特許第5908295号(P5908295)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5908295メントールを含む新規清涼菓子およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5908295
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】メントールを含む新規清涼菓子およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23G 3/00 20060101AFI20160412BHJP
   A23G 3/34 20060101ALI20160412BHJP
【FI】
   A23G3/00
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-22173(P2012-22173)
(22)【出願日】2012年2月3日
(65)【公開番号】特開2013-158286(P2013-158286A)
(43)【公開日】2013年8月19日
【審査請求日】2014年12月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】592113809
【氏名又は名称】カバヤ食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100062225
【弁理士】
【氏名又は名称】秋元 輝雄
(72)【発明者】
【氏名】林谷 誠一
(72)【発明者】
【氏名】岡本 智志
(72)【発明者】
【氏名】中野 寛之
【審査官】 伊達 利奈
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−050084(JP,A)
【文献】 特開平09−233999(JP,A)
【文献】 特開平10−218794(JP,A)
【文献】 特開平10−218795(JP,A)
【文献】 特開平04−030757(JP,A)
【文献】 特開2007−051133(JP,A)
【文献】 特開2008−150342(JP,A)
【文献】 特開2010−136701(JP,A)
【文献】 特開2003−012561(JP,A)
【文献】 特開昭58−074746(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性糖質粉末を主成分とし、メントールを必須成分として含有する原料組成物の打錠品からなるメントールの再結晶化を防止した清涼菓子であって、
前記打錠品の外表面を含む表層近傍に局在して液状あるいは固体状の食用油脂成分が含有されており、そして前記打錠品に含まれるメントールのうち前記表層近傍に存在するメントールについては前記局在する食用油脂成分中に溶存して含有されていることを特徴とするメントールを含む新規清涼菓子。
【請求項2】
下記の工程(1)〜(6)を含むことを特徴とする請求項1記載のメントールを含む新規清涼菓子の製造方法。
(1)結晶性糖質粉末を主成分とし、メントールを必須成分として含有する原料組成物を調製する。
(2)調製した原料組成物を造粒方式あるいは直打方式によって打錠して成型された錠剤からなる打錠品を調製する。
(3)調製した打錠品を、食用油脂成分からなる溶液中に浸漬して、打錠品中に前記溶液を必要量制御して浸透させる。
(4)工程(3)において前記溶液を浸透させた打錠品を取り出し、その表面に付着した前記溶液を除去する。
(5)工程(4)において打錠品の表面に付着した前記溶液を除去した打錠品を静置して、未だ表面に残留する前記溶液を打錠品の表層中に浸透させる。
(6)必要に応じて密封包装する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はメントールを含む新規清涼菓子およびその製造方法に関するものであり、さらに詳細には、メントールの再結晶化を防止した、メントールを含む新規清涼菓子およびそのような新規清涼菓子を容易に経済的に製造するための製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品香料として頻繁に使用されるメントールは融点42〜44℃の結晶で、異性体が多く、異性体が多く、混在すると、細かい針状結晶になり、メントール純品だと大きな柱状結晶に成長する性質がある。
このような性質を持ったメントールは、例えば、メントールを含む結晶性糖質粉末を打錠して打錠品を調製する際に、60℃程度の圧縮熱が発生し、メントールの一部が溶融する。その溶融したメントールは、打錠品の表面にしみ出て、その後圧縮熱がさめた際に時間経過とともに再結晶し、打錠品の表面または包装容器内で綿状または、針状結晶となる。
メントールを含む結晶性糖質粉末を打錠して打錠品を包装すると、包装内で温度変化により気化したメントールが再結晶することが知られている。
【0003】
この現象は、菓子製品としての打錠品の外観や見栄えを大きく損ない、消費者に異物であると疑われたり、カビではないかなどと誤認されて、クレームとなることがある上、再結晶したメントールがざらついた、ジャリジャリとした食感を打錠品に与えるので商品価値を著しく損なう原因になっている。
【0004】
係る問題を解決すべく、メントールの結晶析出を抑制するため、例えばメントールを含有する製剤の表面に十分な厚みを持つ糖衣層で被覆する方法や、シクロデキストリンでコーティングする方法(特許文献1参照)、昇華性薬剤を含有する錠剤、顆粒剤などにポリビニルピロリドン類を配合して結晶の析出を抑制する方法(特許文献2参照)、乳化香料を配合した錠菓において、HLB10〜16の乳化剤およびメントールの30%以上のプロピレングリコールを含有させる方法(特許文献3参照)、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ソルビットの1種以上を含有する方法(特許文献4参照)などが開示されている。しかしいずれも何れも打錠製品におけるメントールの析出防止、粉末香料に耐圧性を付与する方法としては不十分であった。
【0005】
この問題を解決すべく、香料として、菌体内に香料を内包させた酵母、いわゆる酵母マイクロカプセル化香料製剤を用いることによって、打錠成形により得られる打錠製品に添加しても、打錠時の加圧でも香料製剤は壊れることがなく、粉末香料の破壊により生じる打錠製品表面でのメントールの再結晶化を抑制することができ、メントール含有打錠製品で問題視されていた外観上の不都合をも改善した打錠製品が提案された(特許文献5参照)。
【0006】
しかし、酵母マイクロカプセル化香料製剤を調製するには、まずメントール内包酵母を調製し、ついで、メントール内包酵母水溶液にトレハロースを添加混合し、ついで、スプレードライヤーにかけて90〜120℃で噴霧乾燥して、粉末状の酵母マイクロカプセル化香料製剤を調製するなど手間がかかり、コストアップになるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭61−129138号公報
【特許文献2】特開2000−247870号公報
【特許文献3】特許第3094207号公報
【特許文献4】特開2003−81798号公報
【特許文献5】特開2005−211024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上のようにメントールを多く含む(0.5%以上)タブレットを打錠する際に打錠時の圧や熱により内部のメントールが一部溶解し表面に染み出すことがあり、それがタブレット表面で再結晶化することがある。またメントールを含有量が多いほど保管時などにおける温度変化の繰り返しにより、容器内や包装内部でメントールが気化し、それがタブレット表面で再結晶化することがある。
再結晶化した綿状あるいは針状のメントールの結晶は、菓子などの製品の見栄えを著しく損なうことが知られている。
【0009】
本発明の第1の目的は、メントール含有量が全体の0.5〜3質量%であっても、メントールの再結晶化が防止されたメントールを含む新規清涼菓子を提供することである。
本発明の第2の目的は、そのようなメントールを含む新規清涼菓子を容易に経済的に製造することができる製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための本発明の第1の発明は、結晶性糖質粉末を主成分とし、メントールを必須成分として含有する原料組成物の打錠品からなるメントールの再結晶化を防止した清涼菓子であって、
前記打錠品の外表面を含む表層近傍に局在して液状あるいは固体状の食用油脂成分が含有されており、そして前記打錠品に含まれるメントールのうち前記表層近傍に存在するメントールについては前記局在する食用油脂成分中に溶存して含有されていることを特徴とするメントールを含む新規清涼菓子である。
【0011】
本発明の第2の発明は、本発明の第1のメントールを含む新規清涼菓子の製造方法であって、下記の工程(1)〜(6)を含むことを特徴とするメントールを含む新規清涼菓子の製造方法である。
(1)結晶性糖質粉末を主成分とし、メントールを必須成分として含有する原料組成物を調製する。
(2)調製した原料組成物を造粒方式あるいは直打方式によって打錠して成型された錠剤からなる打錠品を調製する。
(3)調製した打錠品を、食用油脂成分からなる溶液中に浸漬して、打錠品中に前記溶液を必要量制御して浸透させる。
(4)工程(3)において前記溶液を浸透させた打錠品を取り出し、その表面に付着した前記溶液を除去する。
(5)工程(4)において打錠品の表面に付着した前記溶液を除去した打錠品を静置して、未だ表面に残留する前記溶液を打錠品の表層中に浸透させる。
(6)必要に応じて密封包装する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1の発明は、結晶性糖質粉末を主成分とし、メントールを必須成分として含有する原料組成物の打錠品からなるメントールの再結晶化を防止した清涼菓子であって、
前記打錠品の外表面を含む表層近傍に局在して液状あるいは固体状の食用油脂成分が含有されており、そして前記打錠品に含まれるメントールのうち前記表層近傍に存在するメントールについては前記局在する食用油脂成分中に溶存して含有されていることを特徴とするメントールを含む新規清涼菓子であり、
従来にない構成を有し、メントール含有量が全体の0.5〜3質量%であってもメントールの再結晶化を防止できる上、専用機を用いたりせず、煩雑な工程を経ることなく、容易に経済的に製造できるという顕著な効果を奏する。
【0013】
本発明の請求項2記載の発明は、請求項1記載のメントールを含む新規清涼菓子の製造方法であって、前記の工程(1)〜(6)を含むことを特徴とするものであり、
専用機を用いたりせず、煩雑な工程を経ることなく、容易に経済的に製造できるという顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明のメントールを含む新規清涼菓子の一実施形態の断面説明図である。
図2】本発明のメントールを含む新規清涼菓子を製造する工程の一実施形態を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に本発明の内容を図を用いて詳細に説明する。
図1は本発明のメントールを含む新規清涼菓子の一実施形態の断面説明図である。
図1に示すように、結晶性糖質粉末を主成分とし、メントールを必須成分として含有する原料組成物の打錠品からなる、本発明のメントールを含む新規清涼菓子1は、その少なくとも外表面2を含む表層3に液状あるいは固体状の食用油脂成分4が含有されており、そして表層3に存在するメントール5は食用油脂成分4中に溶存して含有されていることを特徴とするものである。
図1中の6は、食用油脂成分4が含まれていない部分を示す。
【0016】
次に、「メントール5が液状あるいは固体状の食用油脂成分4中に溶解した状態にある」こととは如何なる状態にあることかについて説明する。
後述するように、本発明においては、食用油脂成分4からなる溶液中に浸漬して、打錠品中に前記溶液を必要量制御して浸透させるが、本発明で使用する食用油脂成分4は、常温で液状のものでも、あるいは固体状のものでもよいので、例えば常温で液状の食用油脂成分4を使用した場合は、常温において浸透させることができ、浸透工程完了後は、少なくとも外表面2を含む表層3に含有されるメントール5は液状の食用油脂成分4中に溶解した状態にあることになる。
【0017】
常温で固体状の食用油脂成分4を使用した場合は、食用油脂成分4の融点以上に加温して前記溶液を溶解させて液状にして、その温度において浸透させることになる。その結果、浸透工程中において、少なくとも外表面2を含む表層3に含有されるメントール5は液状の食用油脂成分4中に溶解した状態になり、その後、常温まで冷却されると、固体状の食用油脂成分4となるが、メントール5は固体状の食用油脂成分4中に固溶した状態となる。
本発明においては、以上の状態をまとめて、メントール5が液状あるいは固体状の食用油脂成分4中に溶存した状態にあると定義する。
【0018】
上記のように、本発明の新規清涼菓子1の表層3においては、本発明の新規清涼菓子1中に均一に配合されたメントールの中の少なくとも外表面2を含む表層3に含有されるメントールは、液状あるいは固体状の食用油脂成分4中に溶存した状態にあるので、従来のように溶融したメントールが打錠品の表面にしみ出て、再結晶し、打錠品の表面または包装容器内で綿状または、針状結晶となることがなく、メントールが食用油脂成分4中に溶存した状態が維持される。
【0019】
少なくとも外表面2を含む表層3に食用油脂成分4を必要量含有させるには、後述する新規清涼菓子の製造方法に記載されているように、工程(3)における食用油脂成分4からなる溶液中に浸漬する際の浸漬条件(浸漬温度、浸漬時間、溶液の粘度など)により制御することができ、また、工程(4)において打錠品の表面に付着した前記溶液を除去した打錠品を、工程(5)において静置して、未だ表面に残留する前記溶液を打錠品中に浸透させる際の静置条件(静置温度、静置時間など)により制御することができる。
【0020】
工程(3)において、打錠品を、食用油脂成分4からなる溶液中に浸漬して、打錠品中に前記溶液を必要量制御して浸透させるが、その際に溶液は打錠品中の粒子の間隙を通って浸透するので、打錠品を構成する粒子の大きさ、間隙の大きさ、個数、間隙同士の繋がり合いなどによって影響される。したがって、これらは、前記必要量を制御して含有させる因子となる。
【0021】
本発明の新規清涼菓子1は、以上のように従来にない構成を有しており、メントールの再結晶化を防止できる。
【0022】
図2は、本発明のメントールを含む新規清涼菓子を製造する工程の一実施形態を説明する説明図である。
本発明のメントールを含む新規清涼菓子の製造方法は、下記の工程(1)〜(6)を含むことを特徴とする。
まず、工程(1)において、結晶性糖質粉末を主成分とし、メントールを必須成分として含有する原料組成物を調製する。結晶性糖質粉末を主成分とし、メントールを必須成分とする以外に、下記各成分の中から選択される成分を必要量配合して原料組成物とすることもできる。
どのような特徴を有する新規清涼菓子を製造するのかによって各成分の配合量は当然異なるものであり、望みの製品が得られるように予めテストするなどして決めることができる。
【0023】
本発明で用いるメントールとしては、具体的には、例えば、DL−メントール、L−メントールその他の異性体の何れでもよい。特にL−メントールが味質の面で好ましい。
【0024】
本発明で用いる結晶性糖質としては、具体的には、例えば、異性化糖、果糖、砂糖、カップリングシュガー、オリゴ糖類(例えば、乳果オリゴ糖、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖など)などの他に、ソルビトール、マンニトール、エリスリトール、キシリトール、マルチトール、マルトース、マルトテトラオースシラップ、マルトペンタオースシラップ、トレハロース、パラチノース、ブドウ糖、還元パラチノース、ラクチトール、マルトテトラオース、マトトリイトールなどを挙げることができる。
これらは単独で使用することもできるが、2つ以上の混合物を使用することもできる。
【0025】
本発明で用いることのできる色素成分としては、具体的には、例えば、アナトー色素、ウコン色素、カカオ色素、カラメル色素、クチナシ青色素、クチナシ赤色素、クチナシ黄色素、赤色2号、赤色3号、赤色4号、赤色40号、赤色102号、赤色104号、赤色105号、赤色106号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号、青色2号、タマリンド色素、スピルリナ色素、パプリカ色素、コーン色素、トマト色素、カロチン色素、アカビート色素、ベニコウジ色素、ベニバナ赤色素、ベニバナ黄色素、ムラサキコーン色素、ムラサキヤマイモ色素、ビタミンB2、アカキャベツ色素、アカダイコン色素、ベリー色素、ブドウ色素、パプリカ粉末などを挙げることができる。
【0026】
本発明で用いることのできる香気成分としては、具体的には、例えば、天然香料、食品衛生法施行規則別表第一記載の香料を挙げることができる。
【0027】
本発明で用いる打錠機を用いて打錠して成型する際の成型性を向上させるために使用する食用滑沢剤としては、具体的に、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、精製タルクなどを挙げることができる。
【0028】
本発明で用いることのできる他の成分としては、具体的には、例えば、アラビアガム、アルギン酸(ナトリウム)、カードラン、カラギーナン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、寒天、キサンタンガム、グアーガム、ジェランガム、ゼラチン、タマリンド種子ガム、プルラン、ペクチン、ポリデキストロースなどの増粘剤、ビタミン類、鉄、カルシウムなどのミネラル類、食物繊維、その他各種機能性素材などの強化剤、練乳、発酵乳、ヨーグルトなどの乳製品を挙げることができる。
【0029】
本発明において用いることのできる食用結着剤は、具体的には、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アラビアガム、アルギン酸(ナトリウム)、カードラン、カラギーナン、キサンタンガム、キシロース、グアーガム、コンニャクマンナン、ジェランガム、ゼラチン、ソルビトール、タマリンド種子ガム、トレハオース、パラチノース、ブドウ糖、プルラン、ペクチン、ポリデキストロース、ローカストビーンガム、寒天、還元水飴、砂糖、水飴などを挙げることができる。
これらは単独で用いることもできるが、2つ以上を組み合わせて用いることもできる。
【0030】
本発明において用いることのできる食用改良剤の具体例としては、例えば、オリゴ糖、キシリトール、キシロース、セルロース、ソルビトール、デンプン、トレハオース、パラチノース、ブドウ糖、ポリデキストロース、マルチトール、マルトース、マンニトール、ラクチトール、還元パラチノース、還元水飴、砂糖、湿熱処理デンプン、水飴、無水結晶マルトースなどを挙げることができる。
これらは単独で用いることもできるが、2つ以上を組み合わせて用いることもできる。
【0031】
本発明で使用する食用油脂成分としては、具体的に、例えば、菜種、大豆、ヒマワリ種子、綿実、落花生、米糠、コーン、サフラワー、オリーブ、胡麻、カカオ、ヤシ、アブラヤシなどから採取した油脂、あるいは必要に応じて分別、エステル交換などを施した加工油などの植物性油脂ならびに乳脂、牛脂、豚脂、魚油、鯨油などの動物性油脂、これらの油脂の2つ以上の混合油を挙げることができる。
食用油脂成分は常温で液状のものでも、あるいは固体状のものでもよく、これらの2種以上の混合物であってもよい。
【0032】
そして工程(2)において、工程(1)で調製した原料組成物を、公知の造粒方式や流動層造粒方式あるいは造粒することなく直打方式によって、打錠機を用いて、打錠して成型された錠剤からなる打錠品を調製する。
【0033】
造粒方式の場合は、例えば、結晶性糖質粉末に色素成分や香気成分などと水を加えて均一に混合し、押し出し造粒方式などで顆粒に造粒し、顆粒を乾燥させ、滑沢剤や崩壊剤などを加えて混合し、打錠機を用いて、打錠して成型された錠剤からなる打錠品を調製する例を挙げることができる。
【0034】
直打方式の場合は、例えば、結晶性糖質粉末に滑沢剤や色素成分や香気成分などを加えて均一に混合し、さらに必要に応じて滑沢剤や崩壊剤などを加えて混合し、それを、打錠機を用いて、打錠して成型された錠剤からなる打錠品を調製する例を挙げることができる。
【0035】
打錠品の形状、形態は特に限定されず、具体的には、例えば、円筒型、俵型、平板型、四角型、三角型、その他多角型などを挙げることができる。
【0036】
そして工程(3)において、工程(2)で調製した打錠品を、食用油脂成分からなる溶液中に浸漬して、表面から打錠品内部に前記溶液を必要量制御して浸透させる。
【0037】
ここで、必要量とは、いかなる新規清涼菓子を製造するのかによって異なるものであり、望みの製品が得られるように予めテストするなどして決めることができる。
【0038】
本発明においては、メントールを含む新規清涼菓子の表層3においては、新規清涼菓子中に均一に配合されたメントールの中の少なくとも外表面2を含む表層3に含有されるメントール5は、液状あるいは固体状の食用油脂成分4中に溶存した状態にあることが、メントールの再結晶化を防止するために重要な構成要件であるので、外表面2を含む表層3に含有される前記メントール5の濃度は、前記メントール5の食用油脂成分4(外表面2を含む表層3に含有される食用油脂成分4)に対する飽和濃度以下であることが必要である。この飽和濃度も予めテストするなどして決めることができる。
【0039】
そして工程(4)において、工程(3)において前記溶液を浸透させた打錠品を前記溶液から取り出し、その表面に付着した前記溶液を除去する。除去方法は、打錠品の表面に付着した前記溶液を除去できる方法であれば、遠心分離法、拭き取り法、洗浄などいずれでもよく、特に限定されない。
【0040】
そして工程(5)において、工程(4)において打錠品の表面に付着した前記混合溶液を除去した打錠品を静置して、未だ表面に残留する前記混合溶液を打錠品中に浸透させる。
【0041】
前記のように少なくとも外表面2を含む表層3に食用油脂成分4を必要な厚さの中に必要量含有させるには、工程(3)における食用油脂成分4からなる溶液中に浸漬する際の浸漬条件(浸漬温度、浸漬時間、溶液の粘度など)により制御することができ、また、後述する工程(4)において打錠品の表面に付着した前記溶液を除去した打錠品を、工程(5)において静置して、未だ表面に残留する前記溶液を打錠品中に浸透させる際の静置条件(静置温度、静置時間など)により制御することができる。
【0042】
本発明の新規清涼菓子の形状、形態は特に限定されず、具体的には、例えば、円筒型、俵型、平板型、四角型、三角型、その他多角型などを挙げることができる。
【0043】
そして工程(6)において、製造した本発明の新規清涼菓子は長期にわたり大気中に放置して汚染されたり、揮発性成分が外部へ飛散したり、メントールの再結晶を生じさせたりすることを防止するために、適宜包装して、好ましくは密封包装して、特に好ましくは香り成分などが外部に漏洩しないレベルのバリヤー性を有する材料を用いて密封包装して、貯蔵、出荷される。
【0044】
本発明において、上記の各工程における温度、湿度などの条件は特に限定されないが、具体的には例えば25℃、60%RH程度の雰囲気中で行う例を挙げることができる。各工程は手作業で行っても、バッチ式装置で行っても連続的に行っても、あるいはこれらの組み合わせで行ってもよく、特に限定されないが、食品を扱うので衛生面に充分配慮することが肝要である。
【0045】
なお、上記実施形態の説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或は範囲を減縮するものではない。又、本発明の各部構成は上記実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
【実施例】
【0046】
以下本発明を実施例により、具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。以下に記載の%は、質量%を示す。
【0047】
(実施例1)
本発明の新規清涼菓子を次のようにして作った。
ソルビトールを基材とし、メントールを1.0%含むタブレットを常法にしたがって作成した。
常温で液状の食用油脂成分(理研ビタミン株式会社の商品アクターM−1:MCTオイル(Medium Chain Triglyceride:中鎖脂肪酸トリグリセライド。ココナツオイル、ヤシ油、牛乳、母乳などに含まれる炭素数6−12の脂肪酸からなるオイル)(以下、MCTオイルと称す)にタブレットを1秒間浸漬し、溶液から取り出し、その表面に付着した前記溶液を除去し、静置して、未だ表面に残留する溶液をタブレット中に浸透させた。
このタブレット中の表層にはMCTオイルがタブレット全体に対して1.0%含有されていた。
このタブレット50粒を容器に密封包装し、4℃で72時間保存し、タブレット表面にメントールの結晶が発生しないか目視で観察した。
このタブレットにはメントールの結晶が発生しなかった。
以上の結果を表1に示す。
【0048】
タブレット50粒を容器に密封包装し、4℃で72時間保存した後、さらに40℃で24時間保存し、再度4℃で48時間保存し、タブレット表面にメントールの結晶が発生しないか目視で観察した。
このタブレットにもメントールの結晶が発生しなかった。
以上の結果を表2に示す。
【0049】
(実施例2)
ソルビトールを基材とし、メントールを1.5%含むタブレットを常法にしたがって作成した。
溶液中にタブレットを1秒間浸漬し、タブレット中の表層にMCTオイルをタブレット全体に対して1.0%含有した以外は実施例1と同様にしてタブレット表面にメントールの結晶が発生しないか目視で観察した。
このタブレットにはメントールの結晶が発生しなかった。
以上の結果を表1に示す。
【0050】
4℃で72時間保存した後、さらに40℃で24時間保存し、再度4℃で48時間保存し、タブレット表面にメントールの結晶が発生しないか目視で観察した。
このタブレットにもメントールの結晶が発生しなかった。
以上の結果を表2に示す。
【0051】
(実施例3)
ソルビトールを基材とし、メントールを2.0%含むタブレットを常法にしたがって作成した。
溶液中にタブレットを1秒間浸漬し、タブレット中の表層にMCTオイルをタブレット全体に対して1.0%含有した以外は実施例1と同様にしてタブレット表面にメントールの結晶が発生しないか観察した。
このタブレットにはメントールの結晶が発生しなかった。
以上の結果を表1に示す。
【0052】
4℃で72時間保存した後、さらに40℃で24時間保存し、再度4℃で48時間保存し、タブレット表面にメントールの結晶が発生しないか目視で観察した。
このタブレットにもメントールの結晶が発生しなかった。
以上の結果を表2に示す。
【0053】
(実施例4)
ソルビトールを基材とし、メントールを1.0%含むタブレットを常法にしたがって作成した。
溶液中にタブレットを3秒間浸漬し、タブレット中の表層にMCTオイルをタブレット全体に対して2.0%含有した以外は実施例1と同様にしてタブレット表面にメントールの結晶が発生しないか観察した。
このタブレットにはメントールの結晶が発生しなかった。
以上の結果を表1に示す。
【0054】
4℃で72時間保存した後、さらに40℃で24時間保存し、再度4℃で48時間保存し、タブレット表面にメントールの結晶が発生しないか目視で観察した。
このタブレットにもメントールの結晶が発生しなかった。
以上の結果を表2に示す。
【0055】
(実施例5)
ソルビトールを基材とし、メントールを1.5%含むタブレットを常法にしたがって作成した。
溶液中にタブレットを3秒間浸漬し、タブレット中の表層にMCTオイルをタブレット全体に対して2.0%含有した以外は実施例1と同様にしてタブレット表面にメントールの結晶が発生しないか観察した。
このタブレットにはメントールの結晶が発生しなかった。
以上の結果を表1に示す。
【0056】
4℃で72時間保存した後、さらに40℃で24時間保存し、再度4℃で48時間保存し、タブレット表面にメントールの結晶が発生しないか目視で観察した。
このタブレットにもメントールの結晶が発生しなかった。
以上の結果を表2に示す。
【0057】
(実施例6)
ソルビトールを基材とし、メントールを2.0%含むタブレットを常法にしたがって作成した。
溶液中にタブレットを3秒間浸漬し、タブレット中の表層にMCTオイルをタブレット全体に対して2.0%含有した以外は実施例1と同様にしてタブレット表面にメントールの結晶が発生しないか観察した。
このタブレットにはメントールの結晶が発生しなかった。
以上の結果を表1に示す。
【0058】
4℃で72時間保存した後、さらに40℃で24時間保存し、再度4℃で48時間保存し、タブレット表面にメントールの結晶が発生しないか目視で観察した。
このタブレットにもメントールの結晶が発生しなかった。
以上の結果を表2に示す。
【0059】
(比較例1)
ソルビトールを基材とし、メントールを1.0%含むタブレットを常法にしたがって作成した。
MCTオイル中に浸漬しなかった以外は実施例1と同様にしてタブレット表面にメントールの結晶が発生しないか観察した。
このタブレットには一部にメントールの結晶が発生した。
以上の結果を表1に示す。
【0060】
4℃で72時間保存した後、さらに40℃で24時間保存し、再度4℃で48時間保存し、タブレット表面にメントールの結晶が発生しないか目視で観察した。 このタブレットにも一部にメントールの結晶が発生した。
以上の結果を表2に示す。
【0061】
(比較例2)
ソルビトールを基材とし、メントールを1.5%含むタブレットを常法にしたがって作成した。
MCTオイル中に浸漬しなかった以外は実施例1と同様にしてタブレット表面にメントールの結晶が発生しないか観察した。
このタブレットには全体的に著しくメントールの結晶が発生した。
以上の結果を表1に示す。
【0062】
4℃で72時間保存した後、さらに40℃で24時間保存し、再度4℃で48時間保存し、タブレット表面にメントールの結晶が発生しないか目視で観察した。
このタブレットにも全体的に著しくメントールの結晶が発生した。
以上の結果を表2に示す。
【0063】
(比較例3)
ソルビトールを基材とし、メントールを2.0%含むタブレットを常法にしたがって作成した。
MCTオイル中に浸漬しなかった以外は実施例1と同様にしてタブレット表面にメントールの結晶が発生しないか観察した。
このタブレットには全体的に著しくメントールの結晶が発生した。
以上の結果をまとめて表1に示す。
【0064】
4℃で72時間保存した後、さらに40℃で24時間保存し、再度4℃で48時間保存し、タブレット表面にメントールの結晶が発生しないか目視で観察した。
このタブレットにも全体的に著しくメントールの結晶が発生した。
以上の結果を表2に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
表1、表2から本発明の実施例1−6のタブレットにはメントールの結晶が発生しないが、比較例1−3のタブレットには一部にメントールの結晶が発生するか、全体的に著しくメントールの結晶が発生したことが判る。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の新規清涼菓子は、結晶性糖質粉末を主成分とし、結晶性糖質粉末を主成分とし、メントールを必須成分として含有する原料組成物の打錠品からなるメントールの再結晶化を防止した清涼菓子であって、少なくとも外表面を含む表層に液状あるいは固体状の食用油脂成分が含有されており、そして前記表層に存在するメントールは前記食用油脂成分中に溶存して含有されていることを特徴とするメントールを含む新規清涼菓子であり、従来にない構成を有し、メントール含有量が全体の0.5〜3質量%であってもメントールの再結晶化を防止できる上、専用機を用いたりせず、煩雑な工程を経ることなく、容易に経済的に製造できるという顕著な効果を奏するので、産業上の利用価値が高い。
【符号の説明】
【0069】
1 新規清涼菓子
2 外表面
3 表層
4 食用油脂成分
5 メントール
食用油脂成分が含まれていない部分
図1
図2