(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5908060
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】マルチフィラメント糸に交絡部を形成する装置
(51)【国際特許分類】
D02J 1/00 20060101AFI20160412BHJP
D02J 1/08 20060101ALI20160412BHJP
【FI】
D02J1/00 L
D02J1/08
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-501526(P2014-501526)
(86)(22)【出願日】2012年3月19日
(65)【公表番号】特表2014-512461(P2014-512461A)
(43)【公表日】2014年5月22日
(86)【国際出願番号】EP2012054744
(87)【国際公開番号】WO2012130645
(87)【国際公開日】20121004
【審査請求日】2014年11月26日
(31)【優先権主張番号】102011015689.5
(32)【優先日】2011年3月31日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】307031976
【氏名又は名称】エーリコン テクスティル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Oerlikon Textile GmbH & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】クラウス マティース
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ヴェストファール
【審査官】
斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−092230(JP,A)
【文献】
米国特許第05056200(US,A)
【文献】
特表2014−503708(JP,A)
【文献】
特開平04−146231(JP,A)
【文献】
米国特許第05134840(US,A)
【文献】
特公昭36−012230(JP,B1)
【文献】
特公昭47−035323(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D02G 1/00 − 3/48
D02J 1/00 − 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチフィラメント糸に交絡部を形成する装置であって、処理通路(3)と、該処理通路(3)に開口するノズル孔(2)と、空気供給装置(5)とを備え、該空気供給装置(5)は、インパルス状の圧縮空気流を生ぜしめるために前記ノズル孔(2)と共働し、かつ前記空気供給装置(5)は、圧力源(9)に接続された圧力室(6)を有する、装置において、
容積アキュムレータ(7)が、前記圧力室(6)と前記圧力源(9)との間に配置されており、かつ前記容積アキュムレータ(7)は、前記圧力室(6)の室容積(V1)よりも大きなアキュムレータ容積(V2)を有することを特徴とする、マルチフィラメント糸に交絡部を形成する装置。
【請求項2】
前記容積アキュムレータ(7)の前記アキュムレータ容積(V2)は、前記圧力室(6)の前記室容積(V1)の20倍以上の大きさである、請求項1記載の装置。
【請求項3】
圧力調整器(8)が、前記圧力源(9)と前記容積アキュムレータ(7)との間に配置されている、請求項1又は2記載の装置。
【請求項4】
前記容積アキュムレータ(7)は、圧力容器(19)及び/又は管路部分(35)によって形成されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
前記圧力室(6)と前記容積アキュムレータ(7)とは、0.3mよりも短い長さを有する短い接続管路(18)によって接続されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の装置。
【請求項6】
前記空気供給装置(5)は、環状のガイド溝(17)を備えた回転するノズルリング(11)を有し、該ガイド溝(17)には前記ノズル孔(2)が開口しており、前記圧力室(6)は、室開口(10)を有し、該室開口(10)は、前記ノズルリング(11)の回転によって短時間、前記ノズル孔(2)に接続可能である、請求項1から5までのいずれか1項記載の装置。
【請求項7】
前記ノズルリング(11)には、前記ガイド溝(17)と糸(26)との間の接触領域においてカバー(4)が対応配設されていて、該カバー(4)によって前記処理通路(3)が形成されている、請求項6記載の装置。
【請求項8】
前記圧力室(6)は、円筒形のシール面(23)を備えたステータ(12)に形成されていて、該シール面(23)において前記室開口(10)が開口しており、圧縮空気伝達のために、前記ノズルリング(11)の滑り面(22)が、前記ステータ(12)の前記シール面(23)と共働する、請求項6又は7記載の装置。
【請求項9】
前記ノズルリング(11)は、端面に滑り面(22)を備えてディスク状に形成されていて、該滑り面(22)において前記ノズル孔(2)は軸方向で開口しており、前記圧力室(6)は、平らなシール面(23)を備えたステータ(12)に形成されていて、該シール面(23)に前記室開口(10)が開口しており、圧縮空気伝達のために、前記ノズルリング(11)の前記滑り面(22)は、前記ステータ(12)の前記シール面(23)と共働する、請求項6又は7記載の装置。
【請求項10】
前記空気供給装置(5)は、回転するロータ(31)を有し、該ロータ(31)は内部に前記圧力室(6)を形成し、かつ前記ロータ(31)は周囲において滑り面(22)に、室開口(10)を有しており、前記ノズル孔(2)と前記処理通路(3)とは、内側にシール面(23)を備えかつ前記ロータ(31)を取り囲むハウジング(33)に形成されており、この場合前記室開口(10)は、前記ロータ(31)の回転時に交互に前記ノズル孔(2)に接続可能である、請求項1から9までのいずれか1項記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載された、マルチフィラメント糸に交絡部を形成する装置に関する。
【0002】
このようなマルチフィラメント糸に交絡部を形成する装置は、US5134840に基づいて公知である。
【0003】
合成糸の製造時に、合成糸は、多数の個別のフィラメントストランドから形成され、これらのフィラメントストランドは、さらなる加工のために交絡結節点(Verflechtungsknoten)又は交絡部(Verwirbelung)によって結合されて糸結合体(Fadenschluss)に形成される。マルチフィラメント糸においてこのような糸結合体を生ぜしめるために、マルチフィラメント糸において交絡部を圧縮空気処理によって生ぜしめることが公知である。糸型式及びプロセスに応じて、単純な交絡部から結節部の発生に到るまで、この場合種々様々な処理方法を達成することができる。基本的には、糸の2種類の圧縮空気処理を区別することができる。1つの圧縮空気処理方法では、ノズル孔を介して処理通路内に連続的な圧縮空気流が生ぜしめられ、この圧縮空気流は、連続的に案内される糸に対して、ほぼ横方向に方向付けられている。しかしながら、このような方法及び装置には、基本的に、永続的な圧縮空気損失が生じるのみならず、糸における交絡部を強化するのに、比較的高い圧力が必要である。
【0004】
本発明の出発点となる第2の圧縮空気処理方法では、ノズル孔を介して処理通路内に、インパルス状の圧縮空気流が生ぜしめられる。そのためにノズル孔には、空気供給装置が対応配設されており、この空気供給装置は、ノズル孔と一緒に、処理通路内においてインパルス状の圧縮空気流を生ぜしめ、この圧縮空気流は、適宜な時間繰り返し糸に向けて噴射される。このような装置は、前記刊行物に基づいて公知である。そのために圧縮空気供給装置は、ノズル孔内に圧縮空気を供給するために使用される圧力室を有する。この圧力室は、圧力室に圧縮空気を導く圧力源に接続されている。圧力室は、中空円筒形のロータ内に組み込まれていて、このロータは周囲に複数の室開口を有する。これらの室開口は、ロータの回転時に交互にノズル孔に接続することができ、このノズル孔は、糸が案内されている処理通路に開口している。ロータの回転時に、室開口がノズル孔に連通している時間に、圧縮空気流がノズル孔を介してインパルス状に処理通路に導入される。
【0005】
公知の装置では、圧力室の内部において、インパルス状の圧力変動が発生し、これらの圧力変動は、伝播して、圧縮空気供給部における故障及び騒音の原因となる。他方において、インパルス状の圧縮空気流の発生時に生じる、圧力室内における圧力損失を、迅速に補償することが、保証されねばならない。さもないと、後続の圧縮空気流を等しい強さで生ぜしめることができなくなる。ゆえに公知の装置では、500m/分の範囲における比較的ゆっくりとした糸走行速度のためにしか適していない。
【0006】
ゆえに本発明の課題は、冒頭に述べた、マルチフィラメント糸に交絡部を形成する装置を改良して、2000m/分を上回る範囲における糸速度でも糸を処理することができる装置を提供することである。
【0007】
本発明の別の目的は、冒頭に述べた、マルチフィラメント糸に交絡部を形成する装置を改良して、高い運転圧に対しても、不都合もしくは故障のない圧縮空気供給部が保証されるようにすることである。
【0008】
前記課題を解決するために本発明の構成では、容積アキュムレータが、圧力室と圧力源との間に配置されており、かつ容積アキュムレータは、圧力室の室容積よりも大きなアキュムレータ容積を有するようにした。
【0009】
本発明の別の好適な態様は、従属請求項の特徴及び特徴の組合せによって確定されている。
【0010】
本発明による装置には、次のような特別な利点がある。すなわち本発明による装置では、運転時に発生する圧力インパルスを容積アキュムレータの内部において吸収し、かつ圧縮空気供給網に対して緩衝もしくは減衰することができる。さらに、インパルス状の圧縮空気流を生ぜしめるために比較的大きな空気流を利用することができ、このような空気流は、高い運転圧の場合にも、比較的僅かな圧力降下しか生ぜしめない。例えば、6〜10バールの範囲における高い運転圧の場合でも、極めて動的な圧縮空気流を、糸を交絡させるために生ぜしめることができる。
【0011】
一方では、ノズル孔を通って流れる圧縮空気流の発生時における高いダイナミズムを得るため、かつ他方では圧力インパルスの高い緩衝性を生ぜしめるために、本発明の好適な別の態様では、容積アキュムレータのアキュムレータ容積は、圧力室の室容積の数倍の大きさ、好ましくは前記室容積の20倍以上の大きさである。このように構成されていると、圧力室をコンパクトなユニットにおいて直に、ノズル孔に直接、対応配設させることができ、これによって、損失の少ない圧縮空気流を生ぜしめるための短い経路が可能になる。
【0012】
1つのプロセス中に、ほぼ一定の運転圧を維持できるようにするために、本発明の別の態様では、圧力調整器が、圧力源と容積アキュムレータとの間に配置されている。このように構成されていると、容積アキュムレータの内部における圧縮空気を、ほぼ一定の運転圧に保つことができる。この場合運転圧の高さは、主として、プロセス及び糸型式並びに糸番手によって決定される。通常、運転圧は圧力調整器によって、例えば2〜12バールの範囲に位置するほぼ一定の値に、調整することができる。
【0013】
交絡を目的とした糸における処理を実施する必要がある周囲もしくは環境の特性に応じて、容積アキュムレータは、好適に圧力容器及び/又は管路部分によって形成することができる。
【0014】
圧力室と容積アキュムレータとの間における接続は、この場合好適には、0.3mよりも短い長さを有する極めて短い接続管路によって行われ、このようにすると、インパルス状の圧縮空気流の発生時に惹起される、圧力室内部における圧力インパルスは、容積アキュムレータによって直に吸収することができる。
【0015】
ノズル孔内において生ぜしめられる、高い周波数のインパルス状の圧縮空気流を、相応に高い糸走行速度において生ぜしめることができるようにするために、本発明による装置の好適な態様では、空気供給装置は、環状のガイド溝を備えた回転するノズルリングを有し、該ガイド溝にはノズル孔が開口しており、圧力室は、室開口を有し、該室開口は、ノズルリングの回転によって短時間、ノズル孔に接続可能である。圧縮空気流を生ぜしめるための周波数は、例えばノズルリングの回転によって決定することができる。この場合ノズルリングは、糸摩擦によって又は外部駆動装置によって駆動することができる。
【0016】
処理通路を形成するために、ノズルリングには、ガイド溝と糸との間の接触領域においてカバーが対応配設されている。この場合接触領域は、ノズル孔が圧力室の室開口に接続されているノズルリング領域を確定する。このように構成されていると、カバーは同時に、交絡もしくは渦動を生ぜしめるのに必要な、処理通路内への空気ガイドを得るための、バッフルプレートを形成する。
【0017】
圧力室の形成に応じて、ノズルリングは、円筒形の滑り面を備えた中空円筒形状に、又は端面側に滑り面を備えたディスク形状に形成することができ、このような滑り面は、圧力室が室開口を備えて形成されている、ステータの対応するシール面と共働する。
【0018】
しかしながらまた、択一的に、空気供給装置を、定置に形成された処理通路と組み合わせることも可能である。この場合圧力室は、回転するロータの内部に形成されていて、このロータは周囲に室開口を有する。ロータは、円筒形のステータによって取り囲まれ、このステータは、1つの領域に、処理通路を組み込まれたノズル孔を有する。ステータは、内部に位置するシール面を有し、このシール面は、ロータの外側の滑り面と共働する。このような構成によっても、ノズル孔と圧力室との間における極めて短い距離を実現することができ、その結果インパルス状の圧縮空気流の発生時に僅かな圧力損失しか発生しない。そしてこれによって、高い動的な圧縮空気流を生ぜしめることができ、このような圧縮空気流は、マルチフィラメント糸において交絡結節点を形成するのに好適に使用することができる。
【0019】
本発明による装置は、マルチフィラメント糸において2000m/分を上回る糸速度で、多数の安定したかつ明確な交絡部及び交絡結節点を生ぜしめるのに、特に適している。
【0020】
次に図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】本発明による装置の第1の実施形態を概略的に示す縦断面図である。
【
図3】
図2に示した実施形態を概略的に示す横断面図である。
【
図4】本発明による装置の別の実施形態を概略的に示す縦断面図である。
【
図5】本発明による装置のさらに別の実施形態を概略的に示す縦断面図である。
【0022】
図1には、マルチフィラメント糸において交絡部(Verwirbelung)を生ぜしめる本発明による装置が概略的に示されている。この場合糸の処理は、ノズル保持体1とカバー4との間に形成された処理通路3の内部において行われる。ノズル保持体1にはノズル孔2が設けられており、このノズル孔2は一方の端部で処理通路3に開口し、かつ他方の端部で空気供給装置5に接続されている。ここでは詳しく示されていない空気供給装置5については、下記の実施形態においてさらに詳しく説明する。
【0023】
空気供給装置5には、圧力室6及び容積アキュムレータ7が対応して配設されている。圧力室6は、
図1に符号V
1で示した室容積を有する。これに対して容積アキュムレータ7は、
図1において符号V
2で示した大幅に大きなアキュムレータ容積を有する。
【0024】
容積アキュムレータ7は、入口側において圧力調整器8を介して圧力源9に接続されている。
【0025】
運転時に圧力源9は作動させられ、これによって容積アキュムレータ7及び圧力室6は圧縮空気によって満たされる。この場合圧力調整器8は、予め設定された運転圧が容積アキュムレータ7及び圧力室6において保たれることを、保証する。
【0026】
処理通路3を通して導かれる糸を、インパルス状の圧縮空気流によって繰り返し処理するために、空気供給装置5を介して短時間、ノズル孔2と圧力室6との間における接続が形成される。この場合、ノズル孔2の開放時間中に、インパルス状の圧縮空気流が生ぜしめられ、糸処理のための処理通路3内に導入される。僅かな損失と短い反応時間とを得るために、圧力室6は好ましくは、ノズル孔2の直ぐ近くに配置されている。特定の周波数で生ぜしめられる圧縮空気流は、圧力室6の内部において圧力インパルスを生ぜしめ、この圧力インパルスは、容積アキュムレータ7へと戻され、そこで、著しく大きなアキュムレータ容積に基づいて十分に緩衝され、その結果、容積アキュムレータ7の入口側においては、圧力インパルスはほとんど又は僅かにしか認識できなくなる。
【0027】
本発明による装置では、例えば2〜12バールの範囲における通常の運転正圧において十分な緩衝作用を得るためには、室容積V
1とアキュムレータ容積V
2とは最小比を有することが望ましいということが、判明している。特にこの場合、2000m/分を上回る高い糸走行速度において糸における交絡ポイントの高い密度を生ぜしめることができるようにするためには、圧力室6の室容積V
1は特定の大きさを有する必要がある、ということを考慮しなければならない。そこで、圧縮空気流の発生後に圧力室6における運転圧は、可能な限り、次の圧縮空気流の得られる前に、その初期値に達していることが必要である。例えば、アキュムレータ容積と室容積との間においてV
2/V
1≧20の比が存在していると好ましいことが、判明している。従って、容積アキュムレータ7のアキュムレータ容積V
2は、圧力室6の室容積V
1よりも数倍大きい。
【0028】
合成糸において多数の交絡結節点(Verflechtungsknoten)を、比較的高い糸速度で生ぜしめるために、本発明による装置は好ましくは
図2及び
図3に示された実施形態のように形成されている。
図2には、実施形態が縦断面図で示され、
図3には実施形態が横断面図で示されている。
【0029】
以下において、図面のうちの1つを特に指定していない場合には、下記の記載は両方の図面に対応するものである。
【0030】
マルチフィラメント糸において交絡を生ぜしめる本発明による装置の実施形態では、空気供給装置5が設けられており、この空気供給装置5は、ノズル保持体として、回転するノズルリング11を有し、このノズルリング11は、リング形状に形成されていて、周囲に環状のガイド溝17を有する。このガイド溝17の溝底部には、複数のノズル孔2が開口しており、これらのノズル孔2は、ノズルリング11の周囲にわたって均一に分配して形成されている。ノズル孔2はノズルリング11を、内側の滑り面22に到るまで貫通している。
【0031】
ノズルリング11は、端面に形成された端壁14と、この端壁14において中心に配置されたボス15とを介して、駆動軸16に結合されている。ボス15はそのために駆動軸16の自由端部に固定されている。
【0032】
ノズルリング11の円筒形の内側の滑り面22は、ステータ12のガイド区分において周壁形状に案内されており、ステータ12のガイド区分は、滑り面22に向かい合って位置する円筒形のシール面23を形成する。ステータ12は、円筒形のシール面23の周囲において、1つのポジションに、室開口10を有し、この室開口10は、ステータ2の内部に形成された圧力室6に接続されている。この圧力室6は、接続管路18を介して容積アキュムレータ7に接続されていて、この容積アキュムレータ7はこの実施形態では、圧力容器19として形成されている。この場合圧力室6と圧力容器19との間における接続管路18は、両方の容積を直に共働させるために、極めて短く形成されている。接続管路18はこの場合好ましくは、0.3mよりも短い長さで形成されている。
【0033】
ステータ12における室開口10とノズルリング11におけるノズル孔2とは、一平面内に位置するように形成されており、その結果ノズルリング11の回転によって、ノズル孔2は、室開口10の領域内へ案内される。そのために室開口10は、長孔として形成されていて、周方向において、ノズル孔2の長い案内領域にわたって延在する。これによって室開口10の大きさはノズル孔2の開放時間を決定し、この開放時間中に、圧縮空気インパルスを生ぜしめる。ノズルリング11の滑り面22及びステータ12のシール面23は、圧力室6における圧力損失を回避するために、シール間隙を形成する。
【0034】
ステータ12は保持体13に保持されていて、円筒形のシール面23に対して同心的に形成された真ん中の軸受孔24を有する。この軸受孔24の内部には、駆動軸16が軸受32によって回転可能に支持されている。
【0035】
駆動軸16は一端で電動機25に連結されていて、この電動機25によってノズルリング11は、予め設定された周速度で駆動可能である。そのために電動機25は、ステータ12の側部に配置されている。
【0036】
図2から分かるように、ノズルリング11には周囲にカバー4が対応配設されており、このカバー4は、旋回軸を介して保持体13に可動に保持されている。このような構成の代わりに、糸を当て付けるためにカバー4とノズルリング11との間に挿入スリットが形成されている場合には、カバー4は、位置固定に保持されていてもよい。
【0037】
図3から分かるように、カバー4はノズルリング11の周囲において、内部にステータ12の室開口10を包含する領域にわたって、延在する。カバー4は、ノズルリング11に向いた側に、処理通路3を形成するためのガイド溝17を覆う適合されたカバー面を有する。処理通路3の内部において糸26は、ノズルリング11の周囲におけるガイド溝17内において案内される。そのためにノズルリング11には供給側に、走入糸ガイド20が配置され、走出側には走出糸ガイド21が配置されている。これによって糸26を、走入糸ガイド20と走出糸ガイド21との間で、接触領域においてノズルリング11に部分巻き掛けして案内することができる。
【0038】
図2及び
図3に示した実施形態では、マルチフィラメント糸26において交絡部を生ぜしめるために、圧縮空気が圧力室6を介して圧力容器19から提供される。糸26をガイド溝17内において案内するノズルリング11は、ノズル孔2が室開口10の領域に達するや否や、連続的な圧縮空気インパルスを生ぜしめる。この場合圧力インパルスは、マルチフィラメント糸26において局部的な渦動もしくは交絡を生ぜしめ、これによって糸においては複数の交絡結節点(Verwirbelungsknoten)が形成される。この場合圧力室6の室容積及び圧力容器19の貯え容積は、その都度のプロセス、及びその都度必要な運転圧に合わせられている。そのために圧力容器19には、同様に、入口側に図示されていない調圧器が対応配設されている。
【0039】
図4には、択一的な構成を有する空気供給装置5を備えた本発明による装置の別の実施形態が、縦断面図で略示されている。この場合ノズル保持体は同様に、回転するノズルリング11によって形成され、このノズルリング11は、ディスク状に成形されていて、周囲にガイド溝17を有し、このガイド溝17は半径方向においてノズルリング11を取り囲む。ガイド溝17の溝底部には、複数のノズル孔2が開口する。ノズルリング11に形成されたノズル孔2は、それぞれ2つのノズル孔部分を有し、この場合第1の孔部分は、半径方向に方向付けられていて、ガイド溝17の溝底部に開口し、かつ第2の孔部分は、軸方向に方向付けられていて、ノズルリング11の端面28において開口する。ノズルリング11の端面28には、滑り面22が形成されており、この滑り面22にノズル孔2が開口する。ノズルリング11の上側領域には、位置固定のステータ12が保持されていて、このステータ12は平らなシール面23で、シール間隙を介して、ノズルリング11の端面側の滑り面22に対して保持されている。ステータ12の内部には、圧力室6が形成されていて、この圧力室6は、接続管路18を介して容積アキュムレータ7に連結されている。この実施形態では、容積アキュムレータ7は、大きな流過横断面を備えた管路部分35によって形成されている。この管路部分35は、入口側において、図示されていない圧力調整器及び圧力源に接続されている。
【0040】
ステータ12の平らなシール面23には、圧力室6に通じる出口である室開口10が形成されている。室開口10はこの場合、ノズルリング11の回転時にノズル孔2の開放時間を決定する開放角にわたって延在している。
【0041】
ステータ12の上において、ノズルリング11には可動のカバー4が対応配設されており、このカバー4は、カバー位置と図示されていない開放された位置との間において往復案内可能である。カバー4はノズルリング11と共に処理通路3を形成し、この処理通路3内を糸が案内されている。
【0042】
ノズルリング11は、中心に配置された保持孔29でジャーナル30の周囲に保持される。このジャーナル30は、図示されていない機械フレームに回転可能に支持されている。
【0043】
本発明による装置の、
図4に示した実施形態の機能は、
図2及び
図3に示した既に述べた実施形態と同じであるので、機能については既に述べた記載を参照することにして、ここでの説明は省く。
【0044】
図5には、択一的な別の構成を有する空気供給装置5を備えた、本発明による装置の別の実施形態が示されている。
図5の実施形態は、概略的に縦断面図で示されている。
【0045】
この場合ノズル孔2への圧縮空気の供給は、回転可能に支持されたロータ31を通して行われ、このロータ31は、中空円筒形に形成されていて、内部に圧力室6を形成している。ロータ31は周囲に円筒形の滑り面22を有し、この滑り面22は、ハウジング33の、向かい合って位置するシール面23と共働する。ハウジング33は、周囲区分に、接線方向に延びるガイド溝17を有し、このガイド溝17の溝底部には、ノズル孔2が開口する。ノズル孔2はハウジング33を貫通して内側のシール面23にまで達する。
【0046】
ノズル孔2の位置する平面においてロータ31は、周囲に、分配配置された複数の室開口10を有し、これらの室開口10は、ロータ31の回転時に交互にノズル孔2に接続される。
【0047】
ノズル孔2に接続された室開口10は、ハウジング33のシール面23によってシールされている。
【0048】
ハウジング33におけるガイド溝17には、カバー4が対応配設されており、このカバー4によって処理通路3が形成されている。これによって処理通路3の内部において糸が案内され、この糸は、ノズル孔2においてインパルス状に生ぜしめられる圧縮空気流によって渦動させられる。カバー4はこの実施形態においても、プロセス開始前における糸の挿入を可能にするために、可動に形成されている。
【0049】
既に上述の実施形態において述べたように、この実施形態においても圧力室6は、容積アキュムレータ7に接続されている。そのためにロータ31は、中空円筒形の駆動軸27を有し、この駆動軸27は、軸受32に回転可能に支持されていて、図示されていない駆動装置と連結されている。一端において駆動軸27は、空気接続部34を介して圧力容器19に接続されている。そして空気接続部34は回転伝達器を有するので、圧縮空気を中空軸27の内部に導入することができる。
【0050】
従って本発明による装置の、
図5に示した実施形態は、ノズル孔においてインパルス状の圧力空気流を生ぜしめるために、可能な空気供給装置の別の構造形態を示す。ここに示した実施形態すべてにおいて、圧力室6が圧力インパルスを生ぜしめるためにノズル孔2に直に対応配設されていることは、共通である。この場合、処理通路と圧力室との間における極めて短い距離が実現され、その結果極めて強力かつ明確な糸処理が可能になる。
【0051】
ここでさらに付言しておくと、本発明は、空気供給装置5の、図示されていない同様な又は択一的な構造変化態様をも包含する。例えば、ノズル孔への圧縮空気のインパルス状の放出は、弁制御装置によって行うことも可能である。
【0052】
さらに図示の実施形態では、糸を処理するために各1つの処理通路が示されている。基本的には図示の装置は、複数の糸を平行に並べて処理するためにも、好適に使用することができる。そのために、各処理通路に、1つの容積アキュムレータ7に共通に接続された複数の圧力室のうちの1つの圧力室を個別に対応配置させることも可能である。しかしながらまた、複数の処理室を互いに並べて、1つの圧力室から圧縮空気を供給することも可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 ノズル保持体
2 ノズル孔
3 処理通路
4 カバー
5 空気供給装置
6 圧力室
7 容積アキュムレータ
8 圧力調整器
9 圧力源
10 室開口
11 ノズルリング
12 ステータ
13 保持体
14 端壁
15 ボス
16 駆動軸
17 ガイド溝
18 接続管路
19 圧力容器
20 走入糸ガイド
21 走出糸ガイド
22 滑り面
23 シール面
24 軸受孔
25 電動機
26 糸
27 放圧溝
28 端面
29 保持孔
30 ジャーナル
31 ロータ
32 軸受
33 ハウジング
34 空気接続部
35 管路部分