(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記2つの拡張エクステントの間に連続して配置されたメインビュー・エクステントとサブビュー・エクステントとの対の数は、前記2つの拡張エクステントの間のジャンプ距離が所定の閾値を超えないように決定されている
ことを特徴とする、請求項1に記載の記録媒体。
前記必要な情報は、前記更に高い解像度の値、前記メインビューの解像度を上げる際に利用される補間の方式、及び、前記補間が行われた後の前記メインビューと前記更に高い解像度の映像との間の差分データを含む、請求項4に記載の記録媒体。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0021】
《実施形態1》
図1は、本発明の実施形態1による記録媒体を使用するホームシアター・システムを示す模式図である。このホームシアター・システムは、1920画素×1080画素(以下、フルHD(full High Definition)という。)の2D映像と3D映像とに加え、4K2Kの2D映像を表示可能である。
図1を参照するに、このホームシアター・システムは記録媒体101を再生対象とし、再生装置102、表示装置103、シャッター眼鏡104、及びリモコン105を含む。
【0022】
記録媒体101は読み出し専用ブルーレイ・ディスク(登録商標)(BD:Blu−ray Disc)、すなわちBD−ROMディスクである。BD−ROMディスク101は映画コンテンツを格納している。このコンテンツは、フルHDの2D映像を表すビデオ・ストリーム、3D映像を表すビデオ・ストリーム、及び4K2Kの2D映像を表すビデオ・ストリームを含む。それらのビデオ・ストリームはエクステント単位でBD−ROMディスク101上に配置され、後述のファイル構造を利用してアクセスされる。
【0023】
再生装置102はBD−ROMドライブ121を搭載している。BD−ROMドライブ121はBD−ROM方式に準拠の光ディスクドライブである。再生装置102はBD−ROMドライブ121を利用して、BD−ROMディスク101からコンテンツを読み込む。再生装置102は更にそのコンテンツを映像データ/音声データに復号する。ここで、再生装置102はそのコンテンツを、フルHDの2D映像、3D映像、及び4K2Kの2D映像とのいずれとしても再生可能である。以下、フルHDの2D映像を再生するときの再生装置102の動作モードを「2D再生モード」といい、3D映像を再生するときの再生装置102の動作モードを「3D再生モード」といい、4K2Kの2D映像を再生するときの再生装置102の動作モードを「拡張再生モード」という。
【0024】
再生装置102はHDMI(High−Definition Multimedia Interface)ケーブル122で表示装置103に接続されている。再生装置102は映像データ/音声データをHDMI方式の映像信号/音声信号に変換し、HDMIケーブル122を通して表示装置103に伝送する。再生装置102は更に、HDMIケーブル122を通して表示装置103との間でCECメッセージを交換する。それにより、再生装置102は、3D映像の再生及び4K2Kの映像の再生に対応可能か否かを表示装置103に問い合わせることができる。
【0025】
表示装置103は液晶ディスプレイである。表示装置103は、映像信号に従って画面131上に映像を表示し、音声信号に従って内蔵のスピーカから音声を発生させる。表示装置103は3D映像の再生に対応可能である。2D映像の再生時、画面131上にはレフトビュー又はライトビューのいずれか一方が表示される。3D映像の再生時、画面131上にはレフトビューとライトビューとが交互に表示される。
【0026】
表示装置103は左右信号送信部132を含む。左右信号送信部132は左右信号LRを赤外線又は無線でシャッター眼鏡104へ送出する。左右信号LRは、現時点で画面131に表示される映像がレフトビューとライトビューとのいずれであるのかを示す。3D映像の再生時、表示装置103は、映像信号に付随する制御信号からレフトビュー・フレームとライトビュー・フレームとを識別することによってフレームの切り換えを検知する。表示装置103は更に左右信号送信部132に、検知されたフレームの切り換えに同期して左右信号LRを変化させる。
【0027】
シャッター眼鏡104は2枚の液晶表示パネル141L、141Rと左右信号受信部142とを含む。各液晶表示パネル141L、141Rは左右の各レンズ部分を構成している。左右信号受信部142は左右信号LRを受信し、その変化に応じて左右の液晶表示パネル141L、141Rに信号を送る。各液晶表示パネル141L、141Rはその信号に応じて、光をその全体で一様に透過させ、又は遮断する。特に左右信号LRがレフトビューの表示を示すとき、左目側の液晶表示パネル141Lは光を透過させ、右目側の液晶表示パネル141Rは光を遮断する。左右信号LRがライトビューの表示を示すときはその逆である。このように、2枚の液晶表示パネル141L、141Rはフレームの切り換えと同期して交互に光を透過させる。その結果、視聴者がシャッター眼鏡104をかけて画面131を見たとき、レフトビューはその視聴者の左目だけに映り、ライトビューはその右目だけに映る。そのとき、その視聴者には、各目に映る映像間の違いが同じ立体的物体に対する両眼視差として知覚されるので、その映像が立体的に見える。
【0028】
リモコン105は操作部と送信部とを含む。操作部は複数のボタンを含む。各ボタンは、電源のオンオフ、又は、BD−ROMディスク101の再生開始若しくは停止等、再生装置102又は表示装置103の各機能に対応付けられている。操作部はユーザによる各ボタンの押下を検出し、そのボタンの識別情報を信号で送信部に伝える。送信部はその信号を赤外線又は無線による信号IRに変換して再生装置102又は表示装置103へ送出する。一方、再生装置102と表示装置103とはそれぞれ、その信号IRを受信し、その信号IRの示すボタンを特定し、そのボタンに対応付けられた機能を実行する。こうして、ユーザは再生装置102又は表示装置103を遠隔操作できる。
【0029】
<BD−ROMディスク上のデータ構造>
図2は、BD−ROMディスク101上のデータ構造を示す模式図である。
図2を参照するに、BD−ROMディスク101上のデータ記録領域の最内周部にはBCA(Burst Cutting Area)201が設けられている。BCAに対してはBD−ROMドライブ121によるアクセスのみが許可され、アプリケーション・プログラムによるアクセスは禁止される。それにより、BCA201は著作権保護技術に利用される。BCA201よりも外側のデータ記録領域では内周から外周へ向けてトラックが螺旋状に延びている。
図2にはトラック202が模式的に横方向に引き伸ばされて描かれている。その左側はディスク101の内周部を表し、右側は外周部を表す。
図2に示されているように、トラック202は内周から順に、リードイン領域202A、ボリューム領域202B、及びリードアウト領域202Cを含む。リードイン領域202AはBCA201のすぐ外周側に設けられている。リードイン領域202Aは、ボリューム領域202Bに記録されたデータのサイズ及び物理アドレス等、BD−ROMドライブ121によるボリューム領域202Bへのアクセスに必要な情報を含む。リードアウト領域202Cはデータ記録領域の最外周部に設けられ、ボリューム領域202Bの終端を示す。ボリューム領域202Bは、映像及び音声等のアプリケーション・データを含む。
【0030】
ボリューム領域202Bは「セクタ」と呼ばれる小領域202Dに分割されている。セクタのサイズは共通であり、例えば2048バイトである。各セクタ202Dにはボリューム領域202Bの先端から順に通し番号が振られている。この通し番号は論理ブロック番号(LBN)と呼ばれ、BD−ROMディスク101上の論理アドレスに利用される。BD−ROMディスク101からのデータの読み出しでは、宛先のセクタのLBNが指定されることによって読み出し対象のデータが特定される。こうして、ボリューム領域202Bはセクタ単位でアクセス可能である。更に、BD−ROMディスク101上では論理アドレスが物理アドレスと実質的に等しい。特に、LBNが連続している領域では物理アドレスも実質的に連続している。従って、BD−ROMドライブ121は、LBNが連続しているセクタからデータを、その光ピックアップにシークを行わせることなく連続して読み出すことができる。
【0031】
ボリューム領域202Bに記録されたデータは所定のファイルシステムを利用して管理される。そのファイルシステムとしてはUDF(Universal Disc Format)が採用されている。そのファイルシステムはその他にISO9660であってもよい。そのファイルシステムに従い、ボリューム領域202Bに記録されたデータはディレクトリ/ファイル形式で表現される(詳細は《補足》参照)。すなわち、それらのデータはディレクトリ単位又はファイル単位でアクセス可能である。
【0032】
図2を更に参照するに、ボリューム領域202Bには、インデックス・ファイル211、AV(audio-visual)ストリーム・ファイル220、クリップ情報ファイル230、プレイリスト・ファイル240、及びBDプログラム・ファイル250が記録されている。AVストリーム・ファイル220は、ファイル2D221、ファイル・ディペンデント(以下、ファイルDEPと略す。)222、立体視インターリーブド・ファイル(SSIF:Stereoscopic Interleaved File。以下、ファイルSSと略す。)223、及び拡張ストリーム・ファイル224を含む。クリップ情報ファイル230は、2Dクリップ情報ファイル231、ディペンデントビュー(DEP)クリップ情報ファイル232、及び拡張クリップ情報ファイル233を含む。プレイリスト・ファイル240は、2Dプレイリスト・ファイル241、3Dプレイリスト・ファイル242、及び拡張プレイリスト・ファイル243を含む。BDプログラム・ファイル250は、ムービー(MV:Movie)オブジェクト・ファイル251、BD−J(BD Java(登録商標))オブジェクト・ファイル252、及びJavaアーカイブ(JAR:Java Archive)ファイル253を含む。
【0033】
「インデックス・ファイル」211は、BD−ROMディスク101に記録されたコンテンツの全体を管理するための情報である。その情報は特に、そのコンテンツを再生装置102に認識させるための情報、及びインデックス・テーブルを含む。インデックス・テーブルは、そのコンテンツを構成するタイトルとBDプログラム・ファイルとの間の対応表である。「BDプログラム・ファイル」は、再生装置102の動作を制御するためのプログラムである「オブジェクト」を格納したファイルである。オブジェクトの種類にはMVオブジェクトとBD−Jオブジェクトとがある。
【0034】
AVストリーム・ファイル220は、BD−ROMディスク101上に記録された映像コンテンツの実体のうち、ファイルシステムの定めるファイル形式に整えられたものをいう。ここで、映像コンテンツの実体とは一般に、映像・音声・字幕等を表す各種のストリーム・データ、すなわちエレメンタリ・ストリームが多重化されたストリーム・データを意味する。多重化ストリーム・データの種類には、メイン・トランスポート・ストリーム(TS)、サブTS、及び拡張ストリームがある。
【0035】
「メインTS」は、プライマリ・ビデオ・ストリームとしてベースビュー・ビデオ・ストリームを含む多重化ストリーム・データをいう。「ベースビュー・ビデオ・ストリーム」は、単独で再生可能であって、フルHDの2D映像を表すビデオ・ストリームをいう。尚、ベースビューは「メインビュー」ともいう。
【0036】
「サブTS」は、プライマリ・ビデオ・ストリームとしてディペンデントビュー・ビデオ・ストリームを含む多重化ストリーム・データをいう。「ディペンデントビュー・ビデオ・ストリーム」は、その再生にベースビュー・ビデオ・ストリームを必要とし、そのベースビュー・ビデオ・ストリームとの組み合わせで3D映像を表すビデオ・ストリームをいう。尚、ディペンデントビューは「サブビュー」ともいう。ディペンデントビュー・ビデオ・ストリームの種類には、ライトビュー・ビデオ・ストリーム、レフトビュー・ビデオ・ストリーム、及びデプスマップ・ストリームがある。「ライトビュー・ビデオ・ストリーム」は、ベースビュー・ビデオ・ストリームの表す2D映像が再生装置によって3D映像のレフトビューとして利用されるとき、その3D映像のライトビューを表すビデオ・ストリームとして利用される。「レフトビュー・ビデオ・ストリーム」は、ベースビュー・ビデオ・ストリームの表す2D映像が再生装置によって3D映像のライトビューとして利用されるとき、その3D映像のレフトビューを表すビデオ・ストリームとして利用される。「デプスマップ・ストリーム」は、ベースビュー・ビデオ・ストリームの表す2D映像が再生装置によって仮想的な2D画面への3D映像の射影として利用されるとき、その3D映像のデプスマップを表すストリーム・データとして利用される(詳細は<変形例>参照)。3D再生モードの再生装置102がディペンデントビュー・ビデオ・ストリームとしてライトビュー・ビデオ・ストリーム(又はレフトビュー・ビデオ・ストリーム)を利用するとき、その動作モードを「レフト/ライト(L/R)モード」という。一方、3D再生モードの再生装置102がディペンデントビュー・ビデオ・ストリームとしてデプスマップ・ストリームを利用するとき、その動作モードをデプス・モードという。
【0037】
「拡張ストリーム」は、ベースビュー・ビデオ・ストリームの表すフルHDの2D映像を4K2Kの2D映像に拡張するために必要な情報を含む多重化ストリーム・データをいう。
【0038】
「ファイル2D」221は、2D再生モードの再生装置102に利用されるAVストリーム・ファイルであって、メインTSを含むものをいう。「ファイルDEP」222は、サブTSを含むAVストリーム・ファイルをいう。「ファイルSS」223は、3D再生モードの再生装置102に利用されるAVストリーム・ファイルであって、メインTSとサブTSとの両方を含む。「拡張ストリーム・ファイル」224は、拡張再生モードの再生装置102に利用されるAVストリーム・ファイルであって、拡張ストリームを含む。
【0039】
ファイルSS223は、メインTSをファイル2D221と共有し、サブTSをファイルDEP222と共有する。すなわち、BD−ROMディスク101のファイルシステムでは、メインTSはファイルSS223とファイル2D221とのいずれとしてもアクセス可能であり、サブTSはファイルSS223とファイルDEP222とのいずれとしてもアクセス可能である。
【0040】
「クリップ情報ファイル」230は、ファイル2D221、ファイルDEP222、及び拡張ストリーム・ファイル224と一対一に対応付けられたファイルであって、特に各ファイル221、222、224のエントリ・マップを含むものをいう。「エントリ・マップ」は、ファイル2D221、ファイルDEP222、又は拡張ストリーム・ファイル224の表す各シーンの表示時間と、そのシーンが記録された各ファイル221、222、224内のアドレスとの間の対応表である。「2Dクリップ情報ファイル」231はファイル2D221に対応付けられ、「DEPクリップ情報ファイル」232はファイルDEP222に対応付けられ、「拡張クリップ情報ファイル」233は拡張ストリーム・ファイル224に対応付けられている。
【0041】
「プレイリスト・ファイル」240は、AVストリーム・ファイル220の再生経路を規定するファイルをいう。「再生経路」とは、AVストリーム・ファイル220の再生対象の部分とその再生順序との間の対応関係をいう。「2Dプレイリスト・ファイル」241はファイル2D221の再生経路を規定する。「3Dプレイリスト・ファイル」242は、2D再生モードの再生装置102に対してはファイル2D221の再生経路を規定し、3D再生モードの再生装置102に対してはファイルSS223の再生経路を規定する。「拡張プレイリスト・ファイル」243は、2D再生モードの再生装置102に対してはファイル2D221の再生経路を規定し、拡張再生モードの再生装置102に対してはファイル2D221と拡張ストリーム・ファイル224との各再生経路を規定する。
【0042】
MVオブジェクト・ファイル251は一般に複数のMVオブジェクトを含む。各MVオブジェクトはナビゲーション・コマンドの列を含む。ナビゲーション・コマンドは、一般的なDVDプレーヤによる再生処理と同様な再生処理を再生装置102に実行させるための制御指令である。ナビゲーション・コマンドの種類には、例えば、タイトルに対応するプレイリスト・ファイルの読み出し命令、プレイリスト・ファイルの示すAVストリーム・ファイルの再生命令、及び別のタイトルへの遷移命令がある。ナビゲーション・コマンドはインタプリタ型言語で記述され、再生装置102に組み込まれたインタプリタ、すなわちジョブ制御プログラムによって解読され、その制御部に所望のジョブを実行させる。ナビゲーション・コマンドはオペコードとオペランドとから成る。オペコードは、タイトルの分岐と再生及び演算等、再生装置102に実行させるべき操作の種類を示す。オペランドは、タイトル番号等、その操作の対象の識別情報を示す。再生装置102の制御部は、例えばユーザの操作に応じて各MVオブジェクトを呼び出し、そのMVオブジェクトに含まれるナビゲーション・コマンドを列の順に実行する。それにより、再生装置102は一般的なDVDプレーヤと同様に、まず表示装置103にメニューを表示してユーザにコマンドを選択させる。再生装置102は次に、選択されたコマンドに応じて、タイトルの再生開始/停止、及び別のタイトルへの切り換え等、再生される映像の進行を動的に変化させる。
【0043】
BD−Jオブジェクト・ファイル252はBD−Jオブジェクトを1つ含む。BD−Jオブジェクトはバイトコード・プログラムであり、再生装置102に実装されたJava仮想マシンにタイトルの再生処理及びグラフィックス映像の描画処理を実行させる。BD−Jオブジェクトは、Java言語等のコンパイラ型言語で記述されている。BD−Jオブジェクトはアプリケーション管理テーブルと参照対象のプレイリスト・ファイルの識別情報とを含む。「アプリケーション管理テーブル」は、Java仮想マシンに実行させるべきJavaアプリケーション・プログラムとその実行時期、すなわちライフサイクルとの対応表である。「参照対象のプレイリスト・ファイルの識別情報」は、再生対象のタイトルに対応するプレイリスト・ファイルを識別するための情報である。Java仮想マシンはユーザの操作又はアプリケーション・プログラムに従って各BD−Jオブジェクトを呼び出し、そのBD−Jオブジェクトに含まれるアプリケーション管理テーブルに従ってJavaアプリケーション・プログラムを実行する。それにより、再生装置102は、再生される各タイトルの映像の進行を動的に変化させ、又は、表示装置103にグラフィックス映像をタイトルの映像とは独立に表示させる。
【0044】
JARファイル253は、BD−Jオブジェクトの示すアプリケーション管理テーブルに従って実行されるべきJavaアプリケーション・プログラムの本体を一般に複数含む。「Javaアプリケーション・プログラム」は、BD−Jオブジェクトと同様、Java言語等のコンパイラ型言語で記述されたバイトコード・プログラムである。Javaアプリケーション・プログラムの種類には、Java仮想マシンにタイトルの再生処理を実行させるもの、及びJava仮想マシンにグラフィックス映像の描画処理を実行させるものが含まれる。JARファイル261はJavaアーカイブ・ファイルであり、再生装置102に読み込まれたときにその内部のメモリで展開される。それにより、そのメモリの中にJavaアプリケーション・プログラムが格納される。
【0045】
≪多重化ストリーム・データの構造≫
図3の(a)は、BD−ROMディスク101上のメインTSに多重化されたエレメンタリ・ストリームの一覧表である。メインTSはMPEG−2トランスポート・ストリーム(TS)形式のデジタル・ストリームであり、
図2に示されているファイル2D221に含まれる。
図3の(a)を参照するに、メインTSはプライマリ・ビデオ・ストリーム301とプライマリ・オーディオ・ストリーム302A、302Bとを含む。メインTSはその他に、プレゼンテーション・グラフィックス(PG)ストリーム303A、303B、インタラクティブ・グラフィックス(IG)ストリーム304、セカンダリ・オーディオ・ストリーム305、及びセカンダリ・ビデオ・ストリーム306を含んでもよい。
【0046】
プライマリ・ビデオ・ストリーム301は映画の主映像を表し、セカンダリ・ビデオ・ストリーム306は副映像を表す。ここで、主映像とは、映画の本編の映像等、コンテンツの主要な映像を意味し、例えば画面全体に表示されるものを指す。一方、副映像とは、例えば主映像の中に小さな画面で表示される映像のように、ピクチャ・イン・ピクチャ方式を利用して主映像と同時に画面に表示される映像を意味する。プライマリ・ビデオ・ストリーム301とセカンダリ・ビデオ・ストリーム306とはいずれもベースビュー・ビデオ・ストリームである。各ビデオ・ストリーム301、306は、MPEG−2、MPEG−4 AVC、又はSMPTE VC−1等の動画圧縮符号化方式で符号化されている。それにより、各ビデオ・ストリーム301、306に含まれるビデオ・フレームはそれぞれ1枚のピクチャに圧縮される。ここで、「ビデオ・フレーム」は画素データの2次元配列であり、その配列のサイズはフレームの解像度に等しい。例えばフルHDのビデオ・フレームは1920×1080の2次元配列である。1組の画素データは色座標値とα値(不透明度)との組み合わせから成る。色座標値は8ビットのRGB値又はYCrCb値で表される。α値も8ビットで表される。
【0047】
プライマリ・オーディオ・ストリーム302A、302Bは映画の主音声を表す。ここで、2つのプライマリ・オーディオ・ストリーム302A、302Bの間では言語が異なる。セカンダリ・オーディオ・ストリーム305は、対話画面の操作に伴う効果音等、主音声と重ね合わされるべき(ミキシングされるべき)副音声を表す。各オーディオ・ストリーム302A、302B、305は、AC−3、ドルビー・デジタル・プラス(Dolby Digital Plus:「ドルビー・デジタル」は登録商標)、MLP(Meridian Lossless Packing:登録商標)、DTS(Digital Theater System:登録商標)、DTS−HD、又はリニアPCM(Pulse Code Modulation)等の方式で符号化されている。それにより、各オーディオ・ストリーム302A、302B、305に含まれるオーディオ・フレームは個別に圧縮される。
【0048】
各PGストリーム303A、303Bは、グラフィックスによる字幕等、プライマリ・ビデオ・ストリーム301の表す映像に重ねて表示されるべきグラフィックス映像を表す。2つのPGストリーム303A、303Bの間では、例えば字幕の言語が異なる。IGストリーム304は、表示装置103の画面131上に対話画面を構成するためのグラフィックス・ユーザインタフェース(GUI)用のグラフィックス部品及びその配置を表す。
【0049】
エレメンタリ・ストリーム301−306はパケット識別子(PID)によって識別される。PIDの割り当ては例えば次のとおりである。1つのメインTSはプライマリ・ビデオ・ストリームを1本のみ含むので、プライマリ・ビデオ・ストリーム301には16進数値0x1011が割り当てられる。1つのメインTSに他のエレメンタリ・ストリームが種類ごとに最大32本まで多重化可能であるとき、プライマリ・オーディオ・ストリーム302A、302Bには0x1100から0x111Fまでのいずれかが割り当てられる。PGストリーム303A、303Bには0x1200から0x121Fまでのいずれかが割り当てられる。IGストリーム304には0x1400から0x141Fまでのいずれかが割り当てられる。セカンダリ・オーディオ・ストリーム305には0x1A00から0x1A1Fまでのいずれかが割り当てられる。セカンダリ・ビデオ・ストリーム306には0x1B00から0x1B1Fまでのいずれかが割り当てられる。
【0050】
図3の(b)は、BD−ROMディスク101上のサブTSに多重化されたエレメンタリ・ストリームの一覧表の一例である。サブTSはMPEG−2 TS形式の多重化ストリーム・データであり、
図2に示されているファイルDEP222に含まれる。
図3の(b)を参照するに、サブTSはプライマリ・ビデオ・ストリーム311を含む。サブTSはその他に、レフトビューPGストリーム312A、312B、ライトビューPGストリーム313A、313B、レフトビューIGストリーム314、ライトビューIGストリーム315、及びセカンダリ・ビデオ・ストリーム316を含んでもよい。プライマリ・ビデオ・ストリーム311はライトビュー・ビデオ・ストリームであり、メインTS内のプライマリ・ビデオ・ストリーム301が3D映像のレフトビューを表すとき、その3D映像のライトビューを表す。レフトビューとライトビューとのPGストリームの対312A+313A、312B+313Bは、字幕等のグラフィックス映像を3D映像として表示するときにそのレフトビューとライトビューとの対を表す。レフトビューとライトビューとのIGストリームの対314、315は、対話画面のグラフィックス映像を3D映像として表示するときにそのレフトビューとライトビューとの対を表す。セカンダリ・ビデオ・ストリーム316はライトビュー・ビデオ・ストリームであり、メインTS内のセカンダリ・ビデオ・ストリーム306が3D映像のレフトビューを表すとき、その3D映像のライトビューを表す。
【0051】
エレメンタリ・ストリーム311−316に対するPIDの割り当ては例えば次のとおりである。プライマリ・ビデオ・ストリーム311には0x1012が割り当てられる。1つのサブTSに他のエレメンタリ・ストリームが種類別に最大32本まで多重化可能であるとき、レフトビューPGストリーム312A、312Bには0x1220から0x123Fまでのいずれかが割り当てられ、ライトビューPGストリーム313A、313Bには0x1240から0x125Fまでのいずれかが割り当てられる。レフトビューIGストリーム314には0x1420から0x143Fまでのいずれかが割り当てられ、ライトビューIGストリーム315には0x1440から0x145Fまでのいずれかが割り当てられる。セカンダリ・ビデオ・ストリーム316には0x1B20から0x1B3Fまでのいずれかが割り当てられる。
【0052】
図3の(c)は、BD−ROMディスク101上のサブTSに多重化されたエレメンタリ・ストリームの一覧表の別例である。
図3の(c)を参照するに、サブTSはプライマリ・ビデオ・ストリーム321を含む。サブTSはその他に、デプスマップPGストリーム323A、323B、デプスマップIGストリーム324、及びセカンダリ・ビデオ・ストリーム326を含んでもよい。プライマリ・ビデオ・ストリーム321はデプスマップ・ストリームであり、メインTS内のプライマリ・ビデオ・ストリーム301との組み合わせで3D映像を表す。デプスマップPGストリーム323A、323Bは、メインTS内のPGストリーム303A、303Bの表す2D映像が仮想的な2D画面への3D映像の射影として利用されるとき、その3D映像のデプスマップを表すPGストリームとして利用される。デプスマップIGストリーム324は、メインTS内のIGストリーム304の表す2D映像が仮想的な2D画面への3D映像の射影として利用されるとき、その3D映像のデプスマップを表すIGストリームとして利用される。セカンダリ・ビデオ・ストリーム326はデプスマップ・ストリームであり、メインTS内のセカンダリ・ビデオ・ストリーム306との組み合わせで3D映像を表す。
【0053】
エレメンタリ・ストリーム321−326に対するPIDの割り当ては例えば次のとおりである。プライマリ・ビデオ・ストリーム321には0x1013が割り当てられる。1つのサブTSに他のエレメンタリ・ストリームが種類別に最大32本まで多重化可能であるとき、デプスマップPGストリーム323A、323Bには0x1260から0x127Fまでのいずれかが割り当てられる。デプスマップIGストリーム324には0x1460から0x147Fまでのいずれかが割り当てられる。セカンダリ・ビデオ・ストリーム326には0x1B40から0x1B5Fまでのいずれかが割り当てられる。
【0054】
図3の(d)は、BD−ROMディスク101上の拡張ストリームに多重化されたエレメンタリ・ストリームの一覧表である。
図3の(d)を参照するに、拡張ストリームは解像度拡張情報331を含む。解像度拡張情報331は、メインTS内のプライマリ・ビデオ・ストリーム301に含まれるフルHDのビデオ・フレームをそれぞれ、4K2Kのビデオ・フレームに拡張するために必要な情報である。解像度拡張情報331にはPIDとして0x1014が割り当てられる。
【0055】
図4の(a)は、解像度拡張情報のデータ構造を示す表である。
図4の(a)を参照するに、解像度拡張情報は、各ビデオ・フレームについて、拡張後の解像度401、補間方式402、及び差分画素情報403を含む。拡張後の解像度401は4K2Kの解像度を示す。補間方式402は、フルHDのビデオ・フレームに含まれる画素データの数を、4K2Kのビデオ・フレームに含まれる画素データの数まで増加させるのに利用される補間方式を示す。その補間方式には、バイキュービック方式、及びバイリニア方式が含まれる。差分画素情報403は、フルHDのビデオ・フレームから補間によって得られる画素データと、本来の4K2Kのビデオ・フレームにおける画素データとの間の差分を表す。画素データがYCrCb値で表される場合、差分画素情報403は、輝度成分Yの差Y_d、赤色差成分Crの差Cr_d、青色差成分Cbの差Cb_d、及び不透明度αの差α_dを含む。
【0056】
図4の(b)は、フルHDのビデオ・フレームを4K2Kのビデオ・フレームへ拡張する処理における解像度拡張情報の役割を示す模式図である。その処理には、次の2つのステップが必要である。第1のステップ410では、フルHDのビデオ・フレームに含まれる画素データ411の間に新たな画素データ412が補間によって補われる。それにより、画素データの総数が、4K2Kのビデオ・フレームに含まれる画素データの数まで増加する。拡張後の解像度401は、増加後の画素データの数を解像度で規定する。補間方式402は、第1のステップで利用される補間方式を規定する。第2のステップでは、補間によって得られるビデオ・フレームの各画素データ411、412に差分画素情報403が加算される。その結果、本来の4K2Kのビデオ・フレームに含まれる各画素データ413が再現される。
【0057】
図5は、多重化ストリーム・データ500内でのTSパケットの配置を示す模式図である。このパケット構造は、メインTS、サブTS、及び拡張ストリームの間で共通である。多重化ストリーム・データ500内では各エレメンタリ・ストリーム501、502、503、504はTSパケット521、522、523、524の列に変換されている。例えばビデオ・ストリーム501では、まず、各ビデオ・フレーム501Aが1つのPES(Packetized Elementary Stream)パケット511に変換される。次に、各PESパケット511が一般に複数のTSパケット521に変換される。同様に、オーディオ・ストリーム502、PGストリーム503、及びIGストリーム504はそれぞれ、一旦PESパケット512、513、514の列に変換された後、TSパケット522、523、524の列に変換される。最後に、各エレメンタリ・ストリーム501、502、503、504から得られたTSパケット521、522、523、524が1本のストリーム・データ500に時分割で多重化される。
【0058】
図6の(b)は、多重化ストリーム・データを構成するTSパケット列の形式を示す模式図である。各TSパケット601は188バイト長のパケットである。
図6の(b)を参照するに、各TSパケット601は、TSペイロード601Pとアダプテーション(adaptation)フィールド(以下、ADフィールドと略す。)601Aとの少なくともいずれか、及びTSヘッダ601Hを含む。TSペイロード601PとADフィールド601Aとは、両方を合わせて184バイト長のデータ領域である。TSペイロード601PはPESパケットの格納領域として利用される。
図5に示されているPESパケット511−514はそれぞれ、一般に複数の部分に分割され、各部分が異なるTSペイロード601Pに格納される。ADフィールド601Aは、TSペイロード601Pのデータ量が184バイトに満たないときにスタッフィング・バイト(すなわちダミー・データ)を格納するための領域である。ADフィールド601Aはその他に、TSパケット601が例えば後述のPCRであるときに、その情報の格納領域として利用される。TSヘッダ601Hは4バイト長のデータ領域である。
【0059】
図6の(a)は、TSヘッダ601Hのデータ構造を示す模式図である。
図6の(a)を参照するに、TSヘッダ601Hは、TS優先度611、PID612、及びADフィールド制御613を含む。PID612は、同じTSパケット601内のTSペイロード601Pに格納されたデータの属するエレメンタリ・ストリームのPIDを示す。TS優先度611は、PID612の示す値が共通するTSパケット群の中でのTSパケット601の優先度を示す。ADフィールド制御613は、TSパケット601内でのADフィールド601AとTSペイロード601Pとのそれぞれの有無を示す。
【0060】
図6の(c)は、多重化ストリーム・データのTSパケット列から構成されたソースパケット列の形式を示す模式図である。
図6の(c)を参照するに、各ソースパケット602は192バイト長のパケットであり、
図6の(b)に示されているTSパケット601の1つと4バイト長のヘッダ602Hとを含む。TSパケット601がBD−ROMディスク101に記録されるとき、そのTSパケット601にヘッダ602Hが付与されることによってソースパケット602は構成される。ヘッダ602HはATS(Arrival_Time_Stamp)を含む。「ATS」は時刻情報であり、再生装置102内のシステム・ターゲット・デコーダによって次のように利用される。ここで、「システム・ターゲット・デコーダ」は、多重化ストリーム・データをエレメンタリ・ストリームごとに復号する装置をいう:ソースパケット602がBD−ROMディスク101からシステム・ターゲット・デコーダへ送られたとき、システム・ターゲット・デコーダはそのソースパケット602からTSパケット602Pを抽出してPIDフィルタへ転送する。システム・ターゲット・デコーダはその転送を、「ATC(Arrival Time Clock)」という内部クロックの値が、そのソースパケット602のヘッダ602Hの示すATSに一致した時点で行う。システム・ターゲット・デコーダと、それによるATSの利用との詳細については後述する。
【0061】
図6の(d)は、一連のソースパケット602が連続的に記録されたBD−ROMディスク101のボリューム領域202B上のセクタ群の模式図である。
図6の(d)を参照するに、一連のソースパケット602は32個ずつ、3つの連続するセクタ621、622、623に記録されている。これは、32個のソースパケットのデータ量192バイト×32=6144バイトが3つのセクタの合計サイズ2048バイト×3=6144バイトに等しいことに因る。このように、3つの連続するセクタ621、622、623に記録された32個のソースパケット602を「アラインド・ユニット(Aligned Unit)」620という。再生装置102内のBD−ROMドライブ121は、BD−ROMディスク101からソースパケット602をアラインド・ユニット620ごとに、すなわち32個ずつ読み出す。セクタ群621、622、623、…は先頭から順に32個ずつに分割され、それぞれが1つの誤り訂正符号(ECC:Error Correcting Code)ブロック630を構成している。BD−ROMドライブ121はECCブロック630ごとに誤り訂正処理を行う。
【0062】
≪PGストリームのデータ構造≫
PGストリームは複数のデータ・エントリを含む。各データ・エントリはPGストリームの表示単位(ディスプレイ・セット)を表し、再生装置102に1枚のグラフィックス・プレーンを構成させるのに必要なデータから成る。ここで、「グラフィックス・プレーン」とは、2Dグラフィックス映像を表すグラフィックス・データから生成されるプレーン・データをいう。「プレーン・データ」は画素データの2次元配列であり、その配列のサイズはビデオ・フレームの解像度に等しい。グラフィックス・プレーンの種類には、PGプレーン、IGプレーン、イメージ・プレーン、及びオン・スクリーン・ディスプレイ(OSD)プレーンが含まれる。PGプレーンは、メインTS内のPGストリームから生成される。IGプレーンは、メインTS内のIGストリームから生成される。イメージ・プレーンは、BD−Jオブジェクトに従って生成される。OSDプレーンは、再生装置102のファームウェアに従って生成される。
【0063】
各データ・エントリは複数の機能セグメントを含む。それらの機能セグメントは、先頭から順に、表示制御セグメント(Presentation Control Segment:PCS)、ウィンドウ定義セグメント(Window Define Segment:WDS)、パレット定義セグメント(Pallet Define Segment:PDS)、及びオブジェクト定義セグメント(Object Define Segment:ODS)を含む。WDSは、グラフィックス・プレーン内の矩形領域、すなわちウィンドウを規定する。PDSは、所定種類のカラーIDと色座標値(例えば、輝度Y、赤色差Cr、青色差Cb、不透明度α)との間の対応関係を規定する。ODSは一般に複数で1つのグラフィックス・オブジェクトを表す。「グラフィックス・オブジェクト」とは、グラフィックス画像を画素コードとカラーIDとの間の対応関係で表現するデータである。グラフィックス・オブジェクトは、ランレングス符号化方式を用いて圧縮された後に分割され、各ODSに分配されている。PCSは、同じデータ・エントリに属するディスプレイ・セットの詳細を示し、特に、グラフィックス・オブジェクトを用いた画面構成を規定する。その画面構成の種類は、カット・イン/アウト(Cut−In/Out)、フェード・イン/アウト(Fade−In/Out)、色変化(Color Change)、スクロール(Scroll)、及びワイプ・イン/アウト(Wipe−In/Out)を含む。コンテンツ・プロバイダはPCSを利用して再生装置102に画面構成を指示する。それにより、例えば「ある字幕を徐々に消去しつつ、次の字幕を表示させる」という視覚効果を再生装置102に実現させることができる。
【0064】
≪IGストリームのデータ構造≫
IGストリームは、対話構成セグメント(Interactive Composition Segment:ICS)、PDS、及びODSを含む。PDSとODSとは、PGストリームに含まれるものと同様な機能セグメントである。特に、ODSの含むグラフィックス・オブジェクトは、ボタン及びポップアップ・メニュー等、対話画面を構成するGUI用グラフィック部品を表す。ICSは、それらのグラフィックス・オブジェクトを用いた対話操作を規定する。具体的には、ICSは、ボタン及びポップアップ・メニュー等、ユーザ操作に応じて状態が変化するグラフィックス・オブジェクトのそれぞれについて取り得る状態、すなわち、ノーマル、セレクテッド、及びアクティブの各状態を規定する。ICSは更にボタン情報を含む。ボタン情報は、ユーザがボタン等に対して確定操作を行った際に再生装置102の実行すべきコマンドを含む。
【0065】
≪ビデオ・ストリームのデータ構造≫
図7は、ベースビュー・ビデオ・ストリーム701とライトビュー・ビデオ・ストリーム702とのピクチャを表示時間順に示す模式図である。
図7を参照するに、ベースビュー・ビデオ・ストリーム701はピクチャ710、711、712、…、719(以下、ベースビュー・ピクチャという。)を含み、ライトビュー・ビデオ・ストリーム702はピクチャ720、721、722、…、729(以下、ライトビュー・ピクチャという。)を含む。各ピクチャ710−719、720−729は1フレームを表し、MPEG−2又はMPEG−4 AVC等の動画圧縮符号化方式によって圧縮されている。
【0066】
上記の符号化方式による各ピクチャの圧縮には、そのピクチャの空間方向及び時間方向での冗長性が利用される。ここで、空間方向での冗長性のみを利用するピクチャの符号化を「ピクチャ内符号化」という。一方、時間方向での冗長性、すなわち、表示順序の連続する複数のピクチャ間でのデータの類似性を利用するピクチャの符号化を「ピクチャ間予測符号化」という。ピクチャ間予測符号化では、まず符号化対象のピクチャに対して、表示時間が前又は後である別のピクチャが参照ピクチャとして設定される。次に、符号化対象のピクチャとその参照ピクチャとの間で動きベクトルが検出され、それを利用して動き補償が行われる。更に、動き補償後のピクチャと符号化対象のピクチャとの間の差分値が求められ、その差分値から空間方向での冗長性が除去される。こうして、各ピクチャのデータ量が圧縮される。
【0067】
図7を参照するに、ベースビュー・ピクチャ710−719は一般に複数のGOP731、732に分割されている。「GOP」は、I(Intra)ピクチャを先頭とする複数枚の連続するピクチャの列をいう。「Iピクチャ」は、ピクチャ内符号化によって圧縮されたピクチャをいう。GOPは一般に、Iピクチャの他に、P(Predictive)ピクチャとB(Bidirectionally Predivtive)ピクチャとを含む。「Pピクチャ」は、ピクチャ間予測符号化によって圧縮されたピクチャであって、表示時間がそれよりも前であるIピクチャ又は別のPピクチャが1枚、参照ピクチャとして利用されたものをいう。「Bピクチャ」は、ピクチャ間予測符号化によって圧縮されたピクチャであって、表示時間がそれよりも前又は後であるIピクチャ又はPピクチャが2枚、参照ピクチャとして利用されたものをいう。Bピクチャのうち、他のピクチャに対するピクチャ間予測符号化で参照ピクチャとして利用されるものを特に「Br(reference B)ピクチャ」という。
【0068】
図7に示されている例では、各GOP731、732内のベースビュー・ピクチャが以下の順で圧縮される。第1GOP731では、まず先頭のベースビュー・ピクチャがI
0ピクチャ710に圧縮される。ここで、下付の数字は、各ピクチャに表示時間順に割り振られた通し番号を示す。次に、4番目のベースビュー・ピクチャがI
0ピクチャ710を参照ピクチャとしてP
3ピクチャ713に圧縮される。ここで、
図7に示されている各矢印は、先端のピクチャが後端のピクチャに対する参照ピクチャであることを示す。続いて、2、3番目のベースビュー・ピクチャがI
0ピクチャ710とP
3ピクチャ713とを参照ピクチャとして、それぞれ、Br
1ピクチャ711、Br
2ピクチャ712に圧縮される。更に7番目のベースビュー・ピクチャがP
3ピクチャ713を参照ピクチャとしてP
6ピクチャ716に圧縮される。続いて、4、5番目のベースビュー・ピクチャがP
3ピクチャ713とP
6ピクチャ716とを参照ピクチャとして、それぞれ、Br
4ピクチャ714、Br
5ピクチャ715に圧縮される。同様に、第2GOP732では、まず先頭のベースビュー・ピクチャがI
7ピクチャ717に圧縮される。次に3番目のベースビュー・ピクチャがI
7ピクチャ717を参照ピクチャとしてP
9ピクチャ719に圧縮される。続いて、2番目のベースビュー・ピクチャがI
7ピクチャ717とP
9ピクチャ719とを参照ピクチャとしてBr
8ピクチャ718に圧縮される。
【0069】
ベースビュー・ビデオ・ストリーム701では各GOP731、732がその先頭にIピクチャを必ず含むので、ベースビュー・ピクチャはGOPごとに復号可能である。例えば第1GOP731では、まずI
0ピクチャ710が単独で復号される。次に、復号後のI
0ピクチャ710を利用してP
3ピクチャ713が復号される。続いて、復号後のI
0ピクチャ710とP
3ピクチャ713とを利用してBr
1ピクチャ711とBr
2ピクチャ712とが復号される。後続のピクチャ群714、715、…も同様に復号される。こうして、ベースビュー・ビデオ・ストリーム701は単独で復号可能であり、更にGOP単位でのランダム・アクセスが可能である。
【0070】
図7を更に参照するに、ライトビュー・ピクチャ720−729はピクチャ間予測符号化で圧縮されている。しかし、その符号化方法はベースビュー・ピクチャ710−719の符号化方法とは異なり、映像の時間方向での冗長性に加え、左右の映像間の冗長性をも利用する。具体的には、各ライトビュー・ピクチャ720−729の参照ピクチャが、
図7に矢印で示されているように、ライトビュー・ビデオ・ストリーム702からだけでなく、ベースビュー・ビデオ・ストリーム701からも選択される。特に各ライトビュー・ピクチャ720−729と、その参照ピクチャとして選択されたベースビュー・ピクチャとは表示時刻が実質的に等しい。それらのピクチャは3D映像の同じシーンのライトビューとレフトビューとの対、すなわち視差映像を表す。このように、ライトビュー・ピクチャ720−729はベースビュー・ピクチャ710−719と一対一に対応する。特にそれらのピクチャ間ではGOP構造が共通である。
【0071】
図7に示されている例では、まず第1GOP731内の先頭のライトビュー・ピクチャがベースビュー・ビデオ・ストリーム701内のI
0ピクチャ710を参照ピクチャとしてP
0ピクチャ720に圧縮される。それらのピクチャ710、720は3D映像の先頭フレームのレフトビューとライトビューとを表す。次に、4番目のライトビュー・ピクチャがP
0ピクチャ720とベースビュー・ビデオ・ストリーム701内のP
3ピクチャ713とを参照ピクチャとしてP
3ピクチャ723に圧縮される。続いて、2番目のライトビュー・ピクチャがP
0ピクチャ720とP
3ピクチャ723とに加えて、ベースビュー・ビデオ・ストリーム701内のBr
1ピクチャ711を参照ピクチャとしてB
1ピクチャ721に圧縮される。同様に、3番目のライトビュー・ピクチャがP
0ピクチャ720とP
3ピクチャ730とに加えて、ベースビュー・ビデオ・ストリーム701内のBr
2ピクチャ712を参照ピクチャとしてB
2ピクチャ722に圧縮される。以降のライトビュー・ピクチャ724−729についても同様に、そのライトビュー・ピクチャと表示時刻が実質的に等しいベースビュー・ピクチャが参照ピクチャとして利用される。
【0072】
上記のような左右の映像間の相関関係を利用した動画圧縮符号化方式としては、MVC(Multiview Video Coding)と呼ばれるMPEG−4 AVC/H.264の修正規格が知られている。MVCは、ISO/IEC MPEGとITU−T VCEGとの共同プロジェクトであるJVT(Joint Video Team)によって2008年7月に策定されたものであり、複数の視点から見える映像をまとめて符号化するための規格である。MVCでは映像間予測符号化に、映像の時間方向での類似性だけでなく、視点の異なる映像間の類似性も利用される。その予測符号化では、各視点から見た映像を個別に圧縮する予測符号化よりも映像の圧縮率が高い。
【0073】
上記のとおり、各ライトビュー・ピクチャ720−729の圧縮にはベースビュー・ピクチャが参照ピクチャとして利用される。従って、ベースビュー・ビデオ・ストリーム701とは異なり、ライトビュー・ビデオ・ストリーム702を単独で復号することはできない。しかし、視差映像間の差異は一般にわずかであり、すなわちレフトビューとライトビューとの間の相関は高い。従って、ライトビュー・ピクチャは一般にベースビュー・ピクチャよりも圧縮率が著しく高く、すなわちデータ量が著しく小さい。
【0074】
図7には示されていないが、デプスマップ・ストリームは複数のデプスマップを含む。それらのデプスマップはベースビュー・ピクチャと一対一に対応し、各ベースビュー・ピクチャの示す1フレームの2D映像に対するデプスマップを表す。各デプスマップは、ベースビュー・ピクチャと同様、MPEG−2又はMPEG−4 AVC等の動画圧縮符号化方式によって圧縮されている。特にその符号化方式ではピクチャ間予測符号化が利用される。すなわち、各デプスマップが他のデプスマップを参照ピクチャとして利用して圧縮される。デプスマップ・ストリームは、ベースビュー・ビデオ・ストリームと同様にGOP単位に分割され、各GOPがその先頭にIピクチャを必ず含む。従って、デプスマップはGOPごとに単独で復号可能である。しかし、デプスマップ自体は2D映像の各部の奥行きを画素別に表す情報でしかないので、デプスマップ・ストリームを単独で映像の再生に利用することはできない。デプスマップ・ストリームの圧縮に利用される符号化方式は、ライトビュー・ビデオ・ストリームの圧縮に利用される符号化方式と等しい。例えば、ライトビュー・ビデオ・ストリームがMVCのフォーマットで符号化されているとき、デプスマップ・ストリームもMVCのフォーマットで符号化されている。その場合、再生装置102は3D映像の再生時、符号化方式を一定に維持したまま、L/Rモードとデプス・モードとの切り換えをスムーズに実現できる。
【0075】
図8は、ビデオ・ストリーム800のデータ構造の詳細を示す模式図である。このデータ構造は、ベースビュー・ビデオ・ストリームとディペンデントビュー・ビデオ・ストリームとで実質的に共通である。
図8を参照するに、ビデオ・ストリーム800は一般に複数のビデオ・シーケンス#1、#2、…から構成されている。「ビデオ・シーケンス」は、1つのGOP810を構成するピクチャ群811、812、813、814、…に個別にヘッダ等の付加情報を組み合わせたものである。この付加情報と各ピクチャとの組み合わせを「ビデオ・アクセスユニット(VAU)」という。すなわち、各GOP810、820ではピクチャごとに1つのVAU#1、#2、…が構成されている。各ピクチャはVAU単位でビデオ・ストリーム800から読み出し可能である。
【0076】
図8は更に、ベースビュー・ビデオ・ストリーム内で各ビデオ・シーケンスの先端に位置するVAU#1831の構造を示す。VAU#1831は、アクセスユニット(AU)識別コード831A、シーケンス・ヘッダ831B、ピクチャ・ヘッダ831C、補足データ831D、及び圧縮ピクチャ・データ831Eを含む。2番目以降のVAU#2は、シーケンス・ヘッダ831Bを含まない点を除き、VAU#1831と同じ構造である。AU識別コード831Aは、VAU#1831の先端を示す所定の符号である。シーケンス・ヘッダ831BはGOPヘッダともいい、VAU#1831を含むビデオ・シーケンス#1の識別番号を含む。シーケンス・ヘッダ831Bは更にGOP810の全体で共通する情報、例えば、解像度、フレームレート、アスペクト比、及びビットレートを含む。ピクチャ・ヘッダ831Cは、固有の識別番号、ビデオ・シーケンス#1の識別番号、及びピクチャの復号に必要な情報、例えば符号化方式の種類を示す。補足データ831Dは、ピクチャの復号以外に関する付加的な情報、例えば、クローズド・キャプションを示す文字情報、GOP構造に関する情報、及びタイムコード情報を含む。圧縮ピクチャ・データ831Eはベースビュー・ピクチャを含む。
【0077】
VAU#1831はその他に、必要に応じて、パディング・データ831F、シーケンス終端コード831G、及びストリーム終端コード831Hのいずれか又は全てを含んでもよい。パディング・データ831Fはダミーデータである。そのサイズを圧縮ピクチャ・データ831Eのサイズに合わせて調節することにより、VAU#1831のビットレートを所定値に維持することができる。シーケンス終端コード831Gは、VAU#1831がビデオ・シーケンス#1の終端に位置することを示す。ストリーム終端コード831Hはベースビュー・ビデオ・ストリーム800の終端を示す。
【0078】
図8はまた、ディペンデントビュー・ビデオ・ストリーム内で各ビデオ・シーケンスの先端に位置するVAU#1832の構造も示す。VAU#1832は、サブシーケンス・ヘッダ832B、ピクチャ・ヘッダ832C、補足データ832D、及び圧縮ピクチャ・データ832Eを含む。2番目以降のVAU#2は、サブシーケンス・ヘッダ832Bを含まない点を除き、VAU#1832と同じ構造である。サブシーケンス・ヘッダ832Bは、VAU#1832を含むビデオ・シーケンス#1の識別番号を含む。サブシーケンス・ヘッダ832Bは更に、GOP810の全体で共通する情報、例えば、解像度、フレームレート、アスペクト比、及びビットレートを含む。特にそれらの値は、ベースビュー・ビデオ・ストリームの対応するGOPに対して設定された値、すなわちVAU#1831のシーケンス・ヘッダ831Bの示す値に等しい。ピクチャ・ヘッダ832Cは、固有の識別番号、ビデオ・シーケンス#1の識別番号、及びピクチャの復号に必要な情報、例えば符号化方式の種類を示す。補足データ832Dは、ピクチャの復号以外に関する付加的な情報、例えば、クローズド・キャプションを示す文字情報、GOP構造に関する情報、及びタイムコード情報を含む。圧縮ピクチャ・データ832Eはディペンデントビュー・ピクチャを含む。
【0079】
VAU#1832はその他に、必要に応じて、パディング・データ832F、シーケンス終端コード832G、及びストリーム終端コード832Hのいずれか又は全てを含んでもよい。パディング・データ832Fはダミーデータである。そのサイズを圧縮ピクチャ・データ832Eのサイズに合わせて調節することにより、VAU#1832のビットレートを所定値に維持することができる。シーケンス終端コード832Gは、VAU#1832がビデオ・シーケンス#1の終端に位置することを示す。ストリーム終端コード832Hはディペンデントビュー・ビデオ・ストリーム800の終端を示す。
【0080】
VAUの各部の具体的な内容はビデオ・ストリーム800の符号化方式ごとに異なる。例えば、その符号化方式がMPEG−4 AVCであるとき、
図8に示されているVAUの各部は1つのNAL(Network Abstraction Layer)ユニットから構成される。具体的には、AU識別コード831A、シーケンス・ヘッダ831B、ピクチャ・ヘッダ831C、補足データ831D、圧縮ピクチャ・データ831E、パディング・データ831F、シーケンス終端コード831G、及びストリーム終端コード831Hはそれぞれ、AUデリミタ(Access Unit Delimiter)、SPS(シーケンス・パラメータ・セット)、PPS(ピクチャ・パラメータ・セット)、SEI(Supplemental Enhancement Information)、ビュー・コンポーネント、フィラー・データ(Filler Data)、エンド・オブ・シーケンス(End of Sequence)、及びエンド・オブ・ストリーム(End of Stream)に相当する。
【0081】
図9は、PESパケット列902へのビデオ・ストリーム901の格納方法の詳細を示す模式図である。この格納方法は、ベースビュー・ビデオ・ストリームとディペンデントビュー・ビデオ・ストリームとで共通である。
図9を参照するに、実際のビデオ・ストリーム901ではピクチャが、表示時間順ではなく符号化順に多重化されている。例えばベースビュー・ビデオ・ストリームのVAUには、
図9に示されているように、先頭から順に、I
0ピクチャ910、P
3ピクチャ911、B
1ピクチャ912、B
2ピクチャ913、…が格納されている。ここで、下付の数字は、各ピクチャに表示時間順に割り振られた通し番号を示す。P
3ピクチャ911の符号化にはI
0ピクチャ910が参照ピクチャとして利用され、B
1ピクチャ912とB
2ピクチャ913との各符号化にはI
0ピクチャ910とP
3ピクチャ911とが参照ピクチャとして利用される。それらのVAUが1つずつ、異なるPESパケット920、921、922、923、…に格納される。各PESパケット920、…はPESペイロード920PとPESヘッダ920Hとを含む。VAUはPESペイロード920Pに格納される。一方、PESヘッダ920Hは、同じPESパケット920のPESペイロード920Pに格納されたピクチャの表示時刻、すなわちPTS(Presentation Time−Stamp)、及び、そのピクチャの復号時刻、すなわちDTS(Decoding Time−Stamp)を含む。「PTS」は、再生装置102内のデコーダによって復号されたピクチャ等のデータをそのデコーダから出力するタイミングを示し、「DTS」はデコーダにピクチャ等のデータの復号処理を開始させるタイミングを示す。
【0082】
図9に示されているビデオ・ストリーム901と同様、
図3に示されている他のエレメンタリ・ストリームも一連のPESパケットの各PESペイロードに格納される。更に各PESパケットのPESヘッダは、そのPESパケットのPESペイロードに格納されたデータのPTSを含む。
【0083】
図10は、ベースビュー・ビデオ・ストリーム1001とディペンデントビュー・ビデオ・ストリーム1002との各ピクチャに割り当てられたPTSとDTSとの間の関係を示す模式図である。
図10を参照するに、両ビデオ・ストリーム1001、1002の間では、3D映像の同じフレームを表す一対のピクチャに対して、同じPTS及び同じDTSが割り当てられている。例えば3D映像の先頭のフレームは、ベースビュー・ビデオ・ストリーム1001のI
1ピクチャ1011とディペンデントビュー・ビデオ・ストリーム1002のP
1ピクチャ1021との組み合わせから再現される。従って、それらのピクチャの対1011、1021ではPTSが等しく、かつDTSが等しい。ここで、下付の数字は、各ピクチャにDTSの順に割り振られた通し番号を示す。また、ディペンデントビュー・ビデオ・ストリーム1002がデプスマップ・ストリームであるとき、P
1ピクチャ1021は、I
1ピクチャ1011に対するデプスマップを表すIピクチャに置き換えられる。同様に、各ビデオ・ストリーム1001、1002の2番目のピクチャ、すなわち、P
2ピクチャ1012、1022の対ではPTSが等しく、かつDTSが等しい。各ビデオ・ストリーム1001、1002の3番目のピクチャ、すなわちBr
3ピクチャ1013とB
3ピクチャ1023との対ではPTSとDTSとがいずれも共通である。Br
4ピクチャ1014とB
4ピクチャ1024との対でも同様である。
【0084】
ベースビュー・ビデオ・ストリーム1001とディペンデントビュー・ビデオ・ストリーム1002との間で、PTSが等しく、かつDTSが等しいピクチャを含むVAUの対を「3D・VAU」という。
図10に示されているPTSとDTSとの割り当てにより、3D再生モードの再生装置102内のデコーダにベースビュー・ビデオ・ストリーム1001とディペンデントビュー・ビデオ・ストリーム1002とを3D・VAU単位でパラレルに処理させることが容易にできる。それにより、3D映像の同じフレームを表す一対のピクチャが、デコーダによって確実にパラレルに処理される。更に、各GOPの先頭の3D・VAUではシーケンス・ヘッダが、同じ解像度、同じフレームレート、及び同じアスペクト比を含む。特にそのフレームレートは、2D再生モードにおいてベースビュー・ビデオ・ストリーム1001が単独で復号されるときの値に等しい。
【0085】
≪AVストリーム・ファイルに含まれるその他のTSパケット≫
AVストリーム・ファイルに含まれるTSパケットの種類には、
図3に示されているエレメンタリ・ストリームから変換されたもの以外にも、PAT(Program Association Table)、PMT(Program Map Table)、及びPCR(Program Clock Reference)がある。PCR、PMT、及びPATは欧州デジタル放送規格で定められたものであり、1つの放送番組を構成するパーシャル・トランスポート・ストリームと同様にAVストリーム・ファイルを規定する。具体的には、PATは、同じAVストリーム・ファイルに含まれるPMTのPIDを示す。PAT自身のPIDは0である。PMTは、同じAVストリーム・ファイルに含まれる各エレメンタリ・ストリームのPIDとその属性情報とを含む。その属性情報は、そのエレメンタリ・ストリームの圧縮に利用されたコーデックの識別情報、及び、そのエレメンタリ・ストリームのフレームレートとアスペクト比とを含む。PMTは更に、そのAVストリーム・ファイルに関する各種の記述子を含む。記述子はAVストリーム・ファイルの全体に共通する属性を示し、特に、そのAVストリーム・ファイルのコピーの許可/禁止を示すコピー・コントロール情報を含む。PCRは、自身に割り当てられたATSに対応させるべきSTC(System Time Clock)の値を示す情報を含む。ここで、「STC」は、再生装置102内のデコーダによって、PTS及びDTSの基準として利用されるクロックである。そのデコーダはPCRを利用して、ATCにSTCを同期させる。PCR、PMT、及びPATを利用することで、再生装置102内のデコーダにAVストリーム・ファイルを、欧州デジタル放送規格に準拠のパーシャル・トランスポート・ストリームと同様に処理させることができる。それにより、BD−ROMディスク101用の再生装置と欧州デジタル放送規格に準拠の端末装置との間の互換性を確保することができる。
【0086】
≪多重化ストリーム・データのインターリーブ配置≫
BD−ROMディスク101から、フルHDの2D映像、3D映像、及び4K2Kの2D映像のいずれをもシームレスに再生するには、BD−ROMディスク101上における、ベースビュー・ビデオ・ストリーム、ディペンデントビュー・ビデオ・ストリーム、及び拡張ストリームの物理的な配置が重要である。ここで、「シームレス再生」とは、多重化ストリーム・データから映像と音声とを途切れさせることなく滑らかに再生することをいう。
【0087】
図11は、BD−ROMディスク101上における、メインTS、サブTS、及び拡張ストリームの物理的な配置を示す模式図である。
図11を参照するに、メインTS、サブTS、及び拡張ストリームはそれぞれ、複数のデータ・ブロックB[n]、D[n]、T[n](n=0、1、2、3、…)に分割されている。各データ・ブロックB[n]、D[n]、T[n]は、BD−ROMディスク101上で物理的に連続する複数のセクタに記録されている。メインTSに属する各データ・ブロックB[n]は、ファイル2D221の1つのエクステントEXT2D[n]としてアクセス可能であり、サブTSに属する各データ・ブロックD[n]は、ファイルDEP222の1つのエクステントEXT2[n]としてアクセス可能であり、拡張ストリームに属する各データ・ブロックT[n]は、拡張ストリーム・ファイル224の1つのエクステントEXT3[n]としてアクセス可能である。すなわち、各データ・ブロックB[n]、D[n]、T[n]のサイズと先端のLBNとは、ファイル2D221、ファイルDEP222、及び拡張ストリーム・ファイル224のファイル・エントリから知ることができる(詳細は《補足》参照)。BD−ROMディスク101では物理アドレスが論理アドレスと実質的に等しいので、各データ・ブロックB[n]、D[n]、T[n]内ではLBNも連続している。従って、BD−ROMドライブ121は、光ピックアップにシークを行わせることなく、各データ・ブロックB[n]、D[n]、T[n]を連続して読み出すことができる。以下、メインTSに属するデータ・ブロックB[n]を「ベースビュー・エクステント」といい、サブTSに属するデータ・ブロックD[n]を「ディペンデントビュー・エクステント」といい、拡張ストリームに属するデータ・ブロックT[n]を「拡張エクステント」という。
【0088】
図11を更に参照するに、エクステント群B[n]、D[n]、T[n]はBD−ROMディスク101上のトラックに沿って連続的に記録されている。特に、1つの拡張エクステントT[n]の直後にはベースビュー・エクステントB[n+i]とディペンデントビュー・エクステントD[n+i]とが2つずつ交互に配置されている(i=0、1)。このようなエクステント群B[n+i]、D[n+i]の配置を「インターリーブ配置」といい、インターリーブ配置で記録された一連のエクステント群B[n+i]、D[n+i]を「エクステント・ブロック」という。各エクステント・ブロックはファイルSS223の1つのエクステントEXTSS[n]としてアクセス可能である。すなわち、エクステント・ブロックB[n+i]、D[n+i]のサイズと先端のLBNとはファイルSS223のファイル・エントリから知ることができる。ファイルSSの各エクステントEXTSS[0]、EXTSS[1]、EXTSS[2]は、ファイル2D221とはベースビュー・エクステントB[n]を共有し、ファイルDEP222とはディペンデントビュー・エクステントD[n]を共有する。
【0089】
[インターリーブ配置のエクステント群に対する再生経路]
図12は、エクステント群T[m]、D[m+i]、B[m+i](m=0、1、2、i=0、1)に対する3種類の再生経路1201、1202、1203を示す模式図である。第1再生経路1201はファイル2D221に対する再生経路であり、第2再生経路1202はファイルSS223に対する再生経路であり、第3再生経路1203は拡張ストリーム・ファイル224に対する再生経路である。
【0090】
2D再生モードの再生装置102はファイル2D221を再生する。従って、第1再生経路1201が示すとおり、
図12に示されているエクステント群からはベースビュー・エクステントB[m+i]のみが順番に、ファイル2D221のエクステントEXT2D[m+i]として読み出される。具体的には、まず先頭のベースビュー・エクステントB[0]が読み出され、その直後のディペンデントビュー・エクステントD[1]の読み出しがジャンプJ
2Dによってスキップされる。次に2番目のベースビュー・エクステントB[1]が読み出され、その直後の拡張エクステントT[1]とディペンデントビュー・エクステントD[2]との読み出しがジャンプJ
2Dによってスキップされる。以降も同様に、ベースビュー・エクステントの読み出しとジャンプとが繰り返される。
【0091】
4番目のベースビュー・エクステントB[3]と3番目の拡張エクステントT[2]との間に生じるジャンプJ
LYは、層境界LBを越えるロング・ジャンプである。「層境界」とは、BD−ROMディスク101が多層ディスクである場合、すなわち記録層を複数含む場合、2枚の記録層間の境界をいう。「ロング・ジャンプ」は、ジャンプの中でもシーク時間の長いものの総称であり、具体的には、(i)記録層の切り換えを伴うジャンプ、及び(ii)ジャンプ距離が所定の閾値を超えるジャンプをいう。「ジャンプ距離」とは、ジャンプ期間中に読み出し操作がスキップされるBD−ROMディスク101上の領域の長さをいう。ジャンプ距離は通常、その部分のセクタ数で表される。上記(ii)の閾値は、BD−ROMの規格では例えば40000セクタである。しかし、その閾値は、BD−ROMディスクの種類と、BD−ROMドライブの読み出し処理に関する性能とに依存する。ロング・ジャンプは特にフォーカス・ジャンプとトラック・ジャンプとを含む。「フォーカス・ジャンプ」は、記録層の切り換えに伴うジャンプであり、光ピックアップの焦点距離を変化させる処理を含む。「トラック・ジャンプ」は、光ピックアップをBD−ROMディスク101の半径方向に移動させる処理を含む。
【0092】
3D再生モードの再生装置102はファイルSS223を再生する。従って、第2再生経路1202が示すとおり、
図12に示されているエクステント群からは各エクステント・ブロックD[m+i]、B[m+i]が順番に、ファイルSS223のエクステントEXTSS[0]、EXTSS[1]、EXTSS[2]として読み出される。具体的には、まず、先頭のエクステント・ブロックD[0]、B[0]、D[1]、B[1]が連続して読み出され、その直後の拡張エクステントT[1]の読み出しがジャンプJ
3Dによってスキップされる。次に、2番目のエクステント・ブロックD[2]、…、B[3]が連続して読み出される。その直後に、記録層の切り換えに伴うロング・ジャンプJ
LYが生じ、3番目の拡張エクステントT[2]の読み出しがスキップされる。続いて、3番目のエクステント・ブロックD[4]、B[4]、…が連続して読み出される。再生装置102はファイルSS223の各エクステントEXTSS[0]、EXTSS[1]、…を読み込んだ後、クリップ情報ファイルを利用して、それぞれをディペンデントビュー・エクステントとベースビュー・エクステントとに分離してデコーダに渡す。
【0093】
拡張再生モードの再生装置102は拡張ストリーム・ファイル224を再生する。従って、第3再生経路1203が示すとおり、
図12に示されているエクステント群からは拡張エクステントT[m]が拡張ストリーム・ファイル224のエクステントEXT3[0]、EXT3[1]、EXT3[2]として読み出され、ベースビュー・エクステントB[m+i]がファイル2D221のエクステントEXT2D[0]、EXT2D[1]、EXT2D[2]として読み出される。具体的には、まず先頭の拡張エクステントT[0]が読み出され、その直後のディペンデントビュー・エクステントD[0]の読み出しがジャンプJ
EXによってスキップされる。次に、先頭のベースビュー・エクステントB[0]が読み出され、その直後のディペンデントビュー・エクステントD[1]の読み出しがジャンプJ
EXによってスキップされる。以降同様に、拡張エクステントT[m]とベースビュー・エクステントB[m+i]との読み出しとジャンプとが繰り返される。
【0094】
図12に示されているように、BD−ROMドライブ121は実際には、隣接する2つのエクステントを連続して読み出す場合でも、前のエクステントの後端から次のエクステントの先端までの間にゼロ・セクタ遷移J
0を行う。「ゼロ・セクタ遷移」とは、2つの連続するエクステント間での光ピックアップの移動をいう。ゼロ・セクタ遷移が行われる期間(以下、ゼロ・セクタ遷移期間という。)では、光ピックアップは読み出し動作を一旦停止して待機する。その意味で、ゼロ・セクタ遷移は「ジャンプ距離が0セクタに等しいジャンプ」ともみなせる。ゼロ・セクタ遷移期間の長さ、すなわちゼロ・セクタ遷移時間は、BD−ROMディスク101の回転による光ピックアップの位置の移動時間の他に、誤り訂正処理に伴うオーバーヘッドを含んでもよい。「誤り訂正処理に伴うオーバーヘッド」とは、2つのエクステントの境界がECCブロックの境界と一致していないときに、そのECCブロックを用いた誤り訂正処理が2回行われることに起因する余分な時間をいう。誤り訂正処理には1つのECCブロックの全体が必要である。従って、1つのECCブロックが2つの連続するエクステントに共有されているとき、いずれのエクステントの読み出し処理でもそのECCブロックの全体が読み出されて誤り訂正処理に利用される。その結果、それらのエクステントを1つ読み出すごとに、そのエクステントの他に最大32セクタの余分なデータが読み出される。誤り訂正処理に伴うオーバーヘッドは、その余分なデータの読み出し時間の合計、すなわち32[セクタ]×2048[バイト]×8[ビット/バイト]×2[回]/読み出し速度で評価される。尚、各エクステントはECCブロック単位で構成されてもよい。その場合、各エクステントのサイズはECCブロックの整数倍に等しいので、誤り訂正処理に伴うオーバーヘッドをゼロ・セクタ遷移時間から除外することができる。
【0095】
[エクステント・ブロックの構成]
1つのエクステント・ブロックの中では、(i+1)番目のベースビュー・エクステントB[m+i]とディペンデントビュー・エクステントD[m+i]とが同じエクステントATC時間を持つ。以下、このようなエクステントB[m+i]、D[m+i]の対を「エクステント・ペア」という。「エクステントATC時間」は、1つのエクステント内のソースパケットに付与されたATSの範囲の大きさ、すなわち、そのエクステントの先頭のソースパケットと次のエクステントの先頭のソースパケットとの間でのATSの差を表す。その差は、再生装置102がそのエクステント内の全てのソースパケットをリード・バッファからシステム・ターゲット・デコーダへ転送するのに要する時間をATCの値で表したものに等しい。エクステントATC時間の揃え方については後述する。「リード・バッファ」は再生装置102内のバッファ・メモリであり、BD−ROMディスク101から読み出されたエクステントをシステム・ターゲット・デコーダへ送るまでの間、一時的に格納する。リード・バッファの詳細については後述する。
【0096】
各エクステント・ペアD[m+i]、B[m+i]では、先頭に位置するVAUは同じ3D・VAUに属し、特に、同じ3D映像を表すGOPの先頭のピクチャを含む。例えば、各ディペンデントビュー・エクステントD[m+i]の先端はライトビュー・ビデオ・ストリームのPピクチャを含み、先頭のベースビュー・エクステントB[m+i]の先端はベースビュー・ビデオ・ストリームのIピクチャを含む。そのライトビュー・ビデオ・ストリームのPピクチャの表す2D映像は、そのベースビュー・ビデオ・ストリームのIピクチャの表す2D映像と共に1つの3D映像を表す。特にそのPピクチャは、
図7に示されているように、そのIピクチャを参照ピクチャとして圧縮されている。従って、3D再生モードの再生装置102は、いずれのエクステント・ペアD[m+i]、B[m+i]からも3D映像の再生を開始できる。すなわち、飛び込み再生等、ビデオ・ストリームのランダム・アクセスを要する処理が可能である。
【0097】
[拡張エクステントとエクステント・ブロックとの間の関係]
図13は、1つの拡張エクステントT[m](m=0、1、2、…)と、その直後に配置されたエクステント・ブロックB[k]、D[k](k=m、m+1、…、m+n−1)との間の関係を示す模式図である。
図13に示されているように、1つのエクステント・ブロックはベースビュー・エクステントB[k]とディペンデントビュー・エクステントD[k]とをn個ずつ含む。数字nは2以上であれば、エクステント・ブロックごとに異なっていてもよい。数字nを決めるための条件については後述する。拡張エクステントT[m]は後続のn個のベースビュー・エクステントB[m+i](i=0、1、…、n−1)に対する解像度拡張情報T
iを含む。(i+1)番目の解像度拡張情報T
iは、(m+i+1)番目のベースビュー・エクステントB[m+i]に含まれるフルHDのピクチャを4K2Kのピクチャに拡張する際に利用される。飛び込み再生等のランダム・アクセスでは、再生開始位置のベースビュー・ピクチャに対する解像度拡張情報を含む拡張エクステントがまず読み出される。また、拡張エクステントT[m]のエクステントATC時間は、n個のベースビュー・エクステントB[m+i]全体のエクステントATC時間と等しい。
【0098】
図13に示されているように、インターリーブ配置では、拡張エクステントT[m]、ディペンデントビュー・エクステントD[k]、及びベースビュー・エクステントB[k]の順に配置される。それは一般に、拡張エクステントT[m]、ディペンデントビュー・エクステントD[k]、及びベースビュー・エクステントB[k]の順にビットレートが小さいことに因る。
【0099】
ディペンデントビュー・エクステントD[k]がライトビュー・ビデオ・ストリームを含む場合、(k+1)番目のディペンデントビュー・エクステントD[k]に含まれるピクチャは、(k+1)番目のベースビュー・エクステントB[k]に含まれるピクチャを参照ピクチャとして圧縮されている。一方、ディペンデントビュー・エクステントD[k]がデプスマップ・ストリームを含む場合、デプスマップの画素当たりのデータ量、すなわち奥行き値のビット数は一般に、ベースビュー・ピクチャの画素当たりのデータ量、すなわち色座標値とα値とのビット数の和よりも小さい。更に
図3に示されているように、メインTSはサブTSとは異なり、プライマリ・ビデオ・ストリームの他にもプライマリ・オーディオ・ストリーム等のエレメンタリ・ストリームを含む。従って、ディペンデントビュー・エクステントD[k]のビットレートは一般に、そのベースビュー・エクステントB[k]のビットレート以下である。両エクステントD[k]、B[k]ではエクステントATC時間が等しいので、ディペンデントビュー・エクステントD[k]のサイズS
EXT2[k]は一般に、ベースビュー・エクステントB[k]のサイズS
EXT1[k]以下である:S
EXT2[k]≦S
EXT1[k]。
【0100】
拡張エクステントT[m]のビットレートは、
図4に示されている差分画素情報403の1フレーム当たりのデータ量で決まる。差分画素情報403は、フルHDのフレームから補間によって得られる画素データと、本来の4K2Kのフレームにおける画素データとの間の差分に過ぎない。従って、差分画素情報403のデータ量はnフレーム分を合わせても、フルHDの1フレームのデータ量よりも十分に小さい。それ故、拡張エクステントT[m]のサイズS
EXT3[k]は一般に、ディペンデントビュー・エクステントD[k]のサイズS
EXT2[k]以下である:S
EXT3[k]≦S
EXT2[k]。
【0101】
インターリーブ配置において、エクステントT[m]、D[k]、B[k]をビットレートの小さい順に配置する利点は次のとおりである。3D再生モードの再生装置102は、各エクステント・ブロックの先頭に位置するエクステントを読み出すとき、又は再生開始位置のエクステントを読み出すとき、そのエクステントを全てリード・バッファに読み込むまで、そのエクステントをシステム・ターゲット・デコーダに渡さない。その読み込みが完了した後、再生装置102はそのエクステントを次のエクステントとパラレルにシステム・ターゲット・デコーダに渡す。この処理を「プリロード」という。拡張再生モードの再生装置102も同様に、最初のエクステントの読み出しではプリロードを行う。
【0102】
プリロードの技術的意義は次のとおりである。L/Rモードでは、ディペンデントビュー・ピクチャの復号に復号後のベースビュー・ピクチャが必要である。従って、復号後のピクチャを出力処理まで保持するためのバッファを必要最小限の容量に維持するには、エクステント・ペアをシステム・ターゲット・デコーダに同時に供給して復号させることが好ましい。デプス・モードでは、復号後のベースビュー・ピクチャとデプスマップとの対から、視差画像を表すビデオ・フレームの対を生成する処理が必要である。従って、復号後のデータをその処理まで保持するためのバッファを必要最小限の容量に維持するには、エクステント・ペアをシステム・ターゲット・デコーダに同時に供給して復号させることが好ましい。拡張再生モードでは、解像度拡張情報を利用して復号後のベースビュー・ピクチャを4K2Kのビデオ・フレームに拡張する処理が必要である。従って、復号後のデータをその処理まで保持するためのバッファを必要最小限の容量に維持するには、拡張エクステントとベースビュー・エクステントとをシステム・ターゲット・デコーダに同時に供給して復号させることが好ましい。そこで、3D再生モードと拡張再生モードとのいずれでもプリロードが行われる。それにより、再生装置102は、最初に読み出されるエクステントと次のエクステントとをリード・バッファからシステム・ターゲット・デコーダへ同時に供給できる。
【0103】
プリロードでは、最初に読み出されるエクステントの全体がリード・バッファに蓄積される。従って、リード・バッファには少なくとも、そのエクステントのサイズに等しい容量が要求される。ここで、リード・バッファの容量を最小限に維持するには、プリロードの対象とされるエクステントのサイズを可能な限り縮小すべきである。それ故、
図13に示されているとおり、データ量の小さいエクステントが前に配置される。それにより、リード・バッファの容量を最小限に維持することができる。
【0104】
[エクステントATC時間を揃える方法]
図14は、隣接するエクステント間でエクステントATC時間を揃える方法を示す模式図である。以下の説明では便宜上、3D再生モードを対象とする。拡張再生モードでも同様である。まず、ベースビュー・エクステントに格納されるソースパケット(以下、SP1と略す。)と、ディペンデントビュー・エクステントに格納されるソースパケット(以下、SP2と略す。)とには、同じATC時間軸でATSが付与される。
図14を参照するに、矩形1410、1420はそれぞれ、SP1#p(p=0、1、…、k、k+1、…、i、i+1)とSP2#q(q=0、1、…、m、m+1、…、j、j+1)とを表す。それらの矩形1410、1420はATCの時間軸方向で各ソースパケットのATSの順に並べられている。各矩形1410、1420の先頭の位置A1(p)、A2(q)はそのソースパケットのATSの値を表す。各矩形1410、1420の長さAT1、AT2は、3D再生モードの再生装置102が1個のソースパケットをリード・バッファからシステム・ターゲット・デコーダへ転送するのに要する時間を表す。
【0105】
SP1#0のATSA1(0)からエクステントATC時間T
EXT[n]が経過するまでの期間に、リード・バッファからシステム・ターゲット・デコーダへ転送されるSP1、すなわちSP1#0、1、…、kは、(n+1)番目のベースビュー・エクステントEXT1[n]に格納される。同様に、SP1#(k+1)のATSA1(k+1)からエクステントATC時間T
EXT[n+1]が経過するまでの期間に、リード・バッファからシステム・ターゲット・デコーダへ転送されるSP1、すなわちSP1#(k+1)、…、iは、(n+2)番目のベースビュー・エクステントEXT1[n+1]に格納される。
【0106】
一方、(n+1)番目のディペンデントビュー・エクステントEXT2[n]に格納されるべきSP2は次のように選択される。まず、SP1#0のATSA1(0)とエクステントATC時間T
EXT[n]との和、すなわち、SP1#(k+1)のATSA1(k+1)=A1(0)+T
EXT[n]が求められる。次に、SP1#0のATSA1(0)からSP1#(k+1)のATSA1(k+1)までの期間に、リード・バッファからシステム・ターゲット・デコーダへの転送が開始されるSP2、すなわちSP2#0、1、…、mが選択される。従って、先頭のSP2、すなわちSP2#0のATSA2(0)は必ず、先頭のSP1、すなわちSP1#0のATSA1(0)以上である:A2(0)≧A1(0)。更に、最後のSP2、すなわちSP2#mのATSA2(m)は、SP1#(k+1)のATSA1(k+1)以下である:A2(m)≦A1(k+1)。ここで、SP2#mの転送完了はSP1#(k+1)のATSA1(k+1)以後であってもよい。
【0107】
同様に、(n+2)番目のディペンデントビュー・エクステントEXT2[n+1]に格納されるべきSP2は次のように選択される。まず、(n+3)番目のベースビュー・エクステントEXT1[n+2]の先頭に位置するSP1#(i+1)のATSA1(i+1)=A1(k+1)+T
EXT[n+1]が求められる。次に、SP1#(k+1)のATSA1(k+1)からSP1#(i+1)のATSA1(i+1)までの期間に、リード・バッファからシステム・ターゲット・デコーダへの転送が開始されるSP2、すなわちSP2#(m+1)−SP2#jが選択される。従って、先頭のSP2、すなわちSP2#(m+1)のATSA2(m+1)は先頭のSP1、すなわちSP1#(k+1)のATSA1(k+1)以上である:A2(m+1)≧A1(k+1)。更に、最後のSP2#jのATSA2(j)は、次のベースビュー・エクステントEXT1[n+2]の先頭に位置するSP1#(i+1)のATSA1(i+1)以下である:A2(j)≦A1(i+1)。
【0108】
≪エクステントのサイズに対する条件≫
各エクステントはアラインド・ユニット単位で構成される。特に各エクステントのサイズはアラインド・ユニットのサイズ(=6144バイト=約6KB)の倍数に等しい。その場合、エクステント間の境界はセクタ間の境界と一致するので、BD−ROMドライブはいずれのエクステントも、その全体を確実に連続して読み出すことができる。
【0109】
図12に示されているように、2D再生モード、3D再生モード、及び拡張再生モードのいずれにおいても再生装置102はジャンプを行う。従って、いずれの再生モードにおいても映像をシームレスに再生するには、ジャンプの間にリード・バッファがアンダーフローを生じない程度に、各エクステントのサイズの下限、すなわち最小エクステント・サイズが設計されなければならない。
【0110】
1:2D再生モードでの条件
図15は、2D再生モードの再生装置102内の再生処理系統を示すブロック図である。
図15を参照するに、その再生処理系統は、BD−ROMドライブ1501、リード・バッファ1502、及びシステム・ターゲット・デコーダ1503を含む。BD−ROMドライブ1501はBD−ROMディスク101からファイル2Dのエクステントを読み出し、読み出し速度R
UD2Dでリード・バッファ1502へ転送する。リード・バッファ1502は、再生装置102に内蔵のバッファ・メモリであり、BD−ROMドライブ1501からエクステントを受信して蓄積する。システム・ターゲット・デコーダ1503は、リード・バッファ1502内に蓄積された各エクステントからソースパケットを平均転送速度R
EXT2Dで読み出して、映像データVDと音声データADとに復号する。
【0111】
平均転送速度R
EXT2Dは、システム・ターゲット・デコーダ1503がリード・バッファ1502内の各ソースパケットからTSパケットを抽出する処理の平均速度の192/188倍に等しい。ここで、係数192/188はソースパケットとTSパケットとの間のバイト数の比に等しい。平均転送速度R
EXT2Dは通常、ビット/秒で表され、具体的には、ビット単位で表されたエクステントのサイズをエクステントATC時間で割ったときの値に等しい。「ビット単位で表されたエクステントのサイズ」は、そのエクステント内のソースパケット数とソースパケット1つ当たりのビット数(=192[バイト]×8[ビット/バイト])との積に等しい。平均転送速度R
EXT2Dは一般にエクステントごとに異なる。平均転送速度R
EXT2Dの最大値R
MAX2Dはファイル2DのビットレートR
TSの192/188倍に等しい。システム・ターゲット・デコーダ1503によるTSパケットの処理速度の最高値、すなわち「システム・レート」はファイル2DのビットレートR
TSに等しい。システム・レートR
TSは通常、ビット/秒(bps)で表されるので、バイト/秒(Bps)で表されるメインTSの記録速度(TS recording rate)の8倍に等しい。
【0112】
読み出し速度R
UD2Dは通常、ビット/秒で表され、平均転送速度R
EXT2Dの最高値R
MAX2Dよりも高い値、例えば54Mbpsに設定される:R
UD2D>R
MAX2D。それにより、BD−ROMドライブ1901がBD−ROMディスク101から1つのエクステントを読み出している間、システム・ターゲット・デコーダ1503の復号処理に伴うリード・バッファ1502のアンダーフローが防止される。
【0113】
図16の(a)は、2D再生モードでの動作中、リード・バッファ1502に蓄積されるデータ量DAの変化を示すグラフである。
図16の(b)は、再生対象のエクステント・ブロック1610と2D再生モードでの再生経路1620との間の対応関係を示す模式図である。
図16の(b)を参照するに、再生経路1620に従い、エクステント・ブロック1610内の各ベースビュー・エクステントB[m](m=n、n+1、n+2)がファイル2Dの1つのエクステントEXT2D[m]としてBD−ROMディスク101からリード・バッファ1502へ読み出される。
図16の(a)を参照するに、各エクステントEXT2D[n]の読み出し期間PR
2D[n]では蓄積データ量DAは、読み出し速度R
UD2Dと平均転送速度R
EXT2D[n]との間の差R
UD2D−R
EXT2D[n]に等しい速度で増加する。一方、2つの連続するエクステントEXT2D[n]、EXT2D[n+1]の間ではジャンプJ
2D[n]が生じる。そのジャンプ期間PJ
2D[n]ではディペンデントビュー・エクステントD[n+1]の読み出しがスキップされるので、BD−ROMディスク101からのデータの読み出しが停止する。従って、ジャンプ期間PJ
2D[n]では蓄積データ量DAは平均転送速度R
EXT2D[n]で減少する。
【0114】
BD−ROMドライブ1501による読み出し/転送動作は実際には、
図16の(a)のグラフから示唆される連続的なものではなく、断続的なものである。それにより、各エクステントの読み出し期間PR
2D[n]に蓄積データ量DAがリード・バッファ1502の容量を超えること、すなわちリード・バッファ1502のオーバーフローが防止される。すなわち、
図16の(a)のグラフは、実際には階段状である増減を直線的な増減として近似的に表したものである。
【0115】
図16の(b)に示されているエクステント・ブロック1610からフルHDの2D映像をシームレスに再生するには、次の2つの条件が満たされればよい:第1に、各エクステントEXT2D[n]のサイズS
EXT2D[n]が下記の式(1)を満たす。第2に、ファイル2Dのエクステントの間隔が所定の上限以下である。
【0116】
[ファイル2Dのエクステントの最小エクステント・サイズ]
各ジャンプ期間PJ
2D[n]ではリード・バッファ1502からシステム・ターゲット・デコーダ1503へのデータ供給を持続させて、そのデコーダ1503に連続的な出力を確保させなければならない。それには、ファイル2Dのエクステントのサイズが、次の条件1を満たせばよい。
【0117】
各エクステントEXT2D[n]のサイズS
EXT2D[n]は、その読み出し期間PR
2D[n]から次のジャンプ期間PJ
2D[n]にわたり、リード・バッファ1502からシステム・ターゲット・デコーダ1503へ転送されるデータ量に等しい。その場合、
図16の(a)に示されているように、蓄積データ量DAはそのジャンプ期間PJ
2D[n]の終了時、その読み出し期間PR
2D[n]の開始時での量を下回らない。すなわち、各ジャンプ期間PJ
2D[n]ではリード・バッファ1502からシステム・ターゲット・デコーダ1503へのデータ供給が持続し、特にリード・バッファ1502はアンダーフローを生じない。ここで、読み出し期間PR
2D[n]の長さはエクステントEXT2D[n]のサイズS
EXT2D[n]を読み出し速度R
UD2Dで割った値S
EXT2D[n]/R
UD2Dに等しい。従って、条件1は次のことを示す。各エクステントEXT2D[n]の最小エクステント・サイズは次式(1)の右辺で表される:
【0118】
【数1】
式(1)では、ジャンプ時間T
JUMP-2D[n]はジャンプ期間PJ
2D[n]の長さであり、秒単位で表される。一方、読み出し速度R
UD2Dと平均転送速度R
EXT2Dとはいずれもビット/秒で表される。従って、式(1)では平均転送速度R
EXT2Dを数「8」で割り、エクステントのサイズS
EXT2D[n]の単位をビットからバイトへ変換している。すなわち、エクステントのサイズS
EXT2D[n]はバイト単位で表される。関数CEIL()は、括弧内の数値の小数点以下の端数を切り上げる操作を意味する。
【0119】
ジャンプ中にシームレス再生を更に確実に行うには、式(1)の右辺で表される最小エクステント・サイズにマージン(余裕量)を追加するのが好ましい。具体的には、ファイル2DのエクステントのエクステントATC時間をΔT秒延長する。すなわち、そのエクステントのサイズS
EXT2Dは、式(1)に代えて次式(1A)を満たす:
【0120】
【数2】
延長時間ΔTは、GOPの長さ、又は、所定時間当たりに再生可能なエクステント数の上限から決定されてもよい。例えばGOPの長さが最大1秒であれば、延長時間ΔTは1秒に設定される。一方、所定時間[秒]当たりに再生可能なエクステント数の上限がk個であれば、延長時間ΔTは所定時間/k[秒]に設定される。
【0121】
[ファイル2Dのエクステントの間隔]
リード・バッファ1502の容量は有限であることから、ジャンプ時間T
JUMP-2D[n]の最大値は制限される。すなわち、ジャンプ期間PJ
2D[n]の直前に蓄積データ量DAがリード・バッファ1502の容量一杯であっても、ジャンプ時間T
JUMP-2D[n]が長すぎれば、ジャンプ期間PJ
2D[n]中に蓄積データ量DAが0に達し、リード・バッファ1502のアンダーフローが生じる危険性がある。以下、BD−ROMディスク101からリード・バッファ1502へのデータ供給が途絶えている状態で蓄積データ量DAがリード・バッファ1502の容量から0に到達するまでの時間、すなわち、シームレス再生を保証できるジャンプ時間T
JUMP-2Dの最大値を「最大ジャンプ時間T
JUMP MAX」という。
【0122】
光ディスクの規格では通常、ジャンプ距離と最大ジャンプ時間との間の関係が光ディスクドライブのアクセス・スピード等から決められている。
図17は、BD−ROMディスクに関するジャンプ距離S
JUMPと最大ジャンプ時間T
JUMP MAXとの間の対応表の一例である。
図17を参照するに、ジャンプ距離S
JUMPはセクタ単位で表され、最大ジャンプ時間T
JUMP MAXはm秒単位で表されている。1セクタは2048バイトに等しい。ジャンプ距離S
JUMPが、0セクタ、1−10000セクタ、10001−20000セクタ、20001−40000セクタ、40001セクタ−1/10ストローク(=640000セクタ)、及び1/10ストローク以上の各範囲に属するとき、最大ジャンプ時間T
JUMP MAXはそれぞれ、50m秒、200m秒、300m秒、350m秒、700m秒、及び1400m秒である。ジャンプ距離S
JUMPが0セクタに等しいときの最大ジャンプ時間T
JUMP MAXはゼロ・セクタ遷移時間T
JUMP0=50m秒に等しい。
【0123】
以上のことから、式(1)に代入されるべきジャンプ時間T
JUMP-2D[n]は、BD−ROMディスクの規格によってジャンプ距離別に規定された最大ジャンプ時間T
JUMP MAXである。具体的には、
図17の表において、2つの連続するファイル2DのエクステントEXT2D[n]、EXT2D[n+1]の間でのジャンプ距離S
JUMPに対応する最大ジャンプ時間T
JUMP MAXが、ジャンプ時間T
JUMP-2D[n]として式(1)に代入される。ここで、そのジャンプ距離S
JUMPは、(n+1)番目のエクステントEXT2D[n]の後端から(n+2)番目のエクステントEXT2D[n+1]の先端までのセクタ数に等しい。
【0124】
2つのエクステントEXT2D[n]、EXT2D[n+1]間のジャンプJ
2D[n]では、そのジャンプ時間T
JUMP-2D[n]が最大ジャンプ時間T
JUMP MAXに制限されることから、そのジャンプ距離S
JUMP、すなわち2つのエクステントEXT2D[n]、EXT2D[n+1]の間隔も制限される。例えばジャンプ時間T
JUMP-2D[n]が最大ジャンプ時間T
JUMP MAX=700m秒以下に制限されるとき、2つのエクステントEXT2D[n]、EXT2D[n+1]間のジャンプ距離S
JUMPは、最大で1/10ストローク(=約1.2GB)まで許される。このジャンプ距離S
JUMPの最大値のように、ジャンプ時間T
JUMPが最大ジャンプ時間T
JUMP MAXに等しいときでのジャンプ距離S
JUMPを「最大ジャンプ距離S
JUMP MAX」という。フルHDの2D映像のシームレス再生には、ファイル2Dのエクステントの間隔が最大ジャンプ距離S
JUMP MAX以下であることが必要である。
【0125】
各エクステント・ブロック内ではファイル2Dのエクステントの間隔はディペンデントビュー・エクステントのサイズに等しい。従って、そのディペンデントビュー・エクステントのサイズは最大ジャンプ距離S
JUMP MAX以下に制限される。具体的には、ファイル2Dのエクステント間の最大ジャンプ時間T
JUMP MAXが、
図17に規定された値200m秒に制限される場合、ディペンデントビュー・エクステントのサイズは、対応する最大ジャンプ距離S
JUMP MAX=10000セクタ(=約19.5MB)以下に制限される。
【0126】
2つの隣接するエクステント・ブロックの間には拡張エクステントが配置される。従って、前のエクステント・ブロックの後端に位置するベースビュー・エクステントから、次のエクステント・ブロックの先端に位置するベースビュー・エクステントまでのジャンプでは、ディペンデントビュー・エクステントに加えて拡張エクステントの読み出しもスキップされなければならない。従って、ファイル2Dのエクステントが式(1)に代えて式(1A)を満たすように、そのエクステントにはマージンが加えられる。その場合、最大ジャンプ距離S
JUMP MAXは20000セクタまで拡大される。すなわち、拡張エクステントとディペンデントビュー・エクステントとのサイズの和は、20000セクタ以下であればよい。
【0127】
異なる記録層に配置されたエクステント群の間をシームレスに接続するとき、再生装置102はロング・ジャンプを行う。そのロング・ジャンプは、フォーカス・ジャンプ等、記録層の切り換え操作を伴う。従って、そのロング・ジャンプに要する時間は、
図17の表に規定された最大ジャンプ時間T
JUMP MAXに加えて、記録層の切り換え操作に要する時間、すなわち「層切換時間」を更に含む。層切換時間は例えば350m秒である。
図12に示されている例では、ファイル2Dの4番目のエクステントEXT2D[3]から5番目のエクステントEXT2D[4]までロング・ジャンプJ
LYが行われる。その場合、4番目のエクステントEXT2D[3]のサイズが満たすべき式(1)では、ジャンプ時間T
JUMP-2D[3]は2つのパラメータTJ、TLの和で決まる:T
JUMP-2D[3]=TJ+TL。第1パラメータTJは、BD−ROMディスクの規格によって、ロング・ジャンプのジャンプ距離S
JUMPに対して規定された最大ジャンプ時間T
JUMP MAXを表す。その最大ジャンプ時間T
JUMP MAXは、
図17の表において、4番目のエクステントEXT2D[3]の後端から5番目のエクステントEXT2D[4]の先端までのセクタ数に対応付けられた値に等しい。第2パラメータTLは層切換時間、例えば350m秒を表す。従って、2つのエクステントEXT2D[3]、EXT2D[4]の間隔は、
図17の表において、ロング・ジャンプの最大ジャンプ時間T
JUMP MAXから層切換時間を除いた値に対応する最大ジャンプ距離S
JUMP MAX以下に制限される。例えばジャンプ時間T
JUMP-2D[n]が最大ジャンプ時間T
JUMP MAX=700m秒以下に制限されるとき、2つのエクステントEXT2D[3]、EXT2D[4]間の最大ジャンプ距離S
JUMP MAXは40000セクタ(=約78.1MB)である。
【0128】
2:3D再生モードでの条件
図18は、3D再生モードの再生装置102内の再生処理系統を示すブロック図である。
図18を参照するに、その再生処理系統は、BD−ROMドライブ1801、スイッチ1802、2つのリード・バッファ1811、1812、及びシステム・ターゲット・デコーダ1803を含む。BD−ROMドライブ1801はBD−ROMディスク101からファイルSSのエクステントを読み出し、読み出し速度R
UD3Dでスイッチ1802へ転送する。スイッチ1802はファイルSSの各エクステントをベースビュー・エクステントとディペンデントビュー・エクステントとに分離する。その分離処理の詳細については後述する。第1リード・バッファ1811及び第2リード・バッファ1812(以下、RB1及びRB2と略す。)は再生装置102に内蔵のバッファ・メモリであり、スイッチ1802によって分離された各エクステントを蓄積する。RB11811はベースビュー・エクステントを格納し、RB21812はディペンデントビュー・エクステントを格納する。システム・ターゲット・デコーダ1803は、RB11811内の各ベースビュー・エクステントからはソースパケットを第1転送速度R
EXT1で読み出し、RB21812内の各ディペンデントビュー・エクステントからはソースパケットを第2転送速度R
EXT2で読み出す。システム・ターゲット・デコーダ1803は更に、読み出されたベースビュー・エクステントとディペンデントビュー・エクステントとの対を映像データVDと音声データADとに復号する。
【0129】
第1転送速度R
EXT1は、システム・ターゲット・デコーダ1803がRB11811内の各ソースパケットからTSパケットを抽出する処理の平均速度の192/188倍に等しい。第1転送速度R
EXT1の最高値R
MAX1は、ファイル2Dに対するシステム・レートR
TS1の192/188倍に等しい:R
MAX1=R
TS1×192/188。そのシステム・レートR
TS1は通常、ビット/秒(bps)で表されるので、バイト/秒(Bps)で表されるメインTSの記録速度の8倍に等しい。第2転送速度R
EXT2は、システム・ターゲット・デコーダ1803がRB21812内の各ソースパケットからTSパケットを抽出する処理の平均速度の192/188倍に等しい。第2転送速度R
EXT2の最高値R
MAX2は、ファイルDEPに対するシステム・レートR
TS2の192/188倍と等しい:R
MAX2=R
TS2×192/188。そのシステム・レートR
TS2は通常、ビット/秒(bps)で表されるので、バイト/秒(Bps)で表されるサブTSの記録速度の8倍に等しい。各転送速度R
EXT1、R
EXT2は通常、ビット/秒で表され、具体的には、ビット単位で表された各エクステントのサイズをエクステントATC時間で割ったときの値に等しい。エクステントATC時間は、そのエクステント内のソースパケットを全て、RB11811又はRB21812からシステム・ターゲット・デコーダ1803へ転送するのに要する時間に等しい。
【0130】
読み出し速度R
UD3Dは通常、ビット/秒で表され、いずれの転送速度R
EXT1、R
EXT2の最高値R
MAX1、R
MAX2よりも高い値、例えば72Mbpsに設定される:R
UD3D>R
MAX1、R
UD3D>R
MAX2。それにより、BD−ROMドライブ1801によってBD−ROMディスク101からファイルSSの1つのエクステントを読み出している間、システム・ターゲット・デコーダ1803の復号処理に伴うRB11811とRB21812とのアンダーフローが防止される。
【0131】
[エクステント・ブロック内でのシームレス接続]
図19の(a)、(b)は、1つのエクステント・ブロックから3D映像がシームレスに再生されるとき、RB11811、RB21812に蓄積されるデータ量DA1、DA2の変化を示すグラフである。
図19の(c)は、そのエクステント・ブロック1910と3D再生モードでの再生経路1920との間の対応関係を示す模式図である。
図19の(c)を参照するに、再生経路1920に従い、エクステント・ブロック1910の全体がファイルSSの1つのエクステントとして一括して読み出される。その後、スイッチ1802によってそのエクステントからディペンデントビュー・エクステントD[k]とベースビュー・エクステントB[k]とが分離される(k=…、n、n+1、n+2、…)。
【0132】
BD−ROMドライブ1801による読み出し/転送動作は実際には、
図19の(a)、(b)の各グラフから示唆される連続的なものではなく、断続的なものである。それにより、各エクステントD[k]、B[k]の読み出し期間PR
D[k]、PR
B[k]では、RB11811、RB21812のオーバーフローが防止される。すなわち、
図19の(a)、(b)の各グラフは、実際には階段状である増減を直線的な増減として近似的に表したものである。
【0133】
図19の(a)、(b)を参照するに、(n+1)番目のディペンデントビュー・エクステントD[n]の読み出し期間PR
D[n]では、RB21812の蓄積データ量DA2は、読み出し速度R
UD3Dと第2転送速度R
EXT2[n]との間の差R
UD3D−R
EXT2[n]に等しい速度で増加し、RB11811の蓄積データ量DA1は第1転送速度R
EXT1[n−1]で減少する。
図19の(c)を参照するに、(n+1)番目のディペンデントビュー・エクステントD[n]から(n+1)番目のベースビュー・エクステントB[n]まではゼロ・セクタ遷移J
0[n]が生じる。
図19の(a)、(b)に示されているように、ゼロ・セクタ遷移期間PJ
0[n]では、RB11811の蓄積データ量DA1は第1転送速度R
EXT1[n−1]で減少し続け、RB21812の蓄積データ量DA2は第2転送速度R
EXT2[n]で減少する。
【0134】
図19の(a)、(b)を更に参照するに、(n+1)番目のベースビュー・エクステントB[n]の読み出し期間PR
B[n]では、RB11811の蓄積データ量DA1は、読み出し速度R
UD3Dと第1転送速度R
EXT1[n]との間の差R
UD3D−R
EXT1[n]に等しい速度で増加する。一方、RB21812の蓄積データ量DA2は第2転送速度R
EXT2[n]で減少し続ける。
図19の(c)を更に参照するに、そのベースビュー・エクステントB[n]から次のディペンデントビュー・エクステントD[n+1]まではゼロ・セクタ遷移J
0[n+1]が生じる。
図19の(a)、(b)に示されているように、ゼロ・セクタ遷移期間PJ
0[n+1]では、RB11811の蓄積データ量DA1は第1転送速度R
EXT1[n]で減少し、RB21812の蓄積データ量DA2は第2転送速度R
EXT2[n]で減少し続ける。
【0135】
1つのエクステント・ブロック1910から3D映像をシームレスに再生するには、そのエクステント・ブロックに属するエクステントB[n]、D[n]の各サイズは、以下に説明される条件2、3を満たせばよい。
【0136】
(n+1)番目のベースビュー・エクステントB[n]のサイズS
EXT1[n]は少なくとも、その読み出し期間PR
B[n]から次のベースビュー・エクステントB[n+1]の読み出し期間PR
B[n+1]の直前までに、RB11811からシステム・ターゲット・デコーダ1803へ転送されるデータ量に等しい。その場合、
図19の(a)に示されているように、次のベースビュー・エクステントB[n+1]の読み出し期間PR
B[n+1]の直前では、RB11811の蓄積データ量DA1が、(n+1)番目のベースビュー・エクステントB[n]の読み出し期間PR
B[n]の直前での量を下回らない。ここで、(n+1)番目のベースビュー・エクステントB[n]の読み出し期間PR
B[n]の長さは、そのベースビュー・エクステントB[n]のサイズS
EXT1[n]を読み出し速度R
UD3Dで割った値S
EXT1[n]/R
UD3Dに等しい。一方、(n+2)番目のディペンデントビュー・エクステントD[n+1]の読み出し期間PR
D[n+1]の長さは、そのディペンデントビュー・エクステントD[n+1]のサイズS
EXT2[n+1]を読み出し速度R
UD3Dで割った値S
EXT2[n+1]/R
UD3Dに等しい。従って、条件2は次のことを示す。そのベースビュー・エクステントB[n]の最小エクステント・サイズは、次式(2)の右辺で表される:
【0137】
【数3】
(n+1)番目のディペンデントビュー・エクステントD[n]のサイズS
EXT2[n]は少なくとも、その読み出し期間PR
D[n]から次のディペンデントビュー・エクステントD[n+1]の読み出し期間PR
D[n+1]の直前までに、RB21812からシステム・ターゲット・デコーダ1803へ転送されるデータ量に等しい。その場合、
図19の(b)に示されているように、次のディペンデントビュー・エクステントD[n+1]の読み出し期間PR
D[n+1]の直前では、RB21812の蓄積データ量DA2が(n+1)番目のディペンデントビュー・エクステントD[n]の読み出し期間PR
D[n]の直前での量を下回らない。ここで、(n+1)番目のディペンデントビュー・エクステントD[n]の読み出し期間PR
D[n]の長さは、そのディペンデントビュー・エクステントD[n]のサイズS
EXT2[n]を読み出し速度R
UD3Dで割った値S
EXT2[n]/R
UD3Dに等しい。従って、条件3は次のことを示す。そのディペンデントビュー・エクステントD[n]の最小エクステント・サイズは、次式(3)の右辺で表される:
【0138】
【数4】
[エクステント・ブロック間のシームレス接続]
図20の(b)は、(n+1)番目(文字nは1以上の整数を表す。)のエクステント・ブロックEXTSS[n]と(n+2)番目のエクステント・ブロックEXTSS[n+1]、及び、それらのエクステント・ブロックEXTSS[n]、EXTSS[n+1]と3D再生モードでの再生経路2001との間の対応関係を示す模式図である。
図20の(b)を参照するに、2つのエクステント・ブロックEXTSS[n]、EXTSS[n+1]の間は拡張エクステントT1によって分離されている。再生経路2001に従って、先に(n+1)番目のエクステント・ブロックEXTSS[n]の全体がファイルSSの(n+1)番目のエクステントとして一括して読み出される。その直後にジャンプJ
3Dが生じる。続いて、(n+2)番目のエクステント・ブロックEXTSS[n+1]がファイルSSの(n+2)番目のエクステントとして一括して読み出される。
【0139】
図20の(a)は、2つのエクステント・ブロックEXTSS[n]、EXTSS[n+1]から連続して3D映像がシームレスに再生されるとき、RB11811、RB21812に蓄積されるデータ量DA1、DA2の変化、及びそれらの和DA1+DA2の変化を示すグラフ群である。
図20の(a)では、一点鎖線のグラフは、RB11811に蓄積されるデータ量DA1の変化を示し、破線のグラフは、RB21812に蓄積されるデータ量DA2の変化を示し、実線のグラフは、両データ量の和DA1+DA2の変化を示す。ここで、実線のグラフは、エクステントが1つ読み出されるごとに生じる細かい変化を均して直線的に近似したものである。更に、ゼロ・セクタ遷移時間T
JUMP0は0m秒とみなされている。
【0140】
図20の(a)を参照するに、(n+1)番目のエクステント・ブロックEXTSS[n]の全体がBD−ROMディスク101からRB11811、RB21812へ読み出される期間PR
BLK[n]では、それらに蓄積されるデータ量DA1、DA2も増大する。具体的には、エクステント・ブロックEXTSS[n]の全体の読み出し期間PR
BLK[n]中、蓄積データ量の和DA1+DA2は、読み出し速度R
UD3Dと平均転送速度R
EXTSS[n]との間の差R
UD3D−R
EXTSS[n]に等しい速度で増加する。その平均転送速度R
EXTSS[n]は、エクステント・ブロックEXTSS[n]の全体のサイズS
EXTSS[n]をそのエクステントATC時間T
EXTSSで割った値として評価される。
【0141】
(n+1)番目のエクステント・ブロックEXTSS[n]の後端のベースビュー・エクステントB1がRB11811に読み込まれた時点で、蓄積データ量の和DA1+DA2は最大値に達する。その直後のジャンプ期間PJでは、蓄積データ量の和DA1+DA2は平均転送速度R
EXTSS[n]で減少する。従って、蓄積データ量の和DA1+DA2の最大値を十分に大きく調節することにより、拡張エクステントT1の記録領域を越えるジャンプJ
3D中、RB11811、RB21812のいずれのアンダーフローも防止することができる。その結果、2つのエクステント・ブロックEXTSS[n]、EXTSS[n+1]をシームレスに接続することができる。
【0142】
蓄積データ量の和DA1+DA2の最大値は(n+1)番目のエクステント・ブロックEXTSS[n]のサイズに依存する。従って、2つのエクステント・ブロックEXTSS[n]、EXTSS[n+1]をシームレスに接続するには、(n+1)番目のエクステント・ブロックEXTSS[n]のサイズが次の条件4を満たせばよい。
【0143】
(n+1)番目のエクステント・ブロックEXTSS[n]の先端に位置するディペンデントビュー・エクステントD0の読み出し期間PR
D0ではプリロードが行われる。そのプリロード期間PR
D0では、その直前のジャンプ期間に引き続き、n番目のエクステント・ブロックのデータがRB21812からシステム・ターゲット・デコーダ1803へ転送される。それにより、システム・ターゲット・デコーダ1803へのデータ供給が維持される。同様に、(n+2)番目のエクステント・ブロックEXTSS[n+1]の先端に位置するディペンデントビュー・エクステントD2の読み出し期間PR
D1でもプリロードが行われる。従って、そのプリロード期間PR
D1では、その直前のジャンプ期間PJに引き続き、(n+1)番目のエクステント・ブロックEXTSS[n]のデータがRB21812からシステム・ターゲット・デコーダ1803へ転送される。それにより、システム・ターゲット・デコーダ1803へのデータ供給が維持される。それ故、ジャンプJ
3D中でのRB11811、RB21812のアンダーフローを防止するには、(n+1)番目のエクステント・ブロックEXTSS[n]のエクステントATC時間T
EXTSSが少なくとも、最初のプリロード期間PR
D0の終了時点t0から次のプリロード期間PR
D1の終了時点t1までの期間の長さに等しければよい。すなわち、(n+1)番目のエクステント・ブロックEXTSS[n]のサイズS
EXTSS[n]は少なくとも、その期間t0−t1にRB11811とRB21812とからシステム・ターゲット・デコーダ1803へ転送されるデータ量の和に等しければよい。
【0144】
図20の(a)から明らかなとおり、期間t0−t1の長さは、(n+1)番目のエクステント・ブロックEXTSS[n]の読み出し期間PR
BLK[n]の長さ、ジャンプ期間PJの長さT
JUMP[n]、及び2つのエクステント・ブロックEXTSS[n]、EXTSS[n+1]間でのプリロード期間PR
D0、PR
D1の長さの差T
DIFF[n]を足し合わせた値に等しい。更に、(n+1)番目のエクステント・ブロックEXTSS[n]の読み出し期間PR
BLK[n]の長さは、そのエクステント・ブロックEXTSS[n]のサイズS
EXTSS[n]を読み出し速度R
UD3Dで割った値S
EXTSS[n]/R
UD3Dに等しい。従って、条件4は次のことを示す。ファイルSSの(n+1)番目のエクステントEXTSS[n]の最小エクステント・サイズは、次式(4)の右辺で表される:
【0145】
【数5】
各プリロード期間PR
D0、PR
D1の長さは、各エクステント・ブロックEXTSS[n]、EXTSS[n+1]の先端に位置するディペンデントビュー・エクステントD0、D1のサイズS
EXT20、S
EXT21を読み出し速度R
UD3Dで割った値S
EXT20/R
UD3D、S
EXT21/R
UD3Dに等しい。従って、プリロード期間PR
D0、PR
D1の長さの差T
DIFFはそれらの値の差に等しい:T
DIFF=S
EXT21/R
UD3D−S
EXT20/R
UD3D。尚、式(4)の右辺は、式(1)−(3)の右辺と同様に、バイト単位の整数値で表されてもよい。
【0146】
ここで、多重化ストリーム・データの復号処理を次のように工夫する場合、式(4)では、差T
DIFFを0とみなしてもよい。まず、多重化ストリーム・データの全体での差T
DIFFの最大値、すなわち差T
DIFFのワースト値を予め求めておく。次に、その多重化ストリーム・データを再生する際、その復号処理の開始時点をその読み出しの開始時点よりも、差T
DIFFのワースト値に等しい時間だけ遅らせる。
【0147】
例えば、平均転送速度R
EXTSS[n]がエクステント・ブロックEXTSS[n]のビットレートの上限64Mbpsの192/188倍に等しく、読み出し速度R
UD3Dが72Mbpsであり、拡張エクステントの記録領域でのジャンプに対する最大ジャンプ時間が200m秒であり、かつプリロード期間の長さの差T
DIFFが無視できる場合、エクステント・ブロックEXTSS[n]の最小エクステント・サイズは式(4)から16.9MBである。これは、エクステントATC時間に換算すると、エクステント・ブロックEXTSS[n]のビットレートが上限64Mbpsである場合に約2.17秒である。従って、エクステント・ブロックEXTSS[n]に含まれるベースビュー・エクステントのエクステントATC時間の合計と、ディペンデントビュー・エクステントのエクステントATC時間の合計とはいずれも2.17秒以上であればよい。
【0148】
3:最大エクステント・サイズ
シームレス再生のための上記の条件1−4により、ファイル2D、ファイルDEP、及びファイルSSの各エクステントの最小エクステント・サイズは制限される。一方、以下に説明されるように、一般的には、各エクステントのサイズが大きいほど、リード・バッファは大きな容量を必要とする。従って、リード・バッファの容量を可能な限り削減するには、各エクステントのサイズの上限を可能な限り制限することが望ましい。それらの上限を「最大エクステント・サイズ」という。
【0149】
(k+1)番目のベースビュー・エクステントEXT1[k]は(k+1)番目のディペンデントビュー・エクステントEXT2[k]とエクステントATC時間が共通である(文字kは0以上の整数を表す)。従って、(k+1)番目のベースビュー・エクステントEXT1[k]の最大エクステント・サイズの制限によってそのエクステントATC時間が短縮されれば、(k+1)番目のディペンデントビュー・エクステントEXT2[k]の最大エクステント・サイズも制限される。それ故、RB11811、RB21812の各容量の下限を許容範囲内に抑えるには、各ベースビュー・エクステントEXT1[k]のサイズが次の条件5を満たせばよい。
【0150】
ベースビュー・エクステントB[k]はファイル2DとファイルSSとに共有されている。従って、ベースビュー・エクステントB[k]のサイズS
EXT1[k]は式(1)を満たすべきである。式(1)を満たす範囲で、ベースビュー・エクステントB[k]のサイズS
EXT1[k]を可能な限り縮小するには、次のようにすればよい:ベースビュー・エクステントB[k]の最大エクステント・サイズを、式(1)の右辺の上限、すなわち、ベースビュー・エクステントB[k]の最小エクステント・サイズの上限に可能な限り近づければよい。従って、条件5は次のことを示す。ベースビュー・エクステントB[k]の最大エクステント・サイズは、次式(5)の右辺で表される:
【0151】
【数6】
式(5)の右辺は式(1)の右辺とは次の点で異なる。まず、分母に含まれる平均転送速度R
EXT2Dがその最高値R
MAX2Dに置き換えられている。従って、式(5)の右辺の2番目の分数は、式(1)のものの最大値に等しい。次に、式(5)のジャンプ時間T
JUMP-2D MINは、規格で定められた最大ジャンプ時間の中で最小の値に等しい。例えば
図17の表で規定された最大ジャンプ時間T
JUMP MAXの中では、最小値50m秒の次に大きい値200m秒が式(5)のジャンプ時間T
JUMP-2D MINとして採用される。その場合、各エクステント・ブロック内ではファイル2DのエクステントEXT2D[k]、EXT2D[k+1]の間隔が、対応する最大ジャンプ距離S
JUMP MAX=10000セクタ以下に制限される。
【0152】
式(1)に代えて式(1A)が採用されることで、ベースビュー・エクステントにマージンが加えられる場合、ベースビュー・エクステントのサイズは、式(5)に代えて、次式(5A)を満たす:
【0153】
【数7】
式(5A)の右辺で表される最大エクステント・サイズは、式(5)の右辺で表される最小エクステント・サイズよりも、延長時間ΔTにリード・バッファからシステム・ターゲット・デコーダへ読み出されるデータ量だけ大きい。そのデータ量がマージンとして確保される。
【0154】
例えばBD−ROMの規格では、エクステント・ブロックEXTSS[n]のビットレートが上限64Mbpsである場合、ベースビュー・エクステントの最大エクステント・サイズが3168アラインド・ユニット=3168×6144バイト≒18.6MBに規定されている(1MB=1024×1024バイト)。一方、ディペンデントビュー・エクステントの最大エクステント・サイズが7.7MBに規定されている。
【0155】
4:拡張再生モードでの条件
図21は、拡張再生モードの再生装置102内の再生処理系統を示すブロック図である。
図21を参照するに、その再生処理系統は、BD−ROMドライブ2101、スイッチ2102、2つのリード・バッファ2111、2112、及びシステム・ターゲット・デコーダ2103を含む。BD−ROMドライブ2101はBD−ROMディスク101から拡張エクステントとベースビュー・エクステントとを読み出し、読み出し速度R
UDEXでスイッチ2102へ転送する。スイッチ2102は拡張エクステントとベースビュー・エクステントとを分離する。第1リード・バッファ2111及び第3リード・バッファ2112(以下、RB1及びRB3と略す。)は再生装置102に内蔵のバッファ・メモリであり、スイッチ2102によって分離された各エクステントを蓄積する。RB12111はベースビュー・エクステントを格納し、RB32112は拡張エクステントを格納する。システム・ターゲット・デコーダ2103は、RB12111内の各ベースビュー・エクステントからはソースパケットを第1転送速度R
EXT1で読み出し、RB32112内の各拡張エクステントからはソースパケットを第3転送速度R
EXT3で読み出す。システム・ターゲット・デコーダ2103は更に、読み出されたベースビュー・エクステントと拡張エクステントとの対を映像データVDと音声データADとに復号する。
【0156】
第1転送速度R
EXT1は3D再生モードにおける第1転送速度に等しい。第3転送速度R
EXT3は、システム・ターゲット・デコーダ2103がRB32112内の各ソースパケットからTSパケットを抽出する処理の平均速度の192/188倍に等しい。第3転送速度R
EXT3の最高値R
MAX3は、拡張ストリーム・ファイルに対するシステム・レートR
TS3の192/188倍と等しい:R
MAX3=R
TS3×192/188。そのシステム・レートR
TS3は通常、ビット/秒(bps)で表されるので、バイト/秒(Bps)で表される拡張ストリームの記録速度の8倍に等しい。各転送速度R
EXT1、R
EXT3は通常、ビット/秒で表され、具体的には、ビット単位で表された各エクステントのサイズをエクステントATC時間で割ったときの値に等しい。
【0157】
読み出し速度R
UDEXは通常、ビット/秒で表され、いずれの転送速度R
EXT1、R
EXT3の最高値R
MAX1、R
MAX3よりも高い値、例えば72Mbpsに設定される:R
UDEX>R
MAX1、R
UDEX>R
MAX2。それにより、BD−ROMドライブ2101によってBD−ROMディスク101から、ファイル2Dの1つのエクステントを読み出している間、及び拡張ストリーム・ファイルの1つのエクステントを読み出している間のいずれにおいても、システム・ターゲット・デコーダ2103の復号処理に伴うRB12111とRB32112とのアンダーフローが防止される。
【0158】
[拡張エクステントのエクステントATC時間]
図22の(a)、(b)は、2つのエクステント群2210、2211から4K2Kの2D映像がシームレスに再生されるとき、RB12111、RB32112に蓄積されるデータ量DA1、DA3の変化を示すグラフである。
図22の(c)は、それらのエクステント群2210、2211と拡張再生モードでの再生経路2220との間の対応関係を示す模式図である。
図22の(c)を参照するに、再生経路2220に従い、各エクステント群2210、2211からは、まず拡張エクステントTが1つ読み出され、続いてディペンデントビュー・エクステントDの記録領域を越えるジャンプJ
SJとベースビュー・エクステントBの読み出しとが複数回ずつ繰り返される。
【0159】
BD−ROMドライブ2101による読み出し/転送動作は実際には、
図22の(a)、(b)の各グラフから示唆される連続的なものではなく、断続的なものである。それにより、各エクステントT、Bの読み出し期間では、RB12111、RB32112のオーバーフローが防止される。すなわち、
図22の(a)、(b)の各グラフは、実際には階段状である増減を直線的な増減として近似的に表したものである。更に、ゼロ・セクタ遷移時間T
JUMP0は0m秒とみなされている。
【0160】
図22の(a)、(b)を参照するに、最初の拡張エクステントT0の読み出し期間PR
T0では、RB32112の蓄積データ量DA3は、読み出し速度R
UDEXと第3転送速度R
EXT3との間の差R
UDEX−R
EXT3に等しい速度で増加し、RB12111の蓄積データ量DA1は第1転送速度R
EXT1で減少する。
図22の(c)を参照するに、最初の拡張エクステントT0の読み出し期間PR
T0の終了時にジャンプJ
SJが生じ、最初のディペンデントビュー・エクステントDの読み出しがスキップされる。
図22の(a)、(b)に示されているように、ジャンプ期間PSJでは、RB12111の蓄積データ量DA1は第1転送速度R
EXT1で減少し続け、RB32112の蓄積データ量DA2は第3転送速度R
EXT3で減少する。その後、最初のベースビュー・エクステントBの読み出し期間PR
Bでは、RB12111の蓄積データ量DA1は、読み出し速度R
UDEXと第1転送速度R
EXT1との間の差R
UDEX−R
EXT1に等しい速度で増加する。以降、RB12111の蓄積データ量DA1は、ディペンデントビュー・エクステントDの記録領域を越えるジャンプJ
SJが行われる間は減少し、ベースビュー・エクステントBの読み出し期間では増加する。しかし、全体的には、最初のエクステント群2210の後端が読み出されるまで、RB12111の蓄積データ量DA1は増加する。一方、RB32112の蓄積データ量DA3は第3転送速度R
EXT3で減少し続ける。
【0161】
最初のエクステント群2210が全て読み出されたとき、2番目の拡張エクステントT1の読み出しが始まる。その読み出し期間PR
T1では、RB32112の蓄積データ量DA3は、読み出し速度R
UDEXと第3転送速度R
EXT3との間の差R
UDEX−R
EXT3に等しい速度で増加し、RB12111の蓄積データ量DA1は第1転送速度R
EXT1で減少する。更に、2番目の拡張エクステントT1の読み出し期間PR
T1の終了時にジャンプJ
SJが生じ、ディペンデントビュー・エクステントDの読み出しがスキップされる。そのジャンプ期間PSJでは、RB12111の蓄積データ量DA1は第1転送速度R
EXT1で減少し続け、RB32112の蓄積データ量DA2は第3転送速度R
EXT3で減少する。
【0162】
図22の(c)に示されているエクステント群2210、2211から4K2Kの2D映像をシームレスに再生するには、拡張エクステントTのサイズが以下の条件6を満たせばよい。
【0163】
最初の拡張エクステントT0は、その直後に位置するベースビュー・エクステントBの読み出し開始時点tAから、次の拡張エクステントT1の直後に位置するベースビュー・エクステントBの読み出し開始時点tBまでに、RB32112からシステム・ターゲット・デコーダ2103へ転送されればよい。その場合、
図22の(b)に示されているように、RB32112の蓄積データ量DA3が、最初の拡張エクステントT0の読み出し期間PR
T0の直前での量を下回らない。ここで、1つのベースビュー・エクステントBの読み出し期間PR
Bの長さは、そのベースビュー・エクステントBのサイズS
Bを読み出し速度R
UDEXで割った値S
B/R
UDEXに等しい。一方、2番目の拡張エクステントT1の読み出し期間PR
T1の長さは、その拡張エクステントT1のサイズS
Tを読み出し速度R
UDEXで割った値S
T/R
UDEXに等しい。従って、条件6は次のことを示す。最初の拡張エクステントT0のエクステントATC時間ATC(T0)は次式(6)を満たす:
【0164】
【数8】
ここで、総和記号は、最初の拡張エクステントT0の直後に位置するベースビュー・エクステントBの読み出し開始時点tAから、次の拡張エクステントT1の直後に位置するベースビュー・エクステントBの読み出し開始時点tBまでの期間に含まれるジャンプ時間T
jumpの総和及びベースビュー・エクステントの読み出し期間の長さS
B/R
UDEXの総和を意味する。
【0165】
例えば、読み出し速度R
UDEXが72Mbpsであり、最初の拡張エクステントT0の直後に配置されたエクステント・ブロックにベースビュー・エクステントが2個含まれ、ジャンプ時間T
jumpの上限、すなわち最大ジャンプ時間が200m秒であり、ベースビュー・エクステントのサイズS
Bが最大エクステント・サイズ=3168×6144バイト≒18.6MBに等しい場合、式(6)から、拡張エクステントT0のエクステントATC時間ATC(T0)は約4.72秒以上である。尚、2番目の拡張エクステントT1のサイズS
Tはベースビュー・エクステントのサイズS
Bの総和よりも十分に小さいので、無視されている。
【0166】
拡張エクステントT0のエクステントATC時間ATC(T0)はまた、その拡張エクステントT0の直後に配置されたエクステント・ブロックに含まれるベースビュー・エクステントBのエクステントATC時間ATC(B)の合計に等しい:ATC(T0)=ΣATC(B)。ここで、ベースビュー・エクステントBのサイズS
Bが最大エクステント・サイズ≒18.6MBに等しい場合、そのベースビュー・エクステントBのエクステントATC時間ATC(B)は上限約3.18秒に達する。従って、最初の拡張エクステントT0の直後に配置されたエクステント・ブロックにベースビュー・エクステントが2個含まれる場合、その拡張エクステントT0のエクステントATC時間の上限は約6.36秒である。実際には、拡張エクステントT0のサイズをECCブロックの整数倍に調節する必要がある。それ故、拡張エクステントT0のエクステントATC時間の許容上限を約6.5秒とする。拡張エクステントT0のサイズS
TはエクステントATC時間ATC(T0)と拡張ストリームのビットレートの192/188倍との積に等しいので、そのビットレートが10Mbps、20Mbpsである場合、拡張エクステントT0のサイズS
Tの上限はそれぞれ、7.9MB、15.8MBである。
【0167】
[2つの拡張エクステントの間に位置するエクステント・ペアの数]
3D再生モードの再生装置102は、
図20の(a)、(b)に示されているように、1つの拡張エクステントTの直後に位置するエクステント・ブロックEXTSS[n]を読み出すことにより、次の拡張エクステントT1の記録領域をジャンプする間にシステム・ターゲット・デコーダに送るべきデータ量をRB1、RB2に蓄積させる。その場合、条件4から、エクステント・ブロックEXTSS[n]のエクステントATC時間は短くとも約2.17秒でなければならない。一方、ディペンデントビュー・エクステントの最大エクステント・サイズは7.7MBである。従って、1つのディペンデントビュー・エクステントだけでは、そのサイズを最大エクステント・サイズまで拡げても、2.17秒のエクステントATC時間を確保することができない場合がある。それ故、
図13に示されているように、2つの拡張エクステントT[m]、T[m+1]の間にはエクステント・ペアD[k]、B[k]が2つ以上配置される。それにより、そのエクステント・ブロック全体では、ディペンデントビュー・エクステントのエクステントATC時間の合計を2.17秒以上に設計することができる。
【0168】
一方、2つの拡張エクステントT[m]、T[m+1]の間に配置されるエクステント・ペアD[k]、B[k]の数の上限nは次のように決定される。
図23の(a)は、
図17の表に示されているジャンプ距離と最大ジャンプ時間との間の対応関係をグラフで表したものである。
図23の(b)は、拡張再生モードにおける飛び込み再生の再生開始位置が1つのエクステント・ブロックの最後のベースビュー・エクステントB[m+n−1]に含まれている場合での再生経路を示す模式図である。
図23の(b)を参照するに、飛び込み再生の開始時、再生装置102はまず、そのベースビュー・エクステントB[m+n−1]に対応する拡張エクステントT[m]を読み出す。再生装置102はその後、ジャンプJMPを行ってそのベースビュー・エクステントB[m+n−1]を読み出す。ここで、数字nが大きいほどジャンプJMPのジャンプ距離は増大する。
図23の(a)のグラフのように、そのジャンプ距離が所定の閾値Sj0、Sj1、…に達する度に、ジャンプJMPの最大ジャンプ時間は階段状に増大する。ジャンプJMPのジャンプ時間が長いほど、飛び込み再生が指示されてから実際に開始されるまでの待ち時間が長いので、飛び込み再生の応答を速くするには、ジャンプJMPのジャンプ距離に上限を設けなければならない。
図23の(a)を更に参照するに、最大ジャンプ時間の増分Tj(n+1)−Tjn(n=0、1、2、…)は、ジャンプ距離が長いほど飛躍的に増大する。具体的には、ジャンプ距離が2番目の閾値Sj1=20000セクタであるときには最大ジャンプ時間の増分Tj3−Tj2が50m秒である。それに対し、ジャンプ距離が4番目の閾値Sj3=1/10ストローク=640000セクタであるときには最大ジャンプ時間Tj5−Tj4の増分が700m秒である。従って、ジャンプJMPのジャンプ距離の上限はいずれかの閾値に設定される。それにより、2つの拡張エクステントT[m]、T[m+1]の間に配置されるエクステント・ペアD[k]、B[k]の数の上限nは、その閾値と同数のセクタ群に配置可能なエクステント・ペアの数の上限に等しい。
【0169】
例えば、各エクステントD[k]、B[k]のエクステントATC時間が3秒であり、ファイルSSのビットレートが上限64Mbpsに等しい場合、エクステント・ペアD[k]、B[k]全体のサイズは約11720セクタである。従って、そのサイズのエクステント・ペアが1つのエクステント・ブロックの中に55個以上含まれていれば、そのエクステント・ブロックのサイズは4番目の閾値Sj3=640000セクタを超える。その結果、そのエクステント・ブロックの読み出しをスキップするのに要するジャンプ時間は最長で5番目の最大ジャンプ時間Tj5=1400m秒に達する。一方、上記のサイズのエクステント・ペアが1つのエクステント・ブロックの中に54個以下しか含まれていなければ、そのエクステント・ブロックのサイズは4番目の閾値Sj3=640000セクタ以下である。従って、上記のジャンプ時間は最長でも4番目の最大ジャンプ時間Tj4=700m秒しか要さない。このように、1つのエクステント・ブロックに含まれるエクステント・ペアの数を54個以下に制限した場合、55個以上の配置を許す場合よりもジャンプ時間が最大で半分に短縮される。その結果、飛び込み再生時の待ち時間を短く抑えることができる。
【0170】
[拡張エクステントの最小エクステント・サイズ]
BD−ROM規格によれば、1つのAVストリーム・ファイルが複数のエクステントに分割される場合、エクステント1つ当たりのサイズが、条件1−4によらず、500KB以上でなければならない。それにより、2つのエクステントの間に別のデータが配置されていても、1つのエクステントの読み出しによって、別のデータの記録領域をジャンプする間にデコーダへ送るのに十分なデータ量をリード・バッファに蓄積することができる。すなわち、ジャンプ期間中にリード・バッファがアンダーフローを生じない。従って、別のデータの存在にかかわらず、それら2つのエクステントをシームレスに復号することができる。
【0171】
「エクステント1つ当たりのサイズが500KB以上でなければならない」という規定に従う限り、拡張エクステントのサイズは、条件6を満たすだけでなく、500KB以上でもなければならない。しかし、拡張ストリームのビットレートは一般に低いので、その規定を満たすことができない場合がある。例えば、拡張ストリームのビットレートが1Mbpsであり、拡張エクステント1つ当たりのエクステントATC時間が3.18秒である場合、拡張エクステント1つ当たりのサイズは379KBであり、500KBには満たない。その場合、全ての拡張エクステントにパディング・ビットを補うのは、BD−ROMディスク101のボリューム領域202Bを無駄に消費するので好ましくない。
【0172】
一方、
図12に示されているように、拡張再生モードにおける再生経路1203では、読み出し開始位置の拡張エクステントを除き、拡張エクステントは必ず、その直前のベースビュー・エクステントと連続して読み出される。実際には、ベースビュー・エクステントの読み出し期間と拡張エクステントの読み出し期間との間にはゼロ・セクタ遷移J
0が行われるが、その時間は50m秒であって十分に短い。また、拡張エクステントが条件6を満たす限り、再生経路1203に含まれるジャンプ中にRB3がアンダーフローを生じることはない。従って、上記の規定は、隣接するベースビュー・エクステントと拡張エクステントとの全体で満たされればよい。
【0173】
図24は、拡張エクステントが500KB以上という規定を満たす方法を示す模式図である。拡張再生モードの再生装置102は読み出し開始位置の拡張エクステントT[0]を単独で読み出す。従って、
図24に示されているように、この拡張エクステントT[0]のサイズS
Tが500KB以下である場合、パディング・ビット2401が拡張エクステントT[0]に付加される。一方、次の拡張エクステントT[1]はその直前のベースビュー・エクステントB[n−1]と連続して読み出される。従って、
図24に示されているように、拡張エクステントT[1]のサイズS
Tとベースビュー・エクステントB[n−1]のサイズS
Bとの合計が500KB以上であればよい:S
T+S
B≧500KB。更に、ベースビュー・エクステントB[n−1]のサイズは500KB以上である:S
B≧500KB。その結果、拡張エクステントT[1]のサイズS
Tは常に500KBよりも小さくてもよい。それ故、読み出し開始位置の拡張エクステントT[0]を除き、拡張エクステントにはパディング・ビットが付加されなくてもよい。それにより、ベースビュー・エクステント及びディペンデントビュー・エクステントを記録可能な領域を広く確保することができるので、BD−ROMディスク101のボリューム領域202Bを有効に利用することができる。
【0174】
[リード・バッファの容量の下限]
図25の(a)、(b)は、層境界LBで分離された2つのエクステント群2510、2511から4K2Kの2D映像がシームレスに再生されるとき、RB12111、RB32112に蓄積されるデータ量DA1、DA3の変化を示すグラフである。
図25の(c)は、それらのエクステント群2510、2511と拡張再生モードでの再生経路2520との間の対応関係を示す模式図である。
図25の(c)を参照するに、再生経路2520に従い、各エクステント群2510、2511からは、まず拡張エクステントTが1つ読み出され、続いてディペンデントビュー・エクステントDの記録領域を越えるジャンプとベースビュー・エクステントBの読み出しとが複数回ずつ繰り返される。
【0175】
図25の(a)、(c)を参照するに、層境界LBを越えるロング・ジャンプ期間PLJ、その直後の拡張エクステントT1のプリロード期間PR
T1、及びその直後のジャンプ期間PSJにわたり、RB12111の蓄積データ量DA1は、層境界LBの直前に位置するベースビュー・エクステントB1がRB12111に読み込まれた直後の値DM1から第1転送速度R
EXT1で減少する。従って、3つの期間PLJ、PR
T1、PSJが経過するまで蓄積データ量DA1が0に達するのを防ぐには、上記の値DM1が次のデータ量以上であればよい。そのデータ量は、それら3つの期間PLJ、PR
T1、PSJでRB12111からシステム・ターゲット・デコーダ2103へ転送されるデータ量であり、各期間の長さT
LJ、S
T/R
UDEX、T
SJの和に第1転送速度R
EXT1を乗じた値に等しい:DM1≧(T
LJ+S
T/R
UDEX+T
SJ)×R
EXT1。第1転送速度R
EXT1は最高値R
MAX1=R
TS1×192/188まで達し得るので、RB12111の容量RB1の下限は次式(7)の右辺で表される:
【0176】
【数9】
図25の(b)、(c)を参照するに、層境界LBの直前に位置するエクステント・ブロックの読み出し期間PR
BLK、及びロング・ジャンプ期間PLJにわたり、RB32112の蓄積データ量DA3は、そのエクステント・ブロックの直前に位置する拡張エクステントT0がRB32112に読み込まれた直後の値DM3から第3転送速度R
EXT3で減少する。更に、ロング・ジャンプJ
LJの直後の拡張エクステントT1のプリロード期間PR
T1、及びその直後のジャンプ期間PSJでは、その拡張エクステントT1はシステム・ターゲット・デコーダ2103へは転送されない。従って、4つの期間PR
BLK、PLJ、PR
T1、PSJが経過するまで、RB32112からシステム・ターゲット・デコーダ2103へのデータ供給を継続させるには、上記の値DM3が、それら4つの期間PR
BLK、PLJ、PR
T1、PSJでRB32112からシステム・ターゲット・デコーダ2103へ転送されるデータ量以上であればよい。層境界LBの直前に位置するエクステント・ブロックがn個のエクステント・ペアD、Bを含む場合、上記の値DM3は、ベースビュー・エクステントBの読み出し期間の長さS
B/R
UDEX、ディペンデントビュー・エクステントDの記録領域を越えるジャンプのジャンプ時間T
SJ、ロング・ジャンプのジャンプ時間T
LJ、拡張エクステントの読み出し期間の長さS
T/R
UDEX、及び第3転送速度R
EXT3と共に次式を満たす:DM3≧[(T
SJ+S
B/R
UDEX)×n+T
LJ+S
T/R
UDEX+T
SJ]×R
EXT3。第3転送速度R
EXT3は最高値R
MAX3=R
TS3×192/188まで達し得る。また、再生開始時にはプリロードが行われるので、RB32112の容量RB3は拡張エクステントTの最大エクステント・サイズmaxS
T以上でなければならない。以上の結果から、RB32112の容量RB3の下限は次式(8)の右辺で表される:
【0177】
【数10】
図26は、RB1、RB3の各容量の下限と、拡張ストリームのビットレートとの間の関係を示すグラフである。これらのグラフは、式(7)、(8)に次の値を代入することで得られる:T
LJ=700m秒、T
SJ=200m秒、R
UDEX=72Mbps、R
TS3=48Mbps、S
B=3168×6144バイト、n=2、S
T=6.5秒×R
TS3×192/188。
図26を参照するに、一点鎖線のグラフはRB1の容量の下限を示し、破線のグラフはRB3の容量の下限を示し、実線のグラフはRB1とRB3との各容量の下限の和を示す。
図26のグラフが示すとおり、拡張ストリームのビットレートが低いほど、各容量の下限は小さく、特に、ビットレートが約16Mbpsよりも低い場合、RB3の容量の下限はRB1の容量の下限よりも小さい。具体的には、拡張ストリームのビットレートが10Mbpsである場合、RB1の容量は10.7MB以上であり、RB3の容量は8.0MB以上である。従って、RB1とRB3との容量の和は18.7MB以上である:RB1≧10.7MB、RB3≧8.0MB、RB1+RB3≧18.7MB。更に、拡張ストリームのビットレートが15Mbps、20Mbpsである場合、RB1とRB3との容量の和はそれぞれ、26.1MB以上、34.2MB以上である。
【0178】
≪クリップ情報ファイル≫
図27は、2Dクリップ情報ファイル231のデータ構造を示す模式図である。
図27を参照するに、2Dクリップ情報ファイル231は、クリップ情報2710、ストリーム属性情報2720、エントリ・マップ2727、及び3Dメタデータ2740を含む。3Dメタデータ2740はエクステント起点2742を含む。DEPクリップ情報ファイル232及び拡張クリップ情報ファイル233も同様なデータ構造を持つ。
【0179】
クリップ情報2710は、
図27に示されているように、システム・レート2711、再生開始時刻2712、及び再生終了時刻2713を含む。システム・レート2711は、ファイル2D221に対するシステム・レートR
TSを規定する。ここで、
図15に示されているように、2D再生モードの再生装置102は、ファイル2D221に属する“TSパケット”をリード・バッファ1502からシステム・ターゲット・デコーダ1503へ転送する。従って、ファイル2D221では、TSパケットの転送速度がシステム・レートR
TS以下に抑えられるように、ソースパケットのATSの間隔が設定されている。再生開始時刻2712は、ファイル2D221の先頭のVAUに割り当てられたPTS、例えば先頭のビデオ・フレームのPTSを示す。再生終了時刻2712は、ファイル2D221の後端のVAUに割り当てられたPTSから更に所定量遅れたSTCの値、例えば最後のビデオ・フレームのPTSに1フレーム当たりの再生時間を加えた値を示す。
【0180】
ストリーム属性情報2720は、
図27に示されているように、ファイル2D221に含まれる各エレメンタリ・ストリームのPID2721とその属性情報2722との間の対応表である。属性情報2722は、ビデオ・ストリーム、オーディオ・ストリーム、PGストリーム、及びIGストリームのそれぞれで異なる。例えばプライマリ・ビデオ・ストリームのPID0x1011に対応付けられた属性情報は、そのビデオ・ストリームの圧縮に利用されたコーデックの種類、そのビデオ・ストリームを構成する各ピクチャの解像度、アスペクト比、及びフレームレートを含む。一方、プライマリ・オーディオ・ストリームのPID0x1100に対応付けられた属性情報は、そのオーディオ・ストリームの圧縮に利用されたコーデックの種類、そのオーディオ・ストリームに含まれるチャンネル数、言語、及びサンプリング周波数を含む。属性情報2722は再生装置102により、デコーダの初期化に利用される。
【0181】
[エントリ・マップ]
図28の(a)は、エントリ・マップ2730のデータ構造を示す模式図である。
図28の(a)を参照するに、エントリ・マップ2730はテーブル2800を含む。テーブル2800は、メインTSに多重化されたビデオ・ストリームと同数であり、各ビデオ・ストリームに1つずつ割り当てられている。
図28の(a)では、各テーブル2800は割り当て先のビデオ・ストリームのPIDで区別されている。各テーブル2800はエントリ・マップ・ヘッダ2801とエントリ・ポイント2802とを含む。エントリ・マップ・ヘッダ2801は、そのテーブル2800に対応付けられたPIDと、そのテーブル2800に含まれるエントリ・ポイント2802の総数とを含む。エントリ・ポイント2802は、PTS2803とソースパケット番号(SPN)2804との対を1つずつ、異なるエントリ・ポイントID(EP_ID)2805に対応付けている。PTS2803は、エントリ・マップ・ヘッダ2801の示すPIDのビデオ・ストリームに含まれるいずれかのIピクチャのPTSに等しい。SPN2804は、そのIピクチャが格納されたソースパケット群の先頭のSPNに等しい。ここで、「SPN」とは、1つのAVストリーム・ファイルに属するソースパケット群に、先頭から順に割り当てられた通し番号をいう。SPNは、そのAVストリーム・ファイル内での各ソースパケットのアドレスとして利用される。2Dクリップ情報ファイル231内のエントリ・マップ2730では、SPNは、ファイル2D221に属するソースパケット群、すなわち、メインTSを格納しているソースパケット群に割り当てられた番号を意味する。従って、エントリ・ポイント2802は、ファイル2D221に含まれる各IピクチャのPTSとアドレス、すなわちSPNとの間の対応関係を表す。
【0182】
エントリ・ポイント2802は、ファイル2D221内の全てのIピクチャに対して設定されていなくてもよい。但し、IピクチャがGOPの先頭に位置し、かつ、そのIピクチャの先頭を含むTSパケットがエクステントの先頭に位置するときは、そのIピクチャにはエントリ・ポイント2802が設定されなければならない。
【0183】
図28の(b)は、ファイル2D221に属するソースパケット群2810のうち、エントリ・マップ2730によって各EP_ID2805に対応付けられているものを示す模式図である。
図28の(c)は、そのソースパケット群2810に対応するBD−ROMディスク101上のエクステント群D[n]、B[n](n=0、1、2、3、…)を示す模式図である。再生装置102は、ファイル2D221から2D映像を再生する際にエントリ・マップ2730を利用して、任意のシーンを表すフレームのPTSから、そのフレームを含むソースパケットのSPNを特定する。具体的には、再生開始位置として特定のエントリ・ポイントのPTS、例えばPTS=360000が指定されたとき、再生装置102はまず、エントリ・マップ2730から、そのPTSに対応付けられたSPN=3200を検索する。再生装置102は次に、そのSPNとソースパケット1つ当たりのデータ量192バイトとの積を求め、更に、その積をセクタ1つ当たりのデータ量2048バイトで割ったときの商、SPN×192/2048を求める。
図6の(b)、(c)から理解されるとおり、その商は、メインTSのうち、そのSPNが割り当てられたソースパケットよりも前の部分が記録されたセクタの総数に等しい。
図28の(b)に示されている例では、その商、3200×192/2048=300は、0から3199までのSPNが割り当てられたソースパケット群2811が記録されたセクタの総数に等しい。再生装置102は続いて、ファイル2D221のファイル・エントリを参照し、ファイル2D221のエクステント群が記録されたセクタ群の先頭から数えて(上記の総数+1)番目のセクタのLBNを特定する。
図28の(c)に示されている例では、エクステントEXT2D[0]、EXT2D[1]、EXT2D[2]、…としてアクセス可能なベースビュー・エクステントB[0]、B[1]、B[2]、…が記録されたセクタ群のうち、先頭から数えて301番目のセクタのLBNが特定される。再生装置102はそのLBNをBD−ROMドライブに指定する。それにより、そのLBNのセクタから順にベースビュー・エクステント群がアラインド・ユニット単位で読み出される。再生装置102は更に、最初に読み出されたアラインド・ユニットから、再生開始位置のエントリ・ポイントの示すソースパケットを選択し、それらからIピクチャを抽出して復号する。それ以降、後続のピクチャは、先に復号されたピクチャを利用して順次復号される。こうして、再生装置102はファイル2D221から特定のPTS以降の2D映像を再生できる。
【0184】
エントリ・マップ2730は更に、早送り再生及び巻戻し再生等の特殊再生の効率的な処理に有利である。例えば2D再生モードの再生装置102は、まずエントリ・マップ2730を参照して、再生開始位置、例えばPTS=360000以降のPTSを含むエントリ・ポイント、EP_ID=2、3、…からSPN=3200、4800、…を順番に読み出す。再生装置102は次にファイル2D221のファイル・エントリを利用して、各SPNに対応するセクタのLBNを特定する。再生装置102は続いて、各LBNをBD−ROMドライブに指定する。それにより、各LBNのセクタからアラインド・ユニットが読み出される。再生装置102は更に各アラインド・ユニットから、各エントリ・ポイントの示すソースパケットを選択し、それらからIピクチャを抽出して復号する。こうして、再生装置102はエクステント群EXT2D[n]自体を解析することなく、ファイル2D221からIピクチャを選択的に再生できる。
【0185】
[エクステント起点]
図29の(a)は、エクステント起点2742のデータ構造を示す模式図である。
図29の(a)を参照するに、「エクステント起点(Extent_Start_Point)」2742はベースビュー・エクステントID(EXT1_ID)2911とSPN2912とを含む。EXT1_ID2911は、ファイルSS223に属する各ベースビュー・エクステントに、先頭から順に割り当てられた通し番号である。SPN2912は各EXT1_ID2911に1つずつ割り当てられ、そのEXT1_ID2911で識別されるベースビュー・エクステントの先端に位置するソースパケットのSPNに等しい。ここで、そのSPNは、ファイルSS223に属するベースビュー・エクステント群に含まれる各ソースパケットに、先頭から順に割り当てられた通し番号である。
【0186】
図11に示されているエクステント・ブロックでは、各ベースビュー・エクステントB[0]、B[1]、B[2]、…はファイル2D221とファイルSS223とに共有される。しかし、記録層間の境界等、ロング・ジャンプの必要な箇所に配置されたエクステント群は一般に、ファイル2D221、ファイルSS223、又は拡張ストリーム・ファイル224のいずれかにのみ属するベースビュー・エクステントを含む(詳細は実施形態2の説明を参照)。従って、エクステント起点2742の示すSPN2912は、ファイル2D221に属するエクステントの先端に位置するソースパケットのSPNとは一般に異なる。
【0187】
図29の(b)は、DEPクリップ情報ファイル232に含まれるエクステント起点2920のデータ構造を示す模式図である。
図29の(b)を参照するに、エクステント起点2920はディペンデントビュー・エクステントID(EXT2_ID)2921とSPN2922とを含む。EXT2_ID2921は、ファイルSS223に属する各ディペンデントビュー・エクステントに先頭から順に割り当てられた通し番号である。SPN2922は各EXT2_ID2921に1つずつ割り当てられ、そのEXT2_ID2921で識別されるディペンデントビュー・エクステントの先端に位置するソースパケットのSPNに等しい。ここで、そのSPNは、ファイルSS223に属するディペンデントビュー・エクステント群に含まれる各ソースパケットに、先頭から順に割り当てられた通し番号である。
【0188】
図29の(d)は、ファイルDEP222に属するディペンデントビュー・エクステントEXT2[0]、EXT2[1]、…と、エクステント起点2920の示すSPN2922との間の対応関係を表す模式図である。
図11に示されているように、ディペンデントビュー・エクステントはファイルDEP222とファイルSS223とに共有される。従って、
図29の(d)に示されているように、エクステント起点2920の示す各SPN2922は、各ディペンデントビュー・エクステントEXT2[0]、EXT2[1]、…の先端に位置するソースパケットのSPNに等しい。
【0189】
2Dクリップ情報ファイル231のエクステント起点2742と、DEPクリップ情報ファイル232のエクステント起点2920とは、以下に説明するように、ファイルSS223から3D映像が再生されるとき、ファイルSS223の各エクステントに含まれるベースビュー・エクステントとディペンデントビュー・エクステントとの間の境界の検出に利用される。
【0190】
図29の(e)は、ファイルSS223に属するエクステントEXTSS[0]とBD−ROMディスク101上のエクステント・ブロックとの間の対応関係を示す模式図である。
図29の(e)を参照するに、そのエクステント・ブロックはインターリーブ配置のエクステント群D[n]、B[n](n=0、1、2、…)を含む。そのエクステント・ブロックはファイルSS223のエクステントEXTSS[0]としてアクセス可能である。更に、そのエクステントEXTSS[0]の中で、(n+1)番目のベースビュー・エクステントB[n]に含まれるソースパケットの数は、エクステント起点2742において、EXT1_ID=n+1、nのそれぞれに対応するSPN間の差A(n+1)−Anに等しい。ここで、A0=0とする。一方、ディペンデントビュー・エクステントD[n+1]に含まれるソースパケットの数は、エクステント起点2920において、EXT2_ID=n+1、nのそれぞれに対応するSPN間の差B(n+1)−Bnに等しい。ここで、B0=0とする。
【0191】
3D再生モードの再生装置102は、ファイルSS223から3D映像を再生するとき、各クリップ情報ファイル231、232のエントリ・マップとエクステント起点2742、2920とを利用する。それにより、再生装置102は、任意のシーンのライトビューを表すフレームのPTSから、そのフレームの構成に必要なディペンデントビュー・エクステントが記録されたセクタのLBNを特定する。具体的には、再生装置102はまず、DEPクリップ情報ファイル232のエントリ・マップから、そのPTSに対応付けられたSPNを検索する。仮にそのSPNの示すソースパケットが、ファイルDEP222の3番目のディペンデントビュー・エクステントEXT2[2]=D[2]に含まれる場合を想定する。再生装置102は次に、DEPクリップ情報ファイル232のエクステント起点2920の示すSPN2922の中から、目標のSPN以下で最大のもの“B2”と、それに対応するEXT2_ID“2”とを検索する。再生装置102は続いて、2Dクリップ情報ファイル231のエクステント起点2742から、そのEXT2_ID“2”と等しいEXT1_IDに対応するSPN2912の値“A2”を検索する。再生装置102は更に、検索されたSPNの和B2+A2を求める。
図29の(e)から理解されるように、その和B2+A2は、ファイルSS223のエクステントEXTSS[0]の中で、3番目のディペンデントビュー・エクステントD[2]よりも前に配置されたソースパケットの総数に等しい。従って、その和B2+A2とソースパケット1つ当たりのデータ量192バイトとの積をセクタ1つ当たりのデータ量2048バイトで割ったときの商(B2+A2)×192/2048は、ファイルSS223のエクステントEXTSS[0]の先頭から3番目のディペンデントビュー・エクステントD[2]の直前までのセクタ数に等しい。この商を利用してファイルSS223のファイル・エントリを参照すれば、そのディペンデントビュー・エクステントD[2]の先端が記録されたセクタのLBNを特定することができる。
【0192】
再生装置102は、上記のようにLBNを特定した後、そのLBNをBD−ROMドライブに指定する。それにより、そのLBNのセクタ以降に記録されたファイルSS223のエクステントEXTSS[0]の部分、すなわち3番目のディペンデントビュー・エクステントD[2]以降のエクステント群D[2]、B[2]、D[3]、B[3]、…がアラインド・ユニット単位で読み出される。
【0193】
再生装置102は更にエクステント起点2742、2920を利用して、読み出されたファイルSS223のエクステントから、ディペンデントビュー・エクステントとベースビュー・エクステントとを交互に抽出する。例えば、
図29の(e)に示されているファイルSS223のエクステントEXTSS[0]からエクステント群D[n]、B[n](n=0、1、2、…)が順番に読み出されるときを想定する。再生装置102はまず、エクステントEXTSS[0]の先頭からB1個のソースパケットを最初のディペンデントビュー・エクステントD[0]として抽出する。再生装置102は次に、B1番目のソースパケットと、それに続く(A1−1)個のソースパケットとの計A1個のソースパケットを最初のベースビュー・エクステントB[0]として抽出する。再生装置102は続いて、(B1+A1)番目のソースパケットと、それに続く(B2−B1−1)個のソースパケットとの計(B2−B1)個のソースパケットを2番目のディペンデントビュー・エクステントD[1]として抽出する。再生装置102は更に、(A1+B2)番目のソースパケットと、それに続く(A2−A1−1)個のソースパケットとの計(A2−A1)個のソースパケットを2番目のベースビュー・エクステントB[1]として抽出する。それ以降も再生装置102は同様に、読み出されるソースパケットの数を用いて、ファイルSS223のエクステント内からディペンデントビュー・エクステントとベースビュー・エクステントとの間の境界を検出し、それらのエクステントを交互に抽出する。抽出されたベースビュー・エクステントとディペンデントビュー・エクステントとはパラレルにシステム・ターゲット・デコーダに渡されて復号される。こうして、3D再生モードの再生装置102はファイルSS223から特定のPTS以降の3D映像を再生できる。
【0194】
≪ファイル・ベース≫
図29の(c)は、3D再生モードの再生装置102によってファイルSS223から抽出されたベースビュー・エクステントB[0]、B[1]、B[2]、…を表す模式図である。
図29の(c)を参照するに、それらのベースビュー・エクステントB[n](n=0、1、2、…)に含まれるソースパケット群に、先頭から順にSPNを割り当てたとき、各ベースビュー・エクステントB[n]の先端に位置するソースパケットのSPNは、エクステント起点2742の示すSPN2912に等しい。それらのベースビュー・エクステント群B[n]のように、エクステント起点を利用して1つのファイルSSから抽出されるベースビュー・エクステント群を「ファイル・ベース」という。
図29の(e)に示されているように、各ベースビュー・エクステントEXT1[0]、EXT1[1]、…はクリップ情報ファイル内のエクステント起点2742、2920によって参照される。
【0195】
ファイル・ベースのエクステントEXT1[n]はファイル2DのエクステントEXT2D[n]とベースビュー・エクステントB[n]を共有する。従って、ファイル・ベースはファイル2Dと同じメインTSを含む。しかし、ファイル・ベースはファイル2Dとは異なり、ファイル・エントリを含まない。かつ、ベースビュー・エクステントの参照にエクステント起点を必要とする。それらの意味で、ファイル・ベースは「仮想的なファイル」である。特にファイル・ベースはファイルシステムでは認識されず、
図2に示されているディレクトリ/ファイル構造には現れない。
【0196】
≪2Dプレイリスト・ファイル≫
図30は、2Dプレイリスト・ファイルのデータ構造を示す模式図である。
図30を参照するに、2Dプレイリスト・ファイル241はメインパス3001と2本のサブパス3002、3003とを含む。
【0197】
メインパス3001はプレイアイテム情報(以下、PIと略す。)の配列であり、ファイル2D221の主要な再生経路、すなわち再生対象の部分とその再生順とを規定する。各PIは固有のプレイアイテムID=#N(N=1、2、3、…)で識別される。各PI#Nは主要な再生経路の異なる再生区間を一対のPTSで規定する。その対の一方はその再生区間の開始時刻(In−Time)を表し、他方は終了時刻(Out−Time)を表す。更に、メインパス3001内でのPIの順序は、対応する再生区間の再生経路内での順序を表す。
【0198】
各サブパス3002、3003はサブプレイアイテム情報(以下、SUB_PIと略す。)の配列であり、ファイル2D221の主要な再生経路に並列に付随可能な再生経路を規定する。その再生経路は、メインパス3001の表すファイル2D221の部分とは別の部分とその再生順、又は、別のファイル2Dに多重化されたストリーム・データの部分とその再生順を示す。そのストリーム・データは、メインパス3001に従ってファイル2D221から再生される2D映像と同時に再生されるべき別の2D映像を表す。その別の2D映像は例えば、ピクチャ・イン・ピクチャ方式における副映像、ブラウザ画面、ポップアップ・メニュー、又は字幕を含む。サブパス3002、3003には2Dプレイリスト・ファイル241への登録順に通し番号“0”、“1”が振られている。その通し番号はサブパスIDとして各サブパス3002、3003の識別に利用される。各サブパス3002、3003では、各SUB_PIが固有のサブプレイアイテムID=#M(M=1、2、3、…)で識別される。各SUB_PI#Mは、再生経路の異なる再生区間を一対のPTSで規定する。その対の一方はその再生区間の再生開始時刻を表し、他方は再生終了時刻を表す。更に、各サブパス3002、3003内でのSUB_PIの順序は、対応する再生区間の再生経路内での順序を表す。
【0199】
図31は、PI#Nのデータ構造を示す模式図である。
図31を参照するに、PI#Nは、参照クリップ情報3101、再生開始時刻(In_Time)3102、再生終了時刻(Out_Time)3103、及びストリーム選択テーブル(以下、STN(Stream Number)テーブルと略す。)3105を含む。参照クリップ情報3101は、2Dクリップ情報ファイル231を識別するための情報である。再生開始時刻3102と再生終了時刻3103とは、ファイル2D221の再生対象部分の先端と後端との各PTSを示す。STNテーブル3105は、再生開始時刻3102から再生終了時刻3103までの間に、再生装置102内のデコーダによってファイル2D221から選択可能なエレメンタリ・ストリームのリストを表す。
【0200】
SUB_PIのデータ構造は、
図31に示されているPIのデータ構造と、参照クリップ情報、再生開始時刻、及び再生終了時刻を含む点で共通する。特にSUB_PIの再生開始時刻と再生終了時刻とは、PIのそれらと同じ時間軸上の値で表される。
【0201】
[STNテーブル]
図31を更に参照するに、STNテーブル3105はストリーム登録情報の配列である。「ストリーム登録情報」とは、再生開始時刻3102から再生終了時刻3103までの間にメインTSから再生対象として選択可能なエレメンタリ・ストリームを個別に示す情報である。ストリーム番号(STN)3106は、ストリーム登録情報に個別に割り当てられた通し番号であり、再生装置102によって各エレメンタリ・ストリームの識別に利用される。STN3106は更に、同じ種類のエレメンタリ・ストリームの間では選択の優先順位を表す。ストリーム登録情報はストリーム・エントリ3109とストリーム属性情報3110と含む。ストリーム・エントリ3109はストリーム・パス情報3107とストリーム識別情報3108とを含む。ストリーム・パス情報3107は、選択対象のエレメンタリ・ストリームが属するファイル2Dを示す情報である。例えば、ストリーム・パス情報3107が“メインパス”を示すとき、そのファイル2Dは、参照クリップ情報3101の示す2Dクリップ情報ファイルに対応するものである。一方、ストリーム・パス情報3107が“サブパスID=1”を示すとき、選択対象のエレメンタリ・ストリームが属するファイル2Dは、サブパスID=1のサブパスに含まれるSUB_PIの参照クリップ情報が示す2Dクリップ情報ファイルに対応するものである。そのSUB_PIの規定する再生開始時刻又は再生終了時刻のいずれかは、STNテーブル3105を含むPIの規定する再生開始時刻3102から再生終了時刻3103までの期間に含まれる。ストリーム識別情報3108は、ストリーム・パス情報3107によって特定されるファイル2Dに多重化されているエレメンタリ・ストリームのPIDを示す。このPIDの示すエレメンタリ・ストリームが再生開始時刻3102から再生終了時刻3103までの間に選択可能である。ストリーム属性情報3110は各エレメンタリ・ストリームの属性情報を表す。例えば、オーディオ・ストリーム、PGストリーム、及びIGストリームの各属性情報は言語の種類を示す。
【0202】
[2Dプレイリスト・ファイルに従った2D映像の再生]
図32は、2Dプレイリスト・ファイル241の示すPTSと、ファイル2D221から再生される部分との間の対応関係を示す模式図である。
図32を参照するに、2Dプレイリスト・ファイル241のメインパス3001では、PI#1は、再生開始時刻IN1を示すPTS#1と、再生終了時刻OUT1を示すPTS#2とを規定する。PI#1の参照クリップ情報は2Dクリップ情報ファイル231を示す。再生装置102は、2Dプレイリスト・ファイル241に従って2D映像を再生するとき、まずPI#1からPTS#1、#2を読み出す。再生装置102は次に、2Dクリップ情報ファイル231のエントリ・マップを参照して、PTS#1、#2に対応するファイル2D221内のSPN#1、#2を検索する。再生装置102は続いて、SPN#1、#2から、それぞれに対応するセクタ数を算定する。再生装置102は更にそれらのセクタ数とファイル2D221のファイル・エントリとを利用して、再生対象のエクステント群EXT2D[0]、…、EXT2D[n]が記録されたセクタ群P1の先端のLBN#1と後端のLBN#2とを特定する。セクタ数の算定とLBNの特定とは、
図28を用いて説明したとおりである。再生装置102は最後に、LBN#1からLBN#2までの範囲をBD−ROMドライブ121に指定する。それに応じて、BD−ROMドライブ121はファイル2D221のファイル・エントリを利用して、その範囲のセクタ群P1から、各エクステントEXT2D[0]、…、EXT2D[n]に属するソースパケット群を読み出す。同様に、PI#2の示すPTS#3、#4の対は、まず2Dクリップ情報ファイル231のエントリ・マップを利用してSPN#3、#4の対に変換される。次に、ファイル2D221のファイル・エントリを利用してSPN#3、#4の対がLBN#3、#4の対に変換される。更に、LBN#3からLBN#4までの範囲のセクタ群P2から、ファイル2D221のエクステント群に属するソースパケット群が読み出される。PI#3の示すPTS#5、#6の対からSPN#5、#6の対への変換、SPN#5、#6の対からLBN#5、#6の対への変換、及びLBN#5からLBN#6までの範囲のセクタ群P3からのソースパケット群の読み出しも同様である。こうして、再生装置102は2Dプレイリスト・ファイル241のメインパス3001に従って、ファイル2D221から2D映像を再生できる。
【0203】
2Dプレイリスト・ファイル241はエントリ・マーク3201を含んでもよい。エントリ・マーク3201は、メインパス3001のうち、実際に再生が開始されるべき時点を示す。例えば
図32に示されているように、PI#1に対して複数のエントリ・マーク3201が設定されてもよい。エントリ・マーク3201は、特に飛び込み再生において、再生開始位置の検索に利用される。例えば2Dプレイリスト・ファイル241が映画タイトルの再生経路を規定するとき、エントリ・マーク3201は各チャプタの先頭に付与される。それにより、再生装置102はその映画タイトルをチャプタごとに再生できる。
【0204】
≪3Dプレイリスト・ファイル≫
図33は、3Dプレイリスト・ファイル242のデータ構造を示す模式図である。
図33を参照するに、3Dプレイリスト・ファイル242は、メインパス3301、サブパス3302、及び拡張データ3303を含む。
【0205】
メインパス3301はメインTSの再生経路を規定する。従って、メインパス3301は2Dプレイリスト・ファイル241のメインパス3001と実質的に等しい。すなわち、2D再生モードの再生装置102は、3Dプレイリスト・ファイル242のメインパス3301に従ってファイル2D221から2D映像を再生できる。
【0206】
サブパス3302はサブTSの再生経路、すなわち、ファイルDEP222の再生経路を規定する。サブパス3302のデータ構造は2Dプレイリスト・ファイル241のサブパス3002、3003のデータ構造と同様である。従って、その同様なデータ構造の詳細、特にSUB_PIのデータ構造の詳細についての説明は、
図30を用いた説明を援用する。
【0207】
サブパス3302のSUB_PI#N(N=1、2、3、…)はメインパス3301のPI#Nと一対一に対応する。更に、各SUB_PI#Nの規定する再生開始時刻と再生終了時刻とはそれぞれ、対応するPI#Nの規定する再生開始時刻と再生終了時刻とに等しい。サブパス3302はその上、サブパス・タイプ3310を含む。「サブパス・タイプ」は一般に、メインパスとサブパスとの間で再生処理が同期すべきか否かを示す。3Dプレイリスト・ファイル242では特に、サブパス・タイプ3310が3D再生モードの種類、すなわち、サブパス3302に従って再生されるべきディペンデントビュー・ビデオ・ストリームの種類を示す。
図33では、サブパス・タイプ3310は、その値が「3D・L/R」であるので、3D再生モードがL/Rモードであること、すなわち、ライトビュー・ビデオ・ストリームが再生対象であることを示す。一方、サブパス・タイプ3310は、その値が「3Dデプス」であるとき、3D再生モードがデプス・モードであること、すなわち、デプスマップ・ストリームが再生対象であることを示す。3D再生モードの再生装置102は、サブパス・タイプ3310の値が「3D・L/R」又は「3Dデプス」であることを検出したとき、メインパス3301に従った再生処理と、サブパス3302に従った再生処理とを同期させる。
【0208】
拡張データ3303は、3D再生モードの再生装置102によってのみ解釈される部分であり、2D再生モードの再生装置102には無視される。拡張データ3303は特に拡張ストリーム選択テーブル3330を含む。拡張ストリーム選択テーブル(以下、STNテーブルSSと略す。)は、3D再生モードにおいて、メインパス3301内の各PIの示すSTNテーブルに追加されるべきストリーム登録情報の配列である。このストリーム登録情報は、サブTSから再生対象として選択可能なエレメンタリ・ストリームを示す。
【0209】
[STNテーブルSS]
図34は、STNテーブルSS3330のデータ構造を示す模式図である。
図34を参照するに、STNテーブルSS3330はストリーム登録情報列3401、3402、3403、…、を含む。ストリーム登録情報列3401、3402、3403、…、はメインパス3301内のPI#1、#2、#3、…、に個別に対応する。3D再生モードの再生装置102はそれらのストリーム登録情報列3401、3402、3403を、対応するPI内のSTNテーブルに含まれるストリーム登録情報列と組み合わせて利用する。各PIに対するストリーム登録情報列3401−3403は、ディペンデントビュー・ビデオ・ストリームのストリーム登録情報列3412、PGストリームのストリーム登録情報列3413、及びIGストリームのストリーム登録情報列3414を含む。
【0210】
ディペンデントビュー・ビデオ・ストリームのストリーム登録情報列3412、PGストリームのストリーム登録情報列3413、及びIGストリームのストリーム登録情報列3414はそれぞれ、サブTSから再生対象として選択可能なディペンデントビュー・ビデオ・ストリーム、PGストリーム、及びIGストリームを示すストリーム登録情報を含む。これらのストリーム登録情報列3412、3413、3414はそれぞれ、対応するPI内のSTNテーブルに含まれるストリーム登録情報列のうち、ベースビュー・ビデオ・ストリーム、PGストリーム、及びIGストリームを示すものと組み合わされて利用される。3D再生モードの再生装置102は、STNテーブル内のいずれかのストリーム登録情報列を読み出すとき、そのストリーム登録情報列に組み合わされたSTNテーブルSS内のストリーム登録情報列も自動的に読み出す。それにより、再生装置102は、2D再生モードを単に3D再生モードへ切り換えるとき、設定済みのSTN、及び言語等のストリーム属性を同一に維持できる。
【0211】
ディペンデントビュー・ビデオ・ストリームのストリーム登録情報列3412は、一般に複数のストリーム登録情報(SS_dependet_view_block)3420を含む。それらは、対応するPI内のストリーム登録情報のうち、ベースビュー・ビデオ・ストリームを示すものと同数である。各ストリーム登録情報3420は、STN3421、ストリーム・エントリ3422、及びストリーム属性情報3423を含む。STN3421は、ストリーム登録情報3420に個別に割り当てられた通し番号であり、対応するPI内の組み合わせ対象のストリーム登録情報のSTNと等しい。ストリーム・エントリ3422は、サブパスID参照情報(ref_to_Subpath_id)3431、ストリーム・ファイル参照情報(ref_to_subClip_entry_id)3432、及びPID(ref_to_stream_PID_subclip)3433を含む。サブパスID参照情報3431は、ディペンデントビュー・ビデオ・ストリームの再生経路を規定するサブパスのサブパスIDを示す。ストリーム・ファイル参照情報3432は、そのディペンデントビュー・ビデオ・ストリームが格納されたファイルDEPを識別するための情報である。PID3433は、そのディペンデントビュー・ビデオ・ストリームのPIDである。ストリーム属性情報3423は、そのディペンデントビュー・ビデオ・ストリームの属性、例えば、フレームレート、解像度、及びビデオ・フォーマットを含む。特にそれらは、対応するPI内の組み合わせ対象のストリーム登録情報の示すベースビュー・ビデオ・ストリームのものと共通である。
【0212】
PGストリームのストリーム登録情報列3413は、一般に複数のストリーム登録情報3440を含む。それらは、対応するPI内のストリーム登録情報のうち、PGストリームを示すものと同数である。各ストリーム登録情報3440は、STN3434、ベースビュー・ストリーム・エントリ(stream_entry_for_base_view)3443、ディペンデントビュー・ストリーム・エントリ(stream_entry_for_depentdent_view)3444、及びストリーム属性情報3445を含む。STN3434は、ストリーム登録情報3440に個別に割り当てられた通し番号であり、対応するPI内の組み合わせ対象のストリーム登録情報のSTNと等しい。ベースビュー・ストリーム・エントリ3443とディペンデントビュー・ストリーム・エントリ3444とはそれぞれ、サブパスID参照情報3451、ストリーム・ファイル参照情報3452、及びPID4053を含む。サブパスID参照情報3451は、ベースビューとディペンデントビューとの各PGストリームの再生経路を規定するサブパスのサブパスIDを示す。ストリーム・ファイル参照情報3452は、各PGストリームが格納されたファイルDEPを識別するための情報である。PID3453は各PGストリームのPIDである。ストリーム属性情報3445は各PGストリームの属性、例えば言語の種類を含む。IGストリームのストリーム登録情報列3414も同様なデータ構造を持つ。
【0213】
[3Dプレイリスト・ファイルに従った3D映像の再生]
図35は、3Dプレイリスト・ファイル242の示すPTSと、ファイルSS223から再生される部分との間の対応関係を示す模式図である。
図35を参照するに、3Dプレイリスト・ファイル242のメインパス3301では、PI#1は、再生開始時刻IN1を示すPTS#1と、再生終了時刻OUT1を示すPTS#2とを規定する。PI#1の参照クリップ情報は2Dクリップ情報ファイル231を示す。サブパス3302では、SUB_PI#1が、PI#1と同じPTS#1、#2を規定する。SUB_PI#1の参照クリップ情報はDEPクリップ情報ファイル232を示す。
【0214】
再生装置102は3Dプレイリスト・ファイル242に従って3D映像を再生するとき、まずPI#1とSUB_PI#1とからPTS#1、#2を読み出す。再生装置102は次に2Dクリップ情報ファイル231のエントリ・マップを参照し、PTS#1、#2に対応するファイル2D221内のSPN#1、#2を検索する。それと並行して、再生装置102はDEPクリップ情報ファイル232のエントリ・マップを参照し、PTS#1、#2に対応するファイルDEP222内のSPN#11、#12を検索する。再生装置102は続いて、
図29の(e)の説明で述べたように、各クリップ情報ファイル231、232のエクステント起点2742、2920を利用して、ファイルSS223の先頭から再生開始位置までのソースパケット数SPN#21をSPN#1、#11から算定する。再生装置102は同様に、ファイルSS223の先頭から再生終了位置までのソースパケット数SPN#22をSPN#2、#12から算定する。再生装置102は更にSPN#21、#22のそれぞれに対応するセクタ数を算定する。再生装置102は続いて、それらのセクタ数とファイルSS223のファイル・エントリとを利用して、再生対象のエクステント群EXTSS[0]、…、EXTSS[n]が記録されたセクタ群P11の先端のLBN#1と後端のLBN#2とを特定する。セクタ数の算定とLBNの特定とは、
図29の(e)の説明で述べたものと同様である。再生装置102は最後に、LBN#1からLBN#2までの範囲をBD−ROMドライブ121に指定する。それに応じて、BD−ROMドライブ121はファイルSS223のファイル・エントリを利用して、その範囲のセクタ群P11から、各エクステントEXTSS[0]、…、EXTSS[n]に属するソースパケット群を読み出す。同様に、PI#2とSUB_PI#2との示すPTS#3、#4の対は、まずクリップ情報ファイル231、232の各エントリ・マップを利用してSPN#3、#4の対とSPN#13、#14の対とに変換される。次に、SPN#3、#13からはファイルSS223の先頭から再生開始位置までのソースパケット数SPN#23が算定され、SPN#4、#14からはファイルSS223の先頭から再生終了位置までのソースパケット数SPN#24が算定される。続いて、ファイルSS223のファイル・エントリを利用して、SPN#23、#24の対がLBN#3、#4の対に変換される。更に、LBN#3からLBN#4までの範囲のセクタ群P12から、ファイルSS223のエクステント群に属するソースパケット群が読み出される。
【0215】
上記の読み出し処理と並行して、再生装置102は、
図29の(e)の説明で述べたように各クリップ情報ファイル231、232のエクステント起点2742、2920を利用して、ファイルSS223の各エクステントからベースビュー・エクステントとディペンデントビュー・エクステントとを抽出して、パラレルに復号する。こうして、再生装置102は、3Dプレイリスト・ファイル242に従ってファイルSS223から3D映像を再生できる。
【0216】
≪拡張プレイリスト・ファイル≫
図36は、拡張プレイリスト・ファイル243のデータ構造を示す模式図である。
図36を参照するに、拡張プレイリスト・ファイル243は、メインパス3601、サブパス3602、及び拡張データ3603を含む。
【0217】
メインパス3601はメインTSの再生経路を規定する。従って、メインパス3601は2Dプレイリスト・ファイル241のメインパス3001と実質的に等しい。すなわち、2D再生モードの再生装置102は、拡張プレイリスト・ファイル243のメインパス3601に従ってファイル2D221からフルHDの2D映像を再生できる。
【0218】
サブパス3602は拡張ストリーム・ファイル224の再生経路を規定する。サブパス3602のデータ構造は2Dプレイリスト・ファイル241のサブパス3002、3003のデータ構造と同様である。従って、その同様なデータ構造の詳細、特にSUB_PIのデータ構造の詳細についての説明は、
図30を用いた説明を援用する。
【0219】
サブパス3602のSUB_PI#N(N=1、2、3、…)はメインパス3601のPI#Nと一対一に対応する。更に、各SUB_PI#Nの規定する再生開始時刻と再生終了時刻とはそれぞれ、対応するPI#Nの規定する再生開始時刻と再生終了時刻とに等しい。サブパス3602はその上、サブパス・タイプ3610を含む。拡張プレイリスト・ファイル243では特に、サブパス・タイプ3610の値が「4K2K」であり、再生装置102の動作モードが拡張再生モードであることを示す。拡張再生モードの再生装置102は、サブパス・タイプ3610が拡張再生モードを示すことを検出したとき、メインパス3601に従った再生処理と、サブパス3602に従った再生処理とを同期させる。
【0220】
拡張データ3603は、拡張再生モードの再生装置102によってのみ解釈される部分であり、2D再生モード及び3D再生モードの再生装置102には無視される。拡張データ3603は特に拡張ストリーム選択テーブル3630を含む。拡張ストリーム選択テーブル(以下、STNテーブルEXと略す。)は、拡張再生モードにおいて、メインパス3601内の各PIの示すSTNテーブルに追加されるべきストリーム登録情報の配列である。このストリーム登録情報は、拡張ストリームから再生対象として選択可能なエレメンタリ・ストリームを示す。
【0221】
[STNテーブルEX]
図37は、STNテーブルEX3630のデータ構造を示す模式図である。
図37を参照するに、STNテーブルEX3630はストリーム登録情報列3701、3702、3703、…、を含む。ストリーム登録情報列3701、3702、3703、…、はメインパス3301内のPI#1、#2、#3、…、に個別に対応する。拡張再生モードの再生装置102はそれらのストリーム登録情報列3701、3702、3703を、対応するPI内のSTNテーブルに含まれるストリーム登録情報列と組み合わせて利用する。各PIに対するストリーム登録情報列3701は拡張ストリームのストリーム登録情報列3710を含む。
【0222】
拡張ストリームのストリーム登録情報列3710は、対応するPI内のSTNテーブルに含まれるストリーム登録情報列のうち、ベースビュー・ビデオ・ストリームを示すものと組み合わされて利用される。拡張再生モードの再生装置102は、STNテーブル内のストリーム登録情報列を読み出すとき、そのストリーム登録情報に組み合わされたSTNテーブルEX内のストリーム登録情報列も自動的に読み出す。それにより、再生装置102は、2D再生モードを単に拡張再生モードへ切り換えるとき、設定済みのSTN、及び言語等のストリーム属性を同一に維持できる。
【0223】
拡張ストリームのストリーム登録情報列3710は、一般に複数のストリーム登録情報3720を含む。それらは、対応するPI内のストリーム登録情報のうち、ベースビュー・ビデオ・ストリームを示すものと同数である。各ストリーム登録情報3720は、STN3721、ストリーム・エントリ3722、及びストリーム属性情報3723を含む。STN3721は、ストリーム登録情報3720に個別に割り当てられた通し番号であり、対応するPI内の組み合わせ対象のストリーム登録情報のSTNと等しい。ストリーム・エントリ3722は、サブパスID参照情報3731、ストリーム・ファイル参照情報3732、及びPID3733を含む。サブパスID参照情報3731は、拡張ストリームの再生経路を規定するサブパスのサブパスIDを示す。ストリーム・ファイル参照情報3732は、その拡張ストリームが格納された拡張ストリーム・ファイルを識別するための情報である。PID3733は、その拡張ストリームの中から選択されるべきエレメンタリ・ストリームのPID、特に解像度拡張情報のPIDである。ストリーム属性情報3723はその拡張ストリームの属性を含む。
【0224】
[拡張プレイリスト・ファイルに従った4K2Kの映像の再生]
図38は、拡張プレイリスト・ファイル243の示すPTSと、ファイル2D221及び拡張ストリーム・ファイル224から再生される部分との間の対応関係を示す模式図である。
図38を参照するに、拡張プレイリスト・ファイル243のメインパス3601では、PI#1は、再生開始時刻IN1を示すPTS#1と、再生終了時刻OUT1を示すPTS#2とを規定する。PI#1の参照クリップ情報は2Dクリップ情報ファイル231を示す。サブパス3602では、SUB_PI#1が、PI#1と同じPTS#1、#2を規定する。SUB_PI#1の参照クリップ情報は拡張クリップ情報ファイル233を示す。
【0225】
再生装置102は拡張プレイリスト・ファイル243に従って4K2Kの2D映像を再生するとき、まずPI#1とSUB_PI#1とからPTS#1、#2を読み出す。再生装置102は次に2Dクリップ情報ファイル231のエントリ・マップを参照し、PTS#1、#2に対応するファイル2D221内のSPN#1、#2を検索する。それと並行して、再生装置102は拡張クリップ情報ファイル233のエントリ・マップを参照し、PTS#1、#2に対応する拡張ストリーム・ファイル224内のSPN#11、#12を検索する。再生装置102は続いて、SPN#1、#2から、それぞれに対応するセクタ数を算定する。再生装置102は更にそれらのセクタ数とファイル2D221のファイル・エントリとを利用して、再生対象のエクステント群EXT2D[0]、…、EXT2D[n]が記録されたセクタ群P1の先端のLBN#1と後端のLBN#2とを特定する。セクタ数の算定とLBNの特定とは、
図28を用いて説明したとおりである。再生装置102は最後に、LBN#1からLBN#2までの範囲をBD−ROMドライブ121に指定する。同様に、再生装置102は、SPN#11、#12から、それぞれに対応するセクタ数を算定し、それらのセクタ数と拡張ストリーム・ファイル224のファイル・エントリとを利用して、再生対象の拡張エクステント群EXT3[0]、…、EXT3[i]が記録されたセクタ群P3の先端のLBN#11と後端のLBN#12とを特定する。再生装置102は更に、LBN#11からLBN#12までの範囲をBD−ROMドライブ121に指定する。再生装置102からの指定に応じて、BD−ROMドライブ121は、ファイル2D221のファイル・エントリを利用して、LBN#1からLBN#2までの範囲のセクタ群P1からファイル2D221のエクステントEXT2D[0]、…、EXT2D[n]を読み出す。それと並行して、BD−ROMドライブ121は、拡張ストリーム・ファイル224のファイル・エントリを利用して、LBN#11からLBN#12までの範囲のセクタ群P3から拡張エクステントEXT3[0]、…、EXT3[i]を読み出す。
図11から理解されるとおり、LBN#1からLBN#2までの範囲と、LBN#11からLBN#12までの範囲とは重複しているので、ファイル2D221のエクステントEXT2D[0]、…、EXT2D[n]と拡張エクステントEXT3[0]、…、EXT3[i]とは、先頭のLBNが小さいものから順に読み出される。こうして、再生装置102は拡張プレイリスト・ファイル243のメインパス3601とサブパス3602とに従って、ファイル2D221と拡張ストリーム・ファイル224とから4K2Kの2D映像を再生できる。
【0226】
≪インデックス・ファイル≫
図39は、
図2に示されているインデックス・ファイル211のデータ構造を示す模式図である。
図39を参照するに、インデックス・ファイル211はインデックス・テーブル3910を含む。インデックス・テーブル3910は、項目「ファーストプレイ」3901、「トップメニュー」3902、及び「タイトルk」3903(k=1、2、…、n:文字nは1以上の整数を表す。)を含む。各項目には、MVオブジェクトMVO−2D、MVO−3D、MVO−EX、又はBD−JオブジェクトBDJO−2D、BDJO−3D、BDJO−EXのいずれかが対応付けられている。ユーザの操作又はアプリケーション・プログラムによってタイトル又はメニューが呼び出される度に、再生装置102の制御部は、インデックス・テーブル3910の対応する項目を参照する。制御部は更に、その項目に対応付けられているオブジェクトをBD−ROMディスク101から呼び出し、それに従って様々な処理を実行する。具体的には、項目「ファーストプレイ」3901には、BD−ROMディスク101がBD−ROMドライブ121へ挿入された時に呼び出されるべきオブジェクトが指定されている。項目「トップメニュー」3902には、例えばユーザの操作で「メニューに戻れ」というコマンドが入力された時に表示装置103にメニューを表示させるためのオブジェクトが指定されている。項目「タイトルk」3903には、BD−ROMディスク101上のコンテンツを構成するタイトルが個別に割り当てられている。例えばユーザの操作によって再生対象のタイトルが指定されたとき、そのタイトルが割り当てられている項目「タイトルk」には、そのタイトルに対応するAVストリーム・ファイルから映像を再生するためのオブジェクトが指定されている。
【0227】
図39に示されている例では、項目「タイトル1」と項目「タイトル2」とがフルHDの2D映像のタイトルに割り当てられている。項目「タイトル1」に対応付けられているMVオブジェクトMVO−2Dは、2Dプレイリスト・ファイル241を用いたフルHDの2D映像の再生処理に関する命令群を含む。再生装置102によって項目「タイトル1」が参照されたとき、そのMVオブジェクトMVO−2Dに従い、2Dプレイリスト・ファイル241がBD−ROMディスク101から読み出され、それに規定された再生経路に沿ってフルHDの2D映像の再生処理が実行される。項目「タイトル2」に対応付けられているBD−JオブジェクトBDJO−2Dは、2Dプレイリスト・ファイル241を用いたフルHDの2D映像の再生処理に関するアプリケーション管理テーブルを含む。再生装置102によって項目「タイトル2」が参照されたとき、そのBD−JオブジェクトBDJO−2D内のアプリケーション管理テーブルに従ってJARファイル253からJavaアプリケーション・プログラムが呼び出されて実行される。それにより、2Dプレイリスト・ファイル241がBD−ROMディスク101から読み出され、それに規定された再生経路に沿ってフルHDの2D映像の再生処理が実行される。
【0228】
更に、項目「タイトル3」と項目「タイトル4」とが3D映像のタイトルに割り当てられている。項目「タイトル3」に対応付けられているMVオブジェクトMVO−3Dは、2Dプレイリスト・ファイル241を用いたフルHDの2D映像の再生処理に関する命令群に加え、3Dプレイリスト・ファイル242を用いた3D映像の再生処理に関する命令群を含む。再生装置102によって項目「タイトル3」が参照されたとき、そのMVオブジェクトMVO−3Dに従い、3Dプレイリスト・ファイル242がBD−ROMディスク101から読み出され、それに規定された再生経路に沿って3D映像の再生処理が実行される。項目「タイトル4」に対応付けられているBD−JオブジェクトBDJO−3Dでは、アプリケーション管理テーブルが、2Dプレイリスト・ファイル241を用いたフルHDの2D映像の再生処理に関するJavaアプリケーション・プログラムに加え、3Dプレイリスト・ファイル242を用いた3D映像の再生処理に関するJavaアプリケーション・プログラムを規定する。再生装置102によって項目「タイトル4」が参照されたとき、そのBD−JオブジェクトBDJO−3D内のアプリケーション管理テーブルに従ってJARファイル253からJavaアプリケーション・プログラムが呼び出されて実行される。それにより、3Dプレイリスト・ファイル242がBD−ROMディスク101から読み出され、それに規定された再生経路に沿って3D映像の再生処理が実行される。
【0229】
その他に、項目「タイトル5」と項目「タイトル6」とが4K2Kの2D映像のタイトルに割り当てられている。項目「タイトル5」に対応付けられているMVオブジェクトMVO−EXは、2Dプレイリスト・ファイル241を用いたフルHDの2D映像の再生処理に関する命令群に加え、拡張プレイリスト・ファイル243を用いた4K2Kの2D映像の再生処理に関する命令群を含む。再生装置102によって項目「タイトル5」が参照されたとき、そのMVオブジェクトMVO−EXに従い、拡張プレイリスト・ファイル243がBD−ROMディスク101から読み出され、それに規定された再生経路に沿って4K2Kの2D映像の再生処理が実行される。項目「タイトル6」に対応付けられているBD−JオブジェクトBDJO−EXは、2Dプレイリスト・ファイル241を用いたフルHDの2D映像の再生処理に関するアプリケーション管理テーブルに加え、拡張プレイリスト・ファイル243を用いた4K2Kの2D映像の再生処理に関するJavaアプリケーション・プログラムを規定する。再生装置102によって項目「タイトル6」が参照されたとき、そのBD−JオブジェクトBDJO−EX内のアプリケーション管理テーブルに従ってJARファイル253からJavaアプリケーション・プログラムが呼び出されて実行される。それにより、拡張プレイリスト・ファイル243がBD−ROMディスク101から読み出され、それに規定された再生経路に沿って4K2Kの2D映像の再生処理が実行される。
【0230】
<再生装置の構成>
図40は、
図1に示されている再生装置102の機能ブロック図である。
図40を参照するに再生装置102は、BD−ROMドライブ4001、再生部4002、及び制御部4003を含む。再生部4002は、スイッチ4020、第1リード・バッファ(RB1)4021、第2リード・バッファ(RB2)4022、第3リード・バッファ(RB3)4023、システム・ターゲット・デコーダ4024、及びプレーン加算部4025を含む。制御部4003は、動的シナリオ・メモリ4031、静的シナリオ・メモリ4032、ユーザイベント処理部4033、プログラム実行部4034、再生制御部4035、及びプレーヤ変数記憶部4036を含む。再生部4002と制御部4003とは互いに異なる集積回路に実装されている。特にプログラム実行部4034と再生制御部4035とは、再生装置102に内蔵のCPUの機能によって実現される。その他に、再生部4002と制御部4003とが単一の集積回路に統合されていてもよい。
【0231】
BD−ROMドライブ4001は、内部にBD−ROMディスク101が挿入されたとき、そのディスク101にレーザ光を照射してその反射光の変化を検出する。更に、その反射光の光量の変化から、ディスク101に記録されたデータを読み取る。具体的には、BD−ROMドライブ4001は光ピックアップ、すなわち光学ヘッドを備えている。その光学ヘッドは、半導体レーザ、コリメータ・レンズ、ビーム・スプリッタ、対物レンズ、集光レンズ、及び光検出器を含む。半導体レーザから出射された光ビームは、コリメータ・レンズ、ビーム・スプリッタ、及び対物レンズを順に通ってディスク101の記録層に集められる。集められた光ビームはその記録層で反射/回折される。その反射/回折光は、対物レンズ、ビーム・スプリッタ、及び集光レンズを通って光検出器に集められる。光検出器は、その集光量に応じたレベルの再生信号を生成する。更に、その再生信号からデータが復調される。
【0232】
BD−ROMドライブ4001は、再生制御部4035からファイルの読み出し要求としてLBNの範囲が指示されたとき、そのファイルのファイル・エントリを利用して、BD−ROMディスク101上のその範囲に含まれるそのファイルのエクステントを順番に読み出す。読み出し対象のファイルが複数であり、各ファイルについて指定されたLBNの範囲が重複する場合、BD−ROMドライブ4001はその重複する部分では、いずれのファイルに属するかにかかわらず、先頭のLBNが小さいエクステントから順に読み出す。こうして読み出されたファイルのうち、AVストリーム・ファイルはスイッチ4020へ転送され、動的シナリオ情報は動的シナリオ・メモリ4031へ転送され、静的シナリオ情報は静的シナリオ・メモリ4032へ転送される。「動的シナリオ情報」はインデックス・ファイルとBDプログラム・ファイルとを含む。「静的シナリオ情報」はプレイリスト・ファイルとクリップ情報ファイルとを含む。
【0233】
スイッチ4020は、AVストリーム・ファイルをエクステント単位で、BD−ROMドライブ4001からいずれかのリード・バッファ4021−4023へ転送する。2D再生モードの再生装置102では、スイッチ4020はファイル2DのエクステントをRB14021へ送出する。3D再生モードの再生装置102では、スイッチ4020は予め再生制御部4035から、ファイルSSのエクステントに関する境界情報を受信する。境界情報は、ファイルSSの各エクステントに含まれるベースビュー・エクステントとディペンデントビュー・エクステントとの間の境界を示す。具体的には、境界情報は、ファイルSSの各エクステントの先頭から、そのエクステントに含まれるベースビュー・エクステントとディペンデントビュー・エクステントとの各境界までのソースパケット数を示す。スイッチ4020は更に、その境界情報を利用して、ファイルSSの各エクステントから、ベースビュー・エクステントを抽出してRB14021へ送出し、ディペンデントビュー・エクステントを抽出してRB24022へ送出する。拡張再生モードの再生装置102では、スイッチ4020は、ファイル2DのエクステントをRB14021へ送出し、拡張ストリーム・ファイルのエクステントをRB34023へ送出する。BD−ROMドライブ4001からスイッチ4020へ送られる各エクステントがファイル2Dと拡張ストリーム・ファイルとのいずれに属するかについての情報は、BD−ROMドライブ4001からスイッチ4020へ送られる。
【0234】
RB14021、RB24022、及びRB34023は、再生部4002内のメモリ素子を利用したバッファ・メモリである。特に単一のメモリ素子内の異なる領域が、RB14021、RB24022、及びRB34023として利用される。その他に、異なるメモリ素子が個別に各リード・バッファ4021−4023として利用されてもよい。RB14021はスイッチ4020からベースビュー・エクステントを受信して格納する。RB24022はスイッチ4020からディペンデントビュー・エクステントを受信して格納する。RB34023はスイッチ4020から拡張エクステントを受信して格納する。
【0235】
システム・ターゲット・デコーダ4024は、各リード・バッファ4021−4023からエクステントをソースパケット単位で読み出して多重分離処理を行い、分離された各エレメンタリ・ストリームに対して復号処理を行う。ここで、復号対象のエレメンタリ・ストリームのPID、及び各エレメンタリ・ストリームの復号に必要な情報、例えばコーデックの種類及びストリームの属性は、予め再生制御部4035からシステム・ターゲット・デコーダ4024へ送られている。システム・ターゲット・デコーダ4024は更に、プライマリ・ビデオ・ストリームから復号されたビデオ・フレーム(以下、主映像プレーンという。)、セカンダリ・ビデオ・ストリームから復号されたビデオ・フレーム(以下、副映像プレーンという。)、PGストリームから復号されたPGプレーン、及びIGストリームから復号されたIGプレーンをプレーン加算部4025へ送出する。これらのプレーン・データは、2D再生モードではフルHDの2D映像を表し、3D再生モードではレフトビューとライトビューとの2D映像の対を表し、拡張再生モードでは4K2Kの2D映像を表す。一方、システム・ターゲット・デコーダ4024は、復号後のプライマリ・オーディオ・ストリームとセカンダリ・オーディオ・ストリームとをミキシングして、表示装置103の内蔵スピーカ103A等、音声出力装置へ送出する。システム・ターゲット・デコーダ4024はその他に、プログラム実行部4034からグラフィックス・データを受信する。そのグラフィックス・データは、GUI用のメニュー等のグラフィックスを画面に表示するためのものであり、JPEG又はPNG等のラスタ・データで表現されている。システム・ターゲット・デコーダ4024はそのグラフィックス・データを処理してイメージ・プレーンに変換し、プレーン加算部4025へ送出する。システム・ターゲット・デコーダ4024の詳細については後述する。
【0236】
プレーン加算部4025はシステム・ターゲット・デコーダ4024から、主映像プレーン、副映像プレーン、PGプレーン、IGプレーン、及びイメージ・プレーンを読み出し、それらを互いに重畳して1枚のビデオ・フレームに合成する。特にL/Rモードでは、各プレーン・データは、レフトビューを表すものと、ライトビューを表すものとの対から成る。プレーン加算部4025は、レフトビューを表す主映像プレーンには、レフトビューを表す他のプレーン・データを重畳し、ライトビューを表す主映像プレーンには、ライトビューを表す他のプレーン・データを重畳する。一方、デプス・モードでは、各プレーン・データは、2D映像を表すものとデプスマップとの対から成る。従って、プレーン加算部4025はまず各プレーン・データからレフトビューとライトビューとのプレーン・データの対を生成する。その後の合成処理はL/Rモードでの合成処理と同様である。合成後の映像データはHDMI方式の映像信号に変換され、表示装置103へ送出される。2D再生モードのプレーン加算部4025はフルHDの2D映像のビデオ・フレームを送出する。3D再生モードのプレーン加算部4025はレフトビューのビデオ・フレームとライトビューのビデオ・フレームとを交互に送出する。拡張再生モードのプレーン加算部4025は4K2Kの2D映像のビデオ・フレームを送出する。
【0237】
動的シナリオ・メモリ4031、及び静的シナリオ・メモリ4032はいずれもバッファ・メモリである。動的シナリオ・メモリ4031及び静的シナリオ・メモリ4032としては制御部4003内の異なるメモリ素子が利用される。その他に、単一のメモリ素子の異なる領域が動的シナリオ・メモリ4031及び静的シナリオ・メモリ4032として利用されてもよい。動的シナリオ・メモリ4031は動的シナリオ情報を格納し、静的シナリオ・メモリ4032は静的シナリオ情報を格納する。
【0238】
ユーザイベント処理部4033は、リモコン105又は再生装置102のフロントパネルを通してユーザの操作を検出し、その操作の種類に依って、プログラム実行部4034又は再生制御部4035に処理を依頼する。例えば、ユーザがリモコン105のボタンを押下してポップアップ・メニューの表示を指示したとき、ユーザイベント処理部4033はその押下を検出してそのボタンを識別する。ユーザイベント処理部4033は更にプログラム実行部4034に、そのボタンに対応するコマンドの実行、すなわちポップアップ・メニューの表示処理を依頼する。一方、ユーザがリモコン105の早送り又は巻戻しボタンを押下したとき、ユーザイベント処理部4033はその押下を検出してそのボタンを識別する。ユーザイベント処理部4033は更に再生制御部4035に、現在再生中のプレイリストの早送り又は巻戻し処理を依頼する。
【0239】
プログラム実行部4034は、動的シナリオ・メモリ4031に格納されたMVオブジェクト・ファイル及びBD−Jオブジェクト・ファイルからプログラムを読み出して実行する。プログラム実行部4034は更に各プログラムに従って次の制御を行う:(1)再生制御部4035に対してプレイリスト再生処理を命令する;(2)メニュー用又はゲーム用のグラフィックス・データをPNG又はJPEGのラスタ・データとして生成し、それをシステム・ターゲット・デコーダ4024へ転送して、他のプレーン・データに合成させる。これらの制御の具体的な内容は、プログラムの設計を通じて比較的自由に設計することができる。すなわち、それらの制御内容は、BD−ROMディスク101のオーサリング工程のうち、MVオブジェクト・ファイル及びBD−Jオブジェクト・ファイルのプログラミング工程によって決まる。
【0240】
再生制御部4035は、各種のファイルをBD−ROMディスク101から、リード・バッファ4021−4023、動的シナリオ・メモリ4031、及び静的シナリオ・メモリ4032へ転送する処理を制御する。その制御にはBD−ROMディスク101のファイルシステムが利用される。具体的には、特定のファイルの転送が行われる際、再生制御部4035はまず、そのファイルの名前を利用して、BD−ROMディスク101上のディレクトリ/ファイル構造の中から、そのファイルのファイル・エントリを検索する。再生制御部4035は次に、そのファイル・エントリを利用して、転送対象のファイルの各エクステントが記録されたBD−ROMディスク101上のセクタ群を特定する。その後、再生制御部4035はそのセクタ群からのデータの読み出しをBD−ROMドライブ4001に指示する。その指示に応じて、BD−ROMドライブ4001は転送対象のファイルをエクステント単位で、BD−ROMディスク101から各バッファ・メモリ4021−4023、4031、4032へ転送する。
【0241】
再生制御部4035は、BD−ROMドライブ4001とシステム・ターゲット・デコーダ4024とを制御して、AVストリーム・ファイルから映像データと音声データとを復号させる。具体的には、再生制御部4035はまず、プログラム実行部4034からの命令、又はユーザイベント処理部4033からの依頼に応じて、静的シナリオ・メモリ4032からプレイリスト・ファイルを読み出してその内容を解釈する。再生制御部4035は次に、その解釈された内容、特に再生経路に従って、BD−ROMドライブ4001とシステム・ターゲット・デコーダ4024とに再生対象のAVストリーム・ファイルを指定し、その読み出し処理及び復号処理を指示する。このようなプレイリスト・ファイルに従った再生処理を「プレイリスト再生処理」という。
【0242】
2D再生モードの再生装置102では、再生制御部4035はプレイリスト再生処理をプログラム実行部4034等から命じられたとき、静的シナリオ・メモリ4032に格納された2Dプレイリスト・ファイルからPIを順番に読み出してカレントPIとして設定する。再生制御部4035はカレントPIを設定する度に、まず、そのSTNテーブルに従って、システム・ターゲット・デコーダ4024の動作条件を設定する。特に、再生制御部4035は復号対象のエレメンタリ・ストリームのPIDを選択して、そのエレメンタリ・ストリームの復号に必要な属性情報と共にシステム・ターゲット・デコーダ4024へ渡す。次に、再生制御部4035はカレントPIに従い、
図32の説明に示されている手順で、読み出し対象のファイル2Dのエクステントが記録されたセクタ群のLBNの範囲をBD−ROMドライブ4001に指示する。
【0243】
3D再生モードの再生装置102では、再生制御部4035はプレイリスト再生処理をプログラム実行部4034等から命じられたとき、静的シナリオ・メモリ4032に格納された3Dプレイリスト・ファイルからPIを順番に読み出してカレントPIとして設定する。再生制御部4035はカレントPIを設定する度に、まず、そのSTNテーブルとその3Dプレイリスト・ファイル内のSTNテーブルSSとに従って、システム・ターゲット・デコーダ4024とプレーン加算部4025との動作条件を設定する。特に、再生制御部4035は復号対象のエレメンタリ・ストリームのPIDを選択して、そのエレメンタリ・ストリームの復号に必要な属性情報と共にシステム・ターゲット・デコーダ4024へ渡す。次に、再生制御部4035はカレントPIに従い、
図35の説明に示されている手順で、読み出し対象のファイルSSのエクステントが記録されたセクタ群のLBNの範囲をBD−ROMドライブ4001に指示する。一方、再生制御部4035は、静的シナリオ・メモリ4032に格納されたクリップ情報ファイル内のエクステント起点を利用して、ファイルSSのエクステントに関する境界情報を生成してスイッチ4020へ渡す。
【0244】
拡張再生モードの再生装置102では、再生制御部4035はプレイリスト再生処理をプログラム実行部4034等から命じられたとき、静的シナリオ・メモリ4032に格納された拡張プレイリスト・ファイルからPIを順番に読み出してカレントPIとして設定する。再生制御部4035はカレントPIを設定する度に、まず、そのSTNテーブルとその拡張プレイリスト・ファイル内のSTNテーブルEXとに従って、システム・ターゲット・デコーダ4024の動作条件を設定する。特に、再生制御部4035は復号対象のエレメンタリ・ストリームのPIDを選択して、そのエレメンタリ・ストリームの復号に必要な属性情報と共にシステム・ターゲット・デコーダ4024へ渡す。次に、再生制御部4035はカレントPIに従い、
図38の説明に示されている手順で、読み出し対象のファイル2Dと拡張ストリーム・ファイルとのエクステントが記録されたセクタ群のLBNの範囲をBD−ROMドライブ4001に指示する。
【0245】
その他に、再生制御部4035は、静的シナリオ情報を利用してプレーヤ変数記憶部4036に各種のプレーヤ変数を設定する。再生制御部4035は更に、それらのプレーヤ変数を参照して、システム・ターゲット・デコーダ4024に復号対象のエレメンタリ・ストリームのPIDを指定し、かつ、各エレメンタリ・ストリームの復号に必要な情報を提供する。
【0246】
プレーヤ変数記憶部4036は、プレーヤ変数を記憶するためのレジスタ群である。プレーヤ変数の種類にはシステム・パラメータ(SPRM)と汎用のパラメータ(GPRM)とがある。SPRMは再生装置102の状態を示す。SPRMは例えば64個であり、それぞれの示す意味は以下のとおりである。
【0247】
SPRM(0) : 言語コード
SPRM(1) : プライマリ・オーディオ・ストリーム番号
SPRM(2) : 字幕ストリーム番号
SPRM(3) : アングル番号
SPRM(4) : タイトル番号
SPRM(5) : チャプタ番号
SPRM(6) : プログラム番号
SPRM(7) : セル番号
SPRM(8) : 選択キー情報
SPRM(9) : ナビゲーション・タイマー
SPRM(10) : 再生時刻情報
SPRM(11) : カラオケ用ミキシングモード
SPRM(12) : パレンタル用国情報
SPRM(13) : パレンタル・レベル
SPRM(14) : プレーヤ設定値(ビデオ)
SPRM(15) : プレーヤ設定値(オーディオ)
SPRM(16) : オーディオ・ストリーム用言語コード
SPRM(17) : オーディオ・ストリーム用言語コード(拡張)
SPRM(18) : 字幕ストリーム用言語コード
SPRM(19) : 字幕ストリーム用言語コード(拡張)
SPRM(20) : プレーヤ・リージョン・コード
SPRM(21) : セカンダリ・ビデオ・ストリーム番号
SPRM(22) : セカンダリ・オーディオ・ストリーム番号
SPRM(23) : 再生状態
SPRM(24)−SPRM(63):予備
SPRM(10)は、復号処理中のピクチャのPTSを示し、そのピクチャが復号される度に更新される。従って、SPRM(10)を参照すれば、現在の再生時点を知ることができる。
【0248】
SPRM(16)のオーディオ・ストリーム用言語コード、及びSPRM(18)の字幕ストリーム用言語コードは、再生装置102のデフォルトの言語コードを示す。それらは再生装置102のOSD等を利用してユーザに変更させることもでき、プログラム実行部4034を通じてアプリケーション・プログラムに変更させることもできる。例えばSPRM(16)が「英語」を示しているとき、再生制御部4035はプレイリスト再生処理において、まず現時点での再生区間を示すPI、すなわちカレントPIの含むSTNテーブルから、「英語」の言語コードを含むストリーム・エントリを検索する。再生制御部4035は次に、そのストリーム・エントリのストリーム識別情報からPIDを抽出してシステム・ターゲット・デコーダ4024に渡す。それにより、そのPIDのオーディオ・ストリームがシステム・ターゲット・デコーダ4024によって選択されて復号される。これらの処理は、MVオブジェクト・ファイル又はBD−Jオブジェクト・ファイルを利用して再生制御部4035に実行させることができる。
【0249】
プレーヤ変数は再生処理中、再生制御部4035によって再生状態の変化に応じて更新される。特に、SPRM(1)、SPRM(2)、SPRM(21)、及びSPRM(22)が更新される。それらは順に、処理中のオーディオ・ストリーム、字幕ストリーム、セカンダリ・ビデオ・ストリーム、及びセカンダリ・オーディオ・ストリームの各STNを示す。例えばプログラム実行部4034によってSPRM(1)が変更されたときを想定する。再生制御部4035はまず、変更後のSPRM(1)の示すSTNを利用して、カレントPI内のSTNテーブルから、そのSTNを含むストリーム・エントリを検索する。再生制御部4035は次に、そのストリーム・エントリ内のストリーム識別情報からPIDを抽出してシステム・ターゲット・デコーダ4024に渡す。それにより、そのPIDのオーディオ・ストリームがシステム・ターゲット・デコーダ4024によって選択されて復号される。こうして、再生対象のオーディオ・ストリームが切り換えられる。同様に、再生対象の字幕及びセカンダリ・ビデオ・ストリームを切り換えることもできる。
【0250】
≪2Dプレイリスト再生処理≫
図41は、再生制御部4035による2Dプレイリスト再生処理のフローチャートである。2Dプレイリスト再生処理は、2Dプレイリスト・ファイルに従ったプレイリスト再生処理であり、再生制御部4035が静的シナリオ・メモリ4032から2Dプレイリスト・ファイルを読み出すことによって開始される。
【0251】
ステップS4101では、再生制御部4035はまず、2Dプレイリスト・ファイル内のメインパスからPIを1つ読み出してカレントPIとして設定する。再生制御部4035は次に、そのカレントPIのSTNテーブルから再生対象のエレメンタリ・ストリームのPIDを選択し、かつ、それらの復号に必要な属性情報を特定する。選択されたPIDと属性情報とはシステム・ターゲット・デコーダ4024に指示される。再生制御部4035は更に、2Dプレイリスト・ファイル内のサブパスから、カレントPIに付随するSUB_PIを特定する。その後、処理はステップS4102へ進む。
【0252】
ステップS4102では、再生制御部4035はカレントPIから、参照クリップ情報、再生開始時刻IN1を示すPTS#1、及び再生終了時刻OUT1を示すPTS#2を読み出す。その参照クリップ情報から、再生対象のファイル2Dに対応する2Dクリップ情報ファイルが特定される。更に、カレントPIに付随するSUB_PIが存在するときは、それらからも同様な情報が読み出される。その後、処理はステップS4103へ進む。
【0253】
ステップS4103では、再生制御部4035は2Dクリップ情報ファイルのエントリ・マップを参照して、PTS#1、#2に対応するファイル2D内のSPN#1、#2を検索する。SUB_PIの示すPTSの対も同様にSPNの対に変換される。その後、処理はステップS4104へ進む。
【0254】
ステップS4104では、再生制御部4035はSPN#1、#2から、それぞれに対応するセクタ数を算定する。具体的には、再生制御部4035はまず、SPN#1、#2のそれぞれとソースパケット1つ当たりのデータ量192バイトとの積を求める。再生制御部4035は次に、各積をセクタ1つ当たりのデータ量2048バイトで割ってその商を求める:N1=SPN#1×192/2048、N2=SPN#2×192/2048。商N1、N2は、メインTSのうち、SPN#1、#2のそれぞれが割り当てられたソースパケットよりも前の部分が記録されたセクタの総数に等しい。SUB_PIの示すPTSの対から変換されたSPNの対も同様にセクタ数の対に変換される。その後、処理はステップS4105へ進む。
【0255】
ステップS4105では、再生制御部4035は、ステップS4104で得られたセクタ数N1、N2のそれぞれから、再生対象のエクステント群の先端と後端とのLBNを特定する。具体的には、再生制御部4035は、再生対象のファイル2Dのファイル・エントリを参照して、エクステント群が記録されたセクタ群の先頭から数えて(N1+1)番目のセクタのLBN=LBN#1と、(N2+1)番目のセクタのLBN=LBN#2とを特定する。再生制御部4035は更に、LBN#1からLBN#2までの範囲をBD−ROMドライブ4001に指定する。SUB_PIの示すPTSの対から変換されたセクタ数の対も同様にLBNの対に変換されて、BD−ROMドライブ4001に指定される。その結果、指定された範囲のセクタ群から、エクステント群に属するソースパケット群がアラインド・ユニット単位で読み出される。その後、処理はステップS4106へ進む。
【0256】
ステップS4106では、再生制御部4035は、メインパスに未処理のPIが残されているか否かをチェックする。残されているときは、処理がステップS4101から繰り返される。残されていないときは、処理が終了する。
【0257】
≪3Dプレイリスト再生処理≫
図42は、再生制御部4035による3Dプレイリスト再生処理のフローチャートである。3Dプレイリスト再生処理は、3Dプレイリスト・ファイルに従ったプレイリスト再生処理であり、再生制御部4035が静的シナリオ・メモリ4032から3Dプレイリスト・ファイルを読み出すことによって開始される。
【0258】
ステップS4201では、再生制御部4035はまず、3Dプレイリスト・ファイル内のメインパスからPIを1つ読み出してカレントPIとして設定する。再生制御部4035は次に、そのカレントPIのSTNテーブルから再生対象のエレメンタリ・ストリームのPIDを選択し、かつ、それらの復号に必要な属性情報を特定する。再生制御部4035は更に、3Dプレイリスト・ファイル内のSTNテーブルSS3330のうち、カレントPIに対応するものから、再生対象のエレメンタリ・ストリームとして追加されるべきもののPIDを選択し、かつ、それらの復号に必要な属性情報を特定する。選択されたPIDと属性情報とはシステム・ターゲット・デコーダ4024に指示される。再生制御部4035はその他に、3Dプレイリスト・ファイル内のサブパスから、カレントPIと同時に参照されるべきSUB_PIを特定してカレントSUB_PIとして設定する。その後、処理はステップS4202へ進む。
【0259】
ステップS4202では、再生制御部4035はカレントPIとカレントSUB_PIとのそれぞれから、参照クリップ情報、再生開始時刻IN1を示すPTS#1、及び再生終了時刻OUT1を示すPTS#2を読み出す。その参照クリップ情報から、再生対象のファイル2DとファイルDEPとのそれぞれに対応するクリップ情報ファイルが特定される。その後、処理はステップS4203へ進む。
【0260】
ステップS4203では、再生制御部4035は、ステップS4202で特定されたクリップ情報ファイルの各エントリ・マップを参照して、PTS#1、#2に対応するファイル2D内のSPN#1、#2とファイルDEP内のSPN#11、#12とを検索する。再生制御部4035は更に、各クリップ情報ファイルのエクステント起点を利用して、ファイルSSの先頭から再生開始位置までのソースパケット数SPN#21をSPN#1、#11から算定し、ファイルSSの先頭から再生終了位置までのソースパケット数SPN#22をSPN#2、#12から算定する。具体的には、再生制御部4035はまず、2Dクリップ情報ファイルのエクステント起点の示すSPNの中から、SPN#1以下で最大のもの“Am”を検索し、DEPクリップ情報ファイルのエクステント起点の示すSPNの中から、SPN#11以下で最大のもの“Bm”を検索する。再生制御部4035は続いて、検索されたSPNの和Am+Bmを求めてSPN#21として決定する。再生制御部4035は次に、2Dクリップ情報ファイルのエクステント起点の示すSPNの中から、SPN#2よりも大きく、かつ最小のもの“An”を検索し、DEPクリップ情報ファイルのエクステント起点の示すSPNの中から、SPN#12より大きく、かつ最小のもの“Bn”を検索する。再生制御部4035は続いて、検索されたSPNの和An+Bnを求めてSPN#22として決定する。その後、処理はステップS4204へ進む。
【0261】
ステップS4204では、再生制御部4035は、ステップS4203で決定されたSPN#21、#22をセクタ数の対N1、N2に変換する。具体的には、再生制御部4035はまず、SPN#21とソースパケット1つ当たりのデータ量192バイトとの積を求める。再生制御部4035は次に、その積をセクタ1つ当たりのデータ量2048バイトで割ったときの商SPN#21×192/2048を求める。この商は、ファイルSSの先頭から再生開始位置の直前までのセクタ数N1に等しい。同様に、再生制御部4035は、SPN#22から商SPN#22×192/2048を求める。この商は、ファイルSSの先頭から再生終了位置の直前までのセクタ数N2に等しい。その後、処理はステップS4205へ進む。
【0262】
ステップS4205では、再生制御部4035は、ステップS4204で得られたセクタ数N1、N2のそれぞれから、再生対象のエクステント群の先端と後端とのLBNを特定する。具体的には、再生制御部4035は、再生対象のファイルSSのファイル・エントリを参照して、エクステント群が記録されたセクタ群の先頭から数えて(N1+1)番目のセクタのLBN=LBN#1と、(N2+1)番目のセクタのLBN=LBN#2とを特定する。再生制御部4035は更に、LBN#1からLBN#2までの範囲をBD−ROMドライブ4001に指定する。その結果、指定された範囲のセクタ群から、エクステント群に属するソースパケット群がアラインド・ユニット単位で読み出される。その後、処理はステップS4206へ進む。
【0263】
ステップS4206では、再生制御部4035は、ステップS4203で利用されたクリップ情報ファイルのエクステント起点を再び利用して、ファイルSSのエクステント群に関する境界情報を生成し、スイッチ4020へ送出する。具体的な例として、再生開始位置を示すSPN#21が、各エクステント起点の示すSPNの和An+Bnに等しく、再生終了位置を示すSPN#22が、各エクステント起点の示すSPNの和Am+Bmに等しいときを想定する。そのとき、再生制御部4035は、各エクステント起点からSPNの差の列、A(n+1)−An、B(n+1)−Bn、A(n+2)−A(n+1)、B(n+2)−B(n+1)、…、Am−A(m−1)、Bm−B(m−1)を求めて、境界情報としてスイッチ4020へ送出する。
図29の(e)に示されているとおり、この列は、ファイルSSのエクステントに含まれるベースビュー・エクステントとディペンデントビュー・エクステントとのそれぞれのソースパケット数を示す。スイッチ4020は、BD−ROMドライブ4001から受信されるファイルSSのエクステントのソースパケット数を0からカウントする。そのカウントが、境界情報の示すSPNの差と一致する度に、スイッチ4020は、ソースパケットの送出先をRB14021とRB24022との間で切り換え、かつカウントを0にリセットする。その結果、ファイルSSの各エクステントの先頭から{B(n+1)−Bn}個のソースパケット、すなわち最初のディペンデントビュー・エクステントはRB24022へ送出され、続く{A(n+1)−An}個のソースパケット、すなわち最初のベースビュー・エクステントはRB14021へ送出される。以降も同様に、スイッチ4020によって受信されるソースパケットの数が、境界情報の示すSPNの差と一致する度に、ファイルSSのエクステントからディペンデントビュー・エクステントとベースビュー・エクステントとが交互に抽出される。その後、処理はステップS4207へ進む。
【0264】
ステップS4207では、再生制御部4035は、メインパスに未処理のPIが残されているか否かをチェックする。残されているときは、処理がステップS4201から繰り返される。残されていないときは、処理が終了する。
【0265】
≪拡張プレイリスト再生処理≫
図43は、再生制御部4035による拡張プレイリスト再生処理のフローチャートである。拡張プレイリスト再生処理は、拡張プレイリスト・ファイルに従ったプレイリスト再生処理であり、再生制御部4035が静的シナリオ・メモリ4032から拡張プレイリスト・ファイルを読み出すことによって開始される。
【0266】
ステップS4301では、再生制御部4035はまず、拡張プレイリスト・ファイル内のメインパスからPIを1つ読み出してカレントPIとして設定する。再生制御部4035は次に、そのカレントPIのSTNテーブルから再生対象のエレメンタリ・ストリームのPIDを選択し、かつ、それらの復号に必要な属性情報を特定する。再生制御部4035は更に、拡張プレイリスト・ファイル内のSTNテーブルEX3630のうち、カレントPIに対応するものから解像度拡張情報のPIDを選択し、かつその解像度拡張情報の復号に必要な属性情報を特定する。選択されたPIDと属性情報とはシステム・ターゲット・デコーダ4024に指示される。再生制御部4035は更に、拡張プレイリスト・ファイル内のサブパスから、カレントPIと同時に参照されるべきSUB_PIを特定してカレントSUB_PIとして設定する。その後、処理はステップS4302へ進む。
【0267】
ステップS4302では、再生制御部4035はカレントPIとカレントSUB_PIとのそれぞれから、参照クリップ情報、再生開始時刻IN1を示すPTS#1、及び再生終了時刻OUT1を示すPTS#2を読み出す。その参照クリップ情報から、再生対象のファイル2Dと拡張ストリーム・ファイルとのそれぞれに対応するクリップ情報ファイルが特定される。その後、処理はステップS4303へ進む。
【0268】
ステップS4303では、再生制御部4035は、ステップS4302で特定されたクリップ情報ファイルの各エントリ・マップを参照して、PTS#1、#2に対応するファイル2D内のSPN#1、#2と拡張ストリーム・ファイル内のSPN#11、#12とを検索する。その後、処理はステップS4304へ進む。
【0269】
ステップS4304では、再生制御部4035はSPN#1、#2、#11、#12から、それぞれに対応するセクタ数を算定する。具体的には、再生制御部4035はまず、SPN#1、#2、#11、#12のそれぞれとソースパケット1つ当たりのデータ量192バイトとの積を求める。再生制御部4035は次に、各積をセクタ1つ当たりのデータ量2048バイトで割ってその商を求める:N1=SPN#1×192/2048、N2=SPN#2×192/2048、N11=SPN#11×192/2048、N12=SPN#12×192/2048。商N1、N2は、メインTSのうち、SPN#1、#2のそれぞれが割り当てられたソースパケットよりも前の部分が記録されたセクタの総数に等しい。商N11、N12は、拡張ストリームのうち、SPN#11、#12のそれぞれが割り当てられたソースパケットよりも前の部分が記録されたセクタの総数に等しい。その後、処理はステップS4305へ進む。
【0270】
ステップS4305では、再生制御部4035は、ステップS4304で得られたセクタ数N1、N2のそれぞれから、再生対象のファイル2Dのエクステント群の先端と後端とのLBNを特定し、セクタ数N11、N12のそれぞれから、再生対象の拡張ストリーム・ファイルのエクステント群の先端と後端とのLBNを特定する。具体的には、再生制御部4035は、再生対象のファイル2Dのファイル・エントリを参照して、エクステント群が記録されたセクタ群の先頭から数えて(N1+1)番目のセクタのLBN=LBN#1と、(N2+1)番目のセクタのLBN=LBN#2とを特定する。再生制御部4035は更に、再生対象の拡張ストリーム・ファイルのファイル・エントリを参照して、エクステント群が記録されたセクタ群の先頭から数えて(N11+1)番目のセクタのLBN=LBN#11と、(N12+1)番目のセクタのLBN=LBN#12とを特定する。再生制御部4035は続いて、LBN#1からLBN#2までの範囲と、LBN#11からLBN#12までの範囲とをBD−ROMドライブ4001に指定する。その結果、指定された範囲のセクタ群から、ファイル2Dと拡張ストリーム・ファイルとのエクステントが、先頭のLBNの小さい順に読み出される。その後、処理はステップS4306へ進む。
【0271】
ステップS4306では、再生制御部4035は、メインパスに未処理のPIが残されているか否かをチェックする。残されているときは、処理がステップS4301から繰り返される。残されていないときは、処理が終了する。
【0272】
≪システム・ターゲット・デコーダ≫
[2D再生モードにおける構成]
図44は、2D再生モードのシステム・ターゲット・デコーダ4024の機能ブロック図である。
図44を参照するに、システム・ターゲット・デコーダ4024は、ソース・デパケタイザ4410、ATCカウンタ4420、第1の27MHzクロック4430、PIDフィルタ4440、STCカウンタ(STC1)4450、第2の27MHzクロック4460、主映像デコーダ4470、副映像デコーダ4471、PGデコーダ4472、IGデコーダ4473、主音声デコーダ4474、副音声デコーダ4475、イメージ・プロセッサ4480、主映像プレーン・メモリ4490、副映像プレーン・メモリ4491、PGプレーン・メモリ4492、IGプレーン・メモリ4493、イメージ・プレーン・メモリ4494、及び音声ミキサ4495を含む。
【0273】
ソース・デパケタイザ4410はRB14021からソースパケットを読み出し、その中からTSパケットを取り出してPIDフィルタ4440へ送出する。ソース・デパケタイザ4410は更にその送出時刻を、各ソースパケットのATSの示す時刻に合わせる。具体的には、ソース・デパケタイザ4410はまず、ATCカウンタ4420が生成するATCの値を監視する。ここで、ATCの値はATCカウンタ4420により、第1の27MHzクロック4430のクロック信号のパルスに応じてインクリメントされる。ソース・デパケタイザ4410は次に、ATCの値がソースパケットのATSと一致した瞬間、そのソースパケットから取り出されたTSパケットをPIDフィルタ4440へ転送する。そのような送出時刻の調節により、ソース・デパケタイザ4410からPIDフィルタ4440へのTSパケットの平均転送速度は、
図27に示されている2Dクリップ情報ファイル231内のシステム・レート2711で規定される値R
TSを超えない。
【0274】
PIDフィルタ4440はまず、ソース・デパケタイザ4410から送出されたTSパケットの含むPIDを監視する。そのPIDが、再生制御部4035から予め指定されたPIDに一致したとき、PIDフィルタ4440はそのTSパケットを選択し、そのPIDの示すエレメンタリ・ストリームの復号に適したデコーダ4470−4475へ転送する。例えばPIDが0x1011であるとき、そのTSパケットは主映像デコーダ4470へ転送される。一方、PIDが、0x1B00−0x1B1F、0x1100−0x111F、0x1A00−0x1A1F、0x1200−0x121F、及び0x1400−0x141Fの各範囲に属するとき、TSパケットはそれぞれ、副映像デコーダ4471、主音声デコーダ4474、副音声デコーダ4475、PGデコーダ4472、及びIGデコーダ4473へ転送される。
【0275】
PIDフィルタ4440は更に、各TSパケットのPIDを利用してそのTSパケットの中からPCRを検出する。PIDフィルタ4440はそのとき、STCカウンタ4450の値を所定値に設定する。ここで、STCカウンタ4450の値は、第2の27MHzクロック4460のクロック信号のパルスに応じてインクリメントされる。また、STCカウンタ4450に設定されるべき値は予め、再生制御部4035からPIDフィルタ4440に指示されている。各デコーダ4470−4475はSTCカウンタ4450の値をSTCとして利用する。具体的には、各デコーダ4470−4475は、まず、PIDフィルタ4440から受け取ったTSパケットをPESパケットに再構成する。各デコーダ4470−4475は、次に、そのPESペイロードの含むデータの復号処理の時期を、そのPESヘッダに含まれるPTS又はDTSの示す時刻に従って調節する。
【0276】
主映像デコーダ4470は、
図42に示されているように、トランスポート・ストリーム・バッファ(TB:Transport Stream Buffer)4401、多重化バッファ(MB:Multiplexing Buffer)4402、エレメンタリ・ストリーム・バッファ(EB:Elementary Stream Buffer)4403、圧縮映像デコーダ(DEC)4404、及び復号ピクチャ・バッファ(DPB:Decoded Picture Buffer)4405を含む。
【0277】
TB4401、MB4402、及びEB4403はいずれもバッファ・メモリであり、それぞれ主映像デコーダ4470に内蔵のメモリ素子の一領域を利用する。その他に、それらのいずれか又は全てが異なるメモリ素子に分離されていてもよい。TB4401は、PIDフィルタ4440から受信されたTSパケットをそのまま蓄積する。MB4402は、TB4401に蓄積されたTSパケットから復元されたPESパケットを蓄積する。尚、TB4401からMB4402へTSパケットが転送されるとき、そのTSパケットからTSヘッダが除去される。EB4403は、PESパケットから、符号化されたVAUを抽出して格納する。そのVAUには、圧縮ピクチャ、すなわち、Iピクチャ、Bピクチャ、及びPピクチャが格納されている。尚、MB4402からEB4403へデータが転送されるとき、そのPESパケットからPESヘッダが除去される。
【0278】
DEC4404は、圧縮ピクチャの復号処理に特化したハードウェア・デコーダであり、特にその復号処理のアクセラレータ機能を備えたLSIで構成されている。DEC4404は、EB4403内の各VAUからピクチャを、元のPESパケットに含まれるDTSの示す時刻に復号する。その復号処理では、DEC4404は予めそのVAUのヘッダを解析して、そのVAU内に格納された圧縮ピクチャの圧縮符号化方式とストリーム属性とを特定し、それらに依って復号方法を選択する。その圧縮符号化方式は、例えば、MPEG−2、MPEG−4 AVC、及びVC1を含む。DEC4404は更に、復号された非圧縮のピクチャをDPB4405へ転送する。
【0279】
DPB4405は、TB4401、MB4402、及びEB4403と同様なバッファ・メモリであり、主映像デコーダ4470に内蔵のメモリ素子の一領域を利用する。DPB4405はその他に、他のバッファ・メモリ4401、4402、4403とは異なるメモリ素子に分離されていてもよい。DPB4405は復号後のピクチャを一時的に保持する。DEC4404によってPピクチャ又はBピクチャが復号されるとき、DPB4405はDEC4404からの指示に応じて、保持している復号後のピクチャから参照ピクチャを検索してDEC4404に提供する。DPB4405は更に、保持している各ピクチャを、元のPESパケットに含まれるPTSの示す時刻に主映像プレーン・メモリ4490へ書き込む。
【0280】
副映像デコーダ4471は主映像デコーダ4470と同様の構成を含む。副映像デコーダ4471はまず、PIDフィルタ4440から受信されたセカンダリ・ビデオ・ストリームのTSパケットを非圧縮のピクチャに復号する。副映像デコーダ4471は次に、そのPESパケットに含まれるPTSの示す時刻に非圧縮のピクチャを副映像プレーン・メモリ4491へ書き込む。
【0281】
PGデコーダ4472は、PIDフィルタ4440から受信されたTSパケットを非圧縮のグラフィックス・オブジェクトに復号する。PGデコーダ4472は更に、それらのTSパケットから復元されたPESパケットに含まれるPTSの示す時刻に、その非圧縮のグラフィックス・オブジェクトをPGプレーン・メモリ4492へ書き込む。
【0282】
IGデコーダ4473は、PIDフィルタ4440から受信されたTSパケットを非圧縮のグラフィックス・オブジェクトに復号する。IGデコーダ4473は更に、それらのTSパケットから復元されたPESパケットに含まれるPTSの示す時刻に、その非圧縮のグラフィックス・オブジェクトをIGプレーン・メモリ4493へ書き込む。
【0283】
主音声デコーダ4474はまず、PIDフィルタ4440から受信されたTSパケットを内蔵のバッファに蓄える。主音声デコーダ4474は次に、そのバッファ内のTSパケット群からTSヘッダとPESヘッダとを除去し、残りのデータを非圧縮のLPCM音声データに復号する。主音声デコーダ4474は更にその音声データを、元のPESパケットに含まれるPTSの示す時刻に音声ミキサ4495へ送出する。ここで、主音声デコーダ4474は、TSパケットに含まれるプライマリ・オーディオ・ストリームの圧縮符号化方式及びストリーム属性に依って圧縮音声データの復号方法を選択する。その圧縮符号化方式は例えばAC−3又はDTSを含む。
【0284】
副音声デコーダ4475は主音声デコーダ4474と同様の構成を含む。副音声デコーダ4475はまず、PIDフィルタ4440から受信されたセカンダリ・オーディオ・ストリームのTSパケット群からPESパケットを復元し、そのPESペイロードの含むデータを非圧縮のLPCM音声データに復号する。副音声デコーダ4475は次に、そのPESヘッダの含むPTSの示す時刻にその非圧縮のLPCM音声データを音声ミキサ4495へ送出する。ここで、副音声デコーダ4475は、TSパケットに含まれるセカンダリ・オーディオ・ストリームの圧縮符号化方式及びストリーム属性に依って圧縮音声データの復号方法を選択する。その圧縮符号化方式は例えばドルビー・デジタル・プラス又はDTS−HD LBRを含む。
【0285】
音声ミキサ4495は、主音声デコーダ4474と副音声デコーダ4475とのそれぞれから非圧縮の音声データを受信し、それらを用いてミキシングを行う。音声ミキサ4495は更に、そのミキシングで得られた合成音を表示装置103の内蔵スピーカ103A等へ送出する。
【0286】
イメージ・プロセッサ4480は、プログラム実行部4034からグラフィックス・データ、すなわちPNG又はJPEGのラスタ・データを受信する。イメージ・プロセッサ4480はそのとき、そのグラフィックス・データに対するレンダリング処理を行ってイメージ・プレーン・メモリ4494へ書き込む。
【0287】
主映像プレーン・メモリ4490、副映像プレーン・メモリ4491、PGプレーン・メモリ4492、IGプレーン・メモリ4493、及びイメージ・プレーン・メモリ4494は、システム・ターゲット・デコーダ4024に内蔵のメモリ素子の異なる領域に確保されている。その他に、各プレーン・メモリ4490−4494が異なるメモリ素子に分離されていてもよい。各プレーン・メモリ4490−4494は、対応するプレーン・データを格納可能であり、少なくとも1枚のビデオ・フレームとサイズが等しい。
【0288】
[3D再生モードにおける構成]
図45は、3D再生モードのシステム・ターゲット・デコーダ4024の機能ブロック図である。
図45に示されている構成要素は、
図44に示されているものとは次の3点で異なる:(1)リード・バッファから各デコーダへの入力系統が二重化されている;(2)主映像デコーダ、副映像デコーダ、PGデコーダ、及びIGデコーダはいずれも、メインTSとサブTSとを交互に復号できる;(3)各プレーン・メモリは、レフトビューとライトビューとのそれぞれを表すプレーン・データを格納可能である。一方、主音声デコーダ、副音声デコーダ、音声ミキサ、及びイメージ・プロセッサは、
図44に示されているものと同様である。従って、以下では、
図45に示されている構成要素のうち、
図44に示されているものとは異なるものについて説明し、同様なものの詳細についての説明は、
図44についての説明を援用する。更に、各デコーダはいずれも同様な構造を持つので、以下では主映像デコーダ4515の構造について説明する。同様な説明は他のデコーダの構造についても成立する。
【0289】
第1ソース・デパケタイザ4511は、RB14021からソースパケットを読み出し、更にその中からTSパケットを抽出して第1PIDフィルタ4513へ送出する。第2ソース・デパケタイザ4512は、RB24022からソースパケットを読み出し、更にその中からTSパケットを抽出して第2PIDフィルタ4514へ送出する。各ソース・デパケタイザ4511、4512は更に、各TSパケットの送出時刻を、各ソースパケットのATSの示す時刻に合わせる。その同期方法は、
図44に示されているソース・デパケタイザ4410による方法と同様である。従って、その詳細についての説明は
図44についての説明を援用する。そのような送出時刻の調節により、第1ソース・デパケタイザ4511から第1PIDフィルタ4513へのTSパケットの平均転送速度R
TS1は、2Dクリップ情報ファイルの示すシステム・レートを超えない。同様に、第2ソース・デパケタイザ4512から第2PIDフィルタ4514へのTSパケットの平均転送速度R
TS2は、DEPクリップ情報ファイルの示すシステム・レートを超えない。
【0290】
第1PIDフィルタ4513は、第1ソース・デパケタイザ4511からTSパケットを受信する度に、そのPIDを選択対象のPIDと比較する。その選択対象のPIDは再生制御部4035によって予め、3Dプレイリスト・ファイル内のSTNテーブルに従って指定されている。両方のPIDが一致したとき、第1PIDフィルタ4513はそのTSパケットを、そのPIDに割り当てられたデコーダへ転送する。例えば、PIDが0x1011であるとき、そのTSパケットは主映像デコーダ4515内のTB14501へ転送される。その他に、PIDが、0x1B00−0x1B1F、0x1100−0x111F、0x1A00−0x1A1F、0x1200−0x121F、及び0x1400−0x141Fの各範囲に属するとき、対応するTSパケットはそれぞれ、副映像デコーダ、主音声デコーダ、副音声デコーダ、PGデコーダ、及びIGデコーダへ転送される。
【0291】
第2PIDフィルタ4514は、第2ソース・デパケタイザ4512からTSパケットを受信する度に、そのPIDを選択対象のPIDと比較する。その選択対象のPIDは、再生制御部4035によって予め、3Dプレイリスト・ファイル内のSTNテーブルSSに従って指定されている。両方のPIDが一致したとき、第2PIDフィルタ4514はそのTSパケットを、そのPIDに割り当てられたデコーダへ転送する。例えば、PIDが0x1012又は0x1013であるとき、そのTSパケットは主映像デコーダ4515内のTB24508へ転送される。その他に、PIDが、0x1B20−0x1B3F、0x1220−0x127F、及び0x1420−0x147Fの各範囲に属するとき、対応するTSパケットはそれぞれ、副映像デコーダ、PGデコーダ、及びIGデコーダへ転送される。
【0292】
主映像デコーダ4515は、TB14501、MB14502、EB14503、TB24508、MB24509、EB24510、バッファ・スイッチ4506、DEC4504、DPB4505、及びピクチャ・スイッチ4507を含む。TB14501、MB14502、EB14503、TB24508、MB24509、EB24510、及びDPB4505はいずれもバッファ・メモリである。各バッファ・メモリは、主映像デコーダ4515に内蔵されたメモリ素子の一領域を利用する。その他に、それらのバッファ・メモリのいずれか又は全てが、異なるメモリ素子に分離されていてもよい。
【0293】
TB14501は、ベースビュー・ビデオ・ストリームを含むTSパケットを第1PIDフィルタ4513から受信してそのまま蓄積する。MB14502は、TB14501に蓄積されたTSパケットからPESパケットを復元して蓄積する。そのとき、各TSパケットからTSヘッダが除去される。EB14503は、MB14502に蓄積されたPESパケットから、符号化されたVAUを抽出して蓄積する。そのとき、各PESパケットからPESヘッダが除去される。
【0294】
TB24508は、ディペンデントビュー・ビデオ・ストリームを含むTSパケットを第2PIDフィルタ4514から受信してそのまま蓄積する。MB24509は、TB24508に蓄積されたTSパケットからPESパケットを復元して蓄積する。そのとき、各TSパケットからTSヘッダが除去される。EB24510は、MB24509に蓄積されたPESパケットから、符号化されたVAUを抽出して蓄積する。そのとき、各PESパケットからPESヘッダが除去される。
【0295】
バッファ・スイッチ4506は、EB14503とEB24510とのそれぞれに蓄積されたVAUのヘッダをDEC4504からの要求に応じて転送する。バッファ・スイッチ4506は更に、そのVAUの圧縮ピクチャ・データを、元のPESパケットに含まれるDTSの示す時刻にDEC4504へ転送する。ここで、ベースビュー・ビデオ・ストリームとディペンデントビュー・ビデオ・ストリームとの間では、同じ3D・VAUに属する一対のピクチャのDTSが等しい。従って、バッファ・スイッチ4506は、DTSの等しい一対のVAUのうち、EB14503に蓄積された方を先にDEC4504へ転送する。
【0296】
DEC4504は、
図44に示されているDEC4404と同様、圧縮ピクチャの復号処理に特化したハードウェア・デコーダであり、特にその復号処理のアクセラレータ機能を備えたLSIで構成されている。DEC4504は、バッファ・スイッチ4506から転送された圧縮ピクチャ・データを順次復号する。その復号処理では、DEC4504は予め、各VAUのヘッダを解析して、そのVAU内に格納された圧縮ピクチャの圧縮符号化方式とストリーム属性とを特定し、それらに応じて復号方法を選択する。ここで、その圧縮符号化方式は、例えば、MPEG−2、MPEG−4 AVC、及びVC1を含む。DEC4504は更に、復号された非圧縮のピクチャをDPB4505へ転送する。
【0297】
DPB4505は、復号された非圧縮のピクチャを一時的に保持する。DEC4504がPピクチャ及びBピクチャを復号するとき、DPB4505はDEC4504からの要求に応じて、保持されている非圧縮のピクチャの中から参照ピクチャを検索してDEC4504に提供する。
【0298】
ピクチャ・スイッチ4507は、DPB4505から非圧縮の各ピクチャを、元のPESパケットに含まれるPTSの示す時刻に、左映像プレーン・メモリ4520と右映像プレーン・メモリ4521とのいずれかに書き込む。ここで、同じ3D・VAUに属するベースビュー・ピクチャとディペンデントビュー・ピクチャとではPTSが等しい。従って、ピクチャ・スイッチ4507は、DPB4505に保持された、PTSの等しい一対のピクチャのうち、ベースビュー・ピクチャを先に左映像プレーン・メモリ4520に書き込み、続いてディペンデントビュー・ピクチャを右映像プレーン・メモリ4521に書き込む。
【0299】
[拡張再生モードにおける構成]
図46は、拡張再生モードのシステム・ターゲット・デコーダ4024の機能ブロック図である。
図46に示されている構成要素は、
図45に示されているものとは次の2点で異なる:(1)主映像デコーダ、副映像デコーダ、PGデコーダ、及びIGデコーダはいずれも、メインTSと拡張ストリームとを交互に復号できる;(2)各プレーン・メモリは4K2Kのプレーン・データを格納可能である。一方、主音声デコーダ、副音声デコーダ、音声ミキサ、及びイメージ・プロセッサは、
図45に示されているものと同様である。従って、以下では、
図46に示されている構成要素のうち、
図45に示されているものとは異なるものについて説明し、同様なものの詳細についての説明は、
図45についての説明を援用する。更に、各デコーダはいずれも同様な構造を持つので、以下では主映像デコーダ4615の構造について説明する。同様な説明は他のデコーダの構造についても成立する。
【0300】
第2ソース・デパケタイザ4512は、RB34023からソースパケットを読み出し、更にその中からTSパケットを抽出して第2PIDフィルタ4514へ送出する。第2ソース・デパケタイザ4512から第2PIDフィルタ4514へのTSパケットの平均転送速度R
TS3は、拡張クリップ情報ファイルの示すシステム・レートを超えない。
【0301】
第2PIDフィルタ4514は、第2ソース・デパケタイザ4512からTSパケットを受信する度に、そのPIDを選択対象のPIDと比較する。その選択対象のPIDは、再生制御部4035によって予め、拡張プレイリスト・ファイル内のSTNテーブルEXに従って指定されている。両方のPIDが一致したとき、第2PIDフィルタ4514はそのTSパケットを、そのPIDに割り当てられたデコーダへ転送する。例えば、PIDが0x1014であるとき、そのTSパケットは主映像デコーダ4615内のTB24608へ転送される。
【0302】
主映像デコーダ4615は、TB14601、MB14602、EB14603、TB24608、MB24609、EB24610、解像度拡張制御部4606、DEC4604、DPB4605、及び加算器4607を含む。TB14601、MB14602、EB14603、TB24608、MB24609、EB24610、及びDPB4605はいずれもバッファ・メモリである。各バッファ・メモリは、主映像デコーダ4615に内蔵されたメモリ素子の一領域を利用する。その他に、それらのバッファ・メモリのいずれか又は全てが、異なるメモリ素子に分離されていてもよい。
【0303】
TB14601は、ベースビュー・ビデオ・ストリームを含むTSパケットを第1PIDフィルタ4513から受信してそのまま蓄積する。MB14602は、TB14601に蓄積されたTSパケットからPESパケットを復元して蓄積する。そのとき、各TSパケットからTSヘッダが除去される。EB14603は、MB14602に蓄積されたPESパケットから、符号化されたVAUを抽出して蓄積する。そのとき、各PESパケットからPESヘッダが除去される。
【0304】
TB24608は、解像度拡張情報を含むTSパケットを第2PIDフィルタ4514から受信してそのまま蓄積する。MB24609は、TB24608に蓄積されたTSパケットからPESパケットを復元して蓄積する。そのとき、各TSパケットからTSヘッダが除去される。EB24610は、MB24609に蓄積されたPESパケットから、符号化されたVAUを抽出して蓄積する。そのとき、各PESパケットからPESヘッダが除去される。
【0305】
解像度拡張制御部4606は、EB24610に蓄積された解像度拡張情報から拡張後の解像度と補間方式とを読み取ってDEC4604へ指示する。解像度拡張制御部4606は更に、その解像度拡張情報から差分画素情報を読み取り、元のPESパケットに含まれるDTSの示す時刻に加算器4607へ送出する。ここで、ベースビュー・ビデオ・ストリームと拡張ストリームとでは、1枚の4K2Kのビデオ・フレームを構成するのに必要なピクチャと解像度拡張情報とのDTSが等しい。
【0306】
DEC4604は、
図44に示されているDEC4404と同様、圧縮ピクチャの復号処理に特化したハードウェア・デコーダであり、特にその復号処理のアクセラレータ機能を備えたLSIで構成されている。DEC4604は、EB14603から転送された圧縮ピクチャ・データを順次復号する。その復号処理では、DEC4604は予め各VAUのヘッダを解析して、そのVAU内に格納された圧縮ピクチャの圧縮符号化方式とストリーム属性とを特定し、それらに応じて復号方法を選択する。ここで、その圧縮符号化方式は、例えば、MPEG−2、MPEG−4 AVC、及びVC1を含む。
【0307】
DEC4604は更に、解像度拡張制御部4606から指定された補間方式を用いて、復号された非圧縮のピクチャの解像度をフルHDから、解像度拡張制御部4606から指示された解像度、すなわち4K2Kへ上昇させる。ここで、その補間方式としては、バイリニア法及びバイキュービック法等、映像の解像度を上昇させるのに利用可能な周知の方式が採用される。DEC4604は4K2KのピクチャをDPB4605へ転送する。
【0308】
DPB4605は、復号された非圧縮のピクチャを一時的に保持する。DEC4604がPピクチャ及びBピクチャを復号するとき、DPB4605はDEC4604からの要求に応じて、保持されている非圧縮のピクチャの中から参照ピクチャを検索してDEC4604に提供する。
【0309】
加算器4607は、DPB4605からは4K2Kのピクチャを読み出し、解像度拡張制御部4606からは差分画素情報を受信する。そのとき、加算器4607はそのピクチャの各画素データに、差分画素情報内の対応する画素データの差分を加算する。それにより、4K2Kのピクチャの表す映像が、本来の精細な映像に変換される。変換後の4K2Kのピクチャは、元のPESパケットに含まれるPTSの示す時刻に主映像プレーン4620へ書き込まれる。
【0310】
[フルHDから4K2Kへの解像度の変換処理]
図47は、フルHDから4K2Kへの解像度の変換処理のフローチャートである。この処理は、EB24610から解像度拡張制御部4606へ解像度拡張情報が転送され始めた時点から開始される。
【0311】
ステップS4701では、解像度拡張制御部4606が解像度拡張情報から拡張後の解像度と補間方式とを読み出す。解像度拡張制御部4606は更に、拡張後の解像度と補間方式とをDEC4604に指示する。その後、処理はステップS4702へ進む。
【0312】
ステップS4702では、DEC4604がEB14603から圧縮ピクチャ・データを読み出し、その圧縮ピクチャ・データからベースビュー・ピクチャを復号する。DEC4604は更に、解像度拡張制御部4606から指示された補間方式を用いて、そのベースビュー・ピクチャの解像度をフルHDから、解像度拡張制御部4606から指示された解像度、すなわち4K2Kへ上昇させる。DEC4603は続いて、その4K2KのピクチャをDPB4605へ書き込む。その後、処理はステップS4703へ進む。
【0313】
ステップS4703では、加算器4607が、DPB4605からは4K2Kのベースビュー・ピクチャを読み出し、解像度拡張制御部4606からは差分画素情報を受信する。加算器4607はそのとき、そのベースビュー・ピクチャの各画素データに、差分画素情報内の対応する画素データの差分を加算する。4K2Kのピクチャは主映像プレーン・メモリ4620へ書き込まれる。その後、処理はステップS4704へ進む。
【0314】
ステップS4704では、EB14603に次の圧縮ピクチャ・データが存在するか否かをDEC4604が確認する。次の圧縮ピクチャ・データが存在すれば、処理はステップS4701から繰り返される。次の圧縮ピクチャ・データが存在しなければ、処理は終了する。
【0315】
<実施形態1の効果>
本発明の実施形態1によるBD−ROMディスク101では、ファイル2D、ファイルDEP、及び拡張ストリーム・ファイルがそれぞれ、複数のエクステントに分割され、
図13に示されているようなインターリーブ配置で記録されている。特に、2つの拡張エクステントの間にベースビュー・エクステントとディペンデントビュー・エクステントとが2個ずつ以上配置されている。従って、各エクステントの単体のサイズは最大エクステント・サイズ以下に制限されていても、2つの拡張エクステントの間に配置された複数のエクステント全体のサイズは十分に大きい。その結果、3D再生モードの再生装置102が拡張エクステントの記録領域をジャンプしている期間中に、RB1とRB2とのいずれにもアンダーフローが生じない。それ故、再生装置102は、拡張ストリーム・ファイルの存在にかかわらず、BD−ROMディスク101から3D映像をシームレスに再生することができる。このように、BD−ROMディスク101に記録されたAVストリーム・ファイルのエクステントの配置は、再生装置102に再生能力を良好に維持させることができる。
【0316】
<変形例>
(1−A)本発明の実施形態1では、拡張ストリームが、ベースビュー・ビデオ・ストリームの表すフルHDの2D映像を4K2Kの2D映像に拡張するために必要な情報を含む。このように、拡張ストリームは、メインTSと組み合わされて利用される情報(以下、拡張データという。)を格納可能である。拡張データの例としては、上記の解像度拡張情報の他にも、以下のものが挙げられる。
【0317】
≪デプスマップ・ストリーム≫
拡張データはデプスマップ・ストリームであってもよい。この場合、再生装置102の拡張再生モードはデプス・モードに等しい。すなわち、再生装置102は、
図12に示されている第3再生経路1203に沿って読み出したエクステント群から3D映像を再生する。
【0318】
デプスマップを用いた3D映像の再生は次のように行われる。ベースビュー・ビデオ・ストリームの表す2D映像は、再生対象の3D映像を仮想的な2D画面へ射影したときの映像を表す。一方、デプスマップは、その2D画面に対するその3D映像の各部の奥行きを画素別に表す。特に、各画素に表示される映像の奥行きが、その画素の輝度で表現される。デプス・モードの再生装置102では、プレーン加算部4025が、ベースビュー・ビデオ・ストリームとデプスマップとの組み合わせから、レフトビューとライトビューとの各ビデオ・フレームを構成する。
【0319】
図48は、2D映像MVWとデプスマップDPHとの組み合わせからレフトビューLVWとライトビューRVWとを構成する例を示す模式図である。
図48を参照するに、2D映像MVWでは、背景BGVの中に円板DSCが表示されている。デプスマップDPHはその2D映像MVW内の各部の奥行きを各画素の輝度で表す。そのデプスマップDPHによれば、2D映像MVWのうち、円板DSCの表示領域DA1の奥行きが画面よりも手前であり、かつ、背景BGVの表示領域DA2の奥行きが画面よりも奥である。再生装置102のプレーン加算部4025内では視差映像生成部PDGがまず、デプスマップDPHの示す各部の奥行きから2D映像MVW内の各部の両眼視差を計算する。視差映像生成部PDGは次に、2D映像MVW内の各部の表示位置を、計算された両眼視差に応じて左右に移動させて、レフトビューLVWとライトビューRVWとを構成する。
図48に示されている例では、視差映像生成部PDGは、2D映像MVW内の円板DSCの表示位置に対し、レフトビューLVW内の円板DSLの表示位置をその両眼視差の半分S1だけ右に移動させ、ライトビューRVW内の円板DSRの表示位置をその両眼視差の半分S1だけ左に移動させる。それにより、視聴者には円板DSCが画面よりも手前に見える。一方、視差映像生成部PDGは2D映像MVW内の背景BGVの表示位置に対し、レフトビューLVW内の背景BGLの表示位置をその両眼視差の半分S2だけ左に移動させ、ライトビューRVW内の背景BGRの表示位置をその両眼視差の半分S2だけ右に移動させる。それにより、視聴者には背景BGVが画面よりも奥に見える。
【0320】
デプスマップの画素データは単色の輝度のみを表すので、デプスマップのビットレートは一般に、ベースビュー・ビデオ・ストリームとライトビュー・ビデオ・ストリームとのいずれのビットレートよりも低い。従って、
図13に示されているエクステントのインターリーブ配置が有効である。
【0321】
≪DTS拡張規格に準拠のオーディオ・ストリーム≫
拡張データはビデオ・ストリームに限らず、オーディオ・ストリームであってもよい。特に拡張データは、DTS拡張規格に準拠のオーディオ・ストリームであってもよい。DTS拡張規格には、DTS−ES(Extended Surround)、DTS−HDマスター・オーディオ、及びDTS−HDハイレゾリューション・サラウンドがある。いずれの規格においても、メインTSに含まれるプライマリ・オーディオ・ストリームと組み合わせられるべきデータ部分が、拡張データとして拡張ストリームに格納される。そのデータ部分をプライマリ・オーディオ・ストリームと組み合わせることで、音質が向上し、サラウンド音声のチャネル数が増大する。拡張再生モードの再生装置102では主音声デコーダ4474が、メインTSからプライマリ・オーディオ・ストリームを復号すると共に、拡張ストリームから拡張データを復号し、復号されたデータから目的のオーディオ・ストリームを構成する。
【0322】
DTS拡張規格に準拠のオーディオ・ストリームでは、メインTSに含まれるプライマリ・オーディオ・ストリームからの拡張部分のデータ量はベースビュー・ビデオ・ストリームとディペンデントビュー・ビデオ・ストリームとのいずれのデータ量よりも十分に小さい。従って、
図13に示されているエクステントのインターリーブ配置が有効である。
【0323】
≪スーパー・ピクチャ・イン・ピクチャ用のビデオ・ストリーム≫
拡張データは、メインTSのプライマリ・ビデオ・ストリームに組み合わされるべきセカンダリ・ビデオ・ストリームであってもよい。拡張再生モードの再生装置102はそれらの組み合わせとメインTSのセカンダリ・ビデオ・ストリームとを合わせて、3種類以上の映像を1つの画面に同時に表示させることができる。
【0324】
ピクチャ・イン・ピクチャにおいては一般に、セカンダリ・ビデオ・ストリームの解像度はプライマリ・ビデオ・ストリームの解像度よりも低い。従って、拡張ストリームに含まれるビデオ・ストリームのビットレートは一般に、ベースビュー・ビデオ・ストリームとディペンデントビュー・ビデオ・ストリームとのいずれのビットレートよりも低い。従って、
図13に示されているエクステントのインターリーブ配置が有効である。
【0325】
≪Nビット拡張における追加の色情報≫
拡張データは、ベースビュー・ピクチャの各画素データが含む色情報のビット数を増加させるのに必要な情報であってもよい。例えば、ベースビュー・ピクチャの画素データがRGB又はYCrCbの各色座標を8ビットで表現している場合、その色座標を12ビット表現に変換するのに必要な情報が拡張データとして拡張ストリームに格納される。拡張再生モードの再生装置102では主映像デコーダ4470が、メインTSからベースビュー・ピクチャを復号すると共に、拡張ストリームから拡張データを復号し、復号されたデータを組み合わせて各画素データの色情報のビット数を増大させる。それにより、更に精細な色表現が可能になる。
【0326】
ベースビュー・ピクチャの1組の画素データが含む色情報のビット数を増加させるのに必要な情報量は一般に、その画素データの量よりも小さい。従って、拡張ストリームのビットレートは一般に、ベースビュー・ビデオ・ストリームとディペンデントビュー・ビデオ・ストリームとのいずれのビットレートよりも低い。それ故、
図13に示されているエクステントのインターリーブ配置が有効である。
【0327】
≪時間スケーラブル符号化における追加のピクチャ≫
拡張データは、ベースビュー・ビデオ・ストリームのフレームレートを上昇させるのに必要な情報であってもよい。例えば、ベースビュー・ビデオ・ストリームのフレームレートが60fpsである場合、その値を120fpsまで上昇させるのに必要な追加のピクチャが、拡張データとして拡張ストリームに格納される。特に、追加のピクチャはベースビュー・ピクチャを参照して圧縮されている。拡張再生モードの再生装置102では主映像デコーダ4470が、メインTSからベースビュー・ピクチャを復号すると共に、そのベースビュー・ピクチャを利用して、拡張ストリームから追加のピクチャを復号する。主映像デコーダ4470は更に、ベースビュー・ピクチャ列の中に追加のピクチャを混入させることで、ベースビュー・ビデオ・ストリームのフレームレートを上昇させる。それにより、映像の時間的な変化を更に精細にすることができる。
【0328】
追加のピクチャは、ベースビュー・ピクチャ間の映像の変化を更に精細にするためのものであるので、一般にベースビュー・ピクチャとの近似度が高い。従って、ベースビュー・ピクチャを参照して追加のピクチャを圧縮することにより、拡張ストリームのビットレートをベースビュー・ビデオ・ストリームとディペンデントビュー・ビデオ・ストリームとのいずれのビットレートよりも十分に低くくすることができる。それ故、
図13に示されているエクステントのインターリーブ配置が有効である。
【0329】
≪カメラの画角が拡大された際の映像と元の画角での映像との間の差分≫
拡張データは、カメラの画角が拡大された際の映像と元の画角での映像との間の差分であってもよい。その場合、ベースビュー・ビデオ・ストリームは、元の画角での映像を表す。拡張再生モードの再生装置102では主映像デコーダ4470が、ベースビュー・ビデオ・ストリームから1枚のビデオ・フレームを復号すると共に、そのビデオ・フレームの表す映像の外側の領域の映像を表す画素データを拡張ストリームから復号する。主映像デコーダ4470は更に、それらのデータから1枚のビデオ・フレームを再構成する。それにより、元の映像よりも画角の広い映像を再生することができる。
【0330】
ベースビュー・ビデオ・ストリームのビデオ・フレームが表す映像の外側の領域の映像を表す画素データの全体のデータ量は一般に、元のビデオ・フレームのデータ量よりは十分に小さい。従って、拡張ストリームのビットレートはベースビュー・ビデオ・ストリームとディペンデントビュー・ビデオ・ストリームとのいずれのビットレートよりも十分に低い。それ故、
図13に示されているエクステントのインターリーブ配置が有効である。
【0331】
≪ディペンデントビュー・ビデオ・ストリーム≫
拡張データが、メインTSのベースビュー・ビデオ・ストリームと組み合わされて3D映像を表すディペンデントビュー・ビデオ・ストリーム、又は、そのディペンデントビュー・ビデオ・ストリームをベースビュー・ビデオ・ストリームと組み合わせることで生成されるレフトビューとライトビューとの間の視差を表す情報であってもよい。その場合、拡張再生モードの再生装置102は、3D再生モードのものと同様に3D映像を再生する。ここで、拡張ストリームのディペンデントビュー・ビデオ・ストリームはサブTSのディペンデントビュー・ビデオ・ストリームとは、共通のベースビュー・ビデオ・ストリームとの組み合わせで生成されるレフトビューとライトビューとの間の視差が異なる。
【0332】
レフトビューとライトビューとの間の視差の最大値は通常、一般的な視聴者の瞳孔間距離以下(特に視聴者が子供である場合は5cm以下)である。その条件が満たされる限り、その視差は視聴者の瞳孔間距離を超えないので、その視聴者に映像酔いや眼精疲労が生じる危険性を低減させることができる。一方、表示装置103の画面サイズが大きいほど、レフトビューとライトビューとの間の視差は大きい。従って、例えばサブTSのディペンデントビュー・ビデオ・ストリームが、ベースビュー・ビデオ・ストリームとの組み合わせで、50インチ以下の画面サイズに適切な視差を持つレフトビューとライトビューとを生成可能である場合、拡張ストリームのディペンデントビュー・ビデオ・ストリームは、ベースビュー・ビデオ・ストリームとの組み合わせで、100インチ以下の画面サイズに適切な視差を持つレフトビューとライトビューとを生成可能であるように設計される。
【0333】
再生装置102の再生制御部4035は、BD−ROMディスク101から3D映像を再生する場合、表示装置103の画面サイズに合わせて、3D再生モードと拡張再生モードとのいずれかを選択する。具体的には、再生制御部4035はまず、HDMIケーブル122を通して表示装置103から画面サイズを取得する。再生制御部4035は次に、表示装置103の画面サイズが、50インチ以下であれば3D再生モードを選択し、50インチよりも大きく100インチ以下であれば拡張再生モードを選択する。それにより、レフトビューとライトビューとの間の視差が画面サイズに適切な値に設定される。
【0334】
拡張再生モードの再生装置102は、
図12に示されている第3再生経路1203とは異なり、ベースビュー・エクステント、ディペンデントビュー・エクステント、及び拡張エクステントを全て順番に読み出す。再生装置102は更に、ファイルSSと拡張ストリーム・ファイルとのファイル・エントリと3Dクリップ情報ファイルのエクステント起点とを利用して、読み出されたエクステントをRB14021、RB24022、RB34023に分配する。システム・ターゲット・デコーダ4024は主映像デコーダに、RB14021からは、ベースビュー・ビデオ・ストリームを格納したソースパケットを供給し、RB24022からは、ディペンデントビュー・ビデオ・ストリームを格納したソースパケットを供給し、RB34023からは、拡張データを格納したソースパケットを供給する。拡張データがディペンデントビュー・ピクチャを含む場合、そのディペンデントビュー・ピクチャは、サブTSのディペンデントビュー・ピクチャと近似度が高いので、サブTSのディペンデントビュー・ピクチャを参照して圧縮されている。その場合、主映像デコーダはサブTSのディペンデントビュー・ピクチャを利用して拡張データからディペンデントビュー・ピクチャを復号する。一方、拡張データが視差情報を含む場合、主映像デコーダはその視差情報を利用してサブTSのディペンデントビュー・ピクチャの各画素データを左右に移動させる。こうして得られたディペンデントビュー・ピクチャとベースビュー・ピクチャとから、主映像デコーダは、レフトビューとライトビューとを表すビデオ・フレームの対を構成する。
【0335】
拡張データは、サブTSのディペンデントビュー・ピクチャを参照して圧縮されたピクチャ又は視差情報である。従って、拡張ストリームのビットレートは、ベースビュー・ビデオ・ストリームとサブTSのディペンデントビュー・ビデオ・ストリームとのいずれのビットレートよりも十分に低い。それ故、
図13に示されているエクステントのインターリーブ配置が有効である。
【0336】
≪3D映像に対する解像度拡張情報≫
拡張データは、ベースビュー・ビデオ・ストリームに対する解像度拡張情報だけでなく、ディペンデントビュー・ビデオ・ストリームに対する解像度拡張情報を含んでいてもよい。その場合、拡張再生モードの再生装置102は次のようにして4K2Kの3D映像を再生する。
【0337】
拡張再生モードの再生装置102は、
図12に示されている第3再生経路1203とは異なり、ベースビュー・エクステント、ディペンデントビュー・エクステント、及び拡張エクステントを全て順番に読み出す。再生装置102は更に、ファイルSSと拡張ストリーム・ファイルとのファイル・エントリと3Dクリップ情報ファイルのエクステント起点とを利用して、読み出されたエクステントをRB14021、RB24022、RB34023に分配する。システム・ターゲット・デコーダ4024は主映像デコーダに、RB14021からは、ベースビュー・ビデオ・ストリームを格納したソースパケットを供給し、RB24022からは、ディペンデントビュー・ビデオ・ストリームを格納したソースパケットを供給し、RB34023からは、拡張データを格納したソースパケットを供給する。主映像デコーダはまず、フルHDのベースビュー・ピクチャとディペンデントビュー・ピクチャとを復号する。主映像デコーダは次に、解像度拡張情報の示す補間方式を利用して、各ピクチャの解像度を4K2Kに上昇させる。主映像デコーダは続いて、解像度が上昇した各ピクチャに差分画素情報を加算する。こうして、4K2Kのレフトビューとライトビューとを表すビデオ・フレームの対が構成される。
【0338】
解像度拡張情報は、ベースビュー・ピクチャとディペンデントビュー・ピクチャとのいずれよりもデータ量が十分に小さい。従って、拡張ストリームのビットレートは、ベースビュー・ビデオ・ストリームとサブTSのディペンデントビュー・ビデオ・ストリームとのいずれのビットレートよりも十分に低い。それ故、
図13に示されているエクステントのインターリーブ配置が有効である。
【0339】
(1−B)本発明の実施形態1による表示装置103は液晶ディスプレイである。本発明による表示装置はその他に、プラズマ・ディスプレイ及び有機ELディスプレイ等、他方式のフラットパネル・ディスプレイ又はプロジェクタであってもよい。更に、
図1に示されている表示装置103は再生装置102から分離されている。その他に、表示装置が再生装置と一体化されていてもよい
(1−C)本発明の実施形態1による記録媒体101はBD−ROMディスクである。本発明による記録媒体は、その他の可搬性記録媒体、例えば、DVD等の他方式による光ディスク、リムーバブル・ハードディスクドライブ(HDD)、又はSDメモリカード等の半導体メモリ装置であってもよい。
【0340】
(1−D)本発明の実施形態1による3D眼鏡102はシャッター眼鏡である。本発明による3D眼鏡はその他に、左右のレンズが偏光方向の異なる偏光フィルムで覆われているもの、又は、左右のレンズで透過スペクトルが異なるものであってもよい。前者の場合、表示装置は左目用の映像と右目用の映像とをそれぞれ、異なる偏光で表示する。後者の場合、表示装置は左目用の映像と右目用の映像とをそれぞれ、異なるスペクトルで表示する。いずれの場合でも、左目用レンズは左目用の映像のみを透過させ、右目用レンズは右目用の映像のみを透過させる。
【0341】
(1−E)
図5に示されているPESパケット511に格納されるピクチャは、1枚のビデオ・フレームの全体が符号化されたものである。ピクチャはその他に、1つのフィールドが符号化されたものであってもよい。
【0342】
(1−F)本発明の実施形態1によるL/Rモードの再生装置102は、ベースビュー・ビデオ・ストリームからは、レフトビューを表すビデオ・フレームを再生し、ディペンデントビュー・ビデオ・ストリームからは、ライトビューを表すビデオ・フレームを再生する。逆に、ベースビュー・ビデオ・ストリームがライトビューを表し、ディペンデントビュー・ビデオ・ストリームがレフトビューを表してもよい。
【0343】
(1−G)
図11に示されているエクステントの配置では、ディペンデントビュー・エクステントがベースビュー・エクステントよりも前に位置する。しかし、ファイルDEPに対するシステム・レートR
TS2がファイル2Dに対するシステム・レートR
TS1と同程度に高く設定される場合、エクステント・ブロックの先頭に位置するエクステント・ペアにおいて第2転送速度R
EXT2が第1転送速度R
EXT1を超え得る。その場合、ベースビュー・エクステントがディペンデントビュー・エクステントの前に配置されてもよい。すなわち、そのエクステント・ペアの中で、サイズの小さいエクステントがサイズの大きいエクステントよりも前に配置される。それにより、リード・バッファの容量を小さく維持することができる。
【0344】
(1−H)拡張再生モードにおける飛び込み再生時のジャンプ時間の短縮を目的として、再生開始位置のGOPの先頭が、拡張エクステントの直後に配置されたベースビュー・エクステントに格納されてもよい。その場合、飛び込み再生時のジャンプ距離は、
図23の場合とは異なり、ディペンデントビュー・エクステントの最大エクステント・サイズを超えない。従って、2つの拡張エクステントの間に配置されるエクステント・ペアの数に上限が設けられなくてもよい。
【0345】
《実施形態2》
本発明の実施形態2によるBD−ROMディスクでは、層境界等、ロング・ジャンプが必要な箇所の直前又は直後において、2D再生モードでの再生経路、3D再生モードでの再生経路、及び拡張再生モードでの再生経路が分離されるようにエクステントが配置される。その点を除き、実施形態2によるBD−ROMディスクと再生装置とは、実施形態1によるものと構成及び機能が等しい。従って、以下では、実施形態2によるBD−ROMディスクと再生装置とのうち、実施形態1によるものからの変更部分及び拡張部分について説明する。実施形態1によるBD−ROMディスクと再生装置と同様な部分については上記の実施形態1についての説明を援用する。
【0346】
図12では、第1再生経路1201、第2再生経路1202、及び第3再生経路1203はいずれも、層境界LBを越えるためのロング・ジャンプJ
LYの直前に4番目のベースビュー・エクステントB[3]を通る。ロング・ジャンプJ
LY中にシステム・ターゲット・デコーダによって処理されるべきベースビュー・ビデオ・ストリームのデータ量は、2D再生モードでは条件1により、4番目のベースビュー・エクステントB[3]のサイズで確保され、3D再生モードでは条件4により、3番目と4番目とのベースビュー・エクステントB[2]、B[3]の全体のサイズで確保され、拡張再生モードでは条件6により、3番目と4番目とのベースビュー・エクステントB[2]、B[3]の全体のサイズで確保される。従って、条件1によってベースビュー・エクステントB[3]に要求される最小エクステント・サイズは、条件2、6によって要求される最小エクステント・サイズよりも一般に大きい。ベースビュー・エクステントB[3]の直前に位置するディペンデントビュー・エクステントD[3]は、そのベースビュー・エクステントB[3]と同じエクステントATC時間を持つので、そのディペンデントビュー・エクステントD[3]のサイズは、条件2によって要求される最小エクステント・サイズよりも一般に大きい。従って、RB2の容量は、3D再生モードでのシームレス再生に必要最小限の値よりも一般に大きい。また、拡張エクステントT[1]は、その直後に位置するベースビュー・エクステント群B[2]、B[3]の全体と同じエクステントATC時間を持つので、拡張エクステントT[1]のサイズは、条件6によって要求される最小エクステント・サイズよりも一般に大きい。従って、RB3の容量は、拡張再生モードでのシームレス再生に必要最小限の値よりも一般に大きい。このように、
図12に示されている配置では、エクステント間のシームレスな接続は可能であるが、RB2とRB3との容量を必要最小限に抑えることは難しい。
【0347】
ロング・ジャンプJ
LY中での映像のシームレス再生を可能にしたまま、RB2とRB3との容量を更に削減するには、層境界LBの前後でエクステント群の配置をインターリーブ配置から変更し、2D再生モード、3D再生モード、及び拡張再生モードの間で再生経路を分離すればよい。そのような変更のパターンには、例えば以下に述べる配置1、2、3がある。配置1−3のいずれでも、2D再生モードでの再生経路、3D再生モードでの再生経路、及び拡張再生モードでの再生経路が、ロング・ジャンプJ
LYの直前又は直後に異なるベースビュー・エクステントを通る。それにより、3D再生モードと拡張再生モードとにおいては、ロング・ジャンプJ
LYの直前又は直後に読み出されるベースビュー・エクステントは条件1を満たさなくてもよい。その結果、再生装置102に、RB1、RB2、RB3の各容量を必要最小限に維持させたまま、ロング・ジャンプJ
LY中での映像のシームレス再生を容易に実現させることができる。
【0348】
以下、説明の便宜上、配置1−3が、BD−ROMディスク101の層境界LBの前後に記録されたエクステント群に採用された場合を想定する。尚、それらのエクステント群が、層境界に代えて、所定のセクタ数(例えば40000セクタ)を超える別のデータの記録領域で分離されていても、以下の説明は同様に成立する。
【0349】
<配置1>
図49は、BD−ROMディスク101の層境界LBの前後に記録されたエクステント群の配置1、及びそのエクステント群に対する各モードでの再生経路を示す模式図である。
図49を参照するに、層境界LBの直前には第1エクステント・ブロック4901が配置され、層境界LBの直後には第2エクステント・ブロック4902が配置されている。各エクステント・ブロック4901、4902では、拡張エクステントT[0]、T[2]が先頭に配置され、その直後に2組のエクステント・ペア(D[0]、B[0]、D[1]、B[1])、(D[4]、B[4]、D[5]、B[5])がインターリーブ配置を構成している。配置1では更に、第1エクステント・ブロック4901の後端B[1]と層境界LBとの間に、1つのデータ・ブロックB
2D、2組のエクステント・ペアD[2]、B
3D、D[3]、B
3D、及び、拡張エクステントT[1]とベースビュー・エクステントB
EXとの対がその順で配置されている。先頭のデータ・ブロックB
2Dは、後続の2個のベースビュー・エクステントB
3Dの全体、及び層境界の直前のベースビュー・エクステントB
EXのそれぞれとビット単位(bit−for−bit)で一致する。すなわち、同じデータが三重に記録されている。以下、先頭のデータ・ブロックB
2Dを「2D再生専用ブロック」といい、後続の2個のベースビュー・エクステントB
3Dを「3D再生専用ブロック」といい、層境界の直前のベースビュー・エクステントB
EXを「拡張再生専用ブロック」という。第1エクステント・ブロック4901内の後端のベースビュー・エクステントB[1]と2D再生専用ブロックB
2Dとの全体はファイル2Dの単一のエクステントEXT2D[1]としてアクセス可能である。3D再生専用ブロックB
3Dは直前のディペンデントビュー・エクステントD[2]、D[3]と共に、ファイルSSの単一のエクステントEXTSS[1]としてアクセス可能である。拡張再生専用ブロックB
EXは拡張ストリーム・ファイルの単一のエクステントEXT3[3]としてアクセス可能である。
【0350】
2D再生モードの再生装置102はファイル2Dを再生する。従って、2D再生モードでの再生経路4911が示すとおり、まず、第1エクステント・ブロック4901内の先頭のベースビュー・エクステントB[0]がファイル2Dの最初のエクステントEXT2D[0]として読み出され、その直後のディペンデントビュー・エクステントD[1]の読み出しがスキップされる。次に、第1エクステント・ブロック4901内の最後のベースビュー・エクステントB[1]とその直後の2D再生専用ブロックB
2Dとの対がファイル2Dの2番目のエクステントEXT2D[1]として連続して読み出される。その直後にロング・ジャンプJ
LYが生じ、3D再生専用ブロックを含むエクステント・ペアD[2]、B
3D、D[3]、B
3D、拡張エクステントT[1]、拡張再生専用ブロックB
EX、及び、第2エクステント・ブロック4902内の先頭の拡張エクステントT[2]とディペンデントビュー・エクステントD[4]の読み出しがスキップされる。続いて、第2エクステント・ブロック4902内の各ベースビュー・エクステントB[4]、B[5]がファイル2Dの1つのエクステントEXT2D[2]、EXT2D[3]として読み出され、ディペンデントビュー・エクステントD[5]の読み出しがスキップされる。
【0351】
3D再生モードの再生装置102はファイルSSを再生する。従って、3D再生モードでの再生経路4912が示すとおり、まず、先頭の拡張エクステントT[0]を除く第1エクステント・ブロック4901の全体がファイルSSの最初のエクステントEXTSS[0]として連続して読み出される。その直後にジャンプが生じ、2D再生専用ブロックB
2Dの読み出しがスキップされる。続いて、3D再生専用ブロックを含む2組のエクステント・ペアD[2]、B
3D、D[3]、B
3Dの全体がファイルSSの2番目のエクステントEXTSS[1]として連続して読み出される。その直後にロング・ジャンプJ
LYが生じ、拡張エクステントT[1]、T[2]と拡張再生専用ブロックB
EXの読み出しがスキップされる。その後、先頭の拡張エクステントT[2]を除く第2エクステント・ブロック4902の全体がファイルSSの3番目のエクステントEXTSS[2]として連続して読み出される。
【0352】
拡張再生モードの再生装置102は拡張ストリーム・ファイルとファイル2Dとを再生する。従って、拡張再生モードでの再生経路4913が示すとおり、まず、第1エクステント・ブロック4901内の拡張エクステントT[0]が拡張ストリーム・ファイルの最初のエクステントEXT3[0]として読み出される。次に、後続のディペンデントビュー・エクステントD[0]、D[1]の読み出しがスキップされ、先頭のベースビュー・エクステントB[0]がファイル2Dの最初のエクステントEXT2D[0]として読み出され、2番目のベースビュー・エクステントB[1]が拡張ストリーム・ファイルの2番目のエクステントEXT3[1]として読み出される。その直後にジャンプが生じ、2D再生専用ブロックB
2Dと、3D再生専用ブロックを含む2組のエクステント・ペアD[2]、B
3D、D[3]、B
3Dの全体との読み出しがスキップされる。続いて、拡張エクステントT[1]と拡張再生専用ブロックB
EXとのそれぞれが拡張ストリーム・ファイルの1つのエクステントEXT3[2]、EXT3[3]として連続して読み出される。その直後にロング・ジャンプJ
LYが生じる。その後、第2エクステント・ブロック4902内の拡張エクステントT[2]が拡張ストリーム・ファイルの5番目のエクステントEXT3[4]として読み出され、後続のディペンデントビュー・エクステントD[4]、D[5]の読み出しがスキップされ、各ベースビュー・エクステントB[4]、B[5]がファイル2Dの1つのエクステントEXT2D[2]、EXT2D[3]として読み出される。
【0353】
図49に示されているとおり、2D再生モードでは、2D再生専用ブロックB
2Dは読み出されるが、3D再生専用ブロックB
3Dと拡張再生専用ブロックB
EXとの読み出しはスキップされる。3D再生モードでは、3D再生専用ブロックB
3Dは読み出されるが、2D再生専用ブロックB
2Dと拡張再生専用ブロックB
EXとの読み出しはスキップされる。拡張再生モードでは、拡張再生専用ブロックB
EXは読み出されるが、2D再生専用ブロックB
2Dと3D再生専用ブロックB
3Dとの読み出しはスキップされる。このように、配置1では、ロング・ジャンプJ
LYの直前に、2D再生モードでの再生経路4911、3D再生モードでの再生経路4912、及び拡張再生モードでの再生経路4913が分離される。しかし、2D再生専用ブロックB
2D、3D再生専用ブロックB
3Dの全体、及び拡張再生専用ブロックB
EXはビット単位で一致しているので、いずれの再生モードでも、再生されるベースビュー・ビデオ・フレームは等しい。
【0354】
2D再生モードでの再生をシームレスに行うには、2D再生専用ブロックB
2Dは、BD−ROMディスク101からの読み出し開始時点からロング・ジャンプJ
LYの終了時点までの期間に、RB1からシステム・ターゲット・デコーダへ転送されればよい。従って、2D再生専用ブロックB
2DのサイズS
DUP FOR SSIFとエクステントATC時間T
DUP FOR SSIFとは、次式(9)を満たすように設計される:
【0355】
【数11】
例えば、ロング・ジャンプJ
LYのジャンプ時間T
JUMPが700m秒であり、ファイル2DのビットレートR
TS1が最高値48Mbpsであり、BD−ROMドライブの読み出し速度R
UD2Dが54Mbpsである場合、2D再生専用ブロックB
2DのエクステントATC時間T
DUP FOR SSIFは約7.6秒以上であればよい。
【0356】
拡張再生モードでの再生をシームレスに行うには、層境界LBの直前に配置された拡張エクステントT[1]は、BD−ROMディスク101からの読み出し開始時点からロング・ジャンプJ
LYの終了時点までの期間に、RB3からシステム・ターゲット・デコーダへ転送されればよい。従って、拡張エクステントT[1]のサイズS
T、拡張再生専用ブロックB
EXのサイズS
DUP FOR EX、及びそれらのエクステントATC時間T
DUP FOR EXは、次式(10)を満たすように設計される:
【0357】
【数12】
結局、2D再生専用ブロックB
2D、3D再生専用ブロックB
3Dの全体、及び拡張再生専用ブロックB
EXのそれぞれのサイズS
DUPは、式(9)、(10)で与えられるエクステントATC時間T
DUP FOR SSIF、T
DUP FOR EXのうち、長い方とファイル2DのビットレートR
TS1の192/188倍との積に決定される:S
DUP=max(T
DUP FOR SSIF、T
DUP FOR EX)×R
TS1×192/188。
【0358】
図49に示されている配置1では、
図12に示されている配置とは異なり、層境界LBの直前に位置するファイル2DのエクステントEXT2D[1]のうち、ファイルSSのエクステントEXTSS[0]に共有されるベースビュー・エクステントB[1]は、条件1を満たさなくてもよい。すなわち、2D再生専用ブロックB
2DのエクステントATC時間が式(9)、(10)を満たしていれば、そのベースビュー・エクステントB[1]のエクステントATC時間は短縮されてもよい。それ故、その直前に位置するディペンデントビュー・エクステントD[1]のサイズ、及び拡張エクステントT[0]のサイズをいずれも、十分に小さく制限することができる。
【0359】
3D再生専用ブロックB
3Dの全体、及び拡張再生専用ブロックB
EXはそれぞれ、2D再生専用ブロックB
2Dとビット単位で一致している。従って、2D再生専用ブロックB
2Dのサイズの拡大は、3D再生専用ブロックB
3Dの直前に位置するディペンデントビュー・エクステントD[2]、D[3]のサイズ、及び拡張再生専用ブロックB
EXの直前に位置する拡張エクステントT[1]のサイズを拡大させる。しかし、各サイズは、
図12に示されている層境界LBの直前に位置するディペンデントビュー・エクステントD[3]のサイズ、及び拡張エクステントT[1]のサイズよりは十分に小さくできる。こうして、RB2とRB3との各容量を、シームレス再生に必要最小限の値に更に接近させることができる。
【0360】
<配置2>
図50の(a)は、BD−ROMディスク101の層境界LBの前後に記録されたエクステント群の配置2、及びそのエクステント群に対する各モードでの再生経路を示す模式図である。
図50の(a)を
図49と比較すれば明らかなとおり、配置2は配置1とは、2D再生専用ブロックB
2D、3D再生専用ブロックB
3D、及び拡張再生専用ブロックB
EXが層境界LBの直後にも配置されている点で異なる。
【0361】
図50の(a)を参照するに、層境界LBの前方におけるエクステント群の配置は、
図49に示されているものと同様である。一方、層境界LBと第2エクステント・ブロック4902との間には、拡張エクステントTと拡張再生専用ブロックB
EXとの対、2D再生専用ブロックB
2D、及び、3D再生専用ブロックを含む1組のエクステント・ペアD、B
3Dがその順で配置されている。2D再生専用ブロックB
2Dはファイル2Dの単一のエクステントEXT2D[2]としてアクセス可能である。3D再生専用ブロックB
3Dは直前のディペンデントビュー・エクステントDと共に、ファイルSSの単一のエクステントEXTSS[2]としてアクセス可能である。層境界LBの直後に配置された拡張エクステントTと拡張再生専用ブロックB
EXとはそれぞれ、拡張ストリーム・ファイルの単一のエクステントEXT3[4]、EXT3[5]としてアクセス可能である。層境界LBの前後に配置された拡張再生専用ブロックB
EXの全体は、2D再生専用ブロックB
2Dの全体、及び3D再生専用ブロックB
3Dの全体のそれぞれとビット単位で一致する。
【0362】
2D再生モードの再生装置102はファイル2Dを再生する。従って、2D再生モードでの再生経路5011が示すとおり、層境界LBの直後ではまず、拡張エクステントTと拡張再生専用ブロックB
EXとの対の読み出しがスキップされ、2D再生専用ブロックB
2Dがファイル2Dの1つのエクステントEXT2D[2]として読み出され、その直後のディペンデントビュー・エクステントDと3D再生専用ブロックB
3Dとの読み出しがスキップされる。次に、第2エクステント・ブロック4902内では、各ベースビュー・エクステントBがファイル2Dの1つのエクステントEXT2D[3]、EXT2D[4]として読み出され、その他のエクステントD、Tの読み出しがスキップされる。
【0363】
3D再生モードの再生装置102はファイルSSを再生する。従って、3D再生モードでの再生経路5012が示すとおり、層境界LBの直後ではまず、拡張エクステントTと拡張再生専用ブロックB
EXとの対、及び2D再生専用ブロックB
2Dの読み出しがスキップされ、ディペンデントビュー・エクステントDと3D再生専用ブロックB
3Dとの全体がファイルSSの3番目のエクステントEXTSS[2]として連続して読み出される。その直後にジャンプが生じ、第2エクステント・ブロック4902内の先頭の拡張エクステントTの読み出しがスキップされる。続いて、第2エクステント・ブロック4902内のエクステント・ペアD、Bの全体がファイルSSの4番目のエクステントEXTSS[3]として連続して読み出される。
【0364】
拡張再生モードの再生装置102は拡張ストリーム・ファイルとファイル2Dとを再生する。従って、拡張再生モードでの再生経路5013が示すとおり、層境界LBの直後ではまず、拡張エクステントTと拡張再生専用ブロックB
EXとのそれぞれが拡張ストリーム・ファイルの1つのエクステントEXT3[4]、EXT3[5]として読み出される。次に、後続の2D再生専用ブロックB
2D、ディペンデントビュー・エクステントD、及び3D再生専用ブロックB
3Dの読み出しがスキップされ、第2エクステント・ブロック4902の先頭の拡張エクステントTが拡張ストリーム・ファイルの7番目のエクステントEXT3[6]として読み出される。以降、第2エクステント・ブロック4902内では、ディペンデントビュー・エクステントDの読み出しがスキップされ、各ベースビュー・エクステントBがファイル2Dの1つのエクステントEXT2D[3]、EXT2D[4]として読み出される。
【0365】
図50の(a)に示されているとおり、配置2では配置1とは異なり、ロング・ジャンプJ
LYの直前だけでなく、その直後においても、2D再生モードでの再生経路5011、3D再生モードでの再生経路5012、及び拡張再生モードでの再生経路5013が分離される。しかし、2D再生専用ブロックB
2Dの全体、3D再生専用ブロックB
3Dの全体、及び拡張再生専用ブロックB
EXの全体はビット単位で一致しているので、いずれの再生モードでも、再生されるベースビュー・ビデオ・フレームは等しい。
【0366】
配置2では配置1よりも、2D再生専用ブロックB
2D、3D再生専用ブロックB
3D、及び拡張再生専用ブロックB
EXの各サイズを自由に設計できる。従って、各ディペンデントビュー・エクステントのサイズ、及び各拡張エクステントのサイズをいずれも、十分に小さく制限することが容易である。こうして、RB2とRB3との各容量を、シームレス再生に必要最小限の値に更に接近させることが容易である。
【0367】
<配置3>
図50の(b)は、BD−ROMディスク101の層境界LBの前後に記録されたエクステント群の配置3、及びそのエクステント群に対する2D再生モードでの再生経路と拡張再生モードでの再生経路を示す模式図である。
図50の(b)を
図50の(a)と比較すれば明らかなとおり、配置3は配置2とは、層境界LBの直後に配置された2D再生専用ブロックが拡張再生専用ブロックとしても利用される点で異なる。
【0368】
図50の(b)を参照するに、層境界LBの前方におけるエクステント群の配置は、
図49に示されているものと同様である。一方、層境界LBと第2エクステント・ブロック4902との間には、拡張エクステントTとベースビュー・エクステントB
2-Eとの対、及び、3D再生専用ブロックを含む1組のエクステント・ペアD、B
3Dがその順で配置されている。層境界LBの直後に配置されたベースビュー・エクステントB
2-Eと拡張再生専用ブロックB
EXとの全体は、そのベースビュー・エクステントB
2-Eと2D再生専用ブロックB
2Dとの全体、及び3D再生専用ブロックB
3Dの全体のそれぞれとビット単位で一致する。そのベースビュー・エクステントB
2-Eはファイル2Dの単一のエクステントEXT2D[2]としてアクセス可能である。
【0369】
2D再生モードの再生装置102はファイル2Dを再生する。従って、2D再生モードでの再生経路5021が示すとおり、層境界LBの直後ではまず、拡張エクステントTの読み出しがスキップされ、ベースビュー・エクステントB
2-Eがファイル2Dの1つのエクステントEXT2D[2]として読み出され、その直後のディペンデントビュー・エクステントDと3D再生専用ブロックB
3Dとの読み出しがスキップされる。次に、第2エクステント・ブロック4902内では、各ベースビュー・エクステントBがファイル2Dの1つのエクステントEXT2D[3]、EXT2D[4]として読み出され、その他のエクステントD、Tの読み出しがスキップされる。
【0370】
拡張再生モードの再生装置102は拡張ストリーム・ファイルとファイル2Dとを再生する。従って、拡張再生モードでの再生経路5023が示すとおり、層境界LBの直後ではまず、拡張エクステントTが拡張ストリーム・ファイルの5番目のエクステントEXT3[4]として読み出され、続いてベースビュー・エクステントB
2-Eがファイル2Dの3番目のエクステントEXT2D[2]として読み出される。次に、後続のディペンデントビュー・エクステントDと3D再生専用ブロックB
3Dとの読み出しがスキップされ、第2エクステント・ブロック4902の先頭の拡張エクステントTが拡張ストリーム・ファイルの6番目のエクステントEXT3[5]として読み出される。以降、第2エクステント・ブロック4902内では、ディペンデントビュー・エクステントDの読み出しがスキップされ、各ベースビュー・エクステントBがファイル2Dの1つのエクステントEXT2D[3]、EXT2D[4]として読み出される。
【0371】
図50の(b)に示されているとおり、配置3では配置2とは異なり、ロング・ジャンプJ
LYの直後において、2D再生モードでの再生経路5021と拡張再生モードでの再生経路5023とが同じベースビュー・エクステントB
2-Eを通る。従って、そのベースビュー・エクステントB
2-Eは条件1を満たさねばならず、それにより、その直前の拡張エクステントTのサイズも影響を受ける。しかし、2D再生モードでの再生経路5021において、そのベースビュー・エクステントB
2-Eの直後に生じるジャンプJ
2Dのジャンプ距離は短いので、そのベースビュー・エクステントB
2-EのエクステントATC時間も短い。その結果、拡張エクステントTのサイズは、RB3に必要な容量を増大させるほどの値にはならない。例えば、拡張ストリームのビットレートR
TS3が10Mbpsであり、拡張再生モードでのBD−ROMドライブの読み出し速度R
UDEXが72Mbpsである場合、
図26のグラフより、RB1の容量の下限RB1は10.7MB以上であり、RB3の容量の下限RB3は8.0MB以上である:RB1≧10.7MB、RB3≧8.0MB、RB1+RB3≧18.7MB。一方、拡張ストリームのビットレートが12Mbpsであり、層境界LBの直後に配置されたベースビュー・エクステントB
2-EのエクステントATC時間が3.18秒である場合、そのベースビュー・エクステントB
2-Eの直前に配置された拡張エクステントTのサイズは4.5MBである。この値はRB3の容量の下限RB3=8.0MBよりも十分に小さい。このように、2D再生モードでの再生経路5021と拡張再生モードでの再生経路5023とが同じベースビュー・エクステントB
2-Eを通っても、RB3に必要な容量を増大させない。
【0372】
配置3では、ロング・ジャンプJ
LYの直後において、2D再生モードでの再生経路5021と拡張再生モードでの再生経路5023とが同じベースビュー・エクステントB
2-Eを通る。それにより、BD−ROMディスク101上において2D再生専用ブロックB
2Dの全体と重複するデータ量を削減することができる。その結果、BD−ROMディスク101上のボリューム領域202Bを更に有効に活用することができる。
【0373】
《実施形態3》
本発明の実施形態3によるBD−ROMディスクは、実施形態1によるものとは異なり、拡張ストリームとしてDTS−HD拡張オーディオ・ストリームの拡張部分を含む。一方、メインTSはプライマリ・オーディオ・ストリームとしてDTS−HDコア・オーディオ・ストリームを含む。上記の拡張部分とDTS−HDコア・オーディオ・ストリームとの間で、PTSが等しいフレームを組み合わせると、DTS−HD拡張オーディオ・ストリームのフレームが構成される。拡張再生モードの再生装置102では主音声デコーダ4474が、メインTSからDTS−HDコア・オーディオ・ストリームを復号すると共に、拡張ストリームから上記の拡張部分を復号し、復号されたデータからDTS−HD拡張オーディオ・ストリームを構成する。その他の要素及びその機能については、実施形態3は実施形態1と同様であるので、詳細は実施形態1についての説明を援用する。
【0374】
拡張ストリームが映像データである場合、拡張データの有無による映像の違いは視聴者に即座に気付かれやすい。従って、拡張再生モードの再生装置102は、飛び込み再生を行う場合、再生開始部分を含むベースビュー・エクステントの直前に配置された拡張エクステントから読み込みを開始する。それにより、再生開始部分における画質の不自然な変化が防止される。一方、拡張ストリームが音声データである場合、拡張データの有無による音声の違いは、映像の違いに比べれば、視聴者に即座には気付かれにくい。従って、拡張再生モードの再生装置102は、飛び込み再生を行う場合、再生開始部分を含むベースビュー・エクステントから読み込みを開始する。それにより、飛び込み再生が指示された時点から実際に再生が開始される時点までの待ち時間が短縮される。但し、その場合、再生開始部分の拡張データが読み込まれないので、音声が途中で不自然に変化する危険性がある。そこで、実施形態3による再生装置102は、飛び込み再生時、再生開始部分の拡張データを読み込まなかった場合、その拡張データに代えて、デフォルトの拡張データをDTS−HDコア・オーディオ・ストリームのフレームと組み合わせて、DTS−HD拡張オーディオ・ストリームのフレームを構成する。それにより、音声の不自然な変化を防ぐことができる。
【0375】
図51は、拡張再生モードの再生装置102に含まれる主音声デコーダ4474の機能ブロック図である。
図51を参照するに、主音声デコーダ4474は、TB15101、MB15102、EB15103、TB25104、MB25105、EB25106、拡張データ制御部5107、デフォルト拡張データ生成部5108、スイッチ5109、及び圧縮音声デコーダ(DEC)5110を含む。TB15101、MB15102、EB15103、TB25104、MB25105、及びEB25106はいずれもバッファ・メモリである。各バッファ・メモリは、主音声デコーダ4474に内蔵されたメモリ素子の一領域を利用する。その他に、それらのバッファ・メモリのいずれか又は全てが、異なるメモリ素子に分離されていてもよい。
【0376】
TB15101は、メインTSのプライマリ・オーディオ・ストリームを含むTSパケットを第1PIDフィルタ4513から受信してそのまま蓄積する。MB15102は、TB15101に蓄積されたTSパケットからPESパケットを復元して蓄積する。そのとき、各TSパケットからTSヘッダが除去される。EB15103は、MB15102に蓄積されたPESパケットから、符号化されたDTS−HDコア・オーディオ・ストリームのフレームを抽出して蓄積する。そのとき、各PESパケットからPESヘッダが除去される。
【0377】
TB25104は、DTS−HD拡張オーディオ・ストリームの拡張部分を含むTSパケットを第2PIDフィルタ4514から受信してそのまま蓄積する。MB25105は、TB25104に蓄積されたTSパケットからPESパケットを復元して蓄積する。そのとき、各TSパケットからTSヘッダが除去される。EB25106は、MB25105に蓄積されたPESパケットから、符号化されたDTS−HD拡張オーディオ・ストリームの拡張部分を抽出して蓄積する。そのとき、各PESパケットからPESヘッダが除去される。
【0378】
拡張データ制御部5107はまず、EB15103に蓄積されたDTS−HDコア・オーディオ・ストリームの各フレームについて、そのフレームを格納していたPESパケットのPESヘッダからPTSを読み取る。拡張データ制御部5107は次に、EB25106に蓄積された各拡張部分について、その拡張部分を格納していたPESパケットのPESヘッダからPTSを読み取る。拡張データ制御部5107は更に、DTS−HDコア・オーディオ・ストリームのフレームと同じPTSが割り当てられた拡張部分を探す。その拡張部分が見つかれば、拡張データ制御部5107はスイッチ5109を操作して、EB25106をDEC5110へ接続させる。一方、その拡張部分が見つからなければ、拡張データ制御部5107はスイッチ5109を操作して、デフォルト拡張データ生成部5108をDEC5110へ接続させる。
【0379】
デフォルト拡張データ生成部5108は、DTS−HD拡張オーディオ・ストリームの拡張部分としてデフォルトのデータを生成する。デフォルトのデータは、DTS−HDコア・オーディオ・ストリームのフレームに対するチャンネル・ミキシングの係数を含み、DTS−HDコア・オーディオ・ストリームの任意のフレームとの組み合わせでDTS−HD拡張オーディオ・ストリームのフレームを構成することができる。
【0380】
スイッチ5109は、拡張データ制御部5107からの指示に応じて、EB25106とデフォルト拡張データ生成部5108とのいずれかをDEC5110へ接続する。
【0381】
DEC5110は、DTS−HD拡張オーディオ・ストリームのフレームの復号処理に特化したハードウェア・デコーダであり、特にその復号処理のアクセラレータ機能を備えたLSIで構成されている。DEC5110は、EB15103から転送されたDTS−HDコア・オーディオ・ストリームのフレームを順次復号する。その復号処理と並行して、DEC5110は、スイッチ5109から転送された拡張部分を順次復号する。DEC5110は更に、復号後のデータを組み合わせてDTS−HD拡張オーディオ・ストリームのフレームを構成し、音声ミキサ4495へ送出する。
【0382】
図52は、主音声デコーダによるオーディオ・ストリームの復号処理のフローチャートである。この処理は、各PIDフィルタ4513、4514から主音声デコーダ4474へTSパケットが転送された時点に開始される。
【0383】
ステップS5201では、TB15101に蓄積されたTSパケットから、符号化されたDTS−HDコア・オーディオ・ストリームのフレームが再構成されてEB15103に蓄積される。一方、TB25104に蓄積されたTSパケットから、符号化されたDTS−HD拡張オーディオ・ストリームの拡張部分が再構成されてEB25106に蓄積される。拡張データ制御部5107は、EB15103からはDTS−HDコア・オーディオ・ストリームの各フレームのPTSを読み取り、EB25106からは各拡張部分のPTSを読み取る。拡張データ制御部5107は更に、DTS−HDコア・オーディオ・ストリームのフレームと同じPTSが割り当てられた拡張部分を探す。その拡張部分がEB25106の中に存在すれば、処理はステップS5202へ進む。その拡張部分が存在しなければ、処理はステップS5203へ進む。
【0384】
ステップS5202では、DTS−HDコア・オーディオ・ストリームのフレームと同じPTSが割り当てられた拡張部分がEB25106の中に存在する。従って、拡張データ制御部5107はスイッチ5109を操作して、EB25106をDEC5110に接続させる。それにより、DEC5110は、EB15103から転送されたDTS−HDコア・オーディオ・ストリームのフレームと、スイッチ5109から転送された拡張部分とを復号し、復号後のデータを組み合わせてDTS−HD拡張オーディオ・ストリームのフレームを構成する。DEC5110は更に、そのフレームを音声ミキサ4495へ送出する。その後、処理はステップS5204へ進む。
【0385】
ステップS5203では、DTS−HDコア・オーディオ・ストリームのフレームと同じPTSが割り当てられた拡張部分がEB25106の中には存在しない。従って、拡張データ制御部5107はスイッチ5109を操作して、デフォルト拡張データ生成部5108をDEC5110に接続させる。それにより、DEC5110は、EB15103から転送されたDTS−HDコア・オーディオ・ストリームのフレームを復号し、デフォルト拡張データ生成部5108から転送されたデフォルトの拡張部分を復号後のフレームと組み合わせてDTS−HD拡張オーディオ・ストリームのフレームを構成する。DEC5110は更に、そのフレームを音声ミキサ4495へ送出する。その後、処理はステップS5204へ進む。
【0386】
ステップS5204では、拡張データ制御部5107が、EB15103の中に復号対象のフレームが残っているかチェックする。そのフレームが残っていれば、処理はステップS5201から繰り返され、残っていなければ処理は終了する。
【0387】
拡張再生モードの再生装置102では、上記のとおり、主音声デコーダがDTS−HDコア・オーディオ・ストリームの各フレームとDTS−HD拡張オーディオ・ストリームの各拡張部分との間でPTSを比較する。それにより、飛び込み再生時にDTS−HDコア・オーディオ・ストリームのフレームに対する拡張部分が読み込まれたか否かがチェックされる。更に、拡張部分が読み込まれなかった場合、主音声デコーダは、その拡張部分に代えて、デフォルトの拡張部分をDTS−HDコア・オーディオ・ストリームのフレームと組み合わせて、DTS−HD拡張オーディオ・ストリームのフレームを構成する。それにより、音声の不自然な欠落を防ぐことができる。
【0388】
《実施形態4》
以下、本発明の実施形態4として、BD−RE(Rewritable)、BD−R(Recordable)、ハードディスク、又は半導体メモリカード等の書き込み可能な記録媒体(以下、BDディスク等と略す。)にAVストリーム・ファイルを、本発明の実施形態1、2によるエクステントの配置でリアルタイムに記録する装置及びその方法について説明する。
【0389】
実施形態4による記録装置は家庭用ディスク・レコーダ又はビデオカメラに搭載されている。その記録装置は、ビデオカメラで撮影された動画コンテンツ、又はBD−ROMディスク等、他の記録媒体から再生されたコンテンツを、所定の圧縮符号化方式でAVストリーム・ファイルに変換して記録媒体に記録する。そのコンテンツは、4K2Kの2D映像とフルHDの3D映像との両方で表現されている。その記録装置は次にシナリオを生成する。「シナリオ」は、コンテンツに含まれる各タイトルの再生方法を規定した情報であり、動的シナリオ情報と静的シナリオ情報とを含む。その記録装置は続いて、シナリオを記録媒体に記録する。
【0390】
図53は、実施形態4による記録装置の機能ブロック図である。
図53を参照するに、その記録装置5300は、記録部5301、ビデオ・エンコーダ5302、オーディオ・エンコーダ5303、制御部5304、マルチプレクサ5305、ソース・パケタイザ5306、及び書き込み部5307を含む。
【0391】
記録部5301は記録装置5300に内蔵の記憶装置であり、特にHDDである。記録部5301はその他に、記録装置5300に外付けされたHDDであってもよく、記録装置5300に内蔵の、又は外付けされた半導体メモリ装置であってもよい。
【0392】
ビデオ・エンコーダ5302は映像データの符号化処理専用のハードウェアである。ビデオ・エンコーダ5302はその他に、記録装置5300に内蔵のCPUが特定のソフトウェアを実行することによって機能する要素であってもよい。ビデオ・エンコーダ5302はアナログ又はデジタルの映像入力信号VINを、MPEG−4 AVC、MVC、又はMPEG−2等の圧縮符号化方式で圧縮する。それにより、映像データは、ベースビュー・ビデオ・ストリーム、ディペンデントビュー・ビデオ・ストリーム、及び拡張ストリームの組み合わせに変換される。変換後の各ビデオ・ストリーム5311と拡張ストリーム5312とは記録部5301に保存される。
【0393】
ビデオ・エンコーダ5302は、3D映像のデータの符号化にはMVC等の多視点符号化方式を利用する。それにより、3D映像のデータは、
図7に示されているようなベースビュー・ビデオ・ストリームとディペンデントビュー・ビデオ・ストリームとの対に変換される。すなわち、レフトビューを表すビデオ・フレームの列は、それ自身のピクチャ間での予測符号化によってベースビュー・ビデオ・ストリームに変換される。一方、ライトビューを表すビデオ・フレームの列は、それ自身のピクチャだけでなく、ベースビュー・ピクチャとの間での予測符号化によってディペンデントビュー・ビデオ・ストリームに変換される。尚、ライトビューを表すビデオ・フレームの列がベースビュー・ビデオ・ストリームに変換され、レフトビューを表すビデオ・フレームの列がディペンデントビュー・ビデオ・ストリームに変換されてもよい。
【0394】
ビデオ・エンコーダ5302は、3D映像のデータを符号化する際、ピクチャ間予測符号化の処理過程で、圧縮前のレフトビュー・ピクチャとライトビュー・ピクチャとを8画素×8画素又は16画素×16画素のマクロブロックごとに比較して、両ピクチャ間での各映像の動きベクトルを検出する。ビデオ・エンコーダ5302は、検出された動きベクトルを各ピクチャの圧縮に利用する。一方、ビデオ・エンコーダ5302はその動きベクトルを各映像の両眼視差の計算に利用し、各映像の両眼視差からその映像の奥行き情報を算出してもよい。ビデオ・エンコーダ5302は更にその奥行き情報を利用して、レフトビュー又はライトビューに対するデプスマップを生成してもよい。その場合、ビデオ・エンコーダ5302は、レフトビュー又はライトビューのストリーム・データとデプスマップ・ストリームとのそれぞれを、それ自身の含むピクチャ間での予測符号化を用いて、ベースビュー・ビデオ・ストリームとデプスマップ・ストリームとに変換する。
【0395】
ビデオ・エンコーダ5302は、4K2Kの2D映像のデータを符号化する際、まず、3D映像のデータの符号化で得られたベースビュー・ビデオ・ストリームからフルHDのビデオ・フレームを抽出し、バイキュービック方式又はバイリニア方式等の補間を用いてそのビデオ・フレームを4K2Kのビデオ・フレームに変換する。ビデオ・エンコーダ5302は次に、変換された4K2Kのビデオ・フレームを元の4K2Kのビデオ・フレームと比較して、差分画素情報を生成する。ビデオ・エンコーダ5302は更に、生成された差分画素情報から解像度拡張情報を生成して、拡張ストリームに変換する。
【0396】
オーディオ・エンコーダ5303は音声データの符号化処理専用のハードウェアである。オーディオ・エンコーダ5303はその他に、記録装置5300に内蔵のCPUが特定のソフトウェアを実行することによって機能する要素であってもよい。オーディオ・エンコーダ5303は音声入力信号AINからオーディオ・ストリーム5313を生成して記録部5301に保存する。音声入力信号AINは例えば非圧縮のLPCM音声データであり、AC−3等の圧縮符号化方式で符号化される。
【0397】
制御部5304は、記録装置5300に内蔵のCPUが特定のソフトウェアを実行することによって機能する要素である。制御部5304はシナリオ・データ5314を生成して記録部5301に保存する。シナリオ・データ5314は、インデックス・ファイル、MVオブジェクト・ファイル、クリップ情報ファイル、及びプレイリスト・ファイルを含み、記録部5301に保存された各エレメンタリ・ストリーム5311−5313の再生方法を規定する。
【0398】
制御部5304は特にクリップ情報ファイルのエントリ・マップを、次のようにリアルタイムで生成する。ビデオ・エンコーダ5302はGOPを1つ符号化する度に、そのGOPの先頭に位置するIピクチャ又はPピクチャのPTS、そのピクチャが格納される予定のソースパケット群の先頭のSPN、及び、そのピクチャに対する解像度拡張情報が格納される予定のソースパケット群の先頭のSPNを制御部5304に渡す。制御部5304は、ビデオ・エンコーダ5302から渡されたPTSとSPNとの対を1つのエントリ・ポイントとしてエントリ・マップに追記する。
【0399】
制御部5304は更に、2Dクリップ情報ファイルとDEPクリップ情報ファイルとのそれぞれのエントリ・マップを利用して、
図29の(a)、(b)に示されているエクステント起点2742、2920を生成する。そのとき、エクステント・ペア間でエクステントATC時間が揃えられる。制御部5304はまた、ベースビュー・エクステント、ディペンデントビュー・エクステント、及び拡張エクステントの各サイズが条件1−6を満たすように、エクステントの配置を設計する。特に
図13に示されているように、1つの拡張エクステントの直後にエクステント・ペアが2つ以上配置され、その拡張エクステントと後続のエクステント・ペアとの間でエクステントATC時間が揃えられる。
【0400】
制御部5304はその他に、メインTS、サブTS、及び拡張ストリームのそれぞれに多重化されるべきエレメンタリ・ストリームから、
図27に示されているストリーム属性情報2720を抽出し、
図27に示されているように、エントリ・マップ2730、3Dメタデータ2740、及びストリーム属性情報2720の組み合わせをクリップ情報2710に対応付ける。こうして、2Dクリップ情報ファイル、DEPクリップ情報ファイル、及び拡張クリップ情報ファイルが生成される。その後、制御部5304は各クリップ情報ファイルを利用して、2Dプレイリスト・ファイル、3Dプレイリスト・ファイル、及び拡張プレイリスト・ファイルを生成する。
【0401】
マルチプレクサ5305は、記録部5301に保存されているエレメンタリ・ストリーム5311−5313をMPEG2−TS形式のストリーム・データに多重化する。具体的には、
図5に示されているように、まず、各エレメンタリ・ストリーム5311−5312が一連のTSパケット列に変換され、次に、それらのTSパケット列が1本の多重化ストリーム・データにまとめられる。こうして、メインTS、サブTS、及び拡張ストリームが生成される。それらの多重化ストリーム・データはソース・パケタイザ5306へ送出される。
【0402】
ソース・パケタイザ5306は、メインTS、サブTS、及び拡張ストリームを構成する各TSパケットを1つのソースパケットに変換する。それにより、メインTS、サブTS、及び拡張ストリームがそれぞれ、一連のソースパケット列に変換され、書き込み部5307へ送出される。
【0403】
書き込み部5307は、まず、ソース・パケタイザ5306によって生成されたソースパケット列を、制御部5304によって設計されたエクステントの配置に従ってBDディスク等BDRに書き込む。それと並行して、書き込み部5307は、ファイル2D、ファイルDEP、ファイルSS、及び拡張ストリーム・ファイルの各ファイル・エントリを、内蔵のメモリ上に生成する。書き込み部5307は更に、各ソースパケット列の全体をBDディスク等BDRに書き終えたとき、各AVストリーム・ファイルのファイル・エントリをBDディスク等BDRに書き込む。こうして、各ソースパケット列がAVストリーム・ファイルとしてBDディスク等BDRに記録される。その後、書き込み部5307は、記録部5301に保存されたシナリオ・データ5314をBDディスク等BDRに記録する。
【0404】
書き込み部5307は、AVストリーム・ファイルのファイル・エントリを生成するとき、クリップ情報ファイルに含まれるエントリ・マップと3Dメタデータとを参照する。それにより、エントリ・ポイントとエクステント起点との各SPNがアロケーション記述子の生成に利用される。特に、
図11に示されているようなエクステントのインターリーブ配置が表現されるように、各アロケーション記述子の表すべきLBNの値とエクステントのサイズとが、制御部5304によって設計されたエクステントの配置に従って決定される。
【0405】
図54は、
図53に示されている記録装置5300を利用してBDディスク等BDRへコンテンツをリアルタイムで記録する方法のフローチャートである。この方法は、例えば記録装置5300の電源投入によって開始される。
【0406】
ステップS5401では、ビデオ・エンコーダ5302が、映像入力信号VINを符号化してピクチャを生成し、音声入力信号AINを符号化してオーディオ・フレームを生成する。特に、3D映像のレフトビューを表すビデオ・フレームはベースビュー・ピクチャに符号化され、ライトビューを表すビデオ・フレームはディペンデントビュー・ピクチャに符号化される。更に、4K2Kのビデオ・フレームは、ベースビュー・ピクチャを利用して、解像度拡張情報に変換される。生成されたピクチャ、オーディオ・フレーム、及び解像度拡張情報は記録部5301に保存される。その後、処理はステップS5402へ進む。
【0407】
ステップS5402では、マルチプレクサ5305が、記録部5301に保存されたピクチャ、オーディオ・フレーム、及び解像度拡張情報を1本のTSに多重化する。更に、ソース・パケタイザ5306がそのTSをソースパケット列に変換して、書き込み部5307へ渡す。その後、処理はステップS5403へ進む。
【0408】
ステップS5403では、書き込み部5307が、ソース・パケタイザ5306によって生成されたソースパケット列を蓄積する。制御部5304は、蓄積されたソースパケット列に基づいて、BDディスク等BDRに記録すべきエクステントの配置を設計する。書き込み部5307はそのソースパケット列を、制御部5304によって設計されたエクステントの配置に従ってBDディスク等BDRに書き込む。それと並行して、書き込み部5307はAVストリーム・ファイルのファイル・エントリを内蔵のメモリ上に生成する。その後、処理はステップS5404へ進む。
【0409】
ステップS5404では、ステップS5401で生成されたピクチャがGOPの先頭であるか否かを、ビデオ・エンコーダ5302がチェックする。そのピクチャがGOPの先頭である場合、処理はステップS5405へ進む。そのピクチャがGOPの先頭ではない場合、処理はステップS5406へ進む。
【0410】
ステップS5405では、ステップS5401で生成されたピクチャがGOPの先頭である。従って、ビデオ・エンコーダ5302は、そのピクチャのPTS、そのピクチャが格納される予定のソースパケット群の先頭のSPN、及び、そのピクチャに対する解像度拡張情報が格納される予定のソースパケット群の先頭のSPNを制御部5304に渡す。制御部5304は、ビデオ・エンコーダ5302から渡されたPTSとSPNとの対を1つのエントリ・ポイントとしてエントリ・マップに追記する。その後、処理はステップS5406へ進む。
【0411】
ステップS5406では、復号対象の映像入力信号VINが存在するか否かをビデオ・エンコーダ5302がチェックする。その映像入力信号VINが存在する場合、処理はステップS5401から繰り返される。その映像入力信号VINが存在しない場合、処理はステップS5407へ進む。
【0412】
ステップS5407では、復号対象の映像入力信号VINが全て、多重化ストリーム・データに変換されてBDディスク等BDRに記録されている。従って、書き込み部5307は内蔵のメモリからBDディスク等BDRへ、各AVストリーム・ファイルのファイル・エントリを転送する。一方、制御部5304が、メインTS、サブTS、及び拡張ストリームのそれぞれに多重化されるべきエレメンタリ・ストリームからストリーム属性情報を抽出し、エントリ・マップと3Dメタデータと共にクリップ情報に対応付ける。こうして、2Dクリップ情報ファイル、DEPクリップ情報ファイル、及び拡張クリップ情報ファイルが生成される。書き込み部5307はそれらのクリップ情報ファイルをBDディスク等BDRに記録する。その後、処理はステップS5408へ進む。
【0413】
ステップS5408では、制御部5304は、2Dクリップ情報ファイル、DEPクリップ情報ファイル、及び拡張クリップ情報ファイルを利用して、2Dプレイリスト・ファイル、3Dプレイリスト・ファイル、及び拡張プレイリスト・ファイルを生成する。書き込み部5307はそれらのプレイリスト・ファイルをBDディスク等BDRに記録する。その後、処理は終了する。
【0414】
《実施形態5》
以下、本発明の実施形態5として、BD−ROMディスクにコンテンツを、本発明の実施形態1、2によるエクステントの配置で記録する装置及びその方法について説明する。その記録装置は、いわゆるオーサリング装置と呼ばれるものである。オーサリング装置は通常、頒布用のコンテンツの制作スタジオに設置され、オーサリング・スタッフによって使用される。その記録装置はオーサリング・スタッフの操作に従い、まずコンテンツを所定の圧縮符号化方式でAVストリーム・ファイルに変換する。コンテンツは、4K2Kの2D映像とフルHDの3D映像との両方で表現されている。その記録装置は次にシナリオを生成する。その記録装置は続いて、AVストリーム・ファイル及びシナリオからBD−ROMディスク用のボリューム・イメージを生成する。その記録装置は最後に、そのボリューム・イメージをBD−ROMディスクに記録する。
【0415】
図55は、本発明の実施形態5による記録装置の機能ブロック図である。
図55を参照するに、その記録装置5500は、データベース部5501、ビデオ・エンコーダ5502、素材制作部5503、シナリオ生成部5504、BDプログラム制作部5505、多重化処理部5506、及びフォーマット処理部5507を含む。
【0416】
データベース部5501は記録装置5500に内蔵の不揮発性記憶装置であり、特にHDDである。データベース部5501はその他に、記録装置5500に外付けされたHDDであってもよく、記録装置5500に内蔵の、又は外付けされた不揮発性半導体メモリ装置であってもよい。
【0417】
ビデオ・エンコーダ5502は映像データの符号化処理専用のハードウェアである。ビデオ・エンコーダ5502はその他に、記録装置5500に内蔵のCPUが特定のソフトウェアを実行することによって機能する要素であってもよい。ビデオ・エンコーダ5502は、非圧縮のビットマップ・データ等の映像データをオーサリング・スタッフから受け付けて、MPEG−4 AVC、MVC、又はMPEG−2等の圧縮符号化方式で圧縮する。それにより、映像データは、ベースビュー・ビデオ・ストリーム、ディペンデントビュー・ビデオ・ストリーム、及び拡張ストリームの組み合わせに変換される。変換後の各ビデオ・ストリーム5511と拡張ストリーム5512とはデータベース部5501に保存される。
【0418】
ビデオ・エンコーダ5502は、
図53に示されているもの5302と同様に、3D映像のデータをベースビュー・ビデオ・ストリームとディペンデントビュー・ビデオ・ストリームとの対に変換する。特に、レフトビューとライトビューとの間での各映像の動きベクトルから各3D映像の奥行き情報を算出し、その奥行き情報を利用してデプスマップ・ストリームを生成してもよい。ビデオ・エンコーダ5502は更に、3D映像のデータの符号化で得られたベースビュー・ビデオ・ストリームを利用して、4K2Kの2D映像のデータから、解像度拡張情報を含む拡張ストリームを生成する。
【0419】
素材制作部5503は、ビデオ・ストリーム5511と拡張ストリーム5512以外のエレメンタリ・ストリーム、例えば、オーディオ・ストリーム5513、PGストリーム5514、及びIGストリーム5515を生成してデータベース部5501に保存する。例えば、素材制作部5503はオーサリング・スタッフから非圧縮のLPCM音声データを受け付けて、それをAC−3等の圧縮符号化方式で符号化してオーディオ・ストリーム5513に変換する。オーディオ・ストリームとしてDTS−HD拡張オーディオ・ストリームが生成される場合、各オーディオ・フレームはDTS−HDコア・オーディオ・フレームと拡張部分とに分解され、前者はオーディオ・ストリームに格納され、後者は拡張ストリームに格納される。素材制作部5503はその他に、オーサリング・スタッフから字幕情報ファイルを受け付けて、それに従ってPGストリーム5514を生成する。字幕情報ファイルは、字幕を表すイメージ・データ又はテキスト・データ、その字幕の表示時期、及び、その字幕に加えられるべきフェード・イン/アウト等の視覚効果を規定する。素材制作部5503は更に、オーサリング・スタッフからビットマップ・データとメニュー・ファイルとを受け付けて、それらに従ってIGストリーム5515を生成する。ビットマップ・データはメニューのイメージを表す。メニュー・ファイルは、そのメニューに配置される各ボタンの状態の遷移、及び各ボタンに加えられるべき視覚効果を規定する。
【0420】
シナリオ生成部5504は、オーサリング・スタッフからGUI経由で受け付けられた指示に従ってシナリオ・データ5516を生成し、データベース部5501に保存する。シナリオ・データ5516は、インデックス・ファイル、MVオブジェクト・ファイル、及びプレイリスト・ファイルを含み、データベース部5501に保存された各エレメンタリ・ストリーム5511−5515の再生方法を規定する。シナリオ生成部5504は更に、パラメータ・ファイルPRFを生成して多重化処理部5506へ送出する。パラメータ・ファイルPRFは、データベース部5501に保存されたエレメンタリ・ストリーム5511−5515の中から、メインTS、サブTS、及び拡張ストリームのそれぞれに多重化されるべきエレメンタリ・ストリームを規定する。
【0421】
BDプログラム制作部5505はオーサリング・スタッフに対して、BD−Jオブジェクト及びJavaアプリケーション・プログラムのプログラミング環境を提供する。BDプログラム制作部5505はGUIを通じてユーザからの要求を受け付け、その要求に従って各プログラムのソースコードを生成する。BDプログラム制作部5505は更に、BD−JオブジェクトからBD−Jオブジェクト・ファイルを生成し、Javaアプリケーション・プログラムをJARファイルに圧縮する。それらのプログラム・ファイル群BDPはフォーマット処理部5507へ送出される。
【0422】
多重化処理部5506はパラメータ・ファイルPRFに従い、データベース部5501に保存されているエレメンタリ・ストリーム5511−5515をMPEG2−TS形式のストリーム・データに多重化する。具体的には、
図5に示されているように、まず、各エレメンタリ・ストリーム5511−5515が一連のソースパケット列に変換され、次に、それらのソースパケット列が1本の多重化ストリーム・データにまとめられる。こうして、メインTS、サブTS、及び拡張ストリームが生成される。それらの多重化ストリーム・データMSDはフォーマット処理部5507へ送出される。
【0423】
多重化処理部5506は更に、2Dクリップ情報ファイル、DEPクリップ情報ファイル、及び拡張クリップ情報ファイルを以下の手順(I)−(IV)で生成する:(I)ファイル2D、ファイルDEP、拡張クリップ情報ファイルのそれぞれについてエントリ・マップを生成する。(II)各クリップ情報ファイルのエントリ・マップを利用してエクステント起点を生成する。そのとき、エクステント・ペア間でエクステントATC時間を揃える。更に、ベースビュー・エクステント、ディペンデントビュー・エクステント、及び拡張エクステントの各サイズが条件1−6を満たすように、エクステントの配置を設計する。特に
図13に示されているように、1つの拡張エクステントの直後にエクステント・ペアが2つ以上配置され、その拡張エクステントと後続のエクステント・ペアとの間でエクステントATC時間が揃えられる。(III)メインTS、サブTS、及び拡張ストリームのそれぞれに多重化されるべきエレメンタリ・ストリームからストリーム属性情報を抽出する。(IV)エントリ・マップ、3Dメタデータ、及びストリーム属性情報の組み合わせをクリップ情報に対応付ける。こうして、各クリップ情報ファイルCLIが生成され、フォーマット処理部5507へ送出される。
【0424】
フォーマット処理部5507は、データベース部5501に保存されたシナリオ・データ5516、BDプログラム制作部5505によって制作されたBD−Jオブジェクト・ファイル等のプログラム・ファイル群BDP、及び、多重化処理部5506によって生成された多重化ストリーム・データMSDとクリップ情報ファイルCLIとから、BD−ROMディスク・イメージ5520を生成する。
【0425】
フォーマット処理部5507は多重化ストリーム・データMSDを、ファイル2D、ファイルDEP、ファイルSS、及び拡張ストリーム・ファイルに格納する。フォーマット処理部5507は、それらのAVストリーム・ファイルのファイル・エントリを生成するとき、クリップ情報ファイルに含まれるエントリ・マップと3Dメタデータとを参照する。それにより、エントリ・ポイントとエクステント起点との各SPNがアロケーション記述子の生成に利用される。特に、
図11に示されているようなエクステントのインターリーブ配置が表現されるように、各アロケーション記述子の表すべきLBNの値とエクステントのサイズとが、多重化処理部5506によって設計されたエクステントの配置に従って決定される。
【0426】
図56は、
図55に示されている記録装置5500を利用してBD−ROMディスクへコンテンツを記録する方法のフローチャートである。この方法は、例えば記録装置5500の電源投入によって開始される。
【0427】
ステップS5601では、BD−ROMディスクへ記録されるべきエレメンタリ・ストリーム、プログラム、及びシナリオ・データが生成される。すなわち、ビデオ・エンコーダ5502はビデオ・ストリーム5511と拡張ストリーム5512とを生成する。素材制作部5503は、オーディオ・ストリーム5513、PGストリーム5514、及びIGストリーム5515を生成する。シナリオ生成部5504はシナリオ・データ5516を生成する。生成されたそれらのデータ5511−5516はデータベース部5501に保存される。一方、シナリオ生成部5504はパラメータ・ファイルPRFを生成して多重化処理部5506へ送出する。BDプログラム制作部5505は、BD−Jオブジェクト・ファイルとJARファイルとを含むプログラム・ファイル群BDPを生成してフォーマット処理部5507へ送出する。その後、処理はステップS5602へ進む。
【0428】
ステップS5602では、多重化処理部5506はパラメータ・ファイルPRFに従い、データベース部5501からエレメンタリ・ストリーム5511−5515を読み出してMPEG2−TS形式のストリーム・データに多重化する。その後、処理はステップS5603へ進む。
【0429】
ステップS5603では、多重化処理部5506は、2Dクリップ情報ファイル、DEPクリップ情報ファイル、及び拡張クリップ情報ファイルを生成する。更に、ベースビュー・エクステント、ディペンデントビュー・エクステント、及び拡張エクステントのサイズが条件1−6を満たすように設計される。その後、処理はステップS5604へ進む。
【0430】
ステップS5604では、フォーマット処理部5507は、シナリオ・データ5516、プログラム・ファイル群BDP、多重化ストリーム・データMDS、及びクリップ情報ファイルCLIからBD−ROMディスク・イメージ5520を生成する。特に、多重化ストリーム・データMDSがAVストリーム・ファイルに格納される際には、
図11に示されているようなエクステントのインターリーブ配置が表現されるように、ファイル・エントリ内の各アロケーション記述子の表すべきLBNの値とエクステントのサイズとが、多重化処理部5506によって設計されたエクステントの配置に従って決定される。その後、処理はステップS5605へ進む。
【0431】
ステップS5604では、BD−ROMディスク・イメージ5520の中に電子透かしが埋め込まれてもよい。電子透かしは、一般の再生装置では検出できない識別子である。特殊な再生装置を用いて、BD−ROMディスク上に電子透かしが存在するか否かを判別することにより、そのBD−ROMディスクが海賊版であるか否かを識別することができる。
【0432】
ステップS5605では、BD−ROMディスク・イメージ5520がBD−ROMプレス用データに変換される。このデータは、マスタリング装置によってBD−ROMディスクの原盤に記録される。その後、処理はステップS5606へ進む。
【0433】
ステップS5605では、BD−ROMプレス用データと共に、AACS LA(Advanced Access Content System Licensing Administrator)の電子署名がBD−ROMディスクの原盤に記録されてもよい。AACS LAは、次世代のデジタル家電機器における著作物保護技術に関するライセンスを管理する団体である。マスタリング装置の所有者は、AACS LAからライセンスを提供されている場合、BD−ROMプレス用データの一部をAACS LAへ送付することで、上記の電子署名を取得することができる。再生装置は、BD−ROMディスクからデータを再生する際、その電子署名を確認することにより、そのBD−ROMディスクがAACS LAによって認証されたものであることを確認することができる。
【0434】
ステップS5605では更に、BD−ROMディスク・イメージ5520の一部、特にビデオ・ストリームとオーディオ・ストリームとが、著作権の保護又はデータの秘匿性の向上を目的として暗号化されてもよい。その場合、BD−ROMディスクの原盤にはタイトル・キーの暗号化データとMKB(メディア・キー・ブロック)とが記録される。タイトル・キーは、暗号化されたBD−ROMディスク・イメージ5520の一部の解読に必要な鍵である。MKBは、AACS LAから提供されるデータであり、タイトル・キーの暗号化と、暗号化されたタイトル・キーの解読とに利用される。再生装置は、暗号化されたビデオ・ストリーム等を再生する場合、まず、デバイス・キー、MKB、及びボリュームIDを利用して、暗号化されたタイトル・キーを解読する。デバイス・キーは、再生装置に固有のコードである。ボリュームIDは、BD−ROMディスクに固有のコードであり、
図2に示されているBD−ROMディスク101上のBCA201に書き込まれている。再生装置は次に、解読されたタイトル・キーを利用して、暗号化されたビデオ・ストリーム等を解読する。タイトル・キーは、デバイス・キー、MKB、及びボリュームIDとの組み合わせが正しい場合にのみ解読される。従って、AACS LAによって認証された再生装置とBD−ROMディスクとの組み合わせでしか、暗号化されたビデオ・ストリーム等を正しく再生することはできない。
【0435】
ステップS5606では、ステップS5605で得られた原盤をプレス工程に利用してBD−ROMディスク101の大量生産を行う。こうして、処理が終了する。
【0436】
《補足》
<記録媒体のファイルシステム>
記録媒体のファイルシステムとしてUDFが利用されるとき、
図2に示されているBD−ROMディスク101のボリューム領域202Bのようなデータ記録領域は、一般に複数のディレクトリ、ファイル・セット記述子、及び終端記述子のそれぞれが記録された領域を含む。「ディレクトリ」は、同じディレクトリを構成するデータ群である。「ファイル・セット記述子」は、ルート・ディレクトリのファイル・エントリが記録されているセクタのLBNを示す。「終端記述子」はファイル・セット記述子の記録領域の終端を示す。
【0437】
各ディレクトリは共通のデータ構造を持つ。各ディレクトリは特に、ファイル・エントリ、ディレクトリ・ファイル、及び下位ファイル群を含む。
【0438】
「ファイル・エントリ」は、記述子タグ、ICB(Information Control Block)タグ、及びアロケーション記述子を含む。「記述子タグ」は、その記述子タグを含むデータの種類がファイル・エントリであることを示す。例えば記述子タグの値が“261”であるとき、そのデータの種類はファイル・エントリである。「ICBタグ」はそのファイル・エントリ自身の属性情報を示す。「アロケーション記述子」は、同じディレクトリに属するディレクトリ・ファイルが記録されたセクタのLBNを示す。
【0439】
「ディレクトリ・ファイル」は、下位ディレクトリのファイル識別記述子と下位ファイルのファイル識別記述子とを一般に複数ずつ含む。「下位ディレクトリのファイル識別記述子」は、そのディレクトリの直下に置かれた下位ディレクトリにアクセスするための情報である。このファイル識別記述子は、その下位ディレクトリの識別情報、ディレクトリ名の長さ、ファイル・エントリ・アドレス、及びディレクトリ名そのものを含む。特にファイル・エントリ・アドレスは、その下位ディレクトリのファイル・エントリが記録されたセクタのLBNを示す。「下位ファイルのファイル識別記述子」は、そのディレクトリの直下に置かれた下位ファイルにアクセスするための情報である。このファイル識別記述子は、その下位ファイルの識別情報、ファイル名の長さ、ファイル・エントリ・アドレス、及びファイル名そのものを含む。特にファイル・エントリ・アドレスは、その下位ファイルのファイル・エントリが記録されたセクタのLBNを示す。「下位ファイルのファイル・エントリ」は、後述のとおり、下位ファイルの本体を構成するデータのアドレス情報を含む。
【0440】
ファイル・セット記述子と下位ディレクトリ/ファイルのファイル識別記述子とを順番に辿ってゆけば、記録媒体に記録された任意のディレクトリ/ファイルのファイル・エントリにアクセスすることができる。具体的には、まず、ファイル・セット記述子からルート・ディレクトリのファイル・エントリが特定され、そのファイル・エントリ内のアロケーション記述子からルート・ディレクトリのディレクトリ・ファイルが特定される。次に、そのディレクトリ・ファイルからルート・ディレクトリ直下のディレクトリのファイル識別記述子が検出され、その中のファイル・エントリ・アドレスからそのディレクトリのファイル・エントリが特定される。更に、そのファイル・エントリ内のアロケーション記述子からそのディレクトリのディレクトリ・ファイルが特定される。続いて、そのディレクトリ・ファイルのうち、下位ディレクトリ又は下位ファイルのファイル識別記述子内のファイル・エントリ・アドレスからその下位ディレクトリ又は下位ファイルのファイル・エントリが特定される。
【0441】
「下位ファイル」はそれぞれエクステントとファイル・エントリとを含む。「エクステント」は一般に複数であり、それぞれ、ディスク上の論理アドレス、すなわちLBNが連続しているデータ列である。エクステントの全体が下位ファイルの本体を構成する。「ファイル・エントリ」は、記述子タグ、ICBタグ、及びアロケーション記述子を含む。「記述子タグ」は、その記述子タグを含むデータの種類がファイル・エントリであることを示す。「ICBタグ」はそのファイル・エントリ自身の属性情報を示す。「アロケーション記述子」は各エクステントに対して1つずつ設けられ、データ記録領域における各エクステントの配置、具体的には各エクステントのサイズとその先端のLBNとを示す。従って、各アロケーション記述子を参照することにより、各エクステントにアクセスすることができる。その他に、各アロケーション記述子の上位2ビットは、そのアロケーション記述子の示すLBNのセクタにエクステントが実際に記録されているか否かを示す。すなわち、その上位2ビットが“0”であるとき、そのセクタにはエクステントが割り付け済みであり、かつ記録済みであることを示し、“1”であるとき、そのセクタにエクステントが割り付け済みではあるが未記録であることを示す。
【0442】
UDFを利用した上記のファイルシステムと同様、記録媒体に対するファイルシステムでは一般に、その記録媒体に記録された各ファイルが複数のエクステントに分割されているとき、上記のアロケーション記述子のように、各エクステントの配置を示す情報がその記録媒体に記録される。その情報を参照することにより、各エクステントの配置、特にその論理アドレスを知ることができる。
【0443】
<本発明の別の観点>
請求の範囲には、本発明の第1の観点による記録媒体、再生装置、及び記録装置が記載されている。その他に、上記の実施形態1−3に基づき、本発明は以下の観点から特徴づけられてもよい。
【0444】
本発明の第2の観点による記録媒体は、メインビュー・ストリーム、サブビュー・ストリーム、及び拡張ストリームが記録された記録媒体であって、
前記メインビュー・ストリームは、立体視映像のメインビューを構成するメインビュー・ビデオ・ストリームを含み、前記記録媒体の上では複数のメインビュー・エクステントに分割されて配置されており、
前記サブビュー・ストリームは、前記立体視映像のサブビューを構成するサブビュー・ビデオ・ストリームを含み、前記記録媒体の上では複数のサブビュー・エクステントに分割されて配置されており、
前記拡張ストリームは、前記メインビュー・ビデオ・ストリームと組み合わされて利用される拡張データを含み、前記記録媒体の上では複数の拡張エクステントに分割されて配置されており、
1つの拡張エクステントに1つのメインビュー・エクステントが隣接している場合、前記1つの拡張エクステントのデータ量の下限は、再生装置が前記記録媒体から、ジャンプすることなく連続して読み出すデータ量の下限よりも小さい
ことを特徴とする。
【0445】
本発明の第2の観点による再生装置は、記録媒体から、メインビュー・ストリーム、サブビュー・ストリーム、及び拡張ストリームを再生する再生装置であって、
前記メインビュー・ストリームは、立体視映像のメインビューを構成するメインビュー・ビデオ・ストリームを含み、前記記録媒体の上では複数のメインビュー・エクステントに分割されて配置されており、
前記サブビュー・ストリームは、前記立体視映像のサブビューを構成するサブビュー・ビデオ・ストリームを含み、前記記録媒体の上では複数のサブビュー・エクステントに分割されて配置されており、
前記拡張ストリームは、前記メインビュー・ビデオ・ストリームと組み合わされて利用される拡張データを含み、前記記録媒体の上では複数の拡張エクステントに分割されて配置されており、
前記再生装置は、
前記記録媒体からデータを読み出す読み出し部、
前記読み出し部によって読み出されたデータから、前記メインビュー・ストリーム、前記サブビュー・ストリーム、及び前記拡張ストリームを抽出するスイッチ部、
前記スイッチ部によって抽出されたメインビュー・ストリームを格納する第1リード・バッファ、
前記スイッチ部によって抽出されたサブビュー・ストリームを格納する第2リード・バッファ、
前記スイッチ部によって抽出された拡張ストリームを格納する第3リード・バッファ、並びに、
前記第1リード・バッファから前記メインビュー・ストリームを読み出して復号し、前記第2リード・バッファから前記サブビュー・ストリームを読み出して復号し、前記第3リード・バッファから前記拡張ストリームを読み出して復号する復号部、
を備え、
前記読み出し部が前記記録媒体から、ジャンプすることなく連続して読み出すデータ量は、所定の閾値以上であり、
前記読み出し部は、前記記録媒体から、1つのメインビュー・エクステントに隣接している1つの拡張エクステントを読み出す場合、前記1つの拡張エクステントを前記1つのメインビュー・エクステントと共に連続して読み出す
ことを特徴とする。
【0446】
本発明の第2の観点による記録装置は、記録媒体に、メインビュー・ストリーム、サブビュー・ストリーム、及び拡張ストリームを記録する記録装置であって、
立体視映像のメインビューをメインビュー・ビデオ・ストリームに符号化し、前記立体視映像のサブビューをサブビュー・ビデオ・ストリームに符号化し、前記メインビュー・ビデオ・ストリームと組み合わされて利用される拡張データを符号化する符号化部、
前記メインビュー・ビデオ・ストリームを前記メインビュー・ストリームに多重化し、前記サブビュー・ビデオ・ストリームを前記サブビュー・ストリームに多重化し、前記拡張データを前記拡張ストリームに多重化し、前記記録媒体における、前記メインビュー・ストリーム、前記サブビュー・ストリーム、及び前記拡張ストリームの配置を決定する多重化部、並びに、
前記メインビュー・ストリーム、前記サブビュー・ストリーム、及び前記拡張ストリームを前記記録媒体に書き込む書き込み部、
を備え、
前記多重化部は、前記メインビュー・ストリームを複数のメインビュー・エクステントに分割して配置し、前記サブビュー・ストリームを複数のサブビュー・エクステントに分割して配置し、前記拡張ストリームを複数の拡張エクステントに分割して配置し、
前記多重化部は、1つの拡張エクステントを1つのメインビュー・エクステントに隣接させる場合、前記1つの拡張エクステントのデータ量の下限を、再生装置が前記記録媒体から、ジャンプすることなく連続して読み出すデータ量の下限よりも小さく設定する
ことを特徴とする。
【0447】
本発明の第2の観点による記録媒体では、1つの拡張エクステントに1つのメインビュー・エクステントが隣接している場合、その拡張エクステントのデータ量の下限は、再生装置が記録媒体から、ジャンプすることなく連続して読み出すデータ量の下限よりも小さい。その場合、再生装置はその拡張エクステントを、それに隣接するメインビュー・エクステントと共に連続して読み出す。それにより、その拡張エクステントにはパディング・ビットが付加されなくてもよい。その結果、記録媒体上に、メインビュー・エクステント及びサブビュー・エクステントを記録可能な領域が広く確保されるので、記録媒体上のデータ領域を有効に利用することができる。
【0448】
本発明の第3の観点による再生装置は、記録媒体から、メインビュー・ストリーム、サブビュー・ストリーム、及び拡張ストリームを再生する再生装置であって、
前記メインビュー・ストリームは、立体視映像のメインビューを構成するメインビュー・ビデオ・ストリームと、オーディオ・ストリームとを含み、前記記録媒体の上では複数のメインビュー・エクステントに分割されて配置されており、
前記サブビュー・ストリームは、前記立体視映像のサブビューを構成するサブビュー・ビデオ・ストリームを含み、前記記録媒体の上では複数のサブビュー・エクステントに分割されて配置されており、
前記拡張ストリームは、前記オーディオ・ストリームと組み合わされて利用される拡張オーディオ・データを含み、前記記録媒体の上では複数の拡張エクステントに分割されて配置されており、
前記再生装置は、
前記記録媒体からデータを読み出す読み出し部、
前記読み出し部によって読み出されたデータから、前記メインビュー・ストリーム、前記サブビュー・ストリーム、及び前記拡張ストリームを抽出するスイッチ部、
前記スイッチ部によって抽出されたメインビュー・ストリームを格納する第1リード・バッファ、
前記スイッチ部によって抽出されたサブビュー・ストリームを格納する第2リード・バッファ、
前記スイッチ部によって抽出された拡張ストリームを格納する第3リード・バッファ、並びに、
前記第1リード・バッファから前記メインビュー・ストリームを読み出して復号し、前記第2リード・バッファから前記サブビュー・ストリームを読み出して復号し、前記第3リード・バッファから前記拡張ストリームを読み出して復号する復号部、
を備え、
前記読み出し部が前記記録媒体から前記複数のメインビュー・エクステントと前記複数の拡張エクステントとを読み出す一方で、前記スイッチ部が、前記読み出し部によって読み出されたデータから、前記オーディオ・ストリームの一部と組み合わされるべき前記拡張オーディオ・データの一部を抽出できなかった場合、前記復号部は、前記拡張オーディオ・データの一部の代わりにデフォルトの拡張オーディオ・データを出力する
ことを特徴とする。
【0449】
本発明の第3の観点による再生装置は、例えば飛び込み再生時、再生開始部分を含むメインビュー・エクステントから読み込みを開始する。それにより、飛び込み再生が指示された時点から実際に再生が開始される時点までの待ち時間が短縮される。一方、その再生装置は再生開始部分の拡張オーディオ・データを読み込まないので、その拡張オーディオ・データに代えてデフォルトの拡張オーディオ・データを、メインビュー・ストリーム内のオーディオ・ストリームと組み合わせて利用する。それにより、音声の不自然な変化を防ぐことができる。