特許第5908917号(P5908917)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5908917ある液体量を部分量に配分するためのマイクロ流体試験担体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5908917
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】ある液体量を部分量に配分するためのマイクロ流体試験担体
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/08 20060101AFI20160412BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20160412BHJP
   G01N 35/00 20060101ALI20160412BHJP
【FI】
   G01N35/08 A
   G01N37/00 101
   G01N35/00 D
【請求項の数】18
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-535352(P2013-535352)
(86)(22)【出願日】2011年10月13日
(65)【公表番号】特表2013-541013(P2013-541013A)
(43)【公表日】2013年11月7日
(86)【国際出願番号】EP2011067929
(87)【国際公開番号】WO2012055707
(87)【国際公開日】20120503
【審査請求日】2014年8月12日
(31)【優先権主張番号】10189261.0
(32)【優先日】2010年10月28日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100092967
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 修
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(72)【発明者】
【氏名】アウグシュタイン,マンフレート
(72)【発明者】
【氏名】ベーム,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ヴュルル,スザンヌ
【審査官】 後藤 大思
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭54−033090(JP,A)
【文献】 米国特許第04154793(US,A)
【文献】 特開2009−150880(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0155925(US,A1)
【文献】 国際公開第2007/116909(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0227041(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00−37/00
B01J 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(4)および被覆層(21)を有すると共に、前記基板(4)および前記被覆層(21)によって囲まれる前記基板(4)に形成された毛細管構造(3)を有する、ある分量の流体を部分量に配分するためのマイクロ流体試験担体であって、
− 前記毛細管構造(3)が、受容チャンバ(6)、試料チャンバ(8、10、11)、および前記受容チャンバ(6)と前記試料チャンバ(8、10、11)の間の接続流路(9)を備え、
− 前記受容チャンバ(6)が、2つの向かい合う境界面(22、23)、および側壁(27)を有し、前記境界面(22、23)の一方が入口部(7)を有し、前記境界面のうちの一方の境界面(22)が前記受容チャンバ(6)の床部(24)であり、他方の境界面(23)が前記受容チャンバ(6)の覆い(25)であり、
− 前記受容チャンバ(6)が、円周状の排出流路(16)、および前記受容チャンバ(6)と前記排出流路(16)の間に配置された円周状の堰(18)を有し、前記堰(18)が、前記排出流路(16)よりも前記入口部(7)に近く、
− 前記堰(18)が、幾何的弁(28)を形成する毛細管栓が、前記堰(18)および前記排出流路(16)によって形成されるように設計され、前記毛細管栓を通じて空気が、前記排出流路(16)から逃れることができ、
− 前記接続流路(9)が、前記排出流路(16)の流出孔(26)と前記試料チャンバ(8、10、11)の入口孔(35)の間に延び、流体輸送が、前記受容チャンバ(6)から前記試料チャンバ(8、10、11)の中へと可能となっており、
− 前記弁(28)が、前記受容チャンバ(6)からの自動的な流体輸送が防がれるように設計される、マイクロ流体試験担体。
【請求項2】
前記受容チャンバ(6)の前記境界面(22、23)の一方が湾曲していることを特徴とする請求項1に記載のマイクロ流体試験担体。
【請求項3】
前記湾曲した境界面(23)が、前記受容チャンバ(6)の前記覆い(25)であることを特徴とする請求項2に記載のマイクロ流体試験担体。
【請求項4】
前記湾曲した境界面(22)が、前記受容チャンバ(6)の前記床部(24)であることを特徴とする請求項2に記載のマイクロ流体試験担体。
【請求項5】
前記試験担体(1)が、前記試験担体(1)を通じて延びる回転軸(5)を中心にして回転することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のマイクロ流体試験担体。
【請求項6】
前記受容チャンバ(6)が、前記回転軸(5)が前記入口部(7)を通じて延びるように前記試験担体(1)に対して配置されることを特徴とする請求項5に記載のマイクロ流体試験担体。
【請求項7】
前記受容チャンバ(6)が、前記回転軸(5)が前記受容チャンバ(6)の前記中心点または前記重心を通じて延びるように前記試験担体に配置されることを特徴とする請求項5または6に記載のマイクロ流体試験担体。
【請求項8】
前記受容チャンバ(6)が、前記試験担体(1)の前記中心点または前記試験担体(1)の前記重心から偏心して配置されることを特徴とする請求項5または6に記載のマイクロ流体試験担体。
【請求項9】
前記受容チャンバ(6)の前記床部(24)が、前記流体が流れ込む前記流出孔(26)に近い収集領域(42)に凹み(43)が形成されるように凹まされることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載のマイクロ流体試験担体。
【請求項10】
前記覆い(25)中の前記入口部(7)に向き合って配置され突起部(40)が、前記受容チャンバ(6)の前記床部(24)に形成されることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載のマイクロ流体試験担体。
【請求項11】
前記受容チャンバ(6)から離れるように延びる接続流路(9)とそれぞれ流体連通する複数の流出孔(26)が、前記排出流路(16)に配置されることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載のマイクロ流体試験担体。
【請求項12】
前記試料チャンバ(8、10、11)が、流体が前記試料チャンバ(8、10、11)から流れることができるように出口流路(34)と流体連通する出口孔(33)を備えることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載のマイクロ流体試験担体。
【請求項13】
入口孔を有するさらなる流体チャンバ(13)が、前記出口流路(34)と接続し、流体チャンバ(13)が、前記出口流路(34)によって前記試料チャンバ(8、10、11)と流体連通することを特徴とする請求項12に記載のマイクロ流体試験担体。
【請求項14】
前記側壁が、前記受容チャンバ(6)の中心点から離れるように延在する窪み(44)を備え、前記流出孔(26)が、前記窪み(44)に配置されることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一項に記載のマイクロ流体試験担体。
【請求項15】
前記受容チャンバ(6)の他方の前記境界面(22、23)が前記被覆層(21)によって形成されることを特徴とする請求項2に記載のマイクロ流体試験担体。
【請求項16】
前記床部(24)は、前記床部(24)が前記受容チャンバ(6)の前記堰(18)に向かって上向きに傾斜されるように湾曲していることを特徴とする請求項4に記載のマイクロ流体試験担体。
【請求項17】
前記突起部(40)が円錐形であり、前記回転軸(5)と一直線に並べられることを特徴とする請求項5を引用する請求項10に記載のマイクロ流体試験担体。
【請求項18】
前記流出孔(26)が、等距離を隔てて円周に分散されることを特徴とする請求項11に記載のマイクロ流体試験担体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ある分量の流体を部分量に配分するためのマイクロ流体試験担体に関する。試験担体は、基板および被覆層、ならびに基板および被覆層によって囲まれる毛細管構造を備え、毛細管構造は、受容チャンバ、試料チャンバ、および受容チャンバと試料チャンバの間の接続流路を備える。受容チャンバは、2つの境界面、および側壁を有し、一方の向き合う境界面が受容チャンバの床部であり、他方の境界面が受容チャンバの覆いである。
【背景技術】
【0002】
流体試料を分析するためのマイクロ流体要素が、体外診断用の診断試験に用いられる。そのような試験では、体液の試料は、医療のために、内部に含まれる1つまたは複数の分析物の試験を受ける。この分析における重要な構成要素は試験担体であり、複雑な多段階の試験(試験プロトコル)を実行することを可能にするために、試験担体上に、流体試料を受け取り、輸送するためのマイクロ流体流路構造が存在する。
【0003】
試験担体は、「ラボオンCD(Lab on a CD)」または「ラボオンチップ(Lab on a chip)」としばしば呼ばれ、通常プラスチックから形成された基板である担体材料から構成される。適した材料の例は、COC(シクロオレフィンコポリマー(cyclo−olefin−copolymer))、またはPMMA(ポリメチルメタクリレート)、ポリカーボネート、またはポリスチレンなどのプラスチックである。試験担体は、基板に形成される流路構造を有し、蓋または被覆層によって閉じられる。流路構造は、しばしば、いくつかの流路および流路区画、ならびに流路および流路区画と比較して広げられる間に置かれたチャンバからなる。流路構造の構造および寸法は、基板のプラスチック部分の構造化によって定められ、例えば、射出成形法または他の適切な方法によって製造することができる。これらは、ミリング等などの材料を除去する方法も含む。
【0004】
マイクロ流体試験担体は、とりわけ、例えば、結合または遊離した反応成分が分離される多段階の試験方法、例えば酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を用いた免疫化学的解析に用いられる。これは、制御された流体輸送を必要とする。このやり方は、(流体要素の内部の)内部手段または(流体要素の外部の)外部手段によって制御することができる。制御は、圧力差または力の変化の使用に基づいてもよい。回転速度、回転方向または加速度を変化させることによって制御を得るために使用される遠心力を利用するために、しばしば、試験担体は回転させられる。しばしば、毛細管と遠心力の組み合わせが、流体を制御するため使用される。
【0005】
回転式試験担体を用いる分析システムは、例えば、以下の公報、すなわち、
EP0626071B1
WO2007/042219A1
WO01/46465A2
WO95/33986
米国特許第5,160,702号
WO93/19827
により知られている。
【0006】
マイクロ流体試験要素およびマイクロ流体試験方法ならびにその制御、ならびに例えばコンパクトディスク(CD)の形態の回転ディスクとしてのマイクロ流体試験要素の概要は、「ラボオンCD(Lab on CD)」;Annual Review of Biomedical Engineering、2006.8、601〜628頁、Marc Madouらによる(online@http://bioenc.annualreviews.org)から知られている。
【0007】
マイクロ流体試験担体は、しばしば、1つの試験担体上に複数の平行な下位構造を有し、1つの工程順序において異なる分析が実行できるようになっている。流体を複数の同一または異なる大きさの部分容積に配分するために、分配構造が試験担体に設けられ、使用者が、少量のある試料流体を何度も加える必要はない。これらの分配構造は、結果の有意性が、試料適用または標本化効果によって悪影響を及ぼされないことを確かなものにもする。全ての分析に同じ試料材料が使用され、それによって、例えばマルチプレックスアッセイを実行するときに有意性を増大させる。
【0008】
従来技術は、例えば米国特許第6,919,058号において、直列に並んで配置された複数のV形構造の形状で細長い流路内に流体が収容される分配構造を開示する。分配構造は、遠心プラットフォーム上のリング内に位置する。排出毛細管が、V形構造の脚部の径方向内側の端に設けられる。出口の毛細管はV形構造の半径方向外側部分に位置し、出口の毛細管は疎水性弁を備える。したがって、流体は、毛細管力の原理に基づいて個々のV形構造に事前分配される。しかし、この種の分配は、とても遅い。流体をV形分配構造に入れた後、試験担体は、加速を伴って回転させられ、それによってある周波数で流体が疎水性栓を突破し、V形構造の基部で半径方向外側に延びる出口の毛細管を通じて排水される。流体は、弁の突破の瞬間に分けられる。事前分配される流体部分の分離が行われる。詳細には半径方向内側に位置する構造部分の構成により、所定の容積が排水される。これらの構造が同じ大きさである場合、排水される容積は同一である。
【0009】
米国特許第4,154,793号は、蓋に中央受入れ孔を備える回転式試験担体を開示する。蓋の孔の下方には、流体貯蔵される受容チャンバがある。受入れ区域の周りには、接続流路を介して受入れ区域にそれぞれ接続される複数の周辺試料チャンバがある。流体が試料チャンバ中に入ることを可能にする入口孔は、半径方向外側に位置する箇所にある。試料チャンバを排出するために、入口孔よりもさらに半径方向内側に位置し、試料チャンバを受入れ区域に接続する出口孔が設けられる。試験担体の回転によって、受入れ区域内に含まれる流体を個々の試料チャンバに注ぎ、その時、空気が、試料チャンバから受入れ区域に半径方向内側に流れ、最終的に蓋の中央孔を通じて逃れる。
【0010】
米国特許第7,125,711号は、毛細管力によって満たされる複数の計量チャンバが接続される細長い分配流路を備える試験担体を開示する。各計量チャンバは、部分量を備え、幾何的弁を有する出口を有する。試験担体の回転により、部分量は、計量チャンバから試料分析チャンバに注ぐことになる。
【0011】
ある分量の流体を部分容積に配分するための従来技術により知られているマイクロ流体分配構造は、この構造が毛細管力によって完全に「受動的に」満たされるので、約10μLまでの小容積に特に適している。これによって、このシステムが試料の流体特性に非常に依存することにもなり、それは頑健性を損なう。容積が大きくなるにつれて、大規模な分配構造による分配は、かなりの時間遅延になる。これは、容積が大きくなるにつれて、毛細管の表面積と容積の比は、ますます好適でなくなり、これによって毛細管力の減少にもなるからである。場合によっては、部分量のために設けられる毛細管および部分量チャンバの充填は、停止にさえなり得る。さらに、容積が大きくなるにつれて、空気が毛細管に流れ込む危険もあり、これによって配分に誤差をもたらし、容積のばらつきになる。一般に、主に毛細管現象によって機能する分配システムの場合、閉じ込められた空気および泡形成が、排水される部分容積の精度に大きな影響を与える。毛細管現象によって機能する分配システムのこの感受性は、プロセス(例えば分析プロセス)の頑健性を減少させる。頑健性の不足は、例えば自動等分ロボットを用いて、外部要因によって補償されなければならない。したがって、そのような知られた試験担体は、流体の自動ピペット操作に適しているに過ぎない。しばしば時間に追われている様々な使用者による手動ピペット操作は、ピペット操作時に(閉じ込められた)気泡および泡形成になる傾向の増大がある。知られた試験担体は、手動の使用に適していない。加えて、本明細書に述べた毛細管効果の場合、プロセスの表面特性が支配的であるので、製造条件および表面処理条件(例えば、活性化、親水化)が、重要な役割を果たす。厳しい精度は、大量生産時に試験担体の製造費用および検査費用を増大させ、棄却率も高くなり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、ある分量の流体が、信頼できるやり方で所定の部分量に配分できる試験担体を提供することが当技術分野でいっそう大きく求められている。そのような試験担体は、自動ピペット操作およびある分量の流体の付加に適しているのみならず、様々な使用者による手動付加にも適しているものであり、したがって頑健性の強化を示すものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
提示した課題は、請求項1の特色を有する、ある分量の流体を部分量に配分するためのマイクロ流体試験担体によって解決される。
本発明によるマイクロ流体試験担体は、基板を有し、この基板に毛細管構造が形成される。毛細管構造は、基板および被覆層によって囲まれる。毛細管構造は、ある分量の試料流体を受け入れる受容チャンバと、受容チャンバより小さい容積を有する少なくとも1つの試料チャンバと、受容チャンバと試料チャンバの間に延びる接続流路とを備える。受容チャンバ、接続流路および試料チャンバの組み合わせは、上記分量の試料流体を元の分量の流体より小さい1つまたは複数の部分量に配分するように働く。
【0014】
受容チャンバは、2つの向き合う境界面および側壁を備え、境界面のうちの一方の境界面が受容チャンバの床部であり、他方の境界面が受容チャンバの覆いである。チャンバは、円周状の排出流路を有すると共に、受容チャンバの内部区域と排出流路の間に配置されたやはり円周状である堰(障壁)を備える。排出流路と受容チャンバの間に配置されたこの堰は、堰が排出流路と共に幾何的弁を形成するように設計および配置される。幾何的弁は、流体についての毛細管栓であるが、空気は、毛細管栓を通じて受容チャンバから排出流路に逃れることができる。幾何的弁は、流体の移動または流れを制御するための外力が加えられない限り、試料流体が毛細管現象によって隣接する流路に分配されるのを防ぐ。好ましくは、堰は、上部で開いており、空気が、チャンバから逃れることができるようになっている。
【0015】
本発明によれば、排出流路は、受容チャンバと試料チャンバの間の接続流路と流体連通する少なくとも1つの流出孔を備え、排出流路の流出孔と試料チャンバの入口孔の間の接続を行う。このようにして、流体は、堰および排出流路によって形成された幾何的弁を破るや否や、受容チャンバから試料チャンバに輸送できる。弁は、流体に十分な力が加えられると開く。一例として、これは、加速度または回転から生じた外力であり得る。幾何的弁は、例えば、回転式試験担体が特定の回転周波数に到達するときに破れ得る。幾何的弁によって形成される毛細管栓の寸法は、例えば毛細管力による受容チャンバからの自動的な流体輸送が確実に防がれるようになっている。弁が開くと、したがって流体は、受容チャンバの内部区域から排出流路を通じて接続流路に、次いで試料チャンバに流れ込む。
【0016】
受容チャンバ、排出流路、および堰は、受容チャンバの内部区域が、内側に向かって半径方向最も遠くにあるように構成される。試験要素が、断面積で考慮される場合、内側から外側への半径方向に3つの成分の順序は、受容チャンバが内部区域の内側にあり、次いで円周状の堰であり、円周状の排出流路が(半径方向)外側に最も遠くであるようになる。これは、堰および排出流路の少なくとも下位領域が、試験要素の被覆層に平行に延びる平面内にあることを意味する。したがって、堰が、排出流路の側壁を形成する。
【0017】
このようにして、分配チャンバまたは分配構造として働く受容チャンバは、初めに満たされ得る。好ましくは、これは、マイクロ流体試験担体が固定されているときに生じる。システムの頑健性は、好ましくは、できる限り受容チャンバの表面積と容積の比を小さくすることによって、受容チャンバの円い形状によって増大させられる。毛細管力および表面構造または表面処理は、分配システムの頑健性に無視できる影響を及ぼす。チャンバの表面と容積の比(好ましくは、チャンバはできる限り高い)の適切な選択は、試料配分が初めに不規則である場合でも、次いで流体は、できる限り均等に配分できることを意味する。毛細管力に頼る通常の従来技術の配分の実施は、必須ではない。分配容積の品質および個々の部分容積の規則性は、試料適用から独立している。このようにして、高い試料適用スループットが可能になされる。受容チャンバの充填時、流体試料は、とても迅速にチャンバに流れ込むことができる。そのような受容チャンバは、手動ピペット操作に特に適している。
【0018】
加えて、受容チャンバの円周に沿って少なくとも部分または区画で延びる幾何的弁は、上記の従来技術のシステムに比べて、受容チャンバ内の試料の分配が配分される容積の分量に影響を及ぼさないことを確実にする。
【0019】
流体輸送を制御するための追加の力を加えることだけによって、幾何的弁は打ち負かされ、流体は受容チャンバから輸送される。この構成は、受容チャンバの充填が部分量への流体の総量の分配から独立していることを意味する。充填および部分容積への分配は、完全に切り離されている。
【0020】
本発明によれば、流体の配分は、毛細管力によってではなく、遠心力などの制御用の力によって生じる。毛細管力に依存した流体の分配から生じる問題が避けられる。気泡は、気泡の低い密度のために、遠心処理すると半径方向内側に案内される。したがって、流体試料は、等分化(分配)時に能動的に排出され、それによって含まれる空気および泡は、プロセスに影響を及ぼし得ず、したがって従来技術の主要な問題は回避される。したがって、本発明による試験担体は、乱れがちでなく、安定しており、分配構造の任意の組み合わせに依存しないまたは分配構造の表面特性に依存したやり方で試料流体を配分するために使用することができる。
【0021】
好ましい一実施形態では、マイクロ流体試験担体は、回転ディスク、例えばコンパクトディスク(CD)のようなディスクであり、好ましくは試験担体を通じて延びる回転軸を中心にして回転する。好ましい一実施形態では、試験担体は、回転軸が試験担体の中心点または重心を通じて延びるように構成される。
【0022】
好ましい一実施形態では、回転軸が受容チャンバを通じて延びるように受容チャンバが試験担体に対して配置される場合に、受容チャンバを空にすることに関連して有利であることが示されている。試験担体の回転は、遠心力をもたらし、遠心力は、受容チャンバ内の流体を半径方向外側に促し、それによって円周状の堰およびそれによって形成される幾何的弁が打ち負かされ、流体が排出流路に流れ込むことができる。次いで、流体は、排出流路から接続流路を通じて試料チャンバまたは配分チャンバに流れ込み、チャンバを満たす。
【0023】
受容チャンバの本発明の実施形態は、とても迅速に試料が加えられ得ることを意味する。実際には、使用者がチャンバを手動で満たすときに特に、実質的に異なるピペット操作の速度が予想され得るので、これにより、試料ポートの溢れが決して起こらないことを保証する。溢れは、試験担体表面の汚染になり、特に回転式試験担体を用いると、装置の汚染が結果として起こり得る。加えて、小容積かつ遅いピペット操作のやり方を用いると、試料が縁部で完全に乾くという危険がある。迅速にピペット操作を実行できる可能性は、試験担体の頑健性、精度、および信頼のさらなる増大をもたらす。
【0024】
好ましい一実施形態では、受容チャンバは、表面と容積の比が可能な限り小さいように構成される。理想的には、受容チャンバは、構成が球状であるべきであり、というのもこれは、表面と容積の比が可能な限り小さくなることを意味するからである。典型的なチャンバ容積が、100μL〜200μLの範囲内、例えば160μLである場合、表面と容積の比は、0.9mm/mmである。本発明の内容では、受容チャンバの表面と容積の比は、せいぜい2.5mm/mm、好ましくはせいぜい2mm/mmの値を有するべきであることが示されている。
【0025】
受容チャンバの境界面のうちの1つの境界面は、外側から流体試料を加えるための入口部を備える。好ましくは、入口部は、受容チャンバの覆い内に配置される。これは、使用者が上方から流体試料を加えることができることを意味する。少なくとも受容チャンバの領域内で試験担体の覆いが透明な材料からなる場合、使用者は、受容チャンバの充填を観測することができる。したがって、光フィードバックが充填中に得られる。
【0026】
受容チャンバの充填を改善することを考慮すると、好ましいように、受容チャンバの境界面のうちの一方の境界面が湾曲しいている場合、有利であることが示されている。この場合には、2つの異なる好ましい実施形態が考えられる。第1の実施形態では、受容チャンバの湾曲した境界面は覆いである。他方の実施形態では、湾曲した境界面は床部である。好ましくは、床部が受容チャンバの縁部に向かって上向きに傾斜されるように床部は湾曲している。
【0027】
受容チャンバ、少なくとも1つの試料チャンバ、およびチャンバ同士の間に配置された接続流路を備える毛細管構造を有する本発明のマイクロ流体試験担体では、流体の分量は、2つのやり方で部分量に配分され得る。一方では、複数の試料チャンバへの並列配分が可能であり、一方では、複数のチャンバの中への流体の分量全体の直列配分が考えられる。
【0028】
複数の部分量への流体の分量の並列配分を実行するために、好ましくは、排出流路は、受容チャンバから試料チャンバまでそれぞれ延びる接続流路とそれぞれ流体連通する複数の流出孔を備える。好ましい一実施形態では、流出孔(出口部)は、排出流路に等距離を隔てて分散され、等しい分散が排出流路の円周に行われる。個々の試料チャンバは、同じまたは異なる容積を有してもよく、それによって流体の分量全体は、同じまたは異なる部分容積に配分することができる。試料チャンバの容積が同じであるとき、試料チャンバの全部が満たされるまたは受容チャンバが空になってしまうまで、(絶対的に)同一の流体の配分が行われる。さらなる流路、チャンバ、または毛細管流路構造、または輸送システムが個々の試料チャンバに接続されてもよい。
【0029】
部分容積への流体の総量の直列配分を実行するために、排出流路は、ただ1つの流出孔(出口部)を備え、受入れ流路内に含まれる流体が、流出孔および隣接する接続流路を通じて第1の試料チャンバに流れ込むようになっている。第1の試料チャンバは、出口流路を通じて少なくとも1つのさらなるチャンバに接続され、試料チャンバから試料チャンバの出口孔を通じて出口流路に流れ込むことができるようになっている。このチャンバは、例えば、試料チャンバであることもできる。
【0030】
しかし、このさらなる流体チャンバが、余剰の流体が集められる廃棄物チャンバであることも可能である。このようにして、試料の全容積は、並んで配置された複数の試料チャンバに配分することができる。試料チャンバの1つまたは複数は、他の(追加の)流路、チャンバ、または毛細管輸送システムと接続してもよく、または並列に配置されてもよいことは明らかである。
【0031】
次に、図に示される特定の実施形態の助けを受けて、本発明をより詳細に説明する。図に示される特定の特徴は、本発明の好ましい実施形態を提供するために、個々に配置されてもよく、または組み合わせ配置されてもよい。説明した実施形態は、例えば、回転式試験担体を円いディスクの形態で示し、本発明およびその特定の特徴を例示する役割を果たす。これらの実施形態は、特許請求の範囲におけるそれらの一般的形態に定義されるように本発明を限定しない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】マイクロ流体試験担体および直列に流体接続される3つの試料チャンバの概略図である。
図2図1の試験担体の受容チャンバの詳細図である。
図3a図3aは、図1の試験担体の断面である。
図3b図3bは、図1の試験担体の別の断面である。
図4a図4aは、充填および配分を例示するための図1の試験担体の部分図である。
図4b図4bは、充填および配分を例示するための図1の試験担体の別の部分図である。
図4c図4cは、充填および配分を例示するための図1の試験担体のさらに別の部分図である。
図5】複数の試料チャンバへの流体試料の並列配分のための試験担体の代替実施形態を示す図である。
図6図5の試験担体の受容チャンバの詳細図である。
図7図6の受容チャンバの断面図である。
図8図6の受容チャンバの斜視図である。
図9図6の受容チャンバの斜視断面図である。
図10図5の試験担体における流体の充填および配分についての概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1図10は、毛細管流路構造3を有する輸送システム2を含む本発明によるマイクロ流体試験担体1の実施形態を示す。流路構造3は、プラスチックから形成された基板4に形成される。好ましくは、毛細管構造3は、射出成形によって、または基板から材料を除去するやり方によって製造される。試験担体1は、図1に示さない被覆層をさらに含み、被覆層は、流路構造3が基板4および被覆層によって囲まれるように基板4上にある。
【0034】
好ましい一実施形態では、試験担体1は、回転軸5を中心にして回転する回転式試験担体1である。試験担体1は、薄いディスクの形態、例えばCDの形態である。試験担体1は、回転軸5と一直線に並べられる回転シャフトを備える回転装置に保持される。好ましい一実施形態では、回転軸5は、試験担体1を通じて、好ましくは試験担体1の中心点または試験担体1の重心を通じて延びる。
【0035】
毛細管構造3は、入口部7を有する受容チャンバ6を備え、流体試料またはある分量の流体が、入口部7を通じて受容チャンバ6内に配置できる。流体試料は、例えば、手動または自動のピペット操作によって加えることができる。本明細書に示される受容チャンバ6は、一例として、160μLの容積を有する。好ましい本実施形態では、表面と容積の比が、約1.8mm/mmであり、したがって、好ましい値の2.5mm/mmまたは2.0mm/mmより低い。この種の構成を有する受容チャンバ6は、信頼できる速いピペット操作に用いることができ、それによってピペット操作は、手動で実行することもできる。
【0036】
流路構造3は、少なくとも1つの試料チャンバ8と、受容チャンバ6と試料チャンバ8の間に延び、2つのチャンバ6、8の間に流体接続をもたらす接続流路9とも備える。接続流路9は、比較的短い流路として形成される。好ましくは、接続流路9の長さは、1mmから5mmの範囲内であり、特に好ましくは2mmから3mmの範囲内である。本明細書に示される例では、接続流路9の長さは2.7mmである。この流路の断面積は、好ましくは0.01mmから0.25mmの範囲内である。典型的な値は、例えば、0.09mmである。本明細書に示される流路は、例えば、幅が0.2mm、高さが0.15mmである。したがって、流路の断面積は、0.03mmである。接続流路9の寸法は、受容チャンバを完全に空にするのに影響を与え、好ましくは、これは、受容チャンバ6内の通常の流体の分配よりもずっとゆっくり達成されるはずである。本明細書に示される例では、受容チャンバ6を完全に空にするための時間は、受容チャンバ6内の通常の流体の分配(均等化)のための時間よりも約6倍大きい。本例では、完全に空にするのに約10秒を要する。
【0037】
図1図4は、毛細管構造3および3つの試料チャンバ8、10、11を有する試験担体1の例示的な一実施形態を示す。3つの試料チャンバ8、10、11は、連続して(直列に)接続され、それぞれは、流路12を介して接続される。3つの試料チャンバ8、10、11は、直列流体接続を形成し、流体が、受容チャンバ6から初めに試料チャンバ8に、そこから試料チャンバ10に、次いで試料チャンバ11に流れることができるようになっている。さらなるチャンバ13が、直前の試料チャンバ11に接続され、さらなるチャンバ13は、廃棄物チャンバ14として構成され、余剰の流体のための廃液槽を構成する。好ましくは、試料チャンバ8、10、11、および廃棄物チャンバ14の合わせた全部の容積は、受容チャンバ6の容積のおおよそのものであり、好ましくはやや大きい。
【0038】
3つの試料チャンバ8、10、11は、全体で、受容チャンバ6に配置される流体の容積が、試料チャンバ8、10、11の幾何学的形状によって決定される3つの部分量の合計に配分されることを可能にする。より多くの試料チャンバが用いられてもよいことも明らかである。2つの試料チャンバを有する一実施形態も、予見され得る。
【0039】
直列に流体接続された試料チャンバ8、10、11は、流体の(小)容積が配分されることを可能にし、この容積は、3つの試料チャンバの全容積より小さい。より小さい容積については、試料チャンバ8、10、11が次々に満杯になり、後の試料チャンバ10は、前の試料チャンバ8が完全に満たされる場合に満たされることになるのに過ぎないので、流体は、1つまたは2つのチャンバに分割されるに過ぎない。したがって、いくつかのパラメータの分析、またはただ1つのパラメータでさえもその分析のために、同じ試験担体を使用することが可能である。このことは、試験担体を製造するために、ただ1つの製造ラインおよびただ1つの工具が必要とされるので、試験担体が単一パラメータの試験担体または多パラメータの試験担体として販売されるかに関わりなく、製造を大きく単純にする。1つのパラメータの分析が試料容積のたった1/3を必要とし、または2つのパラメータの分析が試料容積の2/3を必要とするという理由により、この種の試料配分も、顧客によって理解されよう。加えて、同じ試験担体が、毎回使用可能である。
【0040】
好ましくは、受容チャンバ6は、回転軸5が受容チャンバ6を通じて延びるように試験担体1に対して配置される。好ましくは、回転軸は、入口部7を通じて延び、好ましくは、受容チャンバ6の入口部7の中心点を通じて延びる。したがって、受容チャンバ6は、回転軸5が受容チャンバ6の中心点または重心を通じて延びるように試験担体1に配置されてもよい。好ましい一実施形態では、本明細書に示されるように、受容チャンバは、試験担体1の中心点またはその重心に対して偏心しているように配置される。この場合、円い(円形の)受容チャンバ6の中心点は、試験担体1の中心点から離れてある。したがって、回転軸5は、受容チャンバ6の中心点を通じて延びない。受容チャンバ6から偏心して配置される入口部7は、回転軸5と同心である。
【0041】
図2は、下方からの図で受容チャンバ6の詳細図を示す。入口部7は、試験担体1の中央に位置し、受容チャンバ6の中心点に対して偏心して位置する。受容チャンバ6は、円周状の流路15を備え、流路15は排出流路16である。受容チャンバ6の内部区域17と円周状の排出流路16の間には、排出流路16と同心である堰18がある。堰18および排出流路16は、回転軸に平行に延びる平面に垂直な平面内に少なくとも一部配置される。排出流路16は、堰18によって形成される半径方向内側に位置する側壁と、受容チャンバ6の外壁である半径方向外側に位置する側壁27と、試験要素の被覆層21に実質的に平行に配置される床部とを有する。排出流路16は、一定の幅と、その全周の上の一定の高さとを有してもよい。しかし、排出流路16の寸法は、その円周の周りで変わる可能性があるが、しかしながら、好ましくは、少なくとも排出流路16の高さは一定である。排出流路16および/または堰18は、部分または区画に断続されてもよいことは明らかである。具体的には、堰18は、受容チャンバの覆いまで延びる側壁が形成されるように複数の区画に断続されてもよい。好ましくは、堰および/または排出流路は、受容チャンバ6の円周の少なくとも50%を超えて、好ましくは円周の少なくとも80%を超えて、特に好ましくはチャンバの円周の少なくとも90%を超えて延びる。しかし、排出流路16または堰18が断続される場合、堰および排出流路によって形成される幾何的弁の機能が保持されることが確実にされなければならない。
【0042】
堰18は、それに関連する排出流路16の幅に好ましくは対応する厚さ(半径方向の寸法)を有する壁19によって形成される。壁19の高さは、排出流路16の(半径方向外側に位置する)側壁27の高さより小さく、試験担体1の被覆層21と壁19の上面20の間の間隙29があるようになっている。間隙の高さは、排出流路16の高さより小さい。
【0043】
図3aおよび図3bは、試験担体1の断面をそれぞれ示す。受容チャンバ6は、2つの境界面22、23を備える。境界面22は、受容チャンバ6の床部24であり、向き合う境界面23は覆い25である。図3aでは、床部24は、基板4によって形成される。境界面23は、試験担体1の基板4上にある被覆層21によって形成される。図3bの実施形態では、覆い25は、基板4によって形成され、一方、床部24は、基板4に接触する被覆層21である。
【0044】
好ましい一実施形態では、受容チャンバ6の境界面22、23の一方の境界面は湾曲している。図3bによる本例では、基板4によって形成される覆い25が湾曲している。床部24を形成する境界面22は平坦である。覆い25は、漏斗状の入口部7を備え、配分される流体が、入口部7を通じて受容チャンバ6内に配置される。
【0045】
図3aは、床部24が湾曲した境界面22として形成される一実施形態を示す。平坦な被覆層21は、覆い25を形成し、入口部7を備える。被覆層21が、覆い25として働くと共に透明膜であるとき、受容チャンバ6に計量しながらすでに供給された容積を観測することによって、流体の手動ピペット操作時に良好な視覚フィードバックが得られ得る。入口部7が基板4に形成される場合、少なくとも受容チャンバの領域内で基板が透明である場合には視覚フィードバックがやはり可能である。
【0046】
境界面22、23の湾曲した外形は、入口部7への覆い25の湾曲または内部区域17の側壁への床部24の湾曲によって入る空気が案内されるという利点を有する。このようにして、流体と共に入る空気またはピペット注入される空気は、受容チャンバ6から逃れることができ、場合によっては容積の誤差をもたらす流体内の閉じ込めを受けない。
【0047】
試料チャンバ8、10、11を流体的に直列に接続するとき、排出流路16は、ちょうど1つの流出孔26を備える。好ましくは、流出孔26は、受容チャンバ6が偏心して配置されるときに回転軸5から最も遠い排出流路の側壁27の位置に配置される。回転軸5が円い入口部7と同心である図示の実施形態では、流出孔26と入口部7の間の距離は、チャンバ6内に示される位置で最大である。試験担体1が回転させられるとき、流体は、半径方向外側に追いやられ、流出孔26の辺りの領域に常に集まる。これにより、最後の残りさえも流出孔26に追いやられるので、全ての流体が受容チャンバ6から出ることを確実にする。
【0048】
堰18および排出流路16は共に、幾何的弁28を形成する。受容チャンバ6から試料チャンバ8に流れる流体は、接続流路9を試料チャンバ8の中に通り抜けるために、弁28を通じて、すなわち堰18を越えて排出流路16を通じて流れなければならない。堰18の上面20と向き合う境界面22の間に形成された毛細管間隙29は、隣接する排出流路16の高さより低い。図3aに見られるように、本例では、毛細管間隙29は、上面20と床部24の間に形成される。
【0049】
幾何的弁28のために、受容チャンバ6を満たすとき、初めに内部区域17および間隙29だけが流体で満たされる。しかし、流体は、排出流路16に自動的に入り込まない。したがって、受容チャンバ6は、試料流体または分配されるある分量の流体で完全にまたは部分的に満たすことができる。
【0050】
図4aは、受容チャンバ6の一部充填を示し、一方、図4bは、受容チャンバ6の完全な充填を示す。受容チャンバ6内に閉じ込められる空気60が、隣接する試料チャンバ8、10、11の排出孔32の1つ(図1参照)から自然環境に逃れるまで、閉じ込められる空気60は、幾何的弁28を通じて、排出流路16を介して、隣接する接続流路9に逃れることができる。
【0051】
試験担体1が回転させられ、回転周波数が幾何的弁28の幾何学的形状によって規定される突破周波数を越えるや否や、幾何的弁28が開く。流体は、受容チャンバ6から半径方向外側に排出流路16に流れ込む。このことから、流体は、流出孔26を通じて、図示の例ではさらなる任意の幾何的弁30を有する接続流路9に入る。この幾何的弁30も、遠心力によって開かれ、流体が第1の試料チャンバ8に流れ込むようになっている(図4c参照)。
【0052】
矢印R(図1)の方向に回転すると、流体は、試料チャンバ8の上部に案内されるだけでなく、あぶみ状のチャンバ構造31にも案内され、回転の方向に面するチャンバ構造31の側壁31aに沿って流体が移動する。チャンバ構造31の向き合う側壁31bにおいて、空気は、構造31から試料チャンバ8に排出孔32を通じて流れることができる。試料チャンバ8が完全に満たされるや否や、流体は、出口孔33を隣接する出口流路34の中に通過する。出口流路34はそれ自体、隣接する試料チャンバ10の入口孔35に接続されており、それによって流体は、試料チャンバ10に流れ込むことができる。
【0053】
チャンバ内に含まれる空気は、個々の試料チャンバ8、10、11からそれらのそれぞれの排出孔32を通じて自然環境の中に逃れることができるので、ある試料チャンバから次の試料チャンバへの流体のさらなる流れは、出口流路34の流れ抵抗によって阻まれるだけである。受容チャンバ6を離れると、遠心力によってもたらされる流体圧力が、流れ抵抗よりかなり高くなる。したがって、受容チャンバ6は、完全に空にされ、過剰な流体は、最後の試料チャンバ11から隣接する廃棄物チャンバ14に流れ込む。
【0054】
3つの試料チャンバ8、10、11の直列配置は、それが、配分され得る3つのチャンバによって形成される全容積だけでないことを意味する。2つの試料チャンバ8および10、ならびに接続流路9および出口流路34の容積にまさに対応するある分量の流体で受容チャンバ6を満たすことも可能である。この場合、ある分量の流体の分配または配分または等分化は、2つの試料チャンバ8、10だけで実行される。受容チャンバ6内のある量の流体が、試料チャンバ8の容積だけに対応する場合、第1の試料チャンバ8だけが満たされる。したがって、チャンバは常に完全に満たされる。よって、ある試料チャンバの容積および(実質的に無視できる)接続流路9の容積は、受容チャンバ6を満たすための最小容量を形成する。
【0055】
受容チャンバ6が、3つの試料チャンバの全容積8、10、11よりも実質的に大きく作製されることも可能である。このことは、エンドユーザが計量なしでほぼ完全に働くことができることを意味する。言い換えると、3つの試料チャンバ8、10、11によって必要とされる最小量または受容チャンバ6を完全に満たす最大量が計量されるかに関わりなく、下流構造に関する完全に申し分のない(流体)の機能が、常に保証される。本例では、3つの同一の試料チャンバ8、10、11の各々の容積は30μLである。受容チャンバ6の総受入れ容量は、160μLになる。受容チャンバ6が、3つの試料チャンバ8、10、11がとることができるよりも多くの流体で満たされる場合、余剰の流体は、廃棄物チャンバ14内に収容される。
【0056】
本発明の試験担体1の利点は、受容チャンバ6によって形成される配分構造の充填が、幾何的弁28による流体の配分または分配(等分化)から完全に切り離されることである。試料を加えるとき、すなわち例えば顧客による受容チャンバ6の充填時に、制限時間はない。
【0057】
適宜、例えば、平行反応経路をもたらすために、2つ以上のさらなるチャンバが受容チャンバ6に接続され、さらなるチャンバがこれらのチャンバに接続されてもよい。これらのチャンバは、液体と細胞試料成分を分離するための分離チャンバ、試薬を溶解するための試薬チャンバ、混合チャンバ、廃棄物チャンバ、または他のチャンバであってもよい。
【0058】
本実施形態では、血液の試験時、液体および細胞試料成分は、試料チャンバ8、10、11のあぶみ状のチャンバ構造31内で分離される。したがって、分離は、チャンバ構造31内で行われる。このようにして、計量チャンバ37内の残りの血漿を分析することが可能である。
【0059】
図5図10は、図1図4の実施形態による試料チャンバ8、10、11の直列接続の代わりに、例えば3つの試料チャンバ8、10、11の並列流体接続を用いた本発明による試験担体1の代替実施形態の例を示す。本実施形態では、2つ以上の試料チャンバが、やはり構成されてもよい。以下、本質的な差異が説明される。
【0060】
この並列配置は、やはり中央受容チャンバ6を備え、好ましくは、その中心点または重心が、試験担体1の中心点または重心と一致する。好ましくは、試験担体1の回転の中心である回転軸5は、受容チャンバ6の中心点を通じて延びる。特に好ましい実施形態では、受容チャンバ6の入口部7も、回転軸5と同心である。
【0061】
本実施形態は、あぶみ状の流路構造31を備える3つの試料チャンバ8、10、11を有し、それらは、並列流体接続である。試料チャンバ8、10、11の各々は、受容チャンバ6への接続流路9を有し、接続流路9は、排出流路16の流出孔26から試料チャンバ8、10、11の入口孔35までそれぞれ延びる。本実施形態の接続流路9は、S形であり、図1図4に示されるような直列配置における接続流路9よりも実質的に長い。この並列配置の場合でも、より短い、半径方向外側に延びる接続流路9が用いられてもよいことが明らかである。S形の流路9は、直列の実施形態に使用することもできる。
【0062】
本例における長い接続流路の長さは、典型的には少なくとも7mmである。好ましくは、長さは、少なくとも9mm、特に好ましくは少なくとも10mmである。細長い流路のS形の構造は、半径方向に場所を取らないという利点を有する。さらに、細長い流路のS形の構造は、試料チャンバの中への移行部において可能な限り小さい半径をもたらし、したがってこの位置で可能な限り小さい遠心力を与える。これは、空にする速度に対する良い効果も有し、受容チャンバ6をスムーズに空にすることを保証するために、この速度は可能な限り遅くすべきである。この長い流路についても、断面積に関する上記の説明が当てはまる。好ましくは、断面積は、0.01〜0.25mmの範囲内にすべきである。本例では、流出孔26において、接続流路9は、幅0.3mmおよび高さ0.3mmの状態で、断面積0.09mmである。入口孔35における接続流路9の端部で、接続流路9は、先細であり、幅0.2mmおよび高さ0.15mmである。したがって、その断面積は0.03mmである。この種の接続流路の場合、受容チャンバ6を完全に空にするのに必要な空にする時間は、均等化としても知られる受容チャンバ6内の流体の等しい分配のための時間の約3〜4倍であることが可能である。毛細管構造3の並列構造では、直列の実施形態の場合と同様に、均等化のための時間は1.5秒である。並列の実施形態において完全に空にするには、約5秒かかる。
【0063】
円周状の半径方向内側にある堰18を備える排出流路16は、幾何的弁28を形成し、幾何的弁28は、流体、例えば血液が、ひとりでに流出するのを防ぐ。流体が試料チャンバ8、10、11に流れ込むことができるのは、弁30が開くときだけである。上面20と被覆層21の間の間隙29は、それに隣接する排出流路16の高さより低い。
【0064】
好ましくは、試料チャンバ8、10、11は、出口孔33をそれぞれ備え、出口孔33を通じて流体は、試料チャンバ8、10、11から出口流路34に流れることができる。出口流路34の端部には、試料チャンバ8、10、11と流体連通する入口孔39を有するさらなる流体チャンバ13がある。好ましくは、流体チャンバ13は、廃棄物チャンバ14であり、過剰な流体を収容する。試料チャンバ8、10、11は、容積30μLをそれぞれ有し、受容チャンバ6の容積は160μLである。受容チャンバ6からの流体の容積は、試料チャンバ8、10、11について均等に配分され、それによって残りの流体は、それぞれの廃棄物チャンバ14に流れ込む。
【0065】
受容チャンバ6は、接続流路9と試料チャンバ8、10、11の全部の合計に対応する最小量で満たすこともでき、最大量に対応して完全に満たすこともできる。このことは、受容チャンバの容積全体が、試料および廃棄物チャンバの全部の全容積より小さいことを確実にする。当然、受容チャンバ6は、最小量と最大量の間にある任意の分量の流体で満たすこともできる。これにより、流体、例えば血液または別の体液の分析のために広範な流体を利用できる。したがって、特に手動ピペット操作のための流体のピペット操作および付加が改善され、操作が容易にされる。
【0066】
ある分量の流体が部分量に同時に配分できる試料チャンバ8、10、11の並列配置を考慮すると、排出流路16は、それぞれの接続流路9と流体連通する複数の流出孔26を備える。特に好ましくは、流出孔26は、排出流路16の円周に等距離を隔てて、すなわち規則正しく分散される。好ましくは、排出流路16は、受容チャンバ6の円周全体にわたって延びる。
【0067】
これは、図1図10の全ての実施形態における流路16の場合である。並列配置と直列配置の両方を用いて、堰18および/または排出流路16の区画が断続されることが可能である。しかし、好ましくは、排出流路16は、流出孔26の領域内で断続されない。
【0068】
発明の内容では、流体容積の並列分配を用いて、接続流路9によって形成される分配毛細管の流れ抵抗は、制御ツールとして使用できることが観測された。大きい断面積、したがって高い流量を有する短い接続毛細管を用いると、流体試料は分断され、すなわち、流体試料は受容チャンバ内で等しく分配される時間がなく、これにより等しくない容積になる。本発明の、それらの長さにわたってフラックスブレーキとして働き、分配プロセスを遅くする小さい断面積を有する長い流路の組み込みは、多くのセグメントへの等しい分配が、毛細管の事前分配さえも必要とせずに改善されることを意味する。接続流路の組み込みは、等分化(配分)が、より高い周波数(良好な制御性)で、同時に、試料の位置から独立して実行できることを意味する。
【0069】
遠心処理が開始され、受容チャンバ内の流体の規則正しい配分が、(流体が、制御されていないやり方で試料チャンバの中に突破することなく)受容チャンバと試料チャンバの間の接続流路中の流れ抵抗によって実行できる。流体は、流体がチャンバの境界に流れ込み、チャンバの境界に位置し、一方、チャンバの空気が、チャンバの真ん中に位置するように分配される(図10c参照)。チャンバの真ん中における空気のこの蓄積は、メニスカスとして当業者に知られている。メニスカスは、回転軸を中心にして同心で位置し、とても正確な等分化になり、したがって可能な限り同一である試料チャンバ内の容積になる。
【0070】
下位構造ごとの個々の部分量が受入れ構造または分配構造内の流体の位置に依存する従来技術において知られている分配構造とは対照的に、本発明による試験担体における流体の分配は、受容チャンバ内の流体試料の位置から独立である。したがって、流路構造の本発明の実施形態は、ある分量の流体のとても精密な配分を可能にし、従来技術に見られる不精密を防ぐ。
【0071】
並列の毛細管構造3は、ある分量の流体を個々試料チャンバ8、10、11に同時配分することを可能にする。特に、流体として血液を用いる体外分析および試験に関しては、同時配分は、同じヘマトクリット値および同じ脂肪率の赤血球と血漿の比が並列チャンバの全てにおいて得られることを確実にする。したがって、好ましくは、基板4から形成された床部24は、好ましくは湾曲している。図7は、覆い25が平坦な被覆層21によって形成され、円い入口部7を備えることを示す。円周状の堰18および円周状の排出流路16は、この場合には、被覆層21の近くに配置される。円周状の堰18および円周状の排出流路16は、同心で配置され、被覆層21に実質的に平行に延びる平面内にある。好ましくは、受容チャンバ6の湾曲した床部24が、堰18に向かって上向きに傾斜される。受容チャンバ6に流れ込む流体は、試験担体1が固定されているときでも、結果として生じる毛細管現象によって半径方向外側に積極的に案内される。
【0072】
好ましくは、受容チャンバ6内の流体輸送は、床部24上の(中央の)突起部40によって助けられる。好ましくは、突起部は、図6図9に見られるように、形状が円錐形である。好ましくは、円錐形の突起部40は円錐41であり、好ましくは、覆い25の入口部7に向き合って配置される。好ましくは、円錐41の先端は、回転軸5と一直線に並べられる。特に好ましくは、円錐形の突起部40は、円錐台として形成することもできる。代替として、突起部は、完全に異なる形状、例えば半球形状、または別の形状を有してもよい。
【0073】
流体、例えば血液のピペット操作時、血液は、必然的に円錐41に作用する。血液と試験担体1の基板4の間の摩擦は、ピペット操作すると流量に影響を及ぼし、それに適応する。同時に、円錐41は、血液が粘着によって中央に保持されることを確実にする。試料の残りは、円錐41を囲む範囲内に、円周状の堰18の方向に流れ、これは、結合力によよって補強される。したがって、円錐41は、ピペット操作に基づいて入口部7にフラックスブレーキを構成し、これによってある程度までピペット操作の速度の正常化になる。円錐41は、様々な試験を正常化し、検査システムの頑健性を高める。
【0074】
好ましい一実施形態では、受容チャンバ6の床部24は凹まされ、凹み43が流出孔26に近い収集領域42に形成されるようになっており、その中に流体流れが集められる。好ましくは、凹み43は、各流出孔26の前に形成される。3つの試料チャンバ8、10、11を有する場合、受容チャンバ6は、3つの収集領域42および3つの凹み43を有する。
【0075】
受容チャンバ6の覆い25が湾曲している一実施形態では、好ましくは、湾曲は、入口部7でそれが最も高い湾曲であるようになっている。このようにして、流体は、外側に流れ、チャンバの中央から外側に積極的に案内される(実際には、流体は、中央に留まる傾向があるが、外側の毛細管効果が増大する)。
【0076】
覆い25の湾曲は、入口部7を通じて入る流体と共にチャンバに入ってきて、例えば、流体と共にピペット操作される気泡がチャンバ内に留まるのを防ぐ。気泡は、縁部に案内され、次いで幾何的弁28を通じて下流の毛細管構造の中に入り、それらの排出孔を通じて縁部から逃れることができる。
【0077】
好ましくは、試験担体1の受容チャンバ6は、側面にある窪み44を備える。好ましくは、半径方向外側に向けられた窪み44が、収集領域42ごとに設置される。排出流路の側壁27によって形成される受容チャンバ6の側壁は、受容チャンバ6の中心点から外側に窪みがつけられる。この例では、受容チャンバ6は、3つの半径方向外側に延びる窪み44を備えており、それらの窪みごとに流出孔26が配置され、接続流路9は、試料チャンバ8、10、11を流出孔26に結び付ける。試験担体1が回転に設定されるや否や、流体は、窪み44に促され、したがって流出孔26に直接案内される。
【0078】
流体が受容チャンバ6に入り込むのを促進し、好ましい向きで流体を供給するために、受容チャンバは、床部24に半径方向外側に延びるそれぞれの溝45を有する。溝45は、円錐41の足元から窪み44へ延びる。溝45は、疎水性プラスチックから形成された基板4からなる受容チャンバ6を親水化するために製造工程中に親水化溶液を収容するように働く。親水化するための他の手段または幾何学的構成がやはり用いられてもよい。
【0079】
流出孔26の正面に配置される、窪み44の方向に延びる凹み43のため、受容チャンバ6は、個々の凹み43同士の間に半径方向に延びる畝部46を備える。床部24のこの構成は、個々の試料チャンバ8、10、11へのいっそうの流体の分配を促進する。
【0080】
図10a〜図10cは、受容チャンバ6の充填、および受容チャンバ6から個々の試料チャンバ8、10、11の中への流体の分配を3段階で示す。図10aは、受容チャンバ6が途中まで満たされるとき、気泡60が初めに形成される場合があり、この場合には気泡60は、流出孔26の正面に位置することを示す。空気は、排出流路16および内部に配置される流出孔26を通じて逃れることができる。しかし、チャンバが満杯になるまで、チャンバのさらなる充填が可能である(図10b)。
【0081】
図10cは、試験担体1の回転が始まり、回転周波数(回転速度)が、18および排出流路16によって形成される弁28の突破周波数を上回った後に、部分的に空になっている受容チャンバ6を示す。この回転速度より上で、弁28は開き、流体が流出孔26を通じて隣接する接続流路9に均等に流れる。流体は、窪み44に促され、収集領域42に配置される凹み43に促される。受容チャンバ6がさらに空にされる場合、個々の収集領域42または個々の収集領域42に集められた流体の分離が行われる。分離は、畝部46(背骨)および窪み44によって助けられる。このようにして、流体の配分のさらなる規則化が個々の試料チャンバ8、10、11で行われる。
【0082】
受容チャンバ6内のある分量の流体の分離は、接続流路9が異なる断面積を有するとき、特に有利である。より大きい断面積を有する流体流路9は、受容チャンバ6内の流体の分量が減少したときに、より多くの流体を受け取り、流体がより迅速に流出することを可能にする。これは、流体を複数の第1の部分容積に分割することによって防がれる。次に、分離した分量の流体は、関連した流出孔28からだけ流れることができる。流体は、ある凹み43から隣接する凹み43に流れることができない。
【0083】
受容チャンバ6内の流体の分配が、例えば受容チャンバ6が途中まで満たされるときに、初めに不規則である場合でも、試験担体1の回転が始まり、受容チャンバ6の境界へ半径方向外側に流れるときに、流体は平らになる。受容チャンバ6内の円周状の堰18、特に間隙29の成形を適合させることによって、流体が受容チャンバ6から流れる速度は調整することができる。
【0084】
適切な構造を用いることによって、流体は、受容チャンバ6からゆっくり流れ、高い回転速度でも受容チャンバ6内の気泡が流体から追い出されることが可能であり、容積の誤差が生じないようになっている。これは、気泡が流体試料と共にピペット操作される場合にいっそう真実である。流体の低い密度は、流体が入口部へのチャンバの内部に追いやられることを意味するので、形成するどの泡も、ある分量の流体の配分時に容積の誤差をもたらさない。
【0085】
ある分量の流体の非常に同期した並列配分により、流体の輸送が生じる。試料チャンバを有する下位構造の中への流体の配分は、ほとんど同一である。特に、遠心力場におけるそれらの密度の特性の差異のために重要であり得る懸濁液および乳液は、並列等分化によって正確に配分することができ、それによって各試料チャンバは、同じ粒子と流体の比または同じ細胞成分の割合いを示す。そのため、懸濁液および乳液は、固体または液体への流体と別の流体との一定の比を用いて配分される。血液を用いるときも、これは、血漿分画または赤血球分画の脂肪率に類似した比になる。
図1
図2
図3a
図3b
図4a
図4b
図4c
図5
図6
図7
図8
図9
図10a
図10b
図10c