(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
固体燃料と該固体燃料の搬送ガスとの混合流体が流れる円筒状の固体燃料流路を有し、火炉壁面に開口した固体燃料ノズルと、前記固体燃料の燃焼用ガスが流れるウインドボックスから連通し、前記固体燃料ノズルの外周側に形成される2次燃焼用ガス流路を構成する2次燃焼用ガスノズルと、2次燃焼用ガスノズルの外周側に形成される3次燃焼用ガス流路を構成する3次燃焼用ガスノズルを備えた固体燃料バーナにおいて、
前記固体燃料ノズル内に、該固体燃料ノズル内の固体燃料流路の横断面を縮小させる絞り部を有するベンチュリーと該ベンチュリーの後流側に固体燃料ノズル内の混合流体の流れを外向きに変える流路拡大部を有する燃料濃縮器を備え、
前記固体燃料ノズルの火炉壁面に設けた開口部における開口形状を扁平形状とし、
前記固体燃料ノズルは、該固体燃料ノズルの外周壁のノズル中心軸に垂直な断面形状が、
(a)前記固体燃料流路に接続した固体燃料導入部から前記ベンチュリーの絞り部まで円形であり、
(b)前記ベンチュリーの絞り部から火炉壁面の開口部に至るまでの間は前記中心軸から外側へ水平方向に単調に拡がり、徐々に扁平度合いが増大する部分を有し、
(c)火炉壁面の開口部において扁平度合いが最大の扁平形状となるように形成されており、
前記2次燃焼用ガスノズルは、該2次燃焼用ガスノズルの外壁の前記中心軸に垂直な断面形状が、2次燃焼用ガスノズルの出口部において扁平形状であり、
前記3次燃焼用ガスノズルは、該3次燃焼用ガスノズルの外周壁の前記中心軸に垂直な断面形状が、火炉壁面の開口部で円形であり、平行な複数の流路を形成するように仕切り板で分割され、
3次燃焼用ガス流路に対して水平な部位と、火炉内で噴出する3次燃焼用ガスの流れを前記水平部位から火炉側に接続された3次燃焼用ガスノズルの外周壁方向に向かう傾斜部位から構成される3次燃焼用ガス案内板を、前記3次燃焼用ガスノズル内の3次燃焼用ガス流路であって2次燃焼用ガスノズルの外周のうち、上部と下部にそれぞれ備え、
前記ウインドボックスは、平行な複数の流路を形成するように仕切り板で上下に2分割され、前記2分割された流路のうち一部の流路は前記3次燃焼用ガスノズルの上側へ、残りの流路は3次燃焼用ガスノズルの下側へ接続され、各々の流路を流れる燃焼用ガスの流量を調節する1以上の燃焼用ガス流量調節手段を設けたことを特徴とする固体燃料バーナ。
2次燃焼用ガス流路の燃焼用ガス流入部のガス流入方向を火炉壁面に垂直な向きに設け、複数の開口部を有する平板を配置したことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の固体燃料バーナ。
2次燃焼用ガス流路の燃焼用ガス流入部に配置される平板の開口部を2次燃焼用ガス流路内での2次燃焼用ガスの流速が該流路の周方向で均等になるように配置したことを特徴とする請求項4記載の固体燃料バーナ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述の特許文献1では、微粉炭バーナからボイラ内に噴出する燃焼用ガスの流路を上半分と下半分に2つに分けて(以下、単に「上下方向で」ということがある)、それぞれの流路での燃焼用ガス流量を制御し、上下方向を流れる燃焼用ガスの流量に差を与えることで燃焼用ガス流路の上半分の流路と下半分の流路から噴出される流体の運動量に偏差を与え、火炎を偏向させている。
【0009】
この特許文献1記載の方法で火炎を偏向させる場合、バーナ負荷が高い条件、すなわち、バーナへの燃料供給量が多く、燃料を完全燃焼させる燃焼用ガスを多量に供給する場合では、前記燃焼用ガス流路の上方向と下方向での燃焼用ガス流量をそれぞれ制御することにより、燃焼用ガスノズルの上方向と下方向からそれぞれ噴出する流体の流速の差異が拡大する。これにより運動量偏差も大きくなり、効果的に火炎を偏向させることができる。
【0010】
しかし、バーナ負荷が小さい場合、すなわち燃焼用ガス供給量が少量である場合、上半分と下半分に2つに分けた燃焼用ガス流路でのそれぞれの流量を制御して流量偏差を与えた場合でも、燃焼用ガスの上下方向の流量差は高負荷時ほど大きくならない。つまり、バーナが低負荷時には、上下方向で燃焼用ガス流量に偏差を与えても流速差が小さいため運動量偏差が小さくなる。そのためバーナ低負荷時においては、燃焼用ガスの運動量変化のみでは火炎を効果的に偏向させることができず、火炉内の還元域の拡大及び排ガス中のNOx濃度を低下させることは不可能であった。
【0011】
また、微粉炭バーナから噴出する燃焼用ガス(空気)の流れは、バーナの構造、特に燃焼用ガスの流路の形態に大きく影響される。特に、微粉炭ノズルの流体の流れに直交する断面形状を扁平なものとする微粉炭バーナにおいては、偏流が発生しやすい。偏流が生じると、前記バーナからの火炎の安定性が悪くなるといった課題がある。とりわけ、微粉炭ノズルの出口外周部に設置した保炎器近傍での流れが重要となり、微粉炭ノズルの外周部から噴出する燃焼用ガスの噴流を周方向で均等に配分することができるか否かが鍵である。
【0012】
そこで本発明の課題は、比較的簡単な構造の燃焼用ガスノズルを用いて、低負荷時においても火炎を偏向させることができる固体燃料バーナと該固体燃料バーナを備えた燃焼装置の運転方法を提供することである。また、本発明の課題は、固体燃料バーナ出口で燃焼用ガスを可能な限り固体燃料ノズル出口の外周部の周方向で均等になるようにした固体燃料バーナと該固体燃料バーナを備えた燃焼装置の運転方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記本発明の課題は次の解決手段により達成される。
請求項1記載の発明は、固体燃料と該固体燃料の搬送ガスとの混合流体が流れる円筒状の固体燃料流路(2)を有し、火炉壁面(18)に開口した固体燃料ノズル(8)と、前記固体燃料の燃焼用ガスが流れるウインドボックス(3)から連通し、前記固体燃料ノズル(8)の外周側に形成される2次燃焼用ガス流路(4)を構成する2次燃焼用ガスノズル(10)と、2次燃焼用ガスノズル(10)の外周側に形成される3次燃焼用ガス流路(5)を構成する3次燃焼用ガスノズル(15)を備えた固体燃料バーナにおいて、前記固体燃料ノズル(8)内に、該固体燃料ノズル(8)内の固体燃料流路(2)の横断面を縮小させる絞り部(7a)を有するベンチュリー(7)と該ベンチュリー(7)の後流側に固体燃料ノズル(8)内の混合流体の流れを外向きに変える流路拡大部を有する燃料濃縮器(6)を備え、前記固体燃料ノズル(8)の火炉壁面(18)に設けた開口部(32)における開口形状を扁平形状とし、前記固体燃料ノズル(8)は、該固体燃料ノズル(8)の外周壁のノズル中心軸(C)に垂直な断面形状が、(a)前記固体燃料流路(2)に接続した固体燃料導入部から前記ベンチュリー(7)の絞り部(7a)まで円形であり、(b)前記ベンチュリー(7)の絞り部(7a)から火炉壁面(18)の開口部(32)に至るまでの間は前記中心軸(C)から外側へ水平方向に単調に拡がり、徐々に扁平度合いが増大する部分を有し、(c)火炉壁面(18)の開口部(32)において扁平度合いが最大の扁平形状となるように形成されており、前記2次燃焼用ガスノズル(10)は、該2次燃焼用ガスノズル(10)の外壁の前記中心軸(C)に垂直な断面形状が、2次燃焼用ガスノズル(10)の出口部において扁平形状であり、前記3次燃焼用ガスノズル(15)は、該3次燃焼用ガスノズル(15)の外周壁の前記中心軸(C)に垂直な断面形状が、火炉壁面(18)の開口部(32)で円形であり、平行な複数の流路を形成するように仕切り板(14)で分割され
、3次燃焼用ガス流路(5)に対して水平な部位と、火炉(11)内で噴出する3次燃焼用ガスの流れを前記水平部位から火炉(11)側に接続された3次燃焼用ガスノズル(15)の外周壁方向に向かう傾斜部位から構成される3次燃焼用ガス案内板(16)を
、前記3次燃焼用ガスノズル(15)内の3次燃焼用ガス流路(5)であって2次燃焼用ガスノズル(10)の外周のうち、上部と下部にそれぞれ備え、前記ウインドボックス(3)は、平行な複数の流路を形成するように仕切り板(14)で上下に2分割され、前記2分割された流路のうち一部の流路は前記3次燃焼用ガスノズル(15)の上側へ、残りの流路は3次燃焼用ガスノズル(15)の下側へ接続され、各々の流路を流れる燃焼用ガスの流量を調節する1以上の燃焼用ガス流量調節手段(30)を設けた固体燃料バーナである。
【0014】
ここで、上記「扁平形状」とは、
図3(a)の長方形、
図3(b)の楕円形、
図3(c)の半円形と長方形を組み合わせた形状、
図3(d)の幅が広い多角形などの形状であり、長径や長辺Wと短径や短辺Hを有する平べったい形状と定義する。
【0015】
図3(a)において、4つの角部の一部又は全部は曲線状であっても良い。同様に、
図3(d)において、多角形の角部の一部又は全部が曲線状であっても良い。また、上記の各形状において、曲線部の曲率は一定の曲率であることに限定されない。
【0016】
また、「扁平度合い」とは、長径や長辺Wと短径や短辺Hの比W/Hであると定義する。従って、徐々に扁平度合いが増加するとは、固体燃料ノズル(8)の中心軸(C)に直交する断面の比W/Hが少しずつ増加していくことを意味し、最大の扁平形状とは、固体燃料ノズル(8)の内で比W/Hが最も大きな部分の形状を指す。
【0017】
実用上、火炉壁面(18)の開口部(32)における前記比W/Hは、1.5〜2.5の範囲に設定される。比W/Hが約1.5を下回ると、扁平度合い(率)の増加が十分ではなく、火炉(11)内での火炎の幅広方向への拡がりが小さいため、本発明による燃料の高効率で低NOxの燃焼性能を達成できない。また、比W/Hが約2.5を上回ると、固体燃料ノズル(8)の出口における長径や長辺Wの寸法が大きくなりすぎて、固体燃料ノズル(8)を火炉壁面(18)のバーナ開口部(32)に設置するのが困難となる。
【0018】
請求項2記載の発明は、固体燃料ノズル(8)の先端外周部に、固体燃料ノズル(8)を取り囲んで形成される保炎器(9)を配置し、2次燃焼用ガスノズル(10)内の2次燃焼用ガス流路(4)の燃焼用ガス流入部(17)から火炉壁面(18)の開口部(32)に向かって該2次燃焼用ガス流路(4)の流路断面積を順次縮小する構造とした請求項1記載の固体燃料バーナである。
【0019】
請求項3記載の発明は、燃焼用ガス流入部(17)から出口部に向かって2次燃焼用ガス流路(4)の流路断面積の縮小率を30%〜80%とした請求項2記載の固体燃料バーナである。
【0020】
請求項4記載の発明は、2次燃焼用ガス流路(4)の燃焼用ガス流入部(17)のガス流入方向を火炉壁面(18)に垂直な向きに設け、複数の開口部(17aa,17ba,17ca,17da)を有する平板(17a,17b,17c,17d)を配置した請求項1から3のいずれかに記載の固体燃料バーナである。
【0021】
請求項5記載の発明は、2次燃焼用ガス流路(4)の燃焼用ガス流入部(17)に配置される平板(17a,17b,17c,17d)の開口部(17aa,17ba,17ca,17da)を2次燃焼用ガス流路(4)内での2次燃焼用ガスの流速が該流路(4)の周方向で均等になるように配置した請求項4記載の固体燃料バーナである。
【0022】
請求項6記載の発明は、2次燃焼用ガス流路(4)の燃焼用ガス流入部(17)の断面積に対する平板(17a,17b,17c,17d)の開口部(17aa,17ba,17ca,17da)の開口比率を0.05〜0.30とした請求項5に記載の固体燃料バーナである。
【0023】
請求項7記載の発明は、請求項1から6のいずれかに記載の固体燃料バーナ(31)を火炉壁面(18)の少なくとも一面に配置した燃焼装置(11)の運転方法であって、燃焼装置(11)の負荷に応じて、前記固体燃料バーナ(31)の仕切り板(14)で上下に2分割され、前記2分割された各々の3次燃焼用ガス流路(5)を流れる燃焼用ガスの流量を燃焼用ガス流量調節手段(30)で調節する燃焼装置(11)の運転方法である。
【発明の効果】
【0024】
請求項1記載の発明によれば、3次燃焼用ガスノズル(15)内の3次燃焼用ガス流路(5)上
であって2次燃焼用ガスノズル(10)の外周のうち、上部と下部にそれぞれ案内板(16)を設けることで、3次燃焼用ガスノズル(15)から火炉(11)へ噴出される燃焼用ガスに、火炉(11)の水平方向だけではなく、火炉(11)の上下方向(鉛直方向)への速度成分を与えることが可能となる。従って、燃焼用ガスの前記上下方向の流速を増大させることが可能となり、燃焼用ガス流量が少ない低負荷条件においても燃焼用ガスの上下方向の運動量偏差を大きくし、安定に火炎を偏向させることで、燃焼排ガスの低NOx化を実現可能な固体燃料バーナを提供することができる。
【0025】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、前記2次空気流路(4)の燃焼用ガス流入部(17)から火炉(11)内への噴出口である出口部に向かって、該流路(4)の流路断面積が順次縮小していくことにより、2次空気流路(4)の出口部に向けて周方向で、順次均一の流速に近づく。
【0026】
請求項3記載の発明によれば、請求項2記載の発明の効果に加えて、2次燃焼用ガス流路(4)の燃焼用ガス流入部(17)から出口部に向かって該2次燃焼用ガス流路(4)の流路断面積の縮小率(定義は後述)を30%〜80%としたので、最大流速と最小流速の比があまり大きく変化しないため、2次燃焼用ガス流路(4)の出口部周方向における流速を均等化でき、2次燃焼用ガス流れの偏流が無くなる。 請求項4記載の発明によれば、請求項1から3のいずれかに記載の発明の効果に加えて、2次空気流路(4)の燃焼用ガス流入部(17)のガス流入方向を火炉壁面(18)に垂直な向きに設け、複数の開口部(17aa,17ba,17ca,17da)を有する平板(17a,17b,17c,17d)を配置したことにより、火炉(11)内での2次空気の噴出量を2次空気流路(4)の出口部の周方向で均等化できる。従って、保炎器(9)の近傍に形成される火炎の安定化に寄与するとともに、燃焼性も良好となるため一酸化炭素(CO)や燃料の未燃分の低減にも繋がる。特に、最外周部の3次燃焼用ガス流路(5)内の3次燃焼用ガス流量を火炉(11)の上下で変更できる固体燃料バーナ(31)では、この2次燃焼用ガスノズル(10)の出口部での2次燃焼用ガスの噴出量を周方向で均等化でき、均等化が保炎強化の面から重要である。
【0027】
請求項5記載の発明によれば、請求項4記載の発明の効果に加えて、2次燃焼用ガス流路(4)の燃焼用ガス流入部(17)に配置される平板(17a,17b,17c,17d)の開口部(17aa,17ba,17ca,17da)を2次燃焼用ガス流路(4)内での2次燃焼用ガスの流速が該流路(4)内の周方向で均等になるように配置したので、二次燃焼ガス流路(4)の出口部での2次空気の噴出量を周方向で均等化でき、保炎強化を図ることができる。
【0028】
請求項6記載の発明によれば、請求項5記載の発明の効果に加えて、2次燃焼用ガス流入部(17)の断面積に対する平板(17a,17b,17c,17d)の開口部(17aa,17ba,17ca,17da)の開口比率を0.05〜0.30に設定することで2次燃焼用ガスの最大流速と最小流速の比が2以下になるので、2次燃焼用ガス流路(4)の出口部周方向における流速を均等化でき、2次燃焼用ガス流れの偏流が無くなる。
【0029】
請求項7記載の発明によれば、例えば、ボイラなどの燃焼装置が低負荷であるときは、火炉(11)内で形成される火炎を上方に向け、伝熱管群と火炎の距離を近づけて、伝熱管近傍のガス温度を上昇させるとともに、火炎を下方に向けたときに比べて火炎の輻射熱を伝熱管群により多く与えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施の形態について図面とともに説明する。
図1は、本発明の実施例に係る固体燃料バーナの構成図であり、
図1(a)に固体燃料バーナの縦断面図を示し、
図1(b)に固体燃料バーナの水平断面図を示し、
図1(c)に
図1(a)のA−A線断面矢視図を示す。
【0032】
本実施例は、固体燃料バーナの中心に点火バーナ1、その外周に搬送ガスによって固体燃料を火炉11(
図6参照)に供給する固体燃料流路2(微粉炭を用いることが多いので微粉炭流路2ということがある。)と該流路2に接続される固体燃料ノズル8(微粉炭を用いることが多いので微粉炭ノズル8ということがある。)、固体燃料流路2の外周部に設けられる2次燃焼用ガス(通常は空気を利用するので、2次燃焼用ガスを、以下2次空気ということがある)流路4と該流路4に接続され、微粉炭ノズル8の外周から燃焼用ガスを火炉11に噴出する2次燃焼用ガスノズル(2次空気ノズル)10、及び2次燃焼用ガス(2次空気)流路4の外周部に設けられる3次燃焼用ガス(通常は空気を利用するので、3次燃焼用ガスを3次空気ということがある)流路5と該3次燃焼用ガス流路5に接続され、2次燃焼用ガスノズル10の外周から3次燃焼用ガス(3次空気)を火炉11に噴出する3次燃焼用ガスノズル(3次空気ノズルということがある)15が配置されている。
【0033】
前記点火バーナ1、微粉炭ノズル8、2次空気ノズル10及び3次空気ノズル15は、火炉11の壁面18に設けられた火炉開口部32から火炉11内に向けてそれぞれの噴出物を噴出する。
【0034】
これら点火バーナ1、微粉炭ノズル8、2次空気ノズル10及び3次空気ノズル15は火炉壁面18に設けられた開口部32を囲んで微粉炭又は燃焼用空気を燃焼用空気流路19から供給するウインドボックス3内に配置されている。
【0035】
また、本実施例に示す微粉炭バーナにおける微粉炭ノズル8の先端部には保炎器9を設け、また微粉炭ノズル8内の微粉炭流路2上に該微粉炭流路2の縮小部材として絞り部7aを有するベンチュリー部7を設け、該ベンチュリー部7の下流側に、微粉炭微粒子を微粉炭流路2の内壁側に濃縮させながら火炉11内に噴出させるための濃縮器6を備えている。
【0036】
さらに、2次空気ノズル10の出口先端には3次空気案内部材24を設けている。該3次空気案内部材24はバーナ中心軸Cに対して外側に45度の傾斜角度で設けることが望ましい。また、2次空気ノズル10の外周部には3次空気案内板16が設けられている。さらに、3次空気流路5を上下に2分割する3次空気仕切り板14(
図6)が設けられている。
【0037】
ここで、微粉炭ノズル8、2次空気ノズル10及び3次空気ノズル15の詳細な構造を説明する。
図2には、火炉11側から見た微粉炭バーナの正面図(
図1(a)のB−B線矢視図)を示す。保炎器9は、該保炎器9の後流側に循環流を形成して着火性と保炎効果を高めるように微粉炭ノズル8の先端部にリング状に設けられる。微粉炭ノズル8側には、さめ歯状の突起を形成したものを用いても良い。
【0038】
図2に示すように、微粉炭ノズル8は、火炉壁面18の火炉開口部32で扁平形状の開口形状を有する。ここで、前記扁平形状の一例を
図3に示す。扁平形状とは、
図3(a)の長方形、
図3(b)の楕円、
図3(c)の半円と長方形を組み合わせた形状、
図3(d)の幅が広い多角形などの形状であり、長径や長辺Wと短径や短辺Hを有する平べったい形状をいう。
【0039】
火炉11の開口部32よりも前流側のバーナ31の中心軸Cに対して垂直な断面形状は、図示していない微粉炭導入部から微粉炭流路2を縮小するベンチュリー7の絞り部7aまでは円形であり、絞り部7aから火炉壁面18の開口部32までの間は、バーナ中心軸Cから外側へ水平方向に徐々に単調に拡がることで扁平度合いが徐々に増加し、火炉壁面18の開口部32では扁平度合いが最大となる形状としている。
【0040】
ここで、前記扁平度合いとは、長辺Wと短辺Hの比(W/H)と定義する。従って、徐々に扁平度合いが増加するとは、微粉炭ノズル8の中心軸Cに直交する断面の長辺Wと短辺Hの比(W/H)が少しずつ増加していくことを意味し、最大の扁平形状とは、微粉炭ノズル8内で長辺Wと短辺Hの比(W/H)が最も大きな部分の形状を指す。
【0041】
微粉炭導入部から微粉炭ノズル8の出口までの、微粉炭ノズル8内の微粉炭の主流の流れを
図4に示す。
図4(a)は微粉炭ノズル8の縦方向断面図であり、
図4(b)は微粉炭ノズル8の水平方向断面図である。微粉炭ノズル8内のベンチュリー7以降の流れにおいて、
図4の中で斑点模様を施した部分35は、微粉炭の濃縮された領域を模式的に表示したものである。
【0042】
前記微粉炭と搬送ガスの混合流体はベンチュリー7の絞り過程において中心軸Cに向かって縮流となり、燃料濃縮器サポート管34に沿った円環状の流れを形成する。この流れが燃焼濃縮器6に到達すると、燃料濃縮器6の前面の傾斜部により外向きに流れが変えられる。
【0043】
なお、燃料濃縮器6の構造例としては、燃料濃縮器サポート管34を中心軸として軸方向断面積が増大する円錐状の前面傾斜部と、その後流側に軸方向断面積がほぼ同一の円柱状の平行部、さらにその後流側に軸方向断面積が減少する円錐状の後面傾斜部が形成されたものが挙げられる。後面傾斜部が位置する微粉炭ノズル8内の流路は、流路断面積が大きく増大することから流路拡大部と称することもある。
【0044】
微粉炭導入部で微粉炭ノズル8内の微粉炭の流量分布が均一でない場合においても、ベンチュリー7の絞り部で燃料が一旦、中心軸C方向に集められ、その後、燃料濃縮器6で拡げられる過程で、周方向の燃料流量分布は均一化される。燃料濃縮器6で拡げられた微粉炭の流れの中で、鉛直方向成分の流れは
図4(a)に示すようにすぐに上下の微粉炭ノズル8の内周壁の水平部に衝突して、直進方向に変えられ、水平方向成分の流れは燃料濃縮器6の前面の傾斜部で与えられた外向きの速度成分が微粉炭ノズル8の出口部まで保存され、微粉炭の主流は微粉炭ノズル8の出口以降の火炉11に流入後も拡がり続ける。
【0045】
上記した微粉炭ノズル8の構造及びベンチュリー7と燃料濃縮器6の組合せにより、微粉炭の流れを扁平形状として扁平度合い(率)を微粉炭ノズル8の出口以降も拡大させるとともに、保炎器9の周りの微粉炭ノズル8の内周壁の近傍の燃料濃度分布を均一とすることができる。
【0046】
図4(d)は
図1の微粉炭ノズル8の出口部の微粉炭濃度測定結果を示す図であり、本実施例の微粉炭ノズル8の出口部で燃料濃度の分布を測定した一例を示す。
微粉炭ノズル8の中央部の燃料濃度/平均燃料濃度は0.8倍以下と希薄で、外周部に近づくほど燃料濃度は濃くなる。そして最外周部の燃料濃度は平均濃度の1.4倍以上となり、平均濃度の1.5倍程度に濃縮される。また、微粉炭ノズル8の周方向の濃度分布は均一であり、たとえば着火に重要な役割を果たす保炎器9に最も近い微粉炭ノズル8の最外周部の燃料濃度偏差は、燃料濃度/平均燃料濃度で±0.1倍程度に抑えられている。
【0047】
このように、微粉炭ノズル8の周方向で均一な燃料濃度が得られることにより、安定した着火保炎性が得られる。
また、微粉炭ノズル8の外周に備えられた2次空気ノズル10及び3次空気ノズル15は、火炉壁面18の出口部において、それぞれ扁平形状及び円形である。また、2次空気ノズル10の外周部の出口先端には、ノズル10の全周にわたって、微粉炭バーナの中心軸Cに対して外周側に燃焼用空気を導く3次空気案内部材24が設けられている。なお、前記案内部材24は、バーナ中心軸Cからバーナ外周側へ角度45度で傾斜させることが望ましい。
【0048】
前記3次空気ノズル15には、当該ノズル15の内壁と2次空気ノズル10の外壁に接続され、3次空気流路5を2分割する3次空気流路仕切り板14が設けられ、さらに、3次空気ノズル15の3次空気流入部12には複数の開口部材13を重ね合わせて開口面積を調節できる開口部を設けている。
【0049】
また、3次空気ノズル15内の3次空気流路5には、3次空気案内板16が設けられる。
図5の斜視図に3次空気案内板16として用いることができる形状の例を示す。3次空気ノズル15内の3次空気流路5の流れ方向に対して平行な面を有する3次空気案内板16の水平部16aと、前記水平部16aから流路出口側(火炉側)に接続された3次空気ノズル15の外周隔壁方向に向かう傾斜部16b、及び前記水平部16aと2次空気ノズル10を接続し、3次空気案内板16を支持する支持部16cから構成される。
【0050】
前記支持部16cは2次空気ノズル10の外周壁平行部、すなわち2次空気ノズル10の外周壁が平ら形状となっている部位の火炉壁面18に平行な方向(2次空気ノズル10の径方向)の両端に接続され、支持部16cと水平部16aとを併せた構造は、中心が空洞の直方体形状である。3次空気案内板16の傾斜部16bは3次ノズル15の外周隔壁に沿う方向に
図5(a)に示すような円弧形状(三日月形状)とすることが望ましいが、その他の例として、
図5(b),
図5(c)に示すような三角形または四角形であっても良く、その形状は限定されない。また、3次空気案内板16は3次空気案内部材24と異なり、3次空気ノズル15内の3次空気流路5上に全周にわたって連続的には設置されておらず、少なくとも仕切り板14が設置されている箇所では該案内板16は設置されない。
【0051】
次に、微粉炭ノズル8、2次空気ノズル10及び3次空気ノズル15の機能を説明する。
微粉炭ノズル8は微粉炭を搬送ガスと共に火炉11内へ噴出する機能を持つ。微粉炭ノズル8の火炉壁面18に位置する開口部32の形状を扁平形状とすることで、微粉炭ノズル8から火炉11内へ噴出する微粉炭を
図2中で図示したX方向及びX’方向に分散して噴出することができる。これにより、複数の微粉炭バーナ31を設置した火炉11において、隣接した微粉炭バーナ31の間の空間に微粉炭を供給して燃焼させることが可能となり、火炉11内の空間を有効利用することができる。
【0052】
2次空気ノズル10及び3次空気ノズル15は、微粉炭を燃焼させる燃焼用空気を火炉11に供給する機能を持つ。3次空気ノズル15の構造は火炉壁面18の開口部32での構造を円形、2次空気ノズル10の構造は火炉壁面18の開口部32での構造を扁平形状とする。これらの構造により、火炉壁面18の開口部32において、
図2中で図示したX方向及びX’方向で示された2次空気ノズル10の円弧部と3次空気ノズル15の外周壁との間の断面積に対し、
図2中で図示したY方向及びY’方向で示された2次空気ノズル10の扁平部と3次空気ノズル15の外周壁との間の断面積を大きくしている。従って、
図2中に図示したY方向及びY’方向から噴出する燃焼用空気量が増大するため、Y方向又はY’方向へ効果的に燃焼用空気を集中させることができる。
【0053】
また、
図6,
図7に示すように2次空気ノズル10の外周壁と3次空気ノズル15の内周壁には仕切り板14が設置され、該仕切り板14で3次空気流路5を上下に2分割している。該仕切り板14はウインドボックス3内を上下に2分割する仕切り板14でもある。そのため上下に2分割された3次空気流路5に導入するウインドボックス3から3次空気量を各々ダンパ30a〜30dで調整することにより、各々の流路を流れる燃焼用空気の運動量に偏差を与えることが可能となり、微粉炭バーナ31から噴出する火炎をY方向又はY’方向へ偏向させることができる。
【0054】
次に、3次空気案内部材24と3次空気案内板16の機能を説明する。
まず、3次空気案内部材24は、バーナ中心軸からバーナ外周側へ向けて拡大する傾斜面を有しており、3次空気ノズル15から噴出される燃焼用ガス(空気)の流れをノズル外周方向へ導く作用を持つ。該案内部材24により最も影響を受けるのは3次空気ノズル15の内周壁近傍を流れる流体であり、該流体が火炉11に噴出される際に3次空気ノズル15の外周方向への速度成分を得ることが可能となる。3次空気案内板16も3次空気案内部材24と同様に、3次空気流路5を微粉炭バーナ31の外周側に導く作用がある。
【0055】
一方、3次空気案内板16は、3次空気流路5内における3次空気ノズル15の外周壁近傍を流れる3次空気を
図2中のY方向及びY’方向に導くため、3次空気案内部材24と3次空気案内板16を同時に設けることにより、3次空気ノズル15の内周壁側及び外周壁側のそれぞれ単独ではなく、両方を流れる3次空気を微粉炭バーナ31の外周に導くことができる。従って、効果的に微粉炭バーナ31の外周方向、特に
図2中のY方向及びY’方向の速度成分を得ることができる。
【0056】
以上の構造、機能を有する微粉炭バーナ31の特徴は、次の(1)、(2)の通りである。
(1)燃焼用ガス(空気)を
図2中のY方向又はY’方向から火炉11へ集中して噴出させる。
(2)3次空気案内板16により前記Y方向又はY’方向への速度成分を強制的に持たせる。
【0057】
これらにより、ボイラの低負荷時、つまり、燃焼用空気の供給量が少ない条件においても、Y方向又はY’方向への速度成分を有する燃焼用空気量を増大させることが可能となる。従って、本構造の微粉炭バーナ31を用いて3次空気流路5を2分割して流れる燃焼用空気量を個々に制御した場合、ボイラの低負荷時においても、Y方向又はY’方向へ流れる流体の運動量に効果的に偏差を与えることが可能となり、微粉炭バーナ31から噴出する火炎を偏向させることができる。
【0058】
本実施例では、2分割した3次空気流量の制御方法としてウインドボックス3の燃焼用空気入口のダンパ(バタフライダンパなど)30a〜30dを用いて説明するが、パンチングプレート(金属板に沢山の孔が空いたもの)等の他の流量制御手段を用いても良い。
図6(a)に示すように仕切り板14で2分割した3次空気流路5のうち、3次空気流路5の上半分の流路に3次空気を供給するダンパ30a,30bの開度を小さくし(図中では全閉で表示)、下半分の流路に3次空気を供給するダンパ30c,30dの開度を大きくし(図中では全開で表示)、下半分の3次空気流路5から噴出する燃焼用空気量を大きくした場合、
図6(b)の火炉11の模式図に示すように微粉炭バーナ31から噴出する火炎28の向きが下方へと偏向し、火炎28と二段燃焼用空気供給口29間の還元域を拡大させることができる。なお、前記2分割した3次空気流路5に燃焼用ガスを供給するダンパ30a,30bとダンパ30c,30dの開度の差を大きくすればするほど火炎28が大きく偏向する。
【0059】
図7(a)には、3次空気流路5の下半分の流路から噴出する燃焼用空気量に対して、3次空気流路5の上半分の流路から噴出する燃焼用空気量を多くした場合のダンパ30a〜30dの開度を示し、
図7(b)に
図7(a)に示す開度の制御時における火炉11内での火炎28の向きを示す。
【0060】
図7(a)と
図7(b)に示すダンパ30a〜30dの開度の制御操作を行った場合、微粉炭バーナ31から噴出する火炎28の向きを上方へ偏向させて、火炎28と二段燃焼用空気供給口29の間の火炉11内の還元域が縮小するため、この操作は燃焼排ガスの低NOx濃度化(単に低NOx化ということがある。)を目的には行われない。
【0061】
図7(a)と
図7(b)に示すダンパ30a〜30dの開度の制御操作は、例えば、ボイラの低負荷時において、火炉11内の上方部位に設置された伝熱管群への熱吸収量を増加させる必要がある場合などに用いられ、その目的は火炎28を上方に向け、伝熱管群と火炎28の距離を近づけて、伝熱管近傍のガス温度を上昇させるとともに、火炎28の輻射熱を伝熱管群に与えることにある。
【0062】
図8に、ボイラ100%負荷時(石炭を最大供給量、火炉に投入してボイラを運転する条件)において
図6及び
図7に示すダンパ30a〜30dの開度の制御操作を行った時の火炉11の出口での排ガス中のNOx濃度の挙動を示す。白帯は、3次空気案内板16のある本実施例の微粉炭バーナ31の場合を示し、色の付いた帯は、3次空気案内板16のない微粉炭バーナの場合を示している。
【0063】
図8に示されるように、下段ダンパ30c,30dの開度を大きくし、火炎28を火炉11の鉛直方向の壁面18に対して下向きに偏向させることにより、火炎28と二段燃焼用空気供給口29間の還元域が拡大し、火炉11内でのNOx生成量を基準条件(火炎偏向無し)に対して低減可能となる。また、ボイラ負荷の高い本条件では3次空気ノズル15から噴出される流体の流量が多い。そのため、
図8に示すように、3次空気案内板16を設置しない場合でも3次空気ノズル15内の上側と下側の流路に流量偏差を与えることで基準条件に対してある程度NОxの生成を低減可能である。
【0064】
図9には、ボイラの低負荷時において火炎28を下方に偏向した時のNOx濃度の挙動を示す。3次空気ノズル15から噴出される流体の流量が少ない本条件では、3次空気案内板16を設置しない場合、3次空気ノズル15内の上側と下側の流路に十分な流量偏差を与えることができない。その結果、火炎が下向きに偏向せず、NОx生成量の低減効果が得られない。本実施形態のように、3次空気案内板16を設置することで
図8に示す高負荷時(ボイラ100%負荷)と同様に火炉11内でのNOx生成量を基準条件に対して低減可能である。
【0065】
これは前述した通り、3次空気案内板16と3次空気案内部材24を設けることにより、3次空気ノズル15の内周壁側及び外周壁側両方を流れる3次空気を微粉炭バーナ31の外周に導くことができるため、3次空気ノズル15内の上側と下側の流路に流量偏差を与えた場合、効果的に
図2中のY方向またはY’方向の速度成分を得ることができる。これにより、両流路を流れる流体の流量が少ない低負荷時においても運動量偏差を与えることができるため、微粉炭バーナ31から噴出する火炎を下方に偏向させることが可能となり、ボイラ低負荷時においても効果的にNOx生成量を低減することができる。
【0066】
次に2次空気流路4の2次空気ノズル10からの2次空気の噴出を周方向で均等化することで火炎の安定を図るための構成について説明する。 2次空気流路4は、2次空気流入部(2次空気入口部)17から火炉11側の2次空気出口に向かって流路断面積が順次縮小する構造となっている。なお、微粉炭バ−ナ31では、微粉炭と搬送ガスの出口部である微粉炭ノズル8の出口部での流体の流速は約19m/秒であり、2次空気と3次空気との流量比(2次空気と3次空気との合計流量に対する微粉炭ノズル8の出口部での流体流量の単位時間当たりの比率)は約1/5である。
【0067】
まず、2次空気流路4の出口部での流速分布に対する2次空気流入部17の断面積と2次空気流路4の出口部付近の断面積との比の影響を検討した。
本発明者らが独自に組み上げた流動試験装置を用いて、前記断面積比率と2次空気流路4の出口部での流速分布との関係を実験から評価した。装置は
図1に示す出口形状を有する微粉炭バーナ31と同形状のものを製作し、流入部17の断面積と出口部近傍の断面積の比を変えて、2次空気流路4の出口部を周方向で16等分して各部の流速を熱線風速計で測定した。なお、流体は常温の空気を用いた。流速の均等化を示す指標としては、16等分した各部の流速のうち最大流速と最小流速の比をとって評価した。最大流速と最小流速の比が1になれば、流速が均等化していることを示す。
【0068】
図10に評価対象とした2次空気流入部17の断面積に対する2次空気出口部の断面積の縮小率と2次空気流路4での最大流速と最小流速の比の関係を示す。
図10における横軸の断面積縮小率は下記で定義したものである。ただし、ここでは2次空気流入部17に平板17a,17b,17c,17dを設置していない。また、2次空気流入部17の出口部断面積は保炎器9が無い状態、言い換えれば2次空気流路4が保炎器9によって、縮小される直前の断面積を指す。
【0069】
断面積縮小率=(1−出口部断面積/流入部断面積)×100(%)
この結果、縮小率40%までは最大流速と最小流速の比が大きく減少し、それ以降は次第に減少して1に近づく。縮小率を30%以上にすると、最大流速と最小流速の比が2以下であった。しかし、断面積縮小率をあまり大きくすると、後述する開口比率と同様に流入するガス量が減少してしまうため、2次空気流路4の断面積縮小率は、30〜80%に設定するのが望ましい。
【0070】
また、
図11や
図12に示すように、2次空気流路4の2次空気流入部17は、ガス流入方向を火炉壁面18に垂直な向きに設け、複数の開口部を配置した平板を設けても良い。
【0071】
図11には、2次空気流路4の2次空気流入部17に設けた平板17aの形状に関する実施例を示す。
図11(a)には平板17aの平面図を示し、
図11(b)には平板17aの半分の斜視図を示す。
【0072】
図11(a)に示す実施例では、角丸長方形の平板17aに複数の円形開口部17aaを上下及び左右対称に設けている。なお、内部の大きな円形開口部は微粉炭ノズル8の設置部である。また、この平板17aは取り付けやすくするために
図11(b)に示すように、左右に半割り構造となっている。この実施例では、2次空気流入部17に設けた平板17aの開口比率は、約9%である。
【0073】
図12には、2次空気流入部17に配置する平板の他の実施例を示す。
図11に示す実施例とは微粉炭ノズル8用の開口部の配置が若干異なるが、同様な構造であり、2次空気流入部17に設けた平板17bの開口比率は約11%である。
図12(a)には平板17bの平面図を示し、
図12(b)には平板17bの半分の斜視図を示す。
【0074】
なお、
図11と
図12に示す実施例では、2次空気流入部17の平板17a,17bの開口部17aa,17baを円形としたが、本実施形態では、このような形状に限定されず、
図13(a)に示すような平板17cで楕円形の開口部17caを設けたものや、
図13(b)に示すような平板17dで四角形(正方形や長方形)などの多角形の開口部17daを設けたものでもよく、開口部の形状は特に限定されない。また、平板全体から均等に2次空気を噴出するため、小径の開口部を平板全体に配置してもよい。
【0075】
また、2次空気流入部17近傍において、望ましくは、開口比率が後述の範囲に相当するものであれば、平板17a,17b,17c,17dに限らず、スクリーン、ルーバ、網状物等、整流効果が発揮される各種の部材が適用できる。
【0076】
また、2次空気流入部17の構造によって、平板17a,17b,17c,17dも角丸長方形だけでなく、円形、角型など様々な形状を採用することができる。しかし、2次空気流路4の出口部の横断面方向の流速を均等にするためには、2次空気流入部17の平板17a,17b,17c,17dの開口部17aa,17ba,17ca,17daの配置は上下及び左右対称であることが望ましい。
【0077】
この2次空気流入部17の平板17a,17b,17c,17dの開口比率について2次空気流路4の出口部での流速分布について前述と同様な流動試験で検討した結果を
図14に示す。
図14の結果から、前記開口比率0.10付近で2次空気流路4の出口部の最大流速と最小流速の比が最小となり、開口比率0.30以下において最大流速と最小流速の比が2以下であった。しかし、開口比率をあまり小さくすると、流入するガス量が極端に減少してしまうため、2次空気流入部17の断面積に対する開口部17aa,17ba,17ca,17daの開口比率は、0.05〜0.30に設定することが2次空気流路4の出口部での流速を均一にするために望ましい。
【0078】
図15に、2次空気流路4の2次空気流入部17に
図11や
図12等に示す開口部17aa,17ba,17ca,17da付きの平板17a,17b,17c,17dを設置しない場合(
図15(a))と設置した場合(
図15(b))における2次空気流入部17の流速分布の模式図を示す。2次空気の流れる方向と強さを矢印の向きと長さで示す。
【0079】
図15(a)に示す平板17a,17b,17c,17dを設置しない場合、ウインドボックス3内のガス流の方向により(
図15に示す例では図面の左上方から2次空気が供給されている。)、2次空気流路4の2次空気流入部17に流入すると偏流となり、流速分布も2次空気流入部17の断面で差異が生じてしまう。このような偏流や流速分布は、2次空気流路4の出口部の流速分布に影響することが推察される。一方、
図15(b)に示す2次空気流入部17の開口部17aa,17ba,17ca,17da付きの平板17a,17b,17c,17dを設置した場合は、平板17a,17b,17c,17dによる抵抗で、前記偏流や流速分布の差異は解消されて、2次空気流入部17に流入する空気流は、ほぼ均一流速の直進流のみとなる。
【0080】
火炎偏向時においても安定火炎を形成するには、2次空気の噴流を周方向で均一化することが必須条件である。例えば、3次空気案内板16によって3次空気に上下方向の速度成分を与え、仕切り板14で上下に2分割された3次空気流路5に導入する3次空気量を各々ダンパ30a〜30dで調整することにより、3次空気流路5の上半分の流路から噴出する燃焼用空気量に対して、3次空気流路5の下半分の流路から噴出する燃焼用空気量を多くし、火炎28を下向きに形成させた場合(
図6)、2次空気流入部17の断面で偏流、例えば上側ほど流速が大きくなる流速分布が生じると、2次空気の噴出流が3次空気の噴出流に同伴されなくなる。
【0081】
その結果、火炉11に噴出される燃焼用ガスの運動量に効果的に偏差を与えることが不可能となり、微粉炭バーナ31から噴出する火炎を目的とした方向に偏向させることができなくなる。つまり、安定な偏向火炎を形成できなくなる。
【0082】
そこで、2次空気流入部17に開口部17aa,17ba,17ca,17da付きの平板17a,17b,17c,17dを設けることで2次空気の噴流が周方向で均一になるため、3次空気流路5の下半分と上半分の流路から噴出する燃焼用空気量を調整して火炎を偏向させる場合に、2次空気が3次空気の噴流に同伴されるため、運動量の偏差を容易に発生させることができる。これにより安定して火炎を偏向させることが可能となる。
【0083】
また、2次空気流路4は、2次空気流入部17から2次空気出口に向かって流路断面積が縮小する構造であることから、出口部付近では周方向で均等な流速となり整流効果も高い。