特許第5908466号(P5908466)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5908466RAF及びMEK阻害剤に対する耐性を与えるMEK1変異
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5908466
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】RAF及びMEK阻害剤に対する耐性を与えるMEK1変異
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20160412BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20160412BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20160412BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20160412BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20160412BHJP
   C12N 9/12 20060101ALI20160412BHJP
   C12Q 1/68 20060101ALI20160412BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALI20160412BHJP
【FI】
   C12N15/00 AZNA
   C12N1/15
   C12N1/19
   C12N1/21
   C12N5/10
   C12N9/12
   C12Q1/68 A
   C12Q1/04
【請求項の数】12
【全頁数】59
(21)【出願番号】特願2013-514366(P2013-514366)
(86)(22)【出願日】2011年6月9日
(65)【公表番号】特表2013-535955(P2013-535955A)
(43)【公表日】2013年9月19日
(86)【国際出願番号】US2011039789
(87)【国際公開番号】WO2011156588
(87)【国際公開日】20111215
【審査請求日】2014年6月4日
(31)【優先権主張番号】61/352,959
(32)【優先日】2010年6月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】399052796
【氏名又は名称】デイナ ファーバー キャンサー インスティチュート,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100092967
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 修
(74)【代理人】
【識別番号】100135415
【弁理士】
【氏名又は名称】中濱 明子
(72)【発明者】
【氏名】ギャラウェイ,レヴィ・エイ
(72)【発明者】
【氏名】エメリー,キャロライン
(72)【発明者】
【氏名】ウェーグル,ニキル
【審査官】 厚田 一拓
(56)【参考文献】
【文献】 Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A.,2009年,Vol.106, No.48,pp.20411-20416
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00 − 15/90
UniProt/GeneSeq
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
MEK1活性を有する変異MEK1タンパク質をコードする単離された核酸分子であって、前記変異MEK1タンパク質は、配列番号:に示す野生型MEK1の121位におけるアミノ酸置換を含み、このアミノ酸置換は121C>Sアミノ酸置換であり、このアミノ酸置換が、変異MEK1タンパク質を発現している細胞に一以上のRAF阻害剤或いはMEK阻害剤に対する耐性を与え
RAF阻害剤が、PLX4720及びPLX4032を含み、MEK阻害剤がAZD6244を含む、前記単離された核酸分子。
【請求項2】
前記変異MEK1タンパク質が、配列番号:4のアミノ酸配列を含んでなる、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項3】
配列番号:3のヌクレオチド配列を含んでなる、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項4】
請求項に記載の核酸を含んでなる発現ベクター。
【請求項5】
請求項に記載の発現ベクターを含んでなる宿主細胞。
【請求項6】
変異MEK1タンパク質が細胞によって産生されるように、請求項に記載の宿主細胞を培養することを含んでなる、変異MEK1タンパク質を産生する方法。
【請求項7】
MEK1活性を有する単離されたMEK1タンパク質であって、配列番号:に示した野生型MEK1タンパク質の121位のアミノ酸置換を含み、このアミノ酸置換は121C>Sアミノ酸置換であり、前記アミノ酸置換が、変異MEK1タンパク質を発現している細胞RAF阻害剤或いはMEK阻害剤に対する耐性を与え
RAF阻害剤が、PLX4720及びPLX4032を含み、MEK阻害剤がAZD6244を含む、前記変異MEK1タンパク質。
【請求項8】
配列番号:4のアミノ酸配列を含んでなる、請求項に記載の変異MEK1タンパク質。
【請求項9】
(a)癌の細胞から核酸を抽出し;そして
(b)MEK1タンパク質をコードする核酸分子を配列決定すること;
を含んでなる、癌を有する患者を、RAF阻害剤による治療中の再発の高い危険度を有するとして確認する方法であって、
配列番号2の野生型のMEK1タンパク質と比較して、配列番号4のMEK1タンパク質中の121C>Sアミノ酸置換を生じるヌクレオチドの存在は、患者を、RAF阻害剤による治療中の再発の高い危険度を有するとして確認する、前記方法。
【請求項10】
(a)癌の細胞から核酸を抽出し;そして
(b)MEK1タンパク質をコードする核酸分子を配列決定すること;
を含んでなる、癌を有する患者を、RAF阻害剤による治療に対して無反応であるとして確認する方法であって、
配列番号2の野生型のMEK1タンパク質と比較して、配列番号4のMEK1タンパク質中の121C>Sアミノ酸置換を生じるヌクレオチドの存在は、患者を、RAF阻害剤による治療に対して無反応であるとして確認する、前記方法。
【請求項11】
前記癌が、黒色腫である、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記癌が、白血病、リンパ腫、骨髄腫、細胞腫、転移性細胞腫、肉腫、腺腫、神経系癌又は尿生殖器癌からなる群から選択される、請求項9又は10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2010年6月9日に出願された米国特許仮出願:61/352,959の35U.S.C.§119(e)の出願日の便益を主張するものである。)
連邦政府支援研究開発
本発明は、National Institutes of Healthによって授与された連邦政府支援番号K08CA115927下の政府支援により行われた。政府は、本発明における一定の権利を有する。)
【背景技術】
【0002】
癌の治療は、近代医学における最も重要な挑戦の一つである。化学療法剤は、典型的には癌に伴う症状を治療又は軽減する有効な手段であるが、ある場合には、一つ又はそれより多い化学療法剤に対する耐性が治療中に顕在化する。結果として、与えられた化学療法剤は、ある個体において無効になり得る。各種の癌における耐性の産生の原因となる分子機構は、不完全に理解されている。具体的な薬剤に対する耐性の根底にある機構の解明は、薬物耐性を有効に包囲する治療方法を発見することが必須である。
【0003】
特に、更なる治療方法が必要とされる癌の一つの形は、悪性黒色腫である。悪性黒色腫は、2009年において68,729件の推定新事例を伴う、米国において診断される6番目に最も普通の癌である。転移性黒色腫は、6ないし15ヶ月の生存期間中央値を伴う非常に不良な予後を伴う。黒色腫において、MAPキナーゼ経路の制御されない活性が、殆ど遍在性であり、そしてBRAF癌遺伝子(BRAF V600E)のコドン600に関係する機能獲得型変異によって最も普通に起こる。50%より多い転移性黒色腫は、BRAF V600E変異を持つ。更に、BRAF V600E変異は、直腸結腸癌の10%、及び全ての固形腫瘍の8%において見いだされている。
【0004】
最近になって、黒色腫中の変異されたBRAFを特異的に標的とする努力が、有望な結果を得ている。PLX4032は、BRAF V600Eを特異的に阻害する経口的標的化薬物である。BRAF V600E変異を持つ黒色腫患者の第I相治験において、患者の70%(27人中19人)が、少なくとも30%のRECIST基準による腫瘍反応を有した。PLX4032の第II相及び第III相治験は、進行中である。然しながら、全ての他の標的化療法と同様に、PLX4032に対する耐性が、平均9ヶ月を経過した患者において現れ始めている。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、癌の化学療法に対する変異媒介の耐性に関する。具体的態様において、本発明は、MEK1タンパク質、及びMEK1タンパク質をコードする核酸分子中に確認される変異に関し、ここにおいて、この変異は、配列番号:2に示した野生型MEK1タンパク質の121位アミノ酸における置換を含んでなる。この変異は、現時点で治療的に使用されているRAF及びMEK阻害剤に対する耐性を与える。変異の確認は、化学療法剤に対する耐性に感受性であり得る癌患者の確認を可能にする。更に、変異の確認は、本明細書中に記載される変異のような、耐性変異を含有するMEK1タンパク質に対する活性を示す第二世代のMEK阻害剤の開発を可能にする。このような第二世代のMEK阻害剤は、癌の治療を含む多くの臨床及び治療的適用において有用である。
【0006】
従って、本発明は、第1の側面として、MEK1活性を有する変異MEK1タンパク質をコードする単離された核酸分子を特徴とし、ここにおいて、前記変異MEK1タンパク質は、配列番号:2に示す野生型MEK1の121位におけるアミノ酸置換を含んでなり、このアミノ酸置換は、変異MEK1タンパク質を発現する細胞に、一つ又はそれより多いRAF或いはMEK阻害剤に対する耐性を与える。各種の態様において、RAF阻害剤は、PLX4720、PLX4032、BAY43−9006(ソラフェニブ)、ZM336372、RAF265、AAL−881、LBT−613、及びCJS352からなる群から選択される。好ましいRAF阻害剤は、BRAF阻害剤のPLX4720及びPLX4032である。各種の態様において、MEK阻害剤は、CI−1040、AZD6244、PD318088、PD98059、PD334581、RDEA119、化合物A、及び化合物Bからなる群から選択される。幾つかの態様において、MEK阻害剤は、MEK1阻害剤のAZD6244である。幾つかの態様において、アミノ酸置換は、121C>Sアミノ酸置換である。幾つかの態様において、変異MEK1タンパク質は、配列番号:4のアミノ酸配列を含んでなる。幾つかの態様において、核酸は、配列番号:3の核酸配列を含んでなる。
【0007】
変異MEK1タンパク質をコードする単離された核酸分子を、発現ベクター中に挿入し、そして宿主細胞中に発現することができる。従って、もう一つの側面において、本発明は、本明細書中に記載するような核酸分子を含んでなる発現ベクターを特徴とする。もう一つの側面において、本発明は、前述の発現ベクターを含んでなる宿主細胞を特徴とする。もう一つの側面において、本発明は、変異MEKタンパク質が細胞によって産生されるように、変異MEK1タンパク質をコードする発現ベクターを含有する宿主細胞を培養することを含んでなる、変異MEK1タンパク質を産生する方法を特徴とする。
【0008】
他の側面において、本発明は、MEK1活性を有する単離されたMEK1タンパク質を特徴とし、ここにおいて、前記変異MEK1タンパク質は、配列番号:2に示す野生型MEK1タンパク質の121位におけるアミノ酸置換を含んでなり、このアミノ酸置換は、変異MEK1タンパク質を発現する細胞に、一つ又はそれより多いRAF或いはMEK阻害剤に対する耐性を与える。各種の態様において、RAF阻害剤は、PLX4720、PLX4032、BAY43−9006(ソラフェニブ)、ZM336372、RAF265、AAL−881、LBT−613、及びCJS352からなる群から選択される。幾つかの態様において、RAF阻害剤は、BRAF阻害剤のPLX4720及びPLX4032である。各種の態様において、MEK阻害剤は、CI−1040、AZD6244、PD318088、PD98059、PD334581、RDEA119、化合物A、及び化合物Bからなる群から選択される。幾つかの態様において、MEK阻害剤は、MEK1阻害剤のAZD6244である。幾つかの態様において、アミノ酸置換は、121C>Sアミノ酸置換である。幾つかの態様において、変異MEK1タンパク質は、配列番号:4のアミノ酸配列を含んでなる。
【0009】
もう一つの側面において、本発明は:変異MEK1タンパク質が配列番号:2に示す野生型MEK1タンパク質の121位におけるアミノ酸置換を含んでなる変異MEK1タンパク質、及びMEK1基質を含んでなるアッセイ組成物を用意し;アッセイ組成物を、試験化合物の非存在においてMEK1基質のリン酸化を可能にする条件下で、試験化合物と接触させ;そしてMEK1基質のリン酸化に対する化合物の影響を決定することを含んでなる癌の治療において有用である化合物を確認する方法を特徴とし;ここにおいて、適した対照と比較したMEK1基質のリン酸化の下方調節は、化合物を癌の治療において有用である化合物として確認する。幾つかの態様において、変異MEK1タンパク質は、121C>Sアミノ酸置換を含んでなる。
【0010】
関連する側面において、本発明は:変異MEK1タンパク質が、配列番号:2に示す野生型MEK1タンパク質の121位におけるアミノ酸置換を含んでなる変異MEK1タンパク質、及びMEK1基質を含んでなるアッセイ組成物を用意し;アッセイ組成物を、試験化合物の非存在においてMEK1基質のリン酸化を可能にする条件下で、試験化合物と接触させ;そしてMEK1基質のリン酸化に対する化合物の影響を決定することを含んでなる第二世代のMEK1阻害剤としての化合物を確認する方法を特徴とし;ここにおいて、適した対照と比較したMEK1基質のリン酸化の下方調節は、化合物を第二世代のMEK1阻害剤としての確認する。幾つかの態様において、変異MEK1タンパク質は、121C>Sアミノ酸置換を含んでなる。
【0011】
前述の側面の例示的態様において、MEK1基質は、ERK1/2である。他の態様において、アッセイ組成物は、細胞抽出物である。
もう一つの側面において、本発明は:変異MEK1タンパク質が、配列番号:2に示す野生型MEK1タンパク質の121位におけるアミノ酸置換を含んでなる変異MEK1タンパク質を含んでなる細胞を用意し;細胞を、試験化合物と接触させ;そしてERK1/2リン酸化に対する化合物の影響を決定することを含んでなる癌の治療において有用である化合物を確認する方法を特徴とし;ここにおいて、適当な対照と比較したERK1/2リン酸化の下方調節は、化合物を癌の治療において有用である化合物として確認する。関連する側面において、本発明は:変異MEK1タンパク質が、配列番号:2に示す野生型MEK1タンパク質の121位におけるアミノ酸置換を含んでなる変異MEK1タンパク質を含んでなる細胞を用意し;細胞を、試験化合物と接触させ;そしてERK1/2リン酸化に対する化合物の影響を決定することを含んでなる第二世代のMEK1阻害剤である化合物を確認する方法を提供し;ここにおいて、適当な対照と比較したERK1/2リン酸化の下方調節は、化合物を第二世代のMEK1素阻害剤として確認する。これらの方法の両方の幾つかの態様において、変異MEK1タンパク質は、121C>Sアミノ酸置換を含んでなる。
【0012】
もう一つの側面において、本発明は:変異MEK1タンパク質が、配列番号:2に示す野生型MEK1タンパク質の121位におけるアミノ酸置換を含んでなる変異MEK1タンパク質を含んでなる細胞を用意し;細胞を、試験化合物と接触させ;そして細胞増殖に対する化合物の影響を決定することを含んでなる癌の治療において有用である化合物を確認する方法を特徴とし;ここにおいて、適当な対照と比較した細胞増殖の減少は、化合物を癌の治療において有用である化合物として確認する。関連する態様において、本発明は:変異MEK1タンパク質が、配列番号:2に示す野生型MEK1タンパク質の121位におけるアミノ酸置換を含んでなる変異MEK1タンパク質を含んでなる細胞を用意し;細胞を、試験化合物と接触させ;そして細胞増殖に対する化合物の影響を決定することを含んでなる第二世代のMEK1阻害剤である化合物を確認する方法を提供し;ここにおいて、適当な対照と比較した細胞増殖の減少は、化合物を第二世代のMEK1阻害剤として確認する。これらの両方の方法の幾つかの態様において、変異MEK1タンパク質は、121C>Sアミノ酸置換を含んでなる。
【0013】
もう一つの側面において、本発明は、試験化合物を、第二世代のMEK1阻害剤として確認するための細胞ベースのスクリーニング方法を特徴とし、この方法は、宿主細胞を、試験化合物と接触させることを含んでなり、ここにおいて、宿主細胞は、変異MEK1タンパク質を含んでなり、ここにおいて、変異MEK1タンパク質は、配列番号:2に示す野生型MEK1タンパク質の121位におけるアミノ酸置換を含んでなり、ここにおいて、試験化合物に対する宿主細胞の感受性は、化合物を第二世代のMEK1阻害剤として確認する。この側面の一つの態様において、試験化合物に対する宿主細胞の感受性は、細胞増殖アッセイ、細胞生存率アッセイ、及びERK1/2リン酸化アッセイからなる群から選択されるアッセイを使用して測定され、ここにおいて、試験化合物の存在中の細胞増殖、細胞生存率、又はERK1/2リン酸化の減少は、化合物を第二世代のMEK1阻害剤として確認する。幾つかの態様において、変異MEK1タンパク質は、121C>Sアミノ酸置換を含んでなる。
【0014】
もう一つの側面において、本発明は:変異MEK1タンパク質の三次元結晶又は溶液構造を伴うコンピューター支援モデル化を使用して潜在的薬物を選択し、ここにおいて、前記変異MEK1タンパク質は、配列番号:2に示す野生型MEK1タンパク質の121位におけるアミノ酸置換を含んでなり;前記潜在的薬物を変異MEK1タンパク質と接触させ;そして前記潜在的薬物と変異MEK1タンパク質との相互作用を検出することを含んでなる第二世代のMEK1阻害剤を確認する方法を特徴とし;ここにおいて、変異MEK1タンパク質と相互作用することが可能である化合物は、第二世代のMEK1阻害剤として確認される。幾つかの態様において、変異MEK1タンパク質は、121C>Sアミノ酸置換を含んでなる。
【0015】
前述の側面の一つの態様において、試験化合物は、化合物ライブラリーの一員である。
もう一つの側面において、本発明は、前述の方法の一つによって確認された化合物を特徴とする。このような化合物は、例えば、配列番号:2に示す野生型MEK1タンパク質の121位におけるアミノ酸置換、幾つかの態様において、121C>Sアミノ酸置換を含んでなる変異MEK1タンパク質の活性を阻害することにおいて有用である。従ってもう一つの側面において、本発明は、変異MEK1タンパク質の活性を阻害する方法を特徴とし、ここにおいて、変異MEK1タンパク質は、配列番号:2に示す野生型MEK1タンパク質の121位におけるアミノ酸置換(好ましくは121C>Sアミノ酸置換)を含んでなり、この方法は、変異MEK1タンパク質を前述の方法の一つによって確認された化合物と接触させることを含んでなる。例示的な態様において、化合物は、変異MEK1タンパク質及び野生型MEK1タンパク質の活性を阻害する。一つの態様において、前記の接触は、in vitroで起こる。もう一つの態様において、前記接触はin vivoで起こる。もう一つの態様において、前記接触は、患者中で起こる。例示的態様において、前記接触は癌を有する患者中で起こる。一つの態様において、癌を有する患者は、PLX4720、PLX4032、BAY43−9006(ソラフェニブ)、ZM336372、RAF265、AAL−881、LBT−613、及びCJS352(好ましくはBRAF阻害剤のPLX4720及びPLX4032)からなる群から選択されるRAF阻害剤のようなRAF阻害剤による治療から再発している。更に、又はさもなければ、癌を有する患者は、CI−1040、AZD6244、PD318088、PD98059、PD334581、RDEA119、化合物A、及び化合物Bからなる群から選択されるMEK阻害剤のような第一世代のMEK阻害剤による治療から再発している。幾つかの態様において、MEK1阻害剤は、AZD6244である。例示的な態様において、癌は、黒色腫である。
【0016】
もう一つの側面において、本発明は、前述の方法の一つによって確認された化合物を患者に投与することを含んでなる癌を有する患者を治療する方法を特徴とする。例示的な態様において、化合物は、配列番号:2に示す野生型MEK1タンパク質の121位におけるアミノ酸置換(好ましくは121C>Sアミノ酸置換)を含んでなる変異MEK1タンパク質、及び野生型MEK1タンパク質の活性を阻害する。一つの態様において、癌を有する患者は、PLX4720、PLX4032、BAY43−9006(ソラフェニブ)、ZM336372、RAF265、AAL−881、LBT−613、及びCJS352からなる群から選択されるRAF阻害剤のようなRAF阻害剤による治療から再発している。幾つかの態様において、BRAF阻害剤は、PLX4720及びPLX4032から選択される。更に、又はさもなければ、癌を有する患者は、CI−1040、AZD6244、PD318088、PD98059、PD334581、RDEA119、化合物A、及び化合物Bからなる群から選択されるMEK阻害剤のような第一世代のMEK阻害剤による治療から再発している。幾つかの態様において、MEK1阻害剤は、AZD6244である。特別な態様において、癌は、野生型MEK1タンパク質に関して121C>Sアミノ酸置換を有するMEK1タンパク質、及び/又は野生型MEK1タンパク質に対して、121C>Sアミノ酸置換を有するMEK1タンパク質をコードするMEK1核酸分子を含んでなり、ここにおいて、121C>Sアミノ酸置換は、変異MEK1タンパク質を発現している細胞に、一つ又はそれより多いRAF又はMEK阻害剤に対する耐性を与える。例示的な態様において、癌は、黒色腫である。
【0017】
もう一つの側面において、本発明は、癌を有する患者をスクリーニングする方法を特徴とし、この方法は、患者から癌細胞を含有する試料を得て;そして癌細胞を含有する試料中の、配列番号:2を示す野生型MEK1タンパク質の121位におけるアミノ酸置換の存在又は非存在を決定することを含んでなる。幾つかの態様において、121C>Sのアミノ酸置換の存在又は非存在が決定される。
【0018】
前述の側面の一つの態様において、MEK1タンパク質中の121位における変異の検出は、RAF阻害剤による治療中に、患者を相対的に高い再発の危険度を有するとして確認する。もう一つの態様において、MEK1タンパク質中の121位における変異の検出は、患者をRAF阻害剤による治療に対して無反応であるとして確認する。例示的な態様において、RAF阻害剤は、PLX4720、PLX4032、BAY43−9006(ソラフェニブ)、ZM336372、RAF265、AAL−881、LBT−613、及びCJS352からなる群から選択される。幾つかの態様において、BRAF阻害剤は、PLX4720及びPLX4032から選択される)。前述の側面のもう一つの態様において、MEK1タンパク質中の121位における変異(好ましくはC121S)の存在は、患者を、変異MEK1タンパク質を標的とする第二世代のMEK1阻害剤による治療に階層化する。もう一つの態様において、MEK1タンパク質中の121位における変異の存在は、患者をRAF阻害剤及び変異MEK1タンパク質を標的とする第二世代のMEK1阻害剤の両方の投与を含む組合せ療法による治療に階層化する。幾つかの態様において、121位における変異は、C121Sである。
【0019】
もう一つの側面において、本発明は:
(a)癌の細胞から核酸を抽出し;そして
(b)MEK1タンパク質をコードする核酸分子を配列決定すること;
を含んでなる、癌を有する患者を、RAF阻害剤による治療中に、高い再発の危険度を有するとして確認する方法を提供し、ここにおいて、野生型のMEK1タンパク質と比較した、MEK1タンパク質中の121C>Sアミノ酸置換を産生するヌクレオシドの存在は、患者をRAF阻害剤による治療中の高い再発の危険度を有するとして確認する。
【0020】
もう一つの側面において、本発明は:
(a)癌の細胞から核酸を抽出し;そして
(b)MEK1タンパク質をコードする核酸分子を配列決定すること;
を含んでなる、癌を有する患者を、RAF阻害剤による治療に対して無反応であるとして確認する方法を提供し、ここにおいて、野生型のMEK1タンパク質と比較した、MEK1タンパク質中の121C>Sアミノ酸置換を産生するヌクレオシドの存在は、患者をRAF阻害剤による治療に対して無反応であるとして確認する。
【0021】
もう一つの側面において、本発明は:
(a)癌の細胞から核酸を抽出し;そして
(b)MEK1タンパク質をコードする核酸分子を配列決定すること;
を含んでなる、癌を有する患者の治療を最適化する方法を提供し、ここにおいて、野生型のMEK1タンパク質と比較した、MEK1タンパク質中の121C>Sアミノ酸置換を産生するヌクレオシドの存在は、患者を、RAF阻害剤及び121C>Sアミノ酸置換を有する変異MEK1タンパク質を標的とするMEK阻害剤で治療する必要性があることを示す。
【0022】
もう一つの側面において、本発明は:
(a)癌の細胞から核酸を抽出し;
(b)MEK1タンパク質をコードする核酸分子を配列決定し;そして
(c)核酸分子が、野生型MEK1タンパク質と比較して、MEK1タンパク質中の121C>Sアミノ酸置換を産生するヌクレオチドを含有する場合、RAF阻害剤及び121C>Sアミノ酸置換を有する変異MEK1タンパク質を標的とするMEK阻害剤を患者に投与すること;
を含んでなる、癌を有する患者を治療する方法を提供する。
【0023】
もう一つの側面において、本発明は:
(a)癌の細胞から核酸を抽出し;
(b)試料をPCRにかけ、そしてMEK1タンパク質をコードする核酸分子のヌクレオチドの配列を確認し;
(c)核酸分子が、野生型MEK1タンパク質と比較して、MEK1タンパク質中の121C>Sアミノ酸置換を産生するヌクレオチドを含有する場合、RAF阻害剤及び121C>Sアミノ酸置換を有する変異MEK1タンパク質を標的とするMEK阻害剤を患者に投与すること;
を含んでなる、癌を有する患者を治療する方法を提供する。
【0024】
もう一つの側面において、本発明は:
(a)癌から得られた核酸試料を、MEK1タンパク質中の121C>Sアミノ酸置換を産生するMEK1タンパク質をコードする核酸分子中の一つ又はそれより多い変異の存在を、野生型MEK1タンパク質と比較して分析し; そして
(b)MEK1タンパク質中の121C>Sアミノ酸置換を産生するMEK1タンパク質をコードする核酸分子中の一つ又はそれより多い変異の存在を、RAF阻害剤及び121C>Sアミノ酸置換を有する変異MEK1タンパク質を標的とするMEK阻害剤による治療から利益を得る可能性のある患者と相関すること;
を含んでなる、RAF阻害剤及び121C>Sアミノ酸置換を有する変異MEK1タンパク質を標的とするMEK阻害剤による治療から利益を得る可能性のある癌を有する患者を確認する方法を提供する。
【0025】
もう一つの側面において、本発明は:
(a)癌の細胞から核酸を抽出し;そして
(b)MEK1タンパク質をコードする核酸分子を配列決定すること;
を含んでなる、121C>Sアミノ酸置換を有する変異MEK1タンパク質を標的とするMEK阻害剤による治療から利益を得る可能性のある癌を有する患者を確認する方法を提供し、ここにおいて、MEK1タンパク質中の121C>Sアミノ酸置換を産生するヌクレオチドの、野生型のMEK1タンパク質と比較した存在は、患者が121C>Sアミノ酸置換を有する変異MEK1タンパク質を標的とするMEK阻害剤による治療から利益を得る可能性があるとして確認する。
【0026】
前述の側面の各種の態様において、RAF阻害剤は、PLX4720、PLX4032、BAY43−9006(ソラフェニブ)、ZM336372、RAF265、AAL−881、LBT−613、及びCJS352からなる群から選択される。幾つかの態様において、RAF阻害剤は、PLX4720又はPLX4032である。前述の側面の幾つかの態様において、癌は、白血病、リンパ腫、骨髄腫、細胞腫、転移性細胞腫、肉腫、腺腫、神経系癌又は尿生殖器癌である。例示的な態様において、癌は、黒色腫である。
【0027】
もう一つの側面において、本発明は、RAF阻害剤による治療中の再発の高い危険度を有する癌を有する患者を確認する、又はRAF阻害剤による治療に対して無反応である癌を有する患者を確認する、又は癌を有する患者の治療を最適化する、又はRAF阻害剤及び121C>Sアミノ酸置換を有する変異MEK1タンパク質を標的とするMEK阻害剤による治療から利益を得る可能性のある癌を有する患者を確認する、或いは121C>Sアミノ酸置換を有する変異MEK1タンパク質を標的とするMEK阻害剤による治療から利益を得る可能性のある癌を有する患者を確認するためのキットを提供し、このキットは:(a)配列番号:1又は配列番号2のMEK1タンパク質中の121位のアミノ酸における変異の存在又は非存在を確認するために有用な検出試薬;並びに(b)本明細書中に記載された方法を記載した説明書を含んでなる。例示的な態様において、検出試薬は、配列番号:1又は2のMEK1タンパク質の増幅のために有用な核酸プライマーを含んでなる。
【0028】
前述の側面の各種の態様において、MEK1タンパク質、例えば、癌細胞を含有する試料中のMEK1タンパク質中の121位のアミノ酸における変異(例えば、C121S変異)の存在は、MEK1タンパク質をコードする核酸分子の配列を決定することを含んでなる方法によって決定される。他の態様において、MEK1タンパク質中の121位のアミノ酸における変異の存在は、変異を含んでなるMEK1タンパク質を認識する抗体を使用して決定される。もう一つの態様において、前述の方法は、更にMEK1タンパク質中の一つ又はそれより多い変異の存在が検出された患者に、本明細書中に記載される方法によって確認された化合物を投与することを含んでなる。
【0029】
もう一つの側面において、本発明は、患者の変異MEK1タンパク質を阻害する方法を特徴とし、変異MEK1タンパク質は、配列番号:2に示す野生型MEK1タンパク質の21位におけるアミノ酸置換を含んでなり、この方法は、変異MEK1タンパク質の存在が検出された患者に、前述の方法の一つによって確認された化合物を投与することを含んでなる。幾つかの態様において、アミノ酸置換は、121C>Sアミノ酸置換である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1A及び1Bは、増加する濃度(μM)のBRAF阻害剤のPLX4720(図1A)又はMEK1阻害剤のAZD6244(図1B)のいずれかで処理されたA375黒色腫細胞の増殖阻害のパーセントを示すグラフであり、ここにおいて、A375細胞は、形質移入されていない(A375)、野生型MEK1で形質移入されている(MEK−WT)、MEK1 C121S変異体で形質移入されている(MEK−C121S)又は恒常的に活性なMEK変異種で形質移入されている(MEK−DD)かのいずれかであった。
図2図2A及び2Bは、野生型MEK1(MEK−WT)及び恒常的に活性なMEK変異種(MEK−DD)と比較したMEK1 C121Sのキナーゼ活性を示す。図2Aは、免疫ブロットの写真である。図2Bは、リン酸化されたERK(pERK)の相対パーセントを定量化した棒グラフである。
図3図3は、野生型ヒトMEK1核酸配列(配列番号:1)を示す。(寄託番号NM_002755 gi:169790828)。
図4図4は、野生型ヒトMEK1タンパク質配列(配列番号:2)を示す。(寄託番号NP_002746;gi:5579478)。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、癌のための化学療法的治療に対する耐性、特にRAF阻害剤で治療される悪性黒色腫における耐性の産生に関する。本明細書中に記載されるものは、初期の劇的反応後のBRAF阻害剤のPLX4032に対する耐性を産生した転移性黒色腫を持つ患者である。実施例1に記載されるように、患者からの3種の異なったDNA試料:(i)PLX4032に対して感受性である腫瘍、(ii)PLX4032に耐性である腫瘍、及び(iii)正常な皮膚の比較ゲノム解析を行うために使用した大規模並行配列決定を使用した。121位アミノ酸におけるMEK1変異、特にC121S変異は、変異MEK1タンパク質を発現する細胞に、RAF阻害剤に対する耐性、並びにMEK阻害剤に対する耐性を与えるとして確認された。従って、BRAF阻害に対する反応におけるMEK1変異の産生は、腫瘍が、患者中の標的キナーゼの下流の活性化変異を産生する後天的耐性機構の患者において最初に報告された例である。
【0032】
例示的な態様において、MEK1タンパク質中の121位のアミノ酸における変異は、RAF阻害剤のPLX4032及びPLX4720、並びにMEK阻害剤のAZD6244に対する耐性を与える。従って、“耐性変異”は、本明細書中で使用される場合、一つ又はそれより多いRAF又はMEK阻害剤に対する耐性を与えるMEK1タンパク質における変異である。本明細書中で使用する場合、用語“一つ又はそれより多いRAF又はMEK阻害剤に対する耐性”は、耐性が、一つ又はそれより多いRAF阻害剤、一つ又はそれより多いMEK阻害剤、或いはRAF及びMEK阻害剤の組合せ(例えば、RAF阻害剤及びMEK阻害剤)に対することを意味することを意図する。
【0033】
RAF阻害剤、並びにMEK阻害剤に対する耐性を与えるMEK1タンパク質中の121位のアミノ酸における変異の確認は、この変異MEK1タンパク質を特異的に標的とする“第二世代のMEK阻害剤”の開発を可能にする。本明細書中で使用する場合、用語“第二世代のMEK阻害剤”は、本明細書中に記載される変異(C121S)のような121位のアミノ酸における変異を含有するMEK1タンパク質の生物学的活性を阻害する薬剤を指す。好ましい態様において、第二世代のMEK阻害剤は、更に野生型MEK1タンパク質の生物学的活性も阻害する。従って、本発明の第二世代のMEK阻害剤は、耐性変異を含有するMEK1タンパク質の生物学的活性を阻害することができ、そして野生型MEKタンパク質の生物学的活性を阻害することができる。このような第二世代のMEK阻害剤は、多くの臨床的及び治療的適用、例えば、癌の治療において有用である。対照的に、用語“第一世代のMEK阻害剤”は、本明細書中で使用する場合、野生型のMEKタンパク質の生物学的活性を阻害するが、しかし本明細書中に記載される変異のような、121位のアミノ酸における耐性変異を含有するMEK1タンパク質の生物学的活性を阻害しない薬剤を指す。
【0034】
RAF阻害剤の非制約的例は、PLX4720、PLX4032、BAY43−9006(ソラフェニブ)、ZM336372、RAF265、AAL−881(Novartis)、LBT−613(Novartis)、及びCJS352を含む。PLX4720、PLX4032、BAY43−9006(ソラフェニブ)、ZM336372、RAF 265を、表1に示す。当技術において既知の更なるRAF阻害剤も更に使用することができる。
【0035】
表1:RAF阻害剤の例示
【0036】
【表1】
【0037】
MEK阻害剤の非制約的例は、CI−1040、AZD6244、PD318088、PD9805、PD334581、RDEA119、化合物A、及び化合物B(表2)を含む。化合物A及びB(それぞれ、6−メトキシ−7−(3−モルホリン−4−イル−プロポキシ)−4−(4−フェノキシ−フェニルアミノ)−キノリン−3−カルボニトリル及び4−[3−クロロ−4−(1−メチル−1H−イミダゾール−2−イルスルファニル)−フェニルアミノ]−6−メトキシ−7−(3−モルホリン−4−イル−プロポキシ)−キノリン−3−カルボニトリルは、Zhang et al.,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,11(11):1407−1410(2001)及びMallon et al.,Mol Cancer Ther.Jun;3(6):755−62(2004)中に更に記載され、その全ての内容は、本明細書中に参考文献として援用される。
【0038】
表2:MEK阻害剤の例示
【0039】
【表2-1】
【0040】
【表2-2】
【0041】
表2に示すMEK阻害剤、並びに当技術において既知の更なるMEK阻害剤を、これらが、“第一世代のMEK阻害剤”であるか又は“第二世代のMEK阻害剤”であるかを決定するために、本明細書中に記載される方法を使用して試験することができる。
【0042】
MEK1タンパク質中の耐性変異の確認は、更に癌における121位のアミノ酸におけるMEK1耐性変異の存在又は非存在を決定するための癌を有する患者のスクリーニングを可能にする。癌における一つ又はそれより多いMEK耐性変異の存在或いは非存在を決定することは、癌患者の治療戦略の変更を可能にする。このような変更は、例えば、第一世代のMEK1阻害剤若しくはRAF阻害剤による治療を開始又は停止すること、或いは第二世代のMEK阻害剤による治療を開始又は停止することを含むことができる。
【0043】
本発明の各種の側面は、以下の下位項目中で更に詳細に記載される。他に規定しない限り、本明細書中で使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術の当業者よって普通に理解されるものと同じ意味を有する。争議の場合、定義を含む本明細書が支配するものである。本明細書中に記載されるものと同様な又は等価な方法及び物質を本発明の実施において使用することができるが、適した方法及び物質の例は、以下に記載される。本明細書中に記載される物質、方法、及び例は、例示のみであり、そして制約を意図するものではない。本明細書中に記述される全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、その全てが参考文献として援用される。
【0044】
I.MEKの生物学的活性
本明細書中で使用する場合、用語“MEK1タンパク質”は、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)細胞内シグナル伝達において重要な役割を演じる二重特異的チロシン及びセリン/トレオニンキナーゼであるMKK1(MAPキナーゼキナーゼ1)としても知られるタンパク質を指す。MEK1は、概略45kDaの大きさであり、そして哺乳動物細胞中に偏在的に発現する。MEK1は、217及び221位における二つのセリン残基を含む活性化ループを含有する。タンパク質キナーゼRafによるこれらの残基のリン酸化は、MAPKシグナル伝達中のMEK1活性化をもたらす。MEK1は、更に二つの制御性リン酸化部位を活性化ループの外側に含有する。セリン298におけるリン酸化は、活性化のためにMEK1を刺激することを援助することができる。逆に、セリン212におけるリン酸化は、MEK1活性を減少することができる。
【0045】
マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)カスケードは、増殖因子、サイトカイン、及び原癌遺伝子を含む、多様な細胞外刺激の反応するシグナル伝達を制御する重要な細胞内シグナル伝達経路である。この経路の活性化は、転写因子の活性化及び遺伝子発現における変化をもたらし、これは、最終的に細胞増殖、細胞サイクル制御、細胞生存、血管新生及び細胞遊走を含む細胞機能の変化に導く。古典的MAPKシグナル伝達は、受容体型チロシンキナーゼによって細胞表面において開始されるが、然しながら、多くの他の細胞表面分子は、インテグリン、ヘテロ三量体Gタンパク質、及びサイトカイン受容体を含むMAPKカスケードを活性化することが可能である。
【0046】
細胞表面の受容体、例えば、受容体型チロシンキナーゼに結合するリガンドは、典型的には受容体のリン酸化をもたらす。アダプタータンパク質Grb2は、活性化された受容体のリン酸化された細胞内領域と結合し、そしてこの結合は、SOS−1及びCDC25を含むグアニンヌクレオチド交換因子を細胞膜に補充する。これらのグアニンヌクレオチド交換因子は、GTPアーゼRsaと相互作用し、そして活性化する。普通のRasイソフォームは、K−Ras、N−Ras、H−Ras等を含む。Rasの活性化後、セリン/トレオニンキナーゼRas(例えば、A−Raf、B−Raf又はRaf−1)が、Rasとの相互作用により細胞膜に補充される。次いでRafはリン酸化される。Rafは、217及び221位の二つのセリン残基のリン酸化によってMEK1及びMEK2を直接活性化する。活性化後、MEK1及びMEK2は、セリン/トレオニンキナーゼErk1及びErk2中のチロシン(Tyr−185)及びトレオニン(Thr−183)残基をリン酸化し、Erkの活性化をもたらす。活性化されたErkは、細胞質ゾル中の多くの標的を制御し、そして更に核に転位置させ、ここでこれは、遺伝子発現を制御する多くの転写因子をリン酸化する。Erkキナーゼは、Elk−1、c−Ets1、c−Ets2、p90RSK1、MNK1、MNK2、MSK1、MSK2及びTOBを含む多くの標的を有する。前述の経路は、MAPKシグナル伝達の古典的提示であるが、MAPK経路及び他のシグナル伝達カスケード間にはかなりのクロストークがある。
【0047】
MAPKシグナル伝達における異常は、癌の生物学における有意な役割がある。Rasの変更された発現は、多くの癌において普通であり、そしてRasにおける活性化異変も更に確認されている。このような変異は、全ての癌の30%迄において見いだされ、そして膵臓(90%)及び大腸(50%)細胞腫において特に普通である。更に、Raf変異の活性化は、黒色腫及び卵巣癌において確認されている。最も普通の変異、BRAF 600V>Eは、下流のMAPキナーゼ経路の恒常的活性化をもたらし、そしてこれは、黒色腫細胞の増殖、軟寒天増殖、及び腫瘍の異種移植片形成のために必要である。MAPKの規定された役割に基づけば、ヒトの癌における過剰活性化、特異的阻害剤によるMAPK経路の成分の標的化は、癌の療法に対する有望な方法である。MEK1及びMEK2は、これらがErk1/2基質に対してこれらが示す高い程度の特異性のために、療法の魅力ある標的である。MEK1及びMEK2間の高い程度の相同性は、これを、小分子MEK阻害剤が両方のタンパク質を有効に阻害するものである可能性のあるものとする。CI−1040(更にPD184352としても知られる)は、第I相及び第II相臨床治験において試験されているMEK阻害剤である。CI−1040は、17nmol/Lのin vitroのIC50で、MEK1を阻害することが見いだされた(Friday et al.Clin.Cancer Res.(2008)14(2):342−346;本明細書中に参考文献としてその全てが援用される)。CI−1040は、更に細胞ベースアッセイにおいてMEKを阻害し、そしてヒト大腸癌異種移植片の増殖を減少し、MEK阻害が癌の療法の実行可能な方法であることを示した。
【0048】
本明細書中に互換的に使用される場合、用語“MEK1活性”、“MEK1生物学的活性”又は“MEK1の機能的活性”は、MEK反応性細胞又は組織、例えば、癌細胞に対するMEK1タンパク質、或いはMEK核酸分子又はタンパク質標的分子によって誘発される標準的技術によってin vivo又はin vitroで決定されるような活性を含む。MEK1活性は、MEK標的分子、例えば、Erk1/2との結合、又は基質(例えばErk1/2)のリン酸化のような直接的活性であることができる。別の方法として、MEK1活性は、MEK1タンパク質のMEK標的分子、例えば、Erk1/2との相互作用によって媒介される下流の生物学的事象のような間接的活性であることができる。MEKがERK1/2に関係するシグナル伝達経路中にあるため、MEK1の調節は、ERK1/2に関係するシグナル伝達経路中の分子を調節する。
【0049】
II.MEK耐性変異
PLX4032のようなRAF阻害剤、又はAZD6244及びCI−1040を含むMEK阻害剤による治療は、有望な治療方法であるが、このような治療を受けている患者は、しばしば再発し又は反応せず、そして結果として患者の疾病は進行する。本明細書中に記載するように、本発明は、現時点で臨床開発中のRAF及びMEK阻害剤に対する耐性を与えるMEK1における変異の発見に関する。癌細胞におけるこのような変異の獲得は、患者を、ある種のRAF及びMEK阻害剤による治療に対して耐性にする。例示的な態様において、本発明は、RAF阻害剤のPLX4032及びPLX4720並びにMEK阻害剤のAZD6244に対する耐性の産生に関する。
【0050】
本明細書中に記載されるような転移性BRAFv600E黒色腫中の耐性MEK1変異の臨床的出現は、RAF/MEKに随伴する依存性の生物学的関連が、悪性度の進行期でも依存されていることを示唆する。従って、多くのBRAFV600E黒色腫における長期の腫瘍反応を誘発する第一世代のRAF又はMEK阻害剤の失敗は、臨床設定における最適以下の薬物の効力又は薬物動力学を示すことができる。本明細書中に記載される発見に基づけば、RAF又はMEKで促進される腫瘍における標的剤に関係する治療の様式は、更に強力な薬物、既存の薬物の変更された投与、又は組合せたRAF及びMEK阻害からの利益を得ることができる。患者を階層化するための強固な腫瘍の遺伝子的鑑定と一緒にしたこれらの治療的技術革新は、“新薬の開発につながる”癌細胞の変異を伴う癌の個別的癌治療の出現を加速する筈である。
【0051】
(A)RAF及びMEK阻害剤に対する耐性を与えるMEK1変異の確認
各種の態様において、本発明は、RAF又はMEK活性を阻害する薬物に対するMEK1タンパク質を発現する細胞に耐性を与えるMEK1タンパク質中の変異、又はMEK1タンパク質をコードする核酸分子中の変異を確認する方法に関する。“変異MEK1タンパク質”は、本明細書中で言及される場合、一つ又はそれより多い既知のRAF又はMEK阻害剤に対する耐性を与える一つ又はそれより多い変異を含有するMEK1タンパク質を含む。同様に、“変異MEK1核酸分子”は、本明細書中で言及される場合、変異MEK1タンパク質をコードする核酸分子を含む。一つ又はそれより多い変異を含有するMEK1タンパク質をコードする核酸分子は、例えば、野生型MEK1核酸配列のランダム変異誘発又は部位特異的変異誘発を含む当技術において既知のいずれもの適した方法を使用して作ることができ、これは、E.coli中で行うことができる。例示的な態様において、野生型MEK1核酸配列は、ヒト野生型MEK1核酸配列であることができる。具体的態様において、野生型MEK1核酸配列は、図3に示す野生型ヒトMEK1(配列番号:1)である。次いで変異MEK1核酸分子は、RAF又はMEK阻害剤による治療に対して、さもなければ耐性である変異MEK1タンパク質をコードする核酸を確認するために、RAF又はMEK阻害剤による治療に感受性である細胞中で選別することができる。
【0052】
いずれもの適した方法を、RAF又はMEK阻害剤による治療に対する耐性のために、変異MEK1核酸及び変異MEK1タンパク質を選別するために使用することができる。例えば、変異MEK1タンパク質をコードする核酸分子は、別のRAF又はMEK阻害剤による治療に対して、さもなければ感受性である細胞中に発現することができる。この目的のために有用な例示的な細胞系は、黒色腫細胞系A375である。変異MEK1タンパク質の発現後、細胞をRAF又はMEK阻害剤で処理することができる。次いで変異MEK1タンパク質の活性を測定し、そして同様に発現させ、そしてRAF又はMEK阻害剤で処理された野生型MEK1タンパク質の活性と比較することができる。MEK1タンパク質の活性は、例えば、RAF又はMEK阻害剤による処理後の細胞の増殖又は生存率を測定することによって決定することができ、ここにおいて、増殖又は生存率は、MEK1活性と正に相関する。細胞成長、増殖、又は生存率は、当技術において既知のいずれもの適した方法を使用して決定することができる。一つの態様において、細胞成長は、MTS又はCell Titer GLoのようなウェルベースの細胞増殖/生存率アッセイを使用して決定することができ、ここにおいて、RAF又はMEK阻害剤の存在中の細胞成長は、RAF又はMEK阻害剤の非存在で培養された無処理細胞において観察されたもののパーセントとして表示される。ある態様において、耐性は、適した対照に関して少なくとも2倍、更に好ましくは3倍、最も好ましくは少なくとも4−5倍のGI50の変化として定義される。他の態様において、耐性は、1uM迄のGI50値として定義される)。MEK1タンパク質の活性は、更に例えば、RAF又はMEK阻害剤による処理後の細胞中に存在するリン酸化されたERK1/2の相対量を決定することによって測定することもできる。野生型又は変異MEK1タンパク質の活性は、更にin vitroのリン酸化アッセイを使用して決定することもでき、ここにおいて、MEK1活性は、RAF又はMEK阻害剤による処理後のアッセイ中の、リン酸化されたERK1/2基質の比率を測定することによって決定される。RAF又はMEK阻害剤による処理後の、野生型MEK1タンパク質より大きい活性を有する変異MEK1タンパク質は、RAF又はMEK阻害剤に対する耐性を与える変異を含有するとして確認される。次いで、RAF又はMEK阻害剤に対する耐性を与える変異を、変異MEK1タンパク質をコードする核酸を配列決定するか、又は変異MEK1タンパク質を直接配列決定することによって確認することができる。
【0053】
この様式で、同様に実施例1に記載する大規模並行配列決定法を使用して変異された場合、RAF阻害剤のPLX4032及びPLX4720、並びにMEK阻害剤のAZD6244に対する耐性を与えるヒトMEK1タンパク質の121位におけるアミノ酸置換を確認した。特に、121位における野生型システインのセリンによる置換(本明細書中でC121S又は121C>Sと呼ばれる)は、RAF及びMEK阻害剤に対する耐性を与えるとして確認された。更に、本発明は、一つ又はそれより多いRAF又はMEK阻害剤に対する耐性を与えるMEK1の121位のアミノ酸における他の置換を包含する。例えば、121位におけるシステインの、アラニン、トレオニン又はグリシンのようなセリンに構造的に類似した他のアミノ酸による置換は、本発明によって包含される。従って、各種の態様において、本発明の変異MEK1タンパク質は、C121A、C121T又はC121Gのような変異を含んでなる。
【0054】
本明細書中に記載するように、RAF又はMEK阻害剤に対する耐性を与えるMEK中の変異の確認は、121位のアミノ酸における耐性変異を有する変異MEK1タンパク質を阻害することにおいて有効である“第二世代のMEK阻害剤”の設計及びスクリーニングを可能にする。このような第二世代のMEK阻害剤は、多くの臨床及び治療の適用、例えば癌の治療において有用である。MEK1タンパク質中の耐性変異の確認は、更に癌における121位におけるMEK1耐性変異の存在又は非存在を決定するために癌を有する患者のスクリーニングを可能にする。癌における121位におけるMEK1耐性変異の存在又は非存在を決定することは、癌患者の治療戦略の変更を可能にする。例えば、癌を有する患者からの癌細胞を含有する試料中の、本明細書中に記載するMEK1耐性変異の確認は、患者を、第二世代のMEK1阻害剤による治療に階層化するために使用することができる。MEK1耐性変異の確認は、更にある種のRAF又はMEK阻害剤による治療に対する再発の高い危険度又は反応の欠如を有する患者のスクリーニング及び確認を可能にする。
【0055】
前述のMEK1耐性変異は、更にRAFキナーゼの阻害剤、例えば、B−RAF阻害剤のPLX4720に対する耐性も与える。RAFキナーゼの阻害剤に対する耐性は、例えば、変異MEK1タンパク質の活性をRAF阻害剤の存在中で測定し、そしてその活性を、RAF阻害剤で同様に処理された野生型MEK1タンパク質のものと比較することによって決定することができる。MEK1タンパク質の活性は、本明細書中で記述される方法を使用して決定することができる。
【0056】
III.第二世代のMEK阻害剤を確認するための方法
MEK1耐性変異の確認は、“第二世代のMEK1阻害剤”の開発及び/又は確認を可能にする。本明細書中で使用する場合、第二世代のMEK1阻害剤は、本明細書中に記載されるような121位のアミノ酸における変異を含有する変異MEK1タンパク質の活性を有効に阻害する薬剤である。第二世代のMEK1阻害剤は、変異MEK1タンパク質に加えて、野生型MEK1タンパク質の活性を阻害することができるか、又はできない。好ましい態様において、第二世代のMEK1阻害剤は、野生型MEK1タンパク質及び変異MEK1タンパク質の両方の活性を阻害する。例示的な態様において、第二世代のMEK1阻害剤は、121位のアミノ酸における変異、好ましくはC121S変異を含有するMEK1タンパク質の活性を阻害する。
【0057】
従って、本発明は、試験化合物を、第二世代のMEK1阻害剤として確認するための方法を提供する。一つの態様において、化合物は、変異MEK1タンパク質(121位における置換を有する)の、化合物の存在又は非存在中の野生型MEK1タンパク質に対する相対的MEK1活性を決定することによって、第二世代のMEK1阻害剤として確認することができる。第二世代のMEK1阻害剤である化合物の存在中の場合、変異MEK1タンパク質は、化合物の非存在中より低いレベルのMEK1活性を有する。第二世代のMEK1阻害剤ではない化合物の存在中の場合、変異MEK1タンパク質は、化合物の非存在中と等しいか、又はそれより高いレベルのMEK1活性を有する。ある態様において、MEK1活性は、組換えMEK1タンパク質を使用するin vitroアッセイ中で測定することができる。他の態様において、MEK1活性は、培養細胞又は実験動物を使用するin vivoアッセイ中で測定することができる。
【0058】
いずれものMEK1活性の指示薬は、化合物が第二世代のMEK1阻害剤であるか否かを決定するために適している。例示的な態様において、MEK1活性は、MEK基質のERK1/2のリン酸化を測定することによって決定され、ここにおいて、ERK1/2リン酸化の減少は、MEK1活性の減少を示す。一つの態様において、ERK1/2リン酸化は、細胞又は細胞抽出物中で測定される。別の態様において、ERK1/2リン酸化は、精製された又は組換えタンパク質を使用するin vitroのリン酸化アッセイ中で測定される。当技術において既知のERK1/2リン酸化を検出する方法は、MEK1タンパク質又は変異MEK1タンパク質の活性の指標として、ERK1/2リン酸化を測定するために適している。このような方法は、制約されるものではないが、ウェスタンブロット及び質量分光法を含む。ある態様において、ERK1/2リン酸化アッセイは、組換えタンパク質を使用してin vitroで行うことができる。他の態様において、ERK1/2リン酸化アッセイは、培養細胞又は実験動物を使用してin vivoで行うことができる。
【0059】
一つの態様において、変異MEK1タンパク質を発現している宿主細胞が、第二世代のMEK1阻害剤の確認において使用され、ここにおいて、宿主細胞の試験化合物に対する感受性が、試験化合物を第二世代のMEK1阻害剤として確認する。本明細書中で使用する場合、“試験化合物に対する宿主細胞の感受性”は、試験化合物が、細胞成長、細胞増殖、細胞生存率及び/又は細胞内シグナル伝達(例えば、一つ又はそれより多いERK1/2のようなMEK基質のリン酸化によって証明されるような、MEK1によって媒介されるシグナル伝達)を含む一つ又はそれより多いパラメータに対して測定可能な影響を有することを意味することを意図している。
【0060】
化合物は、化合物の存在又は非存在中で変異MEK1タンパク質を発現している細胞の生存率又は増殖速度を決定することによって、第二世代のMEK1阻害剤として確認することができる。このようなアッセイに使用される細胞系は、細胞系が野生型MEK1タンパク質を発現する場合、MEK1阻害剤に対して感受性でなければならず、そして細胞系が変異MEK1タンパク質を発現する場合、MEK1阻害剤(即ち、第一世代のMEK阻害剤)に対して耐性でなければならない。第二世代のMEK1阻害剤の確認のために有用な例示的な細胞系は、黒色腫細胞系A375である。A375細胞は、野生型MEK1タンパク質を発現している場合、MEK1阻害剤のAZD6244に対して感受性であるが、しかし変異MEK1タンパク質、例えばC121S変異を含んでなるMEK1タンパク質を発現している場合、AZD6244に対して耐性である。
【0061】
第二世代のMEK1阻害剤である化合物の存在中の場合、変異MEK1タンパク質を発現している細胞系は、化合物の非存在の場合より低い生存率又は増殖速度、及び/又は化合物の存在中で野生型MEK1タンパク質を発現している細胞系より低い生存率又は増殖速度を有する。第二世代のMEK1阻害剤ではない化合物の存在中の場合、変異MEK1タンパク質を発現している細胞系は、化合物の非存在中と等しいか又はそれより高い生存率又は増殖速度、及び/又は化合物の存在中の野生型MEK1タンパク質を発現している細胞系と等しいか又はそれより高い生存率或いは増殖速度を有する。当技術において既知の細胞生存率及び/又は増殖速度を測定する方法は、MEK1タンパク質を発現している細胞系又は試験化合物に対する変異MEK1タンパク質の感受性を決定するために適している。このような方法は、制約されるものではないが、トリパンブルー排除、テトラゾリウム化合物の代謝、トリチル化チミジン組込み、BrdU組込み、グルコース取込み、ATP濃度、及びアポトーシスのレベルの測定を含む。一つの態様において、細胞増殖は、MTS又はCell Titer GLoのようなウェルベースの細胞増殖/生存率アッセイを使用して決定することができる。ある態様において、感受性は、適した対照に対して、少なくとも2倍、更に好ましくは少なくとも3倍、最も好ましくは少なくとも4−5倍のGI50値の変化として定義される。
【0062】
従って、一つの態様において、本発明は、MEK基質及び野生型MEK1タンパク質に対して121位において変異(例えば、C121S変異)を有するMEK1タンパク質を含んでなるアッセイ組成物を用意し、アッセイ組成物を、試験化合物の非存在においてMEK基質のリン酸化を可能にする条件下で試験化合物と接触させ、そしてMEK基質のリン酸化の化合物の影響を決定することを含んでなる第二世代のMEK1阻害剤である化合物を確認する方法を提供し、ここにおいて、適した対照と比較したMEK基質のリン酸化の下方制御は、化合物を第二世代のMEK1阻害剤として確認する。この方法で確認された化合物は、癌、例えば、変異MEK1タンパク質が検出された癌の治療において有用な化合物である。前述の方法において有用なMEK1タンパク質は、一つ又はそれより多いMEK、例えば、一つ又はそれより多い本明細書中に記載される変異を含有するMEK1タンパク質に対する耐性を与える変異を含有するMEK1タンパク質である。前述の方法において有用なMEK基質は、ERK1/2である。ERK1/2リン酸化の減少、低下、又は下方制御は、化合物がMEK1阻害剤であることの指標である。前述の方法は、in vitroで行うことができ、ここにおいて、MEK1タンパク質及びMEK基質は、単離又は精製されたタンパク質である。前述の方法は、更にin vitroで行うことができ、ここにおいて、MEK1タンパク質及びMEK基質は、細胞抽出物の成分である。この態様において、アッセイ組成物は、細胞抽出物である。適した対照は、この方法を行う当業者にとって明白であるものであるいずれもの対照であり、そして例えば、試験化合物で処理されていないか或いは対照化合物で処理された同様な又は同一のアッセイ組成物、或いは類似のアッセイ組成物又は“野生型”MEK1タンパク質を含んでなる細胞抽出物を含む。
【0063】
もう一つの態様において、本発明は、121位における変異(例えば、C121S変異)を含んでなる変異MEK1タンパク質を含んでなる細胞を用意し、細胞を試験化合物と接触させ、そしてERK1/2リン酸化又は細胞増殖に対する化合物の影響を決定することを含んでなる第二世代のMEK1阻害剤である化合物を確認する方法を提供し、ここにおいて、適当な対照と比較したREK1/2リン酸化又は細胞増殖の減少、低下、又は下方制御は、化合物を第二世代のMEK1阻害剤として確認する。この方法で確認された化合物は、癌、例えば、変異MEK1タンパク質が検出された癌を治療するために有用な化合物である。適した対照は、この方法を行う当業者にとって明白であるものであるいずれもの対照であり、そして例えば、試験化合物で処理されていないか或いは対照化合物で処理された同様な又は同一の細胞、或いは組換え、“野生型”MEK1が発現した類似の細胞又は細胞抽出物を含む。
【0064】
一つの態様において、前述の方法において使用される試験化合物は、野生型MEK1タンパク質の生物学的活性を阻害するMEK阻害剤である。第二世代のMEK1阻害剤であるMEK阻害剤は、本明細書中に記載される。
【0065】
もう一つの態様において、試験化合物は、試験化合物のライブラリーの一員である。“試験化合物のライブラリー”は、複数の試験化合物を含んでなる名簿を指す。有機小分子の分子ライブラリの合成のための方法は、記載されている(Carell et al.(1994).Angew.Chem.Int.Ed.Engl.33:2059;Carell et al.(1994)Angew.Chem.Int.Ed.Engl.33:2061)。本発明の化合物は、生物学的ライブラリー;空間的にアドレス可能な並行固相又は溶液相ライブラリー、逆重畳積分を必要とする合成ライブラリー法、‘ワンビーズ・ワンコンパウンド(one−bead one−compound)’ライブラリー法、及びアフィニティークロマトグラフィーによる選択を使用する合成ライブラリー法を含む当技術において既知のコンビナトリアルライブラリー法の多くの方法中のいずれかを使用して得ることができる。生物学的ライブラリー法は、ペプチドライブラリーに制限されるが、他の四つの方法は、ペプチド、非ペプチドオリゴマー又は化合物の小分子ライブラリーに対して適用可能である(Lam,K.S.(1997)Anticancer Drug Des.12:145)。分子ライブラリーの合成のための他の例示的方法は、当技術において、例えばErb et al.(1994).Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:11422;Horwell et al.(1996)Immunopharmacology 33:68−中に;そしてGallop et al.(1994);J.Med.Chem.37:1233−中に見出すことができる。化合物のライブラリーは、溶液中(例えばHoughten(1992)Biotechniques 13:412−421)、又はビーズ(Lam (1991) Nature 354:82−84)、チップ(Fodor(1993)Nature 364:555−556)、細菌(Ladner USP 5,223,409)、胞子(Ladner USP ’409)、プラスミド(Cull et al.(1992) Proc Natl Acad Sci USA 89:1865−1869)上で又はファージ(Scott and Smith(1990)Science 249:386−390);(Devlin(1990)Science 249:404−406);(Cwirla et al.(1990)Proc.Natl.Acad.Sci. 87:6378−6382);(Felici(1991)J.Mol.Biol.222:301−310)上で与えることができる。なおもう一つの態様において、コンビナトリアルのタンパク質は、cDNAライブラリーから製造される。活性のために選別することができる例示的な化合物は、制約されるものではないが、ペプチド、核酸、炭水化物、有機小分子、及び天然産物抽出物ライブラリーを含む。
【0066】
第二世代のMEK阻害剤は、更に本明細書中に記載される耐性変異を含有するMEK1対立遺伝子の構造に基づいて合理的に設計することもできる。本明細書中に記載するように、RAF又はMEK阻害剤に対する耐性を与えるMEK1の121位における置換は、MEK1タンパク質のC−ヘリックス中に又はその近辺に位置する。RAF及びMEK阻害剤に対する耐性を与えるMEK1変異対立遺伝子の確認は、変異対立遺伝子及び野生型タンパク質のC−ヘリックスの構造間の比較を可能にする。RAF及びMEK阻害剤に対する耐性を与える変更された構造的特徴の知識は、変異対立遺伝子のC−ヘリックス、活性化ループ、及び/又はATP結合ポケットに結合するものである阻害剤を含むリガンドの合理的設計及び構築を可能にする。このような阻害剤は、これらが変異及び野生型MEK1対立遺伝子の両方を結合するように設計することができる。本明細書中に記載される変異を含有するMEK1対立遺伝子のC−ヘリックス、活性化ループ、及び/又はATP結合ポケットに結合するために設計された阻害剤は、第二世代のMEK1阻害剤である。変異MEK1タンパク質の生物学的活性を阻害するこのような合理的に設計された阻害剤の能力は、本明細書中に記載されるin vitro及び/又はin vivoアッセイを使用して確認することができる。
【0067】
本明細書中に記載される耐性変異を含有するMEKタンパク質の構造は、コンピューター支援モデル化によって、或いは変異MEK1タンパク質の結晶又は溶液構造を決定することによって決定することができる。当技術において既知のいずれもの適した方法を変異MEK1タンパク質の構造を決定するために使用することができる。
【0068】
例示的なコンピューター支援モデル化法は、PYMOL,CAVITY(J.Comp.Aided.Mol.Des.(1990)4:337−354中に記載(参考文献として本明細書中に援用される))及びDiscovery Studio(登録商標)(Accelrys,San Diego,CA)のようなソフトウェアプログラムの使用を含む。コンピューター支援分子モデル化のために有用な更なる技術は、J BUON.(2007)12 Suppl 1:S101−18(参考文献として本明細書中に援用される)中に記載されている。既知の構造を持つタンパク質のコンピューターベースの分析は、更にタンパク質に結合するものである分子を確認するために使用することもできる。このような方法は、反応部位に対する形状的相補性に基づいて分子をランク付けする。例えば、3−Dデータベースを使用して、DOCKのようなプログラムを、XBP−1、IRE−1α、及び/又はEDEMに結合するものである分子を確認するために使用することができる。DesJarlias et al.(1988)J.Med.Chem.31:722;Meng et al.(1992)J.Computer Chem.13:505;Meng et al.(1993)Proteins 17:266;Shoichet et al.(1993)Science 259:1445を参照されたい。更に、標的タンパク質に対する分子の電子的相補性も、更に標的に結合する分子を確認するために分析することができる。これは、例えば、Meng et al.(1992)J.Computer Chem.13:505及びMeng et al.(1993)Proteins 17:266中に記載されているような分子力学力場を使用して決定することができる。使用することができる他のプログラムは、仮想リガンドの結合におけるGRID力場を使用するCLIXを含む(例えば、参考文献として本明細書中に援用されるLawrence et al.(1992)Proteins 12:31;Goodford et al.(1985)J.Med.Chem.28:849;及びBoobbyer et al.(1989)J.Med.Chem.32:1083を参照されたい)。
【0069】
結晶化は、制約されるものではないが、バッチ、透析及び蒸気拡散(例えば、液滴滴下(sitting drop)及び液滴吊下げ(hanging drop))法を含むいずれもの結晶化法によって行うことができる。結晶のミクロ、マクロ及び/又は筋状播種も、更に結晶化を容易にするために行うことができる。MEK1変異対立遺伝子を含んでなる結晶は、当技術において既知の各種の異なった方法によって形成することができる。例えば、結晶化は、バッチ、透析及び蒸気拡散(例えば、液滴滴下及び液滴吊下げ)法によって行うことができる。基本的なタンパク質結晶化装置の詳細な記載は、McRee,D.,Practical Protein Crystallography,2nd Ed.(1999),Academic Press Inc中に見出すことができる。結晶化実験を行うことに関する更なる記載は、その全ての内容が本明細書中に参考文献として援用される、Stevens et al.(2000)Curr.Opin.Struct.Biol.:10(5):558−63、並びに米国特許第6,296,673号;5,419,278号;及び5,096,676号中に提供されている。このような結晶は、MEK1変異対立遺伝子の三次元構造を決定するためにX線又は中性子回折分析を行うために使用することができる。MEK1タンパク質又は変異MEK1タンパク質の溶液構造は、当技術において既知の技術を使用する核磁気共鳴分光法を使用して確認することができる。X線結晶学又はNMR分光法によるタンパク質構造決定のために適した方法は、本明細書中にその全ての内容が参考文献として援用される、Brunger et al.,(1998)“Crystallography & NMR system(CNS):A new software system for macromolecular structure determination,”Acta Crystallogr D54,905−921;Brunger et al.(1987)“Solution of a Protein Crystal Structure With a Model Obtained From NMR Interproton Distance Restraints,”Science 235,1049−1053;Drenth,“Principles of Protein X−ray Crystallography,”(1994),Springer−Verlag.pp. 1−19;及びNarula et al.(1995)“Solution structure of the C−terminal SH2 domain of the human tyrosine kinase Syk complexed with a phosphotyrosine pentapeptide,”Structure 3,1061−1073中に記載されている。変異MEK1タンパク質の結晶又は溶液構造の確認後、変異MEK1タンパク質の阻害剤を、先に記載したコンピューター支援モデル化法を使用して確認することができる。
【0070】
前述の方法によって確認された第二世代のMEK1阻害剤は、野生型及び/又は変異MEK1タンパク質の発現に伴う疾病又は症状を治療するために有用である。例えば、第二世代のMEK1阻害剤は、患者の癌、特に121位における置換を含んでなる変異MEK1タンパク質が確認された癌を治療するために有用である。例示的な態様において、第二世代のMEK1阻害剤は、C121S変異を有するMEK1タンパク質を含有する癌の治療のために有用である。
【0071】
IV.単離された核酸分子
本発明は、MEK1遺伝子に関係するポリヌクレオチド又は核酸分子及びそのそれぞれの遺伝子産物に関する。これらのポリヌクレオチド又は核酸分子は、哺乳動物の細胞から単離及び精製可能である。本発明の特別な側面において、本明細書中に記載される単離されたMEK1核酸分子は、一つ又はそれより多いRAF又はMEK阻害剤に対する耐性を与える変異を含んでなる。“変異MEK1核酸分子”は、本明細書中で言及される場合、変異MEK1タンパク質をコードするMEK1核酸分子、即ち、一つ又はそれより多い既知のRAF又はMEK阻害剤に対する耐性を与える一つ又はそれより多い変異を含有するMEKタンパク質を含む。
【0072】
好ましい態様において、変異MEK1タンパク質をコードする本発明の単離された核酸は、配列番号:3に明記するヌクレオチド配列を含んでなる。なおもう一つの態様において、本発明の単離された核酸は、配列番号:4に明記したアミノ酸配列を含んでなる変異MEK1タンパク質をコードする。
【0073】
単離及び精製されたMEK1核酸分子、例えば、変異MEK1核酸分子が、RNA又はDNAの形態をとることができることは意図されている。本明細書中で使用する場合、用語“RNA転写物”は、DNA核酸分子からの転写の産物であるRNA分子を指す。このような転写は、一つ又はそれより多いタンパク質をコードすることができる。
【0074】
本出願中で使用する場合、用語“ポリヌクレオチド”は、全ゲノム核酸を含まないように単離された核酸分子、RNA又はDNAを指す。従って、“MEK1をコードするポリヌクレオチド”は、全ゲノムDNA及びタンパク質から切り離されて単離され、又は精製され、そしてそれらを含まないが、MEK1をコードする配列を含有する核酸セグメントを指す。本出願が、MEK1をコードするポリヌクレオチド又は核酸の機能或いは活性に言及した場合、これは、ポリヌクレオチドが、野生型MEK1タンパク質の活性、例えば、ERA1/2基質のリン酸化を遂行することが可能である分子をコードすることを意味する。
【0075】
用語“cDNA”は、RNAをテンプレートとして使用して調製されたDNAを指すことを意図している。ゲノムDNA又はRNA転写に対抗してcDNAを使用する利益は、組換えDNA技術を使用して配列を操作するための安定性及び能力である(Sambrook,1989;Ausubel,1996を参照されたい)。完全な又は部分的なゲノム配列が好ましい場合があり得る。別の方法として、cDNAは、これがタンパク質のコード領域であり、そしてイントロン及び他の制御領域を排除するために有益であることができる。
【0076】
特定の細胞からの特定のMEK1をコードする核酸又はMEK1遺伝子は、僅かに異なった核酸配列を有する天然の変種又は系統によって表されるが、しかし、それにもかかわらず、活性なMEK1タンパク質をコードすることができることも更に意図されている。好ましい態様において、活性なMEK1タンパク質は、活性なヒトMEK1タンパク質である。特に好ましい態様において、活性なMEK1タンパク質は、野生型MEK1タンパク質の活性を有するが、しかし一つ又はそれより多い既知のRAF又はMEK阻害剤に対して耐性である変異MEK1タンパク質である。従って、本発明のある側面は、最小のアミノ酸変化を持つが、しかし同じ生物学的機能を保有するMEK1の誘導体を包含する。
【0077】
用語“遺伝子”は、機能的タンパク質、タンパク質、又はペプチドコード単位を指すための簡便さのために使用される。当業者にとって理解されるものであるように、この機能の用語は、ゲノム配列、cDNA配列、並びにタンパク質、タンパク質、領域、融合タンパク質、及び変異タンパク質を発現するか、又は発現するように適合することができるより小さい操作された遺伝子セグメントを含む。MEK1をコードする核酸分子は、次の長さ:少なくとも約6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、441、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、1000、1010、1020、1030、1040、1050、1060、1070、1080、1090、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、2500、2600、2700、2800、2900、3000、3100、3200、3300、3400、3500、3600、3700、3800、3900、4000、4100、4200、4300、4400、4500、4600、4700、4800、4900、5000、5100、5200、5300、5400、5500、5600、5700、5800、5900、6000、6100、6200、6300、6400、6500、6600、6700、6800、6900、7000、7100、7200、7300、7400、7500、7600、7700、7800、7900、8000、8100、8200、8300、8400、8500、8600、8700、8800、8900、9000、9100、9200、9300、9400、9500、9600、9700、9800、9900、10000、10100、10200、10300、10400、10500、10600、10700、10800、10900、11000、11100、11200、11300、11400、11500、11600、11700、11800、11900、12000個の接近した核酸配列又はそれより多いヌクレオチド、ヌクレオシド或いは塩基対を含んでなることができる。このような配列は、例えば配列番号:1又はその断片と同一であるか、或いはそれと相補性であることができる。
【0078】
本発明の各種の態様は、MEK1における遺伝子的変異に関する。本明細書中で使用する場合、変異は、MEK1核酸分子中の部位における一つのヌクレオチドの付加、欠失、又は置換を指す。例示的な態様において、変異MEK1核酸分子は、一つ又はそれより多いRAF又はMEK阻害剤のような特定の療法剤に対する耐性を与える一つ又はそれより多い変異を含有する。関連する態様において、変異MEK1核酸分子は、一つ又はそれより多い変異を含有して、変異MEK1タンパク質をコードし、ここにおいて、変異MEK1タンパク質は、一つ又はそれより多いRAF又はMEK阻害剤のような特定の療法剤に対する耐性を与える一つ又はそれより多い変異を含有する。従って、本発明の特別な側面において、配列の変更は、その配列によってコードされるタンパク質の特性に影響する変化をもたらして、RAF又はMEK阻害剤による療法のような療法剤に対する少なくともある程度の耐性が結果として起こる。
【0079】
“他のコード配列から実質的に離れて単離された”は、興味ある遺伝子が、核酸セグメントのコード領域の一部を形成し、そしてセグメントが、大きい染色体断片又は他の機能的遺伝子或いはcDNAコード領域のような天然に存在するコード核酸の大部分を含有していないことを意味する。もちろん、これは、最初に単離され、そしてヒトの操作によってセグメントに後で加えられた遺伝子又はコード領域を排除しないような核酸セグメントを指す。
【0080】
特別な態様において、本発明は、単離された核酸セグメント及び変異MEK1タンパク質をコードするDNA配列或いは変異MEK1タンパク質によるか又はそれに本質的に対応する接近するアミノ酸配列を、そのアミノ酸配列内に含むペプチドを組込んだ組換えベクターに関する。例示的な態様において、本発明は、単離されたDNAセグメント、及びMEK1タンパク質、ポリペプチド、或いは一つ又はそれより多いRAF又はMEK阻害剤に対する耐性を与える一つ又はそれより多い変異を含んでなるMEK1タンパク質の接近するアミノ酸配列をそのアミノ酸配列内に含むペプチドを、コードするDNA配列を組込んだ組換えベクターに関する。例示的な態様において、変異は121位において起こり、そして好ましくはC121S置換である。
【0081】
本発明において使用される核酸セグメントは、コード配列自体の長さに関わらず、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、更なる制限酵素部位、多重クローニング部位、他のコード配列、等のような他のDNA又はRNA配列と組合せることができ、これらの全体的長さはかなり変化することができる。従って、殆どいずれもの長さの核酸断片を使用することができることは意図され、全体の長さは、好ましくは調製及び意図する組換えDNAプロトコル中の使用の容易さによって制約される。
【0082】
本発明の核酸構築物が、MEK1タンパク質又は変異MEK1タンパク質をコードすることは意図されている。“異種”配列は、残りの配列に対して外来性又は外因性である配列を指す。異種遺伝子は、それが現在位置している配列と天然に隣接して見いだされない遺伝子を指す。
【0083】
非制約的例において、一つ又はそれより多い核酸構築物は、MEK1遺伝子の全て又は一部と、同一又は相補性であるヌクレオチドの接近する伸展を含んで調製することができる。核酸構築物は、少なくとも、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,000、8,000、9,000、10,000、11,000、12,000、13,000、14,000、15,000、20,000、30,000、50,000、100,000、250,000、約500,000、750,000ないし約1,000,000個の長さのヌクレオチド、及び酵母の人工的染色体のような核酸構築物の出現が当業者に知られていることを考慮した染色体の大きさまでの、そしてそれを含む(全ての中間の長さ及び中間の範囲を含む)ものより大きい大きさの構築物を含んでなることができる。“中間の長さ”及び“中間の範囲”が、本明細書中で使用される場合、引用された値を含む、又はその間のいずれもの長さ或いは範囲(即ち、このような値を含み、そしてその間の全ての整数)を意味することは容易に理解されるものである。中間の長さの非制約的例は、約11、約12。約13、約16、約17、約18、約19、等;約21、約22、約23、等;約31、約32、等;約51、約52、約53、等;約101、約102、約103、等;約151、約152、約153、約97001、約1,001、約1002,約50,001、約50,002、約750,001、約750,002、約1,000,001、約1,000,002、等を含む。中間の範囲の非制約的例は、約3ないし約32、約150ないし約500,001、約3,032ないし約7,145、約5,000ないし約15,000、約20,007ないし約1,000,003、等を含む。
【0084】
本発明のある態様は、ベクター、プロモーター、治療的核酸、及び細胞中の形質転換及び発現に関係する他の核酸要素を含む各種の核酸に関する。ある側面において、核酸は、野生型又は変異核酸を含んでなる。特別な側面において、核酸は、転写された核酸をコードし、又はそれを含んでなる。
【0085】
用語“核酸”は、当技術において公知である。“核酸”は、本明細書中で使用する場合、一般的に核酸塩基を含んでなるDNA、RNA或いはその類似体又は誘導体の分子(即ち、ストランド)を指すものである。核酸塩基は、例えば、DNA(例えば、アデニン“A”、グアニン“G”、チミジン“T”又はシトシン“C”)又はRNA(例えば、A、G、ウラシル“U”又はC)中に見出される天然に存在するプリン又はピリミジン塩基を含む。用語“核酸”は、それぞれ用語“核酸”の亜属としての用語“オリゴヌクレオチド”及び“ポリヌクレオチド”を包含する。用語“オリゴヌクレオチド”は、長さ約3ないし約100間の核酸塩基分子を指す。用語“ポリヌクレオチド”は、長さ約100より大きい少なくとも一つの核酸塩基分子を指す。“遺伝子”は、遺伝子産物、並びに遺伝子産物のイントロン及びプロモーターのコード配列を指す。MEK1遺伝子に加えて、MEK1のためのエンハンサーのような他の制御領域は、特許請求される発明の組成物及び方法と共に使用するための核酸として意図されている。
【0086】
これらの定義は、一般的に一本鎖分子を指すが、しかし具体的態様においては、更に一本鎖分子に対して部分的に、実質的に又は完全に相補性の更なるストランドを包含するものである。従って、核酸は、分子を含んでなる特定の配列の一つ又はそれより多い相補性ストランド(複数)或いは“補体(複数)”を含んでなる二本鎖分子又は三本鎖分子を包含することができる。本明細書中で使用する場合、一本鎖核酸は、接頭辞“ss”によって、二本鎖核酸は接頭辞“ds”によって、そして三本鎖核酸は接頭辞“ts”によって表示することができる。
【0087】
核酸は、当業者にとって既知のいずれもの技術、例えば、化学的合成、或いは酵素的産生又は生物学的産生によって製造することができる。合成核酸(例えば、一つ又はそれより多いRAF又はMEK阻害剤に対する耐性を与える変異の確認を容易にする合成のMEK1プライマー)の非制約的例は、リン酸三エステル、亜リン酸エステル或いはホスホルアミダイト化学、並びに本明細書中に参考文献として援用されるEP266,032中に記載されているような固相技術を使用する、或いはそれぞれが本明細書中に参考文献として援用される、Froehler et al.,1986及び米国特許第5,705,629号によって記載されているようなデオキシヌクレオシドH−リン酸中間体によるin vitroの化学的合成によって製造された核酸を含む。本発明の方法において、一つ又はそれより多いオリゴヌクレオチドを使用することができる。オリゴヌクレオチド合成の各種の異なった機構は、例えば、そのそれぞれが本明細書中に参考文献として援用される、米国特許第4,659,774号、4,816,571号、5,141,813号、5,264,566号、4,959,463号、5,428,148号、5,554,744号、5,574,146号、5,602,244号中に開示されている。
【0088】
酵素的に産生される核酸の非制約的例は、PCRのような増幅反応中の酵素によって産生されるもの(例えば、それぞれが本明細書中に参考文献として援用される米国特許第4,683,202号及び4,682,195号を参照されたい)、又は本明細書中に参考文献として援用される米国特許第5,645,897号中に記載されているようなオリゴヌクレオチドの合成によって産生されるものを含む。生物学的に産生される核酸の非制約的例は、細菌中で複製される組換えDNAベクターのような生きた細胞中で産生(例えば複製)される組換え核酸を含む。
【0089】
核酸は、ポリアクリルアミドゲル、塩化セシウム遠心勾配で、又はRAF及びMEK阻害剤に対する耐性を与える変異に対する評価の一部として当業者にとって既知のいずれもの他の方法によって精製することができる。好ましい側面において、核酸は、薬理学的に受容可能な核酸である。薬理学的に受容可能な組成物は、当業者にとって既知であり、そして本明細書中に記載される。
【0090】
ある側面において、本発明は、単離された核酸である核酸に関する。本明細書中で使用する場合、用語“単離された核酸”は、一つ又はそれより多い細胞の全遺伝子的及び転写された核酸の大部分を含まず単離された、或いはさもなければこれらを含まない核酸分子(例えば、RNA又はDNA分子)を指す。ある態様において、“単離された核酸”は、例えば、脂質又はタンパク質のようなマクロ分子、生物学的小分子、等を含む細胞成分或いはin vitroの反応成分の大部分を含まず単離された、或いはさもなければこれらを含まない核酸を指す。
【0091】
V.発現ベクター及び宿主細胞
本発明は、発現ベクター組成物及びMEK1タンパク質、例えば、変異MEK1タンパク質をコードするためのこのようなベクターの使用、並びにその中にこのような発現ベクターが導入される宿主細胞組成物を包含する。用語“ベクター”は、核酸配列を、それを複製することができる細胞に導入するために、その中に挿入することができる担体核酸分子を指すために使用される。核酸配列は、“外因性”であることができ、これは、これがその中にベクターが導入される細胞に対して外来性であるか、又は配列が細胞中の配列に相同であるが、しかし配列が通常見いだされない宿主細胞の核酸内の位置にあることを意味する。ベクターは、プラスミド、コスミド、ウイルス(バクテリオファージ、動物ウイルス、及び植物ウイルス)、及び人工の染色体(例えば、YAC)を含む。当業者は、標準的な組み換え技術によってベクターを構築するために装備されるものである。
【0092】
用語“発現ベクター”又は“発現構築物”は、転写されることが可能な遺伝子産物の少なくとも一部をコードする核酸配列を含有するベクターを指す。幾つかの場合、RNA分子は、次いでタンパク質、タンパク質、又はペプチドに翻訳される。他の場合、例えばアンチセンス分子又はリボザイムの産生において、これらの配列は翻訳されない。発現ベクターは、各種の“制御配列”を含有することができ、これは、特定の宿主生物体における操作可能に連結されたコード配列の転写及び恐らくは翻訳のために必要な核酸配列を指す。転写及び翻訳を管理する制御配列に加えて、ベクター及び発現ベクターは、同様に他の機能を果たす核酸配列を含有することができ、そして以下に記載される。
【0093】
1.プロモーター及びエンハンサー
“プロモーター”は、転写の開始及び速度を制御する核酸配列の領域である制御配列である。これは、そこに制御タンパク質及び分子が結合することができるRNAポリメラーゼ又は他の転写因子のような遺伝因子を含有することができる。語句“操作可能に位置した”、“操作可能に連結した”、“制御下”、及び“転写的制御下”は、プロモーターが、その配列の転写の開始及び/又は発現を制御する核酸配列に対して正確な機能的位置及び/又は配向にあることを意味する。プロモーターは、核酸配列の転写活性化に関係するシス作用性制御配列を指す“エンハンサー”と共に使用することができるか又はできない。
【0094】
プロモーターは、コードセグメント及び/又はエクソンの上流に位置する5’非コード配列を単離することによって得ることができる遺伝子又は配列に、天然に伴うものであることができる。このようなプロモーターは、“外因性”と呼ぶことができる。同様に、エンハンサーは、その配列の下流又は上流のいずれかに位置する核酸配列に、天然に伴うものであることができる。別の方法として、コード核酸セグメントを、組換え又は異種プロモーターの制御下に位置させることによって、ある種の利益が得られるものであり、これは、その天然の環境における核酸配列に通常伴わないプロモーターを指す。組換え又は異種エンハンサーは、更にその天然の環境における核酸配列に通常伴わないエンハンサーを指す。このようなプロモーター又はエンハンサーは、他の遺伝子のプロモーター又はエンハンサー、及びいずれもの他の原核生物、ウイルス、又は真核細胞から単離されたプロモーター或いはエンハンサー、並びに“天然に存在”しない、即ち、異なった転写制御領域の異なった要素、及び/又は発現を変更する変異を含有するプロモーター又はエンハンサーを含むことができる。
【0095】
当然、発現のために選択される細胞種、小器官、及び生物体中の核酸セグメントの発現を有効に方向づけるプロモーター及び/又はエンハンサーを使用することは重要であるものである。分子生物学の当業者は、タンパク質発現のためのプロモーター、エンハンサー、及び細胞種の組合せの使用を、一般的に知っている。使用されるプロモーターは、構成的、組織特異的、誘導性、及び/又は導入されたDNAセグメントの高いレベルの発現を方向付けるために適当な条件下で、有用であることができる。プロモーターは、異種又は外因性、例えば、MEK1コード化配列に対して非MEK1プロモーターであることができる。幾つかの例において、所望する配列のin vitroの転写と共に使用するために、原核生物プロモーターが使用される。多くの商業的に入手可能な系と共に使用するための原核生物プロモーターは、T7、T3、及びSp6を含む。
【0096】
2.開始シグナル及び内部リボソーム結合部位
コード配列の有効な翻訳のために、特異的な開始シグナルも更に必要とすることができる。これらのシグナルは、ATG開始コドン又は隣接する配列を含む。ATG開始コドンを含む外因性翻訳制御シグナルを用意することが必要であることができる。当業者は、容易にこれを決定し、そして必要なシグナルを用意することが可能であるものである。開始コドンが、全挿入物の翻訳を確実にするために所望のコード配列の読取り枠と“インフレーム”でなければならないことは公知である。外因性翻訳制御シグナル及び開始コドンは、天然又は合成のいずれかであることができる。発現の効率は、適当な転写エンハンサー要素の包含によって向上することができる。本発明のある態様において、配列内リボソーム進入部位(IRES)要素の使用は、多重遺伝子、又は多シストロン性メッセージの作成に使用される。
【0097】
3.マルチクローニング部位
ベクターは、マルチクローニング部位(MCS)を含むことができ、これは、多重制限酵素部位を含有する核酸領域であり、これらの何れもは、ベクターを消化するために標準的な組換え技術と組合せて使用することができる(例えば、本明細書中に参考文献として援用される、Carbonelli et al.,1999,Levenson et al.,1998,及びCocea,1997を参照されたい)。“制限酵素消化”は、核酸分子中の特異的位置のみで機能する酵素による核酸分子の接触的開裂を指す。これらの制限酵素の多くは、商業的に入手可能である。このような酵素の使用は、当業者によって広く理解されている。しばしば、ベクターは、外因性配列がベクターに連結されることが可能なようにMSC内で切断する制限酵素を使用して直線化又は断片化される。“連結”は、それが互いに接近であることができるか、又はできない二つの核酸断片間のリン酸二エステル結合を形成する過程を指す。制限酵素及び連結反応に関する技術は、組換え技術の当業者にとって公知である。
【0098】
4.スプライス部位
殆どの転写された真核細胞のRNA分子は、一次転写産物からイントロンを除去するために、RNAスプライシングを受けるものである。遺伝真核生物配列を含有するベクターは、タンパク質発現のための転写の適切な加工を確実にするために供与及び/又は受容スプライシング部位を必要とすることができる(例えば、本明細書中に参考文献として援用される、Chandler et al.,1997を参照されたい)。
【0099】
5.終結シグナル
本発明のベクター又は構築物は、一般的に、少なくとも一つの終結シグナルを含んでなるものである。“終結シグナル”又は“ターミネーター”は、RNAポリメラーゼによるRNA転写の特異的終結に関係するDNA配列から構成される。従って、ある態様において、RNA転写の産物を停止する終結シグナルが意図される。ターミネーターは、in vivoで所望のメッセージレベルを達成するために必要とすることができる。
【0100】
6.ポリアデニル化シグナル
発現、特に真核細胞発現のために、転写の適切なポリアデニル化を行うために、典型的にはポリアデニル化シグナルを含むものである。ポリアデニル化シグナルの特質は、本発明の好結果の実行に対して重要ではないと信じられ、及び/又はいずれものこのような配列を使用することができる。好ましい態様は、好都合な及び/又は各種の標的細胞中で十分に機能することが知られた、SV40ポリアデニル化シグナル及び/又はウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルを含む。ポリアデニル化は、転写産物の安定性を増加するか、又は細胞質運搬を容易にすることができる。
【0101】
7.複製の開始点
宿主中にベクターを伝播するために、これは、一つ又はそれより多い複製部位の開始点(しばしば“ori”と呼ばれる)を含有することができ、これは、そこで複製が開始される特異的核酸配列である。別の方法として、宿主細胞が酵母である場合、自己配列複製(ARS)を使用することができる。
【0102】
8.選択及び選別可能なマーカー
本発明のある態様において、本発明の核酸構築物を含有する細胞は、発現ベクター中にマーカーを含めることによってin vitro又はin vivoにおいて確認することができる。このようなマーカーは、発現ベクターを含有する細胞の容易な確認を可能にするために、認識可能な変化を細胞に与えるものである。一般的に、選択可能なマーカーは、選択を可能にする特性を与えるものである。正の選択可能なマーカーは、そのマーカーの存在が、その選択を可能にするものであり、一方負の選択可能なマーカーは、その存在がその選択を防止するものである。正の選択可能なマーカーの例は、薬物耐性マーカーである。
【0103】
通常、薬物選択マーカーの包含は、形質転換体のクローニング及び確認を援助し、例えば、ネオマイシン、ピューロマイシン、ハイグロマイシン、DHFR、GPT、ゼオシン及びヒスチジノールに耐性を与える遺伝子は、有用な選択可能なマーカーである。条件の実行に基づく形質転換体の識別を可能にする表現型を与えるマーカーに加えて、その基盤が熱量測定分析であるGFPのような選別可能なマーカーを含む他の種類のマーカーも、更に意図されている。別の方法として、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(tk)又はクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)のような選別可能な酵素を使用することができる。当業者は、恐らくはFACS分析と組合せて、更に免疫学的マーカーを如何に使用するかを知るものである。使用されるマーカーは、これが、遺伝子産物をコードする核酸と同時に発現することが可能である限り、重要ではないと信じられる。選択及び選別可能なマーカーの更なる例は、当業者にとって公知である。
【0104】
9.宿主細胞
本明細書中で使用する場合、用語“細胞”、“細胞系”、及び“細胞培養物”は、互換的に使用される。変異された又は野生型のいずれかのMEK1ポリヌクレオチドを含んでなる細胞を、本発明において使用することができる。全てのこれらの用語は、更にいずれもの、そして全てのその後の世代を指すその後代を含む。全ての後代が、計画的又は偶発的変異のために、同一であることができないことは理解されることである。異種核酸配列を発現する文脈において、“宿主細胞”は、原核又は真核細胞を指し、そしてこれは、ベクターを複製する及び/又はベクターによってコードされた異種遺伝子を発現することが可能であるいずれもの形質転換可能な生物体を含む。宿主細胞は、ベクターに対する受容体として使用することができ、そして使用されてきている。宿主細胞は、“形質移入”又は“形質転換”されることができ、これは、外因性核酸が宿主細胞に移動又は導入される過程を指す。形質転換された細胞は、初代対象細胞及びその後代を含む。“組換え宿主細胞”は、組換え核酸、即ち、in vitroで操作された核酸、又はこれがそのように操作された核酸の複製されたコピーであるものを保持する宿主細胞を指す。
【0105】
宿主細胞は、所望する結果がベクターの複製であるか、ベクターがコードする核酸配列の一部又は全部の発現であるか、或いは感染性ウイルス粒子の産生であるか否かによるが、原核細胞又は真核細胞から誘導することができる。多くの細胞系及び培養物を、宿主細胞として使用するために入手可能であり、そしてこれらは、米国培養細胞系統保存機関(ATCC)から得ることができ、これは、生きた培養物及び遺伝子物質に対する記録保存館の目的を果たす機関である。適当な宿主は、ベクターの骨格及び所望の結果に基づいて当業者によって決定することができる。例えば、プラスミド又はコスミドは、多くのベクターの複製のために原核細胞宿主に導入することができる。ベクターの複製及び/又は発現のための宿主細胞として使用される細菌細胞は、DH5α、JM109、及びKC8、並びにSURETM、Competent Cells及びSolopackTM Gold Cells(Strategene.RTM.,La Jolla)のような多くの商業的に入手可能な細菌宿主を含む。別の方法として、E.coli LE392のような細菌細胞を、ファージウイルスのための宿主細胞として使用することができる。
【0106】
本発明の好ましい真核細胞宿主細胞は、黒色腫細胞系A375であり、ここにおいて、この細胞は、MEK1タンパク質、例えば本発明の変異MEK1タンパク質をコードする発現ベクターで、形質転換されている。
【0107】
10.発現系
上記で考察した成分の少なくとも一部又は全部を含んでなる多くの発現系が存在する。原核細胞及び/又は真核細胞に基づく系は、MEK1核酸配列、又はその同族タンパク質、タンパク質及びペプチドを産生するために本発明と共に使用することができる。多くのこのような系は、商業的に、そして広く入手可能である。
【0108】
昆虫細胞/バキュロウイルス系は、両方とも本明細書中に参考文献として援用される、米国特許第5,871,986号、4,879,236号中に記載されているような高いレベルの異種核酸セグメントのタンパク質発現を産生することができ、そしてこれらは、例えば、MaxBacTM 2.0の名称でInvitrogenTMから、そしてBacPackTMバキュロウイルス発現系としてClontechTMから購入することができる。
【0109】
発現系の他の例は、合成のエクジソン誘導受容体、又はそのpET発現系、E.coli発現系を含むStratageneのComplete ControlTM誘導哺乳動物発現系を含む。もう一つの誘導発現系の例は、Invitrogenから入手可能であり、これは、全長のCMVプロモーターを使用する誘導哺乳動物発現系であるT−RexTM(テトラサイクリン制御発現)系を保持する。ClontechTMからのTet−OnTM及びTet−OffTM系を、テトラサイクリン又はその誘導体を使用する哺乳動物宿主における発現を制御するために使用することができる。これらの系の実行は、その全てが本明細書中に参考文献として援用される、Gossen et al.,1992及びGossen et al.,1995,並びに米国特許第5,650,298号中に記載されている。
【0110】
Invitrogenは、更にPichia methanolica発現系と呼ばれる酵母発現系を提供し、これは、メチロトローフ酵母Pichia methanolica中の組換えタンパク質の高いレベルの産生のために設計されている。当業者は、核酸配列、或いはその同族タンパク質、タンパク質、又はペプチドを産生するために、如何に発現構築物のようなベクターを発現するかを知っているものである。
【0111】
VI.単離されたタンパク質分子
本発明のもう一つの側面は、単離及び/又は精製されたMEK1タンパク質、及びその生物学的に活性な部分に関する。本発明の特別な側面において、本明細書中に記載されるMEK1タンパク質は、一つ又はそれより多いRAF及び/又はMEK阻害剤に対する耐性を与える121位のアミノ酸における変異を含んでなる。“変異MEK1タンパク質”は、本明細書中で言及される場合、一つ又はそれより多い既知のRAF及び/又はMEK阻害剤に対する耐性を与える121位のアミノ酸における変異を含有するMEK1タンパク質を含む。好ましくは、単離された変異MEK1タンパク質は、C121S変異を含んでなる。好ましい態様において、単離された変異MEK1タンパク質は、配列番号:4に明記したアミノ酸配列を含んでなる。
【0112】
“単離された”又は“精製された”タンパク質或いはその生物学的に活性な部分は、組換えDNA技術によって産生された場合、細胞物質を、或いは化学的に合成された場合、化学的前駆体又は他の化学薬品を実質的に含まない。言葉“細胞物質を実質的に含まない”は、タンパク質は、天然に又は組換え的に産生された細胞の細胞成分から分離されるMEK1タンパク質の標本を含む。一つの態様において、言葉“細胞物質を実質的に含まない”は、約30%(乾燥重量による)より少ない非MEK1タンパク質(更に本明細書中で“夾雑タンパク質”と呼ぶ)を、更に好ましくは約20%より少ない非MEK1タンパク質を、なお更に好ましくは約10%より少ない非MEK1タンパク質を、そして最も好ましくは約5%より少ない非MEK1タンパク質を有するMEK1タンパク質の標品を含む。MEK1タンパク質又はその生物学的に活性な部分が組換え的に産生された場合、これは、更に、好ましくは培養培地を実質的に含まず、即ち、培養培地は、タンパク質標品の体積の約20%より少なく、更に好ましくは約10%より少なく、そして最も好ましくは約5%より少ない。言葉“化学的前駆体又は他の化学薬品を実質的に含まない”は、タンパク質が、タンパク質の合成に関係する化学的前駆体又は化学薬品から分離されたMEK1タンパク質の標品を含む。一つの態様において、言葉“化学的前駆体又は他の化学薬品を実質的に含まない”は、約30%(乾燥重量による)より少ない化学的前駆体又は非MEK1化学薬品、更に好ましくは約20%より少ない化学的前駆体又は非MEK1化学薬品、更に好ましくは約10%より少ない化学的前駆体又は非MEK1化学薬品、そして最も好ましくは約5%より少ない化学的前駆体又は非MEK1化学薬品を有するMEK1タンパク質の標品を含む。
【0113】
MEK1タンパク質の生物学的に活性な部分は、MK1タンパク質のアミノ酸配列、例えば、配列番号:2及び4に示すアミノ酸配列から誘導されるアミノ酸配列を含んでなるペプチドを含み、これは、全長のMEK1タンパク質より少ないアミノ酸を含み、そしてMEK1タンパク質の少なくとも一つの活性を示す。典型的には、生物学的に活性な部分(ペプチド、例えば、例えば5、10、15、20、30、35、36、37、38、39、40、50、100個又はそれより多いアミノ酸の長さであるペプチド)は、MEK1タンパク質の少なくとも一つの活性を持つ領域又はモチーフを含んでなる。更に、タンパク質の他の領域が欠失した他の生物学的に活性な部分は、組換え技術によって調製することができ、そして本明細書中に記載される一つ又はそれより多い活性に対して評価される。好ましくは、MEK1タンパク質の生物学的に活性な部分は、生物学的活性を有する一つ又はそれより多い選択された領域/モチーフ或いはその部分を含む。好ましい態様において、MEK1タンパク質の生物学的に活性な部分は、野生型MEK1配列に対して、121位のアミノ酸における変異を含んでなり、ここにおいて、前記変異は、全長の変異MEK1タンパク質中に存在する場合、既知のRAF及びMEK阻害剤に対する変異MEK1タンパク質の耐性を与える。例示的な態様において、変異は、アミノ酸121において、好ましくはC121S変異が起こる。
【0114】
MEK1タンパク質は、好ましくは、組換えDNA技術によって産生される。例えば、タンパク質をコードする核酸分子は、発現ベクター(先に記載したような)にクローンされ、発現ベクターは、宿主細胞(先に記載したような)に導入され、そしてMEK1タンパク質が宿主細胞中で発現する。次いでMEK1タンパク質を、標準的なタンパク質精製技術を使用する適当な精製スキームによって細胞から単離することができる。組換え発現の代わりに、MEK1タンパク質、タンパク質、又はペプチドは、標準的なペプチド合成技術を使用して、化学的に合成することができる。更に、天然のMEK1タンパク質及び/又は変異MEK1タンパク質は、例えば抗MEK1抗体を使用して、細胞(例えば、癌細胞)から単離することができ、これは、本発明のMEK1タンパク質又はその断片を使用して標準的な技術によって産生することができる。
【0115】
本発明は、更にMEK1のキメラ又は融合タンパク質を提供する。本明細書中で使用する場合、MEK1の“キメラタンパク質”又は“融合タンパク質”は、非MEK1タンパク質に操作可能なように連結されたMEK1タンパク質を含んでなる。“MEK1タンパク質”は、MEK1タンパク質に対応するアミノ酸配列を有するタンパク質を指し、一方“非MEK1タンパク質”は、MEK1タンパク質に実質的に相同ではないタンパク質に対応するアミノ酸配列を有するタンパク質、例えばMEK1と実質的に異なっているタンパク質を指し、これは、MEK1活性を示さず、そしてこれは、同一又は異なった生物体から誘導される。融合タンパク質において、用語“操作可能に連結された”は、MEK1タンパク質及び非MEK1タンパク質が、互いにインフレームで融合されることを示すことを意図する。非MEK1タンパク質は、MEK1タンパク質のN−末端又はC−末端に縮合することができる。例えば、一つの態様において、融合タンパク質は、MEK1配列が、GST配列のC−末端に融合されるGST−MEK1融合タンパク質である。このような融合タンパク質は、組換えMEK1タンパク質の精製を容易にすることができる。もう一つの態様において、融合タンパク質は、そのN−末端に異種シグナル配列を含有するMEK1タンパク質である。ある種の宿主細胞(例えば、哺乳動物宿主細胞)において、MEK1タンパク質の発現及び/又は分泌は、異種シグナル配列の使用によって増加することができる。
【0116】
好ましくは、本発明のMEK1のキメラ又は融合タンパク質は、標準的な組換えDNA技術によって産生することができる。例えば、異なったタンパク質配列をコードするDNA断片は、慣用的な技術、例えば連結のための平滑断端又はねじれ断端末端の使用、適当な末端を得るための制限酵素消化、適宜な付着末端の充填、好ましくない結合を排除するためのアルカリホスファターゼ処理、及び酵素的連結によって、インフレームで一緒に連結される。もう一つの態様において、融合遺伝子は、自動DNA合成装置を含む慣用的な技術によって合成することができる。別の方法として、遺伝子断片のPCR増幅を、二つの連続した遺伝子断片間の相補的オーバーハングを与えるアンカープライマーを使用して行うことができ、これは、その後アニール及び再増幅して、キメラ遺伝子配列を産生することができる(例えば、Current Protocols in Molecular Biology,eds.Ausubel et al.John Wiley & Sons:1992を参照されたい)。更に、多くの発現ベクターが商業的に入手可能であり、これらは融合分子を既にコードしている(例えば、GSTタンパク質)。MEK1をコードする核酸は、このような発現ベクター中にクローン化することができ、融合分子はMEK1タンパク質にインフレームで連結されている。
【0117】
好ましい態様において、本発明の単離されたMEK1タンパク質は、野生型MEK1タンパク質配列に対して、一つ又はそれより多い変異(例えば、置換又は欠失)を含有する。一つの態様において、変異MEK1タンパク質は、ヒト野生型MEK1タンパク質配列(配列番号:2)に対して、一つ又はそれより多い変異を含有する。特に好ましい態様において、一つ又はそれより多い変異は、一つ又はそれより多いRAF及び/又はMEK阻害剤に対する耐性を与える。例示的な態様において、RAF阻害剤は、PLX4032及び/又はPLX4720であり、そしてMEK阻害剤は、AZD6244である。本発明の変異MEK1タンパク質は、野生型MEK1タンパク質の生物学的活性の特性を示す。このような生物学的活性は、例えば、ERK1/2のリン酸化を含むことができる。本発明の例示的な変異MEK1タンパク質は、121位のアミノ酸における変異、好ましくはC121s変異を含んでなるMEK1タンパク質を含む。
【0118】
変異MEK1タンパク質は、野生型MEK1タンパク質、又は野生型MEK1タンパク質をコードする核酸分子の変異誘発によって産生することができる。変異MEK1タンパク質は、更に所望の活性、例えば、一つ又はそれより多いRAF及び/又はMEK阻害剤に対する耐性を有する変異MEK1タンパク質に対するMEK1変異のコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることによって確認することができる。点変異又は切断によって製造されるコンビナトリアルライブラリーの遺伝子産物をスクリーニングするための、及び選択された特性を有する遺伝子産物のためのcDNAライブラリーをスクリーニングするための幾つかの技術は、当技術において既知である。このような技術は、組合せ的遺伝子誘発によって産生された遺伝子ライブラリーの迅速なスクリーニングのために適合される。大きな遺伝子ライブラリーをスクリーニングするために最も広く使用される高処理量分析に受入れられる技術は、典型的には遺伝子ライブラリーを複製可能な発現ベクターにクローンし、適当な細胞を、得られたベクターのライブラリーで形質転換し、そして所望する活性の検出は、その産物が検出される遺伝子をコードするベクターの単離を容易にする条件下で組合せ的遺伝子を発現することを含む。
【0119】
VIII.変異の検出
もう一つの側面において、本発明は、試料(例えば、癌患者からの生物学的試料)中の変異MEK1タンパク質の存在を検出する方法に関する。各種のスクリーニング法を、試料、例えば、核酸及び/又はタンパク質試料中の本発明の変異MEK1タンパク質の存在を検出するために使用することができる。具体的な態様において、試料は、細胞又は細胞抽出物を含有する。例示的な態様において、試料は、患者、例えば癌を有する患者から得られる。
【0120】
MEK1タンパク質、又はその生物学的に活性な部分をコードする配列を含有するゲノムDNA、cDNA、及びRNA(即ち、mRNA)中の耐性変異の存在を検出する方法は、本発明の範囲内で使用することができる。同様に、MEK1タンパク質、又はその生物学的に活性な部分中の耐性変異の存在を検出するための方法は、本発明の範囲内で使用することができる。特別な態様において、方法は、制約されるものではないが、以下を含む方法を、野生型MEK1(配列番号:2)と比較して、121位のアミノ酸における変異を有するMEK1タンパク質、又はMEK1タンパク質をコードする核酸分子の存在を検出するために使用することができる。
【0121】
点変異は、例えば、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法(“DGGE”)、制限断片長多形分析(“RFLP”)、化学的又は酵素的開裂法、PRCによって増幅された標的領域の直接配列決定(上記参照)、一本鎖高次構造多型分析(“SSCP”)、ポリメラーゼ連鎖反応、配列決定、ハイブリダイゼーション、又は“ハイブリッド捕獲”それに続くピロシーケンス又は一分子配列決定を含む当技術において既知のいずれもの適した方法を使用して検出することができる。点変異に対するスクリーニングの一つの方法は、RNA/DNA又はRNA/RNAヘテロ二本鎖中の塩基対ミスマッチのRNアーゼ開裂に基づく。本明細書中で使用する場合、用語“ミスマッチ”は、二本鎖RNA/RNA、RNA/DNA又はDNA/DNA分子中の一つ又はそれより多い不対或いは不対合ヌクレオチドの領域と定義される。従って、この定義は、挿入/欠失変異、並びに単一又は多重塩基点変異によるミスマッチを含む。米国特許第4,946,773号は、一本鎖DNA又はRNA試験試料のRNAプローブへのアニーリング、及びその後のRNアーゼAによる核酸二重鎖の処理を含むRNアーゼAミスマッチ開裂アッセイを記載している。ミスマッチの検出のために、大きさによって電気泳動的に分離されたRNアーゼA処理の一本鎖産物を、同様に処理された対照の二本鎖と比較する。対照二本鎖に見られない小さい断片(開裂産物)を含有する試料は、陽性として記録される。
【0122】
他の研究者は、ミスマッチアッセイにおけるRNアーゼIの使用を記載している。例えば、Promegaは、RNアーゼIを含有するキットを市販し、これは、四つの既知のミスマッチの三つを開裂することが報告されている。他の者は、単一塩基のミスマッチの検出のために、MutSタンパク質又は他のDNA修復酵素の使用を記載している。
【0123】
本発明の実行において使用することができる欠失、挿入又は置換変異の検出のための別の方法は、そのそれぞれが本明細書中に参考文献としてその全てが援用される、米国特許第5,849,483号、5,851,770号、5,866,337号、5,925,525号及び5,928,870中に記載されている。
【0124】
スクリーニング法は、上記で確認した変異の出現に対する個体を選別するために使用することができる。例えば、一つの態様において、試料(血液又は他の体液或いは細胞又は組織試料のような)を、分析のために患者から採取する。例示的な態様において、患者は癌の患者である。MEK1核酸又はMEK1タンパク質中の変異の検出のためのこのような試料を加工するために適した方法は、当技術において既知であり、そして当業者は、選択された検出の方法によるこのような試料の加工に適合することができる。例えば、MEK1タンパク質をコードする核酸中の変異の存在を検出する場合、生物学的試料(例えば、細胞試料又は組織試料)を加工して、試料中の核酸物質が変異を検出するために使用される試薬(例えば、核酸プローブ、プライマー、等)に接近可能であるようにすることができる。従って、ある態様において、生物学的試料中の核酸物質は、試料内の細胞から抽出される。核酸物質の“抽出”は、本明細書中で使用される場合、生物学的試料中の核酸物質を、検出のために使用される試薬による接触のために接近可能にする過程を指す。例えば、細胞試料において、核酸物質(例えば、MEK1タンパク質をコードするmRNA、MEK1タンパク質をコードするDNA、等)は、細胞膜の内部に位置し、試料に加えられる検出試薬によって接近不可能にしている。従って、細胞膜の完全性を破壊することによる核酸物質の抽出が、普通に使用される。細胞から核酸物質を抽出する例示的な手段は、当技術において既知であり、そして制約されるものではないが、機械的破壊(例えば、超音波、フレンチプレス、渦流、ダウンスホモジナイザー、等)、及び/又は界面活性剤媒介破壊(例えば、Triton−X−100、CHAPS、SDS、等のような界面活性剤を含有する溶解緩衝液中の破壊)を含む。検出の方法にもよるが、核酸物質は、抽出中又は抽出後、試料の他の成分から単離することができるか、或いは単離することができない。例えば、MEK1タンパク質をコードする核酸分子のPCR増幅を使用する検出法において、細胞から抽出された核酸物質は、更なる単離を行わず使用することができる(例えば、粗製の可溶化液の成分として)。一つの態様において、生物学的試料は、濾紙上に単離し、これを次いで標準的な抽出技術を使用して加工してから、MEK1タンパク質をコードする核酸分子をPCR増幅することができる。このような濾紙は、細胞を溶解する化学的試薬を含有することができ、そして更に核酸物質を安定化及び保護する試薬を含有することができる(例えば、Whatman FTATM,GE Healthcare)。MEK1核酸分子のPCR増幅は、他の細胞成分から単離せずに濾紙上に保存された試料から行うことができる。他の態様において、核酸物質は、当技術において既知の技術を使用して、試料中の他の非核酸成分から単離することができる。そこに記載されているように、抽出及び/又は単離の方法に対する改変を、分析される核酸物質の種類(例えば、DNA又はRNA)によって使用することができる。MEK1タンパク質中の変異を検出する方法は、更に生物学的試料からのタンパク質の抽出及び/又は単離を使用することができる。生物学的試料からのタンパク質を抽出及び/又は単離するために適した技術は、当技術において公知である。
【0125】
本明細書中に記載される一つ又はそれより多い変異の存在又は非存在は、選別された個体の、RAF阻害剤及び/又は第一世代のMEK1阻害剤による治療に抵抗する能力を決定する。本発明によって提供される方法によれば、これらの結果は、RAF阻害剤及び/又は第一世代のMEK1阻害剤の投与量を調節及び/又は変更するために、或いは第二世代のMEK1阻害剤を使用する治療の課程を選択するために使用されるものである。癌を有する患者の有効な治療は、癌細胞の根絶、癌(固形腫瘍のような)成長速度の停止又は減少、或いは少なくとも一つの癌の徴候の寛解を含んでなることができる。
【0126】
MEK1タンパク質、又はMEK1タンパク質をコードする核酸分子中の耐性変異は、以下に記載する方法を含む当技術において既知のいずれもの適した方法、又はその改変を使用して検出することができる。このような方法は、アレル特異的ポリメラーゼ連鎖反応の使用、部位の直接又は間接的配列決定、部位のそれぞれの対立遺伝子が制限部位を作成又は破壊する制限酵素の使用、アレル特異的ハイブリダイゼーションプローブの使用、変異MEK1タンパク質に対して特異的である抗体の使用、或いはいずれもの他の生化学的解釈を含む。
【0127】
1.DNAの配列決定
変異を特徴づける最も普通に使用される方法は、隣接し、そして多形を含む遺伝子座の直接DNA配列決定である。このような分析は、更に“サンガー法”(Sanger,F.,et al.,1975)としても知られる“デオキシ媒介連鎖終結法”又は更に“マキサム・ギルバート法”(Maxam,A.M.,et al.,1977)とも呼ばれる“化学的分解法”のいずれかを使用して決定することができる。ポリメラーゼ連鎖反応のようなゲノム配列特異的増幅技術と組合せた配列決定は、所望の遺伝子の回収を容易にするために使用することができる(これらの全てが本明細書中に援用される、Mullis,K.et al.,1986;欧州特許出願50,424;欧州特許出願84,796,欧州特許出願258,017,欧州特許出願237,362;欧州特許出願201,184;米国特許第4,683,202号;4,582,788号;及び4,683,194号)。プールされた試料の配列決定も、更にSolexa/Illumina sequencing(Illumina(登録商標),San Diego,CA)、ピロシーケンス、又は他の一分子配列決定法を使用して決定することができる。一つの態様において、MEK1遺伝子中の変異は、患者から得られた試料中に存在するMEK1対立遺伝子をクローンし、そして配列決定することによって検出することができる。所望する場合、MEK1のmRNAを直接配列決定することができ、又はポリメラーゼ連鎖反応技術(“PRC”)を、コードするDNA(“cDNA”)を産生するためにMEK1のDNA又はmRNAを増幅するために使用し、そして得られたcDNAを配列決定することができる。PCRは、更にMEK1対立遺伝子の領域を選択的に増幅するために使用することもできる。
【0128】
2.エキソヌクレアーゼ耐性
変異された部位に存在するヌクレオチドの独自性を決定するために使用することができる他の方法は、特殊化エキソヌクレアーゼ耐性ヌクレオチド誘導体を使用する(米国特許第4,656,127号)。多形部位に対して直ぐの3’−の対立遺伝子配列に相補的なプライマーは、研究中のDNAにハイブリダイズされる。DNA上の多形部位が、存在する特定のエキソヌクレオチド耐性ヌクレオチド誘導体に対して相補的であるヌクレオチドを含有する場合、誘導体は、ハイブリダイズされたプライマーの末端のポリメラーゼによって組込まれるものである。このような組込みは、プライマーを、エキソヌクレアーゼ開裂に対して耐性にし、そしてこれによってその検出を可能にする。エキソヌクレオチド耐性誘導体の独自性は既知であるので、DNAの多形部位に存在する特異的ヌクレオチドを決定することができる。
【0129】
3.ミクロ配列決定法
DNA中の変異部位を分析するための幾つかの他のプライマー誘導ヌクレオチド組込み法が記載されている(Komher,J.S.et al.,1989;Sokolov,B.P.,1990;Syvanen 1990;Kuppuswamy et al.,1991;Prezant et al.,1992;Ugozzoll,L.et al.,1992;Nyren et al.,1993)。これらの方法は、変異部位における塩基間を識別するための標識されたデオキシヌクレオチドの組込みに依存する。シグナルが組込まれたデオキシヌクレオチドの数に比例するため、同じヌクレオチドの実験において起こる変異は、実験の長さに比例するシグナルをもたらす。
【0130】
4.溶液中の伸長
フランス特許第2,650,840号及びPCT出願WO91/02087は、変異部位のヌクレオチドの独自性を決定するための溶液ベース法を考察している。これらの方法によれば、多形部位に直接3’−である対立遺伝子配列に対して相補的なプライマーが使用される。この部位のヌクレオチドの独自性は、多形部位のヌクレオチドに対して相補的である場合、プライマーの末端に組込まれる標識されたジデオキシヌクレオチド誘導体を使用して決定される。
【0131】
5.Genetic BitTM分析又は固相伸長
PCT出願92/15712は、多形部位に対する3’配列に相補的である標識されたターミネーター及びプライマーの混合物を使用する方法を記載している。組込まれる標識されたターミネーターは、評価される標的分子の多形部位に存在するヌクレオチドに相補的であり、そして従って確認される。ここで、プライマー又は標的分子は、固相に不動化される。
【0132】
6.オリゴヌクレオチド連結アッセイ(OLA)
オリゴヌクレオチド連結アッセイは、先に記載したものと異なった方法論を使用する固相法である(Landegren et al.,1988)。標的DNAの一本鎖の隣接する配列にハイブリダイズすることが可能な二つのオリゴヌクレオチドが使用される。これらのオリゴヌクレオチドの一つはビオチニル化され、一方他方は検出可能なように標識される。標的分子中に的確な相補的配列が見いだされる場合、オリゴヌクレオチドは、その末端が隣接するようにハイブリダイズされ、そして連結基質を作成するものである。連結は、アビジンを使用して標識されたオリゴヌクレオチドの回収を可能にする。PCRと組合せたこの方法に基づく他の核酸検出アッセイは、更に記載されている(Nickerson et al.,1990)。ここで、PCRは、標的DNAの対数的増幅を達成するために使用され、次いでこれは、OLAを使用して検出される。
【0133】
7.リガーゼ/ポリメラーゼ媒介Genetic Bitアッセイ
米国特許第5,952,174号は、更に標的分子の隣接する配列にハイブリダイズすることが可能な二つのプライマーに関係する方法を記載している。ハイブリダイズされた産物は、固体支持体上に形成され、これに、標的が不動化される。ここで、ハイブリダイゼーションは、プライマーが一つのヌクレオチドの間隔によって互いに分離されるように起こる。このハイブリダイズされた産物を、ポリメラーゼ、リガーゼ、少なくとも一つのデオキシヌクレオシド三リン酸を含有するヌクレオシド三リン酸混合物の存在中でインキュベートすることは、隣接するハイブリダイズされたオリゴヌクレオチドのいずれもの対の連結を可能にする。リガーゼの添加は、シグナル、伸長及び連結を産生するために必要な二つの現象をもたらす。これは、単独の伸長又は連結のいずれかを使用する方法よりも、そしてポリメラーゼベースのアッセイと異なって、高い特異性及び低い“ノイズ”を提供し、この方法は、これを、固相に付着されるシグナルに対する第二のハイブリダイゼーション及び連結工程と組み合わせることによってポリメラーゼ工程の特異性を向上する。
【0134】
8.核酸移動の方法
本発明の幾つかの方法のために、核酸移動の方法を使用することができる。本発明の組成物の発現に影響する核酸供給のために適した方法は、核酸(例えば、DNA、ウイルス及び非ウイルスベクターを含む)を、本明細書中に記載されるように、或いは当業者にとって既知であるものであるように、小器官、細胞、組織又は生物体に導入することができるいずれもの方法を実質的に含むと信じられる。このような方法は、制約されるものではないが、微量注射(本明細書中に参考文献として援用される、Harlan and Weintraub,1985;米国特許第5,789,215号)を含む注射(それぞれが本明細書中に参考文献として援用される、米国特許第5,994,624号、5,981,274号、5,945,100, 5,780,448, 5,736,524, 5,702,932号、5,656,610号、5,589,466号及び5,580,859号);電気穿孔法(本明細書中に参考文献として援用される、米国特許第5,384,253号);リン酸カルシウム沈積法(Graham and Van Der Eb,1973;Chen and Okayama,1987;Rippe et al.,1990);DEAE−デキストラン、続いてポリエチレングリコールを使用すること(Gopal,1985);直接超音波付加(Fechheimer et al.,1987);リポソーム媒介形質移入(Nicolau and Sene,1982;Fraley et al.,1979;Nicolau et al.,1987;Wong et al.,1980;Kaneda et al.,1989;Kato et al.,1991);微粒子銃(PCT出願WO94/09699及び95/06128;米国特許第5,610,042号;5,322,783号、5,563,055号、5,550,318号、5,538,877号及び5,538,880号、そしてそれぞれが本明細書中に参考文献として援用される);炭化ケイ素繊維による撹拌(それぞれが本明細書中に参考文献として援用される、Kaeppler et al.,1990;米国特許第5,302,523号及び5,464,765号);アグロバクテリウム媒介形質転換(それぞれが本明細書中に参考文献として援用される、米国特許第5,591,616号及び5,563,055号);原形質体のPEG媒介形質転換(それぞれが本明細書中に参考文献として援用される、Omirulleh et al.,1993;米国特許第4,684,611号及び4,952,500号);又は乾燥/阻害媒介DNA取込み(Potrykus et al.,1985)によるようなDNAの直接供給を含む。これらのような技術の適用によって、小器官(類)、細胞(類)、組織(類)又は生物体(類)は、安定的に又は過渡的に形質転換することができる。
【0135】
9.アレル特異的抗体
本明細書中に記載される耐性変態を有するMEK1タンパク質は、変異MEK1タンパク質を特異的に認識するが、しかし野生型MEK1タンパク質を認識しない抗体を使用して検出することができる。抗体は、一つ又はそれより多い耐性変異を有するMEK1タンパク質の、一つ又はそれより多い対立遺伝子型に対して産生することができる。ペプチド又はタンパク質上のエピトープを特異的に認識する抗体を誘発する抗原としての特異的タンパク質又はオリゴペプチドを使用するための技術は、公知である。一つの態様において、標的遺伝子の所望の対立遺伝子型のDNA配列は、適当な発現ベクターへの挿入によってクローン化し、そして原核細胞又は真核細胞の宿主細胞中でタンパク質に翻訳することができる。タンパク質を回収し、そして特異的抗体の産生を誘発するための抗原として使用することができる。もう一つの態様において、標的遺伝子の所望の対立遺伝子型のDNAは、PRC技術によって増幅され、そしてその後、特異的抗体の産生を誘発する抗原として使用されるタンパク質に、in vitroで翻訳される。三番目の態様は、別の対立遺伝子のDNA配列を、特異的抗体の産生を誘発する抗原として使用するための対立遺伝子のアミノ酸配列を表す合成ペプチドの産生のための基本として使用することである。
【0136】
抗体は、標準的なモノクローナルな抗体技術か又は組換えベース発現系によって産生するかのいずれかによって産生することができる。用語“抗体”は、インタクトな抗体分子、並びに抗原に特異的に結合することが可能であるFab及びF(ab’)のような抗体断片又は誘導体を含むことを意味する。このように産生された抗体は、抗体を作成するための抗原として使用される対立遺伝子型中に産生される変異タンパク質のみに優先的に結合するものである。アレル特異的抗体を産生する方法は、更にその全ての内容が本明細書中に参考文献として援用される、米国特許第6,200,754号及び米国特許第6,054,273号中に記載されている。
【0137】
このような変異MEK1タンパク質に対する特異的な抗体は、試料、例えば、アッセイ試料、細胞試料、細胞抽出物、生物学的試料、又は患者の試料中に一つ又はそれより多い耐性変異を有するMEK1タンパク質の存在を、当技術において既知の技術を使用して検出するために使用することができる。これらの技術は、例えば、ウェスタンブロット、免疫組織化学法、間接免疫蛍光法、及び抗体マイクロアレイを含む。変異MEK1タンパク質を特異的に認識する抗体は、更に第二世代のMEK1阻害剤であることもできる。変異MEK1タンパク質の生物学的活性を阻害するために、変異MEK1タンパク質を特異的に認識する抗体の能力は、第二世代のMEK1阻害剤を確認するために本明細書中に記載される方法を使用して決定することができる。
【0138】
IX.診断及びスクリーニングへの適用
前述の技術は、患者から得られた試料中のMEK1核酸又はタンパク質分子中の、先に確認した耐性変異の存在或いは非存在を決定するために使用することができる。患者の試料中の変異MEK1核酸又はタンパク質分子の確認は、患者の疾病又は症状を特徴づけるために有用であることができる。例えば、MEK1の異常な発現又は活性化に伴う疾病(例えば癌)を有する患者において、患者から得られた試料(例えば、癌細胞を含有する試料)中の変異MEK1核酸又はタンパク質分子の確認は、患者が、RAF又はMEK阻害剤による治療に対して相対的に高い再発の危険度にあるか、或いはそれに対する反応の欠如にあることを示す。一つの態様において、患者から得られた癌細胞を含有する試料中の、本明細書中に記載する一つ又はそれより多い変異を含有するMEK1核酸又はタンパク質分子の確認は、患者が、PLX4032又はPLX4720のようなRAF阻害剤、或いは第一世代のMEK阻害剤、例えばCI−1040、AZD6244、PD318088、PD98059、PD334581、RDEA119、化合物A、及び化合物Bによる治療に対して相対的に高い再発の危険度にあるか、或いはそれに対する反応の欠如にあること示す。
【0139】
本明細書中に記載されるMEK1耐性変異を有する患者は、MEK1耐性変異を検出することができない患者より、RAF阻害剤又は第一世代のMEK阻害剤による治療からの高い再発の危険度を有する。従って、本明細書中で使用する場合、用語“相対的に高い再発の危険度”は、変異MEK1核酸又はタンパク質分子を検出することができない患者に関している。即ち、“相対的に高い再発の危険度”を有する患者は、変異MEK1核酸又はタンパク質分子を検出することができない患者と比較して、より大きい再発の危険度を有する患者である。
【0140】
ある態様において、配列番号:2に示す野生型MEK1の121位のアミノ酸における変異を有するMEK1タンパク質、又はMEK1タンパク質をコードする核酸の確認は、患者が、RAF阻害剤及び/又は第一世代のMEK阻害剤による治療に対して相対的に高い再発の危険度にあるか、又は反応の欠如にあることを示す。
【0141】
患者の試料中の変異MEK1核酸又はタンパク質分子の存在或いは非存在を決定することは、更に患者のために最適化された治療計画の選択、又はある種の治療群への患者の階層化を可能にする。一つの態様において、RAF阻害剤及び/又は第一世代のMEK阻害剤による治療を含んでなる治療計画は、患者からの癌細胞を含有する試料が、変異MEK1核酸又はタンパク質分子を含有していない患者のために選択される。このような患者は、RAF阻害剤及び/又は第一世代のMEK阻害剤を含んでなる治療計画に階層化することができる。RAF及び/又はMEK阻害剤は、標準的な投与量で、標準的な投与間隔でこのような患者に与えることができる。
【0142】
もう一つの態様において、MEK阻害剤及びRAF阻害剤による組合せ療法を含んでなる治療計画は、患者からの癌細胞を含有する試料が、変異MEK1核酸又はタンパク質分子を含有していない患者のために選択される。このような患者は、RAF阻害剤と組合せた第一世代のMEK阻害剤又は第二世代のMEK阻害剤を含んでなる治療計画に階層化することができる。RAF阻害剤及びC121SのMEK1変異を標的とするMEK阻害剤による組合せ療法を含んでなる治療計画は、その癌が変異MEK1分子を含有しない患者中のMEK耐性対立遺伝子の出現を好都合に抑制する。
【0143】
もう一つの態様において、MEK阻害剤を伴わない治療を含んでなる治療計画は、患者からの癌細胞を含有する試料が、変異MEK1核酸又はタンパク質分子、例えば、本明細書中に記載される一つ又はそれより多い変異を含有するMEK1核酸又はタンパク質分子を含有する患者のために選択される。このような患者は、MEK阻害剤を含まずになる治療計画に階層化することができる。
【0144】
別の態様において、変異MEK1が患者から得られた癌細胞を含有する試料中の、C121S変異を含んでなる変異MEK1核酸又はタンパク質分子の確認は、患者が、C121S変異を含んでなるMEK1変異を標的とする第二世代のMEK阻害剤による治療に対して反応する可能性のあることを示す。従って、一つの態様において、C121S変異MEK1タンパク質を標的とする第二世代のMEK阻害剤による治療を含んでなる治療計画は、患者からの癌細胞を含有する試料が、C121S変異を含んでなる変異MEK1核酸又はタンパク質分子を含有する患者のために選択される。このような患者は、このような第二世代のMEK阻害剤を含んでなる治療計画に階層化される。
【0145】
本発明の実行は、他に示さない限り、分子生物学、免疫学、微生物学、細胞生物学及び組換えDNAの慣用的技術を使用するものであり、これらは当技術の技能の範囲である。例えば、Sambrook,Fritsch and Maniatis,MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL,(最新版);CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY(F.M.Ausubel et al.eds.,(最新版));一連のMETHODS IN ENZYMOLOGY(Academic Press,Inc.):PCR 2:A PRACTICAL APPROACH(最新版)ANTIBODIES,A LABORATORY MANUAL and ANIMAL CELL CULTURE(R.I.Freshney,ed.(1987)).DNA Cloning:A Practical Approach,vol.I & II(D.Glover,ed.);Oligonucleotide Synthesis(N.Gait,ed.,最新版);Nucleic Acid Hybridization(B.Hames & S.Higgins,eds.,最新版);Transcription and Translation(B.Hames & S.Higgins,eds.,最新版);Fundamental Virology,2nd Edition,vol.I & II(B.N.Fields and D.M.Knipe,eds.)を参照されたい。
【0146】
X.治療の方法
各種の態様において、本発明は、癌を有する患者を治療する方法を提供する。前記方法は、一般的にMEK1阻害剤、例えば、配列番号:2の野生型MEK1と比較して、121位のアミノ酸における置換(例えば、C121S)を有する変異MEK1を標的とする本明細書中に記載されるような第二世代のMEK1阻害剤の投与を含んでなる。例示的な態様において、患者は、本明細書中に記載されるような耐性変異を有する変異MEK1タンパク質を含有する癌を有する。関連する態様において、患者は、本明細書中に記載するような耐性変異を有するMEK1タンパク質をコードする核酸分子を含有する癌を有する。用語“治療される”、“治療すること”又は“治療”は、治療される症状に伴う少なくとも一つの徴候の縮小又は軽減を含む。例えば、治療は、癌のような疾患の一つ又は幾つかの徴候の縮小或いは疾患の完全な根絶であることができる。
【0147】
例示的態様において、癌は、転移性黒色腫のような黒色腫である。他の例示的な態様において、癌は、白血病、リンパ腫、骨髄腫、細胞腫、転移性細胞腫、肉腫、腺腫、神経系癌及び尿生殖器癌からなる群から選択される。然しながら、MEK1における変異は、多くの種類の癌において耐性を広く増強するために、この方法及び本明細書中に記載される第二世代のMEK1阻害剤は、全ての固形腫瘍及び血液系腫瘍を含む広い範囲の腫瘍を治療することにおいて有用である。このような腫瘍の例は、制約されるものではないが、白血病、リンパ腫、骨髄腫、細胞腫、転移性細胞腫、肉腫、腺腫、神経系癌及び尿生殖器癌を含む。例示的な態様において、前述の方法は、成人及び小児急性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、副腎皮質癌、AIDS関連癌、肛門癌、虫垂癌、星状細胞種、基底細胞癌、胆管癌、膀胱癌、骨癌、骨肉腫、線維性組織球腫、脳癌、脳幹神経膠腫、小脳星状細胞種、悪性神経膠腫、上皮腫、髄芽腫、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、視床下部神経膠腫、乳癌、男性乳癌、気管支腺腫、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍、原発巣不明の癌、中枢神経系リンパ腫、小脳星状細胞種、悪性神経膠腫、子宮頚部癌、小児癌、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性疾患、直腸結腸癌、皮膚T細胞リンパ腫、子宮内膜癌、上衣種、食道癌、ユーイングファミリー腫瘍、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝臓外胆管癌、眼球内黒色腫、網膜芽細胞種、胆嚢癌、胃癌、消化管間葉性腫瘍、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、卵巣胚細胞腫瘍、妊娠性絨毛性腫瘍、神経膠腫、毛様細胞白血病、頭頸部癌、肝細胞癌、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、視床下部及び視覚路神経膠腫、眼球内黒色腫、膵島細胞腫瘍、カポジ肉腫、腎臓癌、直腸細胞癌、咽頭癌、唇及び口腔空洞癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、原発性中枢神経系リンパ腫、ワルデンストロームマクログロブリン血症、悪性線維性組織球腫、髄芽腫、黒色腫、メルケル細胞癌、悪性中皮腫、扁平上皮頚部癌、多発性内分泌腫瘍症候群、多発性骨髄腫、菌状息肉種、骨髄異形成症候群、骨髄増殖性疾患、慢性骨髄増殖性疾患、鼻腔空洞及び副鼻腔癌、鼻咽頭癌、神経芽細胞腫、中咽頭癌、卵巣癌、膵臓癌、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、褐色細胞種、松果体芽腫及びテント上原始神経外胚葉性腫瘍、下垂体癌、形質細胞腫瘍、胸膜肺芽細胞種、前立腺癌、直腸癌、横紋筋肉腫、唾液腺癌、軟組織肉腫、子宮肉腫、セザリー症候群、非黒色腫皮膚癌、小腸癌、扁平上皮腫、扁平上皮頚部癌、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、精巣癌、咽頭癌、胸腺腫及び胸腺癌、甲状腺癌、移行上皮癌、絨毛性腫瘍、尿道癌、子宮癌、子宮肉腫、膣癌、外陰部癌、及びウイルムス腫瘍を治療することにおいて有用である。
【0148】
幾つかの態様において、本発明の化合物(又は組合せ)の医薬組成物は、経口、直腸又は非経口注射による投与のために適した投与量単位形態であることができる。例えば、経口剤形の組成物を調製する場合、例えば、懸濁液、シロップ、エリキシル及び溶液のような経口液体製剤の場合、例えば水、グリコール、油、アルコール、等のような;或いは散剤、丸薬、カプセル及び錠剤の場合、デンプン、糖、カオリン、潤滑剤、結合剤、崩壊剤等のような固体の担体いずれもの通常の医薬的媒体を使用することができる。その投与の容易さのために、錠剤又はカプセルが最も好都合な経口投与量単位形態であり、この場合、固体の医薬的担体が使用される。非経口組成物のために、担体は、通常例えば溶解性を援助する他の成分を含むことができるが、少なくとも大部分の滅菌水を含んでなる。例えば、注射用溶液は、生理食塩水溶液、グルコース溶液又は生理食塩水及びグリコール溶液の混合物を含んでなる担体を使用して調製される。注射用懸濁液も、更に調製することができ、この場合、適当な液体担体、懸濁剤等を使用することができる。経皮的投与のために適した組成物の場合、担体は、浸透向上剤及び/又は適した湿潤剤を所望により含んでなっていてもよく、これは、小さい比率のいずれもの性質の適した添加剤と組合せることができ、この添加剤は、皮膚に有意な有害な効果を起こさない。添加剤は、皮膚への投与を容易にすることができ、及び/又は所望の組成物を調製するために役立つ。これらの組成物は、各種の方法で、例えば、経皮貼布として、スポットオンとして、軟膏として投与することができる。
【0149】
本明細書中に記載される医薬組成物を、投与の容易さ及び投与量の均一性のために投与量単位形態に処方することは特に好都合である。投与量単位形態は、本明細書中で使用される場合、単位投与量として適した物理的に別個の単位を指し、それぞれの単位は、所望の治療効果を産生するために計算された所定の量の活性成分を、必要な医薬的担体と共に含有する。このような投与量単位形態の例は、錠剤(切れ目入り又は被覆錠剤を含む)、カプセル、丸薬、散剤小包、ウエハース、注射用溶液又は懸濁液、茶匙一杯分、大匙一杯分等、及び分離された複数のこれらのものである。
【0150】
一般的に、第一又は第二の化合物の治療的に有効な量が、約0.0001mg/kgから0.001mg/kgまで;0.001mg/kgから約10mg/kg体重又は約0.02mg/kgから約5mg/kg体重までであるものであることは意図されている。幾つかの態様において、第一又は第二の化合物の治療的に有効な量は、約0.007mgから約0.07mgまで、約0.07mgから約700mg、又は約1.4mgから約350mgまでである。予防的又は根治的治療の方法は、更に一日当たり1ないし5回間の摂取の投与計画の組成物の投与を含むことができる。
【0151】
幾つかの態様において、第一の化合物又は第二の化合物の治療的に有効な量は、制約されるものではないが、約0.01mg/投与より少ない、又は約0.5mg/投与より少ない、又は約1mg/投与より少ない、又は約2mg/投与より少ない、又は約5mg/投与より少ない、又は約10mg/投与より少ない、又は約20mg/投与より少ない、又は約25mg/投与より少ない、又は約50mg/投与より少ない、或いは約100mg/投与より少ない量を含む。第一又は第二の化合物が患者に投与される一日当たりの回数は、当技術において普通に使用されている各種の基準及び/又は本明細書中に記載されるものに基づいて決定することができる。
【0152】
ラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウムのような湿潤剤、乳化剤及び潤滑剤、並びに着色剤、放出剤、被覆剤、甘味、風味及び芳香剤、保存剤及び抗酸化剤も更に組成物中に存在することができる。
【0153】
医薬的に受容可能な抗酸化剤の例は:アスコルビン酸、システイン塩酸塩、重硫酸ナトリウム、メタ重硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等のような水溶性抗酸化剤;パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α−トコフェロール、等のような油溶性抗酸化剤;及びクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸、等のような金属キレート化剤を含む。
【0154】
本発明の製剤は、経口、鼻腔、局所、頬側、舌下、直腸、膣及び/又は非経口投与のために適したものを含む。製剤は、都合よくは単位投与量形態で与えられ、そして薬学の技術において公知のいずれもの方法によって調製することができる。単一の剤形を製造するために担体物質と組合せることができる活性成分の量は、一般的に治療効果を産生する量の組成物であるものである。一般的に、この量は、100パーセント中の、約1パーセントから約99パーセントまで、好ましくは約5パーセントから約70パーセントまで、最も好ましくは約10パーセントから約30パーセントまでの活性成分の範囲であるものである。
【0155】
これらの製剤又は組成物を調製する方法は、本発明の組成物を担体及び所望により一つ又はそれより多い副成分と一緒にする工程を含む。一般的に、製剤は、本発明の組成物を液体担体、又は微細に分割された固体担体、或いは両方と均一に、そして緊密に一緒にし、そして次いで、必要な場合、産物を成形することによって調製される。
【0156】
経口投与のために適した本発明の製剤は、カプセル、カシェ、丸薬、錠剤、ロゼンジ(芳香づけ基剤、通常スクロース及びアラビアゴム又はトラガカントゴムを使用)、粉末、顆粒、或いは水性又は非水性液体中の溶液若しくは懸濁液として、或いは水中油又は水中油液体乳剤として、或いはエリキシル又はシロップとして、或いはトローチ(ゼラチン及びグリセリン、又はスクロース及びアラビアゴムのような不活性基剤を使用)及び/又は口内洗浄剤として等の形態であることができ、それぞれは、活性成分として所定の量の本発明の組成物を含有する。本発明の組成物は、更にボーラス、舐剤又はペーストとして投与することもできる。
【0157】
経口投与のための本発明の固体の剤形(カプセル、錠剤、丸薬、ドラジェ、散剤、顆粒等)において、活性成分は、クエン酸ナトリウム或いはリン酸二カルシウムのような一つ又はそれより多い医薬的に受容可能な担体、及び/又は次:デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、及び/又はサリチル酸のような充填剤又は増量剤;例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース及び/又はアラビアゴムのような結合剤;グリセロールのような保水剤;寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモ又はタピオカデンプン、アルギン酸、ある種のケイ酸塩、及び炭酸ナトリウムのような崩壊剤;パラフィンのような溶液遅延剤、第四アンモニウム化合物のような吸収促進剤;例えば、セチルアルコール及びモノステアリン酸グリセロールのような湿潤剤;カオリン及びベントナイト粘土のような吸収剤;タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体のポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、及びこれらの混合物のような潤滑剤;並びに着色剤のいずれかと混合される。カプセル、錠剤及び丸薬の場合、医薬組成物は、更に緩衝剤を含んでなることができる。類似の種類の固体組成物は、更にラクトース又は乳糖、並びに高分子量ポリエチレングリコール等のような賦形剤を使用して、軟質及び硬質充填済みゼラチンカプセル中の充填剤として使用することができる。
【0158】
錠剤は、所望により一つ又はそれより多い付属成分と共に、圧縮又は成形によって製造することができる。圧縮錠剤は、結合剤(例えば、ゼラチン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース)、潤滑剤、不活性希釈剤、保存剤、崩壊剤(例えば、グリコール酸デンプンナトリウム又は架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、表面活性剤又は分散剤を使用して調製することができる。成形錠剤は、不活性液体希釈剤で湿潤化された粉末の組成物の混合物を適した機械で成形することによって製造することができる。
【0159】
錠剤、並びにドラジェ、カプセル、丸薬及び顆粒のような本発明の医薬組成物の他の固体の剤形は、所望により切れ目を入れるか、又は腸溶性被覆及び他の医薬処方技術において公知の他の被覆のような被覆並びに殻を伴って調製することができる。これらは、更に、例えば、所望の放出特性を得るために変化する比率のヒドロキシプロピルメチルセルロース、他のポリマー基質、リポソーム及び/又は微小球を使用して、その中の活性成分の遅延又は制御放出を提供するように処方することもできる。これらは、例えば、細菌保持フィルターを通す濾過によって、或いは滅菌水中に溶解することができる滅菌固体組成物の形態で滅菌剤を、又は幾つかの他の滅菌注射用媒体を組込むことによって、使用の直前に滅菌することができる。これらの組成物は、更に所望により不透明化剤を含有することができ、そしてこれらが、活性成分(類)のみを、或いは所望により遅延様式で消化管のある部分に選択的に放出する組成物であることができる。使用することができる包埋組成物の例は、ポリマー物質及びワックスを含む。活性成分は、更に適宜に一つ又はそれより多い上記の賦形剤を伴う、マイクロカプセル化形態であることもできる。
【0160】
本発明の組成物の経口投与のための液体の剤形は、医薬的に受容可能な乳液、マイクロ乳液、溶液、懸濁液、シロップ及びエリキシルを含む。活性成分に加えて、液体の剤形は、例えば、水又はエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油(特に、綿実油、ピーナッツ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ひまし油及びゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、プロピレングリコール及びソルビタンの脂肪酸エステル、並びにこれらの混合物のような他の溶媒、可溶化剤及び乳化剤のような、当技術において普通に使用される不活性希釈剤を含有することができる。
【0161】
不活性希釈剤以外に、経口組成物は、更に湿潤剤、乳化及び懸濁剤、甘味剤、風味剤、着色剤、芳香剤及び保存剤のような賦形剤を含むことができる。
懸濁液は、活性組成物に加えて、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天及びトラガカントゴム、並びにこれらの混合物のような懸濁剤を含有することができる。
【0162】
直腸又は膣投与のための本発明の医薬組成物の製剤は、座薬として与えることができ、これは、一つ又はそれより多い本発明の組成物を、例えば、ココナッツバター、ポリエチレングリコール、座薬用ワックス或いはサリチル酸塩を含んでなる一つ又はそれより多い適した非刺激性の賦形剤又は担体と混合することによって調製することができ、そしてこれは、室温で固体であるが、しかし体温では液体であり、そして従って、直腸又は膣空洞中で溶解し、そして活性組成物を放出するものである。
【0163】
膣投与のために適した本発明の製剤は、更に当技術において適当であることが知られた担体を含有するペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム又は噴霧製剤を含む。
【0164】
本発明の組成物の局所又は経皮投与のための剤形は、散剤、噴霧剤、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、貼布及び吸入剤を含む。活性成分は、滅菌条件下で医薬的に受容可能な担体、及び必要とすることができるいずれもの保存剤、緩衝剤、又は噴射剤を伴って混合することができる。
【0165】
軟膏、ペースト、クリーム及びゲルは、本発明の活性組成物に加えて、動物又は植物性脂肪、油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカントゴム、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、サリチル酸、タルク及び酸化亜鉛、又はこれらの混合物のような賦形剤を含有することができる。
【0166】
散剤及び噴霧剤は、本発明の組成物に加えて、ラクトース、タルク、サリチル酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム及びポリアミド粉末、又はこれらの物質の混合物のような賦形剤を含有することができる。噴霧剤は、クロロフルオロ炭化水素及びブタン及びプロパンのような揮発性非置換炭化水素のような習慣的な噴射剤を、更に含有することができる。
【0167】
経皮貼布は、身体への本発明の組成物の制御放出を提供する更なる利益を有する。このような剤形は、組成物を適当な媒体中に溶解又は分散することによって製造することができる。吸収向上剤も、更に皮膚を通る組成物の流束を増加するために使用することができる。このような流束の速度は、速度制御膜の提供、或いは活性組成物のポリマー基質又はゲル中への分散のいずれかによって制御することができる。
【0168】
点眼製剤、点眼軟膏、散剤、溶液等は、更に本発明の範囲内にあると意図されている。
非経口投与のために適した本発明の医薬組成物は、一つ又はそれより多い本発明の組成物を、一つ又はそれより多い医薬的に受容可能な滅菌等張水性又は非水性溶液、分散液、懸濁液又は乳液、或いは使用の直前に滅菌注射用溶液又は分散液中に再構成することができる滅菌散剤との組合せで含んでなり、これは、抗酸化剤、緩衝剤、殺細菌剤、製剤を意図する受容者の血液と等張にする溶質、或いは懸濁又は増粘剤を含有することができる。
【0169】
本発明の医薬組成物中に使用することができる適した水性及び非水性担体の例は、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール等のような)、及びこれらの適した混合物、オリーブ油のような植物油、並びにオレイン酸エチルのような注射用有機エステルを含む。適当な流動性は、例えば、レシチンのような被覆物質の使用、分散物の場合の必要な粒子の大きさの維持、及び界面活性剤の使用によって維持することができる。
【0170】
これらの組成物は、更に保存剤、湿潤剤、乳化剤及び分散剤のようなアジュバントを含有することができる。微生物の作用の防止は、各種の抗細菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール ソルビン酸、等の包含によって確実にすることができる。糖、塩化ナトリウム、等のような等張剤を含むことは、更に好ましいことであることができる。更に、注射用医薬形態の延長された吸収は、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンのような吸収を遅延する薬剤の包含によってもたらすことができる。
【0171】
幾つかの場合、薬物の効果を延長するために、皮下又は筋肉内注射からの薬物の吸収を遅くすることが望まれる。これは、不良な水溶性を有する結晶質又は非晶質物質の液体懸濁液の使用によて達成することができる。薬物の吸収の速度は、次いでその溶解の速度に依存し、これは、次に結晶の大きさ及び結晶形に依存することができる。別の方法として、非経口投与される薬物の形態の遅延吸収は、薬物を油性ベヒクル中に溶解又は懸濁することによって達成される。
【0172】
注射用デポーの形態は、主題の組成物のマイクロカプセル化基質を、ポリアクリルアミド−ポリグリコリドのような生分解性ポリマー中に形成することによって製造される。薬物とポリマーの比、及び使用される特定のポリマーの特質によるが、薬物放出の速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例は、ポリ(オルトエステル)及びポリ(酸無水物)を含む。デポーの注射用製剤は、更に身体の組織に適合性であるリポソーム又はミクロ乳液で薬物を封入することによって調製される。
【0173】
本発明の製剤は、経口、非経口、局所、又は直腸に与えることができる。これらは、勿論、それぞれの投与経路のために適した形態によって与えられる。例えば、これらは、錠剤又はカプセルの形態で、注射、吸入、点眼ローション、軟膏、座薬、等によって、注射、注入又は吸入による投与;ローション又は軟膏による局所;及び座薬により直腸に投与される。経口及び/又はIV投与が好ましい。
【0174】
語句“非経口投与”及び“非経口投与される”は、本明細書中で使用される場合、経腸及び局所投与以外の、通常注射による投与の様式を意味し、そして制約されるものではないが、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内及び胸骨内注射並びに注入を含む。
【0175】
語句“全身性投与”、“全身的に投与される”、“末梢性投与”及び“末梢的に投与される”は、本明細書中で使用される場合、これが、患者の系に入り、そして従って代謝及び他の同様な過程にかけられるような、中枢神経系への直接以外の化合物、薬物又は他の物質の投与、例えば皮下投与を意味する。
【0176】
これらの化合物は、経口、例えば噴霧によるような鼻腔、直腸、膣内、非経口、大槽内及び局所を含むいずれもの適した投与の経路によって、散剤、軟膏又は点滴によって、頬側及び舌下を含んで、治療のためにヒト及び他の動物に投与することができる。
【0177】
選択される投与の経路に関わらず、適した水和物の形態で使用することができる本発明の化合物、及び/又は本発明の医薬組成物は、当業者にとって既知の慣用的方法によって医薬的に受容可能な剤形に処方される。
【0178】
本発明の医薬組成物中の活性成分の実際の投与量レベルは、特定の患者のための所望の治療反応を達成するために有効である活性成分、組成物の量、及び投与の様式が、患者にとって毒性を伴わずに得られるように変更することができる。
【0179】
選択される投与量レベルは、使用される本発明の特定の化合物、或いはそのエステル、塩又はアミドの活性、投与の経路、投与の時間、使用される特定の化合物の排出の速度、治療の期間、使用される特定の化合物と組合せて使用される他の薬物、化合物及び/又は物質、治療される患者の年齢、性別、体重、症状、一般的健康状態及び以前の病歴、並びに医学技術において公知の類似の因子を含む各種の因子に依存するものである。
【0180】
当技術における通常の技能を有する医師又は獣医師は、必要な医薬組成物の有効な量を容易に決定し、そして処方することができる。例えば、医師又は獣医師は、医薬組成物中に使用される本発明の化合物の投与量を、所望の治療効果を達成するために必要なものより低いレベルで始め、そして所望の効果が得られるまで投与量を徐々に増加することができる。
【0181】
一般的に、本発明の化合物の適した日量は、治療効果を産生するために有効な最低の投与量である化合物の量であるものである。このような有効な投与量は、一般的に先に記載した因子に依存するものである。一般的に、患者のための本発明の化合物の静脈内及び皮下投与量は、指示された鎮痛効果のために使用する場合、一日当たり体重のkg当たり約0.0001から約100mgまで、更に好ましくは一日当たりkg当たり約0.01から約50mgまで、そしてなお更に好ましくは一日当たりkg当たり約1.0から約100mgまでの範囲であるものである。有効な量は、例えば、患者の腫瘍細胞の増殖を阻害する量であることができる。
【0182】
所望する場合、活性化合物の有効な日量は、一日を通して適当な間隔で別個に投与される2、3、4、5、6回又はそれより多い回数の分割投与として、所望により単位剤形で投与することができる。
【0183】
本発明の化合物は単独で投与することが可能であるが、化合物を医薬組成物として投与することが好ましい。
XI.併用療法を使用する治療の方法
本発明は、癌を有する患者におけるMEK1耐性変異の出現を抑制する方法を更に記載する。このような方法は、RAF阻害剤、及び配列番号:1の野生型MEK1と比較して、121位のアミノ酸における置換を有する変異MEK1タンパク質を標的とする第二世代のMEK1阻害剤の組合せ投与を含む。好ましくは、第二世代のMEK1阻害剤は、C121S置換を有する変異MEK1タンパク質を標的とする。従って、本発明は、RAF阻害剤、及び配列番号:1の野生型MEK1と比較して、121位のアミノ酸における置換を有する変異MEK1タンパク質(好ましくはC121S変異)を標的とするMEK1阻害剤の投与を含んでなる、癌の徴候を治療又は予防するための組合せ療法を提供する。用語“組合せ療法”は、本明細書中で使用する場合、二つ又はそれより多い治療物質、例えば、MEK1阻害剤又はRAF阻害剤の投与を指す。MEK1阻害剤は、RAF阻害剤の投与と同時に、その前に、又はその後に投与することができる。本明細書中に明記するように、第二世代のMEK1阻害剤及びRAF阻害剤を含む組合せ療法は、単独のMEK1阻害剤又はRAF阻害剤のいずれかの投与より大きい程度にMEK耐性変異の出現を抑制する。第二世代のMEK1阻害剤及びRAF阻害剤の標準的な投与量は、更に本明細書中に記載される組合せ療法に対しても適している。組合せ療法で治療することができる例示的な癌は、本明細書中に記載されるもの、例えば、黒色腫、白血病、リンパ腫、骨髄腫、細胞腫、転移性細胞腫、肉腫、腺腫、神経系癌又は尿生殖器癌、例えば、黒色腫、骨髄異形成症候群、白血病、膵臓癌、卵巣癌、腹膜癌、非小細胞肺癌、及び乳癌を含む。
【0184】
配列番号:1の野生型MEK1と比較して、121位のアミノ酸における置換を有する変異MEK1タンパク質(好ましくはC121S変異)を標的とする第二世代のMEK1阻害剤は、本明細書中に記載されるように確認することができる。組合せ療法のために有用な例示的なRAF阻害剤は、パン−RFA阻害剤、B−RFAの阻害剤、A−RFAの阻害剤、及びRFA−1の阻害剤を含む。例示的な態様において、組合せ療法のために有用なRAF阻害剤は、PLX4720、PLX4032、BAY43−9006(ソラフェニブ)、ZM336372、RAF265、AAL−881、LBT−613、及びCJS352を含む。例示的なRAF阻害剤は、更にその全ての内容が本明細書中に参考文献として援用される、PCT出願公開WO/2008/028141中に明記されている化合物を含む。例示的なRAF阻害剤は、更にその全ての内容が本明細書中に参考文献として援用される、PCT出願公開WO/2006/024836中に記載されているキナゾリノン誘導体、及びPCT出願公開WO/2008/020204中に記載されているピリジニルキナゾリンアミン誘導体を含む。
【0185】
従って、本発明は、本明細書中に記載される第二世代のMEK1阻害剤及びRAF阻害剤を含んでなる組合せ療法を施行することを含んでなる、患者中の癌を治療する方法を提供する。幾つかの態様において、この方法は、更にMEK1中の一つ又はそれより多い変異の存在又は非存在を検出するために、患者をスクリーニングすることを含んでなる。好ましい態様において、第二世代のMEK1阻害剤及びRAF阻害剤を含んでなる組合せ療法は、一つ又はそれより多いMEK1中の変異が検出されなかった患者のために選択される。このような患者において、組合せ療法は、MEK1耐性変異の出現を好都合に抑制する。本発明は、更に本明細書中に記載される第二世代のMEK1阻害剤及びRAF阻害剤を含んでなる組合せ療法を、患者に施行することを含んでなる、癌を有する患者におけるMEK1耐性変異の出現を抑制する方法を提供する。従って、第二世代のMEK1阻害剤及びRAF阻害剤を含んでなる組合せ療法は、一つ又はそれより多いMEK1耐性変異が検出された患者に施行することができる。このような組合せ療法は、MEK1耐性変異を含有する細胞の増殖を抑制する。幾つかの態様において、この方法は、更に一つ又はそれより多いMEK1における変異の存在又は非存在を検出するために患者をスクリーニングすることを含んでなる。これらの態様において、第二世代のMEK1阻害剤及びRAF阻害剤を含んでなる組合せ療法は、例えば、MEK1耐性変異が検出されなかった患者に、又は例えば、MEK1耐性変異が検出された患者に与えられる。
【0186】
本発明のもう一つの態様において、医薬組成物は、(a)配列番号:1の野生型MEK1と比較して、121位のアミノ酸における置換を有する変異MEK1タンパク質(好ましくはC121S変異)を標的とする第二世代のMEK1阻害剤を、そして更に(b)RAF阻害剤を含んでなることができる。幾つかの態様において、RAF阻害剤は、パン−RFA阻害剤、B−RFAの阻害剤、A−RFAの阻害剤、及びRFA−1の阻害剤であることができる。好ましい態様において、RAF阻害剤は、PLX4720、PLX4032、BAY43−9006(ソラフェニブ)、ZM336372、RAF265、AAL−881、LBT−613、及びCJS352であることができる。特別な態様において、RAF阻害剤は、(a)PLX4720及びPLX4032である。
【0187】
本発明のもう一つの態様は、本明細書中に記載される医薬組成物を投与する方法に関する。従って、本発明は、配列番号:1の野生型MEK1と比較して、121位のアミノ酸における置換を有する変異MEK1タンパク質(好ましくはC121S変異)を標的とする第二世代のMEK1阻害剤を患者に投与し;そしてRAF阻害剤を含んでなる医薬組成物を患者に投与することを含んでなる、癌に対して患者を治療する方法に関する。第二世代のMEK1阻害剤及びRAF阻害剤は、連続して又は同時に患者に投与することができる。連続的投与は、(a)最初に第二世代のMEK1阻害剤を投与し、続いて(b)RAF阻害剤を投与することを含む。別の連続投与は、(a)最初にRAF阻害剤を投与し、続いて(b)第二世代のMEK1阻害剤を投与することを含む。同時投与は、第二世代のMEK1阻害剤及びRAF阻害剤を同時に;又は実質的に同時に投与することを含む。
【0188】
投与が、本明細書中に記載されるような、第一の化合物(例えば、第二世代のMEK1阻害剤)及び第二の化合物(例えば、RAF阻害剤)の別個投与(例えば、連続投与)を含む場合、化合物は、所望の治療効果を有するように時間的に充分に接近して投与される。例えば、所望の治療効果をもたらすそれぞれの投与間の時間は、数分から数時間の範囲であることができ、そして効力、溶解度、生体利用率、血漿半減期及び動態学的特性のようなそれぞれの化合物の特性の基づいて決定することができる。例えば、化合物は、互いに24時間以内に、又は互いに24時間より少ないいずれもの時間内に、いずれもの順序で投与することができる。
【0189】
第二世代のMEK1阻害剤及びRAF阻害剤が連続して投与される場合、これらは、別個に処方され、そしていずれもの順序で提供することができる。然しながら、第二世代のMEK1阻害剤及びRAF阻害剤が同時に投与される場合、これらは、別個に処方されるか、又は同一製剤中に組込まれるかのいずれかであることができる。同一製剤中に組込まれる場合、第二世代のMEK1阻害剤及びRAF阻害剤は、同時に又は異なった時間に患者に放出されるように処方することができる。第二世代のMEK1阻害剤及びRAF阻害剤の両方を含んでなる製剤の放出特性は、以下:
A)第二世代のMEK1阻害剤の放出及び生体利用、それに続くRAF阻害剤の放出及び生体利用;
B)RAF阻害剤の放出及び生体利用、それに続く第二世代のMEK1阻害剤の放出及び生体利用;
C)第二世代のMEK1阻害剤の放出及び生体利用、同時に(又は実質的に同時に)RAF阻害剤の放出及び生体利用;
を含む。
【0190】
もう一つの態様において、本明細書中で提供されるものは、第二世代のMEK1阻害剤及びRAF阻害剤を含んでなる組成物を患者に投与することを含んでなる、それを必要とする患者の癌を治療する方法である。なおもう一つの態様において、本明細書中で提供されるものは、第二世代のMEK1阻害剤及びRAF阻害剤を含んでなる組成物を患者に投与することを含んでなる、それを必要とする患者の癌を治療する方法であり、ここにおいて、癌は、黒色腫、白血病、リンパ腫、骨髄腫、細胞腫、転移性細胞腫、肉腫、腺腫、神経系癌又は尿生殖器癌、例えば、黒色腫、骨髄異形成症候群、白血病、膵臓癌、卵巣癌、腹膜癌、非小細胞肺癌、及び乳癌からなる群から選択される。
【0191】
本明細書中に記載される化合物の組合せ(例えば、第二世代のMEK1阻害剤及びRAF阻害剤)は、抗癌活性の相乗的増加をもたらすか、又はこのような増加が加算的であるかのいずれかであることができる。本明細書中に記載される組成物は、典型的には、組成物中にそれぞれの化合物のより低い投与量を含み、これにより類似の化合物に対して報告されているもののような化合物間の有害な相互作用及び/又は有害な副作用を回避する。更に、それぞれの化合物の通常の量は、組合せで与えられた場合、単独で使用された場合のそれぞれの化合物に対して無反応であるか又は最小に反応性であるかのいずれかである患者において、より大きい効力を提供することができる。例えば、組合せで投与された場合、第二世代のMEK1阻害剤及びRAF阻害剤は、いずれかの化合物が単独で使用された場合より大きい範囲でMEK1耐性対立遺伝子の出現を抑制する。
【0192】
相乗効果は、例えば、Sigmoid−Emax等式(Holford,N.H.G.and Scheiner,L.B.,Clin.Pharmacokinet.6:429−453(1981))、Loewe加算性の等式(Loewe,S.and Muischnek,H.,Arch.Exp.Pathol Pharmacol.114:313−326(1926))及び半有効等式(Chou,T.C.and Talalay,P.,Adv.Enzyme Regul.22:27−55(1984))のような適した方法を使用して計算することができる。上記で言及したそれぞれの等式を、実験データに適用して、対応するグラフを作成して、薬物組合せの効果の評価を援助することができる。上記で言及した等式による対応するグラフは、それぞれ濃度−効果曲線、アイソボログラム曲線及び併用指数(combination index)曲線である。
【0193】
ある態様において、本発明は、本発明の組成物のいずれかの医薬組成物を提供する。関連する態様において、本発明は、本発明の組成物のいずれかの医薬組成物及びこれらの組成物のいずれかの医薬的に受容可能な担体又は賦形剤を提供する。
【0194】
一つの態様において、本発明は、パッケージ化された癌治療法を含む。パッケージ化された治療法は、意図する使用のための本発明の組成物の有効な量を使用するための説明書とパッケージ化された本発明の組成物を含む。他の態様において、本発明は、患者の癌を治療するための医薬の製造のための本発明の組成物のいずれかの使用を提供する。
【0195】
本発明のもう一つの態様において、第二世代のMEK1阻害剤及びRAF阻害剤は、癌のために治療される患者に典型的に投与される他の医薬的薬剤と連続的に(いずれもの順序で)又は同時に投与することができる。このような他の医薬的薬剤は、制約されるものではないが、制吐剤、食欲を増加する薬剤、他の細胞毒性又は化学療法剤、及び疼痛を開放する薬剤を含む。
【0196】
XII.キット
各種のキットを、本発明の一部として構築することができる。キットは、一つ又はそれより多いRAF阻害剤及び/又はMEK阻害剤を使用する療法に対する耐性を発生する危険度に対して、特定の患者を評価するためにMEK1中の変異を分析するための構成要素を含有し、そして従って、臨床医が、患者のために別の治療が必要か否かを決定することを可能にすることができる。このようなキットは、RAF阻害剤及び/又はMEK阻害剤に対する耐性に関する、関連する発現型の顕在化に相関する変異を評価するためのプライマーのセットのような、変異を評価することを可能にする試薬を含有することができる。例えば、野生型ヒトMEK1をコードする配列番号:1の全て又は一部と相補的であるか或いはそれと同一であるプライマー(又はプライマーの対)が、キットの一部であることができることは意図されている。好ましい態様において、プライマーは、C121S変異のような、121位のアミノ酸における変異を含有する変異MEK1タンパク質をコードする核酸分子を、特異的に検出、又は増幅するために使用することができる。他の態様において、キットは、MEK1タンパク質をコードするヌクレオチド配列を増幅するために、配列番号:1の全て又は一部と相補的であるか、或いはそれと同一であるプライマーを使用するための説明書を含有する。
【0197】
他の態様において、キットは、耐性変異を含有する変異MEK1タンパク質を特異的に認識する抗体のような、MEK1タンパク質を含んでなる変異を検出するための組成物を含んでなる。例示的なタンパク質は、C121S変異のような、121位のアミノ酸における変異を含有する変異MEK1タンパク質を含む。
【0198】
上記で考察した特定の方法によってMEK1変異を分析するために必要な全ての必須の物質及び試薬も、更にキット中に一緒に集めることができる。キットの構成要素が一つ又はそれより多い液体溶液中で提供される場合、この液体溶液は、好ましくは水溶液であり、滅菌水溶液が特に好ましい。
【0199】
本発明は、更にC121S変異のような、配列番号:2の野生型MEK1と比較して、121位のアミノ酸における変異を有する変異MEK1タンパク質を標的とする第二世代のMEK1阻害剤を含んでなる組成物(例えば、医薬組成物)を含んでなるキットを提供する。このようなキットは、本明細書中に明記した方法おいて、例えば、患者の癌を治療するために使用することができる。従って、キットは、更に癌の治療のための組成物の使用を記載した説明書を含有することができる。
【0200】
本発明は、同様にC121S変異のような、配列番号:2の野生型MEK1と比較して、121位のアミノ酸における変異を有する変異MEK1タンパク質を標的とする第二世代のMEK1阻害剤、及びRAF阻害剤を含む組合せ療法において使用するために適した組成物を含んでなるキットを提供する。このようなキットは、例えば、第二世代のMEK1阻害剤を含んでなる組成物及びRAF阻害剤を含んでなる組成物を含むことができる。このようなキットは、別の方法として、第二世代のMEK1阻害剤及びRAF阻害剤の両方を含んでなる組成物を含むことができる。キットは、更に癌を有する患者の癌の治療、及び/又はMEK1耐性対立遺伝子の出現を抑制するための組成物の使用を記載した説明書を含有することができる。説明書は、RAF阻害剤の投与と同時の、その前の、又はその後の第二世代のMEK1阻害剤を含んでなる組成物の投与を記載することができる。
【0201】
キットの構成要素は、更に乾燥又は凍結乾燥された形態で提供することができる。試薬又は構成要素が乾燥した形態として提供される場合、再構成は、一般的に適した溶媒の添加による。更にこの溶媒を、もう一つの容器手段で提供することができることも意図されている。
【0202】
本発明のキットは、更に、典型的には、例えば、所望のバイアルが保持される射出又は中空成形のプラスチック容器のような、バイアルを商業的販売のための密接した拘束中に含有するための手段を含むものである。容器の数及び種類に関係なく、本発明のキットは、更に試料収集及び評価を補助するための器具を含んでなるか、又はそれらと共にパッケージ化されることができる。このような器具は、例えば、吸入機、シリンジ、ピペット、鉗子、計量スプーン、点眼器、又はいずれものこのような医学的に許可された供給ベヒクルであることができる。
【0203】
本発明のキットは、更に特定の変異が患者中で確認された場合の、示唆される別の療法を概略記載した説明用紙を含むことができる。例えば、本発明のキットに含まれる説明用紙は、変異MEK1タンパク質が確認されている疾患、例えば癌を有する患者が、第一世代のMEK1阻害剤及び/又はRAF阻害剤による治療を中止し、第一世代のMEK阻害剤及び/又はRAF阻害剤による治療中の再発に対してモニターし、第一世代のMEK1阻害剤及び/又はRAF阻害剤による治療を高い投与量で継続し、或いは第二世代のMEK阻害剤による治療を、単独で又はRAF阻害剤と組合せて開始することを推奨することができる。本発明のキットに含まれる説明用紙は、変異MEK1タンパク質が検出可能ではなかった疾患を有する患者が、第一世代のMEK1阻害剤及び/又はRAF阻害剤による治療を、標準的な投与量で継続することを同様に推奨することができる。例示的な態様において、第一世代のMEK阻害剤は、CI−1040、AZD6244、PD318088、PD98059、PD334581、RDEA119、化合物A、又は化合物Bである。
【0204】
本発明は、以下の実施例によって更に例示されるが、これらは制約的であると解釈されるべきではない。本出願を通して引用された全ての参考文献、特許及び公開された特許出願の内容は、本明細書中に参考文献として援用される。
【実施例】
【0205】
実施例1:MEK1 C121S変異の活性化の確認
この実施例において、BRAF阻害剤のPLX4032に対する耐性を発生した転移性黒色腫を持つ患者からのDNA試料を使用して、BRAF及びMEK1阻害剤の両方に対する耐性を与えるMEK1変異の活性化を確認した。更に具体的には、大規模並行配列決定を、患者からの三つの異なったDNA試料:(i)PLX4032に対して感受性である腫瘍、(ii)PLX4032に対して耐性である腫瘍、及び(iii)正常な皮膚の比較ゲノム分析を行うために使用し、これによって、MEK1変異の活性化の確認を可能にした。
【0206】
患者は、2009年2月に転移性黒色腫を持つと診断された38歳の男性であった。彼は、最初、彼の右脇の塊を示し、そしてステージングPET−CTは、右広背筋の大きい病変、並びに肺、肝臓、骨及び幾つかの皮下部位の多数の異化昂進病巣を示した。広背筋の塊の生検は、悪性黒色腫を示した。彼を、幾つかの治療計画で治療し、最小の臨床反応が伴った。2009年10月までに、患者は多くの皮下の転移性沈積を発生した。この時点のBRAF癌遺伝子の遺伝子型は、V600E変異を示し、そして彼は、特異的BRAF阻害剤PLX4032の臨床治験に登録された。患者は、治療に対して完全な反応を示し、PLX4032の開始の2週間内に目に見える部分的反応を伴い、そして治療の15週後、2010年1月までに、全ての眼に見える腫瘍小結節の殆ど完全な軽減を伴った。
【0207】
PLX4032による治療の4ヶ月後の2010年2月下旬に、患者は、彼の身体の全体に新しい皮下の小結節を急速に発生し、そしてPLX4032を停止した。この時点で、彼は、書面のインフォームドコンセントを与えられ、そして胸部の再発性皮下小結節の経皮的コア生検を得た。この腫瘍におけるPLX4032に対する耐性の可能性のある機構を決定するために、この試料からの138の癌遺伝子からのエクソンを、大規模並行配列決定を使用して配列決定した。患者は、彼の疾病の急速な進行を持ち続け、そして2010年3月にホスピスで死亡した。
【0208】
138の癌遺伝子からの全てのエクソンを、正常な皮膚及びPLX4032耐性腫瘍の両方から単離されたDNAから配列決定した。Illumina配列ライブラリーを患者の正常な皮膚及び耐性腫瘍検体から抽出したゲノムのDNAから作成した。興味のあるゲノム領域の標的化ハイブリッド捕獲を、先に記載されているように行った(Gnirke,A.et al.(2009)Nature Biotechnol.27:182−189)。簡単には、癌中で体細胞のゲノム変化を受けていることが知られた138の遺伝子のコード配列に対応する概略7000のビオチニル化されたRNAベイトを設計し、そして合成した。ゲノムDNAのライブラリーを、ビオチニル化RNAベイトによる溶液相ハイブリッド捕獲に、続いて大規模並行配列決定にかけた。試料の両端からの36の塩基を、Illumina GAIIxを使用して配列決定した。配列データをほどいて、全ての高品位読取り値を対応する腫瘍試料と合致させ、そして塩基変異、挿入、欠損、及びコピー数の変更を呼び出した。
【0209】
全部で14の体細胞塩基置換が見られた。これらの中で、9個がアミノ酸変化(非同義)を起こし、これらの全てはミスセンス変異であった。5個のサイレント(同義)置換があった。挿入、欠損、又は有意なコピー数の変化はなかった。以前に見られたBRAF V600E変異が再び検出された。更に、ERBB4、FLT1、MEK1、PTPRD、RET、RUNX1T1、及びTERTにおけるアミノ酸変化が見られた。これらの9個のミスセンス変異を検証するために、腫瘍試料中に見られるそれぞれの体細胞変異に対する質量スペクトル的遺伝子型アッセイを設計した。全ての9個のミスセンス変異は、質量スペクトル的遺伝子型決定によって確認された。特に大規模並行配列決定によって検出された変異を、当技術において既知の方法によって多重塩基hME伸長化学反応を使用して試験した。配列決定結果を更に確認するために、腫瘍のDNA及び正常なDNAを、概略2000の遺伝子からのエクソンを標的とする大きい独立のセットを使用して更に配列決定し、そして全ての9個の変異が再び見られた。
【0210】
次に、これらの変異のいずれかが、患者がPLX4032を開始した後発生した新規な変異であるか否かを決定するために、これらの変異の存在に対して元の前PLX4032検体試料を確認するために、質量スペクトル的遺伝子型アッセイを使用した。PLX4032耐性腫瘍中で検出された9個のミスセンス変異の二つは、元のPLX4032感受性腫瘍中で検出されず、これらが新規な体細胞変異であることを示唆した。一番目は、14%の変異対立遺伝子頻度を持つ、BRAFから直ぐ下流のキナーゼであるMEK1中のミスセンス変異(C121S)であった。他は、28%の変異対立遺伝子頻度を持つRET中のミスセンス変異であった。
【0211】
MEK1のC−ヘリックスに近位の変異が、内因性のMEK1キナーゼ活性を上方制御することによって、PLX4032によるBRAF阻害に対する耐性を与えることができることは、以前に示されている(Emery,C.M.et al.,(2009)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 106:20411−20416)。従って、更にこれもC−ヘリックスの近位に位置するMEK1のC121変異が、患者の再発性腫瘍におけるPLX4032に対する耐性を起こすことができたことは、もっともらしく見受けられる。これを試験するために、C121Sで、野生型MEK1の配列に変異を導入し、そして変異cDNAを、BRAF V600E変異を宿すA375黒色腫細胞系に発現させた。野生型MEK1配列にC1212S変異を導入するために、MEK1部位特異的変異誘発を、以前に記載されているように行った(Emery,C.M.et al.,(2009)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 106:20411−20416)。簡単には、MEK1のcDNAをPCRによって増幅し、そして部位特異的変異誘発を、製造業者の説明書によりQuick−Change II(Stratagene)を使用して行った。対照として、野生型MEK1配列又はMEK1−DDと呼ばれるMEK1の相補的に活性な変種を、A375黒色腫細胞に発現させた。
【0212】
阻害剤に対するA375黒色腫細胞の反応性に対するMEK1 C121S変異の影響を試験するために、A375細胞(非形質移入細胞、或いは野生型MEK1、C121S変異MEK1、又は相補的に活性な変種MEK1−DDのいずれかで形質移入された細胞のいずれか)を、増加する量のPLX4032と密接に関係する化合物であるBRAF阻害剤PLX4720(Symansisから購入)、又はMEK1阻害剤AZD6244(Seleck Chemical Co.,Ltd.から購入)のいずれかで処理した。結果を、図1A(PLX4720)及び1B(AZD6244)のグラフに示す。
【0213】
図1Aに示すように、MEK1 C121S変異を発現する細胞は、PLX4720に対して強力に耐性であり、野生型A375細胞又は野生型MEK1を発現するA375細胞(MEK−WT)より100倍大きいGI−50値を伴う。MEK1の相補的に活性な変種を発現するA375細胞(MEK−DD)は、PLX4720に対して、MEK1 C121Sと類似の耐性を示した。同様に、図1Bに示すように、MEK1 C121S変異を発現している細胞は、AZD6244に対して強力に耐性であり、野生型A375細胞、MEK−WTを発現しているA375細胞、及びMEK−DDを発現しているA375細胞より殆ど1000倍大きいGI−50値を伴う。
【0214】
生物学的証拠は、この耐性が、実にMEK1 C121S変異の増加したキナーゼ活性のためであることを示唆している。これを試験するため、免疫ブロット研究を、標準的方法を使用して行った。簡単には、A375黒色腫細胞を、プロテアーゼ阻害剤(Roche)、NaF及びNaVO(それぞれ1mM)を含有するTNN緩衝液で溶解した。溶菌液を定量(Bradfordアッセイ)し、変性(95℃)し、そしてSDSゲル電気泳動によって溶解した。タンパク質をニトロセルロース膜に移し、そしてp−ERK1/2、p−MEK1/2(Ser217/221)、MEK1/2及びα−チューブリンを認識する一次抗体(Cell Signaling Technology;1:1000希釈)で探索した。適当な二次抗体(抗ウサギ又は抗マウスIgG、HRP−結合;1:1000希釈)(Cell Signaling Technology)とのインキュベーション後、タンパク質を化学発光(Pierce)を使用して検出した。結果を図2A及び2Bに要約し、ここにおいて、図2Aは、免疫ブロットの結果を示し、そして図2Bは、リン酸化されたERK1(pERK)の相対的パーセントを定量化したグラフである。図2A及び2Bに示すように、MEK1 C121Sを発現しているA375細胞は、MEK−WTを発現しているA375と比較してリン酸化されたERK1/2の高いレベルを有していた。相補的に活性なMEK1変種のMEK1−DDを発現しているA375細胞は、リン酸化されたERK1/2のなお更に高いレベルを示した。
【0215】
In vitroのキナーゼアッセイも、更にMEK1−WTと比較して、MEK1 C121Sの増加したキナーゼ活性を示した。70%集密度の293T細胞を、MEK−WT、MEK−DD、又はMEKのC121Sを含有する15μgのpc−DNA−DEST40で形質移入した。感染の48時間後、溶菌液を作成し、そして40ulのコバルトビーズによるプルダウンを、1mgの全細胞抽出物に対して4℃で30分間行った。プルダウン後、in vitroのキナーゼアッセイを、以前に記載されているように行った(Emery,C.M.et al.,(2009)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 106:20411−20416)。
【0216】
要約として、選択的BRAF阻害剤PLX4032に対する耐性を発生しているBRAF−変異転移性黒色腫を持つ患者において、新規に生じたMEK1中の新規な活性化変異が確認された。患者は、最初PLX4032に高度に反応性であったが、しかし劇的な4ヶ月の反応後、彼は、疾病の急速な進行を発生した。大規模並行配列決定によるPLX4032−耐性腫瘍の検体の分析は、治療前のPLX4032−感受性検体試料では検出されなかったMEK1における変異(C121S)を明らかにした。この変異は、増加したキナーゼ活性をもたらし、そして選択的BRAF阻害剤、並びにMEK1阻害剤に対する耐性をin vitroで与えた。まとめれば、これは、それによってこの患者の腫瘍がBRAF阻害に対して耐性となる機構を示唆している。
【0217】
MEK1阻害剤のAZD6244に対する耐性を発生した転移性黒色腫を持つ患者において生じたMEK1変異(P124L)は、以前に記載されている(Emery et al.(2009)上掲)。MEK1 C121Sと同様に、MEK1のP124L変異は、C−ヘリックスの近位であり、そしてMEK1阻害剤のAZD6244、並びにBRAF阻害剤のPLX4720の両方に対する耐性を与える。然しながら、注目すべき差は、ここで見られるMEK1 C121S変異は、直接のMEK1阻害よりもBRAF阻害の設定において生じる。
【0218】
患者におけるキナーゼ阻害を標的とする後天性の耐性の幾つかの機構は記載されており、その大部分は、二つの分類にグループ化することができる。一番目の分類において、標的キナーゼにおける二次的ゲノム変化は、各種の機構によって変異キナーゼへの薬物の接近を防止し、一方癌遺伝子的触媒活性は維持される。これらの変化は、キナーゼ阻害剤に対する後天性耐性の最も普通の機構の中にあり、そしてBCR−ABL、EGFR、及びFLT3中に記載されている。AZD6244によるMEK1阻害に反応するMEK1のP124Lの発生は、上掲のEmery et al.(2009)に記載されているように、この種の耐性機構の一例である。注意すべきは、本出願人等は、PLX4032耐性試料中のBRAFのいずれもの二次変異を検出しなかった。
【0219】
二番目の分類は、阻害の標的以外の遺伝子中の標的シグナル伝達経路中のゲノム変化を含む。これらの変化は、標的阻害のために失われたシグナルを補償し、これによって標的キナーゼの阻害を“バイパスする”。患者における最良の記載されたこの例は、MET癌遺伝子の増幅であり、これは、EGFR阻害の存在中のPI3K/AKT及びERKシグナル伝達の両方の持続的活性化に導く、ゲフィチニブのMET増幅に対する後天性耐性を伴うEGFR変異肺癌の20%で観察されている。IGF−1Rβ/IRS−1シグナル伝達及びMETリガンドHGFによるシグナル伝達の活性化を含む他の類似の種類の機構も、更に標的キナーゼ阻害に対する後天性耐性を伴う細胞系中に記載されている。
【0220】
BRAF阻害に反応するMEK1変異の発生は、腫瘍が、標的キナーゼの下流の活性化変異を発生する後天性耐性機構の患者において最初に報告された例である。特に、MEK1 C121Sは、BRAF阻害剤による治療が、BRAF阻害剤、並びにMEK1阻害剤の両方に対する耐性を与える遺伝子変化の獲得に導くため、複雑さの更なる層を加える。これは、PLX4032又は他のBRAF阻害剤で進行する患者におけるアロステリックなMEK1阻害剤を考慮する場合、臨床的な有意性を有する。実際、組合せたPLX4032及びAZD6244の組合せ治験が現在進行中である;MEKのC121S変異又は類似の変異の発生が、両方の治療に対する患者を同時耐性にすることができる。従って、MEK1 C121Sによる耐性を克服することは、MEK1の下流の阻害又はMEK1を阻害する別の機構を必要とする可能性がある。
【0221】
標的キナーゼの変異の野生型への復帰変異は、標的化キナーゼ阻害剤で治療された患者において記載されておらず、癌が、元の癌遺伝子変異に依存したままであることを示唆している。これと一致して、本出願人等は、V600E変異の継続した存在を検出した。然しながら、BRAF変異は、37%の対立遺伝子頻度で検出され、これは、予測された50%より低い。これが、周囲の間質からの正常なDNAによる“混入”よる可能性があるが、本出願人等は、腫瘍細胞のサブセットがBRAF V600E変異を喪失する可能性を除外することができない。一つの興味深い可能性は、MEK1 C121S変異(これは14%の対立遺伝子頻度で存在する)を持つ腫瘍細胞が、MAPK経路を活性化するために、BRAF V600E変異をもはや必要としないことである。この考えの支持として、本出願人等は、MEK1のPI24Lを伴う転移性黒色腫を持つAZD6422耐性患者から誘導された短期培養物中に、BRAF野生型への復帰変異を観察している。然しながら、BRAFが、少なくとも癌細胞の幾つかのサブセットにおいて変異されたままであるという事実は、好ましい治療方法が、BRAF阻害剤及び耐性変異を克服するための第2の標的化療法剤であることを示している。
【0222】
等価物
本発明は、ある実施例及び態様のみを参照して本明細書中に記載されてきた。本発明の全ての可能性のある実施例及び態様を、網羅的に記載する努力は払われていない。実際、各種の付加、削除、改変、及び他の変更を、以下の特許請求の範囲に記載される本発明の意図する思想及び範囲から逸脱することなく、先に記載した実施例及び態様に対して行うことができることを、当業者は認識するものである。全てのこのような付加、削除、改変及び他の変更が、以下の特許請求の範囲の範囲内であることは意図されている。
【0223】
配列表のまとめ
配列番号:1−野生型ヒトMEK1核酸配列(NM_002755;gi:169790828)[開始コドン及び121位のアミノ酸をコードするコドンは、太字で、そして下線されている]
【0224】
【化1】
【0225】
配列番号:2−野生型ヒトMEK1アミノ酸配列(NP_002746;gi:5579478)[121位のアミノ酸におけるシステインは、太線で、そして下線されている]
【0226】
【化2】
【0227】
配列番号:3−変異MEK1 C121Sの核酸配列
[開始コドン及び121位のアミノ酸をコードするコドンは、太字で、そして下線されている;n=a,c,g又はt]
【0228】
【化3】
【0229】
配列番号:4−変異MEK1 C121Sのアミノ酸配列
[121位のアミノ酸におけるセリンは、太線で、そして下線されている]
【0230】
【化4】
図1
図2
図3
図4
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]