【文献】
European Journal of Cancer, Supplement (2009) Vol.7, No.3, p.6
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0030】
EGFRに結合する抗原結合タンパク質(抗体、およびその機能的結合フラグメント)を、本明細書に開示する。いくつかの実施形態において、本抗原結合タンパク質は、EGFRに結合し、様々な方法でEGFRが機能することを阻止する。いくつかの実施形態において、本抗原結合タンパク質は、EGFRが他の物質と相互作用する能力を遮断または低減させる。例えば、いくつかの実施形態において、本抗原結合タンパク質は、EGFRがEGFに結合するであろう可能性を阻止または低減させる方法で、EGFRに結合する。他の実施形態において、抗原結合タンパク質は、EGFRに結合するが、EGFRがEGFと相互作用する能力を遮断しない場合がある。いくつかの実施形態において、本抗原結合タンパク質は、ヒトモノクローナル抗体である。
【0031】
EGFRに対する抗原結合タンパク質は、結腸直腸、胸部、肺、頭頸部、卵巣、子宮頸部、前立腺、膵臓等を含むがこれらに限定されない、種々の癌の治療および/または予防に使用することができる。したがって、癌を有する対象を治療するための方法および組成物は、本明細書に記載される本発明の範囲内である。
【0032】
便宜上、以下の節は、概して、本明細書に使用される用語の種々の意味を概説する。この説明に続いて、抗原結合タンパク質に関する一般的な態様を記述し、続いて抗原結合タンパク質の種々の実施形態の特性を示す具体的な実施形態、およびどのようにそれらを展開することができるかを記述する。
【0033】
定義および実施形態
本明細書の記述は、単に例示および説明であり、特許請求される本発明を限定するものではないことが理解されるであろう。本出願において、単数形の使用は、具体的に別段の記述がない限り、複数形を含む。本出願において、「または」の使用は、別段の記述がない限り「および/または」を意味する。さらに、「含む(including)」という用語、ならびに「含む(includes)」および「含まれる」等の他の形態の使用は、限定的ではない。さらに、「要素」または「構成要素」等の用語は、具体的に別段の記述がない限り、1つの単位を構成する要素および構成要素、ならびに1つを上回る副単位を構成する要素および構成要素の両方を包含する。さらに、「部分」という用語の使用は、ある部分の一部またはその全部分を含み得る。
【0034】
本明細書に使用される節の見出しは、単に編成の目的であり、記載される主題を限定するとみなされるべきものではない。特許、特許出願、記事、書籍、および論文を含むがこれらに限定されない、本出願に引用される全ての文書または文書の部分は、いかなる目的に対しても参照によりその全体が本明細書に明示的に組み込まれる。本開示に従って利用される際、以下の用語は、別段の指定がない限り、次の意味を有すると理解されたい。
【0035】
「EGFR」という用語は、上皮成長因子受容体、そのフラグメント、ならびに関連ポリペプチドを指し、これには、対立遺伝子変異体、スプライス変異体、誘導変異体、置換変異体、欠失変異体、ならびに/またはN末端メチオニン、融合ポリペプチド、および種間相同体の付加を含む挿入変異体が含まれるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態において、EGFRポリペプチドには、限定されないが、シグナルペプチド配列残基、標的残基、アミノ末端メチオニン残基、リジン残基、タグ残基、および/または融合タンパク質残基等の末端残基が挙げられる。EGFRへの参照には、ヒトEGFRの変異体、イソ型、および種間相同体が挙げられる。好ましい実施形態において、本発明の抗体のEGFR抗原への結合は、1つ以上のEGFRリガンド(複数可)のEGFRへの結合を阻害または遮断することによって、EGFRを発現する細胞(例えば、腫瘍細胞)の成長を阻害する。「EGFRリガンド」という用語は、EGF、TGF−α、ヘパリン結合EGF(HB−EGF)、アンフィレグリン(AR)、へレグリン、βセルリン、およびエピレグリン(EPI)を含むが、これらに限定されない、EGFRの全ての(例えば、生理学的)リガンドを包含する。別の好ましい実施形態において、本発明の抗体のEGFR抗原への結合は、エフェクター細胞の食作用および/またはEGFRを発現する細胞の殺滅を媒介する。
【0036】
成熟EGFRの細胞外部分(SwissProt acc.#P00533)は、621のアミノ酸、および4つの受容体ドメインから構成され、ドメインIは残基1〜165、ドメインIIは残基166〜312、ドメインIIIは残基313〜481、およびドメインIVは482〜621を包含する(Cochran et al.(2004)J.Immunol.Methods,287,147−158)。ドメインIおよびIIIは、リガンドの高親和性結合部位の形成に寄与することが示唆されている。ドメインIIおよびIVは、タンパク質の折り畳みを安定化させ、可能なEGFR二量体形成面を含有する、高システインのラミニン様領域である。
【0037】
バイオマーカー
KRAS遺伝子におけるある特定の突然変異が、抗体等のEGFR阻害剤に対する非応答性の前兆であることが見出された。例えば、Freemanらに対する米国特許第US2008/0293055号“KRAS mutations and Anti−EGFR Antibody Therapy”を参照されたく、この内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。G12S、G12V、G12D、G12A、G12C、G13A、G13D、およびT20Mを含むがこれらに限定されない、多数のこのようなKRAS突然変異が識別されている。
【0038】
NRAS、PTEN、およびPIP3を含む、さらなるバイオマーカーは、Asghar et al.,Clin.Colorectal Cancer.,Dec.,9(5):274−81(2010)に記載される。別の可能性のあるバイオマーカーである、EGFR遺伝子コピー数は、US2007/0087394号およびUS2009/0269344号に記載され、これらの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0039】
「突然変異体EGFRポリヌクレオチド」、「突然変異体EGFRオリゴヌクレオチド」、「突然変異体EGFR核酸」という用語は、互換的に使用され、L688P、Q701H、K745N、C781R、アミノ酸771と772との間のヒスチジン挿入、T790M、L828stop、Q849R、F910L、およびV948Aから選択される、少なくとも1つのEGFR突然変異を含む、EGFRポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチドを指す。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Freemanらに対するUS2007/0048754号を参照されたい。
【0040】
「突然変異体Pl3Kポリヌクレオチド」、「突然変異体Pl3Kオリゴヌクレオチド」、および「突然変異体Pl3K核酸」という用語は、互換的に使用され、E542K、E545A、およびH1047Lから選択される少なくとも1つのPl3K突然変異を含む、Pl3Kポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチドを指す。
【0041】
「突然変異体B−Rafポリヌクレオチド」、「突然変異体B−Rafオリゴヌクレオチド」、「突然変異体B−Raf核酸」という用語は、互換的に使用され、少なくとも1つのB−Raf突然変異を有するB−Rafポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを指す。これらの突然変異は、US2009/0075267号に記載され、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0042】
本明細書に使用される際、「癌」という用語は、ヒトの癌、および癌腫、肉腫、腺腫、リンパ腫、白血病等を指し、固形腫瘍およびリンパ系癌、腎臓、胸部、肺、腎臓、膀胱、結腸、卵巣、前立腺、膵臓、胃、脳、頭頸部、皮膚、子宮、精巣、食道、および肝臓癌、非ホジキンおよびホジキンリンパ腫、白血病、ならびに多発性骨髄腫を含むリンパ腫が含まれる。「泌尿生殖器癌」とは、腎臓、膀胱、尿路、尿道、前立腺、陰茎、睾丸、外陰、膣、子宮頸部、および卵巣の組織を含むがこれらに限定されない、尿路および生殖器組織のヒト癌を指す。
【0043】
「過剰発現する」、「過剰発現」、または「過剰発現される」という用語は、通常、癌細胞において、正常細胞と比較して、検出可能に高いレベルで、転写または翻訳された遺伝子を互換的に指す。過剰発現は、したがって、タンパク質およびRNAの過剰発現(増加した転写、転写後のプロセシング、翻訳、翻訳後のプロセシング、改変された安定性、および改変されたタンパク質分解による)、ならびに変化したタンパク質輸送パターン(核局在化の増加)および例えば増加した基質の酵素加水分解にあるような機能活性の増大による局所過剰発現の両方を指す。過剰発現はまた、正常細胞または比較細胞(例えば、BPH細胞)と比較して、50%、60%、70%、80%、または90%以上であり得る。
【0044】
「癌関連抗原」または「腫瘍特異的マーカー」または「腫瘍マーカー」という用語は、正常細胞と比較して、癌細胞に選択的に発現される分子(典型的にはタンパク質、炭水化物、または脂質)を互換的に指し、これは、薬理作用剤を癌細胞に選択的に標的化するのに有用である。マーカーまたは抗原は、細胞表面上または細胞内に発現し得る。しばしば、癌関連抗原は、正常細胞と比較して癌細胞では最小限の分解で、例えば、正常細胞と比較して2倍の発現、3倍の発現、またはそれ以上で、発現または安定化される、分子である。しばしば、癌関連抗原は、癌細胞において不適切に合成される分子、例えば、正常細胞に発現する分子と比較して、欠失、付加、または突然変異を含有する分子である。さらに、癌関連抗原は、癌細胞でのみ発現され得、正常細胞で合成または発現されることはない。例示的な細胞表面腫瘍マーカーには、乳癌についてはタンパク質c−erbB−2およびヒト上皮成長因子受容体(EGFR)、前立腺癌についてはPSMA、ならびに胸部、卵巣、および結腸直腸を含む多数の癌においては炭水化物ムチンが挙げられる。
【0045】
「アゴニスト」とは、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチド(受容体等)に結合し、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドの活性または発現の刺激、増加、活性化、促進、活性化の強化、感作、または上方調節を行う、薬剤を指す。
【0046】
「アンタゴニスト」とは、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドの発現を阻害するか、または本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドに結合して、部分的または全面的に、その活性の刺激の遮断、減少、阻止、活性化の遅延、不活性化、脱感作、または下方調節を行う、薬剤を指す。
【0047】
「有機小分子」は、約50ダルトンを超えて約2500ダルトン未満、好ましくは約2000ダルトン未満、好ましくは約100〜約1000ダルトン、より好ましくは約200〜約500ダルトンの分子量を有する、天然または合成のいずれかの有機分子を指す。
【0048】
細胞毒性剤には、「細胞周期特異的」または「抗有糸分裂性」または「細胞骨格相互作用性」薬剤が含まれる。これらの用語は、互換的に、有糸分裂中の細胞を遮断する任意の薬理作用剤を指す。このような薬剤は、化学療法に有用である。一般的に、細胞周期特異的薬物は、細胞骨格タンパク質チューブリンに結合し、チューブリンがマイクロチューブリンに重合する能力を遮断し、その結果、分裂中期で細胞分裂を停止させる。例示的な細胞周期特異的薬物には、ビンカアルカロイド、タキサン、コルヒチン、およびポドフィロトキシンが挙げられる。例示的なビンカアルカロイドには、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、およびビノレルビンが挙げられる。例示的なタキサンには、パクリタキセルおよびドセタキセルが挙げられる。細胞骨格相互作用性薬物の別の例には、2メトキシエストラジオールが挙げられる。
【0049】
「siRNA」または「RNAi」は、二本鎖RNAを形成する核酸を指し、この二本鎖RNAは、遺伝子または標的遺伝子の発現を、siRNAが同じ遺伝子または標的遺伝子内に発現する場合、低減または阻害する能力を有する。「siRNA」または「RNAi」は、したがって、相補鎖によって形成される二本鎖RNAを指す。ハイブリダイズして二本鎖分子を形成するsiRNAの相補性部分は、典型的に、実質的または完全な同一性を有する。一実施形態において、siRNAは、標的遺伝子と実質的または完全な同一性を有し、二本鎖siRNAを形成する、核酸を指す。典型的に、siRNAは、長さが少なくとも約15〜50ヌクレオチドであり、例えば、二本鎖siRNAの各相補配列は、長さが15〜50ヌクレオチドであり、二本鎖siRNAは、長さが約15〜50塩基対、好ましくは約20〜30塩基ヌクレオチド、好ましくは長さが約20〜25または約24〜29ヌクレオチドであり、例えば、長さが20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30ヌクレオチドである。
【0050】
所望の治療遺伝子のコードおよび制御配列を含有する好適なベクターの構築は、標準的な連結および制限技術を採用し、これらは当該技術分野で十分に理解されている(例えば、Maniatis et al.,in Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York(1982)を参照されたい)。単離プラスミド、DNA配列、または合成オリゴヌクレオチドを、開裂し、適合させ、所望される形態に再連結させる。
【0051】
核酸は、別の核酸配列と機能的関係にある場合、「操作可能に結合」される。例えば、プレ配列または分裂リーダーに対するDNAは、それがポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現される場合、ポリペプチドに対するDNAに操作可能に結合され、プロモーターもしくはエンハンサーは、それが配列の転写に影響を及ぼす場合、コード配列に操作可能に結合される、またはリボソーム結合部位は、それが翻訳を促進するように位置される場合、コード配列に操作可能に結合される。一般的に、「操作可能に結合された」とは、結合されているDNA配列が、互いに近接しており、分泌リーダーの場合は、連続し、かつ読み取り相(reading phase)にある。しかしながら、エンハンサーは、連続である必要はない。結合は、便宜的な制限部位での連結によって達成される。このような部位が存在しない場合、合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーを、従来の慣例に従って使用する。
【0052】
2つ以上の核酸またはポリペプチド配列に関する「同一性」またはパーセント「同一性」という用語は、BLASTもしくはBLAST2.0配列比較アルゴリズムを、以下に記載のデフォルトパラメータで使用して、または手動アライメントおよびさらには目視検査を通じて測定した際に(例えば、NCBIのウェブサイトhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/等を参照されたい)、同じであるか、または特定の割合で同じアミノ酸残基もしくはヌクレオチドを有する(すなわち、比較ウインドウまたは指定領域上での最大対応について比較およびアライメントした際、特定の領域上で約60%の同一性、好ましくは65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれよりも高い同一性)、2つ以上の配列または部分配列を指す。このような配列は、結果として、「実質的に同一である」と称される。この定義はまた、試験配列の相補体を指すか、またはそれに適用することができる。この定義はまた、欠失および/または付加を有する配列、ならびに置換を有するものを含む。本明細書に記載のように、好ましいアルゴリズムは、ギャップ等を考慮し得る。好ましくは、同一性は、長さが少なくとも約25のアミノ酸もしくはヌクレオチドの領域、またはより好ましくは、長さが50〜100アミノ酸もしくはヌクレオチドの領域にわたって、存在する。
【0053】
配列比較については、典型的に、1つの配列が、参照配列として機能し、それに対して試験配列を比較する。配列比較アルゴリズムを使用する場合は、試験および参照配列をコンピュータに入力し、部分配列の座標を指定し、必要であれば、配列アルゴリズムプログラムのパラメータを指定する。好ましくは、デフォルトのプログラムパラメータが使用可能であり得るか、または代替的なパラメータを指定してもよい。配列比較アルゴリズムは、次いで、プログラムのパラメータに基づいて、参照配列に対する試験配列のパーセント配列同一性を計算する。
【0054】
「比較ウインドウ」は、配列を、2つの配列が最適にアライメントされた後に、同じ連続した位置番号の参照配列と比較することができる、20〜600、通常約50〜約200、より通常には約100〜約150からなる群から選択される、連続した位置番号のうちのいずれか1つのセグメントへの参照を含む。比較のための配列のアライメント方法は、当該技術分野で周知である。比較のための配列の最適なアライメントは、例えば、Smith&Waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局所相同性アルゴリズムによって、Needleman&Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)の相同性整列アルゴリズムによって、Pearson&Lipman,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 85:2444(1988)の類似性検索方法によって、これらのアルゴリズムのコンピュータによる実装によって(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,Wis.におけるGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)、または手動アライメントおよび目視検査によって(例えば、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubel et al.,eds.1995 supplement)を参照されたい)、実行することができる。
【0055】
パーセント配列同一性および配列類似性を判定するのに好適な好ましいアルゴリズム例は、BLASTおよびBLAST2.0アルゴリズムであり、これらは、それぞれAltschul et al.,Nuc.Acids Res.25:3389−3402(1977)およびAltschul et al.,J.Mol.Biol.215:403−410(1990)に記載されている。BLASTおよびBLAST2.0を、本明細書に記載のパラメータで使用して、本発明の核酸およびタンパク質のパーセント配列同一性を判定する。BLAST分析を行うためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)から公的に入手可能である。このアルゴリズムは、まず、クエリ配列中の長さWの短い文字列を識別することによって、高スコアの配列ペア(HSP)を識別することを伴い、これは、データベース配列中の同じ長さの文字列とアライメントしたときに、何らかの正の値の閾値スコアTと一致するか、またはそれを満たすかのいずれかである。Tは、検索用文字列スコア閾値を指す(Altschul et al.(上記))。これらの初期検索用文字列の一致が、それらを含有するより長いHSPを発見するための初期検索の元として機能する。文字列の一致は、累積アライメントスコアが増加し得る限り、各配列に沿って両方向に伸長される。累積スコアは、ヌクレオチド配列については、パラメータM(1つのペアの一致残基に対するリワードスコア、常に>0)およびN(不一致残基に対するペナルティスコア、常に<0)を使用して計算する。アミノ酸配列については、スコアマトリックスを使用して、累積スコアを計算する。文字列一致の各方向への伸長は、累積アライメントスコアが、その最大達成値から数X減少した場合、累積スコアが、1つ以上の負のスコアの残基のアライメントの蓄積のためにゼロ以下になった場合、またはいずれかの配列の末端に到達した場合に、中断される。BLASTアルゴリズムのパラメータW、T、およびXは、アライメントの感度および速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列について)は、文字列の長さ(W)11、期待値(E)10、M=5、N=−4、および両鎖の比較を、デフォルトとして使用する。アミノ酸配列については、BLASTPプログラムは、文字列の長さ3、期待値(E)10を、BLOSUM62スコアマトリックス(Henikoff&Henikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.USA89:10915(1989)を参照されたい)は、アライメント(B)50、期待値(E)10、M=5、N=−4、および両鎖の比較を、デフォルトとして使用する。
【0056】
「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、一本鎖および二本鎖両方のヌクレオチドポリマーを含む。ポリヌクレオチドを含むヌクレオチドは、リボヌクレオチドもしくはデオキシリボヌクレオチド、またはいずれかの種類のヌクレオチドの修飾形態であり得る。前記修飾には、ブロモウリジンおよびイノシン誘導体等の塩基修飾、2’,3’−ジデオキシリボース等のリボース修飾、ならびにホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロスレノエート(phosphoroselenoate)、ホスホロジセレノエート(phosphorodiselenoate)、ホスホロアニロチオエート(phosphoroanilothioate)、ホスホロアニラデート(phoshoraniladate)、およびホスホロアミダート等のヌクレオチド間結合修飾が挙げられる。
【0057】
「オリゴヌクレオチド」という用語は、200以下のヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを意味する。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、長さが10〜60塩基である。他の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、長さが12、13、14、15、16、17、18、19、または20〜40ヌクレオチドである。オリゴヌクレオチドは、例えば、突然変異体遺伝子の構築に使用するために、一本鎖または二本鎖であり得る。オリゴヌクレオチドは、センスまたはアンチセンスのオリゴヌクレオチドであってもよい。オリゴヌクレオチドは、検出アッセイのための放射標識、蛍光標識、ハプテン、または抗原標識を含む、標識を含み得る。オリゴヌクレオチドは、例えば、PCRプライマー、クローニングプライマー、またはハイブリダイゼーションプローブとして使用することができる。
【0058】
「単離された核酸分子」とは、単離ポリヌクレオチドが天然に見られるポリヌクレオチドの全てまたは一部分と関連しないか、または天然には結合しないポリヌクレオチドに結合している、ゲノム、mRNA、cDNA、もしくは合成起源、またはそれらの何らかの組み合わせのDNAまたはRNAを意味する。本開示の目的に対しては、特定のヌクレオチド配列を「含む核酸分子」は、インタクトな染色体を包含しないことを理解されたい。指定された核酸配列を「含む」単離された核酸分子は、指定された配列に加えて、最大10またはさらには最大20の他のタンパク質またはその部分に対するコード配列を含み得るか、または引用された核酸配列のコード領域の発現を制御する操作可能に結合された調節配列を含み得る、および/またはベクター配列を含み得る。
【0059】
別段の指定がない限り、本明細書に記載のあらゆる一本鎖ポリヌクレオチド配列の左手末端は、5’末端であり、二本鎖ポリヌクレオチド配列の左手方向は、5’方向と称される。新生RNA転写物の5’から3’への付加方向は、転写方向と称され、RNA転写物と同じ配列を有し、5’から5’末端へのRNA転写であるDNA鎖上の配列領域は、「上流配列」と称され、RNA転写物と同じ配列を有し、3’から3’末端へのRNA転写であるDNA鎖上の配列領域は、「下流配列」と称される。
【0060】
「制御配列」という用語は、それが連結されるコード配列の発現およびプロセシングに影響を及ぼし得るポリヌクレオチド配列を指す。このような制御配列の性質は、宿主生物に依存し得る。特定の実施形態において、原核生物の制御配列は、プロモーター、リボソーム結合部位、および転写終結配列を含み得る。例えば、真核生物の制御配列は、転写因子に対する1つまたは複数の認識部位、転写エンハンサー配列、および転写終結配列を含み得る。「制御配列」には、リーダー配列および/または融合パートナー配列が含まれ得る。
【0061】
「ベクター」とは、タンパク質コード情報を宿主細胞に移送するために使用される、任意の分子または実体(例えば、核酸、プラスミド、バクテリオファージ、またはウイルス)を意味する。
【0062】
「発現ベクター」または「発現構築物」とは、宿主細胞の形質転換に好適なベクターを指し、それに操作可能に結合された1つ以上の非相同コード領域の発現を(宿主細胞とともに)指示および/または制御する核酸配列を含有する。発現構築物には、限定されないが、転写、翻訳に影響を及ぼすか、またはそれを制御する配列、およびイントロンが存在する場合には、それに操作可能に結合されるコード領域のRNAスプライシングに影響を及ぼす配列が含まれ得る。本発明に有用な発現ベクターは、発現されるDNA配列またはフラグメントに操作可能に結合される、少なくとも1つの発現制御配列を含有する。制御配列は、クローニングされたDNA配列の発現を制御および調節するために、ベクター内に挿入される。有用な発現制御配列の例は、lac系、trp系、tac系、trc系、λファージの主要オペレーターおよびプロモーター領域、fdコートタンパク質の制御領域、酵母の解糖プロモーター、例えば、3−ホスホグリセラートキナーゼのプロモーター、酵母酸性ホスファターゼのプロモーター、例えばPho5、酵母α接合因子のプロモーター、ならびにポリオーマ、アデノウイルス、レトロウイルス、およびシミアンウイルスに由来するプロモーター、例えば、早期および後期プロモーターまたはSV40、ならびに原核生物または真核生物細胞、およびそれらのウイルスまたはそれらの組み合わせの遺伝子の発現を制御することが既知の他の配列である。
【0063】
本明細書に使用される際、「操作可能に結合された」とは、この用語が適用される構成要素が、好適な条件下において、それらがそれら特有の機能を実行することを可能にする関係にあることを意味する。例えば、タンパク質コード配列に「操作可能に結合された」ベクター内の制御配列は、タンパク質コード配列の発現が、制御配列の転写活性と適合性のある条件下において達成されるように、そこに連結される。
【0064】
「宿主細胞」という用語は、核酸配列で形質転換されているか、または形質転換することが可能であり、それによって、目的の遺伝子を発現する細胞を意味する。この用語には、親細胞の子孫が含まれ、目的の遺伝子が存在している限り、この子孫が、元の親細胞と同一の形態学または遺伝子構造であるかどうかにかかわらない。
【0065】
「トランスフェクション」という用語は、細胞による外来性または外因性のDNAの取り込みを意味し、外因性DNAが細胞膜の中に導入されている場合、細胞は「トランスフェクト」されている。多数のトランスフェクション技術が、当該技術分野で周知であり、本明細書に記載される。例えば、Graham et al.,1973,Virology
52:456、Sambrook et al.,2001,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(上記)、Davis et al.,1986,Basic Methods in Molecular Biology,Elsevier、Chu et al.,1981,Gene
13:197を参照されたい。このような技術を使用して、1つ以上の外因性DNA部分を好適な宿主細胞に導入することができる。
【0066】
「形質転換」という用語は、細胞の遺伝子特性における変化を指し、細胞は、新しいDNAまたはRNAを含有するように修飾されている場合、形質転換されている。例えば、細胞は、トランスフェクション、形質導入、または他の技術を介して、新しい遺伝物質を導入することにより、その天然の状態から遺伝子的に修飾されている場合、形質転換されている。トランスフェクションまたは形質導入の後に、形質転換DNAは、細胞の染色体に物理的に統合することによって細胞のものと再結合し得るか、または複製されることなくエピソーム要素として一時的に維持され得るか、またはプラスミドとして独立して複製され得る。細胞は、形質転換DNAが、細胞分裂により複製される場合、「安定に形質転換」されていると考えられる。
【0067】
「ポリペプチド」または「タンパク質」という用語は、天然のタンパク質のアミノ酸配列を有する巨大分子、すなわち、天然または非組み換えの細胞によって生成されるタンパク質を意味するか、あるいは、それは、遺伝子組み換えまたは組み換え細胞によって生成され、天然のタンパク質のアミノ酸配列を有する分子、または天然の配列の1つ以上のアミノ酸の欠失、そこへの付加、および/もしくはその置換を有する分子を含む。この用語にはまた、1つ以上のアミノ酸が、対応する天然のアミノ酸およびポリマーの化学的類似体である、アミノ酸ポリマーが含まれる。「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、具体的には、抗原結合タンパク質の1つ以上のアミノ酸からの欠失、そこへの付加、および/またはその置換を有する、EGFR抗原結合タンパク質、抗体、または配列を包含する。「ポリペプチドフラグメント」という用語は、全長の天然タンパク質と比較した際に、アミノ末端の欠失、カルボキシル末端の欠失、および/または内部欠失を有する、ポリペプチドを指す。このようなフラグメントはまた、天然のタンパク質と比較して修飾されたアミノ酸を含有する。ある特定の実施形態において、フラグメントは、約5〜500のアミノ酸長である。例えば、フラグメントは、少なくとも5、6、8、10、14、20、50、70、100、110、150、200、250、300、350、400、または450のアミノ酸長であってもよい。有用なポリペプチドフラグメントには、結合ドメインを含む、抗体の免疫学的機能性フラグメントが含まれる。EGFR結合抗体の場合、有用なフラグメントには、限定されないが、CDR領域、重鎖および/または軽鎖の可変ドメイン、抗体鎖の部分、または2つのCDRを含む単なるその可変領域等が含まれる。
【0068】
参照される「単離されたタンパク質」という用語は、対象のタンパク質が、(1)それが通常一緒に見られる少なくともいくつかの他のタンパク質を含まないこと、(2)同じ源に由来する、例えば、同じ種に由来する他のタンパク質を本質的に含まないこと、(3)異なる種に由来する細胞によって発現されること、(4)それが天然で関連しているポリヌクレオチド、脂質、炭水化物、または他の物質の少なくとも約50パーセントから分離していること、(5)それが天然には関連していないポリペプチドと操作可能に(共有結合または非共有結合の相互作用によって)関連していること、または(6)天然には発生しないことを意味する。典型的に、「単離されたタンパク質」は、所定の試料の少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約25%、または少なくとも約50%を構成する。ゲノムDNA、cDNA、mRNA、または他の合成起源のRNA、またはそれらの任意の組み合わせにより、このような単離タンパク質をコードすることができる。好ましくは、単離タンパク質は、実質的に、その治療的、診断的、予防的、研究的、または他の使用を妨げるであろう、その天然の環境に見られるタンパク質またはポリペプチドまたは他の混入物質を含まない。
【0069】
「アミノ酸」という用語は、天然または非天然のアミノ酸を指し、当該技術分野におけるその通常の意味を含む。
【0070】
ポリペプチドの「変異体」(例えば、抗原結合タンパク質、または抗体)には、1つ以上のアミノ酸残基が、別のポリペプチド配列に対して、アミノ酸配列に挿入、そこから欠失、および/またはそこに置換されている、アミノ酸配列が含まれる。変異体には、融合タンパク質が含まれる。
【0071】
用語「同一性」は、配列のアライメントおよび比較によって判定される、2つ以上のポリペプチド分子、または2つ以上の核酸分子の配列間の関係を指す。「パーセント同一性」とは、比較される分子におけるアミノ酸またはヌクレオチド間の同一残基の割合を意味し、比較される分子のうち最少のものの寸法に基づいて計算される。これらの計算について、アライメントにおけるギャップ(存在する場合)は、好ましくは、特定の数学モデルまたはコンピュータプログラム(すなわち、「アルゴリズム」)によって処理される。アライメントした核酸またはポリペプチドの同一性を計算するために使用可能な方法には、Computational Molecular Biology,(Lesk,A.M.,ed.),1988,New York:Oxford University Press、Biocomputing Informatics and Genome Projects,(Smith,D.W.,ed.),1993,New York:Academic Press、Computer Analysis of Sequence Data,Part I,(Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,eds.),1994,New Jersey:Humana Press、von Heinje,G.,1987,Sequence Analysis in Molecular Biology,New York:Academic Press、Sequence Analysis Primer,(Gribskov,M.and Devereux,J.,eds.),1991,New York:M.Stockton Press、およびCarillo et al.,1988,SIAM J.Applied Math.
48:1073.に記載のものが含まれる。
【0072】
パーセント同一性を計算する際、比較されている配列は、典型的に、配列間に最大の一致が得られる方法でアライメントされる。パーセント同一性を判定するために使用可能なコンピュータプログラムの1つの例は、GCGプログラムパッケージであり、これには、GAP(Devereux et al.,1984,Nucl.Acid Res.
12:387;Genetics Computer Group,University of Wisconsin,Madison,WI)が含まれる。コンピュータアルゴリズムGAPを使用して、パーセント配列同一性を判定する2つのポリペプチドまたはポリヌクレオチドをアライメントする。配列は、それらのそれぞれのアミノ酸またはヌクレオチドの最適な一致についてアライメントされる(アルゴリズムによって判定される「一致範囲」)。ギャップ開始ペナルティ(平均対角の3倍として計算され、「平均対角」は、使用されている比較マトリックスの対角の平均であり、「対角」とは、特定の比較マトリックスによる各完全なアミノ酸一致に割り当てられるスコアまたは番号である)およびギャップ伸長ペナルティ(通常、ギャップ開始ペナルティの1/10倍である)、ならびにPAM250またはBLOSUM62等の比較マトリックスを、アルゴリズムと併せて使用する。ある特定の実施形態において、標準的な比較マトリックス(例えば、PAM250の比較マトリックスについては、Dayhoff et al.,1978,Atlas of Protein Sequence and Structure 5:345−352、BLOSUM 62の比較マトリックスについては、Henikoff et al.,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89:10915−10919を参照されたい)もまた、このアルゴリズムによって使用される。
【0073】
GAPプログラムを使用したポリペプチドまたはヌクレオチド配列についてのパーセント同一性の判定に採用可能なパラメータの例は、以下である。
・ アルゴリズム:Needleman et al.,1970,J.Mol.Biol.48:443−453
・ 比較マトリックス:Henikoff et al.,1992(上記)のBLOSUM 62
・ ギャップペナルティ:12(終了ギャップはペナルティなしで)
・ ギャップ長ペナルティ:4
・ 類似性の閾値:0
【0074】
2つのアミノ酸配列をアライメントするためのある特定のアライメントスキームは、2つの配列の短い領域のみの一致をもたらす可能性があり、この短いアライメント領域は、2つの全長配列の間に有意な関係がないにもかかわらず、非常に高い配列同一性を有し得る。したがって、選択されたアライメント方法(GAPプログラム)は、標的ポリペプチドのうち少なくとも50または他の数の連続したアミノ酸に及ぶアライメントをもたらすことが所望される場合、調整することができる。
【0075】
本明細書に使用される際、20の従来的な(例えば、天然に存在する)アミノ酸およびそれらの略称は、従来の慣用法に従う。Immunology−A Synthesis(2nd Ed.,E.S.Golub&D.R.Gren,Eds.,Sinauer Assoc.,Sunderland,Mass.(1991))を参照されたく、これは、いかなる目的についても参照により本明細書に組み込まれる。20の従来のアミノ酸の立体異性体(例えば、D−アミノ酸)、α、α二置換アミノ酸等の非天然のアミノ酸、N−アルキルアミノ酸、乳酸、および他の従来のアミノ酸もまた、本発明のポリペプチドの好適な構成要素であり得る。非従来的なアミノ酸の例には、4−ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸、ε−N,N,N−トリメチルリジン、ε−N−アセチルリジン、O−ホスホセリン、N−アセチルセリン、N−ホルミルメチオニン、3−メチルヒスチジン、5−ヒドロキシリジン、δ−N−メチルアルギニン、および他の同様のアミノ酸、ならびにイミノ酸(例えば、4−ヒドロキシプロリン)が挙げられる。本明細書に使用されるポリペプチドの表記において、標準的な慣用および慣例に従い、左手方向はアミノ末端方向であり、右手方向はカルボキシ末端方向である。
【0076】
同様に、別段の指定のない限り、一本鎖ポリヌクレオチド配列の左手末端は、5’末端であり、二本鎖ポリヌクレオチド配列の左手方向は、5’方向と称される。新生RNA転写物の5’から3’への付加方向は、転写方向と称され、RNAと同じ配列を有し、5’から5’末端へのRNA転写である、DNA鎖上の配列領域は、「上流配列」と称され、RNAと同じ配列を有し、3’から3’末端へのRNA転写である、DNA鎖上の配列領域は、「下流配列」と称される。
【0077】
保存的アミノ酸置換は、典型的に、生物系における合成ではなく、化学的ペプチド合成によって組み込まれる、非天然のアミノ酸残基を包含し得る。これらには、ペプチド模倣物およびアミノ酸部分の他の逆転または反転形態が含まれる。
【0078】
天然に存在する残基は、共通の側鎖特性に基づいて、クラスに分類することができる。
・ 疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile
・ 中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln
・ 酸性:Asp、Glu
・ 塩基性:His、Lys、Arg
・ 鎖配向に影響を与える残基:Gly、Pro
・ 芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0079】
例えば、非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーと、別のクラスからのメンバーの交換を伴い得る。このような置換残基を、例えば、非ヒト抗体と相同であるヒト抗体、または分子の非相同領域に導入することができる。
【0080】
本抗原結合タンパク質(抗体等)を変化させる際、ある特定の実施形態によると、アミノ酸の疎水性親水性指標を考慮することができる。各アミノ酸には、その疎水性および電荷特性に基づいて、疎水性親水性指標が割り当てられている。それらは、イソロイシン(+4.5)、バリン(+4.2)、ロイシン(+3.8)、フェニルアラニン(+2.8)、システイン/シスチン(+2.5)、メチオニン(+1.9)、アラニン(+1.8)、グリシン(−0.4)、スレオニン(−0.7)、セリン(−0.8)、トリプトファン(−0.9)、チロシン(−1.3)、プロリン(−1.6)、ヒスチジン(−3.2)、グルタメート(−3.5)、グルタミン(−3.5)、アスパルテート(−3.5)、アスパラギン(−3.5)、リジン(−3.9)、およびアルギニン(−4.5)である。
【0081】
タンパク質に相互作用性生物学的機能を与えることにおける、疎水性親水性アミノ酸指標の重要性は、当該技術分野で理解されている。Kyte et al.,J.Mol.Biol.,157:105−131(1982)。ある特定のアミノ酸を、類似の疎水性親水性指標またはスコアを有する他のアミノ酸と置換し、依然として類似の生物学的活性を保持することが可能であることが既知である。疎水性親水性指標に基づいて変化させる際、ある特定の実施形態では、疎水性親水性指標が±2以内であるアミノ酸の置換が含まれる。ある特定の実施形態では、±1以内のものが含まれ、ある特定の実施形態では、±0.5以内のものが含まれる。
【0082】
同様のアミノ酸の置換は、特に、それによって作製される生物学的機能タンパク質またはペプチドが、本事例にあるように、免疫学的実施形態での使用を目的とする場合、親水性を基準として効果的行うことができることもまた、当該技術分野で理解されている。ある特定の実施形態において、その隣接するアミノ酸の親水性によって左右されるタンパク質の最大局所平均親水性は、その免疫原性および抗原性、すなわち、タンパク質の生物学的特性と相関する。
【0083】
以下の親水性値が、これらのアミノ酸残基に割り当てられている。アルギニン(+3.0)、リジン(+3.0)、アスパルテート(+3.0±1)、グルタメート(+3.0±1)、セリン(+0.3)、アスパラギン(+0.2)、グルタミン(+0.2)、グリシン(0)、スレオニン(−0.4)、プロリン(−0.5±1)、アラニン(−0.5)、ヒスチジン(−0.5)、システイン(−1.0)、メチオニン(−1.3)、バリン(−1.5)、ロイシン(−1.8)、イソロイシン(−1.8)、チロシン(−2.3)、フェニルアラニン(−2.5)、およびトリプトファン(−3.4)。類似の親水性値に基づいて変化させる際、ある特定の実施形態では、親水性値が±2以内のアミノ酸置換が含まれ、ある特定の実施形態では、±1以内のものが含まれ、ある特定の実施形態では、±0.5以内のものが含まれる。さらに、親水性に基づいて、一次アミノ酸配列からエピトープを識別することができる。これらの領域はまた、「エピトープコア領域」と称される。
【0084】
例示的なアミノ酸置換を、表1に記載する。
【0086】
「誘導体」という用語は、アミノ酸(または核酸)の挿入、欠失、または置換以外の化学修飾を含む、分子を指す。ある特定の実施形態において、誘導体は、限定されないが、ポリマー、脂質、または他の有機もしくは無機部分を含む、共有結合修飾を含む。ある特定の実施形態において、化学的に修飾された抗原結合タンパク質は、化学的に修飾されていない抗原結合タンパク質よりも優れた循環半減期を有し得る。ある特定の実施形態において、化学的に修飾された抗原結合タンパク質は、所望される細胞、組織、および/または器官に対する改善された標的能力を有し得る。いくつかの実施形態において、誘導抗原結合タンパク質は、限定されないが、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、またはポリプロピレングリコールを含む、1つ以上の水溶性ポリマーの付加を含むように、共有結合修飾される。例えば、米国特許第4,640,835号、同第4,496,689号、同第4,301,144号、同第4,670,417号、同第4,791,192号、および同第4,179,337号を参照されたい。ある特定の実施形態において、誘導抗原結合タンパク質は、モノメトキシ−ポリエチレングリコール、デキストラン、セルロース、または他の炭水化物系ポリマー、ポリ−(N−ビニルピロリドン)−ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、およびポリビニルアルコール、ならびにこのようなポリマーの混合物を含むがこれらに限定されない、1つ以上のポリマーを含む。
【0087】
ある特定の実施形態において、誘導体は、ポリエチレングリコール(PEG)のサブユニットで共有結合修飾される。ある特定の実施形態において、1つ以上の水溶性ポリマーは、誘導体の1つ以上の特異的位置、例えば、アミノ末端で結合される。ある特定の実施形態において、1つ以上の水溶性ポリマーは、誘導体の1つ以上の側鎖に無作為に結合される。ある特定の実施形態において、PEGを使用して、抗原結合タンパク質の治療能力を改善する。ある特定の実施形態において、PEGを使用して、ヒト化抗体の治療能力を改善する。ある特定のこのような方法は、例えば、米国特許第6,133,426号に説明され、これは、いかなる目的についても、参照により本明細書に組み込まれる。
【0088】
ペプチド類似体は、鋳型ペプチドのものに類似の特性を有する非ペプチド薬として、製薬業界で広く使用されている。これらの種類の非ペプチド化合物は、「ペプチド模倣体」または「ペプチド模倣物」と称される。Fauchere,J.,Adv.Drug Res.,15:29(1986)、Veber&Freidinger,TINS,p.392(1985)、およびEvans et al.,J.Med.Chem.,30:1229(1987)、これらは、いかなる目的についても参照により本明細書に組み込まれる。このような化合物は、しばしば、コンピュータによる分子モデリングを活用して開発される。治療的に有用なペプチドと構造的に類似するペプチド模倣体を使用して、類似の治療的または予防的効果を得ることができる。一般的に、ペプチド模倣物は、ヒト抗体等のパラダイムポリペプチド(すなわち、生化学的特性または薬理学的活性を有するポリペプチド)に構造的に類似であるが、当該技術分野で周知の方法によって、−−CH
2NH−−、−−CH
2S−−、−−CH
2−CH
2−−、−−CH=CH−(シス&トランス)、−−COCH
2−−、−−CH(OH)CH
2−−、および−−CH
2SO−から選択される少なくとも1つの結合によって任意に置換された1つ以上のペプチド結合を有する。ある特定の実施形態において、コンセンサス配列の1つ以上のアミノ酸の、同じ種類のD−アミノ酸との系統的置換(例えば、L−リジンの代わりにD−リジン)を用いて、より安定なペプチドを生成することができる。さらに、コンセンサス配列または実質的に同一のコンセンサス配列変異を含む、拘束性ペプチドは、当該技術分野で既知の方法によって、例えば、ペプチドを環化させる分子内ジスルフィド架橋を形成する能力のある内部システイン残基を付加することによって、生成することができる(Rizo&Gierasch,Ann.Rev.Biochem.,61:387(1992)、いかなる目的についても参照により本明細書に組み込まれる)。
【0089】
例えば、ポリペプチド、核酸、宿主細胞等の生物学的物質に関連して本明細書全体を通じて使用される「天然に存在する」という用語は、天然に見られる物質、または天然に見られる物質の形態を指す。
【0090】
本明細書に使用される「抗原結合タンパク質」(「ABP」)は、指定された標的抗原に結合する任意のタンパク質を意味する。本出願において、指定された標的抗原は、EGFRタンパク質、またはそのフラグメントもしくは領域である。「抗原結合タンパク質」には、限定されないが、抗体、および免疫学的機能性フラグメント等のその結合部分が含まれる。ペプチボディ(Peptibody)は、抗原結合タンパク質の別の例である。抗体または免疫グロブリン鎖(重鎖または軽鎖)抗原結合タンパク質の「免疫学的機能性フラグメント」(または単に「フラグメント」)は、本明細書に使用される際、全長鎖に存在するアミノ酸のうち少なくともいくつかを欠くが、依然として抗原に特異的に結合することが可能な抗体の部分(その部分がどのようにして得られたか、または合成されたかにかかわらない)を含む、抗原結合タンパク質の一種であり得る。このようなフラグメントは、それらが標的抗原に結合するという点で、生物学的に活性であり、所定のエピトープへの結合について、インタクトな抗体を含む他の抗原結合タンパク質と競合し得る。いくつかの実施形態において、フラグメントは、中和フラグメントである。いくつかの実施形態において、フラグメントは、EGFとEGFRとの間の相互作用の可能性を遮断または低減させ得る。一態様において、このようなフラグメントは、全長軽鎖または重鎖に存在する少なくとも1つのCDRを保持することになり、いくつかの実施形態では、一本の重鎖および/もしくは軽鎖、またはその部分を含むことになる。これらの生物学的に活性なフラグメントは、組み換えDNA技術によって生成することができるか、またはインタクトな抗体を含む、抗原結合タンパク質の酵素的もしくは化学的開裂によって、生成することができる。免疫学的機能性免疫グロブリンフラグメントには、限定されないが、Fab、ダイアボディ(同じ鎖上の2つのドメイン間の対合を可能にするには短すぎる、短いペプチドリンカーを介して結合される、軽鎖可変ドメインと同じポリペプチド上の重鎖可変ドメイン)、Fab’、F(ab’)
2、Fv、ドメイン抗体、および一本鎖抗体が含まれ、限定されないが、ヒト、マウス、ラット、ラクダ、またはウサギを含む、あらゆる哺乳動物源から誘導され得る。本明細書に開示される抗原結合タンパク質の機能性部分、例えば、1つ以上のCDRを、第2のタンパク質または小分子に共有結合させ、二機能特性を有するか、または長い血清半減期を有する、体内で特定の標的を対象とする治療剤を作製することができることが、さらに企図される。当業者には理解されるように、抗原結合タンパク質は、非タンパク質成分を含んでもよい。
【0091】
本明細書に記載されるある特定の抗原結合タンパク質は、抗体であるか、または抗体に由来する。ある特定の実施形態において、本抗原結合タンパク質のポリペプチド構造は、限定されないが、それぞれ、モノクローナル抗体、二特異性抗体、ミニボディ(minibody)、ドメイン抗体、合成抗体(本明細書で時に「抗体模倣体」と称される)、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、抗体融合体(本明細書で時に「抗体抱合体」と称される)、およびそれらのフラグメントを含む、抗体に基づく。いくつかの実施形態において、本抗原結合タンパク質は、結合活性体(avimer)(固く結合するペプチド)を含むか、またはそれから構成される。これらの抗原結合タンパク質を、本明細書にさらに記載する。
【0092】
「Fc」領域には、抗体のC
H1およびC
H2ドメインを含む、2つの重鎖フラグメントが含まれる。2つの重鎖フラグメントは、2つ以上のジスルフィド結合またはC
H3ドメインの疎水性相互作用によって、結合される。
【0093】
「Fabフラグメント」は、1つの軽鎖、ならびに1つの重鎖のC
H1および可変領域を含む。Fab分子の重鎖は、別の重鎖分子とジスルフィド結合を形成することができない。
【0094】
「Fab’フラグメント」は、1つの軽鎖、およびV
HドメインおよびC
H1ドメインを含有する1つの重鎖の一部分、ならびにさらにC
H1ドメインとC
H2ドメインとの間の領域を含み、そうして、鎖間ジスルフィド結合が、2つのFab’フラグメントの2つの重鎖間に形成され、F(ab’)
2分子を形成することができる。
【0095】
「F(ab’)
2フラグメント」は、2つの軽鎖、およびC
H1ドメインとC
H2ドメインとの間の定常領域の一部分を含有する2つの重鎖を含有し、そうして、鎖間ジスルフィド結合が、2つの重鎖の間に形成される。F(ab’)
2フラグメントは、したがって、2つの重鎖間のジスルフィド結合によって結合される、2つのFab’フラグメントから構成される。
【0096】
「Fv領域」は、重鎖および軽鎖の両方の可変領域を含むが、定常領域を欠いている。
【0097】
「一本鎖抗体」は、重鎖および軽鎖の可変領域がフレキシブルリンカーによって結合されて、抗原結合領域を形成する、一本のポリペプチド鎖を形成している、Fv分子である。一本鎖抗体は、国際特許出願公開第WO88/01649号、ならびに米国特許第4,946,778号および同第5,260,203号に詳細に記載され、これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0098】
「ドメイン抗体」は、重鎖の可変領域または軽鎖の可変領域のみを含有する、免疫学的機能性免疫グロブリンフラグメントである。いくつかの事例において、2つ以上のV
H領域がペプチドリンカーで共有結合され、二価ドメイン抗体がもたらされる。二価ドメイン抗体の2つのV
H領域は、同じかまたは異なる抗原を標的とし得る。
【0099】
「二価抗原結合タンパク質」または「二価抗体」は、2つの抗原結合部位を含む。いくつかの事例において、2つの結合部位は、同じ抗原特異性を有する。二価抗原結合タンパク質および二価抗体は、本明細書に記載のように二特異性であり得る。「多特異性」または「多機能性」抗体以外の二価抗体は、ある特定の実施形態において、典型的に、その結合部位のそれぞれが同一であると理解される。
【0100】
「多特異性抗原結合タンパク質」または「多特異性抗体」は、1つを上回る抗原またはエピトープを標的とするものである。
【0101】
「二特異性」、「二重特異性」、または「二機能性」抗原結合タンパク質または抗体は、それぞれ、2つの異なる抗原結合部位を有するハイブリッドの抗原結合タンパク質または抗体である。二特異性抗原結合タンパク質および抗体は、多特異性抗原結合タンパク質抗体の一種であり、ハイブリドーマの融合またはFab’フラグメントの結合を含むが、これらに限定されない、種々の方法によって生成することができる。例えば、Songsivilai and Lachmann,1990,Clin.Exp.Immunol.
79:315−321、Kostelny et al.,1992,J.Immunol.
148:1547−1553を参照されたい。二特異性抗原結合タンパク質または抗体の2つの結合部位は、同じかまたは異なるタンパク質標的上に存在し得る、2つの異なるエピトープに結合することになる。
【0102】
各個別の免疫グロブリン鎖は、典型的に、それぞれが、大体90〜110のアミノ酸から構成され、特徴的な折り畳みパターンを有する、複数の「免疫グロブリンドメイン」から構成される。これらのドメインは、抗体ポリペプチドを構成する基本単位である。ヒトの場合、IgAおよびIgDアイソタイプは、4つの重鎖および4つの軽鎖を含有し、IgGおよびIgEアイソタイプは、2つの重鎖および2つの軽鎖を含有し、IgMアイソタイプは、5つの重鎖および5つの軽鎖を含有する。重鎖C領域は、典型的に、エフェクター機能に関与し得る1つ以上のドメインを含む。重鎖定常領域ドメインの数は、アイソタイプに依存することになる。IgG重鎖は、例えば、C
H1、C
H2、およびC
H3として既知の3つのC領域ドメインを含有する。提供される抗体は、これらのアイソタイプおよびサブタイプのうち任意のものを有し得る。本発明のある特定の実施形態において、抗EGFR抗体は、IgG2またはIgG4サブタイプのものである。
【0103】
抗原結合タンパク質は、解離定数(K
d)が≦10
−7Mである場合、その標的抗原に「特異的に結合」すると言われる。抗原結合タンパク質は、K
dが≦5×10
−9Mである場合は「高い親和性」で、K
dが≦5×10
−10Mである場合は「非常に高い親和性」で、抗原に特異的に結合する。一実施形態において、本抗原結合タンパク質は、≦10
−9MのK
dを有する。一実施形態において、オフ速度は、<1×10
−5である。他の実施形態において、本抗原結合タンパク質は、約10
−9M〜10
−13MのK
dでヒトEGFRに結合し、さらに他の実施形態では、抗原結合タンパク質は、K
d≦5×10
−10で結合するであろう。当業者には理解されるように、いくつかの実施形態において、抗原結合フラグメントのいずれかまたは全てが、EGFRに特異的に結合し得る。
【0104】
抗原結合タンパク質は、1つの標的に対して、それが2つ目の標的に結合するよりも固く結合する場合、「選択的」である。
【0105】
「抗原結合領域」は、特定の抗原(例えば、パラトープ)に特異的に結合する、タンパク質またはタンパク質の部分を意味する。例えば、抗原と相互作用し、抗原結合タンパク質に抗原に対するその特異性および親和性を与えるアミノ酸残基を含有する、抗原結合タンパク質のその部分は、「抗原結合領域」と称される。抗原結合領域は、典型的に、1つ以上の相補性結合領域(CDR)を含む。ある特定の抗原結合領域にはまた、1つ以上の「フレームワーク」領域が含まれる。「CDR」は、抗原結合の特異性および親和性に寄与するアミノ酸配列である。「フレームワーク」領域は、CDRの適正な立体配座の維持を補助し、抗原結合領域と抗原との間の結合を促進することができる。構造的に、フレームワーク領域は、抗体においてCDRの間に位置し得る。
【0106】
ある特定の態様において、EGFR、例えば、ヒトEGFRに結合する組み換え抗原結合タンパク質を、提供する。この文脈において、「組み換え抗原結合タンパク質」とは、組み換え技術を使用して、すなわち、本明細書に記載される組み換え核酸の発現を通じて、作製されるタンパク質である。組み換えタンパク質の生成のための方法および技術は、当該技術分野で周知である。
【0107】
「抗体」という用語は、標的抗原への特異的結合について、インタクトな抗体と競合し得る任意のアイソタイプのインタクトな免疫グロブリンまたはそのフラグメントを指し、例えば、キメラ、ヒト化、完全ヒト、および二特異性抗体が含まれる。「抗体」は、抗原結合タンパク質の一種である。インタクトな抗体は、概して、少なくとも2つの全長重鎖および2つの全長軽鎖を含むことになるが、いくつかの事例においては、重鎖のみを含み得る、ラクダに天然に存在する抗体のように、より少ない数の鎖を含む場合がある。抗体は、単一源にのみ由来し得るか、または「キメラ」であり得、すなわち、抗体の異なる部分が、以下にさらに記載されるように、2つの異なる抗体に由来してもよい。抗原結合タンパク質、抗体、または結合フラグメントは、組み換えDNA技術、またはインタクトな抗体の酵素もしくはキメラ開裂によって、ハイブリドーマにおいて生成することができる。別段に示されない限り、「抗体」という用語には、2つの全長重鎖および2つの全長軽鎖を含む抗体に加えて、その誘導体、変異体、フラグメント、および突然変異タンパク質が含まれ、これらの例は以下に記載される。さらに、明確に除外されない限り、抗体には、モノクローナル抗体、二特異性抗体、ミニボディ、ドメイン抗体、合成抗体(本明細書で、時に「抗体模倣体」と称される)、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、抗体融合体(本明細書で、時に「抗体抱合体」と称される)、およびそれらのそれぞれのフラグメントが含まれる。いくつかの実施形態において、この用語はまた、ペプチボディを包含する。
【0108】
天然に存在する抗体の構造単位は、典型的に四量体を含む。各このような四量体は、典型的に、2つの同一なポリペプチド鎖ペアで構成され、各ペアが、1つの全長「軽」鎖(ある特定の実施形態では、約25kDa)および1つの全長「重」鎖(ある特定の実施形態では、約50〜70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部分は、典型的に抗原認識に関与する、約100〜110またはそれ以上のアミノ酸の可変領域を、典型的に含む。各鎖のカルボキシ末端部分は、典型的に、エフェクター機能に関与し得る定常領域を定義する。ヒトの軽鎖は、典型的には、κおよびλ軽鎖として分類される。重鎖は、典型的に、μ、δ、γ、α、またはεとして分類され、それぞれ、抗体のアイソタイプをIgM、IgD、IgG、IgA、およびIgEとして定義する。IgGは、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含むがこれらに限定されない複数のサブクラスを有する。IgMは、IgM1およびIgM2を含むがこれらに限定されない、サブクラスを有する。IgAは、同様に、IgA1およびIgA2を含むがこれらに限定されないサブクラスに細分化される。全長軽鎖および重鎖内で、典型的に、可変および定常領域は、約12以上のアミノ酸の「J」領域によって結合され、重鎖はまた、10多いアミノ酸の「D」領域を含む。例えば、Fundamental Immunology,Ch.7(Paul,W.,ed.,2nd ed.Raven Press,N.Y.(1989))を参照されたい(いかなる目的についても、参照によりその全体が組み込まれる)。各軽鎖/重鎖ペアの可変領域が、典型的に、抗原結合部位を形成する。
【0109】
可変領域は、典型的に、相補性決定領域またはCDRとも呼ばれる3つの超可変領域によって結合される、比較的保存されたフレームワーク領域(FR)という同じ一般構造を示す。各ペアの2つの鎖からのCDRは、典型的に、フレームワーク領域によって一列に並べられており、これは、特異的エピトープへの結合を可能にすることができる。N末端からC末端に向かって、軽鎖および重鎖の両方の可変領域は、典型的に、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、およびFR4を含む。各ドメインへのアミノ酸の割り当ては、典型的に、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1987および1991))、またはChothia&Lesk,J.Mol.Biol.,196:901−917(1987)、Chothia et al.,Nature,342:878−883(1989)の定義に従う。
【0110】
本明細書に使用される「92」の番号は、アミノ酸番号92を指すことが理解されるであろう。アミノ酸番号92は、この場合、Kabatの番号付けを使用しても、単にパニツムマブ抗体突然変異体のシグナルペプチド配列に従って直接数えても、同じであることが理解されるであろう。
【0111】
ある特定の実施形態において、抗体の重鎖は、抗体の軽鎖の非存在下で抗原に結合する。ある特定の実施形態において、抗体の軽鎖は、抗体の重鎖の非存在下で抗原に結合する。ある特定の実施形態において、抗体の結合領域は、抗体の軽鎖の非存在下で抗原に結合する。ある特定の実施形態において、抗体の結合領域は、抗体の重鎖の非存在下で抗原に結合する。ある特定の実施形態において、個々の可変領域は、他の可変領域の非存在下で、抗原に特異的に結合する。
【0112】
ある特定の実施形態において、CDRの明確な描写、および抗体の結合部位を含む残基の識別は、抗体の構造を解明すること、および/または抗体−リガンド複合体の構造を解明することによって、達成される。ある特定の実施形態において、これは、X線結晶学等、当業者に既知の種々の技法のうちのいずれかによって達成することができる。ある特定の実施形態において、種々の分析方法を、CDR領域の識別または概算に採用することができる。このような方法の例には、限定されないが、Kabatの定義、Chothiaの定義、「AbM」定義、および接触定義が挙げられる。
【0113】
Kabatの定義は、抗体における残基の番号付けの標準であり、典型的にCDR領域の識別に使用される。例えば、Johnson&Wu,Nucleic Acids Res.,
28:214−8(2000)を参照されたい。Chothiaの定義は、Kabatの定義に類似であるが、Chothiaの定義は、ある特定の構造的ループ領域の位置を考慮する。例えば、Chothia et al.,J.Mol.Biol.,196:901−17(1986)、Chothia et al.,Nature,342:877−83(1989)を参照されたい。「AbM」の定義は、抗体構造をモデル化するOxford Molecular Groupによって作られた統合された一連のコンピュータプログラムを使用する。例えば、Martin et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),86:9268−9272(1989);“AbM
TM,A Computer Program for Modeling Variable Regions of Antibodies,”Oxford,UK;Oxford Molecular,Ltdを参照されたい。AbMの定義は、“Ab Initio Protein Structure Prediction Using a Combined Hierarchical Approach,”in PROTEINS,Structure,Function and Genetics Suppl.,3:194−198(1999)に記載されるもの等、知識データベースと非経験的方法(ab initio methods)の組み合わせを使用して、一次配列から抗体の三次構造をモデル化する。コンタクトの定義は、利用可能な複合結晶構造の分析に基づく。例えば、MacCallum et al.,J.Mol.Biol.,5:732−45(1996)を参照されたい。
【0114】
慣例により、重鎖におけるCDR領域は、典型的にH1、H2、およびH3と称され、アミノ末端からカルボキシ末端への方向で、順番に番号付けされる。軽鎖におけるCDR領域は、典型的に、L1、L2、およびL3と称され、アミノ末端からカルボキシ末端への方向で、順番に番号付けされる。
【0115】
「軽鎖」という用語には、全長軽鎖および結合特異性をもたらすのに十分な可変領域配列を有するそのフラグメントが含まれる。全長軽鎖には、可変領域ドメインであるV
Lおよび定常領域ドメインであるC
Lが含まれる。軽鎖の可変領域ドメインは、ポリペプチドのアミノ末端にある。軽鎖には、κ鎖およびλ鎖が含まれる。
【0116】
本抗体またはそのフラグメントのEGFRに対する特異性は、親和性および/または結合活性に基づいて判定することができる。抗原の抗体との解離に対する平衡定数(Kd)によって表される親和性は、抗原決定基と抗体結合部位との間の結合力を測定する。結合活性は、抗体と、その抗原との間の結合力の尺度である。結合活性は、抗体上のエピトープとその抗原結合部位との間の親和性、および特定のエピトープに特異的な抗原結合部位の数を表す抗体の結合価の両方と関連する。抗体は、典型的に、10
−5〜10
−11リットル/モルの解離定数(Kd)で結合する。10
−4リットル/モルを上回る全てのKdは、概して、非特異的結合を示すと見なされる。Kdの値が低いほど、抗原決定基と抗体結合部位との間の結合力が強い。
【0117】
「重鎖」という用語には、全長重鎖および結合特異性をもたらすのに十分な可変領域配列を有するそのフラグメントが含まれる。全長重鎖には、可変領域ドメインであるV
H、ならびに3つの定常領域ドメインC
H1、C
H2、およびC
H3が含まれる。V
Hドメインは、ポリペプチドのアミノ末端にあり、C
Hドメインは、C
H3が、ポリペプチドのカルボキシ末端に最も近い状態で、カルボキシル末端に位置する。重鎖は、IgG(IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4サブタイプを含む)、IgA(IgA1およびIgA2サブタイプを含む)、IgM、およびIgEを含む、いずれのアイソタイプのものであってもよい。
【0118】
二特異性または二機能性抗体は、典型的に、2つの異なる重鎖/軽鎖ペアおよび2つの異なる結合部位を有する、人工的なハイブリッド抗体である。二特異性抗体は、限定されないが、ハイブリドーマの融合またはFab’フラグメントの結合を含む、種々の方法によって生成することができる。例えば、Songsivilai et al.,Clin.Exp.Immunol.,79:315−321(1990)、Kostelny et al.,J.Immunol.,148:1547−1553(1992)を参照されたい。
【0119】
いくつかの哺乳動物種はまた、単一の重鎖のみを有する抗体を生成する。
【0120】
各個々の免疫グロブリン鎖は、典型的に、それぞれが、大体90〜110のアミノ酸から構成され、特徴的な折り畳みパターンを有する、複数の「免疫グロブリンドメイン」から構成される。これらのドメインは、抗体ポリペプチドを構成する基本単位である。ヒトの場合、IgAおよびIgDアイソタイプは、4つの重鎖および4つの軽鎖を含有し、IgGおよびIgEアイソタイプは、2つの重鎖および2つの軽鎖を含有し、IgMアイソタイプは、5つの重鎖および5つの軽鎖を含有する。重鎖C領域は、典型的に、エフェクター機能に関与し得る1つ以上のドメインを含む。重鎖定常領域ドメインの数は、アイソタイプに依存することになる。IgG重鎖は、例えば、C
H1、C
H2、およびC
H3として既知の3つのC領域ドメインを含有する。提供される抗体は、これらのアイソタイプおよびサブタイプのうちの任意のものを有し得る。本発明のある特定の実施形態において、抗EGFR抗体は、IgG2またはIgG4サブタイプのものである。
【0121】
「可変領域」または「可変ドメイン」という用語は、抗体の軽鎖および/または重鎖の一部分を指し、典型的に、重鎖におおよそアミノ末端120〜130のアミノ酸、および軽鎖には約100〜110のアミノ末端アミノ酸を含む。ある特定の実施形態において、異なる抗体の可変領域は、同じ種の抗体間であっても、アミノ酸配列が広く異なる。抗体の可変領域が、典型的に、特定の抗体のその標的に対する特異性を決定する。
【0122】
「中和抗原結合タンパク質」または「中和抗体」という用語は、それぞれ、リガンドに結合し、リガンドの結合パートナーへの結合を阻止または低減させる、抗原結合タンパク質または抗体を指す。これは、例えば、リガンド上の結合部位を直接的に遮断すること、またはリガンドに結合し、間接的手段(リガンドにおける構造的もしくはエネルギー的変化)を通じてリガンドの結合能力を変化させることによって、行われ得る。いくつかの実施形態において、この用語はまた、それが結合したタンパク質が生物学的機能を実行することを阻止する、抗原結合タンパク質を指し得る。抗原結合タンパク質、例えば、抗体またはその免疫学的機能性フラグメントの結合および/または特異性を評価する際、抗体またはフラグメントは、過度の抗体が、(インビトロでの競合的結合アッセイで測定される)リガンドに結合される結合パートナーの数を、少なくとも約1〜20、20〜30%、30〜40%、40〜50%、50〜60%、60〜70%、70〜80%、80〜85%、85〜90%、90〜95%、95〜97%、97〜98%、98〜99%、またはそれ以上低減させる場合、実質的に、リガンドのその結合パートナーへの結合を阻害することができる。いくつかの実施形態において、EGFR抗原結合タンパク質の場合、このような中和分子は、EGFRがEGFに結合する能力を減少させることができる。いくつかの実施形態において、中和能力は、競合アッセイを介して特徴付けられる、および/または説明される。いくつかの実施形態において、中和能力は、IC
50またはEC
50値に関して記載される。いくつかの実施形態において、本抗原結合タンパク質は、非中和抗原結合タンパク質であってもよい。
【0123】
「標的」という用語は、抗原結合タンパク質によって結合されることが可能な分子または分子の一部分を指す。ある特定の実施形態において、標的は、1つ以上のエピトープを有し得る。ある特定の実施形態において、標的は、抗原である。「抗原結合タンパク質」という語句における「抗原」の使用は、単に、抗原を含むタンパク質配列が、抗体によって結合され得ることを示す。この文脈において、タンパク質が外来性であること、または免疫応答を誘発する能力があることを必要とするものではない。
【0124】
同じエピトープについて競合する抗原結合タンパク質(例えば、中和抗原結合タンパク質または中和抗体)の関連で使用される際、「競合する」という用語は、試験されている抗原結合タンパク質(例えば、抗体またはその免疫学的機能性フラグメント)が、共通の抗原(例えば、EGFRまたはそのフラグメント)への参照抗原結合タンパク質(例えば、リガンドまたは参照抗体)の特異的結合を阻止または阻害(例えば、低減)する、アッセイによって判定される、抗原結合タンパク質間の競合を意味する。多数の種類の競合的結合アッセイを使用して、一方の抗原結合タンパク質が、もう一方と競合するかどうかを判定することができる、例えば、固相直接または間接放射免疫測定法(RIA)、固相直接または間接酵素免疫測定法(EIA)、サンドイッチ競合アッセイ(例えば、Stahli et al.,1983,Methods in Enzymology
9:242−253を参照されたい);固相直接ビオチン−アビジンEIA(例えば、Kirkland et al.,1986,J.Immunol.
137:3614−3619を参照されたい)、固相直接標識アッセイ、固相直接標識サンドイッチアッセイ(例えば、Harlow and Lane,1988,Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Pressを参照されたい);I−125標識を使用する固相直接標識RIA(例えば、Morel et al.,1988,Molec.Immunol.
25:7−15を参照されたい);固相直接ビオチン−アビジンEIA(例えば、Cheung,et al.,1990,Virology
176:546−552を参照されたい);および直接標識RIA(Moldenhauer et al.,1990,Scand.J.Immunol.
32:77−82)。典型的に、このようなアッセイは、これらの非標識試験抗原結合タンパク質および標識参照抗原結合タンパク質のうちのいずれかを有する固体表面または細胞に結合した精製された抗原の使用を伴う。競合的阻害は、試験抗原結合タンパク質の存在下で、固体表面または細胞に結合された標識の量を判定することにより測定される。通常、試験抗原結合タンパク質は、過剰に存在する。競合アッセイにより識別される抗原結合タンパク質(競合する抗原結合タンパク質)には、参照抗原結合タンパク質と同じエピトープに結合する抗原結合タンパク質、および立体障害が生じるのに十分に、参照抗原結合タンパク質によって結合されるエピトープに近位の隣接するエピトープに結合する抗原結合タンパク質が含まれる。競合的結合を判定するための方法に関するさらなる詳細は、本明細書において実施例に提供される。通常、競合する抗原結合タンパク質が過剰に存在する場合、それが、共通の抗原への参照抗原結合タンパク質の特異的結合を、少なくとも40〜45%、45〜50%、50〜55%、55〜60%、60〜65%、65〜70%、70〜75%、または75%以上阻害(例えば、低減)することになる。いくつかの事例において、結合は、少なくとも80〜85%、85〜90%、90〜95%、95〜97%、または97%以上阻害される。
【0125】
「抗原」という用語は、抗原結合タンパク質(例えば、抗体またはその免疫学的機能性フラグメントを含む)等の選択的な結合剤によって結合されることが可能な分子または分子の一部分を指す。いくつかの実施形態において、抗原を動物に使用して、その抗原に結合する能力のある抗体を生成することが可能である。抗原は、異なる抗原結合タンパク質、例えば、抗体と相互作用する能力のある1つ以上のエピトープを有し得る。
【0126】
「エピトープ」という用語には、抗体等の抗原結合タンパク質によって、またはT細胞受容体に、結合することが可能な任意の決定基が含まれる。エピトープは、その抗原を標的とする抗原結合タンパク質によって結合される、抗原の領域であり、抗原がタンパク質である場合は、抗原結合タンパク質に直接接触する特異的アミノ酸を含む。より頻繁には、エピトープは、タンパク質上に存在するが、いくつかの事例においては、核酸等の他の種類の分子上に存在し得る。エピトープ決定基は、アミノ酸、糖側鎖、ホルホリル基、またはスルホニル基等、分子の化学的に活性な表面配置を含み得、特異的な3次元構造特性および/または特異的電荷特性を有し得る。一般的に、特定の標的抗原に特異的な抗体は、タンパク質および/または巨大分子の複合混合物中で、標的抗原上のエピトープを選択的に認識することになる。
【0127】
本明細書に使用される際、「実質的に純粋」とは、記載の分子種が、存在している優勢種である、すなわち、モル基準で、それが、同じ混合物中の他の個々の種よりも、豊富であることを意味する。ある特定の実施形態において、実質的に純粋な分子は、対象の種が、存在する全巨大分子種の少なくとも50%(モル基準で)を構成する、組成物である。他の実施形態において、実質的に純粋な組成物は、その組成物中に存在する全巨大分子種の少なくとも80%、85%、90%、95%、または99%を構成することになる。他の実施形態において、対象の種は、従来の検出方法では混入種を組成物中に検出することができず、そのため、組成物が単一の検出可能な巨大分子種からなる、本質的な均質性まで精製される。
【0128】
「薬剤」という用語は、化学化合物、化学化合物の混合物、生物学的巨大分子、または生物学的物質から得られた抽出物を指して本明細書に使用される。
【0129】
本明細書に使用される際、「標識」または「標識された」という用語は、例えば、放射標識されたアミノ酸の組み込み、またはマーカーされたアビジン(例えば、光学もしくは比色分析方法によって検出することができる蛍光マーカーもしくは酵素活性を含有するストレプトアビジン)によって検出されるビオチン部分のポリペプチドへの付加による、検出可能マーカーの組み込みを指す。ある特定の実施形態において、標識またはマーカーもまた、治療的であり得る。ポリペプチドおよび糖タンパク質を標識する種々の方法が、当該技術分野で既知であり、使用可能である。ポリペプチドに対する標識の例には、次のものが含まれるが、これらに限定されない:放射性同位体または放射性核種(例えば、
3H、
14C、
15N、
35S、
90Y、
99Tc、
111In、
125I、
131I)、蛍光標識(例えば、FITC、ローダミン、ランタニド、蛍光体)、酵素標識(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、化学発光、ビオチニル基、二次レポーターによって認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパーペア配列、二次抗体の結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)。ある特定の実施形態において、標識は、種々の長さのスペーサーアームによって付加され、潜在的な立体障害を減少させる。
【0130】
「生物学的試料」という用語は、本明細書に使用される際、限定されないが、生物またはかつて生物であったものに由来する、任意の量の物質を含む。このような生物には、限定されないが、ヒト、マウス、サル、ラット、ウサギ、および他の動物が含まれる。このような物質には、限定されないが、血液、血清、尿、細胞、器官、組織、骨、骨髄、リンパ節、および皮膚が含まれる。
【0131】
本明細書に使用される「薬学的薬剤組成物」(または薬剤もしくは薬物)は、患者に適正に投与されると、所望の治療的効果を誘発する能力のある、化学化合物、組成物、薬剤、または薬物を指す。それは、必ずしも1種類を上回る成分を要するわけではない。
【0132】
「治療有効量」および「治療有効用量」という用語は、哺乳動物において治療的応答をもたらすように決定される、EGFR抗原結合タンパク質の量を指す。このような治療有効量は、当業者によって容易に確定される。実際の用量および剤形は、治療目的に依存することになり、既知の技術を使用して当業者によって確定することができるであろう(例えば、Lieberman,Pharmaceutical Dosage Forms(vols.1−3,1992)、Lloyd,The Art,Science and Technology of Pharmaceutical Compounding(1999)、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Edition,Gennaro,Editor(2003)、およびPickar,Dosage Calculations(1999)を参照されたい)。
【0133】
「薬学的に許容される塩」または「薬学的に許容される担体」という用語は、本明細書に記載の化合物に見られる特定の置換基に応じて、比較的非毒性の酸または塩基を用いて調製される活性化合物の塩を含むことを意味する。
【0134】
「調節剤」という用語は、本明細書に使用される際、分子の活性または機能を変更または変化させる化合物である。例えば、調節剤は、分子のある特定の活性または機能の規模を、調節剤の非存在下で観察される活性または機能の規模と比較して、増加または減少させることができる。ある特定の実施形態において、調節剤は、分子の少なくとも1つの活性または機能の規模を減少させる、阻害剤である。分子のある特定の例示的な活性および機能には、限定されないが、結合親和性、酵素活性、およびシグナル変換が含まれる。ある特定の例示的な阻害剤には、限定されないが、タンパク質、ペプチド、抗体、ペプチボディ、炭水化物、または有機小分子が含まれる。ペプチボディは、例えば、米国特許第6,660,843号(対応するPCT出願第WO01/83525号)に記載される。
【0135】
「患者」および「対象」という用語は、互換的に使用され、ヒトおよび非ヒト動物対象、ならびに障害が正式に診断されたもの、障害が正式に認識されていないもの、治療を受けているもの、障害が発症する危険性にあるもの等が含まれる。
【0136】
「治療する」および「治療」という用語には、治療的治療、予防的治療、および対象が障害を発症する危険性または他の危険因子を減少させる適用が含まれる。治療は、障害の完全な治癒を必要とするものではなく、症状または潜在的な危険因子を減少させる実施形態を包含する。
【0137】
「予防」という用語は、ある事象の可能性の100%の排除を必要とするものではない。むしろ、事象の発生の可能性が、本化合物または方法の存在下で低減されていることを指す。
【0138】
標準的な技術を、組み換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、ならびに組織の培養および形質転換(例えば、電気穿孔、リポフェクション)に使用することができる。酵素反応および精製技術は、製造業者の説明書に従って、または当該技術分野で広く達成されるように、または本明細書に記載のように、実行することができる。前述の技術および手順は、概して、当該技術分野で周知の従来的な方法に従って、また、本明細書を通じて引用および記載される種々の一般的およびより具体的な参考文献に記載のように、行うことができる。例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989))を参照されたく、これは、いかなる目的についても参照により本明細書に組み込まれる。具体的な定義が提供されない限り、本明細書に記載の分析化学、合成有機化学、ならびに医薬品化学および薬化学に関して利用される、命名ならびにその実験室手順および技術は、当該技術分野で周知かつ広く使用されるものである。標準的な技術を、化学合成、化学分析、医薬品、剤形、および送達、ならびに患者の治療に使用することができる。
【0139】
ヒトEGFRを含む、EGFRに結合する抗原結合タンパク質(ABP)を、本明細書に提供する。いくつかの実施形態において、提供される抗原結合タンパク質は、本明細書に記載のように、1つ以上の相補性決定領域(CDR)を含む、ポリペプチドである。いくつかの抗原結合タンパク質においては、CDRは、CDR(複数を含む)の適正な抗原結合特性が達成されるようにCDRを配置する、「フレームワーク」領域内に埋め込まれる。いくつかの実施形態において、本明細書に提供される抗原結合タンパク質は、EGFRとEGFとの間の相互作用を妨害、遮断、低減、または調節することができる。このような抗原結合タンパク質は、「中和」と称される。いくつかの実施形態において、中和抗原結合タンパク質は、EGFRがEGFに結合するのを阻止する位置および/または方法で、EGFRに結合する。
【0140】
いくつかの実施形態において、本明細書に提供される抗原結合タンパク質は、EGFR媒介性活性(結合を含む)を阻害する能力がある。いくつかの実施形態において、これらのエピトープに結合する抗原結合タンパク質は、とりわけ、EGFRとEGFの間の相互作用、およびEGFRによって媒介される他の生理学的作用を阻害する。いくつかの実施形態において、本抗原結合タンパク質は、EGFRに対するヒト抗体、例えば、完全ヒト抗体である。
【0141】
いくつかの実施形態において、本抗原結合タンパク質は、EGFRの触媒ドメインに結合する。いくつかの実施形態において、本抗原結合タンパク質は、EGFRの成熟形態に結合する。いくつかの実施形態において、本抗原結合タンパク質は、EGFRのプロドメインに結合する。いくつかの実施形態において、本抗原結合タンパク質は、EGFRの成熟形態に選択的に結合する。いくつかの実施形態において、本抗原結合タンパク質は、EGFRがEGFに結合できないか、またはそれほど効果的に結合できないような方法で、触媒ドメインに結合する。いくつかの実施形態において、本抗原結合タンパク質は、触媒ドメインのC末端には結合しない。いくつかの実施形態において、本抗原結合タンパク質は、触媒ドメインのn末端には結合しない。いくつかの実施形態において、本抗原結合タンパク質は、EGFRタンパク質のNまたはC末端には結合しない。いくつかの実施形態において、本抗原結合タンパク質は、本明細書に説明される抗体によって結合されるエピトープのうちのいずれか1つに結合する。いくつかの実施形態において、これは、本明細書に開示される抗体と他の抗体との間の競合アッセイによって判定することができる。いくつかの実施形態において、本抗原結合タンパク質は、本明細書に記載の抗体のうちの1つによって結合されるエピトープに結合する。いくつかの実施形態において、本抗原結合タンパク質は、EGFRがEGFと相互作用するのを阻止するように、EGFRの特異的な立体配座状態に結合する。
【0142】
本明細書に開示される抗原結合タンパク質は、種々の有用性を有する。抗原結合タンパク質のうちのいくつかは、例えば、特異的結合アッセイ、EGFR、特にヒトEGFRまたはそのリガンドの親和性精製、ならびにEGFR活性の他のアンタゴニストを識別するためのスクリーニングアッセイにおいて、有用である。抗原結合タンパク質のうちのいくつかは、EGFRのEGFへの結合を阻害するか、またはEGFR媒介性活性を阻害するのに有用である。
【0143】
本抗原結合タンパク質は、本明細書に説明される、種々の治療用途において使用可能である。例えば、いくつかの実施形態において、本EGFR抗原結合タンパク質は、本明細書にさらに記載されるように、癌等、EGFおよび/またはEGFRと関連する疾患および病状の治療に有用である。
【0144】
いくつかの実施形態において、提供される抗原結合タンパク質は、1つ以上のCDR(例えば、1、2、3、4、5、または6つのCDR)を含む。いくつかの実施形態において、本抗原結合タンパク質は、(a)ポリペプチド構造、および(b)ポリペプチド構造に挿入および/または結合された1つ以上のCDRを含む。ポリペプチド構造は、種々の異なる形態をとることができる。例えば、それは、天然に存在する抗体、またはそのフラグメントもしくは変異体のフレームワークであるか、またはそれを含んでもよく、あるいは、事実上完全に合成であってもよい。種々のポリペプチド構造の例は、以下にさらに記載される。
【0145】
ある特定の実施形態において、抗原結合タンパク質のポリペプチド構造は、限定されないが、それぞれ、モノクローナル抗体、二特異性抗体、ミニボディ、ドメイン抗体、合成抗体(本明細書でときに「抗体模倣体」と称される)、キメラ抗体、ヒト化抗体、抗体融合体(本明細書で時に「抗体抱合体」と称される)、およびそれぞれの部分またはフラグメントを含む、抗体であるか、または抗体に由来するものである。いくつかの事例において、本抗原結合タンパク質は、抗体の免疫学的フラグメント(例えば、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)
2フラグメント、Fvフラグメント、ダイアボディ、またはscFv等の一本鎖抗体分子)である。
【0146】
抗原結合タンパク質を治療用途に使用する実施形態において、抗原結合タンパク質は、EGFRの1つ以上の生物学的活性を阻害、妨害、または調節することができる。一実施形態において、抗原結合タンパク質は、ヒトEGFRに特異的に結合する、および/または、実質的に、ヒトEGFRのEGFへの結合を、(例えば、インビトロでの競合的結合アッセイで結合を測定することより)少なくとも約20%〜40%、40〜60%、60〜80%、80〜85%、またはそれ以上阻害する。本明細書に提供される抗原結合タンパク質のうちのいくつかは、抗体である。いくつかの実施形態において、本抗原結合タンパク質は、10
−7、10
−8、10
−9、10
−10、10
−11、10
−12、10
−13M未満のK
dを有する(より固く結合する)。いくつかの実施形態において、本抗原結合タンパク質は、EGFとEGFRとの結合の遮断に対するIC
50が、1μM未満、1000nM〜100nM、100nM〜10nM、10nM〜1nM、1000pM〜500pM、500pM〜200pM、200pM未満、200pM〜150pM、200pM〜100pM、100pM〜10pM、10pM〜1pMである。
【0147】
いくつかの実施形態において、本抗原結合タンパク質は、EGFRがEGFと相互作用することを阻止するように、EGFRの特異的な立体配座状態に結合する。
【0148】
ヒト化抗原結合タンパク質(例えば、抗体)
本明細書に記載のように、EGFRに対する抗原結合タンパク質は、ヒト化抗体および/またはその部分を含み得る。このような戦略の重要な実際の適用は、マウス体液性免疫系の「ヒト化」である。
【0149】
ある特定の実施形態において、ヒト化抗体は、ヒトにおいて実質的に非免疫原性である。ある特定の実施形態において、ヒト化抗体は、標的に対する親和性が、そのヒト化抗体が由来する別の種由来の抗体と、実質的に同じである。例えば、米国特許第5,530,101号、米国特許第5,693,761号、米国特許第5,693,762号、米国特許第5,585,089号を参照されたい。
【0150】
ある特定の実施形態において、その免疫原性を低減させると同時に、抗原結合ドメインの本来の親和性を損なうことなく、修飾することが可能な抗体可変ドメインのアミノ酸を、識別する。例えば、米国特許第5,766,886号、および同5,869,619号を参照されたい。
【0151】
ある特定の実施形態において、当該技術分野で既知の方法による抗体の修飾は、典型的に、標的に対する結合親和性の増加を達成する、および/またはレシピエントにおける抗体の免疫原性を低減させるように設計される。ある特定の実施形態において、ヒト化抗体は、その同種抗原に対する抗体の親和性を増加させるために、グリコシル化部位を排除するように修飾される。例えば、Co et al.,Mol.Immunol.,30:1361−1367(1993)を参照されたい。ある特定の実施形態において、「再形成」、「ハイパーキメラ化」、または「ベニアリング/表面再構成」等の技術を使用して、ヒト化抗体が生成される。例えば、Vaswami et al.,Annals of Allergy,Asthma,&Immunol.81:105(1998)、Roguska et al.,Prot.Engin.,9:895−904(1996)、および米国特許第6,072,035号を参照されたい。ある特定のこのような実施形態において、このような技術は、典型的に、外来性残基の数を低減させることによって、抗体の免疫原性を低減させるが、抗体の反復投与後の抗イディオタイプおよび抗アロタイプ応答を阻止するものではない。免疫原性を低減させるためのある特定の他の方法は、例えば、Gilliland et al.,J.Immunol.,62(6):3663−71(1999)に記載される。
【0152】
ある特定の事例において、抗体をヒト化することは、抗原結合能力の損失をもたらす。ある特定の実施形態において、ヒト化抗体は、「逆突然変異」される。ある特定のこのような実施形態において、ヒト化抗体は、ドナー抗体に見られるアミノ酸残基のうち1つ以上を含むように突然変異される。例えば、Saldanha et al.,Mol.Immunol.36:709−19(1999)を参照されたい。
【0153】
ある特定の実施形態において、EGFRに対する抗体の軽鎖および重鎖可変領域の相補性決定領域(CDR)は、同じかまたは別の種由来のフレームワーク領域(FR)にグラフトされ得る。ある特定の実施形態において、EGFRに対する抗体の軽鎖および重鎖可変領域のCDRは、コンセンサスヒトFRにグラフトされ得る。コンセンサスヒトFRを作製するために、ある特定の実施形態においては、複数のヒト重鎖または軽鎖アミノ酸配列に由来するFRを、アライメントしてコンセンサスアミノ酸配列を識別する。ある特定の実施形態において、EGFRに対する抗体の軽鎖または重鎖のFRは、異なる重鎖または軽鎖に由来するFRで置き換えられる。ある特定の実施形態において、EGFRに対する抗体の重鎖および軽鎖のFR内の希アミノ酸は、置き換えられないが、FRアミノ酸の残りは置き換えられる。希アミノ酸は、通常はFRに見られない位置にある特異的アミノ酸である。ある特定の実施形態において、EGFRに対する抗体からグラフトされた可変領域を、EGFRに対する抗体の定常領域とは異なる定常領域とともに使用することができる。ある特定の実施形態において、グラフトされた可変領域は、一本鎖Fv抗体の一部である。CDRグラフティングは、例えば、米国特許第6,180,370号、同第6,054,297号、同第5,693,762号、同第5,859,205号、同第5,693,761号、同第5,565,332号、同第5,585,089号、および同第5,530,101号、ならびにJones et al.,Nature,321:522−525(1986)、Riechmann et al.,Nature,332:323−327(1988)、Verhoeyen et al.,Science,239:1534−1536(1988)、Winter,FEBS Letts.,430:92−94(1998)に記載され、これらは、いかなる目的に対しても参照により本明細書に組み込まれる。
【0154】
ヒト抗原結合タンパク質(例えば、抗体)
本明細書に記載のように、EGFRに結合する抗原結合タンパク質は、ヒト(すなわち、完全ヒト)抗体および/またはその部分を含み得る。ある特定の実施形態において、重鎖および軽鎖免疫グロブリン分子をコードするヌクレオチド配列、およびそれらを含むアミノ酸配列、特に可変領域に対応する配列が、提供される。ある特定の実施形態において、相補性決定領域(CDR)、特にCDR1からCDR3に対応する配列が提供される。ある特定の実施形態によると、このような免疫グロブリン分子を発現するハイブリドーマ細胞系が提供される。ある特定の実施形態によると、このようなモノクローナル抗体を発現するハイブリドーマ細胞系が提供される。ある特定の実施形態において、ヒトEGFRに対する精製されたヒトモノクローナル抗体が提供される。
【0155】
ヒトIg遺伝子座の大型フラグメントを有するマウス抗体産生が欠損したマウス株は、このようなマウスがマウス抗体の非存在下でヒト抗体を生成するであろうことを期待して、操作することができる。大型ヒトIgフラグメントは、大きく変化する遺伝子多様性、ならびに抗体の産生および発現の適正な調節を保持することができる。抗体の多様化および選択についてのマウス機構、ならびにヒトタンパク質に対する免疫学的耐性の欠如を活用することにより、これらのマウス株における再生されたヒト抗体のレパートリーは、ヒト抗原を含む、いずれの目的の抗原に対しても、高親和性の完全ヒト抗体をもたらし得る。ハイブリドーマ技術を使用して、所望の特異性を有する抗原特異的ヒトMAbを、生成および選択することができる。ある特定の例示的方法は、WO98/24893号、米国特許第5,545,807号、EP546073号、およびEP546073号に記載される。
【0156】
ある特定の実施形態において、ヒト以外の種に由来する定常領域を、ヒト可変領域(複数可)をともに使用することができる。
【0157】
酵母人工染色体(YAC)にメガベース寸法のヒト遺伝子座をクローニングおよび再構築し、それらをマウスの生殖細胞系に導入する能力は、非常に大きいかまたは大まかにマッピングされた遺伝子座の機能的要素を解明すること、ならびに有用なヒト疾患モデルを生成することへのアプローチを提供する。さらに、マウス遺伝子座をそれらのヒト相当物と置換するこのような技術の有用性は、展開中のヒト遺伝子生成物の発現および調節、それらと他のシステムとの通信、ならびにそれらの疾患の発症および進行への関与についての見識を提供し得る。
【0158】
ヒト抗体は、マウスまたはラットの可変および/または定常領域を有する抗体に関連する問題のうちのいくつかを回避する。このようなマウスまたはラット由来のタンパク質の存在は、抗体の急速なクリアランスをもたらし得るか、または患者による抗体に対する免疫応答の生成をもたらし得る。マウスまたはラット由来の抗体の利用を回避するためには、齧歯動物、他の哺乳動物、または動物が、完全ヒト抗体を生成できるように、齧歯類、他の哺乳動物、または動物に機能性ヒト抗体遺伝子座を導入することによって、完全ヒト抗体を生成することができる。
【0159】
ヒト化抗体は、最初はヒトではない抗体のアミノ酸配列を含有することから開始するが、これらの非ヒト抗体のアミノ酸配列のうち少なくともいくつかが、ヒト抗体の配列と置き換えられている、抗体である。これは、抗体が、ヒトが有する遺伝子によってコードされる(またはコードされることが可能な)ヒト抗体とは対照的である。
【0160】
抗原結合タンパク質変異体
提供される他の抗体は、本明細書に記載の可変重鎖および可変軽鎖の組み合わせまたは一部分(subpart)により形成される、上に列挙された抗原結合タンパク質の変異体であり、それぞれがこれらの配列のアミノ酸配列(全配列または配列の一部分のいずれか、例えば、1つ以上のCDR)と、少なくとも50%、50〜60、60〜70、70〜80%、80〜85%、85〜90%、90〜95%、95〜97%、97〜99%、または99%を上回る同一性を有する、可変軽鎖および/または可変重鎖を含む。いくつかの事例において、このような抗体は、少なくとも1つの重鎖および1つの軽鎖を含むが、一方で他の事例においては、変異体形態は、2つの同一の軽鎖および2つの同一の重鎖(またはその一部分)を含有する。
【0161】
ある特定の実施形態において、本抗原結合タンパク質は、配列番号3、配列番号4、配列番号5、または配列番号6に記載のアミノ酸配列と、少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態において、抗原結合タンパク質は、配列番号3、配列番号4、配列番号5、または配列番号6に記載のアミノ酸配列と、少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態において、抗原結合タンパク質は、配列番号3、配列番号4、配列番号5、または配列番号6に記載のアミノ酸配列と、少なくとも99%同一のアミノ酸配列を含む。
【0162】
いくつかの実施形態において、抗原結合タンパク質は、配列番号3、配列番号4、配列番号5、または配列番号6に列挙される1つ以上CDRと、少なくとも90%、90〜95%、および/または95〜99%同一である、配列を含む。
【0163】
本発明を踏まえると、当業者は、周知の技術を使用して、本明細書に記載の抗原結合タンパク質の好適な変異体を決定することができるであろう。ある特定の実施形態において、当業者は、活性に重要ではないと思われる領域を標的とすることにより、活性を破壊することなく変更することができる、分子の好適な領域を識別することができる。ある特定の実施形態において、類似のポリペプチドにおいて保存される残基および分子の部分を識別することができる。ある特定の実施形態においては、生物学的活性または構造に重要であり得る範囲でさえも、生物学的活性を破壊することなく、またはポリペプチド構造に悪影響を与えることなく、保存的アミノ酸置換の対象となり得る。
【0164】
さらに、当業者は、活性または構造に重要である、類似のポリペプチド内の残基を識別する、構造機能研究を検討することができる。このような比較を考慮して、類似のタンパク質において活性または構造に重要であるアミノ酸残基に対応するタンパク質内のアミノ酸残基の重要性を、予測することができる。当業者は、このような予測された重要なアミノ酸残基に対して、化学的に類似のアミノ酸置換を選択することができる。
【0165】
当業者はまた、三次元構造およびアミノ酸配列を、類似の抗原結合タンパク質におけるその構造に関連して、分析することができる。このような情報を考慮して、当業者は、抗体のアミノ酸残基のアライメントを、その三次元構造に関して、予測することができる。ある特定の実施形態において、当業者は、タンパク質の表面上にあることが予測されるアミノ酸残基に対しては、このような残基が他の分子との重要な相互作用に関与し得ることから、根本的な変更を加えないことを選択することができる。さらに、当業者は、各所望されるアミノ酸残基に単一のアミノ酸置換を含有する、試験変異体を生成することができる。変異体は、次いで、当業者に既知の活性アッセイを使用してスクリーニングすることができる。このような変異体を使用して、好適な変異体についての情報を収集することができる。例えば、特定のアミノ酸残基への変更が、破壊、望ましくない低減、または不適当な活性をもたらしたことを発見した場合、このような変更を有する変異体は、回避することができる。換言すると、このような日常的実験から収集された情報に基づいて、当業者は、単独または他の突然変異と組み合わせてのさらなる置換を避けるべきであるアミノ酸を、容易に判定することができる。
【0166】
多数の科学出版物が、二次構造の予測を取り上げている。Moult J.,Curr.Op.in Biotech.,7(4):422−427(1996)、Chou et al.,Biochemistry,13(2):222−245(1974)、Chou et al.,Biochemistry,113(2):211−222(1974);Chou et al.,Adv.Enzymol.Relat.Areas Mol.Biol.,47:45−148(1978);Chou et al.,Ann.Rev.Biochem.,47:251−276、およびChou et al.,Biophys.J.,26:367−384(1979)を参照されたい。さらに、コンピュータプログラムが、二次構造の予測を補助するために現在利用可能である。二次構造を予測するための1つの方法は、相同性モデリングに基づく。例えば、30%を上回る配列同一性、または40%を上回る類似性を有する2つのポリペプチドまたはタンパク質は、しばしば、類似の構造トポロジーを有する。最近のタンパク質構造データベース(PDB)の発展は、ポリペプチドまたはタンパク質の構造内の可能な折り畳み数を含む、二次構造の予測可能性の強化をもたらしている。Holm et al.,Nucl.Acid.Res.,27(1):244−247(1999)を参照されたい。Brenner et al.,Curr.Op.Struct.Biol.,7(3):369−376(1997)において、所定のポリペプチドまたはタンパク質における折り畳み数は限られていること、および臨界数の構造が解明された時点で、構造の予測は、劇的により正確になるであろうことが示唆されている。
【0167】
二次構造を予測するさらなる方法には、「スレッディング(threading)」(Jones,D.,Curr.Opin.Struct.Biol.,7(3):377−87(1997)、Sippl et al.,Structure,4(1):15−19(1996))、「プロファイル分析」(Bowie et al.,Science,253:164−170(1991)、Gribskov et al.,Meth.Enzym.,183:146−159(1990)、Gribskov et al.,Proc.Nat.Acad.Sci.USA,84(13):4355−4358(1987))、および「進化的結合(evolutionary linkage)」(Holm(上記)(1999)、およびBrenner(上記)(1997)を参照されたい)が含まれる。
【0168】
ある特定の実施形態において、抗原結合タンパク質変異体には、グリコシル化部位の数および/または種類が、親ポリペプチドのアミノ酸配列と比較して変化している、グリコシル化変異体が含まれる。ある特定の実施形態において、タンパク質変異体は、元のタンパク質よりも、多いかまたは少ない数のN結合型グリコシル化部位を含む。N結合型グリコシル化部位は、配列Asn−X−SerまたはAsn−X−Thrを特徴とし、Xとして示されるアミノ酸残基は、プロリンを除くいずれのアミノ酸残基であってもよい。この配列を作製するためのアミノ酸残基の置換は、N結合型炭水化物鎖の付加が可能な新しい部位を提供する。あるいは、この配列を排除する置換は、既存のN結合型炭化水素鎖を除去することになる。さらに、1つ以上のN結合型グリコシル化部位(典型的に、天然に存在するもの)が排除され、1つ以上の新しいN結合型部位が作製される、N結合型炭化水素鎖の再配置もまた、提供される。さらなる好適な抗体変異体には、1つ以上のシステイン残基が、親アミノ酸配列比較して、削除されたかまたは別のアミノ酸(例えば、セリン)と置換された、システイン変異体が挙げられる。システイン変異体は、抗体を、不溶性封入体の単離後等に、生物学的に活性な立体配座に再び折り畳む必要がある場合に、有用であり得る。システイン変異体は、概して、天然タンパク質よりも少ないシステイン残基を有し、典型的に、不対システインからもたらされる相互作用を最小化するために偶数である。
【0169】
ある特定の実施形態によると、アミノ酸置換は、(1)タンパク質分解する傾向を低減させるもの、(2)酸化する傾向を低減させるもの、(3)タンパク質複合体の形成に対する親和性を変化させるもの、(4)結合親和性を変化させるもの、および/または(4)このようなポリペプチドに他の物理化学的または機能的特性を与えるか、もしくはそれを修正するものである。ある特定の実施形態によると、単一または複数のアミノ酸置換(ある特定の実施形態においては、保存的アミノ酸置換)は、天然に存在する配列(ある特定の実施形態において、分子間接触を形成するドメイン(複数可)の外側のポリペプチドの部分)において行うことができる。ある特定の実施形態において、保存的アミノ酸置換は、典型的には、実質的に親配列の構造的特徴を変化させ得ない(例えば、アミノ酸の置き換えは、親配列に生じるヘリックスを切断するか、または親配列を特徴付ける他の種類の二次構造を分裂させる傾向にあるべきではない)。当該技術分野で認識されているポリペプチド二次および三次構造の例は、Proteins,Structures and Molecular Principles(Creighton,Ed.,W.H.Freeman and Company,New York(1984))、Introduction to Protein Structure(C.Branden&J.Tooze,eds.,Garland Publishing,New York,N.Y.(1991))、およびThornton et al.,Nature,354:105(1991)に記載され、それぞれ、参照により本明細書に組み込まれる。
【0170】
いくつかの実施形態において、変異体は、本明細書に記載の抗原結合タンパク質の核酸配列の変異体である。当業者であれば、上述の説明が、抗原結合タンパク質変異体の識別、評価、および作製に、ならびにそれらのタンパク質変異体をコードし得る核酸配列にも使用可能であることを理解するであろう。
【0171】
「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」という語句は、プローブが、典型的に、核酸の複合混合物中で、その標的の部分配列とハイブリダイズするが、それ以外の配列とはハイブリダイズしないであろう条件を指す。ストリンジェント条件は、配列依存性であり、異なる環境においては異なるであろう。より長い配列は、より高い温度で特異的にハイブリダイズする。核酸のハイブリダイゼーションについての広範な指針は、Tijssen,Techniques in Biochemistry and Molecular Biology−Hybridization with Nucleic Probes,“Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid assays”(1993)に見出される。一般的に、ストリンジェント条件は、定義されるイオン強度pHにおいて、特定の配列に対する熱融解点(T
m)よりも約5〜10℃低くなるように選択される。T
mは、標的に相補的なプローブの50%が、平衡状態で標的配列とハイブリダイズする、(定義されるイオン強度、pH、および核濃度下での)温度である(標的配列が過剰に存在するため、T
mで、プローブの50%は、平衡状態で占有される)。ストリンジェント条件はまた、ホルムアミド等の不安定化剤の添加で達成することができる。選択的または特異的ハイブリダイゼーションについては、陽性シグナルは、少なくともバックグラウンドの2倍、好ましくはバックグラウンドハイブリダイゼーションの10倍である。例示的なストリンジェントハイブリダイゼーション条件は、次の通りであり得る。50%ホルムアミド、5×SSC、および1%SDS、42℃でインキュベート、または5×SSC、1%SDS、65℃でインキュベート、65℃で0.2×SSCおよび0.1%SDS中で洗浄する。
【0172】
ストリンジェント条件下で互いにハイブリダイズしない核酸は、それらがコードするポリペプチドが実質的に同一であれば、依然として実質的に同一である。これは、例えば、核酸の複製物が、遺伝子コードによって許容される最大のコドン縮重を使用して作製される場合に、生じる。このような場合において、核酸は、典型的に、中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする。例示的な「中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」には、37℃で40%ホルムアミド、1M NaC1、1%SDSの緩衝液中でのハイブリダイゼーション、および45℃で1×SSC中での洗浄が含まれる。陽性ハイブリダイゼーションは、少なくともバックグラウンドの2倍である。当業者であれば、代替的なハイブリダイゼーションおよび洗浄条件を利用して、類似のストリンジェント性条件を提供できることを、容易に理解するであろう。ハイブリダイゼーションのパラメータを決定するためのさらなる指針は、例えば、多数の参考文献およびCurrent Protocols in Molecular Biology,ed.Ausubel,et al.,John Wiley&Sonsに提供される。PCRについては、約36℃の温度が、低ストリンジェントな増幅には典型的であるが、アニーリング温度は、プライマーの長さに応じて、約32℃〜48℃で多様であり得る。高ストリンジェントなPCR増幅については、約62℃の温度が典型的であるが、高ストリンジェントなアニーリング温度は、プライマーの長さおよび特異性に応じて、約50℃〜約65℃の範囲に及び得る。高および低の両方のストリンジェント増幅についての典型的な周期条件には、90℃〜95℃で30秒〜2分間の変性期、および30秒〜2分間続くアニーリング期、および約72℃で1〜2分間の拡張期が含まれる。低および高ストリンジェントな増幅反応の手順および指針は、例えば、Innis et al.(1990)PCR Protocols,A Guide to Methods and Applications,Academic Press,Inc.N.Y.)に提供される。
【0173】
抗原結合タンパク質(例えば、抗体)の調製
ある特定の実施形態において、抗原結合タンパク質(抗体等)は、抗原(例えば、EGFR)での免疫化によって生成される。ある特定の実施形態において、抗体は、全長EGFR、EGFRの可溶性形態、触媒ドメイン単独、EGFRの成熟形態、EGFRのスプライス変異体形態、またはそれらのフラグメントでの免疫付与によって生成することができる。ある特定の実施形態において、本発明の抗体は、ポリクローナルまたはモノクローナルであってもよく、および/または組み換え抗体であってもよい。ある特定の実施形態において、本発明の抗体は、例えば、ヒト抗体を生成することが可能なトランスジェニック動物の免疫付与によって調製される、ヒト抗体である(例えば、PCT公開出願第W093/12227号を参照されたい)。
【0174】
ある特定の実施形態において、ある特定の戦略を採用して、抗体のその標的に対する親和性等、抗体特有の特性を操作することができる。このような戦略には、限定されないが、抗体をコードして抗体変異体を生成するポリヌクレオチド分子の部位特異的または無作為の突然変異生成を用いることが含まれる。ある特定の実施形態において、このような生成に続いて、所望の変化、例えば、増加または減少した親和性を示す、抗体変異体のスクリーニングが行われる。
【0175】
ある特定の実施形態において、突然変異生成戦略において標的とされるアミノ酸残基は、CDR内のものである。ある特定の実施形態において、可変ドメインのフレームワーク領域内のアミノ酸が標的とされる。ある特定の実施形態において、このようなフレームワーク領域は、ある特定の抗体の標的結合特性に寄与することが示されている。例えば、Hudson,Curr.Opin.Biotech.,9:395−402(1999)およびその中の参考文献を参照されたい。
【0176】
ある特定の実施形態において、より小さく、より効果的にスクリーニングされる、抗体変異体のライブラリは、無作為または部位特異的な突然変異生成を、体細胞親和性突然変異生成プロセスの際に突然変異する傾向にある領域に対応する部位である、CDR内の超突然変異部位に制限することにより生成される。例えば、Chowdhury&Pastan,Nature Biotech.,17:568−572(1999)およびその中の参考文献を参照されたい。ある特定の実施形態において、ある特定の種類のDNA要素を使用して、ある特定の直接および逆反復、ある特定のコンセンサス配列、ある特定の二次構造、ならびにある特定の回文構造を含むがこれらに限定されない超突然変異部位を識別することができる。例えば、超突然変異部位を識別するために使用可能なこのようなDNA部位には、限定されないが、プリン(AまたはG)、続いてグアニン(G)、続いてピリミジン(CまたはT)、続いてアデノシンまたはチミジンのいずれか(AまたはT)を含む四塩基配列(すなわち、A/G−G−C/T−A/T)が含まれる。超突然変異部位を識別するために使用可能なDNA要素の別の例は、セリンコドン、A−G−C/Tである。
【0177】
完全ヒト抗原結合タンパク質(例えば、抗体)の調製
ある特定の実施形態において、ファージディスプレイ方法を使用して、モノクローナル抗体を生成する。ある特定の実施形態において、このような技術により、完全ヒトモノクローナル抗体をもたらす。ある特定の実施形態において、一本鎖FabまたはFv抗体フラグメントをコードするポリヌクレオチドは、ファージ粒子の表面上に発現される。例えば、Hoogenboom et al.,J.Mol.Biol.,227:381(1991)、Marks et al.,J Mol Biol.222:581(1991)、米国特許第5,885,793号を参照されたい。ある特定の実施形態において、ファージを「スクリーニング」して、標的に対して親和性を有する抗体フラグメントを識別する。したがって、ある特定のこのようなプロセスは、糸状バクテリオファージの表面上での抗体フラグメントレパートリーの提示、およびその後の標的へのそれらの結合によるファージの選択を通じて免疫選択を模倣する。ある特定のこのような手順において、高親和性の機能性中和抗体フラグメントを単離する。ある特定のこのような実施形態(以下にさらに詳細に説明される)において、ヒト抗体遺伝子の完全なレパートリーは、自然に再配列される末梢血リンパ球由来のヒトV遺伝子をクローニングすることによって作製される。例えば、Mullinax et al.,Proc Natl Acad Sci(USA),87:8095−8099(1990)を参照されたい。
【0178】
ある特定の実施形態によると、本発明の抗体は、ヒト抗体生成ゲノムの実質的な部分を挿入したが、内因性マウス抗体の産生を欠損させた、トランスジェニックマウスの利用を通じて調製される。このようなマウスは、その結果、ヒト免疫グロブリン分子および抗体を生成することができ、マウス免疫グロブリン分子および抗体の産生が欠損している。この結果を達成するために利用される技術は、本明細書において、本明細書中に開示される、特許、出願、および参考文献に開示されている。ある特定の実施形態において、PCT公開出願第WO98/24893号またはMendez et al.,Nature Genetics,15:146−156(1997)に開示されるもの等の方法を採用することができ、これらは、いかなる目的についても参照により本明細書に組み込まれる。
【0179】
一般的に、EGFRに特異的な完全ヒトモノクローナル抗原結合タンパク質(例えば、抗体)は、次のように生成することができる。ヒト免疫グロブリン遺伝子を含有するトランスジェニックマウスを、目的の抗原、例えば、EGFRで免疫付与し、抗体を発現するマウス由来のリンパ細胞(B細胞等)を得る。このような回収された細胞を、骨髄性細胞系と融合して、不死ハイブリドーマ細胞系を調製し、このようなハイブリドーマ細胞をスクリーニングおよび選択して、目的の抗原に特異的な抗体を生成するハイブリドーマ細胞系を識別する。ある特定の実施形態において、EGFRに特異的な抗体を生成するハイブリドーマ細胞系の生成が、提供される。
【0180】
ある特定の実施形態において、完全ヒト抗体は、ヒト脾細胞(BまたはT細胞)を、インビトロで抗原に暴露し、次いで、暴露された細胞を、免疫不全マウス、例えば、SCIDまたはnod/SCID中に再構成することによって、生成される。例えば、Brams et al.,J.Immunol.160:2051−2058(1998)、Carballido et al.,Nat.Med.,6:103−106(2000)を参照されたい。ある特定のこのようなアプローチにおいて、ヒト胎児組織のSCIDマウスへの生着(SCID−hu)は、長期の造血およびヒトT細胞の発達をもたらす。例えば、McCune et al.,Science,241:1532−1639(1988)、Ifversen et al.,Sem.Immunol.,8:243−248(1996)を参照されたい。ある特定の事例において、このようなキメラマウスにおける体液性免疫応答は、動物におけるヒトT細胞の共発達に依存する。例えば、Martensson et al.,Immunol.,83:1271−179(1994)を参照されたい。ある特定のアプローチでは、ヒト末梢血リンパ球を、SCIDマウスに移植する。例えば、Mosier et al.,Nature,335:256−259(1988)を参照されたい。ある特定のこのような実施形態において、このような移植細胞を、Staphylococcal Enterotoxin A(SEA)等のプライミング剤、または抗ヒトCD40モノクローナル抗体のいずれかで処理すると、高レベルのB細胞生成が検出される。例えば、Martensson et al.,Immunol.,84:224−230(1995)、Murphy et al.,Blood,86:1946−1953(1995)を参照されたい。
【0181】
したがって、ある特定の実施形態において、完全ヒト抗体は、宿主細胞における組み換えDNAの発現、またはハイブリドーマ細胞における発現によって、生成することができる。他の実施形態において、抗体は、本明細書に記載のファージディスプレイ技術を使用して生成することができる。
【0182】
本明細書に記載の抗体を、部分的には、本明細書に記載のXenoMouse(登録商標)技術の利用を通じて調製した。このようなマウスは、その結果、ヒト免疫グロブリン分子および抗体を生成することができ、マウス免疫グロブリン分子および抗体の産生が欠損している。これを達成するために利用される技術は、本明細書において、背景技術の部分に開示される、特許、出願、および参考文献に開示されている。しかしながら、具体的には、マウスのトランスジェニック生成およびそれに由来する抗体の好ましい実施形態は、1996年12月3日に出願された米国特許出願第08/759,620号、ならびに1998年6月11日に公開された国際特許出願第WO98/24893号、および2000年12月21日に公開された同第WO00/76310号に開示され、これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。Mendez et al.,Nature Genetics,15:146−156(1997)もまた参照されたく、この開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0183】
このような技術の使用を通じて、種々の抗原に対する完全ヒトモノクローナル抗体が、生成されている。本質的には、XenoMouse(登録商標)系のマウスに、目的の抗原(例えば、EGFR)で免疫付与し、リンパ性細胞(B細胞等)を、過剰に免疫付与したマウスから回収し、回収したリンパ球を、骨髄性細胞系と融合して、不死ハイブリドーマ細胞系を調製する。これらのハイブリドーマ細胞系を、スクリーニングおよび選択して、目的の抗原に特異的な抗体を生成したハイブリドーマ細胞系を識別する。EGFRに特異的な抗体を生成する複数のハイブリドーマ細胞系の生成のための方法を、本明細書に提供する。さらに、このような抗体の重鎖および軽鎖のヌクレオチドおよびアミノ酸配列分析を含む、このような細胞系によって生成される抗体の特徴付けを提供する。
【0184】
XenoMouse(登録商標)株のマウスの生成は、さらに、1990年1月12日に出願された米国特許出願第07/466,008号、1990年11月8日に出願された同第07/610,515号、1992年7月24日に出願された同第07/919,297号、1992年7月30日に出願された同第07/922,649号、1993年3月15日に出願された同第08/031,801号、1993年8月27日に出願された同第08/112,848号、1994年4月28日に出願された同第08/234,145号、1995年1月20日に出願された同第08/376,279号、1995年4月27日に出願された同第08/430,938号、1995年6月5日に出願された同第08/464,584号、1995年6月5日に出願された同第08/464,582号、1995年6月5日に出願された同第08/463,191号、1995年6月5日に出願された同第08/462,837号、1995年6月5日に出願された同第08/486,853号、1995年6月5日に出願された同第08/486,857号、1995年6月5日に出願された同第08/486,859号、1995年6月5日に出願された同第08/462,513号、1996年10月2日に出願された同第08/724,752号、1996年12月3日に出願された同第08/759,620号、2001年11月30日に出願された米国公開第2003/0093820号、ならびに米国特許第6,162,963号、同第6,150,584号、同第6,114,598号、同第6,075,181号、および同第5,939,598号、ならびに日本特許第3 068 180 B2号、同第3 068 506 B2号、および同第3 068 507 B2号に記載および詳述される。1996年6月12に付与公開された欧州特許第EP0 463 151 B1号、1994年2月3日に公開された国際特許出願第WO94/02602号、1996年10月31日に公開された国際特許出願第WO96/34096号、1998年6月11日に公開された同第WO98/24893号、2000年12月21日に公開された同第WO00/76310号もまた、参照されたい。
【0185】
完全ヒトモノクローナル抗体(Mab)技術の開発は、ヒト疾患における抗体療法の可能性を実現することに対する重要な出来事となっている。ヒトモノクローナル抗体は、マウスまたはヒト化抗体に内在する免疫原性およびアレルギー性応答を最小化させ、増加した有効性および/または安全性を示している。Abgenix(現在はAmgen Inc.の一部)によって開発されたXenoMouse(登録商標)アプローチを含むがこれに限定されない、ヒトモノクローナル抗体を生成するための多数の技術が存在する。Green et al.,Nature Genetics 7:13−21(1994)を参照されたい。Xenomouse(登録商標)技術のさらなる変化形は、Mendez et al.,Nature Genetics 15:146−156(1997)および米国特許出願第08/759,620号に見出すことができ、これらの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0186】
代替的なアプローチでは、GenPharm International Inc.を含み、ヒト化抗体の生成に、「ミニ遺伝子座(minilocus)」アプローチを使用するものもある。このアプローチは、Suraniらに対する米国特許第5,545,807号、ならびに、いずれもLonbergおよびKayに対するものである米国特許第5,545,806号および同第5,625,825号、1990年8月29日に出願された米国特許出願第07/574,748号、1990年8月31日に出願された同第07/575,962号、1991年12月17日に出願された同第07/810,279号、1992年3月18日に出願された同第07/853,408号、1992年6月23日に出願された同第07/904,068号、1992年12月16日に出願された同第07/990,860号、1993年4月26日に出願された同第08/053,131号、1993年7月22日に出願された同第08/096,762号、1993年11月18日に出願された同第08/155,301号、1993年12月3日に出願された同第08/161,739号、1993年12月10日に出願された同第08/165,699号、1994年3月9日に出願された同第08/209,741号に記載され、これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。WO94/25585号、WO93/12227号、WO92/22645号、およびWO92/03918号もまた参照されたく、これらの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。ヒト抗体を生成するためのさらなる技術は、例えば、Medarex(登録商標)(現在ではBristol Myers Squibb(登録商標)の一部)、Cambridge Antibody Technologies(登録商標)(CAT、現在ではAstraZeneca(登録商標)の一部)によって、開発されてきた。
【0187】
上記の特許、出願、および参考文献のそれぞれの開示もまた、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0188】
本発明の好適な抗体、例えば、組み換え抗体、モノクローナル抗体、またはポリクローナル抗体の調製、および本発明による使用については、当該技術分野で既知の多数の方法を使用することができる(例えば、Kohler&Milstein,Nature256:495−497(1975)、Kozbor et al.,Immunology Today4:72(1983)、Cole et al.,pp.77−96 in Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,Inc.(1985)、Coligan,Current Protocols in Immunology(1991)、Harlow&Lane,Antibodies,A Laboratory Manual(1988)、およびGoding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice(2d ed.1986)を参照されたい)。目的の抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子は、細胞からクローニングすることができ、例えば、モノクローナル抗体をコードする遺伝子を、ハイブリドーマからクローニングし、組み換えモノクローナル抗体の生成に使用することができる。モノクローナル抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子ライブラリもまた、ハイブリドーマまたは形質細胞から作製することができる。重鎖および軽鎖遺伝子生成物の無作為な組み合わせにより、異なる抗原特異性を有する抗体の大きなプールを生成する(例えば、Kuby,Immunol.(3
rd ed.1997)を参照されたい)。一本鎖抗体または組み換え抗体の生成のための技術(米国特許第4,946778号、米国特許第4,816,567号)を、本発明のポリペプチドに対する抗体を生成するように適合させてもよい。さらに、トランスジェニックマウス、または他の哺乳動物等の他の有機体を使用して、ヒト化抗体またはヒト抗体を発現することもできる(例えば、米国特許第5,545,807号、同第5,545,806号、同第5,569,825号、同第5,625,126号、同第5,633,425号、同第5,661,016号、Marks et al.,Bio/Technology,10:779−783(1992)、Lonberg et al.,Nature,368:856−859(1994)、Morrison,Nature,368:812−13(1994)、Fishwild et al.,Nature Biotechnology14:845−51(1996)、Neuberger,Nature Biotechnology14:826(1996)、およびLonberg&Huszar,Intern.Rev.Immunol.13:65−93(1995)を参照されたい)。あるいは、ファージディスプレイ技術を使用して、選択された抗原に特異的に結合する抗体およびヘテロマー性Fabフラグメントを識別することができる(例えば、McCafferty et al.,Nature348:552−554(1990)、Marks et al.,Biotechnology10:779−783(1992)を参照されたい)。抗体はまた、二特異性、すなわち、2つの異なる抗原を認識することができるようにすることもできる(例えば、WO93/08829号、Traunecker et al.,EMBO J.10:3655−3659(1991)、およびSuresh et al.,Methods in Enzymology121:210(1986)を参照されたい)。抗体はまた、ヘテロ抱合体、例えば、2つの共有結合した抗体、または免疫毒素であってもよい(例えば、米国特許第4,676,980号、WO91/00360号、WO92/200373号、およびEP03089号を参照されたい)。
【0189】
非ヒト抗体をヒト化または霊長類化(primatizing)するための方法は、当該技術分野で周知である。一般的に、ヒト化抗体は、非ヒト源からそこに導入された、1つ以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、移入残基と称され、これは、典型的に、移入可変ドメインから取り込まれる。ヒト化は、本質的に、Winterおよび同僚らの方法(例えば、Jones et al.,Nature 321:522−525(1986)、Riechmann et al.,Nature332:323−327(1988)、Verhoeyen et al.,Science 239:1534−1536(1988)、およびPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593−596(1992)を参照されたい)に従って、齧歯類のCDRまたはCDR配列を、ヒト抗体の対応する配列と置換することによって、行うことができる。したがって、このようなヒト化抗体は、インタクトなヒト可変ドメインよりも実質的に少なく、非ヒト種の対応する配列によって置換されている、キメラ抗体である(米国特許第4,816,567号)。実際には、ヒト化抗体は、典型的に、いくつかのCDR残基および場合によってはいくつかのFR残基が、齧歯類抗体の類似部位に由来する残基によって置換されている、ヒト抗体である。
【0190】
代替的なアプローチでは、GenPharm International,Inc.を含み、「ミニ遺伝子座」アプローチを利用しているものもある。ミニ遺伝子座アプローチでは、外因性Ig遺伝子座は、Ig遺伝子座からの小片(個々の遺伝子座)を含めることにより、模倣される。したがって、1つ以上のV
H遺伝子、1つ以上のD
H遺伝子、1つ以上のJ
H遺伝子、μ定常領域、および通常は第2の定常領域(好ましくはγ定常領域)が、動物に挿入するための構築物に形成される。このアプローチは、Suraniらに対する米国特許第5,545,807号、ならびにそれぞれ、Lonberg&Kayに対する米国特許第5,545,806号、同第5,625,825号、同第5,625,126号、同第5,633,425号、同第5,661,016号、同第5,770,429号、同第5,789,650号、同第5,814,318号、同第5,877,397号、同第5,874,299号、および同第6,255,458号、Krimpenfort&Bernsに対する米国特許第5,591,669号および同第6,023.010号、Bernsらに対する米国特許第5,612,205号、同第5,721,367号、および同第5,789,215号、ならびにChoi&Dunnに対する米国特許第5,643,763号、ならびにGenPharm Internationalの米国特許出願第07/574,748号、同第07/575,962号、同第07/810,279号、同第07/853,408号、同第07/904,068号、同第07/990,860号、同第08/053,131号、同第08/096,762号、同第08/155,301号、同第08/161,739号、同第08/165,699号、同第08/209,741号に記載され、これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。欧州特許第0 546 073 B1号、国際特許出願第WO92/03918号、同第WO92/22645号、同第WO92/22647号、同第WO92/22670号、同第WO93/12227号、同第WO94/00569号、同第WO94/25585号、同第WO96/14436号、同第WO97/13852号、および同第WO98/24884号、ならびに米国特許第5,981,175号もまた参照されたく、これらの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。さらに、Taylor et al.,1992、Chen et al.,1993、Tuaillon et al.,1993、Choi et al.,1993、Lonberg et al.,(1994)、Taylor et al.,(1994)、およびTuaillon et al.,(1995)、Fishwild et al.,(1996)もまた参照されたく、これらの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0191】
Kirinはまた、大きな染色体片または染色体全体が微小細胞の融合を通じて導入されている、マウス由来のヒト抗体の生成を例証した。欧州特許出願第773288号および同第843961号を参照されたく、これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。さらに、KirinのTcマウスとMedarexのミニ遺伝子座(Humab)との異種交配の結果であるKM(商標)マウスが、生成されている。これらのマウスは、KirinマウスのヒトIgHトランス染色体(transchromosome)およびGenpharmマウスのκ鎖トランス遺伝子を有する(Ishida et al.,Cloning Stem Cells,(2002)4:91−102)。
【0192】
ヒト抗体はまた、インビトロ法によりもたらすことができる。好適な例には、限定されないが、ファージディスプレイ(CAT、Morphosys、Dyax、Biosite/Medarex、Xoma、Symphogen、Alexion(以前のProliferon)、Affimed)、リボソームディスプレイ(CAT)、酵母ディスプレイ等が挙げられる。
【0193】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の抗体は、ヒトIgG4重鎖、ならびにIgG2重鎖を有する。抗体はまた、IgG1を含む、他のヒトアイソタイプのものであってもよい。抗体は、典型的に、種々の技法により測定した場合に、約10
−6〜約10
−13M以下のKdを有し、高い親和性を有した。
【0194】
一実施形態において、抗体は、「エフェクター」部分に抱合される。エフェクター部分は、放射標識または蛍光標識等の標識部分を含む、任意の数の分子であってもよく、または治療的部分であってもよい。
【0195】
本発明の抗体は、追加のアミノ酸残基に融合され得る。このようなアミノ酸残基は、おそらくは単離を促進するため、ペプチドタグであってもよい。抗体を特定の器官または組織に誘導するための他のアミノ酸残基もまた、企図される。
【0196】
本発明の別の態様において、抗EGFR抗体または抗体フラグメントは、抗腫瘍剤または検出可能なシグナル生成剤に、化学的または生合成的に結合され得る。以下に例示されるように、本発明の抗体は、EGFRを有する細胞に結合すると、効率的に取り込まれる。抗体に結合される抗腫瘍剤は、抗体が結合されたか、または抗体が結合された細胞の環境において、腫瘍を破壊または損傷する、いずれの薬剤も含む。例えば、抗腫瘍剤は、化学療法剤または放射性同位体等の毒性剤である。好適な化学療法剤は、当業者に既知であり、アントラサイクリン(例えば、ダウノマイシンおよびドキソルビシン)、メトトレキサート、ビンデシン、ネオカルチノスタチン、シスプラチン、クロラムブシル、シトシンアラビノシド、5−フルオロウリジン、メルファラン、リシン、およびカリチアマイシンが含まれる。化学療法剤は、従来の方法を使用して抗体に抱合される(例えば、Hermentin and Seiler,Behring Inst.Mitt.82:197−215(1988)を参照されたい)。
【0197】
検出可能なシグナル生成剤は、診断目的で、インビボおよびインビトロにおいて有用である。シグナル生成剤は、外部手段、通常は電磁放射の測定によって、検出することができる、測定可能なシグナルを生成する。ほとんどの場合、シグナル生成剤は、酵素または発色団であるか、または、蛍光、リン光、もしくは化学発光によって光を発する。発色団は、紫外または可視領域の光を吸収する染料を含み、酵素触媒反応の基質または分解生成物であってもよい。
【0198】
一態様において、抗体は、タンパク質の活性を調節する。このようなエフェクター部分には、限定されないが、抗腫瘍薬、毒素、放射性薬剤、サイトカイン、第2の抗体、または酵素が含まれる。さらに、本発明は、本発明の抗体が、プロドラッグを細胞毒性剤に変換する酵素に結合される、実施形態を提供する。
【0199】
免疫抱合体は、N−カドヘリン陽性細胞、特に、N−カドヘリンまたはLy6タンパク質を発現する細胞に、エフェクター部分を標的化するために使用することができる。このような違いは、試験および対照試料をおおよそ同様に充填したゲルのバンドを見れば、容易に明らかとなり得る。細胞毒性剤の例には、リシン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、タキソール、臭化エチジウム、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド(tenoposide)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ジヒドロキシアントラシンジオン、アクチノマイシンD、ジフテリア毒素、緑膿菌外毒素(PE)A、PE40、アブリン、およびグルココルチコイド、ならびに他の化学療法剤、ならびに放射性同位体が挙げられる。好適な検出可能マーカーには、放射性同位体、蛍光化合物、生物発光化合物、化学発光化合物、金属キレート剤、または酵素が含まれるが、これらに限定されない。
【0200】
上述の実施形態のうちのいずれかにおいて、化学療法薬および/または放射線療法を、さらに施してもよい。いくつかの実施形態において、患者は、さらに、ホルモンアンタゴニスト療法を受ける。患者と抗体または抗体フラグメントとの接触は、患者に、抗体を、静脈内、腹腔内、筋肉内、腫瘍内、または皮内投与することによって行うことができる。いくつかの実施形態において、患者は、泌尿生殖器癌(例えば、膀胱癌、前立腺癌)を有する。上述のいくつかの実施形態において、患者は、前立腺癌を患い、任意で、さらに、患者ホルモンアブレーション療法を受ける。いくつかの実施形態において、接触は、癌または癌の転移に、抗体を直接投与することを含む。いくつかの実施形態において、化学療法剤は、リシン、リシンA鎖、ドキソルビシン、ダウノルビシン、タキソール、臭化エチジウム、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ジヒドロキシアントラシンジオン、アクチノマイシンD、ジフテリア毒素、緑膿菌外毒素(PE)A、PE40、アブリン、アルブリン(arbrin)A鎖、モデッシンA鎖、α−サルシン、ゲロニン、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(retstrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)、クリシン(curicin)、クロチン、カリケアマイシン、サボンソウ(sapaonaria officinalis)阻害剤、マイタンシノイド、およびグルココルチコイドリシンからなる群から選択され得る。
【0201】
さらに、本発明のモノクローナル抗体のいずれかの抗原結合領域を含む本発明の組み換えタンパク質は、癌の治療に使用することができる。このような状況において、組み換えタンパク質の抗原結合領域は、治療活性を有する第2のタンパク質の少なくとも機能的に活性な一部分に結合される。第2のタンパク質には、酵素、リンホカイン、オンコスタチン、または毒素が含まれるが、これらに限定されない。好適な毒素には、ドキソルビシン、ダウノルビシン、タキソール、臭化エチジウム、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ジヒドロキシアントラシンジオン、アクチノマイシンD、ジフテリア毒素、緑膿菌外毒素(PE)A、PE40、リシン、アブリン、グルココルチコイド、および放射性同位体が含まれる。
【0202】
抗体を治療剤と抱合する技術は、周知である(例えば、Arnon et al.,“Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy”,in Monoclonal Antibodies&Cancer Therapy,Reisfeld et al.(eds.),pp.243−56(Alan R.Liss,Inc.1985)、Hellstrom et al.,“Antibodies For Drug Delivery”in Controlled Drug Delivery(2nd Ed.),Robinson et al.(eds.),pp.623−53(Marcel Dekker,Inc.1987)、Thorpe,“Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review”in Monoclonal Antibodies ’84:Biological And Clinical Applications,Pinchera et al.(eds.),pp.475−506(1985)、およびThorpe et al.,“The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody−Toxin Conjugates”,Immunol.Rev.,62:119−58(1982)を参照されたい)。
【0203】
理解されるように、抗体は、ハイブリドーマ細胞系以外の細胞系に発現し得る。特定の抗体をコードする配列を使用して、好適な哺乳動物の宿主細胞を形質転換することができる。形質転換は、例えば、ポリヌクレオチドをウイルス(もしくはウイルスベクター)に封入すること、および宿主細胞にウイルス(もしくはベクター)を形質導入することを含む、いずれかの既知の方法によって、または、米国特許第4,399,216号、同第4,912,040号、同第4,740,461号、および同第4,959,455号(これらの特許は、参照により本明細書に組み込まれる)に例証されるような、当該技術分野で既知のトランスフェクション手順によって、行うことできる。使用される形質転換手順は、形質転換される宿主に依存する。非相同のポリヌクレオチドを哺乳動物細胞に導入するための方法は、当該技術分野で周知であり、デキストラン媒介トランスフェクション、リン酸カルシウム沈降、ポリブレン媒介トランスフェクション、原形質融合、電気穿孔法、ポリヌクレオチド(複数可)のリポソームへの封入、およびDNAの核への直接的な微量注入が含まれる。
【0204】
発現のための宿主として利用可能な哺乳動物細胞は、当該技術分野で周知であり、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞癌腫細胞(例えば、Hep G2)、ヒト上皮腎臓293細胞、および多数の他の細胞系を含むがこれらに限定されない、American Type Culture Collection(ATCC)から入手可能な多数の不死化細胞系が含まれる。特に好ましい細胞系は、どの細胞系が高い発現レベルを有し、構造的EGFR結合特性を有する抗体を生成するかを判定することを通じて選択される。
【0205】
ある特定の実施形態において、抗原結合タンパク質(抗体等)は、おおよそ1nM未満、例えば、1000pM〜100pM、100pM〜10pM、10pM〜1pM、および/または1pM〜0.1pM以下の解離定数(K
D)で、EGFRに結合する。
【0206】
ある特定の実施形態において、抗原結合タンパク質は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgE、IgA、IgD、およびIgMアイソタイプのうち、少なくとも1つの免疫グロブリン分子を含む。ある特定の実施形態において、抗原結合タンパク質は、ヒトκ軽鎖および/またはヒト重鎖を含む。ある特定の実施形態において、重鎖は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgE、IgA、IgD、またはIgMアイソタイプのものである。ある特定の実施形態において、抗原結合タンパク質は、哺乳動物細胞での発現のために、クローニングされている。ある特定の実施形態において、抗原結合タンパク質は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgE、IgA、IgD、およびIgMアイソタイプのいずれかの定常領域以外の定常領域を含む。
【0207】
ある特定の実施形態において、抗原結合タンパク質は、ヒトλ軽鎖およびヒトIgG2重鎖を含む。ある特定の実施形態において、抗原結合タンパク質は、ヒトλ軽鎖およびヒトIgG4重鎖を含む。ある特定の実施形態において、抗原結合タンパク質は、ヒトλ軽鎖およびヒトIgG1、IgG3、IgE、IgA、IgD、またはIgM重鎖を含む。他の実施形態において、抗原結合タンパク質は、ヒトκ軽鎖およびヒトIgG2重鎖を含む。ある特定の実施形態において、抗原結合タンパク質は、ヒトκ軽鎖およびヒトIgG4重鎖を含む。ある特定の実施形態において、抗原結合タンパク質は、ヒトκ軽鎖およびヒトIgG1、IgG3、IgE、IgA、IgD、またはIgM重鎖を含む。ある特定の実施形態において、抗原結合タンパク質は、IgG2アイソタイプの定常領域でもなくIgG4アイソタイプの定常領域でもない定常領域に連結される、抗体の可変領域を含む。ある特定の実施形態において、抗原結合タンパク質は、哺乳動物細胞での発現のために、クローニングされている。
【0208】
対照的に、ある特定の実施形態において、EGFRに対する抗体の機能的および/または化学的特徴における実質的な修飾は、(a)例えば、シートもしくはヘリカル構造としての、置換の範囲における分子の主鎖構造、(b)標的部位での分子の電荷もしくは疎水性、または(c)側鎖のかさ高さを維持することに対する効果が著しく異なる、重鎖および軽鎖のアミノ酸配列の置換を選択することによって、達成することができる。
【0209】
例えば、「保存的アミノ酸置換」は、その位置におけるアミノ酸残基の極性または電荷に、影響がほとんどないか、または全くないように、天然のアミノ酸残基と非天然の残基との置換を伴い得る。さらに、ポリペプチド内の任意の天然残基はまた、「アラニンスキャニング突然変異生成」について前述のように、アラニンと置換することができる。
【0210】
所望のアミノ酸置換(保存的または非保存的にかかわらず)は、このような置換が所望される場合に、当業者によって判定することができる。ある特定の実施形態において、アミノ酸置換を使用して、EGFRに対する抗体の重要な残基を識別するか、または本明細書に記載のようにEGFRに対する抗体の親和性を増加もしくは減少させることができる。
【0211】
ある特定の実施形態において、本発明の抗体は、ハイブリドーマ細胞系以外の細胞系で発現し得る。ある特定の実施形態において、特定の抗体をコードする配列は、好適な哺乳動物の宿主細胞の形質転換に使用することができる。ある特定の実施形態によると、形質転換は、例えば、ポリヌクレオチドをウイルス(もしくはウイルスベクター)に封入すること、および宿主細胞にウイルス(もしくはベクター)を形質導入することを含む、いずれかの既知の方法によって、または、米国特許第4,399,216号、同第4,912,040号、同第4,740,461号、および同第4,959,455号(これらの特許は、参照により本明細書に組み込まれる)に例証されるような、当該技術分野で既知のトランスフェクション手順によって、行うことできる。ある特定の実施形態において、使用される形質転換手順は、形質転換される宿主に依存し得る。非相同のポリヌクレオチドを哺乳動物細胞に導入するための方法は、当該技術分野で周知であり、デキストラン媒介トランスフェクション、リン酸カルシウム沈降、ポリブレン媒介トランスフェクション、原形質融合、電気穿孔法、ポリヌクレオチド(複数可)のリポソームへの封入、およびDNAの核への直接的な微量注入が含まれるが、これらに限定されない。
【0212】
発現のための宿主として利用可能な哺乳動物細胞は、当該技術分野で周知であり、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞癌腫細胞(例えば、Hep G2)、および多数の他の細胞系を含むがこれらに限定されない、American Type Culture Collection(ATCC)から入手可能な多数の不死化細胞系が含まれるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態において、細胞系は、どの細胞系が高い発現レベルを有し、構造的HGF結合特性を有する抗体を生成するかを判定することを通じて、選択することができる。哺乳動物の宿主細胞のための適切な発現ベクターは、周知である。
【0213】
ある特定の実施形態において、抗原結合タンパク質は、1つ以上のポリペプチドを含む。ある特定の実施形態において、種々の発現ベクター/宿主系のいずれかを利用して、1つ以上の抗原結合タンパク質成分または抗原結合タンパク質自体を含む、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド分子を発現させることができる。このような系には、組み換えバクテリオファージ、プラスミド、またはコスミドDNA発現ベクターで形質転換した細菌等の微生物;酵母発現ベクターで形質転換した酵母;ウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)に感染させた昆虫細胞系;ウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV、タバコモザイクウイルス、TMV)をトランスフェクトしたか、または細菌発現ベクターで形質転換した植物細胞系(例えば、TiもしくはpBR322プラスミド);あるいは動物細胞系が挙げられるが、これらに限定されない。
【0214】
ある特定の実施形態において、1つ以上の抗原結合タンパク質成分または抗原結合タンパク質自体を含むポリペプチドは、酵母において組み換え発現される。ある特定のこのような実施形態では、市販入手可能な発現系、例えば、ピキア発現系(Invitrogen,San Diego,CA)を、製造業者の説明書に従って使用する。ある特定の実施形態において、このような系は、分泌を指示するために、プレプロα配列に頼る。ある特定の実施形態において、挿入物の転写は、メタノールによる誘導時に、アルコールオキシダーゼ(AOX1)プロモーターによって行われる。
【0215】
ある特定の実施形態において、1つ以上の抗原結合タンパク質成分または抗原結合タンパク質自体を含む、分泌されたポリペプチドは、酵母成長培地から精製される。ある特定の実施形態において、ポリペプチドを酵母成長培地から精製するために使用される方法は、細菌および哺乳動物の細胞上清からポリペプチドを精製するために使用されるものと同じである。
【0216】
ある特定の実施形態において、1つ以上の抗原結合タンパク質成分または抗原結合タンパク質自体を含むポリペプチドをコードする核酸を、pVL1393(PharMingen,San Diego,CA)等の暴露ウイルス発現ベクターにクローニングする。ある特定の実施形態において、このようなベクターを、製造業者の指示(PharMingen)に従って使用して、sF9タンパク質不含培地中でスポドプテラフルギペルダ細胞を感染させ、組み換えポリペプチドを生成することができる。ある特定の実施形態において、ポリペプチドを、ヘパリン−セファロースカラム(Pharmacia)を使用して、このような培地から精製および濃縮する。
【0217】
ある特定の実施形態において、1つ以上の抗原結合タンパク質成分または抗原結合タンパク質自体を含むポリペプチドを、昆虫系において発現させる。ポリペプチド発現のためのある特定の昆虫系は、当業者に周知である。1つのこのような系において、オートグラファカリフォルニアニュークレア多角体ウイルス(AcNPV)をベクターとして使用して、スポドプテラフルギペルダ細胞またはイラクサギンウワバの幼虫に、外来性遺伝子を発現させる。ある特定の実施形態において、ポリペプチドをコードする核酸分子を、ウイルスの非必須遺伝子内、例えば、ポリヘドリン遺伝子内に挿入し、その遺伝子のプロモーターの制御下に置くことができる。ある特定の実施形態において、核酸分子挿入の成功は、非必須遺伝子を不活性にさせることになる。ある特定の実施形態において、この不活性化が、結果として、検出可能な特徴をもたらす。例えば、ポリヘドリン遺伝子の不活性化は、外被タンパク質を欠いたウイルスの生成をもたらす。
【0218】
ある特定の実施形態において、組み換えウイルスを使用して、スポドプテラフルギペルダ細胞またはイラクサギンウワバの幼虫を感染させることができる。例えば、Smith et al.,J.Virol.,46:584(1983)、Engelhard et al.,Proc.Nat.Acad.Sci.(USA),91:3224−7(1994)を参照されたい。
【0219】
ある特定の実施形態において、細菌細胞において作製された1つ以上の抗原結合タンパク質成分または抗原結合タンパク質自体を含むポリペプチドは、細菌中の不溶性封入体として生成される。ある特定の実施形態において、このような封入体を含む宿主細胞を、遠心分離により収集し、0.15M NaCl、10mMトリス、pH8、1mM EDTAにおいて洗浄し、室温で15分間、0.1mg/mlのリゾチーム(Sigma,St.Louis,MO)で処理する。ある特定の実施形態において、溶解物を、超音波処理により除去し、細胞残屑を、12,000×gで10分間の遠心分離によりペレット状にする。ある特定の実施形態において、ポリペプチド含有ペレットを、50mMトリス、pH8、および10mM EDTA中に再懸濁し、50%グリセロール上に層を作り、6000×gで30分間遠心分離する。ある特定の実施形態において、このペレットを、Mg
++およびCa
++を含まない標準リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に再懸濁させてもよい。ある特定の実施形態において、ポリペプチドを、再懸濁させたペレットを変性SDSポリアクリルアミドゲル中で分画することによって、さらに精製する(例えば、Sambrook et al.(上記)を参照されたい)。ある特定の実施形態において、このようなゲルは、0.4M KCl中に浸漬してタンパク質を可視化することができ、これを摘出し、SDSを含まないゲル泳動緩衝液中で電気溶出することができる。ある特定の実施形態によると、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)融合タンパク質を、可溶性タンパク質として細菌において生成する。ある特定の実施形態において、このようなGST融合タンパク質を、GST精製モジュール(Pharmacia)を使用して精製する。
【0220】
ある特定の実施形態において、ある特定のポリペプチド、例えば、1つ以上の抗原結合タンパク質成分または抗原結合タンパク質自体を含むポリペプチドを、「再び折り畳む」ことが望ましい。ある特定の実施形態において、このようなポリペプチドを、本明細書に記載のある特定の組み換えシステムを使用して生成する。ある特定の実施形態において、ポリペプチドは、所望の三次構造を形成する、および/またはジスルフィド結合を生成するために、「再び折り畳む」および/または酸化させる。ある特定の実施形態において、このような構造および/または結合は、ポリペプチドのある特定の生物学的活性に関連する。ある特定の実施形態において、再び折り畳むことは、当該技術分野で既知の多数の手順のいずれかを使用して達成される。例示的な方法には、可溶化ポリペプチド剤を、カオトロピック剤の存在下で、典型的に7を上回るpHに暴露することが含まれるが、これに限定されない。例示的なカオトロピック剤は、グアニジンである。ある特定の実施形態において、再折り畳み/酸化溶液はまた、還元剤およびその還元剤の酸化形態を含有する。ある特定の実施形態において、還元剤およびその酸化形態は、ジスルフィド混合を発生させる、特定の酸化還元電位を生成するであろう比率で存在する。ある特定の実施形態において、このような混合は、システイン架橋の形成を可能にする。例示的な酸化還元対には、システイン/シスタミン、グルタチオン/ジチオビスGSH、塩化第二銅、ジチオスレイトールDTT/ジチアンDTT、および2−メルカプトエタノール(bME)/ジチオ−bMEが挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態において、共溶媒を使用して、再折り畳みの効率を高める。例示的な共溶媒には、グリセロール、種々の分子量のポリエチレングリコール、およびアルギニンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0221】
ある特定の実施形態において、1つ以上の抗原結合タンパク質成分または抗原結合タンパク質自体を含むポリペプチドを、実質的に精製する。ある特定のタンパク質精製技術は、当業者に既知である。ある特定の実施形態において、タンパク質精製は、ポリペプチド画分を非ポリペプチド画分から粗分画することを伴う。ある特定の実施形態では、ポリペプチドを、クロマトグラフィーおよび/または電気泳動技術を使用して精製する。例示的な精製方法には、硫酸アンモニウムでの沈降;PEGでの沈降;免疫沈降;熱変性に続いて遠心分離;親和性クロマトグラフィー(例えば、タンパク質−A−セファロース)、イオン交換クロマトグラフィー、排除クロマトグラフィー、および逆相クロマトグラフィーを含むがこれらに限定されないクロマトグラフィー;ゲル濾過;ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー;等電点電気泳動;ポリアクリルアミド電気泳動;ならびにこのような技術および他の技術の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、ポリペプチドを、高速タンパク質液体クロマトグラフィーまたは高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)によって、精製する。ある特定の実施形態において、精製ステップは変更することが可能であるか、またはある特定のステップを省略してもよく、依然として、実質的に精製されたポリペプチドの調製のための好適な方法をもたらす。
【0222】
ある特定の実施形態において、ポリペプチド調製物の精製の程度を、定量化する。精製の程度を定量化するためのある特定の方法は、当業者に既知である。ある特定の例示的な方法には、調製物の特異的結合活性を判定し、SDS/PAGE分析によって調製物中のポリペプチドの量を評価することが含まれるが、これらに限定されない。ポリペプチド調製物の精製の量を評価するためのある特定の例示的な方法は、調製物の結合活性を計算し、それを初期抽出物の結合活性と比較することを含む。ある特定の実施形態において、このような計算の結果は、「〜倍精製」として表される。結合活性の量を表すために使用される単位は、実行される特定のアッセイに依存する。
【0223】
ある特定の実施形態において、1つ以上の抗原結合タンパク質成分または抗原結合タンパク質自体を含むポリペプチドを、部分的に精製する。ある特定の実施形態において、部分的精製は、より少ない精製ステップ、または同じ一般精製スキームの異なる形態を利用することによって、達成することができる。例えば、ある特定の実施形態において、HPLC装置を利用して行われる陽イオン交換カラムクロマトグラフィーは、一般的に、低圧クロマトグラフィーシステムを利用する同じ技法よりも、高い「倍精製」をもたらすことになる。ある特定の実施形態において、低い程度の精製をもたらす方法は、ポリペプチドの完全回収、またはポリペプチドの結合活性の維持に利点を有し得る。
【0224】
ある特定の事例において、ポリペプチドの電気泳動は、異なるSDS/PAGE条件では、しばしば著しく多様であり得る。例えば、Capaldi et al.,Biochem.Biophys.Res.Comm.,76:425(1977)を参照されたい。異なる電気泳動条件下では、精製または部分的に精製されたポリペプチドの見かけの分子量が異なる可能性がある。
【0225】
例示的なエピトープ
抗EGFR抗体が結合するエピトープが、説明されている。Freeman et al.,Journal of Clinical Oncol.,
26:14536(2008)、ASCO Annual Meeting Proceedings。いくつかの実施形態において、EGFRエピトープに結合するか、またはEGFR抗体エピトープに競合的に結合する抗原結合タンパク質が、有用である。
【0226】
ある特定の治療的使用および薬学的組成物
いくつかの実施形態において、1つを上回るEGFRに対する抗原結合タンパク質を使用して、EGFR活性を調節する。
【0227】
ある特定の実施形態において、EGFRに対する抗原結合タンパク質を、単独で投与する。ある特定の実施形態において、EGFRに対する抗原結合タンパク質を、少なくとも1つの他の治療剤の投与の前に投与する。ある特定の実施形態において、EGFRに対する抗原結合タンパク質を、少なくとも1つの他の治療剤の投与と同時に投与する。ある特定の実施形態において、EGFRに対する抗原結合タンパク質を、少なくとも1つの他の治療剤の投与に続いて、投与する。他の実施形態において、EGFRに対する抗原結合タンパク質を、少なくとも1つの他の治療剤の投与の前に投与する。
【0228】
本発明の実施形態において、抗EGFR抗体は、1つ以上の他の抗腫瘍剤と組み合わせて投与することができる。組み合わせ療法の例については、例えば、米国特許第6,217,866号(Schlessingerら)(抗EGFR抗体と抗腫瘍剤との組み合わせ)、WO99/60023号(Waksalら)(抗EGFR抗体と放射線との組み合わせ)を参照されたい。化学療法剤、放射線、またはそれらの組み合わせ等、任意の好適な抗腫瘍剤を使用することができる。抗腫瘍剤は、アルキル化剤または抗代謝剤であってもよい。アルキル化剤の例には、シスプラチン、シクロホスファミド、メルファラン、およびダカルバジンが挙げられるが、これらに限定されない。抗代謝剤の例には、ドキソルビシン、ダウノルビシン、およびパクリタキセル、ゲムシタビン、ならびにトポイソメラーゼ阻害剤であるイリノテカン(CPT−11)、アミノカンプトテシン、カンプトテシン、DX−8951f、およびトポテカン(トポイソメラーゼI)、およびエトポシド(VP−16)、およびテニポシド(VM−26)(トポイソメラーゼII)が挙げられるが、これらに限定されない。抗腫瘍剤が放射線である場合、放射線源は、治療されている患者に対して、外照(外照射療法−EBRT)または内照(小線源療法−BT)のいずれかであり得る。投与される抗腫瘍剤の用量は、例えば、薬剤の種類、治療される腫瘍の種類および重症度、ならびに薬剤の投与経路を含む、多数の因子に依存する。しかしながら、本発明は、いずれの特定の用量にも限定されないことが強調されるべきである。
【0229】
現在、当該技術分野で既知であるか、または検証中である抗腫瘍剤は、例えば、有糸分裂阻害剤、アルキル化剤、抗代謝剤、挿入抗生剤、成長因子阻害剤、細胞周期阻害剤、酵素、トポイソメラーゼ阻害剤、抗生存剤、生物応答修飾物質、抗ホルモン、および抗血管新生剤を含む、種々のクラスに分類することができる。
【0230】
これらのクラスの中でも、本明細書に報告されたデータは、トポイソメラーゼ阻害剤が、EGFRに結合する抗体と組み合わせて使用する場合、特に効果的な抗腫瘍剤であることを示唆する。したがって、本発明の実施形態には、トポイソメラーゼ阻害剤を、EGFRに結合する抗体と組み合わせて投与する方法が含まれる。この阻害剤は、トポイソメラーゼIまたはトポイソメラーゼIIの阻害剤であり得る。トポイソメラーゼI阻害剤には、イリノテカン(CPT−11)、アミノ−カンプトテシン、DX−8951f、トポテカンが含まれる。トポイソメラーゼII阻害剤には、エトポシド(VP−16)およびテニポシド(VM−26)が含まれる。他の物質は、現在、トポイソメラーゼ阻害活性および抗腫瘍剤としての有効性に関して、検証中である。好ましい実施形態において、トポイソメラーゼ阻害剤は、イリノテカン(CPT−11)である。組み合わせて使用される抗体は、EGFRに結合し、以下の特性のうち少なくとも1つを有する、本発明の抗体である:(i)EGFのEGFRへの結合を阻害する、(ii)EGFによるEGFRの活性を中和する、(iii)EGFR表面受容体を減少させる、および約1×10
−10M
−1以下のKdでEGFRに結合する。より好ましい実施形態において、トポイソメラーゼ阻害剤と組み合わせて使用される抗体は、上述のヒト抗体の特徴を有する。
【0231】
本発明の抗EGFR抗体は、腫瘍成長または血管新生に関与する他の受容体を中和する抗体とともに、投与することができる。本発明の実施形態において、抗EGFR抗体を、EGFRに特異的に結合する受容体アンタゴニストと組み合わせて使用する。EGFRの細胞外ドメインに結合し、そのリガンドのうち1つ以上の結合を遮断する、および/またはリガンドに誘発されるEGFRの活性化を中和する、抗原結合タンパク質が、特に好ましい。EGFRアンタゴニストは、EGFRまたはEGFRのリガンドに結合し、EGFRのそのリガンドへの結合を阻害する抗体であり得る。EGFRのリガンドには、例えば、EGF、TGF−α、アンフィレグリン、ヘパリン結合EGF(HB−EGF)、およびβセルリンが挙げられる。EGFおよびTGF−αは、EGFRに媒介される刺激をもたらす主要な内因性リガンドであると考えられるが、TGF−αは、血管新生を促進することにおいて、より強力であることを示している。EGFRアンタゴニストは、リガンドの結合を阻害すること可能もしくは不可能である、EGFRの細胞外部分に外部から結合し得るか、チロシンキナーゼドメインに内部結合し得ることを理解されたい。EGFRに結合するEGFRアンタゴニストの例には、制限するものではなく、EGFRに特異的な抗体(およびその機能的同等物)等の生体分子、およびEGFRの細胞質ドメイン上で直接機能する合成キナーゼ阻害剤等の小分子が挙げられる。
【0232】
このような受容体の別の例は、VEGFRである。本発明の実施形態において、抗EGFR抗体を、VEGFRアンタゴニストと組み合わせて使用する。本発明の一実施形態において、抗EGFR抗体を、VEGFR−1/Flt−1受容体に特異的に結合する受容体アンタゴニストと組み合わせて使用する。別の実施形態では、抗EGFR抗体を、VEGFR−2/KDR受容体に特異的に結合する受容体アンタゴニストと組み合わせて使用する。VEGFR−1またはVEGFR−2の細胞外ドメインに結合し、それらのリガンドによる結合を遮断する(VEGFR−2は、VEGFによって最も強く刺激され、VEGFR−1は、P1GFによって最も強く刺激されるが、VEGFによっても刺激される)、および/またはリガンドに誘発される誘発活性化を中和する、抗原結合タンパク質が、特に好ましい。例えば、IMC−1121は、VEGFR−2に結合し、それを中和するヒト抗体である(WO03/075840号、Zhu)。別の例は、MAb6.12であり、可溶性および細胞表面に発現するVEGFR−1に結合するscFvである。ScFv6.12は、マウスモノクローナル抗体MAb6.12のV
LおよびV
Hドメインを含む。MAb 6.12を生成するハイブリドーマ細胞系は、Budapest Treaty on the International Recognition of the Deposit of Microorganisms for the Purposes of Patent Procedureの規定およびその規制(Budapest Treaty)に基づいて、ATCC番号PTA−3344として寄託されている。腫瘍形成に関与する成長因子受容体の他の例は、血小板由来成長因子(PDGFR)、神経成長因子(NGFR)、および線維芽細胞成長因子(FGFR)の受容体である。
【0233】
さらなる代替的実施形態において、EGFR抗体は、例えば、サイトカイン(例えば、IL−10およびIL−13)等の1つ以上の好適なアジュバント、または、限定されないが、ケモカイン、腫瘍関連抗原、およびペプチド等の他の免疫促進剤と組み合わせて投与することができる。例えば、Larrivee et al.(上記)を参照されたい。しかしながら、抗EGFR抗体単独の投与が、治療的に有効な方法において、腫瘍の進行を予防、阻害、または低減させるのに十分であることを理解されたい。
【0234】
組み合わせ療法において、抗EGFR抗体は、別の薬剤での治療を開始する前、最中、またはその後、ならびにこれらの組み合わせで、すなわち、抗腫瘍剤療法を開始する前および最中、前および後、最中および後、または前、最中、および後に、投与される。
【0235】
例えば、抗EGFR抗体は、放射線療法を開始する1〜30日前、好ましくは3〜20日前、より好ましくは5〜12日前に投与され得る。本発明の好ましい実施形態において、化学療法は、抗体療法と同時、またはより好ましくは、それに続いて、施される。本発明の別の態様において、本発明の抗EGFR抗体は、1つ以上の抗腫瘍剤または抗血管新生剤と、化学的または生合成的に結合させてもよい。
【0236】
本発明は、さらに、標的またはレポーター分子が結合される、抗EGFR抗体を企図する。標的部分は、結合ペアの第1のメンバーである。抗腫瘍剤は、例えば、このようなペアの第2のメンバーと抱合され、それによって、抗EGFR抗体が結合される部位に向けられる。このような結合ペアの一般的な例は、アビジンとビオチンである。好ましい実施形態において、ビオチンを、抗EGFR抗体に抱合し、それによって、アビジンまたはストレプトアビジンに抱合された抗腫瘍剤または他の部分に対する標的を提供する。あるいは、ビオチンまたは別のこのような部分を、本発明の抗EGFR抗体に結合させ、例えば、検出可能なシグナル生成剤がアビジンまたはストレプトアビジンに抱合された診断システムにおいて、これをレポーターとして使用する。
【0237】
本発明の抗EGFR抗体は、予防または治療の目的で哺乳動物に使用される場合、薬学的に許容される担体を追加として含む、組成物の形態で投与されるであろうことが理解される。好適な薬学的に許容される担体には、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール等のうちの1つ以上、ならびにこれらの組み合わせが含まれる。薬学的に許容される担体は、保存可能期間または結合タンパク質の有効性を強化する、湿潤剤または乳化剤、保存剤または緩衝剤等、少量の補助物質をさらに含んでもよい。注射用組成物は、当該技術分野で周知のように、哺乳動物への投与後に、活性成分の迅速、持続、または遅延放出をもたらすように、製剤化することができる。
【0238】
本発明はまた、ヒト抗EGFR抗体の治療有効量を含む、腫瘍成長および/または血管新生を阻害するためのキットを含む。キットは、さらに、例えば、腫瘍形成または血管新生に関与する別の成長因子受容体(例えば、上述のEGFR、VEGFR−1/Flt−1、VEGFR−2、PDGFR、NGFR、FGFR等)の任意の好適なアンタゴニストを含み得る。代替として、または追加として、本発明のキットは、抗腫瘍剤をさらに含んでもよい。本発明との関連で好適な抗腫瘍剤の例は、本明細書に記載されている。本発明のキットは、アジュバントをさらに含んでもよく、その例もまた、上述されている。
【0239】
さらに、当該技術分野で周知である調査または診断方法のためのインビボおよびインビトロでの本発明の抗体の使用が、本発明の範囲内に含まれる。診断方法には、本発明の抗体を含有するキットが含まれる。
【0240】
それに応じて、本発明の受容体抗体は、したがって、当該技術分野で周知の調査、診断、予防、または治療方法のために、インビボおよびインビトロで使用することができる。当然ながら、当業者によって本明細書に開示される本発明の原理に変更が加えられてもよいことが理解および想定され、このような修正は、本発明の範囲内に含まれることが意図される。
【0241】
前述の抗体の有効量を、哺乳動物に投与することによって、哺乳動物における腫瘍成長を治療する方法もまた、本発明によって提供される。EGFRのシグナル伝達経路が、多種の癌の発達における原因要素であることは、広く例証されている。
【0242】
本発明において、任意の好適な方法または経路を使用して、本発明の抗EGFR抗体を投与し、さらに任意で抗腫瘍剤および/または他の受容体のアンタゴニストを共投与することができる。本発明によって利用される抗腫瘍剤のレジメンには、患者の腫瘍状態の治療に最適に好適であると見られる任意のレジメンが含まれる。異なる悪性腫瘍は、特異的抗腫瘍抗体および特異的抗腫瘍剤の使用を要し得、これは、患者毎に決定されることになる。投与の経路には、例えば、経口、静脈内、腹腔内、皮下、または筋肉内投与が含まれる。投与されるアンタゴニストの用量は、例えば、アンタゴニストの種類、治療されている腫瘍の種類および重症度、ならびにアンタゴニストの投与経路を含む、多数の因子に依存する。しかしながら、本発明は、いずれの特定の投与方法または投与経路にも限定されないことを強調したい。
【0243】
本発明の抗EGFR抗体は、受容体に特異的に結合し、リガンド−毒素の取り込み後に毒性の致死量を送達する、抱合体として投与することができることに留意されたい。抗体−薬物/小分子抱合体は、互いに直接結合するか、またはリンカー、ペプチド、または非ペプチドを介して結合することができる。
【0244】
ある特定の実施形態において、EGFRに対する抗原結合タンパク質を、特定の治療剤とともに使用して、種々の癌を治療する。ある特定の実施形態において、条件および所望の治療レベルを考慮して、2、3、またはそれ以上の薬剤を投与することができる。ある特定の実施形態において、このような薬剤は、同じ製剤に含めることによって、一緒に提供することができる。ある特定の実施形態において、このような薬剤は、別個に製剤化し、治療キットに含めることによって、一緒に提供することができる。ある特定の実施形態において、このような薬剤およびEGFRに対する抗原結合タンパク質は、別個に製剤化し、治療キットに含めることによって一緒に提供することができる。ある特定の実施形態において、このような薬剤は、別個に提供してもよい。ある特定の実施形態において、遺伝子療法により投与する場合、タンパク質剤および/またはEGFRに対する抗原結合タンパク質をコードする遺伝子が、同じベクター内に含められてもよい。ある特定の実施形態において、タンパク質剤および/またはEGFRに対する抗原結合タンパク質をコードする遺伝子が、同じプロモーター領域の制御下にあってもよい。ある特定の実施形態において、タンパク質剤および/またはEGFRに対する抗原結合タンパク質をコードする遺伝子が、別個のベクター内にあってもよい。
【0245】
ある特定の実施形態において、本発明は、EGFRに対する抗原結合タンパク質を、薬学的に許容される希釈剤、担体、可溶化剤、乳化剤、保存剤、および/またはアジュバントとともに含む、薬学的組成物を提供する。
【0246】
ある特定の実施形態において、EGFRに対する抗原結合タンパク質を、少なくとも1つの炎症治療剤とともに使用することができる。ある特定の実施形態において、EGFRに対する抗原結合タンパク質を、少なくとも1つの免疫障害の治療剤とともに使用することができる。炎症および免疫障害の例示的な治療剤には、限定されないが、シクロオキシゲナーゼ1型(COX−1)およびシクロオキシゲナーゼ2型(COX−2)阻害剤、38kDaマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(p38−MAPK)の小分子調節剤、炎症経路に関与する細胞内分子の小分子調節剤が含まれ、このような細胞内分子には、jnk、IKK、NF−κB、ZAP70、およびlckが含まれるがこれらに限定されない。ある特定の例示的な炎症治療剤は、例えば、C.A.Dinarello&L.L.Moldawer Proinflammatory and Anti−Inflammatory Cytokines in Rheumatoid Arthritis:A Primer for Clinicians,3rd Edition(2001)Amgen Inc.,Thousand Oaks,CAに記載されている。
【0247】
ある特定の実施形態において、薬学的組成物は、1つを上回って異なるEGFRに対する抗原結合タンパク質を含むことになる。ある特定の実施形態において、薬学的組成物は、1つを上回ってEGFRに対する抗原結合タンパク質を含むことになり、EGFRに対する抗原結合タンパク質は、1つを上回るエピトープに結合する。いくつかの実施形態において、種々の抗原結合タンパク質は、EGFRへの結合について、互いに競合することはない。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の抗原結合タンパク質のいずれも、薬学的組成物と一緒に合わせることができる。
【0248】
ある特定の実施形態において、許容される製剤材料は、好ましくは、採用される投与量および濃度で、レシピエントに対して非毒性である。いくつかの実施形態において、製剤材料(複数可)は、皮下および/または静脈内投与のためのものである。ある特定の実施形態において、薬学的組成物は、例えば、組成物のpH、モル浸透圧濃度、粘度、透明度、色、等張性、臭気、無菌性、安定性、溶解もしくは放出の速度、吸収、または浸透を、修正、維持、または保持するためのある特定の製剤材料を含有し得る。ある特定の実施形態において、好適な製剤材料には、アミノ酸(グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、リジン等);抗菌剤;酸化防止剤(アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウム、もしくは亜硫酸水素ナトリウム等);緩衝剤(ホウ酸塩、重炭酸塩、トリス−HCl、クエン酸塩、リン酸塩、もしくは他の有機酸等);増量剤(マンニトールもしくはグリシン);キレート剤(エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等);錯化剤(カフェイン、ポリビニルピロリドン、β−シクロデキストリン、もしくヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン等);充填剤;単糖類;二糖類;および他の炭水化物(グルコース、マンノース、もしくはデキストリン等);タンパク質(血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリン等);着色、香味、および希釈剤;乳化剤;親水性ポリマー(ポリビニルピロリドン等);低分子量ポリペプチド;塩形成対イオン(ナトリウム等);保存剤(塩化ベンザルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸、もしくは過酸化水素等);溶媒(グリセリン、プロピレングリコール、もしくはポリエチレングリコール等);糖アルコール(マンニトールもしくはソルビトール等);懸濁化剤;界面活性剤または湿潤剤(プルロニック、PEG、ソルビタンエステル、ポリソルベート、例えばポリソルベート20、ポリソルベート80、トリトン、トロメタミン、レシチン、コレステロール、チロキサパル(tyloxapal)等);安定性強化剤(スクロースもしくはソルビトール等);等張性強化剤(アルカリ金属ハロゲン化物、好ましくは塩化ナトリウムもしくは塩化カリウム等、マンニトール、ソルビトール等);送達ビヒクル;希釈剤;賦形剤、ならびに/または薬学的アジュバントが含まれるが、これらに限定されない。(Remington’s Pharmaceutical Sciences,18
th Ed.,A.R.Gennaro,ed.,Mack Publishing Company(1995)。いくつかの実施形態において、製剤は、PBS;20mM NaOAC、pH5.2、50mM NaCl;および/または10mM NAOAC、pH5.2、9%スクロースを含む。
【0249】
ある特定の実施形態において、EGFRに対する抗原結合タンパク質および/または治療用分子は、当該技術分野で既知の半減期延長ビヒクルに結合される。このようなビヒクルには、ポリエチレングリコール、グリコーゲン(例えば、抗原結合タンパク質のグリコシル化)、およびデキストランが含まれるが、これらに限定されない。このようなビヒクルは、例えば、米国特許出願第09/428,082号、現在では米国特許第6,660,843号、および公開済みのPCT出願第WO99/25044号に記載され、参照により本明細書に組み込まれる。
【0250】
ある特定の実施形態において、最適な薬学的組成物は、例えば、意図される投与の経路、送達の形式、および所望される投与量に応じて、当業者によって決定されることになる。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(上記)を参照されたい。ある特定の実施形態において、このような組成物は、本発明の抗体の物理的状態、安定性、インビボでの放出速度、およびインビボでのクリアランス速度に影響を及ぼし得る。
【0251】
ある特定の実施形態において、薬学的組成物中の主要なビヒクルまたは担体は、本質的に水溶性または非水溶性のいずれかであり得る。例えば、ある特定の実施形態において、好適なビヒクルまたは担体は、注射については水であってもよく、非経口投与については、場合によっては組成物に一般的な他の材料が補充された生理食塩水または人工脳骨髄液であってもよい。いくつかの実施形態において、生理食塩水は、等張性リン酸緩衝生理食塩水を含む。ある特定の実施形態において、中性緩衝生理食塩水、または血清アルブミンと混合した生理食塩水は、さらなる例示的ビヒクルである。ある特定の実施形態において、薬学的組成物は、約pH7.0〜8.5のトリス緩衝液、または約pH4.0〜5.5の酢酸緩衝液を含み、これは、さらに、ソルビトールまたはその好適な代替物を含み得る。ある特定の実施形態において、EGFRに対する抗原結合タンパク質を、少なくとも1つの追加の治療剤ありまたはなしで含む組成物は、所望される程度の純度を有する選択された組成物を、任意の製剤化剤(Remington’s Pharmaceutical Sciences(上記))と混合することによって、凍結乾燥した固形物または水溶液の形態で、保存用に調製することができる。さらに、ある特定の実施形態において、EGFRに対する抗原結合タンパク質を、少なくとも1つの追加の治療剤ありまたはなしで含む組成物は、スクロース等、適切な賦形剤を使用して、凍結乾燥物として製剤化することができる。
【0252】
薬学的製剤、特に、本発明で使用するための抗体および免疫抱合体および阻害剤のものは、所望される程度の純度を有する抗体を、薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤と混合することによって、調製することができる。このような製剤は、凍結乾燥製剤または水溶液であり得る。許容される担体、賦形剤、または安定剤は、使用される投与量および濃度で、レシピエントに対して非毒性である。許容される担体、賦形剤、または安定剤は、酢酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸;酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸)、保存剤、低分子量ポリペプチド;血清アルブミンもしくはゼラチン等のタンパク質、またはポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;ならびにアミノ酸、単糖類、二糖類、およびグルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む他の炭水化物;キレート剤;ならびにイオン性および非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート);ナトリウム等の塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn−タンパク質錯体);ならびに/または非イオン性界面活性剤であり得る。抗体は、0.5〜200mg/ml、または10〜50mg/mlの濃度で製剤化することができる。
【0253】
製剤はまた、化学療法剤、細胞毒性剤、サイトカイン、成長阻害剤、および抗ホルモン剤を含む、さらなる活性化合物を提供し得る。活性成分はまた、持続放出製剤として調製することもできる(例えば、固形疎水性ポリマー(例えば、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチドの半透過性マトリックス。抗体および免疫抱合体はまた、例えば、液滴形成技術または界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンのマイクロカプセルおよびポリ−(メチルメタクリレート(methylmethacylate))マイクロカプセル中、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、およびナノカプセル)中、またはマクロエマルジョン中に、封入することもできる。
【0254】
組成物は、治療的または予防的治療のために投与することができる。治療用途では、組成物を、「治療有効量」で、疾患(例えば、癌)を患う患者に投与する。この使用に有効な量は、疾患の重症度および患者の全体的な健康状態に依存することになる。組成物の単回または複数回投与は、患者に必要かつ耐容性である投与量および頻度に応じて、投与することができる。本発明の目的での「患者」または「対象」とは、ヒトおよび他の動物の両方、特に哺乳動物を含む。したがって、本方法は、ヒトの治療法および獣医学的用途の両方に適用可能である。好ましい実施形態において、患者は、哺乳動物、好ましくは霊長類であり、最も好ましい実施形態では、患者は、ヒトである。他の既知の癌療法を、本発明の方法と組み合わせて使用することができる。例えば、本発明による使用のための組成物はまた、例えば、SFU、ビンブラスチン、アクチノマイシンD、シスプラチン、メトトレキサート等の他の癌治療剤に、細胞を標的化または感作するために使用することができる。
【0255】
ある特定の実施形態において、本薬学的組成物を、非経口送達のために選択することができる。ある特定の実施形態において、本組成物を、吸入、または経口等の消化管を通じた送達に選択することができる。このような薬学的に許容される組成物の調製は、当業者の能力の範囲内である。
【0256】
ある特定の実施形態において、製剤の構成成分は、投与部位に許容される濃度で存在する。ある特定の実施形態において、緩衝液を使用して、生理的pHまたはわずかに低いpH、典型的には約5〜約8の範囲内のpHに組成物を維持する。
【0257】
ある特定の実施形態において、非経口投与が企図される場合、治療的組成物は、所望のEGFRに対する抗原結合タンパク質を、追加の治療剤ありまたはなしで、薬学的に許容されるビヒクル中に含む、発熱物質不含の非経口で許容される水溶液の形態であり得る。ある特定の実施形態において、非経口注射のためのビヒクルは、EGFRに対する抗原結合タンパク質が、少なくとも1つの追加の治療剤ありまたはなしで、滅菌の等張溶液として製剤化され適正に保存された、滅菌蒸留水である。ある特定の実施形態において、調製は、所望される分子を、生成物の制御放出または持続放出を提供することができ、蓄積注射を介して送達することができる、注射可能なマイクロスフェア、生体浸食性粒子、ポリマー化合物(ポリ乳酸もしくはポリグリコール酸等)、ビーズ、またはリポソーム等の薬剤と製剤化することを伴い得る。ある特定の実施形態において、ヒアルロン酸もまた使用可能であり、循環血液中での持続期間を促進する効果を有し得る。ある特定の実施形態において、埋め込み可能な送達装置を使用して、所望の分子を導入することができる。
【0258】
ある特定の実施形態において、薬学的組成物を、吸入のために製剤化することができる。ある特定の実施形態において、EGFRに対する抗原結合タンパク質を、少なくとも1つの追加の治療剤ありまたはなしで、吸入用の乾燥粉末として製剤化することができる。ある特定の実施形態において、EGFRに対する抗原結合タンパク質は、少なくとも1つの追加の治療剤ありまたはなしで含む、吸入溶液は、エアロゾル送達のために噴射剤とともに製剤化されてもよい。ある特定の実施形態において、溶液は、噴霧することができる。肺内投与は、さらに、PCT出願第PCT/US94/001875号に記載され、これは、化学修飾されたタンパク質の肺内送達について記載している。
【0259】
ある特定の実施形態において、製剤を、経口投与することが可能であることが企図される。ある特定の実施形態において、この形式で投与される、EGFRに対する抗原結合タンパク質は、少なくとも1つの追加の治療剤ありまたはなしで、錠剤およびカプセル等の固形剤形の構成に習慣的に使用される、担体ありまたはなしで、製剤化することができる。ある特定の実施形態において、カプセルは、バイオアベイラビリティが最大化され、全身前の分解が最小化される、胃腸管内の時点で、製剤の活性部分を放出するように設計することができる。ある特定の実施形態において、少なくとも1つの追加の薬剤は、EGFRに対する抗原結合タンパク質および/または任意の追加の治療剤の吸収を促進するために含まれ得る。ある特定の実施形態において、希釈剤、香味剤、低融点ワックス、植物油、潤滑剤、懸濁化剤、錠剤の崩壊剤、および結合剤もまた、採用可能である。
【0260】
ある特定の実施形態において、薬学的組成物は、EGFRに対する抗原結合タンパク質の有効量を、少なくとも1つの追加の治療剤ありまたはなしで、錠剤の製造に好適な非毒性賦形剤との混合物中に含み得る。ある特定の実施形態において、滅菌水または別の適切なビヒクル中に錠剤を溶解することによって、溶液を、単位用量形態に調製することができる。ある特定の実施形態において、好適な賦形剤には、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウムもしくは重炭酸塩、ラクトース、またはリン酸カルシウム等の不活性希釈剤、デンプン、ゼラチン、またはアカシア等の結合剤、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、または滑石等の潤滑剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0261】
追加の薬学的組成物は、EGFRに対する抗原結合タンパク質を、少なくとも1つの追加の治療剤(複数可)ありまたはなしで持続または制御送達剤形に含む製剤を含み、当業者には明白であろう。ある特定の実施形態において、リポソーム担体、生体浸食性微粒子または多孔質ビーズ、および蓄積注射等、種々の他の持続または制御送達手段を構成するための技術はまた、当業者に既知である。例えば、PCT出願第PCT/US93/00829号を参照されたく、これは、薬学的組成物の送達のための多孔質ポリマーの制御放出について記載している。ある特定の実施形態において、持続放出性調製物は、成形物品、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルの形態で、半透過性ポリマーマトリックスを含み得る。持続放出マトリックスは、ポリエステル、ヒドロゲル、ポリラクチド(米国第3,773,919号およびEP058,481号)、L−グルタミン酸およびγエチル−L−グルタメートのコポリマー(Sidman et al.,Biopolymers,22:547−556(1983))、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)(Langer et al.,J.Biomed.Mater.Res.,15:167−277(1981)およびLanger,Chem.Tech.,12:98−105(1982))、エチレン酢酸ビニル(Langer et al.(上記))、またはポリ−D(−)−3−ヒドロキシ酪酸(EP133,988号)を含み得る。ある特定の実施形態において、持続放出性組成物はまた、リポソームを含んでもよく、これは、当該技術分野で既知の複数の方法のいずれかによって調製することができる。例えば、Eppstein et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82:3688−3692(1985)、EP036,676号、EP088,046号、およびEP143,949号を参照されたい。
【0262】
インビボでの投与に使用される薬学的組成物は、典型的に、滅菌である。ある特定の実施形態において、これは、滅菌濾過膜を通じた濾過によって達成することができる。ある特定の実施形態において、組成物が凍結乾燥されている場合、この方法を使用した滅菌は、凍結乾燥および再構成の前または後のいずれかに行うことができる。ある特定の実施形態において、非経口投与のための組成物は、凍結乾燥形態または溶液中で保管することができる。ある特定の実施形態において、非経口組成物は、概して、滅菌のアクセスポートを有する容器、例えば、静脈注射溶液バッグ、または皮下注射針によって刺し通すことが可能な栓を有するバイアルに入れられる。
【0263】
ある特定の実施形態において、薬学的組成物が製剤化された時点で、それは、溶液、懸濁液、ゲル、エマルジョン、固体として、または乾燥もしくは凍結乾燥させた粉末として、滅菌バイアル中に保管することができる。ある特定の実施形態において、このような製剤は、すぐに使用可能な形態、または投与前に再構成される形態(例えば、凍結乾燥)のいずれかで保管することができる。
【0264】
ある特定の実施形態において、単回用量の投与単位を生成するために、キットが提供される。ある特定の実施形態において、キットは、乾燥したタンパク質を有する第1の容器および水性製剤を有する第2の容器の両方を含有し得る。ある特定の実施形態において、単一および複数のチャンバを有する事前充填したシリンジ(例えば、液体シリンジおよび分散シリンジ(lyosyringe))を含有するキットが、含まれる。
【0265】
ある特定の実施形態において、EGFRに対する抗原結合タンパク質を、少なくとも1つの追加の治療剤ありまたはなしで含む、治療的に採用される薬学的組成物の有効量は、例えば、治療内容及び目的に依存することになる。当業者であれば、ある特定の実施形態による治療のための適切な投与量レベルが、したがって、部分的に、送達される分子、EGFRに対する抗原結合タンパク質が少なくとも1つの追加の治療剤ありまたはなしで使用される適応症、投与の経路、ならびに患者の寸法(体重、体表または器官の寸法)および/または状態(年齢および全体的な健康)に応じて、多様であることを理解するであろう。ある特定の実施形態において、臨床医は、最適な治療効果を得るように、投与量の設定および投与経路の変更を行うことができる。ある特定の実施形態において、典型的な投与量は、上述の因子に応じて、約0.1μg/kg〜最大約100mg/kgまたはそれ以上の範囲に及び得る。ある特定の実施形態において、投与量は、0.1μg/kg〜最大約100mg/kg、または1μg/kg〜最大約100mg/kg、または5μg/kg〜最大約100mg/kgの範囲に及び得る。
【0266】
ある特定の実施形態において、投与の頻度は、使用される製剤におけるEGFRに対する抗原結合タンパク質および/または任意の追加の治療剤の薬物動態パラメータを考慮することになる。ある特定の実施形態において、臨床医は、所望の効果を達成する投与量に達するまで、組成物を投与することになる。ある特定の実施形態において、組成物は、したがって、単回用量として、または継時的に2回以上の用量(同量の所望の分子を含有してもよく、またはしなくてもよい)として、または埋め込み装置またはカテーテルを介した連続的注入として、投与することができる。適切な投与量のさらなる細分化は、当業者によって日常的に行われ、彼らによって日常的に行われる業務の範囲内である。ある特定の実施形態において、適切な投与量は、適切な用量応答データの使用を通じて確認することができる。
【0267】
ある特定の実施形態において、薬学的組成物の投与経路は、既知の方法に従ったもの、例えば、経口、静脈内、腹腔内、脳内(実質内)、脳室内、筋肉内、皮下、眼内、動脈内、門脈内、または病巣内経路による注射を通じてのもの、持続放出システムまたは埋め込み装置によるものである。ある特定の実施形態において、本組成物は、ボーラス注入によって、連続的に注入によって、または埋め込み装置によって、投与することができる。
【0268】
ある特定の実施形態において、本組成物は、所望の分子が吸収または封入されている膜、スポンジ、または他の適切な物質への埋め込みを介して、局所的に投与することができる。ある特定の実施形態において、埋め込み装置を使用する場合、装置は、任意の好適な組織または器官に埋め込むことができ、所望の分子の送達は、核酸、徐放性ボーラス、または連続的投与を介して行うことができる。
【0269】
ある特定の実施形態において、EGFRに対する抗原結合タンパク質を少なくとも1つの追加の治療剤ありまたはなしで含む、薬学的組成物を、エキソビボ形式で使用することが望ましい場合がある。このような事例において、患者から取り出された細胞、組織、および/または器官を、EGFRに対する抗原結合タンパク質を少なくとも1つの追加の治療剤ありまたはなしで含む薬学的組成物に暴露し、その後で、細胞、組織、および/または器官を、続けて、患者に埋め込んで戻す。
【0270】
ある特定の実施形態において、EGFRに対する抗原結合タンパク質および/または任意の追加の治療剤は、本明細書に記載の方法を使用して、ポリペプチドを発現および分泌するように遺伝子操作したある特定の細胞を埋め込むことによって送達することができる。ある特定の実施形態において、このような細胞は、動物またはヒトの細胞であってもよく、自己、非相同、または異種であり得る。ある特定の実施形態において、細胞を不死化することができる。ある特定の実施形態において、免疫学的応答の可能性を減少させるために、細胞を、カプセル封入して、周辺組織の浸潤を回避することができる。ある特定の実施形態において、カプセル封入の材料は、典型的に、タンパク質生成物(複数可)の放出を可能にするが、患者の免疫系または周辺組織からの他の有害因子による細胞の破壊を阻止する、生体適合性、半透過性ポリマー封入物または膜である。
【0271】
診断的適用
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の抗原結合タンパク質は、EGFRのレベルの変化と関連する疾患または障害をスクリーニング/診断するために、哺乳動物組織または細胞中のEGFRの検出のためのアッセイキットおよび/または方法において使用または提供される。キットは、EGFRに結合する抗原結合タンパク質、ならびに抗原結合タンパク質のEGFRへの結合、および、存在する場合は、任意にEGFRタンパク質レベルを示すための方法を含む。抗原結合タンパク質の存在を示すための種々の方法が、使用可能である。例えば、フルオロフォア、他の分子プローブ、または酵素を、抗原結合タンパク質に結合させることができ、抗原結合タンパク質の存在を、種々の方法で観察することができる。このような障害のスクリーニング方法は、キットの使用を伴い得るか、または開示される抗原結合タンパク質のうちの1つの単純な使用、および抗原結合タンパク質が試料中のEGFRに結合するかどうかの判定を伴い得る。当業者には理解されるように、高いかまたは上昇したEGFRレベルは、試料中のEGFRに結合している抗原結合タンパク質の量がより多いことにつながるであろう。したがって、抗原結合タンパク質の結合の程度は、試料中にあるEGFRの量の判定に使用することができる。所定の量(例えば、EGFR関連障害を有しない人物が有するであろう量または範囲)を上回る量のEGFRを有する対象または試料は、EGFおよび/またはEGFR媒介性障害を有するとして特徴づけることができる。
【0272】
関連するパニツムマブのアミノ酸および核酸配列、ならびにそれぞれの突然変異体を、表2に記載する。
【0274】
前述の明細書は、当業者が本発明を実践することを可能にするためには十分であるとみなされる。上述の説明および例は、本発明のある特定の好ましい実施形態について詳述し、発明者らによって企図された最良の形態を記載する。しかしながら、前述のものがどれほど詳しく記載されていようとも、本発明は、多数の方法によって実践することができ、本発明が、添付の特許請求の範囲およびその全ての均等物に従って解釈されるべきであることを理解されたい。
【0275】
行われた実験および得られた結果を含む、以下の実施例は、例示の目的でのみ提供され、本発明を限定するとして解釈されるものではない。
【実施例】
【0276】
実施例1
突然変異生成
パニツムマブ(配列番号1および2)の重鎖および軽鎖アミノ酸配列を、突然変異生成の出発物質として使用した。PCRのプライマーは、Stratagene(現Agilent Technologies,Inc.,Santa Clara,CA)からのQuik Change II XL(登録商標)Site Directed Mutagenesis Kitを使用して、部位特異的突然変異生成を行うように設計した。製造業者の手順に従って、PCR反応を、オリゴヌクレオチドを使用して構築し、それを使用して、XL−Goldウルトラコンピテント細胞(ultra−competent cell)を形質転換させた。これらの細胞を、次いで、TIM選択的プレートに蒔いた。このプレートを、一晩37℃で放置し、コロニーを形成させた。各構築物から2つのコロニーを採取し、TIMプレートで再ストリークした。各構築物の1つのコロニーを、次いで、マキシプレップ(maxiprep)用に構築した。マキシプレップに配列決定を行い、100%一致した。Sal I−Not Iでの消化をマキシプレップに行い、目的のフラグメントを選択した。2つの制限末端を、Sal I−Not Iで消化させたpDC414に連結させた。新しい連結を、DH10Bコンピテント細胞に形質転換させ、TIM選択プレート上に蒔いた。プレートを、次に、37℃で一晩放置し、コロニーを形成させた。複数のコロニーを、挿入について試験するために消化させた。各突然変異に対して1つのマキシプレップを作製した:pDC414−AMG954 Asp92−Glu、およびpDC414−AMG954 Asp92−Asn。マキシプレップに配列決定を行い、100%一致した。メガプレップを、293(E)細胞を使用して一過的にトランスフェクトした。細胞を7日間培養し、その後で採取した。発現された抗体を、プロテインAカラムおよび標準技術を使用して上清から精製した。
【0277】
エンドプロテアーゼLys−Cおよびトリプシンペプチドマップ
結果として得られた分子を、次いで、変性させて還元し、スルフヒドリルをアルキル化した。還元してアルキル化した分子を、ゲル濾過によって脱塩し、次いで、酵素的に脱グリコシル化した。還元してアルキル化し、脱グリコシル化した分子を、次いで、Lys−Cまたはトリプシンエンドプロテアーゼで消化させた。反応物に、反応停止処理を行い、結果として得られたフラグメントを、Lys−C消化にはポリマーカラム(Grace−Vydac,Deerfield,IL)を使用し、トリプシン消化にはUPLC BEH Amideカラム(Waters,Milford,MA)を使用して、アセトニトリル/TFA勾配中で逆相HPLCによって分離した。ペプチド溶出を、UV検出によって監視した。Lys−Cペプチドマップによって検出された、Vectibix(登録商標)(パニツムマブ)D92異性化の結果を、
図1に記載する。
【0278】
実施例2
構造モデル
Vectibix(登録商標)(パニツムマブ)の構造を、Molecular Operating Environment(MOE)ソフトウェア(Chemical Computing Group,Montreal,Canada)を使用して分析した。異性化を、MOE内で、必要な原子結合を切断および形成することによって、手作業でモデル化した。特異的突然変異を、MOEモデリングソフトウェアに組み込まれた突然変異能力を使用して、モデル化した。結果を、
図2に記載する。
【0279】
実施例3
加速安定性研究
Vectibix(登録商標)(パニツムマブ)の安定性研究を、50mM酢酸ナトリウムおよび100mM塩化ナトリウム中で、pH5.8で6か月間、37℃で行った。異性化を加速させるために、突然変異体を、pH5.0で、10mMグルタミン酸、2.6%w/vグリセロール中に緩衝液交換し、50℃で4週間、昇温に供した。結果を
図3に記載する。
【0280】
実施例4
バイオアッセイ
リン酸化バイオアッセイ。使用したリン酸化バイオアッセイは、EGFに誘導されたEGF受容体のチロシンリン酸化の検出に基づいたものであった。Vectibix(登録商標)(パニツムマブ)は、EGF受容体に結合し、EGF結合を阻害し、したがって、受容体のリン酸化を阻害する。細胞表面EGF受容体を発現するA431細胞を、固定量のEGFおよび種々の量のVectibix(登録商標)とともにマイクロタイタープレート中でインキュベートした。細胞を、溶解し、可溶性EGF受容体を、抗EGF受容体抗体でコーティングした第2のマイクロタイターELISAプレート上で捕捉した。リン酸化されたEGF受容体を、HRPと抱合された抗ホスホチロシン抗体、続いて発色性基質の添加を用いて検出した。色の展開を、次いで、吸光プレートリーダーを使用して測定した。相対的有効性を、平行線分析によって判定した。
【0281】
遺伝子発現バイオアッセイ。32D MRE−1/S#13細胞を、10%FBS、5ng/mL mIL−3、500ug/mL G418、および700ug/mLハイグロマイシン−Bを含有する、Glutamax(商標)を含むRPMI1640培地中で、懸濁培養物として成長させた。細胞のアッセイフラスコを、遠心分離およびリン酸緩衝食塩水での洗浄によって成長培地成分を排除して、使用のために調製した。細胞を、次いで、8E+05細胞/mLで、アッセイ培地(Glutamax(商標)、1%FBSを含むRPMI1640)中に再懸濁させた。
【0282】
参照標準物、対照、および試験試料を、アッセイ培地中で440ng/mLに希釈した。参照標準物、対照、試験試料の連続希釈物を、440〜87ng/mLの濃度範囲が得られるように調製した。これらの希釈物の調製に続いて、等体積の固定濃度のTGF−αを、各管に添加した。アッセイウェル中の最終濃度は、細胞の添加後、110〜22ng/mLのVectibix(登録商標)であった。
【0283】
アッセイは、4つの96ウェルプレートおよび部分的に無作為化した試料位置スキームを利用した。TGF−αスパイクと混合した抗体の各連続希釈物25μLを、アッセイウェルに添加した。25μLのアッセイ培地を、細胞ブランクとして機能する、細胞のみのウェルに添加した。50μLのアッセイ培地を、培地ブランクとして機能する、培地のみのウェルに添加した。25μLのTGF−αスパイク対照を、バックグラウンドウェルに添加した(TGF−αスパイク対照)。標準物、対照試料、試験試料、バックグラウンド、および細胞のみのウェル全てに、次いで、8E+05細胞/mLで、25μLの32D MRE−1/S #13細胞懸濁液を、受容させた。プレートを、次いで、37℃/5%CO
2加湿インキュベーターで3.5±0.5時間インキュベートした。
【0284】
インキュベーション期間の後、プレートをインキュベーターから取り出し、10〜20分間、室温に冷却した。50μLのSteadyGlo(登録商標)(細胞を溶解するための界面活性剤およびルシフェラーゼの基質であるルシフェリンを含有する試薬混合液)を、各ウェルに添加した。アッセイプレートを、次いで、露光量を最小にするように被覆し、室温で30〜120分間インキュベートした。発光シグナルを、次いで、照度計を使用して定量化した。試験試料の活性を、試験試料の応答と参照標準物で得られた応答とを比較することによって、判定した。
【0285】
データを、平行線分析を使用して分析した。制御されたスプレッドシートにより、95%の信頼限界で、対照および各試験試料を参照標準物と比較して、相対的有効性を計算する。スプレッドシートにより、参照標準物と対照および試験試料との対比について、分散分析(ANOVA)表を構築することによって、相対的有効性を計算した。3つの有効性判定が、1つの試料に対する3回の独立したアッセイから得られ、加重平均の結果を、制御されたスプレッドシートを使用して、USP<111>に従って計算した。
【0286】
結果を、
図4に記載する。