(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5908315
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】半導体ウェハマーキング装置とマーキング方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20160412BHJP
【FI】
H01L21/66 A
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-64275(P2012-64275)
(22)【出願日】2012年3月21日
(65)【公開番号】特開2013-197400(P2013-197400A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2015年1月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エスアイアイ・セミコンダクタ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】志賀 聖史
(72)【発明者】
【氏名】石井 清一
(72)【発明者】
【氏名】梅津 達生
(72)【発明者】
【氏名】高橋 大樹
【審査官】
井上 弘亘
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭63−129639(JP,A)
【文献】
実開昭61−140535(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一軸移動ステージおよび回転軸からなる駆動部と、
前記駆動部上に載置されたチャック部と、
前記チャック部に載置された半導体ウェハの外周部にマーキングをするためのマーキング部を有するインクローラーと、
ニードル付きマーカーと、
からなり、
前記一軸移動ステージによる移動および前記回転軸の周りの回転のみによって半導体ウェハにマーキングを施す半導体ウェハマーキング装置であって、
前記マーキング部は回転機構およびインク補充機構を有し、段差被覆性のある材質からなることを特徴とする半導体ウェハマーキング装置。
【請求項2】
前記マーキング部は、スポンジ、溝付き樹脂からなることを特徴とする請求項1記載の半導体ウェハマーキング装置。
【請求項3】
不良チップの中心から半導体ウェハの中心までの第1の距離を算出する工程と、
ニードル付きマーカーと前記半導体ウェハの中心との間の距離が前記第1の距離と同じになるように一軸移動ステージでチャックを移動させる工程と、
前記チャックを回転軸の周囲に回転させることで前記不良チップの中心がニードルの直下に来るようにする工程と、
前記ニードルによって前記不良チップにマーキングする工程と、
外周マーキング領域の内周と前記半導体ウェハの中心との間の第2の距離を算出する工程と、
インクローラーの先端のマーキング部と前記半導体ウェハの中心までの距離が前記第2の距離と同じになるように前記一軸移動ステージで前記チャックを移動させる工程と
前記チャックを回転させて、前記マーキング部により前記外周マーキング領域にインクを転写する工程と、
からなることを特徴とするマーキング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハ上の不良チップに対して不良チップであることをマーキングする方法およびそれに用いる半導体ウェハマーキング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハ表面に半導体装置であるチップを配置する場合、半導体ウェハの最外周から数mm内側の部分については、1チップ分の面積に不足し配置上完全な回路パターンが面付け出来ていなかったり、チップ自体を配置しないようにしたりしているため、電気特性検査の良品・不良品の判定に関らずウェハ外周部から数mmのエリアを不良チップとし、マーキングを行わなければならない。また、最外周部から数mmの部分より内側の面内で完全なチップが配置されたエリアにおいても電気的特性検査で不良判定されたチップはマーキングしなければならない。これはパッケージ組立工程の一部であるダイボンド工程において不良チップをこのマーキングにより画像認識で選別し、ピックアップしないようにすることで不良チップをパッケージにしてしまう無駄を省くためである。
【0003】
図4を用いて、従来技術における、ウェハ内の不良チップにマーキングを行う際の手順を説明する。まず不良チップにマーキングを打つために用いるマーカー9を固定する。次にウェハ2をチャック3上に乗せ、チップの配列とX軸が平行になるようチャック3を回転させる。その後チャック3はX軸Y軸移動ステージ13を動作させてマーカー9の直下に不良チップ4を移動させる。マーカー9に内蔵したニードル10を不良チップ上面に突き出すことでニードルに付着したインクはほぼ円形に不良チップ上に転写されマーキング4が打たれる。この動作をそれぞれの不良チップごとに繰返し、全ての不良チップに対してマーキングすることでウェハ1枚の不良チップマーキングは終了する。
【0004】
半導体ウェハ上の不良チップのマーキングにおいては、特にウェハ面内に数万個もチップが配置されていた場合、上記背景技術で述べたような処理をすると外周部やその内側面内の不良チップを1チップずつ処理するためウェハ1枚を処理するのに多大な時間を要する。また近年、ウェハ径の拡大に伴い、チャックの移動量も多くなり、その結果外周部の不良チップマーキングに多大な時間を要し、生産性を落としている。
【0005】
不良チップマーキングの処理時間を短縮するための方法として、例えば特許文献1は、
図5に示すように、不良チップの集団毎にマーキングし、不良チップ間を最短の距離で移動し、次々にチップマーキングするアルゴリズムを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−244142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に開示された方法では歩留が良く殆ど良品チップばかりのウェハについては、ウェハ面内に不良チップの集団が無いので、不良チップマーキングはウェハ外周の不完全チップの不良だけをマーキングするだけとなり、処理する時間を短縮する効果が小さい。つまり、この方法による不良チップマーキングは歩留が悪いウェハの場合にその効果を発揮するのである。
【0008】
そこで、本願発明においては、歩留が良い場合にも効果を発揮する不良チップのマーキング方法およびそのために用いる半導体ウェハマーキング装置を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、以下のような手段を用いた。
まず、一軸移動ステージと回転軸からなる駆動部と、前記駆動部上に載置するチャック部と、前記チャック部に載置する半導体ウェハの外周部にマーキングするマーキング部を有するインクローラーと、ニードル付きマーカーと、からなることを特徴とする半導体ウェハマーキング装置とした。
【0010】
また、前記マーキング部は回転機構およびインク補充機構を有し、段差被覆性のある材質からなることを特徴とする半導体ウェハマーキング装置とした。
また、前記マーキング部は、スポンジ、溝付き樹脂からなることを特徴とする半導体ウェハマーキング装置とした。
また、前記インクローラーのマーキング部の幅は0.5〜5mmの範囲であることを特徴とする半導体ウェハマーキング装置とした。
【0011】
また、一軸移動ステージと回転軸からなる駆動部と、前記駆動部上に載置するチャック部と、前記チャック部に載置する半導体ウェハの外周部にマーキングするマーキング部を有するインクローラーと、ニードル付きマーカーと、からなることを特徴とする半導体ウェハマーキング装置によるマーキング方法であって、前記半導体ウェハの非外周部の不良チップをニードル付きマーカーでマーキングする工程と、前記半導体ウェハの外周部をインクローラーでマーキングする工程と、からなることを特徴とする半導体ウェハマーキング装置によるマーキング方法を用いた。
【0012】
また、前記インクローラーでマーキングする工程は、前記半導体ウェハの中心から所定の距離に前記インクローラーを接触する工程と、前記駆動部を回転軸方向に回転させるとともに前記半導体ウェハの外周部にマーキングする工程と、からなることを特徴とする半導体ウェハマーキング装置によるマーキング方法を用いた。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば外周部の不良チップマーキングを大幅に高速化し、不良チップマーキングの時間を短縮することができる。
またチャックの移動軸がX軸、θ軸のみになるためマーキング装置に複雑な機構が必要なくなり、マーキング装置の低コスト化と小型化が実現可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】本発明のマーキング装置でウェハ外周部をマーキングする図である。
【
図3】本発明のマーキング装置に載置された半導体ウェハのマーキングを説明する図である。
【
図5】従来のマーキング装置でのマーキング順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の図面を参照し、本発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の不良チップマーキング方法に用いることができる装置の模式図である。
図2は本発明のマーカー部の動作説明図で、
図3はチャックの移動手順の考え方を表す概念図である。
図1に示すように半導体ウェハ2上に多数の良品チップが配置されている。
【0016】
半導体ウェハ2はチャック3上に乗せられ、チャック3は時計周り、反時計回りに半導体ウェハを回転することが可能なθ回転軸12を有している。
チャック3下部には一軸移動ステージであるX軸移動用ステージ7を備え、一軸方向にチャック3を移動することができる。
半導体ウェハ2の上部の位置にはウェハ内部の不良チップ4をマーキングするためのニードル付きマーカー9とウェハ外周部の不良エリア6をマーキングするインクローラー1を備えている。
【0017】
図2の部分拡大図に示すように、ウェハ外周部を回転しながらマーキングするインクローラー1は、数mm幅でインクをベタ塗りできる構造を有しており、特に半導体ウェハの外周部から0.5〜5mmの幅でマーキングできることが望ましい。また、半導体ウェハの外周部は段差が大きいにもかかわらず、ここをベタ塗りする必要があるため、インクローラーのマーキング部はスポンジや溝付き樹脂などインクを保持できるとともに段差被覆性のある材質からなっていることが望ましい。さらに、図示していないが、インクローラーにはインク補充機構が付いており、インク塗布膜厚が一定となるようにマーキング部にインク補充できるようになっている。
【0018】
この装置を使用して不良チップ4にマーキングを行うには、まず不良チップ4の中心から半導体ウェハ2の中心までの距離を算出する。
図3より不良チップ4の中心と半導体ウェハ2の中心との距離rは
r=√(x
2+y
2) (式1)
にて算出できる。マーカー9と半導体ウェハ2の中心の距離が前記距離rと同等になるようにX軸移動ステージ7にてチャック3を移動させる。
【0019】
次にチャック3をθ回転軸12にて所定の角度θだけ回転させ、所定の不良チップの中心がニードル10の直下に来るようにする調整する。θ回転軸12の回転角度θは
θ=tan
-1(x/y) (式2)
にて算出できる。
【0020】
これらの動作により不良チップ4はマーカー9の直下に来るので、ニードル10を突き出し、インクを付着することができる。他の不良チップについても同様にX軸移動ステージとθ回転軸でチャックを移動させマーキングを行うことができる。
【0021】
外周部6にマーキングをする場合は、半導体ウェハ2の中心と外周マーキング領域の内周までの距離r’を算出し、インクローラー1の先端のマーキング部と半導体ウェハ2の中心位置までの距離と同等になるようにX軸移動用ステージ7にてチャック3を移動させる。これにてウェハ外周部はインクローラー1の直下に来るのでθ回転軸12を回転させながらローラーも回転させてインクを転写することでウェハ外周部のマーキングが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、半導体ウェハマーキング装置として単体で用いることができる。さらに半導体ウェハマーキング機構を有するプローブ装置として利用することもできる。
【符号の説明】
【0023】
1 インクローラー
2 半導体ウェハ
3 チャック
4 半導体ウェハ上の不良チップ
6 半導体ウェハの外周部
7 X軸移動用ステージ
8 半導体ウェハの外周チップ
9 マーキング行うためのマーカー
10 インク転写用ニードル
11 マーキング
12 θ回転軸
13 X軸Y軸移動ステージ