(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示は、エポキシ樹脂のための硬化剤としておよび/または熱硬化性(thermoset)樹脂に対する前駆体として有用であり得るポリシクロペンタジエン化合物を提供する。本開示のポリシクロペンタジエン化合物は、硬化性組成物に用いられるとき、高レベルの官能価(1分子あたり少なくとも4個の官能基)を提供することができる。しかし、驚くべきことに、該ポリシクロペンタジエン化合物の重量平均分子量は、ポリシクロペンタジエンジフェノールから形成される同等の官能価を有する化合物と比較して、比較的低くなる場合がある。その結果、本開示のポリシクロペンタジエン化合物を含む硬化性組成物の溶融粘度は、ポリシクロペンタジエンジフェノールから形成される同等の官能価を有する化合物を利用するものよりも低くなる場合がある。
【0009】
種々の実施形態では、本開示のポリシクロペンタジエン化合物は、ポリシクロペンタジエンモノアルデヒドおよび/またはジアルデヒドから形成されてよい。ポリシクロペンタジエンモノアルデヒドおよび/またはジアルデヒドの使用は、本開示のポリシクロペンタジエン化合物が、比較的低い分子量と共に高レベルの官能価を達成することを可能にし、これにより、硬化性組成物の比較的低い溶融粘度を可能にすることができる。
【0010】
本開示のポリシクロペンタジエン化合物によって形成される硬化性組成物はまた、向上したガラス転移温度(Tg)を有する硬化組成物を提供することもできる。加えて、本開示のポリシクロペンタジエン化合物は、硬化組成物の耐湿性および耐食性の両方の改善、ならびに電気特性、特に散逸係数の改善も提供することが予期される。
【0011】
本明細書において用いられるとき、「1つの(a)」「1つの(an)」「該(the)」「少なくとも1つの(at least one)」および「1つまたは複数の(one or more)」は、互換的に用いられる。用語「含む(includes)」および「含む(comprises)」ならびにこれらの変形は、これらの用語が説明および特許請求の範囲において見られる場合、限定的な意味を有さない。
【0012】
用語「および/または」は、列挙した項目の1つ、1つもしくは複数、または全てを意味する。
【0013】
終点による数値範囲の列挙は、該範囲内に包含される全ての数を含む(例えば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。
【0014】
用語「熱硬化性」は、本明細書において用いられるとき、加熱されたときに不可逆的に固化するまたは「固まる」ことができるポリマーを指す。
【0015】
用語「硬化性(curable)」「硬化(cured)」「熱硬化可能な(thermosettable)」および「熱硬化性(thermoset)」は、全体を通して同義語として用いられ、組成物が硬化したまたは熱硬化性の状況または状態にされる条件に付され得ることを意味する。
【0016】
用語「Bステージ」は、本明細書において用いられるとき、生成物がアルコールまたはケトンなどの溶媒に完全ないし部分的な溶解性を有するようにAステージを超えて熱的に反応した熱硬化性樹脂を指す。
【0017】
用語「アルキル基」は、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシルなどを含めた、飽和の、直鎖状または分岐状の一価炭化水素基を意味する。
【0018】
用語「アルコキシ基」は、少なくとも1個の炭化水素アルキル基が酸素に結合している基を称する。例えば、式−O−Rまたは−O−R−O−R:式中、Rは炭化水素アルキル基である;によって表される基が、アルコキシ基である。
【0019】
種々の実施形態では、本開示のポリシクロペンタジエン化合物は、以下の式Iによって表され:
【化2】
式中、各Xは、水素またはシアノ基(N≡C−)のいずれかであり、各nは、0〜20の値を独立して有し;各mは、0〜3の値を独立して有し;pは、0〜20の値を有し;各Rは、独立して、ハロゲン、ニトリル基、ニトロ基、アルキル基、またはアルコキシ基であり、アルキル基およびアルコキシ基は、1〜6個の炭素原子をそれぞれ独立して含有し;各Qは、独立して、水素、または1〜6個の炭素原子を含有するアルキル基である。
【0020】
本明細書に提供されているように、Xが水素であるポリシクロペンタジエン化合物は、本明細書において、ポリシクロペンタジエンポリフェノールと称されてもよい。Xがシアノ基であるポリシクロペンタジエン化合物は、本明細書において、ポリシクロペンタジエンポリシアネートと称されてもよい。ポリシクロペンタジエン化合物という用語は、本明細書において用いられるとき、ポリシクロペンタジエンポリフェノールおよび/またはポリシクロペンタジエンポリシアネートのいずれかを称することができ、但し、文脈が、かかる置き換えを明らかに可能としない場合を除く。
【0021】
種々の実施形態では、ポリシクロペンタジエン化合物のハロゲンは、フッ素、塩素、臭素およびこれらの組み合わせからなる群から好ましくは選択される。種々の実施形態ではまた、各nが0〜8の値を独立して有し得ることも定めている。好ましくは、各nは、0〜3の値を独立して有し、最も好ましくは、各nは、0〜2の値を独立して有する。
【0022】
好ましくは、pは0〜3の値を有し、より好ましくは、pは0〜2の値を有し、最も好ましくは、pは0〜1の値を有する。種々の実施形態では、アルキル基およびアルコキシ基は、1〜2個の炭素原子を好ましくは含有し得る。種々の実施形態では、Qは、アルキル基である場合は1〜2個の炭素原子を含有し得る。好ましくは、アルキル基および/またはアルコキシ基は、ハロゲン原子によって置換されている。種々の実施形態では、アルキル基およびアルコキシ基、またはこれらのいずれかにおけるハロゲン原子は、塩素、臭素およびこれらの組み合わせからなる群からそれぞれ独立して選択される。種々の実施形態では、R基は縮合環基であってもよく、−OX基を含有する環基を含むナフタレン構造、例えば、ナフトール(1−ナフトールおよび/または2−ナフトール)、テトラヒドロナフトール、インダノール、およびこれらの組み合わせを生成する。
【0023】
式Iの化合物の組成物が、種々のnおよびp値を有する混合物であり得ることが理解されるべきである。かかる混合物では、nおよびpの値が、数平均重合度として記載され得る。
【0024】
種々の実施形態では、mが0以外の値を有する場合、Qに結合した炭素
【化3】
は、−OX基に対して好ましくはオルト位および/またはパラ位にある。−OX基に対してオルト位およびパラ位の両方に、Qに結合した炭素を有する化合物の混合物が可能であることが認識される。−OX基に対してメタ位にQに結合した炭素
【化4】
を有することも可能である。
【0025】
種々の実施形態では、mは、好ましくはゼロであって、式IIのポリシクロペンタジエン:
【化5】
式中、X、n、p、およびQは、本明細書に提供されている通りである;を提供することができる。
【0026】
認識されているように、nがゼロであるとき、本開示のポリシクロペンタジエン化合物は、ジシクロペンタジエン化合物と称されてもよい。しかし、本明細書において用いられるとき、ポリシクロペンタジエンという用語が用いられ、この用語は、nがゼロであるときジシクロペンタジエンに置き換えられてよいことが理解される。
【0027】
ポリシクロペンタジエンポリフェノールの調製
本開示のポリシクロペンタジエンポリフェノールは、ポリシクロペンタジエンジアルデヒドおよび/またはポリシクロペンタジエンジケトンから生成され得る。種々の実施形態では、ポリシクロペンタジエンジアルデヒドは、例えば、G.LongoniらによってJ.of Molecular Catalysis 68、7-21 (1991)に、またはより一般にはKirk-Othmerにおいて、ENCYCLOPEDIA OF CHEMICAL TECHNOLOGY、第5版、第10巻、347-470頁(2010)に記載されている方法を用いて、合成ガス、ホスフィン配位子、および遷移金属(第3〜10族)触媒を用いて、ポリシクロペンタジエン、特に、ジシクロペンタジエンのヒドロホルミル化を介して生成され得る。このプロセスには、極性/非極性混合溶媒を用いることで触媒の再利用および生成物の分離の問題を軽減する方法(米国特許第6307108B1号)を含めた種々の変形例が存在する。得られるポリシクロペンタジエンジアルデヒドは、次いでフェノールと縮合して、本開示のポリシクロペンタジエンポリフェノールを形成することができる。ポリシクロペンタジエンは、Kirk-Othmerによって、ENCYCLOPEDIA OF CHEMICAL TECHNOLOGY、第5版、第8巻、223頁(2010)に開示されているように、100℃を超える温度にシクロペンタジエンを加熱することによって調製され得る。上記参照文献の全ては、全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0028】
種々の実施形態では、ヒドロホルミル化は、1〜250気圧(atm)および20℃〜250℃の温度で起こり得る。種々の実施形態では、合成ガスは、種々の量の一酸化炭素(CO)、水素(H
2)および必要に応じて不活性ガスを含有し得る。
【0029】
該反応はまた、200〜350atmの高い合成ガス圧であっても、米国特許第7,321,068号に開示されている配位子を有さないロジウム触媒を用いて行うこともできる。好適な配位子の例として、一酸化炭素、および一般式PR
1R
2R
3:式中、各R
1、R
2、およびR
3は、置換または非置換アルキル、アリール、アラルキル、アルカリール、ハロゲン化物、またはこれらの組み合わせである;を有する有機ホスフィン配位子が挙げられる。具体例として、限定されないが、n−ブチルジフェニルホスフィンが挙げられる。好適な触媒の例として、限定されないが、Rh(CO)
2(アセチルアセトネート)が挙げられる。
【0030】
ヒドロホルミル化の間に、部分飽和または全飽和ポリシクロペンタジエンモノアルデヒドの全反応生成物のうち少量、典型的には5〜25重量(wt.)パーセント(%)以下が、ポリシクロペンタジエンジアルデヒドと併せて生成されてもよい。飽和シクロペンタン環を有するこれらの飽和ポリシクロペンタジエンモノアルデヒドの例は、以下の式IIIによって表され、式中、nは、本明細書に記載されている通りである:
【化6】
【0031】
ポリシクロペンタジエンモノアルデヒドは、ポリシクロペンタジエンジアルデヒドから部分的または全体的に分離され得る。例えば、蒸留プロセスは、ポリシクロペンタジエンジアルデヒドからポリシクロペンタジエンモノアルデヒドを分離するのに用いられ得る。
【0032】
さらなる実施形態において、種々の重量%の、飽和シクロペンタン環を有するポリシクロペンタジエンモノアルデヒドはまた、ポリシクロペンタジエンジアルデヒドと混合され得る。ポリシクロペンタジエンモノアルデヒドとポリシクロペンタジエンジアルデヒドとの混合物を用いることで、得られる硬化性組成物の官能価のレベルの制御を可能にし得る。例えば、ノボラック化学は、ポリシクロペンタジエンジアルデヒドからポリシクロペンタジエンポリフェノールを形成するのに用いられ得る一方で、ノボラック化学は、ポリシクロペンタジエンモノアルデヒドからポリシクロペンタジエンジフェノールを形成するのにも用いられ得る。飽和シクロペンタン環を有するポリシクロペンタジエンジフェノールの例は、以下の式VIによって表される:
【化7】
式中、n、m、RおよびQは、本明細書に記載されている通りである。ポリシクロペンタジエンジフェノール中にオリゴマーが存在していてもよい。したがって、ポリシクロペンタジエンジフェノールとポリフェノールとの混合物が、本開示のさらなる実施形態として生成されてよい。
【0033】
種々の実施形態では、本開示において有用なポリシクロペンタジエンジケトンは、多段階合成、例えばTetrahedron Letters、28、769(1987);Tetrahedron Letters、27、3033(1986); Tetrahedron Letters、27、933(1986);Journal of the American Chemical Society、107、7179(1985); およびJournal of the Chemical Society: Chemical Communications、1040(1983)に示されている化学を経て生成され得る。本開示において用いられるポリシクロペンタジエンは、Kirk-Othmerによって、ENCYCLOPEDIA OF CHEMICAL TECHNOLOGY、第5版、第8巻、223頁(2010)に開示されているように、シクロペンタジエンを100℃超の温度に加熱することによって調製され得る。ここで言及されている参照文献の全ては、全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0034】
ヒドロホルミル化は、Longoniによって記載されているように、少量の異性体ケトンも生成し得る。これらのケトンは、H
2/CO圧が低い(約1atm)とき、主要生成物であり得る。これらのケトンは、生成物混合体中に存在すると、フェノールと縮合されて式V:式中、n、m、およびRは、本明細書に記載されている通りである;のポリフェノールを形成し得る。
【化8】
【0035】
本明細書において提供されているように、ポリシクロペンタジエンモノアルデヒド、ジアルデヒド、およびケトンの混合物を用いることで、所与の硬化性組成物中の官能価のレベルに対する制御を可能にし得る。そして、例えば、本開示の硬化性組成物の架橋密度は、該組成物において用いられるポリシクロペンタジエンポリフェノールおよびポリシクロペンタジエンジフェノールの相対量を基準にして調整(例えば、低減または増大)され得る。このように官能価のレベルを調整することで、硬化組成物の特性、例えばガラス転移温度(Tg)を所望のレベルに合わせること、および/または硬化組成物の他の特性(例えば、靱性)との均衡を保つことを可能にし得る。
【0036】
さらに、本開示のポリシクロペンタジエンジアルデヒド中のジシクロペンタジエン部位および/またはポリシクロペンタジエン部位の量を制御することが可能であり得る。ジシクロペンタジエンおよび/またはポリシクロペンタジエンは、シクロペンタジエンを用いたディールス−アルダー化学を経て形成され得、ここで、本明細書において議論されているように、式Iのnについての平均値は0〜20であり得る。そして、例えば、本開示のポリシクロペンタジエンジアルデヒド中のポリシクロペンタジエン部位は、オリゴマーであるときには平均で2〜5のn値の分布を有し得る。他の実施形態では、nは、0または1の値を有し得る。ポリシクロペンタジエンジアルデヒド中のジシクロペンタジエン部位および/またはポリシクロペンタジエン部位を制御する能力は、硬化組成物の潜在的な耐湿特性を保持またはさらには増大させつつ、硬化性組成物の架橋密度を制御および/または適合させる能力も可能にし得る。
【0037】
ポリシクロペンタジエンモノアルデヒドおよびケトンのいずれかと併せて得られるポリシクロペンタジエンジアルデヒドは、次いでノボラック反応を受けて、本開示のポリシクロペンタジエンポリフェノールを形成することができる。種々の実施形態では、ノボラック反応は、フェノールおよび酸触媒の使用を伴う。例えば、ポリシクロペンタジエンジアルデヒドおよび溶融フェノールは、窒素雰囲気下および酸触媒の存在下に撹拌により65℃〜70℃の温度で反応し得る。いずれかのポリシクロペンタジエンモノアルデヒドと併せて得られるポリシクロペンタジエンジアルデヒドは、次いでノボラック反応を受けて、本開示のポリシクロペンタジエンポリフェノールを形成することができる。
【0038】
種々の実施形態では、本開示に関するポリシクロペンタジエンポリフェノールは、ポリシクロペンタジエンジアルデヒド(およびあらゆるポリシクロペンタジエンモノアルデヒド)対フェノールならびに/または、例えば、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,4−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、1−ナフトール、および2−ナフトールなどの置換フェノールのモル比が1:20〜1:6、好ましくは1:15〜1:8の縮合反応を介して;使用されるフェノールまたは置換フェノール化合物の量を基準にして好ましくは0.1〜2、より好ましくは0.1〜1重量%である酸触媒の存在下にて調製される。1:20より高い、フェノールまたは置換フェノールのモル比が使用されてもよいが、そうすることで、過剰のフェノールまたは置換フェノールを回収および再利用するためのさらなるエネルギー、したがって費用が必要となる。
【0039】
大過剰のフェノールおよび/または置換フェノールを使用する縮合反応は、低い多分散性および重量平均分子量を有するポリシクロペンタジエンポリフェノールに有利であることが見出されている。同様に、フェノールおよび/または置換フェノールの量が低下するに従い、ポリシクロペンタジエンポリフェノールのオリゴマーが増加し得、重量平均分子量を増加させる。オリゴマー含量の増加は、ある一定の最終用途には高度に有益であり得る、1分子あたりのより高いヒドロキシル官能価に有利であり、例えば、より高い粘度を犠牲にしてTgを増加させる。このように、非常に大過剰のフェノールおよび/または置換フェノールが用いられ得る一方で、本開示は、前述のモル比を使用して、ポリシクロペンタジエンポリフェノールが豊富でオリゴマーが少ない生成物を生成する。
【0040】
種々の実施形態では、本開示のポリシクロペンタジエンポリフェノールを形成する縮合反応はまた、溶媒の使用を場合により含み得る。これらの実施形態では、例えば、トルエンまたキシレンなどの反応および形成される反応生成物に不活性であり得る溶媒も使用することができる。溶媒は、縮合反応からの水の共沸除去のための因子としてさらに機能し得る。より高い溶融粘度を有するある一定のフェノール性反応体については、1種または複数の溶媒の使用が、好適な反応媒体を維持するために有益である場合がある。
【0041】
好適な酸触媒として、プロトン酸、例えば、塩酸、硫酸、リン酸;金属酸化物、例えば、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム;有機酸、例えば、p−トルエンスルホン酸、シュウ酸、3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0042】
種々の実施形態では、3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸が、好ましい酸触媒または共触媒である。驚くべきことに、3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸は、ポリシクロペンタジエンポリフェノールを形成するにおいて非常に高度に選択性であるため、反応生成物から水を共沸除去する必要性がないことが見出された。それどころか、該水は、ノボラック反応をクエンチすることなく、反応器内に残存する。
【0043】
反応温度および時間は変動するが、約5分〜約48時間であり得、約20℃〜約175℃の反応温度が使用され得る。好ましくは、反応温度および時間は、15分〜36時間および30℃〜約125℃の反応温度であり得る。最も好ましくは、反応温度および時間は、30分〜24時間および35℃〜約75℃の反応温度であり得る。
【0044】
反応の終わりに、酸性触媒は、中和によって、例えば、水での洗浄もしくは抽出などによって除去されてよい。同様に、反応の終わりに、過剰のフェノールが、例えば蒸留または抽出によってノボラック生成物から除去されてよい。
【0045】
種々の実施形態では、本開示のポリシクロペンタジエンポリフェノールは、2未満の多分散性指標を有し得る。例えば、ポリシクロペンタジエンポリフェノールの多分散性指数(所与のポリマーサンプルにおける分子量の分布の測定)は、1.3〜1.4であり得る。これらの種の結果は、本開示に関するポリシクロペンタジエンポリフェノールのそれぞれのn値およびp値の両方が、非常に均一であることを示している。この結果は、驚くべきことである、なぜなら、ノボラック反応は、多くの場合、はるかに大きな多分散性(例えば、2〜5)を有する生成物を生成するからである。本開示に関するポリシクロペンタジエンポリフェノールについて均一な鎖長を有することで、本開示の硬化性組成物の粘度においてより望ましい粘度予測性を可能にする。
【0046】
本開示のポリシクロペンタジエンポリフェノールのある一定のものについての多分散性値は、Mwの実質的な増大を伴わず官能価のレベルが増大することを示している。高い官能価および結果としての高い架橋密度は、非常に望ましい高いTgを提供できる。
【0047】
種々の実施形態では、ポリシクロペンタジエンジアルデヒドから開始することで、化合物のMwの大幅な増大を伴わずに、得られるポリシクロペンタジエンポリフェノールにおいて達成される官能価のレベルを高くすることを可能にする。これは、高いレベルの官能価を有するポリフェノールを形成するためのこれまでの試みには当てはまらない。例えば、本開示の実施形態は、ヒドロキシル当量あたり約133gという低いヒドロキシル当量で約4の官能価を付与する。本開示の実施形態はまた、硬化性組成物の分子量および粘度の大幅な増大を伴わずに達成される官能価のレベルにおいて測定可能な進歩を可能にすることもできる。
【0048】
ポリシクロペンタジエンポリシアネート樹脂の調製
種々の実施形態では、本開示のポリシクロペンタジエンポリフェノールおよびポリシクロペンタジエンジフェノールは、他の高レベルの官能価の、高いガラス転移温度の樹脂に対するノボラック樹脂前駆体として用いられ得る。例えば、ポリシクロペンタジエンポリシアネート樹脂は、本開示のポリシクロペンタジエンポリフェノールおよびポリシクロペンタジエンジフェノールから誘導され得る。
【0049】
ポリシクロペンタジエンポリシアネートは、フェノール性ヒドロキシル基あたり化学量論量または化学量論過剰(最大で20%過剰)の塩基化合物の存在下および好適な溶媒の存在下に、1種または複数のポリシクロペンタジエンポリフェノールをフェノール性ヒドロキシル基あたり化学量論量または化学量論過剰(最大で20%過剰)のハロゲン化シアンと反応させることによって調製され得る。
【0050】
−40℃〜60℃の反応温度が操作可能であり、−15℃〜10℃の反応温度が好ましく、−10℃〜0℃の反応温度が最も好ましい。反応時間は、例えば、使用される反応体、反応温度、用いられる溶媒(複数可)、反応規模などを関数として実質的に変動し得るが、一般には15分〜4時間の間であり、30分〜90分の反応時間が好ましい。
【0051】
好適なハロゲン化シアンとして、限定されないが、塩化シアンおよび臭化シアンが挙げられる。代替的には、John Wiley and Sonsによって発行されたOrganic Synthesis、第61巻、35〜68頁(1983)に記載されているMartinおよびBauerの方法が用いられて、シアン化ナトリウムおよび塩素または臭素などのハロゲンから所要のハロゲン化シアンをインサイチュで生成することができる。
【0052】
好適な塩基化合物として、無機塩基および三級アミンの両方、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリメチルアミン、トリエチルアミン、これらの混合物などが挙げられる。好ましい塩基化合物はトリエチルアミンである。シアン化反応に好適な溶媒として、水、脂肪族ケトン、塩素化炭化水素、脂肪族および脂環式(cycloaliphatic)のエーテルおよびジエーテル、芳香族炭化水素、これらの混合物などを挙げることができる。アセトン、メチルエチルケトン、塩化メチレンまたはクロロホルムが溶媒として特に好適である。
【0053】
硬化性組成物
本開示の実施形態はまた、本開示のポリシクロペンタジエン化合物と硬化量の樹脂とを含む硬化性組成物も含む。例えば、本開示のポリシクロペンタジエンポリフェノールは、ジおよびポリエポキシドのための硬化剤として用いられて、本開示の架橋ポリマー性組成物を得ることができる。
【0054】
ジおよびポリエポキシドの例として、芳香族エポキシ化合物、脂環式(alicyclic)エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物、およびこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0055】
芳香族エポキシ化合物の例として、限定されないが、ポリフェノール、例えば、ヒドロキノン、レゾルシノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、テトラブロモビスフェノールA、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、および1,6−ジヒドロキシナフタレンのグリシジルエーテル化合物が挙げられる。脂環式エポキシ化合物の例として、限定されないが、少なくとも1個の脂環式環を有するポリオールのポリグリシジルエーテル、またはシクロヘキセン環もしくはシクロペンテン環を含む化合物を酸化剤によってエポキシド化することによって得られるシクロヘキセンオキシドもしくはシクロペンテンオキシドを含む化合物が挙げられる。いくつかの特定の例として、限定されないが、水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、3,4−エポキシ−1−メチルシクロヘキシル−3,4−エポキシ−1−メチルヘキサンカルボキシレート、6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキサンカルボキシラート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、メチレン−ビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロパン、ジシクロペンタジエンジエポキシド、エチレン−ビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、ジオクチルエポキシヘキサヒドロフタレート、およびジ−2−エチルヘキシルエポキシヘキサヒドロフタレートが挙げられる。
【0056】
脂肪族エポキシ化合物の例として、限定されないが、脂肪族ポリオールまたはそのアルキレンオキシド付加物のポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、グリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレートのビニル重合によって合成されるホモポリマー、ならびにグリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレートおよび他のビニルモノマーのビニル重合によって合成されるコポリマーが挙げられる。いくつかの特定の例として、限定されないが、ポリオールのグリシジルエーテル、例えば、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ソルビトールのテトラグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールのヘキサグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、およびポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル;1種の、または2種以上のアルキレンオキシドを、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、およびグリセリンなどの脂肪族ポリオールに添加することによって得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル;ならびに脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステルが挙げられる。
【0057】
1つまたは複数の本開示の実施形態に有用であり得る他のエポキシ化合物は、A.M.Paquinの、「Epoxidverbindungen und Epoxidharze」、Springer-Verlag,Berlin、(1958)および/またはLeeの、「Handbook of Epoxy Resins」(1967)(いずれも、全体が参照により本明細書に組み込まれる)において見出され得る。1つまたは複数の実施形態では、2種以上の異なるエポキシ化合物の混合物が使用され得る。
【0058】
種々の実施形態では、触媒作用量の1種もしくは複数の触媒(もしくは共触媒)および/または促進剤(accelerator)を、本開示の硬化性組成物によって用いることもできる。好適な触媒の例として、限定されないが、酸、塩基、塩、窒素およびリン化合物、例えば、ルイス酸、例えばAlCl
3、BF
3、FeCl
3、TiCl
4、ZnCl
2、SnCl
4、ホウ酸、プロトン酸、例えばHCl、H
3ΡO
4、芳香族ヒドロキシル化合物、例えばフェノール、p−ニトロフェノール、ピロカテコール、ジヒドロキシナフタレン、水酸化ナトリウム、ナトリウムメチレート、ナトリウムフェノレート、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、キノリン、イソキノリン、テトラヒドロイソキノリン、塩化テトラエチルアンモニウム、ピリジン−N−オキシド、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、オクタン酸亜鉛、オクタン酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクタン酸コバルト、コバルトアセチルアセトネートなどが挙げられる。金属キレート、例えば、遷移金属と二座または三座配位子とのキレートなど、特に、鉄、コバルト、亜鉛、銅 マンガン、ジルコニウム、チタン、バナジウム、アルミニウムおよびマグネシウムのキレートも、触媒として好適である。
【0059】
存在する場合、触媒および/または促進剤の使用量は、具体的な触媒の構造、硬化されるポリフェノールおよび/または樹脂の構造、硬化温度、硬化時間(cure time)などに依る。一般に、0.01〜2重量%の触媒濃度が好ましい。
【0060】
促進化合物、例えばDMP−30(トリス(1,3,5−ジメチルアミノメチレン)フェノール)、トリエタノールアミン、およびカルボン酸のアミン塩、例えばステアリン酸トリエチルアンモニウムが用いられ得る。
【0061】
ポリシクロペンタジエンポリフェノールおよび硬化量の樹脂は、大気圧、超大気圧または亜大気圧において、80℃〜220℃、好ましくは100℃〜220℃、より好ましくは、120℃〜200℃の温度で行われ得る。硬化を完了させるのに必要とされる時間は、使用される温度に依る。温度が高くなると、必要とされる時間がより短くなる一方で、温度が低くなると、必要とされる時間がより長くなる。しかし、一般に1〜12時間、好ましくは2〜8時間、より好ましくは2〜5時間が好適である。
【0062】
ポリシクロペンタジエンポリシアネートから調製される硬化組成物は、硬化プロセスに関与するポリシアネートに他の官能基が存在しない場合、シアネート基の単独重合構造、ポリトリアジン環を有することができる。典型的には、ジおよびポリシアネートは、硬化するのが困難であって、多くの最終用途、例えばエレクトロニクス用の積層体、コーティング、カプセル封入物、接着剤および埋め込み化合物(potting compound)の妨害をする可能性がある高温および触媒を必要としてきた。加えて、従来技術の多くのジおよびポリシアネートの硬化エンタルピーは、制御された硬化を困難にするのに十分に高かった。従来技術の多くのジおよびポリシアネートの硬化の際の大きな発熱性のエネルギー放出により、部品の熱的ダメージ、例えば、クラッキング、炭化(charring)または層間剥離をもたらし得る。
【0063】
また、2,6−ジメチルフェノールジシクロペンタジエンジシアネートエステルの硬化からの従来技術のポリトリアジンによって提供されるTg(H-J Hwang、C-H Li、C-S Wang;Dielectric behavior and properties of a cyanate ester containing dicyclopentadiene.I.」、Journal of Applied Polymer Science、第96巻、No.6、2079〜2089頁(2005)からの熱機械分析により266℃、動的機械分析により271℃)は、ビスフェノールAジシアネートによって提供されるTg(示差走査熱量分析により275.7℃、本明細書における比較実験2を参照されたい)よりも低い。したがって、ビスフェノールAジシアネートのTgを満たしつつ又は好ましくは超えつつ、ジシクロペンタジエニル部位によって付与される他の有益な特性、例えば、改善された耐湿性および耐食性ならびに向上した電気特性、特に散逸係数を維持しているジシクロペンタジエニル部位を含有するジまたはポリシアネートが必要とされる。
【0064】
本開示のポリシクロペンタジエンポリシアネートは、Tgの低下および満足できない硬化プロファイルを含めた、ジシクロペンタジエニル部位を含有する従来技術のポリシアネートに関連する課題を解決するのに役立つことができる。本開示のポリシクロペンタジエンポリシアネートは、改善された耐湿性、耐食性、および向上した電気特性と共に、高い官能価、低いエンタルピーによる迅速な無触媒硬化、および非常に高いTg(>295℃)を提供することができ、これらは、ジシクロペンタジエニル部位の結果として予測されるものである。
【0065】
本開示のポリシクロペンタジエンポリシアネートは、従来のジシアネート、具体的には、ビスフェノールAジシアネートと比較して、無触媒硬化プロファイル(ホモポリトリアジンへの環化三量化)の改善を実証した。例えば、本開示のポリシクロペンタジエンポリシアネートを用いた硬化の開始は162.6℃であったのに対して、ビスフェノールAジシアネートでは244.1℃であった。このことは、より迅速な硬化、および硬化の開始に必要とされる熱的エネルギーを少なくすることに有利である。硬化エンタルピーはまた、本開示のポリシクロペンタジエンポリシアネートでは164.4ジュール/gであるのに対して、ビスフェノールAジシアネートでは588.9ジュール/gであることも見出された。この、より低いエンタルピーは、より制御された硬化、および硬化性組成物によって引き起こされる熱的ダメージを低減する可能性に有利である。本開示のポリシクロペンタジエンポリシアネートによって付与されるガラス転移温度は295.7℃であることが見出された一方で、ビスフェノールAジシアネートによって付与されるガラス転移温度は275.7℃よりもかなり低かった。
【0066】
種々の実施形態では、本開示のポリシクロペンタジエンポリシアネートを含む硬化性組成物は、硬化組成物の少なくとも誘電特性および水の取り込み特性が重要である電気的適用において特に有用であると考えられる。例えば、本開示のポリシクロペンタジエンポリシアネートは、水の引き寄せを最小にする、極性基の密度が低い(すなわち、非極性特徴)を有する硬化組成物を提供する。このことは、硬化組成物中の各極性−OH基が水を引き寄せることができるエポキシ系硬化性組成物とは対照的である。ポリシクロペンタジエンポリシアネートの硬化組成物は極性基を含まないと考えられているため、エポキシ系硬化性組成物と比較して誘電特性が改善されるはずである。しかし、いくつかのエポキシ基が本開示の硬化性組成物中に存在して、硬化組成物の所望の水の取り込み特性、接着および誘電特性を提供するのに役立つことができることが認識される。
【0067】
ポリシクロペンタジエンポリシアネートは、場合によっては、触媒作用量の1種または複数の触媒(または共触媒)および/または促進剤、例えば、上記で提供されているものの存在下に、50℃〜400℃で加熱、好ましくは100℃〜300℃で加熱することによって硬化され得る(熱硬化性)。ナフテン酸コバルト、オクタン酸コバルト、コバルトアセチルアセトネート、およびオクタン酸マンガンが、触媒として最も好ましい。存在する場合の触媒および/または促進剤の使用量は、特定の触媒の構造、硬化されるポリシアネートの構造、硬化温度、硬化時間などに依る。一般に、0.001〜2重量%の触媒濃度が好ましい。
【0068】
本開示の硬化性組成物を部分的に硬化し(Bステージ)、次いで、後に硬化を完了させることも可能である。本開示の硬化性組成物のBステージまたは予備重合は、より低い温度および/またはより短い硬化時間(curing time)を用いることによって達成され得る。形成されたBステージ生成物のその後の硬化は、温度および/または硬化時間を増大させることによってひいては達成され得る。
【0069】
本開示の実施形態はまた、本開示のポリシクロペンタジエンポリシアネートと、ビスまたはポリ(マレイミド);本開示のもの以外のジまたはポリシアネート;ジまたはポリシアナミド;エポキシ樹脂;ビニルベンジルエーテル、アリルおよびアリルオキシ化合物を含めた重合性モノ、ジ、またはポリ(エチレン性不飽和)モノマーならびにこれらの組み合わせとのブレンド、部分的に重合した(Bステージの)生成物、または硬化した(熱硬化性)生成物を含む。
【0070】
本開示のポリシクロペンタジエン化合物は、他の樹脂、例えば、限定されないが、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂(例えば、本明細書に提供されている)、およびこれらの組み合わせと共に配合されてもよい。さらなる実施形態において、本開示のポリシクロペンタジエン化合物は、他の熱硬化可能なモノマーとのコモノマーとして使用されてもよい。
【0071】
添加剤
本開示の硬化性組成物は、他の材料、例えば、溶媒または希釈剤、充填剤、顔料、染料、流動調整剤、増粘剤、強化剤、離型剤、湿潤剤、安定剤、難燃剤、界面活性剤、またはこれらの組み合わせとブレンドされ得る。本明細書において使用され得る強化剤として、とりわけ、織布、マット、モノフィラメント、マルチフィラメント、一方向繊維、ロービング、ランダム繊維もしくはフィラメント、無機繊維もしくはホイスカ、または中空球の形態の天然および合成繊維が挙げられる。好適な強化材料として、例えば、ガラス、セラミック、ナイロン、レーヨン、綿、アラミド、グラファイト、炭化ケイ素、ポリベンゾオキサゾール、ポリエステル、例えばポリアルキレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、酸化アルミニウム、ホウ素、これらの組み合わせ、またはこれらのハイブリッドが挙げられる。本明細書において使用され得る好適な充填剤として、例えば、無機酸化物、セラミックミクロスフェア、プラスチックミクロスフェア、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0072】
本開示の硬化性組成物と共に用いられるこれらの他の添加剤の量は、用いられる本開示のポリシクロペンタジエン樹脂(複数可)、用いられる硬化剤(複数可)および/または触媒(複数可)の種類、使用される処理温度(複数可)、用いられる添加剤(複数可)の種類、用いられる処理方法(複数可)、および他の公知の可変因子の関数として広範に変動し得る。
【0073】
本開示のポリシクロペンタジエン化合物は、とりわけ、構造または電気積層体および/または複合体、多層電子回路、集積回路パッケージング(例えば「IC基板」)、フィラメントワインディング、成形体、カプセル封入物、鋳物、宇宙航空適用のための複合体、ならびに接着剤における使用のための硬化組成物を調製する際に有用であり得る。加えて、本開示のポリシクロペンタジエン化合物は、例えば、コーティング、例えば、機能的な粉体コーティングおよび他の保護コーティングにおいて有用な、高官能性エポキシ樹脂の硬化薬剤としての実用性を見出すことができ、ここで、高いガラス転移温度、耐溶媒性、耐摩耗性および/または靱性の必要性が有益であり得る。本開示の硬化組成物はまた、シート、フィルム、ファイバの形態で、または他の形状の物品で用いられてもよい。
【0074】
以下の実施例は、本発明の例示であるが、いかなる方法においてもその範囲を限定するものとして解釈すべきではない。
【実施例】
【0075】
以下の実施例は、本開示の範囲を説明するが、これを限定するものではない。別途示さない限り、全ての部および%は重量基準である。別途特定しない限り、用いた全ての機器および化学薬品は、市販のものである。
材料
Rh(CO)
2(アセチルアセトネート)(Rh(CO)
2acac)、Strem Chemicals Incから入手可能。
n−ブチルジフェニルホスフィン、Organometallics,Inc(E.Hampstead、NH、USA)から入手可能。
ジシクロペンタジエン、Dow Chemical Co.から入手可能。
合成ガス、Airgas Great Lakes、Inc.から入手可能。
臭化シアン、Sigma−Aldrichから入手可能。
トリエチルアミン、Sigma−Aldrichから入手可能。
KBrプレート、Sigma−Aldrichから入手可能。
90%純度の3−メルカプトプロパン−1−スルホン酸、ナトリウム塩、Sigma−Aldrichから入手可能。
塩酸、Sigma−Aldrichから入手可能。
フェノール、Sigma−Aldrichから入手可能。
テトラヒドロフラン、Sigma−Aldrichから入手可能。
メタノール、Sigma−Aldrichから入手可能。
無水アセトン、Sigma−Aldrichから入手可能。
ビスフェノールAジシアネート、Huntsman International LLCからAroCy B−10モノマー性ビスフェノールAジシアネートとして入手可能。
【実施例1】
【0076】
ジシクロペンタジエンポリフェノールの調製
A.ジシクロペンタジエンジアルデヒドの調製
ジシクロペンタジエン(70g)中Rh(CO)
2acac(35.1mg;0.136mmol)およびn−ブチルジフェニルホスフィン(0.33g;1.36mmol)(モル比L/Rh=10)の反応混合物を乾燥窒素下にパージボックスにおいて調製し、次いで150mLのParr反応器に入れ、20℃で1:1の合成ガス(モル比1:1のCO:H
2)中で3回散布した。次いで反応混合物を撹拌しながら90psiの圧力の合成ガスにおいて100℃まで加熱した。反応混合物からの生成物の形成をガスクロマトグラフィ(GC)[Agilent6890]によってモニタリングし、得られた混合物の最終的なGC分析により、ジシクロペンタジエンジアルデヒド(GCにおいて10.4〜10.7分(min)で87面積%)およびジシクロペンタジエンモノアルデヒド(GCにおいて5.6および6.0分で6面積%)が示された。ジシクロペンタジエン反応体を完全に消費させた。より長い保持時間(21〜22.5分)において、より高分子量の副生成物による非常に小さなシグナルも観察された。反応混合物のガスクロマトグラフ/質量スペクトル(GC/MS)分析[Agilent5973Mass Selective Detectorを備えたAgilent6890GC]により、所望のジシクロペンタジエンジアルデヒド(M
+=192)および飽和ジシクロペンタジエンモノアルデヒド(M
+=164)の形成が裏付けられた。
【化9】
【0077】
KBrプレート上のジシクロペンタジエンジアルデヒドの純フィルムのフーリエ変換赤外分光光度(FTIR、Nicolet Avatar3700DTGS FTIR(Thermo Electron Corporation))分析により、1720.4cm
−1において、予期された強いアルデヒドカルボニル伸縮が見られた。生成物を97.7gの量の褐色液体として得た。
【0078】
B.3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸触媒の調製
3−メルカプトプロパン−1−スルホン酸のナトリウム塩を濃塩酸(35.7%、水性、200mL)に添加し、これをガラスビーカーにおいて磁気撹拌した。大気の水分の取り込みを防止するためにParafilm「M」(American National Can、Greenwich、CT)のシートで被覆した後、得られた白色結晶性スラリーを5分間撹拌し、次いで、中度フリットガラス漏斗上で濾過した。濾液を回転蒸発させて、8.88gの薄黄色の粘着性固体生成物を与え、これをさらに処理することなく触媒として用いた。
【0079】
C.フェノール化反応
ジシクロペンタジエンジアルデヒド(48.06g、0.25モル、補正なし)および溶融したフェノール(470.5g、5.0モル)を1Lのガラス製三ツ口丸底反応器に添加した。反応器に、両方ともClaisenアダプタを介して反応器に装着された室温(22℃)冷却器および温度計、加えて、頂部の窒素入口、機械的撹拌を付与するための変速モータに接続されたTeflon(商標)(E.I.du Pont de Nemours)製撹拌機翼を備えたガラス製撹拌軸、およびサーモスタット制御の加熱マントルをさらに取り付けた。
【0080】
頂部の窒素流(0.5L/分)を開始し、続いて加熱、次いで撹拌した。20分後、温度が65℃に達し、澄んだ淡黄色に着色した溶液を形成した。このとき、撹拌溶液内への、3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸(用いた触媒の合計は1.95gであり、ジシクロペンタジエンジアルデヒド反応体に対して0.05モル%)のアリコートの添加を開始した。触媒の最初のアリコート(0.39g)は、3分後に70℃までの最大発熱を誘発し、溶液を暗琥珀色にした。加熱マントルを反応器から除去し、ファンに係合させて、反応器外部を65℃まで冷却した。3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸の第2アリコート(0.22g)を添加し、冷却を継続した。触媒の第2アリコートは添加の1分後に66℃までの発熱を誘発し、さらに2分後に65℃まで冷却した。このとき、3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸の第3アリコート(0.35g)を添加し、2分後に68℃までの発熱を誘発した。さらに3分後、温度を65℃まで冷却し、冷却ファンを切った。3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸の第4アリコート(0.24g)を、反応温度を65℃に維持しながら添加した。5分後、3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸の第5アリコート(0.37g)を、反応温度を65℃に維持し、続いて次の5分で62.5℃まで降下させながら添加した。このとき、反応器外部の冷却を停止し、加熱マントルを反応器に戻して、3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸の最終アリコート(0.38g)を暗琥珀色に着色した溶液に添加した。反応温度を次の22.25時間の間65℃〜66℃に維持し、この間、反応の過程を、HPLC分析を介して追随した。Eclipse(登録商標)(Agilent)XDB−C8分析ガードカラム(5μ、4.6×12.5mm)を備えたZorbax Eclipse(登録商標)(Agilent)XDB−C8分析カラム(5μ、4.6×150mm)を用いたHewlett Packard 1090 Liquid Chromatographを使用した。カラムをクロマトグラフオーブンにおいて40℃で維持した。アセトニトリルおよび水(0.05%のo−リン酸水溶液で処理)を溶離液として用い、それぞれ、1分あたり1.000mLの速度でポンプを介して初めに70/30%の溶液として送達し、5分後に90/10%の溶液に変化させ、続く15分間そこで保持した。用いたアセトニトリルは、189nmのUVカットオフで、HPLCグレードであり、(ガスクロマトグラフィにより)100.0%の純度であった。用いたo−リン酸は、名目上85%の純度(実際の評価は85.1%)であった。用いた水は、HPLCグレードであった。サンプル分析に使用するダイオードアレイ検出器を225nmに設定し、リファレンスを550nmに設定した。反応の1.6時間後、HPLC分析により、ジシクロペンタジエンジアルデヒドが生成物の分布に完全に変換されたことが明らかになり、その後、生成物にほとんど変化がなかった。
【0081】
反応時間の終わりに、反応器の内容物を、それぞれが3Lの磁気撹拌した脱イオン(DI)水を含有する1対のビーカーに等しく分配した。75分後に撹拌を停止し、ビーカーの内容物を一晩静置させた。次の日、各ビーカーを500mLの体積までデカントし、デカントした水性生成物を廃棄物として廃棄した。両方のビーカーを新たな脱イオン水で再び満たして全体積を3.5Lとし、撹拌および加熱を50℃に達するまでに開始し、粘性糸状物の赤みがかった琥珀色に着色した生成物を各ビーカーの底に形成させた。撹拌および加熱を停止し、ビーカーの内容物を一晩静置させた。次の日、各ビーカーをデカントし、水性生成物を除去して廃棄物として廃棄した。沸騰した脱イオン水(1.5L)を、各ビーカーに残存する暗黄橙色に着色した生成物に添加し、沸点まで加熱しながら磁気撹拌を再開した。沸点に達したら、生成物スラリーが室温(20℃)まで冷却されるように加熱を停止して撹拌を続けた。室温に達したら、固体を、フィルタ紙を通したデカンテーションによって収集した。固体をセラミック皿に添加し、真空オーブンにおいて100℃で16時間乾燥し、取出し、微粉末に粉砕し、真空オーブンにおいてさらに6.5時間乾燥し、119.79gのジシクロペンタジエンポリフェノールをからし色に着色した粉末として得た。KBrペレットのFTIR分光光度分析により、1610.9(1595.7にショルダー)および1510.0cm
−1における強い芳香族環の吸収、ならびに3382.2cm
−1に集中した幅広の強いヒドロキシルO−H伸縮及び1226.7(1170.7にショルダー)cm
−1における幅広の強いC−O伸縮の出現と共に、1720.4cm
−1におけるアルデヒドカルボニル伸縮の完全な消失が見られた。HPLC分析により、得られたジシクロペンタジエンポリフェノールが、27.9、4.2、6.8、11.0、21.6および22.2面積%を含む6の主要成分による12の成分を含んだことが明らかになった。
【実施例2】
【0082】
ジシクロペンタジエンポリフェノールの調製のスケールアップ
A.フェノール化反応
実施例1からのジシクロペンタジエンジアルデヒド(144.19g、0.75モル、補正なし、1.50のアルデヒド当量、GC分析により97.3面積%のジアルデヒド)、および溶融したフェノール(1412g、15.0モル)を5Lのガラス製の三ツ口の丸底反応器に添加した。反応器に、両方ともClaisenアダプタを介して反応器に装着された周囲温度(22℃)冷却器および温度計、加えて、頂部の窒素入口、変速モータに接続されて機械的撹拌を提供するTeflon(商標)(E.I.du Pont de Nemours)製撹拌翼を備えたガラス製撹拌棒、ならびにサーモスタット制御の加熱マントルおよび1対の冷却ファンをさらに取り付けた。頂部の窒素流(1.0L/分)を開始し、続いて加熱、次いで撹拌した。温度が64℃に達したら、加熱マントルを反応器から除去し、次いで、澄んだ淡黄色に着色した撹拌溶液中への3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸(用いた触媒の合計は5.86gであり、ジシクロペンタジエンジアルデヒド反応体に対して0.05モル%であった)の滴加を開始した。3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸を、フェノール化反応の前に、上記実施例1Bにおいて与えた方法を用いて調製した。3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸の滴加の初めの33分の間、反応器温度は、1対のファンからの反応器外側の断続的な冷却により、63℃と65℃との間で自律していた。累積36分後に、温度が62℃に降下し、このとき、加熱マントルを用いて混合物を64℃〜65℃に加熱した。累積45分後に、最終滴の3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸を琥珀色に着色した溶液に添加した。反応温度を次の20.1時間の間64℃〜65℃に維持し、この間、反応過程をHPLC分析によって追随した。反応の3.4時間後、HPLC分析により、ジシクロペンタジエンジアルデヒドが生成物の分布に完全に変換されたことが明らかになり、19.6時間で採取したサンプルにおいて第2HPLC分析を実施したときの生成物とほとんど変わらなかった。
【0083】
B.生成物の単離および分析的特性決定
反応時間の終わりに、加熱を停止し、加熱マントルを除去し、1対のファンを用いて反応器の内容物の30℃までの冷却を完了した。撹拌を続けながら、DI水(3.5L)を反応器に添加した。2分後に撹拌を中止し、反応器の内容物を静置させ、3.5時間後、2つの別個の層に分けた。結果として得られた水層を取り出し、廃棄物として廃棄した。撹拌した反応器を新たなDI水(3.0L)で再び満たし、続いて5分間撹拌を継続し、続いて一晩静置した。翌日、水層を取り出して廃棄物として廃棄した。5分間撹拌しながら反応器を新たなDI水(3.0L)で再び満たし、続いて一晩静置した。翌日、水層を取り出して廃棄物として廃棄した。5分間撹拌しながら反応器を新たなDI水(3.3L)で再び満たし、続いて2.6時間静置した。水層を取り出して廃棄物として廃棄した。5分間撹拌しながら反応器を新たなDI水(3.5L)で再び満たし、続いて4時間静置した。水層を取り出して廃棄物として廃棄した。5分間撹拌しながら反応器を新たなDI水(3.5L)で再び満たし、続いて一晩静置した。水層を取り出した後、白色の粘着性の半固体が反応器に残存した。この生成物を含有する反応器全体を真空オーブンに置き、100℃で48時間、続いて135℃でさらに24時間乾燥した。結果として得られた粉末生成物は、387.55gを構成し、HPLC分析により、約8面積%の顕著な残存フェノールの存在が実証された。
【0084】
C.熱水抽出および分析的特性決定
単離した粉末生成物の部分(101.45g)を2Lのガラス製の三ツ口の丸底反応器にDI水(600mL)と併せて添加した。反応器に、両方ともClaisenアダプタを介して反応器に装着された周囲温度(22℃)冷却器および温度計、加えて、変速モータに接続されて機械的撹拌を提供するTeflon(商標)(E.I.du Pont de Nemours)製撹拌翼を備えたガラス製撹拌棒、およびサーモスタット制御の加熱マントルをさらに取り付けた。水中の粉末のスラリーの撹拌および加熱を開始した。74℃に達したら、粉末が溶けて粘性溶融物となった。加熱を95℃まで継続し、この時点で、溶融物の粘度が実質的に減少していた。撹拌および加熱を停止し、水層をデカントし、廃棄物として廃棄した。95℃まで加熱しながら、新たな1.5LのDI水部分を用いた第2および第3洗浄を完了し、続いて生成物を真空オーブンにおいて150℃で93.14gの一定重量まで乾燥した。HPLC分析により、22超の認識できる成分と併せて、残存フェノールが0.35面積%まで低下することを実証した。1面積%を超える全11成分を保持時間が次第に増大する順に列挙した:18.15(3.50分)、3.57(3.63分)、2.98(3.84分)、2.14(3.94分)、3.70(4.00分)、10.53(4.13分)、23.15(4.40分)、21.88(4.58分)、2.95(4.81分)、3.19(5.02分)、1.89(5.30分)。
【0085】
D.再現フェノール化(replicate phenolation)および処理順序
本実施例の項B(生成物の単離および分析的特性決定)において上記で示した方法を用いると、フェノール化反応の再現から結果として得られた粉末生成物の重量は392.78gであり、HPLC分析により、約11面積%の顕著な残存フェノールの存在が実証された。本実施例の項C(熱水抽出および分析的特性決定)において示した方法を用いた、単離された粉末生成物の部分(107.76g)の熱水抽出は、93.67gの乾燥生成物を与えた。HPLC分析により、22超の認識できる成分と併せて、残存フェノールが0.42面積%まで低下することを実証した。1面積%を超える全12成分を、保持時間が次第に増加する順に列挙した:17.52(3.50分)、3.42(3.63分)、2.83(3.84分)、2.32(3.94分)、3.69(4.00分)、9.70(4.13分)、22.94(4.40分)、21.53(4.58分)、2.99(4.80分)、2.61(5.02分)、2.61(5.13分)、1.18(5.51分)。
【0086】
E.質量分光分析
質量分光(MS)分析を、以下に示す、MS分析に用いられる重要な実験パラメータを用いて実施した:
エレクトロスプレー(ESI)陰イオンモード
直接注入
走査50〜1500μ、1.5秒/走査
10,000の公称分解能(Wモード)
キャピラリー1400ボルト、サンプルコーン60ボルト
リファレンスはLeucine Enkephalinであった
【0087】
ジシクロペンタジエンポリフェノールのサンプルをテトラヒドロフランに溶解して0.25重量%溶液を与え、これをメタノールによって約1:100までさらに希釈した。
【0088】
図1は、陰イオンモードにおけるジシクロペンタジエンポリフェノールの質量分光分析データを提供し、これは、m/z531.2521(ジシクロペンタジエンテトラフェノール(M−H
−)に等しい)、m/z577.2603(ジシクロペンタジエンテトラフェノール(M+ホルメート
−)に等しい)、およびm/z1063.5100(プロトンの損失後の2個のジシクロペンタジエンテトラフェノールの組み合わせである「インソース二量体(in-source dimer)」に等しい)においてシグナルを示した。
図2は、ジシクロペンタジエンテトラフェノールの元素組成を確認する、ジシクロペンタジエンポリフェノールの質量分光データを提供する。
【実施例3】
【0089】
ジシクロペンタジエンポリシアネートの合成
500mLの三ツ口のガラス製丸底反応器に、上記実施例2からの26.63gのジシクロペンタジエンポリフェノール(名目上0.20のヒドロキシル当量)、および無水アセトン(250mL、9.39mL/gのジシクロペンタジエンポリフェノール)を仕込んだ。反応器は、(0℃に維持された)冷却器、温度計、頂部の窒素入口(22℃で1L/分のN
2ガスを用いた)、および磁気撹拌をさらに具備した。溶液を撹拌しながら室温(22℃)にした。臭化シアン(22.67g、0.214モル、1.07:1の臭化シアン:ヒドロキシル当量比)を溶液に添加して溶解させた。冷却用のドライアイス−アセトン浴を反応器の下に置き、溶液を撹拌しながら−6℃に冷却した。トリエチルアミン(20.64g、0.204モル、1.02のトリエチルアミン:ヒドロキシル当量比)を、シリンジを用いてアリコートで反応器に添加し、これを−8℃〜−3℃の反応温度に維持した。トリエチルアミンの合計添加時間は22分であった。トリエチルアミン添加の5分後、淡琥珀色に着色した透明な溶液は、トリエチルアミン臭化水素酸塩の生成を示す淡黄色に着色したスラリーに変わった。−7℃〜−2℃における後反応の7分後、反応生成物のサンプルのHPLC分析により、24成分が明らかになり、存在する各成分が、ジシクロペンタジエンポリフェノール反応体のHPLC分析において観察されたものとは異なる保持時間を有した。
【0090】
−7℃〜−2℃における後反応の累積27分後に、生成物スラリーを、磁気撹拌した脱イオン水(400mL)およびジクロロメタン(250mL)を含むビーカーに添加した。撹拌の2分後、混合物を分離漏斗に添加し、静置させ、次いで、ジクロロメタン層を回収し、水層を廃棄物に廃棄した。ジクロロメタン溶液を分離漏斗に戻して添加し、新たな脱イオン水(初めは400mL、その後250mL)でさらに3回抽出した。結果として得られた濁ったジクロロメタン溶液を顆粒状の無水硫酸ナトリウム(25g)上で乾燥して澄んだ溶液を付与し、次いで、これに、サイドアーム付き真空フラスコに取り付けられた400mLの中度フリットガラス漏斗上に支持された無水硫酸ナトリウム床(100g)を通過させた。澄んだ淡黄色に着色した濾液を、55℃の最大油浴温度を用いて回転蒸発させ、揮発性物質のバルクを除去した。さらなる回転蒸発を0.4mmHgの真空に達するまで75℃で完了させた。次いで、固体粉末生成物を75℃の真空オーブンに置き、16時間乾燥した。合計23.14gの淡黄色固体生成物を回収した。ジシクロペンタジエンポリシアネートの臭化カリウムペレットのFTIR分析により、2265.2および2235.4cm
−1における強いシアネート基の吸収の出現と同時に、ヒドロキシル基の吸収の消失が明らかになった。HPLC分析により16の成分が明らかになり、主要な3成分が、27.9、24.0および31.8面積%を構成した。
【実施例4】
【0091】
ジシクロペンタジエンポリシアネートのホモポリトリアジンの合成
上記実施例3からのジシクロペンタジエンポリシアネートの部分(6.6mg)の示差走査熱量(DSC)分析を、35cm
3/分で流れる窒素ストリーム下に25℃から350℃まで7℃/分の加熱速度を用いて完了させた。該分析には、DSC2910Modulated DSC(TA Instruments)を用いた。溶融吸熱は検出されなかった。環化三量化に起因する単一の発熱が検出され、164.4ジュール/gのエンタルピーを伴って、開始値が162.6℃、中間点が262.3℃、終点が304.6℃であった。結果として得られたホモポリトリアジンの2回目走査により、271.1℃で少しの発熱が開始したことが明らかになった。3回目走査では、少しの発熱の開始が307.1℃にシフトした。DSC分析から回収したホモポリトリアジンは、透明な琥珀色に着色した剛性固体であった。
【0092】
比較実験1−ビスフェノールAジシアネートのホモポリトリアジンの合成
ビスフェノールAジシアネート(10.1mg)のDSC分析を、35cm
3/分で流れる窒素ストリーム下に25℃から350℃まで7℃/分の加熱速度を用いて完了させた。溶融に起因する単一の鋭い溶融吸熱が検出され、98.7ジュール/gのエンタルピーを伴って、中間点が83.0℃であった。環化三量化に起因する単一の発熱が検出され、588.9ジュール/gのエンタルピーを伴って、開始値が244.1℃、中間点が320.7℃、終点が352.6℃であった。結果として得られたホモポリトリアジンの2回目走査により、少しのさらなる発熱が319.9℃で開始したことが明らかになった(注:150℃で始まる漸進的な発熱シフトが存在した)。3回目走査により、209.8℃で発熱が開始し、より明白な発熱シフトが320.4℃で開始したことが明らかになった。DSC分析から回収したホモポリトリアジンは、透明な淡琥珀色に着色した剛性固体であった。
【実施例5】
【0093】
ジシクロペンタジエンポリシアネートのホモポリトリアジンの澄んだ非充填鋳物の調製
上記実施例3からのジシクロペンタジエンポリシアネート(0.5g)をアルミニウム皿に添加し、100℃に予備加熱したオーブン内に置いた。1時間後、固体のジシクロペンタジエンポリシアネートを含有する皿を150℃のオーブンに移し、そこで1時間保持した。150℃で23分後、ジシクロペンタジエンポリシアネートは均質な液体であった。次いで生成物を200℃で1時間、250℃で1時間、最後に300℃で1時間保持し、続いて室温(22℃)まで徐冷した。ポリトリアジン生成物は、透明な琥珀色に着色した剛性固体であった。生成物の一部分(18.9mg)のDSC分析により、295.7℃のガラス転移温度が明らかになった。
【0094】
比較実験2−ビスフェノールAジシアネートのホモポリトリアジンの澄んだ非充填鋳物の調製
ビスフェノールAジシアネート(0.5g)を用いて実施例5の方法を繰り返した。ビスフェノールAジシアネートが100℃のオーブン内にあるときに均質な液体となることが分かった。ポリトリアジン生成物は、透明な黄色に着色した剛性固体であった。生成物の一部分(19.5mg)のDSC分析により、275.7℃の温度で、強いガラス転移が明らかになった。