(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において使用するところの用語、
「a」、「an」、及び「the」は、互換可能なものとして使用され、1つ以上を意味する。
【0013】
「及び/又は」は、生じ得る述べられている場合の一方又は両方を指すために用いられ、例えば、A及び/又はBは、(A及びB)並びに(A又はB)の両方を包含する。
【0014】
「ラテックス」は、本明細書で使用するとき、水性の連続相中のポリマー粒子の分散液を指す。
【0015】
「有機」は、当該技術分野において一般的な意味を有し、例えば、有機化合物は、炭素含有化合物であるが、カーバイド、酸化炭素、二硫化炭素等の二元化合物;金属シアン化物、ホスゲン、硫化カルボニル等の三元化合物;並びに炭酸カルシウム等の金属炭酸塩を含むいくつかは除外/排除する。
【0016】
本明細書においては更に、端点によって表わされる範囲には、その範囲内に含まれる全ての数値が含まれる(例えば、1〜10には、1.4、1.9、2.33、5.75、9.98などが含まれる)。
【0017】
本明細書においては更に、「少なくとも1」の記載には、1以上の全ての数値が含まれる(例えば、少なくとも2、少なくとも4、少なくとも6、少なくとも8、少なくとも10、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも100など)。
【0018】
本開示は、非晶質フルオロポリマーラテックスの凝固における非修飾無機ナノ粒子の使用に関する。本明細書ではフルオロポリマー複合物と呼ぶ、凝固したフルオロポリマーラテックスは、後に硬化されて、フルオロエラストマー物品を形成し得る。
【0019】
非晶質フルオロポリマーラテックスを凝固させるために非修飾無機ナノ粒子を使用することによって、本開示のフルオロポリマー複合物は、フルオロポリマー格子の凝固に用いられる従来の凝固剤を実質的に含まなくてよい。本明細書で使用するとき従来の凝固剤を実質的に含まないとは、非晶質フルオロポリマーに対して、0.1、0.05、0.01、又は更には0.001重量%未満の従来の凝固剤が存在することを意味する。このような従来の凝固剤は、背景技術において言及されており、例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化アンモニウム、硝酸アルミニウム、又は硫酸アルミニウム等の水溶性塩;あるいは硝酸、塩酸、リン酸、又は硫酸等の酸、及びこれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、これら従来の凝固剤は、また、アルコール又はアセトン等の有機液体と併用される。これら従来の凝固剤は、典型的に、0.5重量%〜5重量%を含有する(例えば、水)溶液として用いられる。従来の凝固剤溶液のラテックスに対する比は、典型的に、1:5〜5:1である。
【0020】
本開示で用いられる凝固剤は、非修飾無機ナノ粒子である。本明細書で使用するとき、「非修飾」無機ナノ粒子は、無機ナノ粒子の表面が有機化合物と不可逆的に結合(例えば、共有結合)していないことを意味する。
【0021】
本開示の非修飾無機ナノ粒子は、金属酸化物ナノ粒子を含み得る。このような金属酸化物としては、例えば、二酸化ケイ素(シリカ)、ジルコニア、チタニア、セリア、アルミナ、酸化鉄、酸化亜鉛、バナジア、酸化アンチモン、酸化スズ、アルミナ/シリカが挙げられる。金属酸化物は実質的に純粋であってよいが、アンモニウム及びアルカリ金属イオン等の安定化イオンを少量含有してもよく、又はチタニアとジルコニアとの組み合わせ等の金属酸化物の組み合わせであってもよい。
【0022】
本開示で用いられる非修飾無機ナノ粒子は、好ましくは、実質的に球形である。
【0023】
非修飾無機ナノ粒子は、用いられる無機ナノ粒子に依存して、少なくとも25nm、20nm、15nm、10nm、5nm、又は更には3nm;最大約100nm、50nm、30nm、20nm、又は更には10nmの一次粒子の平均直径を有する。本開示で用いられる非修飾無機ナノ粒子は、典型的に、凝集していない。非修飾無機ナノ粒子が一次粒子の凝集体である場合、凝集ナノ粒子の最大断面寸法は、約3nm〜約100nm、約3nm〜約50nm、約3nm〜約20nm、又は更には約3nm〜約10nmの範囲内である。
【0024】
本明細書で用いるとき、非修飾無機ナノ粒子は、ヒュームドシリカ、発熱性シリカ、沈殿シリカ等の材料とは区別することができる。このようなシリカ材料は、高剪断混合の非存在下において凝集体の形態で本質的に不可逆的に結合している一次粒子で構成されていることが当業者には既知である。これらシリカ材料は、100nm超(例えば、典型的に少なくとも200ナノメートル)の平均粒径を有し、それから、個々の一次粒子を直接抽出することは不可能である。
【0025】
非修飾無機ナノ粒子は、コロイド状分散液の形態であってよい。有用な市販の非修飾シリカナノ粒子の例としては、商品名「NALCO COLLOIDAL SILICAS」としてNalco Chemical Co.(Naperville,IL)から入手可能な市販のコロイド状シリカが挙げられる。例えば、このようなシリカとしては、NALCO製品1040、1042、1050、1060、2327及び2329が挙げられる。有用な金属酸化物のコロイド状分散液の例としては、コロイド状酸化ジルコニウム(この好適な例は、例えば、米国特許第5,037,579号(Matchett)に記載されている)、及びコロイド状酸化チタン(この有用な例は、例えば、米国特許第6,432,526号(Arneyら)に記載されている)が挙げられる。
【0026】
1つの実施形態では、非修飾無機ナノ粒子の表面は、有機化合物と可逆的に結合する。
【0027】
1つの実施形態では、本開示の非修飾無機ナノ粒子は、イオン結合、水素結合、ファンデルワールス力等を介して有機化合物と結合し得る。例えば、酸末端基(例えば、カルボン酸塩、カルボン酸、ホスホン酸塩(phosphoniate)、ホスホン酸、又はヒドロキシアミン)を有する有機化合物は、無機ナノ粒子の表面とイオン結合し得る。
【0028】
例えば、金属酸化物ナノ粒子は、ナノ粒子の表面上への酸性又は塩基性化合物の吸着を通して表面処理されてもよい。ジルコニア、アルミナ、又はチタニア等の金属酸化物粒子は、カルボン酸、リン酸、及びスルホン酸等の酸性化合物、又はホウ素、炭素、リン、及び硫黄のオキシ酸に由来する酸性官能基で処理してよい。無機ナノ粒子に非共有結合し得る代表的な有機化合物としては、酢酸又はポリアルキレンオキシド等の酸性末端基を含む短鎖有機分子、ポリオール又はカルボン酸塩、カルボン酸、ホスホン酸塩、ホスホン酸、ヒドロキシアミン末端基を有するヒドロキシル置換部分が挙げられる。
【0029】
一般的に、非晶質フルオロポリマーラテックスを凝固させるのに必要な非修飾無機ナノ粒子の量は、非晶質フルオロポリマーラテックスに対して、少なくとも3000ppm、5000ppm、10,000ppm、50,000ppm、100,000ppm、200,000ppm、500,000ppm、又は更には1,000,000ppmである。
【0030】
添加される無機ナノ粒子の量が少なすぎる場合、凝固が徐々に及び不完全にしか生じない。結果として、ラテックスから非晶質フルオロポリマーの全てを回収することができない場合がある。いくつかの実施形態では、コストの理由及び/又は得られるフルオロエラストマーの特性に非修飾無機ナノ粒子が影響を与える場合があるので、実質的に過剰な非修飾無機ナノ粒子を添加することは望ましくない場合がある。
【0031】
一般的に、非修飾無機ナノ粒子は、混合物として非晶質フルオロポリマーラテックスに添加される。すなわち、非修飾無機ナノ粒子を液体に分散させ、次いで、これを非晶質フルオロポリマーラテックスに添加する。液体に分散している非修飾無機ナノ粒子及びラテックスとして分散している非晶質フルオロポリマーを有することは、ナノ粒子と非晶質フルオロポリマーとのブレンドに役立ち、乾燥ブレンドの場合よりも混合中に生じる塵が少ないので有利である。
【0032】
非晶質フルオロポリマーラテックスは、非修飾無機ナノ粒子の添加中又は添加後に撹拌してよい。撹拌装置は、特定の種類に限定されず、例えば、撹拌速度を制御することができる、プロペラブレード、タービンブレード、パドルブレード、シェル状ブレード等の撹拌手段を有する装置が挙げられる。本開示では、撹拌装置は、それ自体凝固を引き起こさない。すなわち、撹拌装置は、非晶質フルオロポリマーラテックスに高剪断を印加しない。代わりに、本開示では、非晶質フルオロポリマーラテックスを不安定化させて凝固を引き起こす非修飾無機ナノ粒子を添加し、撹拌装置は、フルオロポリマーラテックス中に非修飾無機ナノ粒子を効率的に分散させるための手段を提供する。1つの実施形態では、フルオロポリマーラテックスを凝固させるために高剪断は用いられない。高剪断がラテックスに印加されて凝固を引き起こすかどうかを判定するために、非修飾無機ナノ粒子を用いずに同一の実験を実施して、非晶質フルオロポリマーラテックスが凝固するかどうかを判定してよい。
【0033】
1つの実施形態では、撹拌装置によって印加される平均剪断力は、Handbook of Industrial Mixing−Science and Practice by Paul,E.L.,et al.eds.,John Wiley & Sons,2004,page 370において撹拌槽について定義されている通り、300ヘルツ(Hz)、500Hz、750Hz、850Hz、又は更には950Hz未満である。
【0034】
非修飾無機ナノ粒子を用いて非晶質フルオロポリマー格子を凝固させるプロセス中、いくつかの実験は機能したが、他は機能しなかったことが見出された。凝固は、分散しているラテックス粒子の表面電荷の安定性に基づいているので、非晶質フルオロポリマー格子及び非修飾無機ナノ粒子のゼータ電位を測定した。一般的に、非晶質フルオロポリマーラテックスと非修飾無機ナノ粒子のゼータ電位が反対である場合、混合物は凝固することが見出された。また、非晶質フルオロポリマー格子と非修飾無機ナノ粒子のゼータ電位が同じである場合(すなわち、両方が負のゼータ電位を有していた場合)、ラテックスは凝固する場合もあり、凝固しない場合もあることが見出された。この場合、また、用いられる非修飾無機ナノ粒子の量と若干の相関があると思われる。したがって、等式Iは、非晶質フルオロポリマーラテックスと非修飾無機ナノ粒子との組み合わせが凝固する場合の予測を導いた:
p値=(ζ
ラテックス・X
ラテックス/100)−(ζ
np・Y
np・X
np/100) Eq.I
式中、ζ
ラテックスは、非晶質フルオロポリマーラテックスのゼータ電位であり、X
ラテックスは、非晶質フルオロポリマーラテックス固形分の%であり、ζ
npは、非修飾無機ナノ粒子のゼータ電位であり、X
npは、混合物中の非修飾無機ナノ粒子の%であり、Y
npは、添加される非修飾無機ナノ粒子の混合物の量である。
【0035】
p値が250、300、400、又は更には450g mV以下である場合、非晶質フルオロポリマーラテックスと非修飾無機ナノ粒子との組み合わせが凝固すると結論付けられた。1つの例外は、実験の章の比較例1に示されており、p値は−441であり、非修飾無機ナノ粒子と非晶質フルオロポリマーラテックスとの組み合わせは、十分に凝固しなかった。
【0036】
理論に縛られるものではないが、非修飾無機ナノ粒子は、水に懸濁しているフルオロポリマー粒子と水との間の界面エネルギーを変化させることによって、非晶質フルオロポリマーラテックスを不安定化させると考えられる。
【0037】
1つの実施形態では、酸性である非修飾無機ナノ粒子は、非晶質フルオロポリマーラテックス粒子の表面に付着して、ラテックスの粒径を増加させ、フルオロポリマーラテックス粒子を凝固点まで不安定化させる。酸性非晶質フルオロポリマーラテックスと安定なブレンドを形成するpH 7超の非修飾無機ナノ粒子混合物は、非修飾無機ナノ粒子が酸性化された後、非晶質フルオロポリマーラテックスと接触する場合、非晶質フルオロポリマーラテックスを凝固させることができる。酸性非修飾無機ナノ粒子は、次いで、イオン交換されて金属対イオンを除去することができる。
【0038】
本開示の非晶質フルオロポリマーラテックスは、懸濁又は乳化重合の結果であってよい。
【0039】
非晶質フルオロポリマーラテックスは、非フッ素化モノマー、フッ素化モノマー、又はこれらの組み合わせに由来してよい。
【0040】
非フッ素化モノマーは、当該技術分野において既知であるものを含み、例えば、エチレン及びプロピレンが挙げられる。官能化モノマーとしては、部分的に及び完全にフッ素化されている、当該技術分野において既知のものが挙げられる。例示的なフッ素化モノマーとしては、フッ素化オレフィン類、例えば、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン、及びフッ化ビニル;フッ素化エーテル類、例えば、フルオロアリルエーテル、フルオロアルキルビニルエーテル(例えば、ペルフルオロメチルビニルエーテル、3−メトキシペルフルオロプロピルビニルエーテル、及びCF
2CFOCF
2OCF
2CF
2CF
2CF
3)、及びフルオロアルコキシビニルエーテル;フッ素化アルコキシド類、例えば、ヘキサフルオロプロピレンオキシド;フッ素化スチレン類、フッ素化シロキサン類;並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0041】
本開示の例示的な非晶質フルオロポリマー格子は、例えば、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−フッ化ビニリデンコポリマー、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、テトラフルオロエチレン−プロピレンコポリマー、テトラフルオロエチレン−ペルフルオロアルキルビニルエーテルコポリマー、及びフッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレンコポリマー等のコポリマーを含んでよい。
【0042】
更に、当該技術分野において既知である硬化部位モノマーを重合中に添加してよく、その結果、非晶質フルオロポリマーラテックスは、ヨウ素、臭素、及び/又は窒素含有硬化部位基を含み、これは、次いで、非晶質フルオロポリマー複合物を架橋させるために用いることができる。
【0043】
1つの実施形態では、ヨウ素及び臭素含有硬化部位基は、式:CX
2=CX(Z)(式中、(i)各Xは、独立して、H又はFであり;(ii)Zは、I、Br、R
f−U(式中、U=I又はBrであり、R
f=任意でO原子を含有するペルフルオロ化又は部分的にペルフルオロ化されたアルキレン基である))のモノマーに由来してよい。加えて、非フッ素化ブロモ又はヨードオレフィン、例えば、ヨウ化ビニル及びヨウ化アリルを使用することができる。例示的なヨウ素及び臭素硬化部位基は、CH
2=CHI、CF
2=CHI、CF
2=CFI、CH
2=CHCH
2I、CF
2=CFCF
2I、CH
2=CHCF
2CF
2I、CH
2=CHCF
2CF
2CH
2CH
2I、CH
2=CH(CF
2)
4I、CH
2=CH(CF
2)
4CH
2CH
2I、CH
2=CH(CF
2)
6I、CH
2=CH(CF
2)
6CH
2CH
2I、CF
2=CFCH
2CH
2I、CF
2=CFCF
2CF
2I、CF
2=CFOCF
2CF
2I、CF
2=CFOCF
2CF
2CH
2CH
2I、CF
2=CFOCF
2CF
2CF
2I、CF
2=CFOCF
2CF
2CF
2CH
2CH
2I、CF
2=CFOCF
2CF
2CH
2I、CF
2=CFOCF
2CF
2CF
2CH
2I、CF
2=CFCF
2OCH
2CH
2I、CF
2=CFO(CF
2)
3−OCF
2CF
2I、CH
2=CHBr、CF
2=CHBr、CF
2=CFBr、CH
2=CHCH
2Br、CF
2=CFCF
2Br、CH
2=CHCF
2CF
2Br、CF
2=CFOCF
2CF
2Br、CF
2=CFCl、CF
2=CFCF
2Cl、及びこれらの組み合わせに由来してよい。
【0044】
1つの実施形態では、窒素含有硬化部位基は、例えば、ニトリル、アミジン、イミデート、アミドキシム、又はアミドラゾン基を含んでよい。
【0045】
例示的な窒素含有硬化部位基は、CF
2=CF−CF
2−O−R
f−CN、CF
2=CFO(CF
2)
wCN、CF
2=CFO[CF
2CF(CF
3)O]
g(CF
2)
vOCF(CF
3)CN、CF
2=CF[OCF
2CF(CF
3)]
kO(CF
2)
uCN、及びこれらの混合物(式中、wは、2〜12の整数を表し;gは、0〜4の整数を表し;kは、1又は2の整数を表し;vは、0〜6の整数を表し;uは、1〜6の整数を表し;R
fは、ペルフルオロアルキレン又は二価ペルフルオロエーテル基である)に由来してよい。具体的な例としては、ペルフルオロ(8−シアノ−5−メチル−3,6−ジオキサ−1−オクテン)、CF
2=CFO(CF
2)
5CN、及びCF
2=CFO(CF
2)
3OCF(CF
3)CNが挙げられる。
【0046】
1つの実施形態では、非フルオロポリマー粒子又は半結晶質若しくは結晶質のフルオロポリマー粒子、又はこれらの組み合わせは、フルオロポリマーラテックス中の非晶質フルオロポリマー粒子と混合してもよい。代表的な非フルオロポリマーとしては、ポリ塩化ビニル及びポリアクリレートが挙げられる。代表的な半結晶質又は結晶質のフルオロポリマーとしては、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−プロピレン(FEP)コポリマー、テトラフルオロエチレン−ペルフルオロアルコキシビニルエーテル(PFA)コポリマー、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−フッ化ビニリデンコポリマー、エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン、プロピレン−クロロトリフルオロエチレンコポリマー、及びエチレン−クロロトリフルオロエチレンコポリマーが挙げられる。1つの実施形態では、フルオロポリマーラテックスは、フルオロポリマーラテックス中の総ポリマー固形分に対して、50重量%、25重量%、15重量%、10重量%、5重量%、2重量%、1重量%、0.5重量%、0.1重量%、又は更には0.05重量%未満のこれら非フルオロポリマー又は半結晶質若しくは結晶質のフルオロポリマーを含む。
【0047】
フルオロポリマーラテックスを非修飾無機ナノ粒子で凝固させた後、凝固した非晶質フルオロポリマー及び非修飾無機ナノ粒子を含むフルオロポリマー複合物を水性溶媒から(例えば、濾過により)分離し、次いで、水で洗浄してよい。
【0048】
回収及び洗浄後、フルオロポリマー複合物を、熱分解が始まる温度よりも低い温度で乾燥させる。
【0049】
フルオロポリマーラテックスは金属塩の代わりに非修飾無機ナノ粒子で凝固させることができるので、得られるフルオロポリマー複合物は、少量の金属イオンを含んでいる場合もある。例えば、1つの実施形態では、フルオロポリマー複合物は、200、100、又は更には50ppm未満の総金属イオンを含む。総金属イオン含量は、金属イオンを確実に減少させるために原材料をスクリーニングすることによって更に低減させることができる。
【0050】
乾燥後、フルオロポリマー複合物を用いて物品を形成してもよい。用語「物品」は、本発明に関連して、例えば、O−リング、並びにそれから完成形状が製造される予備形成品、例えばそれからリングを切断する管のような完成物品を意味する。物品を形成するために、フルオロポリマー複合物は、スクリュータイプ押出成形機又はピストン押出成形機を使用して押出加工することができる。あるいは、フルオロポリマー複合物は、射出成形、トランスファー成形又は圧縮成形を使用して物品へ成形することができる。圧縮成形は、ある量の冷たい未硬化フルオロポリマー複合物を加熱した型穴に入れ、その後適切な圧力を用いて型を近接させて、物品を成形することからなる。非晶質フルオロポリマー複合物を十分な温度で十分な時間保持して加硫させた後、型から取り出すことができる。射出成形は、非晶質フルオロポリマー複合物をまず加熱し、押出成形機スクリュー内でどろどろにし、次いで加熱したチャンバで収集し、それから次いで水圧ピストンを用いて中空型穴に射出する成形技術である。加硫後、物品は次いで型から取り出されてよい。トランスファー成形は、非晶質フルオロポリマー複合物が予熱されず、かつ押出機スクリューによってどろどろにされるが、加熱した注入チャンバ内に冷たい塊として導入されるという点が異なる以外は、射出成形に類似している。いくつかの実施形態では、成形は架橋と同時に実行される。いくつかの実施形態では、成形は架橋の前に実行される。
【0051】
ここで開示するフルオロポリマー複合物由来の物品は、フルオロエラストマーをマイクロチップ製作設備のシールに用いるマイクロチップ製造プロセスのために半導体業界で有用である。半導体、バイオテクノロジー、及び製薬業界等の業界では、クリーナーフルオロエラストマー部品(O−リング、急速継手シール、ガスケット等)が望まれている。換言すれば、非常に低い金属含量を有するフルオロエラストマー部品である。本開示において、非修飾無機ナノ粒子を用いて非晶質フルオロポリマーラテックスを凝固させると、低い金属含量及びプロセス工程を減少させる能力を有するフルオロエラストマーが生じることが見出された。
【0052】
本開示のいくつかの項目/実施形態としては、以下が挙げられる:
項目1.フルオロポリマーラテックスを凝固させる方法であって、
非晶質フルオロポリマーラテックスを提供する工程と;
非修飾無機ナノ粒子を提供する工程と;
非晶質フルオロポリマーラテックスと十分な量の非修飾無機ナノ粒子とを接触させて、非晶質フルオロポリマーラテックスを凝固させる工程と、を含む、方法。
【0053】
項目2.従来の凝固剤を実質的に含まない、項目1に記載の方法。
【0054】
項目3.非晶質フルオロポリマーラテックスがペルフルオロ化されている、項目1又は2に記載の方法。
【0055】
項目4.非晶質フルオロポリマーラテックスが部分的にフッ素化されている、項目1又は2に記載の方法。
【0056】
項目5.p値が400g mV以下である、項目1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【0057】
項目6.非晶質フルオロポリマーラテックス及び非修飾無機ナノ粒子が、両方とも酸性である、項目1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【0058】
項目7.非晶質フルオロポリマーラテックスが、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ペルフルオロメチルビニルエーテル、3−メトキシペルフルオロプロピルビニルエーテル、CF
2CFOCF
2OCF
2CF
2CF
2CF
3、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、エチレン、プロピレン、及びこれらの組み合わせから選択されるモノマーに由来する、項目1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【0059】
項目8.非晶質フルオロポリマーラテックスが、ヨウ素又は臭素含有硬化部位基を含む、項目1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【0060】
項目9.非晶質フルオロポリマーラテックスが、窒素含有硬化部位基を含む、項目1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【0061】
項目10.窒素含有硬化部位が、ニトリル、アミジン、イミデート、アミドキシム、又はアミドラゾンである、項目9に記載の方法。
【0062】
項目11.非修飾無機ナノ粒子が100nm未満の平均直径を有する、項目1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【0063】
項目12.非修飾無機ナノ粒子が、ジルコニウム、アルミナ、酸化亜鉛、及びこれらの組み合わせを含む、項目1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【0064】
項目13.非修飾無機ナノ粒子がシリカを含む、項目1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【0065】
項目14.非晶質フルオロポリマーラテックスが、ヘキサフルオロプロピレン−フッ化ビニリデンコポリマーであり、非修飾無機ナノ粒子がアルミナである、項目1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【0066】
項目15.非晶質フルオロポリマーラテックスが、テトラフルオロエチレン−ペルフルオロメチルビニルエーテルコポリマーであり、非修飾無機ナノ粒子が酸化亜鉛である、項目1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【0067】
項目16.非晶質フルオロポリマーラテックスが、テトラフルオロエチレン−ペルフルオロメチルビニルエーテルコポリマーであり、非修飾無機ナノ粒子がジルコニアである、項目1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【0068】
項目17.フルオロポリマーラテックスが、非フッ素化ポリマー粒子、半結晶質ポリマー粒子、結晶質ポリマー粒子、又はこれらの組み合わせを更に含む、項目1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【0069】
項目18.フルオロポリマーラテックスが、フルオロポリマーラテックス中の総ポリマー固形分に対して25重量%未満の非フッ素化ポリマー粒子、半結晶質ポリマー粒子、結晶質及びポリマー粒子を含む、項目17に記載の方法。
【0070】
項目19.少なくとも3000ppmの非修飾無機ナノ粒子が添加される、項目1〜18のいずれか一項に記載の方法。
【0071】
項目20.項目1〜19のいずれか一項に記載の方法に従って製造される、フルオロポリマー複合物。
【0072】
項目21.フルオロポリマー複合物が200ppm未満の総金属イオンを含む、項目20に記載の方法。
【0073】
項目22.項目20又は21に記載のフルオロポリマー複合物に由来する硬化物品。
【実施例】
【0074】
本開示の利点及び実施形態を以降の実施例によって更に例示するが、これら実施例において列挙される特定の材料及びそれらの量、並びに他の条件及び詳細は、本発明を不当に制限するものと解釈されるべきではない。これらの実施例では、全ての比率、割合及び比は、特に断らないかぎり重量に基づいたものである。
【0075】
これら略語を以下の実施例で用いる:g=グラム、hr=時間、min=分、mol=モル、mL=ミリリットル、L=リットル、MHz=メガヘルツ、MPa=メガパスカル、psig=ポンド/平方インチゲージ圧。特に明記しない限り、化学物質は、Sigma−Aldrich(St.Louis,MO)から入手可能である。
【0076】
【表1】
【0077】
ラテックスCの調製
ラテックスCは、80Lの反応器において調製され、それに、水52kgと、更なる500gの水に溶解しているリン酸カリウムバッファ80gと、更なる500gの水に溶解している過硫酸アンモニウム40gと、を添加した。反応器のヘッドスペースを排気し、真空を破壊し、反応器を窒素で25psi(0.17MPa)に加圧した。この真空及び加圧を3回繰り返し、その後、反応器を176°F(80℃)に加熱し、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)及び1,4ジヨードオクタフルオロブタン(SynQuest Lab(Alachua,Florida)から入手可能)のブレンドを用いて74psi(0.51MPa)に加圧した。ヘキサフルオロプロピレン(HFP)と1,4ジヨードオクタフルオロブタンのブレンドを調製するために、125lb(56.7kg)のシリンダーを排気し、窒素で3回パージした。ブレンド比1:3の1,4ジヨードオクタフルオロブタン及びHFE 7300(3M Company(St.Paul,MN)から市販)を添加した後、添加した1,4ジヨードオクタフルオロブタンの量に基づいてHFPを添加した。窒素をシリンダーに添加して、圧力を280psig(1.931MPa)にした。次いで、ブレンドシリンダーを反応器に取り付け、窒素のブランケットを用いて供給した。ブレンドは、97.2重量%のHFPと2.8重量%の1,4,ジヨードオクタフルオロブタンとを含有していた。次いで、反応器にフッ化ビニリデン(VDF)と、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)及び1,4ジヨードオクタフルオロブタンの上記ブレンドと、を充填して、反応圧力を220psig(1.517MPa)にした。予め充填されたVDFと、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)と1,4ジヨードオクタフルオロブタンとのブレンドと、の合計は、755.63g及び1570.42gであった。反応容器を450rpmで撹拌した。重合反応でモノマーが消費されることにより反応容器の圧力が低下するので、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)と1,4ジヨードオクタフルオロブタンとのブレンド、及びVDFを反応器に連続的に供給して、圧力を220psig(1.517MPa)で維持した。ブレンドとVDFの重量比は0.67であった。7.45時間後に、モノマー及びブレンドの供給を停止させ、反応容器を冷却した。得られた分散物の固形分含量は、30.55重量%であった。
【0078】
ジルコニアゾル#1の調製
ナノ粒子ゾルは、国際公開第2009085926号(Kolbら)の実施例1の方法に従って調製され、Z平均粒径は15nmになった(光子相関分光法によって測定)。得られたゾルを蒸発によって濃縮して、固形分を45.8重量%にした。このゾルを更に希釈した後、脱イオン水で凝固させて15重量%固形分のゾルを作製した。
【0079】
ジルコニアゾル#2の調製
「ジルコニアゾル#1の調製」で調製された45.8重量%固形分ゾルを、Spectra/Por分子多孔質膜管のバッグ(Spectra/Por透析膜の分子量カットオフ12,000〜14,000g/mol、Spectrum Laboratories,Inc.(Rancho Dominquez,CA)から入手可能)に入れることによってジルコニアゾル#1の低酸バージョンを調製した。次いで、ゾルを含有するバッグを、過剰の脱イオン水中に入れ、電磁撹拌棒を用いて撹拌した。得られたゾルは、30.5重量%の固形分含量を有していた。
【0080】
ゼータ電位試験法
格子及びナノ粒子ゾルのゼータ電位を、1〜18MHzの周波数にわたってAcoustoSizer II(Colloidal Dynamics(North Attelboro,MA))を用いて測定した。実験を行う前に、機器の製造業者の説明書に従ってシリカゾルを用いて機器を較正した。各材料のゼータ電位の計算で用いられる定数を表1に列挙する。全ての場合、粘度温度=25℃、粘度=0.8904cp、D粘度/dT(%/C)=0、溶媒密度=0.9971g/mL、音速=1500m/s、及び誘電定数=78。報告するゼータ電位は、同じ条件下で行った3回の試験の平均である。報告するゼータ電位は、界面動電超音波振動効果の測定に基づいて計算する。報告されるゼータ電位も同様に表1に示す。
【0081】
【表2】
【0082】
*ラテックスは、設備における凝固を防ぐために、ゼータ電位測定用に5.0重量%固形分に希釈した。
【0083】
実施例1(EX1)
141.84gの希釈された(固形分23.5重量%)ジルコニアゾル#2に、549.69gのラテックスBを、Laboratory Disperseratorシリーズ2000モデル90(Premier Mill(Exton,PA))によって駆動されるCowlesブレードを用いて中速で撹拌しながら35分間かけて滴下した。固体を含有する粘度の高い泡状の稠度が発現した。全てのラテックスを添加した後、混合物を高速で28分間撹拌した。混合物を27分間沈降させ、その後、チーズクロスを通して液体を濾過し、固体を容器に戻した。約500mLの熱脱イオン水を、第1のすすぎ液として添加した。濾過及びすすぎプロセスを更に2回繰り返した。最後のすすぎ後、手で固体を絞り取り、100℃のバッチオーブン内で16時間乾燥させた。このプロセスにより172.3gの物質が得られた(収率86.15%)。
【0084】
実施例2(EX2)
594.18gのラテックスCに、60.6gのアルミナゾル(固形分30重量%)を、Laboratory Disperseratorシリーズ2000モデル90(Premier Mill(Exton,PA))によって駆動されるCowlesブレードを用いて中速(VARIACで20の設定)で撹拌しながら2分間かけて滴下した。小片が形成された。混合物を更に2分間撹拌し、次いで、5分間沈降させた。チーズクロスを通して液体を濾過した。冷脱イオン水を用いたことを除いて実施例1の通り固体を3回洗浄し、次いで、手で搾り取り、106℃のバッチオーブン内で16時間乾燥させた。
【0085】
実施例3(EX3)
602.30gのラテックスBに、60.6gのアルミナゾル(固形分30重量%)を、1600RPMの三枚羽根IKA変速攪拌機(IKA Works,Inc.(Wilmington,NC))で撹拌しながら約5分間かけて滴下した。微細な小片が生じ、更に15分間撹拌し、次いで、20分間沈降させた。各洗浄が30分間であったことを除いて、実施例1の通り固体を洗浄した。固体を100℃で20時間乾燥させて、100.1gの物質を得た(収率50.0%)。
【0086】
実施例4(EX4)
594.2gのラテックスCに、62.50gのジルコニアゾル#2を、Laboratory Disperseratorシリーズ2000モデル90(Premier Mill(Exton,PA))によって駆動される中速(VARIACで20の設定)のCowlesブレードで撹拌しながら約5分間かけて添加した。小片が形成され、ラテックスの添加後更に1分間撹拌し、次いで、5分間沈降させた。固体を洗浄し、実施例2の通り乾燥させて、173.6gの物質(収率86.4%)を得た。
【0087】
実施例5(EX5)
594.18gのラテックスCに、129.9gのジルコニアゾル#3を、Laboratory Disperseratorシリーズ2000モデル90(Premier Mill(Exton,PA))によって駆動されるCowlesブレードを用いて中速(VARIACで20の設定)で撹拌しながら約5分間かけて添加した。小片が形成され、ラテックスの添加後更に1分間撹拌し、次いで、5分間沈降させた。固体を洗浄し、実施例2の通り乾燥させて、181.2gの物質(収率90.6%)を得た。
【0088】
実施例6(EX6)
87.0gのジルコニアゾル#1に、288.0gのラテックスBを、電磁撹拌プレート(IKA)上の高速設定の電磁撹拌棒を用いて撹拌しながら20分間かけて添加した。粘度の高い泡状の稠度が添加中持続し、固体を含有していた。ラテックスの添加後、混合物を更に30分間撹拌し、次いで、5分間沈降させた。固体を実施例1の通り洗浄した。固体を93℃で16時間乾燥させて、96.1gの物質を得た(収率95.8%)。
【0089】
実施例7(EX7)
6.60gの酸化亜鉛ゾルに、575.97gのラテックスAを、Laboratory Disperseratorシリーズ2000モデル90(Premier Mill(Exton,PA))によって駆動される中速のCowlesブレード撹拌機を用いて約30分間かけて添加した。小片が形成された。ラテックスの添加後、混合物を更に30分間撹拌し、次いで、5分間沈降させた。実施例1の通り固体をすすぎ、100℃で16時間乾燥させて、196.1gの物質を得た(収率98.0%)。
【0090】
実施例8(EX8)
31.75gの酸化亜鉛ゾルに、554.0gのラテックスAを、Laboratory Disperseratorシリーズ2000モデル90(Premier Mill(Exton,PA))によって駆動される中速のCowlesブレード撹拌機を用いて約30分間かけて添加した。小片が形成された。ラテックスの添加後、混合物を更に30分間撹拌し、次いで、5分間沈降させた。実施例1の通り固体をすすぎ、100℃で16時間乾燥させて、191.1gの物質を得た(収率95.0%)。
【0091】
比較例1(CE1)
622.47gのラテックスCに、31.25gのジルコニアゾル#2を、Laboratory Disperseratorシリーズ2000モデル90(Premier Mill(Exton,PA))によって駆動される中速のCowlesブレードで混合しながら2分間かけて添加した。混合物は、添加中、又は15分間の更なる混合中、又は5分間の沈降中、全く固体を形成せず、乳状の外観のままであった。
【0092】
比較例2(CE2)
594.18gのラテックスCに、60.6gの酸化亜鉛ゾルを、Laboratory Disperseratorシリーズ2000モデル90(Premier Mill(Exton,PA))によって駆動される中速のCowlesブレードで混合しながら2分間かけて添加した。混合物は、添加中、又は15分間の更なる混合中、又は5分間の沈降中、全く固体を形成せず、乳状の外観のままであった。
【0093】
比較例3(CE3)
594.18gのラテックスCに、36.37gのシリカゾル#1を、Laboratory Disperseratorシリーズ2000モデル90(Premier Mill(Exton,PA))によって駆動される中速のCowlesブレードで混合しながら2分間かけて添加した。混合物は、添加中、又は15分間の更なる混合中、又は5分間の沈降中、全く固体を形成せず、乳状の外観のままであった。
【0094】
比較例4(CE4)
121.20gのシリカゾル#3に、616.30gのラテックスBラテックスを、Laboratory Disperseratorシリーズ2000モデル90(Premier Mill(Exton,PA))によって駆動される中速のCowlesブレードで混合しながら約10分間かけて添加した。固体は形成されず、混合物は乳状の外観のままであった。
【0095】
比較例5(CE5)
602.3gのラテックスBに、53.50gのシリカゾル#2を、三枚羽根撹拌機及び1600rpmに設定された変速混合機(IKA)を用いて撹拌しながら、約2分間かけて添加した。固体は形成されず、混合物は乳状の外観のままであった。
【0096】
比較例6(CE6)
222.20gのシリカゾル#4に、548.90gのラテックスBを、Cowlesブレードを用いて中速でLaboratory Disperseratorシリーズ2000モデル90(Premier Mill(Exton,PA))を用いて混合しながら約10分間かけて添加した。固体は形成されず、混合物は乳状の外観のままであった。
【0097】
比較例7(CE7)
高剪断の効果をみるために、551.41gのラテックスBを、三枚羽根撹拌機及び1600rpmに設定された変速混合機(IKA)を用いて20分間撹拌した。次いで、撹拌を停止したところ、発泡体層及び透明な液体層が形成された。更に5分間撹拌した後、薄い高分子層が透明な液体の表面上に見え、発泡体は残っていなかった。ポリマー粒子は見えなかった。
【0098】
比較例8(CE8)
596.28gのラテックスCを、スプラッシュしないことを除いて、Cowlesブレードに達する強いボルテックスを用いて4分間中速(VARIACで25の設定)でLaboratory Disperseratorシリーズ2000モデル90を用いて撹拌した。撹拌を停止したところ、ポリマー微粒子は存在していなかった。次いで、ビーカーの側面に液体が跳ねかかる点まで速度を増加させた(VARIACで35の設定)。4分後、大きな(直径3cm)の球が乳状ラテックス中に形成されていた。著しい更なるポリマー粒子は存在していなかった。
【0099】
明細書に記載の通り計算した、計算p値を含む実験の概要を表2に示す。
【0100】
【表3】
【0101】
NA:該当なし
表2に示す通り、ナノ粒子を含まずにラテックスのみを混合しても、CE7及びCE8に示す通り、非晶質フルオロポリマーラテックスは凝固しない。出願人らは、凝固を引き起こすナノ粒子、並びにナノ粒子の添加中及び添加後のラテックスの混合を用いて、ラテックス中のナノ粒子の分散が改善されることを見出した。表2に示す通り、ラテックスの種類、ナノ粒子の種類、及び添加されるナノ粒子の量は、ラテックスが凝固するかどうかに影響を与える。一連の実験に基づいて、出願人らは、400g mV以下のp値が十分な凝固をもたらすと考えられることを見出した。
【0102】
本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく本発明に予測可能な改変及び変更を行い得ることは当業者には明らかであろう。本発明は、説明を目的として本出願に記載される各実施形態に限定されるべきものではない。