特許第5908029号(P5908029)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5908029
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】入力システム及びコントローラ
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20160412BHJP
   G06F 3/03 20060101ALI20160412BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20160412BHJP
【FI】
   G06F3/041 560
   G06F3/03 400C
   G06F3/041 512
   G06F3/044 B
   G06F3/03 400D
   G06F3/041 600
【請求項の数】20
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2014-124427(P2014-124427)
(22)【出願日】2014年6月17日
(62)【分割の表示】特願2009-229848(P2009-229848)の分割
【原出願日】2009年10月1日
(65)【公開番号】特開2014-209361(P2014-209361A)
(43)【公開日】2014年11月6日
【審査請求日】2014年6月18日
(31)【優先権主張番号】61/102,234
(32)【優先日】2008年10月2日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12/568,066
(32)【優先日】2009年9月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オリバー ピー キング−スミス
(72)【発明者】
【氏名】バナーダス エイチ スミット
(72)【発明者】
【氏名】ペイマン ハディザッド
【審査官】 遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−137607(JP,A)
【文献】 特開平08−234902(JP,A)
【文献】 特表平07−500435(JP,A)
【文献】 特開平07−093083(JP,A)
【文献】 特開平06−161640(JP,A)
【文献】 米国特許第05831600(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
G06F 3/03
G06F 3/044
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペン形状を有し電界を放射する位置指示器と、第1の方向に配置された複数の電極と前記第1の方向とは異なる第2の方向に配置された複数の電極を有する電極アレイ及び前記電極アレイに結合されて前記電極アレイ上で前記位置指示器及び対象物を検知する制御を行うコントローラを備えたセンサを有する入力システムであって、
前記位置指示器は、前記位置指示器の先端に加えられた圧力を検出する圧力センサを備えるとともに、前記圧力センサで検出された圧力を前記センサに送信する送信手段を備えており、
前記コントローラは、前記第1の方向及び前記第2の方向の少なくとも一方の方向に配置された電極に誘起した信号を測定して得られた属性に基づいて前記電極アレイ上の前記対象物を容量結合にて検知するタッチモード動作と、前記第1の方向及び前記第2の方向の各々の方向に配置された電極に誘起した信号を測定して得られた属性に基づいて前記電極アレイ上の前記位置指示器を検知する位置指示器モード動作を交互に切り替える制御を行うことで前記対象物と前記位置指示器とを交互に検知可能と成すとともに、前記タッチモード動作と前記位置指示器モード動作を交互に切り替える前記制御によって切り替えられた前記位置指示器モード動作にて前記位置指示器が検知された場合には前記位置指示器モード動作を所定の時間継続させる制御を行うことを特徴とする入力システム。
【請求項2】
前記位置指示器から前記送信手段を介して前記センサに送信するに際しては、フレームの開始を示すフレーム開始ブロックと前記圧力センサによって検出された圧力に対応したデジタル値を含むデータブロックを有するデータフレーム形式を備えるとともに所定の伝送方式で変調されることを特徴とする請求項1に記載の入力システム。
【請求項3】
前記所定の伝送方式での変調とは、ASK変調であることを特徴とする請求項2に記載の入力システム。
【請求項4】
前記コントローラは、前記位置指示器モード動作においては前記位置指示器から放射された電界によって前記電極アレイを構成する電極に誘起する信号を繰り返し測定して得られた属性に基づいて前記所定の伝送方式で変調された信号の復調処理を実行することで、前記センサに対して前記位置指示器から非同期的に放射される電界に同期した復調処理を行うことを特徴とする請求項2に記載の入力システム。
【請求項5】
前記コントローラは、前記電極アレイを構成する電極に誘起する信号の繰り返し測定が所定時間経過した場合には、新しいデータフレームに対する測定を開始する制御を行うことを特徴とする請求項4に記載の入力システム。
【請求項6】
前記データフレーム形式にはデータ形式を示すデータ形式ブロックが更に備えられており、前記送信手段を介して前記センサに送信されるデータが圧力であることを前記データ形式ブロックによって指示するようにしたことを特徴とする請求項2に記載の入力システム。
【請求項7】
記センサは近接雑音の有無を検出するフィルタを備えており、前記コントローラは前記フィルタからの出力に対応して前記位置指示器に対して選択すべき周波数チャンネルを指示するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の入力システム。
【請求項8】
ディスプレイを備えており、前記フィルタは前記ディスプレイからの雑音の有無を検出することを特徴とする請求項7に記載の入力システム。
【請求項9】
前記対象物とは指であることを特徴とする請求項1に記載の入力システム。
【請求項10】
前記属性とは、振幅及び周波数の少なくとも一方であることを特徴とする請求項1に記載の入力システム。
【請求項11】
前記コントローラは、前記タッチモード動作においては前記第1の方向及び前記第2の方向のうちの一方の方向に配置された電極への駆動信号の供給に対応して前記第1の方向及び前記第2の方向のうちの他方の方向に配置された電極に誘起した信号を測定して得られた属性に基づいて前記電極アレイ上の前記対象物を検知するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の入力システム。
【請求項12】
前記電極アレイを構成する電極に誘起した信号を測定して得られた属性に基づいて、前記対象物及び前記位置指示器の少なくとも一方が前記電極アレイ上で指示した位置を決定する位置決定手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載の入力システム。
【請求項13】
前記送信手段は、前記位置指示器のペン先部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の入力システム。
【請求項14】
前記送信手段は、RF無線通信方式にて前記センサに信号を送信することを特徴とする請求項1に記載の入力システム。
【請求項15】
前記センサに備えられた前記電極アレイは、前記送信手段から送信された信号を受信することを特徴とする請求項1に記載の入力システム。
【請求項16】
第1の方向に配置された複数の電極と前記第1の方向とは異なる第2の方向に配置された複数の電極を有する電極アレイに結合されて前記電極アレイ上で、電界を放射する位置指示器及び対象物を検知する制御を行うコントローラであって、
前記第1の方向及び前記第2の方向の少なくとも一方の方向に配置された電極に誘起した信号を測定して得られた属性に基づいて前記電極アレイ上の前記対象物を容量結合にて検知するタッチモード動作と、前記第1の方向及び前記第2の方向の各々の方向に配置された電極に誘起した信号を測定して得られた属性に基づいて前記電極アレイ上の前記位置指示器を検知する位置指示器モード動作を交互に切り替える制御を行うことで前記対象物と前記位置指示器とを交互に検知可能と成すとともに、前記タッチモード動作と前記位置指示器モード動作を交互に切り替える前記制御によって切り替えられた前記位置指示器モード動作にて前記位置指示器が検知された場合には前記位置指示器モード動作を所定の時間継続させる制御を行うことを特徴とするコントローラ。
【請求項17】
前記位置指示器から放射される前記電界は所定の伝送方式で変調されており、
前記コントローラは、前記位置指示器モード動作においては前記位置指示器から放射された電界によって前記電極アレイを構成する電極に誘起する信号を繰り返し測定して得られた属性に基づいて前記所定の伝送方式で変調された信号の復調処理を実行することで、ンサに対して前記位置指示器から非同期的に放射される電界に同期した復調処理を行うことを特徴とする請求項16に記載のコントローラ。
【請求項18】
前記位置指示器から放射される前記電界はフレームの開始を示すフレーム開始ブロックとデータブロックを有するデータフレーム形式を備えており、
前記コントローラは、前記電極アレイを構成する電極に誘起する信号の繰り返し測定が所定時間経過した場合には、新しいデータフレームに対する測定を開始する制御を行うことを特徴とする請求項17に記載のコントローラ。
【請求項19】
前記コントローラは、前記タッチモード動作においては前記第1の方向及び前記第2の方向のうちの一方の方向に配置された電極への駆動信号の供給に対応して前記第1の方向及び前記第2の方向のうちの他方の方向に配置された電極に誘起した信号を測定して得られた属性に基づいて前記電極アレイ上の前記対象物を検知するようにしたことを特徴とする請求項16に記載のコントローラ。
【請求項20】
前記電極アレイを構成する電極に誘起した信号を測定して得られた属性に基づいて、前記対象物及び前記位置指示器の少なくとも一方が前記電極アレイ上で指示した位置を決定する位置決定手段を備えていることを特徴とする請求項16に記載のコントローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に電子デバイス用のユーザー・インタフェースに関し、より詳細にはタッチセンサ及びデジタイザ・システムを用いた入力システム及びコントローラに関する。
【背景技術】
【0002】
多様で異なる形式の入力装置が、コンピュータ(例えば、ラップトップ型コンピュータ、タブレット型コンピュータ、パーソナルデジタルコンピュータ)及び通信装置(例えば、携帯電話機、無線ハンドヘルド通信装置)を始めとした、多様で異なる電子システムに一般に使用されている。或る型式の入力装置は一般にタッチセンサ又は近接センサと称する。タッチセンサは、指等の近接対象物の位置を決定する多様で異なる技術を使用する。例えば、容量式タッチセンサは、近接対象物が存在することにより生じる容量変化を判断することによって近接対象物の位置を決定する。別の型式の入力装置はデジタイザ・タブレットと一般に称されるが、グラフィックス・タブレット、グラフィックス・パッド、又は描画タブレットとも称される。デジタイザ・タブレットは、典型的にはスタイラス又は他のペン状の描画装置として実現される位置指示器を用いてユーザーが入力可能な検知面を備えている。一般のデジタイザでは、位置指示器は、検知面によって検出される電磁信号を放射する。検知面によって検出された電磁信号は、次いで位置指示器の位置を決定するのに使用され処理される。
【0003】
一般に、デジタイザは一般のタッチセンサと比較して、位置検出精度及び分解能に優れている。通常、デジタイザは入力用の専用の位置指示器を必要とする。タッチセンサの属性(例えば、利便性)をデジタイザの改良精度及び分解能と組み合わせることがこれまで望まれてきた。あいにく、組合せ式タッチセンサ・デジタイザは、実現に関連するコスト高及び複雑性、この組合せを受け入れるのに必要な付加的な3次元スペース、またタッチの検知及び位置指示器の検知の各々をサポートし得る特殊な型式のディスプレイに対する要求などのために、その適用性に制限があった。このため、改良式組合せタッチセンサ及び位置指示器を使用する入力装置は、引き続き必要とされている。
【0004】
なお、特許文献1には、等ピッチ間隔で配列された複数本のX電極およびY電極がマトリクス状に積層されたタブレットと、所定周波数の電圧を発信する入力ペンとを備え、入力ペンと各電極間の静電容量変化に基づいて各電極に印加する電圧を検出する座標入力装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−147092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明においては、対象物(指)と位置指示器(アクティブ静電ペン)を同一の電極アレイ(通常のXY電極センサ)を用いて時分割処理することで、実質的に両者を検出可能とする。そして、位置指示器が検知された場合には、位置指示器のための信号処理のために多くの処理時間を割り当てるようにしている。なお、本発明で、「センサ」とは受信側装置全体を指している。
また、位置指示器からの信号を繰り返し測定し、位置指示器からの信号を基準にして受信側の信号処理、すなわちペン信号に同期させた信号処理を行うようにしている。
したがって、本発明の第1の課題は、指とアクティブ静電ペンを同一の電極アレイを使用して実質的に同時検知可能な場合であっても、静電ペンに対する所望の位置検出性能を確保できるようにすることにある。
また、本発明の第2の課題は、静電ペンから非同期に放出される電界に同期させることで、センサ側での信号処理(復調処理)を効率良く行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の入力システムは、ペン形状を有し電界を放射する位置指示器と、第1の方向に配置された複数の電極と、第1の方向とは異なる第2の方向に配置された複数の電極を有する電極アレイ及びこの電極アレイに結合されて電極アレイ上で位置指示器及び対象物を検知する制御を行うコントローラを備えたセンサを有する。
本発明の入力システムに用いられる位置指示器は、その先端に加えられた圧力を検出する圧力センサを備えるとともに、圧力センサで検出された圧力をセンサに送信する送信手段を備えている。
更に、本発明の入力システムに用いられるコントローラは、第1の方向及び第2の方向の少なくとも一方の方向に配置された電極に誘起した信号を測定して得られた属性に基づいて、電極アレイ上の対象物を容量結合にて検知するタッチモード動作と、第1の方向及び第2の方向の各々の方向に配置された電極に誘起した信号を測定して得られた属性に基づいて電極アレイ上の位置指示器を検知する位置指示器モード動作を交互に切り替える制御を行っている。
これにより、対象物と位置指示器とを交互に検知可能と成すとともに、タッチモード動作と位置指示器モード動作を交互に切り替える制御によって切り替えられた位置指示器モード動作にて位置指示器が検知された場合には所定の時間前記位置指示器モード動作を継続させる制御を行うようにしている。
【0008】
また、本発明の好ましい形態は、位置指示器から送信手段を介してセンサに送信するに際しては、フレームの開始を示すフレーム開始ブロックと圧力センサによって検出された圧力に対応したデジタル値を含むデータブロックを有するデータフレーム形式を備えるとともに所定の伝送方式で変調されるようにしている。ここで、所定の伝送方式での変調とは、ASK変調であることが好ましい。
【0009】
また、上記のコントローラは、位置指示器モード動作においては位置指示器から放射された電界によって電極アレイを構成する電極に誘起する信号を繰り返し測定して得られた属性に基づいて、所定の伝送方式で変調された信号の復調処理を実行する。これにより、センサに対して位置指示器から非同期的に放射される電界に同期した復調処理を行うことができる。
更に、コントローラは、電極アレイを構成する電極に誘起する信号の繰り返し測定が所定時間経過した場合には、新しいデータフレームに対する測定を開始する制御を行うこともできる。
【0010】
また、本発明の入力システムにおいては、データフレーム形式にはデータ形式を示すデータ形式ブロックが更に備えられており、送信手段を介してセンサに送信されるデータが圧力であることを、データ形式ブロックによって指示するようにしている。
【0011】
また、本発明の好ましい形態では、入力システムに用いられるコントローラは、タッチモード動作においては第1の方向及び第2の方向のうちの一方の方向に配置された電極への駆動信号の供給に対応して、第1の方向及び第2の方向のうちの他方の方向に配置された電極に誘起した信号を測定して得られた属性に基づいて電極アレイ上の対象物を検知するようにする。
そして、本発明の好ましい形態では、電極アレイを構成する電極に誘起した信号を測定して得られた属性に基づいて、対象物及び位置指示器の少なくとも一方が電極アレイ上で指示した位置を決定する位置決定手段を備える。なお、送信手段は、位置指示器のペン先部に設けられて前記センサに信号を送信することが好ましい。この場合、送信手段から送信された信号は、センサに備えられた電極アレイによって受信される。
【0012】
また、本発明のコントローラは、第1の方向に配置された複数の電極と第1の方向とは異なる第2の方向に配置された複数の電極を有する電極アレイに結合され、この電極アレイ上で、電界を放射する位置指示器及び対象物を検知する制御を行うコントローラである。
このコントローラは、第1の方向及び前記第2の方向の少なくとも一方の方向に配置された電極に誘起した信号を測定して得られた属性に基づいて、電極アレイ上の対象物を容量結合にて検知するタッチモード動作と、第1の方向及び第2の方向の各々の方向に配置された電極に誘起した信号を測定して得られた属性に基づいて、電極アレイ上の位置指示器を検知する位置指示器モード動作を交互に切り替える制御を行うようにする。
これにより、対象物と位置指示器とを交互に検知可能と成すとともに、タッチモード動作と位置指示器モード動作を交互に切り替える制御によって切り替えられた位置指示器モード動作にて位置指示器が検知された場合には所定の時間前記位置指示器モード動作を継続させる制御を行うようにしている。
【0013】
本発明のコントローラにおける好ましい形態では、位置指示器から放射される電界は所定の伝送方式で変調されており、コントローラは、位置指示器モード動作においては位置指示器から放射された電界によって電極アレイを構成する電極に誘起する信号を繰り返し測定して得られた属性に基づいて所定の伝送方式で変調された信号の復調処理を実行する。これにより、センサに対して位置指示器から非同期的に放射される電界に同期した復調処理を行うようにしている。
【0014】
なお、位置指示器から放射される電界はフレームの開始を示すフレーム開始ブロックとデータブロックを有するデータフレーム形式を備えており、コントローラは、電極アレイを構成する電極に誘起する信号の繰り返し測定が所定時間経過した場合には、新しいデータフレームに対する測定を開始する制御を行うことが好ましい。また、コントローラは、タッチモード動作においては第1の方向及び第2の方向のうちの一方の方向に配置された電極への駆動信号の供給に対応して、第1の方向及び第2の方向のうちの他方の方向に配置された電極に誘起した信号を測定して得られた属性に基づいて電極アレイ上の対象物を検知するようにしている。
また、本発明のコントローラの好ましい形態では、電極アレイを構成する電極に誘起した信号を測定して得られた属性に基づいて、対象物及び位置指示器の少なくとも一方が電極アレイ上で指示した位置を決定する位置決定手段を備えている。
【0015】
本発明は添付図面を参照することによってより容易に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施例による組合せ式タッチ及び変換器入力システムを備えたタブレット型コンピュータの略図である。
図2】本発明の実施例による組合せ式タッチ及び変換器入力システムに使用する、制御装置及び電極アレイを備えたセンサの略図である。
図3図3(a)及び図3(b)は本発明の実施例による組合せ式タッチ及び変換器入力システムに使用する変換器の略図である。
図4】本発明の実施例による変換器のブロック図である。
図5図5(a)は本発明の実施例による制御装置及び電極アレイを備えた、センサのブロック図である。図5(b)は1つ以上のタッチモード領域及び1つ以上の変換器モード領域に分割された、本発明の一実施例による電極アレイの略図である。
図6図5(a)の制御装置を構成する、本発明の実施例による処理段のブロック図である。
図7図6の処理段を構成する、本発明の実施例による電荷増幅器の回路図である。
図8図6の処理段を構成する、本発明の実施例による電圧増幅器の回路図である。
図9図6の処理段を構成する、本発明の実施例によるトランスインピーダンス増幅器の回路図である。
図10図6の処理段を構成する、本発明の一実施例による継続形トランスインピーダンス増幅器の回路図である。
図11図11(a)は本発明の一実施例による、変換器モードの際に電極アレイを走査する工程を図示するフローチャート。図11(b)及び図11(c)は本発明の一実施例による、電極の接続状況を示すための略図。図11(d)は本発明の一実施例による、電極に誘起する信号の検出を示す略図である。
図12】本発明の一実施例によるデジタルフィルタリング手順の略図である。
図13図13(a)は本発明の一実施例による、曲線の当てはめ技術を用いた場合のフローチャート、図13(b)は本発明の一実施例による、サンプルパラメータ化曲線のグラフ、また図13(c)は本発明の一実施例により使用される位相ロックループ(PLL)回路の略図である。
図14】本発明の一実施例による、組合せ式タッチ及び変換器入力システムにおけるデジタルデータ送信のためのサンプルデータフレームの略図である。
図15】本発明の一実施例による、変換器によって実行される工程を図示するフローチャートである。
図16】は本発明の一実施例による、周波数偏移で符号化されたデジタルデータを復号化する工程を図示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の各実施例は電子システムへのユーザーの入力を容易にするシステム及び方法を提供する。通常の対象物(例えば、指)及び位置検出用の電界を発生する変換器(例えば、スタイラス)を用いてユーザーの入力を容易にする組合せ式タッチ及び変換器入力システムが提供される。
【0018】
図1は本発明の実施例による組合せ式タッチ及び変換器入力システムを組み込むのに好適なタブレット型コンピュータ100を例示する。このタブレット型コンピュータは、通常透明な検知面104が全面に渡って設けられているLCD装置等のディスプレイ102を備えている。この検知面104は、1つ以上の変換器(例えば、スタイラス108)を検出するのと同様に通常の対象物(例えば、指106)を検出するのに使用される、本発明の組合せ式タッチ及び変換器入力システムの一部分を形成し得る。具体的には、変換器によって発生する電界を受信するのと同様に近接対象物を容量的に検知して変換器の位置を検出するように構成された電極アレイ(図1には図示せず)が、検知面104内又は検知面104の下方にある。
【0019】
本発明の種々の例示的実施例によれば、組合せ式タッチ及び変換器入力システムはタッチ検知モード(又は略して「タッチモード」)及び変換器検知モード(又は略して「変換器モード」)で動作し、連続したサンプリング周期でこの2つのモードを切り替えることによって実質的に同時又は交互に動作するように構成される。このシステムは、タッチモードでは、電極アレイを用いて近接対象物を容量的に検出することによってこの対象物の位置を決定するように構成される。変換器モードでは、このシステムは変換器により発生する電界によって電極アレイに誘起される複数の信号の属性(例えば、振幅、位相等)を測定することによってこの変換器の位置を決定するように構成される。タッチ検知及び変換器検知双方に対して同一の電極アレイを使用する。従って、ユーザーは通常の対象物(例えば指106等)又は変換器(例えばスタイラス108等)を用いてタブレット型コンピュータ100とインタフェースすることができる。動作の際、例えばアイコンの起動、カーソルの移動、及び文章並びに他のデータの入力等の種々のユーザー・インタフェース機能を実行するために、ユーザーは指106及び/又はスタイラス108並びに検知面104を使用することができる。
【0020】
図示した実施例はタブレット型コンピュータ100を示しているが、本発明の各実施例は入力装置を利用するどの形式の装置にも適用することができる。各例は他の計算装置、メディア装置、及び通信装置を含む。更に、図示の実施例は指106を示しているが、(少なくとも1つの電極と相互容量を形成するのに十分な寸法を有する)任意の他の容量性対象物を、タッチモードで動作するセンサとインタフェースするのに用いることができる。最後に、図示の実施例はスタイラス108を示しているが、他のペン状の装置、ポインタ、カーソル、パック(puck)、マウス、ポーン(pawn)、及び他の道具を始めとする任意の他の適切な変換器を使用することができる。
【0021】
組合せ式タッチ及び変換器入力システムは一般に変換器(例えば、図1のスタイラス108)と、図2に示すセンサ150とから成る。このセンサ150はセンサ制御装置152及び電極アレイ154を備える。図示の実施例では、この電極アレイ154は、第1の方向(例えば、水平)に伸張する第1の組を構成する細長い電極154a、及び第1の方向とは異なる(例えば、直交する)第2の方向(例えば、垂直)に伸張する第2の組を構成する細長い電極154bを備える。誘電材料(例えば、ガラス(図示せず))のシート又は他の幾何学的配置が第1及び第2の組を構成する細長い電極154a及び154b間に介在している。また、例えばガラス(図2に図示せず)等の別の材料のシートが電極アレイ154に被せられることで、電極アレイ154を電気的に絶縁分離すると共に物理的に保護して、図1の検知面104として集合的に機能する。
【0022】
一般に、透明な導電性材料を1枚以上のシートに被着することによって電極アレイ154が形成される。例えば、インジウム錫酸化物(ITO)等の導体をガラスシートの片側又は両側にパターン化して、第1及び第2の組を構成する細長い電極154a及び154bをそれぞれ形成し得る。この際、別のガラスシートを配置して検知面104を形成し得る。アレイパターンと同様に種々の異なる電極形状(例えば、ダイヤモンド形状電極及び正方形状電極)を使用しても良く、本発明で用いる電極アレイ154は図2に図示した特定の形状に限定されることはない。例えば、図2は2つの層が重なり合う、矩形状の電極を用いて形成した電極アレイ154を示しているが、例えば、ダイヤモンドパターン形状を有する第1及び第2の組を構成する電極が、単一層上に実質的に相互に重なり合わずに配置されるような電極配置構成も有効である。種々の他の実施例では、第1及び第2の組を構成する電極は実質的に相互に直交し、単に2つの異なる方向に伸張するに過ぎない。別の各実施例では、各組の電極は実質的に相互に平行である必要はない。また更に、アレイパターンは第1及び第2の組を構成する電極だけでなく、適切に配置された第3、第4及び付加的な組の電極を含んで良い。
【0023】
センサ150の制御装置152は、この組合せ式タッチ及び変換器入力システムにおいて位置決定のための信号処理を実行するように構成される。図5(a)を参照して詳細に説明する。センサ制御装置152は、例えばマイクロプロセッサ等の集積回路を始めとして、任意の型式の処理装置を好適に備える。また、センサ制御装置152は、協動して動作する任意の適切な数の集積回路装置及び/又は回路基板を始めとして、多数の個別装置を備えて良い。例えば、センサ制御装置152は、マイクロコントローラ、プロセッサ、マルチプレクサ、フィルタ、増幅器、及びインタフェース等の装置を備えて良い。最後に、幾つかの応用において、センサ制御装置152はメモリに内蔵された各プログラムを実行するように構成される。
【0024】
タッチモードで動作するとき、センサ制御装置152は電極アレイ154を用いて1つ以上の近接対象物の各々を容量的に検知することによって、各対象物の位置を決定するように構成される。一度に多数のタッチを検出可能な多タッチ検出技術(マルチタッチ技術)を始めとして、容量性タッチ検出のための種々の技術が知られている。例えば、センサ制御装置152が図2に示すような電極アレイ154の第1の組を構成する細長い電極154aの各々に対して連続して信号を駆動するとき、第1の組を構成する細長い電極154a及び第2の組を構成する細長い電極154bの各交差部分はコンデンサを形成する。より一般的に、第1の組を構成する細長い電極154aの少なくとも1本の電極と、この第1の組を構成する細長い電極154aを構成するこの少なくとも一本の電極と重なり合う又は重なっていない第2の組を構成する細長い電極154bを構成する少なくとも1本の電極から構成される一対の電極とはコンデンサを形成する。指等の対象物がこれらのコンデンサのうちの1つに置かれるか又は近接するとき、コンデンサから生じる電界線の一部分は指に向かって引き出されて、コンデンサの容量の減少を引き起こす。こういった容量変化はコンデンサを形成する第2の組を構成する細長い電極154bのうちの、1つの細長い電極から出力される信号に反映される。これによって、制御装置152は近接対象物の位置を決定することができる。また、この決定した位置に基づいて、第1の組を構成する細長い電極154aのうちの1つの細長い電極は駆動信号(例えば、Y座標)を受信すると共に、第2の組を構成する細長い電極154bのうちの1つの細長い電極は容量変化を示す信号(例えば、X座標)を出力する。また、これは容量性タッチ検知技術の一例であり、他の容量性タッチ検出の種々の技術を本発明のタッチモード動作で使用し得る。
【0025】
図3(a)は本発明の実施例による組合せ式タッチ及び変換器入力システムに使用される変換器175の簡略化したブロック図である。この変換器175は変換器制御装置177及びアンテナ179を備える。図3(b)は本発明の一実施例によるスタイラスとして具体化した変換器175の部分的断面図である。このスタイラス変換器175は、変換器制御装置177(図4参照)を収容する一般に円筒状の細長い本体330、及びスタイラス変換器175のペン先端として具体化されたアンテナ179を備える。図3(b)に示す変換器は、変換器175によって発生する電界を使用してアンテナ179及び電極アレイ154を電気的に(即ち、容量的に)結合させるのに用いるのに好適である。以下の説明は変換器及びセンサが電気的に(即ち、容量的に)結合した実施例に関する。しかしながら、本発明の他の実施例では、図11(d)を参照して後に説明するように、変換器によって発生した電磁界の磁界成分を使用して変換器及びセンサを磁気的に結合しても良い。
【0026】
変換器制御装置177は変換器175の動作を制御すると共に、図4を参照して以下において説明するように、マイクロプロセッサ等の集積回路を始めとして、任意の型式の処理装置を適切に備えて良い。また、変換器制御装置177は、協動して動作する任意の適切な数の集積回路装置及び/又は回路基板を始めとして、多数の個別装置を備えて良い。例えば、変換器制御装置177は圧力センサ、スイッチ、コンデンサ、レギュレータ、マイクロコントローラ、及びプロセッサ等の装置を備えて良い。
【0027】
変換器制御装置177はアンテナ179からの電界の放射を調整する。変換器175が電極アレイ154に近接したとき、アンテナ179によって放射される電界は1つ以上の電極に検知信号を誘起することとなる。詳細には、変換器アンテナ179に電圧Vを印加することによって、コンデンサの対向電極を構成する一端(上板)としての変換器アンテナ179と、このコンデンサの対向電極を構成する他端(底板)としての電極アレイ154のうちの1つ以上の電極に電荷量Qが蓄積される。また、アンテナ179と電極アレイ154のうちの1つ以上の電極の間に電界が形成される。この電界は電極アレイ154のうちの1つ以上の電極に反対の電荷を誘起する。この場合、誘起された電荷量は変換器アンテナ179と1つ以上の電極との間の容量に比例する。誘起された電荷は電圧Vを印加する周波数とは独立しており、一般に次の通り表わされる。
【0028】
【数1】
式中、Cは変換器アンテナ179と電荷が誘起される1つ以上の電極との間の容量である。変換器アンテナ179に印加される電圧を変化させることによって、電極アレイ154に電流を誘起することができる。詳細には、印加電圧を変えることによって蓄積電荷及び電界を変化させることにより、電極アレイ154の誘起電荷を変化させる。誘起電荷の変化は電極アレイ154に電流量(I)を発生させる。この電流量は数式2で表わすように電圧V及び容量Cと同様に印加駆動周波数に比例する。
【0029】
【数2】
本発明の種々の例示的実施例によれば、電極アレイ154に誘起された電流(検知信号)の値(電流量)、より詳細には、属性(例えば、振幅、位相等)を測定して、変換器175の位置の決定に使用する。換言すれば、変換器モードで動作するとき、電極アレイ154に誘起された複数の検知信号の属性に基づいて変換器175の位置を決定するようにセンサ制御装置152が構成される。
【0030】
図4は本発明の一実施例による変換器175のブロック図である。変換器175は変換器制御装置177及びアンテナ179を備える。変換器制御装置177は変換器175の動作を制御し、任意のタイプの処理装置を好適に備え得る。図示の実施例では、変換器制御装置177は圧力センサ306、パワーコントローラ(Power Arbitrator)308、サイドスイッチ310、コンデンサ314(例えば、ウルトラキャパシタ、スーパーキャパシタとして呼ばれる電気二重層コンデンサ(EDLC: Electric Double Layer Capacitor、ultra capacitor))、電荷入力コネクタ315、レギュレータ316、及びマイクロコントローラ装置(MCU:Micro Controller Unit)318を備える。パワーコントローラ308及びMCU318は汎用I/O(GPIO:General Purpose Input/Output)312を介して結合され、MCU318及びアンテナ179は別のGPIOを介して結合されている。
【0031】
また図3(b)を参照すると、変換器制御装置177を構成するこれらの部品の幾つか又は全て及びそれらの所要インタフェースは、変換器本体330に収容される適切に寸法の回路基板329に実装し得る。図3(b)に示したスタイラスの具体化において、コンデンサ314を除いた全部品はペン状本体330内部の基板329に実装される。図3(b)に示した実施例において、圧力センサ306はスタイラスの先端近傍に設けられ、検知面に対して先端を押し付けた場合に、アンテナ179としても機能する先端への圧力を検出する。しかしながら、他の実施例では、圧力センサ306は、圧力情報を先端から圧力センサ306の位置まで送信する機構又はリンク機構を介して、先端から更に離して置いて良い。サイドスイッチ310はペン状本体330の側部に露出するように設けられ、マウスデバイスにおける右ボタン、左ボタンの機能を果たす。電荷入力コネクタ315はペン状本体330の後端に露出しており、充電ドッキングステーション(Charging Docking Station)(図示せず)に接続される。スーパーコンデンサ等のコンデンサ314はペン状本体330の後部に設けられる。図3(b)のスタイラス形状の変換器175のペン状先端として機能するアンテナ179は任意の適切な導電材料から構成し得ると共に、任意の適切な形状に形成し得る。本発明によればスタイラス変換器の寸法は制限されないが、図3(b)に図示した一実施例では、スタイラスは120mmの長さと11mmの直径を有する。
【0032】
図示の実施例では、コンデンサ314は変換器175の電源として機能するように設けられる。所定の時間充電することで、変換器175を動作させるのに十分な電力をもたらす、高エネルギー密度を有するスーパーコンデンサ等の任意のコンデンサを使用し得る。定格電圧3.3Vで容量が0.2Fのコンデンサは大抵の応用には十分な電力をもたらすことが可能となろう。図3(b)から判かるように、コンデンサ314の直径はスタイラス型変換器175の直径を規定する。従って、コンデンサ314の直径を減らすことによって、変換器175の直径を3〜7mmの範囲に収まるようにより小さくし得る。
【0033】
コンデンサ314は種々の電源から充電することができる。例えば、図示のように、変換器175が、この入力システムに関連する装置(図示せず)としての、ドッキングステーションまたは他のストレージエリアに置かれているとき、コンデンサ314は電荷入力コネクタ315を介して充電し得る。変換器175がドッキングステーションに置かれたとき、オーミックコンタクトを介して、即ちドッキングステーションのアンテナから変換器175に、より詳細にはコンデンサ314に電力が送られる。別の実施例では、電極アレイ154から、またはこの目的のために電極アレイから分離して設けられたパワー供給用のアンテナ(Powering Antenna)から電磁信号を受信することによって、コンデンサ314を充電し得る。パワー供給用アンテナは電極アレイ154上またはその近傍に位置して良い。こういった電磁信号を受信するために、変換器175はアンテナ179またはこの目的のために特別に設けられた個別アンテナを使用し得る。これらの実施例では、変換器175は使用の際に再充電することができ、従って、より小型のコンデンサ314を使用し得る。なお、コンデンサ314は変換器175と共に使用するのに好適な電源の一例であり、蓄電池及びコード式電源等の他の形式の電源を同様に使用し得る。
【0034】
圧力センサ306は、変換器175に、より詳細にはスタイラス形状の変換器の場合は変換器の先端に加えられる圧力を検出するのに使用される。検出圧力は変換器175及び組合せ式タッチ及び変換器入力システムの種々の動作を制御するのに使用される。図示の実施例では、圧力センサ306が先端部に取り付けられることで、ペン状変換器の先端を検知面104に押し付ける圧力を測定可能とされる。一例として、検出圧力は、初期設定であるスリープモードから変換器175を起動(awaken)させるのに使用される。スリープモードを設けると共に、先端圧力を検出したときにのみ変換器175を起動させることによって、変換器175の実動作時間を低減でき、電力を節約できる。別の例として、タッチモードの動作への切替に関連して、圧力センサ306によって或る一定のしきい値を上回る圧力値が検出されると、組合せ式タッチ及び変換器入力システムを変換器モードで動作させることができる。また別の例では、ユーザーによって望まれる細線の又は軽いストロークを示す小さな圧力、或いは太線の又は強いストロークを示す大きい圧力等、ユーザーのストロークの幅又は強さを示すのに圧力センサ306を使用することができる。圧力センサ306の具体化手段としては、種々の異なる型式の回路を使用することができる。一例としては、圧力を加えられたときに抵抗が変化する可変抵抗器を使用することができる。抵抗変化は適切なアナログ/デジタル変換器(ADC:Analog-to-Digital Converter)によって測定されると共にデジタル化される。その後に、検出圧力レベルを決定する処理用のMCU318に送信される。
【0035】
サイドスイッチ310は、例えば、マウスの右クリック操作及び左クリック操作と同様に、ユーザーが変換器175の動作を制御できるようにするスイッチである。サイドスイッチ310の状態はMCU318に伝えられ、変換器175の動作を制御するのに使用される。例えば、サイドスイッチは、変換器175を異なる色で使用可能とし、又は異なる型式のストローク等で使用可能とするなど、異なる動作モードに設定するのに使用可能である。圧力センサ306によって得られる圧力情報と同様に、変換器の識別情報(ID)とともに受信したサイドスイッチ310のスイッチ情報はMCU318によってデジタルデータに符号化され、以下において更に説明するように、アンテナ179から電極アレイ154へ送信される。
【0036】
レギュレータ316は変換器175への電力を制御する。また、MCU318への電源を制御する。特に、コンデンサ314又は蓄電池から給電されるコードレス式変換器の応用においては、消費電力を最小化することが望ましい。従って、パワーレギュレータ316は、通常電流駆動での通電では起動モードと成し、低電流駆動での通電ではスリープモード又は停止モードをもたらすことが好ましい。そこで、パワーコントローラ308は、MCU318が判断できるように、圧力センサ306から受信した圧力信号をモニタして、その検出レベルが或る一定のしきい値を超えたときには、レギュレータ316をスリープモードから起動モードに切り替えて、変換器175を起動させることが可能である。実質的な省電力は、十分な先端圧力が検出されときにのみ変換器175を起動させることで可能である。制御可能な出力レベルを有する種々のプログラマブル装置を始めとして、種々の異なる型式のパワーレギュレータを使用することができる。スリープモード及び起動モードの間で切り替わる変換器の動作を図15を参照して以下に説明する。
【0037】
本発明の幾つかの例示的実施例によれば、マイクロコントローラ装置(MCU)318は変換器175のための全体の処理を実行すると共に、3つの機能、即ち、パワーコントローラ308を介したレギュレータ316の制御、MCU318を介したアンテナ179への信号の供給、並びに、駆動信号周波数のホッピングによる雑音回避及び/又は駆動信号の中のデジタルデータの符号化、の機能を実行する。本発明の種々の例示的実施例によれば、MCU318はデジタル制御式発振器を備えたプログラマブル装置である。このデジタル制御式発振器がアンテナ179に信号を供給する。この発振器は、周波数ホッピングを行うと共に、信号を周波数偏移させることで、デジタルデータ(例えば、圧力データ、スイッチ状態データ、及びペン識別データ)の符号化に対応した異なる周波数範囲の信号をアンテナ179に供給するように制御することができる。別の実施例では、MCU318はデジタルデータの符号化に対応して、アンテナ179へ供給される信号を振幅偏移又は位相偏移させる。MCU318はアンテナ179に供給される信号のタイミング、持続期間、周波数、振幅、及び位相を制御する。従って、アンテナ179によって発生した電界は、センサ150が変換器175の位置を決定するだけでなく、変換器175によって符号化されたデジタルデータを受信し復号化するのに使用される。MCU318は動作電流を低減する低電力モードを備えることが好ましい。低電力モードは信号送信時間の間、すなわち信号送信が行われていない間に適用することで、変換器175全体の電力消費を低減することができる。MCP318としての使用に好適な低消費電力を有するマイクロコントローラ装置の一例はテキサス・インスツルメンツ社(Texas Instruments)から入手可能なMSP430マイクロコントローラである。
【0038】
図5(a)は電極アレイ154及び制御装置152(図2参照)を備えたセンサ150のブロック図である。制御装置は、変換器175によって発生した電界で符号化されたデジタルデータの復号化と共に、対象物(例えば、指)及び変換器175の位置決定の信号処理を実行するように機能する。図示の実施例では、アナログマルチプレクサ(MUX)410、別のアナログマルチプレクサ412、処理段414、アナログ/デジタル変換器(ADC:Analog-to-Digital Converter)416、及びマイクロプロセッサ装置(MPU:Microprocessor Unit)420を備える。これらは、制御装置152における、変換器175による指示位置およびデジタルデータを検知するための構成部分である。制御装置152はまた、マルチプレクサ410及びMPU420と共に制御装置152の容量性タッチ検知部を形成するフィルタ及びアナログ/デジタル変換器(ADC)418を備える。MPU420としての使用に好適なマイクロプロセッサ装置の一例は、サイプレス社(Cypress)から入手可能なプログラマブル・システムオンチップ(PSOC:Programmable System-on-Chip)マイクロプロセッサである。なお、図5(a)に図示するような制御装置152の構成は単に一例に過ぎず、当業者にとって明らかなように、制御装置152の他の構成も可能である。例えば、容量性タッチ検知部と、変換器175の指示位置およびデジタルデータを検知する構成部分とは部分的に又は全体として共に組み合わせて一体化することが可能である。図示の実施例では、MPU420は、容量性検知部と、変換器175の指示位置及びデジタルデータを検知する構成部分との双方で共有される。
【0039】
マルチプレクサ410はシステムの動作モードに応じて、電極アレイ154を制御装置152の容量性タッチ検知部及び/又は変換器175の指示位置及びデジタルデータを検知する構成部分に選択的に結合させる。マルチプレクサ410は適切なアナログマルチプレクサを用いて具体化が可能である。これらのマルチプレクサは電極アレイ154の容量を著しく乱さないように比較的低い電荷注入を有するべく選択することが好ましい。マルチプレクサ410は変換器175の指示位置及びデジタルデータを検知する構成部分が備えるアナログマルチプレクサ412と、容量性検知部のフィルタ及びADC段418とに結合されている。
【0040】
容量性検知部においては、フィルタ及びADC段418は、MPU420が対象物の位置を決定する処理を行うことができるように、対象物によって引き起こされた任意の容量変化を測定し、適切に増幅し、フィルタリングし、かつデジタル化する。このために、例えば、MPU420は、第2の組を構成する細長い電極154bの各々と共にコンデンサを形成するための、第1の組を構成する細長い電極154aの各々に対し、電気信号を供給可能である。電極(154a、154b)の間で形成された各コンデンサにおける容量変化は、第2の組を構成する電極154bの対応する電極を介してモニタされ測定される。MPU420は測定した容量変化に基づいて対象物の位置を決定するのに必要な処理を実行する。なお、容量性検知を容易にするのに広く種々の異なる技術が使用可能である。本発明の各実施例は、任意の容量性検知技術を用いて実現が可能である。本発明の一態様によれば、組合せ式タッチ及び変換器入力システムは、変換器175の指示位置及びデジタルデータを検知する機能を、付加可能な任意の適切な容量性タッチセンサから構築し得る。
【0041】
変換器175の指示位置及びデジタルデータを検知する構成部分が備えるアナログマルチプレクサ412は、変換器モードの際に電極アレイ154の個々の電極を処理段414に接続するように機能する。各電極が処理段414に接続されないとき、図11(b)及び図11(c)を参照して以下においてより十分に説明するように、各電極は選択的に終端される(例えば、アースへの直接的接地、抵抗器を介したアースへの終端、または浮遊(非接続状態))。
【0042】
処理段414は、電極アレイ154から受信した各検知信号を増幅しフィルタリングするように機能する。従って、処理段414は種々の増幅器及びフィルタを備えることが可能である。処理装置414の一例は、図6を参照して以下において詳細に説明する。増幅されフィルタリングされたアナログ形式の各信号は、次にADC416によって受信され、このADC416からMPU420にデジタル形式で出力される。
【0043】
図6には、処理段414の1つの特定の実施例が図示されている。この実施例では、処理段414は増幅器502、自動利得制御(AGC:Automatic Gain Control)504、ノッチフィルタ506、帯域フィルタ508(例えば、広帯域の帯域フィルタ)、及びエイリアス除去フィルタ510を備える。
【0044】
増幅器502は選択された電極から受信した信号を増幅する。電荷増幅器、電圧増幅器、トランスインピーダンス増幅器(電流−電圧変換器)、及び縦続形トランスインピーダンス増幅器を始めとして、種々の型式の増幅器を使用して良い。
【0045】
図7は、図6の増幅器502として使用し得る電荷増幅器600を例示的に図示している。この電荷増幅器600はコンデンサ606を介して負帰還で作動する演算増幅器(即ち「オペアンプ(op amp)」)602を備える。このオペアンプ602の反転入力は電極ラインに接続されている。電荷増幅器600は電極上に誘起された電荷に比例した電圧を発生し、この電圧は下記の数式3によって与えられる。
【0046】
【数3】
式中、Vは出力電圧、Qは電極に誘起された電荷、及びCは帰還コンデンサ606の容量である。どの演算増幅器も反転端子及び非反転端子で入力バイアス電流及びオフセットバイアス電流をそれぞれ受けるので、図7の電荷増幅器はこれらの電流が流れるための直流経路を備えるべきである。例えば、抵抗器607は帰還コンデンサ606と並列に備えられて、帰還コンデンサ606によって設定されるような、電荷増幅器の特性を損なうこと無く、反転端子のバイアス電流が流れるのを可能にする直流経路を生成する。この設計は、以下において説明する図10の縦続形トランスインピーダンス増幅器とは異なる。図10では、帰還抵抗器904のインピーダンスがコンデンサ906のインピーダンスに対して帰還ループで支配的となるように、抵抗器904は帰還コンデンサ906に対する値が決められている。図7及び図10に使用するような帰還抵抗器及びコンデンサの適切な各値は当業者によって容易に決定可能となろう。
【0047】
図8は、図6の増幅器502として使用し得る電圧増幅器700を例示的に図示する。この電圧増幅器700はオペアンプ702と、抵抗器704及び706とを備える。電極ラインは抵抗器706に接続されている。
【0048】
図9は、図6の増幅器502として使用し得るトランスインピーダンス増幅器800を例示的に図示する。このトランスインピーダンス増幅器800はオペアンプ802と、抵抗器804とを備える。オペアンプ802の反転入力は電極ラインに接続されている。オペアンプ802を囲む帰還抵抗器804を流れる電流は電圧に変換される。
【0049】
図10は、図6の増幅器502として使用し得る縦続形トランスインピーダンス増幅器900を例示的に図示する。この縦続形トランスインピーダンス増幅器900は、オペアンプ902と、抵抗器904と、コンデンサ906と、2つの定電流源908、909と、NPNトランジスタ910等のトランジスタとを備える。縦続形トランスインピーダンス増幅器900は、オペアンプ902を囲む帰還抵抗器904を流れる任意の電流が以下の通りに電圧に変換されるという点で、図9のトランスインピーダンス増幅器800と同様に動作する。
【0050】
【数4】
式中、Vは出力電圧、Iは帰還抵抗器904を流れる電流、及びRは帰還抵抗器904の抵抗である。縦続形トランスインピーダンス増幅器900は、NPNトランジスタ910を用いてトランスインピーダンス増幅器900の帰還抵抗器904から電極ラインの入力容量を絶縁分離して、帯域又は信号対雑音比を犠牲にすること無く、より高いトランスインピーダンス利得を実現可能にするという点で有益である。縦続形トランスインピーダンス増幅器900はまた、高周波数側での雑音利得を制御するように帰還抵抗器904と並列に帰還コンデンサ906を組み込むことによって安定性を向上させてきた。
【0051】
トランスインピーダンス(電流−電圧変換)の前にトランジスタ910を設けることは、縦続形トランスインピーダンス増幅器として既知である。NPNトランジスタ910は共通ベース電流バッファとして構成されるので、エミッタ(E)に流れ込む電流がこのトランジスタ910を通して流れてコレクタ(C)に流出するのを可能にする。電流は、次にトランスインピーダンス増幅器によって電圧信号に変換される。NPNトランジスタ910のエミッタ(E)は次の数式によって与えられる等価的に小さい信号抵抗を有する。
【0052】
【数5】
式中kはボルツマン定数、Tは温度、qは電荷の基本単位、及びIcはNPNトランジスタを流れるバイアス電流である。抵抗rは電極容量から決定されると共に、トランスインピーダンス増幅器の帯域幅を制限可能なRC定数が設定される。従って、2つの等しい定電流源908、909は、電極によって捕えられた信号がトランスインピーダンス増幅器を通過できるようにするために、エミッタ抵抗rが十分小さくなるように適切なバイアス電流が設定される。別の実施例では、同一の効果を達成するのに1つの電流源を使用し得る。この場合には、電流源が1つのみであり、バイアス電流はトランスインピーダンス増幅器を流れる。このことは、十分な利得でトランスインピーダンス増幅器を飽和させると共に、所望の信号を消すこととなる大きな直流オフセットを強制的に検出させることとなる。2つの整合した定電流源908、909を使用することによって、図示するように、NPNトランジスタ900に注入されたバイアス電流はまたトランスインピーダンス増幅器によって捕えられ、トランスインピーダンス増幅器から流れることが保証される。
【0053】
図6に戻って説明すると、増幅器502から出力された増幅信号は自動利得制御(AGC)504に供給させる。MPU420からのフィードバック信号を使用して、AGC504は増幅器502の出力を自動的に調整する。AGC504は、最終的にADC416に送られる信号のダイナミックレンジがその全フルスケール基準と整合するように、レベル調整を行う。このことは、比較的弱い信号が電極アレイ154によって受信される場合に生じ得るデジタル化雑音を低減することができる。
【0054】
AGC504の出力はノッチフィルタ506に供給される。ノッチフィルタ506は、電極アレイ154によって捕えられた電力線雑音によって引き起こされる雑音スパイク等の雑音スパイクを除去するように設けられる。好適には代表的な電力線雑音を除去するのに50/60Hzノッチフィルタを使用することができる。
【0055】
ノッチフィルタ506の出力は、広帯域の帯域フィルタ等の帯域フィルタ508に供給される。帯域フィルタ508は他の周波数を阻止又は除去し、所定の周波数範囲のみを通過させる。
【0056】
帯域フィルタ508の出力はエイリアス除去フィルタ510に供給される。エイリアス除去フィルタ510は、所定の周波数以上の雑音を低減することで、ADCによるサンプリング信号が折り返され(aliased)、又は歪められないことを保証するフィルタである。エイリアス除去フィルタ510は、一般には、非常にシャープな遮断周波数を有するフィルタを用いて実現される。エイリアス除去フィルタ510の出力信号はADC416に供給される。
【0057】
図6に図示するように、処理段414は、電極アレイ154にて受信される各信号を増幅しフィルタリングする。図5(b)に戻って説明すると、処理段414の出力はアナログ/デジタル変換器(ADC)416に供給される。ADC416は処理段414のアナログ出力をデジタル化する。一実施例では、ADC416は1MHzのサンプリング周波数を有する。このことは、変換器175が250kHzまでの周波数で信号を送信するときに折り返し雑音を回避するのに十分なサンプリング速度である。
【0058】
ADC416のデジタル化出力はMPU420に供給される。MPU420は受信信号から、符号化されたデジタルデータ(例えば、圧力データ、スイッチ状態データ、及びペン識別データ)を復号化するのと同様に、受信信号から変換器175の指示位置を決定する処理を実行する。なお、変換器175による信号をデジタルデータに符号化し、変換器175による指示信号を走査し復号化し、変換器175による指示位置を決定すると共にデジタルデータを復号化するために使用される各例示的工程は図11(a)から図16を参照して後に説明する。
【0059】
本発明の種々の他の実施例では、変換器175は、ブルートゥース(Bluetooth(登録商標))及びジップビー(ZipBee)プロトコルを含むIEEE802.15標準に準ずるBluetooth(R)装置を介するなど、他のRF無線技術を使用することで、デジタルデータ(例えば、圧力データ、スイッチ状態データ、及びペン識別データ)をセンサ150に送信し得る。
【0060】
前述したように、組合せ式タッチ及び変換器入力システムは、連続したサンプリング周期で、タッチ検知モード及び変換器検知モードを互いに切り替えることによって、これら2つのモードを交互に動作するように構成され得る。このために、制御装置152、より詳細には、MPU420は、タッチ検知及び変換器検知を交互に実行するようにマルチプレクサ410を制御すべく構成される。別の実施例では、このシステムのユーザーによって動作モードを選択し得る。例えば、センサ150はユーザーが2つのモードの一方を選択するように操作し得るスイッチを備えて良い。別の実施例のように、変換器モードで動作中のシステムは、所定のしきい値を超えたペン圧力が検出されたことを示す変換器175からのデジタルデータを受信している場合には、変換器モードで動作する。前述したように、圧力センサ306はスタイラス形状の変換器175に加えられた先端圧力を検出して、しきい値を超えたペン圧力の検出時にのみ変換器を起動させるのに使用し得る。そのとき、変換器175からは、圧力値、起動モードを示す情報を、センサ150に送出し得る。例えば、デジタルデータは変換器175によって発生した電界で符号化されて、センサ150に送信されることも可能である。しきい値を超えたペン圧力を示すデジタルデータを受信する(必要に応じ、その後復号化した後に)と、変換器モードでは、制御装置152は自身のタイマーをリセットして、所定時間の間、タッチモードに切り替わること無く変換器モードでの動作を自動的に継続させることが可能である。
【0061】
ここで図5(b)を説明すると、本発明の幾つかの実施例では、電極アレイ154はタッチモード領域(1)と、変換器モード領域(2)とに分割される。制御装置152はタッチモード領域(1)のタッチモード及び変換器モード領域(2)の変換器モードで同時に動作するように構成される。このために、電極アレイ154はマルチプレクサ410との接続を適切に行う必要がある。図示の実施例では、電極アレイ154は4象限に分割され、時間1では、そのうちの2つの象限422はタッチモード領域(1)を形成し、他の2つの象限424は変換器モード領域(2)を形成する。電極アレイ154上の所定の位置が、タッチモード領域と変換器モード領域とで交互に存在するように、タッチモード領域(1)及び変換器モード領域(2)を選択的に切り替えるように制御装置152を構成し得る。例えば、図5(b)にて、時間2では、以前にタッチモード領域を形成した2つの象限422が現時点では変換器モード領域(2)を形成し、一方、以前に変換器モード領域(2)を形成した他の象限が現時点ではタッチモード領域(1)を形成するようにして、タッチモード領域及び変換器モード領域が切り替えられる。時間1の状態と時間2の状態の間を交互に遷移することによって、制御装置152はタッチモード及び変換器モードを同時に動作させることができる。電極アレイ154上の任意の位置は、タッチモード領域と変換器モード領域との間を交互に遷移する。図示の実施例では、タッチモード領域及び変換器モード領域は各々が2つの象限から成っているが、各モード領域は1つの領域又は3つ以上のサブ領域から成っていて良い。また、多数の領域及びサブ領域が組み合わされているパターンと同様に、各領域及びサブ領域の形状は図5(b)に図示されているものには限定されない。例えば、各領域又はサブ領域は、ストライプを形成するように細長い形状を有すると共に、相互に並行に配置し得る。
【0062】
図11(a)は変換器モードの際に電極アレイ154からの各信号を走査すべくセンサ制御装置152によって実行される工程の一例を図示するフローチャートである。ステップ1001では、第1の水平ITOライン、例えば、第1のY電極からの信号を受信するようにマルチプレクサ410、412がセットされる。ステップ1003では、選択した水平ITOラインが走査される。ステップ1005では、走査すべき他の水平ITOラインがあるか否かを決定する。仮にそうであれば、ステップ1006において、次の水平ITOラインを選択し、ステップ1003に戻って、選択した次の水平ITOラインが走査される。ステップ1005において、これ以上の水平ITOラインが存在しないと決定されると、ステップ1007にて、第1の垂直ITOライン、例えば、第1のX電極からの信号を受信するようにマルチプレクサ410、412がセットされる。ステップ1009では、選択した垂直ITOラインが走査される。ステップ1011にて、走査すべき他の垂直ラインがあるか否かが決定される。もしそうであれば、ステップ1013において、次の垂直ITOラインを選択し、ステップ1009に戻って、選択した次の垂直ITOラインが走査される。ステップ1011にて、これ以上の垂直ITOラインが存在しないと決定されると、即ち、電極アレイ154全体が走査されたことが決定されたならば、ステップ1015に進み、制御装置152の処理段414におけるAGC504の利得を調整するのに走査データの信号が使用される。本発明の種々の例示的実施例によれば、図11(a)の各工程が、MPU420によって実行される他のソフトウェアと同時に、実行される。このことによって、電極アレイ154から届く信号サンプルに一定の流れが形成されることが保証される。
【0063】
次に、図11(b)及び図11(c)を説明する。図11(a)を参照すると、前述した電極の走査の際に、信号の検知が行われている電極に隣接した各電極を選択的に終端させることによって検知電極の容量性応答が改善されて、信号対雑音比が向上し、安定した信号が生成されることがわかった。図11(b)にその詳細を示す。第2の組を構成する細長い電極のうちの1つの電極426が信号検知状態にあり、一方、第2の組を構成する細長い電極154bの各隣接電極が全て抵抗器Rを介してアースに終端している。また、第1の組を構成する細長い電極154aは全て接地されている。本願で使用する「選択的に終端された」とは、零または低いインピーダンスを介して接地された状態、浮遊された状態(即ち、非接続状態、あるいは高い又は無限のインピーダンスで接地された状態)、及び抵抗器または別の所定のインピーダンスを有する電子装置を介してアースに終端されている状態を含む、複数の選択状態のうちの任意のものを意味する。
【0064】
他の実施例では、隣接する電極のうちの2つ以上の電極のみが直接に、あるいは抵抗器を介して終端され得る(又は浮遊、或いは接地)。図11(b)の例では、第2の組を構成する細長い電極154bの全ての隣接する電極が抵抗器「R」を介して終端されている。例えば、図11(c)は、本発明による別の例示的実施例を示しており、第2の組を構成する細長い電極のうちの1つの電極426が検知され、一方、この電極426の両側に位置する2つの隣接電極427(合計で4つの隣接電極)も浮遊されている。なお、残りの電極は接地されている。この実施例においては、これらの隣接する電極427は抵抗器等の別のデバイスを介してアースへ接地されない。別の実施例としては、電極426の一方の側の3又は4つの隣接した電極も、残りの電極が接地された状態で、浮遊させ、又は抵抗器を介して終端され得る。全ての隣接する電極を接地しない場合には、隣接する電極間に交差結合を引き起こすという従来の知識とは反対に、幾つかの応用では、隣接する電極を浮遊させ、または抵抗器を介して終端することによって、変換器175と信号検知状態にある電極(426)の間の容量性結合が驚くほど改善される。
【0065】
一方、他の応用では、全ての隣接する電極を接地することによって、隣接電極間の容量性結合が低減され、信号検知状態にある電極の容量性応答を改善する。このことは、例えば、高周波信号を使用し、又は電極が非常に薄く1mm程度の幅を有する場合に成立し得る。上述した選択的終端に関する適切な方法(例えば、どれ程多くの隣接する電極を浮遊させ、抵抗器を介して終端させ、又は直接に接地すべきか)は、シミュレーション方法に基づいて特定の電極構成パターンに対して導き出すことが可能である。特定の例として、図13(b)に図示するように、各電極を直接に(すなわち、インピーダンスを零として)あるいは抵抗器を介した接地によって終端させた状態から、浮遊の状態(すなわち、無限のインピーダンスを介して接地)まで変化させることによって、信号応答の曲線幅が制御される。この曲線幅を制御し最適化することは、変換器の位置を決定すべく、以下にても説明する、曲線の当てはめ手順を実行する上で有益となろう。
【0066】
以上の説明は、変換器175及びセンサ150が、変換器175によって発生した電界に基づいて、電気的に(容量的に)結合された本発明の種々の実施例に関するものである。他の実施例では、これらは変換器175によって発生した電磁界の磁界成分に基づいて磁気的に結合可能である。図11(d)は、磁気結合を用いた実施例で好適なセンサ150´のサンプル構成を図示している。図11(d)では、第2の組を構成する(垂直)電極154bにおいて、各々の電極の一方の側は配線「T」を介して共に短絡される。各々の電極の他方の側は、第2の組を構成する電極154bの何れも、接地されるか又は制御装置152(図示せず)に接続された検知ラインLに接続され得るように、スイッチS1〜S14に接続されている。他の例では、第2の組を構成する電極154b又は第1の組を構成する電極154aのうちの2つ以上の電極が同時に検知ラインLに接続され得る。図示の例では、同時には1つの電極154b′のみが検知ラインに接続される。なお、図11(d)では、第2の組を構成する電極154bのためのスイッチS1〜S14を示しているが、第1の組を構成する電極154aについても同様のスイッチが接続される。
【0067】
図11(d)に示すように、閉じたスイッチS3及びS8によって、(図11(d)における左側から)第2の電極154b″及び第4の電極154b′、これらの2つの電極を接続する配線T、(制御装置152に接続される)検知ラインL、及び(制御装置152からの)戻り経路Pによって囲まれたループが形成される。すなわち、この構成によって、接地された電極154b″を介したループが形成される。このループによって囲まれた領域を流れる任意の磁束は、このループと直列に接続された電流源または電圧源としてみなすことができる起電力を生成する。ループを、図8に示したような電圧増幅器、または図9及び図10に示したようなトランスインピーダンス増幅器に接続することによって、磁気変換器によってループに誘起される信号を検出することができる。多数のループを横切る信号の検出に基づいて、磁気変換器の位置を計算し、決定することができる。磁気変換器は、図3(b)に示す、一般的なピン形状のアンテナ179と比較した場合、より強い磁界を生成可能なループ(又はコイル)アンテナを有することを除いては、図3(b)に示した変換器と同様に、構成される。
【0068】
なお、図11(b)、図11(c)及び図11(d)では、第1の組を構成する電極154aを「ITO底部(ITO Bottom)」として示し、第2の組を構成する電極154bを「ITO上部(ITO Top)」として示しているが、各電極の上部及び底部の配置方向は本発明によってそのようには制限されない。
【0069】
図5(a)及び図6を参照して前述したように、マルチプレクサ410、412によって逐次的に選択された各信号は増幅器502によって増幅され、AGC504によって振幅調整され、ノッチフィルタ506、帯域フィルタ508、及びエイリアス除去フィルタ510によってフィルタリングされ、ADC416によってデジタル値に変換される。その後、本発明の種々の例示的実施例によれば、ADC416から受信した各デジタル値のフィルタリングを行うようにMPU420が構成されている。なお、MPU420とは別のプロセッサによってデジタルフィルタリングを実現し得る。具体的に、ノッチフィルタ506、帯域フィルタ508、及びエイリアス除去フィルタ510は実質的に雑音を除去するが、除去し切れない雑音が残存し得る。従って、ADC416から出力された各デジタル値からこの残存する雑音を除去するのに、センサ制御装置152はMPU420または別のプロセッサにおいてデジタルフィルタリング技術を使用することが好ましい。任意の適切な無限インパルス応答(IIR:Infinite Impulse Response)又は有限インパルス応答(FIR:Finite Impulse Response)フィルタを使用して良い。
【0070】
図12には、デジタルフィルタリング用の手順が例示的に示される。デジタルフィルタリング手順は別のプロセッサにても実現し得るが、このデジタルフィルタリング手順はMPU420によってソフトウェア処理として実現されるのが好ましい。図示の実施例では、デジタルフィルタリング手順はフィルタリングのための3つのチャネルを備える。各チャネルは変換器175によって電界が発生可能な多数の周波数のうちの1つに対応する。図示の実施例では、3つの周波数のうちの任意の周波数で選択的に送信するように変換器175が構成される。このため、他の実施例ではより多くの周波数チャネルが含まれ得るが、デジタルフィルタリング手順は3つの対応するチャネルを含む。各フィルタリングチャネルは異なる通過周波数(F、F、F)を有する帯域フィルタ、整流段、及び低域フィルタを備える。一般に、近接LCDスクリーンからの雑音等の、既知の近接雑音源からの雑音をフィルタリングし切るようにフィルタ周波数が選択される。3つの帯域フィルタの出力の各々は整流されて、対応する低域フィルタに供給される。各デジタル値を低域フィルタリングすることによって残存する雑音がフィルタリングされることで、各入力デジタル値から関連属性(例えば、振幅、位相等)情報が抽出される。従って、デジタルフィルタリングの出力によって、変換器175の位置を決定すると共に、変換器175から受信した信号から、符号化されたデジタルデータを復号するための正確な基準が取得される。
【0071】
本発明の一態様によれば、2つ以上の周波数チャネルが良好な雑音排除のために使用される。例えば、所定の周波数でシャープなピークを備えた信号(ノイズ)を放射するLCDスクリーンもある。これらの周波数のうちの1つの周波数が変換器175によって使用される周波数と同一であれば、変換器175に有効な他の周波数に切り替えて使用することができる。従って、本発明の一実施例によれば、センサ150のための制御装置152は、多数の周波数チャネルの各々に対して信号対雑音比を決定するように構成され、最大の信号対雑音比を有する周波数チャネルを受信チャネルとして、あるいは設計時の較正工程の一部分として選択する。以下において説明するように、変換器モードの際に制御装置152が選択受信チャネルを示すデジタルデータを変換器175に送出することも可能である。こういったデジタルデータを受信し復号化すると直ちに、変換器175は選択した受信チャネルで送信を開始する。本発明の別の実施例によれば、2つ以上の組合せ式タッチ及び変換器入力システムを、例えば互いに近接させて両方とも使用するとき、2つ以上のシステムの間での交差結合を回避するように、互いが異なる周波数で、又は異なる組から構成される周波数で電界を伝送するように、これらのシステムの変換器が構成される。
【0072】
前述したように、変換器175によって発生した電界により電極アレイ154に誘起される複数の検知信号の測定属性(例えば、振幅、位相等)に基づいて、変換器175の位置が決定される。例えば、多数の電極にそれぞれ誘起される多数の信号の振幅は最大の振幅を求めるべく測定され相互に比較され得る。変換器175の位置は、変換器175に最も近い電極に最大振幅を有する信号が誘起されるという一般観念に基づいて決定される。他の実施例では、多数の電極にそれぞれ誘起された多数の信号の位相が、変換器175の位置を決定するのに測定され相互に比較され得る。例えば、300MHzの変換器信号では、5cm離隔した2つの電極に誘起される信号の位相差は18°となろう。600MHzで動作するADCを使用して各信号をデジタル化することによって、それらの位相を得ることができる。各電極での位相偏移を測定することによって、各電極に対する変換器の相対的移動を決定可能である。例えば、上記の例において、変換器が電極から1cm離れて移動すると、この電極に誘起される信号の位相は3.6°だけ偏移することとなろう。この方法においては、各電極に対する変換器の相対的移動のみが既知となる。変換器信号の各周波数を周期的に変化させることによって、異なる電極が位相偏移を検知するタイミングを検出し比較することが可能である。周波数変化後の位相偏移を最初に検知する電極が変換器に最も近接した電極である。この後、引き続き、他の電極においても位相偏移を検出することによって、変換器の絶対位置を決定可能である。その後、同じ周波数を用いて、異なる電極での位相偏移をモニタする。変換器の絶対位置を再度決定可能な次の周波数に変化するまでに、各電極に対する変換器の相対的移動が決定される。
【0073】
本発明の種々の例示的実施例によれば、電極アレイ154に誘起され、次いでデジタル値に変換されフィルタリングされる各信号の属性(例えば、振幅、位相等)に基づいて変換器175の位置を決定するのに、曲線の当てはめ技術が用いられる。この事については、MPU420内のデジタル値を用いるか、又はホスト装置(例えば、本発明の組合せ式タッチ及び変換器入力システムを入力/表示システムとして組み込まれるパーソナルコンピュータ:PC)に含まれる主プロセッサ等、1つ以上のプロセッサと共同して曲線の当てはめを実行するようにMPU420が構成される。曲線の当てはめ処理が集中する場合には、このような分散処理を幾つかの応用に使用し得る。この場合、電極アレイ154に誘起した信号を測定しフィルタリングして得た各信号を、MPU420から処理用のホストシステムのプロセッサに移動させた後、例えばUSB又はRS232インタフェース(図5(a)参照)等の直列インタフェースを介してMPU420に戻し得る。
【0074】
適切なパラメータで表示された任意の曲線が曲線の当てはめに使用可能である。本発明の種々の例示的実施例によれば、アンテナとしても機能する特定の先端形状を有する変換器と、特定の電極構成パターン(即ち、各電極の形状及び電極アレイの配置パターン)を有する電極アレイとを備えた任意の組合せ式タッチ及び変換器入力システムに対して、適切な曲線を経験的に得ることが可能である。曲線の当てはめに基づく変換器による指示位置の決定は、実質的には任意の組合せ式タッチ及び変換器入力システムに対して適切な曲線を得ることが可能であり、かつ特定の組合せ式タッチ及び変換器入力システムに対して得られる曲線は大量生産される同一の組合せ式タッチ及び変換器入力システムに確実に応用可能である点において有益である。この理由は、ITO製造工程等のシステムの製造工程で予想される通常の変化を説明するのに曲線の当てはめ技術は十分に強力であるからである。こういった曲線を広く多様に異なる電極形状及びアレイパターンに対して較正可能であることから、この技術は、容量性タッチ検知に対して本来設計されてきたこれらの形状及び構成を始めとして、電極アレイの多くの異なる形状及び構成の使用を容易にする。
【0075】
図13(a)は本発明の一実施例による曲線の当てはめ技術に基づく変換器の位置を決定するのに使用されるサンプル工程を図示するフローチャートである。ステップ1300において、変換器175が電極アレイ全体に渡って多数の既知の位置に置かれるとき、電極アレイ154に誘起される信号データが収集される。ステップ1302にて、収集された信号データに最も適合するパラメータ化曲線が定義される。これら2つのステップは設計時に実行し得て、定義された曲線は次いでセンサ150の制御装置152に記憶される。ステップ1304にて、変換器モードの際、変換器175によって電極アレイ154に誘起された信号データが収集され、この際、変換器の位置は制御装置152にとって未知である。ステップ1306にて、上記ステップ1304にて収集されたデータを定義済みの曲線に適合させることによって、変換器の指示位置が決定される。これらのステップの各々は以下にて詳細に説明する。
【0076】
本発明の各例示的実施例によれば、2つの適合曲線を得ることができる。この際、幾つかの応用では、同一の曲線をX−及びY−位置決定の各々に使用し得る。すなわち、一方の曲線はX−位置決定のためのものであり、他方の曲線はY−位置決定のためのものである。X及びY方向(それぞれ電極アレイの列及び行)の各々での曲線の当てはめに対して、X電極及びY電極に誘起される各信号の属性は経験的に又は理論的に確立される。属性を設定する1つの実験的方法は、ロボットのアーム又は他の適切な道具を用いて電極アレイ154全体に渡って変換器を走査することを含む。ロボットのアームは指令を受けて、既知の傾斜(例えば、x−位置走査の際の、X−Z面にある変換器の軸と、検知面に垂直なラインとの間に形成される角度)、及び検知面上方の既知の高さを用いて既知の位置に移動し得る。X−位置走査の際、電極アレイ全体の良好なカバレッジが達成されるまで、変換器が電極アレイの電極間及びその全体に渡って移動し、X電極に誘起された各信号の属性(例えば、振幅、位相等)が連続的に自動式に記録される。X及びY方向の変換器の移動に伴って、変換器の傾斜及び/又は高さも変化し得る。例えば、20個のX電極に対して、X電極に誘起される各信号の各属性を記録するのに(傾斜及び/又は高さを有する)2,000個の変換器位置を使用し得る。必要とされる実際の測定数は一般に、電極アレイ154の構成上の対称性に依存することとなろう。対称性があれば、電極アレイ154の部分に対して記録された測定データは、対応する対称の部分に対する測定データを推定するのに使用し得る(図13(a)のステップ1300)。同様の工程はY‐位置走査に対しても繰り返して良い。
【0077】
X電極及びY電極に対する全測定データが一旦経験的に又は理論的に設定されると、変換器175の各位置(及び傾斜/高さ)が、その位置にて変換器によって発生した電界により、X電極及びY電極に誘起された各信号の属性と関連付けられる1組の測定データとなるようにデータを配置可能である。
【0078】
次に、曲線の当てはめ数式として使用される適切な数学的等式にデータが適用される。換言すると、曲線の当てはめ数式、即ち、データに適合するパラメータ化曲線が設定される。使用することができる可能曲線は、多項式と、有理多項式と、三角関数、対数関数及び指数関数の組合せである。非常に単純な幾何学的形状では、直線的な線形補間で十分となり得る。有理多項式は、計算の精度及び速度の間に良好な妥協をもたらし得る。同一の矩形状導体から成るX電極に対して、多項式は例えば以下の通りに定義することができる。
【0079】
【数6】
上記数式は、一連のX電極中のi番目の電極を中心の電極として仮定すると共に、変換器がこのi番目の電極を左から右に横切るとしたときに、このi番目の電極上の予想振幅を調べる。式中、xはこのi番目の電極の中心からの距離を表す。また、x<0は変換器がi番目の電極の中心から左側にあることを示し、x>0は変換器がi番目の電極の中心から右側にあることを示し、またx=0は変換器がi番目の電極の中心にあることを示す。変換器がi番目の電極の中心(即ち真上)にある場合にこの有理多項式は一般にx=0でピークを持ち、また変換器がi番目の電極の左側又は右側に移動するとき、i番目の電極の振幅は減少する。数式6に基づく例示的曲線を図13(b)に示す。上記数式において、a、b、c、d、e及びfの値は使用中の特定の変換器の先端形状及び電極構成パラメータに対して経験的に決定される較正パラメータである。この実施例において、電極アレイ154の各電極は同一に構成されているので、X電極の各々に対して同一の曲線を生成し得る。全ての場合に要求されるわけではないが、一般に、これらの較正パラメータはX電極及びY電極に対して別個に定義され(X電極及びY電極に対して2つの曲線をそれぞれ生成する)ることとなろう。なお、数式6は使用可能な有理多項式の一例である。他の多項式、又は関数の組合せも使用し得る。(図13(a)のステップ1032)。
【0080】
選択された曲線の当てはめ数式(又はパラメータ化曲線)、及び経験的に決定された較正値を用いて、MPU420は入力データを所定の曲線に適合させることで、変換器175の位置を容易に決定することができる。この第2の曲線への当てはめは、多様の異なる技術を使用して実行可能である。例えば、変換器の位置は曲線の当てはめ数式及び測定振幅間のそれぞれの2乗和を最小化することによって決定可能である。この技術の一例は以下の数式を解くことを包含する。
【0081】
【数7】
この例において、変換器のX位置を決定するため、x1, x2, x3, x4, x5等の一連の(又は複数の)X電極に誘起される振幅がそれぞれA1, A2,A3, A4, A5として測定され、上記数式に入力される。ここでp(x)は前述した曲線の当てはめ数式である。X電極x3が中心電極として選択されたとき、x3に対する変換器の位置xpen(例えば、中心x3の左側の負の値及び中心x3の右側の正の値)は、上記数式を解くことによって、即ち和を最小化する値xpenを決定することによって決定可能である。この工程は次いでx6, x7,x8, x9, x10等の別の組を構成するX電極に対して繰り返され得る。同様に、この工程は値ypenを求めるためY方向に繰り返される。X位置及びY位置に対して曲線の当てはめを実行することによって、変換器の正確な位置を決定することができる(図13(a)のステップ1304及びステップ1306)。
【0082】
入ってくる振幅測定データを定義済みの曲線に適合させる別の技術は、任意の2点間の最長距離を使用する。この技術の一例は以下の数式を解くことを必要とする。
【0083】
【数8】
この技術は、任意の2点間の最長距離を最小化する値xpenを求めると共に、最悪の場合をも考慮した最良の適合を求める。得られた曲線が非常に平坦な応答を有していれば、この技術は有用であり得る。
【0084】
別の例として、上記数式7及び8におけるような最小値を迅速に決定するのに、リーベンベルク‐マルクワルト法(Marquardt-Levenberg)及びガウス・ニュートン法(Gauss-Newton)等の技術が使用可能である。これらの技術は一般に、xpenに対する初期推定値を使用して開始され、続いてp(x)の導関数を使用して推定値を良いものにしていく。最小値が少しでも改善されるまで、xpenに対する推定値を調整したまま工程は繰り返される。この時点で、最小値が求められると共に、xpenが決定される。別の形式の当てはめアルゴリズムは2分探索法を使用する。この場合、もっともらしい開始値が選ばれ、値が後方及び前方に探索され、電極ストリップ差分のみから開始して、最良の回答が得られるまでこの差分を再分する。この技術はリーベンベルク‐マルクワルト法又はガウス・ニュートン法が特定の適用に不適切であるものに有益であり得る。別の例として、X−Y方向に対して同時に適合する2D(2次元)処理も使用し得る。
【0085】
前述のように、電極アレイ154に誘起された信号の属性は、変換器の傾斜及び/又は高さを変化させながら測定し得る。従って、変換器の傾斜及び/又は高さ等の他のデータを更に説明するパラメータ化曲線を得ることができ、又は調整可能である。検知面上方の変換器の高さ(又は「ホバー(hover)」)は、例えば、以下の数式を解くことによって求めることができる。
【0086】
【数9】
この例では、振幅Aiがi番目の電極で検出された状態で(x4を中心電極として)7個のX電極が使用される。またhは高さである。x4に対する変換器xpenのX位置及び高さhは、和を最小化する値xpen及びhを決定することによって求められる。なお、上記数式では、変換器が検知面から離れるに従い、信号強度は1/hに比例して減少する。
【0087】
別の例では、変換器の傾斜は、磁気的結合実施例での使用に好適な、三角関数を含む以下の数式によってパラメータ化することができる。
【0088】
【数10】
この式において、PtiltはX方向で検知面に直交する軸に関する傾斜角であり、Witoは1つの電極ループの幅である。
【0089】
この技術についての別の変形では、精度を向上させるために曲線の当てはめの重み付けが可能である。一般にこのことは、より強度の高い信号が、一般には、より高い信号対雑音比を有するため、これらのより強度の高い信号により大きな量を重み付けすることによって行われる。信号が最も強い電極の中心のxpenに対する初期推定値から開始することが望ましい場合もあり得る。このことは実際の最小値が探索アルゴリズムによって求められる確率を向上させる。
【0090】
本願で使用すると共に、上述の説明によって確認したように、用語「曲線の当てはめ(curve fitting)」又は「当てはめ(fitting)」は、「テスト」データに最も良く適合する1つ以上の曲線を構成し、続いて、「実際」のデータを処理するのにその1つ以上の曲線を使用するのに用いられる広範囲の技術のうちの1つ以上の技術に関連している。曲線と実際のデータとの誤差(例えば、2乗和)を最小化することによって、定義済みの曲線を実際のデータに適合させ、又は反復工程を通して曲線を適合させる種々の例が開示される。しかしながら、他の例では、非反復工程を使用し得る。例えば、最小2乗線形回帰を用いて、反復すること無く、かつ誤差を最小化する必要も無く良好な適合を得ることが可能である。より高速のアルゴリズムと引き替えに幾つかの位置決めデータを犠牲にすることもできる。例えば、良好な信号対雑音比を有する細長い電極を有する電極アレイにおいて、最も大きい振幅を有する2つの電極間に単純な線形補間法を使用して、変換器の位置を決定することが可能である。
【0091】
前述したように、本発明の種々の例示的実施例によれば、変換器制御装置177は周波数ホッピング技術を使用して多数の周波数で、より詳細には、逐次的に異なる周波数で電界を選択的に発生させる。詳細には、本発明の種々の実施例において、変換器制御装置177のMCU318は、異なる周波数範囲でアンテナへ供給する信号を選択的に発生するように構成された搭載デジタル制御式発振器を備える。雑音排除能力を向上させるために、1つの周波数から別の周波数にホッピングすると、これに対応してアンテナ179によって発生した電界の周波数が変化する。また、これらの異なる周波数は、デジタルデータを符号化し、変換器175から電極アレイ154、ひいてはセンサ制御装置152に送信する際に使用することができる。例えば、圧力データ、スイッチ状態データ、及び変換器識別用データ(ID)等、変換器175に関係するデジタルデータを符号化して送出するのに適切な周波数偏移キーイング(FSK:Frequency-Shift Keying)技術を使用可能である。変換器識別用データは特定の変換器を識別するのに有益であり得る。例えば、センサ150がPOS(Point-of- Sale)システムに使用されると共に、異なる販売代理人が異なる変換器175を携帯するとき、センサは代理人の変換器175から受信された変換器識別用データに基づいてデータを入力中の特別の販売代理人を自動的に識別できる。別の例としては、本発明による複数の組合せ式タッチ及び変換器入力システムが互いに近接して使用されるとき、所望の変換器175から受信された信号のみを処理できるように(他の変換器とは区別して)、その変換器175を識別できることは各センサにとって望ましいこととなろう。
【0092】
本発明の一態様によれば、変換器175及びセンサ150間の通信に使用される周波数は既知の(基本)周波数を分周することで定義されて良い。この方法は基本周波数の高調波を回避すると共に、より良好な雑音排除を提供するという利点をもたらす。一例において、変換器175は2つのモードで動作する。第一のモードは4つの周波数を発生させることができる低電力モードである。第二のモードは低電力モードに比してより多くの電力を消費するが、基本周波数の高調波ではない多数の周波数をもたらす高電力モードである。下記の表1は本発明の一実施例による変換器によって使用することができる可能周波数を表す。
【0093】
【表1】
低電力モード及び高電力モードの各々において、基本周波数を分周することによって、使用可能な周波数が決定される(例えば、500kHz及び2MHz)。上記表1は本発明の一実施例による使用可能な1組の異なる周波数の一例を単に示しているに過ぎず、他の異なる周波数の組を本発明の他の実施例における使用のために選択しても良い。1組の異なる適切な周波数を選択するのに、位相ロックループ(Phased Locked Loop(PLL))を使用する方法等の種々の他の方法を使用し得る。
【0094】
PLLの構成は周知である。図13(c)に、本発明の実施例による使用に好適なサンプルPLLの構成を示す。このPLLは、基準周波数(Rf)1310、電圧制御発振器(VCO:Voltage Controlled Oscillator)1312、位相検出器1314、及び演算増幅器1316と2つの抵抗器1318a、1318bから成るループフィルタを備える。基準周波数(Rf)から異なる周波数を発生させるため、PLLは1つ以上の分周器(図時の実施例ではM分周器1320及びN分周器1322)を備える。PLLは基準周波数(Rf)に基づいてM/Nで規定される各周波数を発生させることができる。このことによって、基本周波数を共有する広範囲の周波数が生成可能となる。例えば、仮にNが1から16の範囲で選択可能でならば、16、15、13及び11をN分周器1322における除数として選択し得る。仮にM分周器1320における除数として11又は7が選択されると共に、基準周波数(Rf)が500kHzであれば、以下の出力周波数を発生させられよう。
【0095】
11/16 * 500 KHz = 343.75 KHz
11/15 * 500 KHz = 366.67 KHz
11/13 * 500 KHz = 423.08 KHz
7/11 * 500 KHz = 318.18 KHz
PLLは、互いが近接する範囲の周波数を発生させることができるため、センサ制御装置152内のアナログ処理段414に狭帯域フィルタ(508)を使用することができる。このため、信号がデジタル化される前に信号対雑音比を増大させるという効果がある。
【0096】
一実施例においては、特定化された範囲内の4つの異なる周波数(例えば、表1の「低電力」モードにおける100kHz、125kHz、166kHz及び250kHz)を発生させるように変換器175が構成される。雑音排除の必要に応じてこれらの4つの異なる周波数を切り替え、又は周波数偏移でデジタルデータを符号化するように変換器制御装置177が構成される。周波数ホッピングを使用してデジタルデータを符号化するのに種々の技術を使用することができる。例えば、任意の適切な周波数偏移キーイング(FSK)技術を使用しても良い。付加的に又は代替的に、デジタルデータを符号化するのに、任意の適切な振幅偏移キーイング(ASK:Amplitude-Shift Keying)技術、位相偏移キーイング(PSK:Phase-Shift Keying)技術、又は直交振幅変調(QAM:Quadrature Amplitude Modulation)体系等の、より複雑な符号化体系をデジタルデータの符号化に使用しても良い。
【0097】
一つの特定例として、デジタルデータを符号化するのにマンチェスター型コードを使用し得る。このマンチェスター型コードでは、ハイからローへの周波数の変化は「1」を送信し、一方、ローからハイへの周波数の変化は「0」を送信する。下記の表2はマンチェスター型コードに基づくサンプルデータ符号化体系を図示する。
【0098】
【表2】
上記に示すように、ハイからローの3個の連続した変化(「111」)はフレームの開始(SOF)を示し、ローからハイの3個の連続した変化(「000」)はフレームの終了(EOF)を示す。SOF及びEOFの間において、「001」の任意の3個の変化は「0」を送出し、「011」の任意の3個の変化は「1」を送出する。これらのデジタルデータ(SOF、0、1、及びEOF)はデータフレームの構成で送信される。その一例が図14に示されている。図14に示すようなデータフレームは独自のスタートビット・シーケンス(SOF)及びエンドビット・シーケンス(EOF)を有する。従って、異なる長さを有することが可能である。図14のデータフレームはフレームの開始(SOF)ブロック950を含み、これに続いてデータ型式ブロック952(2ビット)、ペイロードデータブロック954(3〜24ビット)を含み、最後にフレームの終了(EOF)ブロック956を含む。下記の表3はデータの型式ごとのデータフレーム形式の一例を示す。
【0099】
【表3】
上記の例では、「00」の2ビットは「ペン識別」データを示し、独自のペン識別番号を示す24ビットがこれに続く。「01」の2ビットは「スイッチ状態」データを示し、3個までのスイッチのうちの1個のスイッチの状態を示す3ビットがこれに続く。最後に、「10」の2ビットは「圧力」データを示し、検出された圧力値を示す8ビットがこれに続く。3つの型式のデータのみを示したが、より多くの又は異なる型式のデータを定義してデジタル的に符号化しても良い。例えば、傾斜センサ又は回転センサ等の変換器175上に設けられた任意の他のセンサ、或いは変換器175の動作モード(例えば、「起動モード」又は「スリープモード」)から得たデータを定義してデジタル的に符号化して良い。
【0100】
下記の表4はスイッチ状態データを含むデータフレームの一例を示す。
【0101】
【表4】
上記の例において、最初に、ハイからローへの3個の連続した周波数変化(「111」)はフレームの開始(SOF)を示す。次の「01」の2ビットは「001」及び「011」の周波数変化によって発生され、このデータフレームが「スイッチ状態」データであると共に、ペイロードデータが3ビット長であることを示す。続く「100」の3ビットは「011」、「001」及び「001」の周波数変化によってそれぞれ発生され、第1のスイッチが押圧されたことを示す。最後に、ローからハイの3個の連続した周波数変化(「000」)はフレームの終了(EOF)を示す。
【0102】
前述した方法によってもたらされるデータ伝送の速度は周波数ホッピングの速度に依存する。例えば、4つの周波数を用いて周波数ホッピングを250μs毎に生じさせることができるのであれば、このシステムは1kビット/秒のスループットにてデータを送信することができる。
【0103】
本発明は前述した特別な例には限定されず、他のデータフレーム型式と同様に、種々の他のデジタル符号化又は変調技術を使用しても良い。例えば、エラー訂正等の高度の特徴を有する他の符号化技術(例えば、リード‐ソロモン(Reed−Solomon)符号化技術)を使用しても良い。
【0104】
図15は、本発明の一実施例におけるフローチャートである。デジタルデータを符号化してセンサ150に送信する工程を始めとして、変換器制御装置177によって、より詳細にはマイクロコントローラ装置(MCU:Micro Controller unit)318によって、一般に実行されるべき例示的工程を示す。変換器が起動(wakeup)した後、ステップ1060において、タイマーはスリープ(sleep)になるようにセットされる。タイマーが一旦スリープにセットされて、所定の時間が経過すると、即ち、タイマーに設定された時間となると、変換器はスリープになる。ステップ1062では、ペン先端に加えられた圧力を圧力センサ306にて検出する。ステップ1064にて、ステップ1062で検出されたペン先端に加えられた圧力が所定のしきい値を越しているか否かが決定される。仮にそうであれば、ステップ1066に進み、タイマーがスリープになるようにリセットされる。次いで、ステップ1068にて、ペン先端に加えられた圧力がデジタルデータとして符号化され、センサ150に送信される。同様に、ステップ1070にて、サイドスイッチの状態がデジタルデータとして符号化され、センサ150に送信される。ステップ1072において、サイドスイッチ状態が変化したたか否かが決定される。仮にそうであれば、ステップ1074にて、タイマーがスリープになるようにリセットされる。次いで、ステップ1076にて、ペン識別情報(ID情報)がデジタルデータとして符号化され、センサ150に送信される。ステップ1078にて、タイマーが所定の時間に達したか否かが、例えば、ステップ1066及び1074でリセットされたタイマーによって、決定される。仮にそうでなければ、工程はステップ1062に戻り、ペン先端に加えられた圧力が再度検出されて、プロセス自体が繰り返される。一方、仮にタイマーが所定の時間に達したことがステップ1078で決定されると、ステップ1080に進み、変換器がスリープになる。従って、割込み信号が発生する毎に変換器175が起動し、かつタイマーをスリープにリセットする。検出されたペン先端への圧力が所定のしきい値を超えた場合(ステップ1064)またはサイドスイッチ状態が変化した場合(ステップ1072)には、割込み信号が発生する。
【0105】
図16は、変換器175において周波数偏移で符号化されたデジタルデータを、センサ制御装置152にて復号化する場合に、実行されるべき工程を例示的に示めすためのフローチャートである。ステップ1020において、ペン周波数の状態が「未知(unknown)」にセットされる。ステップ1022にて、ペン周波数が検出されたか否かが決定される。仮にそうであれば、ステップ1024にて、ペン周波数が「未知」であるか否かが決定される。詳細には、この例では、事前に定義された10個の周波数状態があって良い。仮にステップ1022で検出された周波数が「既知(known)」の周波数状態の何れでもないならば、ステップ1026に進み、(未知であるために)周波数移動方向を調べる必要があると指示され、しかる後、ステップ1022に戻って、ペン周波数が検出されたか否かが決定される。仮にステップ1024で、ステップ1022で検出されたペン周波数が「既知」の周波数状態の何れかであると決定されると、ステップ1028に進んで、前回の検出以降周波数が変化したか否かが決定される。仮にそうでなければ、再度ステップ1022に戻って、ペン周波数が検出されたか否かが決定される。
【0106】
仮にステップ1028で、前回の検出以降周波数が変化したと決定されると、ステップ1030に進んで、周波数移動方向を調べる必要があるが否かが決定される。初めは、周波数移動方向は未知であり、このためこれを調べる必要がある。従って、ステップ1032に進み、現在検出された周波数が前回検出された周波数に比して低いか否かが決定される。仮にそうであれば、ステップ1034に進み、周波数が「ハイ(high)からロー(low)」になったことが指示される。一方、仮にそうでなければ、ステップ1036に進み、周波数が「ローからハイ」になったことが指示される。ステップ1034及び1036の何れかから、ステップ1022に戻り、ペン周波数が検出されたか否か(ステップ1034とステップ1036のいずれかに由来するこの場合は「イエス(yes)」である)が再度決定される。ステップ1028に進んで、仮に前回の検出以降周波数が変化したと決定されれば(ステップ1034とステップ1036のいずれかに由来するこの場合は「イエス」である)、ステップ1030で、周波数移動方向を調べる必要があるか否かが決定される。このとき、周波数移動方向は(ステップ1034にて)「ハイからロー」又は(ステップ1036にて)「ローからハイ」の何れかとして既に指示されている。このため、周波数移動方向を調べる必要はなく、ステップ1038に進み、現在検出されている周波数が、ステップ1034又はステップ1036で既に示したように周波数移動方向と同一の方向に前回検出した周波数から移動したか否かが決定される。仮にそうであれば、ステップ1040に進み、周波数移動方向が「ハイからロー」であれば「1」が記録され、周波数移動方向が「ローからハイ」であれば「0」が記録される。
【0107】
その後、ステップ1042に進み、現在検出されている周波数が図示の実施例における143KHz等の、所定のしきい値に比して高いか否かが決定される。このしきい値は、一般に、定義された周波数範囲の中間的な値(例えば、図示の実施例では、100KHzから250KHzの範囲内における143KHz)の近くに事前に定義される。仮に現在検出されている周波数がこの定義済みのしきい値より高ければ、ステップ1044において、周波数移動方向が「ハイからロー」であることが指示される。一方、仮に現在検出されている周波数が所定のしきい値以下であれば、ステップ1046にて、周波数移動方向が「ローからハイ」であることが指示される。ステップ1044及び1046の何れかからステップ1022に戻って、ペン周波数が検出されたか否かが再度決定される。仮にそうでなければ、ステップ1048に進み、周波数の前回の検出以降所定の時間が経過したか否かが決定される。仮にそうであれば、ステップ1050に進み、新しいデータ(又は新しいデータフレーム)の開始が指示される。
【0108】
本発明の幾つかの実施例では、デジタル符号化と、周波数ホッピングを使用した通信は変換器175及びセンサ150の間で双方向に達成される。デジタルデータは、センサ150によっても同様にして符号化されて、変換器175に送信可能とされる。センサ150によってデジタル的に符号化されたデータの型式は、例えば、センサ識別データ、受信用チャネルデータ(即ち、どの周波数チャネルを使用すべきか)、及びセンサ150の動作モードを含んでいて良い。更にまた或いは代替的に、圧力、スイッチ状態、ペン識別用情報(ID情報)及びその他のデジタルデータは、ブルートゥース(Bluetooth:登録商標)及びジグビー(ZigBee)プロトコルを含むIEEE802.15標準に準ずるブルートゥース装置を介する等、他のRF無線技術を使用して変換器175及びセンサ150間で送信して良い。
【0109】
本発明の一態様によれば、電極アレイ154と共に使用するために構成されたコードレス変換器175が提供される。このコードレス変換器175及び電極アレイ154は容量的に結合されている。コードレス変換器175はその末端にペン先端(図3(b)の179)を有するペン状ハウジング(図3(b)で330)と、このペン状ハウジング330内に配置された変換器制御装置177とを備える。この変換器制御装置177はコードレス変換器175の動作を制御すると共に、ペン先端に加えられる圧力を検出する圧力センサ306を備える。コードレス変換器175はまた、圧力センサ306によって検出された圧力センサデータをデジタルデータとして電極アレイに送信するように、変換器制御装置177に結合されたアンテナ179を備える。変換器制御装置177は、この変換器制御装置177及びアンテナ179を駆動するための電力を供給する蓄電池又はコンデンサ(314)等の電力蓄積装置を備えることによって、コードレス変換器を実現する。
【0110】
上記のコードレス変換器175は、適切なセンサ150と共に、組合せ式タッチ及び変換器入力システムを形成する。幾つかの実施例では、この組合せ式タッチ及び変換器入力システムは、充電用入力コネクタ315を介してコンデンサ(図4に示す314)を充電するために、コードレス変換器175のために適切に形成されたドッキングステーション(充電装置)を更に備え得る。
【0111】
本発明の更なる態様によれば、近接対象物の位置及び変換器の位置を選択的に決定する方法が提供される。この方法は8つのステップからなる。第1に、近接対象物が電極アレイ154を用いて容量的に検知される。第2に、近接対象物の位置が容量性検知に基づいて決定される。第3に、電界が変換器175を用いて発生する。第4にデジタルデータが変換器175から所定の形式で送信される。第5に、複数の検知信号が、電極アレイ154の対応する複数の電極における電界に基づいて誘起される。第6に、この複数の検知信号の属性が測定される。第7に、変換器175の位置が、この複数の検知信号の測定属性に基づいて決定される。第8に、デジタルデータは電極アレイ154を用いて受信される。
【0112】
本発明の一態様によれば、変換器175及びセンサ150は変換器位置決定及びデジタルデータ通信の各々のために非同期的に通信することができる。詳細には、幾つかの実施例による本発明のシステム及び方法では、電極に誘起された信号の振幅及び周波数を決定することに依存しているので、変換器175及びセンサ150の間で、特定の位相相関を必要とするものではない。このことは多くの潜在的利点を有する。例えば、同期のための有線又は専用の無線リンクの使用を必要とするものではない。同期のための専用無線リンクはセンサ150の一部分の上にかさばる送信機を必要とし得る。更に、同期のための専用無線リンクは他の装置を妨げる要因となり、またそれ以上に、他の装置によって干渉され得る。また、本発明を用いて達成可能な非同期設計は、変換器175及びセンサ150間で異なる周波数を使用することを容易にする。また、非同期による通信の採用は、経年劣化に強く、また、各種の装置と両立しやすい。
【0113】
本願で述べた実施例は、本発明及びその特別な応用を説明することによって当業者が本発明を実施できるようにするために提示された。しかしながら、当業者は、前述の説明及び諸例は例証及び実例のみのために提示されたことを認識することになる。前述のような説明は包括的なものに意図され、又は開示から本発明を寸分違わないものに制限することに意図されたものではない。添付の特許請求の範囲の精神にもとることなく前述の教示を鑑みて多くの修正及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0114】
100・・・タブレット型コンピュータ、102・・・ディスプレイ、104・・・検知面、106・・・指、108・・・スタイラス、150、150′・・・センサ、152・・・制御装置、154・・・電極アレイ、154b′,154b″・・・電極、175・・・変換器、177・・・変換器制御装置、179・・・アンテナ、306・・・圧力センサ、308・・・パワーコントローラ、310・・・サイドスイッチ、314,906・・・コンデンサ、315・・・充電用入力コネクタ、410,412・・・マルチプレクサ、427・・・隣接電極、600・
図1
図2
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