特許第5908595号(P5908595)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許5908595酸化物触媒及びその製造方法、並びに、不飽和アルデヒド、ジオレフィン及び不飽和ニトリルの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5908595
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】酸化物触媒及びその製造方法、並びに、不飽和アルデヒド、ジオレフィン及び不飽和ニトリルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/882 20060101AFI20160412BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20160412BHJP
   B01J 23/883 20060101ALI20160412BHJP
   B01J 23/889 20060101ALI20160412BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20160412BHJP
   C07C 45/35 20060101ALI20160412BHJP
   C07C 47/22 20060101ALI20160412BHJP
   C07C 5/48 20060101ALI20160412BHJP
   C07C 255/08 20060101ALI20160412BHJP
   C07C 253/26 20060101ALI20160412BHJP
   C07C 11/167 20060101ALI20160412BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20160412BHJP
【FI】
   B01J23/882 Z
   B01J37/08
   B01J23/883 Z
   B01J23/889 Z
   B01J37/04 102
   C07C45/35
   C07C47/22 A
   C07C5/48
   C07C255/08
   C07C253/26
   C07C11/167
   !C07B61/00 300
【請求項の数】12
【全頁数】59
(21)【出願番号】特願2014-538649(P2014-538649)
(86)(22)【出願日】2013年9月27日
(86)【国際出願番号】JP2013076364
(87)【国際公開番号】WO2014051090
(87)【国際公開日】20140403
【審査請求日】2015年2月13日
(31)【優先権主張番号】特願2012-216071(P2012-216071)
(32)【優先日】2012年9月28日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2012-253243(P2012-253243)
(32)【優先日】2012年11月19日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-33663(P2013-33663)
(32)【優先日】2013年2月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】303046314
【氏名又は名称】旭化成ケミカルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】吉田 淳
(72)【発明者】
【氏名】山口 辰男
【審査官】 岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−239386(JP,A)
【文献】 特開平05−253480(JP,A)
【文献】 特開昭57−171437(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00−38/74
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン及び/又はアルコールから、不飽和アルデヒド、ジオレフィン、又は不飽和ニトリルを製造する際に用いられる酸化物触媒であって、下記(1)〜(4)を満たす酸化物触媒;
(1)モリブデン、ビスマス、鉄、コバルト、及びイオン半径が0.96Åよりも大きな元素A(ただし、カリウム、セシウム及びルビジウムを除く)を含有し、
(2)前記モリブデン12原子に対する、前記ビスマスの原子比aが1≦a≦5であり、前記鉄の原子比bが1.5≦b≦6であり、前記元素Aの原子比cが1≦c≦5であり、前記コバルトの原子比dが1≦d≦8であり、
(3)前記モリブデン、前記ビスマス、前記鉄、及び前記元素Aを含む結晶系からなるdisorder相Bi3-xxFe1Mo212を含む。
(4)X線回折における回折角(2θ)が、18.30°±0.2°、28.20°±0.2°、33.65°±0.2°、及び46.15°±0.2°の範囲に単一ピークを有し、且つ、
2θ=33.65°±0.2°のピークaの強度(Ia)と、2θ=34.10°±0.2°のピークbの強度(Ib)との強度比(Ia/Ib)が2.0以上である。
【請求項2】
下記組成式(1)で表される組成を有する、請求項に記載の酸化物触媒。
Mo12BiaFebcCodefg (1)
(式中、Moはモリブデンであり、Biはビスマスであり、Feは鉄であり、元素Aはイオン半径が0.96Åよりも大きな元素(ただし、カリウム、セシウム及びルビジウムを除く)であり、Coはコバルトであり、元素Bはマグネシウム、亜鉛、銅、ニッケル、マンガン、クロム、及び錫からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であり、元素Cはカリウム、セシウム、及びルビジウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であり、a〜gは、Mo12原子に対する各元素の原子比であり、Biの原子比aは1≦a≦5であり、Feの原子比bは1.5≦b≦6であり、元素Aの原子比cは1≦c≦5であり、Coの原子比dは1≦d≦8であり、元素Bの原子比eは0≦e<3であり、元素Cの原子比fは0≦f≦2であり、Fe/Coの比は0.8≦b/dであり、gは酸素以外の構成元素の原子価によって決まる酸素の原子数である。)
【請求項3】
担体として、シリカ、アルミナ、チタニア、及びジルコニアからなる群より選ばれる少なくとも1種をさらに含む、請求項1又は2に記載の酸化物触媒。
【請求項4】
モリブデン、ビスマス、鉄、コバルト、及びイオン半径が0.96Åよりも大きな元素A(ただし、カリウム、セシウム及びルビジウムを除く)を含む、触媒を構成する原料を混合して原料スラリーを得る混合工程と、
得られた該原料スラリーを乾燥して乾燥体を得る乾燥工程と、
得られた該乾燥体を焼成する焼成工程と、
を有し、
前記焼成工程は、前記乾燥体を100℃から200℃まで1時間以上掛けて徐々に昇温する昇温工程を有する、酸化物触媒の製造方法。
【請求項5】
前記原料スラリーのpHが8以下である、請求項に記載の酸化物触媒の製造方法。
【請求項6】
前記焼成工程は、200〜300℃の温度で仮焼成して仮焼成体を得る仮焼成工程と、
得られた仮焼成体を300℃以上の温度で本焼成して触媒を得る本焼成工程と、
を有する、請求項4又は5に記載の酸化物触媒の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか1項に記載の酸化物触媒を用いて、オレフィン及び/又はアルコールを酸化して不飽和アルデヒドを得る不飽和アルデヒド製造工程を有する、不飽和アルデヒドの製造方法。
【請求項8】
前記オレフィン及び/又は前記アルコールが、プロピレン、イソブチレン、プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、及びt−ブチルアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項に記載の不飽和アルデヒドの製造方法。
【請求項9】
前記不飽和アルデヒド製造工程において、流動層反応器中で、前記オレフィン及び/又は前記アルコールと、酸素源と、を気相接触酸化反応させ、前記流動層反応器から前記不飽和アルデヒドを含む生成ガスを流出させる流出工程を有する、請求項7又は8に記載の不飽和アルデヒドの製造方法。
【請求項10】
前記気相接触酸化反応の反応温度が400〜500℃であり、
前記流動層反応器から流出する前記生成ガス中の酸素濃度が0.03〜0.5体積%である、
請求項7〜9のいずれか1項に記載の不飽和アルデヒドの製造方法。
【請求項11】
請求項1〜のいずれか1項に記載の酸化物触媒を用いて、炭素数4以上のモノオレフィンを酸化してジオレフィンを得るジオレフィン製造工程を有する、ジオレフィンの製造方法。
【請求項12】
請求項1〜のいずれか1項に記載の酸化物触媒を用いて、流動層反応器内で、プロピレン、イソブチレン、プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、及びt−ブチルアルコールからなる群より選ばれる1種以上と、分子状酸素と、アンモニアと、を反応させて不飽和ニトリルを得る不飽和ニトリル製造工程を有する、不飽和ニトリルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化物触媒及びその製造方法、並びに、前記酸化物触媒を用いた、不飽和アルデヒド、ジオレフィン及び不飽和ニトリルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不飽和アルデヒドを主成分として製造する際に用いられる酸化物触媒について、これまでに数多くの報告されている。例えば、古くはソハイオ社によって見出された、必須成分としてMo、Biを含む複合酸化物触媒が知られている。また、特許文献1には、触媒を構成する金属として、Mo、Bi、Ce、K、Fe、Co、Mg、Cs、Rbに着目した触媒が記載されている。
【0003】
不飽和アルデヒドの製造方法は、例えば、プロピレン、イソブチレン、及びイソブタノール、t−ブチルアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種を原料とし、アクロレイン又はメタクロレイン等の不飽和アルデヒドを中間体として、酸化的エステル化反応によって、アクリル酸メチル又はメタクリル酸メチル等の(メタ)アクリレートを製造する方法などに用いられる。この(メタ)アクリレートを製造する方法としては、直メタ法と呼ばれる2つの反応工程からなる方法と、直酸法と呼ばれる3つの反応工程からなる方法と、が知られている。直酸法は、3つの工程で(メタ)アクリレートを製造するプロセスである(例えば、非特許文献1参照。)。直酸法の第1酸化工程は、触媒の存在下で、プロピレン、イソブチレン、及びt−ブチルアルコールからなる群より選ばれる少なくとも一つの出発物質と、分子状酸素と、を気相接触酸化反応させて、アクロレイン、又はメタクロレイン等の不飽和アルデヒドを製造する工程である。また、第2酸化工程は、触媒の存在下で、第1酸化工程で得られた不飽和アルデヒドと、分子状酸素と、を気相接触酸化反応させて、(メタ)アクリル酸を製造する工程である。最後のエステル化工程は、第2酸化工程で得られた(メタ)アクリル酸をさらにエステル化して、(メタ)アクリレートを得る工程である。エステル化の際に、アルコールとしてメタノールなどを用いた場合には、アクリル酸メチル又はメタクリル酸メチルを得ることができる。
【0004】
これに対し、直メタ法は、プロピレン、イソブチレン、イソブタノール、及びt−ブチルアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種を原料と、分子状酸素含有ガスと、を気相接触酸化反応させて、アクロレイン又はメタクロレイン等の不飽和アルデヒドを製造する第1反応工程と、得られた不飽和アルデヒドと、メタノール等のアルコールと、分子状酸素と、を反応させて、一挙にアクリル酸メチル又はメタクリル酸メチル等の(メタ)アクリレートを製造する第2反応工程の2つの触媒反応工程からなる。
【0005】
このような酸化物触媒が用いられる反応方式には、固定層、流動層及び移動層がある。これらのうち、固定層反応方式は、原料ガスの流動状態が押し出し流れに近く、反応収率を高くできるという利点を活かし、工業的に多く採用されている。
【0006】
ところが、固定層反応方式は伝熱性が低く、除熱や加熱が必要な発熱反応や吸熱反応には不向きであり、特に酸化反応のような激しい発熱反応では、温度が急激に上昇し制御困難に陥り、反応が暴走する恐れがあるという問題がある。さらに、こうした急激な温度上昇によって、触媒がダメージを受け、早期に劣化してしまうという問題もある。
【0007】
これに対し、流動層反応方式は、反応器内を触媒粒子が激しく流動することで、伝熱性が高く、大きな発熱や吸熱を伴う反応時も反応器内温度をほぼ均一に保ち、過度の反応進行を抑制できるという利点がある。また、エネルギーの局所蓄積が抑制されるため、爆発範囲内の原料ガスを反応させることが可能で、原料濃度を高めて生産性を向上させられる、という利点がある。従って、流動層反応方式は高発熱反応であるオレフィン及び/又はアルコールの接触酸化反応に適した反応方式である。以上のような流動層反応方式の有利な点が知られているにも拘らず、一般に不飽和炭化水素を不飽和アルデヒドに転化する場合、例えば特許文献2及び3には固定層触媒の使用が好ましいと記載されている。オレフィン及び/又はアルコールの接触酸化反応による不飽和アルデヒドの製造において、同文献に記載の触媒は固定層、移動層、流動層のいずれの方法においても使用可能と記載されているものの、固定層以外の反応方式について、具体的な記載はない。
【0008】
また、1,3−ブタジエン等のジオレフィンの製造方法としては、ナフサ熱分解が主流な方法であるが、近年、石油代替資源へのシフトに伴い、気相酸化反応による製造への要望が高まっている。気相酸化反応を利用したジオレフィンの製造方法としては、触媒の存在下で、n−ブテンやイソペンテンなどの炭素数が4以上のモノオレフィンと、分子状酸素と、を接触酸化脱水素反応させて、モノオレフィンに対応する、1,3−ブタジエンやイソプレンなどの共役ジオレフィンを製造する方法が挙げられる。このような反応に用いられる触媒として、例えば、特許文献4には、モノオレフィンの酸化脱水素反応の触媒として、Mo、Bi、Fe、Ce、Ni、Mg、Rbを含む酸化物触媒が記載されている。
【0009】
さらに、アクリロニトリル又はメタクリロニトリル等の不飽和ニトリルの製造方法としては、触媒の存在下で、プロピレン、イソブチレン、イソブタノール及びt−ブチルアルコールからなる群より選ばれる1種以上と、分子状酸素と、アンモニアと、を反応させる方法が知られている。この方法は、「アンモ酸化プロセス」として広く知られており、現在、工業的規模で実施されている。
【0010】
不飽和ニトリルの製造方法を工業的規模で一層効率的に実施することを目指し、アンモ酸化プロセスに用いる触媒について種々の検討が進められている。このようなアンモ酸化用触媒としては、Mo−Bi−Fe−Ni系、Mo−Bi−Fe−Sb系等の複合金属酸化物からなるものが知られているが、性能の向上を目指して、これらの必須金属にその他の成分を加えた組成も多く検討されている。例えば、特許文献5には、モリブデン、ビスマス、鉄、セリウム、ニッケルに加え、その他成分を添加した触媒が開示されている。また、特許文献6には、モリブデン、ビスマス、鉄、アンチモン、ニッケル、クロムに加え、その他成分を添加した触媒が開示されている。
【0011】
非特許文献2によると、disorder相とは、無秩序相や準安定構造であり、例えば、Bi、Mo、Feの3成分系の複合酸化物の場合、MoサイトにFeがランダムに置換した構造であり、Mo原子とFe原子が同じ酸素4面体構造を形成することを特徴とする。一方、order相とは、組成はdisorder相と同じであるが、構造が異なり、秩序相や安定構造であり、disorder相よりも高温の熱処理で得られ、Fe原子とMo原子が個々に四面体を形成する。つまり、Fe原子は酸素四面体を形成し、Mo原子はFe原子とは別に酸素四面体を形成する。非特許文献2には、BiFeMo12のdisorder相は450℃で形成するが、475℃の反応温度でorder相へ相転移するとの記載がある。
【0012】
1)disorder相BiFeMo12
非特許文献2に記載されたdisorder相BiFeMo12の結晶構造を図1に示す。シーライト型結晶(CaWO型)の正方晶系であり、単位胞の格子定数については、2本の長さは等しく、3本のそれぞれのなす角は90度である(A=B≠C、α=β=γ=90度)。また、酸素四面体で囲まれたXサイト、酸素で囲まれていないYサイトの2つのサイトを有し、XサイトにはMoとFeがランダム、又はある確率分布を持って占有している。Yサイトは、Bi及びその他元素若しくは格子欠陥がランダム又はある確率分布を持って占有している。AB面内の各層は、XサイトとYサイトが、それぞれA軸、B軸方向の格子定数と等しい長さの平面正方格子を作っており、互いに、面内で格子定数の1/2ずつ、A軸方向、B軸方向それぞれにずれた位置を占めている。C軸方向の積層は、各AB面内の層が、(A/2,0)、(0.B/2)それぞれずれることを繰り返し重なっている。積層の際、Xサイトの周りの酸素4面体は、内包する原子を中心にC軸の周りに90度ずつ回転しながら、配置される。
【0013】
disorder相BiFeMo12のX線回折(XRD)を図3に示す。X線回折(XRD)でdisorder相の結晶のX線回折角2θ=10°〜60°の範囲を測定すると、少なくとも18.30°±0.2°(101)面、28.20°±0.2°(112)面、33.65°±0.2°(200)面、46.15°±0.2°(204)面、に単一なピークを示す。
【0014】
2)order相BiFeMo12
比較のため、order相BiFeMo12の結晶構造を図2に示すが、歪んだシーライト構造の単斜晶系であり、単位胞の格子定数については、各辺の長さは、それぞれ異なる。3本の基本ベクトルのなす角は、2つが90度であり、1つが異なっている(A≠B≠C、α=γ=90度、β≠90度)。酸素四面体で囲まれた不等価な2つのサイト、X1、X2と、酸素で囲まれていないYサイトの3つのサイトを有し、X1サイトはMo及びその他元素又は格子欠陥、X2サイトはFe及びその他元素又は格子欠陥、YサイトはBi及びその他元素又は格子欠陥が占有している。
【0015】
3)disorder相BiFeMo12とorder相BiFeMo12の構造の違い
disorder相BiFeMo12は、Xサイト若しくはYサイトがそれぞれ等価であるか、又は異種元素がランダムに配位している。一方、order相では、Xサイト若しくはYサイトは、異なる元素種又は欠陥が規則正しく、決まったサイトに占有し、2種類のサイトに区別される。このため、order相のX線回折ではピークが分裂するのに対し、disorder相では単一なピークが検出される(図3の矢印に示す)ことが特徴である。X線回折角2θ=10°〜60°の範囲を測定すると、disorder相BiFeMo12の18.30°±0.05°(101)面のピークが18.15±0.05°(310)面と18.50±0.05°(111)面にピーク分裂し、disorder相の28.20°±0.05°(112)面のピークが28.05°±0.05°(221)面と28.40°±0.05°(42−1)面にピーク分裂し、disorder相の33.65°±0.05°(200)面のピークが33.25°±0.05°(600)面と34.10±0.05°(202)面にピーク分裂し、disorder相の46.15°±0.05°(204)面のピークが45.85°±0.05°(640)面と46.50±0.05°(242)面にピーク分裂する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】国際公開95/35273号パンフレット
【特許文献2】特開昭49−14392号公報
【特許文献3】特公昭61−12488号公報
【特許文献4】特開2010−120933号公報
【特許文献5】特開2006−61888号公報
【特許文献6】特開2010−253414号公報
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】石油化学プロセス 石油学会編、第172〜176頁、講談社サイエンティフィク
【非特許文献2】Acta.Cryst(1976).B32,p1163−p1170
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
特許文献4、5、及び6に開示された酸化物触媒は、反応の初期収率を大きく改善したが、工業的な長時間の運転における収率に関しては未だ十分満足できるものではない。不飽和アルデヒド、ジオレフィン、又は不飽和ニトリルの製造方法において、触媒を長時間使用した際に、プロピレン、イソブチレン、イソブタノール、n−ブテン、t−ブチルアルコール、及びアンモニア等により触媒が還元されて劣化するという問題を有する。
【0019】
また、不飽和アルデヒドの生産性の観点からは、高いイソブチレン濃度・高い反応温度の反応条件が望まれるが、この場合、より触媒が還元劣化しやすくなり、また、製造した不飽和アルデヒドも分解しうるため、不飽和アルデヒドの収率が下がるという問題もある。
【0020】
さらに、工業的な実施を考えると、反応器内の温度制御に有利な流動層反応方式が適していることが認識されつつも、実用的には固定層反応方式が採用されている理由について、本発明者は次のように推定している。目的生成物である不飽和アルデヒドは反応性が非常に高いため、高温で酸素が存在する雰囲気では、反応器出口に到達するまでに反応器内で燃焼分解を受け易く、不飽和カルボン酸や二酸化炭素に逐次分解してしまう。その上、生成物が触媒に接触する流動層反応方式においては、触媒の大半が流動して存在する濃厚層と、触媒分離の為に線速度を低下させるための空間分である稀薄層が必要である。そのため、触媒層(濃厚層)を出た後の反応器内での滞留時間は、固定層反応器の10倍以上長い。これにより、目的生成物である不飽和アルデヒドの反応器内での分解は一層促進されると想像できる。この結果、流動層反応方式では不飽和アルデヒドの収率低下は避けることができない問題となる。
【0021】
すなわち、従来、温度制御の観点で工業的に有利であるはずの流動層反応方式によるオレフィン及び/又はアルコールの接触酸化反応による不飽和アルデヒド製造が実用化されず、専ら、固定層反応方式が利用されているのは、反応性が高い不飽和アルデヒドの分解を防ぐ手段が無いためであると考えられる。つまり、生成物の分解を防いで必要な収率を確保するには、工業的な効率を犠牲にしても、生成物の回収に優れた固定層反応方式を採用せざるを得なかったと推察される。
【0022】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、工業的な長時間の運転においても触媒の還元劣化を抑制し、不飽和アルデヒド収率、ジオレフィン収率、又は不飽和ニトリル収率の低下が小さい酸化物触媒及びその製造方法、並びに、前記酸化物触媒を用いた、不飽和アルデヒド、ジオレフィン及び不飽和ニトリルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
非特許文献1において示されているように、disorder相は熱的に不安定であり、高温で行われる気相酸化反応に用いられる触媒がdisorder相を有することは、何らメリットは無いと考えられていた。
【0024】
ところが、本発明者らが検討したところによると、disorder相の中には、高温でも安定に存在し、還元的雰囲気においても極めて長時間、安定に存在し得るものがあることが明らかになった。この発見に基づき、鋭意研究を行ったところ、所定のイオン半径の元素をうまく結晶構造中に取り入れることにより、高温でも安定かつ耐還元性の高いdisorder相を有する触媒が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0025】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕
オレフィン及び/又はアルコールから、不飽和アルデヒド、ジオレフィン、又は不飽和ニトリルを製造する際に用いられる酸化物触媒であって、下記(1)〜(4)を満たす酸化物触媒;
(1)モリブデン、ビスマス、鉄、コバルト、及びイオン半径が0.96Åよりも大きな元素A(ただし、カリウム、セシウム及びルビジウムを除く)を含有し、
(2)前記モリブデン12原子に対する、前記ビスマスの原子比aが1≦a≦5であり、前記鉄の原子比bが1.5≦b≦6であり、前記元素Aの原子比cが1≦c≦5であり、前記コバルトの原子比dが1≦d≦8であり、
(3)前記モリブデン、前記ビスマス、前記鉄、及び前記元素Aを含む結晶系からなるdisorder相Bi3-xxFe1Mo212を含む。
(4)X線回折における回折角(2θ)が、18.30°±0.2°、28.20°±0.2°、33.65°±0.2°、及び46.15°±0.2°の範囲に単一ピークを有し、且つ、
2θ=33.65°±0.2°のピークaの強度(Ia)と、2θ=34.10°±0.2°のピークbの強度(Ib)との強度比(Ia/Ib)が2.0以上である。
〔2〕
下記組成式(1)で表される組成を有する、〔1〕に記載の酸化物触媒。
Mo12BiaFebcCodefg (1)
(式中、Moはモリブデンであり、Biはビスマスであり、Feは鉄であり、元素Aはイオン半径が0.96Åよりも大きな元素(ただし、カリウム、セシウム及びルビジウムを除く)であり、Coはコバルトであり、元素Bはマグネシウム、亜鉛、銅、ニッケル、マンガン、クロム、及び錫からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であり、元素Cはカリウム、セシウム、及びルビジウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であり、a〜gは、Mo12原子に対する各元素の原子比であり、Biの原子比aは1≦a≦5であり、Feの原子比bは1.5≦b≦6であり、元素Aの原子比cは1≦c≦5であり、Coの原子比dは1≦d≦8であり、元素Bの原子比eは0≦e<3であり、元素Cの原子比fは0≦f≦2であり、Fe/Coの比は0.8≦b/dであり、gは酸素以外の構成元素の原子価によって決まる酸素の原子数である。)
〔3〕
担体として、シリカ、アルミナ、チタニア、及びジルコニアからなる群より選ばれる少なくとも1種をさらに含む、〔1〕又は〔2〕に記載の酸化物触媒。
〔4〕
モリブデン、ビスマス、鉄、コバルト、及びイオン半径が0.96Åよりも大きな元素A(ただし、カリウム、セシウム及びルビジウムを除く)を含む、触媒を構成する原料を混合して原料スラリーを得る混合工程と、
得られた該原料スラリーを乾燥して乾燥体を得る乾燥工程と、
得られた該乾燥体を焼成する焼成工程と、
を有し、
前記焼成工程は、前記乾燥体を100℃から200℃まで1時間以上掛けて徐々に昇温する昇温工程を有する、酸化物触媒の製造方法。
〔5〕
前記原料スラリーのpHが8以下である、〔4〕に記載の酸化物触媒の製造方法。
〔6〕
前記焼成工程は、200〜300℃の温度で仮焼成して仮焼成体を得る仮焼成工程と、
得られた仮焼成体を300℃以上の温度で本焼成して触媒を得る本焼成工程と、
を有する、〔4〕又は〔5〕に記載の酸化物触媒の製造方法。
〔7〕
〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の酸化物触媒を用いて、オレフィン及び/又はアルコールを酸化して不飽和アルデヒドを得る不飽和アルデヒド製造工程を有する、不飽和アルデヒドの製造方法。
〔8〕
前記オレフィン及び/又は前記アルコールが、プロピレン、イソブチレン、プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、及びt−ブチルアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種である、〔7〕に記載の不飽和アルデヒドの製造方法。
〔9〕
前記不飽和アルデヒド製造工程において、流動層反応器中で、前記オレフィン及び/又は前記アルコールと、酸素源と、を気相接触酸化反応させ、前記流動層反応器から前記不飽和アルデヒドを含む生成ガスを流出させる流出工程を有する、〔7〕又は〔8〕に記載の不飽和アルデヒドの製造方法。
〔10〕
前記気相接触酸化反応の反応温度が400〜500℃であり、
前記流動層反応器から流出する前記生成ガス中の酸素濃度が0.03〜0.5体積%である、
〔7〕〜〔9〕のいずれか1項に記載の不飽和アルデヒドの製造方法。
〔11〕
〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の酸化物触媒を用いて、炭素数4以上のモノオレフィンを酸化してジオレフィンを得るジオレフィン製造工程を有する、ジオレフィンの製造方法。
〔12〕
〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の酸化物触媒を用いて、流動層反応器内で、プロピレン、イソブチレン、プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、及びt−ブチルアルコールからなる群より選ばれる1種以上と、分子状酸素と、アンモニアと、を反応させて不飽和ニトリルを得る不飽和ニトリル製造工程を有する、不飽和ニトリルの製造方法。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、工業的な長期運転においても触媒の還元劣化を抑制し、不飽和アルデヒド収率、ジオレフィン収率、又は不飽和ニトリル収率の低下が小さい酸化物触媒及びその製造方法、並びに、前記酸化物触媒を用いた、不飽和アルデヒド、ジオレフィン及び不飽和ニトリルの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】disorder相BiFeMo12の結晶構造を示す図である。
図2】order相BiFeMo12の結晶構造を示す図である。
図3】disorder相BiFeMo12とorder相BiFeMo12のX線回折を示す図である。 (a)disorder相BiFeMo12 (b)order相BiFeMo12
図4】disorder相含有率とピークa、ピークbの関係を示す。
図5】実施例A1及び比較例A3で得られた触媒のX線回折を示す図である。
図6図5におけるX線回折の2θ=15〜30°の範囲の拡大図を示す。
図7図5におけるX線回折の2θ=30〜50°の範囲の拡大図を示す。
図8】比較例A6のオレフィンの気相接触酸化反応前と反応後の酸化物触媒のX線回折(2θ=25〜27°)を示す図である。
図9】実施例B1及び比較例B1で得られた触媒のX線回折ピークを示す。
図10図9におけるX線回折ピークの2θ=15〜30°の範囲の拡大図を示す。
図11図9におけるX線回折ピークの2θ=30〜50°の範囲の拡大図を示す。
図12】実施例C1のオレフィンの気相接触酸化反応前と反応後の酸化物触媒のXRD(2θ=10〜60°)を示す図である。
図13図12の2θ=25〜27°における拡大図である。
図14】比較例C1のオレフィンの気相接触酸化反応前と反応後の酸化物触媒のXRD(2θ=10〜60°)を示す図である。
図15図14の2θ=25〜27°における拡大図である。
図16】実施例C1及び比較例C2で得られた触媒のX線回折ピークを示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための第1〜第3の実施形態、について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0029】
〔第1の実施形態〕
〔酸化物触媒〕
第1の実施形態に係る酸化物触媒について説明する。
第1の実施形態に係る酸化物触媒は、
オレフィン及び/又はアルコールから、不飽和アルデヒド又はジオレフィンを製造する際に用いられる酸化物触媒であって、下記(1)〜(3)を満たす;
(1)モリブデン(以下、「Mo」ともいう。)、ビスマス(以下、「Bi」ともいう。)、鉄(以下、「Fe」ともいう。)、コバルト(以下、「Co」ともいう。)、及びイオン半径が0.96Åよりも大きな元素A(ただし、カリウム、セシウム及びルビジウムを除く)を含有し、
(2)前記モリブデン12原子に対する、前記ビスマスの原子比aが1≦a≦5であり、前記鉄の原子比bが1.5≦b≦6であり、前記元素Aの原子比cが1≦c≦5であり、前記コバルトの原子比dが1≦d≦8であり、
(3)前記モリブデン、前記ビスマス、前記鉄、及び前記元素Aを含む結晶系からなるdisorder相を含む。
【0030】
(原料)
不飽和アルデヒド、又はジオレフィンを製造する際に用いられる原料となるオレフィンとしては、特に限定されないが、例えば、プロピレン、n−ブテン、イソブチレン、n−ペンテン、n−ヘキセン、シクロヘキセンなどが挙げられる。このなかでも、プロピレン及びイソブチレンが好ましい。
【0031】
不飽和アルデヒド、又はジオレフィンを製造する際に用いられる原料となるアルコールとしては、特に限定されないが、例えば、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、t−ブチルアルコールなどが挙げられる。このなかでも、イソブタノール及びt−ブチルアルコールが好ましい。
【0032】
第1の実施形態においては、例えば、原料としてプロピレン、プロパノール、イソプロパノールを用いた場合は、アクロレイン、アクリル酸を製造することができ、原料としてイソブチレン、イソブタノール、t−ブチルアルコールを用いた場合は、メタクロレイン、メタクリル酸を製造することができる。
【0033】
また、原料としてn−ブテンを用いた場合は、ブタジエンを製造することができる。なお、原料となる、オレフィン及びアルコールには、水、窒素、並びに、プロパン、ブタン、及びイソブタン等のアルカンが含まれていてもよい。
【0034】
オレフィン及び/又はアルコールは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0035】
(I)組成
第1の実施形態に係る酸化物触媒は、モリブデン、ビスマス、鉄、コバルト、及びイオン半径が0.96Åよりも大きな元素A(ただし、カリウム、セシウム及びルビジウムを除く)を含有する。BiとMoとが共に活性種を形成するビスモリ系(Bi−Mo)触媒において、各金属元素が複合化するようにする観点から、Mo、Bi、Feの存在は不可欠である。
【0036】
Mo12原子に対するBiの原子比aは、1≦a≦5である。不飽和アルデヒド及び/又はジオレフィンの選択率をより高める観点から、原子比aは、好ましくは1≦a≦4であり、より好ましくは1≦a≦3である。
【0037】
不飽和アルデヒド及び/又はジオレフィンの選択率を低下させることなく触媒活性を高める観点から、FeはMo、Biと同様に工業的に不飽和アルデヒド及び/又はジオレフィンを合成する上で必須元素であるが、Fe含有量が多くなるとFeが生成し、COやCO等の副生成物が増加する傾向があり、不飽和アルデヒド及び/又はジオレフィンの選択率が低下する。また、Fe含有量を多くしてもFeが生成しない場合もあるが、この時生成するのはFe−Mo−Oという2成分系の複合酸化物であって、これは触媒活性を示さない不活性成分である。上記観点から、第1の実施形態に係る酸化物触媒において、Mo12原子に対するFeの原子比bは、1.5≦b≦6であり、好ましくは1.5≦b≦5、さらに好ましくは1.5≦b≦4である。
【0038】
BiとMoは、気相接触酸化、アンモ酸化、酸化脱水素反応等の活性種とされているBiMo12、BiMoO等の複合酸化物を形成しやすい。これらの複合酸化物からなる触媒の不飽和アルデヒドやジオレフィンの選択率は高いが、活性が低くなる。一方、FeとMoは、FeMo12等の複合酸化物を形成する。これらの複合酸化物からなる触媒は活性も選択率も低い。しかしながら、MoとBiとFeとを適切に複合化させると、活性が高く、且つ、不飽和アルデヒド及びジオレフィンの選択率が高いdisorder相BiFeMo12を含む三成分複合酸化物が形成される。
【0039】
本発明者らは、高い温度でも上記特徴的な構造を保持する耐熱性に優れた酸化物触媒を得るべく鋭意検討した結果、カリウム、セシウム及びルビジウムを除く、イオン半径が0.96Åよりも大きな元素A(以下、単に「元素A」とも言う。)を酸化物触媒の構造に取り入れることにより、酸化物触媒の耐熱性が向上することを見出した。即ち、酸化物触媒が、モリブデン、ビスマス、鉄、及び元素Aを含む結晶系からなるdisorder相を含むことが、耐熱性の向上に有用であることを見出した。
【0040】
元素Aとしては、カリウム、セシウム及びルビジウムを除く、イオン半径が0.96Åよりも大きな元素であれば特に限定されず、例えば、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム等のランタノイド元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、又はそれらの混合物;鉛、イットリウム等の元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、又はそれらの混合物;及びカルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、又はそれらの混合物等が挙げられる。このなかでも、安定性と反応性とのバランスの観点から、好ましくは、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、カルシウム、鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、又はそれらの混合物であり、より好ましくは、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、カルシウム、鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、又はそれらの混合物である。
【0041】
Mo12原子に対する元素Aの原子比cは、1≦c≦5であり、好ましくは1≦c≦4であり、より好ましくは1≦c≦3である。原子比cが上記範囲であることにより、disorder相Bi3−xFeMo12を含む四成分複合酸化物が形成される。元素AとしてLaを用いた場合を例にとると、disorder相Bi3−xLaFeMo12を含む四成分複合酸化物が形成される。disorder相BiFeMo12を含む三成分複合酸化物に適切にLaを複合化させることにより、Bi3+(イオン半径が0.96Å)がイオン半径のより大きいLa3+に置換され、耐熱性を有し、且つ、高い活性と選択率を併せ持つ酸化物触媒が得られる。La3+がない三成分複合酸化物の場合、500℃以上の高い温度でorder相へ相転移するが、Biよりもイオン半径が若干大きいLaが共存しているとorder相への相転移が抑制され、disorder相構造が維持される。このorder相への相転移抑制効果を発揮する元素はLaに限らず、上記で列挙した元素Aであれば同様の効果を発揮する。
【0042】
第1の実施形態に係る酸化物触媒に耐還元性を付与するためには、Coが不可欠である。Coが存在するとCoMoOに2価の鉄が取り込まれ、Co2+−Fe2+−Mo−Oの3成分系の結晶構造が形成される。この取り込まれた鉄は準安定構造のため、容易に反応雰囲気で酸化され3価に戻る。そのため、反応中にレドックスが回り、還元劣化を抑制すると推測される。
【0043】
反応開始直後はFeMo12やdisorder相Bi3−xFeMo12を含む四成分複合酸化物のFeの価数は3価であるが、反応中にレドックスが繰り返され、鉄は2価に還元される。Coが存在しない場合は、2価の鉄とモリブデンの複合酸化物(FeMoO)とMoOが形成される。このFeMoOは安定な構造のため、反応雰囲気では3価にはなりにくい。これらの安定な化合物の形成により、鉄が安定化され、反応中にレドックスが回らなくなることが還元劣化を引き起こすと推測される。
【0044】
Mo12原子に対するCoの原子比dは、1≦d≦8であり、好ましくは2≦d≦8であり、より好ましくは2≦d≦6であり、さらに好ましくは3≦d≦5である。原子比dが8を超えると、disorder相Bi3−xFeMo12を含む四成分複合酸化物が形成しにくくなる傾向にある。
【0045】
(2)結晶構造
第1の実施形態に係る酸化物触媒は、disorder相Bi3−xFeMo12を含む四成分複合酸化物を含有することが好ましい。disorder相Bi3−xFeMo12を含む四成分複合酸化物の生成の指標としては、X線回折(XRD)を用いることができる。disorder相BiFeMo12を含む三成分複合酸化物の場合と同様に、第1の実施形態に係る酸化物触媒を結晶のX線回折の回折角2θ=10°〜60°の範囲において測定すると、少なくとも18.30°±0.2°(101)面、28.20°±0.2°(112)面、33.65°±0.2°(200)面、46.15°±0.2°(204)面に単一ピークを有することが好ましい。特に、単一ピークは、各基準値±0.05°以内の位置に有することが好ましい。
【0046】
また、触媒の分解をより抑制し、より高収率で不飽和アルデヒド及び/又はジオレフィンを得る観点から、2θ=33.65°±0.2°のピークaの強度(Ia)と、2θ=34.10°±0.2°のピークbの強度(Ib)と、の強度比(Ia/Ib)は、好ましくは2.0以上であり、より好ましくは2.5以上であり、さらに好ましくは3.0以上である。100%order相の場合、強度比(Ia/Ib)=1.1となり、100%disorder相の場合、強度比(Ia/Ib)=3.3となる。2θ=34.10±0.2°のピークbの強度(Ib)には、微量存在するFeMo12に由来するピーク強度も含まれる。強度比(Ia/Ib)が2.0以上であることにより、酸化物触媒中に所定割合のdisorder相が存在するため、不飽和カルボン酸の収率が低くなり、不飽和アルデヒド及び/又はジオレフィンの収率が向上する。図4にdisorder相含有率とピークa、ピークbの関係を示す。
【0047】
disorder相Bi3−xFeMo12が生成するメカニズムは明らかではないが、Bi及びMoの複合酸化物を熱処理する工程の中間体として生成し、更なる熱処理によってBi及びMoの複合酸化物に、Feと元素Aが熱拡散して置換固溶することによって、複合化されたdisorder相Bi3−xFeMo12が形成すると考えられる。
【0048】
(単一ピーク)
本明細書中、「単一ピーク」とは、厳格に判断されるべきものではなく、その回折角において検出された主なピークが分裂していなければ、単一ピークと判断できる。すなわちピークが変曲点を有する場合であっても、単一ピークとみなすことができる。また、主なピークと比較して明らかに小さなピークが存在する場合、小さなピークは除外した上で、主なピークが単一か分裂かを判断することが望ましい。「小さなピーク」とは、所定の範囲の回折角において、主なピークの強度の50%未満の強度を有するピークをいう。
【0049】
なお、「主なピーク」とは、所定の範囲の回折角に存在するピークのうち、最大のピークをいう。例えば、18.30°±0.2°の範囲の回折角において、18.35°の位置に最大のピークが検出された場合、そのピークを18.30°±0.2°における主ピークと判断する。
【0050】
第1の実施形態に係る酸化物触媒は、好ましくは、下記組成式(1)で表される組成を有する。酸化物触媒が下記組成式(1)で表される組成を有する場合、不飽和カルボン酸や二酸化炭素の生成が抑えられ、不飽和アルデヒド及び/又はジオレフィンの選択率がより向上する傾向にある。
下記組成式(1)
Mo12BiFeCo (1)
(式中、Moはモリブデンであり、Biはビスマスであり、Feは鉄であり、元素Aはイオン半径が0.96Åよりも大きな元素(ただし、カリウム、セシウム及びルビジウムを除く)であり、Coはコバルトであり、元素Bはマグネシウム、亜鉛、銅、ニッケル、マンガン、クロム、及び錫からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であり、元素Cはカリウム、セシウム、及びルビジウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であり、a〜gは、Mo12原子に対する各元素の原子比であり、Biの原子比aは1≦a≦5であり、Feの原子比bは1.5≦b≦6であり、元素Aの原子比cは1≦c≦5であり、Coの原子比dは1≦d≦8であり、元素Bの原子比eは0≦e<3であり、元素Cの原子比fは0≦f≦2であり、Fe/Coの比は0.8≦b/dであり、gは酸素以外の構成元素の原子価によって決まる酸素の原子数である。)
【0051】
上記組成式(1)において元素Bは、マグネシウム、亜鉛、銅、ニッケル、マンガン、クロム、及び錫からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を示し、酸化物触媒中で一部のコバルトに置換すると推測される。disorder相の結晶の生成とのバランスを保つ観点から、Bの原子比eは、好ましくは0≦e<3であり、より好ましくは0≦e<2である。元素Bは、必須ではないものの、触媒の活性の向上、又は、触媒中のCoMoOの結晶構造を安定化に寄与する。例えば、銅は触媒の活性を向上させる効果を有し、ニッケル、マグネシウム、亜鉛及びマンガンは、CoMoOの結晶構造を安定化させ、圧力や温度による相転移等を抑制する効果を有する。
【0052】
第1の実施形態における酸化物触媒において、Coは、Mo、Bi、Feと同様に工業的に不飽和アルデヒド及び/又はジオレフィンを合成する観点から、必須の元素である。Coは、複合酸化物CoMoOを形成し、Bi−Mo−O等の活性種を高分散させるための担体としての役割と、気相から酸素を取り込み、Bi−Mo−O等に供給する役割を果たす。不飽和アルデヒド及び/又はジオレフィンを高収率で得る観点からは、CoをMoと複合化させ、複合酸化物CoMoOを形成させることが好ましい。CoやCoO等の単独酸化物の形成を少なくする観点から、Coの原子比dは、好ましくは1≦d≦8であり、より好ましくは2≦d≦8であり、さらに好ましくは2≦d≦7であり、よりさらに好ましくは2≦d≦5である。
【0053】
また、Fe/Coの比は、好ましくは0.8≦b/dであり、より好ましくは0.8≦b/d≦1.5であり、さらに好ましくは0.9≦b/d≦1.2である。Fe/Coの比が上記範囲であることにより、CoやCoO等の単独酸化物が生成しにくい傾向にある。
【0054】
元素Aは、カリウム、セシウム及びルビジウム以外の、イオン半径が0.96Åよりも大きな元素である。元素Aの原子比cは、好ましくは1≦c≦5であり、より好ましくは1≦c≦4であり、さらに好ましくは1≦c≦3である。
【0055】
また、元素Cは、カリウム、セシウム、及びルビジウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を示す。元素Cは、酸化物触媒において、複合化されなかったMoO等の酸点を中和する役割を示すと考えられる。元素Cを含有するか否かは、後述するdisorder相の結晶構造には直接影響しない。Mo12原子に対する元素Cの原子比fは、触媒活性の観点から、好ましくは0≦f≦2であり、より好ましくは0.01≦f≦2であり、さらに好ましくは0.01≦f≦1である。原子比fが0以上であることにより、中和効果がより向上する傾向にある。また、原子比fが2以下であることにより、酸化物触媒が塩基性から中性となる傾向にあり、原料であるオレフィンやアルコールが酸化物触媒に吸着しやすく、より高い触媒活性が発現される傾向にある。
【0056】
その他、金属成分としては、disorder相Bi3−xFeMo12の形成を阻害しない程度の任意成分が含有されていてもよい。
【0057】
元素B及び元素Cは、後述するdisorder相の結晶構造とは別に結晶構造を形成するため、disorder相の結晶構造に直接的には影響を及ぼさない。
【0058】
(3)金属酸化物以外の成分
第1の実施形態における酸化物触媒は、金属酸化物を担持するための担体を含有してもよい。担体を含む触媒は、金属酸化物の高分散化の点、及び担持された金属酸化物に高い耐摩耗性を与えるという点で好ましい。ここで、押し出し成型法により触媒を成型する場合には担体を含むことが好ましいが、固定層反応器でメタクロレインを製造する際に、打錠成型した触媒にする場合には担体を含まなくてもよい。
【0059】
担体としては、特に限定されないが、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、及びジルコニアからなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。酸化物触媒をこのような担体に担持させることにより、粒子形状、大きさ、分布、流動性、及び機械的強度といった、流動層反応に好適な物理的特性をより向上できる傾向にある。このなかでも、担体はシリカが好ましい。一般的にシリカは、流動層反応に好適な物理的特性を付与できるという特性に加えて、他の担体に比べより不活性であり、不飽和アルデヒド及び/又はジオレフィンに対する選択性を低下させることなく、金属酸化物に対し良好なバインド作用を有する点で好ましい担体である。さらに、シリカ担体は担持された金属酸化物に、高い耐摩耗性を与え易いという点でも好ましい。
【0060】
シリカ源としてはシリカゾルが好適である。その他の成分が混合されていない原料の状態におけるシリカゾルの濃度は、シリカ粒子の分散性の観点から、好ましくは10〜50質量%である。シリカゾルは、不飽和ニトリルの選択率の観点から、シリカ1次粒子の平均粒子直径が、20〜55nm未満、好ましくは20〜50nmである少なくとも1種のシリカゾル(a)40〜100質量%と、シリカ1次粒子径の平均粒子直径が5nm〜20nm未満である少なくとも1種のシリカゾル(b)60〜0質量%と、を含むものが好ましい。
【0061】
担体の含有量は、担体と酸化物触媒との合計100質量%に対して、好ましくは20〜80質量%であり、より好ましくは30〜70質量%であり、さらに好ましくは40〜60質量%であり、よりさらに好ましくは5〜10質量%である。担体の含有量が上記範囲内であることにより、不飽和アルデヒド及び/又はジオレフィンの収率がより向上する傾向にある。
【0062】
(4)酸化物触媒の成型
第1の実施形態の酸化物触媒を成型して用いる場合、成型は打錠成型や押し出し成型など公知の方法で行われる。成型する際の形状としては、タブレット、ペレット、球、CDS(Computer Designed Shape)、トリローブ、クワードローブ、リング、HGS(High Geometric Surface)、クローバー、ハニカムなどが挙げられる。このなかでも、強度の観点から、CDS、リングが好ましい。
【0063】
酸化物触媒の比表面積は、好ましくは2〜5m/gであり、より好ましくは2〜4m/gである。シリカ等の担体を用いた場合は、比表面積は2〜5m/gより大きくなる傾向にあるが、担体を含まない金属酸化物のみでの比表面積は2〜5m/gであることが好ましい。
【0064】
[2]酸化物触媒の製造方法
上述のように、本発明者らは、元素A、Bi、Fe及びMoを含む、disorder相Bi3−xFeMo12を得ることに着目し、その組成比や調製方法を総合的に検討した。
【0065】
ビスモリ系(Bi−Mo)触媒と呼ばれるように、BiはMoと共に活性種の形成のための必須元素であるため、活性の観点から多く含まれていることが有利である。しかしながら、Bi含有量を多くすると触媒が不均質になることが分かっている。例えば、従来、工業的に使用されているBi原料である硝酸Biは難水溶解性物質であり、硝酸Biを溶解させるためには大量の硝酸を必要とする。その結果、焼成後の触媒組成が不均質になるため、従来の触媒調製技術では、Bi含有量を多くするには限界があった。即ち、Bi等の単独酸化物が生成し、均質な触媒が得られず、不飽和アルデヒド及び/又はジオレフィンの収率が低くなるという問題がある。
【0066】
また、不飽和アルデヒド及び/又はジオレフィンの選択率を低下させることなく触媒活性を高める観点から、FeはMoやBiと同様に工業的に不飽和アルデヒド及び/又はジオレフィンを合成する上で必須の元素であることが古くから報告されている。しかしながら、国際公開95/35273号パンフレットに報告されているように、Feの添加量が多くなるとCOやCO等の副生成物が増加する傾向にあり、不飽和アルデヒド及び/又はジオレフィンの選択率が低下してしまうため、Feの添加量は少量が最適である。
【0067】
本発明者らはこの課題を解決すべく試行錯誤を重ねた結果、後述する酸化物触媒の製造方法によって、order相生成を抑制し、disorder相Bi3−xFeMo12の結晶が形成され易くなることを見出した。
【0068】
第1の実施形態における酸化物触媒の製造方法は、
モリブデン、ビスマス、鉄、コバルト、及びイオン半径が0.96Åよりも大きな元素A(ただし、カリウム、セシウム及びルビジウムを除く)を含む、触媒を構成する原料を混合して原料スラリーを得る混合工程と、
得られた該原料スラリーを乾燥して乾燥体を得る乾燥工程と、
得られた該乾燥体を焼成する焼成工程と、
を有し、
前記焼成工程において、前記乾燥体を100℃から200℃まで1時間以上掛けて徐々に昇温する昇温工程を有する。
【0069】
(1)混合工程
混合工程は、モリブデン、ビスマス、鉄、コバルト、及びイオン半径が0.96Åよりも大きな元素A(ただし、カリウム、セシウム及びルビジウムを除く)を含む、触媒を構成する各金属元素の触媒原料を混合して原料スラリーを得る工程である。モリブデン、ビスマス、鉄、コバルト、元素A、ルビジウム、セシウム、カリウム、マグネシウム、銅、ニッケル、クロム、マンガン、鉛、アルカリ土類金属、及び希土類元素の各元素源としては、水又は硝酸に可溶な、アンモニウム塩、硝酸塩、塩酸塩、有機酸塩、酸化物、水酸化物、炭酸塩が挙げられる。
【0070】
各元素源の酸化物を使用する場合は、酸化物が水又は有機溶媒に分散された分散液として用いることが好ましく、酸化物が水に分散された酸化物分散液として用いることがより好ましい。酸化物が水に分散されている場合、酸化物を分散させるために高分子等の分散安定剤が含まれていてもよい。酸化物の粒子径は、好ましくは1〜500nmであり、より好ましくは10〜80nmである。
【0071】
原料スラリー中の触媒原料を均一に分散させる観点で、原料スラリー中に、ポリエチレングリコール、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミドなどの水溶性ポリマー;アミン類、アミノカルボン酸類、しゅう酸、マロン酸、コハク酸などの多価カルボン酸;及び/又はグリコール酸、りんご酸、酒石酸、クエン酸などの有機酸を適宜添加することもできる。水溶性ポリマー及び/又は有機酸の添加量は特に限定されないが、均一性と生産量のバランスの観点から、触媒原料100質量%に対して、好ましくは30質量%以下である。
【0072】
原料スラリーの調製方法は通常用いられる方法であれば、特に限定されず、例えば、モリブデンのアンモニウム塩を温水に溶解させた溶液と、ビスマス、鉄、コバルト、及び元素A等のモリブデン以外の金属成分を硝酸塩として水に溶解させた溶液又は硝酸水溶液に溶解させた溶液と、を混合することにより調製することができる。酸化物触媒が担体を含む場合には、モリブデンのアンモニウム塩を温水に溶解させた溶液と、モリブデン以外の金属成分を水又は硝酸水溶液に溶解させた溶液を混合する前後にシリカゾルなどを加えることができる。混合後の原料スラリー中の金属元素濃度は、均一性と生産量のバランスの観点から、原料スラリー100質量%に対して、通常1〜50質量%であり、好ましくは10〜40質量%であり、より好ましくは20〜40質量%である。
【0073】
上述の原料スラリーの調製工程は一例であって限定的なものではなく、各元素源の添加の手順を変えたり、硝酸濃度の調整やアンモニア水を原料スラリー中に添加して原料スラリーのpHや粘度を改質させたりしてもよい。disorder相Bi3−xFeMo12の結晶構造を形成させるには、原料スラリーを均質にすることが好ましい。この観点から、原料スラリーのpHは、好ましくは8.0以下であり、より好ましくは7.0以下であり、さらに好ましくは6.0以下である。原料スラリーのpHが8.0以下であることにより、ビスマス化合物の沈殿が生成することを抑制でき、disorder相Bi3−xFeMo12の結晶構造の生成をより促進する傾向にある。
【0074】
(2)乾燥工程
乾燥工程は、混合工程で得られた原料スラリーを乾燥して乾燥体を得る工程である。乾燥方法は、特に制限はなく一般に用いられている方法によって行うことができ、例えば、蒸発乾固法、噴霧乾燥法、減圧乾燥法など任意の方法が挙げられる。噴霧乾燥法としては、特に限定されないが、例えば、通常工業的に実施される遠心方式、二流体ノズル方式、及び高圧ノズル方式等の方法が挙げられる。この際の乾燥熱源としては、スチーム、電気ヒーター等によって加熱された空気を用いることが好ましい。この際、噴霧乾燥装置の乾燥機入口の温度は、通常150〜400℃であり、好ましくは180〜400℃であり、より好ましくは200〜350℃である。
【0075】
(3)焼成工程
焼成工程は、乾燥工程で得られた乾燥体を焼成する工程である。焼成は、回転炉、トンネル炉、マッフル炉等の焼成炉を用いて行うことができる。焼成工程は、乾燥体を100から200℃まで1時間以上掛けて徐々に昇温する昇温工程を有する。この昇温工程を経ることでBi、Mo、Fe及び元素Aの4成分の元素が原子レベルで均一に混ざり合い、disorder相Bi3−xFeMo12の結晶構造が生成されやすくなる。本明細書中、「徐々に昇温」とは、昇温時間にして通常1h〜10hかけて設定温度まで昇温することをいう。昇温レートは常に一定である必要はない。昇温時間は、通常1h〜10hであり、好ましくは1h〜5hであり、より好ましくは2h〜4hである。
【0076】
乾燥体の焼成方法は、用いる原料によって異なる。例えば、原料に硝酸イオンを含む場合には、仮焼成と本焼成の2段焼成で行うことが好ましい。具体的には、200〜300℃の温度で仮焼成して仮焼成体を得る仮焼成工程と、得られた仮焼成体を300℃以上の温度で本焼成して触媒を得る本焼成工程と、を行なうことが好ましい。なお、仮焼成工程前に、上記昇温工程を行い、その後、200℃〜300℃の温度範囲まで通常1h以上かけて昇温する。
【0077】
仮焼成工程では、200℃〜300℃の温度範囲で焼成する。仮焼成時間は、通常1h〜10hであり、好ましくは2h〜8hであり、より好ましくは3h〜6hである。仮焼成の目的は、乾燥体中に残存している硝酸を徐々に燃焼させることにある。仮焼成を行うことにより、disorder相Bi3−xFeMo12の結晶構造が均一に形成する傾向にある。なお、100〜200℃の昇温工程を設けず、初めから200℃〜300℃の温度範囲で仮焼成を行った場合、disorder相Bi3−xFeMo12の結晶構造が生成し難くなり、order相やFeMo12、BiMo12、AMo12等の2成分系の酸化物が生成してしまうおそれがある。
【0078】
仮焼成の後、disorder相の結晶構造を形成し易くするため、得られた仮焼成体を用いて2段目の本焼成を行う。本発明者らの知見によると、結晶構造の生成は焼成温度と焼成時間の積に依存する。そのため、焼成温度と焼成時間を適切に設定することが好ましい。本焼成の温度は、仮焼成の温度より高く、好ましくは300℃以上であり、より好ましくは300℃以上700℃以下であり、さらに好ましくは300〜650℃であり、よりさらに好ましくは400℃〜600℃であり、特に好ましくは450℃〜600℃である。本焼成温度が上記範囲内であることにより、disorder相Bi3−xFeMo12の結晶構造がより生成し易い傾向にある。
【0079】
このような温度で本焼成を行う場合、焼成温度と焼成時間の積を適切にして結晶生成を促す観点から、本焼成の時間は、通常0.1〜72時間であり、好ましくは2〜48時間であり、より好ましくは3〜24時間である。
【0080】
結晶構造の生成のために焼成温度×焼成時間を適切にする観点から、本焼成の温度が400℃以下の低温の場合、本焼成の時間は例えば24〜72時間が好ましく、本焼成の温度が600℃以上の高温の場合、order相の生成を防ぐ観点から、本焼成の時間は3時間以下が好ましい。
【0081】
以上の工程を全て行うことで、disorder相Bi3−xFeMo12の結晶構造が形成され易くなる。
【0082】
本焼成工程において、disorder相Bi3−xFeMo12の結晶構造が生成したことは、本焼成により得られた酸化物触媒に対してX線構造解析を行うことによって確認できる。第1の実施形態に係る酸化物触媒のX線回折分析において、少なくとも、18.30°±0.2°(101)面、28.20°±0.2°(112)面、33.65°±0.2°(200)面、46.15°±0.2°(204)面の範囲の回折角(2θ)に単一ピークを有し、2θ=33.65°±0.2°のピーク強度(Ia)と2θ=34.10°±0.2°のピーク強度(Ib)の強度比(Ia/Ib)が2.0以上であれば、disorder相Bi3−xFeMo12の結晶構造が生成したと判断する。
【0083】
[3]不飽和アルデヒドの製造方法
第1の実施形態に係る酸化物触媒を用い、プロピレン及びイソブチレンからなる群より選ばれる少なくとも1種のオレフィン、及び/又はイソブタノール、t−ブチルアルコールを酸化反応させることにより、不飽和アルデヒドを製造することができる。以下、その具体例について説明するが、不飽和アルデヒドの製造方法は、以下の具体例に限定されるものではない。
【0084】
(1)メタクロレインの製造方法
メタクロレインは、例えば、第1の実施形態に係る酸化物触媒を用いて、イソブチレン、イソブタノール、t−ブチルアルコールの気相接触酸化反応を行うことにより得ることができる。気相接触酸化反応は、酸化物触媒存在下で、1〜10容量%のイソブチレン、イソブタノール、t−ブチルアルコール、又はこれらの混合ガスに対して、分子状酸素濃度が1〜20容量%になるように、分子状酸素含有ガスと希釈ガスを添加した原料ガスを、固定層反応器内の触媒層に導入することで行うことができる。反応温度は250〜480℃、反応圧力は常圧〜5気圧の圧力、空間速度は400〜4000/hr[Normal temperature pressure (NTP)条件下]とすることができる。酸素と、イソブチレン、イソブタノール、t−ブチルアルコール、又はこれらの混合ガスのモル比(酸素/イソブチレン、イソブタノール、t−ブチルアルコール、又はこれらの混合ガス)は、不飽和アルデヒドの収率を向上させるために反応器の出口酸素濃度を制御する観点から、通常1.0〜2.0であり、好ましくは1.1〜1.8であり、より好ましくは1.2〜1.8である。
【0085】
分子状酸素含有ガスとしては、特に限定されないが、例えば、純酸素ガス、NO、及び空気等の酸素を含むガスが挙げられる。このなかでも、工業的観点から、空気が好ましい。
【0086】
希釈ガスとしては、特に限定されないが、例えば、窒素、二酸化炭素、水蒸気、及びこれらの混合ガスが挙げられる。分子状酸素含有ガスと希釈ガスの混合比は、体積比で0.01<分子状酸素/(分子状酸素含有ガス+希釈ガス)<0.3が好ましい。さらに、分子状酸素の含有量は、原料ガス100容量%に対して、好ましくは1〜20容量%である。
【0087】
原料ガス中の水蒸気は、触媒へのコーキングを防ぐ点では有効であるが、メタクリル酸や酢酸等のカルボン酸の副生を抑制するために、できるだけ希釈ガス中の水蒸気濃度を下げることが好ましい。水蒸気の含有量は、原料ガス100容量%に対して、通常0〜30容量%である。
【0088】
(2)アクロレインの製造方法
プロピレンの気相接触酸化によりアクロレインを製造する際の条件等に特に制限はなく、プロピレンの気相接触酸化によりアクロレインを製造する際に一般に用いられている方法によって行うことができる。例えば、プロピレン1〜15容量%、分子状酸素3〜30容量%、水蒸気0〜60容量%、並びに、窒素及び炭酸ガスなどの不活性ガス20〜80容量%、などを含む混合ガスを、反応器の触媒層に250〜450℃、0.1〜1MPaの加圧下、空間速度(SV)300〜5000hr−1で導入すればよい。また、反応器については、一般の固定層反応器、流動層反応器あるいは移動層反応器を用いることができる。
【0089】
(3)ジオレフィンの製造方法
第1の実施形態に係るジオレフィンの製造方法は、第1の実施形態に係る酸化物触媒を用いて、炭素数4以上のモノオレフィンを酸化してジオレフィンを得るジオレフィン製造工程を有する。ジオレフィン製造工程は、より具体的には、第1の実施形態に係る酸化物触媒の存在下、炭素数4以上のモノオレフィンと、酸素源と、を気相接触酸化反応させることによりジオレフィンを得る工程である。
【0090】
気相接触酸化反応における酸素源としては、特に限定されないが、例えば、分子状酸素含有ガスと希釈ガスとの混合ガスを使用することができる。
【0091】
炭素数4以上のモノオレフィンとしては、特に限定されないが、例えば、n−ブテンが挙げられる。
【0092】
得られるジオレフィンは、用いる炭素数4以上のモノオレフィンによって異なり、例えばn−ブテンを用いた場合はブタジエンが得られる。
【0093】
上記分子状酸素含有ガスとしては、特に限定されないが、例えば、純酸素ガス、空気等の酸素を含むガスが挙げられる。このなかでも、分子状酸素含有ガスとして空気を用いることが好ましい。空気を用いることにより、コスト等の工業的観点からより優れる傾向にある。
【0094】
上記希釈ガスとしては、特に限定されないが、例えば、窒素、二酸化炭素、水蒸気、及びこれら2種以上を混合したガスが挙げられる。
【0095】
ジオレフィン製造工程に供給する原料ガスは、1〜10容量%の炭素数4以上のモノオレフィンに対して分子状酸素濃度が1〜20容量%になるように、分子状酸素含有ガスと希釈ガスとを添加したものであることが好ましい。
【0096】
反応器としては、特に限定されないが、例えば、固定層反応器が挙げられる。反応温度は、好ましくは250〜450℃である、反応圧力は、好ましくは常圧〜5気圧であり、空間速度は、好ましくは400〜4000/hr[Normal temperature pressure (NTP)条件下]である。
【0097】
〔第2の実施形態〕
第2の実施形態に係る酸化物触媒(以下、「アンモ酸化触媒」ともいう。)について説明する。
第2の実施形態に係る酸化物触媒は、
オレフィン及び/又はアルコールから、不飽和ニトリルを製造する際に用いられる酸化物触媒であって、下記(1)〜(3)を満たす;
(1)モリブデン、ビスマス、鉄、コバルト、及びイオン半径が0.96Åよりも大きな元素A(カリウム、セシウム及びルビジウムを除く)を含有し、
(2)前記モリブデン12原子に対する、前記ビスマスの原子比aが1≦a≦5であり、前記鉄の原子比bが1.5≦b≦6であり、前記元素Aの原子比cが1≦c≦5であり、前記コバルトの原子比dが1≦d≦8であり、
(3)前記モリブデン、前記ビスマス、前記鉄、及び前記元素Aを含む結晶系からなるdisorder相を含む。
【0098】
(原料)
不飽和ニトリルを製造する際に用いられる原料となるオレフィンとしては、特に限定されないが、例えば、プロピレン、n−ブテン、イソブチレン、n−ペンテン、n−ヘキセン、シクロヘキセンなどが挙げられる。このなかでも、プロピレン及びイソブチレンが好ましい。
【0099】
不飽和ニトリルを製造する際に用いられる原料となるアルコールとしては、特に限定されないが、例えば、プロパノール、ブタノール、イソブタノール、t−ブチルアルコールなどが挙げられる。このなかでも、イソブタノール及びt−ブチルアルコールが好ましい。
【0100】
第2の実施形態においては、例えば、原料としてプロピレン、プロパノールを用いた場合は、アクリロニトリルを製造することができ、原料としてイソブチレン、イソブタノール、t−ブチルアルコールを用いた場合は、メタクリロニトリルを製造することができる。
【0101】
オレフィン及び/又はアルコールは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0102】
不飽和ニトリルとしては、特に限定されないが、例えば、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルが挙げられる。
【0103】
(1)組成
第1の実施形態に係る酸化物触媒は、モリブデン、ビスマス、鉄、コバルト、及びイオン半径が0.96Åよりも大きな元素A(カリウム、セシウム及びルビジウムを除く)を含有する。BiとMoとが共に活性種を形成するビスモリ系(Bi−Mo)触媒において、各金属元素が複合化するようにする観点から、Mo、Bi、Feの存在は不可欠である。
【0104】
Mo12原子に対するBiの原子比aは、1≦a≦5であり、好ましくは1≦a≦4であり、より好ましくは2≦a≦4である。Biの原子比aが上記範囲内であることにより、不飽和ニトリルの選択率がより向上する傾向にある。
【0105】
不飽和ニトリルの選択率を低下させることなく触媒活性を高める観点から、FeはMo、Biと同様に工業的に不飽和ニトリルを合成する上で必須元素であるが、Fe含有量が多くなるとFeが生成し、COやCO等の副生成物が増加する傾向があり、不飽和ニトリルの選択率が低下する。また、Fe含有量を多くしてもFeが生成しない場合もあるが、この時生成するのはFeMo12という2成分系の複合酸化物であって、これは触媒活性を示さない不活性成分である。上記観点から、第2の実施形態におけるアンモ酸化触媒のMo12原子に対するFeの原子比bは、好ましくは1.5≦b≦6であり、より好ましくは2.0≦b≦5であり、さらに好ましくは3≦b≦5である。
【0106】
BiとMoは、アンモ酸化反応の活性種とされているBiMo12及びBiMoO等の複合酸化物を形成しやすく、不飽和ニトリルの選択率は高いが、活性が低くなる傾向にある。一方、FeとMoは、FeMo12等の複合酸化物を形成するが、これらの複合酸化物からなる触媒は活性も選択率も低い。MoとBiとFeを複合化させると、order相BiFeMo12が形成されるが、この構造を含む触媒を用いてアンモ酸化反応を工業的に長時間で行うと、初期収率は高いものの、反応中に触媒が還元されることにより活性が低下し、不飽和ニトリルの収率が低下することがわかった。本発明者らは、この還元劣化の理由を以下のように推定している。反応開始直後のBiFeMo12に含まれる鉄の価数は3価の状態であるが、反応中にレドックスが繰り返され、鉄は2価に還元され、2価の鉄とモリブデンの複合酸化物(FeMoO)が形成される。また、MoやBiはMoO、Biや金属Biを形成する。これらの安定な化合物の形成により、鉄が安定化され、反応中にレドックスが回らなくなることが還元劣化を引き起こすと推測される。
【0107】
本発明者らは、上記構造を高い還元雰囲気でも保持する耐還元性に優れた酸化物触媒について鋭意検討した結果、MoとBiとFeの3成分に加え、イオン半径が0.96Åよりも大きな元素Aを酸化物触媒の構造にさらに取り入れることにより、disorder相Bi3−xFeMo12が形成され、耐還元性が向上することを見出した。この構造を有する四成分系複合酸化物は、活性が高く、不飽和ニトリルの選択率が高いだけでなく、長時間の運転でも還元劣化を引き起こす安定な2価の鉄とモリブデンの複合酸化物(FeMoO)が生成せず、耐還元性を有することがわかった。つまり、MoとBiとFeの3成分に、さらに元素Aを複合化する場合、反応中に元素AとFeがレドックスを起こすため、Feは完全に2価になるわけではなく、Fe3−δのように3価より少し還元側の形で存在する。そのため、容易にレドックスが実現し、その結果、還元劣化が抑制されると推測される。
【0108】
元素Aとしては、カリウム、セシウム及びルビジウム以外の、イオン半径が0.96Åよりも大きな元素であれば特に限定されず、例えば、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウムからなるランタノイド元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、又はそれらの混合物;錫、鉛、イットリアの元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、又はそれらの混合物;及びカルシウム、ストロンチウム、バリウムのアルカリ土類金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、又はそれらの混合物等が挙げられ、安定性と反応性とのバランスの観点から、好ましくは、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、カルシウム、鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、又はそれらの混合物であり、より好ましくは、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、カルシウム、鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、又はそれらの混合物である。
【0109】
モリブデン12原子に対する元素Aの原子比cは、1≦c≦5であり、好ましくは1≦d≦4であり、より好ましくは1.5≦d≦3である。原子比cが上記範囲にある場合、複合化されたdisorder相Bi3−xFeMo12を含む四成分複合酸化物が形成され易くなる。元素AとしてLaを用いた場合を例にとると、disorder相Bi3−xLaFeMo12を含む四成分複合酸化物が形成される。disorder相BiFeMo12を含む三成分複合酸化物に適切にLaを複合化させることにより、Bi3+(イオン半径が0.96Å)がイオン半径のより大きいLa3+に置換され、高い活性と選択率のみならず、耐還元性をも併せ持つアンモ酸化触媒が得られる。La3+が含まれない場合、order相BiFeMo12は、工業的な長期間の運転における反応ガスによる還元でFeMoO、MoO、Biや金属Biに分解されてしまうが、Biよりもイオン半径が若干大きいLaが共存していると、FeとLa間でレドックスが起こるため、反応ガスの還元による分解が抑制され、disorder相Bi3−xLaFeMo12の構造が維持されるため、FeMoO、MoO、Biや金属Biには分解されない。
なお、イオン半径は、例えば、「セラミックスの化学」、柳田博明編、第14〜17頁、丸善株式会社等に記載されている。
【0110】
(2)結晶構造
第2の実施形態に係るアンモ酸化触媒は、disorder相Bi3−xFeMo12を含む四成分複合酸化物を含有することが好ましい。disorder相Bi3−xFeMo12を含む四成分複合酸化物の生成の指標としては、X線回折(XRD)を用いることができる。disorder相BiFeMo12を含む三成分複合酸化物の場合と同様に、第2の実施形態に係るアンモ酸化触媒の結晶をX線回折の回折角2θ=10°〜60°の範囲を測定すると、disorder相Bi3−xFeMo12を含む四成分複合酸化物が生成している場合には、少なくとも18.30°±0.2°(101)面、28.20°±0.2°(112)面、33.65°±0.2°(200)面、46.15°±0.2°(204)面に単一ピークが確認できる。特に、単一ピークは、各基準値±0.05°以内の位置に有することが好ましい。
【0111】
また、触媒の還元劣化を抑制する観点から、2θ=33.65°±0.2°のピークaの強度(Ia)と、2θ=34.10°±0.2°のピークbの強度(Ib)と、の強度比(Ia/Ib)は、好ましくは2.0以上であり、より好ましくは2.5以上であり、さらに好ましくは3.0以上である。100%order相の場合、強度比(Ia/Ib)=1.1となり、100%disorder相の場合、強度比(Ia/Ib)=3.3となる。2θ=34.10±0.2°のピークbの強度(Ib)には、微量存在するFeMo12に由来するピーク強度Ibも含まれる。強度比(Ia/Ib)が2.0以上であることにより、酸化物触媒中に所定割合のdisorder相が存在するため、工業的な長期運転では触媒が還元劣化を受けにくく、不飽和ニトリルの収率がより向上する傾向にある。図4にdisorder相含有率とピークa、ピークbの関係を示す。
【0112】
disorder相Bi3−xFeMo12が生成するメカニズムは明らかではないが、Bi及びMoの複合酸化物を熱処理する工程の中間体として生成し、更なる熱処理によってBi及びMoの複合酸化物に、Feと元素Aが熱拡散して置換固溶することによって、複合化されたdisorder相Bi3−xFeMo12が形成すると考えられる。
【0113】
「単一ピーク」及び「主なピーク」の定義については第1の実施形態と同様である。
【0114】
第2の実施形態に係るアンモ酸化触媒は、好ましくは、下記組成式(2)で表される組成を有する金属酸化物を含む。アンモ酸化触媒が下記組成式(2)で表される組成を有する金属酸化物を含むことにより、不飽和ニトリルの選択率が向上する傾向にある。
Mo12BiFeCo (2)
(式中、Moはモリブデンであり、Biはビスマスであり、Feは鉄であり、元素Aはイオン半径が0.96Åよりも大きな元素(ただし、カリウム、セシウム及びルビジウムを除く)であり、Coはコバルトであり、元素Bはマグネシウム、亜鉛、銅、ニッケル、マンガン、クロム、及び錫からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であり、元素Cはカリウム、セシウム、及びルビジウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であり、a〜gは、Mo12原子に対する各元素の原子比であり、Biの原子比aは1≦a≦5であり、Feの原子比bは1.5≦b≦6であり、元素Aの原子比cは1≦c≦5であり、Coの原子比dは1≦d≦8であり、元素Bの原子比eは0≦e<3であり、元素Cの原子比fは0≦f≦2であり、Fe/Coの比は0.8≦b/dであり、gは酸素以外の構成元素の原子価によって決まる酸素の原子数である。)
【0115】
第2の実施形態に係るアンモ酸化触媒において、Coは、Mo、Bi、Feと同様に工業的に不飽和ニトリルを合成する観点から、必須の元素である。Coは、複合酸化物CoMoOを形成し、Bi−Mo−O等の活性種を高分散させるための担体としての役割と、気相から酸素を取り込み、Bi−Mo−O等に供給する役割を果たす。不飽和ニトリルを高収率で得る観点からは、CoをMoと複合化させ、複合酸化物CoMoOを形成させることが好ましい。CoやCoO等の単独酸化物の形成を少なくする観点から、Coの原子比dは、好ましくは1≦d≦8であり、より好ましくは2≦d≦8であり、さらに好ましくは2≦d≦6、よりさらに好ましくは2≦d≦4である。
【0116】
上記組成式(2)においてBは、マグネシウム、亜鉛、銅、ニッケル、クロム及びマンガンからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を示し、酸化物触媒中で一部のコバルトに置換されると推測される。disorder相の結晶の生成とのバランスを保つ観点から、Bの原子比eは、好ましくは0≦e<3であり、より好ましくは0≦e≦2である。Bで示される元素は、必須ではないものの、触媒中のCoMoOの結晶構造を安定化に寄与する傾向にある。
【0117】
元素Aはカリウム、セシウム及びルビジウム以外の、イオン半径が0.96Åよりも大きな元素である。元素Aの原子比cは、好ましくは1≦c≦5であり、より好ましくは1≦c≦4であり、さらに好ましくは1≦c≦3である。
【0118】
また、元素Cはカリウム、セシウム、及びルビジウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を示し、アンモ酸化触媒において、複合化されなかったMoO等の酸点を中和する役割を示すと考えられる。カリウム、セシウム及び/又はルビジウムを含有するか否かは、後述するdisorder相の結晶構造には直接影響しない。Mo12原子に対する元素Cの原子比fは、触媒活性の観点から、好ましくは0≦f≦2であり、より好ましくは0.01≦f≦2であり、さらに好ましくは0.01≦f≦1である。原子比fが0以上であることにより、中和効果がより向上する傾向にある。また、原子比fが2以下であることにより、酸化物触媒が塩基性から中性側になりやすく、原料であるプロピレン、イソブチレン、イソブタノール及びt−ブチルアルコールが酸化物触媒に吸着されやすい傾向にあり、触媒活性がより向上する傾向にある。
【0119】
元素B及びCは、後述するdisorder相の結晶構造とは別に結晶構造を形成するため、disorder相の結晶構造に直接的には影響を及ぼさない。
【0120】
その他、金属成分としては、disorder相Bi3−xFeMo12の形成を阻害しない程度の任意成分が含有されていてもかまわない。
【0121】
(3)金属酸化物以外の成分
第2の実施形態におけるアンモ酸化触媒は、金属酸化物を担持するための担体を含有してもよい。担体を含む触媒は、金属酸化物の高分散化の点、及び担持された金属酸化物に高い耐摩耗性を与えるという点で好ましい。
【0122】
担体としては、特に限定されないが、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、及びジルコニアからなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。酸化物触媒をこのような担体に担持させることにより、粒子形状、大きさ、分布、流動性、及び機械的強度といった、流動層反応に好適な物理的特性をより向上できる傾向にある。このなかでも、担体はシリカが好ましい。一般的にシリカは、流動層反応に好適な物理的特性を付与できるという特性に加えて、他の担体に比べそれ自身不活性であり、不飽和ニトリルに対する選択性を低下させることなく、金属酸化物に対し良好なバインド作用を有する点で好ましい担体である。さらに、シリカ担体は担持された金属酸化物に、高い耐摩耗性を与え易いという点でも好ましい。
【0123】
シリカ源としてはシリカゾルが好適である。その他の成分が混合されていない原料の状態におけるシリカゾルの濃度は、シリカ粒子の分散性の観点から、好ましくは10〜50質量%である。シリカゾルは、不飽和ニトリルの選択率の観点から、シリカ1次粒子の平均粒子直径が、20〜55nm未満、好ましくは20〜50nmである少なくとも1種のシリカゾル(a)40〜100質量%と、シリカ1次粒子径の平均粒子直径が5nm〜20nm未満である少なくとも1種のシリカゾル(b)60〜0質量%と、を含むものが好ましい。
【0124】
担体の含有量は、担体と酸化物触媒との合計100質量%に対して、好ましくは20〜80質量%であり、より好ましくは30〜70質量%であり、さらに好ましくは40〜60質量%である。担体の含有量が上記範囲内であることにより、不飽和ニトリルの収率がより向上する傾向にある。
【0125】
[2]アンモ酸化触媒の製造方法
第2の本実施態様実施形態におけるアンモ酸化触媒の製造方法は、
モリブデン、ビスマス、鉄、コバルト、及びイオン半径が0.96Åよりも大きな元素A(ただし、カリウム、セシウム及びルビジウムを除く)を含む、触媒を構成する原料を混合して原料スラリーを得る混合工程と、
得られた該原料スラリーを乾燥して乾燥体を得る乾燥工程と、
得られた該乾燥体を焼成する焼成工程と、
を有し、
前記焼成工程において、前記乾燥体を100℃から200℃まで1時間以上掛けて徐々に昇温する昇温工程を有する。第2の実施形態に係るアンモ酸化触媒の製造方法の詳細については、第1の実施形態と同様である。
【0126】
[3]不飽和ニトリルの製造方法
第2の実施形態に係る不飽和ニトリルの製造方法は、第2の実施形態に係る酸化物触媒を用いて、流動層反応器内で、オレフィン及び/又はアルコールと、分子状酸素と、アンモニアと、を反応させて不飽和ニトリルを得る不飽和ニトリル製造工程を有する。
【0127】
オレフィン及び/又はアルコールとしては、特に限定されないが、例えば、プロピレン、イソブチレン、プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、及びt−ブチルアルコールからなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0128】
第2の実施形態に係るアンモ酸化触媒を用いて、プロピレン、イソブチレン、イソブタノール及びt−ブチルアルコールからなる群より選ばれる1種以上を、分子状酸素及びアンモニアと反応させることにより、アクリロニトリル又はメタクリロニトリルを製造することができる。反応は、流動層反応器を用いて実施されることが好ましい。原料のプロピレン、イソブチレン、イソブタノール、t−ブチルアルコール及びアンモニアは、必ずしも高純度である必要はなく、工業グレードのものを使用することができる。
【0129】
また、分子状酸素源としては、通常空気を用いるのが好ましいが、酸素を空気と混合するなどして酸素濃度を高めたガスを用いることもできる。原料ガスの組成として、プロピレン、イソブチレン、イソブタノール及びt−ブチルアルコールに対するアンモニアと分子状酸素のモル比〔(プロピレン、イソブチレン、イソブタノール及びt−ブチルアルコール)/アンモニア/分子状酸素〕は、好ましくは1/0.8〜1.4/1.4〜2.4であり、より好ましくは1/0.9〜1.3/1.6〜2.2である。
【0130】
また、反応温度は好ましくは350〜550℃であり、より好ましくは400〜500℃である。
【0131】
反応圧力は、好ましくは常圧〜0.3MPaである。
【0132】
原料ガスと触媒との接触時間は、好ましくは0.5〜20sec・g/ccであり、より好ましくは1〜10sec・g/ccである。
【0133】
〔第3の実施形態〕
〔不飽和アルデヒドの製造方法〕
第3の実施形態に係る不飽和アルデヒドの製造方法は、
第1の実施形態に係る酸化物触媒を用いて、オレフィン及び/又はアルコールを酸化して不飽和アルデヒドを得る不飽和アルデヒド製造工程を有する。
【0134】
また、前記不飽和アルデヒド製造工程において、流動層反応器中で、前記オレフィン及び/又は前記アルコールと、酸素源と、を気相接触酸化反応させ、前記流動層反応器から前記不飽和アルデヒドを含む生成ガスを流出させる流出工程を有することが好ましい。
【0135】
前記オレフィン及び/又は前記アルコールは、プロピレン、イソブチレン、プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、及びt−ブチルアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0136】
さらに、前記気相接触酸化反応の反応温度が400〜500℃であり、
前記流動層反応器から流出する前記生成ガス中の酸素濃度が0.03〜0.5体積%である、ことが好ましい。
以下、より詳細に説明する。
【0137】
〔オレフィン〕
原料のオレフィンとしては、特に限定されないが、例えば、プロピレン、n−ブテン、イソブチレン、n−ペンテン、n−ヘキセン、シクロヘキセンなどが挙げられる。このなかでも、プロピレン及びイソブチレンからなる群より選ばれる1種以上の化合物であることが好ましい。このようなオレフィンを用いることにより、不飽和アルデヒドの収率がより向上する傾向にある。
【0138】
〔アルコール〕
原料のアルコールとしては、特に限定されないが、例えば、プロパノール、ブタノール、イソブタノール、t−ブチルアルコールなどが挙げられる。このなかでも、プロパノール、イソブタノール及びt−ブチルアルコールからなる群より選ばれる1種以上の化合物が好ましい。このようなアルコールを用いることにより、不飽和アルデヒドの収率がより向上する傾向にある。
【0139】
流動層反応器に導入するオレフィン及び/又はアルコールの濃度の下限は、流動層反応器に導入するガス全体の5.0体積%以上が好ましく、6.0体積%以上がより好ましく、7.0体積%以上がさらに好ましい。濃度の下限が上記範囲内であることにより、不飽和アルデヒドの生産性がより向上する傾向にある。また、上限は、10体積%以下が好ましく、9.5体積%以下がより好ましく、9.0体積%以下がさらに好ましい。濃度の上限が上記範囲内であることにより、不飽和アルデヒドの収率がより向上する傾向にある。
【0140】
第3の実施形態に係る不飽和アルデヒドの製造方法においては、例えば、原料としてプロピレン、又はプロパノールを用いた場合は、アクロレインを製造することができる。また、原料としてイソブチレン、イソブタノール、又はt−ブチルアルコールを用いた場合は、メタクロレインを製造することができる。なお、オレフィン及びアルコールには、水、窒素、アルカンとしてプロパン、ブタン、イソブタン等が含まれていてもよい。
【0141】
〔酸素源〕
第3の実施形態に係る不飽和アルデヒドの製造方法においては、オレフィン及び/又はアルコールと酸素源とを、酸化物触媒を用いて気相接触酸化反応させ、不飽和アルデヒドを製造する。この気相接触反応における酸素源としては、特に限定されないが、例えば、分子状酸素含有ガスと希釈ガスとの混合ガスを使用することができる。
【0142】
上記分子状酸素含有ガスとしては、特に限定されないが、例えば、純酸素ガス、空気等の酸素を含むガスが挙げられる。このなかでも、分子状酸素含有ガスとして空気を用いることが好ましい。空気を用いることにより、コスト等の工業的観点からより優れる傾向にある。
【0143】
上記希釈ガスとしては、特に限定されないが、例えば、窒素、二酸化炭素、水蒸気、及びこれら2種以上を混合したガスが挙げられる。
【0144】
上記混合ガスにおける、分子状酸素含有ガスと希釈ガスの混合比に関しては、体積比で下記不等式の条件を満足することが好ましい。
0.01<分子状酸素含有ガス/(分子状酸素含有ガス+希釈ガス)<0.3
【0145】
気相接触酸化反応の反応温度が高温の場合、酸化反応が進行しやすく、酸素が不足する傾向にある。そのため、酸化物触媒に供給される酸素源はオレフィン及び/又はアルコールよりも多い方が好ましい。また、オレフィン及び/又はアルコール濃度を高くして気相接触酸化反応を行う際には、酸化物触媒に十分な酸素を供給することに加え、酸化物触媒の過還元を防ぐためにも十分な量の酸素源を供給することが好ましい。しかしながら、酸素源を過度に供給すると不飽和アルデヒドの分解反応及び燃焼反応の要因となり、かえって生産量を低下する傾向にある。従って、酸素源は適切な割合で供給されることが好ましい。上記観点から、第3の実施形態における製造方法においては、触媒層に供給する空気とオレフィン及び/又はアルコールとのモル比が7.0〜10.5となるように酸素源を供給することが好ましく、8.0〜9.5となるように供給することがより好ましく、8.0〜9.0となるように供給することがさらに好ましい。触媒層に供給する空気のモル比がオレフィン及び/又はアルコールに対して7.0以上であることにより、オレフィン及び又はアルコール濃度が低くなり、酸化物触媒の還元劣化をより抑制できる傾向にある。一方、触媒層に供給する空気のモル比が10.5以下であることにより、触媒層に供給される酸素濃度が低くなり、酸化物触媒の酸化劣化をより抑制できる傾向にある。
【0146】
オレフィン、アルコール、及び分子状酸素含有ガスは、水蒸気を含んでもよい。水蒸気が含まれることにより、酸化物触媒へのコーキングをより防止できる傾向にある。
【0147】
また、希釈ガスは、水蒸気を含んでもよい。希釈ガスに水蒸気の含有率は低いほうが好ましい。水蒸気が含まれることにより、酢酸等の副生成物の発生をより抑制できる傾向にある。
【0148】
反応器に供給されるガス全体に含まれる水蒸気は、0.01〜30体積%であることが好ましい。
【0149】
〔流動層反応器〕
第3の実施形態に係る不飽和アルデヒドの製造方法は、流動層反応器(以下、単に「反応器」ともいう。)を用いることが好ましい。流動層反応器とは、反応器内にガス分散器、内挿物、サイクロンを主要構成要素として有し、酸化物触媒を流動させつつ、原料であるガスと接触させる構造を有する装置である。より具体的には、流動層ハンドブック(株式会社培風館刊、1999年)等に記載の流動層反応器等が使用可能である。このなかでも、特に気泡流動層方式の流動層反応器が適している。発生する反応熱の除熱は流動層反応器に内挿した冷却管を用いて行うことができる。
【0150】
〔気相接触酸化反応の反応温度〕
第3の実施形態に係る不飽和アルデヒドの製造方法においては、気相接触反応の反応温度は、好ましくは400〜500℃であり、より好ましくは420〜470℃であり、さらに好ましくは430〜450℃である。反応温度が400℃以上であることにより、転化率及び反応速度がより向上し、不飽和アルデヒドの収率がさらに向上する傾向にある。反応温度が500℃以下であることにより、生成した不飽和アルデヒドの燃焼分解がより抑制される傾向にある。気相接触酸化反応の反応温度は、流動層反応器に内挿した温度計により測定することができる。
【0151】
通常、気相接触反応は発熱反応であるため、好適な反応温度となるように、流動層反応器に除熱のための冷却装置が併設されることが好ましい。反応温度は、冷却管による反応熱の除熱や加熱装置による給熱によって、上記範囲に調整することができる。
【0152】
〔オレフィン及び/又はアルコール、並びに酸素源の導入方法〕
オレフィン及び/又はアルコール、並びに酸素源の導入方法は、特に限定されず、たとえば、酸化物触媒を充填した流動層反応器へ、オレフィン及び/又はアルコールを含むガスと、空気又は酸素濃度を高めたガスとを予め混合して導入してもよいし、それぞれのガスを独立に導入してもよい。反応に供するガスは反応器に導入した後に所定の反応温度に昇温することも、予熱して反応器に導入することもできる。このなかでも、連続して効率的に反応させるために、予熱して反応器に導入することが好ましい。
【0153】
〔流動層反応器から流出する生成ガス中の酸素濃度〕
流動層反応器から流出する生成ガス中の酸素濃度は、好ましくは0.03〜0.5体積%であり、より好ましくは0.03〜0.2体積%であり、さらに好ましくは0.05〜0.1体積%である。反応器出口酸素濃度が0.5体積%以下であることにより、触媒が過剰に還元されることをより抑制できる傾向にある。また、0.03体積%以上であることにより、触媒が過剰に酸化されることが抑制され、いずれの場合も、不飽和アルデヒドの収率がより向上する傾向にある。反応器出口酸素濃度を上記範囲に調整することにより、酸化還元度のバランスを崩すことなく、不飽和アルデヒドの燃焼分解を抑制することができる。
【0154】
目的の不飽和アルデヒドを含む生成ガスは、反応器出口から流出する。流動層反応器から流出する生成ガス中の酸素濃度は、以下、「反応器出口酸素濃度」ともいう。ここで、「反応器出口酸素濃度」とは、反応器出口から流出した、不飽和アルデヒドを含む生成ガスにおける酸素濃度をいう。反応器出口酸素濃度の測定は、流動層反応器の出口付近における生成ガス中の酸素の比率が変わらない範囲で測定することができ、厳密に流動層反応器から生成ガスが流出する部分やその付近である必要はない。従って、反応器の出口酸素濃度は、反応器下流又は反応器から流出する直前から、精製操作に供される直前までのガス中において測定すればよい。例えば生成ガスを急冷後、水に吸収させて抽出蒸留によって精製する場合、反応器と反応器下流に設けられる急冷塔との間の配管で、反応器出口酸素濃度を測定する生成ガスをサンプリングすることができる。反応器出口酸素濃度は、熱伝導型検出器(TCD)を備えたガスクロマトグラフィーにより測定することができる。
【0155】
反応器出口酸素濃度は、反応器内における不飽和アルデヒドの分解や二次反応に影響するため、上記範囲に制御することが重要である。反応器出口酸素濃度は、流動層反応器に供給する酸素源とオレフィン及び/又はアルコールとのモル比、流動層反応器に供給する酸素を含むガスの量、反応温度、反応器内の圧力、原料混合ガスと酸化物触媒との接触時間、触媒量、反応器に供給する全ガス量を変更することによって、調整することができる。なかでも、流動層反応器に供給する分子状酸素含有ガス、例えば、空気の量を制御することによって調整することが好ましい。
【0156】
例えば、Mo12Bi2.0Ce2.0Fe3.4Co3.0Cs0.16で表される酸化物40gを触媒とし、反応温度440℃、反応圧力0.05MPa、流量595cm/min(NTP換算)の条件で原料ガスを供給する場合、原料ガスのモル比組成をイソブチレン/空気/ヘリウム=1/9.2/バランス(イソブチレン濃度=8体積%)からイソブチレン/空気/ヘリウム=1/8.1/バランス(イソブチレン濃度=8体積%)に変更することによって、反応器出口ガス中の酸素濃度を0.4体積%から0.05体積%に変化させることができる。なお、「イソブチレン/空気/ヘリウム=1/8.1/バランス(イソブチレン濃度=8体積%)」とは、イソブチレン/空気=1/8.1、かつイソブチレン濃度が8体積%を満たすように、ヘリウムの量を決めることを示す。
【0157】
反応器出口酸素濃度を調整する条件としては、転化率の他に、上記のように、触媒量、接触時間、反応圧力、及び空間速度などが挙げられる。これらの条件を複合的に調節することにより、反応器出口酸素濃度を任意の値に調整することができる。例えば、反応温度を430℃〜500℃、オレフィン及び/又はアルコール濃度を6〜10体積%の範囲に調整して反応を行う場合、上記範囲に反応器出口酸素濃度を調整するために下記式で定義される接触時間は5.0(g・sec/cm)以下が好ましく、4.0(g・sec/cm)以下がより好ましく、3.0(g・sec/cm)以下がさらに好ましい。
接触時間(g・sec/cm)=W/F*60*273.15/(273.15+T)*(P*1000+101.325)/101.325
(式中、Wは流動層反応器中の触媒充填量(g)、Fは原料混合ガス流量(cm/min、NTP換算)、Tは反応温度(℃)、Pは反応圧力(MPa)を表す。)
【0158】
また、上記範囲に反応器出口酸素濃度を調整するために反応圧力は、常圧〜5気圧であることが好ましい。また、空間速度は好ましくは400〜4000/hr[Normal temperature pressure (NTP)条件下]であることが好ましい。
【0159】
〔酸化物触媒〕
第3の実施形態で用いられる酸化物触媒としては、第1の実施形態に係る酸化物触媒を用いる。このなかでも、モリブデン、ビスマス、鉄、コバルト、及びランタノイド元素を含み、コバルトに対する鉄の原子比Fe/CoがFe/Co≧1を満たし、担体をさらに含む酸化物触媒を用いることが好ましい。
【0160】
なお、酸化物触媒中の各元素の存在有無、各元素の原子比は、蛍光X線元素分析法(XRF)により同定することができる。
【0161】
Mo、Bi、Fe、及びCoは酸化物触媒を形成させるのに必須成分であり、この酸化物触媒中の格子酸素により、オレフィン及び/又はアルコールが酸化反応し、不飽和アルデヒドが製造される。一般に、酸化物触媒中の格子酸素が酸化反応に消費されると、酸化物触媒中に酸素空孔が生じ、結果として、酸化反応の進行に伴って酸化物触媒の還元も進行し、還元された酸化物触媒は失活する。そのため、還元を受けた酸化物触媒を速やかに再酸化することが必要である。Mo、Bi、Fe、及びCoを含む酸化物は、オレフィン及び/又はアルコールと酸素源との反応性に加え、気相中の分子状酸素を解離吸着して酸化物内に取り込み、消費された格子酸素の再生を行う再酸化作用にも優れていると考えられる。従って、長期に亘って酸化反応を行う場合でも、再酸化作用が維持され、酸化物触媒は失活することなく、オレフィン及び/又はアルコールから不飽和アルデヒドを安定的に製造できるものと考えられる。
【0162】
Mo−Bi系の金属酸化物において、Mo、Bi、Fe、Coを含有することにより、各金属元素が複合化しうる。第3の実施形態の酸化物触媒において、Mo12原子に対するBiの原子比aは、1≦a≦5であり、好ましくは1.5≦a≦4であり、より好ましくは1.8≦a≦4である。aが上記範囲であることにより、目的生成物の選択率がより向上する。Bi及びMoは、気相接触酸化、アンモ酸化反応等の活性種とされているBiMo12、BiMoO等のBi−Mo−O複合酸化物を形成することが好ましい。
【0163】
Feは、Mo及びBiと同様に工業的に不飽和アルデヒドを合成する上で必須の元素である。酸化物触媒のMo12原子に対するFeの原子比bは、1.5≦b≦6であり、好ましくは2≦b≦5.5、より好ましくは3≦b≦5である。bが上記範囲であることにより、3価と2価のレドックスを利用することで、CoMoOに鉄が固溶し、酸素量が少ない反応器内でも耐還元性のある触媒となる。
【0164】
Coは、上記と同様に工業的に不飽和アルデヒドを合成する上で必須の元素であり、複合酸化物CoMoO等のMoとの複合酸化物を形成し、気相から酸素を取り込み、Bi−Mo−O等に供給する役割を果たしていると考えられる。このような観点から、Coの原子比dは、好ましくは1≦d≦8であり、より好ましくは2≦d≦7、さらに好ましくは2.5≦d≦6である。
【0165】
CoMoOに鉄が固溶すると、酸化物触媒の耐還元性が向上する。そのため、第3の実施形態で用いる酸化物触媒中の鉄とコバルトの原子比Fe/Coは、好ましくはFe/Co≧0.8であり、より好ましくはFe/Co≧1であり、さらに好ましくはFe/Co≧1.05であり、よりさらに好ましくはFe/Co≧1.1である。また、Fe/Coの上限は、好ましくは3≧Fe/Coであり、より好ましくは2≧Fe/Coであり、さらに好ましくは1.5≧Fe/Coである。通常は、鉄は酸化されると3価になる。3価の鉄はCoMoOに固溶しにくく、単に鉄を増やすだけでは耐還元性の高い酸化物触媒を得ることは難しい。ところが、Fe/Co≧0.8の組成を有する酸化物触媒を用いて、400℃以上500℃以下の温度でオレフィン及び/又はアルコールを気相接触酸化反応させると、3価の鉄が還元され、CoMoOに固溶し、酸化物触媒の耐還元性が向上することがわかった。CoMoOに鉄が固溶したことは、CoMoOのXRDのピークシフトによって判別できる。より具体的には、実施例に記載の方法によりCoMoOに鉄が固溶したことを確認することができる。
【0166】
第3の実施形態で用いる酸化物触媒は、好ましくは、下記式(1)で表される組成を有する。
Mo12BiFeCo (1)
(式中、Moはモリブデン、Biはビスマス、Feは鉄、Coはコバルトであり、
Aは、ランタン、セリウム、プラセオジム、及びネオジムからなる群より選ばれる少なくとも1種のランタノイド元素を示し、
Bは、マグネシウム、亜鉛、銅、ニッケル、マンガン、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、錫、及び鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を示し、
Cは、カリウム、セシウム、及びルビジウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を示し、
a〜gは、モリブデン12原子に対する各元素の原子比を示し、1≦a≦5、1.5≦b≦6、1≦d≦6、Fe/Co≧1、1≦c≦5、0≦e<3、及び0.01≦f≦2を満たし、
gは酸素以外の構成元素の原子価によって決まる酸素の原子数である。)
【0167】
上記式(1)においてAは、ランタノイド元素であり、ランタン、セリウム、プラセオジム、及びネオジムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を示す。前述したBiとMoは、Bi−Mo−Oの複合酸化物を形成するが、触媒活性は高いものの、融点が低く、耐熱性が低い。一方、ランタノイド元素とMoは、A−Mo−O等の複合酸化物を形成し難いが、融点が高く、耐熱性が非常に高い。両者を適切に複合化させると、Biと元素AとMoが複合化され、耐熱性のあるBi−A−Mo−Oを形成し、流動層触媒として適した高い活性と耐熱性を併せ持つ複合酸化物が形成される。
【0168】
上記式(1)においてBは、マグネシウム、亜鉛、銅、ニッケル、マンガン、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、錫、及び鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を示す。Bは、酸化物触媒中で一部のコバルトに置換すると推測される。Bで示される元素は、必須ではないものの、触媒の活性の向上、又は、触媒中のCoMoOの結晶構造を安定化に寄与する。例えば、銅は触媒の活性を向上させる効果を有し、ニッケル、マグネシウム、亜鉛及びマンガンは、CoMoOの結晶構造を安定化させ、圧力や温度による相転移等を抑制する効果を有する。このようなBの原子比eは0≦e<3であることが好ましく、0≦e<2であることがより好ましく、0≦e<1.5であることがさらに好ましい。eが上記範囲であることにより、CoMoOに鉄が固溶した構造を壊すことなく、効果を発現させることができる。
【0169】
上記式(1)においてCは、セシウム、ルビジウム及びカリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を示す。Cは、酸化物触媒において、複合化されなかったMoO等の酸点を中和する役割を示すと考えられている。Mo12原子に対するCの原子比fは、0≦f≦2が好ましく、0.01≦f≦2がより好ましく、0.05≦f≦0.5がさらに好ましい。fが上記範囲内であることにより、触媒活性がより向上する傾向にある。特に、原子比fが2以下であることにより、酸化物触媒が塩基性となりにくく、オレフィン及び/又はアルコールの酸化反応では、原料であるオレフィン及び/又はアルコールが酸化物触媒に吸着され易く、触媒活性がより向上する傾向にある。
【0170】
(担体)
第3の実施形態で用いる酸化物触媒は、担体に担持されたものである。担体は、担体と酸化物触媒の合計質量に対して20〜80質量%が好ましく、30〜70質量%がより好ましく、40〜60質量%がさらに好ましい。担体の含有量が上記範囲内であることにより、不飽和アルデヒドの収率がより向上する傾向にある。Mo、Bi、Fe、Co、及びランタノイド原子を含有する酸化物を含む担持触媒は、公知の方法、例えば原料スラリーを調製する混合工程、該原料スラリーを噴霧乾燥する乾燥工程、及び乾燥工程で得られた乾燥品を焼成する焼成工程を包含する方法によって得ることができる。
【0171】
担体は、特に限定されないが、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、及びジルコニアからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。酸化物触媒をこのような担体に担持させることにより、粒子形状、大きさ、分布、流動性、機械的強度といった、流動層反応に好適な物理的特性を付与することができる傾向にある。このなかでも、担体はシリカが好ましい。シリカは、流動層反応に好適な物理的特性を付与できるという特性に加えて、他の担体に比べより不活性な担体であり、目的生成物に対する触媒の活性や選択性を低下させることなく、触媒と良好な結合作用を有する。
【0172】
〔酸化物触媒の製造方法〕
第3の実施形態で用いる酸化物触媒は、特に限定されず、公知の方法により製造することができる。第3の実施形態で用いる酸化物触媒は、例えば、原料スラリーを調製する混合工程、該原料スラリーを噴霧乾燥して乾燥体を得る乾燥工程、及び該乾燥体を焼成する焼成工程を有する製造方法によって得ることができる。以下、上記工程を有する酸化物触媒の製造方法の好ましい態様について説明する。
【0173】
混合工程では、触媒原料を用いて原料スラリーを調製する。触媒原料としては、モリブデン、ビスマス、鉄、コバルト、並びに、ランタン、セリウム、プラセオジム、及びネオジムなどのランタノイド元素が挙げられる。そのほかの触媒原料としては、特に限定されないが、例えば、マンガン、ニッケル、銅、亜鉛、鉛、アルカリ金属元素、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、上記以外の希土類元素が挙げられる。これら原料は、水又は硝酸に可溶なアンモニウム塩、硝酸塩、塩酸塩、硫酸塩、有機酸塩として用いることができる。特にモリブデンの元素源としてはアンモニウム塩が好ましい。また、モリブデン以外の各元素源としては、それぞれの元素を含む硝酸塩が好ましい。
【0174】
上述のとおり、酸化物の担体としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア等を用いることができるが、好適な担体としてはシリカが用いられる。シリカ源としてはシリカゾルが好ましい。
【0175】
原料スラリー等のその他の成分が混合されていない状態におけるシリカゾルの好ましい濃度は、10〜50質量%が好ましく、15〜45質量%がより好ましく、20〜40質量%がさらに好ましい。濃度が上記範囲内であることにより、シリカ粒子の分散性がより優れる傾向にある。
【0176】
シリカゾルは、目的生成物の選択率の観点から、シリカ1次粒子の平均粒子直径が20〜55nm、好ましくは20〜50nmである少なくとも1種のシリカゾル(a)40〜100質量%と、シリカ1次粒子径の平均粒子直径が5nm〜20nmである少なくとも1種のシリカゾル(b)60〜0質量%を含むことが好ましい。
【0177】
得られる酸化物触媒を担持するシリカ担体の量は、酸化物触媒とシリカ担体の合計質量に対して、好ましくは20〜80質量%であり、より好ましくは30〜70質量%であり、さらに好ましくは40〜60質量%である。
【0178】
原料スラリーの調製は、水に溶解させたモリブデンのアンモニウム塩をシリカゾルに添加し、次に、モリブデン以外の各元素源の硝酸塩を水又は硝酸水溶液に溶解させた溶液を加えることによって行うことができる。上記の添加の順序は適宜変更することもできる。
【0179】
乾燥工程では、上記の混合工程で得られた該原料スラリーを噴霧乾燥して、乾燥体(乾燥粒子)を得る。原料スラリーの噴霧化は、通常工業的に実施される遠心方式、二流体ノズル方式及び高圧ノズル方式等によって行うことができる。このなかでも、遠心方式で行うことが好ましい。次に、噴霧により得られた粒子を乾燥する。乾燥熱源としては、スチーム、電気ヒーター等によって加熱された空気を用いることが好ましい。乾燥機入口の温度は、好ましくは100〜400℃、より好ましくは150〜300℃である。
【0180】
焼成工程では、乾燥工程で得られた乾燥粒子を焼成することで所望の触媒を得る。乾燥粒子の焼成は、必要に応じて150〜400℃で前焼成を行い、その後400〜700℃、好ましくは500〜700℃の温度範囲で1〜20時間、本焼成を行うことが好ましい。焼成は、回転炉、トンネル炉、マッフル炉等の焼成炉を用いて行うことができる。触媒の粒子径は、10〜150μmの範囲に分布していることが好ましい。
【実施例】
【0181】
[実施例A]
以下に実施例Aを示して、第1の実施形態をより詳細に説明するが、第1の実施形態は以下に記載の実施例Aによって限定されるものではない。なお、酸化物触媒における酸素原子の原子比は、他の元素の原子価条件により決定されるものであり、実施例及び比較例においては、触媒の組成を表す式中、酸素原子の原子比は省略する。また、酸化物触媒における各元素の組成比は、仕込みの組成比から算出した。
【0182】
なお、以下の実施例A及び比較例Aにおいて、触媒原料として各種金属の水分散液を用いる場合、酸化ビスマス、酸化鉄及び酸化コバルト水分散液はCIKナノテック株式会社製の水分散液を、酸化ランタン及び酸化セリウム水分散液は多木化学株式会社製の水分散液を使用した。
【0183】
<平均粒子径の測定>
平均粒子径は、以下の式に従って計算により求めた。
平均粒子径[nm]=6000/(表面積[m/g]×真密度(8.99g/cm
【0184】
<pHの測定>
AS ONE製のpH METER KR5Eを用いて測定した。
【0185】
<X線回折角度の測定>
XRDの測定は、National Institute of Standards & Technologyが標準参照物質660として定めるところのLaB化合物の(111)面、(200)面を測定し、それぞれの値を37.441°、43.506°となるように規準化した。
【0186】
XRDの装置としては、ブルカー・D8 ADVANCEを用いた。XRDの測定条件は、X線出力:40kV−40mA、発散スリット(DS):0.3°、Step幅:0.02°/step、計数Time:2.0sec、測定範囲:2θ=5°〜60°とした。
【0187】
<転化率、選択率、収率>
実施例A及び比較例Aにおいて、反応成績を表すために用いた転化率、選択率、収率は次式で定義される。
転化率=(反応した原料のモル数/供給した原料のモル数)×100
選択率=(生成した化合物のモル数/反応した原料のモル数)×100
収率=(生成した化合物のモル数/供給した原料のモル数)×100
【0188】
<還元性評価>
還元性評価は、触媒の耐還元性を加速的に評価するために実施した。酸素を含まないガス雰囲気の還元処理で触媒が還元され、反応評価条件に戻すことで触媒が再酸化される。これを繰り返すことで加速的な触媒の耐還元性を評価することができる。
【0189】
2容量%のオレフィン及び/又はアルコールとヘリウム98容量%の混合ガスを毎秒3.0cc(NTP換算)の流速で5min流通させることで還元処理を実施し、その後、上述の反応評価条件に戻し、5min流通させた。これを1セットとし、合計100セット実施し、反応評価を行った。さらに100セット実施し、反応評価を行い、耐還元性を評価した。なお、メタクロレイン反応の還元性評価は430℃、アクロレイン反応の還元性評価は320℃、ジオレフィン反応の還元性評価は360℃で行った。
【0190】
初期性能に比べ、転化率及び選択率が維持されていれば、還元劣化はないと判断でき、低下してれば、還元劣化したと判断できる。
【0191】
また、実施例A及び比較例Aで用いている元素Aのイオン半径は以下のとおりである。
La 1.14Å
Ce 1.07Å
Ca 1.03Å
Pb 1.24 Å
V 0.56 Å
【0192】
[実施例A1]
イオン交換水90.5gと、濃度30質量%の過酸化水素水127.5gとの混合液に、三酸化モリブデン54.5gを入れ、約70℃で攪拌混合し、溶解させて溶液(A液)を得た。また、10質量%の平均粒子径51nmの酸化ビスマス水分散液204.75g、15質量%の平均粒子径22nmの酸化コバルト水分散液54.3g、15質量%の平均粒子径39nmの酸化鉄水分散液57.1g、及び10質量%の平均粒子径40nmの酸化ランタン水分散液71.9g、及び10質量%の水酸化セシウム液4.3gを混合して溶液(B液)を得た。
【0193】
A液及びB液の両液を混合して得られた混合液にアンモニア水を添加し、pHを3.2に調整し、約3時間程度撹拌混合して、原料スラリーを得た。この原料スラリーを、噴霧乾燥器に送り、入り口温度250℃、出口温度約140℃で噴霧乾燥し、酸化物触媒前駆体を得た。得られた酸化物触媒前駆体を、空気中で100℃から200℃まで3hかけて昇温した後、250℃まで1時間かけて昇温し、3時間保持して仮焼成体を得た。得られた仮焼成体を直径5mm高さ4mm、内径2mmのリング状に打錠成型し、空気中で、520℃で6時間本焼成し、触媒を得た。触媒の組成を表1に示し、粉末X線回折の測定結果を表2に示す。
【0194】
触媒の反応評価として、触媒4.0gを直径14mmのジャケット付SUS製反応管に充填し、反応温度430℃でイソブチレン8容量%、酸素12.8容量%、水蒸気3.0容量%及び窒素容量76.2%からなる混合ガスを120mL/min(NTP)の流量で通気し、メタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表3に示す。また、加速還元評価を100セット及び200セット実施した後の反応評価結果も、同様に表3に示す。
【0195】
[実施例A2]
約90℃の温水202.6gにヘプタモリブデン酸アンモニウム67.5gを溶解させた(A液)。また、硝酸ビスマス37.0g、硝酸セリウム22.0g、硝酸鉄51.3g、硝酸セシウム0.55g、及び硝酸コバルト37.2gを18質量%の硝酸水溶液41.9gに溶解させ、約90℃の温水206.2gを添加した(B液)。
【0196】
A液とB液の両液を混合し、アンモニア水を添加し、pHを4.1に調整し、約55℃で約4時間程度撹拌混合して原料スラリーを得た。この原料スラリーを、噴霧乾燥器に送り、入り口温度250℃、出口温度約140℃で噴霧乾燥し、酸化物触媒前駆体を得た。得られた酸化物触媒前駆体を、空気中で100℃から200℃まで2hかけて昇温した後、250℃まで1時間かけて昇温し、3時間保持して仮焼成体を得た。得られた仮焼成体を直径5mm高さ4mm、内径2mmのリング状に打錠成型し、空気中で、540℃で6時間本焼成し、触媒を得た。触媒の組成を表1に示し、粉末X線回折の測定結果を表2に示す。
【0197】
触媒の反応評価として、触媒4.5gを反応管に充填し、実施例A1と同じ条件で、メタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表3に示す。
【0198】
[実施例A3]
約90℃の温水199.2gにヘプタモリブデン酸アンモニウム66.4gを溶解させた(A液)。また、硝酸ビスマス47.0g、硝酸セリウム13.5g、硝酸カルシウム7.4g、硝酸鉄42.8g、硝酸ルビジウム1.56g、及び硝酸コバルト32.0gを18質量%の硝酸水溶液41.5gに溶解させ、約90℃の温水209.0gを添加した(B液)。A液とB液の両液を混合し、アンモニア水を添加し、pHを4.0に調整し、約55℃で約3時間程度撹拌混合して原料スラリーを得た。この原料スラリーを、噴霧乾燥器に送り、入り口温度250℃、出口温度約140℃で噴霧乾燥し、酸化物触媒前駆体を得た。得られた酸化物触媒前駆体を、空気中で100℃から200℃まで3hかけて昇温した後、250℃まで1時間かけて昇温し、3時間保持して仮焼成体を得た。得られた仮焼成体を直径5mm高さ4mm、内径2mmのリング状に打錠成型し、空気中で、530℃で5時間本焼成し、触媒を得た。触媒の組成を表1に示し、粉末X線回折の測定結果を表2に示す。
【0199】
触媒の反応評価として、触媒4.8gを反応管に充填し、実施例A1と同じ条件で、メタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表3に示す。
【0200】
[実施例A4]
イオン交換水90.6gと、濃度30質量%の過酸化水素水127.6gとの混合液に、三酸化モリブデン54.5gを入れ、約70℃で攪拌混合し、溶解させて溶液(A液)を得た。また、10質量%の平均粒子径51nmの酸化ビスマス水分散液155.48g、硝酸鉛4.2g、15質量%の平均粒子径22nmの酸化コバルト水分散液62.4g、15質量%の平均粒子径39nmの酸化鉄水分散液50.4g、及び10質量%の平均粒子径40nmの酸化ランタン水分散液92.6g、及び10質量%の水酸化セシウム液4.3gを混合して溶液(B液)を得た。
【0201】
A液及びB液の両液を混合して得られた混合液にアンモニア水を添加し、pHを3.6に調整し、約3時間程度撹拌混合して、原料スラリーを得た。この原料スラリーを、噴霧乾燥器に送り、入り口温度250℃、出口温度約140℃で噴霧乾燥し、酸化物触媒前駆体を得た。得られた酸化物触媒前駆体を、空気中で100℃から200℃まで3hかけて昇温した後、250℃まで1時間かけて昇温し、3時間保持して仮焼成体を得た。得られた仮焼成体を直径5mm高さ4mm、内径2mmのリング状に打錠成型し、空気中で、520℃で6時間本焼成し、触媒を得た。触媒の組成を表1に示し、粉末X線回折の測定結果を表2に示す。
【0202】
触媒の反応評価として、触媒4.5gを反応管に充填し、実施例A1と同じ条件で、メタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表3に示す。
【0203】
[実施例A5]
約90℃の温水207.2gにヘプタモリブデン酸アンモニウム69.1gを溶解させた(A液)。また、硝酸ビスマス45.7g、硝酸セリウム14.0g、硝酸マンガン2.3g、硝酸鉄48.5g、硝酸セシウム0.57g、及び硝酸コバルト27.6gを18質量%の硝酸水溶液40.9gに溶解させ、約90℃の温水195.4gを添加した(B液)。A液とB液の両液を混合し、アンモニア水を添加し、pHを4.0に調整し、約55℃で約3時間程度撹拌混合して原料スラリーを得た。この原料スラリーを、噴霧乾燥器に送り、入り口温度250℃、出口温度約140℃で噴霧乾燥し、酸化物触媒前駆体を得た。得られた酸化物触媒前駆体を、空気中で100℃から200℃まで5hかけて昇温した後、250℃まで1時間かけて昇温し、3時間保持して仮焼成体を得た。得られた仮焼成体を直径5mm高さ4mm、内径2mmのリング状に打錠成型し、空気中で、540℃で5時間本焼成し、触媒を得た。触媒の組成を表1に示し、粉末X線回折の測定結果を表2に示す。
【0204】
触媒の反応評価として、触媒4.2gを反応管に充填し、実施例A1と同じ条件で、メタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表3に示す。
【0205】
[実施例A6]
約90℃の温水211.2gにヘプタモリブデン酸アンモニウム70.4gを溶解させた(A液)。また、硝酸ビスマス34.0g、硝酸セリウム21.6g、硝酸鉄35.0g、硝酸セシウム0.58g、及び硝酸コバルト44.8gを18質量%の硝酸水溶液35.3gに溶解させ、約90℃の温水140.8gを添加した(B液)。
【0206】
A液とB液の両液を混合し、アンモニア水を添加し、pHを4.1に調整し、約55℃で約4時間程度撹拌混合して原料スラリーを得た。この原料スラリーを、噴霧乾燥器に送り、入り口温度250℃、出口温度約140℃で噴霧乾燥し、酸化物触媒前駆体を得た。得られた酸化物触媒前駆体を、空気中で100℃から200℃まで2hかけて昇温した後、250℃まで1時間かけて昇温し、3時間保持して仮焼成体を得た。得られた仮焼成体を直径5mm高さ4mm、内径2mmのリング状に打錠成型し、空気中で、540℃で6時間本焼成し、触媒を得た。触媒の組成を表1に示し、粉末X線回折の測定結果を表2に示す。
【0207】
[実施例A7]
約90℃の温水193.1gにヘプタモリブデン酸アンモニウム64.4gを溶解させた(A液)。また、硝酸ビスマス37.0g、硝酸セリウム23.7g、硝酸鉄36.9g、硝酸セシウム0.41g、及び硝酸コバルト54.3gを18質量%の硝酸水溶液34.1gに溶解させ、約90℃の温水128.7gを添加した(B液)。
【0208】
A液とB液の両液を混合し、アンモニア水を添加し、pHを4.0に調整し、約55℃で約4時間程度撹拌混合して原料スラリーを得た。この原料スラリーを、噴霧乾燥器に送り、入り口温度250℃、出口温度約140℃で噴霧乾燥し、酸化物触媒前駆体を得た。得られた酸化物触媒前駆体を、空気中で100℃から200℃まで3hかけて昇温した後、250℃まで1時間かけて昇温し、3時間保持して仮焼成体を得た。得られた仮焼成体を直径5mm高さ4mm、内径2mmのリング状に打錠成型し、空気中で、540℃で5時間本焼成し、触媒を得た。触媒の組成を表1に示し、粉末X線回折の測定結果を表2に示す。
【0209】
[比較例A1]
約90℃の温水208.8gにヘプタモリブデン酸アンモニウム69.6gを溶解させた(A液)。また、硝酸ビスマス28.6g、硝酸セリウム28.3g、硝酸マグネシウム10.9g、硝酸鉄38.3g、硝酸ルビジウム1.43g、及び硝酸ニッケル38.5gを18質量%の硝酸水溶液41.9gに溶解させ、約90℃の温水200.3gを添加した(B液)。A液とB液の両液を混合し、アンモニア水を添加し、pHを4.2に調整し、約55℃で約3時間程度撹拌混合して原料スラリーを得た。この原料スラリーを、噴霧乾燥器に送り、入り口温度250℃、出口温度約140℃で噴霧乾燥し、酸化物触媒前駆体を得た。得られた酸化物触媒前駆体を、空気中で100℃から200℃まで5hかけて昇温した後、250℃まで1時間かけて昇温し、3時間保持して仮焼成体を得た。得られた仮焼成体を直径5mm高さ4mm、内径2mmのリング状に打錠成型し、空気中で、530℃で5時間本焼成し、触媒を得た。触媒の組成を表1に示し、粉末X線回折の測定結果を表2に示す。
【0210】
触媒の反応評価として、触媒5.0gを反応管に充填し、実施例A1と同じ条件で、メタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表3に示す。
【0211】
[比較例A2]
約90℃の温水216.9gにヘプタモリブデン酸アンモニウム72.3gを溶解させた(A液)。また、硝酸ビスマス28.1g、硝酸セリウム14.7g、硝酸カリウム0.35g、硝酸鉄19.2g、硝酸セシウム2.0g、及び硝酸コバルト69.8gを18質量%の硝酸水溶液40.6gに溶解させ、約90℃の温水181.7gを添加した(B液)。A液とB液の両液を混合し、アンモニア水を添加し、pHを4.3に調整し、約55℃で約3時間程度撹拌混合して原料スラリーを得た。この原料スラリーを、噴霧乾燥器に送り、入り口温度250℃、出口温度約140℃で噴霧乾燥し、酸化物触媒前駆体を得た。得られた酸化物触媒前駆体を、空気中で100℃から200℃まで3hかけて昇温した後、250℃まで1時間かけて昇温し、3時間保持して仮焼成体を得た。得られた仮焼成体を直径5mm高さ4mm、内径2mmのリング状に打錠成型し、空気中で、520℃で5時間本焼成し、触媒を得た。触媒の組成を表1に示し、粉末X線回折の測定結果を表2に示す。
【0212】
触媒の反応評価として、触媒5.2gを反応管に充填し、実施例A1と同じ条件で、メタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表3に示す。
【0213】
[比較例A3]
約90℃の温水197.2gにヘプタモリブデン酸アンモニウム65.7gを溶解させた(A液)。また、硝酸ビスマス64.5g、硝酸鉄42.4g、硝酸セシウム0.54g、及び硝酸コバルト30.8gを18質量%の硝酸水溶液40.6gに溶解させ、約90℃の温水203.6gを添加した(B液)。A液とB液の両液を混合し、アンモニア水を添加し、pHを4.0に調整し、約55℃で約3時間程度撹拌混合して原料スラリーを得た。この原料スラリーを、噴霧乾燥器に送り、入り口温度250℃、出口温度約140℃で噴霧乾燥し、酸化物触媒前駆体を得た。得られた酸化物触媒前駆体を、空気中で100℃から200℃まで3hかけて昇温した後、250℃まで1時間かけて昇温し、3時間保持して仮焼成体を得た。得られた仮焼成体を直径5mm高さ4mm、内径2mmのリング状に打錠成型し、空気中で、540℃で5時間本焼成し、触媒を得た。触媒の組成を表1に示し、粉末X線回折の測定結果を表2に示す。
【0214】
触媒の反応評価として、触媒6.1gを反応管に充填し、実施例A1と同じ条件で、メタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表3に示す。
【0215】
[比較例A4]
約90℃の温水309.9gにヘプタモリブデン酸アンモニウム70.0gとメタバナジン酸アンモニウム5.4gを溶解させた(A液)。また、硝酸ビスマス46.3g、硝酸鉄45.2g、硝酸セシウム0.57g、及び硝酸コバルト32.8gを18質量%の硝酸水溶液38.6gに溶解させ、約90℃の温水170.3gを添加した(B液)。A液とB液の両液を混合し、アンモニア水を添加し、pHを4.5に調整し、約55℃で約3時間程度撹拌混合して原料スラリーを得た。この原料スラリーを、噴霧乾燥器に送り、入り口温度250℃、出口温度約140℃で噴霧乾燥し、酸化物触媒前駆体を得た。得られた酸化物触媒前駆体を、空気中で100℃から200℃まで3hかけて昇温した後、250℃まで1時間かけて昇温し、3時間保持して仮焼成体を得た。得られた仮焼成体を直径5mm高さ4mm、内径2mmのリング状に打錠成型し、空気中で、460℃で5時間本焼成し、触媒を得た。触媒の組成を表1に示し、粉末X線回折の測定結果を表2に示す。
【0216】
触媒の反応評価として、触媒6.0gを反応管に充填し、実施例A1と同じ条件で、メタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表3に示す。
【0217】
[比較例A5]
イオン交換水90.2gと、濃度30質量%の過酸化水素水127.0gとの混合液に、三酸化モリブデン54.3gを入れ、約70℃で攪拌混合し、溶解させて溶液(A液)を得た。また、10質量%の平均粒子径51nmの酸化ビスマス水分散液168.9g、15質量%の平均粒子径22nmの酸化コバルト水分散液63.7g、15質量%の平均粒子径39nmの酸化鉄水分散液66.9g、及び10質量%の平均粒子径20nmの酸化セリウム水分散液84.9g、及び10質量%の水酸化セシウム液4.2gを混合して溶液(B液)を得た。
【0218】
A液及びB液の両液を混合して得られた混合液にアンモニア水を添加し、pHを3.0に調整し、約3時間程度撹拌混合して、原料スラリーを得た。この原料スラリーを、噴霧乾燥器に送り、入り口温度250℃、出口温度約140℃で噴霧乾燥し、酸化物触媒前駆体を得た。得られた酸化物触媒前駆体を、空気中で100℃から250℃まで20分で昇温し、250℃で3時間保持し、仮焼成体を得た。得られた仮焼成体を直径5mm高さ4mm、内径2mmのリング状に打錠成型し、空気中で、530℃で5時間本焼成し、触媒を得た。触媒の組成を表1に示し、粉末X線回折の測定結果を表2に示す。
【0219】
触媒の反応評価として、触媒4.2gを反応管に充填し、実施例A1と同じ条件で、メタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表3に示す。
【0220】
[比較例A6]
組成がMo12原子を基準とした原子比としてMo12Bi1.6Ce0.4Fe1.0Co8.0Cs0.40.2で表わされる触媒組成物を次のようにして調製した。約50℃の温水1820gにヘプタモリブデン酸アンモニウム364gを溶解させた(A液)。また、硝酸ビスマス133g、硝酸セリウム29.8g、硝酸鉄69.4g、硝酸セシウム13.4g、硝酸カリウム3.46gおよび硝酸コバルト400gを15重量%の硝酸水溶液290gに溶解させた(B液)。A液とB液の両液を約2時間程度撹拌混合して原料スラリーを得た。この原料スラリーを噴霧乾燥し、さらに得られた噴霧乾燥触媒組成物前駆体を200℃で3時間仮焼した。かくして得られた疑似球形粒子状の仮焼触媒組成物前駆体を直径5mm高さ4mmの円柱状に打錠成型し、460℃で3時間焼成し、触媒を得た。触媒の組成を表1に示し、粉末X線回折の測定結果を表2に示す。
【0221】
触媒の反応評価として、触媒4.2gを反応管に充填し、実施例A1と同じ条件で、メタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表3に示す。
【0222】
図8に比較例A6のオレフィンの気相接触酸化反応前と反応後の酸化物触媒のXRD(2θ=25〜27°)を示す。比較例A6のオレフィンの気相接触酸化反応前の酸化物触媒のXRDではCoMoO(002)由来のピークは2θ=26.46°、反応後の酸化物触媒のCoMoO(002)由来のピークは2θ=26.46°であり、CoMoOに2価のFeは固溶していないことが分かった。これは、コバルトに対する鉄の原子比Fe/CoがFe/Co≧1を満たさないためと考えられた。
【0223】
<アクロレイン合成反応>
[実施例A8]
イオン交換水90.7gと、濃度30質量%の過酸化水素水127.8gとの混合液に、三酸化モリブデン54.6gを入れ、約70℃で攪拌混合し、溶解させて溶液(A液)を得た。また、10質量%の平均粒子径51nmの酸化ビスマス水分散液205.3g、15質量%の平均粒子径22nmの酸化コバルト水分散液54.5g、15質量%の平均粒子径39nmの酸化鉄水分散液57.2g、及び10質量%の平均粒子径40nmの酸化ランタン水分散液72.1g、及び10質量%の水酸化セシウム液1.4gを混合して溶液(B液)を得た。
【0224】
A液及びB液の両液を混合して得られた混合液にアンモニア水を添加し、pHを3.8に調整し、約3時間程度撹拌混合して、原料スラリーを得た。この原料スラリーを、噴霧乾燥器に送り、入り口温度250℃、出口温度約140℃で噴霧乾燥し、酸化物触媒前駆体を得た。得られた酸化物触媒前駆体を、空気中で100℃から200℃まで5hかけて昇温した後、260℃まで1時間かけて昇温し、3時間保持して仮焼成体を得た。得られた仮焼成体を直径5mm高さ4mm、内径2mmのリング状に打錠成型し、空気中で、510℃で5時間本焼成し、触媒を得た。触媒の組成を表1に示し、粉末X線回折の測定結果を表2に示す。
【0225】
得られた触媒を用いて、プロピレンからアクロレインを合成した。触媒20mLを内径15mmのSUS製ジャケット付反応管に充填し、プロピレン濃度10容量%、水蒸気濃度17容量%及び空気濃度73容量%の原料ガスを通気し、反応温度320℃にてアクロレイン合成反応を実施した。反応評価結果を表4に示す。
【0226】
[比較例A7]
約90℃の温水203.1gにヘプタモリブデン酸アンモニウム67.7gを溶解させた(A液)。また、硝酸ビスマス37.1g、硝酸セリウム22.0g、硝酸鉄51.4g、硝酸セシウム0.19g、及び硝酸コバルト37.4gを18質量%の硝酸水溶液41.9gに溶解させ、約90℃の温水205.7gを添加した(B液)。A液とB液の両液を混合し、アンモニア水を添加し、pHを4.0に調整し、約55℃で約3時間程度撹拌混合して原料スラリーを得た。この原料スラリーを、噴霧乾燥器に送り、入り口温度250℃、出口温度約140℃で噴霧乾燥し、酸化物触媒前駆体を得た。得られた酸化物触媒前駆体を、空気中で100℃から250℃まで20分で昇温し、250℃で3時間保持し、仮焼成体を得た。得られた仮焼成体を直径5mm高さ4mm、内径2mmのリング状に打錠成型し、空気中で、460℃で5時間本焼成し、触媒を得た。触媒の組成を表1に示し、粉末X線回折の測定結果を表2に示す。
【0227】
触媒の反応評価として、触媒20mLを反応管に充填し、実施例A8と同じ条件で、アクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表4に示す。
【0228】
<ブタジエン合成反応>
[実施例A9]
実施例A2と同じ触媒を使用して1−ブテンからブタジエンを以下のとおりに合成した。直径14mmのジャケット付SUS製反応管に、触媒6.0gを充填し、反応温度360℃で1−ブテン8容量%、酸素12.8容量%、窒素容量79.2%からなる混合ガスを120mL/min(NTP)の流量で通気し、ブタジエン合成反応を行った。反応評価結果を表5に示す。
【0229】
[比較例A8]
比較例A5と同じ触媒を使用して反応管に触媒6.0gを充填し、実施例A9と同じ反応条件で1−ブテンからブタジエンを以下のとおりに合成した。反応評価結果を表5に示す。
【0230】
【表1】
【0231】
【表2】
【0232】
【表3】
【0233】
【表4】
【0234】
【表5】
【0235】
<実施例A1及び比較例A3で得られた触媒のX線回折ピーク>
実施例A1及び比較例A3で得られた触媒のX線回折ピークを図5に示す。また、図5におけるX線回折ピークの2θ=15〜30°の範囲の拡大図を図6に、2θ=30〜50°の範囲の拡大図を図7に示す。図5及び6から、実施例A1で得られた触媒のX線回折において、少なくとも2θ=18.34°(101)面、28.16°(112)面、33.66°(200)面、46.10°にピークを示し、2θ=33.66°のピーク強度Iaと2θ=34.06°のピーク強度Ibの強度比(Ia/Ib)=3.3であり、実施例A1で得られた触媒においては、disorder相Bi3−xFeMo12の結晶構造が生成したと判断できる。
【0236】
一方、比較例A3で得られた触媒のX線回折においては、18.30°±0.05°(101)面、28.20 °±0.05°(112)面、33.65°±0.05°(200)面、46.15°±0.05°(204)面、にピークを示さなかった。すなわち、比較例A3で得られた触媒においては、disorder相Bi3−xFeMo12の結晶構造が生成しなかったと判断できる。
【0237】
実施例A1と比較例A3で得られた触媒のX線回折を比較すると、実施例A1で得られた触媒の18.34°(101)面のピークについては、比較例A3で得られた触媒は18.10°(310)面と18.48°(111)面にピーク分裂が観測され、実施例A1で得られた触媒の28.20°±0.05°(112)面のピークについては、比較例A3で得られた触媒は28.02°(221)面と28.35°(42−1)面にピーク分裂が観測され、実施例A1で得られた触媒の33.65°±0.05°(200)面のピークについては、比較例A3で得られた触媒は33.30°(600)面と34.06°(202)面にピーク分裂が観測され、実施例A1で得られた触媒の46.15°±0.05°(204)面のピークについては、比較例A3で得られた触媒は45.90°(640)面と46.46°(242)面にピーク分裂が観測された。2θ=33.66°のピーク強度Iaと2θ=34.06°のピーク強度Ibの強度比(Ia/Ib)=1.1であり、実施例A1で得られた触媒においては、disorder相Bi3−xFeMo12の結晶構造が生成したと判断できる。これに対して、比較例A3で得られた触媒においては、disorder相Bi3−xFeMo12ではなく、order相が生成していると判断できる。
【0238】
[実施例B]
以下に実施例Bを示して、第2の実施形態をより詳細に説明するが、第2の実施形態は以下に記載の実施例Bによって限定されるものではない。なお、アンモ酸化触媒における酸素原子の原子比は、他の元素の原子価条件により決定されるものであり、実施例及び比較例においては、触媒の組成を表す式中、酸素原子の原子比は省略する。また、アンモ酸化触媒における各元素の組成比は、仕込みの組成比から算出した。
なお、以下の実施例B及び比較例Bにおいて、触媒原料として各種金属の水分散液を用いる場合、酸化ビスマス、酸化鉄及び酸化コバルト水分散液はCIKナノテック株式会社製の水分散液を、酸化ランタン及び酸化セリウム水分散液は多木化学株式会社製の水分散液を使用した。
【0239】
<平均粒子径の測定>
平均粒子径は、以下の式に従って計算により求めた。
平均粒子径[nm]=6000/(表面積[m2/g]×真密度(8.99g/cm3
【0240】
<pHの測定>
AS ONE製のpH METER KR5Eを用いて測定した。
【0241】
<X線回折角度の測定>
XRDの測定は、National Institute of Standards & Technologyが標準参照物質660として定めるところのLaB6化合物の(111)面、(200)面を測定し、それぞれの値を37.441°、43.506°となるように規準化した。
XRDの装置としては、ブルカー・D8 ADVANCEを用いた。XRDの測定条件は、X線出力:40kV−40mA、発散スリット(DS):0.3°、Step幅:0.02°/step、計数Time:2.0sec、測定範囲:2θ=5°〜60°とした。
【0242】
<アンモ酸化反応の反応評価条件>
10メッシュの金網を1cm間隔で12枚内蔵した内径25mmのバイコールガラス製流動層反応管に40〜60gの触媒をとり、反応温度430℃、反応圧力常圧下に、混合ガス(プロピレン又はイソブチレン:アンモニア:酸素:ヘリウムの容積比が1:1.2:1.85:7.06)を毎秒3.64cc(NTP換算)の流速で通過させた。
【0243】
<転化率、選択率、収率>
反応成績を表すために用いた転化率、選択率、収率は次式で定義される。
転化率=(反応した原料のモル数/供給した原料のモル数)×100
選択率=(生成した化合物のモル数/反応した原料のモル数)×100
収率=(生成した化合物のモル数/供給した原料のモル数)×100
【0244】
<接触時間>
接触時間は次式で定義される。
接触時間(sec・g/cc)=(W/F)×273/(273+T)×P/0.10 式中、Wは触媒の量(g)、Fは標準状態(0℃、1atm)での原料混合ガス流量(Ncc/sec)、Tは反応温度(℃)、そしてPは反応圧力(MPa)を示す。
【0245】
<還元性評価>
還元性評価は、触媒の耐還元性を加速的に評価するために実施した。酸素を含まないガス雰囲気の還元処理で触媒が還元され、反応評価条件に戻すことで触媒が再酸化される。これを繰り返すことで加速的な触媒の耐還元性を評価することができる。
430℃の温度で、2容量%、のプロピレン、イソブチレン、イソブタノール及又はt−ブチルアルコールとヘリウム98容量%の混合ガスを毎秒3.64cc(NTP換算)の流速で5min流通させることで還元処理を実施し、その後、上述の反応評価条件に戻し、5min流通させた。これを1セットとし、合計100セット実施し、反応評価を行った。さらに100セット実施し、反応評価を行い、耐還元性を評価した。
【0246】
また、実施例B及び比較例Bで用いている元素Aのイオン半径は以下のとおりである。
La 1.14Å
Ce 1.07Å
Pr 1.06Å
Ca 1.03Å
Pb 1.24Å
V 0.56Å
【0247】
[実施例B1]
シリカ1次粒子の平均直径が44nmのSiO2を26質量%含む40質量%のシリカゾル125.0gと、シリカ1次粒子の平均直径が12nmのSiO2を30質量%含む34質量%の水性シリカゾル147.1gと、水61.3gを混合して30質量%のシリカ原料を得た。
約90℃の温水211.0gにヘプタモリブデン酸アンモニウム70.3gを溶解させた(A液)。また、硝酸ビスマス38.6g、硝酸ランタン22.9g、硝酸鉄42.7g、硝酸セシウム0.51g、及び硝酸コバルト31.4gを18質量%の硝酸水溶液36.4gに溶解させ、約90℃の温水148.1gを添加した(B液)。
上記シリカ原料とA液とB液の両液を混合し、アンモニア水を添加し、pHを4.1に調整し、約55℃で約4時間程度撹拌混合して原料スラリーを得た。この原料スラリーを、噴霧乾燥器に送り、入り口温度250℃、出口温度約140℃で噴霧乾燥し、酸化物触媒前駆体を得た。得られた酸化物触媒前駆体を、空気中で100℃から200℃まで2hかけて昇温した後、260℃まで1時間かけて昇温し、3時間保持して仮焼成体を得た。得られた仮焼成体を空気中で、570℃で3時間本焼成し、触媒を得た。触媒の組成を表6に示し、粉末X線回折の測定結果を表7に示す。
触媒の反応評価として、触媒55gを内径25mmのバイコールガラス製流動層反応管に充填し、接触時間4.3(sec・g/cc)でプロピレンのアンモ酸化反応を行った。反応評価結果を表8に示す。また、加速還元評価を100セット及び200セット実施した後の反応評価結果も、同様に表8に示す。
【0248】
[実施例B2]
シリカ1次粒子の平均直径が44nmのSiO2を26質量%含む40質量%のシリカゾル125.0gと、シリカ1次粒子の平均直径が12nmのSiO2を30質量%含む34質量%の水性シリカゾル147.1gと、水61.3gを混合して30質量%のシリカ原料を得た。
約90℃の温水207.8gにヘプタモリブデン酸アンモニウム69.3gを溶解させた(A液)。また、硝酸ビスマス41.1g、硝酸セリウム19.7g、硝酸鉄44.7g、硝酸セシウム0.50g、及び硝酸コバルト32.5gを18質量%の硝酸水溶液40.9gに溶解させ、約90℃の温水194.7gを添加した(B液)。
上記シリカ原料とA液とB液の両液を混合し、アンモニア水を添加し、pHを3.3に調整し、約55℃で約4時間程度撹拌混合して原料スラリーを得た。この原料スラリーを、噴霧乾燥器に送り、入り口温度250℃、出口温度約140℃で噴霧乾燥し、酸化物触媒前駆体を得た。得られた酸化物触媒前駆体を、空気中で100℃から200℃まで2hかけて昇温した後、250℃まで1時間かけて昇温し、3時間保持して仮焼成体を得た。得られた仮焼成体を空気中で、570℃で3時間本焼成し、触媒を得た。触媒の組成を表6に示し、粉末X線回折の測定結果を表7に示す。
触媒の反応評価として、触媒55gを内径25mmのバイコールガラス製流動層反応管に充填し、接触時間4.2(sec・g/cc)でプロピレンのアンモ酸化反応を行った。反応評価結果を表8に示す。また、加速還元評価を100セット及び200セット実施した後の反応評価結果も、同様に表8に示す。
【0249】
[実施例B3]
シリカ1次粒子の平均直径が44nmのSiO2を26質量%含む40質量%のシリカゾル125.0gと、シリカ1次粒子の平均直径が12nmのSiO2を30質量%含む34質量%の水性シリカゾル147.1gと、水61.3gを混合して30質量%のシリカ原料を得た。
約90℃の温水209.1gにヘプタモリブデン酸アンモニウム69.7gを溶解させた(A液)。また、硝酸ビスマス44.6g、硝酸プラセオジム17.0g、硝酸鉄31.8g、硝酸セシウム0.57g、及び硝酸コバルト38.4gを18質量%の硝酸水溶液40.2gに溶解させ、約90℃の温水188.8gを添加した(B液)。
上記シリカ原料とA液とB液の両液を混合し、アンモニア水を添加し、pHを3.6に調整し、約55℃で約4時間程度撹拌混合して原料スラリーを得た。この原料スラリーを、噴霧乾燥器に送り、入り口温度250℃、出口温度約140℃で噴霧乾燥し、酸化物触媒前駆体を得た。得られた酸化物触媒前駆体を、空気中で100℃から200℃まで2hかけて昇温した後、270℃まで1時間かけて昇温し、3時間保持して仮焼成体を得た。得られた仮焼成体を空気中で、570℃で3時間本焼成し、触媒を得た。触媒の組成を表6に示し、粉末X線回折の測定結果を表7に示す。
触媒の反応評価として、触媒57gを内径25mmのバイコールガラス製流動層反応管に充填し、接触時間4.4(sec・g/cc)でプロピレンのアンモ酸化反応を行った。反応評価結果を表8に示す。また、加速還元評価を100セット及び200セット実施した後の反応評価結果も、同様に表8に示す。
【0250】
[実施例B4]
シリカ1次粒子の平均直径が44nmのSiO2を26質量%含む40質量%のシリカゾル125.0gと、シリカ1次粒子の平均直径が12nmのSiO2を30質量%含む34質量%の水性シリカゾル147.1gと、水61.3gを混合して30質量%のシリカ原料を得た。
約90℃の温水223.4gにヘプタモリブデン酸アンモニウム74.5gを溶解させた(A液)。また、硝酸ビスマス20.4g、硝酸ランタン30.3g、硝酸鉄45.2g、硝酸セシウム0.54g、硝酸カルシウム6.6g、及び硝酸コバルト32.9gを18質量%の硝酸水溶液34.3gに溶解させ、約90℃の温水114.4gを添加した(B液)。
上記シリカ原料とA液とB液の両液を混合し、アンモニア水を添加し、pHを3.6に調整し、約55℃で約4時間程度撹拌混合して原料スラリーを得た。この原料スラリーを、噴霧乾燥器に送り、入り口温度250℃、出口温度約140℃で噴霧乾燥し、酸化物触媒前駆体を得た。得られた酸化物触媒前駆体を、空気中で100℃から200℃まで2hかけて昇温した後、240℃まで1時間かけて昇温し、4時間保持して仮焼成体を得た。得られた仮焼成体を空気中で、580℃で3時間本焼成し、触媒を得た。触媒の組成を表6に示し、粉末X線回折の測定結果を表7に示す。
触媒の反応評価として、触媒57gを内径25mmのバイコールガラス製流動層反応管に充填し、接触時間4.5(sec・g/cc)でプロピレンのアンモ酸化反応を行った。反応評価結果を表8に示す。また、加速還元評価を100セット及び200セット実施した後の反応評価結果も、同様に表8に示す。
【0251】
[実施例B5]
シリカ1次粒子の平均直径が44nmのSiO2を26質量%含む40質量%のシリカゾル125.0gと、シリカ1次粒子の平均直径が12nmのSiO2を30質量%含む34質量%の水性シリカゾル147.1gと、水61.3gを混合して30質量%のシリカ原料を得た。
約90℃の温水202.0gにヘプタモリブデン酸アンモニウム67.3gを溶解させた(A液)。また、硝酸ビスマス21.5g、硝酸セリウム24.6g、硝酸鉄42.2g、硝酸セシウム0.74g、硝酸鉛8.4g、及び硝酸コバルト47.3gを18質量%の硝酸水溶液39.4gに溶解させ、約90℃の温水182.0gを添加した(B液)。
上記シリカ原料とA液とB液の両液を混合し、アンモニア水を添加し、pHを3.6に調整し、約55℃で約4時間程度撹拌混合して原料スラリーを得た。この原料スラリーを、噴霧乾燥器に送り、入り口温度250℃、出口温度約140℃で噴霧乾燥し、酸化物触媒前駆体を得た。得られた酸化物触媒前駆体を、空気中で100℃から200℃まで2hかけて昇温した後、250℃まで1時間かけて昇温し、3時間保持して仮焼成体を得た。得られた仮焼成体を空気中で、570℃で3時間本焼成し、触媒を得た。触媒の組成を表6に示し、粉末X線回折の測定結果を表7に示す。
触媒の反応評価として、触媒57gを内径25mmのバイコールガラス製流動層反応管に充填し、接触時間4.6(sec・g/cc)でプロピレンのアンモ酸化反応を行った。反応評価結果を表8に示す。また、加速還元評価を100セット及び200セット実施した後の反応評価結果も、同様に表8に示す。
【0252】
[実施例B6]
シリカ1次粒子の平均直径が44nmのSiO2を26質量%含む40質量%のシリカゾル125.0gと、シリカ1次粒子の平均直径が12nmのSiO2を30質量%含む34質量%の水性シリカゾル147.1gと、水61.3gを混合して30質量%のシリカ原料を得た。
約90℃の温水211.8gにヘプタモリブデン酸アンモニウム70.6gを溶解させた(A液)。また、硝酸ビスマス37.1g、硝酸セリウム21.5g、硝酸鉄41.5g、硝酸ルビジウム0.63g、硝酸マグネシウム10.2g、硝酸コバルト19.5g及び硝酸ニッケル9.8gを18質量%の硝酸水溶液41.3gに溶解させ、約90℃の温水193.1gを添加した(B液)。
上記シリカ原料とA液とB液の両液を混合し、アンモニア水を添加し、pHを3.6に調整し、約55℃で約4時間程度撹拌混合して原料スラリーを得た。この原料スラリーを、噴霧乾燥器に送り、入り口温度250℃、出口温度約140℃で噴霧乾燥し、酸化物触媒前駆体を得た。得られた酸化物触媒前駆体を、空気中で100℃から200℃まで2hかけて昇温した後、250℃まで1時間かけて昇温し、3時間保持して仮焼成体を得た。得られた仮焼成体を空気中で、570℃で3時間本焼成し、触媒を得た。触媒の組成を表6に示し、粉末X線回折の測定結果を表7に示す。
触媒の反応評価として、触媒57gを内径25mmのバイコールガラス製流動層反応管に充填し、接触時間4.7(sec・g/cc)でプロピレンのアンモ酸化反応を行った。反応評価結果を表8に示す。また、加速還元評価を100セット及び200セット実施した後の反応評価結果も、同様に表8に示す。
【0253】
[実施例B7]
シリカ1次粒子の平均直径が44nmのSiO2を26質量%含む40質量%のシリカゾル125.0gと、シリカ1次粒子の平均直径が12nmのSiO2を30質量%含む34質量%の水性シリカゾル147.1gと、水61.3gを混合して30質量%のシリカ原料を得た。
約90℃の温水210.8gにヘプタモリブデン酸アンモニウム70.3gを溶解させた(A液)。また、硝酸ビスマス27.3g、硝酸セリウム14.3g、硝酸鉄20.0g、硝酸ルビジウム1.94g、硝酸カリウム0.67g、硝酸亜鉛4.9g及び硝酸コバルト72.7gを18質量%の硝酸水溶液40.5gに溶解させ、約90℃の温水186.0gを添加した(B液)。
上記シリカ原料とA液とB液の両液を混合し、アンモニア水を添加し、pHを3.6に調整し、約55℃で約4時間程度撹拌混合して原料スラリーを得た。この原料スラリーを、噴霧乾燥器に送り、入り口温度250℃、出口温度約140℃で噴霧乾燥し、酸化物触媒前駆体を得た。得られた酸化物触媒前駆体を、空気中で100℃から200℃まで2hかけて昇温した後、250℃まで1時間かけて昇温し、3時間保持して仮焼成体を得た。得られた仮焼成体を空気中で、570℃で3時間本焼成し、触媒を得た。触媒の組成を表6に示し、粉末X線回折の測定結果を表7に示す。
触媒の反応評価として、触媒57gを内径25mmのバイコールガラス製流動層反応管に充填し、接触時間4.6(sec・g/cc)でプロピレンのアンモ酸化反応を行った。反応評価結果を表8に示す。また、加速還元評価を100セット及び200セット実施した後の反応評価結果も、同様に表8に示す。
【0254】
[比較例B1]
シリカ1次粒子の平均直径が44nmのSiO2を26質量%含む40質量%のシリカゾル125.0gと、シリカ1次粒子の平均直径が12nmのSiO2を30質量%含む34質量%の水性シリカゾル147.1gと、水61.3gを混合して30質量%のシリカ原料を得た。
約90℃の温水203.4gにヘプタモリブデン酸アンモニウム67.8gを溶解させた(A液)。また、硝酸ビスマス61.9、硝酸鉄46.3g、硝酸セシウム0.49g、及び硝酸コバルト26.2gを18質量%の硝酸水溶液40.4gに溶解させ、約90℃の温水195.7gを添加した(B液)。
上記シリカ原料とA液とB液の両液を混合し、アンモニア水を添加し、pHを4.1に調整し、約55℃で約4時間程度撹拌混合して原料スラリーを得た。この原料スラリーを、噴霧乾燥器に送り、入り口温度250℃、出口温度約140℃で噴霧乾燥し、酸化物触媒前駆体を得た。得られた酸化物触媒前駆体を、空気中で100℃から200℃まで2hかけて昇温した後、260℃まで1時間かけて昇温し、4時間保持して仮焼成体を得た。得られた仮焼成体を空気中で、570℃で3時間本焼成し、触媒を得た。触媒の組成を表6に示し、粉末X線回折の測定結果を表7に示す。
触媒の反応評価として、触媒55gを内径25mmのバイコールガラス製流動層反応管に充填し、接触時間5.6(sec・g/cc)でプロピレンのアンモ酸化反応を行った。反応評価結果を表8に示す。また、加速還元評価を100セット及び200セット実施した後の反応評価結果も、同様に表8に示す。
【0255】
[比較例B2]
シリカ1次粒子の平均直径が44nmのSiO2を26質量%含む40質量%のシリカゾル125.0gと、シリカ1次粒子の平均直径が12nmのSiO2を30質量%含む34質量%の水性シリカゾル147.1gと、水61.3gを混合して30質量%のシリカ原料を得た。
約90℃の温水252.6gにヘプタモリブデン酸アンモニウム84.2gを溶解させた(A液)。また、硝酸ビスマス5.8g、硝酸セリウム3.4g、硝酸鉄24.0g、硝酸ルビジウム0.70g、硝酸マグネシウム26.4g及び硝酸ニッケル75.6gを18質量%の硝酸水溶液41.8gに溶解させ、約90℃の温水150.8gを添加した(B液)。
上記シリカ原料とA液とB液の両液を混合し、アンモニア水を添加し、pHを3.6に調整し、約55℃で約4時間程度撹拌混合して原料スラリーを得た。この原料スラリーを、噴霧乾燥器に送り、入り口温度250℃、出口温度約140℃で噴霧乾燥し、酸化物触媒前駆体を得た。得られた酸化物触媒前駆体を、空気中で100℃から200℃まで2hかけて昇温した後、250℃まで1時間かけて昇温し、3時間保持して仮焼成体を得た。得られた仮焼成体を空気中で、570℃で3時間本焼成し、触媒を得た。触媒の組成を表6に示し、粉末X線回折の測定結果を表7に示す。
触媒の反応評価として、触媒57gを内径25mmのバイコールガラス製流動層反応管に充填し、接触時間5.4(sec・g/cc)でプロピレンのアンモ酸化反応を行った。反応評価結果を表8に示す。また、加速還元評価を100セット及び200セット実施した後の反応評価結果も、同様に表8に示す。
【0256】
[比較例B3]
シリカ1次粒子の平均直径が44nmのSiO2を26質量%含む40質量%のシリカゾル125.0gと、シリカ1次粒子の平均直径が12nmのSiO2を30質量%含む34質量%の水性シリカゾル147.1gと、水61.3gを混合して30質量%のシリカ原料を得た。
約90℃の温水249.9gにヘプタモリブデン酸アンモニウム83.3gを溶解させた(A液)。また、硝酸ビスマス8.6g、硝酸セリウム15.2g、硝酸鉄26.9g、硝酸ルビジウム0.23g、硝酸マグネシウム20.1g、硝酸コバルト34.5g、硝酸カリウム0.36g及び硝酸ニッケル23.0gを18質量%の硝酸水溶液40.9gに溶解させ、約90℃の温水148.1gを添加した(B液)。
上記シリカ原料とA液とB液の両液を混合し、アンモニア水を添加し、pHを3.6に調整し、約55℃で約4時間程度撹拌混合して原料スラリーを得た。この原料スラリーを、噴霧乾燥器に送り、入り口温度250℃、出口温度約140℃で噴霧乾燥し、酸化物触媒前駆体を得た。得られた酸化物触媒前駆体を、空気中で100℃から200℃まで2hかけて昇温した後、260℃まで1時間かけて昇温し、3時間保持して仮焼成体を得た。得られた仮焼成体を空気中で、570℃で3時間本焼成し、触媒を得た。触媒の組成を表6に示し、粉末X線回折の測定結果を表7に示す。
触媒の反応評価として、触媒57gを内径25mmのバイコールガラス製流動層反応管に充填し、接触時間5.3(sec・g/cc)でプロピレンのアンモ酸化反応を行った。反応評価結果を表8に示す。また、加速還元評価を100セット及び200セット実施した後の反応評価結果も、同様に表8に示す。
【0257】
[比較例B4]
シリカ1次粒子の平均直径が44nmのSiO2を26質量%含む40質量%のシリカゾル125.0gと、シリカ1次粒子の平均直径が12nmのSiO2を30質量%含む34質量%の水性シリカゾル147.1gと、水61.3gを混合して30質量%のシリカ原料を得た。
約90℃の温水216.3gにヘプタモリブデン酸アンモニウム72.1gとメタバナジン酸アンモニウム5.2gを溶解させた(A液)。また、硝酸ビスマス44.4、硝酸鉄43.8g、硝酸セシウム0.46g、及び硝酸コバルト31.8gを18質量%の硝酸水溶液38.3gに溶解させ、約90℃の温水161.9gを添加した(B液)。
上記シリカ原料とA液とB液の両液を混合し、アンモニア水を添加し、pHを4.1に調整し、約55℃で約4時間程度撹拌混合して原料スラリーを得た。この原料スラリーを、噴霧乾燥器に送り、入り口温度250℃、出口温度約140℃で噴霧乾燥し、酸化物触媒前駆体を得た。得られた酸化物触媒前駆体を、空気中で100℃から200℃まで2hかけて昇温した後、250℃まで1時間かけて昇温し、3時間保持して仮焼成体を得た。得られた仮焼成体を空気中で、580℃で3時間本焼成し、触媒を得た。触媒の組成を表6に示し、粉末X線回折の測定結果を表7に示す。
触媒の反応評価として、触媒55gを内径25mmのバイコールガラス製流動層反応管に充填し、接触時間5.9(sec・g/cc)でプロピレンのアンモ酸化反応を行った。反応評価結果を表8に示す。また、加速還元評価を100セット及び200セット実施した後の反応評価結果も、同様に表8に示す。
【0258】
[比較例B5]
実施例B1と同じ酸化物触媒前駆体を空気中で250℃まで1時間かけて昇温し、3時間保持して仮焼成体を得た。得られた仮焼成体を空気中で、570℃で3時間本焼成し、触媒を得た。触媒の組成を表6に示し、粉末X線回折の測定結果を表7に示す。
触媒の反応評価として、触媒55gを内径25mmのバイコールガラス製流動層反応管に充填し、接触時間5.8(sec・g/cc)でプロピレンのアンモ酸化反応を行った。反応評価結果を表8に示す。また、加速還元評価を100セット及び200セット実施した後の反応評価結果も、同様に表8に示す。
【0259】
[実施例B8]
実施例B1の触媒を用い、反応評価として、触媒57gを内径25mmのバイコールガラス製流動層反応管に充填し、接触時間5.4(sec・g/cc)でイソブチレンのアンモ酸化反応を行った。反応評価結果を表9に示す。また、加速還元評価を100セット及び200セット実施した後の反応評価結果も、同様に表9に示す。
【0260】
[比較例B6]
比較例B5と同じ触媒を用い、反応評価として、触媒55gを内径25mmのバイコールガラス製流動層反応管に充填し、接触時間6.0(sec・g/cc)でイソブチレンのアンモ酸化反応を行った。反応評価結果を表9に示す。また、加速還元評価を100セット及び200セット実施した後の反応評価結果も、同様に表9に示す。
【0261】
【表6】
【0262】
【表7】
【0263】
【表8】
【0264】
【表9】
【0265】
<実施例B1及び比較例B1で得られた触媒のX線回折ピーク>
実施例B1及び比較例B1で得られた触媒のX線回折ピークを図9に示す。また、図9におけるX線回折ピークの2θ=15〜30°の範囲の拡大図を図10に、2θ=30〜50°の範囲の拡大図を図11に示す。図9及び10から、実施例B1で得られた触媒のX線回折において、少なくとも2θ=18.28°(101)面、28.16°(112)面、33.60°(200)面、46.00°にピークを示し、2θ=33.60°のピーク強度Iaと2θ=34.06°のピーク強度Ibの強度比(Ia/Ib)=3.3であり、実施例B1で得られた触媒においては、disorder相Bi3-xxFe1Mo212の結晶構造が生成したと判断できる。
【0266】
一方、比較例B1で得られた触媒のX線回折においては、18.30°±0.05°(101)面、28.20°±0.05°(112)面、33.65°±0.05°(200)面、46.15°±0.05°(204)面、にピークを示さなかった。すなわち、比較例B1で得られた触媒においては、disorder相Bi3-xxFe1Mo212の結晶構造が生成しなかったと判断できる。
実施例B1と比較例B1で得られた触媒のX線回折を比較すると、実施例B1で得られた触媒の18.34°(101)面のピークについては、比較例B1で得られた触媒は18.10°(310)面と18.45°(111)面にピーク分裂が観測され、実施例B1で得られた触媒の28.20°±0.2°(112)面のピークについては、比較例B1で得られた触媒は28.00°(221)面と28.35°(42−1)面にピーク分裂が観測され、実施例B1で得られた触媒の33.65°±0.2°(200)面のピークについては、比較例B1で得られた触媒は33.30°(600)面と34.10°(202)面にピーク分裂が観測され、実施例B1で得られた触媒の46.15°±0.2°(204)面のピークについては、比較例B1で得られた触媒は45.90°(640)面と46.45°(242)面にピーク分裂が観測された。2θ=33.60°のピーク強度Iaと2θ=34.06°のピーク強度Ibの強度比(Ia/Ib)=1.0であり、実施例B1で得られた触媒においては、disorder相Bi3-xxFe1Mo212の結晶構造が生成したと判断できる。これに対して、比較例B1で得られた触媒においては、disorder相Bi3-xxFe1Mo212ではなく、order相が生成していると判断できる。
【0267】
以下、実施例Cによって第3の実施形態をさらに詳細に説明するが、第3の実施形態はこれらの実施例Cに限定されるものではない。なお、酸化物触媒における酸素原子の原子比は、他の元素の原子価条件により決定されるものであり、実施例C及び比較例Cにおいては、触媒の組成を表す式中、酸素原子の原子比は省略する。また、酸化物触媒における各元素の組成比は、仕込みの組成比から算出した。
【0268】
実施例C及び比較例Cにおいて、反応成績を表すために用いた転化率、選択率、収率は次式で定義される。なお、式中の「原料のモル数」とは、オレフィン及び/又はアルコールのモル数である。
転化率(%)=(反応したオレフィン及び/又はアルコールのモル数/供給したオレフィン及び/又はアルコールのモル数)×100
選択率(%)=(生成した不飽和アルデヒドのモル数/反応したオレフィン及び/又はアルコールのモル数)×100
収率(%)=(生成した不飽和アルデヒドのモル数/供給したオレフィン及び/又はアルコールのモル数)×100
【0269】
[実施例C1]
シリカ1次粒子の平均粒径が44nmのSiOを26質量%含む、濃度40質量%のシリカゾル125.0gと、シリカ1次粒子の平均粒径が12nmのSiOを30質量%含む、濃度34質量%の水性シリカゾル147.1gと、水61.3gを混合して30質量%のシリカ原料を得た。
【0270】
約90℃の温水211.9gにヘプタモリブデン酸アンモニウム70.6gを溶解させた(A液)。また、硝酸ビスマス32.3g、硝酸セリウム28.7g、硝酸鉄45.6g、硝酸セシウム1.03g、及び硝酸コバルト29.2gを18質量%の硝酸水溶液40.9gに溶解させ、約90℃の温水190.3gを添加した(B液)。
【0271】
上記シリカ原料とA液とB液の両液を混合し、約55℃で約4時間程度撹拌混合して原料スラリーを得た。この原料スラリーを、噴霧乾燥器に送り、入り口温度250℃、出口温度約140℃で噴霧乾燥し、酸化物触媒前駆体を得た。得られた酸化物触媒前駆体を、空気中で100℃から200℃まで1h以上かけて昇温し、250℃まで合計で2hかけて昇温した後、250℃で3時間保持して仮焼成体を得た。得られた仮焼成体を空気中で、600℃で3時間本焼成し、酸化物触媒を得た。得られた酸化物触媒の組成を表10に示す。
【0272】
上記のようにして得られた酸化物触媒を用いて不飽和アルデヒドを製造した。具体的には、酸化物触媒40gを内径25mmのバイコールガラス製流動層反応管に充填し、この反応管にモル比組成が、イソブチレン/空気/ヘリウム=1/8.1/バランスの原料混合ガス(イソブチレン濃度=8体積%)を流量595cm/min(NTP換算)で供給し、反応温度440℃、反応圧力0.05MPaの条件でメタクロレイン合成反応を行った。このときの反応器出口酸素濃度、酸化物触媒と混合ガスの接触時間、反応評価結果を表11に示す。
【0273】
[実施例C2]
実施例C1と同じ酸化物触媒40gを用い、原料混合ガスのモル比組成をイソブチレン/空気/ヘリウム=1/8.8/バランスの原料混合ガス(イソブチレン濃度=8体積%)を流量725cm/min(NTP換算)で供給し、反応温度430℃、反応圧力0.05MPaの条件でメタクロレイン合成反応を行った。このときの出口酸素濃度、触媒と混合ガスの接触時間、反応評価結果を表11に示す。
【0274】
[実施例C3]
実施例C1と同じ酸化物触媒30gを用い、原料混合ガスのモル比組成をイソブチレン/空気/ヘリウム=1/9.4/バランスの原料混合ガス(イソブチレン濃度=8体積%)を流量794cm/min(NTP換算)で供給し、反応温度440℃、反応圧力0.05MPaの条件でメタクロレイン合成反応を行った。このときの出口酸素濃度、触媒と混合ガスの接触時間、反応評価結果を表11に示す。
【0275】
[実施例C4]
実施例C1と同じ酸化物触媒40gを用い、原料混合ガスのモル比組成をイソブチレン/空気/ヘリウム=1/7.9/バランスの原料混合ガス(イソブチレン濃度=8体積%)を流量595cm/min(NTP換算)で供給し、反応温度440℃、反応圧力0.05MPaの条件でメタクロレイン合成反応を行った。このときの出口酸素濃度、触媒と混合ガスの接触時間、反応評価結果を表11に示す。
【0276】
[実施例C5]
実施例C1と同じ酸化物触媒40gを用い、原料混合ガスのモル比組成をイソブチレン/空気/ヘリウム=1/9.5/バランスの原料混合ガス(イソブチレン濃度=8体積%)を流量625cm/min(NTP換算)で供給し、反応温度440℃、反応圧力0.05MPaの条件でメタクロレイン合成反応を行った。このときの出口酸素濃度、触媒と混合ガスの接触時間、反応評価結果を表11に示す。
【0277】
[実施例C6]
実施例C1と同じ酸化物触媒35gを用い、原料混合ガスのモル比組成をイソブチレン/空気/ヘリウム=1/8.8/バランスの原料混合ガス(イソブチレン濃度=8体積%)を流量595cm/min(NTP換算)で供給し、反応温度460℃、反応圧力0.05MPaの条件でメタクロレイン合成反応を行った。このときの出口酸素濃度、触媒と混合ガスの接触時間、反応評価結果を表11に示す。
【0278】
[実施例C7]
実施例C1と同じ酸化物触媒40gを用い、原料混合ガスのモル比組成をイソブチレン/空気/ヘリウム=1/8.1/バランスの原料混合ガス(イソブチレン濃度=8体積%)を流量595cm2/min(NTP換算)で供給し、反応温度400℃、反応圧力0.05MPaの条件でメタクロレイン合成反応を行った。このときの出口酸素濃度、触媒と混合ガスの接触時間、反応評価結果を表11に示す。
【0279】
[実施例C8]
シリカ1次粒子の平均粒径が44nmのSiOを26質量%含む、濃度40質量%のシリカゾル125.0gと、シリカ1次粒子の平均粒径が12nmのSiOを30質量%含む、濃度34質量%の水性シリカゾル147.1gと、水61.3gを混合して30質量%のシリカ原料を得た。
【0280】
約90℃の温水211.8gにヘプタモリブデン酸アンモニウム70.6gを溶解させた(A液)。また、硝酸ビスマス25.8g、硝酸セリウム18.6g、硝酸ランタン18.7g、硝酸鉄42.9g、硝酸セシウム1.03g、及び硝酸コバルト31.1gを18質量%の硝酸水溶液37.5gに溶解させ、約90℃の温水157.5gを添加した(B液)。
【0281】
上記シリカ原料とA液とB液の両液を混合し、約55℃で約4時間程度撹拌混合して原料スラリーを得た。この原料スラリーを、噴霧乾燥器に送り、入り口温度250℃、出口温度約140℃で噴霧乾燥し、酸化物触媒前駆体を得た。得られた酸化物触媒前駆体を、空気中で100℃から200℃まで1h以上かけて昇温し、250℃まで合計で2hかけて昇温した後、250℃で3時間保持して仮焼成体を得た。得られた仮焼成体を空気中で、590℃で3時間本焼成し、酸化物触媒を得た。酸化物触媒の組成を表10に示す。
【0282】
上記のようにして得られた酸化物触媒を用いて不飽和アルデヒドを製造した。具体的には、酸化物触媒40gを内径25mmのバイコールガラス製流動層反応管に充填し、この反応管にモル比組成が、イソブチレン/空気/ヘリウム=1/8.1/バランスの原料混合ガス(イソブチレン濃度=8体積%)を流量595cm/min(NTP換算)で供給し、反応温度440℃、反応圧力0.05MPaの条件でメタクロレイン合成反応を行った。このときの出口酸素濃度、触媒と混合ガスの接触時間、反応評価結果を表11に示す。
【0283】
[実施例C9]
シリカ1次粒子の平均粒径が44nmのSiOを26質量%含む、濃度40質量%のシリカゾル125.0gと、シリカ1次粒子の平均粒径が12nmのSiOを30質量%含む、濃度34質量%の水性シリカゾル147.1gと、水61.3gを混合して30質量%のシリカ原料を得た。
【0284】
約90℃の温水214.5gにヘプタモリブデン酸アンモニウム71.5gを溶解させた(A液)。また、硝酸ビスマス18.0g、硝酸セリウム39.2g、硝酸ニッケル4.9g、硝酸マグネシウム3.4g、硝酸鉄43.4g、硝酸ルビジウム1.48g、及び硝酸コバルト31.6gを18質量%の硝酸水溶液41.6gに溶解させ、約90℃の温水192.3gを添加した(B液)。
【0285】
上記シリカ原料とA液とB液の両液を混合し、約55℃で約4時間程度撹拌混合して原料スラリーを得た。この原料スラリーを、噴霧乾燥器に送り、入り口温度250℃、出口温度約140℃で噴霧乾燥し、酸化物触媒前駆体を得た。得られた酸化物触媒前駆体を、空気中で100℃から200℃まで1h以上かけて昇温し、250℃まで合計で2hかけて昇温した後、250℃で3時間保持して仮焼成体を得た。得られた仮焼成体を空気中で、580℃で3時間本焼成し、酸化物触媒を得た。酸化物触媒の組成を表10に示す。
【0286】
上記のようにして得られた酸化物触媒を用いて不飽和アルデヒドを製造した。具体的には、酸化物触媒40gを内径25mmのバイコールガラス製流動層反応管に充填し、この反応管にモル比組成が、イソブチレン/空気/ヘリウム=1/8.1/バランスの原料混合ガス(イソブチレン濃度=8体積%)を流量595cm/min(NTP換算)で供給し、反応温度440℃、反応圧力0.05MPaの条件でメタクロレイン合成反応を行った。このときの出口酸素濃度、触媒と混合ガスの接触時間、反応評価結果を表11に示す。
【0287】
[実施例C10]
実施例C1と同じ酸化物触媒40gを用い、原料混合ガスのモル比組成をイソブチレン/空気/ヘリウム=1/10.2/バランスの原料混合ガス(イソブチレン濃度=8体積%)を流量595cm/min(NTP換算)で供給し、反応温度440℃、反応圧力0.05MPaの条件でメタクロレイン合成反応を行った。このときの出口酸素濃度、触媒と混合ガスの接触時間、反応評価結果を表11に示す。
【0288】
[比較例C1]
シリカ1次粒子の平均粒径が44nmのSiOを26質量%含む、濃度40質量%のシリカゾル125.0gと、シリカ1次粒子の平均粒径が12nmのSiOを30質量%含む、濃度34質量%の水性シリカゾル147.1gと、水61.3gを混合して30質量%のシリカ原料を得た。
【0289】
約90℃の温水221.4gにヘプタモリブデン酸アンモニウム73.8gを溶解させた(A液)。また、硝酸ビスマス27.0g、硝酸セリウム6.0g、硝酸鉄14.0g、硝酸セシウム2.68g、硝酸カリウム0.70g及び硝酸コバルト81.4gを18質量%の硝酸水溶液40.4gに溶解させ、約90℃の温水175.3gを添加した(B液)。
【0290】
上記シリカ原料とA液とB液の両液を混合し、約55℃で約4時間程度撹拌混合して原料スラリーを得た。この原料スラリーを、噴霧乾燥器に送り、入り口温度250℃、出口温度約140℃で噴霧乾燥し、酸化物触媒前駆体を得た。得られた酸化物触媒前駆体を、空気中で250℃まで2hかけて昇温した後、250℃で3時間保持して仮焼成体を得た。得られた仮焼成体を空気中で、570℃で2時間本焼成し、酸化物触媒を得た。酸化物触媒の組成を表10に示す。
【0291】
上記のようにして得られた酸化物触媒を用いて不飽和アルデヒドを製造した。具体的には、酸化物触媒40gを内径25mmのバイコールガラス製流動層反応管に充填し、この反応管にモル比組成が、イソブチレン/空気/ヘリウム=1/8.1/バランスの原料混合ガス(イソブチレン濃度=8体積%)を流量595cm/min(NTP換算)で供給し、反応温度440℃、反応圧力0.05MPaの条件でメタクロレイン合成反応を行った。このときの出口酸素濃度、触媒と混合ガスの接触時間、反応評価結果を表11に示す。
【0292】
[比較例C2]
シリカ1次粒子の平均粒径が44nmのSiOを26質量%含む、濃度40質量%のシリカゾル125.0gと、シリカ1次粒子の平均粒径が12nmのSiOを30質量%含む、濃度34質量%の水性シリカゾル147.1gと、水61.3gを混合して30質量%のシリカ原料を得た。
【0293】
約90℃の温水202.8gにヘプタモリブデン酸アンモニウム67.6gを溶解させた(A液)。また、硝酸ビスマス61.7g、硝酸鉄43.6g、硝酸セシウム0.98g、及び硝酸コバルト28.0gを18質量%の硝酸水溶液40.3gに溶解させ、約90℃の温水195.7gを添加した(B液)。
【0294】
上記シリカ原料とA液とB液の両液を混合し、約55℃で約4時間程度撹拌混合して原料スラリーを得た。この原料スラリーを、噴霧乾燥器に送り、入り口温度250℃、出口温度約140℃で噴霧乾燥し、酸化物触媒前駆体を得た。得られた酸化物触媒前駆体を、空気中で250℃まで2hかけて昇温した後、250℃で3時間保持して仮焼成体を得た。得られた仮焼成体を空気中で、600℃で3時間本焼成し、酸化物触媒を得た。得られた酸化物触媒の組成を表10に示す。
【0295】
上記のようにして得られた酸化物触媒を用いて不飽和アルデヒドを製造した。具体的には、酸化物触媒40gを内径25mmのバイコールガラス製流動層反応管に充填し、この反応管にモル比組成が、イソブチレン/空気/ヘリウム=1/8.1/バランスの原料混合ガス(イソブチレン濃度=8体積%)を流量595cm/min(NTP換算)で供給し、反応温度440℃、反応圧力0.05MPaの条件でメタクロレイン合成反応を行った。このときの反応器出口酸素濃度、酸化物触媒と混合ガスの接触時間、反応評価結果を表11に示す。
【0296】
【表10】
【0297】
【表11】
【0298】
<粉末X線回折(XRD)の測定>
酸化物触媒について、X線回折(XRD)でX線回折角2θ=5°〜60°の範囲を測定すると、CoとMoからなる複合酸化物の(002)面のX線回折角(2θ)に起因するピークが26.46°±0.02°に示される。このCoとMoの複合酸化物に2価の鉄Feが固溶して複合すると、Co2+とFe2+とのイオン半径の違いによってこのピークのシフトが起こる。2価のFeが固溶して複合化した構造となるために、CoとMoと2価のFeを含む複合酸化物に起因するピークは、26.46°ではなくシフト値をα°として、26.46°−α°(0<α)に現示される。26.30〜26.40の範囲にピークがあれば、Co2+−Fe2+−Mo−Oの3成分の結晶が生成したと判断する。
【0299】
以上に基づいてXRDの測定を行なった。XRDの測定は、National Institute of Standards & Technologyが標準参照物質660として定めるところのLaB化合物の(111)面、(200)面を測定し、それぞれの測定値を順に37.441°、43.506°となるように規準化した。
【0300】
XRDの測定装置としては、ブルカー・D8 ADVANCEを用いた。XRDの測定条件は、X線出力:40kV−40mA、発散スリット(DS):0.3°、Step幅:0.01°/step、計数Time:2.0sec、測定範囲:2θ=5°〜45°とした。
【0301】
図12に実施例C1のオレフィンの気相接触酸化反応前と反応後の酸化物触媒のXRD(2θ=10〜60°)を示し、図13図12の2θ=25〜27°における拡大図を示す。実施例C1のオレフィンの気相接触酸化反応前の酸化物触媒のXRDではCoMoO(002)由来のピークは2θ=26.46°、反応後の酸化物触媒のCoMoO(002)由来のピークは2θ=26.34°であり、CoMoOに2価のFeは固溶していることが分かった。
【0302】
図14に比較例C1のオレフィンの気相接触酸化反応前と反応後の酸化物触媒のXRD(2θ=10〜60°)を示し、図15図14の2θ=25〜27°における拡大図を示す。比較例C1のオレフィンの気相接触酸化反応前の酸化物触媒のXRDではCoMoO(002)由来のピークは2θ=26.46°、反応後の酸化物触媒のCoMoO(002)由来のピークは2θ=26.46°であり、CoMoOに2価のFeは固溶していないことが分かった。これは、コバルトに対する鉄の原子比b/cがb/c≧1を満たさないためと考えられた。
【0303】
<実施例C1及び比較例C2で得られた触媒のX線回折ピーク>
実施例C1及び比較例C2で得られた触媒のX線回折ピークを図16に示す。図16から、実施例C1で得られた触媒のX線回折において、少なくとも2θ=18.32°(101)面、28.18°(112)面、33.66°(200)面、46.12°にピークを示し、2θ=33.66°のピーク強度Iaと2θ=34.06°のピーク強度Ibの強度比(Ia/Ib)=3.2であり、実施例C1で得られた触媒においては、disorder相Bi3−xFeMo12の結晶構造が生成したと判断できる。
【0304】
比較例C2で得られた触媒のX線回折においては、18.30°±0.05°(101)面、28.20 °±0.05°(112)面、33.65°±0.05°(200)面、46.15°±0.05°(204)面、にピークを示さなかった。すなわち、比較例C2で得られた触媒においては、disorder相Bi3−xFeMo12の結晶構造が生成しなかったと判断できる。
【0305】
実施例C1と比較例C2で得られた触媒のX線回折を比較すると、実施例C1で得られた触媒の18.30°±0.05°(101)面のピークについては、比較例C2で得られた触媒は18.06°(310)面と18.44°(111)面にピーク分裂が観測され、実施例C1で得られた触媒の28.20°±0.05°(112)面のピークについては、比較例C2で得られた触媒は28.00°(221)面と28.32°(42−1)面にピーク分裂が観測され、実施例C1で得られた触媒の33.65°±0.05°(200)面のピークについては、比較例C2で得られた触媒は33.52°(600)面と33.98°(202)面にピーク分裂が観測され、実施例C1で得られた触媒の46.15°±0.05°(204)面のピークについては、比較例C2で得られた触媒は45.82°(640)面と46.40°(242)面にピーク分裂が観測された。2θ=33.52°のピーク強度Iaと2θ=33.98°のピーク強度Ibの強度比(Ia/Ib)=0.94であり、比較例C2で得られた触媒においては、disorder相Bi3−xFeMo12ではなく、order相が生成していると判断できる。
【0306】
本出願は、2012年9月28日に日本国特許庁へ出願された日本特許出願(特願2012−216071)、2012年11月19日に日本国特許庁へ出願された日本特許出願(特願2012−253243)、及び2013年2月22日に日本国特許庁へ出願された日本特許出願(特願2013−033663)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0307】
本発明は、オレフィン及び/又はアルコールから不飽和アルデヒド又はジオレフィンを製造する際に用いられる酸化物触媒としての産業上利用可能性を有する。
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