(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ロールフラワーにおける複数の段階の形状のそれぞれに対応した複数の段階の成形ロールに帯鋼板を順に通過させて成形する成形工程を含む、テーパ鋼管の製造方法であって、
前記複数の段階の成形ロールの各々は、前記帯鋼板の幅に応じて変化するロールフラワーの形状に対応するように移動制御可能に設けられており、
前記成形工程では、前記複数の段階の成形ロールに前記帯鋼板を順に通過させながら、前記帯鋼板における通過している位置の幅に応じたロールフラワーの形状に対応するように、各段の成形ロールを移動制御し、
前記帯鋼板の幅に応じて変化するロールフラワーの形状は相似形であり、
前記成形ロールの移動制御は、ロールフラワーの高さ方向の最上点と最下点との中間点の高さが、相似形に変化するロールフラワーで一致するように行われることを特徴とするテーパ鋼管の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された鋼管の製造方法は、成形しようとする鋼管の径に合わせて、事前にサイドロール及び上中間ロールの配置を固定するものである。このため、本成形方法は一様な口径の鋼管を製造することしかできない。
【0005】
本発明は、鋼管の両端で口径が異なるテーパ鋼管の製造方法、及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のテーパ鋼管の製造方法は、ロールフラワーにおける複数の段階の形状のそれぞれに対応した複数の段階の成形ロールに帯鋼板を順に通過させて成形する成形工程を含む、鋼管の製造方法であって、複数の段階の成形ロールの各々は、帯鋼板の幅に応じて変化するロールフラワーの形状に対応するように移動制御可能に設けられており、成形工程では、複数の段階の成形ロールに帯鋼板を順に通過させながら、帯鋼板における通過している位置の幅に応じたロールフラワーの形状に対応するように、各段の成形ロールを移動制御することを特徴とする。
【0007】
このようなテーパ鋼管の製造方法によれば、帯鋼板の幅に応じたロールフラワーに対応するように各成形ロールが移動制御されることになる。そのため、前端から後端までの間で幅が変化する帯鋼板を用いた場合には、幅に応じた径となるように各成形ロールが移動制御される。これにより、鋼管の両端で口径が異なるテーパ鋼管を製造することができる。
【0008】
また、帯鋼板の幅に応じて変化するロールフラワーの形状は相似形であり、成形ロールの移動制御は、ロールフラワーの高さ方向の最上点と最下点との中間点の高さが、相似形に変化するロールフラワーで一致するように行われる。この場合、連続して鋼管を製造する際に鋼管に生じる歪みを最小にでき、板縁に座屈等の発生を抑えることができる。
【0009】
また、成形工程における成形ロールの移動制御は、PLC制御によって行われる。PLC制御は、成形ロールの移動(例えば上下、左右、傾き)を予め決めた順序に従って、これらの動作を順次進めていくコンピュータ制御の方法である。従来はロール調整者がこれらの作業をそれぞれの段階の成形ロールで行っていた。この作業は容易でないほか、鋼管の直径が変わるたびにロールセットをやり直さなければならない。しかし、PLC制御では、これらのロール調整を数値制御で行うことができるため、鋼管の直径変化に対して容易に対応できるほか、成形中に連続的に直径を変化させることもできるためテーパ鋼管の成形も可能になる。
【0010】
また、成形工程の前段に、帯鋼板の幅方向の両端縁を所定形状に切断する切断工程を含む。これは、帯鋼板をテーパ鋼管に適したブランク材に加工しながらの成形であるため、所望の形状のテーパ鋼管を製造できる。
【0011】
帯鋼板の幅は直線的な減少と直線的な増加を繰り返すブランク材を用いることによって連続的にテーパ鋼管を製造する。これによれば、直線的な減少の一ピッチ長さと直線的な増加の一ピッチ長さはテーパ鋼管の全長に対応している。
【0012】
また、本発明のテーパ鋼管の製造装置は、ロールフラワーにおける複数の段階の形状のそれぞれに対応した複数の段階の成形ロールに帯鋼板を順に通過させて成形するテーパ鋼管の製造装置であって、複数の段階の成形ロールの各々は、帯鋼板の幅に応じて変化するロールフラワーの形状に対応するように移動制御可能に設けられており、複数の段階の成形ロールに帯鋼板を順に通過させながら、帯鋼板における通過している位置の幅に応じたロールフラワーの形状に対応するように、各段の成形ロールを移動制御する制御部を備えることを特徴とする。
【0013】
このようなテーパ鋼管の製造装置によれば、帯鋼板の幅に応じたロールフラワーに対応するように各成形ロールが移動制御されることになる。そのため、前端から後端までの間で幅が変化する帯鋼板を用いた場合には、幅に応じた径となるように各成形ロールが移動制御される。これにより、鋼管の両端で口径が異なるテーパ鋼管を製造することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る鋼管の製造方法及び製造装置によれば、一端から他端までの間で径が変化するテーパ鋼管を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】一実施形態におけるテーパ鋼管の製造装置を示す模式図である。
【
図2】ダブルベンドフォーミング法による鋼管の成形工程を示すロールフラワー図である。(a)は大径側の断面、(b)は小径側の断面図である。
【
図3】(a)〜(i)は、
図2におけるロールフラワー図の各段階をそれぞれ示す。(a)〜(i)には大径側、小径側の断面を重ね合せて記している。
【
図4】テーパ鋼管の連続製造に用いるスリッター装置を示す正面図である。
【
図5】テーパ鋼管の製造装置における1段目のロールスタンド、及び、ロール形状を示す正面図である。
【
図6】テーパ鋼管の製造装置における2段目のロールスタンド、及び、ロール形状を示す正面図である。
【
図7】テーパ鋼管の製造装置における3段目のロールスタンド、及び、ロール形状を示す正面図である。
【
図8】テーパ鋼管の製造装置における4段目のロールスタンド、及び、ロール形状を示す正面図である。
【
図9】テーパ鋼管の製造装置における5段目のロールスタンド、及び、ロール形状を示す正面図である。
【
図10】テーパ鋼管の製造装置における6段目のロールスタンド、及び、ロール形状を示す正面図である。
【
図11】テーパ鋼管の製造装置における7段目のロールスタンド、及び、ロール形状を示す正面図である。
【
図12】テーパ鋼管の製造装置における8段目のロールスタンド、及び、ロール形状を示す正面図である。
【
図13】テーパ鋼管の製造装置における9段目のロールスタンド、及び、ロール形状を示す正面図である。
【
図14】(a)は切り板成形の場合のブランク材形状、(b)は、連続成形の場合のブランク材形状を示す平面図である。
【
図15】(a)〜(g)は、他の実施形態に係るテーパ角管の製造装置の各ロールスタンドを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施の形態について図面を参照しながら具体的に説明する。便宜上、実質的に同一の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。なお、本発明は、一端から他端までを同一径の鋼管を製造することができる製造装置にも適用可能であるが、ここではテーパ鋼管の製造に適用した場合の一例について説明する。
【0017】
図1に示されるように、テーパ鋼管の製造装置1は、帯鋼板の両板端部を長手方向にテーパ状に切断するスリッター装置2と、テーパ状に切断された帯鋼板を成形する複数のロールスタンド(成形ロール)Sとを備えている。これらのスリッター装置2及びロールスタンドSは、製品断面の中心に対して左右対象に配置されている。鋼管の材料であるロール状に巻回された帯鋼板Pは、スリッター装置2によって幅方向の両端縁を所定の形状に切断された後に、複数のロールスタンドSを通過することでテーパ鋼管に成形される。スリッター装置2及びロールスタンドSの動作制御はPLC(Programmable Logic Controller)制御装置Cで行う。
【0018】
この製造装置1では、複数のロールスタンドSによってテーパ状に切断された帯鋼板Pを徐々に内側に曲げることによって管状の形に成形する。
図2は、帯鋼板Pを各ロールスタンドSによって順次曲げ成形を行った時の断面形状を段階的に示したものである(通常、これを「ロールフラワー図」と呼ぶ)。本実施形態では、
図2の(a)と(b)のロールフラワー図はテーパ鋼管の両端にあたる大径側、小径側の各曲げ工程における断面を示している。以下、大径側の各成形段階の断面をFA1〜FA9、及び、小径側の各成形段階の断面をFB1〜FB9とする。大径側、小径側の各段階のロールフラワー図において、断面端部(上端)と断面底部(下端)の間隔の中間の点を最終パイプ断面の中心点に一致させる方法で各ロールフラワーを描いている。
図2はこのようにして描かれたFA1(FB1)からFA9(FB9)を重ね合わせて描いたものである。小径側のロールフラワーFBは、大径側のロールフラワーFAの0.8倍の比率の相似形となっている。また、同様に、テーパ鋼管における任意の位置でのロールフラワー(図示省略)は、当該位置における帯鋼板Pの幅に応じた比率で、ロールフラワーFAと相似する。
【0019】
図3は、
図2におけるロールフラワーFA1〜FA9とロールフラワーFB1〜FB9とを、中心点を一致させて段階ごとに重ね合わせて示したものである。本実施形態におけるテーパ鋼管の製造装置は、成形工程の各段において大口径側のロールフラワーFA1〜FA9と一致する形状の成形ロールが組み込まれている。これは、鋼管の直径変化に対しても、常に、この大口径側に一致した成形ロールで成形することを意味する。成形する鋼管の直径変化にも対応できるようにするために、上下のロールは一体ものでなく、分割されたロールになっている。また、直径が変化していく鋼管の形状に分割されたロールが一致(対応)するように、分割されたロールの移動や傾けなどの調整が必要になる。本装置はこれらの成形ロールの位置調整を予めPLCに記憶させることによって成形を行う。
【0020】
図4は、ロールスタンドSによる成形工程の前段階で、スリッターロールスタンド4によって帯鋼板Pの両端部を長手方向へ所定の角度に切断するためのスリッター装置2を示したものである。スリッター装置2は、スリッターロールスタンド4と、上下に設けられたスリッターロール3A,3Bと、スリッターロール3A,3Bを駆動する歯車7a,7bと、歯車7a,7bを強制駆動するサーボモータ7cとを備えている。
【0021】
スリッター装置2は旋回盤8の上に搭載されている。これによって帯鋼板Pの両端部を長手方向へ所定の角度に切断するための角度調整を行う。旋回盤8の回転角度の制御はサーボモータ8aで行う。
【0022】
旋回盤8は、アクチュエータ9の上部に設置されている。アクチュエータ9は左右方向(帯鋼板Pの幅方向)に対する移動量を制御するためのものである。このため、切断されるブランク材の板幅を自在に変えることができる。この制御はサーボモータ9aで行う。
【0023】
例えば、
図14(a)に示されるような切り板成形用のブランク材の制作は、PLC内蔵のCPU(PLC制御装置C)によってスリッター装置を制御することでなされる。例えば、スリッターロール3A,3Bの角度を予め決め、これのメモリー値でスリッターロールスタンド4の向きを変化させることで、所定の角度のブランク材を制作できる。
図14(b)に示される連続成形用のブランク材では、図示の板縁の形状にスリッターロールスタンドが移動するようにすれば良い。
【0024】
図5は、1段目の断面を成形するロールスタンド10、ロール形状の正面図である。図示のように、1段目で成形される大口径側断面と小径側断面は
図3(a)の部分であるが、これを枠体11内に配置している。枠体11において、帯鋼板Pを幅方向に成形するためのサイドロール12(上側は上サイドロール13、下側は下サイドロール14)と、帯鋼板Pの中央部分を成形する中央ロール17(上側は上中央ロール15、下側は下中央ロール16)との各ロールを備えている。
【0025】
鋼管の口径が減少するにつれて、上サイドロール13及び下サイドロール14は中央に寄せる必要がある。さらに、若干ではあるが、上側への移動と上側サイドロールの内側への傾けが必要である。上サイドロール13及び下サイドロール14の断面中央への寄せはサーボモータ14c,13dで行っている。上側への移動はサーボモータ18a,19aで行っている。上サイドロールの傾け角度はサーボモータ13cで制御している。
【0026】
下サイドロール14は、スタンド14aに形成された軸部14bに回転自在に支持されており、サーボモータ14cによって回転を制御されている。スタンド14aは、左右方向に移動自在なアクチュエータ14dの上部に設けられている。アクチュエータ14dは、サーボモータ14eによって、その移動を制御されている。アクチュエータ14dは、下部支持部19の上部に設けられている。この下部支持部19は、枠体11の内側において左右方向にわたって設けられており、サーボモータ19a及びアクチュエータ19bによって上下動自在となっている。このような構成により、下サイドロール14における回転動、上下動及び左右動の制御が可能となっている。
【0027】
中央ロール17は、帯鋼板Pを上面側から押す上中央ロール15と、帯鋼板Pを下面側から押す下中央ロール16とを備えている。上中央ロール15は、支持ブラケット15aで支持されている。サーボモータ15bによって上中央ロール15の上下位置を制御することができる。また、下中央ロール16は、支持ブラケット16aで支持されている。支持ブラケット16aは、サーボモータ16bの制御によって上下動可能となるように構成されている。これにより、サーボモータ16bによって下中央ロール16の上下位置を制御することができる。
【0028】
中央ロール17の上下移動、ならびに、上サイドロール13及び下サイドロール14の上下方向への移動、中央側への寄せ、内側への傾けなどの4要素の制御を同時に、かつ、連続的に行うことによってテーパ鋼管の成形を可能にしている。
【0029】
図6は2段目の断面を成形するロールスタンド、ロール形状の正面図である。
図6に示されるように、2段目のロールスタンド20は、枠体21の内側において、帯鋼板Pの幅方向両端にそれぞれ設けられるサイドロール22と、帯鋼板Pの幅方向中央に設けられる中央ロール27とを備えている。サイドロール22は、上サイドロール23及び下サイドロール24を備える。中央ロール27は、上中央ロール25及び下中央ロール26を備える。これにより、ロールスタンド20は、帯鋼板Pを2段目のロールフラワーFA2,FB2に対応する形状に成形することができる。
【0030】
上サイドロール23は、支持ブラケット23aに回転自在に支持されている。支持ブラケット23aは、支持ピラー23cに回転自在に支持されており、サーボモータ23hによって回転制御されている。支持ピラー23cは、サーボモータ23dによって左右動自在に設けられたアクチュエータ23eに固定されている。アクチュエータ23eが設けられている上部支持部材28は、サーボモータ28a及びアクチュエータ28bによって上下動自在となっている。このような構成により、上サイドロール23では、上下動、左右動及び傾動の制御が可能となっている。
【0031】
下サイドロール24は、スタンド24a及びサーボモータ24cによって回転制御が可能なように支持されている。下部支持部材29に設けられたスタンド24aは、サーボモータ24eによって左右動自在となっている。下部支持部材29はサーボモータ29a及びアクチュエータ29bによって上下動自在となっている。このような構成により、下サイドロール24における、上下動及び左右動の制御が可能となっている。
【0032】
また、上中央ロール25は、支持ブラケット25aで支持されている。また、下中央ロール26は支持ブラケット26aで支えられている。これらは、サーボモータ25b及びサーボモータ26bによって上下移動の制御がなされる。
【0033】
図7は3段目の断面を成形するロールスタンド30、ロール形状の正面図である。図示のように、3段目は帯鋼板Pの左右部分を成形する上下サイドロール(上サイドロール33、下サイドロール34)、これを支持する支持台(支持ブラケット33a、スタンド34a)、枠体31、及び、上下サイドロールの移動量と傾け角度を制御する制御装置から構成されている。詳細には、3段目から最終段までは、断面の中央部分を成形するためのロールを用いない方法をとっている。上サイドロール33の上下移動と左右方向への移動制御はサーボモータ38aと33dで行っている。この2制御の他に、上サイドロール33を傾ける制御はサーボモータ33hで行っている。下サイドロール34の左右移動、上下移動もサーボモータ34e,39aで行っている。
【0034】
図8は4段目の断面を成形するロールスタンド40、ロール形状の正面図である。図示のように鋼管の成形が進行するにつれて、鋼管断面の左右部分を内側に寄せる成形のみで鋼管全体の真円度を高めることができる。
【0035】
図8に示すように、サイドロール43は、支持ブラケット43a及びサーボモータ43bによって回転制御が可能なように支持されている。支持ブラケット43aは、サーボモータ43cによって左右に移動自在に設けられたアクチュエータ43dから上向きに突設された支持ピラー43eに支持されている。支持ピラー43eには帯鋼板Pの長さ方向に平行な軸部43fが設けられており、この軸部43fに対して支持ブラケット43aが回転(傾動)自在に支持されている。支持ブラケット43aの下部には、一定の曲率で湾曲するように配置されたラック43gが形成されている。このラック43gは、アクチュエータ43dに固定されたサーボモータ43iの歯車と噛合している。これにより、サーボモータ43iを制御することで、支持ブラケット43a及びサイドロール43の傾きを制御することができる。アクチュエータ43dは、下部支持部49から上側に向かって突設されている。この下部支持部49は、サーボモータ49a及びアクチュエータ49bによって上下動自在となっている。このような構成により、サイドロール43における回転動、上下動、左右動及び傾動の制御が可能となっている。
【0036】
図9に示されるように、5段目のロールスタンド50は、枠体51の内側に設けられて、帯鋼板Pの幅方向の両端を内側に向かって押圧する左右一対のサイドロール53を備えている。サイドロール53は、支持ブラケット53a及びサーボモータ53bによって回転制御が可能なように支持されている。支持ブラケット53aは、サーボモータ53cによって左右に移動自在に設けられたアクチュエータ53dから上向きに突設された支持ピラー53eに支持されている。支持ピラー53eには帯鋼板Pの長さ方向に平行な軸部53fが設けられており、この軸部53fに対して支持ブラケット53aが回転(傾動)自在に支持されている。支持ブラケット53aの下部には、一定の曲率で湾曲するように配置されたラック53gが形成されている。このラック53gは、アクチュエータ53dに固定されたサーボモータ53iの歯車と噛合している。これにより、サーボモータ53iを制御することで、支持ブラケット53a及びサイドロール53の傾きを制御することができる。アクチュエータ53dは、下部支持部59から上側に向かって突設されている。この下部支持部59は、サーボモータ59a及びアクチュエータ59bによって上下動自在となっている。このような構成により、サイドロール53における回転動、上下動、左右動及び傾動の制御が可能となっている。
【0037】
図10に示されるように、6段目のロールスタンド60は、枠体61の内側に設けられて、帯鋼板Pの幅方向の両端を内側に向かって押圧する左右一対のサイドロール63を備えている。サイドロール63は、支持ブラケット63a及びサーボモータ63bによって回転制御が可能なように支持されている。支持ブラケット63aは、サーボモータ63cによって左右に移動自在に設けられたアクチュエータ63dから上向きに突設された支持ピラー63eに支持されている。支持ピラー63eには帯鋼板Pの長さ方向に平行な軸部63fが設けられており、この軸部63fに対して支持ブラケット63aが回転(傾動)自在に支持されている。支持ブラケット63aの下部には、一定の曲率で湾曲するように配置されたラック63gが形成されている。このラック63gは、アクチュエータ63dに固定されたサーボモータ63iの歯車と噛合している。これにより、サーボモータ63iを制御することで、支持ブラケット63a及びサイドロール63の傾きを制御することができる。アクチュエータ63dは、下部支持部69から上側に向かって突設されている。この下部支持部69は、サーボモータ69a及びアクチュエータ69bによって上下動自在となっている。このような構成により、サイドロール63における回転動、上下動、左右動及び傾動の制御が可能となっている。
【0038】
図11に示されるように、7段目のロールスタンド70は、枠体71の内側に設けられて、帯鋼板Pの幅方向の両端を内側に向かって押圧する左右一対のサイドロール73を備えている。サイドロール73は、支持ブラケット73a及びサーボモータ73bによって回転制御が可能なように支持されている。支持ブラケット73aは、サーボモータ73cによって左右に移動自在に設けられたアクチュエータ73dから上向きに突設された支持ピラー73eに支持されている。支持ピラー73eには帯鋼板Pの長さ方向に平行な軸部73fが設けられており、この軸部73fに対して支持ブラケット73aが回転(傾動)自在に支持されている。支持ブラケット73aの下部には、一定の曲率で湾曲するように配置されたラック73gが形成されている。このラック73gは、アクチュエータ73dに固定されたサーボモータ73iの歯車と噛合している。これにより、サーボモータ73iを制御することで、支持ブラケット73a及びサイドロール73の傾きを制御することができる。アクチュエータ73dは、下部支持部69から上側に向かって突設されている。この下部支持部79は、サーボモータ79a及びアクチュエータ79bによって上下動自在となっている。このような構成により、サイドロール73における回転動、上下動、左右動及び傾動の制御が可能となっている。
【0039】
図12に示されるように、8段目のロールスタンド80は、枠体81の内側に設けられて、帯鋼板Pの幅方向の両端を内側に向かって押圧する左右一対のサイドロール83を備えている。サイドロール83は、支持ブラケット83a及びサーボモータ83bによって回転制御が可能なように支持されている。支持ブラケット83aは、サーボモータ83cによって左右に移動自在に設けられたアクチュエータ83dから上向きに突設された支持ピラー83eに支持されている。支持ピラー83eには帯鋼板Pの長さ方向に平行な軸部83fが設けられており、この軸部83fに対して支持ブラケット83aが回転(傾動)自在に支持されている。支持ブラケット83aの下部には、一定の曲率で湾曲するように配置されたラック83gが形成されている。このラック83gは、アクチュエータ83dに固定されたサーボモータ83iの歯車と噛合している。これにより、サーボモータ83iを制御することで、支持ブラケット83a及びサイドロール83の傾きを制御することができる。アクチュエータ83dは、下部支持部69から上側に向かって突設されている。この下部支持部89は、サーボモータ89a及びアクチュエータ89bによって上下動自在となっている。このような構成により、サイドロール83における回転動、上下動、左右動及び傾動の制御が可能となっている。
【0040】
図13は9段目の断面を成形するロールスタンド90、ロール形状の正面図である。図示のように最終段の成形は4個のロール(上ロール92、下ロール93、左ロール94及び右ロール95)によって、断面を上下、左右から絞り込む成形をとっている。
【0041】
上ロール92は支持ブラケット92aに固定されている。支持ブラケット92aはサーボモータ92cによって上ロール92を鋼管中央に移動させる。他の下ロール93、左ロール94及び右ロール95も同様な機構で鋼管中央に移動させる機構をとっている。
【0042】
このような構成を備えたテーパ鋼管の製造装置1の動作について、以下に説明する。
【0043】
まず、幅が一定な帯鋼板Pの両板縁を、長手方向に所要のテーパ角度をもつブランク材となるようにスリッター装置2で切断する(切断工程)。連続生産を可能にするためのブランク材の形状は、
図14(b)に示されるように、製品長さを1ピッチとして周期的に板幅が、前端Pcから後端側にかけて、広い状態から狭い状態に、また狭い状態から広い状態にと、繰り返すように切断されている。また、1本のみ製造する場合には、
図14(a)に示されるように、前端Paから後端Pbに向かって一定の割合で直線的に幅が狭くなるように切断される。これらの制御はPLC制御で行われる。
【0044】
続いて、スリッター装置2を通過した帯鋼板Pは、1段目の上下ロール(サイドロール12、中央ロール17)の形状に沿った形状に曲げ成形する。テーパ鋼管はこのロール内で順次直径を減少させる成形を行うが、このために、上下のロールの位置、傾きを変える必要がある。このロールの位置調整(位置制御)、傾き調整(姿勢制御)はPLC制御で行う。特に、初段の成形は板縁を円弧状に成形する重要な箇所であるためにロール形状も他のロールとは異なる設計がなされている。
【0045】
図5には、1段目を通過している帯鋼板Pの前端の形状Pa1と、後端の形状Pb1とがそれぞれ示されている。この形状Pa1,Pb1は、
図3における1段目のロールフラワーFA1,FB1の形状に対応している。スリッター装置2を通過した帯鋼板Pが、ロールスタンド10に進入すると、まず前端Paの広い幅に対応するようにサイドロール12及び中央ロール17が移動制御される。
図5に示されるように、サイドロール12及び中央ロール17によって押圧変形された帯鋼板Pの形状は、1段目におけるロールフラワーFA1の形状となる。帯鋼板Pがロールスタンド10を通過するにつれて、帯鋼板Pにおけるサイドロール12及び中央ロール17によって押圧されている位置の幅が徐々に狭くなる。このとき、帯鋼板Pの幅の比率に応じて、1段目のロールフラワーの相似形に対応するように、サイドロール12及び中央ロール17が移動制御される。すなわち、サイドロール12及び中央ロール17は、帯鋼板Pの幅が徐々に狭くなるにつれて、帯鋼板Pの後端Pbにおける1段目のロールフラワーFB1の形状に対応する位置(帯鋼板Pの形状Pb1の位置)まで徐々に移動するように制御される。そして、帯鋼板Pの後端Pbがサイドロール12及び中央ロール17によって押圧されるときには、
図5に示されるロールフラワーFB1に対応する位置にサイドロール12及び中央ロール17が移動されている。
【0046】
2段目のロールスタンド20も第1段の成形と同様に、中央ロール27の上側への移動、サイドロール22の中央への寄せ移動、傾けを行う。これらの移動の制御はPLC制御装置Cによって同時に行われる。また、3者の制御を同時に連続して行うためテーパ鋼管の成形が可能になる。このように2段目のロールスタンド20でも、帯鋼板Pの前端Paでは帯鋼板Pの形状Pa1の位置に対応してサイドロール22及び中央ロール27が移動制御され。
【0047】
以下、同様にして、3段目では、通過する帯鋼板Pの幅の比率に応じて、ロールフラワーの3段目の相似形に対応するように、帯鋼材の前端Paに対応する位置(形状Pa3の位置)から後端Pbに対応する位置(形状Pb3の位置)まで上サイドロール33及び下サイドロール34が移動制御される。4段目では、通過する帯鋼板Pの幅の比率に応じて、ロールフラワーの4段目の相似形に対応するように、帯鋼材の前端Paに対応する位置(形状Pa4の位置)から後端Pbに対応する位置(形状Pb4の位置)までサイドロール43が移動制御される。5段目では、通過する帯鋼板Pの幅の比率に応じて、ロールフラワーの5段目の相似形に対応するように、帯鋼板Pの前端Paに対応する位置(形状Pa5の位置)から後端Pbに対応する位置(形状Pb5の位置)までサイドロール53が移動制御される。6段目では、通過する帯鋼板Pの幅の比率に応じて、ロールフラワーの6段目の相似形に対応するように、帯鋼材の前端Paに対応する位置(形状Pa6の位置)から後端Pbに対応する位置(形状Pb6の位置)までサイドロール63が移動制御される。7段目では、通過する帯鋼板Pの幅の比率に応じて、ロールフラワーの7段目の相似形に対応するように、帯鋼板Pの前端Paに対応する位置(形状Pa7の位置)から後端Pbに対応する位置(形状Pb7の位置)までサイドロール73が移動制御される。8段目では、通過する帯鋼板Pの幅の比率に応じて、ロールフラワーの8段目の相似形に対応するように、帯鋼板Pの前端Paに対応する位置(形状Pa8の位置)から後端Pbに対応する位置(形状Pb8の位置)までサイドロール83が移動制御される。
【0048】
最終段は鋼管の最終仕上げと鋼管の真円度を高めるための成形である。このため、鋼管の左右、上下から鋼管を絞り込むように各ロールを鋼管中心にむけて移動する機構の装置にしている。具体的には架台に取り付けられたアクチュエータによって上ロール92、下ロール93、左ロール94及び右ロール95を、帯鋼板Pの前端Paに対応する位置(形状Pa9の位置)から後端Pbに対応する位置(形状Pb9の位置)まで移動制御する。このようにして、テーパ状に成形された帯鋼板Pは、幅方向の端部同士が溶接されることで、テーパ鋼管となる。
【0049】
以上、本実施形態に係る鋼管の製造装置1によれば、帯鋼板Pの幅に応じたロールフラワーに対応するように上下ロールが移動制御されることになる。そのため、前端Paから後端Pbまでの間で幅が変化する帯鋼板Pを用いた場合には、幅に応じた径となるように上下ロールが移動制御される。これにより、前端Paから後端Pbまでの間で径が変化する鋼管を製造することができる。
【0050】
また、帯鋼板Pの幅に応じて変化するロールフラワー(例えば、ロールフラワーFA,FB)の形状が相似形であるため、連続的に幅が変化すると、ロールフラワーの形状も幅に応じて連続的に変化する。これにより、上下ロールを無理なく移動制御することができる。
【0051】
また、上下ロールの移動制御は、ロールフラワーの中間位置が、相似形に変化するロールフラワー(例えば、ロールフラワーFA,FB)で一致するように行われるため、ロールスタンドSを通過する前と後とで、帯鋼板Pが傾き難くなる。これにより、特に連続してテーパ鋼管を製造する際に鋼管に歪み等が発生しにくい。
【0052】
また、成形工程における上下ロールの移動制御は、PLC制御によって行われるため、鋼管を多品種少量生産する場合にも好適に用いられる。
【0053】
また、成形工程の前段に、帯鋼板Pの幅方向の両端縁を所定形状に切断する切断工程を含むことで、同じ幅をもった帯鋼板Pをテーパ鋼管に適したブランク材に加工しながら、連続的に鋼管の製造を行うことができる。
【0054】
なお、本実施形態に係る鋼管の製造装置1によれば、上記のようなテーパ鋼管を好適に製造することができるが、径が変化しない同一経の鋼管ももちろん製造することができる。このとき、第1の径の鋼管を製造する際には、PLC制御装置Cにより上下ロールを第1の径の鋼管のロールフラワーに対応するように移動させればよい。その後、これとは異なる第2の径の鋼管を製造する場合は、PLC制御装置Cにより上下ロールを第2の径の鋼管のロールフラワーに対応するように移動させればよい。
【0055】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではない。例えばブランク材の形状は、例示したものに限定されない。例えば、テーパ鋼管の連続生産を行う場合には、帯鋼板の板幅が減少から増加、増加から減少する変曲点部分近傍を板幅変化のない平行としてもよい。この場合、ピッチ間に相当する平行な部分の長さを自動走行切断装置の切断歯幅分に相当する長さとすることで、テーパ鋼管の連続生産に好適となる。
【0056】
また、断面が円形であるテーパ鋼管を例として説明したが、これに限定されず、例えばテーパ角管などのように断面形状が順次変化するもの、断面の幅が周期的に変化する凹凸溝形断面の成形に対しても本技術は適用できる。例えば、
図15に示されるテーパ角管の成形について説明する。従来の成形法ではサイズの異なる角管の成形は図中に示すスペーサSPの幅を変えることによって両サイドロールを内側に移動することによって行っていた。しかし、これはサイズの異なる角鋼管の成形のみであり、テーパ角管の成形までは不可能である。しかし、テーパ鋼管の成形の場合と同様に、111、112のサイドロールを搭載したPLC冷間ロール成形機をブランク材の左右に配置した構成の装置を用いて成形を行えばテーパ角管の成形も可能である。
【0057】
なお、本実施形態では、一律に径が変化するテーパ鋼管を製造する場合について説明したが、テーパ鋼管以外にも、長手方向に径が不規則に変化する鋼管を製造することができる。