特許第5907989号(P5907989)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5907989タンパク質及びイソノハナ由来のラムダカラギナンを含む液体調合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5907989
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】タンパク質及びイソノハナ由来のラムダカラギナンを含む液体調合物
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/66 20060101AFI20160412BHJP
   A23L 2/38 20060101ALI20160412BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20160412BHJP
   A23C 9/154 20060101ALI20160412BHJP
   A23G 1/00 20060101ALI20160412BHJP
   A23G 1/30 20060101ALI20160412BHJP
   A23G 9/32 20060101ALI20160412BHJP
   A23G 9/44 20060101ALI20160412BHJP
   A23G 9/52 20060101ALI20160412BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20160412BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20160412BHJP
【FI】
   A23L2/00 J
   A23L2/38 P
   A23L2/00 F
   A23C9/154
   A23G1/00
   A23G9/02
   A61K47/36
   A61K9/08
【請求項の数】22
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-544590(P2013-544590)
(86)(22)【出願日】2011年12月9日
(65)【公表番号】特表2014-501102(P2014-501102A)
(43)【公表日】2014年1月20日
(86)【国際出願番号】US2011064133
(87)【国際公開番号】WO2012082545
(87)【国際公開日】20120621
【審査請求日】2014年11月17日
(31)【優先権主張番号】61/459,764
(32)【優先日】2010年12月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391022452
【氏名又は名称】エフ エム シー コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】FMC CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100109449
【弁理士】
【氏名又は名称】毛受 隆典
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100123618
【弁理士】
【氏名又は名称】雨宮 康仁
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(72)【発明者】
【氏名】シューアル、クリストファー ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ブレイクモア、ウィリアム アール
(72)【発明者】
【氏名】アスク、エリック アイ
【審査官】 坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2008/0260908(US,A1)
【文献】 特開2008−005751(JP,A)
【文献】 特開2002−125587(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第101720875(CN,A)
【文献】 Food Hydrocollids,1994年,Vol.8, No.3-4,p.215-232
【文献】 International Journal of Biological Macromolecules,2009年,Vol.45,p.140-145
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/66
A23C 9/154
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/WPIDS/FSTA/FROSTI(STN)
日経テレコン
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質と、ラムダカラギナンとを含む液体調合物であって、
前記ラムダカラギナンは、分類学上のイソノハナ目に属する少なくとも1つの海草由来のラムダカラギナンを含む、
液体調合物。
【請求項2】
飲料である、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体調合物。
【請求項3】
前記飲料は、
ミルク、ヨーグルト、果実、エッグノグ、発酵乳、及び豆乳の少なくとも1つを含む、
ことを特徴とする請求項2に記載の液体調合物。
【請求項4】
前記ラムダカラギナンは、
飲料の0.01重量%から0.5重量%までの量で存在し、
タンパク質由来の総固体成分は、
飲料の1から10重量%であって、
甘味料由来の総固体成分は、
飲料の0から30重量%であって、
脂肪由来の総固体成分は、
飲料の1から15.0重量%である、
ことを特徴とする請求項2に記載の液体調合物。
【請求項5】
ミルクであって、
前記ラムダカラギナンは、
飲料の0.01重量%から0.2重量%までの量で存在し、
タンパク質由来の総固体成分は、
飲料の1から4重量%であって、
甘味料の総固体成分は、
飲料の0から8重量%であって、
脂肪由来の総固体成分は、
飲料の0から4重量%である、
ことを特徴とする請求項4に記載の液体調合物。
【請求項6】
前記ミルクは、
チョコレートミルク、いちごミルク、又はバナナミルクである、
ことを特徴とする請求項5に記載の液体調合物。
【請求項7】
甘味料の総固体成分は、
0から5重量%である、
ことを特徴とする請求項5に記載の飲料。
【請求項8】
甘味料の総固体成分は、
0から4重量%である、
ことを特徴とする請求項7に記載の飲料。
【請求項9】
前記イソノハナは、
イソノハナ科に属する海草を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体調合物。
【請求項10】
前記海草は、
イソノハナ又はムカデノリの少なくとも一方の属に属する、
ことを特徴とする請求項9に記載の液体調合物。
【請求項11】
前記海草は、
ツヅレグサ、イソノハナ、又はムカデノリの少なくとも1つの種に属する、
ことを特徴とする請求項10に記載の液体調合物。
【請求項12】
前記種は、
イソノハナである、
ことを特徴とする請求項11に記載の液体調合物。
【請求項13】
ソフトクリーム調合組成物である、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体調合物。
【請求項14】
食物、栄養補助食品、又は薬剤の有効成分をさらに含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体調合物。
【請求項15】
前記ラムダカラギナンは、
分類学上のイソノハナ目の前記海草由来のラムダカラギナンを少なくとも75%含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体調合物。
【請求項16】
前記ラムダカラギナンは、
分類学上のイソノハナ目の前記海草由来のラムダカラギナンを少なくとも90%含む、
ことを特徴とする請求項15に記載の液体調合物。
【請求項17】
前記ラムダカラギナンは、
分類学上のイソノハナ目の前記海草由来のラムダカラギナンを少なくとも95%含む、
ことを特徴とする請求項16に記載の液体調合物。
【請求項18】
前記ラムダカラギナンは、
分類学上のイソノハナ目の前記海草由来のラムダカラギナンからなる、
ことを特徴とする請求項17に記載の液体調合物。
【請求項19】
前記イソノハナは、
ツヅレグサである、
ことを特徴とする請求項4に記載の液体調合物。
【請求項20】
前記イソノハナは、
ツヅレグサである、
ことを特徴とする請求項5に記載の液体調合物。
【請求項21】
前記イソノハナは、
ツヅレグサである、
ことを特徴とする請求項18に記載の液体調合物。
【請求項22】
前記ラムダカラギナンは、
分類学上のイソノハナ目の前記海草由来のラムダカラギナンからなる、
ことを特徴とする請求項5に記載の液体調合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質とラムダカラギナンとを含む液体調合物に関し、ラムダカラギナンは、分類学上のイソノハナ目(Halymeniales)に属する少なくとも1つの海草由来のラムダカラギナンを含む。
【背景技術】
【0002】
タンパク質を含有する飲料は、タンパク質を含有しない飲料と大きく異なり、タンパク質を含有する飲料に特有の一連の難題がある。タンパク質を含有する飲料の業界(ミルク、チョコレートミルクなど)では、系全体の固体成分含有量を減らす傾向がある。これは、コストの抑制及び/又は健康上の理由のためである。典型的には、上記液体調合物の固体成分濃度を低くした場合、得られる飲料は、こくの欠如、食感、又は安定性などの不足を呈する。
【0003】
カラギナンは、チョコレートミルクなどの飲料で増粘剤及び安定剤として一般に用いられる。しかし、カラギナンは、容認しがたいほどにタンパク質との反応性がある。タンパク質は、高分子量の荷電した(正電荷及び負電荷に)分子であり、正の部位は、カラギナンにおける負のエステル硫酸部位に直接結合する(カラギナンは、エステル硫酸で負にのみ帯電している)。したがって、カラギナンを形成する分子は、タンパク質との相互作用の程度及びその結果としてのゲル化の度合いを決めるのに重要である。さらに、タンパク質の負の部位は、カラギナンにおける負の部位と、カルシウム陽イオンを介してつながることができる(塩橋)。これら相互作用の両方が、系における相互作用及びタンパク質とのラムダカラギナンのゲル化の程度を決定づける。通常、消費者が許容できる程度まで食感を戻すために必要な従来のラムダカラギナンなどのカラギナンの濃度は、飲料内でのカラギナンとタンパク質との間の上昇した及び過度の反応性のために、液体調合物のゲル化を起こす。固体成分を減らしたタンパク質を含有する液体調合物(例えば、低糖のチョコレートミルク)に対する需要はあるが、その結果生じる食感は、消費者が許容できる程度まで戻される必要がある。例えば、チョコレートミルク内の糖固体成分を減らすことで、食感が“薄く”又は“水っぽく”なりすぎる。
【0004】
非特許文献1は、ツヅレグサ(Halymenia durvillaei)由来のラムダカラギナンの使用を開示しており、これが水(タンパク質は含有しない)環境中でゲル化しないことを示している。しかし、タンパク質を含有する系における具体的なラムダカラギナンの相互作用、増粘、又はゲル化の能力に関しては、上記非特許文献1には示されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Briones et al, “USP grade lambda-like carrageenan from Halymenia durvillei Bory De Sainte Vincent”, Philippine J. Sci., 2000, 129, 15-17
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
イソノハナ由来のラムダカラギナンは、安定性をもたらし、ゲル化することなく食感を回復することを達成する量で、タンパク質を含有する飲料に有用であることが見出された。本発明のラムダカラギナンは、他のラムダカラギナンほどにはタンパク質との反応性がないことから、本発明のラムダカラギナンは、いかなる悪影響(例えば、ゲル化)もなく、高濃度で使用され、より幅広い範囲の食感回復及び安定性をもたらすことができる。
【0007】
本発明は、タンパク質と、ラムダカラギナンとを含む液体調合物に関し、ラムダカラギナンは、分類学上のイソノハナ目(Halymeniales)に属する少なくとも1つの海草由来のラムダカラギナンを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施例1で説明される調合組成物A−Dの様々な濃度と時間(2週)での粘度を示すグラフである。
図2図2は、実施例1で説明される調合組成物A−Dの様々な濃度と時間(1ヶ月)での粘度を示すグラフである。
図3図3は、実施例1で説明される調合組成物A−Dの様々な濃度と時間(2ヶ月)での粘度を示すグラフである。
図4図4は、実施例1で説明される調合組成物A−Dの様々な濃度と時間(3ヶ月)での粘度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
食感は、液体調合物の分野において、適切な安定性、濃さ、及び質感を有する液体調合物を表現する用語である。食感は、タンパク質、脂肪、甘味料などの固体成分が減ることで、負の影響を受けることがある。本発明のラムダカラギナンは、固体成分の濃度を抑制することが可能でありながら、それでも依然として、幅広い使用濃度にわたってゲル化せずに許容できる食感及び安定性を有する液体を提供する。
【0010】
本発明は、タンパク質と、ラムダカラギナンとを含む液体調合物に関し、ラムダカラギナンは、分類学上のイソノハナ目に属する少なくとも1つの海草由来のラムダカラギナンを含む。ラムダカラギナンは、ムカデノリ(Halymeniaceae)又はTsenglaceaeを含む少なくとも1つの藻類の科に属してもよい。海草は、イソノハナ、ムカデノリ、又はTsengliaを含む少なくとも1つの属に属してもよい。海草は、ツヅレグサ(Halymenia durvillei)、イソノハナ(Halymenia floresii)、Halymenia fimbriata、又はムカデノリ(Grateloupia filicina)を含む少なくとも1つの藻類の種に属してもよい。ツヅレグサ(Halymenia durvillei)のさらなるバシオニム種は、ツヅレグサ(Halymenia formosa)、Halymenia fimbriata、及びHalymenia microcarpaを含む。イソノハナ(Halymenia floresii)のさらなるバシオニム種は、Halymenia venustaを含む。ムカデノリ(Grateloupia filicina)のさらなるバシオニム種は、ヒロハノムカデノリ(Grateloupia subpectinata)、Grateloupia conferta、Grateloupia porracea、ムカデノリ(Grateloupia filiformis)、ウツロムカデ(Grateloupia catenata)、及びGrateloupia prolongataを含む。
【0011】
イソノハナ由来のラムダカラギナンは、従来の他の市販供給源のラムダカラギナンとは異なる化学構造を有する。例えば、Chondrus crispus、Gigartina skottsbergii、及びSarcothalia crispataなどの従来の市販供給源由来のラムダカラギナンは、D−ガラクタン分子骨格構造のみを有する(L−ガラクトースは存在しない)。上記従来のラムダカラギナンと比較して、イソノハナ由来のラムダカラギナンは、エステル硫酸含量が少なく、ピルビン酸塩含有量が多く、メチル含有量が増加しており、L−ガラクトースが存在する(D−ガラクトースとともにDL−混合のガラクタン分子骨格を形成する)。イソノハナ由来のラムダカラギナンに関して、ピルビン酸エステル、メチルエステル、及びL−ガラクトースの分布は、分子の骨格に沿って乱雑であるようだが、それぞれは、特定のカラギナンの一部に付いている。ピルビン酸塩はガラクトース−2−硫酸−4:6−ピルビン酸塩として、メチルはガラクトース−6−メチルとして、L−ガラクトースは硫酸化されていない3:6−無水ガラクトースとして存在する。さらに、カラギナンのエステル硫酸含有量は、18−40%の範囲である。ツヅレグサ(Halymenia durvillei)由来のラムダカラギナンは、34−40%の範囲内のエステル硫酸含有量を有する通常のラムダカラギナンと比較して、26−34%の範囲内のエステル硫酸含有量を有することがわかった。Sarcothalia crispata由来のラムダカラギナンは、文献に記載されたようなラムダカラギナンに関する理想の構造に自然状態で最も近く、そのため、種々のラムダカラギナンの機能性を評価する場合、参照物質として広く用いられる。ツヅレグサ(Halymenia durvillei)由来のラムダカラギナン内のエステル硫酸の含有量は、Sarcothalia crispataにおける38%の含有量と比べてより低く、32−36%である。
【0012】
イソノハナに属する海草の任意の1つ又は組み合わせ由来のラムダカラギナンは、本発明に係る液体調合物内のすべてのラムダカラギナンの少なくとも75%、少なくとも90%、少なくとも95%及び少なくとも100%を構成する。
【0013】
本発明に係る液体調合物は、任意の低脂肪調合組成物、低甘味料調合組成物、及びそれらの低固体調合組成物を含む。当該液体調合物は、飲料、ソフトクリーム調合組成物、クリームリキュール、コーヒークリーマー及びUHTクリームに加えて、任意の低脂肪調合組成物、低甘味料調合組成物、及びそれらの低固体のものを含む。飲料の例は、ミルク、ミルクシェーキ、ヨーグルト、果実、エッグノグ、発酵乳、及び豆乳に加えて、任意の低脂肪のもの、低甘味料のもの、及びそれらの低固体のものを含むか、又はそれ自体である。ミルクの例は、チョコレートミルク、いちごミルク、及びバナナミルクに加えて、任意の低脂肪のもの、低甘味料のもの、及びそれらの低固体のものなどである。本発明で使用可能なミルクは、牛及び山羊などの任意の供給源由来のものである。
【0014】
液体調合物が飲料(例えば、ヒトによる消費に適した飲用液体)である場合、ラムダカラギナンは、飲料の0.01重量%から0.5重量%の量で存在してよく、タンパク質由来の個体成分の総含有量は、飲料の1から10重量%であってよく、甘味料由来の個体成分の総含有量は、飲料の0から30重量%であってよく、そして、脂肪由来の個体成分の総含有量は、飲料の0から15.0重量%であってよい。
【0015】
飲料がミルクであるか、又はミルクを含む場合、ラムダカラギナンは、ミルクの0.01から0.2重量%の量で存在してよく、タンパク質由来の個体成分の総含有量は、ミルクの1から4重量%であってよく、甘味料の個体成分の総含有量は、ミルクの0から8重量%であってよく、そして、脂肪由来の個体成分の総含有量は、ミルクの0から4重量%であってよい。より詳細には、甘味料の個体成分の総含有量は、ミルクの0から5重量%であってよく、さらに具体的には、ミルクの0から4重量%、又は0から3重量%であってよい。上記ミルク調合組成物の例は、チョコレートミルク、いちごミルク及びバナナミルクなどである。
【0016】
本発明に係る任意のミルクに有用な甘味料は、任意のショ糖、ブドウ糖、及び果糖などである。人工甘味料は、スクラロース、アスパルテーム、及びサッカリンなどである。
【0017】
本発明に係る液体調合物は、食物、栄養補助食品の有効成分又は薬剤の有効成分をさらに含んでよい。
【0018】
イソノハナの海草由来のラムダカラギナンは、本明細書において、任意の既知の技術で回収され、使用されてよい。例えば、イソノハナからのカラギナンの回収方法は、出発原料の海草からの不溶成分の完全又は部分的のどちらかの濾過、又は濾過していない海草あるいは押し出した海草の使用などである。抽出の例は、ラムダカラギナンを可溶化するために熱した希アルカリに海草を加えること、遠心分離及び/又は濾過によって固体成分を除去すること、蒸発、及び/又はアルコール沈殿、及び/又はスプレードライによって脱水すること、及び微粉になるまで抽出されたラムダカラギナンをすりつぶすことを含む。また、海草は、必要又は要望に応じて養殖されてよい。結果として、野生の、又は養殖された任意のイソノハナ由来のラムダカラギナンが本発明で使用される。イソノハナの海草を養殖するための任意の既知の技術が用いられる。養殖技術の例は、外洋養殖及び地上でのタンク培養などである。
【0019】
ここで、本発明が以下の実施例を参照することでさらに詳細に説明されるが、本発明がそれに限定されるものとして解釈されないことが理解されるべきである。本明細書で格段の示唆がなければ、すべての部、パーセント、比及び同様のものは重量によるものである。
【実施例】
【0020】
実施例1
チョコレートミルクが、様々なラムダカラギナンを用いて低糖で調製され、高度に機能的な微晶質のセルロース/カルボキシメチルセルロース(MCC/CMC)安定剤及びチョコレートミルク調合組成物で典型的な(すなわち、減らしていない)量の糖を含有するチョコレートミルクと比較された。当該チョコレートミルク調合組成物は、典型的な量の糖と固体の調合組成物におけるその理想特性を与える対照(“コントロール")として用いられた。この研究は、糖の量を減らして様々なラムダカラギナンを用いた調合組成物が、コントロール(コントロールは典型的な量の糖(すなわち、減らしていない)を用いた)と同等であるチョコレートミルク調合組成物をもたらすかを調べるために行われた。
【0021】
コントロールの調合組成物は、次のとおりである。
【表1】
【0022】
低糖の調合組成物(A−D)は、次のとおりである。
調合組成物A
【表2】
【0023】
調合組成物Aは、約70%の天然のカッパー−2カラギナン及び30%のラムダを通常は含有する、FMC社によって販売されている市販製品(相対的に、非ゲル化、ラムダカラギナン含有、安定剤)を用いた。市販製品中のラムダカラギナンはイバラノリ由来である。
調合組成物B
【表3】
【0024】
調合組成物Bに使用されたラムダカラギナンは、養殖されたツヅレグサ(Halymenia durvillei)から抽出された。
調合組成物C
【表4】
【0025】
調合組成物Cに使用されたラムダカラギナンは、“野生の”ツヅレグサ(Halymenia durvillei)から抽出された。
調合組成物D
【表5】
【0026】
調合組成物Dに使用されたラムダカラギナンは、すべてのラムダカラギナン(すなわち、約95−98%のラムダカラギナン及び約2−5%のカッパー−2カラギナン)を、本質的に含む。ラムダカラギナンは、Sarcothalia crispataから抽出された。
【0027】
各調合組成物は、安定剤(MCC/CMC及びラムダカラギナン製品)を糖及びココア粉末に乾式混合することによって調製された。それから、各乾式混合は、1250rpmの早い混合器を用いて、1%(脂肪)ミルクに加えられた。混合器で、混合が30分間なされた。次に、生成物は、1850Fまで予熱され、最後に2840Fで6秒間熱処理された。そして、生成物は、1600Fまで冷却され、2段階で均質化された(2500psi、500psi)。最後に、混合物は700Fまで冷却され、250mlの無菌のPETG(ポリエチレンテレフタレートグリコール)ボトルに入れられ、冷蔵庫に移された。
【0028】
各生成物は、冷凍庫で2週間、1ヶ月間、2ヶ月間、及び3ヶ月間保存後に、次のように、流動粘度、流動性質、及び食感を評価された。粘度:各試料が300mLのガラスビーカに注ぎ込まれ、10秒間、60rpmでスピンドル#1でLVT粘度計を用いて、約4℃で試験された。流動性質:試料が注ぎ込まれ、流れの途切れに関して観察され、次のようなゲル化の程度に従って分類された。
【0029】
滑らかな流動−ゲル化は見られない。流動の間を通して均一な流動が観察される。
【0030】
波紋−軽度の波紋が流れをかすかに途切れさせ、飲料が流れ始めるときにはっきり分かる。注ぎ込みを続けるとそれは伸びる。これは通常は、消費者にとって許容できる。“波紋”は、とても弱いゲル構造を示し、“重度の波紋”は、より明白に流れを途切れさせ、飲料が注ぎ込まれても継続する。これは、許容できない欠陥で、消費者に外観の損傷を与えるものである。
【0031】
ブラープ(Blurp)−これは、ボトルから注がれたときにプリンのような堅さを伴い、波紋よりさらに明らかに凝集性のあるゲルである。そのいたる所で柔らかいゲルの大部分が、それらがボトルから落ちるときに‘ブラープ’を生じさせる。
【0032】
ゲル化−ボトル内の生成物のほとんどが柔らかいゲル、又はさらに悪く、注いでもボトル内に残る。
【0033】
最後に、各試料の食感が、コントロールの食感と比較され、次のように1−5の基準で評価された:1=許容できない、とても薄い;コントロールよりかなり乏しい;2=許容できないほど薄い、コントロールより乏しい;3=許容できる、コントロールと同等又は少しだけ薄い;4=許容できないほどに濃い、コントロールより濃い;及び5=許容できない、とても濃い、コントロールよりかなり濃い。
【0034】
結果は以下である。
【表6】
【表7】
【0035】
上記結果は、(様々な濃度と時間で調合組成物A−Dの粘度を示す)図1−4に示されている。具体的には、2週間のデータが図1で示され、1ヶ月のデータが図2で示され、2ヶ月のデータが図3で示され、3ヶ月のデータが図4に示されている。
【0036】
上記実施例では、固体成分を減らしたことによる粘度の回復のために、ラムダカラギナンを含有する現存する市販製品が使用される場合(すなわち、調合組成物A)、得られた飲料は、許容できないものであった。市販のラムダカラギナンでつくられた調合組成物Aの飲料の食感は、使用濃度に極めて敏感で、使用濃度が0.02%だけ増加した場合、薄すぎるから濃すぎるまで食感が変動した。例えば、2週間における0.04%での調合組成物Aは、許容できないほどに薄いが0.06%では許容できないほどに濃い。見た目には、飲料の外観は、注いだ際滑らかな概観が波紋のある外観に変化した。調合組成物Dは、0.06%で許容できないほどに薄く、0.04から0.06%に調整した場合に、滑らかさから波紋ができるまでの外観上の変化があった。一方、本発明に係る物質は、0.06から0.10%にわたる広い範囲で許容できる食感を有していた。注いだ際の見た目の観察は、0.02から0.20%にわたる、かなり広い範囲で滑らかであったことは、この幅広い範囲にわたってゲル化が起きないことを示唆している。許容できる使用濃度の幅広い範囲は、産業において重要で、このため、系における成分の重量配分又は他の成分の質のいずれか一方における変化が小さくても、調合者が許容できる製品を製造することができる。
【0037】
低糖チョコレートミルクの他の重要な要件は、最終製品が、長時間安定性を維持することである。3ヶ月の保存後、発明に係るカラギナンを使用した飲料は、それでも0.06−0.08%の範囲で許容できる食感を維持していた。また、流動性質は、この3ヶ月の期間にわたって、その滑らかな外観を維持していた。比較例は、注ぎ外観で主な変化が現れ、0.08%で調合組成物Aでは軽度の波紋から重度のブラープ(ゲル化)に変化し、調合組成物Dでは波紋から重度のブラープ(ゲル化)に変化した。理論に拘束されるつもりはないが、発明に係るカラギナンは、ミルクのタンパク質との反応性が小さいと考えられ、結果としてより広い実用的な使用濃度に加え、より優れた保存安定性が得られた。
【0038】
まとめとして、発明に係るカラギナンは、(1)2週において、飲料に実用的であった一方で、調合組成物A及びDのラムダカラギナンはそうではなく、(2)調合組成物A及びDを含有する飲料と比較して、幅広い使用濃度にわたってゲル化せず、許容できる食感をもたらし、そして、(3)少なくとも3ヶ月まで安定であった飲料を提供した。
【0039】
本発明が詳細に、具体的なそれらの実施の形態を参照して説明されたが、それらの精神と範囲から逸脱することなしに、本明細書において様々な変更及び変形がなされることが当業者にとって明らかである。
図1
図2
図3
図4