特許第5907992号(P5907992)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5907992金属ナノ粒子をメソ構造化酸化物マトリックス中に含む無機材料およびその調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5907992
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】金属ナノ粒子をメソ構造化酸化物マトリックス中に含む無機材料およびその調製方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 37/00 20060101AFI20160412BHJP
【FI】
   C01B37/00
【請求項の数】13
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2013-545452(P2013-545452)
(86)(22)【出願日】2011年12月15日
(65)【公表番号】特表2014-501219(P2014-501219A)
(43)【公表日】2014年1月20日
(86)【国際出願番号】FR2011000653
(87)【国際公開番号】WO2012085354
(87)【国際公開日】20120628
【審査請求日】2014年12月11日
(31)【優先権主張番号】1005029
(32)【優先日】2010年12月22日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(73)【特許権者】
【識別番号】307035099
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ ピエール エ マリー キュリー
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PIERRE ET MARIE CURIE
(73)【特許権者】
【識別番号】500049369
【氏名又は名称】サーントゥル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシュ シャーンティフィク
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】ショモノ アレクサンドラ
(72)【発明者】
【氏名】サンチェス クレマン
(72)【発明者】
【氏名】ボワシエール セドリック
(72)【発明者】
【氏名】コルボー−ジュスタン フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】ボンデュエル オードリー
【審査官】 山口 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−510060(JP,A)
【文献】 特表2008−542177(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/020714(WO,A1)
【文献】 特表2008−542178(JP,A)
【文献】 特開2006−008509(JP,A)
【文献】 特表2011−517439(JP,A)
【文献】 M. SELVARAJ et al.,A novel route to produce phthalic anhydride by oxidation of o-xylene with air over mesoporous V-Mo-MCM-41 molecular sieves,Microporous and Mesoporous Materials,2005年,85,39-51.
【文献】 Y.-M. LIU et al.,Vanadium oxide supported on mesoporous SBA-15 as highly selective catalysts in the oxidative dehydrogenation of propane,Journal of Catalysis,2004年,224,417-428.
【文献】 Z. RONG-FANG et al.,Preparation and Characterization of Hybrid Polyoxometalate-mesoporous Molecular Sieve Materials,化学学報,2006年、第64巻、2165〜2168ページ
【文献】 H. S. YUN et al.,One-step synthesis of PWA containing large pore mesoporous SiO2 using triblock copolymer templates,Journal of Meterials Science Letters,2002, 21, 1501-1503.
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B33/20−39/54
B01J21/00−38/74
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの基本球状粒子によって構成された無機材料であって、前記球状粒子のそれぞれは、金属ナノ粒子を含み、該金属ナノ粒子は、ラマン分光法において750〜1050cm−1の範囲の波数を有する少なくとも1つのバンドを有し、かつ、バナジウム、ニオブ、タンタル、モリブデンおよびタングステンから選択される少なくとも1種の金属を含有し、前記金属ナノ粒子は、メソ構造化マトリクス内に存在し、該メソ構造化マトリクスは、ケイ素、アルミニウム、チタン、タングステン、ジルコニウム、ガリウム、ゲルマニウム、スズ、アンチモン、鉛、バナジウム、鉄、マンガン、ハフニウム、ニオブ、タンタル、イットリウム、セリウム、ガドリニウム、ユーロピウムおよびネオジム、並びに、それらの元素の少なくとも2種の混合によって構成された群から選択される少なくとも1種の元素Yの酸化物をベースとし、前記マトリクスは、1.5〜50nmの範囲の径を有する細孔を有し、かつ、厚さが1〜30nmの範囲の無定形壁を有し、前記基本球状粒子の最大径は200ミクロンであり、前記球状粒子にはヘテロポリアニオンの形態にある金属粒子は存在せず、前記金属ナノ粒子の最大寸法は厳密に1nm未満であり、前記金属ナノ粒子は透過型電子顕微鏡法において検出されない、無機材料。
【請求項2】
前記メソ構造化マトリクスは、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化ケイ素および酸化アルミニウムの混合物または酸化ケイ素および酸化ジルコニウムの混合物によって構成される、請求項1に記載の材料。
【請求項3】
前記マトリクスは、4〜20nmの範囲の径を有する細孔を有する、請求項1または2に記載の材料。
【請求項4】
前記マトリクスは、1〜10nmの範囲の厚さの無定形壁を有する、請求項1〜3のいずれか1つに記載の材料。
【請求項5】
前記金属ナノ粒子は、モリブデンおよび/またはタングステンを含有する、請求項1〜4のいずれか1つに記載の材料。
【請求項6】
前記金属ナノ粒子は、ラマン分光法において750〜950cm−1の範囲または950〜1050cm−1の範囲の波数を有する少なくとも1つのバンドを有する、請求項1〜5のいずれか1つに記載の材料。
【請求項7】
球状粒子のそれぞれは、前記材料の0.1〜30重量%を表すゼオライトナノ結晶を含む、請求項1〜6のいずれか1つに記載の材料。
【請求項8】
前記ゼオライトナノ結晶は、MFI、BEA、FAUおよびLTAの構造型のゼオライトから選択される少なくとも1種のゼオライトを含む、請求項7に記載の材料。
【請求項9】
球状粒子のそれぞれは、有機剤と、元素周期律分類の第VIII族金属と、リン、フッ素、ケイ素およびホウ素、並びにそれらの混合物によって構成されるドーピング元素のリストに属するドーピング種とから選択される1種以上の追加要素を含む、請求項1〜8のいずれか1つに記載の材料。
【請求項10】
追加要素としての前記第VIII族金属は、コバルト、ニッケルおよびこれら2種の金属の混合物から選択される、請求項9に記載の材料。
【請求項11】
50〜1100m/gの範囲の比表面積を有する、請求項1〜10のいずれか1つに記載の材料。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1つに記載の無機材料の調製方法であって、少なくとも以下の連続する工程:
a)溶液中:
− 少なくとも1種の界面活性剤と;
− ケイ素、アルミニウム、チタン、タングステン、ジルコニウム、ガリウム、ゲルマニウム、スズ、アンチモン、鉛、バナジウム、鉄、マンガン、ハフニウム、ニオブ、タンタル、イットリウム、セリウム、ガドリニウム、ユーロピウムおよびネオジム、並びに、それらの元素の少なくとも2種の混合によって構成される群から選択される少なくとも1種の元素Yの少なくとも1種の前駆体と;
− ラマン分光法において750〜1050cm−1の範囲の波数を有する少なくとも1つのバンドを有する金属ナノ粒子中に存在する、バナジウム、ニオブ、タンタル、モリブデンおよびタングステンから選択される少なくとも1種の金属を含有する少なくとも1種の第1の金属前駆体と;
− 場合による、最大ナノメートル寸法が300nmに等しいゼオライト結晶が分散している、少なくとも1種のコロイド溶液と;
を混合する工程と:
b)工程a)で得られた前記溶液のエアロゾル噴霧により、球状液体小滴が形成されるに至る工程と;
c)前記小滴を乾燥させる工程と;
d)少なくとも前記界面活性剤を除去する工程と;
を含む、方法。
【請求項13】
バナジウム、ニオブ、タンタル、モリブデンおよびタングステンから選択される金属をベースとする少なくとも前記第1の金属前駆体と、第VIII族金属をベースとする少なくとも1種の第2の単金属前駆体とを、前記工程a)を行う前に溶解させ、次いで、前記溶液を、前記工程a)による混合物中に導入する、請求項12に記載の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メソ細孔領域において組織化されかつ均一な多孔度を有する無機酸化物材料、特に、遷移金属を含有するものの分野に関する。本発明はまた、「エアロゾル(aerosol)」合成技術を用いて得られるこれらの材料の調製に関する。本発明はまた、硫化後の、炭化水素供給原料の水素化処理、水素化転化および製造の分野に関する種々の方法における触媒としての、これらの材料の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化水素供給原料の水素化転化(hydroconversion:HDC)および水素化処理(hydrotreatment:HDT)のための触媒の組成および使用は、それぞれ、非特許文献1および2に記載されている。したがって、これらの触媒は、一般的に、元素周期律表の少なくとも1種の第VIB族金属および/または少なくとも1種の第VB族金属および場合による少なくとも1種の第VIII族金属をベースとする活性相の存在によって供給される水素化脱水素機能によって特徴付けられる。最も通常の配合は、コバルト−モリブデン(CoMo)、ニッケル−モリブデン(NiMo)およびニッケル−タングステン(NiW)のタイプのものである。そのような触媒は、バルクの形態または担持された状態であってよく、担持された状態の場合多孔性の固体を用いる。調製後、前記触媒の触媒組成物中に存在する少なくとも1種の第VIB族金属および/または少なくとも1種の第VB族金属および場合による少なくとも1種の第VIII族金属は、通常酸化物の形態である。HDCおよびHDT方法のための活性で安定な形態は、硫化形態であり、そのため、そのような触媒は硫化工程を経る。
【0003】
当業者は、一般的に、上記用途の分野における良好な触媒性能が、1)処理されるべき炭化水素含有供給原料の性質、2)用いられる方法、3)選択される、機能する操作条件、および4)用いられる触媒に依存することを知っている。後者の場合、高い触媒ポテンシャルを有する触媒が、1)最適化された水素化脱水素機能(担体の表面に完全に分散し、かつ高い金属含有率を有する、関連する活性相)と、2)水素化転化反応(HDC)を用いる方法の特定の場合、前記水素化脱水素機能と担体の酸機能によって提供される分解機能との間の良好なバランスとによって特徴付けられることも公知である。一般に、処理されるべき炭化水素供給原料の性質にかかわらず、反応物質および反応生成物はまた、触媒の活性部位への満足のいくアクセスを有するべきであり、また、触媒も大きい活性表面積を有するべきであり、これは、前記触媒中に存在する酸化物担体の構造および表面組織(texture)に関して特定の制約が生じることを意味する。この後半のポイントは、「重質な」炭化水素供給原料の処理の場合に、特に重要である。
【0004】
HDCおよびHDT触媒の水素化脱水素相の形成に至る通常の方法は、「乾式含浸」として知られる技術を用いて、少なくとも1種の第VIB族金属および/または少なくとも1種の第VB族金属および場合による少なくとも1種の第VIII族金属の分子前駆体(単数または複数)を、酸化物担体上に沈着させ、その後に、成熟、乾燥および焼成のための工程を行うことからなり、これにより採用された前記金属(単数または複数)の酸化された形態が形成されるに至る。次いで、活性な水素化脱水素相を発生させる、硫化のための最終工程が、上記に記載のように行われる。
【0005】
このような従来の合成手順を用いて得られた触媒の触媒性能は、徹底的に研究されてきた。特に、比較的高い金属含有率について、焼成工程の結果として形成される、硫化に対して抵抗性の相が出現すること(焼結現象)が示されている(非特許文献2)。例として、アルミナタイプの担体上に担持されたCoMoまたはNiMoタイプの触媒の場合、これらは、1)XRDで検出されるのに十分なサイズのMoO、NiO、CoO、CoMoOまたはCoの微結晶、および/または2)Al(MoO、CoAlまたはNiAlタイプの種である。元素アルミニウムを含有する上記の3種は当業者に周知である。それらは、溶液中のアルミナ担体と活性な水素化脱水素相の前駆体塩との間の相互作用に由来し、これにより、実際、アルミナマトリクスから抽出されたAl3+イオンと前記塩との間の反応が得られるに至り、式[Al(OH)Mo183−のアンダーソン型ヘテロポリアニオン(Anderson heteropolyanion)を形成し、これらは、それ自体、硫化に対して抵抗性の相の前駆体である。これらの種の全ての存在によって、関連する触媒の触媒活性の無視できない程の間接的な喪失に至る。少なくとも1種の第VIB族金属および/または少なくとも1種の第VB族金属および場合による少なくとも1種の第VIII族金属に属する元素の一部が、低い活性であるかまたは不活性であるかの種において固定されるので、それらの全てが、それらの可能性の最大限まで用いられるわけではないからである。
【0006】
上記の従来の触媒の触媒性能は、それ故に、特に、
1)水素化脱水素相の良好な分散を、特に高い金属含有率のために確実なものにする(例えば、遷移金属をベースとする粒子のサイズを制御する、熱処理後にこれらの粒子の特性を維持する、等によって);
2)硫化に対して抵抗性である種の形成を制限する(例えば、活性相を形成する遷移金属間のより良好な相乗効果を得る、水素化脱水素活性相(および/またはその前駆体)と採用された多孔性担体との間の相互作用を制御する、等によって);
3)開発された活性な表面積を高く維持しながら、反応物質および反応生成物の良好な分散を確実なものとする(多孔性担体の化学的、表面組織的および構造的な特性の最適化);
ために用いられ得るだろうこれらの触媒の調製のための新規な方法を開発することによって向上させられ得るだろう。
【0007】
上記に表されたニーズを満たすために、水素化転化および水素化処理の触媒であって、活性な水素化脱水素相の前駆体が、ヘテロポリアニオン(HPA)、例えば、コバルトおよびモリブデン(CoMo系)、ニッケルおよびモリブデン(NiMo系)、ニッケルおよびタングステン(NiW系)、ニッケル、バナジウムおよびモリブデン(NiMoV系)またはリンおよびモリブデン(PMo系)をベースとするヘテロポリアニオンから形成される、触媒が開発された。例として、特許文献1には、水素化精製および/または水素化転化触媒であって、少なくとも1種の第VIII族元素と、少なくとも部分的にヘテロポリアニオンの形態である酸化物前駆体中に存在する少なくともモリブデンおよび/またはタングステンとを含む、ものが開示されている。一般に、ヘテロポリアニオンは、酸化物担体上に含浸させられる。
【0008】
約10年前、制御された階層的多孔度を有する担体を有する他の触媒が開発された。炭化水素供給原料の水素化処理、水素化転化および製造の分野に関する適用の関連において、制御が望まれる、アクセス可能性(細孔サイズに関連する)/開発された活性な表面(比表面積に関連する)の妥協は別にして、パラメータ、例えば、細孔長、屈曲度または細孔間の結合度(各キャビティのアクセス数によって定義される)を制御することは重要である。細孔の周期的な配置および特定の形態(morphology)に関連する構造的特性は、制御が不可欠なパラメータである。例として、特許文献2には、種々のオイルカットの転換のために、広い比表面積および均一な細孔サイズ分布を発達させるメソ構造化アルミナタイプの触媒担体メソ構造化アルミナタイプの触媒担体を用いることが有利であることが教示されている。特許文献3にも、メソ構造化固体の壁に金属粒子を組み入れることにより、これらの粒子に、焼結に対して向上した熱的抵抗性が付与される(出発粒子の分散が維持される)ことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】仏国特許出願公開第2843050号明細書(特開2004−66234号公報)
【特許文献2】米国特許出願公開第2007/152181号明細書
【特許文献3】仏国特許出願公開第2834978号明細書(特開2005−515144号公報)
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】J. Scherzer, A. J. Gruia著、「Hydrocracking Science and Technology」、1996年、Marcel Dekker Inc
【非特許文献2】B. S Clausen, H. T. Topsooee, F. E. Massoth著、「Catalysis Science and Technology」、1996年、第11巻、Springer-Verlag
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の概要)
本発明は、少なくとも2つの基本球状粒子によって構成された無機材料であって、前記球状粒子のそれぞれは、金属ナノ粒子を含み、この金属ナノ粒子は、ラマン分光法において750〜1050cm−1の範囲の波数を有する少なくとも1つのバンドを有し、かつ、バナジウム、ニオブ、タンタル、モリブデンおよびタングステンから選択される少なくとも1種の金属を含有し、前記金属ナノ粒子は、メソ構造化マトリクス内に存在し、このメソ構造化マトリクスは、ケイ素、アルミニウム、チタン、タングステン、ジルコニウム、ガリウム、ゲルマニウム、スズ、アンチモン、鉛、バナジウム、鉄、マンガン、ハフニウム、ニオブ、タンタル、イットリウム、セリウム、ガドリニウム、ユーロピウムおよびネオジムおよびこれらの元素の少なくとも2種の混合によって構成される群から選択される少なくとも1種の元素Yの酸化物をベースとし、前記マトリクスは、1.5〜50nmの範囲の径を有する細孔を有し、かつ、1〜30nmの範囲の厚さを有する無定形壁を有し、前記基本球状粒子は、200ミクロンの最大径を有し、前記金属ナノ粒子は、厳密に1nm未満の最大寸法を有する、無機材料に関する。
【0012】
本発明の材料は、「エアロゾル」技術として知られる特定の合成技術を用いて調製される。
【0013】
硫化後、本発明のメソ構造化無機材料は、炭化水素供給原料の転換のための種々の方法において、特に、精製分野における炭化水素供給原料の水素化処理および/または水素化転化を伴う触媒方法において触媒として用いられる。
【発明の効果】
【0014】
(発明の利点)
本発明の材料であって、金属ナノ粒子を、前記材料を構成する基本球状粒子のそれぞれのメソ構造化マトリクス中に捕捉されて含む、材料は、有利な触媒前駆体である。それは、同時に、金属ナノ粒子の存在に密接に関連する特性、特に、活性相のより良好な分散、水素化脱水素部位と任意の酸性部位との間のより良好な相乗効果、硫化に対して抵抗性の相の低減、並びに、少なくとも1種の元素Yの酸化物をベースとするメソ構造化材料に特有の、構造的、表面組織的、かつ場合による酸塩基の特性および酸化還元特性、特に、試薬および反応生成物の非制限的物質移動および高い活性表面積の値を有する。金属ナノ粒子は、硫化後に、本発明の材料から得られる触媒中に存在する活性硫化相の前駆体種である。
【0015】
最大径が200μmである基本球状粒子によって構成される本発明の無機材料に関連する試薬および反応生成物の分散特性は、他のメソ構造化材料であって、当該技術分野において公知であり、かつエアロゾル方法によって得られず、かつ形状が均一でない、すなわち不規則である、500nmをはるかに超える寸法を有する基本粒子の形態である、他のメソ構造化材料の分散特性に対して高められる。一方で金属ナノ粒子の特定の特性、他方で本発明の材料の球状粒子のそれぞれの中に存在するメソ構造化酸化物マトリクスの特定の特性に加えて、メソ構造化酸化物マトリクス中に金属ナノ粒子を捕捉することにより、更に好ましい技術的効果、例えば、前記金属ナノ粒子のサイズにわたる制御、前記ナノ粒子の熱的安定性の向上、および元のナノ粒子/担体の相互作用の進展が生み出される。
【0016】
加えて、本発明のエアロゾル方法を用いる調製方法は、単一の工程(ワンポット)で、金属ナノ粒子をベースとする、硫化触媒の種々の前駆体を容易に生じさせるために用いられ得る。
【0017】
加えて、エアロゾル方法を用いないメソ構造化材料の公知の合成と比較して、本発明の材料の調製は連続的に行われ、調製期間は低減させられ(オートクレーブ処理を用いる12〜24時間に対して、数時間)、試薬の初期溶液中に存在する不揮発性種の化学量論は本発明の材料中で維持される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(発明の概要)
本発明は、少なくとも2つの基本球状粒子によって構成された無機材料であって、前記球状粒子のそれぞれは、金属ナノ粒子を含み、この金属ナノ粒子はラマン分光法において750〜1050cm−1の範囲の波数を有する少なくとも1つのバンドを有し、かつ、バナジウム、ニオブ、タンタル、モリブデンおよびタングステンから選択される少なくとも1種の金属を含有し、前記金属ナノ粒子は、メソ構造化マトリクス内に存在し、このメソ構造化マトリクスは、ケイ素、アルミニウム、チタン、タングステン、ジルコニウム、ガリウム、ゲルマニウム、スズ、アンチモン、鉛、バナジウム、鉄、マンガン、ハフニウム、ニオブ、タンタル、イットリウム、セリウム、ガドリニウム、ユーロピウムおよびネオジム、並びに、それらの元素の少なくとも2種の混合によって構成された群から選択される少なくとも1種の元素Yの酸化物をベースとし、前記マトリクスは、1.5〜50nmの範囲の径を有する細孔を有し、かつ、厚さが1〜30nmの範囲の無定形壁を有し、前記基本球状粒子の最大径は200ミクロンであり、前記金属ナノ粒子の最大寸法は厳密に1nm未満である、無機材料に関する。
【0019】
本発明によると、本発明の材料の前記球状粒子のそれぞれの中に含まれるメソ構造化マトリクス中に酸化物の形態で存在する元素Yは、ケイ素、アルミニウム、チタン、タングステン、ジルコニウム、ガリウム、ゲルマニウム、スズ、アンチモン、鉛、バナジウム、鉄、マンガン、ハフニウム、ニオブ、タンタル、イットリウム、セリウム、ガドリニウム、ユーロピウムおよびネオジム、並びに、それらの元素の少なくとも2種の混合によって構成される群から選択され、好ましくは、酸化物形態で存在する前記元素Yは、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ガリウム、ゲルマニウムおよびセリウム、並びに、それらの元素の少なくとも2種の混合によって構成される群から選択される。より一層好ましくは、酸化物形態で存在する前記元素Yは、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、並びに、それらの元素の少なくとも2種の混合によって構成される群から選択される。本発明によると、前記メソ構造化マトリクスは、好ましくは、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化ケイ素と酸化アルミニウムの混合物、または、酸化ケイ素と酸化ジルコニウムの混合物によって構成される。前記メソ構造化マトリクスが、酸化ケイ素と酸化アルミニウムの混合物(アルミノケイ酸塩)である好ましい場合、前記マトリクスのSi/Alモル比は、少なくとも0.02に等しく、好ましくは0.1〜1000の範囲、非常に好ましくは1〜100の範囲である。
【0020】
少なくとも前記元素Yの酸化物をベースとする前記マトリクスは、メソ構造化されている:それは、本発明の材料の基本粒子のそれぞれについてメソ細孔スケールで組織化した多孔度、すなわち、1.5〜50nmの範囲、好ましくは1.5〜30nmの範囲、より一層好ましくは4〜20nmの範囲で均一な径を有する細孔スケールで、かつ、前記粒子のそれぞれにおいて均一かつ規則的に分布した、組織化した多孔度を有する(マトリクスのメソ構造化)。メソ構造化マトリクスのメソ細孔間に位置する材料は、無定形であり、1〜30nmの範囲、好ましくは1〜10nmの範囲の厚さの壁または仕切りを形成している。壁の厚さは、第1のメソ細孔を第2のメソ細孔から隔てる距離に相当し、第2のメソ細孔は前記第1のメソ細孔に最も近い細孔である。上記のメソ多孔度の組織化により、前記マトリクスの構造化がもたらされ、この構造化は、六方晶系、バーミキュラまたは立方晶系であってよいが、好ましくはバーミキュラである。メソ構造化マトリクスは、有利には、ミクロ細孔の範囲に多孔度を有しない。
【0021】
本発明の材料はまた、粒子間の組織的マクロ多孔度を有する。
【0022】
本発明の材料の前記球状粒子のそれぞれの中に含まれるメソ構造化マトリクスは、金属ナノ粒子を含み、この金属ナノ粒子は、バナジウム、ニオブ、タンタル、モリブデンおよびタングステンから選択される少なくとも1種の金属Mを含有し、好ましくは、モリブデンおよび/またはタングステンを含有する。より正確には、前記金属ナノ粒子は、メソ構造化マトリクスに捕捉されている。バナジウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステンおよびそれらの混合から選択され、好ましくはモリブデンまたはタングステンである、前記金属は、酸素化された環境下にある。本発明の材料の前記球状粒子のそれぞれの中に含まれるメソ構造化酸化物マトリクス中に捕捉された前記金属ナノ粒子は、有利には、酸化数が+IV、+Vおよび/または+VIに等しい原子Mを有する。金属ナノ粒子は、均一かつ一様にマトリクス中に捕捉されている。前記ナノ粒子の例は、モノモリブデン酸種、モノタングステン酸種、ポリモリブデン酸種またはポリタングステン酸種である。このような種、特にポリモリブデン酸種は、S. B. Umbarkar et al., Journal of Molecular Catalysis A: Chemical, 310, 2009, 152によって記載されている。有利には、前記メソ構造化マトリクスは、バナジウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステンから選択される金属をベースとする金属ナノ粒子と、バナジウム、ニオブ、タンタル、モリブデンおよびタングステンから選択される別の金属をベースとする他のナノ粒子とを含む。非常に有利には、前記メソ構造化マトリクスは、モリブデンをベースとする金属ナノ粒子と、タングステンをベースとする他のナノ粒子とを含む。前記金属ナノ粒子は、当業者に公知の手順を用いて、前駆体を用いて調製される。この前駆体は有利には、単金属性であり、例えば、本発明の開示において以下に記載されるものである。それらは、厳密に1nm未満の寸法を有する。特に、前記金属ナノ粒子は、透過型電子顕微鏡法(transmission electron microscopy:TEM)において検出されない。本発明によると、本発明の材料を構成する前記球状粒子には、ヘテロポリアニオンの形態の金属粒子は存在しない。
【0023】
本発明によると、前記金属ナノ粒子は、ラマン分光法において750〜1050cm−1の範囲の波数を有する少なくとも1つのバンドの存在によって特徴付けられる。ラマン分光法は、当業者に周知の技術である。より正確には、前記金属ナノ粒子は、750〜950cm−1の範囲または950〜1050cm−1の範囲の波数を有する少なくとも1つのバンドを有する。750〜950cm−1の範囲の波数を有するバンドは、反対称性の(M−O−M)結合伸縮または対称性の(−O−M−O−)結合伸縮に起因する。950〜1050cm−1の範囲の波数を有するバンドは、末端M=O結合の伸縮モードに起因する。M−O−M、−O−M−O−およびM=O結合中に存在する元素Mは、バナジウム、ニオブ、タンタル、モリブデンおよびタングステンから、好ましくは、モリブデンおよび/またはタングステンから選択される。前記金属ナノ粒子を識別するために用いられるラマン装置は、本明細書の以降に記載される。
【0024】
前記ナノ粒子は、有利には、本発明の材料の4〜50重量%、好ましくは5〜40重量%、非常に好ましくは6〜30重量%を表す。
【0025】
本発明による無機材料は、1〜40%(酸化物形態の材料の最終質量に対する酸化物の重量%として表される)の範囲、好ましくは4〜35重量%の範囲、より好ましくは4〜30重量%の範囲、一層より好ましくは4〜20重量%の範囲の重量による量の元素(単数または複数)バナジウム、ニオブ、タンタル、モリブデンおよびタングステンを含む。
【0026】
本発明による材料の第1の特定の実施形態によると、前記材料を構成する球状粒子のそれぞれは、ゼオライトナノ結晶を更に含む。前記ゼオライトナノ結晶は、金属ナノ粒子と共に、基本球状粒子のそれぞれの中に含まれるメソ構造化マトリクス中に捕捉されている。ゼオライトナノ結晶をメソ構造化マトリクス中に捕捉することからなる、本発明のこの実施形態によると、本発明の材料は、基本球状粒子のそれぞれの中に、マトリクス自体におけるメソ多孔度(1.5〜50nmの範囲、好ましくは1.5〜30nmの範囲、より好ましくは4〜20nmの範囲の均一な径を有するメソ細孔)と、メソ構造化マトリクス中に捕捉されたゼオライトナノ結晶によって生じたゼオライトタイプのミクロ多孔度とを同時に有する。前記ゼオライトナノ結晶は、0.2〜2nmの範囲、好ましくは0.2〜1nmの範囲、より好ましくは0.2〜0.8nmの範囲の細孔サイズを有する。前記ゼオライトナノ結晶は、有利には、本発明の材料の0.1〜30重量%、好ましくは0.1〜20重量%、非常に好ましくは0.1〜10重量%を表す。ゼオライトナノ結晶は、300nmの最大寸法(一般的には、最大径)を有し、好ましくは、10〜150nmの範囲の寸法(一般的には径)を有する。任意のゼオライト、特に(しかし制限されるわけでない)、"Atlas of zeolite framework types", 6th revised Edition, 2007, Ch. Baerlocher, L. B. L. McCusker, D. H. Olsonに列挙されたものが、本発明による材料を構成する基本球状粒子のそれぞれの中に存在するゼオライトナノ結晶中で用いられてよい。ゼオライトナノ結晶は、好ましくは、ゼオライトIZM−2、ZSM−5、ZSM−12、ZSM−48、ZSM−22、ZSM−23、ZBM−30、EU−2、EU−11、シリカライト、ベータ、ゼオライトA、フォージャサイト、Y、USY、VUSY、SDUSY、モルデナイト、NU−10、NU−87、NU−88、NU−86、NU−85、IM−5、IM−12、IM−16、フェリエライトおよびEU−1から選択される少なくとも1種のゼオライトを含む。非常に好ましくは、ゼオライトナノ結晶は、MFI、BEA、FAUおよびLTAの構造型のゼオライトから選択
される少なくとも1種のゼオライトを含む。種々のゼオライト、特に異なる構造型のゼオライトのナノ結晶は、本発明による材料を構成する球状粒子のそれぞれの中に存在してよい。特に、本発明による材料を構成する球状粒子のそれぞれは、有利には、少なくとも第1のゼオライトナノ結晶と、少なくとも第2のゼオライトナノ結晶とを含んでよく、第1のゼオライトナノ結晶は、ゼオライトIZM−2、ZSM−5、ZSM−12、ZSM−48、ZSM−22、ZSM−23、ZBM−30、EU−2、EU−11、シリカライト、ベータ、ゼオライトA、フォージャサイト、Y、USY、VUSY、SDUSY、モルデナイト、NU−10、NU−87、NU−88、NU−86、NU−85、IM−5、IM−12、IM−16、フェリエライトおよびEU−1から、好ましくは、MFI、BEA、FAUおよびLTAの構造型のゼオライトから選択され、第2のゼオライトナノ結晶は、第1のゼオライトナノ結晶のものとは異なっており、かつ、ゼオライトIZM−2、ZSM−5、ZSM−12、ZSM−48、ZSM−22、ZSM−23、ZBM−30、EU−2、EU−11、シリカライト、ベータ、ゼオライトA、フォージャサイト、Y、USY、VUSY、SDUSY、モルデナイト、NU−10、NU−87、NU−88、NU−86、NU−85、IM−5、IM−12、IM−16、フェリエライトおよびEU−1から、好ましくはMFI、BEA、FAUおよびLTAの構造型を有するゼオライトから選択される。ゼオライトナノ結晶は、有利には、全体的にシリカであるか、または、ケイ素に加えて、アルミニウム、鉄、ホウ素、インジウム、ガリウムおよびゲルマニウムから選択される少なくとも1種の元素T、好ましくはアルミニウムを含有する、少なくとも1種のゼオライトを含む。
【0027】
上記の前記第1の実施形態から独立してもしていなくてもよい、本発明による材料の第2の特定の実施形態によると、前記材料を構成する球状粒子のそれぞれは、有機剤と、元素周期分類の第VIII族金属と、リン、フッ素、ケイ素およびホウ素、並びに、それらの混合によって構成されるドーピング元素のリストに属するドーピング種とから選択される1種以上の追加要素を、更に含む。追加要素としての前記第VIII族金属(単数または複数)は、有利には、コバルト、ニッケルおよびこれら2種の金属の混合から選択される。本発明の無機材料は、第VIII族からの金属(単数または複数)、特に、ニッケルおよび/またはコバルトを、0〜15%(酸化物形態の材料の最終質量に対する酸化物の重量%として表される)の範囲、好ましくは0.5〜10重量%の範囲、一層より好ましくは1〜8重量%の範囲の重量による全体量で含む。ドーピング種(P、F、Si、Bおよびそれらの混合)の全量は、0.1〜10重量%の範囲、好ましくは0.5〜8重量%の範囲、より一層好ましくは0.5〜6重量%の範囲であり、これらは、本発明のメソ構造化無機材料の重量に対する酸化物の重量%として表される。ドーピング種と、V、Nb、Ta、MoおよびWから選択される金属(単数または複数)の間の原子比は、好ましくは0.05〜0.9の範囲、より好ましくは0.08〜0.8の範囲であり、この比の計算のために考慮される、ドーピング種と、V、Nb、Ta、MoおよびWから選択される金属(単数または複数)は、ドーピング種と、V、Nb、Ta、MoおよびWから選択される金属(単数または複数)の本発明の材料中の全含有率に相当する。
【0028】
本発明によると、本発明による材料を構成する前記基本球状粒子の最大径は、200μmに等しく、好ましくは100μm未満であり、有利には50nm〜50μmの範囲であり、非常に有利には50nm〜30μmの範囲であり、一層より有利には50nm〜10μmの範囲である。より正確には、それらは、本発明による材料による材料中に、粉体、ビーズ、ペレット、細粒、押出物(中空であってもなくてもよい円柱形、多葉状円柱形、例えば、2、3、4または5葉を有する多葉状円柱形、または捻じれた円柱形)またはリングの形態で存在する。本発明による材料は、有利には50〜1100m/gの範囲、非常に有利には50〜600m/gの範囲、より一層好ましくは50〜400m/gの範囲の比表面積を有する。
【0029】
本発明はまた、本発明による材料の調製方法に関する。
【0030】
本発明による前記調製方法は、少なくとも以下の連続する工程:
a)溶液中:
− 少なくとも1種の界面活性剤と;
− ケイ素、アルミニウム、チタン、タングステン、ジルコニウム、ガリウム、ゲルマニウム、スズ、アンチモン、鉛、バナジウム、鉄、マンガン、ハフニウム、ニオブ、タンタル、イットリウム、セリウム、ガドリニウム、ユーロピウムおよびネオジム、並びに、それらの元素の少なくとも2種の混合によって構成される群から選択される少なくとも1種の元素Yの少なくとも1種の前駆体と;
− ラマン分光法において750〜1050cm−1の範囲の波数を有する少なくとも1つのバンドを有する金属ナノ粒子中に存在する、バナジウム、ニオブ、タンタル、モリブデンおよびタングステンから選択される少なくとも1種の金属を含有する少なくとも1種の第1の金属前駆体と;
− 場合による、最大ナノメートル寸法が300nmに等しいゼオライト結晶が分散している、少なくとも1種のコロイド溶液と;
を混合する工程と:
b)工程a)で得られた前記溶液のエアロゾル噴霧により、球状液体小滴が形成されるに至る工程と;
c)前記小滴を乾燥させる工程と;
d)少なくとも前記界面活性剤を除去して、前記金属ナノ粒子が捕捉された前記メソ構造化無機材料を得る工程と;
を含む。
【0031】
本発明の調製方法によると、前記ナノ粒子は、好ましくは、前記工程b)の前に、必要な金属前駆体(単数または複数)、すなわち、少なくとも前記第1の金属前駆体を溶解させることによって調製され、前記溶液は、次いで、前記工程a)の混合物に導入される。好ましくは、前駆体(単数または複数)を溶解させるために用いられる溶媒は、水性であり、金属前駆体(単数または複数)を溶解させた後かつ工程a)の前に得られる、前記前駆体を含有する溶液は透明であり、pHは、中性、塩基性、または酸性であり、好ましくは酸性である。用いられる前記第1の金属前駆体は、有利には、単金属前駆体である。好ましくは、前記第1の単金属前駆体は、モリブデンまたはタングステンをベースとする。少なくとも2種の金属前駆体を用いることが有利であり、前記前駆体のそれぞれは、バナジウム、ニオブ、タンタル、モリブデンおよびタングステンから選択される異なる金属をベースとする。したがって、無機メソ構造化材料であって、バナジウム、ニオブ、タンタル、モリブデンおよびタングステンから選択される金属をベースとするナノ粒子およびバナジウム、ニオブ、タンタル、モリブデンおよびタングステンから選択される別の金属をベースとする他のナノ粒子がマトリクス中に捕捉されたものが得られる。例として、モリブデンをベースとする前駆体およびタングステンをベースとする前駆体が、有利には、モリブデンをベースとするナノ粒子とタングステンをベースとするナノ粒子をマトリクス中に捕捉するために用いられる。
【0032】
前記ナノ粒子が、タングステンおよび/またはモリブデンを含む、好ましい場合、前記第1の単金属前駆体であって、以下の種のうちの1つから形成されるものが、有利には、本発明の方法において用いられる:アルコラートまたはフェノラートタイプ(W−O結合、Mo−O結合)の種、アミドタイプ(W−NR結合、Mo−NR結合)の種、ハリドタイプ(例えば、W−Cl結合、Mo−Cl結合)の種、イミドタイプ(W=N−R結合、Mo=N−R結合)の種、オキソタイプ(W=O結合、Mo=O結合)の種、ヒドリドタイプ(W−H結合、Mo−H結合)の種。有利には、前記第1の単金属前駆体は、以下の種から選択される:(NHMO(M=Mo、W)、NaMO(M=Mo、W)、HMoO、(NHMS(M=Mo、W)、MoOCl、MoCl、MoCl、W(OEt)、W(Et)、WCl、WCl、WClおよびWPhCl。しかし、当業者に周知のあらゆる単金属前駆体が用いられてもよい。
【0033】
本発明によるメソ構造化無機材料の調製方法の工程a)によると、ケイ素、アルミニウム、チタン、タングステン、ジルコニウム、ガリウム、ゲルマニウム、スズ、アンチモン、鉛、バナジウム、鉄、マンガン、ハフニウム、ニオブ、タンタル、イットリウム、セリウム、ガドリニウム、ユーロピウムおよびネオジム、並びに、それらの元素の少なくとも2種の混合によって構成される群から選択される、好ましくは、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ガリウム、ゲルマニウムおよびセリウム、並びに、それらの元素の少なくとも2種の混合物によって構成される群から選択される少なくとも1種の元素Yの前駆体(単数または複数)は、当業者に周知の無機酸化物前駆体(単数または複数)である。少なくとも前記元素Yの前駆体(単数または複数)は、元素Yを含み、かつ、溶液、例えば、水−有機溶液、好ましくは水−有機の酸性溶液中に当該元素を活性な形態で遊離させることが可能な任意の化合物であってよい。Yが、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ガリウム、ゲルマニウムおよびセリウム、並びに、それらの元素の少なくとも2種の混合によって構成される群から選択される好ましい場合、少なくとも前記元素Yの前駆体(単数または複数)は、有利には、式YZ(n=3または4)を有する前記元素Yの無機塩であり、Zはハロゲン、NO基またはパークロラートであり、好ましくは、Zは塩素である。考慮中の少なくとも前記元素Yの前駆体(単数または複数)は、式Y(OR)(式中、R=エチル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル等)を有するアルコキシド前駆体(単数または複数)、またはキレート前駆体、例えばY(C(n=3または4)であってもよい。考慮中の少なくとも前記元素Yの前駆体(単数または複数)はまた、前記元素Yの酸化物(単数または複数)または水酸化物(単数または複数)であってよい。元素Yの性質に応じて、考慮中の元素Yの前駆体は、YOZの形態であってもよく、Zは、一価アニオン、例えばハロゲンまたはNO基である。好ましくは、前記元素(単数または複数)Yは、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ガリウム、ゲルマニウムおよびセリウム、並びに、それらの元素の少なくとも2種の混合によって構成される群から選択される。非常に好ましくは、メソ構造化酸化物マトリクスは、酸化アルミニウム、酸化ケイ素(Y=SiまたはAl)を含み、好ましくは、これらによって構成されるか、または、酸化ケイ素および酸化アルミニウムの混合物(Y=Si+Al)または酸化ケイ素および酸化ジルコニウムの混合物(Y=Si+Zr)を含み、好ましくは、これらによって構成される。Yが、ケイ素またはアルミニウムまたはケイ素とアルミニウムの混合またはケイ素とジルコニウムの混合である特定の場合、本発明による材料の調製方法の工程a)で用いられるシリカおよび/またはアルミナの前駆体並びにジルコニウム前駆体は、当業者に周知の無機酸化物前駆体である。シリカ前駆体は、任意のシリカ源から、有利には、式NaSiOを有するケイ酸ナトリウム前駆体、式SiClを有する塩素化前駆体、式Si(OR)(式中、R=H、メチルまたはエチルである)を有するアルコキシド前駆体、あるいは、式Si(OR)4−aCl(式中、R=H、メチルまたはエチルであり、aは0〜4である)を有するクロロアルコキシド前駆体から得られる。シリカ前駆体はまた、有利には、式Si(OR)4−aR'(式中、R=H、メチルまたはエチルであり、R'は、アルキル鎖、または、例えば、チオール、アミノ、β−ジケトンまたはスルホン酸基による官能基化されたアルキル鎖であり、aは、0〜4である)を有するアルコキシド前駆体であってよい。好ましいシリカ前駆体は、オルトケイ酸テトラエチル(tetraethylorthosilicate:TEOS)である。アルミナ前駆体は、有利には、式AlZ(Zは、ハロゲンまたはNO基である)を有するアルミニウムの無機塩である。好ましくは、Zは塩素である。アルミナ前駆体はまた、式Al(OR’’)(式中、R’’=エチル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチルまたはt−ブチルである)を有するアルコキシド前駆体、またはキレート前駆体、例えば、アルミニウムアセチルアセトナート(Al(CH)であってよい。アルミナ前駆体はまた、アルミニウムの酸化物または水酸化物であってよい。
【0034】
本発明による材料の調製方法の工程a)による混合物の調製のために用いられる界面活性剤は、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、またはこれら2種の混合物である。好ましくは、イオン性界面活性剤は、ホスホニウムおよびアンモニウムイオンから、非常に好ましくは第四級アンモニウム塩、例えば臭化セチルトリメチルアンモニウム(cetyltrimethylammonium bromide:CTAB)から選択される。好ましくは、非イオン性界面活性剤は、両親媒性高分子特性を与える異なる極性を有する少なくとも2つの部分を有する任意の共重合体であってよい。これらの共重合体は、以下の重合体ファミリーの包括的でないリストの一部を形成する少なくとも1つのブロックを含んでよい:フッ化重合体(−[CH−CH−CH−CH−O−CO−R1]−(式中、R1=C、C17等))、ポリアミノ酸(ポリリシン、アルギナート等)等の生物学的重合体、デンドリマー、ポリ(アルキレンオキシド)の鎖によって構成される重合体。一般的に、当業者に公知の両親媒性の性質を有するあらゆる共重合体が用いられてよい(S. Forster, M. Antionnetti, Adv.Mater, 1998, 10, 195-217; S. Forster, T. Plantenberg, Angew. Chem. Int. Ed, 2002, 41, 688-714; H. Colfen, Macromol. Rapid Commum, 2001, 22, 219)。好ましくは、本発明の関連の中で、ポリ(アルキレンオキシド)の鎖によって構成されたブロック共重合体が用いられる。前記ブロック共重合体は、好ましくは、2つ、3つまたは4つのブロックを含有するブロック共重合体であり、各ブロックは、ポリ(アルキレンオキシド)の1つの鎖から構成される。2−ブロック共重合体では、ブロックの一方が親水性の性質を有するポリ(アルキレンオキシド)の鎖によって構成され、他方のブロックが疎水性の性質を有するポリ(アルキレンオキシド)鎖によって構成される。3−ブロック共重合体では、ブロックの少なくとも1つが親水性の性質を有するポリ(アルキレンオキシド)鎖によって構成され、その他のブロックのうち少なくとも1つが疎水性の性質を有するポリ(アルキレンオキシド)鎖によって構成される。好ましくは、3−ブロックの共重合体の場合、親水性の性質を有するポリ(アルキレンオキシド)鎖は、(PEO)および(PEO)で示されるポリ(エチレンオキシド)の鎖であり、疎水性の性質を有するポリ(アルキレンオキシド)の鎖は、(PPO)で示されるポリ(プロピレンオキシド)の鎖、ポリ(ブチレンオキシド)の鎖、または各鎖が複数種のアルキレンオキシドモノマーの混合である混合鎖である。非常に好ましくは、3−ブロックの共重合体の場合、式(PEO)−(PPO)−(PEO)(式中、wは5〜300、yは33〜300、zは5〜300である)を有する化合物が用いられる。好ましくは、wおよびzの値は同一である。非常に有利には、w=20、y=70およびz=20である化合物(P123)が用いられ、w=106、y=70およびz=106である化合物(F127)が用いられる。Pluronic(登録商標)(BASF)、Tetronic(登録商標)(BASF)、Triton(登録商標)(Sigma)、Tergitol(登録商標)(Union Carbide)、Brij(登録商標)(Aldrich)の名称を有する市販の非イオン性界面活性剤が、非イオン性界面活性剤として用いられてよい。4−ブロック共重合体では、ブロックの2つが親水性の性質を有するポリ(アルキレンオキシド)の鎖によって構成され、他の2つのブロックが疎水性の性質を有するポリ(アルキレンオキシド)の鎖によって構成される。好ましくは、本発明の材料の調製方法の工程a)による混合物を調製するために、CTAB等のイオン性界面活性剤と、P123またはF127等の非イオン性界面活性剤の混合物が用いられる。
【0035】
本発明による調製方法の工程a)において、コロイド溶液であって、最大ナノメートル寸法が300nmに等しいゼオライト結晶が分散し、前記工程a)において想定される混合物に場合により添加された、コロイド溶液は、テンプレートの存在下での、最大ナノメートル寸法が300nmであるゼオライトナノ結晶の事前合成か、あるいは、溶液中、例えば酸性の水−有機溶液に最大ナノメートル寸法が300nmに等しいナノ結晶の形態で分散させる能力を有するゼオライト結晶を用いるかのいずれかによって得られる。ゼオライトナノ結晶の事前合成からなる第1の変形例において、これらは、当業者に公知の操作手順を用いて合成される。特に、ベータゼオライトナノ結晶の合成は、T. Bein et al., Micropor. Mesopor. Mater., 2003, 64, 165に記載されている。Yゼオライトのナノ結晶の合成は、T. J. Pinnavaia et al., J. Am. Chem. Soc., 2000, 122, 8791に記載されている。フォージャサイトゼオライトのナノ結晶の合成は、Kloetstra et al., Microporous Mater., 1996, 6, 287に記載されている。ZSM−5ゼオライトのナノ結晶の合成は、R. Mokaya et al., J. Mater. Chem., 2004, 14, 863に記載されている。シリカライト(または、構造型MFI)のナノ結晶の合成は、数多くの刊行物:R. de Ruiter et al., Synthesis of Microporous Materials, Vol. I; M. L. Occelli, H. E. Robson (eds.), Van Nostrand Reinhold, New York, 1992, 167; A. E. Persson, B. J. Schoeman, J. Sterte, J. -E. Otterstedt, Zeolites, 1995, 15, 611に記載されている。一般に、ゼオライトナノ結晶は、少なくとも1種のシリカ源、場合による、アルミニウム、鉄、ホウ素、インジウム、ガリウムおよびゲルマニウムから選択される少なくとも1種の元素Tの少なくとも1種の源、好ましくは少なくとも1種のアルミナ源、並びに、少なくとも1種のテンプレートを含む反応混合物を調製することによって合成される。ゼオライトナノ結晶の合成のための反応混合物は、水性であるか、あるいは、水−有機、例えば水−アルコール混合物であるかのいずれかである。反応混合物は、有利には、水熱条件下、自己生成圧力下、場合によりガス、例えば窒素を添加することによって、50〜200℃の範囲、好ましくは60〜170℃の範囲の温度、より好ましくは120℃を超えない温度で、ゼオライトナノ結晶が形成されるまで用いられる。前記水熱処理の終わりに、ナノ結晶が分散した状態にあるコロイド溶液が得られる。テンプレートは、合成されるべきゼオライトに応じて、イオン性または中性であってよい。以下の包括的でないリストからのテンプレートを用いることが通常である:窒素含有有機カチオン、アルカリ族からの元素(Cs、K、Na、等)、クラウンエーテル、ジアミン、並びに、当業者に周知の任意の他のテンプレート。直接ゼオライト結晶を用いることからなる第2の変形例において、これらは、当業者に公知の方法によって合成される。前記ゼオライト結晶は、すでにナノ結晶の形態であってよい。加えて、300nm超、例えば300nm〜200μmの範囲の寸法を有するゼオライト結晶が、有利には用いられてよい;それらは溶液中、例えば、水−有機溶液中、好ましくは、酸性の水−有機溶液中に、最大ナノメートル寸法が300nmであるナノ結晶の形態で分散する。最大ナノメートル寸法が300nmであるナノ結晶の形態で分散するゼオライト結晶を得ることはまた、ナノ結晶の表面を官能基化することによって可能である。用いられるゼオライト結晶は、それらの合成されたままの形態、すなわち、依然としてテンプレート含有している形態か、あるいは、それらの焼成された状態、すなわち、前記テンプレートを含まない形態かのいずれかである。用いられるゼオライト結晶がそれらの合成されたままの形態である場合、前記テンプレートは、本発明の調製方法の工程d)の間に除去される。
【0036】
溶液であって、本発明の材料の調製方法の工程a)に従って、少なくとも1種の界面活性剤と、少なくとも1種の元素Yの少なくとも1種の前駆体と、少なくとも前記第1の金属前駆体と、場合による少なくとも前記第2の金属前駆体と、場合による、最大ナノメートル寸法が300nmであるゼオライト結晶が分散した少なくとも1種の安定なコロイド溶液とが混合された溶液は、酸性、中性または塩基性であってよい。好ましくは、前記溶液は酸性であり、最大pHが3、好ましくは0〜2の範囲である。酸性溶液を得るために用いられてもよい酸の非包括的な例は、塩酸、硫酸および硝酸である。前記工程a)による前記溶液は水性であってよく、あるいは、それは水−有機溶媒混合物であってよく、有機溶媒は好ましくは水と混和性である極性溶媒、特にアルコール、好ましくはエタノールである。本発明の調製方法の前記工程a)による前記溶液は、実際有機性であってよく、好ましくは実際アルコール性であり、水の量は、無機前駆体の加水分解が確実なものとされる量である(化学量論量)。非常に好ましくは、本発明の調製方法の前記工程a)における前記溶液であって、少なくとも1種の界面活性剤と、少なくとも1種の元素Yの少なくとも1種の前駆体と、少なくとも前記金属前駆体と、場合による少なくとも前記第2の金属前駆体と、場合による、最大ナノメートル寸法が300nmであるゼオライト結晶が分散した、少なくとも1種の安定なコロイド溶液とが混合される、溶液は、酸性の水−有機混合物であり、非常に好ましくは水−アルコールの酸性混合物である。
【0037】
この変形例に従って、テンプレートの存在下での、最大ナノメートル寸法が300nmであるゼオライトナノ結晶の事前合成により得られるか、あるいは、最大ナノメートル寸法が300nmであるナノ結晶の形態で、溶液中、例えば酸性の水−有機溶液中に分散する特性を有するゼオライト結晶を用いる変形例において得られ、場合により本発明の調製方法の工程a)の間に導入される、コロイド溶液中に分散したゼオライトナノ結晶の量は、ゼオライトナノ結晶が、有利には、本発明の材料の0.1〜30重量%、好ましくは0.1〜20重量%、非常に好ましくは0.1〜10重量%を表すようにされる。
【0038】
本明細書における上記の金属ナノ粒子の量は、前記ナノ粒子が、有利には、本発明の材料の4〜50重量%、好ましくは5〜40重量%、より好ましくは6〜30重量%を表すようにされる。
【0039】
本発明の調製方法の前記工程a)による混合物中に導入される界面活性剤の初期濃度は、cによって定義され、cは、当業者に周知の臨界ミセル濃度(cmc)に関して定義される。cmcは、これを超えると界面活性剤の分子の自己集合の現象が溶液中で起こる限界濃度である。濃度cは、cmcより小さくてもよく、cmcと等しくてもよく、あるいはcmcより大きくてもよい;好ましくは、それはcmcより小さい。本発明の材料の調製方法の好ましい実施において、濃度cは、cmcより小さく、本発明の前記調製方法の工程a)において想定される前記溶液は、酸性の水−アルコール混合物である。本発明の調製方法の工程a)において想定される溶液が、本発明の調製方法の前記工程a)の間に、水−有機溶媒混合物(好ましくは酸性)である場合、マトリクスのメソ構造化の始点における界面活性剤の濃度は、好ましくは臨界ミセル濃度より低くあるべきであり、その結果、エアロゾル技術による、本発明の調製方法の工程b)の間の、前記水−有機溶液(好ましくは酸性)の蒸発によって、ミセル化または自己集合の現象がもたらされ、これにより、本発明の調製方法の工程b)およびc)の間、形状および寸法が変化しないままである前記金属ナノ粒子および場合によるゼオライトナノ結晶の周りに本発明の材料のマトリクスがメソ構造化されるに至る。c<cmcの場合、上記方法を用いて調製される本発明の材料のマトリクスのメソ構造化は、各小滴において、少なくとも前記元素Yの前駆体および界面活性剤が、水−有機溶液(好ましくは酸性)の蒸発に由来する界面活性剤の濃度c>cmcまで徐々に濃縮する結果である。
【0040】
一般に、前記加水分解された元素Yの少なくとも1種の前駆体と界面活性剤の濃度が共に増加すると、自己組織化された界面活性剤の周りで前記元素Yの少なくとも前記加水分解された前駆体の沈殿が引き起こされ、その結果、本発明の材料のマトリクスが構造化されるに至る。無機種の相互作用、有機/無機相、並びに有機種の相互作用により、協同自己集合機構を経て、自己組織化された界面活性剤の周りに前記加水分解された元素Yの少なくとも前記前駆体が縮合するに至る。この自己集合現象の間に、前記金属ナノ粒子および場合によるゼオライトナノ結晶は、本発明の材料を構成する基本球状粒子のそれぞれの中に含まれる少なくとも前記元素Yの酸化物をベースとする前記メソ構造化マトリクス中に捕捉される。
【0041】
エアロゾル技術は、本発明の調製方法の前記工程b)を行うのに特に有利であり、これにより、強制的に、初期溶液中に存在する試薬が一緒に相互作用するようにさせられる; 材料の損失は、溶媒、すなわち、溶液、好ましくは水溶液(好ましくは酸性)であり、場合によっては、極性溶媒が補給される、溶液は別として、可能ではなく、したがって、最初に存在する、前記元素(単数または複数)Y、前記金属ナノ粒子および場合によるゼオライトナノ結晶の全体性は、本発明の調製方法を通して完全に保たれ、当業者に公知の従来の合成方法において遭遇するろ過および洗浄工程の間に除去される可能性がない。
【0042】
本発明の調製方法の前記工程b)の溶液の噴霧工程により、球状小滴が生じる。これらの小滴のサイズ分布は、対数正規タイプのものである。本発明の関連の中で用いられるエアロゾル発生器は、TSIによって提供され6ジェット噴霧器を有する市販モデル9306Aの装置である。溶液の噴霧は、ベクターガス、好ましくはO/N混合物(乾燥空気)が、1.5バールに等しい圧力P下に供給される室内で行われる。小滴の径は、用いられるエアロゾル装置に応じて変動する。一般に、小滴の径は、150nm〜600μmの範囲である。
【0043】
本発明の調製方法の工程c)によると、前記小滴は、次いで乾燥させられる。乾燥は、ベクターガス、好ましくはO/N混合物を介して、PVC管内に前記小滴を運ぶことによって行われ、これにより、溶液、例えば、前記工程a)の間に得られた酸性の水−有機溶液が徐々に蒸発し、その結果、基本球状粒子が生じる。前記乾燥は、前記粒子を、温度が調節され得るオーブン中に通過させることによって完了し、通常の温度範囲は50〜600℃、好ましくは80〜400℃であり、これらの粒子のオーブン中での残留時間は1秒程度である。粒子は、次いでフィルタ上に集められる。回路の端部に置かれたポンプは、種が実験エアロゾル装置内へと導かれるのを促す。本発明の調製方法の工程c)における小滴の乾燥の後、有利には、50〜150℃の範囲の温度でのオーブン内の通過が行われる。本発明の調製方法の工程d)によると、本発明の調製方法の前記工程a)において導入されかつ前記ゼオライトナノ結晶を合成するために用いられる、界面活性剤と、場合による、テンプレートとの除去は、有利には熱処理によって、好ましくは、空気中(場合によって、Oを豊富に含む)、300〜1000℃の範囲、より正確には500〜600℃の範囲の温度での、1〜24時間の期間にわたる、好ましくは3〜15時間の期間にわたる焼成によって行われる。
【0044】
本発明の材料の調製方法の第1の特定の実施によると、少なくとも1種の硫黄含有化合物は、前記工程a)の混合物中に、あるいは、本発明のメソ構造化無機材料を得るために前記工程d)を行った後に導入され、少なくとも部分的ではあるが完全ではない硫化物の形態である。前記硫黄含有化合物は、低温(80〜90℃)で分解してHSの形成をもたらすこととなる、少なくとも1個の硫黄原子を含有する化合物から選択される。例として、前記硫黄含有化合物は、チオ尿素またはチオアセタアミドである。前記第1の特定の実施によると、本発明の前記材料の硫化は、部分的であり、前記メソ構造化無機材料中の硫黄の存在により、前記金属ナノ粒子の存在が完全には影響されないようにされる。
【0045】
本発明のメソ構造化無機材料であって、少なくとも1種の元素Yの酸化物をベースとするメソ構造化マトリクス中に捕捉された金属粒子を含む基本球状粒子によって構成されるものは、粉体、ビーズ、ペレット、細粒、押出物(中空であってもなくてもよい円柱形、多葉状円柱形、例えば、2、3、4または5葉を有するもの、捻じれた円柱形)、またはリング等の形態に成形されてよく、これらの成形操作は、当業者に公知の従来技術を用いて行われる。好ましくは、本発明の材料は、紛体の形態で得られ、これは、最大径が200μmである基本球状粒子によって構成される。
【0046】
本発明のメソ構造化無機材料の成形のための操作は、前記メソ構造化材料を、バインダとして作用する少なくとも1種の多孔性酸化物材料と混合することからなる。前記多孔性酸化物材料は、好ましくは、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、マグネシア、粘土、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化セリウム、リン酸アルミニウム、リン酸ホウ素、および上記酸化物の少なくとも2種の混合物によって形成される群から選択される多孔性酸化物材料である。前記多孔性酸化物材料は、アルミナ−酸化ホウ素、アルミナ−酸化チタン、アルミナ−ジルコニアおよび酸化チタン−ジルコニアの混合物から選択されてもよい。アルミン酸塩、例えば、マグネシウム、カルシウム、バリウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅または亜鉛のアルミン酸塩、並びに、混合されたアルミン酸塩、例えば、上記金属の少なくとも二種類を含有するものが、有利には、多孔性酸化物材料として用いられる。チタン酸塩、例えば、チタン酸亜鉛、チタン酸ニッケル、またはチタン酸コバルトを用いることも可能である。有利には、アルミナとシリカの混合物、並びに、アルミナと他の化合物、例えば、第VIB族元素、リン、フッ素またはホウ素との混合物を用いることも可能である。複八面体2:1フィロケイ酸塩または三八面体3:1フィロケイ酸塩のタイプの単純な合成または天然の粘土、例えば、カオリナイト、アンチゴライト、クリソタイル、モンモリロナイト、バイデライト、バーミキュライト、タルク、ヘクトライト、サポナイトまたはラポナイトを用いることも可能である。これらの粘土は、場合によっては、離層されてもよい。有利には、アルミナと粘土の混合物およびシリカ−アルミナと粘土の混合物を用いることも可能である。同様に、モレキュラーシーブ系統の結晶質アルミノケイ酸塩タイプおよび合成および天然のゼオライト、例えば、Yゼオライト、フッ化Yゼオライト、希土類を含有するYゼオライト、Xゼオライト、Lゼオライト、ベータゼオライト、小細孔のモルデナイト、大細孔のモルデナイト、オメガゼオライト、NU−10、ZSM−22、NU−86、NU−87、NU−88、およびZSM−5ゼオライトによって形成される群から選択される少なくとも1種の化合物をバインダとして用いることが想定されてよい。ゼオライトのうち、通常、約3/1超の骨格ケイ素/アルミニウム(Si/Al)原子比を有するゼオライトを用いることが好ましい。有利には、フォージャサイト構造を有するゼオライトが用いられ、特に、安定化した、および、超安定化した(USY)Yゼオライトであって、少なくとも部分的に金属カチオン、例えば、アルキル土類金属カチオンおよび原子番号57〜71(両端を含む)を有する希土類金属のカチオンとの交換型であるか、または、水素型であるかのいずれかのものである(Atlas of zeolite framework types, 6th revised Edition, 2007, Ch. Baerlocher, L. B. McCusker, D. H. Olson)。最後に、多孔性酸化物材料として、非結晶質のアルミノケイ酸塩タイプのモレキュラーシーブの系統、例えば、メソ細孔シリカ、シリカライト、ケイアルミノリン酸塩、アルミノリン酸塩、フェロケイ酸塩、ケイアルミン酸チタン、ホウケイ酸塩、クロモケイ酸塩および遷移金属(コバルトを含む)のアルミノリン酸塩によって形成される群から選択される少なくとも1種の化合物を用いることが可能である。上記化合物の少なくとも2種を用いる種々の混合物もまた、バインダとしての使用に適している。
【0047】
前記第1の実施と独立してもしていなくてもよい、本発明の材料の調製方法の第2の特定の実施において、1種以上の追加要素が本発明の調製方法の前記工程a)の混合物に導入されるが、それは、前記工程d)から得られた材料に少なくとも前記追加要素を含有する溶液を含浸させるか、および/または、本発明のメソ構造化材料(既に成形されている)に、少なくとも前記追加要素を含有する溶液を含浸させることによって行う。前記追加要素は、元素周期分類の第VIII族金属、有機剤およびリン、フッ素、ケイ素およびホウ素によって構成されるドーピング元素のリストに属するドーピング種から選択される。前記第2の特定の実施によると、上記に定義された1種以上の追加要素は、本発明の材料の調製方法の過程の間に、1以上の工程で導入される。前記追加要素が含浸によって導入される場合、乾式含浸方法が好ましい。各含浸工程の後に、有利には、乾燥工程が行われ、この乾燥工程は、例えば、90〜200℃の範囲の温度で行われ、前記乾燥工程の後に、好ましくは、空気(場合によっては、酸素に富む)中の焼成の工程が行われ、この焼成工程は、好ましくは、200〜600℃の範囲、好ましくは300〜500℃の温度で、1〜12時間の範囲、好ましくは2〜6時間の期間にわたって行われる。固体材料に液体溶液を含浸させるための技術、特に乾式含浸の技術は当業者に周知である。リン、フッ素、ケイ素およびホウ素から選択されるドーピング種は、それ自体触媒の性質を何ら有しないが、前記金属粒子中に存在する金属(単数または複数)の触媒活性を増大させるために用いられ得、特に、材料が硫化された形態である場合である。
【0048】
少なくとも1種の第VIII族金属をベースとする前記追加要素のための前駆体として用いられる第VIII族金属の源は、当業者に周知である。第VIII族金属のうち、コバルトおよびニッケルが好ましい。例として、硝酸塩、例えば、硝酸コバルトまたは硝酸ニッケル、硫酸塩、水酸化物、例えば水酸化コバルトまたは水酸化ニッケル、リン酸塩、ハロゲン化物(例えば塩化物、臭化物またはフッ化物)、あるいはカルボン酸塩(例えば酢酸塩および炭酸塩)が用いられることとなる。好ましくは、第VIII族金属の前記源は、本発明の調製方法の前記工程a)において第2の単金属前駆体として用いられる。より具体的には、少なくとも前記第1の金属前駆体、好ましくは、バナジウム、ニオブ、タンタル、モリブデンおよびタングステンから選択される金属をベースとする少なくとも前記第1の単金属前駆体と、ニッケルとコバルトから好ましくは選択される第VIII族金属をベースとする少なくとも前記第2の単金属前駆体とは、前記工程a)を行う前に溶解させられ、前記溶液は、次いで、本発明による調製方法の前記工程a)の混合物中に導入される。有利には、モリブデンをベースとする第1の単金属前駆体、例えばMoCl、あるいは、タングステンをベースとする第1の単金属前駆体、例えばWCl、並びに、ニッケルまたはコバルトをベースとする第2の単金属前駆体、例えばNi(OH)またはCo(OH)が用いられる。
【0049】
ホウ素をベースとする前記ドーピング種のための前駆体として用いられるホウ素の源は、好ましくは、ホウ素を含有する酸、例えば、オルトホウ酸HBOおよび二ホウ酸アンモニウム、五ホウ酸アンモニウム、酸化ホウ素およびホウ酸エステルから選択される。ホウ素の源が含浸によって導入される場合、ホウ素源を含浸させるための前記工程は、例えば、水/アルコール混合物、あるいは水/エタノールアミン混合物中のホウ酸の溶液を用いて行われる。ホウ素の源は、ホウ酸、過酸化水素および窒素を含有する塩基性有機化合物(例えば、アンモニア、第一級アミンおよび第二級アミン、環状アミン、ピリジン族およびキノリン族の化合物またはピロール族の化合物)によって形成される混合物を用いて含浸させられてもよい。
【0050】
リンをベースとする前記ドーピング種のための前駆体として用いられるリンの源は、好ましくは、オルトリン酸HPO、その塩およびエステル、例えばリン酸アンモニウムから選択される。リン源が含浸によって導入される場合、リン源を含浸させるための前記工程は、例えば、リン酸および窒素を含有する塩基性有機化合物(例えば、アンモニア、第一級アミンおよび第二級アミン、環状アミン、ピリジン族およびキノリン族からの化合物またはピロール族からの化合物)によって形成される混合物を用いて行われる。
【0051】
多くのケイ素源が、ケイ素をベースとする前記ドーピング種の前駆体として用いられてよい。したがって、オルトケイ酸エチルSi(OEt)、シロキサン、ポリシロキサン、シリコーン、シリコーンエマルジョン、またはハロケイ酸塩、例えば、フルオロケイ酸アンモニウム(NHSiFまたはフルオロケイ酸ナトリウムNaSiFを用いることが可能である。ケイ素の源が含浸によって導入される場合、ケイ素の源による前記含浸工程は、例えば、水/アルコール混合物中のケイ酸エチルの溶液を用いて行われる。ケイ素の源はまた、水中懸濁液中のシリコーンタイプのケイ素またはケイ酸の化合物を用いて含浸させられてもよい。
【0052】
フッ素をベースとする前記ドーピング種のための前駆体として用いられるフッ素源は、当業者に周知である。例として、フッ化物アニオンがフッ化水素酸またはその塩の形態で導入されてよい。これらの塩は、アルカリ金属、アンモニウムまたは有機化合物により形成される。それらは、例えば、本発明の材料の調製方法の工程a)の間に導入される。フッ素の源が含浸によって導入される場合、フッ素の源による含浸のための前記工程は、例えば、フッ化水素酸またはフッ化アンモニウムまたは二フッ化アンモニウムの水溶液を用いて行われる。
【0053】
ホウ素、フッ素、ケイ素およびリンから選択される前記ドーピング種の分布および局在化は、有利には、本発明のメソ構造化無機材料中に存在する元素の、キャスタン・マイクロプローブ(Castaing microprobe)(種々の元素の分布プロファイル)、X線分析と連結された透過電子顕微鏡法(すなわち、電子ビームによって衝撃を与えられた領域によって放出されたX線光子のエネルギーの測定(Si(Li)ダイオードを用いる)からのサンプルの質的および/または量的元素組成を確定するために用いられ得るEXD分析)等の技術を用いるか、または、電子マイクロプローブによって前記材料中に存在する元素の分布マップを確立することによって決定される。これらの技術は、これらのドーピング種の存在を示すために用いられ得る。第VIII族金属の分析および追加要素としての有機種の分析は、一般的に蛍光X線元素分析によって行われる。
【0054】
リン、フッ素、ケイ素、ホウ素およびこれらの元素の混合物によって構成されるドーピング元素のリストに属する前記ドーピング種は、本発明のメソ構造化無機材料の重量に対する、酸化物の重量%として表されるドーピング種の全量が、0.1〜10重量%の範囲、好ましくは0.5〜8重量%の範囲、より好ましくは0.5〜6重量%の範囲であるようにされる量で導入される。ドーピング種と、V、Nb、Ta、MoおよびWから選択される金属(単数または複数)との間の原子比は、好ましくは0.05〜0.9の範囲、より一層好ましくは0.08〜0.8の範囲であり、ドーピング種と、V、Nb、Ta、MoおよびWから選択される金属(単数または複数)とは、導入の様式と独立して、本発明の材料中の、ドーピング種と、V、Nb、Ta、MoおよびWから選択される金属(単数または複数)との全量に相当するこの比の計算のために考慮に入れられる。
【0055】
少なくとも1種の有機剤をベースとする前記追加要素の前駆体として用いられる有機剤は、キレート特性または還元特性を有しても有しなくてもよい有機剤から選択される。前記有機剤の例は、エーテル化されてよい、モノアルコール、ジアルコール、またはポリアルコール、カルボン酸、糖、非環状の、単糖類、二糖類、または多糖類(例えば、グルコース、フルクトース、マルトース、ラクトースまたはスクロース)、エステル、エーテル、クラウンエーテル、硫黄または窒素を含有する化合物(例えば、ニトリロ酢酸、エチレンジアミン四酢酸、またはジエチレントリアミン)である。
【0056】
本発明はまた、炭化水素供給原料の転換方法であって、1)本発明によるメソ構造化無機材料を、少なくとも1種の硫黄含有化合物を含む供給原料と接触させること、次いで、2)前記工程1)から得られた前記材料を、前記炭化水素供給原料と接触させることを含む、方法に関する。
【0057】
本発明の転換方法の前記工程1)によると、本発明の無機メソ構造化材料を構成する球状粒子のそれぞれのメソ構造化マトリクス中に捕捉された金属ナノ粒子は硫化される。前記金属ナノ粒子の、それらの関連する硫化活性相への転換は、本発明の前記無機材料の熱処理後に、200〜600℃の範囲、より好ましくは300〜500℃の範囲の温度で、当業者に周知である方法を用いて、硫化水素と接触させて行われる。より正確には、本発明の転換方法の前記硫化工程1)は、前記転換方法の反応装置において、水素およびそのまま導入されたかまたは有機硫黄含有化合物の分解から得られた硫化水素(HS)の存在下に硫黄含有供給原料を用いて直接的に(現場内硫化)、または、本発明の前記メソ構造化無機材料を、転換方法のための反応装置に充填する前に(現場外硫化)、行われる。現場外硫化の場合、気体混合物、例えばH/HSまたはN/HSは、有利には、前記工程1)を行うために用いられる。本発明の前記メソ構造化無機材料は、液相中の分子から、前記工程1)に従って現場外で硫化されてもよく、硫化剤は、以下の化合物:ジメチルジスルフィド(dimethyldisulphide:DMDS)、ジメチルスルフィド、n−ブチルチオール、tert‐ノニルポリスルフィドタイプのポリスルフィド化合物(例えばATOFINAによって供給されるTPS-37またはTPS-54)から選択され、これらは、芳香族またはアルキル分子からなる有機マトリクス中に希釈される。好ましくは、前記硫化工程1)の前に、当業者に周知の方法を用いて、本発明の前記無機材料の熱処理のための工程が行われ、これは、好ましくは、空気中、300〜1000℃の範囲、より正確には500〜600℃の範囲の温度での、1〜24時間の期間、好ましくは6〜15時間の期間にわたる焼成による。
【0058】
本発明によると、本発明の転換方法を経る前記炭化水素供給原料は、少なくとも水素および炭素原子を、前記原子が、前記供給原料の少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも85重量%を表すようにされる量で含有する分子を含む。前記供給原料は、ヘテロ元素(好ましくは、窒素、酸素および/または硫黄から選択される)を有利に含有する分子を、水素原子および炭素原子に加えて含む。
【0059】
前記工程1)から得られる硫化形態の無機材料が有利には用いられる、炭化水素供給原料の転換のための種々の方法は、特に、飽和および不飽和の脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、酸素含有有機化合物および窒素および/または硫黄を含有する有機化合物、並びに、他の官能基を含有する有機化合物を含む炭化水素供給原料の水素化処理方法、より具体的には水素化脱硫および水素化脱窒方法、並びに、水素化転化方法、より具体的には、水素化分解である。より具体的には、前記工程1)から得られる硫化形態の前記無機材料は、有利には、ガソリンおよび中間留分(ガスオイルおよびケロセン)タイプの炭化水素供給原料の水素化処理のための方法、並びに、重質炭化水素留分、例えば、真空蒸留物、脱アスファルト油、常圧残渣または真空残渣の水素化転化および/または水素化処理のための方法において用いられる。より有利には、前記工程1)から得られる硫化形態の前記無機材料は、トリグリセリドを含む炭化水素供給原料の水素化処理のための方法において配備される。
【0060】
本発明によるメソ構造化無機材料であって、金属ナノ粒子を含む基本球状粒子によって構成され、この金属ナノ粒子は、メソ細孔領域において組織化しかつ均一な多孔度を有するメソ構造化酸化物マトリクス中に捕捉されている、ものは、数多くの分析技術によって、特に、小角X線回折(小角XRD)、広角X線回折(XRD)、窒素容積測定分析(BET)、透過電子顕微鏡法(TEM)、走査型電子顕微鏡法(scanning electron microscopy:SEM)、および蛍光X線(X-ray fluorescence:XRF)によって特徴付けられる。本明細書の上記に記載の金属粒子の存在は、種々の技術によって、特に、ラマン、U可視または赤外線分光法、並びに微量分析によって示される。核磁気分光法(NMR)、特に95Moおよび183W NMRも、有利には、金属ナノ粒子を特徴付けするために用いられる。
【0061】
小角X線回折技術(角2θの値は、0.5〜5°の範囲)は、本発明の材料のメソ構造化マトリクスの組織化したメソ多孔度によって生じたナノメートルスケールの周期性を特徴付けるために用いられ得る。以下の考察において、X線分析は、粉末について、反射様式で操作しかつ銅の放射線(波長 1.5406Å)を用いる後方モノクロメータを備えた回折計を用いて行われる。角度2θの所与の値に相当するディフラクトグラム上で通常観察されるピークは、格子面間隔d(hkl)と関連付けられ、これは、ブラッグの法則:2d(hkl)*sin(θ)=n*λによる、材料の構造対称性の特徴である((hkl)は、逆格子のミラー指数である)。この指数化により、直接格子の格子パラメータ(abc)の測定が可能となり、これらのパラメータの値は、得られた六方晶系、立方晶系またはバーミキュラ状の構造に応じる。例として、本発明のメソ構造化材料であって、非イオン性界面活性剤、すなわち共重合体F127の使用を介して、本発明の調製方法を用いて得られるケイ素およびアルミニウムをベースとするメソ構造化酸化物マトリクスを含む基本球状粒子によって構成されるものの小角X線ディフラクトグラムは、完全に分解された相関ピークであって、バーミキュラ状の構造の特徴であり、かつブラッグの法則:2d(hkl)*sin(θ)=n*λによって定義される細孔間の相関距離dに相当する、相関ピークを有する。
【0062】
広角X線回折技術(角度2θの値は、6〜100°の範囲)は、分子スケールでの単位セルまたは基本格子の繰り返しによって定義される結晶質固体を特徴付けるために用いられ得る。それは、小角X線回折技術を支配するものと同一の物理的原理に従っている。したがって、広角XRD技術が本発明の材料を分析するために用いられるのは、それが、本発明に従って定義された材料を構成する基本球状粒子のそれぞれの中に存在してよいゼオライトナノ結晶の構造上の特徴付けに特に適しているからである。特に、それは、これらのゼオライトナノ結晶の微結晶サイズおよび格子パラメータを決定するために用いられ得る。例として、ZSM−5タイプ(MFI)のジルコンナノ結晶の任意の閉塞の間に、関連する広角ディフラクトグラムは、ZSM−5ゼオライトの空間群Pnma(N°62)に起因するピークを有する。X線ディフラクトグラム上で得られた角度の値によって、ブラッグの法則:2d(hkl)*sin(θ)=n*λを用いて、相関距離dへのアクセスが提供される。
【0063】
窒素容積測定分析は、一定の温度での圧力の漸進的上昇を介した、材料の細孔中の窒素分子の物理的吸着に相当し、本発明の材料に特有の組織的特徴(細孔径、細孔容積、比表面積)についての情報を提供する。特に、それは、材料の比表面積およびメソ細孔分布へのアクセスを提供する。用語「比表面積」は、定期刊行物“The Journal of American Society”, 1938, 60, 309に記載されるBRUNAUER-EMMETT-TELLER方法に由来するASTM標準D3663−78による窒素吸着によって決定されるBET比表面積(SBET(m/g))を意味する。2〜50nmの範囲を中心とするメソ細孔(IUPAC分類)の個体群を表す細孔分布は、Barrett-Joyner-Halendaモデル(BJH)から求められる。得られたBJHモデルによる窒素吸着−脱着等温線は、E. P. Barrett、L. G. Joyner、およびP. P. Halendaによって書かれた定期刊行物"The Journal of the American Society", 1951, 73, 373に記載されている。以下の考察において、メソ構造化マトリクスのメソ細孔の径φは、窒素等温線の吸着分岐から得られた細孔分布上で見られる最大径に相当する。加えて、窒素吸着等温線およびヒステリシスループの形状は、メソ多孔度の性質と、メソ構造化酸化物マトリクス中にゼオライトナノ結晶が存在する場合にそれらに本質的に関連する、可能性のあるミクロ多孔度の存在に関する情報を提供し得る。例として、本発明のメソ構造化材料であって、本発明の調製方法を用いて得られ、かつ、非イオン性界面活性剤、すなわち共重合体F127を用いて調製されたアルミニウムおよびケイ素をベースとするメソ構造化酸化物マトリクスを含む基本球状粒子によって構成されるものに関する窒素吸着等温線は、クラスIVcの吸着等温線(IUPAC分類)によって特徴づけられ、関連する細孔分布曲線によって確認されるように、2〜3nm程度の細孔の存在と関連する0.2〜0.3の範囲のP/P0(ここでP0は、温度Tでの飽和蒸気圧である)の値についての吸着工程が存在する。
【0064】
メソ構造化マトリクスに関して、細孔径の値φと、上記記載の小角XRDによって定義された格子パラメータとの間の差が、量eを提供するために用いられ得、ここでe=a−φであり、量eは、本発明の材料の球状粒子のそれぞれの中に含まれるメソ構造化マトリクスの無定形壁の厚さの特徴である。前記格子パラメータaは、相の幾何学的形状の特徴である幾何学的形状要因による細孔間の相関距離dと関連する。例として、バーミキュラ構造の場合、e=d−φである。
【0065】
透過電子顕微鏡法(TEM)も、これらの材料の構造を特徴付けるために幅広く用いられる技術である。それは、対象の固体の画像を形成するために用いられ得、観察されるコントラストは、観察される粒子の構造組織、表面組織(texture)または形態(morphology)の特徴である;当該技術の最大分解能は1nmである。以下の考察において、TEM写真は、サンプルのミクロトーム切片から作成されることとなり、これにより、本発明の材料の基本球状粒子の断面を見ることが可能となる。例として、TEM画像であって、非イオン性界面活性剤、すなわち共重合体F127を用いて調製された酸化ケイ素および酸化アルミニウムをベースとするメソ構造化マトリクス中に捕捉された金属ナノ粒子を含む基本球状粒子によって構成された本発明の材料のために得られたものは、単一の球状粒子内にバーミキュラ状のメソ構造を示し(材料は、暗い帯域によって定義される)、その中で、メソ構造化マトリクス中に捕捉されたゼオライトナノ結晶を表す不透明な物体も見られるかもしれない。画像分析はまた、パラメータd、φおよびeへのアクセスを提供するために用いられ得、これらは、上記定義のメソ構造化マトリクスの特徴である。
【0066】
基本粒子の形態およびサイズ分布は、走査型電子顕微鏡法(SEM)によって得られる写真の分析によって確立された。
【0067】
本発明による材料のメソ構造は、テンプレートとして選択される界面活性剤の性質に応じて、バーミキュラ状、立方晶系または六方晶系であってよい。
【0068】
金属ナノ粒子は、特に、ラマン分光法によって特徴付けられる。ラマンスペクトルは、励起波長が532nmであるレーザを備えた分散タイプのラマン分光計により得られた。レーザ光線は、倍率50の長距離作業用対物レンズを備えた顕微鏡を用いてサンプル上に集束させられた。サンプルにおけるレーザの電力は、1mW程度であった。サンプルによって発せられたラマンシグナルは、同一の対物レンズによって集められ、1800ライン/mmのグレーティングを用いて分散させられ、次いで、CCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子またはCharge Transfer Device:電荷転送素子)検出器によって集められた。得られたスペクトル分解能は、2cm−1程度のものであった。記録されたスペクトル帯域は、300〜1500cm−1であった。獲得期間は、記録された各ラマンスペクトルに対して120秒で固定された。
【0069】
本発明は、以下の実施例によって例証されることとなる。
【0070】
(実施例)
以下の実施例において、用いられたエアロゾル技術は、本発明の開示において上記に記載されたものであった。用いられた分散ラマン分光計は、Horiba Jobin-Yvonによって供給された市販のLabRAM Aramisの装置であった。用いられたレーザの励起波長は532nmであった。以下の実施例1〜5の実施におけるこのスペクトログラフの操作は、上記に記載された。
【0071】
(実施例1(本発明):モリブデンおよびコバルトをベースとし、最終材料に対して6重量%のMoOと1.2重量%のCoOとを含有する金属ナノ粒子を含む材料の調製。マトリクスは、アルミニウムおよびケイ素をベースとし、Si/Alモル比=12を有するメソ構造化酸化物である。)
0.29gのMoClと、0.04gのCo(OH)と、15.0gの置換水(permutated water)を含有する水溶液を、撹拌しながら、周囲温度で調製した。
【0072】
0.69gの三塩化アルミニウムを、12.1gの置換水および4.40mgのHClと混合した。周囲温度での5分間にわたる撹拌の後、7.16gのTEOSを添加した。溶液を、16時間にわたり、撹拌しながら周囲温度で加水分解させた。2.41gのF127(Sigma-Aldrich)を、22.4gの置換水、8.20mgのHClおよび5.29gのエタノールの中へと混合することによって、別の溶液を調製した。
【0073】
マトリクスの前駆体を含有する溶液の加水分解の後、F127の水−有機溶液を添加した。5分間の均一化の後、MoClおよびCo(OH)を含有する溶液を滴下した。
【0074】
混合物を30分間にわたり撹拌し、次いで、エアロゾル発生器の噴霧室に送り、溶液を、微細な小滴の形態で、圧力下(P=1.5バール)で導入されたベクターガス(乾燥空気)の作用の下に噴霧した。小滴を、上記の本発明の開示に記載された手順に従って乾燥させた:それらを、O/N混合物によって、PVC管を通過するよう導いた。乾燥オーブンの温度を350℃に固定した。回収された粉末を、次いで、空気下、5時間にわたりT=550℃で焼成した。固体は、小角XRD、窒素容積測定分析、TEM、SEM、XRFおよびラマン分光法によって特徴付けられた。TEM分析により、最終材料は、バーミキュラ構造によって特徴付けられる組織化したメソ多孔度を有することが示された。TEM分析は、何らの金属ナノ粒子の存在も検出することができなかった。このことは、前記ナノ粒子の寸法が1nm未満であることを意味した。窒素容積測定分析によると、最終材料の比表面積は、SBET=160m/gであり、メソ細孔径は9.6nmであった。小角XRD分析によると、相関ピークは、角度2θ=0.70にあった。材料の組織化したメソ細孔間の相関距離dを計算するために、ブラッグの法則:2d*sin(0.35)=1.5406を用い、すなわち、d=12.6nmであった。メソ構造化材料のマトリクスの壁の厚さは、e=d−φによって定義され、それ故に、e=3nmであった。XRFによって得られたSi/Alモル比は、12であった。得られた球状基本粒子のSEM画像により、これらの粒子は、50〜700nmの範囲の径によって特徴付けられる寸法を有し、これらの粒子のサイズ分布は、300nmを中心とすることが示された。最終材料のラマンスペクトルにより、ポリモリブデン酸塩の種の存在が示され、マトリクスと相互作用しており、これらの種の特徴的バンドは、950cm−1および886cm−1にあった。
【0075】
(実施例2(本発明):タングステンおよびニッケルをベースとし、最終材料に対して5.0重量%のWOと1.0重量%のNiOとを含有する金属ナノ粒子を含む材料の調製。マトリクスは、アルミニウムおよびケイ素をベースとし、Si/Alモル比=25であるメソ構造化酸化物である。)
0.17gのWClと、0.02gのNi(OH)と、15.0gの置換水とを含有する水溶液を、撹拌しながら、周囲温度で調製した。
【0076】
0.35gの三塩化アルミニウムを、12.1gの置換水および4.40mgのHClと混合した。周囲温度での5分間にわたる撹拌後、7.58gのTEOSを添加した。溶液を、16時間にわたり、撹拌しながら周囲温度で加水分解させた。2.23gのP123(Sigma-Aldrich)を、22.4gの置換水、8.20mgのHClおよび5.30gのエタノールの中へと混合することによって、別の溶液を調製した。
【0077】
マトリクスの前駆体を含有する溶液の加水分解の後、P123の水−有機溶液を添加した。5分間の均一化の後、WClおよびNi(OH)を含有する溶液を滴下した。
【0078】
混合物を30分間にわたり撹拌し、次いで、エアロゾル発生器の噴霧室に送り、溶液を、微細な小滴の形態で、圧力下(P=1.5バール)で導入されたベクターガス(乾燥空気)の作用の下に噴霧した。小滴を、上記の本発明の開示に記載された手順に従って乾燥させた:それらを、O/N混合物によって、PVC管を通過するよう導いた。乾燥オーブンの温度を350℃に固定した。回収された粉末を、次いで、空気下、5時間にわたりT=550℃で焼成した。固体は、小角XRD、窒素容積測定分析、TEM、SEM、XRFおよびラマン分光法によって特徴付けられた。TEM分析により、最終材料は、バーミキュラ構造によって特徴付けられる組織化したメソ多孔度を有することが示された。TEM分析は、何等の金属ナノ粒子の存在も検出することができなかった。このことは、前記ナノ粒子の寸法が1nm未満であることを意味する。窒素容積測定分析によると、最終材料の比表面積は、SBET=173m/gであり、メソ細孔径は7.5nmであった。小角XRD分析によると、相関ピークは、角度2θ=0.78にあった。材料の組織化したメソ細孔間の相関距離dを計算するために、ブラッグの法則:2d*sin(0.39)=1.5406を用い、すなわち、d=11.3nmであった。メソ構造化材料のマトリクスの壁の厚さは、e=d−φによって定義され、それ故に、e=3.8nmであった。XRFによって得られたSi/Alモル比は、25であった。得られた球状基本粒子のSEM画像により、これらの粒子は、50〜700nmの範囲の径によって特徴付けられる寸法を有し、これらの粒子のサイズ分布は、300nmを中心とすることが示された。最終材料のラマンスペクトルにより、ポリモリブデン酸塩の種の存在が示され、マトリクスと相互作用しており、これらの種の特徴バンドは、945cm−1および881cm−1にあった。
【0079】
(実施例3(本発明):タングステンおよびニッケルをベースとし、最終材料に対して9.3重量%のWOと1.9重量%のNiOとを含有する金属ナノ粒子を含む材料の調製。マトリクスは、ジルコニウムおよびケイ素をベースとし、Si/Zrモル比=10を有するメソ構造化酸化物である。)
0.35gのWClと、0.04gのNi(OH)と、15.0gの置換水とを含有する水溶液を、撹拌しながら、周囲温度で調製した。
【0080】
0.79gの四塩化ジルコニウムを、12.1gの置換水と混合した。周囲温度で撹拌しながら冷却した後、7.05gのTEOSを添加した。溶液を、1時間にわたり、撹拌しながら周囲温度で加水分解させた。2.41gのF127(Sigma-Aldrich)を、22.4gの置換水および5.29gのエタノールの中へと混合することによって、別の溶液を調製した。
【0081】
マトリクスの前駆体を含有する溶液の加水分解の後、F127の水−有機溶液を添加した。5分間の均一化の後、WClおよびNi(OH)を含有する溶液を滴下した。
【0082】
混合物を30分間にわたり撹拌し、次いで、エアロゾル発生器の噴霧室に送り、溶液を、微細な小滴の形態で、圧力下(P=1.5バール)で導入されたベクターガス(乾燥空気)の作用の下に噴霧した。小滴を、上記の本発明の開示に記載された手順に従って乾燥させた:それらを、O/N混合物によって、PVC管を通過するよう導いた。乾燥オーブンの温度を350℃に固定した。回収された粉末を、次いで、空気下、5時間にわたりT=550℃で焼成した。固体は、小角XRD、窒素容積測定分析、TEM、SEM、XRFおよびラマン分光法によって特徴付けられた。TEM分析により、最終材料は、バーミキュラ構造によって特徴付けられる組織化したメソ多孔度を有することが示された。TEM分析は、どんな金属ナノ粒子の存在も検出することができなかった。このことは、前記ナノ粒子の寸法が1nm未満であることを意味する。窒素容積測定分析によると、最終材料の比表面積は、SBET=187m/gであり、メソ細孔径は8.0nmであった。小角XRD分析によると、相関ピークは、角度2θ=0.60にあった。材料の組織化したメソ細孔間の相関距離dを計算するために、ブラッグの法則:2d*sin(0.30)=1.5406を用い、すなわち、d=14.6nmであった。メソ構造化材料のマトリクスの壁の厚さは、e=d−φによって定義され、それ故に、e=6.2nmであった。XRFによって得られたSi/Zrモル比は、10であった。得られた球状基本粒子のSEM画像により、これらの粒子は、50〜700nmの範囲の径によって特徴付けられる寸法を有し、これらの粒子のサイズ分布は、300nmを中心とすることが示された。最終材料のラマンスペクトルにより、ポリタングステン酸塩の種の存在が示され、これは、マトリクスと相互作用し、これらの種についての特徴的なバンドが942cm−1および879cm−1にあった。
【0083】
(実施例4(本発明):モリブデンおよびコバルトをベースとし、最終材料に対して9.0重量%のMoOと1.9重量%のCoOとを含有する金属ナノ粒子を含む材料の調製。マトリクスは、アルミニウムおよびケイ素をベースとし、Si/Alモル比=25を有するメソ構造化酸化物であり、Si/Alモル比=50を有するZSM−5型ナノ結晶を最終材料に対して5重量%の量で含有する。)
0.14gのアルミニウム トリ−sec−ブトキシドを、3.50mLの水酸化物TPAOH、0.01gの水酸化ナトリウムNaOH、および4.30mLの水を含有する溶液中に添加した。アルミニウムアルコキシドを溶解させた後、5.90gのオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)を添加した。溶液を、周囲温度で5時間にわたり撹拌し、次いで、T=95℃で12時間にわたりオートクレーブ処理した。得られた白色溶液は、動的光散乱(dynamic light scattering:DLS)によって測定される、135nmの寸法を有するZSM−5のナノ結晶を含有していた。この溶液を、20000rpmで30分間にわたり遠心分離にかけた。固体を水中に再分散させて、次いで、再度20000rpmで30分間にわたり遠心分離にかけた。この洗浄を2回行った。ナノ結晶はゲルを形成し、これを、終夜60℃でオーブン乾燥させた。
【0084】
0.43gのMoClと、0.06gのCo(OH)と、15.0gの置換水を含有する水溶液を、撹拌しながら、周囲温度で調製した。
【0085】
0.34gの三塩化アルミニウムを、12.1gの置換水および4.40mgのHClと混合した。周囲温度での5分間にわたる撹拌後、7.38gのTEOSを添加した。溶液を、16時間にわたり、撹拌しながら周囲温度で加水分解させた。2.42gのF127(Sigma-Aldrich)を、22.5gの置換水、8.20mgのHCl、および5.31gのエタノールの中へと混合することによって、別の溶液を調製し、この溶液に0.143gのZSM−5ゼオライトナノ結晶を再分散させた。
【0086】
マトリクスの前駆体を含有する溶液の加水分解の後、ZSM−5ゼオライトナノ結晶を含有する、F127の水−有機溶液を添加した。周囲温度での5分間の撹拌の後、MoClおよびCo(OH)を含有する溶液を滴下した。
【0087】
混合物を30分間にわたり撹拌し、次いで、エアロゾル発生器の噴霧室に送り、溶液を、微細な小滴の形態で、圧力下(P=1.5バール)で導入されたベクターガス(乾燥空気)の作用の下に噴霧した。小滴を、上記の本発明の開示に記載された手順に従って乾燥させた:それらを、O/N混合物によって、PVC管を通過するよう導いた。乾燥オーブンの温度を350℃に固定した。回収された粉末を、次いで、空気下、5時間にわたりT=550℃で焼成した。固体は、小角および広角のXRD、窒素容積測定分析、TEM、SEM、XRFおよびラマン分光法によって特徴付けられた。TEM分析により、最終材料は、バーミキュラ構造によって特徴付けられる組織化したメソ多孔度を有し、135nmの寸法を有するゼオライトナノ結晶が捕捉されていることが示された。TEM分析は、何等の金属ナノ粒子の存在も検出することができなかった。このことは、前記ナノ粒子の寸法が1nm未満であることを示す。窒素容積測定分析によると、最終材料の比表面積は、SBET=260m/gであり、メソ細孔径は9.0nmであった。小角XRD分析によると、相関ピークは、角度2θ=0.67にあった。材料の組織化したメソ細孔間の相関距離dを計算するために、ブラッグの法則:2d*sin(0.33)=1.5406を用い、すなわち、d=13.1nmであった。メソ構造化材料の壁の厚さは、e=d−φによって定義され、それ故に、e=4.1nmであった。広角XRD分析により、ZSM−5ゼオライトの特徴であるディフラクトグラムが得られた。マトリクスのSi/Alモル比は、25であり、ZSM−5ナノ結晶のSi/Alモル比は50であった。これら2つのSi/Al比を、EDXと結びつけられたTEM分析によって求めた。得られた球状基本粒子のSEM画像により、これらの粒子は、50〜700nmの範囲の径によって特徴付けられる寸法を有し、これらの粒子のサイズ分布は、300nmを中心とすることが示された。最終材料のラマンスペクトルにより、ポリモリブデン酸塩の種の存在が示され、これは、マトリクスと相互作用しており、これらの種についての特徴的なバンドは953cm−1および890cm−1にあった。
【0088】
(実施例5(本発明):タングステンおよびニッケルをベースとし、最終材料に対して6重量%のWOと1.25重量%のNiOとを含有する金属ナノ粒子を含む材料の調製。マトリクスは、アルミニウムおよびケイ素をベースとし、Si/Alモル比=12を有するメソ構造化酸化物であり、Si/Alモル比=50を有するZSM−5型ナノ結晶を最終材料に対して5重量%の量で含有する。)
0.14gのアルミニウム トリ−sec−ブトキシドを、3.50mLの水酸化物TPAOH、0.01gの水酸化ナトリウムNaOH、および4.30mLの水を含有する溶液中に添加した。アルミニウムアルコキシドを溶解させた後、5.90gのオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)を添加した。溶液を、周囲温度で5時間にわたり撹拌し、次いで、T=95℃で12時間にわたりオートクレーブ処理した。得られた白色溶液は、DLSによって測定される、135nmに等しい寸法を有するZSM−5のナノ結晶を含有していた。この溶液を、20000rpmで30分間にわたり遠心分離にかけた。固体を水中で再分散させて、次いで、再度20000rpmで30分間にわたり遠心分離にかけた。この洗浄を2回行った。ナノ結晶はゲルを形成し、これを、終夜60℃でオーブン乾燥させた。
【0089】
0.21gのWClと、0.02gのNi(OH)と、15.0gの置換水とを含有する水溶液を、撹拌しながら、周囲温度で調製した。
【0090】
0.70gの三塩化アルミニウムを、12.0gの置換水および4.40mgのHClと混合した。周囲温度での5分間にわたる撹拌の後、7.22gのTEOSを添加した。溶液を、16時間にわたり、撹拌しながら周囲温度で加水分解させた。2.41gのF127(Sigma-Aldrich)を、22.3gの置換水、8.20mgのHClおよび5.28gのエタノールの中へと混合することによって、別の溶液を調製し、この溶液に0.139gのZSM−5ゼオライトナノ結晶を再分散させた。
【0091】
マトリクスの前駆体を含有する溶液の加水分解の後、ZSM−5ナノ結晶を含有する、F127の水−有機溶液を添加した。周囲温度での5分間の撹拌の後、WClおよびNi(OH)を含有する溶液を滴下した。
【0092】
混合物を30分間にわたり撹拌し、次いで、エアロゾル発生器の噴霧室に送り、溶液を、微細な小滴の形態で、圧力下(P=1.5バール)で導入されたベクターガス(乾燥空気)の作用の下に噴霧した。小滴を、上記の本発明の開示に記載された手順に従って乾燥させた:それらを、O/N混合物によって、PVC管を通過するよう導いた。乾燥オーブンの温度を350℃に固定した。回収された粉末を、次いで、空気下、5時間にわたりT=550℃で焼成した。固体は、小角および広角のXRD、窒素容積測定分析、TEM、SEM、XRFおよびラマン分光法によって特徴付けられた。TEM分析により、最終材料は、バーミキュラ構造によって特徴付けられる組織化したメソ多孔度を有し、135nmの寸法を有するゼオライトナノ結晶が捕捉されていることが示された。TEM分析は、何等の金属ナノ粒子の存在も検出することができなかった。このことは、前記ナノ粒子の寸法が1nm未満であることを示す。窒素容積測定分析によると、最終材料の比表面積は、SBET=277m/gであり、メソ細孔径は9.2nmであった。小角XRD分析によると、相関ピークは、角度2θ=0.64にあった。材料の組織化したメソ細孔間の相関距離dを計算するために、ブラッグの法則:2d*sin(0.32)=1.5406を用い、すなわち、d=13.6nmであった。メソ構造化材料のマトリクスの壁の厚さは、e=d−φによって定義され、それ故に、e=4.4nmであった。広角XRD分析により、ZSM−5ゼオライトの特徴であるディフラクトグラムが得られた。マトリクスのSi/Alモル比は、12であり、ZSM−5ナノ結晶のSi/Alモル比は50であった。これら2つのSi/Al比を、EDXと結びつけられたTEM分析によって求めた。得られた球状基本粒子のSEM画像により、これらの粒子は、50〜700nmの範囲の径によって特徴付けられる寸法を有し、これらの粒子のサイズ分布は、300nmを中心とすることが示された。最終材料のラマンスペクトルにより、ポリタングステン酸塩の種の存在が示され、これらは、マトリクスと相互作用しており、これらの種についての特徴的なバンドは944cm−1および883cm−1にあった。