特許第5908098号(P5908098)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5908098-自己干渉除去のための方法および装置 図000010
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5908098
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】自己干渉除去のための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   H04J 99/00 20090101AFI20160412BHJP
   H04J 11/00 20060101ALI20160412BHJP
   H04B 1/10 20060101ALI20160412BHJP
【FI】
   H04J15/00
   H04J11/00 Z
   H04B1/10 L
【請求項の数】8
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-535743(P2014-535743)
(86)(22)【出願日】2012年10月2日
(65)【公表番号】特表2014-534698(P2014-534698A)
(43)【公表日】2014年12月18日
(86)【国際出願番号】US2012058456
(87)【国際公開番号】WO2013074213
(87)【国際公開日】20130523
【審査請求日】2014年6月2日
(31)【優先権主張番号】13/270,747
(32)【優先日】2011年10月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391030332
【氏名又は名称】アルカテル−ルーセント
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100170601
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 孝
(72)【発明者】
【氏名】リ,リ,エラン
(72)【発明者】
【氏名】マーゼッタ,トーマス
【審査官】 羽岡 さやか
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2004/0142700(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0143655(US,A1)
【文献】 特開2010−252292(JP,A)
【文献】 特開2010−135929(JP,A)
【文献】 特開2008−211414(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0092067(US,A1)
【文献】 特開2006−109255(JP,A)
【文献】 特開2009−194639(JP,A)
【文献】 特開2010−130110(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04J 99/00
H04B 1/10
H04J 11/00
H04B 7/04
H04B 1/38−1/58
H04W 4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
複数のアンテナを備えるアンテナ・アレイ内のアンテナについて、第1のアナログ基底帯域信号に基づいて生成されたデジタル信号を使用して、干渉パラメータを推定するステップであって、前記第1のアナログ基底帯域信号は、第1のアナログ無線周波数信号を使用して生成され、前記第1のアナログ無線周波数信号は、複数のサブキャリアの各々の上で前記アンテナにおいて受信され、各干渉パラメータが、複数のデジタル・シンボルのうちの1つに関連付けられる、干渉パラメータを推定するステップと、
前記推定された干渉パラメータを使用して、前記複数のデジタル・シンボルを修正するステップと、
前記複数の修正されたデジタル・シンボルをエンコーディングするステップと、
前記複数の修正されたデジタル・シンボルを第2のアナログ基底帯域信号に変換するステップと、
前記第2のアナログ基底帯域信号を第2のアナログ無線周波数信号に変換するステップと、
前記第2のアナログ無線周波数信号を使用して、前記複数のサブキャリア上で前記アンテナによって受信された前記第1のアナログ無線周波数信号から干渉を除去するステップと
前記第1のアナログ無線周波数信号から干渉を除去するステップの後に、前記第1のアナログ無線周波数信号を前記第1のアナログ基底帯域信号に変換するステップと、
複数のユーザの位置および前記複数のユーザからの信号の到来角に基づき、半二重モードでの受信または送信のために、前記複数のユーザのサブセットをスケジューリングするステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記干渉パラメータを推定するステップが、前記干渉パラメータを推定して、前記アンテナにおいて受信された前記第1のアナログ無線周波数信号と、前記干渉パラメータおよび前記複数のデジタル・シンボルの積との間の差を最小化するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のアナログ無線周波数信号から前記干渉を除去するステップの後に、前記第1のアナログ基底帯域信号を前記デジタル信号に変換するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
数のサブキャリア上で前記アンテナによって受信された前記第1のアナログ無線周波数信号から干渉を除去するステップと同時に、エア・インターフェイスを通じた送信のために、前記複数のデジタル・シンボルをプリコーディングするステップと、前記複数のデジタル・シンボルを全二重モードで送信するステップと、全二重モードで送信している複数のユーザから、アップリンク信号を同時に受信するステップとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記複数のデジタル・シンボルを対応する複数のアナログ信号に変換するステップと、前記対応する複数のアナログ信号を全二重モードで送信するステップと、前記半二重モードで送信している前記複数のユーザの前記サブセットから、アップリンク信号を同時に受信するステップとを含み前記半二重モードでの受信または送信のために、前記複数のユーザの前記サブセットをスケジューリングするステップは、ユーザ間干渉の推定値に基づき、前記半二重モードでの受信または送信のために、前記複数のユーザの前記サブセットをスケジューリングするステップを含む、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記アンテナ・アレイ内の各アンテナについて、干渉パラメータを推定するステップと、前記推定された干渉パラメータを使用して、前記アンテナ・アレイ内の前記複数のアンテナによって受信されたアナログ信号から干渉を除去するステップとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
アンテナ・アレイ内のアンテナに、通信可能に結合されるように構成される送受信機であって、請求項1乃至のいずれか1項に記載の方法を施行するように構成可能である、送受信機。
【請求項8】
システムであって、
複数の送受信機であり、前記複数の送受信機の各々が、アンテナ・アレイ内の複数のアンテナのうちの1本に、通信可能に結合されるように構成されており、各送受信機が、請求項1乃至のいずれか1項に記載の方法を施行するように構成可能である、複数の送受信機
を備える、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2011年9月19日に出願された米国特許出願連続番号第13/236,467号に関する。
【0002】
この出願は、一般に、通信システムに関し、より特定的には、ワイヤレス通信システムに関する。
【背景技術】
【0003】
ワイヤレス通信システムは、典型的に、モバイル・ユニットなどのユーザ機器または他のワイヤレス対応デバイスへのワイヤレス接続性を提供するために、多数の基地局(またはeNodeBなどの他のタイプのワイヤレス・アクセス・ポイント)を配備している。各基地局は、基地局によって応対される特定的なセルまたはセクタ内に位置付けられるモバイル・ユニットへのワイヤレス接続性を提供する責任を負う。基地局とモバイル・ユニットとの間のエア・インターフェイスは、基地局からモバイル・ユニットに情報を搬送するためのダウンリンク(またはフォワード・リンク)チャネルと、モバイル・ユニットから基地局に情報を搬送するためのアップリンク(またはリバース・リンク)チャネルとをサポートする。アップリンク・チャネルおよび/またはダウンリンク・チャネルは、典型的に、音声情報などのデータ・トラフィックを搬送するためのデータ・チャネルと、パイロット信号、同期信号、肯定応答信号、およびその他などの制御信号を搬送するための制御チャネルとを含む。
【0004】
多入力多出力(MIMO)技法は、基地局、および任意に、ユーザ端末が、複数本のアンテナを含むときに利用され得る。たとえば、複数本のアンテナを含む基地局は、独立した別個の複数個の信号を、複数人のユーザに対して同時に、かつ、同じ周波数帯域上で送信することができる。MIMO技法は、基地局において利用可能なアンテナの数に概ね比例して、ワイヤレス通信システムのスペクトル効率(たとえば、ビット/秒/ヘルツの数)を高めることが可能である。しかしながら、基地局は、同時送信のための、ほぼ直交したダウンリンク・チャネルを有するユーザを選択するために、ユーザの各々へのダウンリンク・チャネル(複数可)の状態についての情報も必要とする。チャネル・フィードバックは、リバース・リンク上においてユーザによって提供され得るが、このことは、MIMO送信にまつわるオーバーヘッドを増大させ、このことが、ワイヤレス通信システムのスペクトル効率を下げてしまう。
【0005】
チャネル状態のランダムな変動は、ほぼ直交したダウンリンク・チャネルのセットを生じ得る。したがって、基地局に関連付けられたユーザの数が大きい場合、これらのランダムな変動は、当然ながら、ほぼ直交したダウンリンク・チャネルを有するユーザの群を生じる傾向を有する。日和見的なMIMOスキームは、基地局から、選択された群内のユーザへの同時送信間における干渉が、容認可能な許容レベル内に収まるように、ユーザのこれらの群を識別する。たとえば、nが、基地局における送信アンテナの数を指し、Kが、基地局に接続されたユーザの数を示すものとする。従来のシステムでは、基地局における送信アンテナの数nが、基地局に接続されたユーザの数Kよりも小さい。各ユーザには、n本の受信アンテナが装備されている。ユーザkにおける各受信アンテナと各送信アンテナとの間のチャネル係数は、n×n行列H,k=1,…,Kにアセンブルされ得る。
【0006】
線形ユニタリ・プリコーディング行列を利用するマルチユーザMIMOシステムにおいて、基地局は、K人のユーザの母集団から選ばれ得る、n人という数だけのユーザに対し、同時に送信することができる。送信信号と受信信号との間の関係は、以下のように表現され得る。
y=HUs+n (1)
ここでsは、送信信号を包含するn次元ベクトルであり、yは、受信された信号のn次元ベクトルであり、nは、n次元雑音ベクトルであり、Uは、n×nユニタリ・プリコーディング行列であり、すなわち、UU=Iを満たす行列である。基地局が、n人未満のユーザに送信することを選んだ場合(これは、時として「ランク・アダプテーション」と呼ばれる)、sの成分のうちのいくつかが、ゼロであり得ることに留意されたい。各基地局は、典型的に、L個のプリコーディング行列、U,i=1,…,Lから成るコードブックを格納している。全体で、L個のプリコーディング行列は、n・L個の列ベクトルになり、ここで、各列ベクトルは、n個の成分を有する。
【0007】
プリコーディング行列は、信号を、利用可能なチャネル上にマッピングする。基地局は、当該基地局が有する、行列H,k=1,…,Kの知識に基づき、異なるプリコーディング行列を選択することにより、このマッピングを、チャネル状況に適応するように変動させることができる。行列Hについての情報は、モバイル・ユニットからのフィードバックを使用して、基地局に報告され得る。たとえば、基地局が日和見的なスキームを施行するときに、各ユーザは、コードブック内の列ベクトルの好ましいサブセットを、リバース・リンクを介して基地局に定期的に報告する。ユーザは、各好ましい列に関連付けられた仮定的送信に対応する品質指標も報告する。各ユーザによって選択および報告され得る列のサブセットのサイズは、1からn・Lの間のどこかに存在し得るパラメータである。コードブック内の各プリコーディング行列Uに関し、基地局は、その行列Uからの列ベクトルに対する好みを表明したユーザを識別し、それらのユーザを、その行列Uに関連付ける。1人のユーザのみを、各列に関連付けることができ、したがって、数人のユーザが、その行列Uの同じ列ベクトルに対する好みを表明した場合には、それらのユーザのうちの1人のみが、この関連付けにおいて保持される(このことは、ランダムに、または優先順位に基づき、行われ得る)。したがって、各行列Uに関連付けられた、最大でn人のユーザが存在する。各ユーザが、複数個のプリコーディング行列Uに関連付けられ得ることに留意されたい。
【0008】
基地局は、たとえば、行列Uに関連付けられたユーザの優先順位を基にして、プリコーディング行列のうちの1つを選択する。優先順位は、基地局内のスケジューラによって決定され得る。行列と、関連付けられたユーザとが一旦識別されると、基地局は、対応するプリコーディング行列Uを使用して、選択されたユーザに同時送信を開始することができる。
【0009】
従来のMIMOシステム内の基地局は、比較的少数のアンテナ(たとえば、典型的に2〜4本のアンテナ)を使用して、信号を送信および受信する。アンテナの数は、やはり、典型的には、基地局によって応対されるユーザの数よりも著しく小さい。結果的に、空間チャネルは、ユーザ機器から基地局にフィードバックを送信するのに妥当な量のオーバーヘッドを使用して、決定され得る。そのうえ、総当りの技法(brute force techniques)を使用して、ユーザの、考え得る全ての組み合わせを考慮することによって、チャネルを通じたパケット送信をスケジューリングすることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
開示された主題は、上で明記した問題のセットのうちの1つまたは複数の影響に対処することを対象とする。以下の内容は、開示された主題のいくつかの実施態様の基本的な理解をもたらすために、当該開示された主題の、簡略化された概要を提示する。この概要は、開示された主題の網羅的な概観ではない。この概要は、開示された主題の、鍵となる要素もしくは重要な要素を識別すること、または、開示された主題の範囲を叙述することが意図されていない。その唯一の目的とは、後に論じる、より詳細な説明の先行紹介として、簡略化された形式で、いくつかの概念を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一実施形態において、干渉除去のための方法が提供される。この方法の一実施形態は、複数のアンテナを備えるアンテナ・アレイ内のアンテナについて、複数のサブキャリアの各々の上でアンテナにおいて受信されたアナログ信号を使用して、干渉パラメータを推定するステップを含む。各干渉パラメータは、複数のサブキャリアのうちの1つの上で複数のユーザのうちの1人に送信される複数のシンボルのうちの1つに関連付けられる。この実施形態は、推定された干渉パラメータを使用して、複数のサブキャリア上でアンテナによって受信されたアナログ信号から干渉を除去するステップも含む。
【0012】
この方法のさらなる実施形態において、アンテナについての干渉パラメータの数は、アンテナ・アレイ内の他のアンテナの数から独立している。
【0013】
この方法のさらなる実施形態において、干渉パラメータを推定するステップは、干渉パラメータを推定して、アンテナにおいて受信されたアナログ信号と、干渉パラメータおよび対応するシンボルの積との間の差を最小化するステップを含む。
【0014】
この方法のさらなる実施形態において、アンテナによって受信されたアナログ信号から干渉を除去するステップは、アンテナによって受信された基底帯域信号から干渉を除去するステップを含む。
【0015】
この方法のさらなる実施形態において、アンテナによって受信されたアナログ信号から干渉を除去するステップは、アンテナによって受信された無線周波数信号から干渉を除去するステップを含む。
【0016】
この方法のさらなる実施形態において、この方法は、アナログ信号から干渉を除去するステップの後に、アナログ信号をデジタル信号に変換するステップを含む。
【0017】
この方法のさらなる実施形態において、干渉パラメータを推定するステップは、デジタル信号に基づき、干渉パラメータを推定するステップを含む。
【0018】
さらなる実施形態において、この方法は、複数のサブキャリア上でアンテナによって受信されたアナログ信号から干渉を除去するステップと同時に、エア・インターフェイスを通じた送信のために、複数のシンボルをプリコーディングするステップを含む。
【0019】
さらなる実施形態において、この方法は、複数のシンボルを全二重モードで送信するステップと、全二重モードで送信している複数のユーザから、アップリンク信号を同時に受信するステップとを含む。
【0020】
さらなる実施形態において、この方法は、複数のシンボルを全二重モードで送信するステップと、半二重モードで送信している複数のユーザのサブセットから、アップリンク信号を同時に受信するステップとを含む。
【0021】
さらなる実施形態において、この方法は、ユーザ間干渉の推定値またはユーザの位置の少なくとも1つに基づき、半二重モードでの受信または送信のために、ユーザのサブセットをスケジューリングするステップを含む。
【0022】
さらなる実施形態において、この方法は、アンテナ・アレイ内の各アンテナについて、干渉パラメータを推定するステップと、推定された干渉パラメータを使用して、アンテナ・アレイ内の複数のアンテナによって受信されたアナログ信号から干渉を除去するステップとを含む。
【0023】
別の実施形態において、干渉除去のために送受信機が提供される。送受信機の一実施形態は、複数のアンテナを備えるアンテナ・アレイ内のアンテナに、通信可能に結合されるように構成される。この送受信機の一実施形態は、複数のサブキャリアの各々の上でアンテナにおいて受信されたアナログ信号を使用して、干渉パラメータを推定するように構成される適応干渉ロジックを含む。各干渉パラメータは、複数のサブキャリアのうちの1つの上で複数のユーザのうちの1人に送信される複数のシンボルのうちの1つに関連付けられる。この送受信機のこの実施形態は、推定された干渉パラメータを使用して、複数のサブキャリア上でアンテナによって受信されたアナログ信号から干渉を除去するように構成される回路も含む。
【0024】
この送受信機のさらなる実施形態において、アンテナについての干渉パラメータの数は、アンテナ・アレイ内の他のアンテナの数から独立している。
【0025】
この送受信機のさらなる実施形態において、適応干渉ロジックは、干渉パラメータを推定して、アンテナにおいて受信されたアナログ信号と、干渉パラメータおよび対応するシンボルの積との間の差を最小化するように構成される。
【0026】
この送受信機のさらなる実施形態において、回路は、アンテナによって受信された基底帯域信号またはアンテナによって受信された無線周波数信号の少なくとも1つから、干渉を除去するように構成される。
【0027】
さらなる実施形態において、この送受信機は、アナログ信号から干渉を除去した後に、アナログ信号をデジタル信号に変換するように構成される受信回路を含む。
【0028】
この送受信機のさらなる実施形態において、受信回路は、デジタル信号に基づき、フィードバックを適応干渉ロジックに提供するように構成され、適応干渉ロジックは、フィードバックに基づき、干渉パラメータを推定するように構成される。
【0029】
さらなる実施形態において、この送受信機は、適応干渉ロジックが、複数のサブキャリア上でアンテナによって受信されたアナログ信号から干渉を除去するのと同時に、エア・インターフェイスを通じた送信のために、複数のシンボルをプリコーディングするように構成される送信回路を含む。
【0030】
この送受信機のさらなる実施形態において、送信回路は、複数のシンボルを全二重モードで送信するように構成され、受信回路は、全二重モードで送信している複数のユーザから、アップリンク信号を同時に受信するように構成される。
【0031】
この送受信機のさらなる実施形態において、送信回路は、複数のシンボルを全二重モードで送信するように構成され、受信回路は、半二重モードで送信している複数のユーザのサブセットから、アップリンク信号を同時に受信するように構成される。
【0032】
この送受信機のさらなる実施形態において、送受信機は、ユーザ間干渉またはユーザの位置の少なくとも1つの推定値に基づき、半二重モードでの受信または送信のために、ユーザのサブセットをスケジューリングするように構成される。
【0033】
さらに別の実施形態において、干渉除去のためのシステムが提供される。このシステムの一実施形態は、複数の送受信機を含む。複数の送受信機の各々は、アンテナ・アレイ内の複数のアンテナのうちの1本に、通信可能に結合されるように構成される。各送受信機は、複数のサブキャリアの各々の上でアンテナにおいて受信されたアナログ信号を使用して、干渉パラメータを推定するように構成される適応干渉ロジックを含む。各干渉パラメータは、複数のサブキャリアのうちの1つの上で複数のユーザのうちの1人に送信される複数のシンボルのうちの1つに関連付けられる。このシステムは、推定された干渉パラメータを使用して、複数のサブキャリア上でアンテナによって受信されたアナログ信号から干渉を除去するように構成される回路も含む。
【0034】
さらに別の実施形態において、干渉除去のための装置が提供される。この装置の一実施形態は、複数のアンテナを備えるアンテナ・アレイ内のアンテナについて、複数のサブキャリアの各々の上でアンテナにおいて受信されたアナログ信号を使用して、干渉パラメータを推定するための手段を含む。各干渉パラメータは、複数のサブキャリアのうちの1つの上で複数のユーザのうちの1人に送信される複数のシンボルのうちの1つに関連付けられる。この装置のこの実施形態は、推定された干渉パラメータを使用して、複数のサブキャリア上でアンテナによって受信されたアナログ信号から干渉を除去するための手段を含む。
【0035】
開示された主題は、同じ参照番号が同じ要素を特定し、かつ、以下の図を含む、添付の図面と共に読まれると、以下の説明を参照することによって理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】ワイヤレス通信システムの例示的実施形態を概念的に例示する図である。
図2】全二重送受信機の例示的実施形態を概念的に例示する図である。
図3A】全二重送受信機要素の第1の例示的実施形態を概念的に例示する図である。
図3B】全二重送受信機要素の第2の例示的実施形態を概念的に例示する図である。
図4】リバース・リンク・パイロット電力(P)およびMPの関数として総信号対雑音比を例示する図であって、ここで、Pがフォワード・リンク・アンテナ送信電力であり、Mがアンテナの数である、図である。
図5】相対的エネルギー効率とスペクトル効率との間のトレード・オフを例示する、シミュレーションの結果を描く図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
開示された主題には、様々な変更形態および代替的形式の余地がある状態で、その特定の実施形態が、図面では例として示され、本明細書では詳細に説明されている。しかしながら、特定の実施形態の本明細書における説明が、開示された主題を、開示された特定的な形式に限定することは意図されず、その反対に、添付の特許請求の範囲の範囲内に入る全ての修正変更形態、等価形態、および代替形態を含むことが意図される旨を理解されるべきである。
【0038】
特定の実施形態の詳細な説明
例示的な実施形態を、以下に説明する。明瞭にするために、実際の実装例の全ての特徴が、この明細書に必ずしも記載されているとは限らない。当然ながら、任意のこのような実際の実施形態の開発においては、1つの実装例から別の実装例へと変動する、システム関連およびビジネス関連の制約条件の遵守などの、開発者の特定の目標を達成するために、実装例に特有の多数の決断がなされるべきであることが認識されるであろう。そのうえ、このような開発努力は、複雑であって時間のかかるものであり得るが、それでもなお、この開示の利益を享受する、当該技術において通常の技量を有する者にとっては、日常的作業であることが認識されるであろう。
【0039】
添付の図面を参照して、開示された主題をこれから説明する。様々な構造、システム、およびデバイスは、解説の目的のためだけに、および、当該技術における当業者によく知られている詳細によって説明を曖昧にしないように、図面には模式的に描かれている。それでもなお、添付の図面は、開示された主題の例示的な例を記載および解説するために含まれている。本明細書で使用される語および句は、関連技術における当業者による、これらの語および句の理解と、整合性を有する意味を有しているものと理解および解釈されるべきである。用語または句の特別な定義、すなわち、当該技術における当業者によって理解される通常および通例の意味とは異なる定義が、本明細書における用語または句の、整合性を有する用法によって示唆されることは、意図されない。用語または句が特別な意味、すなわち、技量を有する技術者によって理解されるもの以外の意味を有することが意図される限りにおいては、このような特別な定義が、当該用語または句についての特別な定義を直接かつ曖昧さのない態様で提供する定義的態様において、明細書で明示的に明記されるものとする。
【0040】
一般に、本出願は、基地局の、送信を行うアンテナ間の干渉を除去または少なくとも低減して、これらの基地局の、信号を同時に送信および受信する能力を改善するために使用され得る技法を記載している。基地局は、モバイル・ユニットよりも著しく高い電力において送信を行う。結果的に、基地局アンテナにおける信号強度は、アンテナによって放射されるエネルギーによって支配され得る。このエネルギーは、自己干渉またはアンテナ間干渉と称され得る干渉を生じ得る。したがって、基地局は、当該基地局がダウンリンク信号を送信しているのと同時に、モバイル・ユニットがアップリンク信号を送信しているときに、モバイル・ユニットによって送信されたエネルギーを検出することができないことが考えられる。さらに、基地局がアップリンク送信を検出することができたとしても、エネルギー推定の正確度は、アナログ信号をデジタル信号に変換することによって、劣化するおそれがある。たとえば、従来の送受信機は、受信された信号をデジタル形式で表現するために、12ビットを使用する。これらの利用可能なビットのうちの、必ずしも全てではなくとも、そのほとんどは、アンテナ間干渉レベルがアップリンク信号強度よりも一段と高いときに、干渉を表現するために使用され得る。結果的に、アップリンク信号を表現するのに利用可能なビットの数は減少し、このことは、アップリンク信号強度の表現の正確度が、それに対応して低下することを生じる。このことは、ダウンリンク信号と同時にアップリンク信号を検出することを困難にするか、または不可能にするおそれがあり、それによって、システム設計者に、半二重(たとえば時分割二重)通信スキームの施行を強いる。
【0041】
干渉除去は、アンテナ間干渉を取り除き、それによって全二重通信を可能にするために使用され得る。たとえば、干渉除去は、基地局に取り付けられたM本のアンテナのうちの1本に対して実施され得、他のアンテナによって受信されたM−1個の無線周波数アナログ信号を反転することによって、実施され得る。他のアンテナのM−1個のチャネルと現行のアンテナとの間のチャネルを正確に表現するために、適切な遅延および減衰を特定して適用しなければならない。総計で、このような算出は、各アンテナにつき、約2M−2個のパラメータを推定することを必要とする。この干渉除去技法は、分散されるものではないが、その理由は、各アンテナが、他のアンテナから情報を収集する必要があるためである。さらに、この干渉除去技法は、アンテナの数(M)の増大に対し、良好な態様でスケーラブルに対応しないが、その理由は、演算の数が、Mとなるためである。
【0042】
したがって、本出願は、より良好な、スケーラブルに対応する特性を有する干渉除去技法の代替的な実施形態を記載するが、その理由は少なくとも部分的に、各アンテナにおいて実施される算出の数が、アンテナ・アレイ内の他のアンテナの数から独立していることが考えられるためである。一実施形態において、各サブキャリア上で各アンテナにおいて受信された信号についての、受信されたアップリンク信号の強度は、アンテナ・アレイ内のアンテナの残りのものと、対象となっているアンテナとの間における、組み合わされたチャネル効果を表現する、サブキャリアに関連付けられた干渉パラメータを推定するために使用され得る。推定された干渉パラメータを、次いで、変調されたシンボルに適用して、対象となっているアンテナにおけるアンテナ間干渉を表現するアナログ訂正信号を生成することができる。アンテナ間干渉は、アレイ内の他のアンテナの各々からの成分だけでなく、対象となっているアンテナからの自己干渉も含み得る。変調されたシンボルは、エア・インターフェイスを通じて同時に送信され得るように、プリコーディングもされ得る。アナログ訂正信号を、次いで使用して、対象となっているアンテナにおいて受信されたアナログアップリンク信号から、干渉を取り除くことができる。異なる実施形態において、アナログ訂正信号は、基底帯域信号または無線周波数信号であり得る。本明細書に記載された技法の実施形態は、アンテナ・アレイが多数のアンテナを含むシステムであって、当該多数のアンテナが、それよりも一段と少数のワイヤレス端末へのワイヤレス接続性を提供するために使用される、システムにおいて、特に有用であり得る。
【0043】
図1は、ワイヤレス通信システム100の例示的実施形態を概念的に例示する。ワイヤレス通信システム100は、Third Generation Partnership Project(3GPP、3GPP2)によって確立された規格および/またはプロトコルを含むが、それらに限定されない、合意に基づく規格および/またはプロトコルに従って、作動し得る。例示された実施形態において、ワイヤレス通信システム100は、複数のアンテナ110(1〜M)を使用して、エア・インターフェイス115を通じて複数個のワイヤレス対応端末120(1〜K)と通信する、1つまたは複数の基地局105を含む。ワイヤレス対応端末は、モバイル・フォン、スマート・フォン、タブレット・コンピュータ、およびラップトップ・コンピュータなどのモバイル・デバイスだけでなく、より低いモバイル性のデバイス、または、デスクトップ・コンピュータなどの非モバイル・デバイスも含み得る。ワイヤレス対応端末は、測定結果、無線周波数識別タグ、およびその他を送信するために、モニタまたはセンサなどの他のデバイスも含み得る。アンテナ110の数は、ワイヤレス対応端末120の数よりも大きいことが考えられ、したがって、M>>Kである。ワイヤレス通信システム100の異なる実施形態は、異なるタイプのビーム形成を施行して、ワイヤレス対応端末120との通信をサポートし得る。さらに、代替的実施形態において、ワイヤレス通信システム100は、基地局ルータ、アクセス・ポイント、マクロセル、マイクロセル、フェムトセル、ピコセル、およびその他などの他のワイヤレス・アクセス・デバイスを含み得る。これらの代替的デバイスもまた、複数本のアンテナを含み得、これらの代替的デバイスは、他の実施形態における基地局105と組み合わせて、または基地局105の代わりに、使用され得る。
【0044】
一実施形態において、ワイヤレス通信システム100は、ゼロ強制ビーム形成などのマルチユーザ・ビーム形成技法を施行する。マルチユーザ・ビーム形成は、マルチユーザMIMO技術の、準最適であって簡略化されたバージョンである。アップリンク上において、異なる自律端末120は、同じタイム/周波数スロット内でデータを送信することが考えられ、基地局105は、そのチャネル知識を利用して、個々のデータ・ストリームを抽出し得る。ダウンリンク上において、基地局105は、各端末120がそれ自体のデータ・ストリームを正しくデコーディングし得るように、アンテナ110と端末120との間のチャネル状態情報(CSI)の、基地局105自体が有する知識に基づき、データ・ストリームをプリコーディングし得る。マルチユーザ・ビーム形成は、ダーティ・ペーパー・コーディングなどの比較的複雑なプリコーディング方法を施行し得る容量最適マルチユーザMIMOの解決策よりも、計算上より扱いやすいものと考えられる。しかしながら、マルチユーザ・ビーム形成は、容量最適ではない。ゼロ強制ビーム形成は、データ搬送シンボルのK×lベクトルであるqに、M×K行列Aを乗算することにより、線形プリコーディングを利用して、送信ベクトルであるs、すなわちs=Aqを生じる。ゼロ強制ビーム形成において、行列Aは、以下のように規定される。
A=c・G(G−1 (2)
ここでGは、M×Kチャネル行列であり、cは、電力制約条件を満たすように選ばれた定数であり、上付き文字「」は、行列の複素共役を指す。ゼロ強制ビーム形成は、K≦Mの場合、端末間干渉をゼロに近く保つことができる。
【0045】
ゼロ強制ビーム形成は、M/K→∞であり、G〜約I(恒等行列)である実施形態において、共役ビーム形成で近似され得る。共役ビーム形成において、行列Aは、以下のように簡略化される。
A=c・G (3)
換言すると、行列Aを計算する問題は、基地局アンテナの数が、端末の数よりも一段と大きいときに、かなり簡略化される。共役ビーム形成の成功は、伝搬行列Gの列が、M/K>>1であるために、漸近的に直交するようになることにかかっている。漸近直交性は、見通し内伝搬が存在し、端末120が基地局105の周囲で角度をとってランダムに分散されている場合に達成され得る。漸近直交性は、端末120が、密に散在した環境内に配備されている場合にも達成され得る。伝搬行列が本質的に低ランクである場合、いずれのプリコーダも失敗し得る。一般逆行列は、計算するのがより困難であり得るが、何らかの事情下においては、共役ビーム形成よりも良好に働き得る。
【0046】
基地局105は、アンテナ110のアレイを利用して、たとえば、単一のタイム・スロット内で、または、シーケンシャルな、非シーケンシャルな、インターリーブされた、もしくは連続した複数のタイム・スロット内で、異なる端末120にシンボルを同時に送信することによって、K個の端末120に同時サービスを提供し得る。各スロットの持続時間は、スロットの持続時間に関し、どの1つも四分の一波長を超えて動かないように規定され得る。一実施形態において、K個の端末120は、基地局105によって応対される端末の、より大きな群のサブセットであり得る。端末120の異なるサブセットは、従来のシングル・ユーザ通信スキームにおいて、基地局105によって応対され得る。実施形態によっては、端末120の1つのサブセットとの通信は、端末120の別のサブセットとの通信に対して直交し得る。
【0047】
各端末120は、アップリンクを通じてパイロット信号を送信することができ、サービス・アレイ110によるパイロット・シーケンスの受信は、ワイヤレス通信システム100が、アップリンク・チャネルを推定することを可能にする。そのうえ、時分割二重(TDD)の相反性のおかげで、端末120からアンテナ110において受信されたパイロット・シーケンスを使用して、ダウンリンク・チャネルも推定され得る。チャネル状態情報(CSI)は、基地局105が、アップリンク上における個々の直交振幅変調(QAM)されたシーケンスを区別することと、端末120が、それらのそれぞれのQAMシーケンスのみを受信するように、基地局105が、ダウンリンク上においてプリコーディングを実施することとを可能にし得る。一実施形態において、アクティブな端末120についてのアップリンク・パイロットは、定期的にスケジューリングされ得る。
【0048】
ワイヤレス通信システム200は、アンテナ110が送信しているときに生じた干渉が取り除かれ得るように、アンテナ間干渉除去を実施する機能性を含む。一実施形態において、干渉除去は、基地局105が、端末120のうちの1つまたは複数によって送信されたアップリンク信号を検出することを可能にし得る。したがって、ワイヤレス通信システム200は、全二重通信をサポートし得る。たとえば、基地局105および端末120は、アップリンク信号およびダウンリンク信号を同時に送信および受信することが可能であり得る。本明細書において論じられる代替的実施形態において、基地局105は、当該基地局105がダウンリンク信号の送信およびアップリンク信号の受信を同時に行うように、全二重モードで作動することが考えられ、その一方で、端末120のうちのいくつかまたは全ては、半二重端末120が、相互に排他的な時間間隔において、アップリンク信号の送信およびダウンリンク信号の受信を行うように、半二重モードで作動する。一実施形態において、干渉除去は、各々が、対応するアンテナ110に接続された送受信機(TX/RX)125(1〜M)において実施される。
【0049】
図2は、全二重送受信機200の例示的実施形態を概念的に例示する。例示された実施形態において、全二重送受信機200は、サーキュレータ215を使用して送受信機回路に接続されたアンテナ210を各々が含む、複数の全二重送受信機要素205(1〜M)を含む。代替的実施形態は、送受信機回路をアンテナ210に結合するために、フィルタなどの他の要素か、または他のデュプレクサを使用し得る。全二重送受信機200を使用して、アップリンクおよびダウンリンクを通じて、K個のユーザ機器またはワイヤレス対応端末へのワイヤレス接続性を提供し得る。たとえば、1つの送信間隔中に、全二重送受信機200は、対応するK個の端末に、シンボル(Q,…,Q)220を送信するように構成され得る。したがって、シンボル220は、エンコーディング、変調、プリコーディング、および、エア・インターフェイスを通じた端末への送信のために、送受信機要素205に提供され得る。一実施形態において、アンテナの数は、端末の数よりも大きく、したがって、M>>Kである。しかしながら、任意の数のアンテナおよび/または端末が存在し得ることを、本開示の利益を享受する、当該技術において通常の技量を有する者は、認識されるべきである。
【0050】
送受信機回路は、送受信機要素205(1)について、より詳細に例示されている。明瞭にするために、この詳細は、他の送受信機205(2〜K)から省略されている。例示された実施形態では、シンボル220を表現するデジタル信号が、送受信機要素205(1)の異なる部分に提供される。シンボル220の1つのコピーまたはバージョンが、送受信機要素205(1)の送信ブランチ内にあるエンコーダ225(1)に提供される。エンコーダ225(1)は、受信されたデジタル・シンボルをエンコーディングし、次いで、エンコーディングされたシンボルを、アナログ基底帯域信号に変換するために、デジタル・アナログ変換器(DAC)230(1)に転送し得る。アナログ基底帯域信号は、次いで、適切な変換器235(1)によって無線周波数信号に変換され得、当該無線周波数信号は、エア・インターフェイスを通じた送信のために、サーキュレータ215(1)およびアンテナ210(1)に提供され得る。
【0051】
デジタル・シンボル220の別のコピーまたはバージョンは、適応干渉キャンセラ240に提供され得る。適応干渉キャンセラ240は、アンテナ210(1)によって受信された信号エネルギーを使用して、アンテナ210(1)によって受信されたアンテナ間干渉を表す補正ファクタを推定し得る。例示された実施形態において、干渉除去のためにアンテナ210(1)によって使用される補正ファクタの数は、端末の数(K)にスケーラブルに対応し、他のアンテナ210(2〜M)の数から独立している。そのうえ、例示された実施形態において、干渉パラメータを推定するために使用される情報は、送受信機要素205(1)において利用可能であり、したがって、適応干渉キャンセラ240は、他の送受信機要素205(2〜M)から情報を収集する必要のないことが考えられる。適応干渉キャンセラ240によって生成された補正ファクタは、次いで、送受信機要素205(1)の干渉除去ブランチに提供され得る。
【0052】
シンボル220の第3のコピーまたはバージョンは、送受信機要素205(1)の干渉除去ブランチ内にあるエンコーダ225(2)に提供され得る。エンコーダ225(2)は、提供された補正ファクタを使用して、シンボル220のデジタル表現を修正変更し、それによって、これらの修正変更されたシンボルが、アンテナ210によって送信されるときに、アンテナ210(1)において生じるアンテナ間干渉を近似するようにし得る。補正ファクタを適用することによって、デジタル・シンボル220が修正変更された後に、エンコーダ225(2)は、修正変更されたデジタル・シンボルをエンコーディングし、次いで、エンコーディングされたシンボルを、アナログ基底帯域信号に変換するために、デジタル・アナログ変換器(DAG)230(2)に転送し得る。アナログ基底帯域信号は、次いで、適切な変換器235(2)によって、無線周波数信号に変換され得る。
【0053】
送受信機要素205(1)の干渉除去ブランチ内で生成された無線周波数信号は、送受信機要素205(1)の受信ブランチに提供されて、アンテナ210(1〜M)からの送信によって生じるアンテナ間干渉を除去するために使用され得る。例示された実施形態において、無線周波数信号は、アンテナ210(1)によって受信された無線周波数信号も受信する合算器242に提供される。したがって、合算器242を使用して、干渉除去ブランチ内で生成された無線周波数信号に、受信された無線周波数信号を組み合わせることによって、受信された無線周波数信号から干渉を除去し得る。たとえば、受信された無線周波数信号は、無線周波数信号のネゲートされたバージョンまたは反転されたバージョンに組み合わされるか、または合算されて、アンテナ210(1〜K)から受信された無線周波数信号の、推定されたバージョンを減算することができる。したがって、例示された実施形態では、デジタル・ドメインにおいて補正ファクタが推定され、アナログ・ドメインにおいて除去が実施される。しかしながら、代替的実施形態は、他の回路を使用して、アナログ・ドメインにおいて補正ファクタを推定し得る。
【0054】
干渉除去の後に、残存する、受信された無線周波数信号は、無線周波数信号を基底帯域信号に変換するために、変換器245に提供され得る。アナログ基底帯域信号は、次いで、この基底帯域信号のデジタル表現を生成するために、アナログ・デジタル変換器(ADC)250に提供され、基底帯域信号のデジタル表現は、次いで、受信された信号をデコーディングするために、デコーダ255に提供される。一実施形態では、適応干渉キャンセラ240が補正ファクタの推定値をさらに改良し得るように、デコーダ255からのフィードバックが、適応干渉キャンセラ240に提供され得る。
【0055】
図3Aは、全二重送受信機要素300の第1の例示的実施形態を概念的に例示する。例示された実施形態において、全二重送受信機要素300は、直交周波数分割多重(OFDM)に従って作動し、したがって、複数の直交したサブキャリア上で信号を送信するために使用され得る。送受信機要素300は、サーキュレータ302を使用して送受信機回路に接続されたアンテナ301を含む。送受信機要素300は、図1に示される基地局105などの基地局において、または、図2に示される送受信機200などの全二重送受信機において、実装される複数の送受信機要素のうちの1つであり得る。例示された実施形態において、送受信機要素300は、送信シンボル305(1〜K)を、対応する数(K)のユーザ機器またはワイヤレス対応端末に送信するために使用される。例示された実施形態において、送受信機要素300は、K個のワイヤレス対応端末に送信するために使用され得るM本の基地局アンテナのうちの1本である。ワイヤレス対応端末の各々は、単一のアンテナを有しているものと想定されるが、代替的実施形態が、2本以上のアンテナを有するワイヤレス対応端末へのワイヤレス接続性を提供し得ることを、本開示の利益を享受する、当該技術において通常の技量を有する者は、認識されるべきである。
【0056】
演算において、シンボルの各々のデジタル表現は、シリアル・パラレル変換器310に提供され、次いで、適切なスキームを使用してシンボルを変調し、かつ、変調されたシンボル(qkf)をサブキャリアf=1,2…,Fにマッピングするために、変調器315に提供される。一実施形態において、各シンボルqkfは、サブキャリアfにマッピングされた端末k(ここで1≦k≦K)に対するQAMシンボルであり得る。変調されたシンボルqkfのデジタル表現は、適応干渉キャンセラ320に提供され得る。M−1本のアンテナと、送受信機要素300の送信チェーンから送受信機要素300の受信チェーンへの信号漏洩とによって生じた干渉は、K個の端末に送信されたシンボルqkfの線形組み合わせによって表現され得る。端末1〜Kに対するシンボルのシーケンスは、例示された実施形態において、Q〜Qである。所与のサブキャリアfおよびアンテナmについて、干渉信号は、以下のように記述され得る。
【数1】
ここで、方程式(4)において、q1f〜qKfは、それぞれ、端末1,2,…,Kに送信されるべきシンボルである。シンボルq1f〜qKfの各々は、サブキャリアfにマッピングされる。サブキャリアf上で特定的なアンテナymfにおいて受信された信号は、アップリンクにおいてL個の端末から受信された信号yu,mfと、自己干渉yI,mfとの総和である。したがって、以下のようになる。
【数2】
例示された実施形態において、yu,mfの値は、パラメータamkfのセットを推定することによって、推定され得る。たとえば、パラメータamkfのセットの値は、以下の最小化によって推定され得る。
【数3】
この最小化は、パラメータamkfのセットの値を生成するために使用され得るが、その理由は、送信された信号および受信された信号が、相関関係にないためである。たとえば、方程式(6)は、最小二乗平均推定法を使用して解くことができる。本明細書で論じるように、実施形態によっては、受信チェーンから受信されたフィードバックに基づき、フィードバック制御機構を使用して精度を微調整するために、適応手続きを使用することができる。
【0057】
例示された実施形態において、適応干渉キャンセラ320は、各サブキャリアfに対するK個の干渉パラメータamkfを推定する。適応干渉キャンセラ320は、受信された信号上において除去が行われた後の、残留信号からのフィードバックに基づき、適応的に算出を実施し得る。各サブキャリアに対する干渉パラメータamkfは、次いで、たとえば乗算器325(図3では数字によって1つのみが示されている)を使用して、変調されたシンボルq1f,q2f,…,qKfと組み合わされて、各サブキャリア(f)およびユーザ(k)に対する、変調されて修正変更されたシンボルを生成し得る。各サブキャリアに対する、変調されて修正変更されたシンボルは、たとえば加算器330(図3では数字によって1つのみが示されている)を使用して組み合わされ得る。組み合わされたシンボルは、高速Fourier逆変換要素(IFFT)335に提供され、次いで、アナログ・ドメインに変換するために、デジタル・アナログ変換器340に提供され得る。結果的に生じるアナログ基底帯域信号は、基底帯域・無線周波数変換器345を使用して、無線周波数信号に変換され得る。
【0058】
変換器345によって生成された無線周波数信号は、アンテナ301によって受信されたアンテナ間干渉信号に近似し得る。したがって、この信号は、アンテナ301によって受信された信号から、アンテナ間干渉を除去するために使用され得る。例示された実施形態において、無線周波数信号は、アンテナ301によって受信された無線周波数信号も受信する合算器350に提供される。したがって、合算器350を使用して、干渉除去ブランチ内で生成された無線周波数信号に、受信された無線周波数信号を組み合わせることによって、受信された無線周波数信号から干渉を除去し得る。たとえば、受信無線周波数信号は、無線周波数信号のネゲートされたバージョンまたは反転されたバージョンと組み合わされるか、または合算されて、アンテナ・アレイ内のアンテナ301および他のアンテナから受信された無線周波数信号の、推定されたバージョンを減算することができる。したがって、例示された実施形態では、デジタル・ドメインにおいて補正ファクタが推定され、アナログ・ドメインにおいて干渉除去が実施される。しかしながら、代替的実施形態は、他の回路を使用して、アナログ・ドメインにおいて補正ファクタを推定し得る。
【0059】
干渉除去の後に、残存する、受信された無線周波数信号は、無線周波数信号を基底帯域信号に変換するために、変換器355に提供され得る。アナログ基底帯域信号は、次いで、この基底帯域信号のデジタル表現を生成するために、アナログ・デジタル変換器(ADC)360に提供され、基底帯域信号のデジタル表現は、次いで、高速Fourier変換要素(FFT)365に提供される。一実施形態では、適応干渉キャンセラ320が補正ファクタの推定値をさらに改良し得るように、FFT365からのフィードバックが、適応干渉キャンセラ320に提供され得る。たとえば、フィードバックは、パイロット信号または他の信号を表す信号を含み得、したがって、たとえば、アンテナ301とワイヤレス対応端末のうちの1つまたは複数との間の環境において散在していることによるマルチパス効果を推定および/または説明するために、このフィードバックは、適応干渉キャンセラ320によって使用され得る。
【0060】
例示された実施形態において、変調されたシンボルqkfのデジタル表現は、送受信機300の送信ブランチにも提供され得る。送信ブランチは、変調されたシンボルqkfをプリコーディングするために使用され得るプリコーディング行列を生成するために使用されるプリコーダ370を含む。各サブキャリアに対するプリコーディング行列hmkfは、次いで、たとえば乗算器325(図3では数字によって1つのみが示されている)を使用して、当該変調されたシンボルq1f〜qKfと組み合わされて、各サブキャリア(f)およびユーザ(k)に対する、変調されて修正変更されたシンボルを生成し得る。各サブキャリアに対する、変調されて修正変更されたシンボルは、たとえば加算器330(図3では数字によって1つのみが示されている)を使用して、組み合わされ得る。組み合わされたシンボルは、高速Fourier逆変換要素(IFFT)335に提供され、次いで、アナログ・ドメインへの変換のために、デジタル・アナログ変換器340に提供され得る。結果的に生じるアナログ基底帯域信号は、基底帯域・無線周波数変換器345を使用して、無線周波数信号に変換され得、無線周波数信号は、サーキュレータ302を介してアンテナ301に伝達され得る。したがって、例示された実施形態において、送受信機300は、1人または複数のユーザからアップリンク信号を受信するのと同時に、送信チェーンを使用して、1人または複数のユーザにダウンリンク・シンボルが送信され得るように、全二重モードで使用され得る。
【0061】
図3Bは、全二重送受信機要素375の第2の例示的実施形態を概念的に例示する。例示された実施形態において、全二重送受信機要素375は、直交周波数分割多重(OFDM)に従って作動し、したがって、複数の直交したサブキャリア上で信号を送信するために使用され得る。送受信機要素375は、送受信機要素300の第1の例示的実施形態と、多くの同じ要素を共有するが、送受信機要素375の第2の例示的実施形態は、送受信機要素300の第1の例示的実施形態によって使用された干渉除去経路とは異なる、代替的な干渉除去経路を使用する。明瞭にするために、共有されている機能要素は、同じ数字によって示され、送受信機要素300の第1の例示的実施形態中の対応する要素と同じ態様で機能し得る。しかしながら、代替的実施形態が、本明細書に記載された技法の、異なる実施形態を施行するために、機能要素の異なる組み合わせを使用し得ることを、本開示の利益を享受する、当該技術において通常の技量を有する者は、認識すべきである。
【0062】
第1の例示的実施形態に関して本明細書で論じたように、シンボル305の各々のデジタル表現は、シリアル・パラレル変換器310に提供され、次いで、適切なスキームを使用してシンボルを変調し、かつ、変調されたシンボル(qkf)をサブキャリアf=1,2,…,Fにマッピングするために、変調器315に提供される。デジタル表現のコピーまたはバージョンは、送受信機375の送信ブランチ、受信ブランチ、および適応干渉除去ブランチに提供され得る。例示された実施形態において、適応干渉キャンセラ320は、各サブキャリアfに対するK個の干渉パラメータamkfを推定する。適応干渉キャンセラ320は、受信された信号上において除去が行われた後の、残留信号からのフィードバックに基づき、適応的に算出を実施し得る。各サブキャリアに対する干渉パラメータamkfは、次いで、たとえば乗算器325を使用して、変調されたシンボルq1f〜qKfと組み合わされて、各サブキャリア(f)およびユーザ(k)に対する、変調されて修正変更されたシンボルを生成し得る。各サブキャリアに対する、変調されて修正変更されたシンボルは、たとえば加算器330を使用して組み合わされ得る。組み合わされたシンボルは、高速Fourier逆変換要素(IFFT)335に提供され、次いで、アナログ・ドメインに変換するために、デジタル・アナログ変換器380に提供されて、アナログ基底帯域信号が形成され得る。DAC380は、送受信機要素300の第1の例示的実施形態に示されるDAC320とは異なるが、その理由は、DAC380からの信号が、送受信機要素375の第2の例示的実施形態の受信ブランチに、直接提供されるためである。したがって、DAC380の構造は、DAC320の構造とは異なり得る。例示された実施形態において、干渉除去経路は、基底帯域・無線周波数変換器を含まない。
【0063】
DAC380によって生成されたアナログ基底帯域信号は、アンテナ301によって受信された無線周波数信号を使用して、無線周波数・基底帯域変換器355によって産出されたアンテナ間干渉信号に近似し得る。したがって、アナログ基底帯域信号は、アンテナ301によって受信された信号から、アンテナ間干渉を除去するために使用され得る。例示された実施形態において、アナログ基底帯域信号は、無線周波数・基底帯域変換器355によって産出されたアナログ基底帯域信号も受信する合算器385に提供される。したがって、合算器385を使用して、受信されたアナログ基底帯域信号を、干渉除去ブランチ内で生成されたアナログ基底帯域信号と組み合わせることによって、受信されたアナログ基底帯域信号から干渉を除去し得る。たとえば、受信されたアナログ基底帯域信号は、アナログ基底帯域信号のネゲートされたバージョンまたは反転されたバージョンと組み合わされるか、または合算されて、変換器355によって産出されたアナログ基底帯域信号の、推定されたバージョンを減算することができる。したがって、例示された実施形態では、デジタル・ドメインにおいて補正ファクタが推定され、アナログ・ドメインにおいて干渉除去が実施される。しかしながら、代替的実施形態は、他の回路を使用して、アナログ・ドメインにおいて補正ファクタを推定し得る。
【0064】
干渉除去の後に、残存する、受信された無線周波数信号は、無線周波数信号を基底帯域信号に変換するために、変換器355に提供され得る。アナログ基底帯域信号は、次いで、この基底帯域信号のデジタル表現を生成するために、アナログ・デジタル変換器(ADC)360に提供され、基底帯域信号のデジタル表現は、次いで、高速Fourier変換要素(FFT)365に提供される。一実施形態では、適応干渉キャンセラ320が補正ファクタの推定値をさらに改良し得るように、FFT365からのフィードバックが、適応干渉キャンセラ320に提供され得る。たとえば、フィードバックは、パイロット信号または他の信号を表す信号を含み得、したがって、たとえば、アンテナ301とワイヤレス対応端末のうちの1つまたは複数との間の環境において散在していることによるマルチパス効果を推定および/または説明するために、このフィードバックは、適応干渉キャンセラ320によって使用され得る。
【0065】
例示された実施形態において、変調されたシンボルqkfのデジタル表現は、送受信機375の送信ブランチにも提供され得る。送信ブランチは、変調されたシンボルqkfをプリコーディングするために使用され得るプリコーディング行列を生成するために使用されるプリコーダ370を含む。各サブキャリアに対するプリコーディング行列hmkfは、次いで、たとえば乗算器325を使用して、当該変調されたシンボルq1f〜qKfと組み合わされて、各サブキャリア(f)およびユーザ(k)に対する、変調されて修正変更されたシンボルを生成し得る。各サブキャリアに対する、変調されて修正変更されたシンボルは、たとえば加算器330を使用して、組み合わされ得る。組み合わされたシンボルは、高速Fourier逆変換要素(IFFT)335に提供され、次いで、アナログ・ドメインへの変換のために、デジタル・アナログ変換器340に提供され得る。結果的に生じるアナログ基底帯域信号は、基底帯域・無線周波数変換器345を使用して、無線周波数信号に変換され得、無線周波数信号は、サーキュレータ302を介してアンテナ301に伝達され得る。したがって、例示された実施形態において、送受信機375は、1人または複数のユーザからアップリンク信号を受信するのと同時に、送信チェーンを使用して、1人または複数のユーザにダウンリンク・シンボルが送信され得るように、全二重モードで使用され得る。
【0066】
図3A図3Bにおいて描かれた設計の実施形態は、分散された様式で施行され得るが、その理由は、所与のアンテナmにおいて、qkfが既知であるためである。結果的に、図3A図3Bにおいて描かれた設計の実施形態は、共役ビーム形成の枠組み内において良好に働き得る。例示された実施形態において、適応干渉キャンセラ320は、デジタル・ドメインにおいてamkfを特定するが、除去は、アナログ・ドメインにおいて行われる。代替的実施形態では、アナログ・ドメインにおいてamkfを推定するために、アナログ回路が使用され得る。さらに、例示された実施形態では、受信されたチェーン内の干渉を除去するために、単一のRFアナログ信号が使用される。この設計は、結果的に、非常にスケーラブルである。明瞭にするために、請求項に係る主題に関係のない、送受信機300、375の要素は、図3A図3Bには描かれていない。たとえば、DACとIFFTとの間において、パラレル・シリアル変換器が実装され得る。別の例に関し、送受信機要素300、375内に、サイクリック・プレフィックス挿入コンポーネントが含まれ得る。
【0067】
図3A図3Bにおいて描かれた設計の実施形態は、従来の実務を凌駕する数々の利点を有し得る。たとえば、従来の干渉除去技法は、M−1本のアンテナと、考慮しているアンテナとの間におけるチャネルを表現または推定するために、M−1個の無線周波数アナログ信号を反転すること、次いで、適切な遅延および減衰を適用することが必要になる。遅延および減衰を得るために、M−1本のアンテナと、考慮しているアンテナmとの間におけるチャネルが推定されなければならない。加えて、M−1個の無線周波数アナログ信号と、除去のために使用される干渉キャンセラまたは合算器との間の配線式チャネルが、良好な程度の正確度まで推定されなければならない。アンテナmが、M−1本のアンテナの各々から送信された信号についても既知である必要があることに留意されたい。結果的に、従来の手法は、分散設計ではない。そのうえ、従来の手法では、少なくとも2M−2個のパラメータを推定する必要があり、ここで、本明細書に記載された技法の実施形態は、各サブキャリアに対してK個の干渉パラメータを推定するに過ぎない。さらに、従来の手法は、M−1個のアナログ信号インバータ(たとえばバラン)を必要とする。
【0068】
これまでのセルラー送信に関し、送信される信号の最大電力は、受信される信号の最小強度よりも高い、80〜120dBであり得る。たとえば、熱雑音は、1Hzにつき−174dBmである。10MHzチャネルに関し、熱雑音電力は、−104dBmである。3dBまでのさらなる雑音も存在し得る。信号が、雑音よりも10dB高くなければならない場合、デコーディングのための最小信号電力は、−91dBmである。従来の基地局に関し、送信される電力は、20Wであり得る。M−1本のアンテナの各々と、考慮しているアンテナmとの間に、10dBの減衰が存在し得る。したがって、受信される信号の電力は、およそ33dBmであり、それによって、除去利得は、33+91=124dBよりも大きくなるはずである。Prefを、これまでの基地局の基準電力、たとえば20Wと考えられたい。
【0069】
これとは対照的に、多数のアンテナを有するアンテナ・アレイを実装する基地局の総電力は、P=Pref/Mであり得る。一実施形態において、各アンテナの電力は、Pant=Pref/Mである。アンテナmにおいて、他のM−1本のアンテナの、K個の端末への送信から受信された信号は、次いで、以下のようになり得る。
【数4】
ここで、hmlfは、サブキャリアfについての、基地局アンテナmと基地局アンテナlとの間のチャネルであり、slfは、サブキャリアfにおける、アンテナlの、送信された信号である。送信された信号は、以下により与えられ得る。
【数5】
これらの数式において、hlkfは、サブキャリアfにおける基地局アンテナlと端末kとの間のチャネルであり、qkfは、端末kに対するシンボルである。受信された自己干渉信号は、次いで、以下により与えられ得る。
【数6】
以下の寄与であって、
【数7】
受信された自己干渉信号への寄与が、コヒーレントに加算しないため、自己干渉信号は、Mの平方根に比例して大きくなる。したがって、受信された自己干渉総電力は、Pref/Mである。アンテナの数がM=100である場合、アンテナ・アレイは、これまでの基地局を通じて20dBの利得をもたらし得る。アンテナ・アレイによって達成される利得は、アンテナの数と共に増大し、一実施形態において、本明細書に記載された複数本のアンテナ・システムは、10logMのさらなる利得を達成し得る。
【0070】
本明細書に記載された技法の実施形態は、アナログ・ドメインにおいて自己干渉を除去するために、適応干渉除去を使用する。実施形態によっては、干渉除去スキームが、さらなるデジタル除去を実施することにより、多重経路残留自己干渉を取り扱い得る。アナログ除去およびデジタル除去は、合わせて、70dBの利得を達成し得る。M=100である場合、多数のアンテナとアンテナ・アレイとを使用することによって生じる、20dBのさらなる利得が存在し得る。したがって、本明細書に記載されたシステムの実施形態は、90dBの利得を達成し得る。本明細書に記載された技法の実施形態の1つの利点は、利得が、アンテナの数の増加に伴って増大することである。したがって、必要とされる利得は、アンテナ・アレイ内に充分な数のアンテナを実装することによって達成することができる。そのうえ、本明細書に記載された技法の代替的実施形態を使用して実現され得る、さらなる利得の他の2つの発生源が存在し得る。第1には、端末送信電力が、アンテナの数に関して比例する態様でスケーラブルに対応しない場合、アナログ除去後の信号を基準にすると、端末から受信された信号電力は、多数のアンテナを有するアンテナ・アレイが使用されているときに一段と高くなることが考えられる。結果的に、デジタル除去は、さらなる利得をもたらし得る。第2には、たとえば、金属を使用してアンテナをシールドすることにより、または、指向性アンテナを使用することにより、より良好なアンテナ分離を達成することができる。一実施形態において、これらの技法からのさらなる利得は、30dBの差異を埋め合わせ得る。
【0071】
例示された実施形態において、アンテナ・アレイは、チャネル推定のために、たとえばリバース・リンク・パイロットを使用する。図4に示されるように、総信号対雑音比(SNR)400は、MPに比例し、ここでPは、リバース・リンク・パイロット電力であり、Pは、フォワード・リンク・アンテナ送信電力であり、Mは、アンテナの数である。この電力制約条件のために、実施形態によっては、基地局およびワイヤレス対応端末の両方に対する全二重送信を、複数本のアンテナの利得がサポートし得るように、動作電力が選ばれ得る。しかしながら、場合によっては、送信するエンティティの全てについての全二重送信をサポートする動作点が、利用可能であるとは限らないことが考えられる。最適な動作点が特定的な実施形態に対して存在しない場合、ワイヤレス対応端末のいくつかまたは全てが、半二重で作動しなければならないことが考えられる。たとえば、基地局は、ワイヤレス対応端末の少なくともいくつかからアップリンク信号を受信すること、および、ダウンリンク信号を送信することを同時に行うように、継続して全二重で作動し得る。しかしながら、個々のワイヤレス対応端末は、アップリンク信号の送信または基地局からのダウンリンク信号の受信のいずれかを行うように、半二重モードで作動しなければならないことが考えられる。
【0072】
ワイヤレス対応端末のいくつかまたは全てが半二重で作動する場合、端末の1つの部分が送信を行い、端末の別の部分が任意の所与の時間に受信を行う。基地局は、発信機セットおよび受信機セットを選択することによって、送信をスケジューリングして、発信する端末と受信する端末との間の干渉を最小化または低減することができる。一実施形態において、半二重ワイヤレス対応端末のスケジューリングは、これらの端末の位置、および/または、端末からの信号の到来角などの高レベルの情報を使用することによって、容易化され得る。たとえば、基地局は、複数人のユーザまたは複数個のワイヤレス対応端末の位置を示す情報に基づき、複数本のアンテナからの送信のために、複数人のユーザへのパケットをスケジューリングし得る。この情報は、複数本のアンテナにおいて受信されたアップリンク信号を使用することによって得られ得る。異なるアンテナにおいてユーザから受信された信号間の相対的遅延は、信号の到来角を特定するために使用され得る。したがって、複数人のユーザへのパケットは、異なるユーザからの信号の到来角間の角度差に基づいてスケジューリングされ得る。別の例に関し、アンテナにおいて受信された信号の信号強度は、基地局からユーザまでの距離を推定するために使用され得る。複数人のユーザからのパケットは、これらの距離間の差に基づき、スケジューリングされ得る。さらに、パケットをスケジューリングするために、到来角の情報、距離の情報、および他の位置情報の、様々な機能上の組み合わせも使用され得る。
【0073】
戻って図1を参照すると、ワイヤレス通信システム100の実施形態は、従来のシステムを凌駕する数々の利点を有し得る。たとえば、アンテナ・アレイ110の総計セル容量(aggregate cell capacity)を解析するために、単一セル近似(single cell approximation)を使用することができる。基地局105の例示された実施形態は、T個のシンボルを備える1つのスロット内においてK個の端末120に応対する、M本のアンテナを組み込んでいる。例示された実施形態において、タイム・スロットは、アップリンク・パイロット送信およびダウンリンク・データ送信のために使用される。直交したパイロット・シーケンスの持続時間はtであり、ここで、K≦t≦Tである。伝搬行列は、独立したRayleighフェージングを含み、伝搬係数は、既知ではない。期待されるアップリンク信号対雑音比(SNR)は、pと表記され、期待されるダウンリンクSNRは、pと表記される。SNRは、本明細書において、送信を行う単一のアンテナおよび受信を行う単一のアンテナに関して規定される。瞬間総計容量(ビット/シンボル)であるCは、下限が以下のように示され得る。
【数8】
方程式(10)における関係は、増加するM、すなわち、より多くのアンテナ110を有することが、セルの容量を増大させることを示す。したがって、Mが大きければ、積pτという値である、チャネル推定値の低品質だけでなく、pという値である、総送信電力の減少をも補償することができる。その一方で、同時に応対される端末の数であるKが増加することは、セル容量を必ずしも増大させるとは限らないことが考えられるが、その理由は少なくとも部分的に、アップリンク・パイロット信号を発信するのに必要とされる時間の量が、Kに比例するためである。
【0074】
方程式(10)における関係は、多数のアンテナ110を組み込むこと、すなわち、Mが大きいことが、より少数のアンテナ(たとえばM≦4)または単一のアンテナを組み込んでいるシステムを基準にすると、より小さな総送信電力(p)で、同じ総計容量の達成を可能にすることも示す。極めて大きなMを用いることにより、基地局105は、より少数のアンテナ(たとえばM≦4)を組み込んでいる従来の基地局に必要とされる総送信電力よりも数桁小さい総送信電力で、より高い総計容量を達成することができる。そのうえ、これまでの基地局アンテナは、必要とされる20〜40ワットの送信電力を送出するために、高出力電力増幅器を利用している。高出力電力増幅器は、極めて高い電力を消費し、冷却機器を必要とし、当該冷却機器は、追加の電力を消費するだけでなく、追加のスペースも占有する。いくつかの従来の推定値によると、冷却は、これまでの基地局の運用コストの約50%を占め得る。これとは対照的に、発明者らは、アンテナ110などのアンテナ・アレイの実施形態が、一段と低い電力要件、たとえば数ワットまたは10分の数ワットの電力要件を有し得ることを構想している。結果的に、基地局105および/またはアンテナ110は、冷却機器を何ら必要としないことが考えられ、同様の容量、または、より高い容量さえももたらしつつ、これまでの基地局よりも一段と低い運用コストを有することが考えられる。
【0075】
基地局105およびアンテナ・アレイ110の実施形態は、スペクトラム効率とエネルギー効率との間における、極めて有用なトレード・オフもサポートし得る。たとえばダウンリンクを使用すると、スペクトラム効率は、データを送信するのに費やした時間の小数部に等しいファクタを含めることによる、最終総計スループットである、(1−t/T)・Cという値であり得る。ダウンリンク・エネルギー効率は、C/pの値であり得る。したがって、pを変動させることによって、基地局105は、ダウンリンクのスペクトラム効率とエネルギー効率との間において、融通性を有するトレード・オフを可能にする。同様のトレード・オフが、アップリンク送信についても存在する。この融通性を使用して、セルの異なる負荷量に適応することができる。たとえば、セルの高負荷の期間においては、スペクトラム効率が好ましく、軽負荷の期間中においては、エネルギー効率が好ましい。
【0076】
図5は、M=100本のサービス・アンテナと、K=1個の端末(曲線510)と、K>1個の端末(曲線515)との場合についての、相対的エネルギー効率とスペクトル効率との間のトレード・オフを例示するシミュレーションの結果500を描いている。縦軸は、相対的エネルギー効率を示し、横軸は、スペクトル効率を示す。結果500は、フォワード・パイロットを用いる従来の単一アンテナ・リンクを備える基準シナリオのエネルギー効率を基準として算出された相対量として、エネルギー効率を描いている。送信は、T=98個のシンボル(500マイクロ秒のスロット持続時間と、4.76マイクロ秒のチャネル遅延広がりとに対応する)から成るスロットにおいて生じる。アップリンクの期待SNRは、0dB(p=1)であり、基準シナリオについて、ダウンリンクの期待SNRは、10dBである。アスタリスク505は、2.55ビット/シンボルのスペクトル効率と、1の相対的エネルギー効率とを有する基準シナリオに対応する。曲線510は、スペクトル効率が制約条件であるものと想定し、かつ、総ダウンリンク電力pに対する制約条件に従うものと想定して、計算された。時間期間1≦t≦Tにおけるトレーニングの量が、エネルギー効率を最大化するように調節された。
【0077】
それを通じて最適化を行うための、さらなるパラメータ(K)が、制約条件K≦t≦Tに従う状態で、同様の最適化により、曲線515が生じた。曲線上の点は、総ダウンリンク電力を示しており、たとえば10dBは、基準シナリオで使用される同じ電力に対応する。図5のプロットは、M=100本のサービス・アンテナが、基準シナリオに比べ、放射されたエネルギーの効率において、100倍の改善を生じることを実証している。K=1個の端末に関し、このことは、互角のスペクトル効率を維持したまま、基準シナリオに比べて100分の1に電力を削減することによって達成される。K>1個の端末に関し、このことは、10分の1に電力を削減し、8倍だけスペクトル効率を高めることによって達成される。動作点を変更する能力−需要が低いときには高エネルギー効率および低スペクトル効率にし、需要が高いときにはその逆にする−は、サービス・プロバイダにとって魅力的なはずである。
【0078】
開示された主題の部分と、対応する詳細な説明は、ソフトウェア、または、コンピュータ・メモリ内のデータ・ビットに対する演算のアルゴリズムおよびシンボリック表現、という観点で提示される。これらの記載および表現は、それらを用いることによって、当該技術において通常の技量を有する者が、当該技術において通常の技量を有する他の者に対して自らの作業の趣旨を効果的に伝達する、記載および表現である。ここで使用されている用語であり、一般的に使用される用語である、アルゴリズムは、所望の結果に至るステップの、前後照応しているシーケンスであるものと考えられる。これらのステップは、物理量の物理的操作を必要とするものである。通常、必ずしもそうである必要はないが、これらの量は、格納され、転送され、組み合わされ、比較され、および、その他の態様で操作されることが可能な、光信号、電気信号、または磁気信号の形をとる。時として、主に慣用上の理由で、これらの信号を、ビット、値、要素、シンボル、文字、用語、数字、またはその他として称することが便利であることが分かっている。
【0079】
しかしながら、これらのおよび類似する用語の全てが、適切な物理量に関連付けられ得るものであって、これらの量に適用される便利な標識であるに過ぎないことに注意されるべきである。他に具体的に述べられていない限り、または、この論考から明らかであるように、「処理する」、「計算する」、「算出する」、「特定する」、「表示する」、またはその他、などの用語は、コンピュータ・システムまたは類似する電子計算デバイスであって、当該コンピュータ・システムのレジスタおよびメモリ内における物理および電子量として表されるデータを操作および変換して、コンピュータ・システムのメモリ、レジスタ、または、他のこのような、情報の記憶デバイス、送信デバイス、もしくは表示デバイス内の物理量として同様に表される他のデータにする、コンピュータ・システムまたは類似する電子計算デバイスの、アクションおよび処理を指す。
【0080】
開示された主題の、ソフトウェアによって施行される実施態様が、何らかの形式のプログラム記憶媒体上に、典型的に、エンコーディングされるか、または、何らかのタイプの送信媒体を通じて施行されることにも留意されたい。プログラム記憶媒体は、磁気的(たとえば、フロッピー・ディスクもしくはハード・ドライブ)、または光学的(たとえばコンパクト・ディスク読み取り専用メモリ、すなわち「CD ROM」)であり得、読み取り専用であるか、またはランダム・アクセスであり得る。同様に、送信媒体は、撚線対、同軸ケーブル、光ファイバ、または、当該技術で知られている何らかの他の好適な送信媒体であり得る。開示された主題は、どのような所与の実装例のこれらの実施態様によっても、何ら限定されない。
【0081】
上に開示された特定的な実施形態は、例示的なものであるに過ぎないが、その理由は、開示された主題が、修正変更され得るため、および、本明細書の教示内容の利益を享受する、当該技術における当業者にとって明らかな、異なるけれども等価な態様で実践され得るためである。さらに、以下の請求項に記載される以外において、本明細書に示される構築または設計の詳細に対し、限定は意図されない。したがって、上に開示された特定的な実施形態を、変化させるか、または、修正変更することが可能であり、このような変形形態の全てが、開示された主題の範囲内にあると考えられることは明白である。したがって、本明細書が求める保護は、以下の請求項に明記される。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5