(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5908073
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】太陽電池基板及びこれを用いた太陽電池
(51)【国際特許分類】
H01L 31/0749 20120101AFI20160412BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20160412BHJP
H01L 31/0224 20060101ALI20160412BHJP
【FI】
H01L31/06 460
H01L21/28 301R
H01L21/28 301B
H01L31/04 260
【請求項の数】10
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-515716(P2014-515716)
(86)(22)【出願日】2012年6月8日
(65)【公表番号】特表2014-522583(P2014-522583A)
(43)【公表日】2014年9月4日
(86)【国際出願番号】KR2012004573
(87)【国際公開番号】WO2012173360
(87)【国際公開日】20121220
【審査請求日】2014年1月7日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0057108
(32)【優先日】2011年6月13日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2011-0057116
(32)【優先日】2011年6月13日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】キム、 キュン−ボ
(72)【発明者】
【氏名】パク、 ユン−ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ベク、 ジェ−フン
(72)【発明者】
【氏名】キム、 ジョン−サン
【審査官】
森江 健蔵
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−082295(JP,A)
【文献】
特表2011−507281(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/0749
H01L 31/0224
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部基板と前記下部基板上に形成された下部電極を含み、前記下部電極はMo‐X‐Na三成分系複合金属層からなり、前記Mo‐X‐Na三成分系複合金属層のうちMoの含量は50重量%以下であり、前記XはNb、Ni、Si、Ti、W、Crのうちから選択された一種であり、前記下部基板と前記Mo‐X‐Na三成分系複合金属層との間に、少なくとも二層以上の金属層で形成され且つ隣り合う金属層が異種の金属からなる多層金属拡散防止膜を含む、太陽電池基板。
【請求項2】
前記下部電極は、前記Mo‐X‐Na三成分系複合金属層上に形成されたMo層をさらに含む、請求項1に記載の太陽電池基板。
【請求項3】
前記多層金属拡散防止膜は金属層の間に酸化物層をさらに含む、請求項1または2に記載の太陽電池基板。
【請求項4】
前記下部基板はステンレス、アルミニウムホイル、Fe‐Ni系金属、Fe‐Cu系金属、ポリイミド系材料からなる群から選択された一種からなる、請求項1から3のいずれか1項に記載の太陽電池基板。
【請求項5】
前記下部電極の厚さは1μm以下である、請求項1から4のいずれか1項に記載の太陽電池基板。
【請求項6】
前記Mo層と前記Mo‐X‐Na三成分系複合金属層との厚さの比は1:0.5〜1.5である、請求項2に記載の太陽電池基板。
【請求項7】
前記多層金属拡散防止膜の厚さは100〜1500nmである、請求項1から6のいずれか1項に記載の太陽電池基板。
【請求項8】
下部基板と前記下部基板上に形成された下部電極であるMo‐X‐Na三成分系複合金属層を含む太陽電池基板と、
前記太陽電池基板上に形成された光吸収層と、
前記光吸収層上に形成されたバッファ層と、
前記バッファ層上に形成された透明窓と、
前記透明窓上に形成された上部電極と、
を含み、
前記Mo‐X‐Na三成分系複合金属層のうちMoの含量は50重量%以下であり、前記下部基板と前記下部電極との間に、少なくとも二層以上の金属層で形成され且つ隣り合う金属層が異種の金属からなる多層金属拡散防止膜を含む、太陽電池。
【請求項9】
前記下部電極は前記Mo‐X‐Na三成分系複合金属層上に形成されたMo層をさらに含む、請求項8に記載の太陽電池。
【請求項10】
前記多層金属拡散防止膜は金属層の間に酸化物層をさらに含む、請求項8または9に記載の太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CI(G)S太陽電池基板及び太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
地球の温暖化、燃料資源の枯渇、環境汚染等の影響で、化石燃料を用いてエネルギーを採取する伝統的なエネルギー採取方法は次第に限界に達してきている。特に、石油燃料の場合、専門家によって異なるが、近いうちに枯渇することが見込まれている。
【0003】
また、京都議定書に代表されるエネルギー気候協約では、化石燃料の燃焼により生成される二酸化炭素の排出を減少させることが強制的に求められている。したがって、その効力が現在の締約国のみならず後々には世界各国にまで及んで化石燃料の年間使用量に制約をかけることは明白である。
【0004】
化石燃料の代替として用いられる最も代表的なエネルギー源としては、原子力発電が挙げられる。原子力発電は、原料となるウランやプルトニウムから採取可能な単位重量当たりのエネルギー量が大きく、二酸化炭素等の温室ガスが発生しないため、上記石油等の化石燃料の代替となる有力な無限の代替エネルギー源として脚光を浴びてきている。
【0005】
しかしながら、旧ソ連のチェルノブイリ原子力発電所や東日本大震災による日本の福島原子力発電所等の爆発事故をきっかけに、無限の清浄エネルギー源と認識されていた原子力への安全性が再検討されており、その結果、原子力ではなく他の代替エネルギーを導入することがかつてないほどに必要とされている。
【0006】
その他の代替エネルギーとして多く用いられているエネルギー源としては水力発電が挙げられるが、上記水力発電は、地形的な因子と気候的な因子によって多くの影響を受けるため、その使用が制限的である。また、その他の代替エネルギー源も、発電量が少ないか又は使用地域が大きく制限される等の理由で、化石燃料の代替手段として用いられるのが困難である。
【0007】
これに対し、太陽電池は、適当な日射量が保障されるだけでどこでも用いることができる上、発電容量と設備規模がほぼ直線的に比例するため、家庭用のような小容量需要に用いられる場合は、建物の屋上等に小面積で電池板を設置することにより発電が可能となるという長所を有する。よって、世界中でその使用が増加しており、これに関連した研究も増加している。
【0008】
太陽電池は、半導体の原理を用いたものであり、p‐n接合された半導体に一定水準以上のエネルギーを備えた光を照射する場合、上記半導体の価電子が自由に移動することができる価電子として励起されて電子と正孔の対(EHP:electron hole pair)が生成される。生成された電子と正孔は、互いに反対側に位置する電極に移動して起電力を発生させる。
【0009】
上記太陽電池の最初の形態のシリコン系太陽電池は、シリコン基板に不純物(B)をドープしてp型半導体を形成させた後、その上に他の不純物(P)をドープして層の一部をn型半導体化することによりp‐n接合がなされるようにしたものであり、通常、1世代太陽電池と呼ばれる。
【0010】
上記シリコン系太陽電池は、比較的高いエネルギー変換効率とセル変換効率(実験室における最高のエネルギー変換効率に対する量産時の変換効率の比)を有するため、商用化の可能性が最も高い。しかしながら、上記シリコン系太陽電池モジュールを製造するためには、まず、素材からインゴットを製造し、上記インゴットをウエハ化した後にセルを製造してモジュール化するといった多少複雑な工程段階を経なければならず、バルク材質の材料を用いることから材料消費が増加して製造費用が高くなるという問題がある。
【0011】
このようなシリコン系太陽電池の短所を解決するために、2世代太陽電池と呼ばれる、いわゆる、薄膜型太陽電池が提案されている。薄膜型太陽電池は、上述した過程で製造されるのではなく、基板上に必要な薄膜層を順次積層する形で製造されるため、その過程が単純で厚さが薄くて材料費が低いという長所を有する。
【0012】
しかしながら、上記シリコン系太陽電池と比べてエネルギー変換効率が高くないため、商用化には未だ多くの困難があった。よって、高エネルギー変換効率を有する太陽電池が一部開発されて商用化が推進されている。
【0013】
その中の一つとして、CI(G)S系太陽電池が挙げられる。上記太陽電池は、銅(Cu)、インジウム(In)、ゲルマニウム(Ge)(ゲルマニウムが含まれない場合はCISと称する)、セレニウム(Se)を含むCI(G)S化合物半導体を基本とするものである。
【0014】
上記半導体は、3つ又は4つの元素を含んでいるため、元素の含量を調節することによりバンドギャップの幅を制御してエネルギー変換効率を上昇させることができるという長所を有する。なお、セレニウム(Se)を硫黄(S)に代替したりセレニウム(Se)を硫黄(S)と共に用いたりする場合もある。本発明では、上記の場合をすべてCI(G)S太陽電池とみなす。
【0015】
CIGS(ゲルマニウムが含まれた場合)太陽電池は、最下層に基板があり、上記基板上に電極として用いられる下部電極が形成される。上記下部電極上には、p型半導体としての光吸収層(CIGS)、n型半導体としてのバッファ層(例えば、CdS)、透明窓、上部電極が順次形成される。
【0016】
従来、CI(G)S太陽電池の基板にはガラスを多く用い、下部電極にはモリブデン(Mo)からなる金属電極を多く用いた。上記ガラス基板を用いる場合はガラスに含まれたNaが太陽電池の特性を向上させると知られている。即ち、上記NaがCI(G)S薄膜に拡散されて添加されると、電荷濃度が増加して太陽電池の開放電圧と忠実度が増加する。
【0017】
最近、高価で大量生産可能性が少なくて定型化されているガラス基板の代わりに、柔軟性基板を用いようとする試みが多数あった。柔軟性基板は、ガラス基板と比べ、低価であり、ロールツーロール方式による太陽電池の製造を可能にし、多様な形で加工されることができるため、建物一体型モジュール(BIPV)、航空宇宙用等の多様な用途に用いられることができる。上記柔軟性基板としては、ステンレス鋼、アルミニウムホイル、ポリイミドフィルム等の金属板やプラスチック系の基板が多く用いられる。
【0018】
上記柔軟性基板の場合はナトリウム(Na)の添加効果がないため、
図1に示されているように下部基板10とCI(G)S層40との間に形成された下部電極30をNaを含有するMo‐Na層で形成することにより上記問題を解決しようとする試みもあったが、上記Naを含有する下部電極の場合にも下部電極の金属基板との密着性及び耐食性に関する問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、電池の効率を向上させ、下部電極と下部基板との密着性及び下部電極の耐食性を向上させた太陽電池基板及び太陽電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の一実施形態による太陽電池基板は、下部基板と上記下部基板上に形成された下部電極を含み、上記下部電極はMo‐X‐Na三成分系複合金属層からなり、上記XはNb、Ni、Si、Ti、W、Crのうちから選択された一種であることができる。上記下部電極は、上記Mo‐X‐Na三成分系複合金属層上に形成されたMo層をさらに含むことができる。上記基板は、下部基板と上記Mo‐X‐Na三成分系複合金属層との間に、少なくとも二層以上からなり且つ相互に接する層が異種の金属からなる多層金属拡散防止膜を含むことができる。上記多層金属拡散防止膜は、金属層の間に酸化物層を含むことができる。
【0021】
本発明の他の実施形態による太陽電池は、下部基板と上記下部基板上に形成された下部電極であるMo‐X‐Na三成分系複合金属層を含む太陽電池基板と、上記太陽電池基板上に形成された光吸収層と、上記光吸収層上に形成されたバッファ層と、上記バッファ層上に形成された透明窓と、上記透明窓上に形成された上部電極と、を含むことができる。上記下部電極は、上記Mo‐X‐Na三成分系複合金属層上に形成されたMo層をさらに含むことができる。上記下部基板と上記下部電極との間に、少なくとも二層以上からなり且つ相互に接する層が異種の金属からなる多層金属拡散防止膜を含むことができる。上記多層金属拡散防止膜は、金属層の間に酸化物層を含むことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、従来のMo‐Na化合物又はMo‐X‐Na型の下部電極と比べ、密着性と耐食性が向上した下部電極を含む太陽電池基板を提供することができ、これにより、耐久性及び品質安定性が向上した太陽電池を提供することができるという長所がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】従来のMo‐Na金属からなる下部電極を示す断面図である。
【
図2】本発明の一実施例によるMo‐X‐Na三成分系複合金属層からなる下部電極を示す断面図である。
【
図3】本発明の一実施例によるMo/Mo‐X‐Na多層下部電極、多層拡散防止膜及び下部基板を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下では、本発明について詳細に説明する。
【0025】
本発明者らは、太陽電池の性能を向上させ、基板と下部電極との密着性及び耐食性を向上させることができる方案を研究した結果、柔軟性基板の上部に積層された下部電極を、ナトリウム(Na)を含有した複合金属電極で製造することにより、上記の課題を達成することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0026】
以下では、本発明の太陽電池基板について詳細に説明する。本発明において、基板は、下部基板と上記下部基板に積層された下部電極、拡散防止膜をすべて含むものである。
【0027】
ここで、上記基板としては、柔軟性基板を用いることが好ましく、上記柔軟性基板には、ステンレス、アルミニウムホイル、Fe‐Ni系金属、Fe‐Cu系金属、ポリイミド系材料等を用いることが好ましい。
【0028】
本発明の一具現例によれば、上記下部電極は、Mo‐X‐Na三成分系複合金属層であることが好ましい。
図2に示されているように、下部基板10とCI(G)S層40との間に形成される下部電極30’をMo‐X‐Na三成分系複合金属層で形成することが好ましい。
【0029】
また、本発明の一具現例によれば、上記下部電極は、Mo層と、Mo‐X‐Na三成分系複合金属層と、を含むことが好ましい。この際、下部基板の上部に上記Mo‐X‐Na三成分系複合金属層が積層され、上記Mo‐X‐Na三成分系複合金属層の上部にMo層が形成されることが好ましい。
【0030】
上記Mo‐X‐Na三成分系複合金属層のうちXには、Nb、Ni、Si、Ti、W、Cr等が適用されることができる。この中でMoより密度の大きいWが適用されることが好ましい。これにより、耐食性向上効果を極大化することができる。Xを含むことにより、Moのみからなる電極を用いるときよりも、後述する拡散防止膜との密着性及び耐食性を向上させることができ、Naを含むことにより、正孔の密度を高めて太陽電池の開放電圧を向上させることができる。
【0031】
Mo‐X‐Na三成分系複合金属層のうちXには、上述したような元素が適用されることができるが、Mo‐X‐Na三成分系複合金属層と基板との間に拡散防止膜が形成される場合は上記拡散防止膜の元素と同じ元素が適用されることが好ましい。両元素が同じ場合は、下部電極と基板との密着性をより高めることができる。また、拡散防止膜が単層ではなく二層以上積層される場合は、最上層の元素とMo‐X‐Na三成分系複合金属層のXが同じ元素であることが好ましい。
【0032】
Mo‐X‐Na三成分系複合金属層は、Moの含量の上限が50重量%であることが好ましく、残部がX及びNaであれば良い。Moの含量が50重量%を超える場合は、Moに対してXの含量が大きくないため、Xの投入効果である耐食性が向上せず密着性が低下する。但し、本発明において、Na及びXの含量は制限されなくても良い。
【0033】
また、上記下部電極の厚さは1μm以下であることが好ましい。上記下部電極は、Mo‐X‐Na三成分系複合金属層を含むか、又はMo層とMo‐X‐Na三成分系複合金属層(Mo/Mo‐X‐Naとも記載可能)を含むことができる。下部電極の厚さを1μm以下に制御する場合、本発明で意図する薄膜CI(G)S太陽電池用下部電極を得ることができる。
【0034】
また、下部電極がMo層とMo‐X‐Na三成分系複合金属層とをすべて含む場合、上記Mo層とMo‐X‐Na三成分系複合金属層との厚さの比は1:0.5〜1.5であることが好ましく、1:1であることがより好ましい。
【0035】
また、上記下部基板と上記下部電極との間には、少なくとも二層以上の金属層からなる拡散防止膜を含むことができる。また、上記拡散防止膜は、相互に接する層が異種の金属からなることが好ましい。本発明の拡散防止膜は、三つの金属層からなることがより好ましい。異種物質により形成される界面は、不純物等の異種元素の拡散を抑制する障壁として作用することができる。同じ物質内で拡散する異種元素は、別の物質に触れると、既存の物質との拡散挙動の差によって拡散が抑制される。このような障壁効果により、多層拡散防止膜構造は、不純物の拡散をより効果的に抑制することができる。
【0036】
本発明において、拡散防止膜の全厚さは100〜1500nmに制御されることが好ましい。100nm未満の場合は、本発明で意図する拡散防止効果を得るのが困難となり、1500nmを超える場合は、基板と下部電極との密着性が低下する可能性がある。
【0037】
また、上記金属層の界面による拡散防止効果により、単一層と同じ厚さで拡散防止膜を形成しても、単一層と比べて格段に優れた拡散防止効果をもたらすことができる。例えば、150nmの単一層の拡散防止膜と、50nmずつ三つの層からなる多層の拡散防止膜とを比較すると、多層の拡散防止膜は、単一層の拡散防止膜よりも二つ以上の界面をさらに有するため、同じ厚さでもより優れた拡散防止効果をもたらす。
【0038】
上記二つ以上の金属層は、相違する金属物質からなることが好ましく、相互に接する金属層が相違する物質からなることがより好ましい。上記金属層には、Nb、Ni、Si、Ti、W、Crのうち一種の金属を適用することができる。また、各金属層は10nm以上であることが好ましい。
【0039】
上述した本発明の一具現例が
図3から確認できる。
図3は、本発明による下部電極、拡散防止膜及び下部基板の断面図である。下部基板10の上部に拡散防止膜20が三つの層21、22,23で形成されており、上記拡散防止膜20の上部に下部電極30がMo‐X‐Na三成分系複合金属層31とMo層32で形成されている。
【0040】
また、上記多層金属拡散防止膜は、金属層の間に酸化物層を含むことが好ましい。上記酸化物層は、SiO
X、SiN
X、Al
2O
3のうち一種を含むことができる。また、上記酸化物層の厚さは10nm以上であることが好ましい。セラミック物質の場合、異種元素の拡散が金属等に比べて困難であるため、拡散防止効果を向上させることができる。
【0041】
以下では、本発明の一具現例によるCI(G)S太陽電池基板を製造する方法について詳細に説明する。まず、基板を用意する。ここで、基板は、上述したようにステンレス、アルミニウムホイル、Fe‐Ni系金属、Fe‐Cu系金属、ポリイミド系材料からなる群から選択された一種からなることが好ましい。
【0042】
その後、Mo‐X‐Na三成分系複合金属をターゲット物質として用意する。また、Mo、X、Naそれぞれをターゲット物質として用意しても良い。上記Xには、前述したようにNb、Ni、Si、Ti、W、Cr等が適用されることができ、この中でWが適用されることが好ましい。
【0043】
次に、上記ターゲット物質をスパッタリング(sputtering)法を用いて上記下部基板上に蒸着させる。上記スパッタリング法としては、共スパッタリング法を用いることが好ましい。即ち、ターゲット物質としてMo、X、Naを一度にスパッタリングすることができる。また、Mo及びXをターゲット物質として積層し、Naをあとでドープすることもできる。また、スパッタリング法により、各元素を層(layer)状に積層した後に熱処理して上記複合金属層を形成することもできる。次に、上記下部基板にMo‐X‐Na層を積層した後にMo層をさらに積層する。この際、上記Mo‐X‐Na三成分系複合金属層の上部にスパッタリング法によりMo層を蒸着させて多層下部電極を形成することができる。
【0044】
ここで、拡散防止膜や酸化物層を形成する場合は、本発明で意図する順序に合わせて各層を積層する。この際、積層方法としては、スパッタリング法を用いることができるが、これに限定されず、本発明で意図する方向に上記金属層や酸化物層を積層できるものであればいずれのものでも良い。
【0045】
以下では、本発明の具現例による太陽電池について詳細に説明する。
【0046】
上記CI(G)S太陽電池は、下部基板と上記下部基板上に形成された下部電極であるMo‐X‐Na三成分系複合金属層を含む太陽電池基板と、上記太陽電池基板上に形成された光吸収層と、上記光吸収層上に形成されたバッファ層と、上記バッファ層上に形成された透明窓と、上記透明窓上に形成された上部電極と、を含むことができる。具現しようとする太陽電池の種類によって、上記光吸収層、バッファ層、透明窓等の材質が変わっても良い。一例として、CIGS太陽電池は、光吸収層はCIGS、n型半導体としてのバッファ層はCdS、透明窓はZnOからなる。
【0047】
ここで、上記下部電極は、上記Mo‐X‐Na三成分系複合金属層上に形成されたMo層をさらに含むことができる。なお、上記下部電極の特徴は、上述した太陽電池基板の下部電極の特徴と同じである。
【0048】
また、上記下部基板と上記下部電極との間に、少なくとも二層以上であり、相互に接する層が異種の金属からなる多層金属拡散防止膜を含むことができる。なお、上記多層金属拡散防止膜の特徴は、上述した太陽電池基板の多層金属拡散防止膜の特徴と同じである。
【0049】
また、多層金属拡散防止膜は、金属層の間に酸化物層を含むことができる。上記酸化物層の特徴は、上述した太陽電池基板の酸化物層の特徴と同じである。
【符号の説明】
【0050】
10 下部基板
20 多層拡散防止膜
21、22、23 拡散防止膜
30、30’ 下部電極、
31 Mo‐X‐Na三成分系複合金属層
32 Mo層
40 CI(G)S層