特許第5908415号(P5908415)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5908415
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】箸
(51)【国際特許分類】
   A47G 21/10 20060101AFI20160412BHJP
【FI】
   A47G21/10 B
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-7408(P2013-7408)
(22)【出願日】2013年1月18日
(65)【公開番号】特開2014-136109(P2014-136109A)
(43)【公開日】2014年7月28日
【審査請求日】2014年9月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】593208935
【氏名又は名称】株式会社兵左衛門
(74)【代理人】
【識別番号】100079968
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 光司
(72)【発明者】
【氏名】浦谷 剛人
【審査官】 大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3156380(JP,U)
【文献】 特開昭63−003816(JP,A)
【文献】 特開2010−104528(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3175006(JP,U)
【文献】 特開平09−252910(JP,A)
【文献】 実開昭63−009961(JP,U)
【文献】 実開昭62−139381(JP,U)
【文献】 特開2011−182842(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3182544(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3129865(JP,U)
【文献】 実開昭48−42879(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3173132(JP,U)
【文献】 特開2008−29747(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2012−0110015(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 21/10
G09B 19/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の箸片からなり、各箸片は、持手部が、横断面略正方形形状を有するとともに、箸先部が、横断面略正方形形状を有し、かつ、それら持手部の横断面略正方形形状と箸先部の横断面略正方形形状とが、互いに箸片の軸回りに角度を振った位置関係にあり、
前記箸片は、前記箸先部の先端に、保護層を有し、かつ、その保護層を覆うようにして前記箸先部に、その表面が滑らかとなる塗料層を有する、箸。
【請求項2】
前記持手部の横断面略正方形形状と前記箸先部の横断面略正方形形状とは、互いに箸片の軸回りに45°角度を振った位置関係にある、請求項1に記載の箸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、食べ物を摘みやすくした箸に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、食べ物を摘みやすくした箸として、箸先部の表面に、粉状物を含む漆層を備えた箸があった(例えば、特許文献1参照)。図7に示すように、この箸21は、箸先部22の表面の漆層23が、漆によって木粉等の粉状物23aが塗り固められて形成されており、その漆層23の表面には、粉状物23aによって僅かな凹凸を有していた。そして、この表面の凹凸により、この箸21で食べ物を摘んだときの滑りを防止することができた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−274003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記従来の箸21にあっては、箸先部22の表面の凹凸が僅かではあったが、箸先部22に人の口が触れたときに、その凹凸による違和感が若干あった。
【0005】
この発明は、上記した従来の欠点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、箸先部に人の口が触れたときの違和感がなく、かつ、食べ物を容易に摘むことができる箸を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る箸は、前記目的を達成するために、次の構成からなる。すなわち、
請求項1に記載の発明に係る箸は、一対の箸片からなり、各箸片は、持手部が、横断面略正方形形状を有するとともに、箸先部が、横断面略正方形形状を有し、かつ、それら持手部の横断面略正方形形状と箸先部の横断面略正方形形状とが、互いに箸片の軸回りに角度を振った位置関係にある。そして、前記箸片は、前記箸先部の先端に、保護層を有し、かつ、その保護層を覆うようにして前記箸先部に、その表面が滑らかとなる塗料層を有する。
【0007】
この箸によると、各箸片の箸先部に、塗料層を有し、その表面が滑らかとなることから、箸先部に人の口が触れたときの違和感がない。そして、この箸は、各箸片の持手部が横断面略正方形形状を有しているため、一対の箸片、つまり箸を持ったとき、持手部においては、横断面略正方形形状の面同士が向かい合う。そして、持手部の横断面略正方形形状と、箸先部の横断面略正方形形状とが、互いに箸片の軸回りに角度を振った位置関係にあることから、両箸先部の向かい合う側において、その箸先部の横断面略正方形形状の角部同士が互いに相手の箸先部側に突出し、その角部で食べ物を摘むことができる。このため、箸先部の表面が滑らかであるにも拘わらず、その箸先部によって食べ物を容易に摘むことができる。しかも、箸片は、箸先部の先端に、保護層を有することから、箸の耐久性を向上させることができる。
【0008】
また、請求項2に記載の発明に係る箸のように、請求項1に記載の箸において、前記持手部の横断面略正方形形状と前記箸先部の横断面略正方形形状とは、互いに箸片の軸回りに45°角度を振った位置関係にあるのが望ましい。こうして、持手部の横断面略正方形形状と箸先部の横断面略正方形形状とを、互いに箸片の軸回りに45°角度を振った位置関係にすることで、箸を持ったとき、互いに相手の箸先部側に突出する角部同士が、両箸先部の対向方向において互いに向かい合うこととなる。このため、箸先部の表面が滑らかであるにも拘わらず、箸先部によって食べ物を一層容易に摘むことができる。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係る箸によれば、箸先部に、表面が滑らかとなる塗料層を有するとともに、箸を持ったとき、箸先部における横断面略正方形形状の角部同士が互いに相手の箸先部側に突出することから、箸先部に人の口が触れたときの違和感がなく、かつ、食べ物を容易に摘むことができ、しかも、箸先部の保護層によって、耐久性が向上している。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】この発明の一実施の形態の箸の正面図である。
図2】同じく、図1におけるA−A線による拡大断面図である。
図3】同じく、図1におけるB−B線による拡大断面図である。
図4】同じく、図1におけるC−C線による拡大断面図である。
図5】同じく、箸の使用状態を示す正面図である。
図6】同じく、図5におけるD−D線による拡大断面図である。
図7】従来の箸の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明に係る箸を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1図6は、本発明の一実施の形態を示す。図中符号1は、箸を示す。2は、前記箸1を構成する一対の箸片を示す。
【0013】
箸1は、一対の箸片2、2からなり、図3および図4に示すように、各箸片2は、持手部3が、横断面略正方形形状を有するとともに、箸先部4が、横断面略正方形形状を有する。ここにおいて、持手部3の横断面略正方形形状と箸先部4の横断面略正方形形状とが、互いに箸片2の軸回りに角度を振った位置関係、つまりねじれた位置関係(図示実施の形態においては、45°角度を振った位置関係)にある。そして、持手部3の横断面略正方形形状の角部3aは、弧状に面取りされて形成されている。
【0014】
また、箸片2は、箸先部4に、その表面が滑らかとなる塗料層5を有する。詳細には、図2に示すように、箸片2は、箸先部4の先端に、保護層6を有し、かつ、その保護層6を覆うようにして箸先部4に、その表面が滑らかとなる塗料層5を有する。より詳細には、箸片2は、その箸片本体2aの先端に(つまり、箸先部4の先端に相当する箸片本体2aの先端に)、一段下がった段部2bを有し、その段部2bを埋めるように、前記保護層6が設けられる。そして、図示実施の形態においては、この保護層6には、粉状物6aが含まれている。
【0015】
具体的には、箸片2は、その木地である箸片本体2aが、木とか竹等の天然の素材からなる。この箸片本体2aは、箸先部4が横断面略正方形形状を有するように、箸片素材に対し、先端側が、削り(切削とかやすりがけ)により、横断面略正方形形状に形成されている。また、箸片2は、その箸片本体2aの先端に、一段下がった段部2bを有し、その段部2bを埋めるように、前記保護層6が設けられる(図2参照)。この保護層6は、軸心方向の長さが、例えば、1mm〜5mmの範囲内にあり、厚みが、例えば、0.5mm前後となっている。この保護層6における粉状物6aは、乾漆粉、木粉、竹粉、米粉、コルク粉等の、一種あるいは複数種からなる。そして、この粉状物6aは、例えば、漆によって箸片本体2aの先端に定着される。
【0016】
また、箸片2は、木固めされた木固め層7を有し、前記塗料層5は、箸先部4において木固め層7を覆うように設けられる。この木固め層7を形成する木固め材としては、漆とか合成樹脂が挙げられる。図示実施の形態においては、この木固め層7は、保護層6を覆うようにして箸片2全体に設けられる。そして、この木固め層7上に、塗料層5および後述する塗料層9が設けられる。もっとも、木固め層7は、保護層6が形成される前に、箸片2全体に設けられてもよい。また、木固め層7は、保護層6を除く箸片2全体に設けられてもよい。
【0017】
箸先部4における塗料層5は、塗り(塗り仕上げ)によるものであり、例えば、生漆、透漆、黒漆、糊漆、絞漆等の漆からなる。もっとも、塗料層5は、漆の他に、合成樹脂の塗料からなっていてもよい。
【0018】
また、図示実施の形態においては、箸片2は、天頂部8にも塗料層9を有している。この塗料層9は、箸先部4の塗料層5と同様に、塗り(塗り仕上げ)によるものであり、例えば、生漆、透漆、黒漆、糊漆、絞漆等の漆とか、合成樹脂の塗料からなる。
【0019】
次に、以上の構成からなる箸1の作用効果について説明する。この箸1によると、各箸片2の箸先部4に、塗料層5を有し、その表面が滑らかとなることから、箸先部4に人の口が触れたときの違和感がない。そして、この箸1は、各箸片2の持手部3が横断面略正方形形状を有しているため、一対の箸片2、2、つまり箸1を持ったとき、持手部3においては、横断面略正方形形状の面同士が向かい合う。そして、持手部3の横断面略正方形形状と、箸先部4の横断面略正方形形状とが、互いに箸片2の軸回りに角度を振った位置関係にあることから、両箸先部4、4の向かい合う側において、その箸先部4、4の横断面略正方形形状の角部4a、4a同士が互いに相手の箸先部4、4側に突出し、その角部4a、4aで食べ物10を摘むことができる(図5図6参照)。このため、箸先部4の表面が滑らかであるにも拘わらず、その箸先部4、4によって食べ物10を容易に摘むことができる。すなわち、箸先部4に、表面が滑らかとなる塗料層5を有するとともに、箸1を持ったとき、箸先部4、4における横断面略正方形形状の角部4a、4a同士が互いに相手の箸先部4、4側に突出することから、箸先部4に人の口が触れたときの違和感がなく、かつ、食べ物10を容易に摘むことができる。
【0020】
また、図示実施の形態においては、持手部3の横断面略正方形形状と箸先部4の横断面略正方形形状とを、互いに箸片2の軸回りに45°角度を振った位置関係にすることで、箸1を持ったとき、互いに相手の箸先部4、4側に突出する角部4a、4a同士が、両箸先部4、4の対向方向において互いに向かい合うこととなる。このため、箸先部4の表面が滑らかであるにも拘わらず、箸先部4、4によって食べ物10を一層容易に摘むことができる。
【0021】
また、箸片2は、箸先部4の先端に、保護層6を有することから、箸1の耐久性を向上させることができる。特に、図示実施の形態においては、保護層6が粉状物6aを含むことから、箸1の耐久性を一層向上させることができる。しかも、箸片2は、その箸片本体2aの先端に、一段下がった段部2bを有し、その段部2bを埋めるように保護層6が設けられることで、箸先部4における保護層6のある部分と他の部分とを段差なく繋げることができ、また、保護層6の厚さを充分確保することができる。
【0022】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるわけではなく、その他種々の変更が可能である。例えば、持手部3の横断面略正方形形状と箸先部4の横断面略正方形形状とが、互いに箸片2の軸回りに45°角度を振った位置関係にあるが、この角度は、45°に限るものではない。
【0023】
また、持手部3の横断面略正方形形状の角部3aは、弧状に面取りされて形成されているが、この面取りはなくともよい。そして、持手部3の横断面略正方形形状とは、横断面正方形形状を含むものであるが、その横断面略正方形形状においては、各面は、平らでなくとも、若干丸みを帯びていてもよい。同様に、箸先部4の横断面略正方形形状とは、横断面正方形形状を含むものであるが、その横断面略正方形形状においては、各面は、平らでなくとも、若干丸みを帯びていてもよい。
【0024】
また、箸片2は、箸先部4に塗料層5を有し、天頂部8に塗料層9を有して、持手部3を含む中間部分は、木固め層7が露出しているが、箸片2全体に渡って塗料層を有するようにしていもよい。
【0025】
また、箸片2は、木固め層7を有するが、この木固め層7は、なくともよい。そして、箸片本体2aは、天然の素材からならなくとも、合成樹脂等からなっていてもよい。
【0026】
また、箸片2は、その箸片本体2aの先端に段部2bを有し、その段部2bを埋めるように保護層6が設けられるが、この段部2bを設けることなく箸片本体2aの先端に保護層6を設けることで、箸先部4の先端に保護層6を有するようにしてもよい。また、この保護層6には、粉状物6aが含まれるが、この粉状物6aはなくともよい。
【符号の説明】
【0027】
1 箸
2 箸片
3 持手部
3a 角部
4 箸先部
4a 角部
5 塗料層
6 保護層
10 食べ物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7