(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した従来のガスタービンでは、下記の課題があった。
すなわち、翼環と、その外部に延びる外部流路との間には、互いの温度差による熱伸び差が生じる。これにより、外部流路の翼環への固定部などに高い熱応力が発生する。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、翼環とその外部流路との熱伸び差による熱応力を緩和できるガスタービンを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提案している。
すなわち、本発明の第一態様に係るガスタービンは、タービン軸に直交する径方向の外側から動翼に対向する翼環と、前記翼環に設けられ、内部に冷却媒体が流通する流路と、
前記翼環のタービン軸方向の上流側に配置された燃焼器の位置に対応して、前記翼環に設けられ、前記燃焼器へ冷却媒体を受け渡す接続口を有するポートと、を備え、前記流路は、前記翼環内に形成された内部流路と、前記内部流路に連結されて前記翼環の外部に配設されるとともに、該翼環の周方向に延びる管状の外部流路と、を備え、
前記内部流路は、供給系統を形成し、前記燃焼器へ冷却媒体を供給する前記接続口に接続する第1の内部流路と、排出系統を形成し、前記燃焼器から冷却媒体を受け入れる前記接続口に接続し、前記第1の内部流路より全長が短い第2の内部流路と、を備え、前記外部流路は、前記翼環に固定される複数の固定部と、前記周方向に隣り合う前記固定部同士の間に配置されて、前記周方向に伸縮可能な熱応力吸収部と、
供給系統をなす第1の外部流路と、前記第1の外部流路のタービン軸方向に隣接し、排出系統をなす第2の外部流路と、を備え、前記第1の外部流路は、前記第1の外部流路の前記周方向に沿って延びる管部と、前記第1の外部流路の前記周方向に沿って延びる管部から分岐して、前記径方向の内側に延び、前記固定部を介して前記第1の内部流路に接続する複数の管部と、を有し、前記第2の外部流路は、前記第2の外部流路の前記周方向に沿って延びる管部と、前記第2の外部流路の前記周方向に沿って延びる管部から分岐して、前記径方向の内側に延び、前記固定部を介して前記第2の内部流路に接続する複数の管部と、を有する。
【0009】
本発明の第一態様に係るガスタービンでは、流路に冷却蒸気等の冷却媒体を流通させることにより翼環を冷却して、該翼環の径方向外側へ向けた熱膨張を抑制している。これにより、運転時における翼環と動翼先端とのクリアランスの増大が抑制されて、ガスタービンの性能が安定して維持される。
尚、冷却媒体は、内部流路を流通することにより熱交換されて翼環を冷却する。この熱交換により高温となった冷却媒体は、翼環の温度を上昇させないように、外部流路を通って回収される。
【0010】
本発明の第一態様に係るガスタービンによれば、外部流路が、その周方向に隣り合う固定部同士の間に、周方向に伸縮可能とされた熱応力吸収部を備えているので、下記の効果を奏する。
すなわち、翼環と、その外部に配設されて周方向に延在する外部流路との間に、互いの温度差による熱伸び差が生じても、熱応力吸収部が伸縮することでこの熱伸び差を吸収でき、熱応力が低減される。
これにより、流路(例えば外部流路の固定部など)の変形や破損が防止されるので、ガスタービンの性能を安定して高めることができる。
【0011】
上記ガスタービンの前記熱応力吸収部は、ベローズ管であってもよい。
【0012】
この場合、熱応力吸収部を簡単に作製できる。
【0013】
上記ガスタービンの前記熱応力吸収部は、前記周方向に交差する向きに折り返されるように曲げられた管であってもよい。
【0014】
この場合、翼環と、その外部に配設されて周方向に延在する外部流路との間に、互いの温度差による熱伸び差が生じても、周方向に交差する向きに折り返されるように曲げられた管が周方向に撓むことによって(つまり熱応力吸収部として周方向に伸縮することによって)、この熱応力が低減される。
従って、熱応力吸収部の性能を確保しつつ、作製費用を削減できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のガスタービンによれば、翼環とその外部流路との熱伸び差による熱応力を緩和できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
本発明の実施形態に係るガスタービンは、圧縮機において生成された圧縮空気を、燃焼器において燃料と混合して燃焼し、高温・高圧の燃焼ガスを生成する。そして、この燃焼ガスをタービンへ流入させることによって、タービンのロータをタービン軸C回りに回転させ、回転動力を得る。
タービンには、タービン軸Cに同軸とされた環状の翼環1が、タービン軸C方向に複数配設されている。翼環1は、静翼を径方向外側から支持している。翼環1は、該静翼のタービン軸C方向に隣り合う動翼先端との間に隙間(クリアランス)をあけて、該動翼に径方向外側から対向している。
尚、本明細書では、タービン軸C方向に沿う燃焼器の圧縮機側を上流側といい、燃焼器のタービン側を下流側という。タービン軸C方向に直交する方向を径方向といい、タービン軸C回りに周回する方向を周方向という。
以下、本発明の第1実施形態に係るガスタービンについて、図面を参照して説明する。
【0018】
本実施形態のガスタービンは、冷却媒体の一例として冷却蒸気を用いて翼環1を冷却するガスタービンである。ガスタービンは、前述した翼環1と、翼環1に設けられ、内部に冷却蒸気が流通する流路2と、を備えている。
翼環1は、半円環状の分割体が一対組み合わされて、全体として円環状をなしている。
翼環1の外周面には、筒状の蒸気供給部1a及び蒸気排出部1bが、その軸を径方向に向けるように突設されている。
【0019】
冷却蒸気は、蒸気タービンボトミング系から蒸気供給部1aを通して流路2に供給される。この冷却蒸気は、翼環1を冷却した後、蒸気排出部1bから蒸気タービンボトミング系に戻される。
尚、本実施形態の翼環1は、燃焼器に接近配置される第1段動翼に対向する翼環1である。冷却蒸気は、翼環1を冷却した後、さらに燃焼器の流路に流通されて該燃焼器を冷却する。その後、冷却蒸気は、再び翼環1の流路2から蒸気タービンボトミング系に戻される。
【0020】
図1に、翼環用冷却蒸気の系統図を示す。
図1では、半円環状の上半部翼環1mの冷却系統を示している。下半部翼環1nの系統の説明は省略しているが、上半部翼環1mと同様な系統を備えている。上半部翼環1mと下半部翼環1nが一体化されて、一つの翼環1が形成されている。
【0021】
図1において、冷却蒸気は、蒸気ボトミング系20から翼環1の冷却媒体として上半部翼環1mに設けられた蒸気供給部1aに供給される。一方、翼環1を冷却後の冷却蒸気は、翼環1に設けられた蒸気排出部1bから蒸気ボトミング系20に戻される。なお、以下に述べる流路2の符号は、蒸気供給系統は符号2Aを付し、蒸気戻り系統(蒸気排出系統)は符号2Bを付して区分けしている。
【0022】
翼環1に供給された冷却蒸気は、翼環1を冷却後、燃焼器を冷却して一旦翼環1に戻され、蒸気排出部1bから蒸気ボトミング系20に排出される。翼環1には、それぞれの対応する燃焼器との冷却蒸気の受け渡しのため、翼環1に一体に形成されたポート5が各燃焼器の位置に対応して設けられている。各ポート5は、燃焼器へ冷却蒸気を送り出す接続口5Aと燃焼器から戻る冷却蒸気を受け入れる接続口5Bを備えている。なお、
図1に示す例では、上半部翼環1mに対して燃焼器を8基配置した例を示しているが、この例に限定されるものではない。
【0023】
図1において、蒸気供給部1aから上半部翼環1mに供給された冷却蒸気は、2系統に分かれて流路2Aを流れる。そして冷却蒸気は、翼環1mを冷却しつつポート5に供給され、接続口5Aから燃焼器に供給される。燃焼器を冷却後の冷却蒸気は、ポート5の接続口5Bから上半部翼環1m内に供給され、流路2Bを経て蒸気排出部1bに戻される。
【0024】
蒸気供給部1aからポート5の接続口5Aに冷却蒸気を供給する流路2Aは、後述する流路4A、6A及び7Aを有している。ポート5の接続口5Bから蒸気排出部1bに排出される燃焼器からの戻り冷却蒸気が流れる流路2Bは、後述する流路4B、6Bおよび流路7Bを有している。
【0025】
流路2Aおよび流路2Bのうち、翼環1の外部に配置される管状の外部流路(6A、6B、7A、7B)は実線で示される。外部流路と各ポート5の接続口5A、5Bの間の翼環1内部には、破線で示される内部流路4(4A、4B)が設けられ、冷却蒸気により翼環1が冷却される。なお、
図1に示す外部流路および内部流路の区分けおよび組合せは一例であり、この例に限定されるものではない。
【0026】
次に、
図2〜
図7を用いて、冷却媒体で翼環を冷却する流路の構成の詳細を、以下に説明する。流路2A、2Bは、翼環1内に形成された内部流路4A、4Bと、内部流路4A、4Bに連結されて翼環1の外部に配設されるとともに、該翼環1の周方向に延びる管状の外部流路6A、6B、7A、7Bと、を備えている。
【0027】
図2において、翼環1のタービン軸C方向の上流側を向く端面1cには、それぞれの燃焼器に対向する位置に、燃焼器との冷却蒸気を受け渡す配管の接続口5A、5Bを備えるポート5が配置されている。接続口5Aは、内部流路4Aから燃焼器の流路に向けて冷却蒸気を供給する。接続口5Bは、接続口5Aから燃焼器に供給され、熱交換後の蒸気を燃焼器の流路から内部流路4Bに回収する。接続口5A、5Bは周方向に隣り合って開口されている。接近して隣り合う接続口5A、5Bの対は、これら接続口5A、5Bに対向する燃焼器の流路の両端部に連結される。
【0028】
図2において、内部流路4は、翼環1内に周方向に間隔をあけて複数形成されている。
具体的に、内部流路4(4A、4B)は、第1の内部流路4Aと第2の内部流路4Bを備えている。第1の内部流路4Aは、翼環1及び燃焼器を冷却する蒸気が流通する蒸気供給系統である。第二の内部流路4Bは、燃焼器から回収された熱交換後の蒸気が流通する蒸気排出系統である。図示の例では、これら第1、第2の内部流路4A、4Bが、周方向に交互に配置されている。具体的には、半円環状をなす翼環1の分割体(上半部翼環1m、下半部翼環1n)内に、周方向に配列される燃焼器の位置に対応して、8対の内部流路4A、4Bが形成されている。
【0029】
第1の内部流路4Aは、タービン軸C方向に延びる流路部分41Aと周方向に延びる流路部分42Aとが連なって形成されているとともに、翼環1内においてU字状に湾曲させられるように延びている。
図2の例では、第1の内部流路4Aは、翼環1においてタービン軸C方向の上流側(
図2の紙面に垂直な方向のうち、手前側)を向く端面1cから、タービン軸C方向の下流側(
図2の紙面に垂直な方向のうち、奥側)へ向けて延びた後、周方向に曲げられ、さらに折り返されるように上流側へ向けて延びている(翼環1におけるタービン軸C方向の上流側、下流側については、
図3を参照)。
【0030】
図2において、第1の内部流路4Aのうち、前記タービン軸C方向に延びる流路部分41Aは、各第1の内部流路4Aにおいて周方向に離間して一対ずつ形成されている。これら流路部分41Aはいずれも翼環1の端面1cに開口されている接続口5Aに接続する。一対の流路部分41Aのうち、一方の流路部分41A(
図2では右側の流路部分41A)の端面1cへの開口部は、後述する第1の外部流路(6A、7A)の固定部16Aに連結されている。その後流側に配置される他方の流路部分41A(
図2では左側の流路部分41A)の端面1cへの開口部が、接続口5Aとされている。これら流路部分41Aは、
図2に破線で示されるように、タービン軸C方向に沿って互いに平行に延びている。
【0031】
図2において、第1の内部流路4Aのうち、前記周方向に延びる流路部分42Aは、各第1の内部流路4Aにおける一対の流路部分41Aのタービン軸C方向の下流側の端部同士を連結して、直線状又は曲線状に延びている。流路部分42Aは、前記一対の流路部分41Aに対応して、翼環1の本体内に形成され、両端は流路41Aに連結している。
図2において、内部流路4(4A、4B)のうち、第1の内部流路4Aは、前述したようにその全長が長く確保されるように形成されている。第2の内部流路4Bは、その全長が極力短くなるように形成されている。
【0032】
図4において、蒸気供給系統の外部流路(第1の外部流路)は、翼環1の径方向外側に配設されるとともに、管部6Aと管部7Aとを備えている。管部6Aは、周方向に沿って延びている。管部7Aは、管部6Aから分岐して径方向に沿って延びるとともに、その端部が翼環1の第1の内部流路4Aに連結する。
【0033】
同様に、
図5において、蒸気排出系統の外部流路(第2の外部流路)は、翼環1の径方向外側に配設されるとともに、管部6Bと管部7Bとを備えている。管部6Bは、周方向に沿って延びている。管部7Bは、管部6Bから分岐して径方向に沿って延びるとともに、その端部が翼環1の第2の内部流路4Bに連結する。
【0034】
管部6Aは、蒸気供給部1aに連結されており、図示の例では、該蒸気供給部1aを挟む周方向の両側に、管部6Aが一対設けられている。管部6Aの管径(内径)は、蒸気供給部1aとの連結部分が最も太くされている。管部6Aの管径は、蒸気供給部1aから離間するに従い段階的に小さくなるように(管部7Aとの分岐部分を越えるごとに段階的に小さくなるように)設定されている。
【0035】
図2及び
図4において、管部7Aの径方向内側の端部16Aは、翼環1においてタービン軸C方向の上流側を向く端面1cに固定支持されている。管部7Aの前記端部16Aは、第1の外部流路を翼環1に固定する固定部となっている。
管部6Aにおける蒸気供給部1aとの連結端13Aも、第1の外部流路を翼環1に固定する固定部となっている。
一対の管部6Aのうち一方(
図4において蒸気供給部1aの右側に位置するもの)は、該一方の管部6Aにおける周方向の両端部のうち、蒸気供給部1aとは反対側の端部14Aが、管部7Aを介さずに直接翼環1の外周面に固定されている。当該端部14Aも、第1の外部流路を翼環1に固定する固定部となっている。
【0036】
第1の外部流路の固定部は、翼環1側に設けられる固定部と分岐配管継手12Aと、湾曲配管継手15Aとを備えている。分岐配管継手12Aは、管部6Aから管部7Aに流路を分岐する。湾曲配管継手15Aは、管部6Aから管部7Aに流路の向きを変える。
図4において、前記翼環1側に設けられる固定部とは、前述した連結端13A及び端部14Aである。前記分岐配管継手12Aは、管部6Aと管部7AとをT字状に連結しており、その管部7Aの径方向内側の端部16Aが翼環1に固定されている。前記湾曲配管継手15Aは、
図4の左端部に示されて管部6Aと管部7AとをL字状に連結しており、その管部7Aの径方向内側の端部16Aが翼環1に固定されている。なお、蒸気供給系統のこれら固定部の形状や配置等は一例であり、この例に限定されるものではない。
【0037】
そして、第1の外部流路(6A、7A)は、周方向に隣り合う固定部同士の間に配置されて、周方向に伸縮可能な熱応力吸収部8Aを備えている。熱応力吸収部8Aは、管部6Aに設けられており、翼環1に固定される固定部、分岐配管継手12Aおよび湾曲配管継手15Aのいずれかに挟まれた中間部分に配置されている。
【0038】
本実施形態の熱応力吸収部8Aは、管の周壁が管の径方向に複数折り返された蛇腹構造をなしている。熱応力吸収部8Aとしては、翼環1の周方向に伸縮可能とされたベローズ管(フレキシブルチューブ)を用いることができる。ベローズ管の管径は、配置される管部6A部分の管径に応じてそれぞれ設定されており、蒸気供給部1aに近いものが最も大きく、該蒸気供給部1aから離間されていくに従い、管部6Aの管径に応じて段階的に小さくなっている。
【0039】
図5に示されるように、第2の外部流路(6B、7B)は翼環1に複数配置され、管部6Bと管部7Bとを備えている。管部6Bは、翼環1の径方向外側に配設されるとともに、周方向に沿って延びている。管部7Bは、径方向に沿って延びるとともに、その両端部が管部6Bと翼環1の第2の内部流路4Bとに連結される。
図3において、第2の外部流路(6B、7B)は、第1の外部流路(6A、7A)のタービン軸C方向の下流側(
図3における上側)に隣接するように配設されている。
【0040】
図5に示されるように、管部6Bは、蒸気排出部1bに連結されており、図示の例では、一対の蒸気排出部1bをそれぞれ挟む周方向の両側に、管部6Bが一対ずつ設けられている。管部6Bの管径(内径)は、蒸気排出部1bとの連結部分が最も太くされており、該蒸気排出部1bから離間するに従い段階的に小さくなるように(具体的には、管部7Bとの分岐部分を越えるごとに段階的に小さくなるように)設定されている。
【0041】
図5において、管部7Bの径方向内側の端部16Bは、翼環1の外周面に固定支持されている。管部7Bの前記端部16Bは、第2の外部流路を翼環1に固定する固定部となっている。
管部6Bにおける蒸気排出部1bとの連結端13Bも、第2の外部流路を翼環1に固定する固定部となっている。
管部6Bにおける周方向の両端部のうち、蒸気排出部1bとは反対側の端部14Bは、管部7Bを介さずに直接翼環1の外周面に固定されている。端部14Bも、第2の外部流路を翼環1に固定する固定部となっている。
【0042】
第2の外部流路の固定部は、翼環1側に設けられる固定部と分岐配管継手12Bとを備えている。分岐配管継手12Bは、管部6Bから管部7Bに流路を分岐する。
図5において、前記翼環1側に設けられる固定部とは、前述した連結端13B及び端部14Bである。前記分岐配管継手12Bは、管部6Bと管部7BとをT字状に連結しており、その管部7Bの径方向内側の端部16Bが翼環1に固定されている。なお、蒸気排出系統のこれら固定部の形状や配置等は一例であり、この例に限定されるものではない。
【0043】
そして、第2の外部流路(6B、7B)は、周方向に隣り合う固定部同士の間に配置されて、周方向に伸縮可能な熱応力吸収部8Bを備えている。熱応力吸収部8Bは、管部6Bに設けられており、翼環1に固定される固定部および分岐配管継手12Bに挟まれた中間部分に配置されている。
【0044】
本実施形態の熱応力吸収部8Bも、前述した熱応力吸収部8Aと同様の構成とされたベローズ管を用いることができる。ベローズ管の管径は、配置される管部6B部分の管径に応じてそれぞれ設定されており、蒸気排出部1bに近いものが最も大きく、該蒸気排出部1bから離間されていくに従い、管部6Bの管径に応じて段階的に小さくなっている。
【0045】
以上説明した本実施形態のガスタービンでは、流路2に冷却蒸気を流通させることにより翼環1を冷却して、該翼環1の径方向外側へ向けた熱膨張を抑制している。これにより、運転時における翼環1と動翼先端とのクリアランスの増大が抑制されて、ガスタービンの性能が安定して維持される。
尚、
図4において冷却蒸気は、まず、蒸気供給部1aから第1の外部流路6Aを通り、分岐配管継手12Aまたは湾曲配管継手15Aを介して管部7Aに流れる。次いで第1の内部流路4Aに連通することにより熱交換されて翼環1を冷却する。なお、管部6Aの端部14Aにおいては、管部7Aを通ることなく冷却蒸気が第1の内部流路4Aに連通している。冷却蒸気は、さらに燃焼器の流路に流通して熱交換されることにより、燃焼器を冷却する。熱交換により高温となった冷却蒸気は、燃焼器から翼環1に戻される。冷却蒸気は、翼環1の温度を上昇させないように、
図5に示される全長の短い第2の内部流路4Bを通り、管部7Bを流れて分岐配管継手12Bで他の系統からの蒸気と合流して、第2の外部流路6Bを通って、蒸気排出部1bから回収される。なお、管部6Bの端部14Bにおいては、管部7Bを通ることなく冷却蒸気が他の系統からの蒸気と合流している。
このような冷却蒸気の流通により、運転時には、第1の外部流路(6A、7A)、翼環1、第2の外部流路(6B、7B)の順で、温度が高くなる(つまり外部流路6Bの温度が最も高い)。
【0046】
本実施形態のガスタービンによれば、外部流路(6A、6B、7A、7B)が、その周方向に隣り合う固定部同士の間に、周方向に伸縮可能とされた熱応力吸収部8A、8Bを備えているので、下記の効果を奏する。
すなわち、翼環1と、その外部に配設されて周方向に延在する外部流路(6A、6B、7A、7B)との間に、互いの温度差による熱伸び差が生じても、熱応力吸収部8A、8Bが伸縮することでこの熱伸び差を吸収でき、熱応力が低減される。
これにより、流路2(例えば外部流路(6A、6B、7A、7B)の固定部など)の変形や破損が防止されるので、ガスタービンの性能を安定して高めることができる。
【0047】
第1の外部流路(6A、7A)においては、該流路(6A、7A)より高温となる翼環1との熱伸び差によって、周方向に伸長させられる向きの熱応力が発生することが考えられる。これに対して本実施形態のガスタービンでは、該第1の外部流路(6A、7A)に設けられた熱応力吸収部8Aが周方向に伸長することにより、この熱応力が低減される。
【0048】
第2の外部流路(6B、7B)においては、翼環1より該流路(6B、7B)が高温となることによる熱伸び差によって、周方向に収縮させられる向きの熱応力が発生することが考えられる。これに対して本実施形態のガスタービンでは、該第2の外部流路(6B、7B)に設けられた熱応力吸収部8Bが周方向に収縮することにより、この熱応力が低減される。
【0049】
そして、本実施形態では、熱応力吸収部8A、8Bをベローズ管で形成しているので、これら熱応力吸収部8A、8Bを簡単に作製できる。
【0050】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係るガスタービンについて、図面を参照して説明する。
尚、前述の実施形態で説明したものと同一の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。なお、
図1に示す冷却媒体の系統の考え方は、本実施形態にも適用可能である。
【0051】
図6及び
図7に示されるように、本実施形態では、第1実施形態で前述したベローズ管を用いる代わりに、周方向に交差する向きに折り返されるように曲げられた管(以下、湾曲管8A、8Bと省略)を用いている点が異なり、他の構成は第1実施形態と同じである。
【0052】
図6は蒸気供給系統の外部配管(6A、7A)を示し、
図7は蒸気排出系統の外部配管(6B、7B)を示す。第2実施形態では、第1実施形態で適用された熱応力吸収手段としてのベローズ管の代わりに、翼環1に固定された固定部または分岐配管継手で両端を支持された外部配管(6A、6B)の中央部分に湾曲管(8A、8B)を設けた例である。但し、一部の配管については、固定部または分岐配管継手の間に湾曲管(8A、8B)を配置する十分なスペースがないため、第1実施形態と同様なベローズ管を配置している。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0053】
本実施形態のガスタービンによれば、前述の実施形態と同様の効果を奏する。
熱応力吸収部8A、8Bが、周方向に交差する向きに折り返されるように曲げられた管(湾曲管)であるので、下記の作用効果が得られる。
【0054】
すなわち、運転時において、翼環1は第1の外部流路(6A、7A)より高温となるため、これら翼環1と流路(6A、7A)との熱伸び差によって、管部6Aには、周方向に伸長させられる向きの熱応力が生じるが、管部6Aの湾曲管8Aが周方向に撓むことによって(つまり熱応力吸収部8Aとして周方向に伸長することによって)、この熱応力が低減される。第2の外部流路(6B、7B)は翼環1より高温となるため、これら流路(6B、7B)と翼環1との熱伸び差によって、管部6Bには、周方向に収縮させられる向きの熱応力が生じることが考えられるが、管部6Bの湾曲管8Bが周方向に撓むことによって(つまり熱応力吸収部8Bとして周方向に収縮することによって)、この熱応力が低減される。
これにより、前述の実施形態で説明した熱応力吸収部8A、8Bと同様の性能を確保しつつも、作製費用を削減できる。なお、本実施形態の湾曲管は、ベローズ管よりコストが安いので、ガスタービンの経済性の観点から有利である。
【0055】
尚、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0056】
例えば、前述の実施形態では、冷却媒体として冷却蒸気を用いて説明したが、冷却蒸気以外の例えばエア等の冷却媒体であっても構わない。ガスタービンには、冷却蒸気が流通する流路2を備えた翼環1が、タービン軸C方向に複数配設されているとしたが、これに限定されるものではなく、このような翼環1が、少なくとも1つ以上設けられていればよい。
【0057】
冷却蒸気が、翼環1を冷却した後、さらに燃焼器の流路に流通されて該燃焼器を冷却するとしたが、冷却蒸気は、少なくとも翼環1を冷却すればよく、燃焼器を冷却せずに回収されてもよい。
【0058】
外部流路(6A、6B、7A、7B)において、熱応力吸収部8A、8Bは、周方向に隣り合う固定部同士の間に1つずつ配置されているとしたが、これら固定部同士の間に複数配置されていても構わない。
【0059】
外部流路(6A、6B、7A、7B)のうち、蒸気供給用の第1の外部流路(6A、7A)は内部流路とし、蒸気排出用の第2の外部流路(6B、7B)のみが外部配管として設けられていることとしてもよい。これとは反対に、蒸気供給用の第1の外部流路(6A、7A)のみが設けられており、蒸気排出用の第2の外部流路(6B、7B)の代わりに内部流路を設けるとしても構わない。
【0060】
前述の第2実施形態では、熱応力吸収部8A、8Bである湾曲管(管部6A、6Bの周方向に隣り合う固定部または分岐配管継手の間の部分)が、径方向に折り返されるようにして形成されているが、これに限定されるものではない。すなわち、湾曲管8A、8Bは、周方向に交差する向きに折り返されるように曲げられていればよく、例えば、タービン軸C方向に折り返されるようにして形成されていても構わない。
【0061】
その他、本発明の前述の実施形態及び変形例(前記尚書き等)で説明した構成要素を、適宜組み合わせても構わない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、前述の構成要素を周知の構成要素に置き換えることも可能である。