【文献】
SUSANNE V HERING,A LAMINAR-FLOW,WATER-BASED CONDENSATION PARTICLE COUNTER (WCPC),AEROSOL SCIENCE AND TECHNOLOGY,2005年 7月 1日,V39 N7,P659-672
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記凝縮装置の前記第1の部分および前記第2の部分が空間を画定し、前記凝縮装置に空気を導くステップが、前記空間内に体積空気流量を生成し、前記第1の部分の前記長さの前記体積空気流量に対する比が0.3s/cm2未満である請求項1に記載の方法。
前記凝縮装置の前記第1および第2の部分が、前記温度をもたらす第1および第2の平行板を含む空間を形成し、前記平行板の間隔が4mm以下である請求項1に記載の方法。
前記凝縮装置の前にあるプレコンディショナ内に前記空気流を導くステップであって、前記プレコンディショナが、予め選択された値T0に等しい温度で前記空気流を供給し、T0を周囲空気温度より低くすること、または、高くすることが可能である請求項1に記載の方法。
前記第2の部分がある長さを有し、第2の部分を制御する前記ステップが、前記温度T2を、前記長さ方向に沿って概ね一定に制御するステップを含む請求項1に記載の方法。
前記第2の部分がある長さを有し、第2の部分を制御する前記ステップが、前記長さ方向に沿って温度T1からT2までの勾配をもつように前記温度を制御するステップを含む請求項1に記載の方法。
前記凝縮装置の前記第1の部分および前記第2の部分が空間を画定し、前記凝縮装置に空気を導くステップが、前記空間内に体積空気流量を生成し、前記第1の部分の長さの前記体積空気流量に対する比が0.3s/cm2未満である請求項12に記載の方法。
前記凝縮装置の前記第1および第2の部分が、前記温度をもたらす第1および第2の平行板を含む空間を形成し、前記平行板の間隔が4mm以下である請求項14に記載の方法。
前記導くステップが、温度T0の前記空気流を、T0よりも高い温度T3の飽和空気流で取り囲むステップであって、前記各流れが層状に結合されるステップを含む請求項17に記載の方法。
前記凝縮装置の前記第1の部分および前記第2の部分が空間を画定し、前記凝縮装置に空気を導くステップが、前記空間内に体積空気流量を生成し、前記第1の部分の長さの前記体積空気流量に対する比が0.3s/cm2未満である請求項19に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0035】
層流水分凝縮技術を使用して、空気または他のガス状媒体中に浮遊している超微粒子に水を凝縮させ、凝縮によって超微粒子を成長させて、直径が数マイクロメートルの液滴を形成する。次いで、様々な技法を使用して、このサイズの粒子を分析することができる。
【0036】
米国特許第6,712,881号明細書に記載された層流水分凝縮システムは、本明細書において「差動拡散」と称される。一般にこのシステムは、プレコンディショナと、それに続く凝縮装置からなり、これらは両方とも、
図1aに示すように濡れた円筒壁を有する。これらはチューブから構成されてもよく、このチューブを通って、ほとんど層状に空気流が通過する。あるいは、これらの壁は平行板でもよい。いずれの形状でも、凝縮装置の壁がプレコンディショナの壁よりも暖かくなるよう、壁の温度が制御される。既知の教示によれば、熱電装置を使用してプレコンディショナの壁の温度を調節してもよく、またヒータを使用して凝縮装置の壁の温度を調節してもよい。あるいは、ヒートポンプとして利用される熱電装置を使用して、プレコンディショナを冷却し、凝縮装置を加熱してもよい。冷たい層流が、冷たい方のプレコンディショナから、暖かく濡れた壁の凝縮装置を通過するとき、水蒸気と熱の両方が、壁から流れの中に拡散する。その高い拡散率によって、水の移動はより急速であり、蒸気の過飽和領域を生成し、中心線に沿って最大となる。
【0037】
米国特許第6,712,881号明細書に記載の差動拡散法の、商業的に使用された第1の実施形態では、長さが230mm、内径が9.5mm、空気流量が1L/分の単一チューブを使用した(Hering,SV、Stolzenburg,MR、Quant,FR、Oberreit,DR、Keady,PB著の「A laminar−flow,water−based condensation particle counter(WCPC)」、Aerosol Science and Technology、39、659〜672頁、2005年)。チューブ全体は、濡れたウィックが連なったものであった。前半部は、約20℃の温度に維持され、プレコンディショナとしての働きをした。後半部は、60℃に加熱され、凝縮装置としての働きをした。
【0038】
米国特許第7,736,421号明細書に記載された層流水分凝縮法は、本明細書において「拡散混合」と称される。
図1bに示すように、この手法は、プレコンディショナと、それに続く凝縮装置を用いて実施することができ、プレコンディショナを出て行くサンプルの空気流が、凝縮装置に入る前に、暖かく、飽和または部分的に過飽和した空気のシースによって取り囲まれる。凝縮装置の壁は濡れており、シース・フローの露点に一致するように加熱される。2つの流れが層状に結合されるので、水蒸気および熱が、シース・フローからより冷たい粒子の流れへと拡散し、粒子の流れの中に水蒸気の過飽和領域を生成する。
【0039】
この技術独特の態様では、凝縮装置の設計が進歩している。凝縮装置は、水蒸気過飽和を生成して、サブマイクロメートルからナノメートルの範囲のサイズの粒子上に凝縮成長を生じさせ、凝縮によってこれらの粒子を成長させて、直径が数マイクロメートルの液滴を形成する。蒸気過飽和領域の生成は、元々、熱と水蒸気の移動の相対速度に依存する非平衡プロセスである。
【0040】
本明細書において開示された技術の第1の態様では、凝縮装置において寸法をより狭くすること、すなわちより小径のチューブまたはより間隔の狭い平行板を使用することにより、広範囲の粒子濃度にわたって性能を改善することができる。具体的には、第1のシステム(
図2a)のチューブの直径を9.5mmから4.6mmに縮小することにより、凝縮によって成長を開始する最小サイズの粒子は、サンプリングされた粒子の個数濃度による影響を受けにくい。同様に、ギャップが3mmの平行板を使用することにより、広範囲の濃度にわたってより均一な性能が実現する。チューブの直径が2mm〜5mmの範囲にあり、平行板の間隔が2mm〜5mmの範囲にあると、この技術では良好に動作することが分かってきた。この狭い凝縮装置を
図2aに示す。この凝縮装置は、
図1aの差動拡散手法、または
図1bの拡散混合手法のいずれでも使用することができる。この第1の態様では、従来の特許で開示されているのと同じ凝縮装置の温度プロファイルを使用する。この温度プロファイルが
図3aに示してあり、これは、凝縮装置を通る流れの方向における凝縮装置の長さ方向に沿った凝縮装置の温度のグラフである。プレコンディショナからの遷移をカバーする入口での短い勾配は別にして、凝縮装置の壁の温度は均一であり、入ってくる流れの温度よりも暖かい。
【0041】
提示された技術の第2の態様では、元の単一温度区域の凝縮装置を、短く暖かい「イニシエータ」部と、それに続く長く冷たい「平衡器」部から構成され、濡れた壁が全体を通して存在する2段凝縮装置に置き換える。これが
図2bに示してある。イニシエータと平衡器に必要となる組合せ長さは、元の単一温度区域凝縮装置に必要となる長さ、すなわち1L/分の流れに対して約12cm、とほぼ同じである。
【0042】
この技術は、「イニシエータ−平衡器」凝縮装置と呼ばれる。この温度プロファイルが
図3bに示してあり、プレコンディショナの温度から、比較的に短く暖かい区間へと急速に上昇し、それに続いて長く冷たい区間が存在する様子を示している。図に示すように、この性能は、元の単一温度区域凝縮装置の性能と同様であり、出て行く流れの温度および露点を下げることが可能になるという利点がある。
【0043】
この技術の第3の態様では、前述の相対的に冷たく濡れた壁の平衡器を、暖かく乾いた壁の「蒸発器」に置き換える。この技術が、
図2cに示してある。蒸発器の壁の温度は、イニシエータの温度と同じか、またはわずかに高くてもよい。一実施形態では、イニシエータの温度は約50℃であり、蒸発器の温度は約50℃である。イニシエータは、濡れた壁を維持するためのウィックまたは他の手段を有するが、蒸発器にはウィックはない。蒸発器の温度はイニシエータを出て行く流れの露点と同じか、またはそれよりも高いので、これらの壁は乾燥したままである。イニシエータ−蒸発器凝縮装置における温度プロファイルが
図3cに示してあり、蒸発器の壁が乾燥していることを点線で示している。この手法は、最大液滴サイズを制限し、形成された液滴を再蒸発させるように構成することができる。この技術態様には、周りを囲む蒸気中の液滴と材料の間の短い相互作用が望まれる適用例がある。
【0044】
この技術の第4の態様では、前述したのと同じく、短く暖かい濡れた壁のイニシエータと、それに続いて、長さ方向に沿って温度勾配が直線的な、長く濡れた壁の区間を使用する。壁は、全体を通して濡れている。これが
図2dに示してある。対応する温度プロファイルが、
図3dに示してある。技術のこの態様では、それぞれの流れの軌跡に沿った均一な飽和状態の長い空間広がりを実現することができる。これは、その疎水性によって容易には活性化されず、活性化するには過飽和の領域内においてより長い時間を要する種を収容するように設計される。
【0045】
この技術の第2、第3および第4の態様は、第1の態様の下で開発した凝縮装置のサイズ処理と組み合わせて、ある範囲の粒子濃度にわたって均一な性能を実現することができる。これらの凝縮装置の設計は、暖かく濡れた壁の凝縮装置に流れが入る差動拡散手法でも、暖かい飽和シース・フローがエアロゾルの流れの周りに導かれる拡散混合手法でも使用することができる。これらの態様の全ては、チューブもしくは平行板、またはわずかに収束しているチューブもしくは平行板を含め、複数の形状に適用可能である。
【0046】
これら構成のそれぞれの性能は、液滴成長の詳細を計算に入れる数値モデリングを使用して理解することができる。層流凝縮システムのこの数値モデリングは、液滴形成に関連する凝縮放熱および蒸気減少を含み、これにより、壁の温度が流れの長さ方向に沿って変化することが可能になり、円筒チューブまたは平行板の形状のいずれにも対応する。
【0047】
この数値モデルによれば、温度(T)および水蒸気濃度(c)は、定常対流拡散方程式の解である。
【数1】
【0048】
上式で、αは空気の熱拡散率であり、Dは空気中の水蒸気の分子拡散率である。円筒形の対称的なシステムでは、速度vが単純にz方向であり、完全に開いた放物線状の流れのプロファイルであると仮定すると、温度の式は以下のようになる。
【数2】
【0049】
上式で、rおよびzは、それぞれ径方向および軸方向の座標であり、R
0はチューブの半径であり、Uは平均流速である。平行板の形状では、式は以下のようになる。
【数3】
【0050】
上式で、zは流れの方向にあり、xは中心線からの垂直距離であり、δ=2X
0は板間の離間距離である。第3の寸法である板の全体幅は無限であると仮定する。平均温度で評価される流体特性は、この領域にわたって定数として扱う。
【0051】
水蒸気濃度のプロファイルcは、αを分子拡散率Dで置き換え、Tを濃度cで置き換えた類似の式によって決定される。飽和比Sは、水蒸気の分圧と局所温度に関連する平衡水蒸気圧との比として定義される。
【0052】
濡れた表面では、(チューブにおける)境界条件が以下のように示される。
【数4】
【0053】
上式で、T
wickは、濡れた表面の温度プロファイル(たとえば、冷たいところから熱いところへの遷移)であり、c
sat(T
wick)は、T
wick(100%RH)の露点に対応する水蒸気濃度である。
【0054】
凝縮成長の開始に重要な量は、ケルビンの等価直径である。これは、飽和比、温度プロファイル、及び凝縮蒸気の特性から、各ポイントで計算される。ケルビンの等価直径は、以下のように定義される。
【数5】
【0055】
上式で、M
w、ρ、およびσ
sは、分子の重量、液体比重、および水の表面張力であり、R
gは一般気体定数であり、Tは絶対温度であり、Sは水蒸気圧飽和比である。ケルビンの等価直径は、その平衡蒸気圧が飽和比Sで与えられる水滴の直径に対応する。粒子については、活性化直径は、粒子の化学作用にも依存する。凝縮蒸気によって濡れていない材料からなる粒子については、活性化直径はd
kよりも大きくなる。可溶性粒子については、粒子表面上の凝縮物への溶解によって平衡蒸気圧が低下し、粒子成長に必要となる臨界直径はより小さくなるが、これは、ケーラーの式にあるラウール項によって説明される。
【0056】
温度および蒸気濃度のフィールドが計算された後に、成長速度をその軌跡に沿って数値積分することによって液滴成長が評価される。液滴のサイズおよび環境は、液滴が凝縮装置を通って運ばれるときに変化するが、その時間スケールは、液滴がその周りと平衡を保つのに必要となる時間と比較して長い。したがって、液滴の成長速度を、その軌跡に沿ったあるポイントで計算すると、その特性は定常状態にあり、液滴は無限の空間に単独で存在するという近似が使用される。
【0057】
定常状態を仮定すると、液滴の半径の変化率が次式で与えられる。
【数6】
【0058】
上式で、c
∞は、液滴から遠く離れた位置での水蒸気濃度(単に、対流拡散方程式からの量c)であり、c
sは表面での濃度である。因子(c
∞−c
s)/αは、球面対称の拡散プロセスの結果として生じる濃度勾配である。c
sの値は、液滴表面での温度T
sおよび以下のケルビンの関係式を考慮に入れて、水の飽和蒸気圧によって決定される。
【数7】
【0059】
Φ(a)の項は、自由分子と連続体のレジームの間に連続性をもたらすための修正項である。1に等しい適応係数を用いて、Fuchs−Sutuginの修正法が使用される。
【数8】
【0060】
上式で、クヌーセン数Kn=λ/αは、平均自由行程と粒子半径との比である。平均自由行程は、
【数9】
で与えられ、ここで
【数10】
は平均分子速度である。
【0061】
液滴温度は、同じ準定常状態の手法で取り扱う。温度勾配の項を介して、熱が加えられ、または失われる。さらに、濃度勾配は成長を意味するが、凝縮熱を与える。
【数11】
【0062】
上式で、k
vは気相の熱伝導率であり、H
vapは水の蒸発熱であり、T
∞は液滴から遠く離れた位置での温度であり、すなわち対流拡散方程式からのTである。流体特性が一定であり、液滴内での温度平衡が急速であると仮定すると、液滴の温度およびサイズについてのこれらの関係は、流線に沿って適時小さな手順を踏むことによって数値的に解かれる。
【0063】
最後に、高い個数濃度の効果を反復して取り扱う。液滴成長が計算された後に、蒸気と凝縮熱の減少が対流拡散方程式に加えられる。成長と拡散の計算を繰り返して、自己整合的な結果を見つける。
【0064】
我々の数値解法は、拡散方程式の統合のためのクランク・ニコルソン手法を使用して開発された。このモデルは、低粒子濃度の極限で、かつ一定の壁温度において、StolzenburgおよびMcMurryの分析的な級数解に対して検証された(M.StolzenburgおよびP.McMurry著「An ultrafine conedensation nucleus counter」、Aerosol Science and Technology、14、48〜65頁、1991年)。
【0065】
上記モデリングを使用すると、様々な層流水分凝縮システム構成において、広範囲のサンプリングされた粒子濃度にわたって一貫した飽和プロファイルを生成するための設計基準を提供することができる。粒子濃度のある範囲において同様の飽和プロファイルを用いることにより、最も小さい検出可能な粒子サイズでのシフトが最小限に抑えられ、液滴成長がより着実なものになる。以下に示すように、まず単段凝縮装置を考察するが、開発された各概念は、ここで紹介される複数段の凝縮装置にも適用される。
【0066】
この技術の第1の態様が
図4に示してある。
図3aに示したように壁の温度が一定とされている
図2aの単段凝縮装置内の計算された飽和プロファイルが
図4aに示してある。流れの方向は左から右であり、中心線は底部軸に沿っている。径座標rは、チューブの半径R
0で正規化されている。流れは対称なので、中心線(r/R
0=0)から縁部(r/R
0=1)まで、プロファイルの半分だけをプロットしてある。流れの方向に沿った依存性を有する軸座標は、体積流量によって除算されている。これらの計算は、直径が2R
0の円筒形状についてのものであり、流れは20℃および100%RHで凝縮装置に入り、凝縮装置の濡れた壁は60℃である。他の動作条件においても同様の結果が得られた。
【0067】
粒子濃度が非常に低い場合、飽和プロファイルはチューブ直径から独立しており、
図4aのプロファイルは、口径の狭いチューブと口径の広いチューブの両方に適用される。軸方向の依存性は、軸位置と体積流量の比に従って変化し、結果は、無次元形式での対流拡散方程式を表すことによって分かる。したがって、2倍の体積流量においては、プロファイルは伸びるので、図に示すようにプロットされるとき、プロファイルはシフトしないが、長さが2倍のチューブは、プロファイル全体を含むことが必要となる。最大飽和は、流量比が0.32s/cm
2になる軸方向の距離で、中心線に沿って存在する。他の動作条件においても同様の結果が得られた。ある等高線から次の等高線まで移動するのに必要な時間は流量とは無関係であり、チューブの直径が増大するにつれて、この遷移時間が増す。
【0068】
滞留時間、したがってチューブの直径は、液滴成長を考える上で重要である。
図4bと
図4cを比較すると分かるように、活性化粒子の濃度が10
5/cm
3に達するときに見られる飽和プロファイルは、チューブ直径がより大きいとき、
図4aの濃度がほぼゼロの場合から、より大きくシフトしている。これは、口径がより広いチューブにおいて滞留時間がより長くなるからであり、これにより、それに応じて凝縮熱をより多く解放することで、より大きい液滴が生成される。直径がより小さいチューブでは成長時間が制限され、それにより凝縮熱解放の量および蒸気減少が低減され、ある範囲の粒子濃度にわたってより一貫した性能が実現される。
【0069】
図5aには、ほぼゼロから2×10
5/cm
3の範囲の活性化粒子の濃度向けのモデルによって計算された、口径が狭いチューブでの液滴サイズが示してある。
図5bには、口径がより広いチューブについての同じ計算が示してある。液滴形成中の水分凝縮からの凝縮熱解放によって流れが暖められ、それによって平衡蒸気濃度が上昇し、飽和比が低下する。元の実装形態の口径が広いチューブでは、濃度が高いと液滴が小さくなる。現行の「動力学的に制限された成長」の口径が狭いチューブでは、液滴サイズのシフトが大幅に低減される。濃度が高いと、口径が狭いチューブは、口径が広いチューブとほぼ同じ液滴サイズを生成するが、濃度が低いと、その液滴サイズは、口径が広いチューブでの液滴サイズのほぼ半分である。その結果、活性化粒子の個数濃度の関数としての液滴サイズの範囲全体が非常に狭くなる。
【0070】
高い粒子濃度において飽和比が低減することによる別の結果は、活性化直径の増大である。凝縮によって成長することになる最も小さい粒子を指す活性化サイズは、液体と蒸気の間のギブス自由エネルギーの差に依存し、これは蒸気の特性(表面張力、飽和比、および温度)ならびに粒子の特性(溶解度、濡れ性)に依存する。式(3)によって定義されたケルビンの等価直径は、収縮するのではなく成長する可能性がより高くなる水滴の最小サイズを示し、活性化に重要な蒸気特性の多くを特徴付ける。それぞれの流れの流線は、その軌跡に沿った特有の最小ケルビン等価直径を有しており、そこから、直面する最小ケルビン等価直径の関数として、流れのある部分を導き出すことができる。
図6には、活性化する個数濃度粒子、および成長チューブの直径の関数として、これがどのようにシフトするかが示してある。液滴直径と同様に、このシフトは、チューブ直径がより大きい場合に最も顕著である。
【0071】
図7aおよび
図7bは、円筒形状および平行板形状についてのモデル結果を比較している。ここで、中心線の流れの軌跡に沿った液滴サイズの推移が示してある。成長は、縁部に沿って最大であり、滞留時間がより長い。全ての流れの軌跡において、粒子の個数濃度が高いと液滴成長が著しく少なくなる。
図7aに示すように狭いチューブの凝縮装置を使用することにより、または、
図7bに示すように平行板の間隔をより近くすることにより、この悪影響は最小限に抑えられる。
【0072】
上向きおよび下向きの温度勾配、ならびに平行板および円筒の形状を含め、多くの様々な動作構成が研究され、有用であることが証明されてきた。全てが、本開示の一部分として組み込まれている。濃度が低い場合の液滴サイズを変更することはできるが、基本的な結果は変わらなかった。液滴サイズを大きく減少させ、粒子濃度を増大させると、粒子濃度が低い場合に大きい液滴を生成するこうした条件は、顕著な濃度効果を示した。低い濃度でより小さい液滴を生成する狭いチューブまたは間隔がより近い板は、高濃度での液滴サイズがほぼ同等になるよう濃度を増大させると、液滴サイズの減少がより少ないことを示した。狭い寸法を使用すると、液滴が成長する時間が短くなり、したがって粒子濃度が低い場合の成長を動力学的に制限する。濃度がより高くなると、凝縮熱解放によって成長が制限される。我々の分析によれば、水分凝縮システムにおいて、粒子濃度が高い場合に飽和比が低減することは、ほとんど凝縮熱解放によるものであり、蒸気減少もわずかに寄与している。
【0073】
この技術の第2の実施形態では、
図2aの単段凝縮装置を、
図2bに示した2段凝縮装置に置き換える。この2段凝縮装置は、短く暖かい壁の「イニシエータ」と、それに続く冷たい壁の「平衡器」から構成される。イニシエータと平衡器を組み合わせた長さは、単段凝縮装置の場合とほぼ同じである。イニシエータの壁は、入ってくる流れの温度よりも暖かい。一般には、イニシエータの温度よりも低い温度の壁を有するプレコンディショナを、イニシエータの前で使用することによって、これが達成される。平衡器の壁は、イニシエータ部の壁よりも温度が低いが、プレコンディショナより暖かくすることも、または冷たくすることもできる。イニシエータと平衡器の両方の壁は塗れている。この凝縮装置の設計は、平行板構成またはチューブ構成のいずれとも、また、差動拡散技術または拡散混合技術のいずれとも使用することができる。
【0074】
一実施形態では、凝縮装置全体を通して、暖かく濡れた壁を維持して、液滴成長を促進することができる。しかし、代替実施形態では、これは必要でない。長い単段凝縮装置を使用する場合、または、短く暖かい壁部分(イニシエータ)と、それに続いて冷たい壁部分からなる適切にサイズ調整された2段成長領域を使用する場合、中心線に沿った飽和比はほぼ同じである。
【0075】
図8aおよび8bは、35℃のイニシエータと、それに続いて様々な壁温度で動作している平衡器に入ってくる5℃の流れについて計算される中心線飽和比を比較している。壁は、全体を通して濡れている。35℃の下流の壁温度での計算は単段凝縮装置に対応し、その他のより低い下流の温度は、イニシエータ−平衡器凝縮装置の様々な構成を説明する。全ての場合において、イニシエータの長さを、そこを通る空気流量で除算した値は0.24s/cm
2である。この長さは、単段凝縮装置で得られるのと同じ最大飽和比を実現するのに十分なだけ長くなるように選択された。凝縮熱および蒸気減少を無視するとき、
図8での計算は低い粒子濃度の場合に対応する。提示された計算は、円筒形状の場合のものである。低粒子濃度の極限では、温度および飽和プロファイルは、軸方向の長さとチューブを通る体積流量との比に依存し、チューブ直径から独立している。したがって、軸方向の位置とチューブを通る体積流量との比の関数として結果がプロットされるが、軸方向の位置は、イニシエータの入口から下流への距離として定義される。
【0076】
図8aに示すように、中心線に沿った飽和比は、平衡器の壁温度の影響を相対的に受け難い。さらに、最大飽和は、イニシエータの下流の、流量比が0.32s/cm
2となる軸方向の位置で発生する。これは、水蒸気がイニシエータの壁から流れの中心線まで移動するのにある程度の時間を要するからであり、この時間中に対流によって水蒸気が下流に運ばれる。さらに、下流では流れが冷却され、冷たい壁によって水蒸気が取り出される。これら2つのプロセスの相対速度は、冷却によって平衡蒸気圧が低下することにより、水蒸気の除去がオフセットされ、その結果、平衡器内の選択された全ての動作温度において飽和比プロファイルがほぼ同じになるようなものである。
【0077】
液滴成長は飽和比によって駆動されるので、液滴成長は単段凝縮装置の場合と同様である。
図8bでは、イニシエータ−平衡器構成における中心線モデルの液滴成長と、単段凝縮装置における液滴成長とを比較する。計算は、35℃の濡れた壁を有するイニシエータと、それに続いて20℃の濡れた壁を有する平衡器に入る5℃の空気流、または35℃の濡れた壁を有する単段凝縮装置に入る5℃の空気流における、円筒形状の場合のものである。
図8aと同様に、イニシエータの長さを体積流量で除算した値は0.24s/cm
2である。後に続く平衡器の長さは、体積流量で除算すると、0.56s/cm
2である。単段凝縮装置の長さを体積流量で除算した値は0.8s/cm
2である。イニシエータ−平衡器構成の最後で出て行く液滴サイズは、その短く暖かい壁部分と、それに続くより長く冷たい部分とを用いる場合、全体を通して暖かい壁を有する単段凝縮装置の場合とほぼ同じである。これらの結果によって示したように、液滴成長のほとんどが、平衡器部分で発生する。イニシエータそれ自体は非常に短いので、単段凝縮装置の機能を実行することができない。凝縮の活性化と液滴成長の時間の両方を実現するのは、組合せイニシエータ−平衡器である。
【0078】
図9a、9b、および9cには、20℃で動作する平衡器が短い35℃のイニシエータに結合された特定の場合についての詳細がさらに示してある。この場合も、5℃で入ってくる流れについて計算が実行される。全体を通して濡れた35℃の壁を有する単段凝縮装置が比較されている。中心線(r/R
0=0)からチューブのほぼ縁部(r/R
0=0.9)までの、4つの軌跡に沿った飽和比、温度、および水蒸気量が示してある。完全に発達した層流においては、流量のほぼ半分が、r/R
0=0.5での軌跡と中心線との間に含まれる。
【0079】
図9aには、単段凝縮装置の場合において、全ての径方向の位置においてピークの過飽和がイニシエータ−平衡器の場合と同じである様子が示してある。これは、粒子凝縮成長の活性化が、単段凝縮装置の場合と同じになることを意味する。しかし、温度と水蒸気量の両方が大幅に低減される。
【0080】
図9bに示すように、出て行く温度は壁の温度に近い。さらに、中心線の温度が平衡器の壁の温度を超えることは決してなく、中間点の温度が22℃を超えて上昇することは決してない。したがって、流れのほとんどは、イニシエータによって著しく加熱されることはなく、このことは、半揮発性材料を扱うときに重要な特徴である。対照的に、単段凝縮装置を用いる場合、流れはそのピーク過飽和に達した後に暖まり続け、出て行く温度は29℃〜34℃の間である。
図9cに示すように、この例では、単段凝縮装置の代わりにイニシエータ−平衡器を使用することにより、水蒸気量が約1/2まで低減する。これは、平衡器において、さらに冷たい壁温度を選択することによって低減することができる。単段凝縮装置を用いる場合、成長領域全体を通して、水蒸気が連続して流れに加えられる。対照的に、イニシエータ−平衡器を用いる場合、イニシエータを通過するときに水が流れに加えられるだけである。さらに、水蒸気のうちのいくらかが、平衡器内で取り除かれる。水蒸気量が低減されると、凝縮の厄介な問題もなく形成される液滴を収集、または集束、または検出することが可能である。具体的には、所与の例では、単段凝縮装置には必要となるはずの35℃の代わりに適度な約21℃で下流の構成要素を操作することにより、凝縮を回避することも可能になる。
【0081】
図10は、イニシエータ−平衡器手法で生成される液滴サイズと、低い粒子濃度での単段凝縮装置の液滴サイズとを比較している。
図11は、これら2つの構成についてケルビンの等価直径によって示すように、活性化状態を比較している。これらの計算は、
図9での状態と同じ状態について実行され、加湿された5℃の流れは、35℃の濡れた壁の単段凝縮装置に入るか、または35℃の濡れた壁のイニシエータと、それに続く20℃の平衡器に入るかのいずれかである。これらの計算により、形成される液滴のサイズは、ほんのわずかに小さいが、活性化状態は同一であることが示される。
【0082】
図12および13には、サンプリングされた粒子の、液滴サイズおよび活性化サイズへの影響が示してある。この技術の第1の態様と同様、粒子個数濃度が増大すると、液滴サイズが減少し、ケルビンの等価直径が増大する。主に、これは、凝縮熱解放によって流れが暖まることによるものである。まさに前述の通り、狭いチューブを使用することにより、濃度の影響は最小限に抑えられる。
図12aには、凝縮装置チューブの直径が4.6mmのときの、平衡器の有無における計算された液滴直径が示してある。
図12bには、直径6.3mmの凝縮装置の場合のこれらの結果が示してあり、
図12cには、直径9.5mmの凝縮装置の場合のこれらの結果が示してある。口径が広いチューブにおいては、中央の液滴サイズが10μm〜3μmまで変化するが、狭いチューブでは6μm〜3μmまで変化する。より狭いチューブは、低濃度において液滴成長を運動学的に制限し、全体的により均一な液滴直径を実現する。同様に、より狭いチューブは、ケルビン直径で示されるように、粒子活性化状態でのシフトを最小限に抑える。したがって、この技術の最適な実装形態は、第1の態様での狭い流れ寸法と、この態様でのイニシエータ−平衡器の成長領域との組合せである。
【0083】
イニシエータ−平衡器技術(
図2b)は、米国特許第7,736,421号明細書の拡散混合の概念にも適用可能である。ここで、暖かく飽和した流れが、イニシエータの入口で冷たいエアロゾル流の周りのシース内に導かれる。混合された流れが、イニシエータおよび平衡器を通過する。前述の通り、体積流量比が0.25s/cm
2になる長さの、短いイニシエータを使用してもよい。この場合、飽和したシースおよびイニシエータの壁の温度は、両方とも40℃に設定され、平衡器の壁温度は15℃である。入ってくる流れは5℃である。図
14aには、ケルビンの等価直径のプロファイルが示してある。図
14bには、露点が示してある。4.5nmのケルビンの等価直径が達成され、これは、これらの温度で動作する元の単段凝縮装置の場合と同様である。直径4.3mmの狭いチューブを用いる場合、計算された最終の液滴サイズは、低濃度における5μmから2×105/cm
3での3.5μmまでの範囲にあり、これはやはり、元の設計での狭いチューブの場合と同様である。しかし、出て行く温度および出て行く流れの露点は、ほぼ40℃から20℃直下にまで降下する。
【0084】
図15には、ケルビンの等価直径、および平行板形状でのイニシエータ−平衡器で得られる露点のプロファイルが示してある。前述の通り、入ってくる流れは5℃で加湿され、イニシエータの壁は35℃であり、平衡器の壁は20℃である。平行板形状での軸方向のスケーリングは、z/(qδ)に依存する。ここで、zは流れの方向での座標であり、qは板の単位幅当たりの流速であり、δはギャップ幅である。単純な平行板形状では、単段凝縮装置を用いる場合、中心線に沿った最大過飽和は、凝縮装置の入口から約z/(qδ)=0.3s/cm
2の軸方向の位置で発生する。チューブ形状と同様に、成長領域の入口から最大中心線過飽和のポイントまでの距離すなわちz/(qδ)=0.25s/cm
2の約3/4だけ延在するイニシエータ長を使用してもよい。
【0085】
図16aには、イニシエータの長さがピーク過飽和にどのように影響するかが示してある。円筒形状においては、イニシエータ長の関数としてのプロットは、同じ入力流および壁温度で動作する無限に長いイニシエータによって生成される最大過飽和によって除算することによって達成される最大過飽和についてのものである。イニシエータ長は、前述のように、この長さとチューブを通過する体積流量との比として表され、壁は全体を通して濡れている。入ってくる流れよりもイニシエータの壁が60℃暖かいとき、0.16〜0.17s/cm
2の範囲の流量比になるイニシエータ長は、無限に長く濡れた壁のチューブによって生成される飽和比の99%を達成するのに十分である。この範囲は、0℃〜20℃の範囲の入力流の温度をカバーする。入ってくる流れよりもイニシエータの壁がちょうど20℃暖かいとき、これらの動作温度において最大飽和の99%を達成するには、約0.23s/cm
2の流量比になる幾分長いイニシエータ長が必要になる。イニシエータ長を規定するこれらのパラメータは、イニシエータ温度より5℃〜20℃下の範囲の広範囲の平衡器温度に適用される。
【0086】
図16bには、平行板形状についての類似の計算が示してあり、ここでイニシエータの長さは、板の単位幅当たりの体積流量qに板の間隔δを乗算したもの、すなわちz/(qδ)との比としてプロットされる。結果は極めて類似している。イニシエータの壁の温度は、入ってくる流れの温度より60℃高く、イニシエータ長と約0.21s/cm
2の量qδとの比は、単段凝縮装置で実現可能な飽和比の99%を達成するのに十分である。円筒形状と同様に、イニシエータの壁とイニシエータ−平衡器凝縮装置の流れとの間により少ない温度差がある状態で動作するときには、幾分長いイニシエータ長が必要となる。
【0087】
したがって、様々な形状において、全長が同じ単段の暖かく濡れた壁の凝縮装置を使用するときには、同じ粒子活性化直径を得ることが可能であり、短く濡れた壁の暖かい「イニシエータ」と、それに続く長く冷たい壁の「平衡器」からなる2段凝縮装置を使用することにより、ほぼ同じ液滴成長を得ることが可能である。さらに、単段凝縮装置と同じ活性化サイズを達成するのに必要となるイニシエータの長さは、凝縮装置の入口と単段凝縮装置での最大飽和のポイントとの間の距離の約75%である。ここで提示される計算については、プレコンディショナよりも30℃暖かい凝縮装置の壁の暖かい部分を用いる場合、これは、長さ(0.25s/cm
2)Qに対応する。ここでQは、円筒形状における体積流量である。同様に、平行板においては、これは、約(0.25s/cm
2)(q/δ)である。ここで、qは板幅のcm当たりの体積流量であり、δは板間のギャップである。このパラメータは、様々な動作温度または入口の状態によってわずかにシフトするが、一般には0.1〜0.3s/cm
2の範囲にある。より短いイニシエータが使用される場合、ピーク過飽和は、同じ温度で動作するより長いイニシエータを用いて得られるはずのものよりも幾分低くなる。イニシエータがより長い場合、ピーク過飽和は変化しないが、液滴サイズは幾分大きくなる。しかし、後続の平衡器は、流れの水蒸気量を依然として冷却し、また低減することになる。相対的に短いイニシエータを用いる場合、より長い単段凝縮装置と同じピーク過飽和を生成するのに必要な水蒸気の全てを供給することができる。平衡器においては、それは、単段凝縮装置の相対湿度と非常に類似した相対湿度を維持するように、温度降下と水蒸気濃度降下の両方に従う。この結果として、ただし水蒸気および温度を著しく低減させることによって、同様の活性化および成長が得られ、検出器、集束開口部、または収集装置を結合するとき、多くの実際的な利点を有する。
【0088】
図2cおよび3cに示したこの技術の第3の態様では、イニシエータと、それに続く「蒸発器」を有する2段凝縮装置システムを利用する。これは、非常に均一なサイズの液滴を生成すること、およびそれらを迅速に蒸発させることが望まれている場合に、専用の用途向けに設計される。キャリア・ガス中の液滴と材料の間の、制御されて制限された相互作用が望まれるとき、これは有用である。イニシエータは、前述の通り、この技術の第2の態様と同じ基準を使用して設計される。しかし、平衡器を使用して液滴成長を継続する代わりに、最大液滴サイズを制限し、次いで凝縮水を乾燥させて蒸発させる蒸発器を使用してもよい。我々のモデリングでは、これには、径方向の位置への液滴サイズの依存を最小限に抑え、均一な最大液滴サイズを実現するという2次的な利点を有することが示された。第2の態様と同様に、この手法を運動学的に制限された成長と組み合わせて、粒子個数濃度のある範囲にわたって一貫した性能を実現することができる。
【0089】
図17に示すように、この手法を用いて、極めて高い過飽和を達成することも依然として可能である。0℃の加湿された空気流が50℃の壁を有するチューブに導かれるときに得られる飽和プロファイルがプロットされている。濡れた壁のイニシエータは、0.10s/cm
2の流量距離にスケーリングされた長さを有する。後続の壁は、同じ温度に保持されるが、乾燥している。実際には、プレコンディショナ部分とイニシエータ部分を、水貯蔵器と接触しているウィックで連ねて、蒸発器の壁を露出したままにしておくことによって、これが実現される。蒸発器においては、流れの露点が壁の温度よりも低いので、壁は乾燥したままになる。この状況では、イニシエータ端部の下流の、0.15s/cm
2の流量となる軸方向の位置でピーク過飽和が得られる。この場合も、流れの中心線での水蒸気濃度は流れの初めの方の部分に起因するので、これにより、成長領域全体が暖かく濡れた壁を有するときと実質上同じ活性化効率が可能になる。提示された例では、中心線の飽和比は2.9に達し、これによって約3nmの粒子が活性化する。
【0090】
図18には、この構成での対応する液滴成長が示してある。液滴は急速に成長し、粒子の軌跡に沿った飽和比が1未満に降下する軸方向の位置で、その最大直径を達成する。次いで、液滴は蒸発し始める。通常状態であれば、壁は成長領域全体を通して濡れており、液滴サイズは壁に近い部分で最大となり、流れがより遅くなって、粒子が成長するのにかかる時間がより長くなる。しかし、ここでは、液滴サイズは極めて均一であり、図に示すように径方向の位置にほぼ無関係である。これは、暖かく乾燥した壁がまず壁の近くでそれら液滴を蒸発させ始め、それにより、さらに成長する時間がなくなるからである。これらのモデル結果では、径方向の位置に無関係の、均一な最大直径の液滴を実現することが可能になることが示してある。チューブが0.36s/cm
2で終わる場合、出て行く液滴のサイズは極めて均一になるはずである。さらに長く延在する場合、液滴は蒸発するが、これにより、均一な量の反応蒸気種、または蒸発して粒子上に滞留することになる周囲のガスからの電荷を供給する手段を実現することもできる。
【0091】
この技術の第4の実施形態(
図2dおよび
図3d)では、やはりイニシエータと、それに続いて今回は緩やかな温度勾配を使用する。このモデリングによれば、イニシエータとそれに続く温度勾配における初期の温度ジャンプを選択することが可能であり、これにより、それぞれの粒子軌跡に沿った均一な活性化状態が可能になる。これが
図19に示してあり、体積流量が1L/分でのチューブ形状の場合のケルビンの等価直径がプロットしてあり、入ってくる流れは12℃であり、イニシエータの壁温度は25℃であり、それに続いて14cmの長い勾配が42℃(または1.2℃/cm)で終わる。これらのプロファイルは、チューブ全体を通して体積流量に対応する。この構成を用いると、ケルビンの等価直径は、それぞれの流れの軌跡のほとんどに沿ってほぼ一定である。前例の全てにおいては、流れの軌跡に沿った飽和プロファイルは、強い最大値を有し、次いで減衰して行く様子を示している。対照的に、この技術の態様では、最大のケルビンの等価直径が得られると、流れの軌跡の残りの部分ほとんどにおいて、この直径が保持される。これにより、低過飽和比での活性化および成長のための最大時間がもたらされ、これは疎水性粒子を活性化するのに必要となることがある。この特定の手法は、ディーゼル・エンジン排気の試験のために検討されたものであり、必要となる試験プロトコルには、23nmの粒子の50%、および40nmの粒子の90%以上を検出することが示してある。
【0092】
前述の態様を組み合わせて、複数段の凝縮装置を形成することもできる。たとえば、第2の実施形態で説明したイニシエータ−平衡器に続いて、別のイニシエータ−平衡器を設けることができる。
図20には、40℃のイニシエータと、それに続く5℃の平衡器と、それに続く第2の40℃のイニシエータと、それに続く第2の5℃の平衡器からなる、4段凝縮装置におけるケルビンの等価直径および露点プロファイルが示してある。入ってくる流れは5℃および95%RHであり、凝縮装置の壁は全体を通して濡れている。最小のケルビンの等価直径および出て行く露点は、単純な2段イニシエータ−平衡器構成からあまり変化しない。しかし、特に、サンプリングされた5×10
4cm
−3未満の濃度においては、形成される液滴がはるかに大きい。液滴サイズが大きいと、光学的に液滴を検出すること、または慣性手段を用いて液滴を収集することが容易になる。
【0093】
前述のモデリングに加えて、前述の技術の最初の2つの実施形態について、液滴成長予測が実験的に検証されてきた。空気力学的な粒子寸法測定器(TSI Inc.(St.Paul、MN)から入手可能なモデル3021)を使用して、これが実行された。単段凝縮装置においては、これら実験用の測定により、チューブの直径を9.5mmから4.6mmに低減させることによって、粒子濃度による液滴サイズのシフトが低減することが確認された。第2の実施形態では、短いイニシエータと、それに続く冷たい平衡器を用いる場合、我々の実験では、これにより、直径と長さが同じ単段の暖かい壁の凝縮装置で動作するときとほぼ同じ液滴サイズが生成されることが確認された。さらに、凝縮装置が有効な、やや限定された流量範囲を有するのではなく、2段のイニシエータ−平衡器凝縮装置を用いる場合、10倍を超える流量で動作することが可能であった。前述のモデリングによれば、一貫した液滴サイズを生成する最大流量は、約0.3s/cm
2の流量比となるイニシエータ長に対応する。より低い流量では、イニシエータは、最大過飽和の位置と比較して長く、液滴成長は、単段凝縮装置での液滴成長と同様であった。後続の平衡器は、温度および露点を降下させながら、単に、液滴成長のためにもう少し長い時間と距離をもたらす働きをした。
【0094】
前述の説明の全てが層流凝縮装置に適用される。しかし、この技術の第2の実施形態の平衡器は、飽和した2つの流れを互いに異なる温度で第1段が混合する凝縮装置の第2段として使用することもできる。互いに異なる温度で飽和した流れを混合することは、蒸気過飽和を生成するための十分に確立した方法であり、どんなタイプの凝縮蒸気をも処理し、蒸気圧平衡カーブの非線形特性の成果である。ちょうど、平衡器が、層流凝縮装置の第2段として使用されて、液滴成長を継続させながら露点および温度を低減させるように、我々のモデルではまた、このような平衡器を混合タイプの凝縮装置の第2段として使用してもよく、同様に、相対湿度に大きく影響を及ぼすことなく露点を下げ、したがって液滴成長を促進し続けることが示してある。
【0095】
主題が構造的特徴及び/または方法的動作に関する用語によって説明されたが、添付特許請求の範囲に記載の主題は必ずしも上記特定の特徴または動作には限定されないことに留意されたい。上記特定の特徴及び動作は、クレームを実現する1つの例示的形態として開示されたものである。