(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも、ポリプロピレン系重合体を主成分とする基材層と下記接着層(A)の二層以上の構成を有する二軸延伸ポリプロピレン系フィルムの、接着層(A)上に、アンカーコート剤を介さず直接、下記樹脂層(B)を積層した積層体からなる薬剤分包用の薬包紙。
接着層(A):融点が130℃以下であるプロピレン・α−オレフィン−ランダム共重合体(A1)を主成分とする樹脂組成物、又は、メタロセン触媒により得られたエチレン・α−オレフィン共重合体(A2−1)を25重量%以上とプロピレン系ランダム共重合体(A2−2)を75重量%以下含有する樹脂組成物からなる
樹脂層(B):エチレンと炭素数が3〜12のα−オレフィンを共重合して得られたMFR(190℃、荷重2.16kg)が1〜100g/10分、密度が0.870〜0.915g/cm3のエチレン・α−オレフィン共重合体を主成分とする樹脂組成物からなる
接着層(A)が、融点が130℃以下であるプロピレン・α−オレフィン−ランダム共重合体(A1)を主成分とする樹脂組成物であることを特徴とする請求項1に記載の薬剤分包用の薬包紙。
接着層(A)が、メタロセン触媒により得られたエチレン・α−オレフィン共重合体(A2−1)を25重量%以上とプロピレン系ランダム共重合体(A2−2)を75重量%以下含有する樹脂組成物からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の薬剤分包用の薬包紙。
樹脂層(B)のエチレン・α―オレフィン共重合体のMFR(190℃、荷重2.16kg)が3〜30g/10分であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の薬剤分包用の薬包紙。
請求項1ないし5のいずれかに記載の薬剤分包用の薬包紙の、樹脂層(B)層同士を対面させて、少なくとも端部を熱溶着してなる熱溶着部と、薬剤の収納部を有することを特徴とする、薬剤分包袋。
請求項1ないし6のいずれかに記載の薬剤分包用の薬包紙を用いて、樹脂層(B)層同士を対面させて、少なくとも端部を、120℃以下のヒートシール温度で熱溶着部を形成してなることを特徴とする、薬剤の分包方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[発明の概要]
本発明の薬包紙は、二軸延伸ポリプロピレン系フィルムの下記接着層(A)に、アンカーコート剤を使用することなく、下記樹脂層(B)を積層した積層体からなる薬剤分包用の薬包紙であることを特徴とする。
接着層(A):融点が130℃以下であるプロピレン・α−オレフィン−ランダム共重合体(A1)を主成分とする樹脂組成物、又は、メタロセン触媒により得られたエチレン−α−オレフィン共重合体(A2−1)を少なくとも25重量%以上とプロピレン系ランダム共重合体(A2−2)を75重量%以下含有する樹脂組成物からなる
樹脂層(B):エチレンと炭素数が3〜12のα−オレフィンを共重合して得られたMFR(190℃、荷重2.16kg)が1〜100g/10分、密度が0.870〜0.915/cm
3のメタロセン触媒からなるエチレン・α−オレフィン共重合体からなる
【0012】
以下、本発明の内容について、詳細に説明する。
なお、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定して解釈されるものではない。
また、本願明細書において「〜」とは、特に断りがない限り、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0013】
[二軸延伸ポリプロピレン系フィルム]
本発明の薬剤分包用の薬包紙を構成する積層体は、二軸延伸ポリプロピレン系フィルムを基材とし、二軸延伸ポリプロピレン系フィルムとして、少なくとも、ポリプロピレン系重合体を主成分とする基材層と後記する接着層(A)の二層以上の構成を有することを特徴とする。
【0014】
本発明の基材層に用いられるポリプロピレン系重合体としては、二軸延伸フィルム用のポリプロピレン系重合体として公知の重合体を、単独で又は適宜組み合わせて用いることができ、特に限定されるものではないが、プロピレンを主成分とする重合体で、通常、密度が0.890〜0.920g/cm
3、MFR(温度230℃、荷重2.16kg)が、0.5〜60g/10分、好ましくは0.5〜10g/10分、更に好ましくは1〜7g/10分のプロピレンの単独重合体又は他のα−オレフィンとの共重合体が好ましく使用できる。
プロピレン共重合体としては、プロピレンと他の少量、好ましくは2重量%以下、より好ましくは1重量%以下のα−オレフィン、例えばエチレン、ブテン、ヘキセン−1等との共重合体が好ましく使用できる。また、プロピレン単独重合体とプロピレン・α−オレフィン共重合体との組成物を使用することも好ましい。
これらの中でも、プロピレンの単独重合体、若しくは1重量%以下のプロピレン・α−オレフィン共重合体が、得られる積層体の透明性と剛性の点で優れるので好ましい。
【0015】
基材層には、本発明の効果を阻害しない限り、他の樹脂、エラストマー、酸化防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、中和剤等の各種添加剤を含有せしめても良い。そのような各種添加剤の例として、エチレン重合体、ブテン重合体、石油樹脂、テルペン樹脂、スチレン樹脂等の炭化水素重合体(それらの水添加物も含む)等の他の熱可塑性重合体を挙げることができる。更に、帯電防止剤を添加することが好ましく、グリセリンの脂肪酸エステル、アルキルアミン、アルキルアミンのエチレンオキサイド付加物、及びその脂肪酸エステル等を挙げることができる。
【0016】
本発明の積層体では、少なくとも上記基材層、若しくは、基材層と後述する接着層を積層した後に、二軸に延伸してフィルムとすることができる。二軸延伸の方法としては公知の方法を採用しうるが、例えば縦延伸として90〜140℃、好ましくは105〜135℃の温度で3〜8倍、好ましくは4〜6倍に延伸し、引き続いて横方向にテンターオーブン中で3〜12倍、好ましくは6〜11倍に延伸する方法が挙げられる。基材層を二軸延伸した二軸延伸ポリプロピレン系フィルムを用いることで、薬包紙に必要な強度と柔軟性を担保することができる。
二軸延伸後の基材層の厚さは、10〜60μmであるのが好ましい。厚さが10μmを下回ると剛性不足により分包適正が劣ることとなりやすく、厚さが60μmを超えると熱伝導性が悪くなりシール適正が不足することになりやすい。
【0017】
[接着層(A)]
本発明の薬剤分包用の薬包紙を構成する積層体においては、上記基材層に接着層(A)を設けることを特徴とする。
そして、接着層(A)としては、融点が130℃以下であるプロピレン・α−オレフィン−ランダム共重合体(A1)を主成分とする樹脂組成物を用いる(第1の態様)か、又は、メタロセン触媒により得られたエチレン・α−オレフィン共重合体(A2−1)を25重量%以上とプロピレン系ランダム共重合体(A2−2)を75重量%以下含有する樹脂組成物を用いる(第2の態様)ことを特徴とする。
このように特定の樹脂成分を有する接着層(A)を用いることにより、基材と樹脂層(B)との間にアンカーコート剤を使用しなくても接着性の良好な薬剤分包用の薬包紙を提供することができる。
【0018】
[プロピレン・α−オレフィン−ランダム共重合体(A1)]
本発明の接着層(A)に用いる樹脂組成物の第1の態様に使用されるプロピレン・α−オレフィン−ランダム共重合体(A1)は、融点が130℃以下であるプロピレン・α−オレフィン−ランダム共重合体である。プロピレン・α−オレフィン−ランダム共重合体(A1)は、プロピレン由来の構成単位を主成分としたプロピレンとプロピレン以外のα−オレフィンのランダム共重合体が使用される。
【0019】
コモノマーとして用いられるα−オレフィンは、好ましくはエチレンまたは炭素数4〜18のα−オレフィンである。具体的には、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ヘプテン、4−メチル−ペンテン−1、4−メチル−ヘキセン−1、4,4−ジメチルペンテン−1等を挙げることができ、好ましくはエチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンであり、より好ましくエチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、特にはエチレンである。
【0020】
プロピレン・α−オレフィン共重合体(A1)中のα−オレフィン由来単位の量は、0.5〜12重量%であることが好ましく、より好ましくは1〜10重量%である。α−オレフィン単位が多い場合、フィルムの剛性が低下しやすく、少なすぎる場合は、樹脂層(B)との接着強度が得られにくくなる。
【0021】
本発明で用いるプロピレン・α−オレフィン−ランダム共重合体(A1)は、融点が130℃以下であるものを使用する。ここで融点は、示差走査熱量計(DSC)による融解ピーク温度(Tm)で定義される。
融点が130℃を超えると、得られる積層体の接着強度が低下し、また得られる薬包紙のカット性が悪くなる。融点は、好ましくは127℃以下、より好ましくは125℃以下である。融点の下限は、特に制限はないが、通常115℃が好ましく、より好ましくは117℃以上、特には120℃以上が好ましい。
【0022】
また、プロピレン・α−オレフィン−ランダム共重合体(A1)のメルトフローレート(MFR、230℃、2.16kg荷重で測定)は、1.0〜30g/10分であることが好ましく、より好ましくは3.0〜30g/10分である。
【0023】
本発明で用いるプロピレン・α−オレフィン−ランダム共重合体(A1)は、130℃以下の融点の共重合体を得るためにメタロセン触媒を使用して製造することが好ましい。
このような130℃以下の融点を有するプロピレン・α―オレフィン−ランダム共重合体(A1)は、プロピレン系重合体の中でも極めて低融点を有する特殊なものであるが、かかる重合体を製造する方法は既に公知であり、たとえば、日本ポリプロ(株)製の「ウィンテック」(登録商標)シリーズとして市販されており、市販の樹脂グレードのうち、本発明の融点を有するものを選択して使用することができる。
【0024】
プロピレン・α−オレフィン−ランダム共重合体(A1)は、本発明の接着層(A)の主成分として、例えば接着層(A)の樹脂成分のうち55重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは95重量%以上用いることができ、本発明の効果を阻害しない限り、他の樹脂、エラストマー、酸化防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、中和剤等の各種添加剤を含有せしめても良い。
【0025】
[エチレン・α−オレフィン共重合体(A2−1)]
本発明の接着層(A)に用いる樹脂組成物の第2の態様は、特定のエチレン・α―オレフィン共重合体(A2−1)を25重量%以上と、プロピレン系ランダム共重合体(A2−2)を75重量%以下含有した混合樹脂を使用する樹脂組成物である。
本発明の接着層(A)に使用されるエチレン・α−オレフィン共重合体を含有する樹脂組成物は、メタロセン触媒により得られたエチレン・α−オレフィン共重合体(A2−1)を25重量%以上含有する樹脂組成物である。チーグラーナッタ触媒によるものでは、結晶性分布が広くなるために非晶性の成分の量が格段に増えるために、積層体の剛性が必要以上に低下したりする場合があり、これが、本発明において、エチレン・α−オレフィン共重合体(A2−1)を製造する触媒としてメタロセン触媒を使用する理由である。
【0026】
使用するエチレン・α−オレフィン共重合体は、メタロセン触媒によって得られる、エチレンと、好ましくは炭素数3〜20、より好ましくは3〜12のα−オレフィンとの共重合体である。炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−オクタデセンなどが挙げられ、好ましくは炭素数4〜8のα−オレフィン、特には1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンであり、なかでも1−ブテン、1−ヘキセンが好ましい。
【0027】
本発明で用いるエチレン・α−オレフィン共重合体(A2−1)は、メタロセン触媒によって得られる。メタロセン系触媒は、周知であり、代表的には、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物と、助触媒、必要により有機金属化合物と、担体の各触媒成分を含む触媒である。
【0028】
ここで、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物において、そのシクロペンタジエニル骨格とは、シクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基等である。置換シクロペンタジエニル基としては、炭素数1〜30の炭化水素基、シリル基、シリル置換アルキル基、シリル置換アリール基、シアノ基、シアノアルキル基、シアノアリール基、ハロゲン基、ハロアルキル基、ハロシリル基等から選ばれた少なくとも一種の置換基を有するものである。その置換シクロペンタジエニル基の置換基は2個以上有していてもよく、また係る置換基同士が互いに結合して環を形成し、インデニル環、フルオレニル環、アズレニル環、その水添体等を形成してもよい。置換基同士が互いに結合し形成された環がさらに互いに置換基を有していてもよい。
【0029】
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物において、その遷移金属としては、ジルコニウム、チタン、ハフニウム等が挙げられ、特にジルコニウム、ハフニウムが好ましい。該遷移金属化合物は、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子としては通常2個を有し、各々のシクロペンタジエニル骨格を有する配位子は架橋基により互いに結合しているものが好ましい。尚、係る架橋基としては炭素数1〜4のアルキレン基、シリレン基、ジアルキルシリレン基、ジアリールシリレン基等の置換シリレン基、ジアルキルゲルミレン基、ジアリールゲルミレン基等の置換ゲルミレン基などが挙げられる。好ましくは、置換シリレン基である。
【0030】
周期律表第IV族の遷移金属化合物において、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子以外の配位子としては、代表的なものとして、水素、炭素数1〜20の炭化水素基(アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルアリール基、アラルキル基、ポリエニル基等)、ハロゲン、メタアルキル基、メタアリール基などが挙げられる。
上記シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物は、一種又は二種以上の混合物を触媒成分とすることができる。
【0031】
助触媒としては、前記周期律表第IV族の遷移金属化合物を重合触媒として有効になしうる、又は触媒的に活性化された状態のイオン性電荷を均衝させうるものをいう。助触媒としては、有機アルミニウムオキシ化合物のベンゼン可溶のアルミノキサンやベンゼン不溶の有機アルミニウムオキシ化合物、イオン交換性層状珪酸塩、ホウ素化合物、活性水素基含有あるいは非含有のカチオンと非配位性アニオンからなるイオン性化合物、酸化ランタンなどのランタノイド塩、酸化スズ、フルオロ基を含有するフェノキシ化合物等が挙げられる。
【0032】
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物は、無機又は有機化合物の担体に担持して使用されてもよい。該担体としては無機又は有機化合物の多孔質酸化物が好ましく、具体的には、モンモリロナイト等のイオン交換性層状珪酸塩、SiO
2、Al
2O
3、MgO、ZrO
2、TiO
2、B
2O
3、CaO、ZnO、BaO、ThO
2等又はこれらの混合物が挙げられる。
【0033】
また、更に必要により使用される有機金属化合物としては、有機アルミニウム化合物、有機マグネシウム化合物、有機亜鉛化合物等が例示される。このうち有機アルミニウムが好適に使用される。
【0034】
本発明に用いるエチレン・α−オレフィン共重合体(A2−1)の密度は、好ましくは0.870〜0.920g/cm
3であり、より好ましくは0.880〜0.910g/cm
3である。上記範囲であれば、基材層と強固なラミネート接着となり良好なカット性が維持できるので好ましい。
ここで、密度は、JIS K7112−1999の「プラスチック−非発泡プラスチックの密度及び比重の測定方法」のD法(密度勾配管法)に準拠して測定する値である。
【0035】
また、本発明に用いるエチレン・α−オレフィン共重合体(A2−1)のMFR(190℃、荷重2.16kg)は、特に制限はないが、好ましくは1〜50g/10分であり、より好ましくは2〜30g/10分である。上記範囲であれば樹脂層(B)との接着が向上しカット性が良くなる。
【0036】
また、本発明に用いるエチレン・α−オレフィン共重合体(A2−1)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、好ましくは1.5〜3.5、より好ましくは1.8〜3.3、さらに好ましくは2.1〜3.0である。上記範囲であれば二軸延伸がしやすい。
ここで、エチレン・α−オレフィン共重合体のMw/Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で定義されるものである。
【0037】
なお、エチレン・α−オレフィン共重合体(A2−1)は、単独で用いても、二種以上混合して使用してもよい。
また、エチレン・α−オレフィン共重合体(A2−1)としては、市販品を利用することができ、例えば、日本ポリエチレン(株)社製「カーネル」(登録商標)シリーズから選択することができる。
【0038】
接着層(A)にエチレン・α−オレフィン共重合体(A2−1)を用いる場合は、エチレン・α−オレフィン共重合体(A2−1)を25重量%以上含有することが必要であり、好ましくは35重量%以上、より好ましくは45重量%以上である。エチレン・α―オレフィン共重合体(A2−1)の含有量が少なすぎると、樹脂層(B)との接着強度が低下し、薬包紙を形成する際の熱ヒートシール性及び、カット性が低下するため好ましくない。
【0039】
本願発明でエチレン・α−オレフィン共重合体(A2−1)と混合する他の重合体としては、プロピレン系ランダム共重合体(A2−2)を用いる。プロピレン系ランダム共重合体(A2−2)の含有量は、75重量%以下、好ましくは65重量%以下、より好ましくは55重量%以下である。プロピレン系ランダム共重合体(A2−2)の含有量が少ないと樹脂層(B)との接着が低下し薬包紙を形成する際の熱ヒートシール性及び、カット性が低下するため好ましくない。
【0040】
プロピレン系ランダム共重合体(A2−2)としては、プロピレンとエチレン、その他のα−オレフィンのランダム共重合体が挙げられ、例えば、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−ブテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ブテンランダム共重合体、またはこれらの混合物が挙げられる。ここで、エチレン・α−オレフィン共重合体(A2−1)と混合して用いるプロピレン系ランダム共重合体(A2−2)としては、前記(A1)で規定した低融点のものに限られず、110℃〜150℃の範囲のものから広く用いることができる。
例えばエチレン含有量が1〜6重量%で、密度は0.89〜0.91g/cm
3のものが好ましく、また、MFR(温度230℃、荷重2.16kg)は1〜30g/10分であることが好ましく、より好ましくは3〜10g/10分である。
【0041】
また、エチレン・α−オレフィン共重合体(A2−1)及びプロピレン系ランダム共重合体(A2−2)には、本発明の効果を阻害しない限り、上記以外の他の樹脂、エラストマー、酸化防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、中和剤等の各種添加剤を含有せしめても良い。
【0042】
接着層(A)の厚さは、好ましくは0.2〜5μm、より好ましくは0.5〜3μm、さらには1〜2μmであるのが好ましい。接着層(A)の厚さが上記範囲であれば2軸延伸が容易にできやすい。また、接着層(A)の厚さが5μmを超えると基材層の剛性が失われやすく、厚さが0.2μm以下であると樹脂層(B)との接着強度が低下、不安定になりやすい。
【0043】
[二軸延伸フィルムの製造]
上記した基材層と接着層(A)の少なくとも二層から構成される二軸延伸フィルムを製造する方法は、必ずしも限定されないが、好ましい態様としては、基材層と接着層(A)を構成するそれぞれの樹脂(樹脂組成物)を、2層又はそれ以上の多層で共押出し、得られた積層シートを縦方向に、次いで横方向に延伸する方法が挙げられる。また、基材層上に、押出ラミネート法によりTダイより押出した接着層(A)の溶融樹脂膜をラミネートし、その後延伸する方法も好ましい。
また、二軸延伸した基材層のフィルム上に押出ラミネート法等により接着層(A)を形成することによっても製造することができる。さらには、後記するように、この際に接着層(A)と樹脂(B)を積層する方法も好ましく採用することができる。
【0044】
[樹脂層(B)]
本発明の薬剤分包用の薬包紙を構成する積層体においては、上記二軸延伸ポリプロピレン系フィルムの接着層(A)の表面上には、アンカーコート剤を使用することなく、直接樹脂層(B)を設ける。
樹脂層(B)としては、エチレンと炭素数が3〜12のα−オレフィンを共重合して得られたMFR(190℃、荷重2.16kg)が1〜100g/10分、密度が0.870〜0.915g/cm
3のエチレン・α−オレフィン共重合体(B)を主成分とする樹脂組成物を用いる。
【0045】
[エチレン・α−オレフィン共重合体(B)]
本発明の樹脂層(B)に使用されるエチレン・α−オレフィン共重合体(B)は、エチレンと炭素数が3〜12のα−オレフィンを共重合して得られたMFR(190℃、荷重2.16kg)が1〜100g/10分、密度が0.870〜0.920/cm
3のエチレン・α−オレフィン共重合体である。
【0046】
エチレン・α−オレフィン共重合体(B)は、エチレンと、好ましくは炭素数3〜20、より好ましくは3〜12のα−オレフィンとの共重合体である。炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−オクタデセンなどが挙げられ、好ましくは炭素数4〜8のα−オレフィン、特には1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンであり、なかでも1−ブテン、1−ヘキセンが好ましい。
【0047】
本発明で用いるエチレン・α−オレフィン共重合体(B)は、チーグラーナッタ型触媒により製造されたもの或いはメタロセン触媒により製造されたもの、いずれであってもよいが、押出ラミネート法に適した共重合体としては、メタロセン触媒を使用して製造されたものが好ましい。
メタロセン触媒については、上記したとおりであり、エチレン・α−オレフィン共重合体(B)においても同様のメタロセン触媒が好ましく適用することができる。
【0048】
本発明に用いるエチレン・α−オレフィン共重合体(B)の密度は、0.870〜0.915g/cm
3であることが必要であり、好ましくは0.880〜0.910g/cm
3であり、より好ましくは0.890〜0.910g/cm
3である。密度が0.870/cm
3未満では、ラミネート時にロールリリースが起こり加工しにくく密度が0.915/cm
3を超えると低温シール性が損なわれる。密度がこの範囲であるエチレン・α―オレフィン共重合体を用いると、例えば120℃以下といった低温でのヒートシールが可能となり、基材として用いる二軸延伸ポリプロピレン系フィルムの熱による変形(収縮現象)を防止することが可能となるので好ましい。
【0049】
また、本発明に用いるエチレン・α−オレフィン共重合体(B)のMFR(190℃、荷重2.16kg)は、1〜100g/10分であることが必要である。MFRは、好ましくは2〜50g/10分であり、より好ましくは3〜30g/10分であり、さらに好ましくは5〜20g/10分である。上記範囲であれば、組成物の溶融張力が適切な範囲となりラミネート成形がし易い。
【0050】
また、本発明に用いるエチレン・α−オレフィン共重合体(B)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、好ましくは1.5〜3.5、より好ましくは1.8〜3.3、さらに好ましくは2.1〜3である。上記範囲であればラミネート成形がし易い。
【0051】
なお、エチレン・α−オレフィン共重合体(B)は、単独で用いても、二種以上混合して使用してもよい。
【0052】
樹脂層(B)には、エチレン・α−オレフィン共重合体(B)以外の他の重合体として、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィンコポリマー等のポリオレフィン、エチレン−プロピレンエラストマー等のオレフィン系エラストマー、またはこれらと共重合可能な他の単量体、例えば酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸を共重合させたものを含有してもよい。
また、本発明の効果を阻害しない限り、上記以外の他の樹脂、エラストマー、酸化防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、中和剤等の各種添加剤を含有せしめても良い。
【0053】
樹脂層(B)の厚さは、5〜40μmであるのが好ましい。接着層(B)の厚さが5μm未満であると加工しにくい傾向にあり、厚さが40μmを超えるとコスト高となるので好ましくない。
【0054】
[積層体(薬包紙)の製造]
本発明の薬包紙を形成する積層体において、本発明では、接着層(A)上に、アンカーコート剤を使用することなしに、前記エチレン・α−オレフィン共重合体(B)を主成分とする樹脂組成物からなる樹脂層(B)をダイレクトに積層する。
積層方法としては、必ずしも限定されないが、例えば共押出法、ロールコート法、押出ラミネート法等が代表的な好ましい方法として挙げられる。好ましい態様としては、ポリプロピレン系重合体を主成分とする基材層と接着層(A)の樹脂を共押出して二層の積層体を形成した後、二軸延伸をしてフィルム状とし、その接着層(A)面上に樹脂層(B)を積層する方法が挙げられる。
その他にも、基材層を二軸延伸してフィルム化した上に、接着層(A)と樹脂(B)を積層する方法も採用することができる。
【0055】
樹脂層(B)を接着層(A)面上に積層するには押出ラミネート法により行うのが、接着層(A)と樹脂層(B)の接着性を良好とし、かつ生産性が高いので好ましく挙げられる。押出ラミネート法は、Tダイより押出した溶融樹脂膜を、基材上に連続的に被覆・圧着する方法で、被覆と接着を同時に行う成形加工法である。
本発明の薬包紙は、上述した、二軸延伸ポリプロピレンの基材層/接着層(A)/樹脂層(B)の層構成とすることで、アンカーコート剤を使用することなしに製造することができるが、アンカーコート剤を補完的に使用することを排除するものではない。
【0056】
[分包袋の製造]
このように構成された薬包紙は、二軸延伸ポリプロピレン系フィルムの少なくとも一方の面に樹脂層(B)を有するので、その中央部で、樹脂層(B)が内面側になるように二つ折りして、次いで、3方を熱溶着することによって一連に熱溶着部を形成し、薬剤の収納部を区画形成することができる。すなわち、薬剤分包用分包袋とするための薬包紙として使用できる。また、本発明の薬包紙を使用すれば、熱溶着タイプの連続式分包機で、薬剤を連続して分包した一連の薬剤分包袋とすることができる。
【0057】
特に本発明の薬剤分包用の薬包紙を用いると、120℃以下、例えば110℃といった比較的低温での熱溶着(ヒートシール)が可能となる。したがって、本発明の薬剤分包用の薬包紙を用いて、120℃以下の温度、好ましくは90℃〜120℃での低温で熱溶着部のヒートシールを行うと、基材に用いる二軸延伸ポリプロピレン系フィルムの熱による変形(収縮)を抑えることができる。
分包袋に分包する薬剤としては、特に限定されるものではなく、医薬品又はその調合物は勿論、サプリメント、保健機能食品、特定保健用食品、栄養機能食品等も分包の対象物になり得る。
【実施例】
【0058】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって限定して解釈されるものではない。
なお、実施例および比較例において、構成成分についての諸物性は、下記の評価方法に従って測定、評価し、使用した樹脂として下記のものを用いた。
【0059】
1.評価方法
(1)メルトフローレートMFR:
ポリエチレン系樹脂のMFRは、JIS K6922−2(2005)に準拠して、190℃、荷重2.16kgで測定した。なお、ポリプロピレン系樹脂については測定温度を230℃で行った。単位はg/10分である。
(2)密度:JIS K−7112に従い測定した。
(3)融点:示差走査熱量計を用いて測定した。
【0060】
(4)表面固有抵抗:
三菱化学社製の表面固有抵抗測定器MCP−HT250で、23℃、50%の雰囲気下で、500Vの電荷を1分かけ、試料の表面固有抵抗を測定した。表面固有抵抗は、1.00E+10
13以下であることが、静電防止効果の点で好ましい。
【0061】
(5)接着強度:
得られた積層フィルムを15mm幅の試験片に裁断し、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの接着層(A)と樹脂層(B)の界面から剥離させ、東洋精機社製引張試験機にて、接着層(A)端部と樹脂層(B)端部のそれぞれを上下に300mm/分の引張速度で引っ張り、その際の引張強度(剥離抵抗値)を測定した。
【0062】
(6)ヒートシール性:
樹脂層(B)面同士を合わせ、テスター産業社製熱板式ヒートシーラーの上部シーラーの、上部シールバーを100℃、下部シールバーを30℃にして、シール圧力2kg/cm
2、シール時間1秒でヒートシールしたものを15mm幅の試験片に裁断し、東洋精機社製引張試験機にて引張速度300mm/分でヒートシール部の引張強度を測定した。
【0063】
(7)カット性:
得られた積層フィルムにノッチを入れた後、手で切り裂いた状態を以下の基準で評価した。
○:何の抵抗もなく綺麗に切れる。
△:わずかに樹脂層(B)が残るが、使用上問題ない程度で切れる。
×:ポリプロピレンフィルム基材と樹脂層(B)剥がれ出し、切れにくい。
【0064】
2.使用材料
プロピレン・α−オレフィン−ランダム共重合体(A1)、メタロセン触媒により得られたエチレン・α−オレフィン共重合体(A2−1)、プロピレン系ランダム共重合体(A2−2)及びエチレン・α−オレフィン共重合体(B)として、以下のものを使用した。
【0065】
(A1)プロピレン・α−オレフィン−ランダム共重合体として以下のものを使用した。
・プロピレン−エチレンランダム共重合体
メタロセン触媒による日本ポリプロ社製、商品名ウィンテック「WFX4T」
融点:125℃
MFR:7g/10分
密度:0.900
【0066】
なお、本発明におけるプロピレン・α−オレフィン−ランダム共重合体(A1)としての条件を満たさない共重合体として、以下のものを使用した。
・プロピレン−エチレンランダム共重合体
メタロセン触媒による日本ポリプロ社製、商品名ウィンテック「WFW4」
融点:135℃
MFR:7g/10分
密度:0.900
【0067】
(A2−1)メタロセン触媒によるエチレン・α−オレフィン共重合体として以下のものを使用した。
・メタロセン触媒によるエチレン・ヘキセン共重合体
日本ポリエチレン社製、商品名カーネル「KF360T」
MFR=3.5g/10分
密度=0.898
・メタロセン触媒によるエチレン・ヘキセン共重合体
日本ポリエチレン社製、商品名カーネル「KF380」
MFR=4g/10分
密度=0.918
【0068】
(A2−2)プロピレン−エチレンランダム共重合体として以下のものを使用した。
・チーグラー触媒によるプロピレン系ランダム共重合体
日本ポリプロ社製、商品名ノバテック「FX4G」
融点:128℃
MFR:5g/10分
密度:0.900
【0069】
(B)エチレン・α−オレフィン共重合体として以下のものを使用した。
・メタロセン触媒よるエチレン・プロピレン・ヘキセン共重合体
日本ポリエチレン社製、商品名カーネル「KC452T」
MFR=6g/10分
密度=0.890
・メタロセン触媒によるエチレン・ヘキセン共重合体
日本ポリエチレン社製、商品名カーネル「KC571」
MFR=10g/10分
密度=0.910
【0070】
なお、本発明におけるエチレン・α−オレフィン共重合体(B)としての条件を満たさない共重合体として、以下のものを使用した。
・チーグラー触媒によるエチレン・ブテン共重合体
日本ポリエチレン社製、商品名ノバテック「UC380」
MFR=11g/10分
密度=0.922
【0071】
[実施例1]
(1)二軸延伸フィルムの製造
基材層には、MFRが1.9g/10分の結晶性ポリプロピレン単独重合体100重量部、及びポリオキシエチレンアルキルアミンの脂肪酸エステル0.9重量部からなる混合物を用いた。
接着層(A)にはメタロセン触媒により得られたエチレン・α−オレフィン共重合体(A2−1)として「KFT360T」30重量部と、融点が128℃のプロピレン・エチレンランダム共重合体(A2−2)「FX4G」を70重量部含む、樹脂組成物を用いた。
基材層となる結晶性ポリプロピレン混合物と上記接着層樹脂組成物とをそれぞれ115mm径、及び30mm径の押出機より2層ダイを用いて、0.15mm/1mmの肉厚の2層構成の積層シートとなるように押し出して成形した。
この積層シートを、引き続きロール周速差を利用して、115℃の温度で縦方向に5倍に延伸し、次に165℃の温度のテンターオーブン中で横延伸することにより二軸延伸複層フィルムを製造した。このフィルムの厚み構成は、23μm(基材層)と2μm(接着層A)の積層体であった。
【0072】
(2)樹脂層(B)
モダンマシナリー社製90mmφのシングルラミネート成形機を用いて、ダイス幅:500mm、成形温度:280℃、加工速度100m/分の条件で、上記二軸延伸フィルムの接着層上に、アンカー処理を施すことなく、上記エチレン・α−オレフィン共重合体(B)として「KC452T」を押出ラミネート成形(樹脂層(B)20μm厚)して積層体を得た。
得られた押出ラミネート積層体の評価結果を表1に示す。
【0073】
[実施例2〜3、比較例1]
実施例1において、二軸延伸プロピレンフィルムの接着層に用いるエチレン・α−オレフィン共重合体(A2)「KF360T」の含有量を表1に記載の含有量に変更した以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。
得られた押出ラミネート積層体の評価結果を表1に示す。
【0074】
[実施例4]
実施例1において、樹脂層(B)に用いるエチレン・α−オレフィン共重合体(B)を「KC571」とした以外は、実施例1と同様にして、積層体を得た。
得られた押出ラミネート積層体の評価結果を表1に示す。
【0075】
[比較例2]
実施例2において、樹脂層(B)に用いるエチレン・α−オレフィン共重合体(B)を「UC380」とした以外は、実施例2と同様にして、積層体を得た。
得られた押出ラミネート積層体の評価結果を表1に示す。
【0076】
[比較例3]
実施例1において、二軸延伸プロピレンフィルムの接着層に用いるエチレン・α−オレフィン共重合体(A2−1)の「KF360T」を「KF380」に変更し、樹脂層(B)に用いるエチレン・α−オレフィン共重合体(B)を「UC380」とした以外は、実施例1と同様にして、積層体を得た。
得られた押出ラミネート積層体の評価結果を表1に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
[実施例5]
(1)二軸延伸フィルムの製造
接着層(A)として融点が125℃のプロピレン・α−オレフィン−ランダム共重合体(A1)である「WFX4T」を用いた以外は実施例1と同様にして、基材層と接着層(A)を押出成形し、二軸延伸複層フィルムを形成した。このフィルムの厚み構成は、23μm(基材層)と2μm(接着層)の積層体であった。
樹脂層(B)は、実施例1と同様にモダンマシナリー社製90mmφのシングルラミネート成形機を用いて、上記エチレン・α−オレフィン共重合体(B)として「KC452T」を押出ラミネート成形(樹脂層(B)20μm厚)して積層体を得た。
得られた押出ラミネート積層体の評価結果を表2に示す。
【0079】
[実施例6]
樹脂層(B)のエチレン・α―オレフィン(B)として「KC571」を用いた以外は実施例5と同様にして、積層体を得た。
得られた押出ラミネート積層体の評価結果を表2に示す。
【0080】
[比較例4]
樹脂層(B)として、密度が0.922g/cm
3のエチレン・α―オレフィン「UC380」を用いた以外は実施例5と同様にして、積層体を得た。
得られた押出ラミネート積層体の評価結果を表2に示す。
【0081】
[比較例5]
実施例5に於いて、接着層(A)の樹脂として、融点が135℃のプロピレン・α−オレフィン−ランダム共重合体「WFW4」を用いた以外は、実施例6と同様にして、積層体を得た。
得られた押出ラミネート積層体の評価結果を表2に示す。
【0082】
【表2】