に粘稠効果が僅かである。適切な連鎖制御剤は、ギ酸、又はギ酸塩、例えばギ酸ナトリウム、メルカプト基(R−SH)又はメルカプトイオン基(R−S−M+)を有する化合物であって、ここで基Rはそれぞれ、炭素数が1〜16の有機の脂肪族又は芳香族基であってよく(例えばメルカプトエタノール、2−メルカプトエチルアミン、2−メルカプトエチルアンモニウムクロリド、チオグリコール酸、メルカプトエタンスルホネート(ナトリウム塩)、システイン、ナトリウム塩としてのトリスメルカプトトリアゾール(TMT)、3−メルカプトトリアゾール、2−メルカプト−1−メチルイミダゾール)、R−S−S−R’基(ジスルフィット基)を有する化合物、ここで基RとR’はそれぞれ相互に独立して、炭素数が1〜16の有機の脂肪族又は芳香族基であってよく(例えばシスタミニウムジクロリド、システイン)、リン含有化合物、例えば次亜リン酸、及び次亜リン酸塩(例えば次亜リン酸ナトリウム)又は硫黄含有無機塩、例えば亜硫酸ナトリウムである。さらに、二重結合含有スルホン酸、例えばメタリルスルホン酸ナトリウムが使用できる。
【0070】
特に好ましいのは、ラジカル重合により製造される架橋されたポリマーであって、pH値が9〜14で水性環境において加水分解するモノマーから誘導される構造単位を有するものであり、ここで加水分解によって架橋作用が相殺され、かつその製造時に、加水分解の際に、モルタル系のレオロジーにできるだけ影響の小さい短い部分が生じるように条件(特に連鎖停止剤の種類と量)が選択されたものである。前記部分の分子量M
wは、好ましくは1,000,000g/mol未満、特に好ましくは500,000g/mol未満である。
【0071】
本発明はまた、組成物、好ましくは粉末状組成物の製造方法に関し、これは以下の方法工程が行われる:
a)好ましくはセメント含有結合剤系のための結合促進剤及び硬化促進剤として適した水性懸濁液を、ヒドロゲルを形成可能な少なくとも1種の水膨潤性ポリマーと接触させる工程、
b)工程a)からの生成物を、140℃未満の温度、好ましくは100℃未満の温度、特に好ましくは80℃未満の温度、最も好ましくは15〜80℃の温度で乾燥させる工程。好適には前記方法、特に方法工程a)及びb)を、(ポルトランド)セメントの不在下で実施する。
【0072】
前記方法の工程a)は例えば、微粒子状ケイ酸カルシウム水和物の適切な懸濁液を、水膨潤性ポリマーと混合することによって行うことができる。一般的にはこの作業工程で、ゲルのような粘度を有するヒドロゲルが得られる。これは好ましくは、乾燥のために微粉砕する。
【0073】
乾燥工程b)において好ましくは、低温で作業し、特に好ましくは、低温かつ低圧で作業する。ケイ酸カルシウム水和物粒子の脱水を回避するため、選択する乾燥温度は好ましくは、100℃未満であるのが望ましい。乾燥のためには例えば、空気循環式乾燥機、真空乾燥式乾燥機、又は流動床乾燥機が適している。好ましい乾燥法としては、流動床法を挙げることができる。比較的高い乾燥速度が達成できるからである。
【0074】
好ましい方法では、方法工程a)において原料として用いるケイ酸カルシウム水和物の水性懸濁液が、水溶性カルシウム化合物と水溶性ケイ酸塩化合物との反応によって得られたものであり、ここで水溶性カルシウム化合物と水溶性ケイ酸塩化合物との反応は、水溶液の存在下で行い、当該水溶液は、好ましくは水溶性の、水硬性結合剤のための流動化剤として適したコームポリマーを含有するものである。国際出願WO 2010026155 A1を指摘しておく。ここには、ケイ酸カルシウム水和物の水性懸濁液を製造するための相応する方法と、その際に使用される、水硬性結合剤のための流動化剤として適した、水溶性コームポリマーが記載されている。WO 2010026155の内容は、この箇所で指摘によって組み込む。
【0075】
前記方法のさらなる好ましい実施態様の特徴は、方法工程b)から乾燥させた生成物を粉砕して粉末にすることを含む方法工程c)が続くことである。粒径は好ましくは、網目サイズ350μmの篩を粒子の98質量%超が通過するように、特に好ましくは、網目サイズ200μmの篩を粒子の98質量%超が通過するように、粉砕によって調整する。この粉砕は好ましくは、遠心分離ミル、又は衝突型ジェットミルによって行うことができる。ここで粒径の測定は、edanaの基準420.2-02によって行う。粉末に粉砕する利点は、より容易な取り扱い性であり、特に本発明による組成物の均質な分布が、乾燥モルタル中で実質的に容易に、又は初めて可能になることにある。
【0076】
本発明はまた、ケイ酸カルシウム水和物と、ヒドロゲルを形成可能な少なくとも1種の水膨潤性ポリマーとを含有する固体組成物を、セメント、スラグ砂、フライアッシュ、ケイ酸塩粉塵、メタカオリン、天然ポゾラン、焼成オイルシェール、及び/又はカルシウム−アルミン酸塩−セメントを含有する建材混合物中、又はセメントと硫酸カルシウムベースの結合剤を含有する建材混合物中、好ましくは水硬性結合剤として主にセメントを含有する建材混合物中において、硬化促進剤として用いる使用に関する。 ここでその供給量は好ましくは各結合剤に対して、特に好ましくは(ポルトランド)セメントに対して、0.1〜5質量%、特に好ましくは0.1〜2質量%である。ここで本発明による固体組成物中に含有されるケイ酸カルシウム水和物は好ましくは、(ポルトランド)セメントと水との水和反応に由来するものではない。特に好ましくは本発明による固体組成物は、水と接触している(ポルトランド)セメントを含有しない。水と接触している(ポルトランド)セメントとは、ここでも(ポルトランド)セメントと、水との半乾燥混合物であるとも理解されるべきであり、当該混合物はなお、好ましくは水含分を僅かに含有できる。
【0077】
本発明による固体組成物は、乾燥モルタル混合物中で、特に粉末形体で使用するのが好ましい。
【0078】
本発明はまた、本発明による組成物を、セメントの製造時、好ましくはクリンカー又はクリンカーブレンドをセメントに粉砕する際に、粉砕助剤として用いる使用に関する。クリンカーブレンドとは好ましくは、クリンカーと、代替物質、例えばスラグ、フライアッシュ、及び/又はポゾランとの混合物であると理解される。ここでこの組成物は、粉砕するクリンカー又はクリンカーブレンドに対して0.001〜5質量%の量、好ましくは0.01〜0.5質量%の量で使用する。本発明による組成物を、ビーズミルにおいて、また垂直ミルにおいて粉砕助剤として用いることができる。本発明による組成物は、粉砕助剤として単独で、また他の粉砕助剤と組み合わせて用いることができ、他の粉砕助剤は例えば、モノグリコール、ジグリコール、トリグリコール、及びポリグリコール、ポリアルコール(例えば様々な純度のグリセリン、例えばバイオディーゼル製造から得られるもの)、アミノアルコール(例えばMEA、DEA、TEA、TIPA、THEED、DIHEIPA)、有機酸、及び/又は有機酸の塩(例えば酢酸及び/又は酢酸塩、ギ酸塩、グルコン酸塩)、アミノ酸、糖、及び糖生成物からの残渣(例えば糖蜜、ビナス)、無機塩(塩化物、フッ化物、硝酸塩、硫酸塩)、及び/又は有機ポリマー(例えばポリエーテルカルボキシレート(PCE))である。特に、このようにして製造されたセメントの初期強度を改善できることが判明した。同様に、WO 2010026155 A1に開示された促進剤懸濁液(液状)も、WO 2010026155 A1に開示された粉末状促進剤も、クリンカー又はクリンカーブレンドからセメントを製造する際に粉砕助剤として適している。これらの粉砕助剤は同様に、単独で、又は上記列挙の粉砕助剤と組み合わせて使用できる。ここでもまた、ビーズミル、また垂直ミルが使用できる。
【0079】
本発明はまた、ケイ酸カルシウム水和物と、ヒドロゲルを形成可能な少なくとも1種の水膨潤性ポリマーとを含有する本発明による固体組成物を、水硬性結合剤を含有する吹付可能な組成物の製造方法において用いる使用に関し、当該組成物は、基本的な成分として、水、骨材、水硬性結合剤、及び促進剤を含有するものであり、その特徴は、ケイ酸カルシウム水和物を含有する本発明による組成物を、吹付ノズルの前、及び/又は吹付ノズルで添加することにある。好ましい実施態様において、本願の従属請求項に記載の本発明による固体組成物が、使用できる。水硬性結合性の吹付可能な水硬性結合剤調製物を製造するための方法のさらなる好ましい実施態様は、国際出願PCT/EP2010/062671に記載されている。この国際出願の相応するケイ酸カルシウム水和物ベースの促進剤は同様に、PCT/EP2010/062671の方法と関連がある。PCT/EP2010/062671の内容は、この箇所で指摘によって組み込む。
【0080】
本発明はまた、ケイ酸カルシウム水和物と、ヒドロゲルを形成可能な少なくとも1種の水膨潤性ポリマー、並びに(ポルトランド)セメント、スラグ砂、フライアッシュ、ケイ酸塩粉塵、メタカオリン、天然ポゾラン、焼成オイルシェール、及び/又はカルシウム−アルミン酸塩−セメントを含有する建材混合物、又はセメントと硫酸カルシウムベースの結合剤を含有する建材混合物、好ましくは水硬性結合剤として主にセメントを含有する建材混合物に関する。好ましい建材混合物は、タイル接着調製物、漆喰、接着モルタル、モルタル、鉄筋モルタル、グラウチングモルタル、たたき(Estrich)、及び自己流展性のヘラ塗り材料である。
【0081】
ケイ酸カルシウム水和物と、ヒドロゲルを形成可能な少なくとも1種の水膨潤性ポリマーとの組成物、並びに(ポルトランド)セメント、スラグ砂、フライアッシュ、ケイ酸塩粉塵、メタカオリン、天然ポゾラン、焼成オイルシェール、及び/又はカルシウム−アルミン酸塩−セメントを含有する建材混合物として好ましいのは、前記ケイ酸カルシウム水和物が、(ポルトランド)セメントと、水との水和反応に由来しないものである。
【0082】
ケイ酸カルシウム水和物と、ヒドロゲルを形成可能な少なくとも1種の水膨潤性ポリマーとの組成物、並びに(ポルトランド)セメント、スラグ砂、フライアッシュ、ケイ酸塩粉塵、メタカオリン、天然ポゾラン、焼成オイルシェール、及び/又はカルシウム−アルミン酸塩−セメントを含有する建材混合物として好ましいのは、前記固体組成物が、水と接触している(ポルトランド)セメントを含有しないものである。水と接触している(ポルトランド)セメントとは、ここでも(ポルトランド)セメントと、水との半乾燥混合物であるとも理解されるべきであり、当該混合物は、好ましくは水含分を僅かに含有できる。
【0083】
硫酸カルシウムベースの結合剤とは例えば、石膏、半水化物、及び無水物と理解される。
【0084】
建材混合物はその他の添加剤として、消泡剤、空気細孔形成剤、充填剤、再分酸性ポリマー粉末、遅延剤、粘稠剤、水保持剤、及び/又は湿潤剤を含有することができる。
【0085】
実施例
水膨潤性ポリマーの製造
アニオン性の加水分解安定性超吸収コポリマー(ポリマー1):
撹拌機と温度計付きの3つ首フラスコ(2l)に、水160gを装入し、続いて、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム塩(50質量%水溶液)352.5g(0.74mol、28mol%)、アクリルアミド(50質量%水溶液)286.4g(2.0mol、72mol%)、及びメチレンビスアクリルアミド0.3g(0.0021mol、0.08mol%)を、順次添加した。20%の水酸化ナトリウム水溶液でpH7に調整した後、30分間窒素で洗浄した後、約5℃に冷却した。この溶液を大きさが縦15cm、横10cm、高さ20cmのプラスチック容器に移し替え、続いて、1%の2,2’−アゾビス−(2−アミジノプロパン)−ジヒドロクロリド溶液16g、1%のペルオキソ二硫酸ナトリウム溶液20g、1%のRongalit C溶液0.7g、0.1%のt−ブチルヒドロキシペルオキシド溶液16.2g、及び0.1%の硫酸鉄(II)八水和物溶液2.5gを、順次添加した。共重合は、紫外線光を照射することによって(Philips社製の管2個、Cleo Performance 40 W)開始した。約二時間後、固くなったゲルをプラスチック容器から取り出し、ハサミで1辺約5cmの立方体に切り取った。ゲル立方体を従来の肉挽き機で粉砕する前に、離型剤Sitren 595(ポリジメチルシロキサンエマルション;Goldschmidt社)をこの立方体に刷毛塗りする。この離型剤とは、1〜20の比率で水により希釈されたポリジメチルシロキサンエマルションである。
【0086】
得られたコポリマーのゲル顆粒を、乾燥マス目に均一に分布させ、空気式乾燥機内で約120〜140℃の温度で質量定数まで乾燥させた。白色の固い顆粒が約375g得られ、これを遠心分離ミルで粉末状態に移行させた。
【0087】
アニオン性のアクリル酸含有加水分解安定性超吸収コポリマー(ポリマー2):
撹拌機と温度計付きの3つ首フラスコ(2l)に、水200gを装入し、アクリル酸(99.5質量%水溶液)27.1g(0.38mol、13mol%)を添加し、水酸化ナトリウム水溶液(50%水溶液)29.4gで中和した。続いて、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム塩(50質量%水溶液)218.8g(0.46mol、17mol%)、アクリルアミド(50質量%水溶液)286.4g(2.0mol、70mol%)、及びペンタエリトリトールアリルエーテル(70質量%水溶液)1.1g(0.0030mol、0.1mol%)を、順次添加した。20%の水酸化ナトリウム水溶液でpH7に調整した後、30分間窒素で洗浄した後、約5℃に冷却した。 この溶液を大きさが縦15cm、横10cm、高さ20cmのプラスチック容器に移し替え、続いて、1%の2,2’−アゾビス−(2−アミジノプロパン)−ジヒドロクロリド溶液16g、1%のペルオキソ二硫酸ナトリウム溶液20g、1%のRongalit C溶液0.7g、0.1%のt−ブチルヒドロキシペルオキシド溶液16.2g、及び0.1%の硫酸鉄(II)八水和物溶液2.5gを、順次添加した。共重合は、紫外線光を照射することによって(Philips社製の管2個、Cleo Performance 40 W)開始した。約二時間後、固くなったゲルをプラスチック容器から取り出し、ハサミで1辺約5cmの立方体に切り取った。ゲル立方体を従来の肉挽き機で粉砕する前に、離型剤Sitren 595(ポリジメチルシロキサンエマルション;Goldschmidt社)をこの立方体に刷毛塗りする。この離型剤とは、1〜20の比率で水により希釈されたポリジメチルシロキサンエマルションである。
【0088】
得られたコポリマーのゲル顆粒を、乾燥マス目に均一に分布させ、空気式乾燥機内で約120〜140℃の温度で質量定数まで乾燥させた。白色の固い顆粒が約280g得られ、これを遠心分離ミルで粉末状態に移行させた。
【0089】
混合イオン性の加水分解安定性超吸収コポリマー(ポリマー3):
撹拌機と温度計付きの3つ首フラスコ(2l)に、水33gを装入し、続いて、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム塩(50質量%水溶液)411.0g(0.86mol、49.9mol%)、[3−(アクリルアミノ)−プロピル]−トリメチルアンモニウムクロリド(60質量%水溶液)309.6g(0.90mol、49.9mol%)、及びペンタエリトリトールアリルエーテル(70質量%水溶液)1.0g(0.0027mol、0.2mol%)を、順次添加した。20%の水酸化ナトリウム水溶液でpH7に調整した後、30分間窒素で洗浄した後、約5℃に冷却した。この溶液を大きさが縦15cm、横10cm、高さ20cmのプラスチック容器に移し替え、続いて、1%の2,2’−アゾビス−(2−アミジノプロパン)−ジヒドロクロリド溶液16g、1%のペルオキソ二硫酸ナトリウム溶液20g、1%のRongalit C溶液0.7g、0.1%のt−ブチルヒドロキシペルオキシド溶液16.2g、及び0.1%の硫酸鉄(II)八水和物溶液2.5gを、順次添加した。共重合は、紫外線光を照射することによって(Philips社製の管2個、Cleo Performance 40 W)開始した。約二時間後、固くなったゲルをプラスチック容器から取り出し、ハサミで1辺約5cmの立方体に切り取った。ゲル立方体を従来の肉挽き機で粉砕する前に、離型剤Sitren 595(ポリジメチルシロキサンエマルション;Goldschmidt社)をこの立方体に刷毛塗りする。この離型剤とは、1〜20の比率で水により希釈されたポリジメチルシロキサンエマルションである。
【0090】
得られたコポリマーのゲル顆粒を、乾燥マス目に均一に分布させ、空気式乾燥機内で約120〜140℃の温度で質量定数まで乾燥させた。白色の固い顆粒が約390g得られ、これを遠心分離ミルで粉末状態に移行させた。
【0091】
アニオン性の加水分解しやすい超吸収コポリマー(ポリマー4):
撹拌機と温度計付きの3つ首フラスコ(2l)に、水145gを装入し、続いて、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム塩(50質量%水溶液)319.3g(0.70mol、25.8mol%)、アクリルアミド(50質量%水溶液)283.5g(2.00mol、73.8mol%)、及びジエチレングリコールジアクリレート3.8g(0.01mol、0.4mol%)を、順次添加した。メタリルスルホン酸ナトリウム溶液(10質量%水溶液)6gを添加後、20%の水酸化ナトリウム水溶液でpH値を7に調整し、30分間窒素で洗浄した後、約10℃に冷却した。この溶液を大きさが縦15cm、横10cm、高さ20cmのプラスチック容器に移し替え、続いて、1%の2,2’−アゾビス−(2−アミジノプロパン)−ジヒドロクロリド溶液24g、1%のRongalit C溶液0.7g、0.1%のt−ブチルヒドロキシペルオキシド溶液16g、及び0.1%の硫酸鉄(II)八水和物溶液2.4gを、順次添加した。共重合は、紫外線光を照射することによって(Philips社製の管2個、Cleo Performance 40 W)開始した。約二時間後、固くなったゲルをプラスチック容器から取り出し、ハサミで1辺約5cmの立方体に切り取った。ゲル立方体を従来の肉挽き機で粉砕する前に、離型剤Sitren 595(ポリジメチルシロキサンエマルション;Goldschmidt社)をこの立方体に刷毛塗りする。この離型剤とは、1〜20の比率で水により希釈されたポリジメチルシロキサンエマルションである。
【0092】
得られたコポリマーのゲル顆粒を、乾燥マス目に均一に分布させ、空気式乾燥機内で約100℃の温度で質量定数まで乾燥させた。白色の固い顆粒が約305g得られ、これを遠心分離ミルで粉末状態に移行させた。
【0093】
非イオン性の加水分解しやすい超吸収コポリマー(ポリマー5):
撹拌機と温度計付きの3つ首フラスコ(2l)に、水270gを装入し、続いて、アクリルアミド(50質量%水溶液)476.2g(3.36mol、99.7mol%)、及びジエチレングリコールジアクリレート3.2g(0.008mol、0.3mol%)を、順次添加した。ギ酸溶液(10質量%水溶液)7.5gを添加後、20%の水酸化ナトリウム水溶液でpH値を7に調整し、30分間窒素で洗浄した後、約10℃に冷却した。この溶液を大きさが縦15cm、横10cm、高さ20cmのプラスチック容器に移し替え、続いて、1%の2,2’−アゾビス−(2−アミジノプロパン)−ジヒドロクロリド溶液24g、1%のRongalit C溶液0.7g、0.1%のt−ブチルヒドロキシペルオキシド溶液16.2g、及び0.1%の硫酸鉄(II)八水和物溶液2.4gを、順次添加した。共重合は、紫外線光を照射することによって(Philips社製の管2個、Cleo Performance 40 W)開始した。約二時間後、固くなったゲルをプラスチック容器から取り出し、ハサミで1辺約5cmの立方体に切り取った。ゲル立方体を従来の肉挽き機で粉砕する前に、離型剤Sitren 595(ポリジメチルシロキサンエマルション;Goldschmidt社)をこの立方体に刷毛塗りする。この離型剤とは、1〜20の比率で水により希釈されたポリジメチルシロキサンエマルションである。
【0094】
得られたコポリマーのゲル顆粒を、乾燥マス目に均一に分布させ、空気式乾燥機内で約100℃の温度で質量定数まで乾燥させた。白色の固い顆粒が約240g得られ、これを遠心分離ミルで粉末状態に移行させた。
【0095】
混合イオン性の加水分解しやすい超吸収コポリマー(ポリマー6):
撹拌機と温度計付きの3つ首フラスコ(2l)に、水130gを装入し、続いて、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム塩(50質量%水溶液)73.5g(0.16mol、5.2mol%)、[3−(アクリロイルアミノ)−プロピル]−トリメチルアンモニウムクロリド(60質量%水溶液)194.0g(0.56mol、18.1mol%)、アクリルアミド(50質量%水溶液)333.2g(2.35mol、75.5mol%)、及びポリエチレングリコール−300−ジアクリレート16.6g(0.0038mol、1.2mol%)を、順次添加した。ギ酸溶液(10質量%水溶液)6gを添加後、20%の水酸化ナトリウム水溶液でpH値を7に調整し、30分間窒素で洗浄した後、約10℃に冷却した。この溶液を大きさが縦15cm、横10cm、高さ20cmのプラスチック容器に移し替え、続いて、1%の2,2’−アゾビス−(2−アミジノプロパン)−ジヒドロクロリド溶液24g、1%のRongalit C溶液0.7g、0.1%のt−ブチルヒドロキシペルオキシド溶液16g、及び0.1%の硫酸鉄(II)八水和物溶液2.4gを、順次添加した。共重合は、紫外線光を照射することによって(Philips社製の管2個、Cleo Performance 40 W)開始した。約二時間後、固くなったゲルをプラスチック容器から取り出し、ハサミで1辺約5cmの立方体に切り取った。ゲル立方体を従来の肉挽き機で粉砕する前に、離型剤Sitren 595(ポリジメチルシロキサンエマルション;Goldschmidt社)をこの立方体に刷毛塗りする。この離型剤とは、1〜20の比率で水により希釈されたポリジメチルシロキサンエマルションである。
【0096】
得られたコポリマーのゲル顆粒を、乾燥マス目に均一に分布させ、空気式乾燥機内で約100℃の温度で質量定数まで乾燥させた。白色の固い顆粒が約335g得られ、これを遠心分離ミルを用いて粉末状態に移行させた。
【0097】
本発明による組成物の製造
ケイ酸カルシウム水和物を含有するヒドロゲルの製造は、1種又は複数種の水膨潤性ポリマーを、X-Seed(登録商標)-100という製品に撒くことによって行った(BASF Construction Chemicals Europe AG社から市販)。
【0098】
ガラスビーカーにX-Seed(登録商標)-100を装入し、手で撹拌した。注意深く、各超吸収ポリマー粒子(ポリマー1〜6)の相応する量(表1参照)を撒き、そして生成するゲルを約30分間、さらに撹拌した。得られたゲルを微粉砕し、45℃で流動床で乾燥させた。続いて乾燥させたゲルを粗く粉砕し、これを遠心分離ミルで粉末状態に移行させた。ポリマー粉末の平均粒径は、40〜60μmであった。ここで粒径の測定は、edanaの基準420.2-02によって行う。
【0099】
表1:本発明による組成物の製造
【表1】
【0100】
適用工業試験
得られた本発明による粉末の有効性を試験するために、標準モルタル中で6時間の強度を測定した(小柱はDIN EN 196-1と同様だが、水セメント値は0.55)
標準モルタルの処方:水 250g
標準砂 1350g
CEM I 52.5 R Milke 450g。
【0101】
参照用試験として、以下の混合物を試験した。
【0102】
参照1:促進剤を添加しない対照値
参照2:X-Seed(登録商標)-100の水性分散液を用いる
参照3:X-Seed(登録商標)-100の粉末を用い、超吸収性コポリマーを添加せずに乾燥させたもの(60℃で空気式乾燥機内で)
参照4:X-Seed(登録商標)-100の粉末を用い、5質量%のStarvis(登録商標)T 50 F(アニオン性のポリアクリルアミド粘稠剤)を添加して、乾燥させたもの(60℃で空気式乾燥機内で)。
【0103】
全ての場合において、曲げ耐性と圧力耐性を6時間後と28日後に測定した(表2)
【表2-1】
【表2-2】
1モルタル混合物の混和水は、同じ水セメント値を調整するために、25.7g減少した。
2Starvis(登録商標) T 50 Fは、アニオン性のポリアクリルアミド粘稠剤であり、BASF Construction Polymers GmbHの製品である。
【0104】
本発明による粉末を用いた場合、乾燥時に促進剤としての、本発明による粉末の活性は、参照試験1、3、及び4に比較して改善されることを示すことができた。参照2の水性分散液に比べて、各耐圧性の進展において6時間後に、比較的僅かな低減が起こったに過ぎない。観察された促進剤としての作用は、加水分解性の水膨潤性ポリマーを用いた際(コポリマー4、5、及び6)、加水分解安定性の超吸収剤(コポリマー1、2、及び3)を用いた際よりも高いことが観察されたので、C−S−H粒子の放出は、加水分解性架橋剤を用いることによって有利になると結論づけることができる。ここから、セメント含有水性系における加水分解によって、その際に存在する高いpH値では、超吸収剤の三次元網目構造の比較的迅速な「ほぐれ(Entknaeuelung)」が起こることがあり、このため促進剤として有効なケイ酸カルシウム水和物の放出が促進される。これらの試験は、水性促進剤分散液の乾燥後であっても、本発明による方法により、ヒドロゲルを形成可能な水膨潤性ポリマーを用いて、促進剤としての高い活性が得られたままであることを示している。促進剤としての作用は、ヒドロゲルベースではない化学物質(参照4)による比較試験では6時間後にはもはや対照値(参照1)が測定できないのと同じように悪い。最終硬度(28日後の値)は、意外なことに、粉末状促進剤によって、何ら添加剤を添加しない対照値(参照1)と比較して、いかなる場合でも否定的では無く、一部では、それどころか肯定的な影響をもたらす(コポリマー1、2、及び5)。