(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5908040
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】調整装置及びこれを有する自動車シート
(51)【国際特許分類】
A47C 1/025 20060101AFI20160412BHJP
F16D 7/02 20060101ALI20160412BHJP
【FI】
A47C1/025
F16D7/02 A
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-183440(P2014-183440)
(22)【出願日】2014年9月9日
(62)【分割の表示】特願2009-544396(P2009-544396)の分割
【原出願日】2008年1月2日
(65)【公開番号】特開2015-37560(P2015-37560A)
(43)【公開日】2015年2月26日
【審査請求日】2014年10月2日
(31)【優先権主張番号】102007001617.6
(32)【優先日】2007年1月4日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】PCT/US2007/073034
(32)【優先日】2007年7月9日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】102007039024.8
(32)【優先日】2007年8月17日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502156098
【氏名又は名称】ジョンソン・コントロールズ・ゲー・エム・ベー・ハー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】キエンケ、 インゴ
(72)【発明者】
【氏名】オットー、 ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】バドウェグ、 マリオ
(72)【発明者】
【氏名】キルバハラン、 アルバート レジノルド
【審査官】
大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】
特表2003−507101(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 1/025
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両コンポーネント用の調整装置であって、
互いに対して可動に配列された第1継手及び第2継手と、
前記第1継手と前記第2継手との間に配置されて前記第1継手及び前記第2継手の相対動を制御する偏心器部材と、
前記第1継手と同軸の駆動器であって、前記駆動器からのトルクを前記調整装置に入力する駆動器と
を含み、
前記偏心器部材は、前記第1継手からの前記トルクを、前記第1継手が前記第2継手上を転動するように伝達し、
前記駆動器は前記駆動器上に配列されて前記偏心器部材を駆動する駆動装置を含み、
前記駆動器と前記偏心器部材との間には常に直接摩擦接続が維持され、
前記駆動器が回転すると前記駆動器からのトルクは、前記直接摩擦接続による摩擦力によって前記偏心器部材に伝達されて前記第1継手及び前記第2継手の動きが制御される調整装置。
【請求項2】
前記駆動装置が前記偏心器部材と協働しないニュートラル位置を含む、請求項1に記載の調整装置。
【請求項3】
前記直接摩擦接続は、前記駆動装置が前記偏心器部材と協働する前に生じる、請求項2に記載の調整装置。
【請求項4】
前記偏心器部材は内半径(R)を有し、かつ、前記駆動器は、前記偏心器部材の前記内半径(R)と協働する外半径(r)を有する、請求項3に記載の調整装置。
【請求項5】
前記駆動装置から離れたところの前記直接摩擦接続は、1対1.5〜1対2.5の分割箇所で生じる、請求項4に記載の調整装置。
【請求項6】
2つの偏心器部材を含む、請求項1に記載の調整装置。
【請求項7】
2つの前記偏心器部材の間に作用するばねをさらに含む、請求項6に記載の調整装置。
【請求項8】
前記偏心器部材の外半径は支承シェルと協働する、請求項6に記載の調整装置。
【請求項9】
前記駆動器は、前記偏心器部材に係合する駆動ピン、及びブッシングを含み、
前記駆動ピンは前記ブッシングに接続される、請求項1に記載の調整装置。
【請求項10】
前記駆動ピンの両端には閉止プレートが設けられる、請求項9に記載の調整装置。
【請求項11】
自動車において使用される車両シートのバックレスト用の調整装置であって、
間に配置された偏心器手段によって互いに対する相対位置を変更することができる第1継手及び第2継手と、
前記偏心器手段を回転させる駆動器要素であって、前記第1継手と同軸の駆動器要素と
を含み、
前記調整装置は、前記第1継手に回転固定的に接続された中心要素を有し、
前記駆動器要素は、前記中心要素との重なり領域に取り付けられ、
前記駆動器要素と前記偏心器手段との間には常に直接摩擦接続が維持され、
前記駆動器要素が回転すると前記駆動器要素からのトルクは、前記直接摩擦接続による摩擦力によって前記偏心器手段に伝達されて前記第1継手及び前記第2継手の動きが制御される調整装置。
【請求項12】
前記駆動器要素は、前記中心要素と、前記第1継手に回転固定的に接続された継手要素とによって軸方向に固定されて設けられる、請求項11に記載の調整装置。
【請求項13】
前記駆動器要素は、前記中心要素と前記継手要素との間に配列されるカラーを含み、
前記駆動器要素は、前記中心要素の凹みの中に突出して設けられる軸方向端を含む、請求項12に記載の調整装置。
【請求項14】
調整装置を有する自動車シートであって、
前記調整装置は、
互いに対して可動に配列された第1継手及び第2継手と、
前記第1継手と前記第2継手との間に配置されて前記第1継手及び前記第2継手の相対動を制御する偏心器部材と、
トルクを前記調整装置に入力する駆動器であって、前記第1継手と同軸の駆動器と
を含み、
前記偏心器部材は、前記トルクを前記駆動器から前記第1継手に、前記第1継手が前記第2継手上を転動するように伝達し、
前記駆動器は前記駆動器上に配列された駆動装置であって、前記偏心器部材を駆動する駆動装置を含み、
前記駆動器と前記偏心器部材との間には常に直接摩擦接続が維持され、
前記駆動器が回転すると前記駆動器からのトルクは、前記直接摩擦接続による摩擦力によって前記偏心器部材に伝達されて前記第1継手及び前記第2継手の動きが制御される自動車シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両コンポーネント用の、特に車両シートのバックレスト用の調整装置であって、第1継手及び第2継手を有し、その2つの継手同士の相対位置は、駆動器から前記第1継手へトルクを伝達する偏心器によって可変であり、当該第1継手は当該第2継手上を転動し、当該偏心器は少なくとも一つの偏心器手段を含み、当該少なくとも一つの偏心器手段は、当該駆動器上に配列された駆動装置によって駆動される調整装置に関する。本発明はさらに、車両コンポーネント用の、特に車両シートのバックレスト用の動力付き調整装置及び調整装置を含む車両シートであって、第1継手及び第2継手を含み、その2つの継手同士の相対位置は、偏心器手段によって可変であり、当該偏心器手段の回転は駆動器要素によって与えられる車両シートに関する。
【背景技術】
【0002】
かかる調整装置は特許文献1により知られている。しかしながら、これは相対的に複雑な設計である。先行技術によるさらなる文献は、特許文献2である。この公開特許出願に記載される調整装置は、自由遊びを有する。しかしながら、これは必ずしも望ましいわけではなく及び/又は必ずしも必要なわけではない。自動車シートのバックレスト用の傾斜調整継手は、独国の印刷された特許明細書である特許文献3により知られている波打ち機構を含む。さらに、車両シート用の関節式継手が、独国の公開特許明細書である特許文献4により知られている。しかしながら、これら周知の傾斜調整装置の弱さは、調整装置の動力付きの実施形態において明らかとなる。特に、傾斜調整装置が日常的に操作される場合の材料上の弱さ及び/又は摩耗の増大が明らかとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2006/040303(A2)号
【特許文献2】独国特許出願公開第10 2004 039 538(A1)号明細書
【特許文献3】独国特許第10 2004 011 268(B3)号明細書
【特許文献4】独国特許第103 05 407(B4)号明細書
【発明の概要】
【0004】
したがって、本発明の目的は、自由遊びが存在しないか又は自由遊びが少量のみである簡単な構造の調整装置を与えることにある。本発明のさらなる目的は、高度にコンパクトかつ同時に高度に安定的な設計が選択される車両コンポーネント用の調整装置を与えることにある。その結果、かかる傾斜調整継手は第1に、その耐用年数にわたり軽量で、高コスト効率で、かつ安定した態様で製造することができる。第2に、特に電動駆動器が存在する場合及び事故の場合において、高い強度を与えることができる。
【0005】
第1の目的は、車両コンポーネント用の、特に車両シートのバックレスト用の調整装置であって、第1継手及び第2継手を含み、その2つの継手同士の相対位置は、駆動器から第1継手へのトルクを伝達する偏心器によって可変であり、当該第1継手は当該第2継手上を転動し、当該偏心器は少なくとも一つの偏心器手段を含み、当該少なくとも一つの偏心器手段は、当該駆動器上に配列された駆動装置によって駆動され、当該駆動器が回転すると当該駆動器と当該偏心器手段との摩擦接続が少なくとも数回生じる調整装置によって達成される。
【0006】
本発明は、車両コンポーネント用の、特に自動車コンポーネント用の調整装置に関する。好ましくは、調整装置はいわゆるリクライナである。リクライナにより、自動車シートのバックレストのシート部材に対する位置を、運転の快適性増大を目的として及び/又はバックレストの収容位置又はリクライニング位置への遷移を目的として変えることができる。特に好ましくは、かかる車両シートは、バックレストの及び/又はシート部材の右側及び左側にかかる調整装置を含む。当該調整装置はこのため、好ましくは、シャフトによって互いに接続される。車両シートは、一人以上のためのシートである。車両シートは、オプションとして、好ましくは分割式バックレストを有するシートベンチである。
【0007】
本発明によれば、調整装置は、好ましくは自動車シートのバックレストに接続される少なくとも一つの第1継手と、好ましくは自動車シートのシート部材に接続される少なくとも一つの第2継手とを含み、その2つの継手同士の相対位置は、偏心器によって可変である。したがって、本発明に係る調整装置は、いわゆる波打ち調整装置であり、その主要な動作モードは、例えば特許文献1及び2により知られている。このため、これらの公報は参照として組み入れられて本開示の一部として適用可能である。すなわち偏心器は、手動により又はモータによりもたらされたトルクを第1継手に伝達する結果、当該継手を第2継手上で回転及び転動させる。好ましくは、第1継手は外歯を有し、かつ、第2継手は内歯を有する。これらは互いに噛合する。好ましくは、外歯が少なくともさらに一つの歯を有する結果、第1継手が第2継手において波打ちを行う。
【0008】
偏心器は少なくとも一つの偏心器手段、例えば、回転駆動器に接続された駆動装置によって駆動されるウェッジである。好ましくは、駆動装置は、例えば駆動ピンのような駆動器上に形成される。当該駆動装置は、最初に偏心器手段をその固定位置から解放し、その後当該偏心器手段を駆動して第1継手を回転させる。駆動装置は、2つの位置すなわちニュートラル位置及び駆動位置に配置することができる。ニュートラル位置では、駆動装置は偏心器手段から離間する一方、駆動器位置では、駆動装置は偏心器手段を支承する。駆動装置は最初に、偏心器手段が駆動装置によって駆動されるようになる前に所定量の自由遊びを克服する必要がある。
【0009】
この自由遊びを低減するべく、かつ、調整装置が、第1及び第2継手間で位置を変える場合にトルクが極力直接的に適用される効果を有することを達成するべく、駆動器を回転させると、第1及び第2継手間に摩擦接続がもたらされる。すなわち、摩擦によってトルクが駆動器から偏心器手段へ伝達される。このトルクは、偏心器手段をその固定位置から解放して当該偏心器手段を当該駆動器の回転方向に十分に遠くまで駆動するのに十分大きい。最終的に駆動装置が偏心器手段を支承する結果、駆動器の摩擦を受けるようになる。当業者であれば、駆動もまた摩擦接続を介して完全に達成できること、すなわちこの場合、駆動装置が存在しないか又は使用されないことがわかる。
【0010】
本発明に係る調整装置は、相対的に簡単な構造であり操作が容易である。駆動装置と偏心器手段との間の所定量の自由遊びが許容されるので、所定の製造ばらつきをもって本発明に係る調整装置を製造することができる。適用されるトルクに対するギヤ機構の直接的な反作用をなしで済ませる必要はない。調整装置は、時計回り及び反時計回りに駆動することができる。
【0011】
好ましくは、駆動器は、例えばピンのような円筒状コンポーネントである。これは、偏心器手段の内半径と協働する外半径を有する。特に好ましくは、これらの半径は、駆動器と偏心器手段との間に点接触又は線接触が生じるように異ならせて設計される。接触により、摩擦力が駆動器から偏心器手段へ伝達され、その結果当該偏心器手段が駆動器とともに回転する。
【0012】
特に好ましくは、各偏心器手段の内半径は、同じ中心点を有しない2つの半径を有する。当該半径間の遷移領域は、駆動器の外半径と協働する。好ましくは、駆動器を偏心器手段に対して回転させることにより、点接触及び/又は線接触がもたらされる。これによって摩擦力が伝達される。
【0013】
好ましくは、駆動器及び偏心器手段の寸法並びに/又はその互いに対する位置は互いに調整される。その結果、摩擦接続が、駆動器から離れたところで、すなわち駆動器の近くではないところで生じる。好ましくは、駆動器と偏心器手段との点接触又は線接触は、当該半径の1対1.5〜1
対2.5分割箇所、特に好ましくは1対1.75〜1対2.25分割箇所に配列される。この分割は、駆動装置に面する端から接触点まで測定される偏心器の円弧セグメントである。
【0014】
好ましくは、本発明に係る調整装置は2つの偏心器手段を含む。当該偏心器手段は好ましくは、鏡面対称に配列かつ構成される。駆動装置は、一方の回転方向において一方の偏心器手段と協働し、かつ、他方の回転方向において他方の偏心器手段と協働する。
【0015】
加えて、上述は双方の偏心器手段に等しく当てはまる。双方の偏心器は、その回転方向にかかわらず、駆動器手段によって駆動される。
【0016】
好ましくは、2つの偏心器手段の間に、当該偏心器手段を強制的に分離するばね手段が配列される。
【0017】
好ましくは、偏心器手段の一方又は双方の外半径が支承シェルと協働する。特に好ましくは、この支承対は、極力小さな摩擦をもたらすべく設計される。
【0018】
さらに好ましくは、例えば駆動ピンのような駆動器が、ブッシングに接続、好ましくは溶接される。
【0019】
さらに好ましい実施形態では、例えば駆動ピンのような駆動器は、一以上の支承シェルの中に取り付けられる。
【0020】
本発明に係る調整装置は、特に、自動車シートのバックレストの傾斜調整に対して適している。したがって、本発明のさらなる主題は、本発明に係る調整装置を含む自動車シートである。
【0021】
好ましくは、かかる調整装置は、バックレストの及び/又は車両シートの右側及び左側に配列される。特に好ましくは、当該調整装置は、シャフトによって互いに接続される。そして、シャフトは手動又はモータにより駆動される。
【0022】
第2の目的は、車両コンポーネント用の、特に車両シートのバックレスト用の調整装置であって、第1継手及び第2継手を有し、その2つの継手同士の相対位置は偏心器手段によって可変であり、当該偏心器手段の回転は駆動器要素によって与えられ、当該調整装置は、当該第1継手に回転固定的に接続された中心要素を有し、当該駆動器要素は、当該中心要素との重なり領域に取り付けられるように設けられる調整装置によって達成される。その結果、本発明によれば有利なことに、特に調整装置の電気モータによって駆動される特に動力付き又は電動駆動器の場合において、調整装置の高度の安定性及び摩耗耐性を達成することができる。本発明に係る傾斜調整継手及び/又は調整装置は、特許文献1により知られている傾斜調整継手とは異なるコンポーネントを使用する。これらのコンポーネントは、特に、ギヤプレート、アダプタ、ウェッジ要素及びばね要素に関する。本発明に係る調整装置は、こうした周知のコンポーネントとは別に、動力付き調整装置、特に修正された駆動器要素、修正された案内ブッシング及び中心要素として適合され及び/又は特に有利に使用される特定のコンポーネントを与える。したがって、特許文献1に開示される少なくとも周知のコンポーネントは、本特許出願において参照により組み込まれる。
【0023】
本発明によれば、駆動器要素が、中心要素及び第1継手によって軸方向に固定されて設けられ、又は、駆動器要素が、中心要素と第1継手に回転固定的に接続された継手要素とによって軸方向に固定されて設けられるのが特に好ましい。その結果、有利には、特に調整装置を電気モータによって操作する場合に生じ得る特に荷重ピークの事象において、調整装置のかなりの強化及び安定化が得られる。
【0024】
本発明によれば、駆動器要素が、中心要素と第1継手との間若しくは中心要素と継手要素との間に配列されるカラーを有すること、及び/又は、駆動器要素が、中心要素の凹みの中に突出して設けられる軸方向端を有することがさらに好ましい。凹みは好ましくは、実質的に円形の溝として設けられる。その結果、特に簡単な態様で調整装置の軸方向固定を有効にすること、及び/又は、特に安定しかつ荷重支承可能な調整装置の変形例を実装することができる。
【0025】
さらに、本発明によれば、中心要素及び駆動器要素が実質的に同じサイズの内径を有することが好ましい。その結果、駆動器シャフトにより調整装置に及ぼされる軸方向作用力が存在しなくなる。その結果、荷重が低減される。
【0026】
さらに、本発明によれば、駆動器要素が、回転動に対して駆動ピンと協働するべく設けられること、好ましくは形状嵌め接続が両者間に与えられることが好ましい。その結果、駆動器のトルクを、調整装置の調整を目的として簡単かつ信頼できる態様で伝達することができる。
【0027】
さらに、本発明によれば、調整装置が積層タイプの構造であることが好ましい。その結果、調整装置をモジュラー設計で与え、ひいては当該調整装置を相対的に低コストで異なる要求に適合することができる。
【0028】
本発明のさらなる主題は、本発明に係る調整装置を含む自動車シートであって、当該調整装置は、調整装置の調整を目的としてモータ、特に電気モータを含む動力付き配列及び/又は自動車シートのために設けられる自動車シートに関する。
【0029】
本発明のさらなる主題は、本発明に係る調整装置を製造する方法であって、第1方法ステップにおいて、当該中心要素と当該第1継手とが又は当該中心要素と当該第1継手に回転固定的に接続された当該継手要素とが、駆動器要素の駆動器要素又はカラーを軸方向に固定することによって一緒に溶接され、及び/又は、第2方法ステップにおいて、当該調整装置のさらなるコンポーネントが取り付けられる方法に関する。その結果、本発明によれば有利なことに、第1方法ステップによって、調整装置の組み付け及び/又は取り付けを目的として安定した基礎を許容することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
本発明が、
図1〜14を参照して以下に説明される。かかる説明は単に例示として与えられ、一般的な発明概念を制限するものではない。
【0031】
【
図5】本発明に係る調整装置のさらなる実施形態を示す。
【
図6】本発明に係る調整装置の追加的な実施形態を示す。
【
図7】本発明に係る調整装置の電動駆動器の主要コンポーネントを示す。
【
図9】本発明に係る調整装置の2つの変形例を貫通する断面図を示す。
【
図10】部分的に取り付けられた本発明に係る調整装置の斜視図を示す。
【
図11】取り付けられた本発明に係る調整装置の斜視図を示す。
【
図12】取り付けられた本発明に係る調整装置の斜視図を示す。
【
図13】本発明に係る調整装置を含む車両シートの模式図を示す。
【
図14】本発明に係る調整装置の2つの変形例を貫通する断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、本発明に係る調整装置の一実施形態の分解図を示す。当該調整装置は、バックレストアダプタ8及びシートアダプタ11を含む。保持プレート6を使用してシートアダプタ11が車両シートに締結、この場合はねじ留めされる。車両シートのバックレストには、バックレストアダプタ8が接続、好ましくは溶接される。当業者であれば、2つのアダプタ8、11のこれらの機能に互換可能性があることがわかる。バックレストアダプタ8のシートアダプタ11に対する相対位置は、2つのウェッジ2を含む偏心器1によって決定される。これら2つのウェッジ2は、好ましくは対称的に配列され、特に好ましくは回転軸Dを通って延びる直線に対して鏡面対称に配列される。2つのウェッジは、この場合はばね10、好ましくは両端がウェッジ2の切り欠きに係合する環状ばねであるエネルギー蓄積機構によって強制的に分離される。エネルギー蓄積機構10は偏心器の部材を形成する。さらに、ウェッジ2は、少なくとも一部が支承シェル13内に配列されてその支持を受ける。支承シェル13によって偏心器とシートアダプタ11との摩擦が低減されるので、偏心器の滑らかな動きを達成することができる。さらに、本発明に係る装置は、手動又はモータ駆動の駆動ピン4を含む。この駆動ピン4は、以下に詳細に述べるとおり、その回転動を偏心器1に伝達する。その結果、駆動器4が回転すると外歯付きシートアダプタ11が内歯付きバックレストアダプタ8内で回転する。駆動ピン4はブッシング7に接続、好ましくは溶接される。
【0033】
本発明に係る装置の偏心器1が
図2に示される。偏心器は、すでに述べたとおり、少なくともさらに一つの歯を含む内歯付き外部ギヤホイールの内側にある外歯付き内部ギヤホイール駆動するべく機能する。したがって、当該機構はいわゆる波打ち機構である。偏心器はウェッジ2によって形成される。ウェッジ2は、図示しないばね10によって強制的に分離される。これにより、波打ち機構の接線方向の遊びが補償される。ウェッジ2は、駆動ピン4上に形成される駆動装置3によって少なくとも一時的に、一つの回転方向に又は対向する回転方向に駆動される。
【0034】
例えば
図3に示される手動で作動される既知の波打ち機構では、2つのウェッジ2は、静止したすなわち非回転のピン5に支承され、かつ、もっぱら駆動装置3と、回転方向の最も近くに位置するウェッジ2とが直接接触することによって駆動される。したがってニュートラル位置からは、駆動ピン4は最初に、駆動装置3が対応ウェッジ2に支承されるようになるまで所定量の自由遊びを克服する必要がある。この自由遊びは、製造ばらつきを補償し、ひいては駆動トルクを低く維持する上で望ましい。
【0035】
しかしながら、本発明に係る駆動器、特に電動駆動器では、ギヤ機構の直接的な反作用が望ましい。したがって本発明によれば、その反作用が、ウェッジ2と駆動ピン4を回転させる駆動装置3との接触が対応ウェッジ2上の摩擦によるトルクを及ぼす前であっても与えられる。アーチ状に構成されたウェッジ2はこのため、駆動ピン4の外半径rよりも大きな曲率Rの内半径を有する。駆動装置に近接するウェッジ2の内円弧の近似的に1対2の分割領域において、駆動装置から離間したところに接触点P及び/又は接触線が形成される。接触点P及び/又は接触線を介して、関連ウェッジ2(この場合は右側のウェッジ)は、駆動装置3との接触前であっても、そのクランプ位置から解放されて駆動ピン4の回転方向に変位される。偏心器1により、2つの継手8、11間の波打ち動が有効となる。しかしながら、ウェッジ2は、駆動伝達手段としてのみならず、その対応位置において非駆動状態にある偏心器を、内歯付きギヤホイール9から外歯付きギヤホイール12へトルクが伝達される事象において、すなわち、例えばバックレストから偏心器1へトルクが伝達される事故事象において、追加的にブロックするべく機能する。
【0036】
図4は、本発明に係る調整装置の第1設計を示す。この機構の必須部材は、シート部材側の保持プレート6、ブッシング7、内歯付きギヤホイール9を備えたバックレストアダプタ8、ウェッジ2を分離して広げるばね10、外歯付きギヤホイール12を備えたシート部材アダプタ11、支承シェル13、及び、駆動装置3が形成された駆動ピン4である。この場合、ブッシング7は、カラーが設けられた駆動ピン4と一緒に回転する。カラーと駆動ピン4とは、例えば溶接によって回転固定的に接続される。
【0037】
さらなる実施形態が
図5に示される。この実施形態は、
図4に係る実施形態に実質的に対応する。この実施形態では、駆動ピン4は2つの支承シェル14、15の中で回転し、かつ、各端が、閉止プレート16、17に軸方向に固定されるように溶接される。
【0038】
図6は、本発明に係る調整装置のさらなる実施形態を示す。この場合、調整装置は、バックレストアダプタ8に接続された軸受18を含む。駆動器4は軸受18に取り付けられる。この駆動器は、内面に形状嵌め及び/又は圧力嵌め接続手段4’を有する。これは例えば歯であり、電動駆動器の、対応する形状嵌め及び/又は圧力嵌め接続手段と協働する。軸受18によって、特に、調整装置の耐用年数が改善される。
【0039】
当業者であれば、調整装置が、積層態様で、すなわち層状に配列された複数のバックレストアダプタ8及び/又はシート部材アダプタ11によって構築できることがわかる。
【0040】
図7には、本発明に係る調整装置10の動力付き変形例に必要な修正及び/又はコンポーネントが模式的に示される。参照番号1は、動力付きの本発明に係る調整装置の配列のための駆動器要素を示す。参照番号2は、動力付きの本発明に係る調整装置の配列の案内ブッシングを示す。参照番号3は、動力付きの本発明に係る調整装置の配列の中心要素を示す。
【0041】
図8には、本発明に係る調整装置10の部材が模式的に示される。第1継手4が、中心要素3及び駆動器要素1に追加して示される。
【0042】
図9には、本発明に係る調整装置10を貫通する断面図が模式的に示される。この場合、中心要素3と駆動器要素1との軸方向に延びる(調整装置10の回転軸に沿って延びる)重なり領域5がわかる。図
9の断面図からわかるように、第1継手4に対する回転が固定されて接続された中心要素3と第1継手4との及び/又は中心要素3と継手要素4.1との物質的な接続(特に溶接及び特にレーザ溶接)によって、駆動器要素1のカラー1.1ひいては同時に駆動器要素1自体もが、調整装置10の回転軸に沿った軸方向変位に対して固定される。これは、本発明に係る調整装置10の製造方法の第1方法ステップに対応する。これに引き続き、調整装置10の他方のコンポーネント及び/又は部材が取り付けられる。これは、本発明に係る調整装置10の製造方法の第2方法ステップに対応する。好ましくは、案内ブッシング2は、駆動器要素1に及び/又は第1若しくは第2継手4、9に接続及び/又は溶接される。その結果、調整装置10が軸方向に分解される方向に作用する力に対抗する調整装置10の挙動がさらに改善される。
【0043】
図14には、
図7、8及び9に示された本発明に係る調整装置10の変形例が、調整装置10を貫通する模式的な断面図で示される。この場合、前述の図と同じ参照番号が、調整装置10の同じコンポーネント及び/又は部材に適用される。
図9に示された本発明に係る調整装置10の変形例とは対照的に、
図14に係る変形例では、
図9に示された駆動器要素1のカラー1.1の代わりに、駆動器要素1の軸方向端1.2が、中心要素3の実質的に円形の溝及び/又は凹み3.1の中に突出する。その結果、径方向において中心要素3のアンダーカットが駆動器要素1に対してもたらされる。これにより、この変形例に係る調整装置10の荷重支承能力が増大され、さらには、特に駆動器要素1の端1.2の、駆動器要素のカラー1.1よりも小さくかつ軽量な設計により、重量、材料が節約され、及びコストが低減される。
図14に示される変形例ではさらに、中心要素3の駆動器要素1に対するアンダーカットの代替又は追加として、重なり領域5が、
図9に係る重なり領域5の設計よりも大きく及び/又は長く設けられる。特に、重なり領域5の軸方向の延びが、
図14に係る変形例の偏心器手段6の領域を超えるように設けられる。
【0044】
図10には、部分的に取り付けられた本発明に係る調整装置の斜視図が模式的に示される。調整装置の半体に対応するサブアセンブリの取り付けが完了した後、調整装置は、特許文献1に与えられた態様で、すなわち、例えばウェッジ、ばね、ギヤプレート8、及び第2継手9並びに案内ブッシングの形態にある偏心器手段6によって、組み付けられる。
【0045】
図11及び12には、完全に取り付けられた動力付きの本発明に係る調整装置10の2つの斜視図が模式的に示される。この場合、案内ブッシング2は、駆動器要素に及び/又は第1継手4若しくは第2継手9に溶接される。
【0046】
本発明によれば、特に好ましくは、調整装置10が、車両コンポーネントとして車両シートに設けられ、かつ、調整装置10が、バックレスト20に加えてシート部材30を含む車両シート40のバックレスト20の傾斜調整を目的として設けられる。これは、
図13に模式的に示されている。
【符号の説明】
【0047】
1 偏心器、駆動器要素
1.1 カラー
1.2 駆動器要素の軸方向端
2 偏心器手段、ウェッジ、案内ブッシング
3 駆動装置、中心要素
3.1 凹み/溝
4 駆動器、駆動ピン、第1継手
4’ 形状嵌め及び/又は圧力嵌め接続手段
4.1 継手要素
5 ピン(固定)、重なり領域
6 保持プレート、偏心器手段、ウェッジ
7 ブッシング、ばね
8 第1継手、バックレストアダプタ、ギヤプレート
9 ギヤホイール(内歯付き)、第2継手
10 ばね
11 第2継手、シート部材アダプタ
12 ギヤホイール(外歯付き)
13、14、15 支承シェル
16、17 閉止プレート
18 軸受
E 偏心度
P 接触点
r 駆動ピンの外半径
R ウェッジの内半径