(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5908594
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】風力発電装置を制御するための方法
(51)【国際特許分類】
F03D 7/04 20060101AFI20160412BHJP
【FI】
F03D7/04 Z
【請求項の数】13
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-537560(P2014-537560)
(86)(22)【出願日】2012年10月17日
(65)【公表番号】特表2014-530988(P2014-530988A)
(43)【公表日】2014年11月20日
(86)【国際出願番号】EP2012070601
(87)【国際公開番号】WO2013060613
(87)【国際公開日】20130502
【審査請求日】2014年6月17日
(31)【優先権主張番号】102011085107.0
(32)【優先日】2011年10月24日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】512197272
【氏名又は名称】ヴォッベン プロパティーズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】WOBBEN PROPERTIES GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(74)【代理人】
【識別番号】100119415
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 充
(72)【発明者】
【氏名】ギエルツ、ヘルゲ
(72)【発明者】
【氏名】デ ボエル、ヴォルフガング
【審査官】
尾崎 和寛
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−089093(JP,A)
【文献】
特表2010−518296(JP,A)
【文献】
特開2009−075081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の風力発電装置(2,100)を制御するための方法であって、
− 前記第1の風力発電装置において発生され、前記第1の風力発電装置の異常を示す内部の故障信号(FINT)を検知するステップと、
− 前記第1の風力発電装置の外部で発生され、他の風力発電装置の異常を示す少なくとも1つの外部の故障信号(FEX)を受信するステップと、
− 前記少なくとも1つの外部の故障信号(FEX)に依存して前記内部の故障信号(FINT)を評価するステップとを含む方法であり、
前記内部の故障信号(FINT)が前記第1の風力発電装置(2,100)のある異常を示す場合において、
− 受信された1つの前記外部の故障信号(FEX)ないし受信された複数の前記外部の故障信号(FEX)の1つが、該当する他の風力発電装置の同種の異常を示さない場合には、保護措置が開始され、
− 受信された1つの前記外部の故障信号(FEX)ないし受信された複数の前記外部の故障信号(FEX)の1つが、該当する他の風力発電装置の同種の異常を示す場合には、警告信号が発生され、この場合には保護措置は開始されないこと
を特徴とする方法。
【請求項2】
前記第1の風力発電装置(2,100)を保護するための少なくとも1つの保護措置が、前記内部の故障信号(FINT)に依存し、そして前記少なくとも1つの外部の故障信号(FEX)に依存して開始されること
を特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記内部の故障信号(FINT)の評価に際しては、前記内部の故障信号(FINT)が異常を示し且つ前記少なくとも1つの外部の故障信号(FEX)ないし複数の前記外部の故障信号(FEX)の少なくとも1つが、各々、該当する外部の風力発電装置の同種の異常を示す場合には、異常がないものとされること
を特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記保護措置は、前記第1の風力発電装置の停止であること
を特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記内部の故障信号(FINT)がある異常を示し且つ前記少なくとも1つの外部の故障信号(FEX)ないし複数の前記外部の故障信号(FEX)の少なくとも1つが、各々、該当する外部の風力発電装置の同種の異常を示す場合において発生される前記警告信号は、コントロールセンタへ送られ、そして前記内部の故障信号(FINT)及び前記少なくとも1つの外部の故障信号(FEX)の情報を含んでいること
を特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記警告信号、又は前記少なくとも1つの外部の故障信号(FEX)の伝達又は提供が、SCADAを用いて行われること
を特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記内部の故障信号(FINT)がある異常を示し且つ前記少なくとも1つの外部の故障信号(FEX)ないし複数の前記外部の故障信号(FEX)の少なくとも1つが、各々、該当する風力発電装置の同種の異常を示す場合には、前記内部の故障信号(FINT)又は該当するセンサ信号が予め定められた時間の間、抑制されること
を特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
前記内部の故障信号(FINT)の評価に際しては、前記内部の故障信号(FINT)がある異常を示し且つ前記少なくとも1つの外部の故障信号(FEX)ないし複数の前記外部の故障信号(FEX)の少なくとも1つが、各々、該当する外部の風力発電装置の同種の異常を示す場合には、異常があるものとされ、そしてパーク異常信号が発生され、該パーク異常信号は、更に別の風力発電装置に対し、当該別の風力発電装置にも該当する異常があることを示すか、又は今までそれ自体対応する故障信号を発生しなかった別の風力発電装置にも該当すると考えられる異常があることを示すこと
を特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項9】
複数の風力発電装置(2,100)を制御するための方法であって、
複数の風力発電装置(2,100)の少なくとも1つが、請求項1又は2に記載の方法を用いて制御され、それらの少なくとも1つの内部の故障信号(FINT)が複数の風力発電装置(2,100)の少なくとも1つの別の風力発電装置に対し、外部の故障信号(FEX)として提供され、複数の前記風力発電装置(2,100)は、それらの故障信号を互いに交換すること
を特徴とする方法。
【請求項10】
少なくとも2つの風力発電装置において、ある故障状態についての故障信号がある場合には、そのような故障信号を発生しなかった別の風力発電装置も、当該故障を検知した風力発電装置と同じ故障状態へもたらされ、又は、パーク異常信号が発生され、前記故障の故障信号を発生しなかった少なくとも1つの風力発電装置ないし前記風力発電装置へ伝達されること
を特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記故障状態は、着氷検知の状態であり、前記別の風力発電装置は、隣接した風力発電装置であること
を特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
風から回転運動を発生させるための空力的ロータ(106)と、該回転運動から電力を発生させるための発電機とを有する風力発電装置(2,100)であって、
該風力発電装置(2,100)は、請求項1又は2に記載の方法を用いて制御され、
更に該風力発電装置(2,100)は、請求項1又は2に記載の方法が実装されている制御装置を有すること
を特徴とする風力発電装置。
【請求項13】
ウインドパークであって、複数の風力発電装置(2,100)を有し、請求項12に記載の風力発電装置(2,100)を少なくとも1つ有し、該ウインドパークは、請求項9による方法を実行することを特徴とするウインドパーク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電装置を制御するための方法、並びに複数の風力発電装置を制御するための方法に関する。更に本発明は、風力発電装置、並びに複数の風力発電装置を備えたウインドパークに関する。
【背景技術】
【0002】
風力発電装置(風力エネルギー設備)は、一般的に知られており、これらの風力発電装置は、今日では通常の構造形式により、風の動力学的エネルギーを空力的ロータ(エアロダイナミックロータ)の運動エネルギーへ変換する。この運動エネルギーは、発電機を用いて電気エネルギーへ変換され、或いはトルク受容(Momentaufnahme)が観察される場合には、電力へ変換される。一般的に通常の風力発電装置が
図1に図示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】EP 2 267 305 A2
【特許文献2】EP 1 906 192 A2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
風力発電装置を制御するためには、風力発電装置における二次損傷、及び/又は危険性、特に人物に対する危険性を排除又は軽減するために、風力発電装置における万一の異常(障害)が起こることも顧慮されなくてはならない。従って場合により保護措置を開始するために、風力発電装置における万一の異常が監視される。
【0005】
例えば風力発電装置のナセル内の火災は、煙センサにより検知することができる。その後、風力発電装置を停止させることができ、場合により消火プロセスを開始することができる。光学式の煙探知器が使用される場合には、該煙探知器は、視界状況が例えば埃や氷結のような他の理由から煙によるよりも悪いとき、誤警報をもたらしてしまう。
【0006】
別の一例として風力発電装置の騒音監視装置が挙げられ、該騒音監視装置は、例えばスピナに設けることができ、即ちロータハブのカバーの領域に設けることができる。そのような騒音監視装置により、異常に大きな騒音(異音)を検知することができ、このことは、既に存在するか又は差し迫っている損傷、特に機械的な機能不良を示唆することができる。この場合、風力発電装置は、以下では同義語として単に「装置」とも称するものとするが、停止され、サービス作業員に通報される。ここでも、例えばスピナを含めて風力発電装置に対して激しく降ひょうがあり、それにより異常に高い騒音レベルに達する場合には、誤警報がもたらされることになる。
【0007】
上記の説明は、誤警報をもたらす可能性のある風力発電装置内の監視装置に関する2つの例にすぎない。そのような誤警報が発生すると、風力発電装置の望まれない停止による収益損失が結果としてもたらされてしまう。他方では、誤警報がなくて、上記の又は他の警告信号に注意が払われないとすると、風力発電装置において又は風力発電装置により遥かに大きな損傷が発生する可能性がある。
【0008】
従って本発明の基礎となる課題は、上記の問題点の少なくとも1つに対処し、特に軽減することである。特に、正しく発生された故障信号を無視する又は見落とすことなく、故障信号をより確実に検知し且つ誤警報をより確実に回避する解決策が創作されるべきである。また少なくとも代替的な実施形態が創作されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明により、請求項1による、風力発電装置を制御するための方法が提案される。
即ち、本発明の
第1の視点により、第1の風力発電装置を制御するための方法であって、前記第1の風力発電装置において発生され、前記第1の風力発電装置の異常を示す内部の故障信号を検知するステップと、前記第1の風力発電装置の外部で発生され、他の風力発電装置の異常を示す少なくとも1つの外部の故障信号を受信するステップと、前記少なくとも1つの外部の故障信号に依存して前記内部の故障信号を評価するステップとを含む
方法であり、前記内部の故障信号が前記第1の風力発電装置のある異常を示す場合において、受信された1つの前記外部の故障信号ないし受信された複数の前記外部の故障信号の1つが、該当する他の風力発電装置の同種の異常を示さない場合には、保護措置が開始され、受信された1つの前記外部の故障信号ないし受信された複数の前記外部の故障信号の1つが、該当する他の風力発電装置の同種の異常を示す場合には、警告信号が発生され、この場合には保護措置は開始されないことを特徴とする方法が提供される。
更に、本発明の第2の視点により、風から回転運動を発生させるための空力的ロータと、該回転運動から電力を発生させるための発電機とを有する風力発電装置であって、該風力発電装置は、前記方法を用いて制御され、更に該風力発電装置は、前記方法が実装されている制御装置を有することを特徴とする風力発電装置が提供される。
更に、本発明の第3の視点により、ウインドパークであって、複数の風力発電装置を有し、前記風力発電装置を少なくとも1つ有し、該ウインドパークは、複数の風力発電装置の少なくとも1つが、前記方法を用いて制御され、それらの少なくとも1つの内部の故障信号が複数の風力発電装置の少なくとも1つの別の風力発電装置に対し、外部の故障信号として提供され、複数の前記風力発電装置は、それらの故障信号を互いに交換するという方法を実行することを特徴とするウインドパークが提供される。
尚、本願の特許請求の範囲に付記されている図面参照符号は、専ら本発明の理解の容易化のためのものであり、図示の形態への限定を意図するものではないことを付言する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明において、以下の形態が可能である。
(形態1)第1の風力発電装置を制御するための方法であって、
− 前記第1の風力発電装置において発生され、前記第1の風力発電装置の異常を示す内部の故障信号を検知するステップと、
− 前記第1の風力発電装置の外部で発生され、他の風力発電装置の異常を示す少なくとも1つの外部の故障信号を受信するステップと、
− 前記少なくとも1つの外部の故障信号に依存して前記内部の故障信号を評価するステップとを含むこと。
(形態2)前記第1の風力発電装置を保護するための少なくとも1つの保護措置、特に前記第1の風力発電装置の停止が、前記内部の故障信号に依存し、そして前記少なくとも1つの外部の故障信号に依存して開始されることが好ましい。
(形態3)前記内部の故障信号の評価に際しては、前記内部の故障信号が異常を示し且つ前記少なくとも1つの外部の故障信号ないし複数の前記外部の故障信号の少なくとも1つが、各々、該当する外部の風力発電装置の同種の異常を示す場合には、異常がないものとされることが好ましい。
(形態4)前記内部の故障信号が前記第1の風力発電装置のある異常を示す場合において、
− 受信された1つの前記外部の故障信号ないし受信された複数の前記外部の故障信号の1つが、該当する他の風力発電装置の同種の異常を示さない場合には、前記第1の風力発電装置の保護措置、特に停止が開始され、
− 受信された1つの前記外部の故障信号ないし受信された複数の前記外部の故障信号の1つが、該当する他の風力発電装置の同種の異常を示す場合には、警告、特に警告信号が発生され、この場合には特に保護措置は開始されないことが好ましい。
(形態5)前記内部の故障信号がある異常を示し且つ前記少なくとも1つの外部の故障信号ないし複数の前記外部の故障信号の少なくとも1つが、各々、該当する外部の風力発電装置の同種の異常を示す場合において発生される警告信号ないし前記警告信号は、コントロールセンタへ送られ、そして前記内部の故障信号及び前記少なくとも1つの外部の故障信号の情報を含んでいることが好ましい。
(形態6)前記警告信号ないし警告信号、及び/又は前記少なくとも1つの外部の故障信号の伝達又は提供が、SCADAを用いて行われることが好ましい。
(形態7)前記内部の故障信号がある異常を示し且つ前記少なくとも1つの外部の故障信号ないし複数の前記外部の故障信号の少なくとも1つが、各々、該当する風力発電装置の同種の異常を示す場合には、前記内部の故障信号及び/又は該当するセンサ信号が予め定められた時間の間、抑制されることが好ましい。
(形態8)前記内部の故障信号の評価に際しては、前記内部の故障信号がある異常を示し且つ前記少なくとも1つの外部の故障信号ないし複数の前記外部の故障信号の少なくとも1つが、各々、該当する外部の風力発電装置の同種の異常、特に着氷を示す場合には、異常があるものとされ、そしてパーク異常信号が発生され、該パーク異常信号は、更に別の風力発電装置に対し、当該別の風力発電装置にも該当する異常があることを示すか、又は今までそれ自体対応する故障信号を発生しなかった別の風力発電装置にも該当すると考えられる異常があることを示すことが好ましい。
(形態9)複数の風力発電装置を制御するための方法であって、複数の風力発電装置の少なくとも1つが、形態1〜8のいずれか一つに記載の方法を用いて制御され、それらの少なくとも1つの内部の故障信号が複数の風力発電装置の少なくとも1つの別の風力発電装置に対し、外部の故障信号として提供され、特に複数の前記風力発電装置は、それらの故障信号を互いに交換することが好ましい。
(形態10)少なくとも2つの風力発電装置において、ある故障状態についての故障信号、特に着氷検知についての故障信号がある場合には、そのような故障信号を発生しなかった別の特に隣接した風力発電装置も、当該故障を検知した風力発電装置と同じ故障状態へもたらされ、及び/又は、パーク異常信号が発生され、前記故障の故障信号を発生しなかった少なくとも1つの風力発電装置ないし前記風力発電装置へ伝達されることが好ましい。
(形態11)風から回転運動を発生させるための空力的ロータと、該回転運動から電力を発生させるための発電機とを有する風力発電装置であって、該風力発電装置は、形態1〜7のいずれか一つに記載の方法を用いて制御され、特に該風力発電装置は、形態1〜7のいずれか一つに記載の方法が実装されている制御装置を有すること。
(形態12)ウインドパークであって、複数の風力発電装置を有し、形態10又は11に記載の風力発電装置を少なくとも1つ有し、該ウインドパークは、形態9又は10による方法を実行すること。
【0011】
本発明により、該当する制御すべき風力発電装置においてその内部で発生された故障信号(Fehlersignal)が検知される。この故障信号は、当該風力発電装置内の火災の疑いや機械的な要素における損傷の疑いのような、当該風力発電装置の異常(障害)を示している。以下、特にこれらの両方の場合、即ち一方では、火災の場合に該当する故障メッセージないし故障信号、他方では、大きな騒音により示された損傷に該当する故障メッセージないし故障信号が説明のために援用される。しかし本発明は、これらの2つの基本的な適用ケースに制限されるものではない。
【0012】
基本的に故障メッセージと称することもできる故障信号が風力発電装置の異常(障害)を示す(ないし知らせる)という表現は、例えば煙探知器の応答(Ansprechen)や騒音センサの応答のような、対応する故障判断基準が手元にあるということとして理解される。故障信号が該当する異常を示すということは、しかしながら実際には異常がないという可能性をも含んでいる。この際、故障信号は、1つのセンサや複数のセンサの結果であり得るが、或いは例えば稼働状態のような他の状態と評価されることもあり得る。また異なる複数の異常のために複数の故障信号が同時に存在するという可能性もある。
【0013】
更に外部の故障信号が(第1の)風力発電装置において受信される。外部の故障信号とは、他の風力発電装置の異常を示す故障信号のことである。特に、外部の即ち他の風力発電装置の異常に関連する外部の故障信号は、当該他の風力発電装置においては、前記の第1の風力発電装置へも伝達される内部の故障信号である。当該内部の故障信号は、この伝達により、第1の風力発電装置にとっては、外部の故障信号となる。
【0014】
さて第1の風力発電装置により内部の故障信号が、少なくとも1つの外部の故障信号に依存して(ないし当該故障信号を考慮して in Abhaengigkeit)評価される。従って内部の故障信号の評価は、この内部の故障信号に限定されるのではなく、それに加えて少なくとも1つの外部の故障信号、即ち特に、異常があるか否かを初めて導き出すために、各々内部の故障信号が示すものと同じ異常ないし異常種類に関する故障信号を考慮する。
【0015】
好ましくは、風力発電装置を保護するための保護措置、特に風力発電装置の停止の保護措置が、内部の故障信号に依存し、そしてそれに加えて少なくとも1つの外部の故障信号に依存して開始される。従って保護措置の開始は、内部の故障信号の評価に制限されるものではない。従って1つの又は複数の考慮された外部の故障信号は、場合により、異常があるものとするか否かについて決定を下すことができる。風力発電装置の停止の他に、例えば、単に更なる一例を述べるためであるが、故障信号が火災時に関する場合であれば消火プロセスの起動のような、他の保護措置も考慮される。
【0016】
一実施形態により、内部の故障信号の評価に際しては、もしも内部の故障信号が異常を示し且つ少なくとも1つの更なる外部の故障信号が、同様に同種の異常、即ち前記外部の故障信号が内部の故障信号である各々の風力発電装置からの異常を示す場合には、異常がないものとするということが提案される。例えば第1の風力発電装置において、特に第1の風力発電装置内の煙探知器により誘因され、火災を示す内部の故障信号が発生した場合には、先ずは火災発生とされなくてはならない。そして他の、例えば第2の、風力発電装置の外部の故障信号であって、同様に火災を示唆する、即ち第2の風力発電装置内の火災を示唆する外部の故障信号がある場合には、このことは、誤警報の示唆(指摘 Hinweis)であり得る。つまり本発明では、2つの風力発電装置内で同時に火災が発生することは殆どあり得ないということが認識されている。むしろそのような場合には、各々火災警告信号を故障信号として出力した煙探知器(複数)が、他の実情により、即ち複数の風力発電装置に対して経験的に及び/又は有意義な内容として同時に期待することのできる実情により、火災とみなして作動したものとすることができる。このことは、例えば砂嵐の場合がそうである。砂嵐がある場合には、視界状況が、直接的な近傍で互いに建てられた複数の風力発電装置において因果的に(必然的に kausalerweise)同時に悪化する可能性がある。
【0017】
そのような現象は、例えば騒音監視におけるような、他の異常においても発生する可能性がある。第1の風力発電装置において内部の故障信号が高すぎる騒音レベルを伝える場合には、このことは、例えば軸受損傷のような機械的な問題を示唆することができる。つまり騒音センサは、先ず第一にないし通常は、緩んだ部品の検知、従って散発的に発生する騒音に対して設計されている。しかしほぼ同時に例えば第2の風力発電装置の外部の故障信号が同様に高すぎる騒音レベルを伝えたとすると、両方の風力発電装置が同時に大きな騒音を発生させる機械的な損傷を有することとなり、あり得ないことである。つまり両方の風力発電装置内で同時に一部材が緩むということは、特にあり得ないことである。その代わりにむしろ、互いに近傍に配設された複数の風力発電装置における大きな騒音の同時発生は、例えば降ひょう(Hagelfall)を示唆することができる。降ひょうは、通常は、個々の風力発電装置において個別に発生することはなく、例えばほぼ同時にウインドパーク全体内で発生する。
【0018】
従って複数の同種の故障信号の存在、ないし複数の同種の異常に対する複数の故障信号の存在は、むしろ、その際にはそのような異常が正に存在していないことを示唆(指摘)しているという、ともかく驚くべき認識に達する。この認識は、説明した方法により考慮され、それに対応して実施される。
【0019】
従って一実施形態により、下記の方法が提案される。即ち内部の故障信号が第1の風力発電装置のある異常を示す場合において、受信された1つの外部の故障信号ないし受信された複数の外部の故障信号の差し当たり1つ又は複数が該当する他の風力発電装置の同種の異常を示さない場合には、保護措置、特に第1の風力発電装置の停止が開始されることにより特徴付けられている方法が提案される。しかし受信された1つの外部の故障信号ないし受信された複数の外部の故障信号の1つが、該当する他の風力発電装置の同種の異常を示す場合には、保護措置が導入(開始)されることはなく、警告、特に警告信号が発生される。既述のように、少なくとも1つの外部の故障信号の追加的な評価は、内部の故障信号があるにもかかわらず、当該内部の故障信号を用いて示された異常が殆どあり得ないであろう(unwahrscheinlich)ことを示唆することができる。この際、前記の異常は、それでも排除されているのではなく、この場合に警告信号を設けることにより、その都度基礎となる状況を更に詳細に分析する可能性が存在する。
【0020】
場合により前記の警告信号がなくても実行することのできるそのような状況の分析は、例えば、風力発電装置か又はその制御装置か又は中央制御装置により自動化して行うことができる。この際、例えば、温度センサの温度のような別のセンサデータが評価される。追加的に又は選択的に分析は手動で行うことができる。特に既知の天候条件又は環境条件に基づき又は他の経験値からも、示された異常がないことを確定するために、内部の故障信号のための理由を見つけ出すことができる。同様に分析によっては、示された異常が期待に反してやはり存在するという結果になることもある。
【0021】
好ましくは、そのような警告信号は、コントロールセンタへ送られるか又はコントロールセンタにより発生される。この際、好ましくは、警告信号は、故障信号に関する情報、即ち1つの内部の故障信号ないし複数の内部の故障信号、及び/又は1つの外部の故障信号ないし複数の外部の故障信号を含むことができる。これらの情報は、それに対応し、各々の故障信号のための本当の原因を見つけ出すために使用することができる。
【0022】
好ましくは、英語に由来する名称であり「Supervisory Control And Data Acquisition」の略語であり、ドイツ語でも周知である所謂SCADAが使用される。複数の風力発電装置では、測定データ及び制御データを個々の風力発電装置の間で伝達するためにもまたコントロールシステムに伝達するためにも、そのようなデータシステムが使用される。このSCADAシステムには、対応する故障信号を提供することできる。それ故、対応してこのシステムに関与している(つながれている)各風力発電装置は、その内部の故障信号を外部の故障信号としてSCADA上で使用可能としている。この際、好ましくは、各々の故障信号は、その種類だけでなく、その出所、即ち特にどの風力発電装置から由来しているのかの情報を含んでいる。それにより特にウインドパークの特に隣接する風力発電装置における複数の故障信号が使用可能であり、つながれている各風力発電装置は、独自の仕方で、提供された情報、特に提供された故障信号を、独自の故障信号評価(装置)へ基本的に任意に取り入れることができる。
【0023】
更なる一実施形態により、内部の故障信号が異常を示し且つ少なくとも1つの外部の故障信号が、各々、該当する他の1つの風力発電装置の同種の異常ないし該当する他の複数の風力発電装置の1つの同種の異常を示す場合には、内部の故障信号及び/又は該当するセンサ信号が予め定められた時間の間、抑制される(参照されない unterdruecken)ことが提案される。
【0024】
また複数の風力発電装置を制御するために使用される包括的な方法を設けることは有利である。複数の風力発電装置の少なくとも1つは、上記の実施形態の少なくとも1つの方法を用いて稼働される。好ましくは、この全制御の基礎となる全ての風力発電装置は、各々、既述の実施形態の1つによる方法を用いて制御される。好ましくは、複数の風力発電装置は、上記の評価を実行可能とするために、それらの故障信号を互いに交換する。このことは、直接的にか又はSCADAのようなコントロールセンタを介して行うことができる。特に複数の風力発電装置の少なくとも1つは、少なくとも1つの内部の故障信号を、残りの風力発電装置に対して外部の故障信号として使用可能としている。それに対応し、これらの風力発電装置を制御するための有利な全体構想(全体コンセプト)が得られる。
【0025】
更に本発明により、風から回転運動を発生させるための空力的ロータ(エアロダイナミックロータ)を有し、更に該回転運動から電力を発生させるための発電機を有する風力発電装置が提案される。当該風力発電装置は、制御のために既述の実施形態の1つの方法を使用する。そのような方法は、風力発電装置において、例えば、制御装置及び/又はプロセス計算機において実装可能である。それに対応し、当該風力発電装置は、内部の故障信号だけが考慮されるのではなく、他の風力発電装置により発生されて提供される更なる複数の外部の故障信号又はそれらの少なくとも1つが考慮されることにより、ある異常をより綿密に評価するように準備されている。
【0026】
好ましくは、複数の風力発電装置を有するウインドパークが提案され、この際、少なくとも1つの風力発電装置は、上述したように構成され、特に既述の実施形態の1つの方法により稼働される。当該ウインドパークは、全体的で包括的な方法を使用するように準備されており、それ故、当該ウインドパークの複数の風力発電装置の全てか又は少なくとも一部は、当該ウインドパーク内の他の風力発電装置の追加的な情報を享受することができる。好ましくは、複数の風力発電装置は、SCADAシステムを介してデータの交換のために互いに連結されている。また中央データを管理し及び/又は転送する中央コントロール箇所(ないしステーション)が設けられていると有利である。ウインドパークは、特に当該ウインドパークが電力系統へ電力を供給するために、全ての風力発電装置に共通の1つの供給ノードポイントを使用することにより特徴付けられている。
【0027】
既述の解決策を用い、同じ異常を示す他のウインドパークの少なくとも1つの他の故障信号がある場合には、内部の故障信号の発生時における保護措置の開始を場合により阻止することができる。この際、この故障信号を最初に発生した風力発電装置がこの故障信号により示される異常があるものとし、それに対応する保護措置を開始するということがあり得る。従ってもしかするとこの風力発電装置は、不必要に停止されることになる。場合により短時間の後であるが、他の風力発電装置から(前記故障信号と同じ)更なる故障信号が更に発生したときに初めて、示された異常がやはり存在しないということが容易に推測できる。今や状況に依存して、既に停止された風力発電装置が−この例に関して言えば−再び始動されるか又は念のためその故障信号の解明に至るまで停止され続けるかを決定することができる。
【0028】
基本的に、統計的な考察を基礎とし、示された異常に関して故障信号のメッセージ(ないし表示 Aussage)を疑ってみることが提案される。好ましくは、単に1つだけの外部の故障信号だけを参考にするのではなく、少なくとも1つの第2の故障信号を考慮し、内部の故障信号により示された異常の存在を、少なくとも2つの外部の故障信号が同じ異常を示す場合に初めて排除することが提案される。好ましくは、示された異常の存在は、3つの外部の故障信号か又は更に好ましくは4つの外部の故障信号が各々他の風力発電装置内の同種の異常を示す場合に初めて排除される。
【0029】
更なる又は選択的な一実施形態により、複数の風力発電装置の間で因果関係にある故障信号が考慮される。この際、特にこれらの故障信号は、複数の風力発電装置の場所的な近傍から得られる状況に依存している。それには、特に着氷検知(Eisansatzerkennung)が属している。ウインドパーク内の複数の風力発電装置においては、通常、極めて似た天候条件が基礎とされる。もしもウインドパーク内の複数の風力発電装置が着氷を検知したとすると、当該ウインドパーク内で全体的に着氷があるという可能性は高い。そのような結論付けは、ウインドパーク内でいくつのそしてどの風力発電装置が着氷を検知したのかにも依存することができ、最終的には、各々の風力発電装置の着氷検知がどれくらい精密であるのかにも依存することができる。例えばウインドパークの11個の風力発電装置のうち10個の風力発電装置が着氷を検知したとすると、11番目の風力発電装置も着氷を有する可能性は高い。しかしこのことは、この11番目の風力発電装置が100パーセント信頼できる信頼性のある着氷検知を行うか、又は、例えばより保護された状態や、着氷を防止するためのロータブレードの加熱装置が既に稼働状態にある場合のような、他の理由が具体的にこの風力発電装置において着氷を否定する証拠となる場合には、該当しない。
【0030】
好ましくは、複数の風力発電装置に関して因果関係にある故障について、複数の風力発電装置における対応の故障信号を評価し、特にウインドパークの複数の風力発電装置を評価することが提案される。好ましくは、そのような評価は、調査される風力発電装置のいくつが、特にウインドパークの風力発電装置のいくつが、この故障信号を現在出力しているのかという評価を含んでいる。補足として、そのような故障信号を出力した風力発電装置についての更なる詳細情報、特にウインドパーク内のそれらの立設場所についての詳細情報を評価することが提案される。そのような評価は、1つの風力発電装置ないし全ての風力発電装置において全体的に又は部分的に行うことができるか、又は中央プロセス計算機において実行することができる。その結果は、好ましくはパーク異常信号として出力され、それ故、例えば、特にウインドパークの全ての風力発電装置との関係で、そのような故障信号を有する風力発電装置の総数を提示することができる。この提示は、絶対的な値として行われるか又はウインドパークに設けられた全ての風力発電装置に関するパーセント表示で提示することができる。好ましくは、パーク異常信号は、ウインドパーク内の上記の故障時のための確率として又は頻度として出力されるか、又はそのような確率又は頻度を計算するために使用される。
【0031】
それ故、様々な風力発電装置の同じ故障について、これらの風力発電装置の間で因果関係にある故障と、これらの風力発電装置の間で因果関係にない故障とを区別することが提案される。因果関係のない故障について、様々な風力発電装置で同じ故障信号が発生する場合には、対応する故障信号が間違って出力されたか、或いは対応する故障信号が間違って出力されたらしいということが想定される。それに対応し、場合によりその故障信号を無視することの根拠とされる。
【0032】
因果関係にある同じ故障を提示する、異なる風力発電装置の複数の故障信号については、それから少なくとも、ウインドパークの更に別の風力発電装置内にも、場合により全ての風力発電装置内にもその故障があることが見込まれる。
【0033】
そのような因果的な故障は、特に着氷に関するものであり、それに対応し、着氷検知ないし氷検知に関するものである。従って好ましくは、ウインドパーク内の既に1つの又は複数の風力発電装置が、対応する氷検知ステータスをもって停止された場合には、パーク氷検知(ウインドパーク内に氷を検知したということ)と称することのできる対応の機能を使い、当該ウインドパークの他の全ての風力発電装置か又は当該ウインドパークの選ばれた風力発電装置を、それら自体がまだ着氷を検知していなくてもストップすることが実行可能であるということが提案される。
【0034】
そのために複数の風力発電装置は、SCADAを介して互いに情報交換する。この際、着氷の各ステータスは、SCADAにより、当該ステータスの発生の時点において一度だけ、ウインドパーク内の当該ステータスを発生させた風力発電装置の数と風力発電装置の番号と共に、当該ウインドパーク内の全ての風力発電装置へ伝達される。各風力発電装置は、当該ウインドパーク内の他の全ての風力発電装置からのこの情報をテーブル内に保存し、当該ウインドパーク内の風力発電装置の各変化時、ないし着氷を検知した風力発電装置の数の各変化時に、所謂パーク凍結度をパーセントで計算する。
【0035】
パーク異常信号を構成することもできるこのパーク凍結度が、予め定められた値よりも大きい場合、特に制御ソフトウェア内で指定可能な値よりも大きい場合には、単に「装置」と称することもできる風力発電装置は、着氷検知ステータスをもってストップされる。しかしこのステータスは、当該ステータスが、該当する装置で発生されたものではないので、全ての装置に分配されることはなく、従って検出されたパーク凍結度に影響を及ぼすこともない。
【0036】
好ましくは、氷検知ステータスを発生させた風力発電装置は、着氷検知(信号ないし情報)がリセットされたら直ちに、他の全ての風力発電装置へ対応の通知情報を送付する。そのようなステータスメッセージは、SCADAを用いてウインドパーク内の全ての風力発電装置へ伝達される。それに基づき各風力発電装置は、着氷がもはやないとの情報を発生させた風力発電装置の着氷検知(着氷検知のデータ)を自身のテーブルから消去し、新たにパーク凍結度を計算する。そしてこのパーク凍結度が設定された限界値よりも小さい場合には、当該風力発電装置が再びスタートする。
【0037】
例えば20パーセントとの限界値が設定される場合には、このことは、例えば10個の風力発電装置を有するウインドパークにおいて、2つの又はそれよりも多くの風力発電装置が氷検知ステータスを発生させるときに、当該(10個の)風力発電装置がストップされることを意味する。パーク氷検知を非活性化するためには、この限界値のために100パーセントとの値が設定されなくてはならない。
【0038】
好ましくは、そのような値は、手動でも消去ないし0へリセットすることができる。
【0039】
そのようなパーク氷検知のリセットは、好ましくは、例外時においてのみ実行することができる。そのようなパーク氷検知によりストップされた風力発電装置を再び稼働状態にするためには、パーク氷検知のリセットの代わりに、全体として、着氷のためにストップされた風力発電装置における氷検知をリセットすべきであろう。それにより、パーク凍結度は限界値よりも低下し、従ってこの限界値に依存してストップされた風力発電装置を再び始動することができる。
【0040】
同様に、限界値を100パーセントにセットすることにより、整備目的のために単に短期であろうと、パーク氷検知が原因でストップされた単独の風力発電装置を再び稼働状態にすることができ、それによりこの風力発電装置のためのパーク氷検知が事実上非活性化される。
【0041】
以下、添付の図面に関連し、例示した具体的な実施形態に基づき、本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】本発明による方法を使用する風力発電装置を示す図である。
【
図2】故障信号を交換して共通に評価するためにSCADAシステムを介して互いに接続された3つの風力発電装置を模式的に示す図である。
【
図3】風力発電装置を制御するための一実施形態のフローチャートを示す図である。
【実施例】
【0043】
図1は、タワー102とナセル104とを備えた風力発電装置(風力エネルギー設備)100を示している。ナセル104には、3つのロータブレード108とスピナ110とを備えたロータ106が配設されている。ロータ106は、稼働時には風により回転運動を行い、それによりナセル104内の発電機を駆動する。
【0044】
図2は、データコントロールシステム4を介して接続されている3つの風力発電装置2を模式的に示しており、前記データコントロールシステム4は、ここでは有線接続形式として実施されているが、無線接続形式として設けることもできる。更にこのデータコントロールシステム4は、所謂SCADAシステム(Supervisory Control And Data Acquisition System)6にも接続されている。SCADAシステム6は、ここで具体的に示された統計ブロック8を含んでいる。異常(障害)を示す故障信号のような様々な情報が、各々、風力発電装置2からSCADAシステム6に送られる。このことは、情報矢印10により各々模式的に示唆されている。集合矢印12は、それらの情報がSCADAシステム6に集まることを具体的に示している。これらの情報から、統計ブロック8を用い、統計的な評価を行うことができる。それには、故障信号が本当に異常を示しているのか、又は誤警報であり得るのかを確定するために、複数の風力発電装置の複数の故障信号を共同で評価することが含まれる。この際、例えば、左側に図示された風力発電装置2により、この風力発電装置にとって内部の故障信号としての故障信号が、外部の故障信号としての他の2つの風力発電装置2の故障信号と共に評価される。
図2の図面では、図示された3つの風力発電装置2が機能的に同等であるよう図示されていることが守られている。従って状況に応じ、即ちどこで最初に故障信号が発生するかに応じ、3つの風力発電装置2の各々は、上記の説明の意味において内部の故障信号を提供する第1の風力発電装置であり得る。この図示の例において残りの2つの風力発電装置は、各々、外部の故障信号を提供する他の風力発電装置であり得る。
【0045】
図2において評価は、当該評価がSCADAシステム6において実行されるように図示されている。同様に評価を、各々風力発電装置において実行することもできる。いずれにせよSCADAシステムは、少なくとも情報転送のため、好ましくは情報評価のためにも使用される。
【0046】
更に
図2は、雷雲14を具体的に示している。この雷雲14が雷鳴を伴って稲妻を発すると、この雷鳴は、図示された全ての風力発電装置2において騒音センサ(異音センサ)を作動させるほど大きな騒音を発生させることになり、該騒音センサは、各場合において即ち風力発電装置2の各々において、対応する故障信号を発生させる。破線の作用線16は、雷鳴が風力発電装置2の各々へ影響を及ぼすことを具体的に示している。それにより図示されたこの例では、風力発電装置2の各々が、対応する故障信号を発生させ、従って全部で3つの故障信号が発生され、SCADAシステム6において共同で評価される。具体的に示されたこの例において雷鳴による影響時には、同時に3つの風力発電装置2が、各々、大きな騒音に起因する故障信号を発生させたことになる。その結果、この例では、このことが、異音を引き起こす緩んだ部品のような装置の欠陥によるのではなく、3つの全ての風力発電装置2に対して同時に作用する1つの現象に関連しているはずだということが結論付けられる。気象情報の追加的な評価により、自動化して又は作業員により手動で、異常があるのではなく、むしろ近づく雷雨が騒音センサの作動の原因であるはずだという推測を裏付けることができる。
【0047】
3つの全ての風力発電装置2が同時に、騒音センサを作動させる技術的な損傷を有することは殆んどあり得ないであろう(unwahrscheinlich)という認識が基礎とされている。たとえこれらの3つの風力発電装置2の1つにおいて、雷鳴が例えばこの風力発電装置の近くにあることにより、その騒音センサが最初に作動するとしても、できればこの風力発電装置は、念のためにオフ(作動停止)とされるが、複数の更なる故障信号の受信後には、確率性の考察から、至るところにそのような技術的な損傷があることは不可能であるということが結果として得られ、それに対応し、全ての風力発電装置がオフとされることはなく、それに対応し、手動で再始動される必要もない。それにより風力発電装置の使用可能性を向上させることができる。この状況に続き、場合により、差し当たりオフとされた風力発電装置を再始動することもできる。このことは、実施形態に応じ、手動で又は自動化して行うことができる。
【0048】
騒音の基となる万一の故障信号を伴うそのような雷鳴は、単に一例である。別の現象や別の故障信号も、それに対応して処理することが可能である。
【0049】
図3は、一実施形態により提案された評価のフローチャートを簡素化して具体的に示している。それによるとブロック30において、第1の風力発電装置の内部の故障信号(F
int)が記録される。ブロック32とブロック34は、基本的に任意に複数の他の外部の故障信号(F
ex,1〜F
ex,n)を記録することができることを具体的に示している。基本的にこのことは、そのために使用可能な風力発電装置の総数に依存している。従って
図3の例は、n+1個の風力発電装置、即ち第1の風力発電装置と他のn個の風力発電装置に関するものである。
【0050】
複数の故障信号、即ち内部の故障信号も外部の故障信号も、評価ブロック36に集められる。この際、図示の例では、故障信号であって、常に存在するがその値に基づいて異常があるか否かを初めて示すという故障信号を前提としていることが顧慮されなくてはならない。つまり例えば故障信号は、異常がない場合には0の値をとり、異常が想定される場合には1の値をとることができる。或いは故障時になって初めて故障信号の伝達を行うようにしてもよい。
【0051】
その後、そのように集められた情報は、先ず、内部の故障信号F
intのための第1質問ブロック38において評価される。評価が否定的(ネガティブ)である場合、即ち第1の風力発電装置に対して故障信号がない場合には、全てo.k.であり、フローは第1出力ブロック40に分岐し、該第1出力ブロック40は、この箇所において少なくとも第1の風力発電装置のために評価を中断し、場合によりo.k.信号を出力する。しかしむしろ故障時に初めて処理要求が発生するので、この信号の出力は、重要なことではない。
【0052】
第1質問ブロック38の結果が肯定的(ポジティブ)である場合、即ち第1の風力発電装置に対して故障信号がある場合には、第2質問ブロック42において更なる質問が行われる。ここでは、外部の故障信号F
ex,1〜F
ex,nの少なくとも1つが場合により同種の故障ないし同種の異常を示しているか否かが検査される。
【0053】
外部の故障信号F
ex,1〜F
ex,nの少なくとも1つが同種の故障ないし同種の異常を示していない場合には、本当に第1の風力発電装置に異常があることが結論付けられ、従って当該風力発電装置はストップされ、このことは、保護ブロック44により明確にされている。当該風力発電装置は、それに対応して停止することができ、また他の又は追加的な措置を考慮することもできる。
【0054】
それに対して第2質問ブロック42において結果が肯定的(ポジティブ)である場合、即ち他の風力発電装置において第1の風力発電装置の内部の故障信号と同じ異常を示す少なくとも1つの外部の故障信号がある場合には、少なくとも、直接的に保護措置がとられるのではなく、その代わりに警告ブロック46により警告が出力される。この警告は、SCADAにおいて更に処理することができ、そして場合により後の段階で、別の情報に基づき最終的に誤警告とされるのか、又はやはり第1の風力発電装置が停止される必要があるのか、又は他の保護措置がとられる必要があるのかを決定することができる。
【0055】
第2質問ブロック42では、最終的に警告ブロック46に分岐して保護ブロック44へは分岐しないために、少なくとも2つの又は少なくとも3つの又は少なくとも4つの外部の故障信号、即ち他の風力発電装置の数に対応する外部の故障信号が、内部の故障信号と同じ異常を示していなくてはならないということを質問するように、質問を行うこともできる。
【0056】
図3に示された概要は、基本的に、観察される風力発電装置集合体の各風力発電装置、特に対応するウインドパークの各風力発電装置のために、一連的(ないし順次的 sukzessive)又は平行して実行することができる。
【0057】
従って本発明により簡単な方式で、特に追加的なハードウェア装備を伴うことなく、統計的な評価を介し、万一の故障信号についての解析力(Aussagekraft)が改善される。従って望まれない万一の風力発電装置の停止状態を回避することができる。
【0058】
従ってウインドパークの複数の風力発電装置に関して統計的に割り出された確率により万一の誤測定又は誤評価を修正することができる。従ってそのような誤測定からの誤警報に起因する風力発電装置の停止時間を回避することができる。
【0059】
そのために中央SCADAシステムは、ウインドパークの全ての風力発電装置の全ての状態を検知する。必要とされるこれらのデータは、ステータスデータと称することもできる。選択された状態が統計的に検知され、即ち特に同じ時点で同じ状態を有する風力発電装置の数として検知され、統計情報として風力発電装置へ送り返される。従って自律式(autark)の風力発電装置用制御装置は、統計情報の取り入れのもとに、誤警報を回避することができる。従ってSCADAシステムは、データ構成とデータベース設定を成し遂げるが、この際、それらからどの結論を導き出すべきなのかは、各々の風力発電装置自体に任されている。従って一実施形態により、風力発電装置内に設けられた自律式の風力発電装置用制御装置は、統計情報の取り入れのもとに、誤警報を回避できるか、又は他の風力発電装置の状態を利用し、それに対応してそれらの状態に応答することができる。
【0060】
一回限りのソフトウェアに関する手間と費用が必要とされるだけなので、低コストの解決策が創作される。
【0061】
今一度、以下の具体的な例を用いて説明を加える。
【0062】
激しい雷雨や、極端に大きなひょうの粒を伴った降ひょうのような場合、従来技術では騒音センサの誤作動がもたらされてしまう。この際、対策を講じるために、SCADAを用いたウインドパーク内の複数の風力発電装置の情報交換が提案される。
【0063】
1つの風力発電装置が、例えば、通常は対応の「50:14」とのステータス(「スピナ内の騒音」)に先行する「スピナ内の騒音を検知した」のような対応の情報をSCADAへ伝達すると直ちに、この情報は、SCADAから直接的にウインドパーク内の全ての風力発電装置へ送り返される。従って各風力発電装置は、所定の時間内で当該ウインドパーク内の他の風力発電装置の騒音センサも反応したか否かを検知する可能性を有する。
【0064】
例えば30分以内に、2つの又は3つの風力発電装置を有するウインドパーク内の2つの風力発電装置、ないし比較的大規模なウインドパーク内の3つの又はそれよりも多くの風力発電装置が騒音を検知した場合には、当該ウインドパークの全ての風力発電装置の騒音センサは少なくとも30分の間、非作動状態にされる。この際、全ての風力発電装置は「騒音センサを非作動状態にした」とのステータス情報を発生させる。1つの風力発電装置により最後の騒音が検知された後、30分してから、又は最大で5時間してから、騒音センサは再び作動状態にされる。この際、前記の30分の代わりに或いは前記の5時間の代わりに他の時間値を使用することができる。その後、全ての風力発電装置は「騒音センサを作動状態にした」との情報をSCADAへ伝達する。これらの情報により必要に応じ、いつどのくらいの長さで騒音センサが非作動状態にされていたのかを確認することができる。
【0065】
もしも1つの風力発電装置が、十分な数の他の風力発電装置が同様にスピナ内の騒音を検知しないうちに、雷雨や降ひょうに基づくとして既に上記の「50:14」とのステータスを用いてオフ(作動停止)とされていたのであれば、その際には、この風力発電装置において所謂リセット遮断(Reset-Sperre)が再び解除され、異常が確認(quittieren)される。この風力発電装置は、今や自動で、非作動状態にされた騒音センサと共に再び稼働状態へ移る。しかしそのための前提は、上記の「50:14」とのステータスが30分よりも長くは続かないということである。つまりその際には、このステータスのために他の原因があることが前提とされなくてはならないためである。(この際、当該内容は、以下の経過状況を意味している。即ち、1つの風力発電装置において異常が発生したとする。この際、この風力発電装置は「50:14」とのステータスをもってスイッチオフされる(リセット遮断のこと)。ステータス「50:14」が30分の間、他の風力発電装置により発生されない。それにより前記の異常が確認(確定)される。)
【0066】
リセット遮断は、風力発電装置が運営者(Betreiber)により再び稼働され得ることを防止する。リセット遮断は、サービス作業者によるサービスコードの入力後に解除することができる。
【0067】
雷雨に起因する誤作動は、これらの措置により将来は十分に排除されることができるようになるだろう。単独の風力発電装置のためには、制御システム内のこの提案された変更は、基本的に効果がなく、従ってソフトウェア変更は、風力発電装置が唯一の風力発電装置として建てられるべきか又はウインドパーク内に建てられるべきかを配慮する必要なく、基本的に一般的なものとして提案することができる。それ故、単独の風力発電装置における個別化された誤作動は、場合により甘受されなくてはならないだろう。
【0068】
別の一例として、煙探知器を用いた場合の既存の問題を説明する。極めて細かい氷晶や砂漠の埃等により、従来技術では、幾つかの所在地において、再三にわたりナセル内の煙探知器の誤作動が発生している。このためにも、基本的に上記の騒音センサの場合と同様に、ウインドパーク内の複数の風力発電装置の情報交換をSCADAを用いて行わせることが提案される。
【0069】
この際、1つの風力発電装置が「煙探知器(ハッチ Luke)」ないし「煙探知器(スピナ)」とのステータスをSCADAへ伝達すると直ちに、この情報は、SCADAから直接的にウインドパーク内の全ての風力発電装置へ送り返されるないし分配される。従って各風力発電装置は、所定の時間内で当該ウインドパーク内の他の風力発電装置の煙探知器も反応したか否かを検知する可能性を有する。
【0070】
例えば5時間以内に、2つの又は3つの風力発電装置を有するウインドパーク内の2つの風力発電装置、ないし比較的大規模なウインドパーク内の3つの又はそれよりも多くの風力発電装置において煙探知器が反応する場合には、当該ウインドパーク内の全ての風力発電装置についてハッチとスピナにおける両方の煙探知器は、24時間の間、非作動状態にされる。この際、全ての風力発電装置は「ハッチとスピナの煙探知器を非作動状態にした」との情報を発生させる。24時間の経過後、煙探知器は「ハッチとスピナの煙探知器を作動状態にした」との情報と共に少なくとも6時間の間、再び作動状態にされる。これらの時間も変更することができる。それにより、ウインドパーク内の複数の例えば欠陥のある煙探知器が全ての風力発電装置の煙探知器を持続的に非作動状態にしてしまうことが防止される。
【0071】
煙探知器を非作動状態にすることは、好ましくは、既に2つのないし3つの風力発電装置が「煙探知器を自動で非作動状態にする」とのステータスと共にオフ(作動停止)とされたときに初めて行われるので、この風力発電装置においてはリセット遮断が再び解除され、異常が確認される。この風力発電装置は、今や自動で、非作動状態にされた煙探知器と共に再び稼働状態へ移る。しかしそのための前提は、上記の「煙探知器を自動で非作動状態にする」とのステータスが5時間よりも長くは続かないということである。つまりその際には、そのステータスのために他の原因があることが想定されなくてはならないためである。
【符号の説明】
【0072】
2 風力発電装置(風力エネルギー設備)
4 データコントロールシステム
6 SCADAシステム
8 統計ブロック
10 情報矢印
12 集合矢印
14 雷雲
16 作用線
30 ブロック(内部の故障信号を記録)
32 ブロック(外部の故障信号を記録)
34 ブロック(外部の故障信号を記録)
36 評価ブロック
38 第1質問ブロック
40 第1出力ブロック
42 第2質問ブロック
44 保護ブロック
46 警告ブロック
F
int 内部の故障信号
F
ex,1〜F
ex,n 外部の故障信号
100 風力発電装置(風力エネルギー設備)
102 タワー
104 ナセル
106 ロータ
108 ロータブレード
110 スピナ